第1回地球温暖化対策に関する基本方針小委員会
議事要旨


<日  時> 平成10年11月17日(火) 14:00〜17:00
<場  所> 通商産業省別館905会議室
<議  題> 1.地球温暖化対策に関する基本方針に係る論点等について
         2.その他
       
<配付資料> 1.地球温暖化対策に関する基本方針小委員会名簿
         2.企画政策部会における基本方針に関する指摘事項等
         3.基本方針に関する論点(案)
         4.気候変動枠組条約第4回締約国会議(COP4)の概要
   参考資料1.地球温暖化防止行動計画
   参考資料2.環境基本計画における地球温暖化対策関連部分
   参考資料3.地球温暖化対策推進大綱
   参考資料4.自然環境保全基本方針
   参考資料5.湖沼水質保全基本方針

<議事経過>

 冒頭、事務局より地球温暖化対策に関する基本方針小委員会委員の紹介があった。

 委員長より、本日の議事内容の説明後、地球温暖化に関する小委員会開催についての経緯と今後の日程について連絡があった。

1.地球温暖化対策に関する基本方針に係る論点等について

 事務局より、資料に基づき企画政策部会における基本方針に関する指摘事項及び基本方針に関する論点等についての説明の後、委員から、意見発表及び質疑応答があった。

○ 資料2の3頁の「再生可能エネルギーの大幅な増加の必要性とそれを実現するための各種施策の措置。化石燃料消費及び原子力の大幅な削減。」と4頁の「エネルギー供給の面で、新エネルギーも進めるべきであるが、基本的には原子力の推進が不可欠。」の記述内容の相違について尋ねたい。

(委員長)各委員の立場、観点から発言されたものを要点だけ記述したものである。

○ 基本方針の目標、ねらいについては、京都議定書の批准、排出権取引など国際的枠組が確定するまで6%という数値目標を掲げることが困難であるため、当面基本方針は、温室効果ガスの排出量の増加傾向を減少傾向のベクトルにするという説明であった。その説明は納得できるが、国際的枠組の状況にかかわらず、6%目標に向かって最大限国内努力を追求するという基本的立場が基本方針策定に当たって前提となると考える。

○ 森島部会長から2010年というのは一里塚であって、温室効果ガス濃度の安定のためには排出量を3分の1にしなければいけないのではないかという話があった。もともとは1990年レベルの排出量にすることを2000年までに達成するということであったが、達成が不可能なため2010年ということになっている。一里塚という観点からすれば、6%目標を、京都議定書の批准、発展途上国の参加如何にかかわらず厳しいものととらえ、基本方針に入ってくる対策は6%のみならず、今後の状況を見据えて考慮しないといけないと考える。
 次に、持続可能な社会について言及すると、経済とエネルギーと環境(3つのE)のバランスがとれないといけない。21世紀の中頃からは確実にこのトリレンマに陥ると考えている。この視点から考えると、持続可能な社会形成のビジョンを取り入れると対策は厳しいものになる。このためには、大量生産、大量消費、大量廃棄のライフスタイルを大幅に転換しなければならないというのが非常に大きな問題となる。この解決には長期的視点のみならず2010年時点においても大変なことである。こういった視点を取り入れていただきたい。

○ 基本方針の基本的方向は、国民全員に訴えかけるものでないとならないという認識で議論されていると思うが、6%という数値は政治的な国際交渉で決定されたものであり、どうして6%なのかなかなか意義について答えられない。また、将来的に温室効果ガスの濃度を3分の1にしなければならないということであれば、6%という数値目標を示すことで方向性が分からなくなるのではないかという危惧がある。施策において数値目標を設けるのはいいと思うが、基本方針については数値目標についてあまり踏み込まず理念を分かりやすく表現したものの方がいいのではないかと思う。

○ 2008年から2012年までに実態的には10数%削減ということであるが、推進法の中では、COP3を受けて数値的なものを何も書いていない。そうすると、どこかで数値的なものを明記して、方向付けを行わなければならない。少なくとも1990年レベルより6%削減という表現を用いる用いないに関わらず、法に記述がないのであれば、国の方向付けとして基本方針の中で何らか数量的なものを明確に打ち出すことを行うことが必要である。また、吸収源等不明確な問題があるが、実行計画においても数量的なものに対応するものがでてくると思われる。そこで、資料3の1.地球温暖化対策の推進に関する基本的方向のところで「地球温暖化防止のための各主体の役割をどう考えるか」ということについては各主体の実行計画のところでの役割のことかと思うが、不明確であるので回答して欲しい。

(委員長)重要なご指摘と思うが、後ほど事務局から回答させる。
 この推進法の第一条の目的の中で、COP3の経過を踏まえというこということが明記されていますので、COP3で我が国が6%削減を合意したという厳然たる事実も含めて踏まえている。それを全体として具体化していくという方針であるので、6%を明記するということについては法律上問題はないと個人的には考える。ある程度数値目標を出して、それに見合った対策を考えていくということでないと、十分な対応がとれないのではないかというのが個人的意見である。事務局から法律の関係で説明して欲しい。

(企画課長)前回の企画政策部会の中でも、地球温暖化対策推進法の中での基本方針というのは京都議定書の実施の中でどういう位置づけにあるのかということを申し上げたが、6%ということと、2010年前後というレベルということは京都議定書に規定されており、もちろん国内対策が主であって、排出権取引などはあくまで補足的なものであるが、各国がコミットメントを実行するためのルールについては一部国際的な交渉の宿題として委ねられたという経緯がある。したがって、各国がそれぞれのコミットメントをルールに則り、計画、戦略を作成し実行するためには、その詳細のルールが成立するのを待つ必要があると推測される。そのことについては3月の中間答申で排出量の増加という実状を踏まえ、現在できる対策をとるべきだということであったので法ができたのであって、いずれにしても2010年に6%削減というのは考慮に入れなければならないというのは当然であるが、それを実現するために定量的に戦略・仕組みを基本方針で定めるということに関しては、COP6に国際的取組の合意を得るということになっているので、京都議定書対応総合的制度の中で行っていかなければな らないと考える。6%という削減は命題であり、定性的に相当厳しことを行い、国内取組を主として行わなければならないことも分かっている。こういう中で基本方針をどういうものにするべきか事務局としても悩んでいるし、委員の方々に御議論いただきたいと思っている。

○ 先程発言したのは、明確に2010年前後に温室効果ガスの排出量を6%削減するには個々の対策に数値目標を設けるということではなく、6%という数値目標の重みを明確にしなければならないということである。COP3の経過を踏まえということは明文化されているので理解できるのではあるが、対国民の役割という点では、基本方針の中でCOP3で確定した6%という目標を提示し、方針の中で明確化すべきである。

(企画調整局長)端的にこの法律においては6%という目標は国際公約として厳然と存在している。他方、国内取組に重きを置くことや、排出権取組などは補足的なことも記述しており受け入れている。しかし、全体的な枠組というものが固まっているわけではないが、そのため、対策を放置するわけには行かないという観点で法律を作ったものである。また、目標のところに経緯・経過を踏まえという記述があるが、そこまで以上に踏み込めないというところで作成されたものでもある。他方、そういった状況により、付則の2条において「政府は、この法律の施行後5年以内に、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」という規定をおいている。政府・地方自治体に対しては義務付けをしているものの、事業者・国民については自主的取組を創造する法律という位置付けになっている。おそらくそういった取組だけでは6%削減目標の達成は困難であるといえる。したがって、この法律でできることは限られたものにならざるを得ないが、温室効果ガスの排出量の増加の傾向だけは最低限変えていきたい。それを行わないと大変なことになるという 認識であり、早急に取り組めることをまず行いたい。一方、京都議定書の内容及び国際的枠組の確定、国内対策の問題点などが5年以内に明らかになるであろうから、その際にもっと厳しい取組というものを法律の改正・新法の制定を視野に入れながら法的に考えていいかなければならない。
 6%については単に努力すればいいというものではなく、国際公約である。しかし、法においては6%を具体的にどうやって達成すればいいのかということについては予定をしていない。したがって、この法律に基づいてつくられる基本方針であるので、6%という目標を直視しつつも、ものを考えていかなければならないが、6%達成のための法律でないということである。

(委員長)ベクトルの転換という表現であれば、腰が引けているという印象を与える可能性がある。そういうことではないはずなので、どううまく表現するかである。皆さんの議論を踏まえ、目標のところをどのように表現したらよいか次回までに事務局と相談して、素案を用意したい。
    タイムスパンをどう考えるかというと、法律においては5年以内に見直すとなっているので、当面の基本方針においては、5年以内ということで考えていいのか事務局の意見を伺いたい。

(企画調整局長)法律自身がそういう構造になっているので、我々はこの法律で2010年までやっていくという認識ではないが、この法律に基づく取組が、3年後、5年後だけを見据えたものでないといけないということはない。6%を直視してということになると、この法律においては、強制的に義務付ける規定があるわけではないので、温室効果ガスの排出の増加傾向を早く方向転換しないと大変なことになるが、厳しい規制を置く必要がある。そういう意味で、おそらくこの法体系ではおそらくもたないと予想される。これは、国際的枠組が固まる、もっと具体的な対策をとらなければならないという時期が訪れるという想定の下に作られた法律であるということではあるが、向こう3年、5年だけの対策に限定されたものでならないということではない。

(委員長)基本方針に基づき国及び地方公共団体の実行計画というものを策定する。その際タイムスパンというものを考えなければならないが、京都議定書が国際的に発効し、批准するまでこの基本方針を見直しつつやってゆくということであるが、計画期間というものをどう考えたらいいのか。

(企画課長)今回の基本方針に定めるものは実行計画そのものではない。

(委員長)計画に関する基本事項を決めるということであるので、計画期間というのは基本的要素であると考える。

(企画課長)何年でなければならないということは必ずしも決めなければいけないとは考えていない。

(委員長)原案の段階では自由に考えればいいということであるか。

(企画調整局長)今の御質問に関しては、2008年から2012年までのことについて考えていただくべきであろうとは考えるが、あまりにも枠組が確定されていないので、そのなかでの2010年もしくは2012年であるということであると、もともと6%の担保法でないという大きな性格がある。京都議定書の担保ということで見直さなければならないというのが、付則2条のもともとの考えであるので、向こう5年間しか考えないというものではなく、2012年までのものをお考えいただくべきだと考える。

(委員長)2012年まで考えるというのであれば6%という目標以外に書きようがない。

(企画調整局長)もともとこの法律は2012年までの取組を考えてつくられたものであるが、6%の担保法ではない。

(委員長)しかし、できる限りのことをして国内対策のみで6%を達成できるというのは結構なことであるわけですね。

(企画調整局長)積極的取組の結果達成できればそれに越したことはない。

○ 第3条から第6条において各主体の責務が掲げられている。そして、基本方針では、各主体の講ずべき措置が定めるということになっている。資料3の「地球温暖化防止のための各主体の役割をどう考えるか。」というところを考慮すると、国、地方公共団体、事業者の定める実行計画においては、抑制のためであるのが、ある程度目標がないとどのようにしたらいいのかということが不明確になる。担保法でないということで、必ずしも目標を掲げる必要がなければ、ただ減らすということだけでいいのかということで不用意にとられかねない。

(企画調整局長)我々自身がなにか提案をもって臨んでいないので委員会で、御議論いただきながらまとめていただきたいがたいが、一方では、実行計画を12年までの期間として行って6%削減が達成できるとは法律の性格上難しいと考える。また、この法律の見直しを見込んで5年分だけ対策を考えればいいという話ではない。

(委員長)12年までを展望した基本方針として5年以内に見直すということであれば法律との整合性はとれるのか。

(企画調整局長)法律との整合性はとれるが、ただ、ロングスパンの方が実効性があがるのか、短い時間の間にいろいろ考えた方が実効性があがるのかご議論いただきたい。

(調整官)温暖化対策というものは中長期的観点から論じてゆく必要があるが、基本方針を考える際に短い時間で議論するのは基本方針にそぐわないと考える。したがって、中長期的観点に立って政策を行うのが大前提である。その時に、タイムスパンは他の環境関連分野の基本方針を例に取ってみても、特に期間を設けているわけではないので、基本的に安定的に将来を見通したものと考え、あまり頻繁に改正することを念頭に置かないでできているので、昭和48年策定であったり、昭和59年策定であったりするわけです。
 目標との関係をいえば、自治体の実行計画の目標と6%の関係では、6%は日本全体の排出量の目標であるので、全ての自治体にその数値が一律に適用されるわけではない。実行計画はある意味率先実行計画であるので、基本方針で縛るというものではなく、できる自治体は率先してやっていただくのがふさわしいのではないかと考える。

○ 各自治体に6%を適用するという意味ではなく、国全体にかかるものであるということであるので当然そうである。COP3が終了して6%削減という数値的・数量的なものは新聞等を通じて国民にかなり浸透したと考えるが、温暖化対策推進法においては、2008年から2012年の間にの間に削減しなければならないというなかで、それぞれが実行計画を策定・公表し、実施状況について公表しなければならない。そこで6%という数値目標は国としての重みづけがされ、その下に国民がなすべきことがぶら下がっているということが、私の発言主旨であり、数値目標がどこにもでてこないのかということである。

○ 基本方針を2・3年で見直さず、中長期的に考えるということは同感だが、それならなおのこと、基本方針の目標が増加傾向のベクトルを減少傾向に転換するということでは志が低すぎる。2008年から2012年に6%削減ということは当然として、長期的な目標が存在するので、当座の目標でない枠組での想定が必要と考える。

(調整官)その点については参考資料2の環境基本計画が参考になると考えている。その1頁目に究極的には濃度の安定化、中長期的には国際的枠組づくりの努力、国内的に鋭意取り組み、当面はこの計画に基づき行動するということ記述になっている。
 もうひとつ参考にしていただきたいのは、法律に基づく基本方針であるので、政策の基本は法律におくべきであり、法律の条文はわかりにくいため、各主体に対策の方針を示すべく法律に記述されている考え方、理念というものをかみ砕き、分かりやすく文書形式で示すということで、ある意味で法律のコンメンタールみたいなものが法律の基本方針に求められていると考える。したがって、法律では6%が第1条ではこの法律は、「気候変動に関する国際連合枠組条約及び国際連合枠組条約第三回締約国会議の経過を踏まえ、大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させ地球温暖化を防止することが人類共通の課題であり、全ての者が自主的かつ積極的にこの課題に取り組むことが重要であることにかんがみて対策を講じていく」というこのあたりの考え方に沿って、基本方針を各主体に示すことが基本ではないかと考える。

(委員長)基本方針においては長期的なタイムスパンをとって、適宜見直していくというのが基本的考え方ということかもしれない。

○ 6%にこだわらずというと腰が引けたと捉えられるおそれがあるが、増加基調から低下基調に変えるという記述であれば、今の国民の意識からすればなんら訴えるものがない。将来の展望及びベクトルの変換についての困難性を強く訴え、努力項目を例示し、具体的に何をプライオリティを置くか記述していけば、方向性がはっきりすると考える。特に6%の目標についてはアメリカの批准問題や、3、5年後の状況を考えるともっと困難が予想されるとともに、数値目標が変化することが予想されるので、数値にとらわれず具体的な施策を記述することにより実現可能な方向に誘導していくという考えである。

○ 国民は情報をメディアを通じて知るのであるが、その経緯を考えると最初の数値目標らしき数字は4、5%であった。6%という目標は不可能であると通産省から意思が流されたということであった。一方では社会の総排出量が示され、いっていることと、やっていることの乖離が表面化した。全体の印象としては、数字は現れたが、非常に難しいとの受け止め方をされた。その中でタームについて考えると、1年間に日本国内においては法律の成立、基本方針の議論、通産省の二酸化炭素対策の変化があり、可能性としては様々な要素が発生した。そのなかで数値を曖昧にすると後退を意味するという意識が生じている。そこで、何らかの定量的な目標を設け、困難性は承知しているが経済システムや技術的ブレークスルーを通じて担ぎ上げるということを明示しなければ、依然として政策目標と政策手段の連携が無いという印象が続くことになる。

 委員長より2.措置に関する基本的事項について話題を移行することについて提案があった。

(委員長)国のところが一番重要であると考えるが、COP3以前の環境基本計画、以後の推進大綱が存在し、推進大綱においては政府の具体的措置が列挙されている。基本方針と大綱との関係についてどう整理をしていけばいいのか参考までに事務局の意見を伺う。

(調整官)推進大綱は極めて具体的アクションを定めたものであって、例えば法律を作るとか基本方針を定めるといった具体的な政府の行為が規定されている。一方で基本方針においては、自然にしても湖沼にしても具体的アクションではなく施策の実施方針、重点の置き方のようなものが書かれている。ということで基本方針と大綱では中身の具体性の度合いが格段に違うということを念頭に置き、基本方針は法律に基づき政府の基本的措置を定めるものであり、大綱も政府の措置を定めているので、全体的に基本方針は法に基づき閣議決定され、閣議決定に基づき政府の基本的事項ということで施策が展開される。熟度で行くと基本方針は抽象的方向付け、大綱は具体的施策の実施という役割分担があると思われる。

(委員長)推進大綱を横目でみながら、まったく新しい観点で基本的方向付けを考え、両者の整合性がとれているか政府側で検討するという関係になるという認識でいいのか。

(調整官)地球温暖化問題は官民あげて取り組まなければなならないという観点から、大綱では政府においてはあらゆる政策手段を動員して着実削減が達成されるよう総合的な施策を計画的に推進するということで、温暖化推進本部は大綱の着実な実施を図るため、毎年、地球温暖化対策の具体的措置の推進状況を点検し、必要に応じその内容の見直しを行う規定になっている。法律及び基本方針は大綱に記述されていたということではあるが、国会の審議を経た法律に基づき国の措置の基本的事項についてて基本方針において定めるということになれば、国のみならず自治体、事業者、国民の取組は広い意味でみればこの傘の下にあると考えてよいのではないか。

○ 大綱が一番やっかいであると思われる点は3頁において6%の振り分けがしているということであって、基本方針において大綱を踏まえということであれば、この点も踏まえなければならないということが不明瞭で引っかかることである。大綱の元に法があるということはないので、法の基本方針の元に国際的動向により当面の対策としての大綱については毎年見直しを行うということである。COP4において政府は法について宣伝をしたいということであったが、まったくインパクトが無かった。今こういう議論をしているということに反映されているが、批准をするという姿勢を見せずに立法化してもにわかには信じてもらえないということである。そういったことで日本は影響力がないが、アルゼンチンにおいてはCOP4冒頭の発言にあったように具体的な取組をしているということをいえるのである。日本においては国内対策で削減するということを表明しているので、国際的影響力を持つためには基本方針の中で対策を行うということを表す必要がある。その際大綱を踏まえという記述があるのが非常に差し障りがあると考える。

(委員長)資料3はあくまで論点整理であるので、その表現にこだわる必要はない。あくまで、法律が制定されてその主旨に対してどのような目標を設定するのか、それに基づき具体的な政策を打ち出すのかということである。

○ 例えば、大綱の中で森林等による純吸収量が3.7%であると、これを足し算引き算して6%になっているのは明白である。他国の代表団はこのようなことについてストレンジという感想であった。この部分が残らないことを強く希望する。

(企画課長)3頁の部分に関してはCOP3が終了して2週間くらいで、政府部内において、国際ルールが明確でない段階で対策の検討を行わなければならないということで、当面の方針として議論した結果である。(3)の吸収源についてはIPCCの特別報告書が2000年に発表され、その直後のCOPで一定のルールを形成しようという動きもある。(4)のメカニズムについてもルールを明快にしようとしている。現状については分からない部分が多いが、基本方針は閣議決定するということで、現時点で政府部内において何らかの定量的数字が求められるということであれば、当然大綱に書いてある数値というものが、普遍的であるかどうかは別としてあくまで現時点での議論としてでてくるのは想像される。大綱を踏まえというのは全てを踏まえるということではなく、この間COP3から今までの間に当面行わなければならない対策についても政府内で議論していたという事実を踏まえということである。どういうように踏まえるかということについては議論していただきたいと思う。

○ 2012年までのスパンにおいては、毎年見直していくような政策・対策について記入されるのが大綱であるとすれば、この文言と調和するのが必要ということになるのではないだろうか。

(委員長)今の政府部内における内訳はといえばこの数字がでてくるとは想像されるが、国際的交渉を通じて固まっていないところが多い。法に基づいて基本方針を議論するということが要請されているので、内訳については定量化して表現する必要はない。全体として様々な政策を総合的計画的に推進して目標に近づく努力をするということに尽きる。審議会としては内訳にとらわれない、メンションしないやり方で行って参りたい。

○ インセンティブが必要。省エネオイルショックの際、非常な緊縮を行って産業構造の転換を図ったが、それ以上の省エネが今回必要とされている。また、設備投資がなかったら効果的な削減はできないことから、設備投資ができるような施策をきちんと打っておかないと絵に描いた餅になる。特に民生、運輸部門については、庶民の話であるから簡単には減らない。新エネルギーも同様。この辺のインセンティブを与える施策をきちっと書いておく必要がある。
  また、原子力なしには削減は不可能。例えば100万キロワットの原発を一つ入れることによって0.5%削減ができる。確かに安全性の確保は重要であるが、2010年までだけでなく将来にわたって考えるならば必要。

○ 宮本委員の意見にかなりの部分賛成。それはさておき、大綱の基本的考え方を見ると、世界が決めたから仕方なしにやらなければならないというトーンが滲み出ており格調が低い。基本方針では、京都議定書で削減を世界に公約した、ということをきちんと書く必要がある。なおかつ、批准は別問題だが、早急な批准に向けて我が国はどうする、という姿勢を格調高く入れて欲しいと思う。また、制度的なインセンティブは必要。環境税というと大変な議論になるが、いろいろな形のインセンティブが考えられるので、そういうインセンティブを与えるとの方向性を入れて欲しい。また真に実りある削減を図っていくために、単に数字を減らすということではなく、排出を削減する大きな構造を作っていく必要がある旨も明記する必要がある。

○ 私も、規制的手法ではなく、市場メカニズムによって削減が進むようなインセンティブが必要と認識。その場合に税を含む経済的手法が大きな柱であると考えているが、同時に、市民に対する情報公開の仕組みがきちんと確立され、市民の声、世論の支持がインセンティブの一定部分として働くようなシステムが作られる必要がある。また、現在の排出量のデータが産業、民生、運輸という部門分けになっており、民生、運輸は事業者の責任外との捉えられ方がなされることが多い。しかしながら、新しい製品開発等の産業部門の努力が民生部門に大きく寄与することもあるように、民生等部門における排出抑制のための事業者の努力が評価されるような仕組みも必要である。

○ 部門の分け方について、運輸部門の中には事業者に係るものと一般家庭に係るものがある。基本方針のイントロ等で、基本認識として実態のデータを示すことが必要になると思うがその際には、運輸部門の内訳を明らかにした上で議論して欲しい。インセンティブについては、私もアメとムチが必要と思う。が、その中身については今後議論すべき論点が多々あり、この数ヶ月でまとめることはできないと思われる。従って基本方針では、具体の実行計画は未だ立てられないことを示した上で、まず第1歩として、その意志決定プロセス等について明らかにすべき。

○ 参考資料として「自然環境保全基本方針」を出した理由如何。

(調整官)「法律に基づく基本方針」というものに対しイメージを持っていただくための参考として付けたもの。

○ 「自然環境保全基本方針」では、「大量生産、大量消費、大量廃棄型の経済活動に厳しい反省を加え・・」と書いてある。一方、昨年開催された政府の合同審議会においては、委員から聞いた話だが、このような視点からかけ離れた議論をしていたという。つまり、大量生産、大量消費、大量廃棄の社会構造があたかも前提であるかのような資料が示されていた。温暖化問題は社会の構造的変革を必要とするという認識に立てば、根本的に合同審議会の議論の立脚点を考え直す必要がある。

(企画課長)御指摘の関係審議会合同会議は、COP3前に我が国の提案を行う際に審議いただいた経緯があるが、大綱そのものについては合同審議会の審議を経ておらず、政府部内で現実に何ができるのかという視点から施策の洗い出しを行い、当面とりうる施策を中心にとりまとめたものである。したがって大綱については経済成長等の前提まで踏み込んで議論しているものではないことを念のため申し上げる。

○ エネルギーの将来見通しについて、これはエネ庁の長期需給見通しを基にしているもの。一方、環境基本計画を定める際の各界の意見の基本的な対立線は、エネルギー需要を大きなものと想定してそれへの供給を考えるのか、逆にエネルギー需要を抑える方向で考えるのかというところにあった。そういう視点が大綱の中にあるのかということが疑問。また、基本方針においても、国民に訴えて世論を喚起していく場合にそこが亀裂線となるであろう。

○ 資料3の2.で項目別にどう考えるか、等の問が立てられているが、これらについて項目別に答を出していかなければならないのか。どのように進めていったらいいのか。

(委員長)法は、国、地方公共団体、事業者、国民の自主的な行動を基本として全体の施策にも協力してもらおうというものであるので、国の政策措置を通じて、各委員が発言されているとおり、プライオリティの高い重点事項についてインセンティブを付けて、それぞれの主体の努力を喚起し支援促進することが重要であろうと考える。ただ、これが基本的な方針であるので、どこまで具体的に書いたらいいのか、大綱との整理をどうするのかといった問題はある。ただお経を書いただけではなく対策をやって行くんだという意気込みがきちっと現れて、それが実行に移されていくように工夫が必要。プライオリティを考える際に、排出の大きい活動に対して抑制が働くように考えなければならない。運輸、民生等増加が著しい分野についてどのように抑制し減少にもっていくか、そのための有効な施策は何なのかといった方向付けができればいい。

○ 施策の実効性をいかに確保するのかが一番の問題である。「基本的事項」とは、国、地方公共団体等の施策、措置の実効性をいかにすれば確保できるかというためのものと考えて良いか。

(委員長)先ほどより意見が出ているように、市場経済の下で排出抑制を進めていくということになると、税制を含めた経済的措置が有効であるという議論はできると思う。

○ 施策の実効性の効果判定等についても、どういうことについてどのようなことをやっていったらいいかということを示すのが「基本的事項」ということになるのか。

(委員長)どういう政策措置を考えるのか、その施策が、期待されるような実効性を確保するためにはどのように実施したらよいかという点が中心になるであろう。

○ エネルギーの効率化を図るというときに一番大事なのは産業部門については把握しやすいというのは認識しているが、公共の中で活動するものについては非常に把握しにくい。国として一番重要な仕事として算定、動向分析があるわけだが、「何々部門」に止まらず本質的にどこに排出増の原因があるのか見えるようにしていく必要がある。さもないと、理念は分かるけれどもどうやって減らしていったらいいのか分からない。行政としてはどういう事業活動をするんだということを、この部分では明らかにしていかなければならない。それと同時に、何らかのブレイクスルーが必要。技術開発におけるブレイクスルーもそうだが、国としてどういうブレイクスルーを目指すのかということを掲げていかなければならない。

(委員長)環境に良い技術の開発と活用が重要という意見であったが、技術は開発されているものの、在来技術と比べて価格が高いためなかなか普及しないという問題があちこちで見られる。そういう新規技術が価格だけの理由で普及していない場合に、それをブレイクスルーしていける仕組みを考えなければならない。

○ 電源3法の中で新エネルギー、省エネルギーとしてNEDOなどを使っており、電気代から一部とった税金を回している。こうした枠組みをもっと効果的に使っていけばいい。それができた後、太陽光、風力についても限界はあるものの助成していけばいい。研究開発とともに、技術の普及のためのインセンティブにお金を使っていく、そういうことも入れてもらったらいい。

(委員長)そうですね。非常に大きな効果を持つと思う。

○ 技術開発に関して、ダイオキシンの例だが、大きな焼却炉の設置に対して国から地方公共団体へ1/4の補助金が出ている。これは一つの例だが、知恵を絞れば、国と地方公共団体の関係についても有効なインセンティブの与え方がある。インセンティブというものが法律に馴染むのかは分からないが、せっかく意気込みをもって取り組む以上、実現性のある、環境全体の構造を変えるようなものを含ませていきたい。

○ 私が常々やりきれなく感じていることは、「国の責務」と書かれても、実際の政策運用時にはそれが「環境庁の責務」となり、通産行政対環境行政等の話に行き着く。そうではなく各省庁の施策のベースに環境なり地球温暖化がしっかりと座るような仕組みが何とかとれないものか。突拍子もないことをいうが、各省庁がISO14001を取得するというような話があってもいい。民間での取得は着実に進んでいる。ISOは、企業経営のベースに環境配慮を据えてやっていく、しかもそれを外部認証でやっていくということだから、各省庁がISOを認証取得することには、大きな意味がある。
  もう一点、基本方針の中で大きな柱となるべきは、市民参加の枠組みの確保であると考える。各施策の策定から運用、進捗状況の評価に至る全ての段階で市民参加が確保されることが重要。そのことによって国民の意識啓発も進んでいくという関係になっていくだろう。

(委員長)省庁でどのくらいISOの取得に向かっているのか分かるか。環境庁は取り組んでいるでしょう?

(対策課長)3年前から率先実行計画を作り目標を立てて取組を進めている。さらに今回の実行計画によって、システムを超えたパフォーマンスまで含めきちんとやっていくということになる。またその計画や実施状況の結果についても公表し、認証機関ではないが市民のチェックを受けることになる。このように必ずしもISOの規格通りのものをするということではないが、よりパフォーマンス部分に踏み込んだ取組は進めていけることになる。なお、実際にISO14001を取得している省庁は現在のところない。環境庁では取得に向けた準備を進めているところ。

(委員長)地方公共団体ではどうか。

(対策課長)上越市など複数で取得している。

(委員長)実効性をいかに担保していくかという点について御意見あれば

○ 法で5年以内の見直しとあるが、見直しを行う基準はどういうものになるのか。

(企画課長)法案の国会審議の中でも議論あったところ。定量的な基準はないが、法の目指すところが進捗しているかどうか、すなわち、増加基調にある排出量が、横這い・低減に向かっているのかどうか、という点が一つ。二点目には、国際的な交渉の進捗状況。この二点を勘案して見直すことになる。

(委員長)産業部門の自主行動計画については、毎年フォローアップして関係審議会に報告し、公表するというプロセスが決まっている。政府の大綱もきちんとフォローアップしていく。地方公共団体も同様。この結果を見ながら、ということになっていくのだろう。そういう手続き規定をきちっと明らかにしていく、ということではなかろうか。

○ 事業所であれば自分で使っている燃料等から排出量の計算は簡単だが、自治体だと、一般の人の車や家庭があり排出量の算定が難しいのではないか。その算定のルールはどこで決めるのか。

(委員長)地方にガイドラインで示すというようなことは考えているのか。

(対策課長)算定の方法については、政令等で定める。なお、国、地方の実行計画については自らの事務、事業に関するものにかぎられており、一般の家庭等は入ってこないため、把握の方法は企業と変わらない。

○ 一般の人からの排出はどのように把握するのか。

○ 国全体の絶対量は把握できるが、それがどこでどう使われたことによるのか、それをどのように改善していくのかということが見えないと、社会システムの改善はなかなか進まず、結局、「みんな車に乗らないようにしましょう」等の運動論で終わってしまう。そういうことはできるだけ避けたい。そのための国の役割として、計測とか、社会システムとしての削減方策の検討を進めてもらいたい。

○ 対策課長の説明は国・自治体は自らの排出についてのみ把握するということだが、寺門委員の指摘は、もっと横断的な施策についても明記されなければいけないということであろう。実行計画の中の「事務及び事業」とあるうち「事業」をどのように解釈するのかという問題だが、これをどの程度中身を伴って伝えられるかによって、志が国民に伝わるかどうかが決まるのではないかと思う。
 国と自治体との関係について、自治体でも独自の削減計画を定めているところがある。国もそういう意味では、事務事業について6%とは別個に目標を立てることを考えてもいい。例えば運輸対策について、自動車単体対策とともに交通対策、都市計画も含めて目配りができる、やらなきゃいけない、ということが基本方針の中に見えるかどうかだ。仮に抽象的な記述で終われば、具体的には大綱でということになってしまい、この法律が本来果たして欲しいと皆が願っているものになっていかない。今の大綱とのギャップをどう埋めるかという点についても、盛り込み方や基本的事項の組み方という点で知恵が要るのではないか。
 なお、原子力については、本当の合意形成が必要、市民の意見を反映しつつというところをやりなおさないといけない。原子力の推進が省エネの実施に逆インセンティブになっているように思う。

○ 浅岡委員の指摘のとおり、今の原子力の閉塞感の原因はそこ(真の合意形成ができていないこと)にある。議論しても、お互いが自分の土俵の中にしか居らず、意見の交流が行われていない。円卓会議も行われているが、推進者と反対者の意見を徹底的に戦わせる場が必要。ライフサイクルや将来のエネルギー構造、環境を含め安全性、廃棄物処理について総合的にどうしていくのかを考えないといけない。その上に立って考えれば、新エネルギーは物理的に可能な範囲として5分の1かせいぜい4分の1までであり、原子力の推進は不可欠であると思う。

○ 私は、地元立川市の環境審議会委員長をやっており、立川市の例を一つ紹介する。現在、市の環境基本計画を策定中であり、色々なファクターの温暖化への寄与を定量化している。その最中でモノレールができて、相当の交通量がシフトしそうである。この効果をどのように評価するのかが難しく苦労している。また、多摩川の河岸段丘での緑地と農業の維持を軸とする方向を考えている。是非基本方針としてもしっかりしたものを作っていただきたい。

(委員長)残り時間もなくなってきたので、3から5まで一括して御意見いただきたい。

○ これまでの議論と事務局の説明によれば、基本方針を定め、それに基づく政府、地方公共団体等の実行計画が必要であり、その際、6%を前提として踏まえ増加傾向のベクトルを低減傾向に変えることの必要性を示すということだが、資料3中の2(国、地方公共団体、事業者及び国民のそれぞれが講ずべき温室効果ガスの排出抑制等のための措置に関する基本的事項)は、そのための戦略を示すものという風に解釈してよいか。

(調整官)資料3の2と3の関係だが、2の「国の措置」は国の温暖化政策全体、3は事業者、消費者としての性格を有する国が自らの排出抑制を抑制するための計画について示すことになる。

(委員長)具体的には政府の率先実行計画をイメージすればよいか。

(調整官)御指摘の率先実行計画は環境基本計画に基づき96年に策定されたもの。その地球温暖化対策版ということで、基本的には同じイメージで考えてよい。ただし、実際のアクションとしてはかなり共通する部分もあり、その辺をどう整理するのかは政府部内でも議論していかなければいけない

○ その場合、一般の事業者にやれ、と言ってもなかなか浸透しない。「まず隗より始めよ」の言葉通り、政府が率先して、多少コストがかかろうとも進めるということにより、一般の人々に対するインセンティブにもなる。

(調整官)こうした政府の率先的取組は、国際的にもGreening Government Operationsという英語で捉えられている。一つは行政コストの削減、二つには環境にやさしい製品のマーケットの創造、最後に事業者や国民への模範例の提供という側面があるとの説明がなされている。

(委員長)率先実行計画の実施状況のフォローアップはどのように行われているのか。

(調整官)極めて膨大な事務作業量を伴っており、やや反省の時期にきているという政府内の意見もあるが、質問票を各省に配布して回答いただきとりまとめ、環境白書に掲載することにより公表している。

○ 率先実行計画は見直すべき時期に来ている。これこそ数値目標を明確にするとか必要。例えば再生紙の利用について見ても、去年の暮れまで国立大学では、大蔵省の一番安い紙を使えとの指示のために使えないという状況であった。

(委員長)時間が来たので、今回の議論はこれまでとしたい。本日の御意見、及び企画政策部会での御意見を踏まえ、次回までに事務局で基本方針の具体的なたたき台を作成してもらう。それを基に小委員会で議論していきたい。
    最後に、先般のCOP4の結果について事務局より説明してもらう。

(対策課長)資料4に基づき、COP4の概要と評価について説明。

(委員長)新聞で「アルゼンチンが約束をした」という情報があったが。

(対策課長)アルゼンチンは次回COP5で2008年からの具体的な約束を表明する旨大統領が演説中で発言。途上国問題の中では、アルゼンチンが自主的約束について提案した際それにチリ、韓国も賛同した。また、カザフスタンが議定書の附属書B国になりたいと表明。さらにクリーン開発メカニズムを早く導入して欲しいという提案も中南米、アフリカの一部からあった。このように途上国の対応も一枚岩ではなくなってきている。

(委員長)他に何か。(発言なし)
    次回は12月1日に環境庁第1会議室において開催。なお、次回からは基本方針の草案の作成に入るため、小委員会は非公開で行いたいと考えている。

( 散 会 )