中央環境審議会第79回企画政策部会議事要旨


<日時>平成12年6月14日(水)14:00〜17:00

<場所>中央合同庁舎第5号館2階 講堂

<出席>

森嶌部会長、安原部会長代理、浅野委員、天野委員、小野委員、北野委員、幸田委員、小早川委員、塩田委員、鈴木委員、中野委員、平岡委員、福川委員、藤井委員、星野委員、松原(青)委員、三橋委員、宮本委員、和気委員、渡辺委員、飯田特別委員、太田特別委員、猿田特別委員、廣野特別委員、横山特別委員、河野専門委員、寺門専門委員、西岡専門委員

事務次官、官房長、企画調整局長、自然保護局長、大気保全局長、環境保健部長、官房審議官、企画調整局企画調整課長、大気保全局企画課長、地球環境部環境保全対策課長、環境保健部環境安全課長、大気保全局自動車環境対策第一課長、大気保全局自動車環境対策第二課長、自然保護局自然ふれあい推進室長、企画調整局調査企画室長、企画調整局環境計画課長、企画調整局計画官

<議題>

(1)環境基本計画の見直しについて
(生物多様性の保全検討チーム報告・環境への負荷の少ない交通検討チーム報告・化学物質対策検討チーム報告等)
(2)その他

<配付資料>

生物多様性の保全検討チーム報告書
環境への負荷の少ない交通検討チーム報告書
化学物質対策検討チーム報告書

<議事経過>

小野委員と事務局から「生物多様性の保全」について報告の後、議論。

【鈴木委員】
○エコシステムアプローチが取り上げられたことは、非常に良いことだと思う。ただし、我が国の生物多様性に影響を与えている、あるいは与えるかもしれない要因としてどんなものに考慮しているか、例えば、ジーンテクノロジーが農業に導入される中で、生態系の生物多様性に与えるかもしれない影響をどのように考えるべきかについての記述が分かりにくい。
・化学物質による環境汚染とそれに伴って起こる生物種の減少の問題はかなり緊急の問題と思えるが、今回の生物多様性の議論ではどのように扱われているのか。
【小野委員】
○環境影響評価法では自然や生物多様性を考慮に入れるとされているが、実際にはあまり重視されていないと感じる場合もある。そういう認識のもと、事業の対象として自然が初めから存在しており、その事業体自身もエコシステムの中に入り込んでいるという認識を持ってもらうことが、エコシステムアプローチの基本的な発想である。
【森嶌部会長】
○ジーンテクノロジーの生物多様性に対する影響や、化学物質の生物多様性に対する影響などをどのように評価しているのかという点についてはどうか。
【事務局】
○新しいテクノロジーや化学物質による影響については検討していない。この検討チームの対象範囲について検討した際に、遺伝資源の保存と利用の部分については、人間との関わりが非常に深く様々な難しい側面を含んでおり、今回の検討ではあえて扱わないこととした。
【星野委員】
○報告書21Pにある「エコシステムアプローチの12の原則」について、原則4における「経済的観点から生態系を理解し」や「市場のゆがみを軽減し」という意味がわかりにくい。さらに、「可能な範囲で、生態系における損失と利益を内部化すべき」とあるが、まず、適正な評価がないと損失と利益の内部化もできないであろう。これは大変な試みとは思うが、どのように考え、具体的にどのように実用化を図ろうとしているのか。
【事務局】
○「エコシステムアプローチの12の原則」にある文章の性格として、これは締約国会議で採択された文章であり、今回は英語をわかりやすく翻訳したものであるが、英語の原文とやや違うニュアンスが伝わるおそれもある。
・原則4の「悪影響を及ぼす市場のゆがみ」というのは、いわゆる貿易障壁の議論を指していると考えているが、それについて具体的に何を行っているかは即答はできない。
【星野委員】
○評価を行うことは非常に難しい。この原則については正しいものと思うが、生物多様性と経済的観点と結びつければ結びつけるほど、難しくなるのではと思う。むしろ、生物多様性そのものを正面から保全するという論点の方が良いのではと思う。
【天野委員】
○当然、貿易による市場のゆがみもあると思うが、ここでは、生物多様性が価値の無いような扱いを受けていることが、基本的な市場のゆがみだと思う。
・アメリカなどでは費用便益分析の中で自然の評価が正当に行われれば、非常に大きな便益が生じ、環境保全が正当化できるという意見が強い。米国やカナダでは、評価手法はまだ開発途上だが、政府の様々な開発政策等にそのような評価が必ず行われている。行政的な手法でどれだけ費用と便益の差が生まれたかを評価として入れれば、環境保全を行う大きな根拠となる。このような評価手法を先進国、途上国を問わず広め、市場のゆがみそのものを評価すれば、これまで以上に環境保全への大きな弾みがつくという認識があると思う。
・多少、途上の手法であっても、そのような評価を用いることで環境保全が推進される手法を導入しようという趣旨でこの原則4が書かれていると思うのであまり矮小化せず、「損失と利益を内部化すべき」という趣旨を正しく理解すべきであると思う。
【森嶌部会長】
○生物多様性の利益についての評価は、アメリカでは、ある程度多く用いられているのか。
・日本では行われていないのか。
【天野委員】
○生物多様性の利益についての評価については、アメリカだけではなく、イギリスやカナダでも研究が進んでおり、研究者がいろいろ手法を開発している。そして、実際にそれらを用いて評価を行い、しかも政府の関連部門が評価を行っている。
・日本においても研究が進んでおり、特に最近では農林水産省がこの手法に大きな関心を示しており、具体的な事例も取り上げた研究が行われている。また、国内の研究者によって、例えば湿地保全による価値の創出について評価を行う研究も出て来ている。決して実現不可能な話しではない。
【森嶌部会長】
○それでは、事務局の方も勉強しておいてください。
【廣野委員】
○報告書27Pの「移入種問題」を全体的に見ると、国外や地域外から入ってくる種は全て悪く、それを防ぐことで国内の純粋種を守り生態系を保全するという感じを受ける。確かに人為的な移入種は急激な影響を与えていると思うが、実際に自然では数百年という期間で見ると、地球上には様々な生物が動いている。もし人間による国というシステムが作られていなければ、もともとは自由に動いている。しかし、国、地域といった考えが生れた結果、在来種を大切にすべきという若干封建的又は国家主義的な考え方を感じることがある。
・「エコシステムアプローチの12の原則」における原則9では、「管理するにあたって、変化は避けられないことを認識すべき」とある。地球上の全てのものは変化するものであり、変化自身は常に地球上に起きていることを考えると、「移入種問題」はネガティブな感じを受ける。
・変化による悪影響は最小限にしなければならないが、変化そのものはポジティブに受入れることが、これからの地球社会ではないか。哲学的ではあるが、この点について専門家の考えはどうなのか。
【小野委員】
○移入種問題は攪乱と関係があり、移入種が生態系に与える錯乱の程度が大きいほど、悪い種となる。また、自然界では種が自然に入れ替わっており、これを「自然回転率」と呼んでいる。自然回転率においても、種の侵入が起こっている。しかし、今回の検討で用いる「移入種」とは、「人間の経済活動に伴う」という条件がある。そして、入ってきた種によって生態系が攪乱を起こした場合を特に移入種問題として取り上げている。
・1つは時間、もう1つは攪乱ということを考えれば、移入種問題はうまく整理されていると思う。
【廣野委員】
○経済活動による移入は攪乱的要素になるという前提があるように思える。人為的な移入を抑えることは、変化を抑える構図になるのではないか。もちろん、その変化が悪影響であると、自然科学の分野における知見が十分あり、攪乱であると明確なものについては移入種対策に賛成であるが、移入することによって、それがすぐ攪乱であるという捉え方は強すぎるのではないか。もしできれば、若干、説明が加わるとわかりやすい。
【小野委員】
○今の点については考慮する。ただ、遺伝子攪乱のような問題があり、既に国内でも問題になっていることを知っておいていただきたい。例えば、あちこちにホタルを放すことで、既にホタルの原種がわからないくらい遺伝子の錯乱は起こっている。
【天野委員】
○報告書23Pで、目標に到達する道筋を明確にするべきと提言されているが、ここでいう「目標」が10Pにおける国家戦略の3つの目標だとすると、目的のような大きな範疇であると思う。目的というのは非常に大きなものであり、あまり変わらず、それに対し目標は現状に合わせて変わっていく。目標と現状との乖離が大きくなると、それに伴い目標も変わっていく。その時、そのような乖離がどのように起こっているのか、特に人間社会、人間活動の影響がどのような形でその拡大を促進しているかを明らかにしなければいけない。ここが明らかになることで、どのような対策が必要になるか、人間社会をどのように変えるべきかといった政策が出てくる。そして、政策が明らかになれば、次にどのように推進していくかを考えるとことになる。おそらく「道筋」というのは、このようなステップ全体を表していると思うが、漠然としすぎており、何を明らかにすべきかが見えてこない。生物多様性について何が必要かが整理されていると非常にわかりやすくなると思う。

 太田委員と事務局から「環境への負荷の少ない交通」についての報告の後、議論。

【西岡委員】
○地方自治体が交通規制等をやっていくときに、政策手段として規制の権限が強化されなければいけないのでは。この10年ぐらいの間の権限強化の動きについてお伺いしたい。
【太田委員】
○政策の担保をどうするかは大きな課題。
・今回の議論は時間的なものもあり、大きなフレームを作って、仕組みを考えるまでで、具体的なやり方については議論が十分行われていない。
・この中では規制的手法があり、そこに経済的なインセンティブをかけ、啓発的なもので全体を支える。全部そろわないと難しい。
・ロードプライシング、その他経済的なもの、それを担保するものについて、様々な具体的な手段は、今後、国全体の中で議論しなければいけないことだろう。
【事務局】
○過去10年に地方公共団体の権限の強化について、権限が付与されたものはそれほどない。ただ、全般的に地方への分権もあり、自動車の交通環境の対策においても、地方公共団体がいろいろな取組をする中で、そのような方向に向かおうとしているのは事実。
・環境庁では、自動車NOx 法の見直しで、運送業だけではなく、自動車を広く使う大口事業者、あるいは自動車メーカーにどのような規制というか、取組を求めていくのかということを、法律上どうやって行うかについても、今後の議論の課題になる。
【森嶌部会長】
○今度の地方分権推進法で、報告書の中の外国のようなことを地方自治体ができるようになるのか。例えば駐車場を制限するとか、一定の賦課金を課するなどがあるが。
【小早川委員】
○詳しい内容は覚えていないが、都市計画法あたりの計画権限が県から市町村へ、国から県へ、国の関与を弱めるという形で、全体的に地方自治体へシフトしている。
・交通環境管理計画と都市計画とをどうリンクさせるのかが問題。これは計画論としてどうなのか。また、計画というのがいいのか。計画論的にさらに詰めていく必要があるのではないか。
【事務局】
○現に計画として、自動車NOx 法に基づく各都府県が定める「総量削減計画」がある。これはNOx の各県ごとの削減目標を定めて、必要な施策を各県ごとに作っていく。SPMや、その他の大気汚染物質、騒音問題等も同様のアプローチが可能と思っている。
【藤井委員】
○「ディーゼル車NO」など日本で様々起きている。EU、特にドイツなどでは「ディーゼルNO」の動きがあるのか。CO2 の観点からいうと、ディーゼル車はガソリン車と比べて負荷が少ないという評価もでき、燃料の精製プロセスの問題と車の技術、フィルターの問題など、それを義務づけて販売することでクリアしているのか。
【事務局】
○ディーゼル車から排出される粒子状物質が健康に影響があるというのは、WHO等の国際的な機関でも指摘されており、この認識は同じ。発がん性等いろいろな健康影響があるという議論と同時に、温暖化対策の観点から優位性をある程度認めながら、ドイツあるいはEUでは、ディーゼル車の排ガスの基準は順次厳しくしていくスケジュールになっている。これは日本より厳しい水準になる。「NO」という表現で拒否はしてない。
【横山委員】
○この報告書で、自動車関係税制のグリーン化の問題を取り上げており、ここでは賛否両論だが、かなり議論をしてまとまらなかったのか、あるいはさらっとやって、さらっと「賛否両論があった」と書いただけなのか。
【事務局】
○まず、この報告書全体が「環境への負荷の少ない交通」を環境基本計画でどう扱うかという観点からの全体的な検討である。自動車税のグリーン化だけを議論するという場ではないので、この問題で議論を何回も費やしてない。グリーン化については、委員の間で意見の一致をみなかったということ。
【森嶌部会長】
○検討チームで御意見をいただいて、まとまらなかったとすれば、小委員会で基本計画のドラフトを検討する際に御検討いただき、その後で、ここでも御議論いただく。方向性が出るかはわからないが。
【渡辺委員】
○ディーゼル車の排ガス規制、特にSPMの規制に関して、軽油中の硫黄の低減の度合いが日本は非常に遅れている。これをまず徹底してやらないといけないのではないか。軽油に含まれる硫黄分に関する規制を、欧米並みに低くしようとすると、大変な設備投資がかかり、規制がなかなかできなかったと聞いているが。
【事務局】
○軽油中の硫黄分については、中近東を中心とした石油には、北海原油のものに比べて硫黄分が高い。さらに、日本では民生用の灯油を優先的に石油からとり、その残ったものの硫黄分を落とすという精製過程になるので、技術的に不可能ではないが、設備投資がかかる。ただ、日本でも軽油中の硫黄分を順次下げてきており、今後その規制を厳しくしていくプログラムになっている。
・ディーゼルの規制が、特にPMの規制が比較的緩いのは、日本ではNO2の環境基準達成を主としたNOx 対策に非常に力を入れてきた。NOx を減らすとPMがやや緩くなるという技術的な問題もあり、日本は欧米などに比べると、NOx の基準は厳しく、それに比べてPMの基準が緩いという現状で、今後審議会でも御議論をお願いするところ。
【廣野委員】
○今回は環境基本計画の見直しということであるが、必ずしも徹底した議論ではなくて、中途半端な議論で終わっている。そして、難しい点はできるだけ避けて通るという感じでなっている。
・現在の日本の法制度あるいは税制その他に対して、ある程度大胆に言えるような基本計画の見直しであった方が好ましいのではないか。
・どこが意見が違うかはっきりわかっていると、例えば企画政策部会、小委員会などで議論しやすい。現状でどう処理したらよろしいかという次のステップのときに、そういう妥協を考えればいいので、最初の段階では、できるだけ意見の違いをはっきりさせる方がいいのでは。
【森嶌部会長】
○検討チームでは新しい方向性とは何なのかを御検討いただくことが期待されているのだろうと思う。これから企画政策部会で甲論乙駁やっていただき、その中で企画政策部会として何をとっていくかということを御議論いただきたいと思っている。
・現段階でだめなものは捨ててしまい、今なら動くというものだけを計画に載せていくというのは、ここに期待されていることではない。しかし、全く実現不可能なものをここで「どうぞおやりなさい」というわけにはいかないと思う。
【天野委員】
○今回の報告書では、経済的な手法について随分検討されていろいろな提案をされているので、大変評価すべき。ただ、CO2のような地球温暖化に関する議論は入っていない。先ほどのディーゼルの話だが、CO2の削減に対しては貢献するが、SPMについては負荷が大きい。検討チームでそれぞれ地球温暖化対策の検討、環境への負荷の少ない交通の検討がなされ、違った結論が出された場合、基本計画として議論がどうなるのか心配。
・例えば、環境コストというのは、CO2、SPMはもちろん、NOx も騒音も振動も全部環境コストになる。自動車全般としては環境負荷というのがあるから、それに対してどうするかという議論を企画政策部会としてはすべき。検討チームから出てきた意見を部会として統合化する議論をお願いしたい。
・環境コストを内部化するというのは、環境負荷を全部同じ単位で計算し合計して、それを経済的に内部化するという作業が必要で、全体的な環境コストを評価するのがこれから環境省の中では非常に重要な役割をもつことになるのでは。今度の基本計画では、環境省が新しい一歩を踏み出すのだということをぜひ盛り込んでいただきたい。
【森嶌部会長】
○次回に、地球温暖化対策検討チームの御報告があるので、消極的権限争いをしないで、仮にそうなっていたとしたら、部会でその辺の橋渡しを十分議論できるようにしたい。
【塩田委員】
○地球温暖化の問題というのは、温暖化チームで今議論しており、そちらに集中した方がいいのでは。ここでは、二酸化炭素以外のガスを中心にこの問題を考えていく方が問題を整理しやすい。
・対策は多数論じられているが、定量化されおらず、定性的な議論が多い。たまたま地球温暖化の問題というのは、定量的な目標があると思うが、それ以外のガスについての定量的な議論からスタートしなければいけないのでは。
・二酸化炭素以外は、非常に地域的な問題であり、その場合に最も有効な対策は、単体対策であるが、これは地域の対策になじまない。単体対策は、規制と経済的な措置が有効で、報告書に書いてある政策的選択から何をピックアップできるかという議論が妥当なのでは。
・モビリティをどう考えるかを、環境サイドからも考えておくべき。渋滞が起きているから過剰というのは短絡的である。交通渋滞のところで、どんな問題があるかを掘り起こし、それに対応すべき主体がそれぞれ対応して、どうしようもなければ、それは過剰と言ってもいいかもしれないが、最初から過剰とは言いにくい。
・対象地域は、とりあえず三大都市圏ぐらいに限定して、あるいは重要な幹線道路ぐらいに集中して、極めて限定された対象で、差し当たりこの数年間の計画ということであれば、どういう対策を講じていくべきかを正面から取り上げていくのが妥当なのではないか。
【森嶌部会長】
○3枚ものの資料を見ても、集中して環境基準を超えているところは2カ所ないし3カ所しかないので、おっしゃるようなことだと思う。
【寺門委員】
○ビジネススタイルとかライフスタイルの変革というのは、交通問題ばかりでなくて、あらゆる問題についてひっかかってくる。この中では「社会的合意を形成して、・・・」と書いている。コンセンサスはなかなか得られないのが現状だと思う。
・これについての議論をもっとしておかないと、なかなか先に進まないような気がする。ビジネススタイル、ライフスタイルの変革というところで、何か勉強になるような議論があったら、ぜひお聞かせいただきたい。
【森嶌部会長】
○企画政策部会自身で最終的に環境基本計画の見直しをまとめるに当たって、今おっしゃったようなことを全ての検討チームで模索している。環境教育から始まって、強い規制に至るまでいろいろな御議論があると思うが、少なくともこの中で、何かいいアイディアが出てくることを私は信じている。
【太田委員】
○大変難しい問題である。これはむしろ環境経済学に頼らざるを得ないというところがある。選択の自由を最大限尊重し、そのときに適正な選択ができるように、費用面できちんと内部化して、選択肢を示す仕組みを作ることが一番大事なことと考えている。
・こういう選択をすれば、少なくとも環境はよくなり、コストはこれだけの負担で済むということをどこまで示せるか。これらを進めるためには経済メカニズムだけではだめで、規制で枠組みを決めて、その目標を達成するため、その中で一番いい方法が選択できるような形にしたい。そういうメカニズムをどのように作るかという議論であり、部会全体でその辺の方向を議論してほしいという意味も含めてまとめた。

 休憩をはさみ、北野委員と事務局から「化学物質対策」について報告の後、議論。

【幸田委員】
○PRTR法などによってデータが収集されることにより、地域にどのような化学製品が貯蔵されているのか、それは爆発性があるのか等の情報が整備されると考えて良いのか。
【事務局】
○PRTR法の対象物質は、人への影響、有害性、生態系への有害性等を加味して選んだが、単に爆発性だけあるものについては対象外。今回、PRTR法で354の物質が対象となり、その排出量等の情報については把握可能。
【福川委員】
○データベースというものの国際的なネットワーク化はどの程度進んでいるのか。
・リファレンス・ラボラトリーの分野について、発展途上国のキャパシティ・ビルディングはどのような状況か。
【事務局】
○評価がされた信頼できるデータベースという点では、OECDをはじめ、EPA、また環境庁でも関係省庁とともに整備しようとしているが、発展途上の段階。しかし、データをできるだけ収集している。また、GINC(地球規模化学物質情報ネットワーク)の構築に対する貢献が現在なされている。
・アジアのキャパシティ・ビルディングは、国によってレベルが異なり一概には言うことは困難。しかし、日本は積極的に関与・協力し、技術移転をするという仕組みをつくることが必要。
【北野委員】
○化学物質管理の法律は、1970年代に化学物質を作る国からできてきたが、90年代には、化学物質を使う国でも法規制が行われるようになった。そのため、他の国で得られたデータだけを用いるのではなく、自らデータを出し、評価していきたいという動きがあり、我が国もマレーシアなどで支援している。
【浅野委員】
○環境リスク評価の推進については、多様な化学物質があるにもかかわらず非常に遅れており、今回特に強調することが必要。
・環境リスクの低減については、単なる規制的手法ではなく、総合的なリスクマネジメントシステムを今後構築することが必要。
・現行PRTR法は貯蔵量について報告義務を課していないが、リスクマネジメントを行う場合には、それが前提となる。
・総合的なリスクマネジメントシステムを作る際は安全性に関した情報の公開は必要。
【横山委員】
○21ページ「アジアのリファレンス・ラボラトリーとなる」という記述について、アジアに限る理由は。
【事務局】
○日本は分析技術、標準物質の提供、データベースなどの整備を行うが、同じアジアの中で、地球規模で問題を考える場合、一緒にやっていくことが必要。この地域全体として日本が責任をもつべきという観点で書かれていると認識している。
【河野委員】
○重点的に行うべき取組として、例えばダイオキシン類等の汚染土壌の浄化そのものの推進などは考えられないか。
【事務局】
○ダイオキシンの法律と関連する特別措置法の中で、土壌に関して環境基準を決めており、ダイオキシンによる汚染土壌に対する施策も記述。その施策を実現するためにはこうした技術開発が必要という認識。必要であれば汚染除去対策を実施。
【河野委員】
○まだ制度的に対策をとるほど汚染が確認されていないということか。
【事務局】
○高濃度の汚染が出れば、必要な対応が検討されることになる。
【浅野委員】
○化学物質によるリスク管理については、将来に向けてのリスク管理と、既に汚染が生じている所のリスクの管理を含む。現状では「技術」が重要な課題。
・過去分のリスク管理の場合、どれくらいの汚染レベルでクリーンアップするのが最も環境リスクマネジメントとして適正かということが問題。
【西岡委員】
○予防的原則には、化学物質の汚染状況や毒性のレベルを評価してからリスクを管理する、及び、新しい製品で評価が困難な場合には回避するという2つの考え方が存在。後者のように、あえて市場に参入させないことが予防原則ではないか。
24ページの現在のリスク対策とは、評価してリスクがあれば低減、マネジメントするという前提での対策であるが、初めからリスクを回避するといったような方策は検討するのか。
【事務局】
○データが不完全だから何もしないということはなく、何らかのアクションを取ることは必要。しかし直ちに回避となるかはケース・バイ・ケースという認識。
・それぞれの国あるいは担当者によって受け止め方は異なり、更なる情報収集が必要。
・最終的に回避であっても、まず科学的な検討を行い、その結果において行動することが必要。
【鈴木委員】
○予防原則については、誰が、どのような手法で有害性を考えるか、そこのところの社会的な合意の形成の仕方が問題。
・化学物質の有害性を推定する妥当な根拠が存在しないならば、別のテスト手法やチェック手法についてのシステムを構築することが必要。
【天野委員】
○新しい物質を入れていいかどうかという決定をするときに、何もしない、導入しないという選択肢を入れた上でのシステムづくりが今後必要。

<以  上>