過去の議事録一覧

第6回地球温暖化防止対策検討小委員会会議録

  1. 日  時  平成12年12月11日(月)10:00~12:30

  2. 場  所  第5合同庁舎別館8会共用第23会議室

  3. 出 席 者
    (委 員 長)安 原 正
    (委   員)浅 岡 美 恵
    猿 田 勝 美
    塩 田 澄 夫
    寺 門 良 二
    松 野 太 郎
    宮 本 一
    横 山 裕 道
    佐 竹 五 六
    佐 和 隆 光
    品 川 尚 志
    西 岡 秀 三
    松 原 青 美
    村 上 忠 行
     
    (事 務 局)小島長官官房審議官
    浜中地球環境部長
    一方井地球環境部企画課長
    竹本地球環境部環境保全対策課長
    石飛地球温暖化対策推進室長
    後藤企画調整局調査官
    塚本地球環境部環境保全対策課補佐

  4. 議  題

    (1)「地球温暖化防止対策の在り方の検討に係る小委員会」報告書(案)について
    (2)その他

  5. 配 付 資 料

    資料1 「地球温暖化防止対策の在り方の検討に係る小委員会」報告書(案)
    資料2 天野委員提出意見
    資料3 寺門委員提出意見
    資料4 浅岡委員提出意見
    資料5 宮本委員提出意見

    参考資料1 「地球温暖化防止対策の在り方に係る検討小委員会」第4回会合議事録

  6. 議  事

    【安原委員長】 それでは定刻となりましたので、ただいまから「地球温暖化防止対策の在り方の検討に係る小委員会」第6回会合を開催したいと思います。大変ご多忙のところご出席いただきまして、ありがとうございました。
     会議に入ります前に、地球環境部長にご出席いただいておりますので何かご報告いただけるようでございますから、お願いいたします。

    【地球環境部長】 年末の大変お忙しい中を先生方にお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
     先週でございますが、中断しておりますハーグのCOP6の後、余韻といいますか延長線のようなものが残っておりまして、どうしても話し合いをもう少し続けたいということで実はカナダのオタワにEUとアンブレラグループの主要国の首席交渉者レベルが集まりまして、これからどういうふうに話を進めていくのかについて2日間の会議を開催いたしました。水曜日と木曜日、6日と7日でございました。
     その結果、双方でどうしてこういう主張をしているのかについてお互いの一層の理解が深まったことと、幾つかの論点についてやや技術的な観点から一定の合意に近づいたところがございます。端的に申しまして、事務レベルでは11月25日の朝の段階でお互いがかなり近づいたと考えたわけですけれども、依然としてある程度の溝が残っているということでございます。今後の進め方につきましてはオタワ会議の結果をそれぞれの国で閣僚まで報告させていただきまして、今後の進め方はその指示を仰ぐという形で終了したところでございます。
     恐らく今週いろいろな動きが閣僚レベルないし場合によっては首脳レベルであるようでございまして、そういった接触ないし相談の結果を踏まえて今後さらにどのように進めていくのかが決まってくるのではないだろうかということでございます。そういうことで今後まだ双方に何とか話を進めたいという強い意思は続いているところでございますけれども、具体的にどういう形で問題をどのように解決できるのかについては依然として見通しがはっきりと立っていない状況でございます。
     しかし、COP6再開会合でぜひ合意を得る必要がございますので、そこに向けまして各国とも最大限の努力をしようということでございますし、我が国も当然その中で合意の成立に向けて貢献してまいりたいと考えている次第でございます。
     今後また機会がございましたらそのあたりの進捗状況についてご報告を申し上げたいと思っておりますが、とりあえず先週のオタワの会合の簡単なご報告をさせていただきたいと思っております。本日は小委員会で最後のまとめでございますけれども、先生方におかれましてはご検討のほどをぜひよろしくお願い申し上げたいと思っております。
     以上でございます。

    【安原委員長】 部長、どうもありがとうございました。
     それでは、最初に資料の確認をお願いいたします。

    【事務局】 それでは、資料の確認をさせていただきます。
     第6回会合の資料1といたしまして「地球温暖化防止対策の在り方の検討に係る小委員会報告書(案)」をつけさせていただいております。委員の先生方には前回からの変更点及び参考資料の一式もあわせてつけさせていただいております。
     資料2から資料5については各委員の先生からご提出いただいた資料でございます。資料2が天野委員から、資料3が寺門委員から、資料4が浅岡委員から、資料5が宮本委員からそれぞれご提出いただいた資料でございます。
     参考資料1といたしまして、地球温暖化防止対策検討小委員会の第4回会合の議事録を参考につけさせていただいております。
     資料は以上でございます。

    【安原委員長】 どうもありがとうございます。それでは、もし資料に不足がございましたら事務局まで申し出ていただきたいと思います。
     それでは、本日の議題は議事次第にございますように小委員会報告書(案)につきまして最後の討議をお願いし、まとめていただきたいということでございます。時間は12時半までの約2時間半を予定しておりますので、ご協力をお願いいたします。
     それでは、前回の会合でポリシーミックスの案につきましていろいろ議論をいただきまして、それをできるだけ織り込んだ案を報告書(案)ということでご提示しておりますので、修正点を中心に竹本課長からご説明をお願いしたいと思います。

    【環境保全対策課長】 それでは、お手元の資料1でございますが、小委員会の報告書(案)についてご説明したいと思います。それから、先ほど事務局からご説明しましたが、小委員会12月6日資料からの主な変更点という一覧表もございますので、ご参考にしてください。
     それでは報告書(案)でございますが、まず最初に目次でございます。5つの章から構成されておりまして、第5章につきまして先般集中的にご議論いただきました「ポリシーミックスによる政策パッケージのモデル」を新たに入れ込んだものでございます。内容的には前回ご議論したものでございます。
     確認のために順次おさらいしていきたいと思いますが、ページを繰っていただきまして7ページでございます。これは第1章「二酸化炭素の排出削減に向けた政策パッケージ」の中の「政策パッケージと基盤メカニズムの関係」で、基本計画の検討チームで議論されたもの。それから、前回もご説明しましたが、8ページにわたりまして政策パッケージの確実性と最終調整メカニズムへの依存具合という関係図でございます。
     9ページからは第2章「政策パッケージの内容について」ということで、具体的な政策手法ごとにそれぞれの特徴、分析、比較を行ったものでございます。これまでの小委員会での議論をとりまとめておりまして、12ページ、13ページの左手前に推進メカニズムの比較ということでまとめております。
     13ページからは「諸外国における政策パッケージの検討の現状」ということで、これも第1回の小委員会でご報告してご議論いただいたものでございます。
     18ページからは「我が国における政策パッケージ提案事例」ということで、各委員から、またそれぞれの研究機関からも提案をいただいたものについて記述がございます。
     22ページからは「ポリシーミックスの在り方について」ということで、ポリシーミックスの例として個別の推進メカニズムに焦点を当てながら幾つかの事例研究を行ったものでございます。これも小委員会における議論のポイントを後の方にまとめて整理させていただいております。
     36ページからは第3章でございまして、「部門別の地球温暖化対策と推進メカニズムの現状と課題について」でございます。特に節を分けまして各セクターごとのアプローチということで各部門ごとに整理させていただきまして、ご議論いただいたポイントを順次それぞれ整理しております。
     67ページは「地球温暖化対策のための基盤メカニズムの在り方について」ということで、これも第1回以降何度かご議論いただきましたが、そのときの事務局の提案資料と、それに関する議論の整理を行っているところでございます。
     そして、最後に89ページからは第5章「ポリシーミックスによる政策パッケージのモデル」でございます。前回お出しいたしました事務局のペーパーに基づきまして整理しておりますが、そのときの議論を幾つか踏まえまして新たに書いたところ、また修正したところがございます。
     一つは95ページでございますが、「推進メカニズムを組合わせるための検討」ということで下の図がございます。前回は大規模排出、小規模排出というように抽象的でわかりにくい部分がございましたが、大規模の対象としては産業もございますが、民生、運輸も含む。小規模についてもとりわけ中小産業とか民生、運輸をカバーしているという意味で整理しております。
     次に99ページは「部門別に見た排出量管理の確実性の観点からの推進メカニズムの整理」ということで、後で5つのパターンを紹介しております。その中に新たに講じようとする対策メニューの例みたいなところで99ページから幾つか紹介がございますが、99ページの一番下の「○」にエネルギーに係る料金制度の活用がございます。前回は累進性の高い電気、ガス料金という言い方をしていたわけでございますが、幅広い記述ということで「エネルギーに係る料金制度の活用」、内容的には先般記述した内容を包含したものとなっております。
     次の100ページでありますが、同じく表現を整理させていただきました。やはり一番下の「○」でございますが、販売電力に占める再生可能エネルギー比率規制でございまして、再生可能エネルギーの導入を強力に推進するという観点から販売電力量の一定比率について再生可能エネルギーを導入するということでございます。前回は新エネルギーの原単位という提案でございましたが、宮本委員からのご指摘も踏まえてこういう書き方にさせていただいているところでございます。
     102ページからは具体的な政策パッケージのモデルの検討でございます。前回4つのモデルにつきまして提案いたしましてご議論いただいたところでございますが、103ページの真ん中に<モデル1>地球温暖化対策推進大綱重視モデルということで、これは新たに寺門委員からの提案を踏まえまして前回4つ提案しているのに加えまして5つ目のモデルとしまして記述しております。「現行の地球温暖化対策推進大綱に基づく施策を引き続き推し進める。現在排出量がほぼ横ばいの産業部門については、経団連等を中心とする自主行動計画の着実な推進を引き続き図る」、その他の民生部門について、また運輸部門についてもそれぞれの対策を推進していくということでございまして、全体に共通する推進メカニズムとして社会資本整備、助成措置等を行うという新たなモデルの追加でございます。
     その後、モデル2からモデル5までは前回と同様でございます。中身につきましては前回の議論を受けまして若干の修正がございますが、具体的には106ページから108ページにわたる資料の中で、一つは京都メカニズムの活用のポイントでご指摘がございまして、当初より予定されている京都メカニズムの活用といった観点から2008年からということでございます。
     記述漏れがございますが、この図でいきますと2008年に至るまでの間は京都メカニズム利用のための準備というアクションがございまして、それぞれの矢印がモデル1から4それぞれにつきまして2008年のボックスにかけて京都メカニズムを利用するための準備というアクションが伴うものですから、ここは訂正させていただきます。それから、京都メカニズムの活用とは別に最終調整メカニズムを最後の二重線を引いた後に位置づけているところでございます。
     それから、108ページのハイブリッド排出量取引モデルでございます。京都メカニズムの活用というのはこの欄の中に位置づけられておりますし、天野先生からもご指摘のありました一定の枠、国内削減量の確保の観点からの調達量の調整、調達量の一定制限の中で行うという観点からのポイントを中に位置づけているところでございます。
     そして、それぞれのモデルの評価を踏まえまして112ページは最終的な国内制度の検討ということでポリシーミックス、基盤メカニズム、6%削減の内訳という点については基本的に前回お示ししたとおりになっております。
     最後に、114ページから117ページにかけまして前回ご指摘いただいた点を整理させていただいたところでございます。
     以上が小委員会の報告書(案)という格好で本日ご検討をお願いするものでございます。
     以上でございます。

    【安原委員長】 今ご説明があったので、ご理解いただけましたでしょうか。この矢印をどこに入れるかというのはわかりましたか。4つほどございますが、「2008年~」ということで京都メカニズムの活用による排出枠の利用というのが下の方にあります。この以前にいろいろ準備しないと、いきなり2008年からこういうものはできないということでご指摘をいただきましたので、できるだけ早期にそういう準備に入っていく。それで矢印を入れるということです。

    【佐和委員】 どこに入るんですか。

    【安原委員長】 箱のちょっと手前のこのあたり、それが抜けているということです。
     以上ご説明いただきましたことからご理解いただけると思うんですが、前回いろいろな議論をいただいて、その議論はできるだけほとんど入っていると考えていただいていいと思います。具体的にはまた議論がありましたときに補足させていただきますが、そういうことでございます。
     それでは全体につきまして、特にポリシーミックスを中心にさらにご議論いただければと思います。どこからでも結構でございます。
     あと、今日は何人かの方から資料を出していただいておりますが、これは参考資料の方にも含めるということでございます。この報告書と参考資料を一緒にしたものが13日の企画政策部会に出す予定の報告書になる予定でございます。中身はもちろん今日議論しまして、もう一回手直しがございます。
     それでは、そういうご理解でご議論を進めていただきたいと思います。

    【横山委員】 質問ですが、モデル1が加わった理由をお尋ねしたいんです。確かにそういう提案があったことは記憶しているんですが、それについてそのとおりだということも別になかったし、なぜ4つのモデルにプラス1が急遽加わったのか、その辺をもう一度ご説明していただけますか。

    【環境保全対策課長】 先回の議論の後、各委員から意見を出していただくということで、その会議の後でございますが、お手元に配っております資料3にも寺門委員からご指摘がございました。前回は4つのモデルでございましたが、それについて具体的な提案をいただいたものでございます。私ども事務局としてはその提案を前回ご検討いただいた4つの中に加えさせていただき、5つのモデルとして新たにまたご検討いただきたいということでございます。繰り返しになりますが、具体的なご提案をいただきまして、その中に入れたということでございます。

    【安原委員長】 今日のこの会合でこの資料をベースにしてもう一回ご議論いただいて皆さんのご了解がついた線で固めるということでございますから、今日はいろいろ議論していただきたい。ですから、これは提案でございます。前回までの議論を踏まえてできるだけ盛り込んで提案している。それに対してこれでいいかどうか今日ご議論いただきたいということです。

    【村上委員】 7ページの一番最終段落に書いてあることです。いわゆる京都メカニズムは「排出量の削減と吸収量の増大を行うための計画に沿って対策を実施したにもかかわらず」ということで、その後で京都メカニズムを政府が使う。政府が使うということは民間には使わせないということなのかどうか。
     もう一つは、モデルの図表を見ますと2008年以降は京都メカニズムを使う可能性が記されています。これは全部そういうことになっていますが、それまでの間は国内取引でとにかく6%減らすということを書かれていると読み取れるますが、そういう読み取りでいいのかどうか、2つ質問したいと思います。

    【環境保全対策課補佐】 ご説明申し上げます。
     まず最初にご質問いただきました政府のみが取引を行うのかということでございますが、106ページ以降の図で申しますと二重線の右側にございます京都メカニズムの利用によって最終的に調整して6%の削減に整えるという部分につきましては現時点では政府のみを想定しております。
     他方、その下にございます2008年からでございますが、6%削減に当たりまして今の政府部内の考え方では当初より国内対策に加えて京都メカニズムを活用していこうという考え方に立っておりますので、その当初より予定している京都メカニズムの部分につきましては政府だけではなくて民間の参加も視野に入れて幅広い検討が今後なされていく部分であると考えております。
     今申し上げことと重複いたしますが、したがいまして、6%すべてを国内で行うという考え方に立っているものではございません。

    【村上委員】 そうすると、この図表だけですと2008年以前は京都メカニズムの活用による排出枠の利用をしないように読み取れますが、そういうことでよろしいんですか。

    【環境保全対策課補佐】 具体的な義務がかかります2008年以降の達成につきまして京都メカニズムを活用するということでございますので、逆に申しますと現時点での理解といたしましては2008年の第一約束期間が始まるまではそれぞれの国が適切と思われる削減を国内で行っていくという絵になっております。

    【村上委員】 そうすると、シンクの方はどういうことになるのですか。

    【環境保全対策課補佐】 シンクにつきましては冒頭の「はじめに」のところ、1ページの下から2番目のパラグラフで一言言及しております。ご指摘いただきましたように国内対策としては吸収源対策、シンクの整備も含まれるところでありますが、吸収源に係ります国際的なルールが定まっていないことから今回この小委員会の一連の議論の中では積極的に取り上げておりません。そういうことを「はじめに」で一言お断りを申し上げているところでございます。

    【村上委員】 わかりました。

    【横山委員】 今の吸収源のことですけれども、113ページに今のように余り議論しなかったということで「吸収源については、再開COP6の結果を踏まえて検討することが必要である」という表現になっていますが、COP6の議論でも吸収源をどうするかということが非常に重要なテーマになって、それが事実上の決裂にもつながっていたと私は理解しています。この3.7%が出てきた経緯も余りはっきりしていない、数字もつじつま合わせだと私は理解しています。
     せっかく小委員会としてこういう報告書をまとめるときにシンクについて何の意見も言わずに出すのは非常におかしいというか、残念な気がします。今後の国際交渉でもシンクの問題は重要になるので、小委員会としてシンクをどう考えるのか。3.7%という数字はもうやめにして、これは白紙に戻してやるべきではないかというぐらいの意思表示をしてもいいのではないかと思うんですが、座長、いかがでしょうか。

    【安原委員長】 その点は113ページをご覧いただきますと最後の締めくくりのところで「6%削減の内訳について」ということで中央環境審議会としてこの内訳について今後検討していくべきではないかという意見を出しておりまして、その中で113ページの1行目に「吸収源については、再開COP6の結果を踏まえて検討することが必要である」という言及をしております。それでご理解いただけるかと思います。

    【横山委員】 もちろんそれは読んだ上で言っているんですが、この表現では余りにも抽象的過ぎるし、COP6の最大のテーマだったことに対してほとんど言及していないと同じことだと思うので、この辺の表現をもう少し変えるなり何らかの意思表示をすべきではないかというのが私の提案です。

    【安原委員長】 再開COP6の結果を見ないことにはこれが国際的な取り扱いとしてどうなるかわからないわけでございますので、意見としてはその結果を踏まえて検討するということで出そうということにしておりますので、できればこれでご理解いただければと思います。もし何か別の表現でご提案があれば具体的に提案していただいて議論したいと思います。

    【浅岡委員】 その点の意見ですが、2ページの2つ目の段落のところで「はじめに」という今回の議論です。「来年開催予定の再開COP6での国際的な合意形成に向けて、我が国が他の先進諸国に遅れることなく国内制度の整備、構築を進めることは、ますます重要になりつつある」という理解でありまして、これは国内制度の整備、構築が再開COP6での国際的合意に前向きに貢献するという認識のもとになされていることだと理解いたします。
     そういう観点から横山委員の発言もあると思いまして、吸収源につきましても再開COP6の結果を踏まえてではそこに貢献することができないわけでありまして、再開COP6に向けて、この合意形成に日本が寄与していくためには6%削減の内訳についても検討することが必要であるということになると思います。これまでの審議経過におきましても、COP6での状況を見ましても、また先ほど浜中部長からご報告いただきましたオタワ会議の状況等を鑑みましてもそうなるかと思いますので、113ページは「吸収源については、再開COP6での国際的な合意形成に向けて6%削減の達成内訳についても検討することが必要であり」というふうにつなげて、「結果を踏まえて」という部分を削除していかれるのが日本の前向きな貢献には不可欠なのではないかと私は思います。

    【松野委員】 今、横山委員からお話がありましたが、私が今この検討小委員会に出ておりまして、私自身は研究とかそういう観点が専門ですから、森林のこととか――抽象的に言えば38ページにどういう手法で何%削減というのがありますが、そういうことを議論するのかと思うと、少なくともこの委員会はそうではなかった。そういうことよりは、要はCOの排出を減らすのに政策的に税金あるいは排出権取引という形でどうやっていったらいいかということを中心に議論してきたと思います。最初は出ておりませんでしたので全体の趣旨はよくわかりませんが、多分そういうことでこの小委員会が行われてきたと思います。したがって、森林のことにも数ということにも興味がありましたし、ここに出ているような問題にもパーセントということにも興味がありましたし、いつか建設省の道路云々に関してはかなりしつこく聞いたりもいたしました。しかし、この小委員会の重点はそういうことではなかったと理解しています。
     たしかあれは早川委員からCFCもしばらくたつとHCFCのさらに優れた代替製品ができて、この問題は随分減るのではないかというご発言もありましたけれども、それもそんなにしっかりと議論しなかったように思います。そういうことで、この小委員会ではそういう問題を取り上げなかったので、ここにあるような森林も含めて技術的課題ということも表現してありますが、今回それについて細かい議論はしなかったということで、ほかのいろいろな状況がまだ固まっていないから議論しなかったというのが事実ですから、このような表現が適切だと思います。

    【安原委員長】 どうもありがとうございました。今の点でほかにいかがでございましょうか。

    【浅岡委員】 私は松野先生がおっしゃる趣旨を誤解しているかもしれませんが、十分な審議なり集中的な議論が行われたわけではありませんが、問題点があることは先生自身もいろいろご主張になられたわけです。それが5月ないし6月以降の検討でいいということにはむしろならなくて、議論が未了であるから余計議論を早くしなくてはいけませんし、この政策パッケージ等の議論が本当にどこに必要なのかを判断していくためには先生がご指摘になられた点が本当は必要であったのではないか。
     そういう意味で私が申し上げているのは、第6節は「2002年までの議定書の締結に向けた国内制度の検討」という表題のもとに書かれておりまして、今後の検討でありますので「結果を踏まえて」という言葉を抜けばよろしいということを申し上げているわけです。「再開COP6での合意も視野に置きつつ、これから6%目標の達成内訳についても最新の情報を踏まえて総合的に検討することが必要であり」と続けていかれればよろしいのではないでしょうか。それは松野先生のご意見とも矛盾しない、そういうご趣旨ではないかと私は聞きました。

    【宮本委員】 ただいまの3.7%が課題であるという話があるんですけれども、日本としてこれを主張した理由は十分あるわけです。1990年以降の森林に対する投資または植林がそれだけの評価を受けることについての論理的な理由があるんですが、それが海外に行って交渉したときに、それではアメリカの量が多過ぎるではないか、何もやらなくてもいいではないかという議論でこのようになってきたのではないかと私は理解しているわけです。数字の件は今まで日本がそれだけ主張してきたわけですから、そのこと自体が間違っていなければ、それはそれでいいのではないか。ただし、吸収源に関する考え方が最終的に再開COP6で決まればそれに従ってやらなければいけないと思うんですが、そういうものに準ずるわけですから、今のところ小委員会でそれはけしからんという話をこの場で我々がするのはやや場違いではないかという気がいたします。

    【西岡委員】 今の吸収源の話について私はなるべく早くそういう議論をやっていただかないと間に合わない状況にあると感じているわけです。といいますのは第6節の3項についてですが、確かに地球温暖化対策推進大綱あるいは京都議定書のときに検討した方向と現在の排出量の伸びを見てみますと、そのときはどういう想定でどういうカーブで2010年に向けていくというのが明快になっていないわけですけれども、このままのトレンドでいきますと1999年が非常に伸びた。特にこれは消費が伸びたからだと思いますけれども、現状は単位量等々が発電関係、鉄鋼関係で伸びたりしておりまして、どうも従来の方向からいかないという具合に考えられます。
     そうしますと、特に吸収源だけではないんですけれども、全体6%削減目標についてCOP3の論議で止めることなく、もう少し深く――皆さんのご提案の中にもありますし、この検討会では時間がなくてできないと思いますけれども、どういう対策があるのかということについてもう一度洗い直しをする必要があると思います。そういう面から吸収源について特別な扱いをする必要はないのではないか、これも一緒に討議していただきたいと思います。

    【佐和委員】 宮本委員がおっしゃったことについて誤解があるのではないかと思うんです。
     3条3項で90年以降の植林・再植林云々ということで言えば、0.5%を下回るぐらいの数字にしかならないわけです。つまり、90年以降に植林・再植林したものが2008年から2012年の間の1年平均でどれだけ大きくなるか、あるいはCOをどれだけ吸収するかという量はたかが知れているわけです。ところが、3.7%という数字は2010年の時点における全森林の吸収量なんです。ですから、そこにある種の飛躍があるわけで、その飛躍の根拠として持ち出されているのが3条4項です。いわゆるフォレスト・マネジメントによって吸収量を増やした分はカウントするということですが、それについては一気に算定することが難しいから全吸収量の3.7%とカウントしようというのが日本政府の公式見解であって、それに対してプロンク提案の15%というのは前回も申し上げましたようにみなしなんです。結局、実際に100大きくなったときに100のうち15はフォレスト・マネジメントによって吸収量が増えた分だとみなそうと。同じマネジメントをやっても木の種類によって吸収量の増分は違いますし、気候条件とかその他もろもろの条件によって違うから平均的に大体15%とみなそうという趣旨だと思うんです。
     ただし、いずれにせよシンクのことは今まで余りここで議論しなかったし、これからシンクの問題はそういう意味で非常にコントラバーシャルな問題でもあるし、今まさに再開COP6までに、つい先日も先ほど浜中部長からご報告があったようにオタワでも議論されたということですから、ここであえてそれを書く必要はないと思います。
     ついでに、これはむしろ環境庁に対して質問です。business as usual で20%増加するというのは資料を拝見すると平成9年9月か10月、要するに京都会議の直前に合同会議に提出された資料に基づくということになっています。以来3年を経て、平均2%の経済成長率を2010年まで望むことは成長率自体も余りにも過大だし、その点については112ページにもメンションされているわけですが、世論の中で今後BAUをもう一遍根本的に見直すという計画はないんでしょうか。つまり、見直さないとおかしいと思うんです。川口長官もハーグでの演説の中で20%か21%、business as usual はこうだということで business as usual があたかも客観的という言い方はおかしいですけれども、そういうものだと。もちろん言うまでもないことですけれども、BAUの数値自体はどういう前提を置くかによってどうとでもなるわけです。私自身はその他もろもろ産業構造の変化とか、そういったことまで視野に入れてBAUを考えると、恐らく今言われているものの半分近くになるのではないかと思うんです。ですから20%は過大であって、20%にマイナス6%と言ったら全部で26%も削減しなければいけないという議論がしばしばなされるわけです。だから、ほとんど不可能を要求するに等しいということをおっしゃる方が多いわけです。その辺をもっと緻密に見直す必要があると思うんですが、いかがなものでしょうか。

    【環境保全対策課長】 おっしゃるとおりだと思います。今は97年当時の数字を使っておりますが、ご案内のとおり総合エネルギー調査会でも今年の3月だったと思うんですが、エネルギー需給両面の最近の変化に鑑みまして幅広く総合的に検討するということで現在検討されております。私どもがお伺いしているところによりますれば概ね1年ぐらいかけてということだったものですから、来年または来年の春先以降かと思いますが、何らかの形で検討の結果、それはエネルギー需給見通しの見直しにも当然かかってくると思われます。そういうことになりますればBAUの前提が大きく変わるということでありますので、当然のことながらそれに沿って将来の見通しも変わることになるということでございます。具体的にいつというのは今なかなか申し上げられないんですが、今そういう検討が進んでいるということでございます。

    【安原委員長】 ほかにございますか。

    【横山委員】 吸収量について私もここでもっと議論してと言うつもりは全くありません。ただ、最後の表現の「吸収源については、再開COP6の結果を踏まえて検討することが必要である」の中に例えば「当初の目標だった3.7%に固執することなく」とか、その辺のことを入れていただければそれで結構です。

    【安原委員長】 いろいろご意見はございますが、先般のCOP6でも吸収源の扱いが大変大きな国際交渉のイシューになりましたし、一方、この小委員会としてこれまで吸収源のことは検討しておりませんので、非常に微妙なこの問題につきまして新たな表現をとる場合に適当な表現があるのかどうかはここで直ちに判断がつきかねると思われます。いずれにしましても、これは検討してくださいということを中央環境審議会に報告しまして、それを受けて新しい中央環境審議会でどういう検討を進めていくかということで新しい中央環境審議会の判断でございます。特に検討してほしいということが伝われば、そのスタンスは新しい中央環境審議会で検討してもらわざるを得ないと思いますので、ここでどう言ったから、そのスタンスを変えてどうこうということまではなかなか言いにくいのではないかという感じがいたしますが、いかがでございますか。

    【浅岡委員】 私が申し上げたのは、この小委員会で検討することが時間的にいつどこであるのか、これは終わりになるんですから今日議論しなければいけないと申し上げているのではなくて、報告として「再開COP6の結果を踏まえて」が不適切ではないかということを申し上げているんです。「再開COP6の結果を踏まえて」ということであれば、中央環境審議会においても5月まで国内政策をどう考えていったらいいのかということについて再開COP6の結果が出てから考えるべきととらえて報告することとなるわけですから、そうではなくて、もっと柔軟に考えるべきだという意見を申し上げることが必要ではないかと思います。だから、吸収源については再開COP6での合意形成に向けてもう一度検討することが必要であるということが伝わればよろしい、そうしておくことが必要ではないでしょうかと申し上げているんです。
     先ほど宮本委員が日本の3.7%は論理的に間違っていなかったと、いかにも論理的であるかのごとく最近非常に強調されておりますけれども、佐和先生がおっしゃったようにどこに論理があるのかという点はむしろ日本の主張の方が明らかにIPCCの報告にも反するわけですから論理はないと思います。さらに、国際交渉というか、産業界は日本もアメリカと競争する関係にあると認識しているはずだと思います。日本が100%主張するということは今はキャップをかけてもアメリカにもいずれ100%主張することを認めるということでありまして、3.7%の主張はそうした上で選んだ政策なのでしょうか。こういうものを論理と言うのか利害と言うのか存じませんが、そうした判断をなさっているのか。その整合もとれていないのであれば、とても論理的な主張とは言えない。
     私は政府にご質問したいと思いますが、25日早朝に合意ができたかもしれないと報道されておりますような森林管理について5%ディスカウントするという提案をアンブレラグループ側から主張されたとして、あるいは日米側から主張するについて、これは日本政府も中に加わってなさったということでしょうか。そういうふうに聞くしかないんですけれども、それでよろしいんですね。報道されているところでは最終的に日本がひょっとしたら合意できたのではないかという提案は、日米側からなさったものだと思いますけれども、それは5%ディスカウントするという提案であったということのようですけれども。

    【地球環境部長】 まだ交渉中、中断して再開会合に向けて国際交渉の途上にございますから申し上げられることに限りがあることをあらかじめご了承いただきたいと思います。
     何らかの形で吸収量の制限を行うことについては国際的に議論の大勢の方向がそうなっていることは事実でございまして、それをどういう方法によって行うかについてはディスカウントという方法もありますし、キャップのような全体に枠をかぶせる方法もありますし、さらには閾値(いきち)のようなものを適用するといったことで今いろいろな考え方が出されている現状であります。そういう中で1990年以前のものと以降のものをどう区別できるかということとか、いわゆる間接的・人為的影響というCO濃度が増大すること、あるいは酸性雨の原因になりますような窒素酸化物が地上に降下して、いわば肥料をまいたような効果があるものについてどのように除外できるかについて現状の科学的知見と照らし合わせてどういう解決策があり得るのかということが議論の焦点になっているわけでございます。
     もう一つは、いずれにいたしましても吸収源による吸収量の全体的な規模の問題についていろいろな懸念がございまして、これに対してどう答えていくかが国際的な議論の焦点になっている中で最終段階におきまして私どもがアメリカ、カナダと共同いたしまして妥当な解決策を目指して提案させていただいたというのは事実でございますが、いずれにいたしましてもまだ合意がないわけでございます。引き続き国際交渉中ということでございますから、ただいま具体的なご質問がございましたが、それに直接お答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

    【浅岡委員】 私が申し上げたいのは、いずれにしましても100%にするか5%ディスカウントして95%にするか、ベースをそのようなものにいたしましたときに日本の産業界としては大変大きなクレジットをアメリカに与えることを容認しているということを論理的にお考えになっていただきたい。その上で見直すことについて本当に前向きにお考えになっていただきたい。それはご理解いただけると思いますから、このCOP6の結果を踏まえて検討するということを今ここでわざわざ「結果を踏まえて」と書く必要があるでしょうか。少なくとも吸収源については検討することが必要であるというぐらいにでもしかおかれて、この問題は全くアンタッチャブルであるというふうにするのはこの審議会の態度として望ましいとは思いません。

    【西岡委員】 既にCOP6ではある提案が出まして、吸収源がそういう定義になると日本にどれぐらい意味するかということはいろいろわかっているわけです。それを考えますと、この文章から例えば「再開」という言葉を取って「COP6の結果を踏まえて検討する」という案もあるのではないかと思うんです。2つ目は「COP6の論議を見据えながら検討する」ということで、いずれにしても吸収源がどれくらいの幅になりそうだということはわかっているわけですから、それをベースに、それが6%に対してどういう影響があるんだろうかということを論議してもいいのではないかというのが私の修文の案でございます。

    【安原委員長】 確かに論議は幾らでもやれると思うんですけれども、具体的な数字を踏まえた検討ということになりますと、やはり再開COP6との関係が重要になってくるという感じがするのでございます。この表現については今のところ委員の間で意見が分かれていると思うんですが、これはあくまで検討してくださいということでご報告して、そしてCOP6再開の前であっても国内対策を積極的にいろいろ検討し、再開国会にできるだけいい影響を与えるように持っていこうという努力をいろいろな分野ですることを妨げるものでないわけでございます。最終的にはどうしても国際合意が生まれた上で検討することにならざるを得ない。その姿を一応とらえて書いて、その前の段階では幅がある行動がいろいろとれると思うのでございますけれども。

    【佐和委員】 何となく事務局の見方をするような格好になりましたけれども、前回、私が修文の提案として前回の報告(案)の終わりの方に「地球温暖化対策推進大綱の6%の内訳を前提として議論してきた」という表現があったのをそういうつもりはないということで省きました。したがって、全体の中で3.7%ということはどの議論においても一切前提とされていないわけです。だから、このままでいいんじゃないですか。地球温暖化対策推進大綱の内訳を前提として議論してきたという表現があったので、それを結果的に除きましたね。ですから、我々は3.7%ということを前提として議論しているわけではないということです。
     ただし、例えばシンクを――つまり、国内対策の中で森林吸収量を増やすためにどういうふうにして植林すべきであるということは全く議論しなかったですね。だから、シンクについて全然議論していないことはある意味ではいいことだったと言ったら変ですけれども、COP6がああいう形になったことを前提とすれば余り議論しなくてよかったと私自身は思っているんです。だから、私は再開COP6の結果を見ないとやはりという感じがするんです。

    【品川委員】 113ページの記述をめぐっての話ですので、その点について私の意見です。
     先ほどもどなたかのご発言があったように、この小委員会自体はCOP6との関係で言えばCOP6での検討経緯を見ながら、いわば国際的な合意形成を促進する上でも役立つような国内対策を論議しようという立場で全体としては論議してきていて、そういう点では国内の排出源対策が主要な論点で、吸収源対策については論議してこなかったことは確かだと思いますが、ともかく全体としては合意形成に役立つような論議にしようということでの国内対策論議が中心だったということからしますと、吸収源対策だけCOP6の結果待ちということが記述としてこだわられる理由は余りなくて、浅岡委員も言われるように結果のところが焦点だということであれば「結果を踏まえて」という記述について削除するのは十分にあって、今後検討することによって障害が何か起こるということでもございませんから、それでよいのではないかと思います。

    【安原委員長】 確かに合意形成を促進することも一つの狙いとして検討してきたんですが、一番のポイントは国内対策で目標を確実に達成するための方策はいかにあるべきかという観点を中心に検討してまいりまして、そういう検討がどんどん進めば結果としていろいろな国際的な合意形成を促進する効果を持つであろうというスタンスだったと思います。ですから、重点は確実性をどう担保するかということが中心でございます。これはあくまで国際交渉の場で議論され、どうなるかという問題ですから、それを待って対応せざるを得ない問題だろうと思うんです。
     こればかりやっていますと、ほかにいろいろ重要な論点がございますので。

    【佐和委員】 29ページをご覧いただきたいんですが、ここに環境税についての議論のポイントが太字で出ております。ここに「環境税については、規制的手法と異なり継続的排出削減インセンティブが働く点で優れているとみるべきか、排出量すべてに課税されるため削減投資に見合った課税額の減額が得られないおそれがあり削減のインセンティブは働かないとみるべきか」という表現がありますが、私も常時この委員会に出席していたわけではないので、恐らく私がいないときにこの後半の意見が出ていたと思うんです。それは下の主な意見の下から2つ目、国に税を支払うことになるのだから、これは国に対策を預けることになる。これは経済学的に言えば全く誤った議論なんです。
     つまり、仮に炭素1t当たり1万円という税率で炭素税が導入されたとすると、要するに削減の限界費用が1万円以下の削減はした方が得だからするわけです。さらにもっと削減しようとすると1t当たり1万円以上かかるから、それだったら税金を払った方が得だからそれ以上は削減しないということです。ただし、コストが1t当たり1万円のところまではちゃんと削減するわけです。それが量的に非常に少な過ぎれば2万円にする。2万円にすれば、今度は限界費用が2万円のところまでは削減するのが普通の経済学の常識であるわけです。ですから、これは限界費用という考え方を全然ご理解なさらない意見だと思うんです。だから、これはおかしいですよ。こんなことを書いたら経済学的に間違っているではないかという議論になりますので。

    【寺門委員】 これは私の意見ですから、一遍議論しましょう。

    【佐和委員】 だから、これが仮に最終報告になるとすると……。

    【寺門委員】 だけれども、佐和先生だけが絶対的に正しいとは言えないので。私の意見が間違っていれば、あいつは間違っていると言ってもらっても結構ですから。そのときにはそれなりに説明したつもりですけれども、違うと言うのなら佐和先生ともう一回直接議論しなければしようがない。

    【佐和委員】 そうすると、ご意見の中で「環境税については、排出量全てに課税されるため、税率設定の在り方によっては経済的な負荷が大きい。即ち、排出量を10%削減したとしても、残りの90%には課税されるため」ということですから、じゃあ何で10%削減するんですかということです。つまり費用が安いのは、仮に1万円という税率だとすれば1万円以下で削減できるところは削減しました、結果的にそれは排出量の約10%でしたということですね。

    【寺門委員】 10%削減するために相当の投資をするということですね。今、佐和先生は投資をお考えになっておられないから……。

    【佐和委員】 もちろん投資をしないと……。

    【寺門委員】 だから、10%の削減をするために相当の投資をする。しかし、既に全体に対しては10%の負担がかかっているということですね。

    【佐和委員】 つまり、投資したということは投資した方が税金を払うよりは得だから投資したわけですね。

    【寺門委員】 今でもエネルギーに対して100というコストがあるわけです。それにさらにコストが10%乗りましたということです。

    【佐和委員】 コストというのは要するに税金分だけコストが……。

    【寺門委員】 単価です。エネルギーの単価が10%上がって110%になりましたと。それで今度は横軸の方を10%削減しますと。そのために大変な投資をするわけですが、環境税では、その削減費用は10%の削減しかできていない。90%はそのまま残っているということですね。ですから、負担はそのまま90%残っているわけです。

    【佐和委員】 それは高い税金を払ったという言い方をしてもいいし、あるいは高いエネルギーコストを払う方が得だからです。それ以上さらに削減しようと思ったら限界的な費用がもっとかかって。

    【寺門委員】 だから、負担が非常に大きくなりますねということを言っているわけです。

    【佐和委員】 そういう意味ではそうですね。だけれども、それはインセンティブが働かないということ……。

    【寺門委員】 だから、それは投資の負担と課税による二重の負担があるということです。それで削減は10%だということですから。

    【佐和委員】 だから、10%までは投資した方が得だから削減するわけですね。

    【寺門委員】 しかし、何も変わらないわけですから。

    【佐和委員】 そういう意味で負担が増えることは事実です。

    【寺門委員】 そういう意味では税が乗っていますから、はっきり言って何も変わらないんです。10と10だったら変わらないんです。結局、投資だけやったということになるわけです。横軸を10%削減し、縦の方は10%上に乗っている。そうすると、10%削減しても何も変わらない。投資という負担だけが入ったということです。

    【佐和委員】 つまり、それは全く何の投資もせずに100%の税を払うという表現で本当はコストが上がるということですけれども、払うという表現で許していただけるとすれば、100%の税金を払うよりは投資した方が得だからするわけです。

    【寺門委員】 だから、それができないということです。10%削減するために投資をしようとする。しかし、既に負担が10%乗ってしまっているわけですから、削減しても何も変わらないということですね。

    【佐和委員】 そんなことはないですよ。

    【寺門委員】 企業負担は何も変わらない。投資だけが増えたということです。

    【佐和委員】 まるごと税金を払うよりは投資した方が得だからしているということは、それだけ費用が少ないということです。

    【寺門委員】 絵を描きます。非常に明確だと思いますけれども、要するに今はこういうふうにコストがかかっているわけです。横軸が量で縦軸が単価だとしますと、環境税は単価の方が10%乗りましたと考えればいいわけです。それを今、横軸の量を10%減らしましょうといったときに税としては環境税のここが削減されるだけです。投資はちゃんとしたわけです。だけれども、これは残っているわけです。そうすると、これとこれがイーブンだったら企業には何も変わらないわけです。投資だけやったということです。これとこれがイーブン、10%・10%であれば。

    【佐和委員】 それだったら投資しなければいいわけでしょう?

    【寺門委員】 投資しないで税金だけ払うわけですか。

    【佐和委員】 税金は払う。

    【寺門委員】 だから、それはどうするんですか。企業はどうやって成り立つんですか。

    【佐和委員】 いろいろな税金はそういうものでしょう?

    【寺門委員】 国際競争としてはどうやって成り立つんですか。

    【佐和委員】 ですから、もちろんその問題は大きな問題として残されるわけです。ですから、例えば……。

    【寺門委員】 インセンティブは働いていないということですね。

    【佐和委員】 それを議論し出したらきりがないですけれども……。

    【寺門委員】 そういう見方もありますでしょう。そういうふうに見れるでしょう? 投資しても税金は何も返ってこないわけです。

    【佐和委員】 税金を払うよりは得だから投資するんですよ。

    【寺門委員】 だけれども、90%は税金が残っているわけでしょう?

    【佐和委員】 税金は払わないといけませんよ。それは税金を払った方がさらに投資するよりも安くつくからですよ。

    【寺門委員】 投資の一面というのはみんなそれがあるからやっているわけです。だから、幾らでも単価を上げればみんな投資するわけです。

    【佐和委員】 単価というのは?

    【寺門委員】 国際的に競争できるなら。

    【佐和委員】 だから、多くの国が鉄鋼を初めとするエネルギー多消費型産業については免税しているわけです。

    【寺門委員】 私はその議論をしているわけではなくて……。

    【佐和委員】 国際競争力という観点からね。

    【寺門委員】 そうです。だから、エネルギーという投資という意味合いだけ議論して、鉄鋼業とか何とかいう話を抜いて産業というエネルギーを使っている者にとってはどういうことでしょうかということを言っているわけです。

    【佐和委員】 ですから、それは投資することが損か得かということの判断で投資しているわけです。

    【寺門委員】 しかし、税をかけた10%はどこにいくんでしょうか。佐和先生は全部が国内どこかに回るんだからそれは構わないと言うわけですね。

    【佐和委員】 政府にいくわけです。

    【寺門委員】 それでは、政府が企業に代わって投資してくれるんですかということになるわけです。

    【佐和委員】 その場合、結局は一般財源に組み入れるか特定財源にするかということで話が違ってきますし。

    【寺門委員】 だから、そこは非常に複雑でしょう? そういうことではなくて、政府が企業に代わって削減対策をやってくれるんですかということになるわけです。

    【佐和委員】 特定財源の場合はそういうことになるでしょうね。

    【寺門委員】 なりますね。

    【浅岡委員】 もともと投資は何年かで回収してもっと大きな利益を得るという計算の上になさっているわけですし、炭素税分がすべて企業に戻ってくるべきと求められる方がおかしいんじゃないの?

    【佐和委員】 その議論はおかしいですよ。何を言っているかよくわからない。

    【安原委員長】 これ以上の議論は別途お二人でやっていただいて、案文自体が固まらないと困りますので固めていただきたいんですけれども、ほかの論点についてどうぞ。

    【宮本委員】 今回のポリシーミックスの中で確実性というのを非常に強調される。これは非常に重要なことだと思うんです。しかし、これから国民に理解を求めるためには確実性だけを言っていいのだろうかと思うんです。一つは、国民というのは持続可能な社会をつくろうとしているわけです。その持続可能な社会とは何かというと、一つは環境というものが非常に厳しいんですが、エネルギーという観点で見ればもう二つあると思うんです。一つはエネルギーセキュリティというのがあるわけで、もう一つは経済性があるわけです。この三つのトリレンマがあると思うんです。このことについて確実性ということだけで全部を書いてあるんですが、最初のどこかにエネルギーセキュリティとか国民経済に対する影響等も総合勘案しながらやらなければいけないけれども、どうしても確実性は必要ですという一文がないと、全体をずっと読んでいきますと、一般の人が見たとき非常に厳しい環境規制という感じに受け取られないでしょうか。
     中身を見ていると、一番最後のところに議論の中でこういう議論があったということを付記していただいておりますから私は結構だと思うんですが、その1行か2行を一番最初のところに1行書き足すことによって国民的な同意を得ながら進めていくというトーンが書けないだろうかと思うんですが、いかがでございましょうか。

    【環境保全対策課長】 今ご指摘の点は包括的に112ページの「ポリシーミックスによる政策パッケージ」というところで総論として今のご指摘の意を呈して表現できるように検討させていただきますので、よろしくお願いします。

    【浅岡委員】 誤解は多分ないと思いますけれども、もちろん持続可能な社会というのは社会的要因や経済的要因や省資源の意味からも総合的に考えるものであることは皆さんも異論がないと思いますが、そういう表現をすることによって場合によっては削減目標が達成されないようなことがあっても仕方がないというふうに読めるようにならないようにお気をつけいただきたいと思います。ですから、京都議定書の数値目標を日本が批准していくことは約束を守るということですから、それをどのようにして達成することが総合的に持続可能な社会に向けて調和的であるのか、そうした政策措置を長期的に考える。それは私は賛成しますけれども、先ほど申しました誤解がないような記述をお願いしたいと思います。

    【安原委員長】 わかりました。その点は事務局の方で配慮してください。
     先ほどの一番冒頭に戻りまして、横山委員からご指摘がございましたモデル第1を新たに入れているわけでございますが、これはこういう形で皆さんもご了解いただけるでしょうか。できるだけ現行施策をベースにしながら対策をできるものは強化していくということで、ある段階でここに縦の枠がございますように各施策を評価して、取組が遅れていればその辺につきまして強化をいろいろ検討していくというスキームでございます。

    【横山委員】 今後の温室効果ガス削減でどういうことをやっていくかということで、小委員会としていろいろなモデルを示して提言する。そういう中にモデル1が入ってきた場合、仮にこれが採用された場合、現実にはほとんど何にも変わらない。これまでと何ら変わらないということで、この小委員会が一体何をやってきたのかということにつながるわけです。前回の議論でも新たなモデル1について賛成する方がほとんどいなかったことを考えても、このモデル1を入れる必要は全くないのではないかと思います。

    【佐竹委員】 これが入ってきたのは成果がまだ十分わからないからというのが唯一の理由かと思うんですが、ほぼこれでは足りないという結果が出ているのではないか。したがって、横山委員も今言われましたけれども、新しい検討に値するモデルであるというのはいささかいかがなものでしょうか。私はそう思いますけれども、極めて常識的な話ではないかと思うんですが。

    【塩田委員】 私は今の第1のモデルはあった方がいいという意見です。
     その理由は今のお二人のご発言に関連するんですけれども、これからどういうふうに対策を進めていくかに関して各分野別の推進メカニズムについてこの報告書で触れられていますが、それは97年につくられたものにほとんど採録されているような内容になっています。その効果がなかなかよくわからないということで、ただ一方、情報システムは整備していくということをこの報告書に書き込まれているわけですから、今までの推進メカニズムでどれだけのことができるのか。大きな効果がある政策についてできるだけ早くやってみる。それで足りない部分はいろいろな政策を導入して補っていくというアプローチがあってもおかしくないのではないかという意味で入れておくべきだという意見です。

    【佐和委員】 あくまでも一つのリファレンスですから、この地球温暖化推進大綱重視モデルの意味、内容をざっと見たところ、要するに自主的行動と政府の規制によってこれを乗り切ろうという立場です。つまり、経済的措置を一切使わない。それに対してモデル1があって、モデル2が実績取組をやや強化したモデルであって、そしてモデル3以降は経済的措置を何らかの形で導入するということですから、経済的措置を一切導入しない、そして政府が京都会議直後からこういう方針でやろうと言っていたのがまさしくこれですから、これがないとかえってわかりにくいと思うんです。これは政府が今まで言っていることですよ、これでは恐らくインプリケーションとしては無理でしょうということに多分なると思うんです。あるいは、できもしないことを書いているということになるかと思うんです。だから、そういう意味ではあった方がずっといいと思います。

    【佐竹委員】 一種の思考実験といいますか、思考のタイプを示すという意味ではいいわけで、別に私は何が何でも削除しろというわけではないんです。佐和委員もこれではなかなか難しいだろうという意識をお持ちのようですし、私も何が何でも削れということではないんです。

    【佐和委員】 モデルというのは、これがいい意味ですよと言っているわけではないでしょう?

    【佐竹委員】 それはそうです。少なくとも思考実験ですから。

    【猿田委員】 まさに佐和先生と佐竹先生が今おっしゃったようなことと同じ意見ですけれども、比較するものが幾つかあって初めてその中でどれがいいかもわかってくるということで、一つだけでは比較になりませんので、これしかないのかということにもなりかねないわけです。
     いずれにしてもこのモデル1でどうかということになりますと、112ページに「状況は、大綱を策定した時点と状況は大きく変わりつつある」という表現もあるわけで、政策大綱を中心にやっていくという中で状況が大分変化してきているわけですから、先ほどお話がありましたモデル4あるいはハイブリッドのモデル5とかいろいろなものが必要になってくるわけです。この中でどれを選ぶかというのは今後の状況の変化あるいは施策上のいろいろな問題等も関連して決められるべきものでしょうから、モデル1を削除すべきであるということではなくて、むしろ掲げておいて、その中で今後の状況等を見ながらどれがいいのか。私は個人的にはむしろ後の方にいくだろうと思いますけれども、今そういう中で削除云々ということではなく、それなりに比較できるものとして掲げておいていただければよろしいのではないかと思います。
     それから、先ほどの113ページの吸収源のことです。再開COP6の結果を踏まえてということですが、これはその下の「こうした状況の変化に鑑み」という言葉が上からBAUあるいは二酸化炭素あるいはHFC等を踏まえ、それから吸収源を踏まえてこうした状況の変化と来るわけですね。

    【安原委員長】 そうです。

    【猿田委員】 そうすると、なおさらまとめにくいのかなと思うんですが、「吸収源については再開COP6において再度検討されることでもあり」という表現でいければと思っていたんです。その辺は「検討されることでもあり、こうした状況の変化に鑑み」とつなげれば比較的理解しやすいかなと思ったんですが、ここでそれぞれBAU、CO、HFC、吸収源を踏まえてこうした状況となっていると、そういうまとめもちょっとあれかなと。むしろ吸収源の前の「-」を外してしまえば、そういうのでつながってくるかなという気もします。意見として申し上げておきます。

    【寺門委員】 私はモデル1を追加してくださいということでお願いしたので一言だけ申し上げたいんですけれども、地球温暖化対策推進大綱の中身は今はどちらかというと一つ一つの分裂したと言ったら語弊があるんですが、分裂した対策なんです。その全体観がまだよく見えない。産業界は自主行動計画と民生、運輸に関わります機器の規制を受けているわけです。今、それに向かって進めているわけです。そういうものは多分2005年ぐらいから急速に立ち上がってくると思いますが、そういうものがより効果的に実効を上げるということをどうやって進めるのだろうか。そういうことは早目にやっておいた方がいいと思うんですが、モデル2でも例えば税のグリーン化というのを一回は取り出して入れていただいているわけです。そういう意味で機器がより社会的に国民の環境への意欲を引き出すようなインセンティブと罰則と言ったらおかしいですけれども、ディスインセンティブが働くようなことは全体として考えていって、ライフスタイルという言葉を簡単に言うんですけれども、国民全体にそういうものが浸透していくようなことを機器だけに頼るのではなくて、そういうものを生かすようなことをやっていくべきだというのがここに省エネ機器云々と書いてあるわけです。
     それから、モーダルシフトについても必ずしも十分に進むようではなくて逆行していることも見られるわけです。この前、別の会議に行ったときに例えば東京駅から大阪まで行くのに新幹線と航空機がどういうふうに変わっているかといったら、航空機の方がどんどん増えているんです。だけれども、時間的には余り変わらないんです。乗り降りと待ち時間を加えると2時間半ですから、ほとんど変わらない。だけれども、現実には航空機の方がどんどん増えている。航空機が増えているのはなぜかといったら、安いから。ところが、新幹線の方は過去の負担が入っているからコスト的には勝てないと言ったらおかしいですけれども、ほとんどイーブンである。だから、乗らないと言ったらおかしいけれども、逆に乗客がどんどん増えてしまっているんです。これはエネルギー効率が5倍ぐらい違うんです。実態としてはそういうことが起きている。
     しかし、これは過去の大きな問題もいろいろあってできていないんですけれども、そういうことも含めてモーダルシフトをどうやって進めていくのか。鉄道の貨物列車になかなかいかないで貨物列車がどんどん減って、片方でトラックがどんどん増えていくということですけれども、多分これも利便性とコストの問題だと思うんです。そういうものをどうやって動かしていくのかということを具体的にやっていかないと、税でも効果があるのかどうか知りませんが、それだけではなかなかいかないのではないか。そういうことを一遍整理してみる必要があるのではないかということをこの枠の中に書いていただいているわけです。
     これは自主的取組強化モデルというと、どちらかというと産業界だけの自主的取組強化モデルとなっていますけれども、そうではなくて産業界は民生、運輸に対してもいろいろな関わりをしている。そういう関わりを生かすような社会的なシステムは何だろうかということを議論していただきたいという意味でここに書いているわけです。そういうものができて、そしてなおかつその効果が出ないというとき、これはモデル3、4に別にあって構わないわけですし、それは上乗せしても構わないわけですし、それはぜひやっていただきたいということで自主的取組強化モデルをベースとして上乗せしていただきたいというのが私の趣旨でお願いしたわけでございます。

    【佐竹委員】 寺門委員のご趣旨はよくわかりました。私もそういう意味では賛成です。
     これだけCO問題、温暖化ガス問題を取り上げてかなりの期間がたつのに、環境庁はもちろん通産省と違って一時的な産業に対するアプローチはないですけれども、COの製品当たりの排出原単位がどのくらい違うかをきちんとつかんでいない。一体ばらつきがあるのかないのか、エネルギーコストとして大体並ぶと思うんです。しかし、COになった場合は果たしてどうかということについて実態をきちんとつかんでいない。モーダルシフトについても同じです。モーダルシフトについては10年ぐらい前から運輸省の作文にはみんな書いてあるわけです。ところが、実際には今おっしゃったようなことがどんどん進んでいる。なぜそうなるかという分析が足りない。
     ですからモデル1があるのはいいんですけれども、既に政策は講じられているわけですから、産業界としては産業界としての評価があると思いますけれども、確かに2005年ぐらいにならないとはっきりしたものは出てこないかもしれませんが、政府の立場からその実績をきちんとすべきではないか。幸い97年から98年は若干減ったというのがあったわけですが、どこか民間の研究機関が99年を調べたらまた2%増えたという数字が新聞に載っておりました。あの減りが何であったかぐらいは少なくともきちんとつかまないと、本来は中間報告の答申として当然書かれてしかるべきことだと思うんです。費用に則った政策の評価です。これは日本の役所で非常に難しいです。先輩のやったことについていわば結果をはっきりさせるわけですから非常に難しいんですけれども、それをやらないと意味がないのではないかということを申し上げたい。
     もう1点は森林の問題です。表現をどうするかは別として、これは現に交渉している人たちの立場を縛るようなことをやるべきではない。そういう表現の文章を使うべきではない。公開されているわけだから、つまり国内的にもこういう意見があって、少なくとも中間審の中間報告でこういう答申が出ているではないかという論拠を相手方に与えるようなことはすべきではないと思います。
     もう一つ、発言の機会がなかったんですが、森林の問題が取り上げられることがなかったために発言しなかったんです。皆さんにご認識いただきたいのは、今、日本の森林は切りっ放しで造林しないところが増えているわけです。統計的にきちんとつかんでいるわけではないんですが、もちろん天然の植栽は出てきますけれども、今の経済的条件で言えば森林所有者はとても――昔は切ったところは必ず植えるというのが森林所有者の最低限の義務だったわけです。ところが、その習慣が失われつつあるという日本の森林の実態を十分ご認識いただきたいと思います。
     以上です。

    【塩田委員】 皆さんもご承知のとおり温暖化対策については、交通分野の対策が今までのNO対策とか、健康に有害なガスの対策と温暖化対策の内容とは相当違ってくるはずです。今までの自動車の排気ガス対策は非常に精密に調査が行われ、その結果に基づき規制が行われてきたことだと私は理解しております。それに対して温暖化対策の方は寺門委員が今お話しになりましたけれども、主要な対策別の効果ををもっと具体的に数量化していくことがどうしても要るのではないかと思うわけです。
     一つの例として私が申し上げたいのは、今、交通分野で排気ガスのCOを目標年次までに1,300万t抑制しようということになっています。現在のCO排出量をみると旅客が全体の3分の2で、貨物が3分の1だと思いますが、その旅客のうちの大部分は大都市圏で問題が起こっていると思います。先ほど寺門委員が言われた交通分野のモーダルシフトに関して言えば、モードごとの排出ガスの原単位と交通量を掛け算したもので比べますと、現在、首都圏で乗用車で動いている人の10%がもし鉄道に移りますとCO2換算で80万tぐらい減るはずです。80万tというのは交通分野全体の目標の1,300万tに対する80万tですから、ウェイトはかなり大きいわけです。ただ、乗用車で動いている人の10%が鉄道に移ることは今までのいろいろな経験から大変なことだと思っております。というのは、東京においてはもうかなりの人が鉄道に乗っているわけですから、何らかの理由で自動車に乗らなければならない人が乗っている。そういう人に鉄道に乗ってもらうことは、容易ではないのです。都営12号線が明日開業して東京の地下鉄はさらに便利になるわけですけれども、今までの実績では地下鉄がどんどんできても乗車する方はそれほど簡単には増えないんです。より便利になる、あるいは電車が便利に使えるようになる、あるいは混雑が緩和されるということですが、乗る人の数は余り増えない。というのは、そういう人たちに鉄道がこれだけ便利になったんだから何とか乗ってくださいということを一般国民にPRする努力する必要がある。また、交通弱者、お年寄りとかそういう方が乗りにくいということであれば、そういうものを乗りやすいようにしていくとか、電車に乗りたいけれどもピークのときには乗りたくないという人もいるでしょうから、そういう人に対しては時差通勤をもっとやっていくという国民運動的な政策が地球温暖化対策の面から鉄道整備に関連してうまく行われて、地球温暖化防止のためにもみんなが自動車をやめて鉄道に移るということであればかなりの効果が出てくるのではないかと思うわけです。自動車から鉄道に移る人が増加すれば全体がこうなる筈だという概略の数字や、一体交通のどこでCOを減らせるだろうかという全体の概況をある程度把握してやっていかないといけないのではないかと思います。それを概数で結構ですから大きなところを数字でとらえて、どういうところに重点を置いてCOの削減策を推進すべきかもっとつめなければいけないのではないかということを思って、いつもそういう趣旨で申し上げていたわけです。
     もう一つ、交通分野のCO削減策はご承知のように自動車のウエートは90%です。今までのご議論を聞いていますと、自動車の台数や走行量が問題だということをおっしゃる方が多いわけですけれども、私は台数や走行量より渋滞の量の方が問題が大きいのではないかと思っているわけです。同じ走行キロであっても、渋滞している時間が長ければそれだけCOを出すわけですから、そこで渋滞対策にもっと重点を置いてやっていかなければいけないと思います。
     全体では何を申し上げたいかといいますと、国あるいは地方公共団体、事業者が環境対策を進めるにあたって、どういう主体が大きな政策を進めて、最後のところは国民に協力してもらうことが要ると思うんですが、その全体像を具体的にはほとんど示さないで、ただ国民に協力してほしいと言っても、現状の姿はそうなってくる必然性があるわけですから、よほどのことをしていかない限りこの傾向は簡単に変わらないのではないかと思っております。そういう意味でどういう政策を重点にして交通分野のCO対策をするかということはもう少しわかりやすい全体像が示されないと国民の協力がなかなか得られないのではないかと私は思っているので、それでできるだけ情報システムを整備して、細かいところはどうでもいいんですが大きなところの現状を把握して、どういう方向に向かってCO削減策をすすめていくか、進んでいるかという情報を明らかにしながらこの対策を進めていくことが一番大事ではないかと思うわけです。

    【佐和委員】 一つ気がついた点があるんですけれども、109ページから111ページについてモデル1からモデル5の評価がございます。その中の[2]ですけれども、補足性に抵触するとか補足性を確保するという表現がございます。これも実はCOP6を経た後、今の時点でこの小委員会が補足性というものを暗黙の前提として、つまり国内対策を優先することを暗黙の前提として議論を進めてきたと私自身は理解しております。ただし、これもCOP6なり再開COP6によって“supplementary”の意味がかなり違ってくる可能性があるわけです。ですから、こういうことで補足性に抵触するとか確保するという書き方でよろしいんでしょうか。
     ついでにお差し支えない範囲で部長にお伺いしたいんですけれども、要するに京都メカニズムについてはEU提案をプロンク議長が退けて事実上ほとんど制約を課さないようになったと理解しているんです。今現在、これについてEUの反応はいかがなものでしょうか。

    【地球環境部長】 これまた国際交渉中で非常に微妙な問題でございますから、余り具体的なことを申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思いますが、プロンク議長のノートは既に公表されているわけでありまして、そこで出ておりますラインは定量的な上限の設定という方向ではないということであります。ただ、どういう情報を各国から提出させて、いわゆる専門家のレビューチームができて、各国の対策の進捗状況について点検していくことになるわけです。そのあたりの表現の仕方については定性的・定量的な情報云々という表現もありまして、そこらあたりがどういう合意になっていくかによって必ずしも先行きに予断は許されないという感じがしております。
     そういう中で抵触云々というご指摘がありまして、確かにまだどういう交渉になっていくかは予断を許さないものですから、そういう点では先生からのご指摘に対する私のとりあえずの反応ですけれども、確かにそういう予断を許さないということから見ると果たしてこういうふうに言うことが適切なのかどうかというのはご指摘のとおりではないかという感じが確かにいたします。その点については事務方としてももう一回よく考えさせていただければと思っております。

    【横山委員】 モデル1の削除についてはどうも少数意見みたいですが、もう一度。私はモデルの数は少ない方がいいのではないかと思います。ですから、4つが3つになるということならいいと思うんですが、5つに1つ増えて、しかもこれが地球温暖化対策推進大綱に基づく施策を引き続き推し進めるということで、これまで何のために議論してきたのか。この地球温暖化対策推進大綱が破綻しているからこそ、こういう小委員会ができたのではないかと私は理解しています。そういう中でこういうものが出てくることには納得いかないということを改めて申し上げたいと思います。
     佐竹委員がシンクの問題で3.7%について交渉団を縛るのはよくないということを言われましたが、私は逆に交渉団を縛ると言ってもこの小委員会にそんな力はないと思いますので、例えば牽制するということでも結構ですけれども、とにかく3.7%は最初の根拠が余りない。国際的にもほとんど認知されていない。今度の決裂の原因もこれがつくっているということなので、日本政府としても3.7%にこだわらないで柔軟にやってほしいということで、この最後の表現を少しやった方がいいのではないかという意見です。
     以上です。

    【西岡委員】 話が前に戻ってしまうんですが、今、佐竹委員から某研究機関が2%の排出増という話がありました。私どもがその某研究機関ではないかと思うんですが、数字だけ申しますと、私どもの推計では4%、エネ庁の推計ではたしか3.3%、エネルギー起源のCOが伸びていると思います。私がこれを申しましたのは数字を訂正しておいていただきたいということもございますが、私どもの調査によりますと、1990年から1999年までの間にいわゆるGNP当たりのCOという量をマクロに見てみますと全然変わっていないということがあります。もう一つはエネルギー当たりのCO、すなわちCO強度と言われているものも全く変わっていない。さらにGDP当たりのエネルギー消費量、いわゆる国全体の省エネ率も全く同じ数字が出ているという状況で、私どもは非常に危機感を感じているということを申し上げます。
     それから、先ほどもう少しいろいろな解析も必要かというお話がございました。ある程度ありますので、また後ほどご提供したいと思います。

    【安原委員長】 意見が分かれているわけでございますが、いかがいたしましょうか。
     まず、モデル1の問題の結論を出していきたいと思います。両論が出ているんですが、初めに1ページをご覧いただきますと真ん中あたりに企画政策部会からこの小委員会に対しましてのマンデートがございます。6%削減目標を遵守するための国内制度の一環として経済的措置等の各種の政策の組み合わせによる複数の政策パッケージを作成してください、それがいずれの政策パッケージであっても適切に目標が遵守されるような基盤的な仕組みの検討をあわせてしてくださいというマンデートに対して答えを出している。その場合にモデル1が的確であるかどうかについては大綱をベースにしながら今後さらに対策を強化していく、そしてある段階でその対策の成果につきまして評価して、なお足らざる場合には強化が当然考えられるというものでございます。確かに新しいところはないんですけれども、一つの政策パッケージであることはそうだろうと思うんです。
     ただ、その評価がどうかということになると、9ページ以下に各モデルの評価、これは前回から整理し直しております。各モデルごとに評価しておりますが、重要ないろいろ視点につきまして評価して、モデル1については5つの項目に照らして考えると問題がいろいろあるということは率直に整理しているわけでございます。ですから、この中でこれもモデルではないかということで、そのモデルの適性があれば評価して、こういうものもございますということで出すことでも問題はそんなにないのではないかという感じがいたしますが、いかがでございましょうか。

    【佐和委員】 別にモデルとして取り上げたから、モデルというのはいいものもあれば悪いものもあるわけです。ですから、一つの調停案としてモデル1の地球温暖化対策推進大綱重視モデルとして括弧して「リファレンスケース」という言葉を入れておけば。しかも、委員長が今おっしゃったとおり100ページ以下の評価の中では圧倒的に悪い評価を受けているわけです。だからいいのではないでしょうか。あえて横山委員のご意向を含むとすれば、リファレンスケースとする。

    【安原委員長】 評価もきちんとして……。

    【佐和委員】 評価されているわけです。

    【横山委員】 例えばこれを一般の方が読んだときに、小委員会は5つを挙げてどれか1つを選んでくださいというふうにとると思うんです。そのときに評価の全然ダメなものが入っていたら「何だ、モデル1でもいいのか。そういう結論を出したのか」ととられかねないわけで、これだけ評価の低いものは削除するのが当然ではないでしょうか。

    【佐和委員】 だけれども、私の意見といいますか感じ方としては、特にモデル2、モデル3、モデル4はすべて経済的措置が何らかの形で入っているわけです。そして、それが結果的にはインプルーブであるという評価を受けているわけです。そして、さらにモデル2というのは自主的取組を強化するということで、モデル1よりは多少ましになっている。多少なんて言うと叱られるかもしれませんけれども、いずれにせよリファレンスがないとわかりにくいと思うんです。
     つまり、現在はこれでやっていますということで、それについては相対的にネガティブな評価が後で加えられる。ですから、モデル1から5まであるからどれか選択してくださいと言われても、一体それぞれがどういうコンシークエンスをもたらすかは普通なかなかわからないですから、後の評価を読む。そして、モデル1はいろいろ問題があるから不十分だから何らかの対策を追加的に講じなくてはいけないということがわかるからいいと思うんです。

    【宮本委員】 今までモデル2以下につきましては分析データがないわけです。モデル1というのは今のところ数字が出ているかどうかは別として、2~3年たてば出てくるわけでしょう? それもなしに一遍に外国の数字とか、そんなものだけでモデル2以降を議論するのは行き過ぎだし、今まで一生懸命やってきた日本ですから、しかも世界に対してはGDP当たりがかなり低いわけです。これは事実でしょう。だから、そういう点からしても今後どこをもっと詰めればいいのかということのためにはモデル1は一つのモデルとしてなり得るのではないかと私は思います。実験データをとりやすいということではモデル1なんです。ほかのモデル2以下についてはないという意味で私はモデル1を推していただいたらどうか。それを強化するべきではないかということでモデル1がいいと言っているわけではなくて、こういうものが一つあってもいいということです。

    【安原委員長】 横山委員、リファレンスケースというのをメインにしてどうですか。

    【横山委員】 最終的にしようがないかわかりませんけれども、リファレンスケースというのは例えば4つをやって、その前文あたりに書いてあってもいいわけです。リファレンスケースとして地球温暖化対策推進大綱重視モデルを説明して、しかし、これは評価が非常に低いから今後の検討対象にはしないということならいいと思うし、モデル2があるわけです。モデル2の自主的取組強化モデルがないなら確かにモデル1のようなものがあってもいいかもわかりませんが、モデル2がある以上モデル1は必要ないのではないかと思うんです。ただし、これ以上はこだわりません。

    【浅岡委員】 ここで選択の結論は出さないということについては皆さんもご了解の上での議論ですので、モデル1は現状がこれである、さらにこれをもっと強化するためのもの、効果的なものとしてモデル2からが適するという違いをリファレンスで書くのも一つでしょうし、最後の105ページに「これらの5つのモデルは、典型的なモデルの例として示したものであり、これ以外にも様々なモデルがあり得る」と言って、横山委員がこだわれるのはいかにも並列的なこういう記述が気になられるのではないか。
     だから、実際にこういうものがあるけれども、ここではさらにこういうものも必要性があって検討したという趣旨が103ページの「3)5つの政策パッケージのモデル」というところで「具体的な政策パッケージのモデルを検討する」として、すぐにモデル3が下から1行目に出て「各モデルは」とありますが、ここでモデル1から3の具体的な話を説明する前にモデル1からモデル5がどういう位置づけになっているのかというのが一文あればおわかりいただけるかと思います。

    【安原委員長】 そうですね。今の浅岡委員のご発言を参考にさせていただきまして、並列的なモデルではなくて、1番目のモデルが現在の大綱モデルであるということできちんとした評価もつけて、そこがわかるように工夫してみたいと思いますが、そんなことでご了解いただきたいと思います。よろしゅうございますか。

    【横山委員】 結構です。

    【松野委員】 先ほど佐和委員は例えば括弧して「リファレンスケース」とおっしゃいましたけれども、今のお話からしますと単に現状をそのまま続けるというのが一つのリファレンスケースとして採用されているのでしたら、「現状継続(地球温暖化対策大綱重視)モデル」とすれば……。

    【安原委員長】 この5つのモデルの説明のところで位置づけがわかるようにするということでいかがですか。

    【松野委員】 それもそうですし、そういう位置づけだということがネーミングでわかるようにしておけば。モデルの中身を言わずに、いわゆるBAUに近い考え方を置いてあるという意味がわかるようにするためには名前で○○モデルと言わずに「現状継続モデル」、ただし、説明として括弧の中に「地球温暖化対策大綱重視」としておけば別にそれでいいのではないでしょうか。

    【松原委員】 恐らく4つ出しても5つ出しても、今後どのモデルかにドンピシャリという結論にならないだろうと思います。実施するに当たってはいろいろなものが入ってくるだろうと思います。ですから、ここでモデルの数を削ってみても余り意味がないことだし、先ほどの3.7%も同様ですけれども、むしろそれほど詰めた議論をしていないところを急に今日になってこの小委員会が結論じみたことを言う必要はないので、もし強いご意見が残るなら委員長が報告されるときにこういう意見もあったということを付け加えられれば、それでよろしいのではないでしょうか。

    【安原委員長】 そうなんです。これはあくまでモデルでございますから、モデルを踏まえてさらにいろいろな細部についての案があり得るわけでございます。そのことは前回の意見を踏まえましてどこかの場所に明記しております。

    【寺門委員】 余り変わらないんですけれども、要するに現状継続という発想はどうもおかしいので、何で現状継続の発想なのか。どうやって現状からもっと改善していくのかということがあるからモデル1を入れてくださいと言っているのに、何となく現状、横ばいの発想ですというのでは何も意味がないわけです。そうではなくて、今の大綱が決められましたね、大綱は項目として決まった、しかし項目だけしか並んでいないから、それをどうやってより見えるようにしていくのかを政府に訴えかけるのが非常に重要なメカニズムなんです。そのために何が考えられるか、私には知恵がないから産業界が機器の改善を一生懸命やっているからそれがもっと普及するような、あるいは政府が社会システムというかインフラを改善するのだったら、それがもっと進むようなことをやってくださいということを要求と言ったらおかしいですけれど。
     だから、ここで重視モデルと言うけれども、強化モデルと言うべきぐらいの意味合いがあるんです。だけれども、強化といっても具体的に何を強化するのかと言われても、そこをみんなで考えないといけないという問題提起なんです。何をどうやって具体的にやっていくのか、環境税で解決するんですか、そうはいかないでしょうと。環境税を取るときにはなぜ取られるからこう変えるという意味合いがベースにないといけないわけです。そういうことは優位性のあるような機器とか何かを追求していって初めてそういうことが起こるわけであって、一つ一つは独立していないと思います。だから、それは順番としてそういうことが起こってくるのは自然かもしれませんけれども、一つ一つは独立していない。最後はパッケージと言っていますけれども、組み合わせをどうやって選択していくのかというのが起こると思います。
     ですから、どのモデルも否定はいたしません。だけれども、モデル1というのはベーシックな規制とかそういうものを加えてやっていることであり、それをどうやってシステマティックに組み立てるのか、その手段は何かということがあってしかるべきだし、今も現実そういうふうにやられているわけです。ただ、それが弱いから皆さんも効果がない、これはダメだと言うけれども、私に言わせると、こういうことをもっと強化していったら実際には一番効果があるかもしれない。皆さんの評価はダメだとおっしゃるけれども、政府がやろうとしていることは全部ダメだとおっしゃっているけれども、そんなこと簡単に言えるんでしょうか。もっと加えるべきことがあるんでしょうということがあってしかるべきだと思います。

    【浅岡委員】 そのために別のモデルが出てくるんです。

    【寺門委員】 だから、それは結構です。否定していませんと言っているんです。

    【安原委員長】 この点の議論は大体出尽くしたと思いますので、モデル1から5までこういう形で並べるということで、モデル1を入れている趣旨等につきましてはその前の5つの政策パッケージのモデルの説明を加える中で表現を工夫して入れて処理したいと思います。その表現につきましては私と事務局の相談に任せていただければと思いますが、よろしくお願いいたします。
     もう一つ大きな論点になりました吸収源の検討の表現につきましてはご意見が分かれてなかなか収れんしていないんですが、いかがでございましょうか。いろいろな意見がございましたが、とにかく検討はするということでございますので、国際交渉等がこれからどういう展開になるかわからない微妙な問題でもありますので、できればこの原案で処理させていただければと思いますが、いかがでございましょうか。

    【浅岡委員】 私はこの点をこのまま残すことは今いいですよと申し上げることはできません。なぜならば、再開COP6の結果を踏まえて何を検討すると考えているのでしょうか。ここで合意がなされて実質的な数値目標が決まって吸収源の追加方法を検討するということでしょうか。合意が決まらなければ、それも検討できないわけです。そういうことぐらいしか考えつかないんですけれども、何を検討するのか。結果を踏まえてですと言うけれども、結果を踏まえて何を検討するのか。
     しかし、今は再開COP6で合意が得られるのかどうかということの方がもっと大きな直面する問題であって、交渉団の交渉の手を縛らないとおっしゃられましたが、今は交渉団が手を縛られ過ぎていることがこのような再開COP6等につながっているということは明らかだと思いますし、縛っている中身についてここで承認したり議論して形成したものでもないわけですし、それについて合理的な説明をしていただいたということもないわけです。こういうことを状況として見ますと、ここでわざわざ結果を踏まえてということは、今までのとおりやっていただきまして、その上で、ということを言うことになるわけですから、そのような文章を加えることは、せっかく議定書に基づいた国内対策を強化しようということと相矛盾する説明をこの中に加えることになると私は理解いたします。

    【安原委員長】 この小委員会では吸収源の問題について一切検討していないんです。ここで実質的にいろいろな影響のある表現をいきなり持ち出してくるのはなかなか無理ではないかと思うんです。ですから、とにかく検討してくださいということが伝わればいいので、その検討の仕方はいろいろな動きを見ながら新しい中央環境審議会で検討を続けてもらうということに尽きると思うんです。

    【佐和委員】 一つの調停案ですけれども、吸収源について今いい表現は思いつかないんですけれども、要するに本小委員会では余り議論しなかった。しかし、この問題は重要な問題だから、植林・再植林の可能性あるいは森林管理のより効率的な運用について検討する必要がある。つまり、仮にそれが何%あるいはどういう形で決着がつこうが、森林吸収を増やすことは当然プラスになるというか、対策として必要なことですね。だけれども、時間の関係等々で今回は議論しなかったわけです。議論しなかったけれども、今後の検討に委ねるとかそんな表現にして……。そういう意味では再開COP6の結果を踏まえてというところについてはこういう書き方をすべきではないというご意見もあるわけですから、それと浅岡委員は何を検討するのかがさっぱりわからないと言いますから、森林経営、森林管理の効率的運用ということをはっきり書けばどうなんでしょうか。

    【安原委員長】 その点については今の最終段階に来ております環境基本計画の中で森林整備についての表現がございます。

    【佐和委員】 森林整備で、つまり吸収量を増やすために措置という意味では必ずしもないわけでしょう?

    【安原委員長】 竹本課長、どういう表現になったんですか。今、環境基本計画のドラフトは手元にないですね。ですから、ここで言っていても決着がなかなか出ませんので、もう一度私と事務局で相談しまして案ができれば皆さんにファックスでご連絡して、ご了解いただくということですか。どういたしましょうか。

    【環境保全対策課長】 私ども事務局としましてはできれば大方の方向をここでという希望がございますが、再開COP6等々のいろいろな議論をさらに巻き起こすことは決して本意ではございません。委員のご指摘はそれぞれあると思うんですが、基本の趣旨は吸収源については今後検討することが必要ですと。ここは6%削減の内訳について申し上げているわけでありまして、その具体的な中身になりますと議論が拡散といいましょうか、いろいろご意見があってもいけないと思いまして、この再開COP6の結果を踏まえてというところについていろいろご意見があったように思いますから、その表現は取りまして、吸収源については今後さらに検討することが必要であるとか非常に一般的に。ただ、ノートとしてテイクノートされているということはきちんと書きまして、余り子細になりますと実際に詳しく議論していない部分もございますから、非常に中間的・中立的な表現でテイクノートするという方向でまとめていただきますればどうかという気がしております。

    【安原委員長】 そうすると、吸収源については「今後さらに検討することが必要である」ということですか。

    【環境保全対策課長】 「今後検討することが必要である」ということです。

    【松野委員】 1ページの最初の今回取り上げなかったというところでは「吸収源に係る国際的なルールが定まっていないことから積極的に取り上げず」ということですので、今度はルールが定まることを期待して、その上で検討するということになるべきかと思うんです。もしそのルールそのものが非常に危なっかしいルールであるという認識は私もそう思っておりますし、委員の何人かもそう思っていらっしゃると思いますので、もしあれでしたら具体的な言葉ですが、113ページは例えば「吸収源については合理的な根拠に立った国際的ルールの成立を期待し、今後COP6等の結果も踏まえて検討することが必要である」として、今はルールが決まっていないからやらなかったというのが初めにあったので、今度ちゃんとしたルールを期待して、そうしたらちゃんとやりましょうということが趣旨だろうと思います。

    【猿田委員】 吸収源については今回のハーグでいろいろ問題があったわけですから、先ほど事務局から提案された再開COP6という表現をやめて「今後、十分な検討が必要である」ということで、その「十分な」という中には再開COP6による検討も入るでしょうし、国内における検討を今後も十分に進めていくという意味も含めて先ほどの事務局案のようなことであれば特に再開COP6の来年5月まで待たなければいけないとはとれないわけで、今からでも続けてやっていきましょうという意味にもなるわけですから、先ほどの課長がまとめられたようなことで再開COP6という表現を削る方向でまとめていただいたらいかがでしょうか。

    【横山委員】 私も今の松野委員の意見が非常にリーズナブルでいい表現だと思うんですが、ダメなんでしょうか。

    【安原委員長】 松野委員、もう一度言っていただけますか。

    【松野委員】 ちょっと入れるだけですが、113ページの「吸収源については、」の次に挿入するわけですが、「合理的根拠に立った国際的ルールの成立を期待し、今後COP6の結果を踏まえて検討することが必要である」ということで「合理的根拠に立った国際的ルールの成立を期待し」ということです。我々はルールがないからやらなかったというのが「はじめに」の前提になっているので、ルールができたらやるけれども、それに対して我々委員がちゃんとしたルールになるかどうか懸念を持っているというニュアンスを付け加えるということです。

    【安原委員長】 いかがですか。猿田委員がおっしゃった事務局案をベースにした「今後、十分検討することが必要である」ということと、今の「今後、合理的な国際ルールを期待し」ですか。

    【松野委員】 「合理的根拠に立った国際的ルールの成立を期待し」です。

    【猿田委員】 あるいは今後の検討、COP6の再開などによる……。

    【安原委員長】 「期待し」というのは期待を表明しているわけですね。

    【猿田委員】 今のところはさらっと言っておいてもいいのではないでしょうか。前の方で吸収源をやっているはずで、今後やりましょうと言っているわけですから。

    【横山委員】 繰り返しになりますけれども、COP6の最大のテーマが吸収源だったわけで、それを受けて1週間か2週間後にまとめたものにそういう具体的なことが入ることは非常にタイムリーで、いいのではないかと思います。何にも入らない場合、この小委員会があの論議を一体どう考えているのかと考えられるのではないかと思います。

    【西岡委員】 私も先ほど幾つか修文したんですが、ポイントの一つはどうせまたすぐに年が明けたら論議しなければいけないだろう、そのときにここにあるからCOP6の結果を踏まえるまで何もしないわけにいかないだろうというのが私の言ったことです。そういうことから言うと今のお話で松野委員のニュアンスが非常に難しいんですが、やはりCOP6を踏まえてということになってしまうような文面かなと思います。私も先ほど「再開」というのを取ったらどうかというのは今の横山委員の意見で、COP6も論議したんだからそんな幅で論議したらどうだろうかということでいいのではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

    【浅岡委員】 私もここは「吸収源については、今後十分な検討が必要である」としておく方がいろいろな意味でむしろ柔軟性があると思います。

    【安原委員長】 それでは、非常にいろいろな意見があるんですが、いろいろな要素を全部飲み込んで浅岡委員が今おっしゃいましたが、いかがですか。単に「吸収源については、今後十分な検討を行うことが必要である」というすべていろいろな要素を飲み込んだ表現でございますけれども、よろしいですか。
     それでは、まだご異論は内々おありかと思いますが、全体をまとめるという見地からご協力いただければ幸いでございます。
     あと、論点が分かれた点についていかがですか。

    【塩田委員】 今残ることになった109ページのモデル1の[1]の排出量管理の確実性というところの1行目の右の方に「全体の20%未満」と書いてありますが、この前に「現状のままでは」という字を挿入すべきではないかと思いますので、ご検討をお願いします。これは変わっていく可能性があるのではないかと思うんです。
     109ページのモデル1の[1]の排出量管理の確実性の1行目の「定量的基準の達成が法的に担保されている対策が全体の20%未満」とありますが、この「全体」の前に「現状のままでは」と。この20%というのは現状を言っているわけですから、「20%未満であることから」というのは変わらないということはないと思うんです。

    【安原委員長】 そういう意味ではおっしゃるとおりですね。

    【塩田委員】 ですから、「現状のままでは」と入れた方が正確ではないかと思います。別にそれ以外の意見ではありません。

    【安原委員長】 それは結構です。

    【宮本委員】 100ページの一番下ですけれども、再生可能エネルギーの比率の話です。これは前回から変えていただきましたので私はこれでいいと思うんですが、実は再生可能エネルギーにつきましては現在、自然エネルギー法というのが国会で非常に強い議論がされているわけです。それとのバッティングがあるので、2行目に「再生可能エネルギーについて供給することを義務づける」というように限定して書くことがいいのか。「義務づけることも考えられる」ぐらいのことを入れておいた方が今後非常に――これは今、議員立法で出ているんです。だから、非常に議論を出すと思うんです。この小委員会が何だと言ったら参考人で述べよと言われる可能性が非常に高いと思うので、「義務づけることも考えられる」ぐらいにしておいた方がニュアンスとしてはいいかと思います。私はこれを反対しているわけではないんです。しかし、今ここで真っ向から議論する必要はないのではないかと思います。
     以上です。

    【安原委員長】 それは結構だと思います。
     あと、細かい表現も含めてもしご意見がありましたら。

    【村上委員】 モデルのつくり方で気になっているのは、前回はモデルが6種類あったのを4種類に絞ったんです。今回は6種類あったのを5種類に絞る。ただ、その絞り方が前回は素直に絞っていたんですが、今回は前回の6つのモデルをそのまま残したものですから、どれとどれがリンクしているのかわかりづらい部分がある。わかりやすくしてほしい。今回は前段でモデルを6つ出していますが、それを5つにするわけです。前者のモデルと後で我々が提言するモデルとの関係で表現が微妙に変わっていますから、そのあたりの文章整理をお願いします。

    【安原委員長】 それは工夫してみます。これは3番目の総量規制パターンが組み合わせに入っているわけです。第4番目に入ってきているわけです。

    【品川委員】 5つのモデルがあって、最終的に112ページで総括的に今後の検討という第6節になるわけですけれども、かなり経済的手法の導入などを含む政策パッケージということで出しています。現実にこの政策パッケージを具体化し、経済的手法を実際に採用していく過程では例えば環境税を一つとりましても税の手法をどうするか次第で技術開発へのインセンティブの強弱がすごくあるでしょうし、あるいは国民生活ならライフスタイルの転換へのインセンティブの与え方の度合いは制度設計によってかなり大きな違いがあるのだと思います。そういう点ではいずれかのパッケージを採用しながら経済的手法を導入していくとしても、それぞれの手法についてインセンティブのより高い方法を検討していくことが必要だということについて触れておく必要がありやしないかと思います。

    【安原委員長】 それはおっしゃるとおりでございます。全体がそうですけれども、これは今の中央環境審議会が1月6日でおしまいになり、新しい中央環境審議会ができる。それに検討結果をお渡ししてバトンタッチをきちんとやっていただいて、新しい中央環境審議会でさらなる絞り込みの検討あるいは具体化の検討を進めていってもらうという趣旨でございます。そこは企画政策部会に報告する際にきちんと伝わるようにしたいと考えております。

    【猿田委員】 質問ですが、99ページの真ん中辺に「○」で家庭への省エネモニターの設置促進、その下の「○」にビル等の省エネ基準の義務化、そこで(*1)(*2)(*3)とあります。これはどこにあるんですか。どこを見ても出てこないのでわからないんです。

    【環境保全対策課補佐】 その2ページ後の101ページに横表がございますが、この中に引用されている部分で「*1」とか「*2」というのがついております。
     なお、エネルギー転換部門のところで誤植がありまして施策の名称が直っていない部分などがございますが、本文に合わせて修正させていただきますことをあわせて説明させていただきます。「*1」が何を意味するものかというのはこの場で本文の中に書き込んでおくようにさせていただきたいと思います。

    【猿田委員】 ありがとうございます。

    【安原委員長】 それでは、よろしゅうございますか。予定した時間を少し残しておりますが、もしこれでご意見が出尽くしたということであれば、この報告書の審議を終わりたいと思います。大変活発なご議論をいただき報告書(案)をまとめていただきまして、ありがとうございました。
     ただ、細かい点でございますが、今日の議論でまだ修文が必要になりますので、その点については私に一任いただけたらと思います。事務局と相談しまして固めたいと思います。何しろ13日に企画政策部会への報告ということでございまして間が1日しかございませんので、そういう扱いでお願いしたいと思います。13日には修文しました報告書を企画政策部会の方に私から報告させていただきたいと思います。
     その後の扱いは何度も言及がございましたが、森嶌部会長からも小委員会から報告書が出てくればこれを新中央環境審議会に引き継いで議論の出発点としてもらう、そして報告書に関しましてもできるだけ広く国民の皆さんの意見を求めて、その結果もあわせて新中環審でいろいろ検討していただいて固めていっていただく方針であるということを示されておりますが、そのとおりでございますので、そういう扱いになるようにお願いしてまいりたいと思います。
     それでは、これをもちましてこの小委員会の審議を終えたいと思います。本当に長期間にわたりまして熱心な討議をありがとうございました。