中央環境審議会企画政策部会第2回環境基本計画小委員会議事要旨


<日時>平成12年7月19日(水)14:00〜17:00

<場所>通商産業省別館939号会議室

<出席>
   安原委員長、浅野委員、幸田委員、小早川委員、三橋委員、村岡委員、
   村上委員、太田特別委員、猿田特別委員、廣野特別委員


   企画調整局長、企画調整局企画調整課長、企画調整局調査企画室長、企画調整局
   環境計画課長、企画調整局環境計画課計画官

<議題>

  (1)環境基本計画見直しについて
  (2)その他

<配布資料>

  資料 新環境基本計画第一次素案

<議事経過>

1 新環境基本計画第一次素案について

 事務局より資料「新環境基本計画第一次素案」等について説明後、同案について議論

【廣野委員】
○第一次素案のものの考え方の流れに対しては良いが、全般的に、正確かつ広範に包括的に書かれているので、第1部と第2部は起伏をつけた格好で書いた方が良い。
  • 従来のような産業活動だけではなく、ライフスタイルに起因する環境問題の悪化が書かれているのは賛成だが、例えば、1ページの第1部の○の3つ目「日常的な社会活動」を「日常的な市民生活や経済社会活動」にするとか、3ページの(2)1つ目の○を自動車以外に、居住とか、事務所における冷暖房が非常に普及してきたこと等、市民生活との関連で環境問題が悪化してきていることを強調して欲しい。
  • 12ページと、15ページの国際的な取り組みに、環境ODAの拡大、ODA及び民間企業の海外における活動の環境への配慮が改善されたこと、同時にこれからもっとやらなければならないことを書いたほうが良い。
  • OECDの場で経済のみの発展であることを使い分けるためにDeveloping Countriesを使うことが議論をされたのを受け、1990年に国際科学学会では、途上国からより先進国になる過程では、かなり国の政策の関与が必要であるという意味で、Developing Countriesを他動詞である開発途上国と訳した。発展途上国を開発途上国、若しくは単に途上国にしたほうが良い。

    【事務局】
  • 発展途上国の件に関しては、他の政府文書と横並びなので、検討させていただきたい。

    【安原委員長】
    ○市民生活やODAの拡大や海外における環境配慮の問題等々表現上の指摘はもっともなので、できるだけ取り込むように事務局の方で検討したい。
  • 発展途上国の表現の件については、特段、発展途上国でなければいけない訳ではないので、事務局で確認後、問題なければ開発途上国で統一することでいきたい。

    【浅野委員】
    ○山と谷の起伏がみられるように、PRTR法の記述等、特に同じことを繰り返す必然性がない文脈の中で微妙に違うコメントが何回か書いてあるので、具体的なことを書かなければいけないというスタントではあるが、重複している部分はどちらかに移す、コンパクトな表現で済むものはコンパクトな表現で済ませることが必要だと思う。
  • 全体的には、大分よくなり、コメントもしやすくなってきた。
  • 第3部の戦略的プログラムが今回重要な目玉であることがわかるような前半部分の書き方をするという前回の議論に対して、まだ最初の方が淡々としていて、劇的なインパクトが欲しいということだったので、最後の段階で工夫してほしいと思う。
  • 前回の第4部「計画の効果的実施」は、各省庁との調整が難しく平板な書き方に終わってしまったが、その後、各省庁がみずから環境政策を政策の中に内在化させ、環境計画のようなものを作っており、今回の環境基本計画の役割は、それらをどううまく統合していくかに変化している。事務局の方で各省庁の計画を配付していただきたい。
  • 実効性を確保するためには、目標をはっきりさせることが大事で、本文にも書いていかなければいけない。数字を書くことが難しいのなら、戦略的プログラムの中でも工夫すべきであり、点検をしやすくするための目安になるので是非工夫してほしい。点検は循環法では法律事項になっているので、計画では今以上のことを書くべき。
  • 環境保全経費の位置づけについては、各省庁の施策がこれに該当するか否か、あるいはその中のプライオリティ付けの問題などに踏み込んで行かなければいけない段階に入ってきている。とりまとめる側である程度物差しをつくり、見積もり方針と点検結果を連動させるべきである。
  • 各省の率先実行計画、各省の政策形成・事務事業の実施における環境配慮にも話を広げるべき。各省自らが体制を作って点検をしていく。
  • 各省庁の率先実行計画や「グリーン購入」を一歩進めて、各省が、環境政策を内在化させようということで、まだ行っていない省庁があるならば、環境管理システムを、政策や事務事業の執行について組み込み、公表し、点検するプロセスを呼びかけることを異論なく記述できると思う。
  • 環境省が持つ異例な調整権、勧告権をうまく機能させた報告書にしていかなければいけないし、審議会の点検作業と同様の作業を行っている環境白書作成との連動して調整プロセスと点検プロセスをセットしていった方が効率的であることを第4部の中に書いて、現計画の3倍ぐらい分量にすることが必要だと思う。

    【安原委員長】
    ○第4部について、計画の実効性を確保できる仕組みをつくることは、今度の計画で特に重点を置くべき点の1つだと思う。今後4部の表現を固める過程で具体的な提案を参考にしていく。
  • 各省の環境計画的なものを参考にするという意味で、当委員会に提出していただきたい。
  • 重複する点は、できるだけ簡潔にすべき。
  • 前回の議論同様、前文を格調高くする点については、まだ作業中なので、全部できた後、工夫してもらいたい。

    【猿田委員】
    ○自主的取り組みを実効性や透明性を持たせるために、効果が現れない場合にどのように効果を担保するのかは重要。オランダの自主協定の問題で、産業部門別に、行政と協議を詰めた上で目標の設定を行い、望ましい結果が得られない場合に、それなりの対応をするターゲットグループアプローチを用いているが、今回の計画の中でも、こういった制度が導入できるのではないか。
  • 誰にでも解るような内容を記述した普及版のような環境基本計画をつくったらどうか。

    【安原委員長】
    ○普及版について、そのような工夫はよく検討したい。

    【小早川委員】
    ○まとめの文章が抽象的だから、内容全体に起伏がないように感じられるのではないか。
  • 5ページの○5つめ、個々の地球環境問題という表現だとわかりにくいので、を変えたほうがいい。
  • 9ページの1つめの○で地方分権を書くのであれば、環境行政機構についての変革があるという形でまとめて書いた方がバランスがいいのではないか。
  • 12ページ2つめと3つめの「・」のところで、情報公開法の制定、パブリックコメント、行政手続法について、国民の取組の環境と事業者の取組の環境の両方にまたがるような形として記述を変更したほうがいい。
  • 19ページ枠組み規制的手法という表現のしかたを、規制ということではないという表現として枠組み管理、枠組み制御というようなニュアンスに弱めたらどうか。

    【幸田委員】
    ○読む人の立場に立って、大切なところを太文字等に強調したりするとメリハリがきいていいのではないか。
  • 24ページBの事業者のところで、廃棄物の排出抑制など、これから企業責任として取り組んでほしいということを記述したらどうか。
  • 環境面から見ると、廣野委員の発言の開発途上国の「開発」は、先進国の開発を目指すべき価値としてとらえてしまわないか。

    【廣野委員】
    ○途上国というのは開発途上国で、先進国というのは開発途上国。開発途上国がやっている開発戦略について見直しが必要であるし、先進国がやってきたやり方をそのままやる必要はない。

    【村上委員】
    ○2ページの3つめの○のところで、21世紀の何を展望しているのかわからないものを、展望して戦略を示すというよな表現はやめたほうがいい。
  • 3ページの水循環の○のところで、農業、林業、ゴルフ場で使用する農薬の使用についても汚染が進んでいるということも記述したらどうか。
  • 大気環境の○について、大気環境と騒音の問題は別々に記述できないか。
  • 13ページの最後のところで科学技術と大きく項目を起こしているが、政策展開に当たっては重要課題ということで書いてあるのが、技術開発のところは、また以下しか書かれていない。これ「・」を1つつけたらどうか。
  • 22ページのところで、環境教育・環境学習のところに、NGOと書くのなら労働組合という言葉も記述したらどうか。

    【三橋委員】
    ○1ページの6つめの○のところ、「共通だが差異のある責任」という表現は、調整がつかないときに知恵者のつくった消極的な言葉だったと思うので、記述しないほうがいいのではないか。また、アジアという視点でとらえた国際的な協力についての方向性を具体的に出したらどうか。
  • 16ページ下の方の環境効率性の問題について、実際は環境効率の計算というのが難しいので、環境効率のダイリヘンスみたいな形で、資源生産性という言葉が使われていることをきちんと記述したらどうか。
  • 19ページの経済的手法の部分。環境税が課税対象としての税の印象を与えないように記述の工夫が必要。

    【安原委員長】
    ○「共通だが差異のある責任」は、温暖化対策の枠組み条約の中で出てきた概念。途上国も先進国も温暖化対策に対応しなければいけないが、いろいろな差異があるが、先進国が積極的に取組むということではなかったか。

    【廣野委員】
    ○三橋委員がおっしゃった懸念はわかるが、言葉の起源として、「共通」とは、先進国も途上国もすべて地球環境をよくするという課題。「差異」とは、先進国はいろいろな意味で地球を汚してきたということだから、そこに差異があるという意味で、出てきた言葉なので、いい加減な言葉として出ていないということ。

    【浅野委員】
    ○この言葉のニュアンスを生かすのなら、「開発途上国に増して」という言葉を加えたらどうか。

    【安原委員長】
    ○表現の問題としてよく考えてみたい。
  • メリ張りの効いた表現ということだが、第3部、第4部、は戦略プログラムという形で重点的な施策を具体的に示すというかたちで進んでいるし、新たに計画の実効性の確保という点で、何か新しい仕組みを取り入れられるかどうか工夫したい。

    【浅野委員】
    ○具体的に記述してあることはいいと思うが、次の見直しというのは6年くらい後だから、数字を細かく記述する必要があるのかどうか。
    【廣野委員】
    ○説明的なものはあまり記述せずに、因果関係がはっきりしているのもについては、因果関係をはっきり出すような格好で事象だけを記述したらどうか。

    2 長期的目標について

     事務局より「長期的目標の位置づけについて」の説明後、長期的目標に関して議論

    【浅野委員】
    ○現行計画における循環の議論のきっかけとして、環境基本法第14条の施策の策定に係る指針で、大気、水、土壌、その他の環境の自然的構成要素が良好な状態に保持されることというものがあり、これは環境基本計画を考えるときにも大事である。ここには、それまでのように被害の現象の側からではなく、例えば大気などの環境媒体を中心に捉えて考えようという環境基本法の考え方があった。また、公害問題は、物質循環があるべき姿からはずれているから起こるのではないかという考え方もあった。
  • これら2つの発想が循環という長期目標の背景であり、半分は公害問題を意識に置き、その究極の原因はそもそも自然の循環の問題なのだという発想であった。公害の原因のかなりの部分である小循環が大循環である自然の物質循環を損なうことになるという認識で、地球環境生態系とのつながりについては、実は当時はあまり考えられていなかった。
  • 最終的に長期的目標自体は変えない方が良いとはいえ、必要最低限の変更をするかどうかは議論すべき。ゴシックの項目ごと変更するのは難しいが、必要であれば順番や内容を変えることもできる。
  • 共生をまず基礎とするのは部会で了承した考え方である。

    【事務局】
    ○循環については、大循環と小循環の2つの概念があり、循環型社会形成推進基本法の審議の際にもそうした説明をしているが、共生について、これまでと同じ言葉で、違う概念として用いること、上位概念として用いることは混乱を招くのではないか。

    【浅野委員】
    ○確かに環境基本法第3条に掲げられているのは、人と人との共生だった。共生という一つの言葉を人と自然の共生という意味と、全てのものの共生とう意味と2重の意味で使うのは難しい。共生と別の言葉で第3条の意味を表すか、一つの言葉を二重の意味で使うかどちらか。生き物と生き物だけに限った共生ではなく、人と自然の共生であるということは、定着してきている。

    【廣野委員】
    ○人間は現在知らないものとたくさん共生しており、現に与えられた状況はすなわち共生である。共生というのは選択できず、神から与えられ、その中でやっていくものなので、循環よりも上位ではないか。与えられた共生の中で、循環を保つために環境負荷を最小限にしていく、という流れではないか。

    【幸田委員】
    ○共生で書いてある説明が弱い。生態系の構造や機能を維持し、次の世代に引き継いでいけるように、という内容の説明をもっと書き込んだ方がよい。共生とはどういうもので、どのような共生を目指すのかをもっとはっきり打ち出すべきではないか。

    【廣野委員】
    ○持続可能な経済社会を形成していくために必要なものとして共生と循環があるというのも一つの考え方。ただ、共生の捉え方は非常に難しい。循環は効率を高めるために重要だが、人間社会は効率だけではなく、公平や透明性などの諸概念も重要。効率的社会のためには徹底的に循環を進めるということが基本計画の中でも重視されているが、成熟社会ではもうこれ以上効率を極められず、かといって効率を犠牲にもできない。
    成長を持続させるためには効率だが、効率だけを追求したのでは、もはや成長できず、透明性や公平性も必要だという流れを踏まえると、共生も循環も車の両輪のようにともに大事というのでよいのではないか。

    【幸田委員】
    ○両方目指すものだが、どちらを先に書くべきかで随分違ってくる。

    【小早川委員】
    ○共生は従来の自然保護行政の話だが、公共課題のイメージやとらえ方、活動のカテゴリーなどが歴史的にある。循環も共生も目標と手段のセットであり、上下の関係というより、自然の中での人間は力を持ちつつあるが、今のところは与えられた条件の中に位置づけられた有限な存在である、という認識ではないか。共生を定義し直すのも不可能ではないが、その必要性はあるのか。

    【猿田委員】
  • 循環が当面の課題として重要視されていて、それにより環境の負荷の低減がなされて自然環境を回復し、それを維持していく。物質循環という環境負荷の低減が前提にあって、その中で初めて共生が出てくるのではないか。

    【廣野委員】
    ○長期的目標ならば、循環と共生が持続可能な経済社会実現のために根底としてあり、中期的に考えて戦略的には循環が重要である、という言い方をしてもおかしくはない。10年間の計画ならばある程度中期とも言えるので、長期では循環と共生を重要と指摘しつつも今回の見直しの中では循環が大事という言い方もできれば、めりはりもつく。

    【小早川委員】
    ○前回の計画を作ったときにもキーワードについては十分整理されないまま、循環と共生は同列に書かれ、政策的にはどちらかというと循環の方が先ととられていたかもしれない。だが、両者の根底には、全体としての人間とそれを取り巻く物質の循環系としての環境との関係なしに人間は考えられないということがあるのではないか。

    3 3部、4部について

     事務局より「長期的目標の位置づけについて」の説明後、長期的目標に関して議論

    【廣野委員】
    ○3部では、行政活動への環境配慮の織り込み、グリーン化、技術開発等に際しての環境配慮等、どうやって環境に配慮するかということが書かれているが、逆に、環境の産業化については、どこに入っているのか。
  • ITの問題については、監視・観測技術等、環境管理のためにどうITを使うかという視点だけでなく、ITを導入することによって、私たちの経済社会がどう変わるか等、一種の文明論的な立場からITを見直して、それがどういうインパクトを与えるかという視点を導入してはどうか。

    【事務局】
    ○環境の産業化、市場化については、環境投資の部分(第3部1(9))である程度記述したいと考えている。従来、公共部門でやっていたようなものでも、場合によっては、市場化が図れるといった指摘もあり、そういう視点で記述したいと考える。
  • ITについても、基本的に、環境投資の部分で記述したいと考えているが、ITに関する見通しについては、はっきりとしたものがなく、プラス面マイナス面の両面があるということ以上に記述するのは困難な状況である。

    【猿田委員】
    ○自主的取組手法について、オランダのターゲットグループアプローチのような手法を、今度の計画の次の計画への検討事項として、第4部で明確化してはどうか。
  • 総合的環境指標の改良や活用についても、検討課題とすべき。

    【事務局】
    ○総合的環境指標の報告書については、環境の状況に可能な限り取り入れることとしているが、環境負荷と実際の環境の状況との関係が明らかでないため、指標を、政策的に、目標設定的に用いることができない。これについては、重要性のある部分から手をつけていきたい。
    【幸田委員】
    ○第3部2(4)国際的取組の推進に係る施策については、検討会においては、人材のこともかなり重視されていたので、国際社会の中でリーダーシップを発揮する人材、国際機関の中に出向している日本人の数が少ない等の人材の面も盛り込んで欲しい。
  • 行政活動における環境配慮(グリーン化)については、グリーン購入法も出来たこともあり、各省庁の取組について公表していく必要性がある。

    【事務局】
    ○後者については、率先実行計画があり、電力の使用量、ごみ等、毎年集計をして公表している。水や紙の節約についてはうまくいっているが、廃棄物の量や電力消費を減らすことについては、あまり取組が進んでいない。

    【太田委員】
    ○第3部2の環境保全施策の体系では、環境政策の共通的基盤として、計画の制度的な仕組みについて新しい取組が必要ではないかといったことを記述する必要があるのではないか。

    【村上委員】
    ○地方分権の流れの中で、環境に関わる問題について、地方自治体の様々な試みが独自に始まっていてるが、それをどう評価するか。国でやるべきことか、地方でやるべきことか、そういったことを整理していただきたい。 

    【小早川委員】
    ○第3部2(2)の環境影響評価のところで、戦略アセスの話をどう書くか、また、戦略アセスではないけれども、各種公共事業と、民間であっても、ある程度の規模の環境改善効果を持つ事業について、現在のアセス法では、カバー出来ない問題をどう取り扱うのかという点について検討して欲しい。

    <以 上>