中央環境審議会第10回環境保健部会議事要旨



<日 時> 平成10年5月27日 10:00〜12:00
<場 所> 東條会館本館シルバーの間

《保健企画課長より平成10年度補正予算の説明(資料1)》

《環境安全課長よりPRTRパイロット事業中間報告の説明(資料2)》

・PRTRパイロット事業に対して非協力的な反応はなかったのか。
 →事業そのものの意義を否定するような反応はない。ただ、業種により反応に温度差がある。

・PRTRは素晴らしい制度だと思う。パイロット事業を行った地域は環境が良い地域のように思われるが、他の地域ではやらないのか。
 →湘南地域、西三河地域といっても、他の地域に比べて特段先進的であるというわけではない。湘南地域は工場が密集してい るし、西三河地域は主要な自動車産業を抱える地域である。また、川崎は重化学工業地域を抱えている。これらの地域は、その中に様々な業種や発生源が入っており、パイロット事業を実施するに当たり好都合であった。なお、もう一度パイロット事業を補足的に実施する予定。

・回答率が約52%ということだが、100%に近づけるためには、アメリカなどのように法制化が必要ということになるし、公開の方法についても、パイロット事業では地域単位だったが、事業場単位の公表が求められる。技術検討会の方で法制化、情報公開についてしっかり検討してほしい。

・我が国にふさわしいPRTRとは何か。
 →リスクマネージメントを的確にできるもの。対象物質、収集した情報の加工方法などに ついて検討する必要。

《環境安全課長より環境ホルモン戦略計画SPEED'98の説明(資料3)》

・PRTRパイロット事業では178物質を対象としたとのことだが、環境ホルモンの話題が出る前に選ばれたので、野生生物の生殖毒性という観点が入っていない。今後、対象物質にするか否かの判断基準を精査し、環境ホルモン物質を加えていくことも検討する必要があるのではないか。
 →ご指摘のとおり。

・環境ホルモン対策は、環境行政だけではなく、関連行政との連携が重要と認識している。関連行政がどのような対応をしているのか分かる範囲で教えてほしい。
 →多くの省庁が腰をあげている。省庁連絡会議を設置し、環境庁、通産省、厚生省、労働省、農水省の5省庁が連絡をとりあっている。また、建設省、運輸省、文部省、科技庁が新たに入る意向を示している。縦割りと批判を受けることのないよう、さらに横の連絡を強化していきたい。補正予算でもいくつかの省庁が環境ホルモン関係で要求しており、たとえば、建設省は一級河川のモニタリングを実施する予定。運輸省とも港湾のモニタリングがあり、これらの省庁で協力していきたい。環境ホルモン対策で今一番重要なのはスクリーニング手法の確立である。国際的にはOECDへの対応を強化し、国内的には通産省、厚生省と協力する。野生生物については農水省と協力しなければならない。連絡会議をうまく運営する必要がある。

・環境ホルモン対策は最も環境庁らしい仕事と認識。被害の未然防止は投資の一種である。予算もたくさん取ってほしい。先ほど補正予算の話があったが、国の責任で環境ホルモンの研究施設を造るのは安心感がある。他の国々にはどういう施設があるのか。
 →独立した環境ホルモン研究施設はどこにもない。ただ、アメリカでは特定の局に相当の
 人を集めて対応している。

・環境ホルモン物質は規制をすでにかけているものも多いが、微量で大きな影響を生じることを考えると、基準を将来いじることも考えているのか。
 →オプションとしてはあり得る。PRTRによる包括的な管理を含め、弾力的に対応する。

《環境安全課長より化学物質対策の動向の説明(資料4)》

・近隣諸国との付き合いが重要。アジア諸国に対してもっと情報発信をしていくべき。

・PRTRの非点源の排出量の推計に当たっては、一般住宅についてはモデル世帯を設定し、密度と掛け合わせて推計していることと思うが、中小事業者の推計に当たっては、事業種によって小規模でも多量の化学物質を排出している事業者もいるはず。このようなことを考慮して推計しているのか。また、約47%の事業者が何も排出していないと回答しているとのことだが、それはあり得ないのではないか。それらの事業者が非協力的だったということか。
 →家庭や中小事業者はそのような方法ではなく、販売量、人口のような統計資料を用いて集計している。なお、報告対象事業所は、だいたいの排出量がカバーできるという観点から従業員数による裾切り基準を決めているが、30人の場合もあるし100人の場合もある。ご指摘のとおり、クリーニング屋のように小規模でも大量の物質を排出している事業者もある。自治体の判断で調査対象事業者以外にも調査を実施している。47%の事業者が対象物質を排出していないとのご指摘については、対象物質を排出していないという理由とごく少量の排出量しかないという理由が考えられる。後者の理由が考えられるのは、取扱量についても裾切りを行っているから。

・環境ホルモンの因果関係の証明は難しい。タバコと肺ガンの関係のようなもの。行政はどのような対応をするのか。どこまで証明すれば因果関係ありとするのか。因果関係なしでも対応するのか。
 →予防的措置は必要と認識。世界的にみても調査が始まったばかり。欧米に遅れをとらな いよう、キャッチアップしていく。