中央環境審議会第73回企画政策部会議事要旨


<日時>平成12年 2月 3日(月)14:00〜17:00

<場所>ホテルフロラシオン青山 1階富士の間

<出席>

森嶌部会長、池上委員、井手委員、江頭委員、江本委員、小野委員、神林委員、北野委員、幸田委員、佐竹委員、佐和委員、塩田委員、鈴木委員、平岡委員、福川委員、藤井委員、松原(青)委員、三浦委員、三橋委員、宮本委員、村岡委員、谷田部委員、和気委員、渡辺委員、飯田特別委員、石特別委員、太田特別委員、猿田特別委員、横山特別委員、寄本特別委員、河野専門委員、武内専門委員、寺門専門委員

事務次官、企画調整局長、大気保全局長、水質保全局長、地球環境部長、環境保健部長、審議官(自然保護局担当)、企画調整局企画調整課長、環境影響評価課長、調査企画室長、環境計画課長、計画官

<議題> 

  (1) 環境基本計画の見直しについて
  (2) その他

<配布資料>

 資料1 第71回企画政策部会議事要旨(案)
 資料2 第71回企画政策部会会議録(案)
 資料3 第72回企画政策部会議事要旨(案)
 資料4 第72回企画政策部会会議録(案)
 資料5 各種団体との意見交換会の概要(廃棄物リサイクル・ダイオキシン等化学物質関連)
 資料6 各種団体との意見交換会の概要(経済社会のグリーン関連)
 資料7 議論集約メモ(案)
 資料8 日本の環境政策における政策手法の適用事例
 資料9 企画政策部会における政策手法に関する議論について
 資料10 環境保全型社会を構築するための政策手法(諸外国の例)
 参考資料 政策手法に関する環境基本計画の記述及び
      環境基本計画策定後の主な動向について

<議事経過>

 平岡委員から「廃棄物リサイクル・ダイオキシン等化学物質関連の意見交換会」、猿田委員から「経済社会のグリーン化関連の意見交換会」についてそれぞれ結果報告をした後、事務局から各種資料について説明をし、その後、日本の環境政策における政策手法の適用事例について議論。

(森嶌部会長)
○ 今後2回程度、総論的議論を行うが、そこで、環境アセスメント、経済的措置、自主的取組等、現行の環境基本計画の中に盛り込まれていないもの、盛り込まれてはいるが今日と考え方が違うものについて自由討論をして、総論の枠組みを作りたい。

・ 環境アセスメントについては、現行計画策定後、環境アセスメント法が施行され、事業アセスはできたが、戦略アセスについては、なお検討が進められており、今度の環境基本計画の中にどう盛り込むかという問題がある。

・ 経済的措置については、環境基本法、現行の環境基本計画のいずれでも、今後の検討を待つこととされている。この問題については、賛否様々な意見があり、環境基本計画の見直しに当たって、ぜひこの部会で議論しなければならない。

・ 自主的取組については、現行の環境基本計画に盛り込まれていないが、その後、我が国において経団連の自主的取組の計画や、ドイツ、オランダ等の自主的取組が、政策手法というよりは、政策を実現するための考え方としてかなり前面に出てきているので、自主的取組の考え方、あり方、社会的に受け入れられる条件等様々な問題を議論していかなければならない。

・ 環境配慮型の選択が行われる、つまり持続可能な社会を作っていくためのメカニズムとしては、少なくとも環境アセスメント、自主的取組の支援、経済的措置については、現行のものをより深める、あるいは現行のものでは取り上げられていないものを取り上げていくという形で、自由討論で議論していきたい。また、従来考えていた公害対策とは違うような新たな規制的な措置もあり、こういう問題もあわせて議論していきたい。

・ さらには、これらの手法をどのようにして組み合わせていくのが望ましいかという問題、政策手法のベストミックスの問題についても議論していきたい。

 休憩をはさみ、福川委員から配付資料「環境問題への文明的・文化的アプローチ」について説明の後、議論。

○ 政策手法の問題は、消費者、供給者、その間をとりもつ流通といった主体別に、どういう手法を用いれば、その主体が動くかという観点から、考えてみてはどうか。

○ 技術の開発普及をもって環境問題の克服に当たることには期待がもてるが、科学技術の進歩とともに、我々の便利さ、快適さを求める欲望も限りなく続くため、ものの考え方、生活様式を根本から変えることが必要。

・ 伊東俊太郎先生の講演の中で、人類がこの世に生まれてきてから、様々な文明の時代を迎えているが、21世紀を迎えるに当たって、新たな環境文明を、創設していかなければいけないのではないか、願わくば、日本から環境革命を発出してほしいというお話があったが、よろしければその講演の抜き刷りを提出したい。

○ ヨーロッパの国々は、豊かさが一定のレベルに達して、ポストマテリアリズムという精神の脱皮が起きたからこそ、環境に対して、大変熱心になっているように見える。他方、アジアに関しては、日本は特殊だが、それ以外の地域はまだまだ貧しくて、アジアの価値観のようなものが新しい技術革新に貢献するまでに豊かさが至っていないと理解できる。それが、本当にリアリティを帯びてくるには、さらにアジアが豊かになる必要があると思うので、もう少しかかると思う。

(森嶌部会長)
○ 福川委員の配付資料中の「アジアの価値観が、21世紀に期待される革新的な技術開発、なかんずく環境関連の技術開発に貢献する可能性をもっている」というのは、「ニュー物質時代」、「脱物質」より、もう一つ手前の儒教や仏教や、もったいないという感覚のことをいっているのではないか。

○ ある現象があって、なぜそういう現象が発生しているか、その現象のファクターに対して、それぞれの政策手段がどれほど有効であるかといった、要因分析をすることが必要。

・ 現在の大気や水の現象に起きている問題は、大部分、人口の移動、動きで説明できる。こうした問題に対処するためには、各種土地利用規制法規をその運用について環境の角度から注文をつけていくことが必要。

○ 政策的手法といっても、汚染物質に対して直接的に政府がコントロールできるものと、民間を使って間接的に誘導するもの等様々あり、そうした直接的な措置と間接的な措置に整理する必要がある。

・ 経済的手法が表に出てきたのは、自動車税制のグリーン化の問題提起が非常に大きな影響をもっていると思われる。これまで、時期尚早である等といわれていた環境税が正式な議題に浮上したのは、自動車税制のグリーン化の問題提起のおかげである。しかし、減税に偏ったものとなってしまったため中身が悪くなった感がある。また、炭素税というからには、ダイレクトに化石性燃料の消費を目当てにすべきであり、自動車税制のグリーン化は、個別の消費税を使った別の意味での環境税ではないか。

・ 経済的措置に係る要因分析、効果については、経済学者はかなりの蓄積を持っているし、「環境に係る税・課徴金等の経済的手法研究会」の成果も活用すれば、国際競争力の話あるいは経済成長に与えるマイナスの効果の議論もできると思う。

○ 10年前、20年前だったら産業界の自主的取組みに委ねて全てうまくいったかもしれない。しかし、今後、ますます経済の自由化とか国際化が進展すれば、業界団体の縛りが非常に緩やかになり、縛りきれない部分が大きくなってくると思うので、自主的取組に委ねておけばうまくいくという議論は、納得し難い。

・ 規制的措置と経済的措置の組み合わせについては、日本が自由主義経済の国であり、少なくとも建前としては市場経済の国であることを前提とすれば、経済的措置を優先して、それでもうまくいかなかったときに初めて規制的措置を講じるべきだと思う。

・ 京都議定書で定められた日本に課せられた義務を達成するための方策として、自動車の燃費効率の改善ほど、無理なく実行できる方策は、他にはないのではないか。

・ 環境税というからには、本来的には、ガソリンに直接かけるのが筋だと思うが、自動車からのCO2 削減のためには、まず走っている車の平均的な燃費効率を上げるために、自動車税制のグリーン化をし、加えて、ガソリン・電力に炭素税をかけ、ガソリン代が高くなったことにより、走行距離を減らすのがいいのではないか。走行距離と燃費効率を掛け算したようなもので、別段、一方があれば他方は要らない、両立不可能なものでは決してない。

○ 産業界を正しく現状認識をすることが大切。かつては、公害大国というイメージがあったが、現在は、資源の有効活用について、どこにも負けないだけの努力はしている。昔の発想で、自主的取組が信用できないというのなら、修正していただきたい。

・ 経団連では、少なくとも75%の産業部門での把握はしており、みんなが非常に高い目標を立てている。残りの25%についても、数多くの中小企業の方々がおり、把握しきれてないがそれぞれにやっている。

○ 日本の産業界が、特にエネルギー多消費型産業において効率が良いことは承知している。ただし、把握しきれない残り25%の中小企業の問題と、個々人、一般の消費者等小さな主体に対して、自主的取組に委ねてしまってもなかなかやらないと思うので、その場合は経済的措置が必要だろうということ。

○ 環境庁としては、経済的措置を導入するなら、環境にとっての改善効果を公にしめす必要がある。

○ 環境に対する影響、つまりCO2の排出削減が、環境税によってどの程度可能なのか、あるいは、それが経済に対してどういう影響が及ぶのかということについては、極めて骨太な予測はできても、細密な予測は大抵当てにならない。

○ 当てにならないからいって、環境への効果を示さなければ、国民の理解を得られない。、少なくとも国民に向かって説得的に説明できるだけの材料は持たないといけない。

○ 短期的には、環境税でエネルギーの値段が上がっても、エネルギーは必需品だから消費は減らないから効果がないと言う人が多いが、中長期的には、燃費効率の良い車の買い換えが起こるので、エネルギー消費の価格弾性値は大きい。

○ あらゆる政策効果がわかるまで政策手段を取らなかったら、経済政策は成り立たない。環境税も、CO2の削減がはっきりしない限りは環境税は導入できないという議論は、政策体系上いえないのではないか。

○ 現在の政策課税については、どういうことを目的にして、効果が上がった時にはどこでやめるかを明確にしてないので、納税者は信頼できないのではないか。税金による効果を定量的にみるのは不可能だと思うが、環境税をやるなら、納税者が信頼できるように、どういった効果があがったらやめるのかを明確にすべき。

・ 軽油の税金が安いことにより、ディーゼル車が増えているという現実もあるので、こうしたことの対策としては税金の効果もあると思うが、20年ぐらい前に達成された排気ガス規制のように、規制を強化した方が効果がある場合もある。

(森嶌部会長)
○ 現行の環境基本計画の策定の審議で一番残念であったのは、経済的措置について、実態的な効果の問題も含めて議論を行うべきであったが、それを行う前に、経済的措置を導入すると国際競争力がなくなるということで議論がストップしてしまったこと。この問題については、少し整理して、場合によっては経済的措置セッションも一回ぐらい増やして、十分に議論した方が良いと思う。

○ 経済的措置、環境税などをつくる場合には、増税という意識で議論している人はほとんどいない。産業構造・経済構造を変えるための環境税なので税収的にいえば中立だという考え方で議論しているのが普通だと思う。

・ 環境税・炭素税に対する個別企業の考え方は急速に変わってきている。最近では、条件によっては、新聞社のアンケート調査で環境税を導入した方が良いという考えが6割以上占めている。そうした時代の変化も無視できないと思う。

・ 伊東俊太郎氏によると、人類の文明史の中で、現在は、初めて人類が地球の限界に突き当たった時。IT革命は今までの物質中心の生産性から、むしろ知識とかサービスとか、そういう分野を拡大させる一つの技術革新であるが、今までの技術革新の流れを変えるものではない。むしろ、地球の限界を人類が意識し、それに直面したということの意味の方がはるかに人類の歴史にとって大きい。

・ 経済的措置の問題も、人類が地球の限界に突き当たった中で、今までの市場経済のままでいけば、様々な障害が出てきたため、経済的措置による誘導が必要であるといった理念が重要。

・ 経団連が行っている自主的取組は非常に評価しているが、問題はそうした取組には入ってこない一般消費者であり、そうした一般の消費者に対しては、一定の誘導が必要。

○ 自主的取組は、消費者全体、サラリーマン全体に対する一つの教育である。そうした取組を通じて自主的取組の目標を達成していくものであり、自主的取組を、もっと前向きに、もっと違う次元でも評価していただきたい。

○ 企業の環境に対する自覚は相当変わってきており、以前は規制に合わせようとした経過があると思うが、ここ数年の間、自分で直さなければいけないという自覚に変わり、様々な自主的取組運動をやっている。したがって、新しい環境基本計画では、税金や規制で縛るのではなく、自主的取組を大きく取り上げないと、新しい時代の計画にはなっていかないと思う。

(森嶌部会長)
○ 今回の見直しでは、自主的取組は非常に重要であると感じているが、だからといって、自主的取組に任せておけばいいということにはならない。自主的取組と経済的手法あるいは規制等をどう位置づけていくのか、また、自主的取組を伸ばしていく方法、支援する方法を議論しなければならない。

○ 環境問題は、多様性・広域性・長期性等の特徴から、規制や経済的措置だけではうまくいかないと理解している。そこで重要となるのが自主的取組である。環境基本計画の見直しにおいては、これまでの企業や自治体の自主的取組を評価した上で、総合的に環境マネジメントシステム、LCA、環境ラベル、環境会計等を取り込んで自主的な計画を立て、推進することを支援する措置を取り込むことが、非常に重要である。

○ 原油の価格が上がったことにより、電気とガスの価格が上がったが、ガソリンスタンドでは、未だに安売り競争をしている現状がある。そのように、炭素税を導入しても、産業界が引き受けることのないよう、消費税方式で、消費者に転嫁する必要がある。消費税方式で、消費者が負担すれば、痛みを感じ、しかも自分も環境保全に貢献しているという意識を持たせることができる。

○ 税というものをさわらずに自主的・積極的手法でやってきたために、バージンのものがリサイクル商品よりも安いとか、100年住宅をつくろうとしても、そういうものが逆に税的なペナルティーを受けてしまう等の矛盾が出てきている。こうした矛盾を解決するためには税に手をつけることが必要。

・ 戦略アセス問題も、総合的なプラン自体で考え方を統一しておかないと、矛盾が生じることとなるので、環境基本計画のような大きな計画に、検討してとり入れることは十分議論すべき。

○ 戦略アセスの行き着くところは、土地利用計画との一体化だと思う。開発行為が蓄積することによって、むしろ、より質の高い環境空間が担保されていく形にもっていかないといけないが、空間のあるべき姿を提示したものが今ない。そのことを保証するような土地利用計画の環境版を「緑のマスタープラン」とか「緑の基本計画」に委ねるわけにはいかない。環境計画の側が、きちんと調査した上で、環境をよくしてもらいたいところを明確に提示する。そのプランを、例えば地域環境基本計画の中で出せるのかが、非常に大きな論点だと思っている。

(森嶌部会長)
○ 戦略アセス、現在のアセスの現状について事務局から報告していただきたい。

(事務局)
○ 戦略環境アセスは、アセス法制定時の国会の附帯決議等において、早急な検討が求められており、環境庁においては、2カ年にわたり研究会を設置し、内外の実施事例のレビュー、諸外国での制度化の実例等を研究してきたので、戦略環境アセスの中身、必要性、機能、最低限具備すべき手続等について大体明らかになってきている。現在は、我が国における様々な計画の策定プロセスのレビューをしている段階にある。

・ 現在の環境基本計画でも、施策の策定・実施に当たっての環境配慮、公共事業の実施に当たっての早い段階からの環境配慮は合意されているが、@そこで行われている環境配慮が実際にオープンになっていないために透明性が低いこと、A一般公衆等から質の高い環境情報が得られないことに問題がある。しかし、5年前に比べると、戦略環境アセス導入の基盤となる条件は相当整ってきている。

・ 我が国では、様々な計画策定過程が公表されているが、@経済的なものの方を優先している、A代替案の検討等、戦略環境アセスの実例がないため、その中で環境配慮が行われているとは言えない状況にある。今後、ガイドラインを作成し、実績を積み重ねていきながら制度化の方向を検討していきたい。

(森嶌部会長)
○ 本日は、たたき台作りの準備としては大変有益な議論をいただいたが、時間が十分でなかったため議論が足りなかったと感じた部分もあると思われる。次回も引き続き、政策手法についての論点整理をしてみたい。

・ 各論分野の問題点については、各論の議論に入る前に一度議論して、論点を出したいと思っている。  
            

<以  上>