中央環境審議会企画政策部会第1回環境基本計画小委員会議事要旨


<日時>平成12年7月7日(金)10:00〜12:30

<場所>通商産業省別館902号会議室

<出席>
   安原委員長、浅野委員、天野委員、幸田委員、平岡委員、福川委員、三橋委員、
   村岡委員、村上委員、村杉委員、太田特別委員、武内専門委員、寺門専門委員

   企画調整局長、企画調整局企画調整課長、大気保全局企画課長、企画調整局
   調査企画室長、企画調整局環境計画課長、企画調整局環境計画課計画官

<議題>

  (1)環境基本計画の見直しについて
  (2)その他

<配付資料>

  資料 新環境基本計画の骨子案

<議事経過>

  事務局から資料「新環境基本計画の骨子案」等について説明後、同案について議論


【天野委員】
○現行計画の第1部(計画策定の背景と意義)とは異なり、骨子案では、第1部が「現状と課題」となっているが、現状から課題を導くと、課題が現状に引っ張られるため(現行計画の「環境基本計画策定の意義」のように)、環境基本計画の存在の意義を記述することが必要である。

【平岡委員】
○環境政策について諸外国との比較を行う前提として、環境システムとしての社会資本整備の状況について、下水道整備の状況等、欧米諸国との比較を記述する必要がある。
  • 欧米先進国並の社会資本整備が日本にもあると思うのは間違った認識であり、上水道整備にしても97パーセントしか整備されていない(3パーセント(360万人)整備されていない)等、静脈系の社会資本整備が遅れている。そうした状況を前提にしないと環境政策について諸外国と比較することはできない。

    【事務局】
  • 社会資本整備の状況については、第3部 1 重点分野における展開の(9)環境投資の推進や、第3部 2 環境保全関連施策(3)環境政策の共通的基盤で記述する予定である。

    【浅野委員】
    ○骨子案の第1部では、環境を巡る状況のトレンドについて記述しているが、第1部に環境システムとしての社会資本整備の状況について欧米との比較をすることにより、日本の特性を明らかにする必要があるのではないか。

    【村上委員】
    ○「環境問題の構造変化」(第1部1(2))とあるが、ここでの記述されている状況は、現行計画前から指摘されている状況であり、現行計画策定後に状況が「深刻化」したものであるので、「構造変化」という表現は適切でないのではないか。
  • 環境問題を解決するための科学技術が大変重要であり、「環境の状況」(第1部1(1))で「負の遺産」について触れるのであれば、同時に、環境技術開発の状況にも触れる必要がある。
  • 個々の地球環境問題を1つの地球規模の問題群として「包括的にとらえ直す」(第1部1(2)5ポツ)とあるが、現行計画策定時にも既にそうした考えはあったのであるから、「とらえ直す」という表現は適切でないのではないか。
  • ウォシュレットの消費電力が400万Kw以上になるなど、利便性の追求が環境に相当負荷を与えているので、ライフスタイルの記述に際しては、利便性の追求についても触れるべき。

    【事務局】
    ○新たな環境基本計画は、現行計画策定後の状況等について整理するものではなく、フルバーションの改訂を行うため、20世紀終わりから、21世紀初頭までの状況を整理している。
  • その他の指摘については、今後、記述の仕方を検討する。

    【三橋委員】
    ○新たな環境基本計画のイメージとして、日本が、5〜10年後に、どのくらい循環型社会になっているか、持続可能な社会になっているかということを、例えば低公害車の導入状況など具体的な姿を描くことによって、感覚的に分かるようにビジョンを示して欲しい。

    【安原委員長】
  • 具体的な目標については、第3部の「重点分野における展開」で記述する予定であるが、他の場所で記述するかについては、今後検討する。

    【福川委員】
    ○前文を格調高い文章で記述し、国民へアピールするとともに、世界へもアピールすることが必要である。
  • 第1部の柱書きと、それ以降で、「環境の現状」「状況」等同じ表現が出てくるが、同じような表現が繰り返し出てくると読みにくくなるのではないか。
  • 読む人を引きつけるためには、冒頭の記述が重要であり、数字等を用いて引きつける工夫をする必要がある。
  • 現在の状況だけでなく、環境基本法ができてからの状況を振り返るとともに、「だからこうしなければならない」という説得力をもたせるために、将来展望を示した上で、課題を導くことが必要ではないか。
  • 「環境政策の展開と課題」(第1部3)の「展開」については、変わっていくというより、むしろ、まだ十分ではないためにこれから更に進んでいくものであり、「進化」の方がいいのではないか。
  • 「経済社会の動向と環境」(第1部2)については、今後記述するようであるが、そこで示されている参考メモでは、「社会のバーチャル化」等分かりにくい表現もあるため、実際に記述する際には、表現の工夫が必要である。

    【太田委員】
    ○超長期と短期の2つの時間的スケールで書き分けてはどうか。地球規模の問題等の超長期の問題と、具体的に定量的目標を示す短期の問題の2段構えで記述してはどうか。
  • 基本的な目標で、環境に関する人間の健康問題の視点を入れるべきではないか。

    【浅野委員】
    ○第1部に魅力がない最後まで読んでもらえないため、出だしを工夫することが必要。最初にサマリーをつけたり、今回の目玉である重点分野のサマリーを冒頭に持ってくる等の工夫が必要。
  • 課題が現状に引きずられるため、「環境問題の現状」(第1部1)の書き方は再検討する必要がある。
  • 「環境問題の構造変化」(第1部1(2))については、第3部の重点分野の展開につなぐ記述であるため(規制で対応できないものを重点的プログラムにしている)、第3部を記述した後で、フィードバックして、第1部の記述を検討する必要がある。

    【村杉委員】
    ○環境の状況については、人間中心に環境問題をとらえるのではなく、自然環境の現状から環境問題をとらえる必要があるのではないか。ただし、そうすると計画ではなく、白書のようになってしまう恐れもある。

    【武内委員】
    ○環境の状況について、総合的環境指標検討会の検討結果を用いるのであれば、同検討会でフォローアップのための会合を持ってはどうか。

    【事務局】
    ○指標検討会を開催する予定はなく、検討結果について、できるだけ活用していくこととしている。

    【浅野委員】
    ○現状を端的に示す物質やエネルギーのフローや、共生指標のパッチ数等も使えるのではないか。

    【武内委員】
    ○山地自然地域、里地自然地域、平地自然地域の分け方は見直す必要がある。

    【福川委員】
    ○「共生」を究極の目標としてとらえるのであれば、「循環」はかなり狭い意味になるので、同レベルで、「環境効率性」を目標に加えられないか。
  • 施策の「費用対効果」についての基本的な考え方を明確化する必要がある。

    【浅野委員】
    ○骨子案の長期的目標は、昨年12月20日の企画政策部会で配布された部会長メモをもとに整理したものであるが、環境基本法(第3条)によると、究極の目標は環境の恵沢の享受と継承であり、それは、人を意識した「共生」であるが、それを「共生」という言葉を用いないで記述することは可能か。共生の意味は2重なので、ワーディングを工夫すべきである。
  • 予防原則は、OECDの議論等を見ると、環境リスクを意識したものであり、予防原則と環境リスクは、分けて記述しない方がいいのではないか。
  • P6の3つ目の○は、目標と手段が混ざって記載されており、不正確ではないか。

    【天野委員】
    ○4つの長期的目標については、人との関係でとらえている。循環については、窒素やリンの循環等に対する人が与える負荷の観点でとらえ、共生については、自然環境に対する負荷の観点でとらえているので、共生を上位概念とするのはいかがか。長期的目標は現行計画を継承しようということで部会では議論されていたので、環境効率性を新たに長期的目標に入れるのは大議論となってしまうのではないか。
  • WIN−WIN型アプローチについて記述するだけでなく、環境政策においては、トレードオフとなる問題についての考え方を示すことも重要。
  • 予防原則については、環境リスクとの関係で述べられることもあるが、不可逆的な被害の回避として、述べられることもあるので、予防原則と、環境リスクは別々に記述することで差し支えないと考える。

    【寺門委員】
    ○地球温暖化問題等、環境問題への国民の参加を広く求められているので、個人個人の目から見て、各自の行動が環境問題と結びつけた書きぶりをすることが必要。

    【安原委員長】
    ○各主体の役割を記述する際に工夫する。

    【寺門委員】
    ○脱物質主義への「パラダイムシフト」というが、現実はそんなに単純なものではない。

    【武内委員】
    ○人と自然の書き方が、人の行為による破壊の側面がまだ強い。里地自然地域に見られるように、自然と人間との関係性が希薄化している。関係の再構築ということを強調すべきである。P6下から2つめの○の「減ずることのないよう」という記述はやめた方が良い。

    【平岡委員】
    ○「負の遺産」については、基本的な考え方を示し、記述することが必要。また、化学物質やPCBの問題等、放っておくと大変な問題について記述し、次世代に残さないような処理について検討するのも重要なこと。

    【天野委員】
    ○4つの基本的な考え方(汚染者負担の原則、環境効率性、予防的な方策及び環境リスクの考え方)については、この4つの基本的な考え方に基づいて施策を立案しているのが分かるように、記述する必要がある。
  • 計画の効果的実施については、環境庁が環境省になることによる違いや広がり等の変化を読む人の立場に立って、わかりやすく記述するべき。

    【浅野委員】
    ○第3部の「重点分野における展開」と「環境保全関連施策」については、同じことの繰り返しにならないように、最初で抑制するなどして書き分ける必要がある。
  • 現行の計画は、重複をいとわずに漏れのないように網羅的に施策を記述したが、今回は個別の施策よりも大きなストーリー性をもたせ、はっきりとした方向づけを示すべき。

    【福川委員】
    ○「環境保全関連施策」(第3部2)の「関連」という表現は、一段下がった、重要でない施策とのニュアンスが出るため、変更してはどうか。2の(1)〜(4)も重要な話しである。

    【天野委員】
    ○重点分野を独立させて、それぞれの下で施策を扱い、第3部 2 環境保全関連施策に係わる施策を、現行計画の長期目標としての施策と位置づけをすれば、関連施策でなくなるのではないか。
  • 4つの目標で、循環と共生は並列ではないか。共生が上位概念というのは理解できない。
  • 現行計画の共通的基盤に記述してある内容と今回の骨子案において共通的基盤の内容に記述されていない点を解りやすく記述する必要がある。

    【幸田委員】
    ○今回の骨子案では、理念や定義がしっかり書かれており、これからどのような方向性を決定する理念等というものは大事なもの。今後、記述を修文するとしても、そうした記述は重要である。

    【天野委員】
    ○目標や目的と原理や原則とは違う。環境効率性というのは、汚染者支払いの原則や予防原則などというような考え方なので、目標というより原則。

    【浅野委員】
    ○「共生」という概念を上位の目標、原理原則のようなものと捉えるなら、実現するための長期目標というような記述にすることによって、現行計画の目標の表現を維持できるのではないか。

    【福川委員】
    ○環境効率性については、「共生」を上位概念にすると、廃棄物をリサイクルする、二酸化炭素を固定化するというように「循環」の概念も狭くなると考えて、環境効率性を入れてはどうかと提案したものであり、自然機能全体、地球機能全体というように「循環」を広く捉えれば、「循環」の中に環境効率性の概念も含まれてくる。

    【村杉委員】
    ○共生の概念がこの5年で広く使われるようになってきて、むしろ"living together"のような意味で用いられてきているので、共生を上位概念とし、ストーリー性、それを確保する意味での循環というようにし、循環が崩れてきているということについても記述した方がよい。

    【武内委員】
    ○国際的取組の記述を見ると、今の計画は国内と海外を切り離して書いていて問題である。途上国援助とか地球全体という漠然とした問題と地域性に焦点を当てた記述をアジアの示唆という視点からみたら重要ではないか。

    <以 上>