中央環境審議会第13回環境保健部会議事要旨



<日 時>平成10年10月15日 16:00〜18:00
<場 所>東條会館本館「シルバーの間」


《環境安全課長が資料2、参考資料を説明》

・説明が膨大で全体がなかなか把握できない。資料2のP10を読むと、PRTRの制度化を急がなければならないことは痛切に感じるが、PRTRの中でも、点源だけでなく、中小企業や家庭などの非点源の推計がかなり重要である。個々の一般家庭は排出量が少ないかもしれないが、全部合計するとものすごい量になるはず。資料は非点源について抽象的なことしか書いていないが、もっと具体的に説明してほしい。
 →パイロット事業においては、家庭から排出されるものにどのようなものがあり、どのようなところから排出されるのかについて、検討会の委員の意見を伺いつつ検討した。報告書のP34を参照してほしい。家庭から排出される化学物質は、たとえば、塗料、殺虫剤、エアゾール、接着剤、トリハロメタン、洗浄剤などに含まれるものがあるが、これらの出荷量、統計値などを集めて推計した。必ずしもデータが十分に集まっていないものについては、今回は推計を行っていない。今後、推計を行う対象物質を増やしていくとともに、推計の精度についても、サンプル調査などを組み合わせることにより高めていきたい。

・家庭から排出される物質に着目する際に注意しなければいけないのは、PRTRは、点源・非点源を含め、地域全体としての環境への負荷を把握することが目的だということ。個々の家庭がこれだけ危ないのであるということを示すためのものではない。パイロット事業では、購入されたものが全部使用されることが前提で推計を行ったが、実際に購入されたものが全部使用される例は少ない。サンプル調査により、購入されたけれども使用されていないもの、途中まで使用されているものなどを把握し、推計の精度を高めていく。

・塵も積もれば山となる。家庭からの排出量を点源に比べて軽んじるようなことがあってはならない。

・PRTRを成功させるキーポイントはリスクコミュニケーションにある。昨年、アメリカへ調査に行ったとき、向こうでもリスクコミュニケーションの重要性が認識されていた。日本の民族風土では住民と事業者の二者間のリスクコミュニケーションは難しく、自治体や専門家が入って三位一体で行う必要がある。また、個々の事業者が排出量を把握し、減らすための自主的取組を行うだけでは限界があり、地域全体としての排出量を把握し、それを減らすよう取り組む必要がある。これには行政の関与がどうしても必要である。最後に、私は通産省の審議会の委員もやっているが、環境庁も通産省も化学物質の排出量を減らすという目的を持っている点では一緒である。こちらの意見を集約して文書にし、化学品審議会の委員に示してコメントをもらうのも一案なのではないか。

・マスコミはすぐに環境庁が勝つか、通産省が勝つかという論調になる。PRTRの制度化の検討には文部省も入ってほしい。家庭からの排出量を減らすという観点から、小回りの効く自治体の役割が重要。とりわけ重要なのは人材の育成。自治体の事務も広域化しており都道府県の役割が特に重要。人材育成に十分配慮してほしい。また、PRTRは制度化したらそれで終わりというのではなく、そこがスタートラインである。各省庁から出ているデータがバラバラなので、一元化してほしい。

・前回、化学品審議会の中間報告を説明した意図は、両方の審議会で意思疎通を図り、将来的に行政の壁を取り払おうという意図。資料のP7に「環境への排出量等のデータ」という記述があるが、原料−生産量=排出量ということにはすぐにはならない。排出量のデータだけを公表すると住民はそれだけに着目して不安を感じてしまうので、排出量の把握だけでなく、事業場周辺の環境濃度の把握をしっかり行う必要がある。「環境行政機関」とは何か。国なのか、自治体なのか。P8に「実施に当たっての統一性・公平性を確保」とあるから国なのか。
 →国と自治体の役割分担については、色々なオプションを検討しているところ。もちろん、PRTRの実施をバラバラで行ってはいけない。環境行政機関が主体的な役割を果たすのは当然だが、具体的なことについては検討中である。この場においても議論してほしい。

・参考までに言うと、化学品審議会は統一性の観点から国が一元的に実施するとまとめたところ。

・産業界でもPRTRの法制度化は当然と受け止められている。その際、事業者の自主性と創意工夫は極めて重要な視点と認識している。また、対象物質の選定、知見の整理、情報の整理も重要である。そして、健全なリスクコミュニケーションを確保する必要がある。このリスクコミュニケーションは、事業者が自主的に行うことが適切である。また、事業者の立場から、データの提出は一元化することが望ましい。データの中には企業秘密に該当する情報があることも考えられるので、専門的知識を持った機関が集めるべきである。地方自治体が集めるということは不安。複数の行政機関が集計するとするのであれば、電子媒体などを効率的に使い、データを共有すればいい。

・北野委員の指摘は重要。リスクコミュニケーションはこれまで行政が住民に一方的に安全だという情報を説明するというものに限られていた。どのリスクレベルで社会を持たせるのか社会全体で決めるのがこれからのリスクコミュニケーションである。各主体が話し合いをすることでそのリスクレベルが決まる。その話し合いをするために必要な情報が開示される必要がある。ただし、これまで日本人はそういう社会全体の話し合いで決めるという訓練がされてきていないので、リスクコミュニケーションのやり方については慎重に考える必要がある。原料−生産量=排出量ではないというのはもっともだが、PRTRで少なくとも概数は把握できる。厳密に調査をしたらすごく大変。概数に不満があるならば、そのときに精密に調査すればいい。ただ、あまりにも概数が外れないように精度をチェックしておくことは必要である。また、企業秘密の話は情報が外に出るときの話。情報を行政に流し込む際には行政の守秘義務がかかることを前提に話を進める必要がある。PRTRは大企業だけでなく従業員30〜50人くらいの中小企業も対象とするので、制度化後の周知徹底がとても大変。PRTRを成功させるためには、 施行後3〜4年はかなり真面目に足繁く説明に回る必要がある。そのためには、全国1ヵ所でデータを集めるというのは無理がある。また、PRTRデータの質の維持という観点からも問題である。

・前回の部会で要望した企業の自主性の視点を今回の資料では入れてもらえた。クロの物質は今までどおりの行政による規制の世界だが、グレーの物質をどうするかというのがPRTR。そのためには企業の自主的取組はとても重要。資料のP2の記述は、「化学物質の数が膨大である」という視点ではなく、「グレーの物質をどうするか」という視点なのではないか。全体として、さらに企業の自主性を前面に出してほしい。

・先ほどは、排出量として割り切っていいのかということを言いたかっただけ。入りと出の差がが全部排出量として捉えられ、その量の多さが問題となるおそれがあるのではないか。

・行政、事業者、国民の三者が対等な立場で取り組むのは大変結構。資料のP5にあるように、事業者が自主的取組を促進するのはとても重要。レスポンシブルケアが根付いてきたところなので、行政は事業者の自主的取組を支援・助成してほしい。また、リスクコミュニケーションは、どの範囲でどのような方法で行えば完成するのかということが問題。リスクコミュニケーションについても行政の助けを借りたい。あと重要なのは人材育成。日本にはスペシャリストがほとんどいないので、人材育成にも行政は力を入れてほしい。

・@パイロット事業の際、排出量の点源:非点源はどの程度だったのか。A点源のインプットに対する排出量の割合はどれくらいだったのか。B企業は排出量を削減する努力は当然行っているが、先ほど北野委員の発言にあったように行政が関与するのはどういうときか。以上の三点について教えてほしい。
 →パイロット事業では、全体の平均として点源77%、非点源23%だった。ただ、物質によってこの割合は異なる。二点目については、パイロット事業では生産量の調査を行わなかったので、この割合はよく分からない。今後改善していきたい。

・個々の企業は無駄を省こうという観点から当然排出量を削減する努力をするが、個々の企業が排出量データを見てそれぞれが削減努力するだけでは、地域全体を考えたときに本当に安心できる排出量レベルになっているのかということが分からない。四日市でも工場が密集していたからあれだけの被害が発生した。地域全体を見るために行政が関与する必要がある。

・資料のP7の「環境行政機関」とはどういうレベルのものなのかをもう少しはっきりさせる必要がある。国は制度全体の維持管理を行い、実際の実施主体は地域レベル、保健所のレベルくらいまで落とさなければうまく機能しないのではないか。

・PRTRの目的から言って環境行政機関が中心的役割を果たすのは当然。中央だけでなく、地方レベルも含めて考える必要がある。それで資料はこういう表現になっているのではないか。それぞれの主体の自主的取組はもちろん重要だが、行政も取り組む必要があり、中央と地方で分担すべきである。PRTRを法制度化するのであれば、報告の義務化は第一のポイントとなる。環境リスクの評価と管理は制度化が必要であり、きちんとした評価・管理にはきちんとした情報が必要なので報告を義務化するということだろう。個別データについては、一律公表できるものはそうすべき。ものによって請求開示、企業秘密については認定による保護をする。諸外国の情報の開示の状況について参考となる情報があるのであればあとで教えてほしい。資料のP9の「PRTRデータの活用」は重要な視点。情報を集めるだけでなく、活用することが重要である。事業者の自主的取組は当然だが、行政のバックアップが重要。行政の内部でも環境庁が中心となり、事業所管官庁と連携する必要がある。方針、計画を作り、制度的に担保すべきである。

《環境安全課長が参考資料2、報告書P189を説明》

・責任を持ってすべての企業が取り組んでくれるかどうかということが心配。実効が上がるような制度作りを希望する。

・PRTRは地域における環境リスク把握のための手段である。自主的取組は重要だが、それと地域の状況把握は別。後者については事業者はできない。環境行政機関、特に地方の機関の役割が重要である。リスクコミュニケーションをどうするかということはきちんと考える必要があるが、住民への情報伝達が特に重要である。そのためには、地域的に情報を集める必要がある。企業秘密の扱いは2次的な問題である。

・たいへん勉強になる。色々な化学物質の問題があって、課題があって、PRTRを導入するという流れか。いきなり各論ではなく、PRTRをどうして導入するのかという総論をまず考える必要があるのではないか。的外れな指摘かもしれないが、中小の事業場はだいたい下請企業であり、大企業に比べて排出に関する問題が多いと思う。その排出量の把握は重要なのではないか。推計でいいのか。大企業は自分では手を汚さないというイメージがある。

・報告書をしっかり読んでほしい。絶対的な化学物質の取扱量が少ないから中小の事業場については推計にしている。本当に危ないことをやっているのなら、それは規制法の話になる。全体の環境への負荷を把握するのがPRTRの目的である。

・答になっていない。

《環境安全課長が資料3、4を説明》