中央環境審議会第11回環境保健部会議事要旨



<日 時>平成10年7月24日 10:00〜12:00
<場 所>東條会館本館シルバーの間


《保健企画課長が資料2-1を説明》

《環境安全課長が資料2-2を説明》


・環境汚染に対する国民の意識の高まりは、産業界としても重要なことと認識している。今回の諮問に係る審議の範囲について、PRTR制度の創設・実施は当然だが、
 @先ほど説明にあった「関連する政策の有機的、総合的な発動」という考え方について 何か具体案はあるのか。
 A環境リスクがどの程度かということがはっきりと分かっていない物質については、業 界の自主的取組が非常に重要だと認識しているが、それをどう位置づけるつもりか。
 B国民の不安を解消するためのリスクコミュニケーションの進展や企業秘密の位置づけ などの絡みもあり、制度の創設・実施については相当の準備期間が必要なのではないか。
 →基本的には審議会で議論していただいてこれから決めていくことだが、環境リスクの程度がはっきりと分かっている物質について、将来総合的に対策を打ち出す必要があるものが出てくる可能性があると考えている。また、企業秘密の問題については、今秋成立するであろう情報公開法との関係も踏まえ、十分な準備期間をとって検討していく必要がある。なお、自主的取組は一連の環境リスク対策の中で1つの大きな柱と考えている。

・こういう法律を作ろうとするのは素晴らしいこと。だが、法律化する上でいくつか問題点があると思う。
 @化学物質に対する国民の不信感をどのように取り除いていくか。
 A地方自治体を加えてPRTRをやっていく場合、自治体の中には熱心なところとそうでな いところがあるが、どう調整していくのか。
 B企業秘密の判断基準はどうするのか。
 C情報の公表が国民にどのような影響を及ぼすのか。健全な民意をくめるほどに化学物 質に対する国民の意識を成熟させるにはどうすればいいのか。NGO等の育成も考える必 要があるのではないか。
 D大防法、水濁法などの各個別法の改正、他省庁との協力はどう進めていくのか。
 E環境ホルモンの問題などマスコミがあたかも毒性がすでに分かっているような報道を しているものがあるが、科学的にしっかりとした環境リスク評価を行うシステムをどう すればいいか。
 といったような問題に注意しながら作業して欲しい。
 →自治体の役割については、審議会の場で幅広く議論していただきたい。企業秘密の問題は情報公開法の成立と密接に関連している。PRTRでどこまで公表するかについては、その動きを見ていきたい。住民の啓発については、我々も週末にボランティアで講演をしたりしている。他省庁の関係については、縦割りと批判されないような体系を考えていきたい。
 →リスク評価はサイエンスだけでは難しい。政策的な観点と科学的な観点をどうミックスさせるか考えていく必要がある。環境ホルモンについては、一時期に比べマスコミ報道も沈静化し、冷静に議論できる土台ができてきている。

・リスク評価とリスク管理はしっかり区別して欲しい。

・資料の中に化学物質汚染の歴史があるが、企業の自主的取組は昔からやっているはず。しかし、どうして今日報道されているような汚染を未然防止できなかったのか理由をしっかりと検討する必要がある。そして、その検討結果を新しい施策に盛り込んでいかなければならない。また、リスク評価、リスク管理を有機的・総合的に行う場合、重要なことはリスクトランジション(リスク変動)の観点。新しい代替物を作るときの影響を十分に考えて欲しい。

・自主的取組は重要。だが、本当にそれだけでいいのかというと不安を感じる。実際にマスコミでも企業による土壌汚染の問題などが報道されている。企業秘密に縛られず、国民の健康への影響を第一に考えて欲しい。また、PCBの問題について保管の現状把握はしっかりできているのか、実態を教えて欲しい。
 →PCBの使用中止から25年が経過しているが、処理がうまく進んでいない。それは処理
方法が従来焼却によるものしかなかったのが原因。PCBを保管しておくこと自体が環境リスクとなりつつある。油状PCBについては、化学処理技術が成熟してきたことを踏まえ、廃掃法の基準が改正され、6月17日から化学処理が認められた。ただ、廃感圧紙や小型コンデンサのように染み込んだPCBをどう処理するか、小口の保管者をどうするかが依然問題である。PCBの保管の実態については、平成3年の厚生省の調査によると若干逸失したPCBがあるとのこと。

・産廃処理場、ゴミ焼却場で住民ともめているところがたくさんあるが、それら施設の環境リスクについて調べる手段はあるか。学校の近くの処分場の問題などについて、建築基準法では改正を行ったみたいだが、環境庁では何か事前の防止策を講じられないものか。また、母乳中のダイオキシンの問題についての情報提供をしっかりやって欲しい。
 →廃掃法が改正され、施設の設置基準が明確化され、生活環境影響調査の実施など設置前の手続が厳格化され、維持管理についても帳簿をつけさせ、利害関係者に公開する仕組みとされた。
 →母乳については、WHOの専門家会議でも話題となった。母乳推進の方向については変 化がない。厚生省も同意見。情報提供についてはしっかり取り組む。

《環境リスク評価室長が資料3を説明》

・ダイオキシンのTDIの話は、諸々の仮説を入れて議論している。それらの仮説を鵜呑みにしていいかという問題はある。検討すべきことがたくさんあるというのがダイオキシン検討会の総意である。

・発ガン性をTDIの評価に使っていないので評価が甘くなるのではないかという議論があるが、それは違う。発ガン性の要素を入れるとどのようにしてもTDIは10ピコとなるが、発ガンよりも敏感なものをみているので、10ピコよりも低い値となった。