中央環境審議会第75回企画政策部会議事要旨


<日時>平成12年4月4日(火)14:00〜17:00

<場所>ホテルフロラシオン青山1階 ふじの間

<出席>

森嶌部会長、安原部会長代理、浅野委員、天野委員、 池上委員、小野委員、北野委員、小早川委員、佐竹委員、佐和委員、塩田委員、鈴木委員、中野委員、原委員、福川委員、藤井委員、星野委員、松野委員、松原委員、松原委員、三橋委員、村岡委員、村杉委員、谷田部委員、和気委員、渡辺委員、飯田特別委員、太田特別委員、猿田特別委員、横山特別委員、岩崎専門委員、寺門専門委員、西岡専門委員

企画調整局長、自然保護局長、大気保全局長、水質保全局長、環境保健部長、企画調整局企画調整課長、企画調整局環境計画課長、企画調整局環境計画課計画官

<議題>

  (1)環境基本計画の見直しについて
  (2)その他

<配付資料>

資料1第74回企画政策部会議事要旨(案)
資料2第74回企画政策部会会議録(案)
資料3議論集約メモ(案)
資料4各種団体との意見交換会の概要(部会規模で実施したもの)
資料5各省庁との意見交換会の概要
資料6新環境基本計画の構成と記述の方針について
資料7環境を巡る状況と趨勢
  
参考資料企業の経営倫理における環境配慮に関する資料
 討議参考用メモ

<議事経過>

【森嶌部会長】
○「討議参考用メモ」は、私が以前部会に提出したメモを、事務局がストーリー性を持たせて記述したもので、これからの私たちの生活は、資源・エネルギーの両方を削減していく必要があり、そのためには、経済社会システムとライフスタイルの全体にわたって転換していくことが必要であり、それは、同時に投資や経済成長を支えることにもなるといったWin-Winストーリーで書かれている。

○「討議参考用メモ」は、よく整理されているし、ストーリー性についてもよく配慮されているが、重点課題との関係から見ると、水循環の問題の位置づけがはっきりしない。「環境負荷の低減」という概念で括れるのかもしれないが、そうであれば、「環境負荷の低減」が、温暖化問題や廃棄物問題ばかりを意識しているのではないことが伝わるような工夫が必要である。

○「生態系」という言葉について、日本が閉鎖性体系であるかのごとく扱われているが、実際はオープンな生態系のはずであり、物も人も情報も全部出たり入ったりしているという状況下でどう考えるのかという視点が欠けているのではないか。特に、国際的な難民の発生に伴う国際的な人口移動の中で、日本がどういう立場になるかという視点が欠けているように見え、日本だけに目が向きすぎているという印象である。

【森嶌部会長】
○地球上全体を閉鎖系として、その中における日本を考えており、日本を閉鎖系として、そこに焦点を合わせて考えたものではないが、環境難民等の問題も含めて考えるとすると確かに視点が狭い、ないしは欠落していると思われる。ただし、日本の環境基本計画であり、日本に重点がくるというのはやむを得ない。

○新計画のイメージ図には、「前文」の部分、理念を高らかにうたい上げる部分がなくなってしまっているが、今回の計画では、これから向かうべき社会をいろいろ書き込もうとしているのであるから、そういうのを表に出して、こういう社会へ向かうのだというような一種の宣言を書いてもいいのではないか。

・向かうべき社会の記述のところでは、制度やシステムの変革、ライフスタイルの変革、技術の革新のためには、それぞれの基本的な考え方の部分を変えることや、今までなかったような動機づけを社会に与えることが必要であるといったことが記述されるものと思うが、それを表に掲げるために、前文でこれを記述したらどうか。

・経済社会や環境問題の動向を示すデータについては、本当に必要な部分だけを、視覚的に、誰でもわかりやすいような形で抽出して、計画にそれを添付する必要がある。

○ 穀物、木材、石油等については、多くを輸入しているが、この輸入による環境負荷について考え方を整理して対応する必要がある。

・閉鎖性水域の富栄養化の問題については、下水道整備をすれば良いという意見があるが、水で汚れを処理するというのは、考えようによっては非合理的な話であり、浄化にはエネルギーを必要とする。よほど取り組み方を考えておかないと解決が難しいのではないか。

・過去の政策分析、その効果の評価について、新たな計画で示す必要がある。各省庁がこれまで講じてきた施策、措置の結果、経済社会の動向、環境の状況がどのように変化したのかを分析しないと、説得力のある新しい政策というのは出てこないのではないか。

【森嶌部会長】
・これまで講じてきた施策、措置の分析・評価については、各検討チームで、新たな施策を検討する際に、分析や反省が行われると思われるので、この点については、検討チームの報告を踏まえて検討したい。

○新しい環境基本計画を作るときに、日本はこういう思想、哲学で環境問題に取り組むのだという高い調子の前文を、世界に対するストロングメッセージとして、世界で話題になるような格調の高い文章で入れてほしい。

・マクロの経済あるいはマクロ的な社会のフレームがどうなっていくかについて、コンセンサスをつくっておく必要があるのではないか。50年先に、人口が減少することにより、貯蓄率が下がって、投資率も下がって、技術開発投資も少なくなった時、日本の成長が果たしてどうなるか、どういうふうな事態になるかという大体のコンセンサスを作っておく必要があるのではないか。

・いろいろな政策を掲げる時に、政策については、すぐできる政策と時間を要する政策があり、特に革新的な技術開発というのは相当時間を要する問題であるから、これを重層的に考えてほしい。

・「計画の効果的実施」に関しては、市場機能の活用という点について、民と官の役割分担を相当大胆に見直すことを環境投資の検討チームで検討して、提案ができればいいと考えている。

○最初の環境基本計画は、様々な混乱もありながらも理念的なものは盛り込んだ結果、5年間でかなりのことが進んで世の中を変えてきたと考えている。第1段階の成果が、新しい環境文明の創造に向けた一つの方向性をつくり上げつつあるイメージがある。最初の環境基本計画を評価する部分がないと、やや立体感が欠ける感じがするので、これを評価した上で、これからの5年間、第2段階でもっと大きく世の中を変えていくことができるといった考え方を第2段階の環境基本計画作りに反映させる必要がある。

【森嶌部会長】
○3回の点検によれば、第1段階においては、あまり評価できるような動きはなかったと考えられるが、そうでもないという御議論があれば、是非ともお願いしたい。

○日本が世界に対して閉鎖的な考え方があるのではないか、ということの1つに、「国民」という用語の使い方がある。「国民」というと、日本国民という感じがするが、「国民のライフスタイルの転換のための基本的な考え方」といった場合の「国民」とは、ジャパニーズ・ピープルではないと思う。ライフスタイルの転換は、日本にいる外国人も含めてお願いするものであるから、「国民」に代わる適当な言葉はないか。

○「人々」ではどうか。

【森嶌部会長】
○「国民」というのは、決して外国人を排除するという趣旨ではないはずであるが、確かに一般には、日本国籍を持った人という意味で通常使われているので、検討する。

○この10年ほど振り返ってみて、社会全般が大きく変わってきたのではないかと思う。法制面でも、企業、経済界における取組の面でも大きな前進があった。したがって、新しい文明の創造に向けて一歩を踏み出しつつあり、その歩みをさらに確かなものにしていくということで新環境基本計画を考えてはどうか。

・現行計画に欠けている点は、基本理念と個別政策との関係が明確でないことや、ストーリーが明確でないこと、また、具体的・定量的記述がないことがあげられる。新計画の策定に当たっては、これらを踏まえ、実効性の上がるメカニズムを考えて欲しい。

【森嶌部会長】
○世の中がどう変わったかということは、資料6の「現状と課題」の中できちんと捉え、それではそうした中で新たな環境基本計画がどう役立っていくか、セカンドフェーズとしてどう動いていくか、という捉え方をすべき。

○環境面において、この数年間で大きな変化を見せているのは、基本計画があったこともいくらか力になっていると思うが、国内にとどまらない世界的な圧力が大きな要因ではないかと思う。外からもかなり影響を受けており、逆に日本という存在が外へも影響を及ぼしていることを考えれば、基本計画において、世界の中における日本といった記述が必要ではないか。

・ また、地方についての動向があまり書かれていない。書かれていても、どちらかというと、人口が減少し、環境を守る人がいなくなり大変であるという捉え方しかされていない。地方でも環境問題を解決していこうという話が盛り上がっているので、その点についても考える必要がある。

○討議参考用メモの「環境問題の現状と課題」の部分については、相互の関連性がはっきりしないため、もう少し関連づけを行うべき。

・ 現在の文明生活は、全くの輸入づけであるため、輸入づけの中身を少し分析的に考える必要があるのではないか。例えば、我々の生活を支えている輸入材は、プラスティックなど生活の素材として使うが構造的にはあまり使わない「触媒的な物質」、鉄鋼とかセメントのような「構造を支持する物質」、食料品などの「消費的な物質」に分けられるが、これらが全体としてどのように流れていくかを調べるべき。

・ 「生物多様性」の検討チームとの関係でも、日本では移入種の問題が非常に多くなっており、それを避けて通れない時代に入っている。

○どんなに立派な計画になろうとも、それを効果的に実施していく仕組み、手順が確立されていなくては意味がない。資料6に「計画の効果的実施」とあるが、これについて、できるだけ創意工夫をこらし、新しい方策、仕組みをビルトインしていく必要がある。

・資料6では、「実施のメカニズム」という言葉が挙がっているが、公共部門では、ISO14000シリーズに準じた環境管理システムを導入することを検討するなど、実施メカニズムを整備する必要があると思う。そうすれば、各省庁あるいは地方公共団体が、環境基本計画を元にそれぞれの目標をブレークダウンして立て、それを実施していく計画を立て、その実施計画の実施状況を評価し、足りない部分について毎年改善措置を講じていくということになっていくのではないか。

・加えて、実効性といった場合、結局、財源が確保できるかどうかが大きく影響するので、財源措置についてもきちんと情報を整理して公表されるべき。整理したものについては、必要に応じて国会に報告されるようなことも考えるべき。

・ 資料6の中で、「環境基本計画の見直し、点検に関する規定は概ねこれを踏襲する」とあるが、もう少し工夫する余地があるのではないか。仮に、関係省庁において、それぞれの分野について計画の実施メカニズムが整備されれば、当然、見直し・点検が行われるはずである。こうした各省庁の見直し・点検をベースとして、企画政策部会で重点的なテーマを取り上げて作業し、意見、勧告を出していくことが考えられるのではないか。

○ヨーロッパなどは、10年以上前から既に「ポストマテリアリズム」が広まっているので、政府が日本型経済社会モデルを構築して、そのノウハウを世界に向けて提示すべきというのは、おかしい。

・消費者あるいは家計は自らの効用を極大化する、企業は自らの利潤を極大化するために行動するだけでなく、消費者や家計は、「コミットメント」(使命感)や「シンパシー」(共感)といった行動規範によって行動している。

・経済発展と環境保全は一見両立しないように思われてきたが、現在は経済を成長させようと思えば環境保全をしなくてはならないと言っても言いすぎではなく、経済発展と環境保全は実は両立する時代に入っている。

・経済発展と環境保全を両立させる上で、政府が一生懸命両立させようと考えるのではなく、邪魔な規制等を緩和ないし撤廃することを通じて、両立しやすい環境をつくる必要がある。

○「日本型経済社会モデル」の構築というと、ユニバーサルモデルでない日本モデルを提示するのだというふうに聞こえるが、世界に対して日本が開き直るだけの「日本型経済社会モデル」を構築する準備があるのか疑問である。

・討議参考用メモの中で、「労働時間の減少、女性の社会進出、余暇時眼の増大」がマイナスの話のように書かれているととらえられるが、どういう意味か。

・環境基本計画と環境の状況の進展の関係について、証明されていないものは書けないという意見もあるが、逆に役に立たないことも証明されていないので、単に環境基本法を作りっ放しではなくて、環境基本計画についての審議を定期的に行っていることに意味があり、そこにそれだけの寄与をしてきたことを、誇大宣伝にならない程度に力強く書くのが筋だと思う。

○環境基本計画の中で、環境に対する取組が進展してきたことを書くのはいいが、このまま取組を進めればCO2の問題や他の環境問題が解決するとの誤解を生むような表現は避けるべきであり、今後やるべきことが多く残されていることをぜひ書いてほしい。

・企業の自主的取組についても、まだ表面的なものにすぎないし、行政、特に国の取組にしても不十分と思うので、この点についても基本計画では厳しい認識を示してほしい。

・「国民」という表現に対する指摘があったが、「我が国」も、自分の国ということを強調するもので適当でない表現と思われるので、「日本」や「国内」に置き換えてはどうか。

○発展途上国に範を示すとか、日本型モデルをつくるという趣旨でなくても、たくさんの人々に、目指すべき方向を示すことは必要であり、環境基本計画においても、十分に議論して格調高い前文を示して、私たちが向かいたい社会を明らかにしてほしい。

・各省庁が自分で環境負荷を減らすようにEMS(環境マネジメントシステム)のようなものを入れてはどうかという指摘については、1998年頃のOECDの報告書において、こうした取組は、[1]制度的な制約、[2]予算の制約、[3]省庁の人の態度が障害となり、うまく進んでおらず、うまくいっているところは、法制化しているところであるというまとめをしている。この問題を法制化を含めて議論するとすれば、グリーン化メカニズムの検討チームで取り上げる以外に、別の対応が必要になってくるのではないか。

・EMSの国への導入の検討に加え、各省庁の環境に関連する政策、主管の範囲に入っている政策の見直しを、スムーズにするメカニズムの組み方を議論する必要がある。

○環境に関する意識が大きく変わったという意味で、環境基本計画が大きな役割を果たしたのは事実だと思うが、その成果が十分上がっているかということについては、少なくとも尼崎判決のように、差し止めを認める判決が出て、司法が行政に対する不信を示しているにもかかわらず、それについて中環審が全然考慮しないで、基本計画の成果をうたい上げるのはいかがなものかという感じがする。

○環境基本計画が出てからこの5年間に、確実に「共生」「循環」「参加」「国際的取組」という言葉だけは定着し、また、日本国民を意識せずに働くNGOが元気に動き始め、政府同士でなく、民生部門のレベルで国際的に取組をするNGOが増えたという変化が見られる。「参加」については、NGOの活動が活発化し、5年前には考えられなかった政府とNGOの関係が出てくる兆しがあると思われる。

・リサイクルに関する個別法はできてもそれを束ねる法律がなく、しかも、循環型社会に向けた基本法がなく、「リデュース」について規定したものがないので、資源をリデュースする社会構造につながっていないのが現状。

・国の縦割り行政の影響を受けて、県の事業等も縦割りに進んでしまう。これを是正するために、2001年1月6日スタートの環境省がすべての省を束ねて、一番高いところに立つのが良いと思うが、そういうことがあるのか、そうするのがいいのかは疑問。

○日本型経済社会システムをモデルにしてノウハウを移転するという議論は、そうした面もあることは認めるが、以下の3つの理由で、基本計画の中に入れるには狭すぎると考える。

・第1に、ライフスタイルの転換については、各コミュニティにおいて固有のライフスタイルがあってもいいと考えるので、日本型ライフスタイルをどこかの国のモデルにするということには疑問を感じる。

・第2に、国際的な戦略という視点から環境問題に対応する場合には、グローバルに見ればWTOとどう関係するか、リージョナルに見ればアジア的な環境政策、環境協力をどう考えるか等、国際制度設計を視野に入れた議論がおそらく戦略的な対応ということになると考える。

・第3に、リスク、不確実性をこれからどう政策あるいは行政の中に反映させるかというときに、国内だけで考えるのは限界があり、国際的な視野の中で、将来起こるであろうリスクを考えることが必要。その場合に、どうしても国際的な対応が必要になってくるため、リスクとの関係において国際戦略論的な展開が必要。

○どんな理念を述べてみても「計画の効果的実施」のところをないがしろにしてしまっては何の意味もない。環境基本計画が世に出た場合に、国民にいかに信頼してもらえるかが非常に大事。

・温暖化防止とかダイオキシンを防ぐ技術の開発は大事であるが、根本的なところで、間違いが起こり得ないようなシステムのあり方の開発にも力を入れるべきということを環境基本計画の中に盛り込んでほしい。

○ ライフスタイルをどのように転換していくかを考える時に、宗教を環境教育の中でどう位置づけるかという要素が考えられる。キリスト教文明等と日本の仏教文明ではかなり物質観、地球観が違うということも含め、ぜひ検討チームの中で議論してほしい。

○各省庁がそれぞれ環境の施策を進めているが、環境省が同じレベルの次元で基本計画を作るとなると、他の省庁との取り合いの話になるので、レベルの高い、全体を取りまとめて横つなぎにする等、少し抜き出た書き方をする必要があるのではないか。また、他の省庁に受け入れてもらえることを基本計画に盛り込んではどうか。

【森嶌部会長】
○中央環境審議会は、環境問題に関し国の総合的な政策を策定するところで、環境庁に属しているが、総理及び環境庁長官に対する諮問機関であるので、制度上は、他の省庁も、中央環境審議会で示すことを尊重することとなっている。しかし、法律上は、審議会の一つとして、あるいは環境基本法も一つの法律として、他の省庁における計画、他の省庁の法律を直ちに変える力は持っていない。

・現行の環境基本計画では、環境基本計画と他の計画の連携等について、国の他の計画のうち、専ら環境の保全を目的とするものは環境基本計画の基本的な方向に沿って策定、推進することとしている等、各省庁に環境基本計画を尊重するようなサインを出している。また、環境基本計画の毎年の点検を通じ、各省庁とも環境基本計画に一定の配慮をするようになり、加えて、社会全体の変化により、各省庁でも環境基本計画を取り上げるようになってきている。

・ 新しく環境基本計画を作っても、制度的にこうした構造は変わらない。これは変えるためには、抜本的な行政制度、法律制度を変えないといけないが、その前に、我々が実質的にきちっとした計画を提案することによって、各省庁が実質的に受け入れてもらうということが重要ではないかと考えている。

○「討議参考用メモ」で、生物多様性の保全に関して、自然林の減少が続くことや、農山村の活力の低下について書かれているが、その中で、もっと自然の保護とか、農山村の活力とか、そういう前向きな対策を入れてほしい。

・湖沼の水質については、民間と行政、特に県民あげての取組の結果、横這いの状況となっており、この基本計画を立てるにしても、行政だけでなく、県民、国の人々の参画の大切さをもう少しうたい上げていく必要性を感じる。

○環境の問題、より具体的には持続可能な社会をつくるというときに、科学や技術の役割はかなり大きく、科学技術の進歩によって環境問題の取組方も大きく変わってくるので、新たな計画には、科学的研究や技術の役割について何らかの方向性を盛り込んでほしい。

○環境基本法19条(「国は、環境に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、環境の保全について配慮しなければならない。」)は重要な規定であり、同条の配慮の方向は、15条で定められた基本計画が示すことになっているが、将来SEAを我が国に導入するときの考え方は当然これであろう。

・SEAには、2つのステージがあり、法律を作ったり、政策そのものを作るときのSEAと、もう少しプロジェクトに近いところでのSEAがある。最終的には、オランダのEテスト(環境テスト)のような形で、法案を出すときに環境に配慮し、必要があるときもチェックが働くというような仕組みができていかなければならないと考えているが、そのときにも柱になるのが環境基本計画であり、それに基づいて19条が機能するので、新基本計画の中身が説得力のあるものであればあるほどその機能が果たせるだろうと考える。

・計画のどの部分が生きてきたか、どの部分は十分に生きてこなかったかという分析は確かに必要。各主体の参加、特に政府の率先計画等いちはやく取り組まれたものについて、評価できるところは評価し、同時に、おかしい部分についても整理が必要。

○「企業の経営倫理における環境配慮に関する資料」では、日本の企業が、経営倫理の中で環境倫理をどのように扱っているか、組み込んでいるかという視点が欠けている。環境倫理について、倫理あるいは倫理学をベースにして何が言えるかという趣旨のものが必要であり、こうしたものは、環境教育や企業経営についても重要であると考える。

○現在の基本計画では、「各主体の役割」の部分で、国の役割、地方公共団体、事業者、民間団体、国民の役割が書いてあるが、各主体の役割については、この5年間にいろいろな変化、進歩があったので、それを評価し、特に地方が今行っている施策等の評価も十分組み入れて、記述することが必要。

○環境配慮をきちんとしている企業は、ブランドイメージがよくなるから、そのブランドをアセット化できれば、株価がアセットに対して安いと、投資がおこり、そういう企業にどんどん投資が集まり、環境配慮をしている企業には資金が回り、しかも、そういう事業が称揚されていくというメカニズムになるのではないか。

・ISO14000をやっても企業の評価につながらないので、思い切って、ISOではなくて、自己評価でいいから企業の評価をやって、そうすることにより、それを監視するムーディーズみたいなものができ、自分のブランドイメージを市場できちんとコンペンセーションを受けられるというメカニズムを考えていくことが重要なのではないか。

○環境報告書を見て、それで企業の内容を判断して、投資信託などに組み込んでいくというのがだんだんと起こり始めているが、今、環境報告書を出している企業は、超優良企業で、環境報告書がなくても、投資信託に組み込まれて当たり前の企業である。環境報告書のようなものが定着してくれば、普通の会計監査のような形で、それを外部の人たちが評価をして、株を買ったり、投資をしたりする材料にするようになるだろう。

・米国や英国の英語圏の国では、『環境倫理』の教科書が最近はたくさん出ているし、『ビジネス・エシックス(経営倫理)』の教科書にもそういった内容が多く含まれるようになっているが、これは、経営倫理を学んで経営者が実行することが企業のためになるためである。日本の場合は、環境配慮という視点はあるが、社会の一員としてどうあるべきかというところから出発して、倫理を考えたり、環境を考えたりするという視点が少ないと感じる。

○次世代に対する深刻な影響があると判断される場合には、その因果関係がはっきりしなくても手を打たなければならないという予防原則が重要視されてきているが、この「あると判断される場合」、「おそれがあると考えられる場合」というのを、一体誰が、どのようにして判断するのかについて、社会的なコンセンサスを得ることが重要であり、化学物質や環境アセスメントの問題について、この点を議論する必要がある。

【森嶌部会長】
○基本計画を取りまとめていくに当たって、基本的には資料6のような考え方で進めていくということでどうか。

             〔「異議なし」との声あり〕              

【森嶌部会長】
○「討議参考用メモ」については、数々の批判があったので、その議論を踏まえて、起草のもう一つ手前の段階で、全体のストーリー、あるいは先ほど指摘のあった、高らかにうたい上げる前文の案を練っていきたい。


<以  上>