中央環境審議会第74回企画政策部会議事要旨


<日時>平成12年3月1日(木)14:00〜17:00

<場所>ホテルフロラシオン青山1階 ふじの間

<出席>

森嶌部会長、安原部会長代理、浅野委員、天野委員、池上委員、井手委員、出井委員、江本委員、小野委員、木原委員、幸田委員、小早川委員、佐竹委員、塩田委員、鈴木委員、中野委員、波多野委員、平岡委員、藤井委員、松原委員、三橋委員、宮本委員、村岡委員、村上委員、谷田部委員、和気委員、渡辺委員、石特別委員、猿田特別委員、廣野特別委員、横山特別委員、寄本特別委員、岩崎専門委員、河野専門委員、武内専門委員、寺門専門委員

事務次官、企画調整局長、自然保護局長、大気保全局長、環境保健部長、官房審議官(自然保護局担当)、地球環境部企画課長、企画調整局企画調整課長、環境計画課長、計画官

<議題>

  (1)環境基本計画の見直しについて
  (2)その他

<配付資料>

資料1第73回企画政策部会議事要旨(案)
資料2第73回企画政策部会会議録(案)
資料3議論集約メモ(案)
資料4環境政策手法について
  
参考資料環境にやさしい文化の創造をめざして(環境と文化に関する懇談会)
 「環」の時代懇談会報告書−21世紀の社会資本整備はどうあるべきか−(概要)
 「環」の時代懇談会報告書−21世紀の社会資本整備はどうあるべきか−文明と環境に関する提言(環境と社会に関する懇談会)

<議事経過>

 冒頭、昨年12月に新たに環境基本計画見直しの審議に加わった委員のうち、出井委員及び和気委員より挨拶。その後、事務局から各種資料の説明を行い、環境政策手法について議論。

○自主的な取組については、我が国では経団連を中心として取組が行われてきたが、国内のこれまでの取組とこれからの展開について、第三者的な機関に評価をしてもらうこととすれば、非常に参考になるのではないか。

・経済的手法に関する海外事例について、できるだけ様々な例を紹介して欲しい。特に、大きな国だけでなく、ニュージーランドような国でもかなり工夫をしているので、そういった事例も紹介して欲しい。

・経済社会を変えていくために、その中核を担っている経営者たちの倫理観(経営倫理)や、その中で環境倫理の果たす役割について調査する必要がある。

・参考資料の「環」の時代懇談会の報告書には、大変有益な具体的な提案が盛り込まれているが、これをどのように具体化していく考えか。

(事務局)
・「環」の時代懇談会の報告書については、各論の検討チームの一つである「環境投資」の検討チームで検討していただきたい。

(森嶌部会長)
○経営倫理、環境倫理については、事務局で調査していただきたい。

・環境税の事例については、主要国以外の事例についても集めていただきたい。

・自主的取組の第三者評価については、いずれこの部会で議論するか、自主的取組を行っている団体の意見を聞くなどして議論を進めていきたい。

○自主的取組については、京都会議の前あたりに地球環境部が中心となって実証的な研究をやっているので、その報告書をこの部会の議論に提供していただきたい。

○様々な手法について、比較検討を行う場合に、フレームができていないと効率的な比較ができない。そういうフレームとして、事務局から有意義な資料が提出されており、これをベースにして本格的な議論をしていくべき。

・資料として、外国の事例の紹介も必要であるが、海外事例の紹介にとどまることなく、日本で何をすべきかという視点をしっかり持つことが必要。

・「経済的手法」についての議論をしっかりやっておくことが必要。そうしなければ、これから国際社会でも、国内の議論でももたないのではないか。

・環境税、炭素税については、消費税と同じように、国民全体が負担する最終消費者負担型の税に仕込んでいけば、特に生産者側の方は、かなり議論を受け入れやすくなるのではないか。

(森嶌部会長)
○「経済的手法」については、経済社会のグリーン化の検討チームで、論点をはっきりさせた後、部会で議論することとしたい。

○経済社会のグリーン化の検討チームでは、非常に多くの環境配慮を内在化させるための仕組みを取り上げる必要があるので、まず、原則的な議論をやって、その後、個々の手法の検討をすることとしたい。

○資料「各主体が環境配慮型の行動をとらせるための仕組み」で国に対するインセンティブの例が挙がっていないのは、国を行政府的な立場で見てとらえているからである。立法府的な立場で見れば、国に対してインセンティブをつけることも可能である。

・資料「製品の環境負荷の低減と政策手法」は、製造業や第一次産業を念頭において作成されたものであるが、これからますます拡大していくサービス産業を念頭におけば、原材料の調達だけでなく、資本の調達や労働力の調達についても考察する必要がある。

・日本の建設産業、銀行、証券会社等が儲からないからとの理由で海外から撤退しているが、海外の方が経済成長率が高いので、本来ならば経済成長率の高い海外で儲けるべきである。日本など経済成長率の低いところでは環境投資がある意味で成長の誘因になる。

○国に対するインセンティブとしては、予算があるし、また、NPO、NGOの批判が国と国の間では、インセンティブや強制力として働くというのが国際法学者の見解。

・政策手法のベストミックスが望ましいが、どういう組み合わせが可能かということについて、これまで議論がされてこなかった。個々の手法の是非ではなく、一つの手法についても、全体での位置づけをはっきりさせた上で、議論することが必要。

○政策手法の有効性を検証するためには、過去の政策手法の成果を分析することが必要。

○国際会議の場でアメリカと歩調を合わせることが多いにもかかわらず、アメリカの取組が分析されていないので、アメリカの現状についても把握する必要がある。

・IT革命や、経済のサービス化、産業構造の第三次産業化の進展について、環境問題にどう位置づけや評価ができるのか。また、新しい技術が循環型社会を作るための基本計画の中にどう位置づけられるかについても議論すべき。

(森嶌部会長)
○環境基本計画の議論をする際に、国際化や情報化をにらみながら議論することとしているが、環境基本計画の中で、情報化そのものをどう位置づけるかについても、何らかの形で考えていきたい。

○製品の部品の在庫の保存期間を延長することが、廃棄物の排出抑制に大きく寄与するであろうし、製品の保証期間を延長していくことも必要ではないか。

○種々の環境問題を検討する際に、社会資本整備の現状について解析しておく必要がある。欧米諸国の事例と比較する際も、社会資本整備のベースが異なっていることを認識しておく必要がある。

○各手法は、実際に政策手段として使われるときには、単独で使われるよりもパッケージの一部として使われるという認識が重要。また、個々の手法だけでなく、全体の政策を作る仕組みについても議論する必要がある。

・環境配慮型の行動をとらせる「インセンティブ」とは、環境に配慮した方に導く意味と、そうでない方にいかないように導く意味の双方を含み、税も補助金も双方含まれる。また、様々な「インセンティブ」がある中で、経済的なインセンティブについてここで取り上げていくという認識が必要。

・資料「製品の環境負荷の低減と政策手法」は、製品に限って作成されているが、環境負荷を低減させるための政策手法は、他の産業、サービス等についても考察する必要があり、製品に関する整理のみを強調する理由が不明である。

○政策手法のミックスのあり方について、資料の「政策手法の適用例」のような各手法の組み合わせの図を、諸外国に当てはめて作成してみると分かりやすいのではないか。

○環境問題を考えるときに、国民一人一人がどういう行動をとるか、どういう行動をとっていただくように施策をやっていくかという視点が非常に重要であり、国からだけでなく、国民の側からも施策を考察していく必要がある。

・環境配慮型の行動を行う主体として、国民という視点に加え、様々な市民活動、NGO、NPO、労働組合などの主体の活動も考察する必要がある。

・環境負荷の低減方法について考察する場合に、資料「製品の環境負荷の低減と政策手法」のように、製品に限って考察するのではなく、エネルギー産業や国民一人一人の生活の環境への負荷など主要な各分野について分析を行う必要がある。

(森嶌部会長)
○国の施策について一番責任を負っているのは国であるということから、計画にも、資料にも国を第一に書いており、そう記述した方が理解も得やすいと思われる。ただし、発想としては、国民を上にして考えてみることも必要と思われる。

○環境行政の展開の原点は、国民(住民)が身近な環境の異変を見つけ、身近な自治体に対策を迫り、自治体が条例を作って対応し、そうした条例が広まったところで国が法律を作るというボトムアップの展開である。そういう意味で、国民が環境政策に対してとってきたリーダーシップに注目し、国民が非常に重要な役割を果たしていることを環境基本計画の中で強調すべきある。

○自主的活動については情報の公表が重要であり、そのことによって企業の環境に配慮した行動が担保される。国と地方公共団体についても、情報の整備・提供が重要である。

○循環型社会基本法が策定される前に、個別のリサイクル諸法によって取組が行われているが、これら個別のリサイクル諸法を横につなぐ法律が必要であり、そうした役割を、循環型社会基本法が担っていかなければならない。

・G8の環境サミットが滋賀県で行われるが、看板一つなく、何がテーマとして議論されるかも分からない。

(事務局)
○G8のテーマについては、1.地球温暖化の話で、京都議定書の締結・発効について、2.「リオ+10」に向けた今後のテーマについて、3.環境と健康の問題で、有害化学物質の問題や、貿易と環境、遺伝子組み替え等の3つを考えている。

○議論集約メモの中では、農業・農村に関する記述が非常に少ない。

・ 農業との関係では、海外からの輸入の割合が半分を超えており、非循環型農業構造となっている。そうした中で、循環型社会とのずれをどうするかという問題がある。

・ 農村については、車社会があって成り立っているようなところがある。農村にふさわしい新しいエネルギー消費型の車を開発すればそれはそれで良いが、当面は、このまま見逃す以外ないのではないか。こうした点について、交通政策との関係でどのように考えればよいか、御意見をいただきたい。

○貿易が絡む経済交渉の中に環境問題が入ってきた場合、大変難しい交渉となるので、こ うした問題を考える専門の委員会のような場で検討を進めるべきである。

・ 環境と経済との関係については、国内のみで考えるのではなく、グローバルな経済と環境のつながりについて、国際条約の交渉における日本の立場という点から考えることも重要である。

○国と地方公共団体の場合は、環境負荷の原因になる主体としての国、地方公共団体と、環境配慮させるための政策を練る主体の国、地方公共団体に分けて考える必要がある。

・環境基本計画の記述に際して、どんな政策手法を展開するかという議論だけではなく、政策目標の選択や、特に政策手法の選択や組み合わせの議論をどういう枠組みでやって、どういう組織でやっていくのかを議論する必要がある。

・政策決定の仕組みの基本となるのが、官の情報、民の情報を含めて、環境情報についての公開である。

○NGOや地方公共団体から発想されるいろいろなアイディアがあり得るので、こうした下からの情報を受け取っていただきたい。トップダウンということではなく、ボトムアップの仕組みを作っていただきたい。

・ 自主的取り組みや成果がインセンティブとなる仕組みを作っていただきたい。

○新たな環境基本計画を推進する上では、環境管理の進行体制をチェックするシステムが明確に位置づけられなければならないのではないか。国、地方の行政機関においては、少なくとも内部評価が行えるような監査システム、環境監査というものを制度化していく必要があると思う。

○環境汚染や環境変化により何か異変が起こった時に、何らかの対策に結びつけるのは、地域住民のレベルである。その意味でも、上から下へという構造のみではうまくいかない。

・ 職業人の倫理規定のようなものが国際的に作られているが、その中で、環境に配慮した倫理行動を含んだものも結構ある。その辺りのことをもう少し知りたい。

○農村の環境について、生活者の立場から考えていくことが必要である。

○中央政府がヨーロッパの制度を勉強して、それを地方に流すというのが行政スタイルであったと思う。しかし、実際には、このように観念的に考えた制度は大体うまく動かない。逆に、現在の制度ではうまくいかないからこの点を直してほしい、という声を取り上げて制度化した制度がうまくいっている。その意味でも、情報の上下の対話を行うとともに、現場での知恵を伸ばしていくことが重要である。

○農業が環境保全と非常に結びついていることについては誰も反対しないが、これを食糧の安全保障と結びつけると問題が出てくる。農業の機能的多面性について「国際的寄与等」チームにおいて議論していきたいが、食糧の安全保障の問題については避けたいと考えている。

○グリーン化税制の問題や温暖化の大綱の例を見ても、最後には骨抜きにされているのが現状であるが、基本計画の見直しでは、今度こそ骨抜きにされないようにしていただきたい。

○中央環境審議会の議論については、どの程度立法府や司法府に対して言うことができるのか伺いたい。例えば、環境配慮型の行動をとるための新しい立法措置が必要であるから、導入した方が良いのではないか、ということは言えるのか。

(森嶌部会長)
○立法府や司法府に対して提言を行うことも可能である。ただし、日本の三権分立は、「よそのところには余計なことを言うべきでない。」という悪い意味での三権分立であり、お互い遠慮し合っているのが現状である。


<以  上>