中央環境審議会環境保健部会PRTR法対象物質専門委員会
生活環境審議会生活環境部会PRTR法対象化学物質専門委員会
化学品審議会安全対策部会化学物質管理促進法対象物質検討分科会
第1回合同会合議事録


1.日  時  平成11年10月8日(金)14:00〜17:00

2.場  所  各省庁共用939会議室

3.出 席 者

中央環境審議会環境保健部会PRTR法対象物質専門委員会委員
(委員長)鈴木 継美
(委 員)池田 正之石井 康雄
 櫻井 治彦中杉 修身
 畠山 成久林  裕造
 若林 明子 
 
生活環境審議会生活環境部会PRTR法対象化学物質専門委員会委員
(委員長)黒川 雄二
(委 員)井上  達内山 巌雄
 櫻井 治彦長谷川隆一
 林  裕造山本  都
 
化学品審議会安全対策部会化学物質管理促進法対象物質検討分科会委員
(分科会長)中西 準子
(委  員)池田 正之櫻井 治彦
 清水 英佑松本 和子
 宮本 純之(五十音順)
 
(事務局)上田環境庁環境保健部環境安全課長
 鏑木環境庁環境保健部環境安全課調整官
 照井通商産業省基礎産業局化学物質管理課長
 村上厚生省生活衛生局企画課生活化学安全対策室長 他

4.議  題

  (1)PRTR等対象化学物質選定の考え方について
  (2)その他

5.議  事

【事務局】 時間がまいりましたので、ただいまから中央環境審議会環境保健部会PRTR法対象物質専門委員会・生活環境審議会生活環境部会PRTR法対象化学物質専門委員会・化学品審議会安全対策部会化学物質管理促進法対象物質検討分科会の3委員会の第1回合同会合の開催をお願いしたいと存じます。私、環境庁環境安全課の課長補佐をしております早水と申します。本日につきましては、3省庁の事務局を代表しまして、私が冒頭の部分の進行を務めさせていただきます。
 なお、本日冒頭でテレビの頭撮りがございますので、御承知おき願いたいと思います。 まず最初に、本日第1回でございますので、私の方から本日御出席の委員の方々を御紹介させていただきます。お手元の議事次第の次に委員の名簿と座席表もお配りしていると思いますので、両方御覧いただきたいと思います。
 まず、各委員会の委員長の方々を御紹介いたします。中央環境審議会環境保健部会PRTR法対象物質専門委員会の鈴木委員長でございます。生活環境審議会生活環境部会PRTR法対象化学物質専門委員会の黒川委員長でございます。化学品審議会安全対策部会化学物質管理促進法対象物質検討分科会の中西分科会長でございます。
 次に各委員の御紹介をさせていただきます。座席順に、私の左手の先生から御紹介いたします。
                 (委員紹介)                 
 なお、本日は、中央環境審議会所属の岡田委員、北野委員、生活環境審議会所属の林眞委員、安田委員、化学品審議会所属の大前委員、田中委員、西原委員は御欠席と伺っております。
 それでは、合同部会の開催に当たりまして、まず環境庁環境保健部の上田環境安全課長より御挨拶申し上げます。
【上田環境庁環境安全課長】 環境庁環境保健部環境安全課長の上田でございます。本日は御多用のところ御出席いただきましてありがとうございます。
 環境庁、厚生省並びに通産省の審議会の専門委員会・分科会の合同会合の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。
 ダイオキシンや内分泌かく乱化学物質、いわゆる環境ホルモン問題を始めとして、化学物質による環境の汚染あるいは人の健康や生態系への影響に対する懸念が高まっている中で、「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」、いわゆるPRTR法がさきの国会で成立し、7月13日付けで公布されたところでございます。
 環境庁としましては、本法は、人の健康や生態系に有害なおそれのある物質を幅広く対象にして、化学物質の環境への排出量等の把握に関する措置、すなわちPRTRと、事業者による化学物質の性状及び取扱いに関する情報の提供に関する措置、すなわちMSDSの交付を義務付け、事業者による化学物質の管理の改善を促進し、化学物質に係る環境保全上の支障の未然防止を図ろうとするものでございます。この法律は、従来の環境規制法にない新しい考え方に基づくものでございまして、環境庁といたしましても、本法を積極的に活用いたしまして、化学物質に係る環境行政を今後も進展させていきたいと考えているところでございます。
 この法律に基づくPRTRとMSDSの対象物質の選定に当たりましては、本法第18条に「政令で定める審議会の意見を聴く」とされておりまして、7月28日に公布された政令で、環境庁の中央環境審議会、厚生省の生活環境審議会及び通産省の化学品審議会がその審議会となったところでございます。
 これを受けまして、9月10日付けで、内閣総理大臣、厚生大臣、通商産業大臣からそれぞれの審議会に対し、対象物質の選定に係る諮問が行われたところでございます。そして、それぞれの審議会において専門委員会あるいは分科会が設置されまして、本日の合同会合の開催に至っているところでございます。
 PRTR及びMSDSの対象物質は、いわば法律の根幹をなす大変重要なものでございます。本日は時間の許す限り専門的な立場から貴重な意見を賜りたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。
【事務局】 続きまして、通産省基礎産業局の照井化学物質管理課長より御挨拶申し上げます。
【照井通産省化学物質管理課長】 通産省で本件を担当しております基礎産業局の化学物質管理課の照井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【事務局】 最後に、厚生省生活衛生局の村上生活化学安全対策室長より御挨拶を申し上げます。
【村上厚生省生活化学安全対策室長】 厚生省で本件を担当しております生活化学安全対策室長の村上でございます。
 化学物質の毒性プロファイルはそれぞれ異なりますし、データの質も相当異なる中で、化学物質の評価を行うことは非常に大変なことだと思いますが、先生方のお力によりまして、どうかよろしく御審議をお願いしたいと思います。
【事務局】 それでは、審議に入ります前に、お手元にお配りした資料を確認させていただきます。
 議事次第の紙の下半分に資料一覧を付けておりますので、それも併せて御覧いただきたいと思います。
               (配付資料の確認)                
 何か不足のものがございましたら、お申し出いただきたいと思います。
 それでは、ただいまから開催をお願いしたいと思いますが、本日は、3つの委員会の合同会合でございますので、中央環境審議会環境保健部会PRTR法対象物質専門委員会の鈴木委員長、生活環境審議会生活環境部会PRTR法対象化学物質専門委員会の黒川委員長、化学品審議会安全対策部会化学物質管理促進法対象物質検討分科会の中西分科会長のお三方に共同座長をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
【鈴木委員長】 最初に3人が挨拶をせいという御命令があらかじめ下っておりましたので。鈴木でございます。物を決める集まりでございますけれども、できるだけ単純でわかりやすい決め方をしたいものだと思っております。
【黒川委員長】 私は厚生省の生活環境審議会の方の委員長をしておりまして、3人で座長を持ち回りということで、本来なら、鈴木先生にお任せしたいとさっき申し上げたのですが、そうもいかんということで、3度に1回ずつやらせていただきますので、よろしくお願いいたします。
【中西分科会長】 化学品審議会の方から参りました中西です。共同座長の一人としてこの仕事をしていきたいと思います。なるべく多くの人に化学物質のことを理解してもらって、みんなで化学物質を使っていける、そういうふうに利用していただければいいかなと思っています。よろしくお願いします。
【鈴木委員長】 それでは、本合同会合におきましては、黒川先生、中西先生と私の3人が共同座長ということですが、事前に合同会合の進め方について打ち合わせをいたしましたので、それを各先生に見ていただこうと思います。資料を配っていただけますか。
                 〔資料配付〕                 
【鈴木委員長】 専門委員会の名前と分科会の名前を読み上げていますと、極めて長い名前になりますので、それは省略して、「合同会合の進め方について(申し合わせ事項)」ということでいきます。
 この検討内容は、「9月10日付けで3審議会に対して諮問された『特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律第2条第2項に規定する第一種指定化学物質及び同条第3項に規定する第二種指定化学物質の指定』について、専門的見地から検討を行う。」ということであります。
 開催形式は、この3つの専門委員会と検討分科会の合同会合の形式をとって同時に開催する。ですから、この3つの専門委員会、検討分科会が一斉に同時に進行している、そう御理解いただきたいと思います。
 議事進行については、各委員会の委員長又は分科会長が、毎回交替で行うということにしたい。
 とりまとめは、検討結果については、各委員会及び分科会が所属の審議会の部会に対して報告を行うという形にしたい。それぞれ別個の審議会に上げていくということになります。
 合同会合の公開及び資料の公表でございますが、中央環境審議会、生活環境審議会及び化学品審議会における取扱いに準じ、以下のとおり行います。
 合同会合については原則として公開する。
 合同会合で使用された資料については原則として公表する。
 合同会合の議事録については、原則として発言者記名の上公表する。
 以上のことでございます。よろしくお願い申し上げます。
 以上のとおり進めたいということで、今日の進行役は私ということでございますので、よろしくお願い申し上げます。
 本日の議事につきましては、議事次第にありますように、(1)「PRTR等対象化学物質選定の考え方について」、(2)「その他」でありますが、(1)の議題に入ります前に、検討の前提となります法律の内容や諮問事項について、事務局から御説明下さい。
【事務局】 それでは、法律の内容と諮問事項などにつきまして御説明させていただきます。
 まず資料1−1でございますが、これが7月13日に公布されました「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」でございます。目次にありますように、第1章 総則、第2章が「第1種指定化学物質の排出量等の把握等」、これがいわゆるPRTRの措置に関する部分でございます。第3章が「指定化学物質等取扱事業者による情報の提供等」、これがMSDSの交付に関する部分でございます。第4章 雑則、それから罰則、附則となっております。
 まず、この法律の目的でございますが、ここに特徴が現れておりますので、御説明したいと思います。最初の2行は配慮事項でございますが、第1条で「環境の保全に係る化学物質の管理に関する国際的協調の動向に配慮しつつ、」ということでございます。これはPRTRがOECDの勧告あるいはアジェンダ21、そういった国際的な流れを受けて成り立っているということの一つの例としてここに書かせていただいております。また、MSDSにつきましても世界各国で取り入れられているということでございます。それから「化学物質に関する科学的知見及び化学物質の製造、使用その他の取扱いに関する状況を踏まえ、」ということで、こういったものに配慮するということ。その後に「事業者及び国民の理解の下に、」というフレーズがございます。この法律は従来の環境規制法と異なり、新しい考え方がいろいろ入っております。そういった意味もありまして、事業者の理解、国民の理解の下ということが非常に重要だということで、この目的に入っているわけでございます。次の2行が実際の中身でございますが、「特定の化学物質の環境への排出量等の把握に関する措置」、これがPRTRと呼ばれている排出量等の届出、集計、公表といったものでございます。それと「並びに事業者による特定の化学物質の性状及び取扱いに関する情報の提供に関する措置」、これがMSDSの交付を義務付ける措置でございます。「等を講ずることにより、」ということで、最後の2行がこの法律の真の目的の部分でございますが、「事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進し、環境の保全上の支障を未然に防止することを目的とする。」ということで、化学物質の管理、環境の保全上の支障の未然防止、この2つが目的になっているということでございます。
 第2条は、今日の審議に関わる部分でございますので、若干丁寧に御説明させていただきます。この対象化学物質の範囲でございます。
 まず第2条の1項は、化学物質の定義でございます。「元素及び化合物(それぞれ放射性物質を除く。)」となっております。これは従来の化学物質審査規制法(化審法)の定義とはちょっと異なっておりまして、労働安全衛生法と同じような定義になっております。すなわち、合成される化学物質だけではなくて、例えばダイオキシンのような非意図的に生成される化学物質、それから元素(金属元素のようなもの)、そういったものも含めてこの法律のスコープに入れているということでございます。この点をまず基本に置いていただきたいと思います。
 第2項ですが、「この法律において『第1種指定化学物質』とは、」とございます。これが後ほど申し上げますが、PRTRの対象となる物質であり、かつMSDSについても交付義務付けの対象となる物質でございます。「次の各号のいずれかに該当し、かつ、」の「次の各号のいずれか」というのが、いわゆる有害性に関する部分の記述でございまして、そちらをまず御説明いたしますと、第1号が「当該化学物質が人の健康を損なうおそれ又は動植物の生息若しくは生育に支障を及ぼすおそれがあるものであること。」。前半は、人の健康への影響ということでございますが、後段が、いわゆる生態系への影響というものも考慮して、そういった有害性も対象となっているということでございます。
 第2号は、「当該化学物質が前号に該当しない場合には、当該化学物質の自然的作用による化学的変化により容易に生成する化学物質が同号に該当する」。例えばA物質が環境中で容易に分解してB物質に変わって、B物質が問題があるという場合には、親であるA物質を指定するということでございます。
 第3号は、「当該化学物質がオゾン層を破壊し、太陽紫外放射の地表に到達する量を増加させることにより人の健康を損なうおそれがあるものであること。」、いわゆるオゾン層破壊化学物質を対象にするということを申し上げております。
 このような有害性を持つ物質について、戻りまして、2項の1行目の下の方ですが、「かつ、その有する物理的化学的性状、」、例えば分解性とか蒸気圧のようなもの、それから「その製造、輸入、使用又は生成の状況等からみて、」、生産量とか開放系用途であるとか、あるいは環境モニタリングなどで検出されているという状況、非意図的に生成されやすいといったような状況からみて、「相当広範な地域の環境において当該化学物質が継続して存すると認められる」、この部分は、一時的に外に排出されて一時的に存在するものは入らないですよということをうたっている、その裏返しで書いているというふうに御理解いただければと思います。この3行の部分を我々は「暴露性」あるいは「暴露可能性」と呼んでおりますけれども、有害性があり、このように環境に出て継続して存在すると認められる化学物質について政令で定めるということでございます。これがPRTRとMSDSの対象物質でございます。
 次の第3項は、3ページですが、第2種指定化学物質でございます。これはMSDSの交付のみの対象になる物質でございます。「前項各号のいずれかに該当し、」、すなわち有害性の部分については、第1種指定化学物質と同じ定義でございます。「かつ、」の後が変わっておりまして、「その有する物理的化学的性状からみて、その製造量、輸入量又は使用量の増加等により、相当広範な地域の環境において当該化学物質が継続して存することとなることが見込まれる」と、増加等により見込まれるということで、現在は生産量とか使用量が少ないようなものでも、将来増加することが見込まれるということで物質に選びますということを申し上げております。これについても政令で定めるということでございます。
 次の第4項も物質選定に関係がありますので御説明しますと、「前2項の政令は、環境の保全に係る化学物質の管理についての国際的動向、化学物質に関する科学的知見、化学物質の製造、使用その他の取扱いに関する状況等を踏まえ、」、この部分は目的に書いてあった記述と同じでございますが、「化学物質による環境の汚染により生ずる人の健康に係る被害並びに動植物の生息及び生育への支障が未然に防止されることとなるよう十分配慮して定める」。未然防止の観点で十分配慮して定めなさいという配慮事項がここに書かれております。この法律自身が、従来の規制法よりも幅広い物質を対象とするという考え方がうたわれているということでございます。
 第2条第5項は、PRTRの対象となる事業者でございますが、そこに1号、2号がございますが、その物質を製造していたり、あるいは使用していたりする事業者、それから事業活動に伴って付随的に物質を生成させるような者あるいは排出することが見込まれる者ということで、対象物質を取り扱っている方、そういった物質を排出させてしまうような方を業種、要件について政令で定めるということで、対象事業者を限定するわけでございます。第2条第5項がPRTRの義務付けがかかる対象事業者の規定でございます。
 第2条第6項は、MSDSの交付の義務付け並びに後で出てきます第3条の化学物質管理指針というものですが、それに留意して化学物質の管理をしてほしいという方々の対象事業者でございます。これは「前項各号のいずれかに該当する事業者」、前の号のいわゆるPRTR対象事業者はすべて入りますけれども、さらに第2種指定化学物質やそれを含む製品であって政令で定める要件に該当するものを使用する者その他業として第2種指定化学物質等を取り扱う者ということで、第1種と第2種指定化学物質と、それらを含む製品を取り扱う人は、ここでは業種とか要件を定めないことになっておりますが、MSDSの交付を義務づけられているということでございます。
 以上が、根幹に関わる部分でございます。
 次に、PRTR、MSDSを簡単に御説明するために、資料1−2を見ていただきたいと思います。
 一番最後の紙の上に物質のフロー図があると思います。PRTRの名称は、Pollutant Release and Transfer Register ということですが、Release は環境への排出でございまして、Transferというのは、廃棄物の処理に伴い事業場の外に移動する量ということでございます。
 具体的に申し上げますと、そこに事業所AとBがございますが、事業所Aが製造事業者であるとしますと、そこから排出されるものは「排出」となります。そこでつくられた化学物質を原材料として使用して別のものをつくる事業所Bあるいは製品をつくったり、その製品を使う事業者もいらっしゃいますけれども、そういったところでも化学物質は排出されます。そういった排出について届出をしていただくことになります。
 また、これらに伴いまして、廃棄物に含まれて、あるいは廃棄物の処理をするために事業場の外に移動するものが「移動量」ということで、ここの部分についても、排出に類似した行為ということになりますので、この移動量について届出をしていただくことになるということでございます。また、廃棄物の処理に伴って環境に排出されるものも「排出」ということになります。
 そのほか、製品となったものを、例えば我々消費者が家庭で使ったり、あるいは農地で使う。また、ガソリンを燃やすことによって自動車等によって出てくる排出もございます。そのような届出対象以外の排出量については、国の方で推計していくということになっております。
 それら対象化学物質の環境への排出量、これは大気、水、土壌のすべてについて、事業者からの届出、国における推計によって把握するということでございます。
 点線である原材料なり製品として出荷される部分の量は、移動量にはカウントしないという仕組みでございます。
 PRTRの仕組みについて、条文を全部御説明しますと長くなりますので、左側に簡単にフローチャートにまとめておりますので、御説明します。対象化学物質、対象事業者が政令で定められますと、対象事業者の方は、環境への排出量、移動量の届出をしていただきます。これは書面でもフロッピーでもインターネットでも構わないことになっております。この届出につきましては、都道府県知事経由で国に対して、具体的には事業所管大臣に対して届出をしていただきます。営業秘密情報がある場合には、事業所管大臣に直接届出をしていただくことになります。
 届け出されたデータは、事業所管大臣から環境庁、通産省に送付されまして、環境庁、通産省で電子ファイル化いたします。それを、まず左側にいきますが、先ほど申し上げました届出対象以外の排出量について国の方で推計いたしますが、これら2つをそれぞれ集計しまして、併せて公表するということになります。その結果を踏まえて、国の方で必要があれば、環境モニタリングなり健康影響などに関する調査を行います。
 ここまでがこの法律に書かれた行為でございまして、ここから先、もし対策などが必要だということであれば、この結果を踏まえて、例えば大気汚染防止法とか他の規制法で検討していただく。この法律はあくまで情報を提供するという法律でございます。
 届出データにつきましては、右側にありますように、個別の事業所のデータは都道府県知事にファイル化したものを送りますので、都道府県の方で地域のニーズに応じて集計・公表していただくことになります。これは「することができる」という規定になっております。
 それから、真ん中のラインでございますが、個別の事業所データがファイル化され、営業秘密情報については、物質分類名、例えばベンゼンなら芳香族炭化水素とか、そういう名前に置き換えてありますけれども、そういった個別事業所のデータについては、国民からの開示請求があれば、そのデータを開示するという仕組みになっております。
 このような行為を通じまして、事業者による化学物質の管理の改善の促進と環境の保全上の支障を未然に防止するということになるわけでございます。
 MSDSにつきましては、先生方の御専門の分野に近うございますのでよく御存じかと思いますが、3枚目の「諸外国におけるPRTR制度導入状況」の下に簡単にあります。製造者から流通を通して使用者(二次製造者等)、事業者から事業者に渡すための情報ということでございます。最終消費者にいくものではございません。その段階で、毒性等の性状、取扱いの注意とか、そういったものに関して情報を提供する仕組みがMSDSということでございます。
 PRTRの届出とMSDSの交付がこの法律で義務付けられておりまして、それに付随しまして、先ほど申し上げましたような、例えば国における調査の実施とか、これらを支援するために国や地方公共団体において、技術的助言をします、あるいは広報活動などを通じて国民の理解の増進を支援しますとか、そのための人材を養成しましょうとか、そういった支援措置が書かれております。
 また、対象事業者につきましては、先ほど説明を飛ばしましたが、第3条に「化学物質管理指針」を定めて、それに留意して化学物質の管理をきちっとやって下さいという責務が掲げられております。
 法律の全体の仕組みは大体以上でございます。
 そこで、この審議会で検討していただく事項でございますが、法律に戻っていただきまして、資料1−1の16ページでございますが、第18条に「内閣総理大臣、厚生大臣及び通商産業大臣は、第2条第2項(第1種指定化学物質)又は第3項(第2種指定化学物質)の政令の制定又は改正の立案をしようとするときは、あらかじめ、政令で定める審議会の意見を聴くものとする。」ということで、物質選定に当たりましては、政令で定める審議会の意見を聴くという規定がございます。
 これを受けまして、資料1−3でございますが、7月28日に公布された政令でございます。内閣総理大臣につきましては中央環境審議会、厚生大臣につきましては生活環境審議会、通商産業大臣につきましては化学品審議会、それぞれの審議会の意見を聴くということが定められたわけでございます。
 これを受けまして、資料1−4にいきますけれども、それぞれの大臣からそれぞれの審議会の会長への諮問がなされたわけでございます。また、審議会の中で、例えば、資料1−4の1枚目ですが、中央環境審議会につきましては、会長から環境保健部会長への付議がなされておりますし、厚生大臣からの諮問は自動的に生活環境部会での審議ということになるわけでございます。通商産業大臣につきましては、最後の紙ですが、化学品審議会に諮問がなされまして、そこから安全対策部会への付託がなされているわけでございます。それで、各部会におきまして、今日お集まりいただいております専門委員会の設置を決めていただいておりまして、本日の第1回の会合に至っているということでございます。
 長くなりましたが、以上、法律の説明、諮問の背景などの説明を終わらせていただきま
す。
【鈴木委員長】 ありがとうございました。
 なぜ我々がここにいるのかという理由を教えていただいたわけです。御質問等がございましたら御自由にお願いいたします。
【石井委員】 先ほど説明されました資料1−2の最後の図ですが、事業所Aから事業所B、事業所Bから消費者といいますか、この間は届出の対象外ということになるのでしょうか。
【事務局】 上のフローですね。原材料とか製品とかは環境に出ないということでございまして、製品として出荷する、流通させているものは、PRTRの届出の対象でないということでございます。
【石井委員】 これは化学物質全般を網羅している法律のようですが、既に化学物質については幾つか法律がございますが、他法令との関係はどういうことなるのでしょうか。
【鈴木委員長】 今の御質問は非常に範囲の広い御質問になってしまいますが。
【石井委員】 排出量という点で統計をとっているようなものは多分ないと思うのですが、既に化学物質については幾つか法律がありますけれども、その中に、統計をとっているような法律もあるかと思うのですが、そのあたりとはどういう関係になるのでしょうか。
【事務局】 従来の法律では、今先生の御指摘のように、化学物質の排出量について統計をとっているようなものは基本的にはないということで、例えば大気汚染防止法、水質汚濁防止法につきましても、排出基準の設定で濃度規制が中心でございます。量を届け出て下さいという仕組みは、一部ございますけれども、化学物質一般としてはないわけでございます。ただ、例えば地球温暖化の温室効果ガスのようなものは、温暖化対策法でそれに類似した仕組みがございまして、それにつきましては、この法律の対象物質の中には羅列はしておりません。一般的な意味で、例えば農取法、化審法、大防法、水濁法、そういったものとはこれは違う法律ということでございます。
【鈴木委員長】 今の件について何かございますか。
 御納得がいきましたか。
【石井委員】 排出に関してはほとんど統計をとってないと思いますので、そういう意味ではかなり網羅的といいますか、かなり幅広い法律ということで、わかりました。
【鈴木委員長】 ほかにございませんか。
 それでは先に進みまして、対象物質の選定の考え方について、事務局から御説明願います。
【事務局】 資料として御用意しておりますのは、資料2−1「PRTR及びMSDS対象化学物質の選定方針について(案)」と資料2−2「PRTR及びMSDS対象化学物質の具体的な選定基準(案)」でございます。資料2−1の方が大枠の考え方をお示ししたものでございまして、その考え方に則って更に詳しい具体的な選定基準の案として御用意したものが資料2−2という構成になっております。こちらの方を一通り説明させていただきたいと思います。
 まず資料2−1でございます。
             (資料2−1に基づき説明)              
 以上がPRTRとMSDS対象化学物質の選定方針の基本的な考え方でございます。
 続けて説明させていただきます。今の考え方に基づきまして、具体的な選定基準を案としてまとめてみたのが資料2−2でございます。
 具体的な選定基準(案)でございますが、まずT.有害性の範囲ということで、有害性の項目ごとに基準をクラス分けして考えようというものに対応するものでございます。
 先に申し上げておきますが、資料2−2でいろいろ専門的な機関あるいはクラスの分け方が書いてございますが、こちらは参考資料1「毒性情報の説明」にある程度詳しく解説が載っております。こちらの方は本日御説明はいたしませんが、適宜そちらの方を参照していただきたいと思います。
             (資料2−2に基づき説明)              
 長くなりましたが、以上でございます。
【鈴木委員長】 それでは早速御議論に移っていただきますが、まず最初に資料2−1、「PRTR及びMSDS対象化学物質の選定方針について(案)」から御議論をお願いしたいと思います。御質問・御意見等何なりとどうぞ。
【黒川委員長】 3ページの「有害性の分類の考え方」をぱっと読ませていただいて、無作用濃度(量)、つまりNOELでやるのでは、これは有害性ということとおかしな関係になると思っていたのですが、さっきの御説明ではNOAELでやるということですよね。【事務局】 基本的にはNOAELでやるということです。
【黒川委員長】 それで結構だと思いますが、今トキシコロジーの方では「無毒性量」という用語で統一しておりますので、「無作用量」「無影響量」はいわゆるNOELの方ですから、これはよく混同されるのですが、そうしていただかないと混乱しますので、よろしくお願いします。
【事務局】 そのように直したいと思います。
【黒川委員長】 どこか1ヵ所でもいいですから、NOAELというのを括弧して入れておいて下さい。
【中西分科会長】 3ページの「特殊毒性」というところに「感作性」というのが入っているのですが、特殊毒性として、発がん性、変異原性、生殖/発生毒性と一緒に感作性を並べていいのかどうか。これは医学のほうの方にお聞きしたいのですが、これは、環境が快適になるのを損なうというぐらいの意味の扱いにした方がいいのではないかという感じもするのですが、これは特殊毒性というふうに世の中で一般に言われているものでしょうか。
【池田委員】 たまたま同じ部分で疑念を持ちましたので。実は一般毒性、特殊毒性というのは古典的な分類で、多分もう言わないと思います。その意味では、修文になりますが、「一般毒性」「特殊毒性」という言葉は削ってしまって、ずっと追い込みで書いた方が今のようなポイントがカバーできると思います。
【宮本委員】 3ページの(ア)の「人の健康を損なうおそれに関する項目」を拝見していますと、「急性毒性」というのは入っておりませんけれども、これは何か理由があって抜いておられるのでしょうか。人の健康を損なうおそれということであれば、急性毒性も入ると考えたいのですが、いかがでしょうか。
【事務局】 急性毒性ですが、その少し上に「また、事故的な大量排出の際などでは問題となるが、通常の環境濃度レベルで問題とならない有害性については、物質選定に用いない」という考え方なんです。これはPRTRという制度の考え方に基づくと、通常の環境状態で排出されているものが問題であろうということで、こういった考え方を入れてございます。急性毒性については、物質によっては、発生源の周辺等で急性的な影響があるという可能性があるものもあるかと思いますが、一般的には急性毒性自体が通常の環境濃度レベルで問題になることは考えられないことの方が多いということで、選定のための具体的な項目からは外しているということでございます。
【宮本委員】 そういうことを言いだしましたら、例えば発がん性だって、レベルがうんと低ければ、現実には問題がないのではないかという考え方だってあるわけですね。だから、項目として急性毒性を今のような理由で外されるというのは、よくわからないのですが、ほかの先生方はいかがでしょうか。
【中杉委員】 私も毒性が専門でないので、こう考えていいのかどうかわからないのですが、法律の第2条、暴露可能性のところで、継続的に環境中に存在しているという話がございまして、それとの絡みでいったときに、急性毒性的な話が、継続的に環境中に存在することが問題で急性毒性という絡みで出てくるのかなというのが私もわからないところです。パイロット事業の物質を見ていても、塩化水素とかが入ってきて、そういうのはどういうふうに扱うのであろうかと、私も実際には判断に困っているところなんですが、そこら辺をどういうふうに考えたらいいのか。多分ここで急性毒性をあえて外してしまわなくても、上の部分の「通常の環境濃度レベルで問題とならない有害性については」ということで、自然と外れるという考え方もあるのかなとは思いますが。
【井上委員】 宮本委員の御質問と同じなんですが、私はやはり急性毒性は判断の一つの材料として用いた方がいいと考えます。急性毒性、つまりLD50とか、そういったものは化学物質の性質として理解するための指標であって、それでもって死ぬ量だから云々という毒性概念ではありませんので、非常に強いとか弱いけれども云々とか、材料としてそういうものを判断に用いるのは当然のことではないかと思います。
 同じような意味で、時代が時代ですから、OECDの動きなどから判断しても、神経毒性などについては特に注目する必要があるであろうというのが私の考えです。
【林(裕)委員】 一つお伺いしたいのは、第1種、第2種指定化学物質として選定されたものは、その後のデータによって変更される可能性はあるのでしょうか。例えば、ここで「広範な地域での継続的な存在」という場合、データが少ないと、やはり製造・輸入量で判断するわけですね。その後、一般環境での検出のデータが出てきて、それがないとした場合に、第1種を取り消すということがあり得るのか。逆に、全く問題ないものが、その後のデータで第1種あるいは第2種にするという可能性があるのかどうか。そういうことをお聞きしたいと思います。
【事務局】 まず、その点を先にお答えいたします。見直しというのは、毎年毎年やるかどうかはわかりませんけれども、何年かに1回定期的に見直しをして、有害性の評価が変わったもの、例えば生産・使用を中止してしまった、登録が外れてしまった農薬とか、そういったものは追加したり削除したりすることはあると考えております。これはあくまで現時点での考え方でございます。
【長谷川委員】 幾つか教えていただきたいのですが、3ページの上のところで「原則として国際的に信頼性の高い専門機関でデータの評価が行われている項目や、統一的な試験方法」ということで、ここの内容は、評価が行われている項目を対象とするというふうに受け取るとすると、3ページの下から2行目ですが、「項目毎に評価を行うこととし」と、要するに評価は一体どこで行われるのか。この文章を読みますと、ここで再評価を行うというふうに受け取れます。ただ、後で出てくるわけですが、後の説明を聞いていますと、一応ある程度公式の評価が行われた、その評価結果を採用するというふうに私は受け取れたのですが、その辺はいかがですか。
【事務局】 今、長谷川委員のおっしゃったとおりでございまして、下の方の「評価」というのは、項目毎に実際に評価されているデータを用いてクラス分けをするというような意味でして、再評価をするという意味ではございません。
【長谷川委員】 わかりました。もう一つは、先ほど黒川先生からお話があった、いわゆるNOAEL、無毒性量ということですが、多分、環境の方では生態毒性はNOAELではなくてNOELという表現を使っておられますよね。
【畠山委員】 NOECとLOECです。
【長谷川委員】 その辺ちょっと混乱があろうかと思いますので、混乱のないようにお願いしたいと思います。
 それから、毒性の分類を今クラス2とか3とかというふうに幾つかに分類されておりまして、ただ、最終的には、クラスの分類は関係なく、どこかに入っていれば採用するということだったと思うのですが、そうしますと、このクラスの分類はどういう目的なのか。あるいは、例えば発がん性に関しては、IARCで分類していることですから特段問題ないと思うのですが、それ以外のものをここで判断に関係なく分類してしまうと、逆に混乱が起きないかと思ったのですが。
【事務局】 御質問の点ですが、私どもの方で、有害性についてある一定のところで線を引くということになりますので、例えば、今日は案として、有害性について定量的なものを1、2、3と分けてお示ししております。その他のものも1、2、3と分けておりますが、これは物質のリストを出しまして、それで横並びとかをみる際に、何もなしで、シロかクロかだけで最初からみてしまいますと、どんな物質がどのレベルにあるのかがわからなくなってしまい、物質選定の作業上ちょっとやりにくくなるのではないかと思いまして、当初、作業する上では、一定のクラスを分けたもののリストで考えたいと思っているわけでございます。ですから、場合によっては、例えば、もうひとつ下のところまでみなきゃいけないものがひょっとしたらあるのかもしれないので、もしあれば御指摘いただければと思います。シロかクロかでいきなりやってしまいますと、最終的には選ばれたものはそうなるのですが、選ぶ過程までそれをやってしまいますと、判断が難しい点もあると思いますので、選考過程を明確にするために、一応こういう分け方をして、今後検討していただければということで考えたわけでございます。
【鈴木委員長】 先ほど宮本委員と井上委員から出た問題で、急性毒性をどう扱うかという話と、そのほかに、例えば神経毒性みたいなものをどうするのか、その問題は議論が残っていると思います。前段の急性毒性をどう扱うかに関しては、もう少し各委員から議論していただきたいと思いますが、後段の、例えば神経毒性云々の問題に関しては、確かに毒性の問題としては極めて重要なんですが、実際には物質を選定するための情報なんですね。そうすると、情報がないじゃないかと。例えば 1,000個なら 1,000個の化学物質のうち10個しかそれに関する情報がないようなものを使って物質の選定ができるか、そういう現実的な問題がありますから、そちら側は余りいろいろなものを取り上げるわけにはなかなかいかないだろう。ごく限られた、しかも何についても情報のあるようなものでやるしかないのではないか、そのような感じがしております。
 最初の急性毒性をどう扱うか。
【山本委員】 急性毒性に関しては、例えば毒劇法があると思うのですが、そういう他の法律との絡みはどういうふうになるでしょうか。
【事務局】 では、事務局の方でこの案を作る際に考えました、神経毒性と急性毒性の考え方を御説明を補足させていただきます。
 神経毒性につきましては、鈴木先生のおっしゃられたように、一般的に非常にたくさんデータがあるわけではないということで、項目としては挙げておりませんけれども、例えば、最近は経口慢性毒性といったところの中で神経毒性なども判断されているということを聞いておりますので、一般的な毒性の判断の中で神経毒性が出てくれば、それは全く排除するつもりはございませんで、神経毒性としてみられたもの、あるいは経口慢性毒性の中で神経の影響として出されているものの結果というのは、他の有害性と多分同じように使っていけるのではないかと思いますが、一般的に、例えば発がん性のように、どこかが評価していてたくさんデータがあるというものではないということで、ここに挙げておらないということでございます。ですから、これは我々としては排除しているつもりはないということでございます。
 急性毒性ですが、実はこの案を作るときに最初から非常に悩んでおった部分です。この制度と併せて考えた場合に、例えばOECDで今、急性毒性の分類とかもされておりますけれども、それから毒劇法がございます。ただ、これは化学物質一般の有害性として、確かに急性毒性、直接飲んだりしたりするときに問題がある性質ということで考えられるわけです。ですから、化学物質自体を分類する場合は、急性毒性は当然入ってくると思います。ただ、これはPRTRやMSDSの対象物質ですので、法律の目的にもありますように、環境を経由して、あるいは環境への排出、その排出量を報告してもらう物質を選ぶ、あるいは環境へ出たときに悪さをするような物質はなるべくきちっと管理をして下さいということで選ぶ物質、そういった物質でございます。
 PRTRの届出というのは、年に1回、年間の排出量を届け出ていただくという制度でございます。ですから、例えば急性毒性がよく問題になるとすれば、事故的にわっと出て、その時点で問題がある物質である。そうしますと、これはその場で即通報しなきゃいけない制度になりまして、大防法とか水濁法に入っている制度が多分これに該当しますけれども、そういった事故的な流出を考えた場合には、多分、環境経由の影響というものに急性毒性を入れる必要があるだろうと考えているわけでございます。ただ、PRTRにつきましては、事故的な部分を排除はしておりませんけれども、一般的に年間排出量を把握してもらって届出をしてもらうということをバックにした物質選定をするということですので、そういったものを考えるときに、急性毒性で物を選ぶという必要はないのではないかと考えたわけでございます。つまり通常蓄積される、あるいは通常の排出からの慢性的な影響を考慮するときに、急性毒性という毒性を考慮しないと物質が選べないということには多分ならない。一般的な慢性的な影響を主に考慮すればいいのではないかという考え方でこの選定項目からは外したわけでございます。
 もう一つ心配なのは、急性毒性はデータが非常にたくさんありまして、それでうまく物質を選んでこれるかということです。国際的な評価があるとか、ほかのものと若干違う部分もありますので、非常に膨大なデータから選ぶという作業が難しいのではないかと事務的には考えております。ただ、主な理由は、先ほど申し上げましたように、一般的な排出で問題になるということと急性毒性が必ずしも一致しないのではないかということで外したわけでございます。このあたりはなかなか難しい点でございまして、例えばシアンとか塩化水素はどうなのかという話がありますので、物によって場合によっては考慮しなきゃいけないこともあるかもしれませんけれども、ここに急性毒性という項目を書いて、それでデータを集めて線を引くということはしなくていいのではないかと事務局としては考えたわけでございます。
【鈴木委員長】 これはもう少し議論が要りそうな感じですね。
【事務局】 流通規制という意味では、毒物・劇物取締法という法律が既にございまして、劇物あるいは毒物に指定されたものについては、販売の記録も含めて相当厳しい規制が既にかかっております。毒劇法は、毒物・劇物を取り扱った人が直接的に急性毒性により被害を受けることを防止する目的でできておりますから、そういう意味で、急性毒性オンリーで物質を選定するというのは、基本的に毒劇法の法規制と重なってしまう部分が出てまいります。だから、先ほども御説明がありましたように、環境汚染という観点から急性毒性についても配慮しなければならないようなものが出てくれば、それは選定の際に御配慮いただければよろしいのではないかと思いますが、ただ、急性毒性だけでその物質の流通規制をすべきかどうかと考えるということであれば、このPRTR法ではなくて、毒物・劇物取締法という既に存在する法律がありますので、そちらの方でやっていただいた方が混乱が少ないと考えております。
【林(裕)委員】 急性毒性という概念は、今、村上さんの言われたような法律的な問題、今、環境庁の方が言われたような立場で考えますと、確かにそのとおりだと思うんです。ところが、今のトキシコロジーの立場からいいますと、必ずしも急性毒性というのはそういうものではないのです。短期間のエクスポージャーによる毒性のマニフェステーションを急性毒性といいますと、将来はいわゆる急性毒性だけでほとんどすべての毒性のプロファイルがわかってしまう、これがこれからのトキシコロジーなんです。そういう意味でいきますと、急性毒性を除くとちょっとおかしい。だから、アカデミアの立場からいいますと、急性毒性とか慢性毒性という名前自身がちょっとおかしいのかもしれないのですが、法規的な立場の取扱いと、トキシコロジー、アカデミアの立場からの取扱いはちょっと違うので、その取扱いを区別されるというならば、私はこれは外してもいいと思いますし、将来のことを考えますと、急性毒性を外すということは、禍根を残すのではないかということです。
【鈴木委員長】 私の言いたいことをある部分代弁していただきました。
 ほかにありませんか。
【中杉委員】 私は化学のといいますか、そちらの工学の立場からいいますと、急性毒性は確かに何らかの影響を総合的に表しているものだというふうに解釈した場合に、具体的に選ぶとしたら、ここでほかのものについては、吸入慢性毒性についてはNOAELみたいな形で選んでいて、それと対応するような尺度が引けるのだろうか。具体的に、例えばLD50を出したときに、どれ以上を選ぶクライテリアとするか、その辺がどういうふうな判断ができるのかというのは、私もわからないので、医学畑の先生方に教えていただければと思います。
【黒川委員長】 これは事務局でもよろしいのでしょうが、要するに、いわゆる毒劇法で、例えば急性経口が30であれば毒物、300以下であれば劇物というふうにちゃんとラベリングしてあるわけです。それが国際的なハーモナイゼーションをOECDでやろうと思っているのですが、まだ結論に達しないという非常に面倒くさいところではあります。
【中杉委員】 多分、厚生省の室長さんが言われたように、毒劇法の判断をここにすんなりもってくるという話でもないと思うんです。環境に出て汚染があって、毒劇法は、いろいろな意味での暴露形態を総合的に考えてやられている判断根拠だろうと思いますので、それが環境に直に絡んでくるのだろうかというのがちょっとわからない。毒劇法の判断をそのまま使っていいのかどうか。毒物あるいは劇物というクライテリアがありますけれども、では、仮に毒物をランク1にして、劇物をランク2とする、それで構わないかというところが、素人としては疑問を感じるところであります。
【井上委員】 やや繰り返しになるのですが、先ほど事務局の方のおっしゃった技術論的な問題で、私の立場からすると、急性毒性のデータを選定項目に入れると厄介だというお話が一番ネックになって説明がやりにくいのです。もちろん事務局の方はおわかりだろうと思うのですが、これはあくまでも化学物質の性質を知るための基礎だということだけははっきりしておきたいのです。ですから、いろいろ調べて、もちろんセレクションのプライマリーリストに急性毒性を使わなくてもいいのですが、急性毒性のデータがないと、先ほど長谷川委員がおっしゃったように、評価をするわけではないかもしれません。しかしながら、判断しなければならない局面のときに、急性毒性のデータがあるかないかというのは、その化学物質の生体影響をみるという意味においては毒性学的に非常にエッセンシャルなんです。これはアカデミアの側からみても、産業の側からみても、どこからみても、毒性学の根幹なんです。ですから、これをセレクションのためのプライマリーリストに使うかどうか、そういう技術的なことは私はわかりませんけれども、判断の基準には使わざるを得ないということが第1点です。
 もう1点は、発がん性等では実際に濃度が低い暴露があり得て、環境中での生体影響が実際にその濃度で関係する可能性があるという考え方がいろいろ出ているわけですが、発がん性も慢性毒性も急性毒性も、あらゆる今の毒性学というのは、基本的には高濃度からの類推をしているだけなんですね。それは直接外挿性があるという前提でやっていまして、実際の実験は極めて高濃度でやっているんです。その直接外挿性があるかないかということに疑問が持たれたからこそ、ここで除くのは大いに結構なんですが、エンドクライン・ディスラプターが問題になったわけです。で、低濃度は低濃度で独自にみておく必要がある物質が世の中にはあるのだということが話題になったわけですね。ですから、どっち道、高濃度で演繹しているんです。そういう意味では、急性毒性は高濃度で、慢性毒性は低濃度だというのは、多分それはNOELを出したときの計算上の問題だけなんですね。そういう意味では、毒性学的には、慢性毒性の方は環境暴露に直接近いから、ということには必ずしも当たらないのですね。
【事務局】 繰り返しになりますが、一つは、「環境を経由して」というところで我々は急性毒性あるいは爆発性というものは除外したわけですが、爆発性なり急性毒性というものはかなり濃度に依存する部分が多いと思うんです。例えば酸素でも100%になると、亜急性の毒性を起こしますし、炭酸ガスもそうですし、窒素もそうです。そういうものを全部リストアップしてしまうと、窒素とか炭酸ガスとか酸素を除外する理屈をまた考えなければいけない。恐らく慢性毒性で拾っていけば、急性毒性のあるものもかなり拾えるのではないかという観点もあって、とりあえず急性毒性をリストアップしたときに除外するのが大変だから、我々としては、一応ここでは取り上げないという観点に立って、もう一つは、環境を介した毒性ということに着目して慢性的な影響をみる、このような観点から整理しております。ですから、急性毒性を入れる入れないという議論については、一つは作業上の手間の問題、それから、環境を経由するという法律の趣旨に依存している問題だと、そのように御理解いただいて、どうしてもこれはこの法律の性格上、急性毒性の観点から入れるべきだということがあれば、それは別途個別に議論してもいい問題ではないかと思います。
 ただ、急性毒性という概念について、毒性学的な議論がいろいろあると思いますが、亜急性だ、急性だ、慢性だと、そこに立ち返ってしまうと、我々としては物質の選定は困難になってしまうということで、一応このカテゴリーで御検討いただいて、なお急性毒性でこれは環境上の問題があるのだ、急性毒性しか拾えないということであれば、それは別途考慮してもいいのではないかと存じます。
【鈴木委員長】 現実に作業をしてリストに載っかってこなかったものの中で、極めて急性毒性のきついものが落ちているではありませんか、というような出来事はどのくらい起こるのか、そういう問題でもあるんですね。だから、やってみないとわかりにくい部分もあるのですが、トライアルで物を選んでいくプロセスの中で、急性毒性がどんなことになるのかというのを知りたいですね。それがわからないとそう簡単に判断できない。理屈の上での判断を一生懸命やるだけでは済まないのではないか。
 ほかにありませんか。
【黒川委員長】 諸外国のリストに600とか300とか書いてありますね。そっちからみると急性毒性はどうなんですか。
【事務局】 アメリカが600、他の国は200弱のところが多いですが、急性毒性を考慮している国もありますし、していないところもあります。そういう状況です。
【櫻井委員】 急性毒性、致死量あるいは致死濃度の情報は非常に多いわけで、それともう一つ、致死濃度あるいは致死量と例えば許容濃度との間に相関があるという情報もあるので、これは当然のことだと思いますが、相関は必ず存在するのです。ただ、分布の幅は随分大きくなってしまいますね。ですから、もし急性濃度だけを重要視して選択したとしますと、比較的慢性の低濃度暴露を念頭に置いたときには、ちょっとノイズになってしまう可能性が大きい。ですから、私どもが選ぼうとしているのは、何千種も物質を選ぶのではなくて、ある程度限定された化学物質をまず選んで仕事を始めようとしているときには、慢性毒性を中心として選んだ方が適切な判断になる可能性が強いと思います。ただ、急性毒性を全くみないということではなくて、一方、生産量が比較的多いもので今度落ちたものの中で急性毒性が強いものがあるかどうかというような形でチェックして、個別に判断したらどうかと思うのが一つ。それはPRTRの方です。
 MSDSも似たようなことでいいのではないか。労働省の方のMSDSですと、例えば急性毒性も重要視した方がいいと思いますが、それとは別に動くわけですから、PRTRとMSDSは同じような考え方で、急性毒性は当然チェックはするけれども、最初それを網羅的に調べる必要はないのではないかというのが私の意見です。
【鈴木委員長】 大体、今の櫻井さんの意見で落ち着くところに落ち着いてきたような気がするのですが、今の段階では、急性毒性に関する情報についてどう扱うかを決定するのではなしに、それを参考にしながら考えていく。骨格としては、事務局提案の骨格で作業は進めるけれども、急性毒性情報について注意深く検討してみて下さい、こういう形でとりあえずはよろしいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
【池田委員】 繰り返しいろいろな方から指摘が既にあると思うのですが、この部分だけで議論すると空論になると思います。全体の決定のメカニズムの中でどう位置付けていくかを考える必要があると思います。
【中杉委員】 参考資料3「PRTRパイロット事業対象化学物質」というのがございますが、その中で、これは入るべきなのか、入るべきでないかと私が悩んでいるのが幾つかありまして、塩化水素、塩素、フッ化水素、フッ素という類のものなんです。こういうものが確かに一つの例としては一番いいだろう。慢性毒性よりは、むしろ急性毒性的な意味合いなのかと思っているのですが、こういうものが、PRTRの排出量を報告させるべきかどうかという判断で、鈴木委員長が言われた、どんなものが落ちるだろうかという意味では、一つの例示として考えていただければと思います。
【長谷川委員】 今、記載上の問題が出たものですから、「吸入慢性毒性」「経口慢性毒性」という用語について、これがこのまま残ってしまうと、ひょっとしたら具合が悪いのではないか。すなわち、「慢性」という定義のこともあるのですが、現在かなり一般的に「反復投与毒性」という用語を使っています。どうしてかというと、この後、例が出ている中に、WHOとか日本の水道水の水質基準から引っ張ってきている例があるわけですが、現実にTDIを決めるベースが3ヵ月の試験というようなケースが幾つかあるはずです。一方、これは新規にしても既存化学物質を対象にしても、例えば日本はOECDのコンバインドスタディで45日間くらいの反復投与のデータを持っている。しかも新規の方は28日間の試験をやっている。「慢性毒性」という用語をこのままぽんと残してしまうと、そのクラスのデータでは一切判断材料にならないという印象を残してしまうので、この辺は検討された方がいいのではないかと思います。
【鈴木委員長】 急性、慢性という用語自身が今問題なわけですから、長期間の繰り返し投与みたいなものをはっきり条件として書くかどうかみたいな話になるわけですね。ここに書いてある「吸入慢性毒性」「経口慢性毒性」というのが実際にはどんな試験の条件下でなされた情報を考えているのかというのが問題なわけですね。これは事務局で検討していただく課題になるでしょう。
 資料2−1に関してほかに何かございますか。
【若林委員】 生態毒性の視点からみますと、初めてこういう法律で生態毒性が位置付けられたという点で、他の法律でカバーできるということは多分ないと思います。この法律で、有害性評価と暴露評価をして、両方からみて問題だというものを拾っているということで、その場合の暴露可能性のところでこの形でいいのかということについて意見を述べさせていただきたいと思います。
 一つは生産量の話と、もう一つは、黒本ということで、10年間でということが書かれていますが、黒本で対象としている物質というのは、多分ある程度限られていると思われることが一つ。
 それと、検出されるということが結局、定量下限との関係が非常にありまして、定量下限が高ければ検出されないということになると思います。あと、特に生物でモニタリングされているものは非常に少ないということを考えますと、別の委員会で生態リスク評価をやっておりますけれども、実際には有害性からみて、今の検出レベルでは評価できないというものが結構出てきております。その場合にそれを補完して、大事なものを見落とす危険がないかということですが、そのとき一つとしては、例えば生物分解性が非常に低くて濃縮性が高いものを拾うシステムを作っておく必要があるのか。あるいは有害性評価で非常に有害性が高いもので黒本にないものは、環境庁が責任をもってその後モニタリングをして、さっき委員のどなたかがおっしゃったように、その時点で追加していくというシステムを組み込まれるか、いずれかの形で大事なものが抜け落ちないような工夫をしていったらどうかと思います。
 それと、細かい話ですが、1ページのAの「当該化学物質の自然的作用による化学的変化により」というところは、多分、生分解を含まないという意味だと思いますけれども、「物理化学」と入れられるか、「非生物的な分解」とか、そういうふうに書かれた方がよろしいのではないかと思いました。
【鈴木委員長】 今の後の方の御指摘は、法律の条文に関わっていますので、今からは手のつけようがない。前の方の話について、事務局、何かありますか。
【事務局】 環境モニタリングにつきましては、確かに検出限界の問題とかもあり、物質が限られているという問題がございます。ですから、拾う方はとにかく間違いなく、今までやっているデータを使いましょうということです。確かに検出限界が高くて拾ってないものもあるかもしれませんが、とにかく拾えているものは拾いましょうという考え方でございます。ですから、将来、今先生御指摘のように、ここで例えば予備軍みたいなリストもあって、有害性が高くても、今モニタリング結果がないから、モニタリングをした方がいいという判断があれば、それはそちらの方でモニタリングをしたりして、将来追加するということは当然あり得ると思います。また、そういう物質は基本的には生産量が多いか少ないかという方で相当引っかかってくるのではないかと期待しておりますが、いずれにしても、そのあたりは個別に物質リストを見ながら判断することになると思います。将来的な追加というのは、データがそろってきたものについては考慮するということでございます。
【池田委員】 今の若林先生の論点と近いのですが、文献調査を取り込むとしますと、データベースがオープンになりますから、作業がやりにくいということがあるかもしれません。ある一定の物質の選定が行われた段階で、だけどこれには環境データがないというときに、文献調査の対象にして判断していくことができる。全部のロジックの中で、黒本だけを環境検出のデータベースにするというのは、ちょっと小さすぎるのではないか。優れたデータベースでありますけれども、なおデータベースとして十分な大きさを持っていないのではないか。その点で私も若林先生の意見に同意します。
【鈴木委員長】 おっしゃるとおりだと思います。別に何の異存もないのですが、ただ、今日の会議の主眼は、物を選定する作業に今いるわけで、選定した後、全体のシステムをどう組んでいくかという問題は、多分その次のステップになるのだろうと思います。そこについて事務局が何か勇み足をして書いているような部分もないわけではないのですが、何か言いたいことがありますか。
【事務局】 モニタリングデータにつきましては、これだけに限らず、有害性のデータについてもそうだと思いますが、御指摘のように、幅広く情報を検索してやるのがいいと思いますけれども、時間的制約などもあり、現時点で使える情報として評価済みのデータを使いましょうということで、あくまでこれらをとってきたということです。ですから、将来的にデータベースをもっと充実して、その結果をみて再度物質を選び直すということは当然あり得ると考えております。現時点で、モニタリングのデータをとるために文献サーベイをかけるというのは、ちょっと難しいかと考えております。
【中杉委員】 今の御議論と先ほど林先生が最初の方で言われたこととの絡みで、これは当たり前だろうと思うのですが確認なんですが、今回の物質選定の基本的考え方というのは、あくまでも今回である。これはどこかに入れておいた方がいいのではないか。なぜそんなことを申し上げるかというと、排出量は、今は情報がわからないよということで、この選定の考え方の中に入れていないわけですね。蓄積された後で見直しをする段階では、当然のことながら、排出量の報告実績をどう考えるかということが当然入ってこないとおかしいはずだろうと思うんです。そういう意味でいくと、この考え方はあくまでも、とりあえず今回の最初の物質選定、今の作業についての考え方である、そう考えた方がよろしいのではないかと思いますが。
【事務局】 今の話は、資料2−1の2ページの上の方に明確に書いてあります。「対象物質は、科学的知見の充実状況及び排出量データの把握の状況等に応じて定期的に見直しを行う」と。
【中杉委員】 「見直しを行う」というのは、確かに書いてあるのですが、どういう方法でやるかというのが全く書いていないので、この見直しの考え方というのは、あくまでも今回の考え方ではないだろうか。当然そこは次回の見直しのときには違ってくるのではないだろうか。そこが書いていないものですから気になったということです。
【清水委員】 構造活性相関について余り触れてないのですが、例えば動物のデータが余りなくても、ある程度構造活性相関から予測される場合、それも選定の対象として考えてよろしいのでしょうか。
【事務局】 今回は考えておりません。将来的にはあり得るかもしれませんが、今のところ、構造活性相関でいろいろな判定をしたりすることは、一部、例えばlog Powとか、蓄積性の関係とかやっているケースもありますけれども、今回の物質選定では考慮しておりません。
【宮本委員】 「その他の留意事項」というところに幾つかのことが書いてあるのですが、当然、と言っては失礼かもしれませんが、時間的に随分急いでこの作業をおやりになったので、そういう意味では、選定のときに中身をもう少し詰めていただきたいと思うことがありますので、一つ二つ申し上げたいと思います。
 例えば、(2)の「『分解性』に関しては、」というところで、「環境中に排出された直後に(加水分解等により)」、「等」は、ほかにいろいろなファクターがあるというのはよろしいのですが、「直後」というのは、何をもって直後とするのか。
 (3)で、bioaccmulationばかりに着目するというのが我が国の傾向なんですが、実はbioaccmulationが問題ではなくて、たまったものがどういうふうにbioavailableなのかというのが問題なわけで、そういった観点をこれから細かくみていただくと大変ありがたいと思います。
 同様に、今QSARの話が出ました。私も現状では構造活性相関のデータをうっかり使うと危ないと思います。にもかかわらず、このページの下から4行目に「類似の構造」とありますが、何を称して類似の構造というのかということも、例えば有機燐化合物と遅延性神経毒性なんて構造がちょっと違っただけであったりなかったりということは古典的な例としてありますので、類似の構造であるかどうかということを見定めるのはかなり難しいのではないかと思います。その点、慎重におやりいただくようにお願いしたいと思います。
【鈴木委員長】 ありがとうございました。気をつけてリバイスしなきゃいけない部分だろうと思います。
 それでは、資料2−2に関して御議論いただきたいと思います。
【石井委員】 資料2−1と2−2両方に関係するのですが、これがいいかどうかは別として、有害性をランクに分けてやることについては賛成なんですが、環境へのリスクというのは、有害性と暴露と時間という3つのパラメータがあると思うんです。この結合のさせ方は、この文章を読んでいると、足し算をするのかなと、そういう計算方式をアルゴリズムでやっているのかなというふうにとれたのですが、これは事務局に尋ねるというより、委員全体の合意事項かもしれませんが、ここら辺はどう考えたらよろしいでしょうか。
【事務局】 有害性については、それぞれの項目を独立して考える。それで、それぞれの項目についてある一定以上のものを有害性があると判断する。その一方で、暴露性があるかないかを生産量なり検出状況で判断する。この両方を満たすものを選定する、こういう考え方でございます。
【石井委員】 そのとおりなんです。それはどういう関数で表されますかということです。もう少し言いますと、リスクというのは、有害性と暴露と時間軸の3つのパラメータがあるわけです。この法律にもそう書いてあるし、あなた方の説明もそうなっている。では、その3つのパラメータはどういう関数になりますかと聞いているんです。
【鈴木委員長】 質問がいささか不親切だと思いますので、もう少し具体的におっしゃって下さい。
【石井委員】 リスクの計算のやり方としては、例えば3つのパラメータがあった場合、加算性というやり方が一つありますね。それから、掛け算をするという考え方。それから、例えば、時間軸を入れると難しくなるのですが、ベクトル計算というやり方もあります。例えば、どうなるかといいますと、時間軸を入れると私も偉そうなことは言えませんので、もっとやさしく言いますが、暴露と有害性だけでいきますと、加算性をとりますと、散布図を描いてみますと、等高線は右下がりの直線になります。掛け算をしますと、多分双曲線になります。ベクトルをとりますと、円形になります。今おっしゃったのは、別々に分けて、リスクを2つのパラメータでやるのだというのはいいんです。だけど、例えば暴露が大きければ、有害性が小さくても問題だし、有害性が大きい場合は、暴露が小さくても問題だし、そこをどうしたらよろしいでしょうか、その辺の考え方なんです。
【中西分科会長】 必ずしもよく理解していないところがあるかもしれませんが、基本的にはリスクというのは暴露量×毒性の大きさで決まるわけですね。ただし、ここでは暴露量が正確にはつかめないので、暴露量の代わりに生産量をもってきて、生産量と毒性を掛け合わせたものが一定のもの以上になるものを一応リストアップしましょう。しかし、それは必ずしもそれでリスク計算をできるというものではなくて、リスク計算自体はもっと個々別々のところで必要があれば、本当の暴露量ともっと詳細な毒性値を使いながらやっていくものだと思うんです。ここではともかくリストを作るためなので、一応、生産量×毒性の大きさがあるところ以上になっているものを対象にしましょうということです。時間軸については、ここでは一応暴露の時間としては無限大を考えているのですが、暴露量の変化という時間軸をとっていて、今少なくても、将来可能性のあるものについては、MSDSの方で対応しましょう、そういうような構造になっているのかと思います。お答えになっていないかもしれません。
【石井委員】 確かに評価の有害性と暴露についてはスコア化されておりますので、その結果から得られるリスクは本当のリスクではなくて、いわゆるスコアなんですね。ですから、本当のリスクとは、ある関係はあるかもしれないけれども、直接的にどんな関係があるかはよくわかりません。ですから、先生のおっしゃるとおりだと思います。ただ、そうすると、掛け算的な考え方を考えてよろしいのでしょうかね。
【中西分科会長】 そうですね。
【鈴木委員長】 ちょっと異存があるんです。作業は、リスクアセスメントをやっているのではありません。要するに、物を選ぶための基準づくりをやっているだけで、そこでは暴露量と、ここで有害性といっている毒性情報との関連は、別に掛け算でも何でもないんです。相互に独立した情報をひっかけているわけですから、それを間違えないでほしいと思います。
【池田委員】 非常に乱暴な言い方かもしれませんが、例えばx軸に毒性のスコアをとり、y軸に暴露の適当な指標をとって、そのそれぞれのあるレベル以上に達したものが、PRTRの対象と考え、その部分でもう少し軸を弱めたもの、特に暴露の側で軸を弱めたものが、PRTRにはならないけれども、MSDSの対象になる。私はそんな理解をしていますが。
【鈴木委員長】 ここでx軸とy軸が直行しているわけでも何でもないんですよ。
【池田委員】 勿論そうです。
【事務局】 掛け算か足し算かというお話がありましたが、ここで見ていただくと、発がん性と生殖毒性については定性的なもので拾って、あとは定量的なもので拾う。ただ、定量的なものについては、なかなかレベル合わせが難しく、結局、定量的なものを定性的なものに置き換えているということになります。ですから、定量的な掛け算をして一定のリスクという形のところで切るわけにはなかなかいかないという現状があります。法律の枠組みも、暴露可能性と毒性の両方の面からみなさいと書いてあるので、その両面からみているというだけであって、掛け算をしたものがきちっとすべてのものがここで一つの統一のラインから上にあるというにはなかなかいかない。そこは定量的なものを定性的なものとして擬似的に運用している、そういうふうに御理解いただきたいと思います。
【鈴木委員長】 資料2−2に関してほかにありませんか。
【中杉委員】 11ページの年間の製造・輸入量の扱いのところで、農薬については明らかに開放系である、これは確かにそのとおりであろうと思うのですが、農薬以外の化学物質についても、そういうものがわかるのかどうかわかりませんけれども、明らかに環境へ放出しやすいというものが用途から考えてあるとした場合、それはどうするかというのは一つの議論としてはあると思うんです。そんなものが現実問題としてわかるのかという議論はありますけれども。これですと、農薬でもすぽんと化学物質の種類で切ってしまっていますので、そこら辺はちょっと気になります。そういうものがあるのかどうかというと、そういう情報が得られるかどうかということと、もう一つは時間的な制約の問題がありますが、ここでは門前払いになってしまっているのがちょっと気になるということです。
【事務局】 農薬に限定をかけているつもりではないですが、農薬以外でももちろんそういうことが明確であれば、入ってくると考えております。
【林(裕)委員】 発がん性の分類は、これで大体よろしいと思うのですが、例外があり得るということを考えていただきたい。例えば、IARCで1、人発がん性があるということは、疫学的情報が十分にあるということですね。これは逆にいいますと、人におけるその物質への暴露経験が十分にあるということですね。ですから、例えば、実際問題として、IARCで1で一番多いのは医薬品なんです。余り強くない医薬品が1に分類されていることが多い。だから、本当言いますと、2Aの中には、リスクから考えれば、1よりも強いものもあり得るわけです。そういう意味で、大体この分類でいいのですが、ただ、2Aの中には1に分類されてもしかるべきものもあるというようなことを、ケース・バイ・ケースで考慮するという配慮も必要ではないか。
【櫻井委員】 7ページあたりの「作業環境許容濃度から得られる吸入慢性毒性情報」というところですが、考え方はこれで基本的にはいいと思っておりますが、今、林先生も御指摘になられたように、かなり大胆な割り切りですべてこれを分類しようとしておりますので、実際に分類してみると、いろいろと整合性が欠けるという面が出てくると思いますので、それは調整する必要があると思います。
 7ページの表4について一つ例を挙げますと、これも後で調整すればいいのだろうと思うのですが、ACGIH又は日本産業衛生学会のTWAで1、10、100となっております。これは蒸気とかガスの場合には全く問題ないと思いますが、粒子状のものについては、勧告されている数値が10mg/m3 が最大なんですね。その中には蔗糖とかでん粉なども入っているんです。そういうところの問題が一つございます。ですから、個別にみて、10mg/m3 というのは最大値なので、一つの目安として、毒性がそれよりもはるかに低いものもそういう数値を勧告しているものがあるということ。
 もう一つは、粒子状では存在しにくいんです。固体あるいはミストもそうですが。そうしますと、もし吸入だけを考えるならば、蒸気とかガスと粒子状のものは分けて、つまり暴露可能性ははるかに粒子状のものの方が小さい。1オーダー又は2オーダー下げるということでもないと整合性がとれないとは思うんです。ただ、例えば金属などもみんな粒子状のものに入るわけですが、そういうものは全部、PRTRでは、大気だけでなくて、水質とかほかのことも考えているわけですので、一概に簡単に処理できない。つまり許容濃度の方では、もう一つ吸入の毒性として示しているけれども、それ以外に、もし経口的にとった場合には毒性はそれほど大きくないというようなものが粒子状のものでかなり勧告されているものもあるわけです。そうすると、整合性がまたとれてこなくなる。いろいろなファクターがありますので、注意しなければいけないと思っております。
【鈴木委員長】 フットノートに、粒子状物質の場合には、要注意というのを入れておかなきゃいけない。
【若林委員】 9ページの「生態毒性」のところを見ていただきたいのですが、人の健康影響と異なりまして、生態毒性の場合には種による感受性の差が非常に大きいということが問題になると思います。ここでは、生態毒性は3種の生物を用いてOECDではやっているという書き方がされていますが、生態毒性といいますと、例えば、OECDでもミミズとか陸上生物、鳥、そういうものについても当然入っていますので、あえて現段階では水系の生物に限定して考えるという記述を入れていただけたらということ。
 それから、最低3種で評価しているというのが現状だと思います。少なくとも3種を使いなさいということなので、3種で足りるというように読めてしまうところがありますので。また、実際に評価する場合に、できれば3種に対する毒性をそろえていただきたいという気がします。特に藻類だけしかデータがないものなどで評価しますと、毒性を弱く評価してしまう場合もありますので、そのあたりについて御配慮願いたいと思います。
【畠山委員】 生態毒性の関連で、10ページの表7ですが、これは2クラスで表現していまして、かなりすっきりして作業がやりやすいとは思うのですが、他の表と並ぶわけではないですけれども、例えば10で切ってしまいますと、20のようなものがあって、それが環境中に大量に出て分解とかすると、いろいろな問題が生じる場合もありますので、原則的にはクラス2で選定するとしても、留意事項のような観点から、問題になる物質はやはり選定の対象に入れていくべきですから、ここは表現上としてももう一つクラス3というのを入れまして、一桁あげた数値を入れておいた方が理解されやすいと思います。
【事務局】 今の御指摘の点は、一桁下まで例えばリストは次回のときに御用意して、その中で、例えば蓄積性が多いものとかをピックアップしたい、そういう御指摘と理解してよろしいですか。
【畠山委員】 はい。
【事務局】 では、このワンランク下ぐらいまでもリストとしては用意してみることにします。
 若林先生の御指摘を確認したいのですが、3種類そろっているデータに限ってしまうと、非常にデータが限られることもあると思うのですが、それは例えば1種類のデータは判断しないという意味ではないですね。3種類そろってなきゃ選定できないという意味という御指摘ではなくて、データを見てみないとわかりませんが、環境庁の実験結果は基本的に3種類全部そろっておりますけれども、例えばECETOCのデータで1種類しかないものでも、その値で判断に使ってもよろしいということですか。
【若林委員】 それは仕方ないですね。順次データをそろえるようなシステムをつくっていただきたいということです。
【内山委員】 先ほど櫻井先生が作業環境濃度のところでおっしゃいましたが、5ページの大気の吸入も、これは主にガス状物質の計算式を考えていらっしゃるのだろうと思うので、粒子状物質あるいはエアロゾルで存在する場合には、この式に当てはめますと、違ってくると思いますので、ここは分けていただきたい。
 あと、複合媒体ということで、データのあるものは、経口、経皮あるいは吸入というものを合計しないと、有害大気汚染物質対策の場合は、複合媒体で取り入れる量を総合的に総摂取量と考えていますので、ここは経気道だけで切ると、落ちてくる可能性もあるかもしれません。
【鈴木委員長】 いろいろ御注意をいただきましてありがとうございました。
 今日たくさんのコメントがつきましたので、事務局はどう手直しするか、あるいは留意事項に書き込まなきゃならないことがいっぱいできたのかもしれませんけれども、その辺を配慮した上で作業を進めるだろうと思います。
 次回の委員会までには、そのような訂正を含めて具体的な物質の選定作業を進めていくということでよろしゅうございましょうか。
                 (異議なし)                 
【鈴木委員長】 ありがとうございました。それでは、事務局は、次回までに物質の選定作業と本日の方針、基準についての手直しなり補足なりをなさった上でお出しいただきたいと思います。
 議題2の「その他」について何かございますか。
【事務局】 今日は本当にお忙しいところ活発な御議論いただきましてありがとうございました。
 御指摘の点を踏まえまして、次回資料を用意させていただきます。今日いただいた御指摘を取り込んだ形でこの考え方を修正した形でリストを出したいと思います。例えば、定量的なものについて、先ほどは生態影響の部分しか申し上げませんでしたが、人の影響の方ももし可能でしたら、クラス一つ下ぐらいまでもリストとしてはできるだけ用意したいと思っております。
 次回ですが、既に各委員の日程をお伺いしておりまして、11月4日(木)の午後ということでお願いしたいと思います。場所はまだ決まっておりませんので、決まりましたら御連絡を差し上げます。
【鈴木委員長】 それでは、今日はこれで終わりにいたします。どうもありがとうございました。
                                  −−了−−