中央環境審議会第70回企画政策部会議事要旨


<日時>平成11年12月3日(金)12:30〜14:30

<場所>KKRホテル東京 瑞宝の間

<出席>

森嶌部会長、安原部会長代理、浅野委員、天野委員、池上委員、井手委員、江頭委員、江本委員、木原委員、幸田委員、佐竹委員、塩田委員、鈴木委員、中野委員、平岡委員、福川委員、宮本委員、村岡委員、村杉委員、谷田部委員、渡辺委員、飯田特別委員、石特別委員、猿田特別委員、廣野特別委員、横山特別委員、寄本特別委員、岩崎専門委員、寺門専門委員、西岡専門委員

企画調整局長、水質保全局長、環境保健部長、環境保健部調査官、企画調整局企画調整課長、企画調整局環境計画課長、企画調整局環境計画課計画官

<議題>

(1)環境基本計画の見直しについて
(2)その他

<配布資料>

資料1 第69回企画政策部会議事要旨(案)
資料2 第69回企画政策部会会議録(案)
資料3 中央環境審議会企画政策部会委員・特別委員名簿
資料4 中央環境審議会企画政策部会の運営について
資料5 中央環境審議会企画政策部会(環境基本計画関係)名簿
資料6 各種団体との意見交換会の概要(地球環境関連)
資料7 国民各界各層から寄せられた意見の概要(状況報告)
資料8 議論集約メモ(案)
資料9 「持続可能な経済社会」の概念とその具体像
参 考 「持続可能な経済社会」に関するデータ
資料10 各国の環境総合計画等における進行管理の仕組み



 事務局から各種資料について説明の後、資料9「「持続可能な経済社会」の概念とその具体像」及び参考「「持続可能な経済社会」に関するデータ」並びに資料10「各国の環境総合計画等における進行管理の仕組み」について議論。

◇各種団体とのヒアリングの報告の中で電気事業連合会、鉄鋼連盟、石油連盟が環境税について触れていた。民間の企業も参加できる京都メカニズムの排出権取引がもし実施されれば、国内でも同様の制度を作らないとうまくいかず、炭素1トン当たりの排出量に対して値段(利用料)がつけば環境税とほとんど同じことである。にもかかわらず「環境税は困るが京都メカニズムには賛成」というスタンスなのは、理解が難しい。

◇そのような議論はなかったのでよくわからないが、国内のCO2排出抑制を環境税という形で行うのは慎重にしてほしく、国際的な排出権取引のメカニズムができれば、その内容によって利用可能ならば利用する、ということではないか。

・国際的な排出権取引と国内の取引を結びつけて効率的な制度にするという議論は正論だが、まだ十分詳しい議論がされていないのが現状。

◇「環境税」というと「税」の強いイメージを企業の人々に与えかねない。「環境税」を一般用語として使用するより、「経済的措置」、「価格メカニズム」といった上手な言葉を用いないとまともな合意に至らない。

(森嶌部会長)
◇税というと反対だが、買うか売るかというと儲かりそうな感じがする、ということか。

◇持続可能な開発という観念に反対する人はいない。これは「そうあることが望ましい」という発想だが、「現実はどうなっているか」というと、例えばFAOの水産委員会のレポートによると世界の漁業資源の6割は乱獲、つまり再生可能ではない水準まで漁獲されている状態。問題なのは現実がなぜそうなっているかということを分析し、それを持続可能なレベルに近づけるためには、どういう社会的摩擦があるかということを明確にしない限り、総論には賛成だが具体的なアクションになると各業界がみんな反対することになりかねないということ。
・例えば大量生産・大量消費・大量廃棄は改めなければ、ということには皆異論はない。技術的に難点はあるかもしれないが数量化できる概念であり、数量化して実際にやろうとすると、日本の経済社会にいろいろ変動を巻き起こす可能性がある。だが、どのような問題が起きてくるかということをはっきりさせない限り、何を選択するかということについて市民に意見を問うことができない。市民が参加するためには、自分たちがどのような選択をしなければいけないかという具体的なイメージを示して持ってもらわなければならない。そうでないと、抽象的には全く異論はない、というだけのことで、行動は改まらない。

◇議論に際して確認すべきことは、我が国では環境基本法で「持続可能な開発」という概念を受け入れて位置づけているということを出発点にすべきだということ。環境基本法には前文をつけるという議論もあったが、宣言文をいくら法律につけても役に立たず、条文で勝負するにしても長大な条文にならないように3箇条にわけた経緯がある。第3、4、5条は並列ではなく、第3条が究極の目標で、それを達成するために第4条が出てくる。第3条は「現在及び将来の世代が健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受する」ということ。そのために、公平な役割分担のもと、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら、持続的に発展できる社会を構築するのだということ。だから、持続可能な経済社会を作ることは究極の目的ではなく、もっと高い目標があって、それに到達するための認識。

・現行環境基本計画では、第3条の強調に欠けていたため、「共生」と「循環」の位置づけで混乱した。議論の最後の段階で本当は「共生」が先だという話しが出たものの、議論の終盤だったため押しとどめられたが、それは正論ではなかったか。

・「持続可能な」という言葉は未だに途上国を意識したもので、先進国ではむしろ後退しても構わないという意見もある。しかし、環境基本法策定時には持続可能な経済社会の構築が先進国においても必要だとの認識をした。環境基本法は、「持続可能な開発」の中身を明確にせず、言葉として定着させたのだから、環境基本計画がそれを実質化させる役割を担っている。

・経済成長がないと第4条の考え方にあわないということかどうかは疑問。場合によっては悪くならなければいい、あるいはシェアリングのためにはゼロ成長でもいいという考え方も「持続可能」という言葉の中にもあるかもしれないので、きちんとここを議論すべき。

・上っ面の議論で、持続可能な開発だから循環型社会で、それは要するにリサイクルでリサイクル産業と静脈産業が発展したら、そこで経済発展の可能性がでるから良いというのではあまりに皮相な議論。

・循環経済法の話も環境基本法に戻るべき。単に廃棄物処分場の不足をなんとかしようとか、リサイクル産業もこれから儲かるのでそれらを育てるための循環だという議論になってしまったのでは、環境基本法の精神とは全く異なってしまう。

・だから、国際的にかなり合意されている言葉の含蓄をもう一度再認識して、環境基本計画の中では、第3、4条の結びつきを意識した新しい計画を作ることが重要。

(森嶌部会長)
◇環境基本計画をどう作るのかというのが大事。

◇人間中心で人間の生活水準をいかに向上させるかというeconomic developmentと生態系が第一義的なecological developmentという概念の真ん中がsustainable developmentで、真ん中で両方をにらんでいるような発展形態であり、どちらかに寄ることができるし、その寄り方についていろいろ哲学的な考え方がでてくる。

・1980年代にこの概念が出たときは、発展途上国がこれから発展していくときに大変な資源が必要で、それをどう両立させるかということから始まった。その後資源の枯渇という問題よりも地球環境汚染が深刻になり、途上国だけでなく全世界に適用すべき問題ということになった。そこでブルントラント委員会の報告書がだされたが、きちんと読むと、国と国の間の公平性や、国内のいろいろな所得階層の間の公平性を同時に考えるべきだとされている。今までの経済効率性に対応するくらいの重要さでいろんな種類の公平性を一緒に考えた発展が必要である、ということを言っていると理解している。
彼女はノルウェーの首相で行政組織をよく知っていたため、随所に「縦割り」を革命的に改革しないと本当の対応はできないとも書いており、この視点も大変重要。

・ロバート・ソローの「将来の世代が現在の世代と少なくとも同じ程度の生活面での幸福を享受できるようにしなければならない。これが「持続可能な発展」の考え方だが、現在の世代はいろいろな資源を使ったり環境を汚したりするので、環境劣化がもし起これば、それは現在の世代が将来の世代にいろいろな形の資本や技術を残して補償すべき。」という発展の考え方が広く受け入れられている。これに対して「人間が作った建物や工場、技術、教育によって、消費・生活の満足は上がるかもしれないが、それによっては置き換えられないような自然があるはずである」という反対がロンドンの経済学者のグループから出た。彼らはソローよりも強い意味の「持続可能性」、つまり自然に存在している我々の利用している環境資源の中で、人間が作ったものに置き換えられないようなものは最小限の利用にとどめ、再生・置き換え可能なものについては補償でも構わないという考え方を提示した。特に、地球温暖化、気候系のように、生態系の生命支持機能をつかさどっているような自然の部分というのは厳密な意味で可能な限り保全していかなければいけないとか、現在あるべく決定してしまうと取り返しがつかないような不可逆的な自然環境の汚染というのは最小限にとどめ、できる限り避けるという考え方もある。

・環境基本計画にどのように反映させるかということは、哲学的考え方・価値観で議論し始めると千差万別の議論になる。我々は社会的な意思決定、特に日本の環境政策を決めるという意思決定をするための基本的な指針を「持続可能な発展」というところに求めようとしているのだから、その内容を弱い持続可能性でいいのか、強い持続可能性でいいのか、あるいは強い持続可能性をとるとすればどの範囲のものを守るべきか、どの範囲のものは人工的なもので置き換えていいと考えるのか、というあたりを詰めることが大事。

・特に気候変動についてはIPCCが科学者の大勢の議論を示しており、気候系に関しては、この部分は守らなければならず、そのためには何をしなければならないということを教えてくれているが、それを実現するのは難しい。基本計画としては、目標とか理念という部分ではこのようなものを使うが、それに対して我々は短期・中期的にどんな目標を作っていくのかというあたりをもう少し具体化・数量化して議論し、それを基本計画に盛り込むことが必要ではないか。

・縦割り行政については、環境省になるのだから、視野に入れてどのような組織的な統合化が可能か考えるべき。

◇我が国では持続可能な開発を循環と共生と二つにわけて、総合指標などの数量的な努力をしてきた。問題はそれをどういう論点にもっていくかということ。現在の総合指標の体系は不十分だが、国民的な議論に持っていくための論点設定を行わなければならない。IPCCでは将来に向かって持続可能性を考慮したときの4つのシナリオを描いており、エコロジー、エコノミーのどちらを原点にするのか、グローバライゼーション、ローカリゼーションのどちらを念頭に置くかという4つの軸で大体考え、それぞれについてどのような社会が描けるかを示している。日本でもある程度一つに絞って論争するのではなく、論争の部分では将来に向けての、あるべき姿ではなく、あり得る姿を設定して論議する場があっても良い。先ほどの京都メカニズムと税の関係の話についても、そういうものを設定して論議する場があってもよい。

◇廃棄物部会で「総合的体系的な廃棄物・リサイクル対策の基本的考え方に関するとりまとめ」が出て、各省からバラバラにリサイクル法が提出される予定であり縦割りは続いている。物質循環の確保は急務であり、企画政策部会では現在の廃棄物・リサイクル関係の諸制度を見直すべき。廃棄物処理法は厚生省、リサイクル法は通産省が中心になっているが、まず廃棄物処理法とリサイクル法を合体して廃棄物の定義を見直すことが一番最初。そしてドイツの循環・経済法のような日本版循環・経済法を作るべき。縦割りに4,5個の法律ができそうなので、基本計画の中で、横断的な形での基本的な考え方を示して、その下にそれぞれの省庁の法律があるというような体系的な整理を議論して欲しい。

◇持続可能な社会を考えるときに経済とエコロジーにとらわれすぎている。それらは基本的で重要ではあるが、社会というのは経済やエコロジーという問題だけではなく、その中には政治やガバナンス、ジェンダーの問題も入っているので、もっと広い概念で捉えないと、十分ではない。その幅広い概念での持続可能な社会をつくるために、環境の立場からどうしたらよいかを考えるのが環境庁の立場。各省庁ごとに割り当てられたものは、各省庁の立場から持続可能な社会をつくるための検討をすればよい。

・持続可能な社会というのは一国で考えてはならず、南との共生なども含めて地球レベルでとらえるべき。

◇環境基本計画の実効性の担保・向上が見直しの最大のポイントなので、計画の進行管理体制をきちんと整備する必要がある。

・オランダやカナダの計画の実施と政府のパフォーマンスレビューでは実効性の担保が仕組まれているが、日本の場合環境基本計画全体を受けた実施計画がなく、環境基本計画を眺めながら個々の対応をしているというのが実態。民間ではISO14000シリーズが取り入れられているので、政府向きにも各省庁における環境管理システムをISOを参考にしながら考え、導入・検討していく必要がある。その場合、環境管理を行う各省庁の中の組織や具体的な手続きがきちんと定められることが必要。見直し後、各省庁が実行に移すために、各省庁はガイドラインのようなものに即して計画全体を受けるような、課題、目標、方策をきちんと盛り込んだ実施計画を策定し、毎年度これをフォローアップした結果を報告書にまとめて公表。実施計画が多年度計画ならばローリング方式で実施計画自体も改訂する。このようなISO14000シリーズの環境管理システムに似たような仕組みを政府の各省庁に入れ込んで、環境基本計画の実施計画の実効性をきちんと担保していくべき。事業者としての政府の率先実行計画もあるが、これは事務・事業に限られており、政府の政策・企画立案の部分まで取り込んだ計画であることが望ましい。

・今の計画は財政措置などによって実効性が担保されていないので、もっと実効性が確保できるような関連措置も盛り込む必要がある。政府の率先実行計画を見直すのも手だが、新しく実施計画全体を考えていくというのも一つの方向。中央政府だけでなく、地方公共団体も政府に準じて実施計画を策定し、フォローアップして結果の公表をしたらよい。

(森嶌部会長)
◇我々は基本施策の方向を考えようとしている。現在のような経済構造あるいはエネルギーの使い方をしていればどうなるかはIPCCでやっているが、そのまま行くとどうなるか、だめになるのなら、どこまで抑えなければもたないのかということはあらかじめどんぶり勘定できる。指標が出ればなおいいが、出なくともどれくらい抑えなければいけないかが出れば、逆に今度は経済がもたないという反論がでてくるので、そこで政策決定としては、どこでバランスをとるかでいくつかのオールターナティブが考えられる(こうなら何年のうちにだめになる代わりに経済は多少もつなど)。目標、持続可能というかどうかは別として、どの辺に向けて政策を考えていくのか。これは資源の問題、エネルギーの問題、ゴミの問題それぞれあるが、資料9のデータの中に使えるものがかなりある。

・ある程度こういう方向でいったらどうかということを考えたとき、それに対応する手段・手法はどうか、どこまで抑えなければならないかということを議論。その際、環境問題は各省庁を越えたものであり、通産、運輸、建設、それぞれのところで全体を考えてもらうわけにはいかないので、ここでしか環境全体を考えられない。日本の将来の経済的な状況はどうあるのか、どこまで我慢すればいいのかということも含めて、漠然としたゴールを見て、いくつかのシナリオの中でとりうる手段について有効性も含めて検討し、場合によっては手法の中でプライオリティーを付ける。それらの手段と、そこから出てくるであろう効果・結果については、進行管理をして、我々が考えている選択できる社会像を達成する観点からいった場合に環境庁以外の省庁の施策も含めてパフォーマンスはどうかという評価をする。

・各チームで理念に走ったり、あるいは局所的な話をしたりするのではなく、環境基本計画にふさわしい抽象性と具体性を備えさせるべき。
・各チームがその範囲で、マテリアルフロー、エネルギーフローなどをリサイクルする、あるいはフローを減らすためにはどこをどれくらい抑えたらいいのか、その場合に経済との関係で言えば、どういう部門が影響をうけるのか、それに対する補償はあるのかということも同時に考えながら、つまり手段と効果を考えながら目標も議論して欲しい。その際、一つでなくいくつかのオールターナティブを議論してもらえれば、各ケースで社会のシナリオが描けると思うがどうか。

◇環境容量の話だが、COP3で決めたものが先にあるので、とても日本一国だけでは決められない。

・自動車の世界では、環境技術に関して勝ち残るための知恵出しの競争。持続可能性というのは、現在生活する人のニーズ及び将来生活する人のニーズと両方満たそうという哲学のようだが、それはすなわち現代の人間がどれだけ知恵出しするかということ。ニーズというのは自分たちの欲求を満たすと言うことだから、それに対してどれだけ将来に向かって負荷を減らすかという知恵出しが片方にある。知恵出しが促進されるような優れた政策的手法を講じるのでなければ、意欲、ニーズというのは抑えておこうというところにいってしまう。経済とエコロジーの両極を縮めることを考えないと日本の前進はない。

(森嶌部会長)
◇両極というのは理論上どういうタイプがあるかという話であり、その中でどのようなゴールを考えるか、どういうアイデア(テクノロジーでも環境税でもあり得る)を出すかということであり、議論するのはどうやったら知恵が出せるかということ。

◇部会長の集約には全面的に賛成。

・縦割りについては、環境庁が各省に政策割り当てをやるという発想が欲しい。つまり、現在の予算と人でやっている仕事の状況から見て、何ができるか、その目標の達成のために各省どんな仕事が必要なのかを各省に割り当てる。各省からいろいろクレームもあるだろうが、今までは抽象的な目標を掲げてあとは各省の施策をホッチキスでとめていたというのが各省と環境庁との関係だったので、それを環境庁から主体的に働きかけるアプローチをとっていろいろ議論するようにすべき。

◇環境基本計画、環境行政というのは、傘の柄のようなもので、環境庁が傘の心棒で骨が各省の行政で間を埋める布地が民間企業、消費者団体。

・縦割り行政の話だが、今まで一応計画ができて、それを各省に提示して反応によって作文で妥協するというパターンが多い。これだけ検討チームを作るのであれば、関係省庁でもワーキンググループのようなものを環境庁の音頭で作って、それと検討チームで議論する場を作って政策形成をなるべく早い段階から各省の参加を求めるようにしないと、傘の骨と柄がうまくつかない。

・2010年前後の目標が当然あるが、そういう問題と平行して2050年とか2100年とかの長期の問題については数値的な目標は無理でも、政策や技術開発の方向性くらいは示せないか。

・米国政府はあまり熱心ではないが、民間企業は環境問題に積極的に取り組むようになっている。日本も、民間企業の技術共同開発を地球レベルで行い、そのバックアップについて計画に入れてもよい。

・最後は作文で妥協があるとしても、できるだけ具体的な政策手段とその効果を数値目標的にすべき。

(森嶌部会長)
◇検討チームは主として産業界やNGOを考えていたが、各省庁間でもそのようなことができればよい。事務局も可能性を調整するように。

以下、検討チームメンバーのリストを配布。次回予告等。


以上。