中央環境審議会第55回企画政策部会議事要旨

<日 時> 平成10年4月28日(火) 13:30〜16:30
<場 所> 中央合同庁舎第5号館低層棟2階 講堂
<議 題> (1)環境基本計画の第3回点検について
     (2)その他
<配付資料>
資料1 中央環境審議会第54回企画政策部会議事要旨、議事録
資料2 環境基本計画の進捗状況の第3回点検における重点審議項目について
資料3 「都市交通対策」報告書(太田勝敏委員)
資料4 「環境保全上健全な水循環」報告書(村岡浩爾委員)
資料5 「国民のライフスタイル関連施策」に係る調査報告書
(猿田勝美、村杉幸子両委員)
資料6 地球温暖化対策の推進に関する法律案の概要
資料7 地球温暖化対策推進法案の提案の背景・ポイント・構造
資料8 地球温暖化対策の推進に関する法律案
資料9 中央環境審議会中間答申と法案との内容の対比

参考1 国の個別事項に係る進捗状況調査(回答)
(第54回企画政策部会資料)
参考2 今後の地球温暖化防止対策の在り方について(中間答申)
参考3 京都議定書と私たちの挑戦

[議事経過]本部会は公開で行われた。

[1] 環境基本計画の第3回点検について

○各重点審議項目について、担当委員より報告。

(部会長)
本日は、3つの重点審議項目について、議論のたたき台として調査をお願いしていた委員の方からそれぞれ約20分の御報告をいただき、その後、重点審議項目についての自由討議をほぼ1時間程度行いたい。また、本日の討議の結果を踏まえて、次回の部会に点検の報告の素案を提示したい。

【大気環境の保全】(太田委員)
都市レベルでの交通と大気環境の関係については、実際の特定地域全体におけるNOx からみた環境基準の達成状況を見ると、一般環境大気測定局(一般局)の方はそれなりに達成率が高まってきているのに対して、自動車排出ガス測定局(沿道の部分)についてはなかなか現況が改善されていないということがわかる。
その理由は、自動車交通を中心にして車への依存性がどんどん高まっているということである。
通勤交通手段の変化を国政調査の1970年、80年、90年のデータで見ると、全国レベルで自動車の分担率が通勤で37%、20年で倍になっているということがわかる。それに対して、バスを中心とした公共交通が激減しており、徒歩の分担率も減っている。なお、自転車については多少増えており、これは日本の特殊事情によるものと思われる。バスが余りにも不便で、料金が高くなったことも大きいものと思われる。
ただし、こうしたデータなどから都市交通を考える際には地域差を考慮したうえで議論する必要がある。例えば東京都で一番公共交通が発達している地域では、地下鉄、鉄道が整備されており、自動車は大体20年間一定になっている。逆に、日本で一番モータリゼーションが進んでいると言われている群馬県の前橋市では、この20年で倍以上、62%が車に依存しているという状況になっている。
自動車化が進んでいるとはいえ、なおイギリス、アメリカと比べれば、まだまだ公共交通なり自転車が頑張っている日本の現状を維持しながら、いかに交通政策を進めるかということが議論の中心となる。
交通関係が他部門に比べて状況が悪化しているのは、部門別エネルギー消費量であり、産業部門が削減に成功しているのに対して、運輸部門、特にマイカーを含む旅客部門が増加している。したがって、増加する自動車交通への対応がが一つの大きな焦点であると言える。
これは、自家用自動車の要因別エネルギー消費の90年度から95年度の伸びに示されるように、他の輸送機関からのシフト、大型化やカーエアコン、あるいは渋滞等による走行燃費の悪化、また全体の新しい需要の増加、平均乗車人数の減少等非効率的な車の利用などが要因として考えられる。
今後の状況については、京都会議の前に5省庁で予測した日本全体の自動車交通需要によると、2010年は1990年レベルの1.4倍となっている。したがって、2010年に6%減らすということは、結局33%程度減らす必要がある計算になる。もし、台キロだけで減らすとすれば、CO2 からみれば3割以上減らさなくてはならない。これから考えるいろいろな政策は、自動車利用の工夫ではあるが、同時に単体的な意味でのいろいろな規制なり技術革新にかなり期待しないと難しいと思われる。
次に、交通ニーズの増加が人流・物流に与える影響として、自動車分担率の増大、非効率的な自動車利用等が挙げられる。こうしたニーズの増大を止める方法や、分担率を低くする方法などをキーポイントとして政策を整理することとする。
都市交通システムと都市計画との関連を見ると、アメリカ型の都市構造のように分散型、低密度で土地利用が分断している場合は一人当たりのガソリン消費量が高いが、日本やアジアは、高密度な都市であることから、公共交通が発達しており、アメリカの7分の1とか6分の1程度で済んでいる。10年、20年という単位で見れば、都市計画は大変重要であり、都市がコンパクトであるということが長期的には大変重要なエレメントであると考えられる。
次にOECDの持続可能な都市交通施策に関する調査を参考に施策を分類すると、交通需要管理といわれる効率的な交通に関する施策、効率的な運用に資する交通網の整備という意味での交通システムの整備、既存交通施設の効率的利用のための交通システム運用・管理となるが、この3つは交通システム、施設の整備、サービスの提供のあり方に関することと、それを目的に合わせて使い方を変える部分であるといえる。また、これらのもととなる施策として、土地利用・都市計画でもともとの交通の発生あるいは交通の必要性を減らすもの、あるいはプライシングメカニズムで、交通機関や駐車場の料金を操作することによって需要を誘導するという考え方もある。
自動車単体に関しては、いわゆる燃費規制とか排出規制だけではなくて、むしろ自動車の運転の仕方によって排出量を減らすということが考えられる。
総合施策としては、計画的に都市計画をし、交通とうまく一体化していくような全体的な仕組みとして整理している。
具体的には、職住近接を含めて交通ニーズ全体を減らす。その中で、自動車の分担率をできるだけ減らす。公共交通機関等他の手段を使ってもらう。非効率的な自動車利用を変更してもらう。運転の仕方に関する啓発により自動車単体あたりの環境負荷物質を削減するということが考えられる。
いずれにしても、一つの施策で目標を達成することはできなくて、いくつかのものを組み合わせる。交通システムの供給に関わるもの、需要面に関わるもの、プライシングメカニズムを含めた全体の仕組みとか計画、その3つの大きな政策分野があるが、それらを全体的に総合化するパッケージ型アプローチが必要であると思われる。
この報告書では、交通と環境問題の全体的な状況、2番目に都市交通施策の現状の点検ということで、具体的な施策の目標とか施策の分類をし、5つの大きな目標、とらえ方、切り口、具体的な手法、7つの手法の分類を考えて分析している。
その後、ケーススタディとして、札幌市と金沢市を取り上げている。金沢市のような城下町では、道路整備も進んでおらず、公共交通もバスに限られるというところでも、バスをきちんと走らせるための道路すらなかなかない。バスレーンがうまく機能しないということも含めて、総合的な施策が必要だということがわかった。
現行交通関連施策の進捗状況を点検すると、従来施策は需要追随型の施策であり、交通システムの整備とか運用の面では努力しているものの、需要マネジメントへの取組はごく最近始まったばかりであるといえる。ただ、90年以降は、そういったシステムがいろいろな形で道路政策の中に取り込まれており、渋滞対策の中では、警察あるいは運輸省を含めて総合的な施策という点から様々な施策が展開されている。
特に都市サイドとの関係では、平成9年に都市計画中央審議会の答申で「都市政策ビジョン」が新たに出され、市街地の環境といった側面からの様々な都市交通施策の展開を図ろうとしていることがわかる。
従来は需要追随型で、道路整備といった交通の分散化、渋滞の抑制という視点が主に進められており、環境施策を一番の目玉にした施策は、従来はあまり進んでなかった。しかし、最近それを一つの目標にしようという動きがだんだん出てきているという状況が明らかになった。
施策手法の観点からの点検では、(ア)持続可能な発展のための交通施策項目の実施状況では、いくつかの個別施策は進められているが、複数のものを環境という観点から総合化するということでは進んでいない面がある。(イ)特に土地利用施策・都市計画あるいはプライシングといった面では、交通と一体的に進められていない。
アメリカ、イギリスでは大気汚染との関係で法的に厳しく整合性を維持することが求められているのに対し、日本ではまだ仕組みができていない。
今後の都市交通対策の提言としては、環境保全をいろいろな交通政策の中の目標の一つとしてきちんと位置付けていく必要があるということである。
その場合、モビリティの向上とか、まちづくりといった、それぞれのまちの目標との相互関係を考慮しながら、目標に関して、それぞれのまちで合意形成を図っていく必要がある。
特に環境との関係では、環境基準の達成レベルと年次を提示し、それに合わせながら他の施策を講じるという場合、ターゲットをしっかり組み入れた交通政策をはじめとした都市づくり全体の政策目標が設定できる。
また、「環境保全に配慮した施策体系の構築等」という中では、駐車場、交通規制、道路づくりなど自治体でやるべき部分もかなり考えられるが、その場合の財源に対して配慮していく必要があるということを述べている。
「各主体の参加・連携による都市圏レベルの施策の実施」というところ。これは従来の行政が、交通関係は道路建設行政とそれを管理する運用の行政、バスとかトラック等を含めた交通事業に対する官庁という形でかなりばらばらに行われており、自治体レベルでそれを横につなぐ必要があるということを述べている。
特に車との関係では、魅力のある代替的交通手段をつくっていく、あるいは、車とその他の交通手段を組み合わせるということを含めたマルチモーダルな交通システムをつくる必要がある。その場合、公共交通、歩道の整備、自転車道の整備といったものに対してなお一層努力が必要であると言える。
さらに、わが国が遅れている土地利用施策・都市計画の部分あるいはプライシングの関係の施策の検討をすべきであると考える。

【水環境の保全】(村岡委員)
 まず、「健全な水循環」とは、自然の水循環がもたらす恩恵が基本的に損なわれていないような状態である。
水は地球の表面を回っており、これを「水循環系」と呼ぶ。また、水が雨から浸透あるいは地下水になり、河川、湖沼、そして海域に至るまでの過程を「水循環過(ハイドロロジカル・プロセス)」といっている。ここでは、個々の空間や視点でとらえられる「水環境」というものが循環系の中で健かであるかどうかということを課題にしたい。
まず、地下水部分について、豊富な地下水を大量に使っている熊本地域を第1のケーススタディとし、湖として、日本で一番大きい琵琶湖とその流域について水循環の課題等を論議する。さらに、大体が下流に位置する大都市における都市活動と水の循環という立場から、大阪府下の寝屋川流域を対象にとらえてケーススタディとする。
 第1のケーススタディの熊本地方においては、最近、地下水を涵養する涵養地域の一つである農耕地の面積が年々減少しているだけでなく、森林地域そのものもかなり減少している反面、市街地・宅地など地下水を涵養しない地域が増えてきている。
このように涵養源の減少により、利用できる地下水が減っている。水収支のバランスをとるためには、涵養量を増やし、地下水の利用量を減らして河川の水を利用するという対策を講じる必要がある。
 地下水の豊富な地域である熊本には、学術的なデータがかなりそろっているため、科学的な知見が豊富で、水収支の計算も可能であり、予測値を挙げることも可能である。熊本県及び熊本市の担当者はこの保全目標を確立し、解決の具体的な施策として、いくつかの対策を挙げているが、情報提供、役割分担、各層の連携、基金制度などのあり方といった課題が残っている。
水需給のバランスを回復させるに当たっての、宅地確保と涵養面積の減少、農業生産の向上と硝酸性窒素による地下水汚染、豊富な地下水と原単位の増加などといったジレンマ、保全事業に対する支援システムのあり方の検討がこの熊本地方の大きな課題であると言える。
 次いで琵琶湖の事例。琵琶湖流域の大きな特徴は、北側と東側に日本海型の気象があり、冬に雪が多いということ、南の方では梅雨型の水涵養であるということの両面から豊富な水の供給があるということである。
しかし、現在の状況は、滋賀県の人口が増加し、森林面積が減少している。
 また、農耕地については、圃場整備はよく進んでいるものの、全体的には減少傾向にある。
琵琶湖については、水量だけでなく、水質問題も重要である。実際、環境基準をクリアしているのは、北湖におけるトータル燐の濃度のみであり、他の窒素あるいはCODについては北湖も南湖もクリアしていない。
 また、琵琶湖の総合開発という面では、治水対策、利水対策、地域開発事業に関する上下流の連携として、琵琶湖・淀川水管理会議ができており、琵琶湖あるいは琵琶湖の水の利用に際しての水循環への影響を討議している。
大きな湖沼の流域が抱える水循環課題は共通しており、森林・農地面積が減少するという事実に対して、とるべき施策、管理のあり方といったことが問題となる。
 今後は、上下流間の治水・利水、環境保全を水循環系の認識下において施策を推進していくことが大切である。
大阪府下の寝屋川流域が3つ目の事例である。この流域の特徴は、ほとんどが早い段階で都市化されたことである。その結果、蒸発散が減少し、地下へ浸透する水の量が50%から17%に減少する。したがって、これまで浸透していた雨が、すぐに川に出てくるため、100年に1回程度の頻度で起こっていた洪水が、同じ雨で年に2〜3回の頻度で起こるという結果になってきている。
 同様に三大都市圏においても、人工物による被覆面積が増加しており、浸透能が減少しているため、地下への涵養量は少なくなっている。
寝屋川の流域の水収支には大きな特徴があり、例えば1994年の大渇水の時には3分の1ぐらいしか雨が降らなかったにも関わらず、琵琶湖からの水の供給があったため上水としてとった水供給量は何ら変わるところがなかった。
洪水についても、大きな影響があるわけで、年を追って治水計画の基本量も上がっていくため、それに対する対策として、遊水池や地下に貯水池、河川を掘るという必要がある。
 寝屋川流域が抱えている水循環課題をまとめると、都市化の進行や都市用水の増大が治水事業や下水道事業を圧迫しているという事態があり、そのため今後は、治水を単独の目的とせずに、上下水道あるいは水環境保全事業と併せて総合的な立場に立って事業を展開し、自然状態に近づけるということが必要である。そのためには、大都市においては新しい都市循環系を模索するという課題が残ることとなる。
 以上、3つのケーススタディをもとに、全国レベルでの課題をいくつかの分野別に挙げる。
一つは、森林が徐々に荒廃の気配を見せているということ。この理由は、林業市場の構造の変化、林業従事者の減少、高齢化が考えられる。今後は、林業事業者だけにその責任を負わすのではなく、森林保全のための費用分担を考えていく必要がある。
 農業地域については、水田の生産調整、耕地の放棄、都市近郊の開発圧力等々によって面積が減っており、農業用水路の多様な自然の機能も失われつつあるので、そういったものを保全する必要がある。
 3番目の都市地域においては、都市型の水災害がだんだんと大きくなっており、それと並行して河川の低水位・枯渇という現象の解決策として、浸透性舗装、浸透ます、浸透トレンチというものを総合的に抱えていくという問題意識が必要である。
 ヒートアイランドの問題に関しては、都市構造物の集中、熱エネルギーの発散量、生産量の増加もさることながら、それを緩和する機能を持っている緑地、水辺、水面の減少が裏にあり、こうした問題の解決のためにも、正常な水循環系に戻していくことが必要である。
 河川、湖沼、地下水に関しても水量の不安定化等の問題がある。
 沿岸域においては、土砂の供給量が減少しているということが大きな課題であると思われる。
 次に、流域全体の保全としては、地下水と表流水の間に断続ができてはいけないということのほかに、水だけではなく、土砂も連続性を持たせて山から川、海へと運ぶ機能がなくてはいけないということで、建設省では、ダムの排砂機能を高めるような  構造物あるいは砂防ダムにおいても大きな岩石はとどめて、小さい土砂は出すというふうな工夫をしている。
上下流・行政と住民との連携については、もっと先行事例を収集し、望ましい手法を検討することが必要である。
人と水とのふれあいについては、多彩な水に関わるイベントはあるものの、水辺へのアクセスが改善されていないという事実がある。 4番目に、水循環に関する指標とか総合的な評価の手法を考える必要があるということ。現在のところ、学術的に非常に大きな課題であり、水循環を意識した評価手法としては、単に水量の問題だけではなく、生物多様性、自然浄化力、アメニティといった項目まで含んだ指標を作っていく必要があると思われる。
 5番目に、国土利用計画法のほかの個別法において、水環境に対して配慮は当然されておりますが、水循環という観点からの配慮事項については若干不明瞭です。したがって、関係行政計画における水循環の視点が必要である。
最後に、水循環施策の今後の方向については、
 1番として、健全な水循環の確保に係る基本的・共通的な考え方を確立すること
 2番目に、各省庁、各自治体の間の連携だけではなく、流域住民やNGO、企業、学識経験者等の適切な参加システムを確立させること。
 3番目に、情報システムの整備と情報の共有。
 4番目に、科学的知見を更に充実させるということ。
以上が必要であると思われる。

【各主体の自主的積極的取組】(猿田委員)
 ライフスタイル関連施策は、環境基本計画の「公平な役割分担の下でのすべての主体の参加の実現」に示されており、行政の支援施策として位置づけられているが、現状では、環境とライフスタイルの関係のみならず目指すべき方向や施策の体系も確立していない。そこで、今回の調査報告の中では、ライフスタイルと環境問題の所在を明らかにして、施策のあり方を考察した上で、施策の現況を点検し、今後の課題を示すという手法で検討している。
 まず、問題の所在は、環境問題が産業活動によるものから、都市生活型となり、国民の日常生活からの環境負荷が環境問題で大きな位置を占めるようになってきているというところにあると言える。
 資料によると、エネルギー消費やCO2 濃度の急激な増加がみられ、他方で資源の有限の有限性ということが指摘されており、現在の生活様式が持続可能でないということが明らかにされている。このため、今後、生活様式の見直しが必要であるが、ただ、資料に示されるように、所得水準が高くなると負荷が減少するものもあり、必ずしも現代的な生活がすべて環境問題を起こしているとは限らない。
 西欧諸国の例からも言えるように「生活水準の高い生活」と環境負荷の少ない生活は相反するものではなく、問題は、環境負荷の多い生活様式をいかに改善していくかということであると言える。
 次に、生活様式の変遷と今後の変化について見ると、まず、戦後アメリカ的な生活が目標とされ、大型の家電製品に象徴されるような大量生産・消費・廃棄の経済社会が指向され、我々の生活に大きな影響を与えており、こうした生活様式の変化が、環境への負荷の増大をもらたしたということが言える。
 このような生活様式は、今後も基本的な方向に変化はないものと思われる。
この問題を検討するに当たって、生活様式が環境負荷とどんな関係があるのかということを生活様式関連の主要な環境負荷であり、比較的データがそろっている二酸化炭素の排出という事例を分析し、考察を行うこととする。
 資料によると我が国のCO2 排出量のうち、家庭での電力、燃料消費からは全体の13.1%に当たる約4350万トンを排出しており、国際的には一人当たり排出量では日本は途上国の3〜9倍の排出量であると言える。
 用途別では、照明、電気機器、冷暖房、給湯、厨房などで、燃料別では、電力、石油製品が多い。また、自家用車の燃料消費、食品や製品の製造、流通等からもかなりのCO2 が排出されており、我が国全体の排出量の約半分が生活に関連していると考えられる。
 生活関連のCO2 排出量は近年、他部門と比べ目立って高い伸びを示しているが、基本的には、戦後の生活様式の変化による要因があると考えられ、特に、ここ数年の増加要因としては、世帯数の増加、それもエネルギー効率の低い少人数世帯が増加している。家庭電気機器の多機能化・大容量化、自家用車の普及によって、世帯当たりのエネルギー効率が悪化している。
 次に、ケーススタディについては、作業量の問題等から「冷房」という特定の生活行動に絞り込んで、CO2 排出に関連する生活行動を具体的に分析している。
ケーススタディ資料のチャートは、冷房に関する行動について何が選択の要因になっているのかを表したものである。
 まず、人が暑いと感じたとき、対策を講じる、講じないという選択があり、次に、対策を講じる場合、冷房機器を購入するか、しないかという選択がある。昔は、風通しの確保とか、打ち水や夕涼み等で暑さをしのいでいたわけだが、現在、このような行動は難しくなってきており、直接的に機器による冷却が行われることとなる。
 機器の選択に当たっては、消費者は、価格が安いもの、あるいは機能の良いものを選択する。CO2 の面でこの選び方を見ると、省エネ型機器の中でかなりのCO2 削減が期待でき、また、環境庁の調査結果では、約半分の消費者が省エネ型の機器を選択するなど、CO2 排出の少ない選択がかなり行われているようである。これはメーカー側の努力とともに、省エネ機器の価格が必ずしも高くないこと、あるいは省エネ機器の購入で節約できる電気代がある程度のインセンティブになっていることが考えられる。
 しかし、一方では、消費者に対する情報提供は、十分に消費者には普及しておらず、特に製造から廃棄に至る環境負荷を含んだ情報、ライフサイクルアセスメント(LCA)的な情報に関しては、まだ不十分であると考えられる。
 次に、機器の使用の際に考慮されるのは、快適性の確保や利便性とともに、電気料金の節約も問題になってくるものと思われる。これをCO2 という面から見ると、省エネ型の機器使用は、例えばエアコンの設定温度を1℃高めにすると約10%の省エネになると言われているように、かなりの効果が期待でき、このような行動に関する情報はあまり徹底してないという調査結果もある。また、このような行動が、室温を高めに設定あるいはエアフィルターの掃除といった、快適性・利便性を低くする行動である反 面、見返りとしての電気代の節約はそれほど大きいものではないため、インセンティブとなりにくい面もある。
このように、生活様式は、個人が選択するひとつひとつの生活行動から構成されており、生活様式を理解するには、行動のもととなった判断とその要因を分析する必要がある。
 つまり、生活様式は、実際には、機器の価格、情報の有無等の外的要因にもかなり影響されているだろうと考えられる。
生活様式に大きな影響を与えるものとしては、他に社会的な指向、慣習といったものがあるが、それが環境にやさしい方向を向いてないことが多いという問題もある。
 昔「3種の神器」とか「3C」とかいろいろ言われた時代もあったが、耐久消費財の普及の背景として、生活の必要性だけでなくて、それをそろえること自体が「目指すべき生活」という一つの目標になっていた。
また、生活様式と環境負荷の実際を見ると、生活からの環境負荷はCO2 に限らず様々なものがあり、自動車の問題や水の問題もかかってくる。
 生活様式は、基本的に個人が選択するものであり、公権力により強制すべきものではないが、各人が選択する中で、社会全体の価値観とか経済社会のあり方にかなり規定されるものであるため、行政としては、この面から生活様式に関して一定の政策誘導を行う余地があると言える。
 すなわち、環境に関する的確な情報提供、環境教育等を通じて、望ましい生活様式に関する国民のイメージ及び行動意欲の形成を支援することは、行政として可能であり、国民が望ましい生活様式に移行し、それによる生活を営みやすくするために必要な経済社会への転換を推進するという面から行政として施策を講じていく責務があるものと考える。
施策の現況については、環境基本計画では「生活様式の見直しの必要性」について環境政策の基本方針等で記述があるが、施策の目標、考え方など、施策を具体的に行うための記述がなく、各論である「施策の展開」でも同様に、いくつかの分野で記述があるものの、施策の方向付けや具体性がなく、生活様式を規定している要因に対して、これらの施策が有効であるとは考えにくい。
 次に、実際に行われている施策について整理すると、廃棄物・リサイクル対策は比較的取組事例が見られるが、CO2 削減策は、この分野独自の取組は進んでいない。
施策手法としては普及・啓発というのは見られるものの、経済的手法はほとんど見られない。 また、全体としては施策の数も内容もまだ十分とはいえない状況にある。
 持続可能な経済社会を実現するための生活様式に向けて、環境面から見た「望ましい生活様式」については考察や提言が今までも頻繁に行われており、いくつかについては既に国や国際機関等が取り入れ、コンセンサスが形成されつつある。
行政は、このような「望ましい生活様式」に関する議論の内容を勘案しながら、望ましい生活様式のあり方について検討していく必要がある。
 生活様式は、国民の価値観によるもので、最終的には、その国のあり方全般に関わってくるものでもある。同時に経済社会システムと生活様式は相互に影響し、規定し合うものであると考えられる。
したがって、生活様式を変更していくためには、生活者の日々の選択を規定し、あるいは影響を及ぼしている要因そのものを施策のターゲットとしてとらえて施策を講じていくべきであり、具体的には、国民の価値観への働きかけと経済社会システムの変更という両面からの対応が必要であると考えらる。
 各主体の役割については、まず、国と地方公共団体は、施策の主体として、「望ましい生活様式」のイメージの提示や的確な情報提供あるいはNGO等、各主体への支援、経済社会システムの転換のための施策を行うことが求められ、特に、地方公共団体は、国民に最も近い行政主体として、地域特性を踏まえたきめ細かい施策の推進に大きな役割を果たすことが期待される。
 事業者については、自主的な取組とともに、行政の施策を受けて、製品の各段階を通じた環境負荷の低減、また、それらに関する情報の提供等によって、国民が環境負荷の少ない生活様式を選択できるような環境を整備することが求められる。
 次に、非営利的な民間団体については、草の根的立場を活かしながら、国民への情報提供の取組とか、望ましい生活様式に関するイメージや実践活動の提案、普及への取組、そういうものに対する協力が求められる。
 具体的な施策手法としては、情報提供型手法と社会制度型手法が考えられる。
情報提供型手法は、国民及び各主体を対象に適切な情報提供、環境教育、拠点整備、人材育成などを行うことによって、的確に環境情報を提供し、それぞれが適切に自ら行動を選択できるようにすることが最大の目的である。この手法は、効果が出るのに時間がかかりますが、直接国民に働きかけることが可能である。
 社会制度型手法は、国民が持続可能な経済社会を実現するための生活様式を選択できるように、税制、助成金、補助金といった経済的措置、規制的措置などによって、経済社会システムから慣習に至るまでの「社会の仕組み」を変革することが最大の目的となる。
 今後、21世紀に向けて環境負荷の少ない持続可能な社会をつくっていくためには、国民の生活様式を転換していく仕組みが必要であり、そのためには、国民の価値観、経済社会の仕組みそのものを転換していくことが求められるものと考える。

〔休 憩〕

○各重点審議項目について、自由討論。
(部会長)
本日御審議いただく目的は、次回の部会で提出する予定である点検の素案に盛り込むべき、視点・論点を中心に御議論いただくということである。

○ 点検作業の目的は、現在の環境基本計画を1990年に見直すために、これまでの計
画がどのように実施されてきたか、実施されてこなかったか、どこに欠点があるか、こういうことをはっきりさせていくということであろうと思う。
 今日の3つのテーマについての報告により、従来問題だと言われてきたことが非常にクリアになってきたという意味で、大変結構だと思う。とりわけ水の循環について、「循環」という文脈の中に水環境の問題を取り入れることの必要性がこれほど明瞭に問題として明らかになったということは、大変重要なことである。また、交通問題についてもたびたび交通部会や騒音振動部会などで答申を出しながら、対策が進まなかった原因が明らかになった。
ただ、分析は極めて明瞭だが、施策については抽象化されているという印象が強く、今後の議論の中で具体的に提言ができるような方向にしていく必要がある。
 ライフスタイルのところは、トップダウンでものを考えていくのではなく、やはり啓発・普及という地道なシナリオが重要であると思う。
 一方、交通の話は、同じ側面は確かにあるが、こちらは社会システムとしての規制ができる道具を使う以上、啓発・普及というような話にとどまらないと思う。
また、ロードプライシングのシステムなど様々な手法があるにも関わらず、経済的手法は炭素税一本やりで議論されがちであるが、それはおかしいと思う。例えば、用地取得、軌道を敷くところから、全部自己資本で行う鉄道事業者が、高速道路の建設費を負担しない乗合バス事業者と競争させられている現実があるにも関わらず、大量輸送機関へのシフトという議論はどこかおかしい気がする。
 また、例えば高速道路の料金体系は本当に適当なのかということは、コストだけでなく政策的にどうかという切り込みをしていく必要がある。点検報告をまとめる際には、従来言われていることを並べるのではなく、具体的なアクセントをつけていく必要がある。

(部会長) もう少し具体的に書いたらどうかということを箇条書きにして事務局に御提
出いただければありがたい。

○ 努力目標という非常に漠然とした概念ではなく、具体的に数値化され、定量化された
目標値をライフスタイルの部分に盛り込めればと思う。

○ ライフスタイルの各主体の役割部分について、できればあえてここで国の事業者とし
ての責任と自覚をもっと厳しく書いていただけないか。

(猿田委員) 国の事業者としての側面については、環境基本計画の中でも事業者の側面
からの記述があるので、その辺は特に強調してなかったが、責任並びに自覚を促すべきであるという御指摘であるので、部会長の方で点検報告素案作成の際に御配慮いただければと思う。

○ 車依存型社会になるか否かにとって、中心市街地の空洞化と大規模商業施設の郊外立
地の問題は非常に重要である。中心市街地の空洞化等の問題については一応制度的には大店舗法の廃止と都市計画法の改正で自治体に任されるが、先程の都市内交通に関する報告で展開された論理で、車依存型社会について考えるべきであるということを点検報告に盛り込むべきではないか。
 また、確かに都市計画法や土地利用計画が問題の根本にあることは間違いないと思うが、行政にずっと携わり、68年以来、新都市計画法の施行過程を見ていると、建設省も農林省もコンパクトな都市づくりを目指していたにも関わらず、現実はそれと全く違った形になってしまった。
都市交通問題はこの過程の分析を踏まえて取り組まなければ有効な対策は組めないと思うので、その辺について、もう少し掘り下げてほしい。
 第3点として、「循環型社会」における日本経済のあり方について説得力のある論理を展開しておく必要がある。これは点検報告に盛り込むべき論点という議論からは少し外れた問題であるがしないと、各経済官庁に対して説得力がないのではないか。これは報告書にどう書くかとはちょっと外れた問題であるが、問題提起しておきたい。

○ 都市交通に関してのところで、住むところと交通手段とそれにまつわる環境の問題を
整理しておく必要があるのではないか。
 また、生活様式のビジョンをつくる際には、夢や好みなど、実用的か否かで割り切れない部分について、代替するものを作り、使用する場合の環境負荷についても盛り込んだほうが理解しやすいものができると思う。

○ 水循環の報告を伺っていて、水循環を確保、回復するにはかなり総合的な枠組みの下
での対応が必要ではないかと感じた。健全な水循環の確保・回復のためには、上流、下流一体となった対応や各主体の連携が必要になり、水濁法、湖沼法、森林法等の様々な個別法を、更に総合的な枠組みとしてまとめていくことが必要である。これは「都市交通対策」や「国民のライフスタイル関連施策」でも同じようなことが言えるのではないかと思うので、総合的な枠組みの必要性を点検報告の中で明確にしておく必要がある。
 また、先ほどの話にあった、国の率先実行計画などをいかに実施するかということも必要だと思う。

○ 情報技術が進んだときにどういう輸送体系ができてくるのか、あるいはライフスタイ
ルがどう変わるのか等、これから情報技術が非常に進歩していったときに、環境関係で起きる変化について、もしできるならば、将来予測を含めて一度検討してみてはどうか。

(部会長) 今の提言を検討する際には、情報化に強い人にもぜひ相談をしてやって欲し
い。

○ 私も少し考えてみて、また事務局と相談させていただく。

○ 今環境問題を考える上で様々な問題が提起されており、目標を設定し数量化し、その
達成目標時期を定める所までは行われているが、それを具体的にどうやって担保するかという問題になると、教育、普及等の手段では不十分で、その辺が不満の原因となっている。今回の点検は第3回目であり、そろそろ個別的に具体的な施策手法、手段に立ち入らないと、いつまでたっても観念論に終始し、「中央環境審議会は絶えずこの種のことで堂々巡りをしている」と批判されかねない。
 例えば、猿田先生の報告の中の「具体的な施策手法」において、情報提供型手法と社会制度型手法というのは、両方併存してこのとおりだろうと思うが、さらに言えば、経済的措置と規制的措置、経済的措置の中でも税制、助成金、補助金等について、これらをどのぐらの時点でどうするかという腹構えが固まらないと、恐らくいつまでたっても我々の不満は解消しないと思う。
炭素税に対して、経済界等は危機意識を持たれているようだが、その他の施策になると、ロードプライシングなどという価格づけで処理しようというのも重要な措置なので、こういうところも踏まえて、対象と手段、目標と手段という組み合わせで徹底的にやらないと、いつまでたっても進歩がない。これは部会長の御判断次第であるが、ここを逃げていてはだめだと思う。

(部会長) 点検は、いろいろな施策の検討なので、例えば、ロードプライシングでもい
いし、あるいはライフスタイルでもいいが、そのときの手法として考えた場合の具体的な提案を書き込んでもいいのではないか。 今回の点検において、3つの重点審議項目としたのも、今までのように総論的な話ではなく、ある部分では具体的にやってみようという目的がある。今後、環境基本計画の見直しのいわば訓練、練習ということもあり、ぜひやってみたらどうかと思う。

○ 「国民のライフスタイル関連施策」に係る報告の4ページ目に、NOx 、SOx を例
に生活水準が上がっても必ずしも環境負荷が増大するわけではないという記述があるが、生活水準が、ある程度人の意識を通しながら生活様式に影響を与え、また、生活様式が次の新しい生活水準を生み出していく関係があり、所得と環境負荷ということだけで、生活水準が上がっても環境負荷が必ずしも増大しないというような言い方をしてしまうことは、必ずしも正しくないのではないか。むしろ生活様式を通して別の形の環境負荷を与えていることを見逃してはいないか、懸念する。
 したがって、生活水準をこういう形で位置づけてしまって、フロー図の中に入らないというのは、ちょっと心配な気がするので、どこかに加えていただくように希望する。したいと思います。

(部会長代理) 私も、そろそろ具体論に入って、方策の提言にこぎつける努力をしてい
くことが必要であろうと思う。温暖化対策を念頭に置けば、経済的措置が非常に重要であると思う。個別の方策としては、既に開発され、実用化されてはいるが、価格が高いためになかなか普及しない環境保全技術がいろいろあり、今の社会システムを転換して高コスト問題等を乗り越えて、大量普及を早期に進めることを考えていけば、対策が非常に前進する可能性があると考えている。
 ただ、今はとりあえず環境基本計画の第3回目の点検作業をしているので、3つの重点審議項目について、できるだけ具体的な報告を取りまとめる努力をし、それを環境基本計画の見直しに生かしていくべきである。そして別途あるいは点検報告の審議後に、温暖化対策について、国際的な協議の状況をにらみながら、基本的な取組の枠組みを固めていく必要があると思うので、その中で、具体的な方策をこの部会でも徹底的に議論して具体化していくことが必要であると考えている。そういう意味で、先ほど森嶌部会長がおっしゃったような線で整理されていっていいと思う。
 都市内交通対策に関して、都市でNOx 対策とCO2 対策を同時に進める対策としては、トヨタの「プリウス」等の低公害車の大量普及がある。そもそもプリウスはカリフォルニア規制をクリアする1つの方策として開発が進められたと思うが、このカリフォルニア規制の場合は供給面における販売義務だけであるが、ユーザーサイドの需要創出方策を組み合わせ、需要・供給の両面から 具体的な方策を考えていくという方法もあるが、これはどう考えたらよいか。
「都市交通対策」に係る報告において、OECDでいろいろな施策に関する国際的な検討が行われたということであるが、カリフォルニア規制について、どういう検討・評価がされているか、情報があれば教えてほしい。
水循環については先日、熊本で開催された当部会のブロック別ヒアリングに参加させていただいた。その際に、地下水については現在きちんと規制がなく、いわば土地の所有権に委ねられているが、地下水の採取についても、地下水が量的に不足してくるという面があり、排水についても、問題のある物質の流入・拡散という大変大きな問題になるので、総合的な公的な管理が必要な状況にきているという指摘が意見発表者からあった。こういう地下水の公的総合管理の必要性について、どのようにお考えになっているのか伺いたい。
 また、報告では、琵琶湖において長年行われてきた総合開発事業が打ち切りになったとのことであるが、これからのことを考えると、上流域と下流域の地方公共団体・地域住民が協力し合って適正な水管理を行っていくことがますます必要になる思われるが、総合開発事業の打ち切り後、そうした仕組みが新しく構築される見通しになっているのかどうか、教えていただければと思う。

(太田委員) 今回の点検は、従来施策がどんな分野に及んでいるかどうかということを
中心に検討しているので、新しい施策についての具体的な提言は余りしていない。ただ、私ども、OECDのレポートなどを勉強していると、どうも日本では考えられていないような様々な実行手段を伴った施策が進められていることがわかったので、そういった方面で更にまとめたらと思う。
 今回のレポートでは、交通単独だけではなく、環境、まちづくりについても一緒に書いている。その中で土地利用、既成市街地の問題、ロードサイド店や郊外ショッピングセンター等との関係で、各自治体が主体になって、まちづくりの中での環境と交通の利便性との調和について議論すべきであると考え、そんなスタンスで報告をまとめているので、今後、その辺を具体的なもので検討する余地は十分ある。
 最後に御質問のあった、特に低公害車の大量普及に関する検討・評価については、今回の報告は、単体そのものに関する施策は別にして、それを前提にした検討であるが、OECDではまた別途、低公害車の大量普及についていろいろな検討を行っているので、その辺についてはまた別途勉強したいと思う。
 ただ、この都市交通対策に関する報告で、アメとムチの組み合わせをうまくやることが一番大事であることを協調した。その前提としてターゲットがある程度明確になって、その合意が得られるかどうかということをかなり強調したつもりだが、ターゲットが決まると、それでは具体的にどこまで施策をやろうかという話になる。
 私は利用者に直接訴えるには、最後はロードプライシング等の経済的的措置が必要になってくると思うが、お手元にあるOECDの「都市交通と持続可能な開発」というレポートでも、最終的には持続可能な開発のためには、やはり経済的なインセンティブを多様に展開していくしかないという形でまとめられており、各国でもそういった議論がかなり広がっている。今日御紹介したロードプライシングをはじめ、パーキングのプライシングの問題等、いくつか関連したものを整理して、機会があれば発表したいと思う。

(部会長) 当部会で法律案などを検討するということになると、各省庁の調整を経て、閣議決定までたどりつかなければ生き延びないということはあるが、施策の考え方を将来どうすべきかということについて、中環審で先生方の合理的な御判断をもって、あるべき姿を示すということについては、制度的にも制約があるわけではないので、今の太田委員のお話も含めて、この際、例えば、我が国で規制の話が出ると、規制はまかりならんという話が出てくるような風土も含めて検討する価値があるし、そうしなければ物事が動いていかないのではないかと思う。今回の点検もその一つだが、ぜひ各委員の自由な御発想を承りたい。

(村岡委員) 地下水の公有化というのは重要なことであるが、法律的にもっと上位のレベルで地下水というものを考える際に、私有化あるいは公有化というものをまずはっきりすべきだと思う。
 それがはっきりしていないために、対策の方も極めてあいまいであり、熊本でのブロック別ヒアリングの際の現地調査で見ていただいたたように、民有林を借り入れて、そこに基金を投じて細々と涵養源を増やす取組が行われている。これは、量的にみれば、取るに足らないものであり、もっと大がかりな対策を講じる必要がある。
 また、琵琶湖の総合開発については、1兆円を超えるような国家的事業であり、この25年間、裁判にも、雑多にもなり、いろいろな問題を提起しているが、基本的には、治水・利水、そして地域の環境保全ということでバランスをとったような形で終わっている。下流の水を得ることの代償に、琵琶湖、滋賀県の地域の環境保全でその代償を支払うという構造でその仕組みが成り立っていたが、それが一たん終わり、権利そのものについては、そのまま続いていくことが予想されるが、琵琶湖・淀川環境協議会というものが以前から構成されているなど、今後の琵琶湖について、琵琶湖を抱える滋賀県などは非常にシビアに考えているようである。
 というのは、水は取るようにできたけれども、水位の変動、湖岸に及ぼす環境問題、内湖の問題、ヨシ群の問題、あるいは琵琶湖固有種の生息地域である水辺の環境悪化がかなり問題になっており、こういったものをこれからどのようにに制度化し、琵琶総の後にくるようなものを考えるべきかということについて協議されているものと思われる。 琵琶湖・淀川環境協議会の現在の動きをもう少し勉強することから先のことを考えていきたいと思っており、事務局と協力していきたい。

○ 村岡委員の報告書に100%賛成するものであるが、先日、建設省の河川審議会のあ
る委員会において、森林の保水力の問題、ダムとの比較の話や針葉樹林と広葉樹林の保水力の差について話が及んだ時に、森林の保水力とダムとの比較の話で、保水力重視の意見についてははなはだ疑問であるという話が担当局長からあり、当事者が余り積極的でないような印象を得た。この問題は大変難しい問題だと思うが、どういうふうに考えておけばよろしいか。
(村岡委員) 先ほど報告したように、森全体は、むしろ増えているけれども、広葉樹林
の面積が減っているということは、開発のせいだと思われる。広葉樹林は水の保有力が非常に大きく、大気から降ってくる諸々の負荷に対して浄化型であると言われている。
したがって、人工樹林に関しても、その辺のことをしっかり見通した上で、今後の森林対策を講じていかないといけないと思う。

○ 森林の蒸散・蒸発は、ダムとの比較ではどうか。

(村岡委員) 水面から蒸発する量の方が森林から蒸散する量よりも少ないが、森林の代
わりに水面を作ればすむという程簡単なものではない。

(部会長) 本日の御議論でとりまとめについてある程度の方向は出てきたが、他にお気
づきの点があれば、事務局の方にお寄せいただければ、それをとりまとめて次回にドラフトを御提示したいと思う。

[2] 温暖化対策推進法の説明
(部会長)
それでは、本日、閣議決定された「地球温暖化対策の推進に関する法律案」について、御説明をいただきたい。

○事務局より、「地球温暖化対策の推進に関する法律案」について説明。

(部会長) ただいまの御報告について、御質問、御意見等がございましたらどうぞ。

○ 4月16日に新聞のニュースを見るまで、中間答申を受けた作業のプロセスは見えなかった。作業が非常に困難であったということは聞こえてきているが、中環審の委員に向けては経過報告が欲しかった。
 また、これは事務局に対してのコメントだが、「地球温暖化対策の推進に関する法律案」については、今日の議題の中でも、(2)その他の中で扱うという形ではなく、非常に重要な項目であるということに鑑み、同法律案を議題として掲げるべきである。

(部会長) 議題につきましては、今日閣議決定だということなので、まだ決定されていないものを公の場で報告するというのはいかがかということがありまして、議題の表示の仕方としては「その他」ということにさせていただいている。

(事務局) 本日の閣議決定すらなかなか定まらなかったこともあり、議題に入れられなかったことについては、重々おわび申し上げたい。
また、中間答申に至る間は完全公開であったが、政府部内の作業になり、少し音信不通ということになって御心配をおかけしたと考えている。しかし、これはあくまで基礎工事で、この後、6%に対応できるような施策を作っていくということになると、6%削減方法について、市民立法の方々を始めとした、いろいろな御提案があることについては承知している。私どもとしては、中環審で引き続き、大きな話題である総合法制に向けた検討を極力いろいろな方々の御意見を聞きながら進めていきたいと思う。しばらく連絡が不行き届きだった点についてはおわび申し上げたい。

(部会長) それでは、点検に関する本日の各委員の御指摘を踏まえ、私と安原部会長代理と事務局で相談し、第3回点検報告のたたき台を次回の部会に提出したい。次回の部会では、たたき台について御審議いただき、その次の部会で、御意見を踏まえた修正案を出し、できればとりまとめたいと考えている。
 なお、たたき台を作る上で、盛り込むべき視点、論点等について御意見がございましたら、事務局までお寄せいただきたい。
以上

<本件に関する問い合わせ先>
中央環境審議会企画政策部会(環境基本計画関係)事務局
(環境庁企画調整局環境計画課)

TEL 03−3581−3351  FAX 03−3581−5951
 課 長  細谷 敏郎(内線6220)
 計 画  官今 田長英(内線6227)
 課長補佐 飛島 雄史(内線6228)