中央環境審議会第12回環境保健部会議事要旨



<日 時>平成10年9月22日 10:00〜12:00
<場 所>東條会館本館シルバーの間


《環境安全課長が資料2を説明》

(近藤会長)
・(技術検討会は、)本委員会だけで10回、ワーキンググループで同数以上の検討を行った。パイロット事業を愛知県、神奈川県、川崎市で実施し、その評価について検討会を4回行った。調査内容は、対象物質をどういう観点で選定するか、あるいは選定しないかを含め、高度に化学的であった。ある化学物質の使用用途が分かっても、その内容、使用量が分かるためにはしっかりとした化学的知識が必要であり、その点企業はしっかりと協力してくれた。規模に関わらず、企業の人が積極的に参加、実施してくれたことに感激している。特に、中小企業の方は、負担が大きいにも関わらずしっかりやってくれた。基本的なトーンとして、一般の市民が情報開示を求めるのは当然だが、企業も基本的にその方向にあることは企業のモラルの高さを示すもの。ただ、情報開示に反対するのは大企業が多いのは問題。86年からレスポンシブルケアの検討を行っているが、その経験を活かして大企業ももっと前向きに取り組んでほしい。水俣病の例を挙げるまでもなく、最近は長野や和歌山の毒物事件など妙な事件が多く、国民の関心も高く、新聞にもたくさん載っている。ところで、台風7号よりも台風8号の方が早く 来てしまった。後からできた方が先にやってきて、先にしこしこやっていた方が遅れている。最近、こんなことがよくあるが、私が何を言いたいのかについては委員の皆さんも分かってもらえると思う。

・資料2のP2下部の「化学物質の成分情報」は化学製品の成分に関する情報ということか。そうであれば、「物質」でなく、「製品」とすべきではないか。
→訂正する。

・近藤先生に企業のモラルの高さを誉めていただきありがたい。ただ、大企業が情報開示に消極的だという話はどうか。中小企業の中には報告していない企業もあるのではないか。従業員数の裾切りは何人でやっているのか。
→100人、もしくは業種により30人でやっている。裾切りを下げるべきではないかという意見もある。

・最初から精緻なデータを求めようとすると制度自体が破綻する。裾切りが100人、30人というのはアバウトなように見えるが、実はかなりカバー率が高い。また、クリーニング業など(従業員数は少ないが、化学物質の排出量が多い)特殊な業種については、別途調査している。環境モニタリングのデータとつき合わせてみると、アバウトであっても傾向はしっかり把握することができた。

・情報開示についての賛成意見が大企業には少ないという話で、化学物質を作っている会社と使っている会社ではだいぶ意識が違うと思うが、この違いについては分析しているのか。
→報告書のP226を参照してほしい。従業員規模と業種別に分析しており、化学物質を作
っているか使っているかでは分けていない。ただ、これを見ると、化学物質を作っている化学系製造業が情報開示にやや消極的であるようにみえる。

・自分のところで作っているとどうしても情報開示に消極的になってしまうように思う。できればきちっと分析してほしい。

・PRTRの正確さの議論があまり為されていない気がする。技術的な観点と情報公開のやり方などの社会的な観点があるはず。企業によっては、正しい情報を出したくないところもあるかもしれない。検証するシステムを作れないものか。
→社会的、技術的な精度の確保については、十分検討会で議論してきた。技術的な精度の
確保については、PRTRを毎年ローリングすることにより可能。社会的な精度の確保については、事業者への十分な説明を行うことにより可能。これらの点については、報告書でも触れている。

・これだけの化学物質がこれだけ出ていることが分かってとてもショック。PRTRが制度化されれば、それはとてもいいこと。複数の化学物質による複合影響、地域による環境リスクの違い、人間だけでなく生態系への影響なども考えなければならない。これだけ複雑な問題については、コミュニティレベルで対応する必要があるのではないか。

・検討会には最初から自治体の人が入っており、記入方法の指導等についても自治体の人が丁寧にやってくれた。自治体の人は地元の企業と信頼関係があり、PRTRを実施する上でそれは大事なこと。市民、NGOが直接参加することはまだないが、情報公開を通じて今後参加してくれるのではないか。

・排出量の把握も重要だが、暴露量評価はどうやるのか。
→PRTRデータと環境モニタリングデータとモデリング技術を組み合わせてやれば迅速に把握できると思っている。

・企業あってのPRTRなのだから、国は企業にさらなる協力を求める必要がある。
 @対象物質の追加、削除をフレキシブルに行うということは具体的にはどういうことか Aマニュアル等の改善とはどういうことか。

・実施してから改善するのは前提。欧米でやっているPRTRでは約600物質が対象、日本では約170物質が対象。どのくらいの精度でできるのか、ちゃんと企業が調査に応じてくれるのか等を勘案して対象物質を選定する。マニュアルの改善について一例を挙げると、従業員数が少ないが、化学物質の排出量が多いメッキ業やクリーニング業等の負担を減らすために、マニュアルを全部読まなくても、自分に関係のある一部分だけ読めば理解できるような構成にする、フローチャートを活用するなどの工夫がある。
→対象物質は審議会の検討を経て選定するものかもしれないが、報告書のP4を参照してほ しい。有害性、暴露可能性を踏まえ、新しい科学的知見に基づいて選定する。

・「PRTR」という言葉はなんとかならないか。国民の理解を得るためには、もっと分かりやすい名前にする必要がある。

・名前については、検討会でも検討した。その結果、中味を詰めてから慎重に検討することになった。

《環境安全課長が資料3を説明》

・PRTRを実施する過程で、国際的にデータを交換できるようにするという議論があるが、この点については討議されたのか。
→資料3のP13を参照してほしい。分科会Kにおいて、色々な議論が行なわれた。まず、
地域的に共通の目録の作成について討議が行われ、北米地域に加え、EUでは、システムを構築中で、手続の透明化、フォーマットの共通化などが行われている。それ以上の国際的な共通化については、敷居が高くなる等の理由で議論が分かれている。また、POPsなど国際条約の遵守状況の把握に使おうという議論もあった。

・38の参加国というのは、先進国を網羅しているのか。
→必ずしもそうではなく、たとえば、イギリスからの参加者はNGOだけ。先進国と途上国 が半々くらい。

・様々なPRTRを比較するとあるが、何をもってPRTRとするかについて共通の認識は得られたのか。
→分科会の中でとくにNGOから指摘があった。資料3のP11の分科会Fの部分を参照してほし い。最低限の要素として、義務的報告制度、個別データ公表、一貫性などが討議された が、合意には至っていない。しかし、一般には、@環境保全のためのツール、A市民へ の情報提供の2つという印象がある。

《近藤雅臣委員が参考資料1を説明》
 近藤会長から台風の順番違いの話があったが、大きいのが後から来るということもある。中間報告の「おわりに」の中で他の審議会と積極的に意見交換をはかっていくと記述しているとおり、化学品審議会と中央環境審議会の間で意見交換をしていきたい。

《保健企画課調整官が資料4を説明》

《環境安全課早水補佐がある委員のFAX意見を読み上げ》


・PRTRシステムについて議論するときは、いつも環境アセスの話を思い出す。昔から環境アセスの制度は開発計画の情報公開のための制度と思われてきた。環境アセスがようやく真っ当に環境保全のためのツールとして位置付けられ、法律となるまでに20年かかった。PRTRも下手すると5年くらいかかってしまう。PRTRのためのPRTRではなく、企業を縛るための制度でもない。早くPRTRが環境保全のためのツールだということを認識すべきである。かつて、有機水銀による汚染が問題となり、その後、対策によってあっという間にリスクレベルの1/10まで排出が下がった。1点だけやっては駄目。あらゆる物質について総合的にリスクを減らすことが必要。アバウトであってもまずデータを集めなければならない。リスクコミュニケーションも重要だが、PRTR=情報公開制度という認識にはためらいがある。どう分かりやすく情報を収集し、集計するかが重要である。それを踏まえてどう効果的な対策を行うかということ。上流にPRTRがあり、目的に応じて下流の個別法に流れるという構成か。全体をうまくコーディネートするシステムがあって、その中でPRTRは重要なツールとして位置付けられるべき。

・同じ方向の考えを持っている。従来の規制的手法だけでは足りない。我々はこれまで多くの間違いを犯してきた。フロンや環境ホルモンの問題などである。それぞれ、その時点の最高の科学的知見をもって対応してきたが、それでは不十分であることが明らかである。まず、化学物質は出さないというのが基本である。予防的見地から考えなければならない。

・「環境汚染物質」というのは問題。人の健康への影響と因果関係があろうがなかろうが、化学物質すべてをPRTRの対象とする必要がある。

・「有害」という発想はおかしい。すべての化学物質は何らかの影響を持ちうる。人の健康に対する影響を管理するシステムとしては保健所などのシステムがあるが、生態系についてはこういうシステムがない。PRTRの情報がどれだけの意味を持ちうるかについて考える必要がある。

・PRTRの重要性には同意する。対象物質の選定は、ハザード×排出量又は排出確率で行われるが、おそらくハザードについては十分手にしていない場合がある。本質的には、すべての物質を環境に出すべきではない。その観点から排出確率の方が重要。しかし、その情報が不足している。どう集めるかについて工夫を。また、1つ抜けているのが労働衛生の観点。開放系なのか閉鎖系なのか考える必要がある。

・PRTRにおいては、企業の自主的取組が重要。ちゃんと強調してほしい。

・「PRTR」という言葉が分からない。全然ピンとこない。漢字表現で的確な表現があるのではないか。カタカナは駄目。また、「リスクコミュニケーション」も一体何なのか分からない。「対話」の方が分かりやすい。できるだけ早くいい言葉を見つけてほしい。PRTRを推進する上でPRが重要である。役所はPRが下手。最近はインターネットによるPRが活発だが、環境庁のホームページは役所の中で唯一「or.jp」を使っている。「go.jp」にすべき。昨日インターネットからダウンロードしたら色々載っている。ホームページのアドレスを分かりやすいアドレスにしてほしい。

・報告書のP279に名称の候補が出ている。名称は制度本体と密接な関係がある。先ほどのとおり、情報公開のためではなく、環境保全のツールとして位置付けたい。また、地域のリスクを考えるときに、いかに自治体を組み込むかが重要。地域ごとにバラバラでは困るが、全部国がやるという話でもない。適切に自治体を組み込む必要。温暖化の話よりももう少し地域レベルで考える必要がある。

《環境リスク評価室長が能勢町のダイオキシン問題について説明》