中央環境審議会第76回企画政策部会議事要旨


<日時>平成12年4月24日(月) 14:00〜17:00

<場所>ホテルフロラシオン青山1階 ふじの間

<出席>

森嶌部会長、浅野委員、池上委員、井手委員、江頭委員、神林委員、佐竹委員、佐和委員、塩田委員、鈴木委員、中野委員、原委員、藤井委員、星野委員、松原(青)委員、宮本委員、村杉委員、谷田部委員、湯川委員、渡辺委員、飯田特別委員、太田特別委員、猿田特別委員、廣野特別委員、横山特別委員、武内専門委員、寺門専門委員

事務次官、企画調整局長、自然保護局長、大気保全局長、地球環境部長、水質保全局企画課長、環境保健部保健企画課調査官、企画調整局環境計画課長、企画調整局環境計画課計画官

<議題>

(1)環境基本計画の見直しについて
(「環境から見た地域づくりのあり方」検討チーム報告等)
(2)その他

<配付資料>

資料1第75回企画政策部会議事要旨(案)
資料2第75回企画政策部会会議録(案)
資料3議論集約メモ(案)
環境から見た地域づくりのあり方検討チーム報告書
参考資料循環型社会形成推進基本法案について
 循環型社会形成推進基本法案の趣旨
循環型社会形成推進基本法案の概要
循環型社会の形成の推進のための法体系
循環型社会形成推進基本法

<議事経過>

【森嶌部会長】
○本日からは、各テーマについて検討チームの主査から順次報告をいただく予定。本日は一番手として、武内委員から「環境から見た地域づくりのあり方」について報告していただき、質疑とあわせて御議論いただく。
【武内主査】
○今回の中心課題は、国土政策と環境政策の一本化。これからは環境というものを中心に国土づくりを進めていくことが非常に重要で、環境政策もこれまで以上に国土上に展開される様々な自然的、人工的な仕組みをどのように生かしていくかという観点での政策の進展が必要。このような観点での施策展開を行ってほしい。
・この議論の中で重要なことは3点。1つは「国土利用への環境配慮の織り込み方」について。国土利用に関して、環境政策がどのように位置づけていくことがもっとも望ましいのかということ。自然系のシステムと人工系のシステムが織りなす国土の健全性を維持するのが環境配慮の織り込み方の大原則であるということをここで提起。
・2番目は、「共生」だけでなくて、「循環」というキーワードでの地域づくりも非常に重要であるということ。社会全体を循環型の仕組みにつくりあげていく際に、自然系のシステムと人工系のシステムの融合に配慮し、生態系の維持・保全という観点での「共生」の概念と併せ持つことで、「循環と共生による地域づくり」が環境基本計画の一つの発展方向ではないか。
・3番目は、「環境配慮のためのガイドラインの提示」の提案。地方分権下において、地方の環境基本計画は地域の独自のものを出してもらいたいという願いがある一方、これだけは外せないという全国的な水準というものもある。これをガイドラインとしてまとめたらどうかという提案をしている。
・最後に、実効性をどのように確保していくかということが非常に大きな課題。地域づくりについてのいろいろなぶつかりの場において、環境基本計画の側が物を言い、新たな解決方策を見出してこそ、この計画が社会の中に実際に定着していくものである。この点について今後、審議会の中で様々な議論が進んでいくことを願いたい。

(事務局から内容について説明)

【森嶌部会長】
○質疑もあわせて議論していただきたい。武内主査のほかに検討チームのメンバーから何か付言することは。
【佐竹委員】
○現状分析はかなりよくできているのではないか。将来の方向性として実効性のあるものをどこまで出せるのかは、大変な難しさを感じる。
・今、これを書くことの意味は、方向性を示すということにある。少なくとも過去の様々な状況を少しでも修復していくためにこういう発想が必要だという方向性を示すという意味にある。
・次に、地方分権ということ。中央官庁の行政というのは、きめ細かく作っても、常に実態とはズレが出てくる。それを現実に即したように動かすのは自治体以外にはない。
・各省が協力していくことが必要なので、これが一つの契機になれば大変喜ばしい。
【松原(青)委員】
○様々な考えがあるかと思うが、これが今の最大公約数で、各省ともこれを基調にして取り組んでいくことが一番重要。
【村杉委員】
○はじめの国土利用のあり方の部分など、今までにないものが織り込まれたという点で大変うれしく思っている。ただ、地域づくりの点を、もう少し細かく、具体的に書いていただけるとありがたかった。
【星野委員】
○基本的に環境問題を考えるときに、環境というのは地域的な問題。サスティナビリティ一つでも、各国のサスティナビリティなのか、地球のサスティナビリティなのかと考えた途端に、各国の国益と地球益とは相反し、地域間で一体誰が、どういう指標に基づいてサスティナビリティを維持するか。
・それぞれの地域というのは、基本的にアウタルキー的に考えるべきなのか、お互いの地域の交流の自由について際限があるのかないのか、どのように考えたらいいのかよくわからないので、何かお知恵をいただきたい。
【藤井委員】
○実効性を持たなければ意味がない。
・「負の遺産」から、軍事基地における化学物質など毒物の問題や核の問題が抜けてはいけない。
・「地域づくりにおいては、国土利用における環境配慮の考え方を地域の事情を踏まえて、地域において必要な修正を加えつつ、実施されるべきものと考えられる」とあるが、逆の考え方で、地域の実態を反映して国土利用のこれからの計画へのベースにすべきではないか。
【湯川委員】
○「負の遺産」の中に「核廃棄物」と明記すべきではないか。
【猿田委員】
○環境保全地域づくりの考え方に基づいて示されるガイドラインを示す場合には、地域の主体性を尊重しながら地域の特性を伸ばしていく、というガイドラインを提示してほしい。
・土地利用等に関する地域開発等を踏まえて行う場合には、一歩踏み込んだ戦略的環境アセスメント(SEA)の段階から実行できるような方向を示していただきたい。
・地域が積極的に取り組めるような体制、ガイドラインの提示、情報の提供、環境指標等の提示ということが非常に重要な課題になってくるのでは。
【浅野委員】
○現行計画は、「共生」「循環」という言葉の切り分けをやりすぎており、現実には、都市の中にも自然がある。共生というのはまさにそこ。今回のペーパーで非常にはっきり出ており、特に「自然系システムと人工系システムのちょうど融合されたような部分が実態」という認識は極めて重要な指摘。
・環境庁は、あまりにもいろいろなメニューを地域に出しすぎていて、それら相互の関係が不明であり、環境計画などでインテグレートすべき。ここで言っている国土計画や土地利用ときちっとつなぐことが重要。これらは、まさに実効性の問題そのものである。
・従来の4地域区分は施策メニューを並べているだけで、どういう考え方でどう進めていったらいいのか明らかでなかった。それをもっとはっきりさせるようなものがガイドラインだ、という理解でよいか。何かモデル計画があり、それを地域でモディファイして少しずつ応用すればいいというものではないだろうと思うが。
【武内主査】
○「地域が主体的に環境づくりに取り組む」という基本的姿勢を支持しているということは当然。ただ、ターミノロジーだけはそろえておきたい。例えば、持続可能性とはこういう概念だという上で、それぞれ地域的な議論をする。そのガイドラインすらも地域的な配慮の中において修正が加わるということ。
・核の廃棄物の問題等々についての議論をどうするのかという点について、ここでは非常に普遍性を持つ地域づくりの問題について語ったつもりなので、ほかの検討チームとの間の関係性の中において議論されるべき。
【原委員】
○32ページの「地方公共団体が総合的な取組を行おうとする場合に必要な環境を整える」というときの「環境」は、推進メカニズムを構築するとか、そういうことの意味か。いろいろな意味で「環境」を使わない方がいい。
・41ページの「広域的な連携の促進」は確かに必要だが、連携が不可能な場合に私たち国民はどういうふうな対応をすべきかというところもある方がいい。
【武内主査】
○「環境をいろいろな意味で使わない方がいい」というのは、そのとおり。地域政策との連携は、まだ十分議論できないのは、国策レベルの矛盾と大きく関わる。方向性としてやや行き過ぎた面の是正を考えていく。
・地域連携というのは、全総の大きな戦略上の課題だから、そういうものと環境政策とが一つになるということになれば、地域づくりがお互いに連携を図れるということで、この政策がより具体性をもって語られるようになるのではないか。
・これから環境基本計画をまとめていくときに、こういった考え方が最後まで残ることで、より実現可能性は高まっていくのではないかと思っている。「方向性だ」と言っていることはぜひ御理解いただきたい。
【廣野委員】
○参加という問題をもう少し積極的に取り上げる方がいいのではないか。地域社会におけるいろいろな意志決定の過程に市民が参加していくことが大きな参加の意味である。
・国土の大半は農村や山村であったりするが、同時に都市も非常に重要な国土の一部であって、環境から見た地域づくりで都市の住民がこれからどういう役割を果たすべきかということをもう少し書いてもいいのではないか
・農地と山林が多面的な機能を持ち、多面的機能を維持・改善するためには、都市の住民も含めた受益者が負担するということは賛成。「その維持管理等に要する費用や労力は専ら農家が負担してきた」とあるが、税や補助金が相当農村にいっているから、専ら農家が負担してきたとは言えないのでは。
【森嶌部会長】
○これは検討チームの報告であり、そのまま環境基本計画に入るわけではない。各検討チームの間の調整ということもあるので、御意見を承り、記録に残しておいた上で、最終的に調整。
【鈴木委員】
○ここではどういう定義で「地域」と「地域づくり」というのを使うのかを少しはっきりさせていただきたい。
【武内主査】
○国土と地域づくりというものは、「国土利用計画」という言い方をすれば、市町村まで「国土利用」という言葉を使われる。本来的に同じか、違うかという議論がある一方で、「国土」や「地域」などは、実際に使っている省庁がある。そこの議論を十分踏まえた格好で作文している。
【事務局】
○国土と地域との関係は、最終的に確定的な整理がこの報告書の段階では、必ずしもついていないというのが正直な答え。この報告書で完全に明確な考え方を示していないので、「地域」の範囲の考え方を明確化していくことが課題。ガイドラインを作るようなときに検討する。
【森嶌部会長】
○どこで区切るかというのは、その問題による、というような答えと思う。
【武内主査】
○明確な地域区分はすべきではないと思っている。「物質循環」をいうときには、流域のようなもの、「連携」をいう場合には、流域を越えた交流、「情報化社会」の中では、世界に開かれた地域づくりをしていくべきというような、それぞれに応じて地域の広がりは違う。
・「循環」と「共生」を柱にしたときに、一番有効な区分とは何かを考え、同時に、いろいろな省庁の「地域」に関する考え方の共有というのも大事。地域の生活主体がその周辺環境の自然性と人工性をうまく取り込んで、より循環的で、より環境共生的な社会づくりに向けて議論が展開できるか、という一点が重要。
【宮本委員】
○「効率的視点」をここに取り入れる必要があるのでは。「効率的視点」という観点から見ると、対策そのものが必要かつ十分であるということが必要だが、例えば各環境政策に共通する部分を一括してやることによって、総合的な効率が上がる。また、新しい技術の導入でコストを下げるというのも一つ。
・地域が全体としてつながっていく「広域的な視点」というのは、もっと強く出してほしい。効率化の大きなファクターではないか。「効率的視点」というのも強く打ち出すことが、国民に対する一つのアピールとしてもできるのではないか。
【浅野委員】
○この中で具体的に重点取組事項として掲げられていることの第一点が環境配慮のガイドラインを作るということ。第2点に「情報の共有化」も効率化に資する。
・「推進メカニズムの構築」での提案事項について、意志決定過程の中に上位の段階から環境配慮を織り込むことは、手戻りを防ぐという意味で効率性につながる。「戦略的環境アセスメントの導入」は、環境配慮をきちっとやっていくというときにそれを具体化していくとともに、一つ一つアセスメントをやっていくというのは無駄で、上位のところでアセスメントをやれば合理性がある。
・環境影響評価法ができて、特に生態・生物多様性についての考え方がかなり出てきている。各地域でどれを上位種としてとらえるかというのは、それぞれの地域とか広がり、事業種に応じて考えるのだが、このような考え方でやればいい。これを積み重ねていけば、ガイドラインの考え方とつながってくるだろう。これも無駄なく事を進めるということになる。
【猿田委員】
○最近、既存の工業地域などでは、工場が地方に移転して空洞化現象が起こっており、地方では新たな工場立地等によって地域開発が行われている。「関係主体の役割」で、事業者の役割が述べられていないのは、どういう理由なのか。
【事務局】
○ここの役割は、基本的に、このページより前にいろいろ書かれたことをもう一度整理直してみるという観点から作った。そういう意味で、前の方に出ていた主体についてここで並べ直したということである。
【森嶌部会長】
○民間活力の活用のところには出ている。環境基本計画をまとめていく際に十分考慮していきたい。
【池上委員】
○国の役割に、地域同士の利害関係が違う場合において、高い立場から調整する機能というのがあった方がいい。
【佐竹委員】
○地域というのは、例えば林業については流域になり、住環境については市町村の区域より都市計画法の地区計画ということになって、もっと小範囲になる。両方あってしかるべきだろう、何も画一的に決めることはないのではないか。
【森嶌部会長】
○ほかにございませんか。
・それでは、先日、「循環型社会形成推進基本法案」が国会に提出されておりまして、これは環境基本計画とも大いに関係するところなので、これについて事務局の方から御説明いただきたい。

(事務局から説明)

【浅野委員】
○「いくつかの重要な原則が今度できた、優先順位を初めて法定化した」という指摘は前から環境基本計画で書かれていたものが、法律になったという意味が非常に大きい。ただ、この優先順位は絶対的なものではなくて、「この順位によることがかえって環境負荷を高めるような場合は、それによらない」とはっきり書かれているので、これが固定的な原則ではないということ。
・「拡大生産者責任」という表現について、いつも注意をして、「拡大された生産者の責任」とわざわざ言ってきた。もとの言葉はEPRで、「ライアビリティ」ではなく、「レスポンシビリティ」という言葉が使われている。ライアビリティというのは、賠償責任のところまでつながる概念。一般に説明するときには、丁寧に言葉を使っておかないと、意図していることと違ってくる。最終的に費用を誰が負担するかがぼけてしまうとまずい。
【長尾水質保全局企画課長】
○指摘のとおり。そのように心掛けたい。
【佐竹委員】
○論理的には、説明に反対する方は誰もいないと思う。問題は、市場経済の下でどうやってリサイクルを実現していくか。古紙回収業などは一番市場経済の波に洗われている。
・例えば、窒素、リンを多く含む農村集落排水はかつてリサイクルしていたが、今は品質の安定性などを理由に使われていない。それを、人間の知恵で回復するように、毎年少しずつ増えていくような努力をしてほしい。
【横山委員】
○第三者機関の設置と、自然エネルギーの位置づけについて、どのように取り入れられ、あるいはなくなっていったのか、その過程を教えてほしい。
【長尾水質保全局企画課長】
・第三者機関の問題については、与党の中でいろいろ御議論があり、特に公明党から、来年の1月に新たに設置される内閣府の中に委員会を設置して、第三者機関として役割を果たし、独立した事務局をもって、この計画の策定、実施状況の監視といった役割を担うというような提案があった。
・内閣府に新たな行政組織を設置することが適当ではという議論と、中央環境審議会を活用できないかとで議論が行われた。その結果、中央環境審議会に基本計画の策定に関わる仕組みが導入され、非常に詳細なスキームが決められたと聞いている。
・廃棄物・リサイクル問題は、もはや待ったなしの緊急の課題であるという問題意識があり、自然循環的なものよりも、廃棄物・リサイクル問題に焦点を絞るべきである、という議論があった。
・自然エネルギーを「循環」という切り口でとらえるのが正しいのかどうかの議論もあり、この循環型社会形成推進基本法の中で自然エネルギーを位置づけるのは適当ではないということで、今のようなスタイルになった。
【森嶌部会長】
○佐和委員から、「地球温暖化対策と経済そして新しい価値規範についての覚え書き」という文書について説明いただく。

(佐和委員から説明)

【森嶌部会長】
○この問題は、例えば地球温暖化対策チームあるいは経済社会のグリーン化メカニズムのあり方チームでも議論され、いずれ報告書がこの場に出てくるので、その際に御議論いただく、あるいはその際に佐和委員に対して質問があればしていただくということとしたい。
・次回以降は、各検討チームから報告書をいただき、それについて本部会で御検討いただく。次回は、天野委員から経済社会のグリーン化メカニズム検討チーム、小澤委員から環境教育の検討チームの報告をいただく予定。
・今日は比較的時間があった中で議論いただいたが、なお、こういうことを指摘しておくべきではないかということを思いつかれたら、5月1日ぐらいまでに事務局まで文書で出していただければ幸いである。

<以  上>