中央環境審議会第15回環境保健部会議事要旨



<日 時>平成10年11月30日 10:00〜12:00
<場 所>東條会館本館「シルバーの間」


<中間答申案の審議>

(井形部会長)
11月24日に、通産省化学品審議会安全対策部会・リスク管理部会合同部会部会長の近藤委員と大阪で話し合いを行ったので、その概略を報告する。まず、わが国において環境汚染物質排出移動登録の導入が必要であることは一致した。それぞれの別の立場から諮問を受けており細かな点で立場は異なるが、お互い協力していこうということで、話し合いの結果を各部会に報告することとなった。

(近藤委員)
 井形部会長から報告のあったとおりで、基本的な考え方は一致したということ。ただ、若干の意見の違いがあったので、法制化する際に関係省庁間で十分調整していってほしい。化学品審議会においては12月24日に報告するつもり。

《保健企画課長より名称についての説明》
  PRTRの名称については、検討したが、これに変わる良い案もなく、特に変更しないほうが良いのではないかという判断である。

《環境安全課長より「国民意見の状況」、「中間答申案」の概要を説明、続いて事務局から中間答申案の全文を朗読》

・ PRTRの用語であるが、法律上どのように明記するのか。「環境汚染物質排出移動登録」とするのか。
→もちろん「PRTR」の言葉自体をそのまま法律上使用することは不可能と思うが、
"Pollutant Release and Transfer Register"の訳である「環境汚染物質排出移動登録」を法律になじむ形とすることを考えている。

・2−1「PRTR導入の背景」の中で、リオ宣言第15原則である、いわゆる予防原則についての言及がない。規制的手法のなじまない物質について未然に予防する観点は、PRTR導入の背景として最も重要な考え方ではないか。
→2−1については、PRTRの導入に至る経緯をなぞったもの。ご指摘の点は、1−4
「今後の化学物質対策の基本的な方針」の@の中で、「人の健康及び生態系への影響を未然に防止するため、有害性がある化学物質による環境への負荷を可能な限り低減すべき」としている。

・中間報告を英語に訳した場合、"precautionary method"との言葉は含まれなくなるのではないか。
→1−2「今日の化学物質問題と環境保全上の課題」においても「規制的手法以外の多様な対策手法があれば、・・・未然防止の観点から環境への負荷の低減を図る上で、効果的かつ効率的であろう。」としており、報告書全体で未然防止対策が重要という考え方を示している。

・予防原則については重要。2−1「PRTR導入の背景」ではなく、「おわりに」の4段落目に、「予防原則に立って、早急に我が国にふさわしいPRTRの法制化が図られることを希望する。」とするのも一つの案。

・中間報告案はよくまとまっている。3−2「PRTR実施に関する考え方」の中で、「事業者が電子媒体によっても報告できるよう配慮すべき」「集計情報の公表においても電子情報システムの活用によって利用者が容易に入手し得る仕組みとすべき」とされているのは評価できる。しかし、報告を電子媒体で行う際のセキュリティの確保に十分注意する必要があるのではないか。細かい内容なので本文には明記する必要はないとは思うが。

・先程の委員の発言も含め、委員の発言については議事録に記載があれば法律作成の過程で留意していただけるものと考えている。
 2−2「PRTRに期待される多面的な意義」にあるように、環境保全対策の一環としてPRTRを行うことが大切である。
 一つ気になったことは、「おわりに」の最後において、「常により一層環境保全効果の高い制度とするための努力と検討を加えることが望まれる。」とされているが、そのように他動的ではダメで、「加える所存である。」とすべきではないか。

・4−3「化学物質に関する国際的なリスク評価・管理への貢献」に、簡易な手法によるリスク評価を行うプロジェクトに積極的に参加していく必要がある旨の記述があるが、わが国は既に積極的にこのプロジェクトには参加しており、記述に違和感がある。
→これまでも参加してきたが「より積極的に」参加するという趣旨である。

・4−1(2)に「環境リスク評価は、定量的な基準の設定の際の科学的根拠等として用いられており、今後とも手法の向上や人材の要請を図りつつ、これを推進・充実させていかなければならない。」とあるが、定量的な科学的根拠を基に基準が設定されるのであり、論理が逆ではないか。この部分は削除したほうがわかりやすい。
→規制法等の基準は定量的であり、それらの設定のためにリスク評価を行っているということ。

・よくまとめられている。特に、2−3「PRTRにより得られる情報の公表及びリスクコミュニケーション」の中で、リスコミについて、様々な立場の者が相互に意志疎通を図るべきとしている部分が良い。 

(井形部会長)
 今日欠席された委員から意見が寄せられたと聞いているので、事務局から紹介して下さい。

《環境安全課早水補佐より欠席委員の意見の紹介》
 ある委員からの意見は、
T.PRTRの基本的な枠組みとして3−1の@〜Cまでが挙げられているが、C(環境モニタリングの実施等により事業者及び国民の環境負荷低減努力を適正に支援し、補完することができるようにする。)は基本的枠組みからは切り離して考えるべき。
U.リスクコミュニケーションにおいて行政やそれと同様に中立性が確保された者が関与することが適当とされているが、その関与はあくまで事業者が必要とする場合に行うこととすべき。 とのこと。
 別の委員からの意見は、
 @基本的考え方に賛成であり、環境庁が主体となり、厚生、通産、農水省などとともに  法案準備をすべき。
 APRTRは情報公開を原則として中央官庁、地方官庁、企業団体など相互乗り入れをでき るだけ保障すべき。
 Bリスコミ機構を行政、企業、民間が運営し、ここを実施の中心とすべき。
 C教育研修機関での専門家の養成が重要で、資格制度も考慮すべき、
 D大学等の教育体制の充実も考えたらよい。 とのこと。

(保健企画課長)
 報告書について、まず、環境リスク評価についてであるが、原文のままとしたい。
 P.14は、「積極的に」→「より積極的に」としたい。
 P.15で、「予防原則に立って、早急に我が国にふさわしいPRTRの法制化が図れることを希望する。」と追加したい。
 また、「検討を加えることが望まれる。」→「検討を加える所存である。」としたい。

(部会長)
 以上の修文で報告書としてとりまとめたいと考えていますが、異議はありますか。
 →異議なし。

(部会長)
 それでは了承されたものとみなします。なお、部会長としてメモをまとめていますので、配布します。

(部会長)
 このメモについてご意見あるでしょうか。
 →異議なし。

(部会長)
 どうもありがとうございました。中間答申案については、私から近藤次郎会長に報告します。