中央環境審議会第79回企画政策部会会議録

1.日  時  平成12年6月14日(水) 14:00~17:00

2.場  所  中央合同庁舎第5号館2階 講堂

3.出 席 者

(部 会 長)森 嶌 昭 夫
(部会長代理)安 原   正
(委    員)浅 野 直 人
小 野 勇 一
幸田シャーミン
塩 田 澄 夫
中 野 璋 代
福 川 伸 次
星 野 進 保
三 橋 規 宏
和 気 洋 子
天 野 明 弘
北 野   大
小早川 光 郎
鈴 木 継 美
平 岡 正 勝
藤 井 絢 子
松 原 青 美
宮 本   一
渡 辺   修
(特別委員)飯 田 浩 史
猿 田 勝 美
横 山 裕 道
太 田 勝 敏
廣 野 良 吉
(専門委員)河 野 正 男
西 岡 秀 三

寺 門 良 二
(環 境 庁)岡田事務次官
太田企画調整局長
廣瀬大気保全局長
小林官房審議官
富田企画調整局企画調整課長
竹本地球環境部環境保全対策課長
上田環境保健部環境安全課長
鈴木大気保全局自動車環境対策第一課長
松本大気保全局自動車環境対策第二課長
塚本自然保護局自然ふれあい推進室長
小木津企画調整局調査企画室長
大林企画調整局環境計画課計画官
丸山官房長
松本自然保護局長
西尾環境保健部長

櫻井大気保全局企画課長




細谷企画調整局環境計画課長

4.議  題

(1)環境基本計画の見直しについて
(生物多様性の保全検討チーム報告・環境への負荷の少ない交通検討チーム報告・化学物質対策検討チーム報告等)
(2)その他

5.配 付 資 料

生物多様性の保全検討チーム報告書
環境への負荷の少ない交通検討チーム報告書
化学物質対策検討チーム報告書

6.議  事

【細谷環境計画課長】 時間になりましたので、第79回企画政策部会を始めさせていただきたいと存じます。
 開会に先立ちまして、お手元に配付しております資料の確認をさせていただきたいと存じます。

(配付資料の確認)

 資料は以上でございますが、もしお手元にそろっておりませんようでしたら、お申し出いただきたいと存じます。
 それでは、部会長、よろしくお願いいたします。

【森嶌部会長】 それでは、ただいまから第79回企画政策部会を開催させていただきます。
 本日は、前回に引き続きまして、環境基本計画見直しの各論的事項について、各検討チームで御検討いただいておりましたテーマについて、それぞれの主査から御報告をいただく予定になっております。御報告をいただいた後、この報告に対する質疑と併せて御意見も承るという形で進めたいと思っております。
 本日は、まず、生物多様性の保全検討チームの小野主査から御報告をいただきまして、次に、環境への負荷の少ない交通検討チームの太田主査から御報告をいただきまして、最後に、化学物質対策検討チームの北野主査から御報告をいただくことにしております。
 それでは、まず、小野委員、よろしくお願いします。

【小野委員】 生物多様性の保全検討チームの報告をいたします。このチームの結果は、どういうわけか知りませんが、随分早く新聞に出てきまして、結論が出ているようなことは皆さん御存じかもしれませんが、多少違うところもございますので、報告させていただきます。
 生物多様性の保全の重要性につきましては、「生物多様性」という言葉自身が先行して、中身がなかなか一般にわかりにくいというところがございましたので、特にその点に注意して議論してまいりました。
 人にとって「生物多様性」というのはどのような意味があるか、ということから話が始まるわけですが、「生物多様性」というのは、生態系の重要な基盤的な構成要素と位置づけられます。人間の生活とは直接的には緑色植物を通じての食糧の生産とか、遺伝子資源とか、水の循環とか、土壌の造成といったような形で関わり合いがありますし、間接的には、美的な、もしくは社会文化的な、学問的な、場合によっては精神的な、歴史的なという間接的な価値がございます。こういうふうな人にとっての生態系のいろいろな働きをひっくるめて私どもは「生態系サービス」という言葉で呼んでおります。このサービスなしにはすべての生物の生存は困難であります。
 また、「生物多様性」という言葉の中には、35~40億年といわれる生物の進化の歴史の所産がございます。これは上述の間接的な関わりと同じものであるかもしれませんが、地球の歴史的な価値という意味で、普遍的な意味をもっているものと理解されます。
 このような価値をもつ生物の多様性を保全しようとする取組が「生物多様性条約」に基づくものでありまして、我が国では「生物多様性国家戦略」というものが策定されております。
 環境基本計画は、その前年に策定されたものでございますので、生物多様性については、考えると書いてあるだけで、その後、生物多様性国家戦略ができたわけですが、その中では、保全に関する目標と施策を広く網羅的にまとめてあります。
 その後、これが策定されまして、我が国では、野生生物の種の多様性についてのいわゆるレッドデータブックというものの整備が進んできております。これは国レベルでは2度にわたってやっておりますし、地方においては各県単位、大きな地方自治体でレッドデータブックの把握の作業が進行中であります。それによって、絶滅のおそれのある種の保護・増殖事業が国のレベルで展開されておりますし、非常に重要な種類であるというようなものについては特に保全の配慮がなされております。
 その他、生物多様性に関する情報を扱う中心的な設備が国によって設立されております。それは山梨にございます「生物多様性センター」というものでございます。
 検討チームでは、現行の生物多様性国家戦略の目標と、その戦略に基づく施策のレビューを行いました。それに基づきまして、今後の保全に関する施策の展開について議論してまいりました。私どもの報告は、今後の環境基本計画の生物多様性の保全分野をどういう方向に向けたらよいかという方向性を示すとともに、生物多様性国家戦略の不十分な部分についての改訂の方向性も考えるという目的も持っております。
 そのような意味で議論いたしまして、結局のところ、生物多様性の保全は2つの側面があります。一方においては、絶滅に瀕した種の救済という面もありますし、学術的に貴重な種の保存という面もありますし、我が国における「ホットスポット」と私どもは呼んでおりますが、特に種類が集中した場所の保全ということも考えなければなりません。
 これが生物多様性の方の考え方でございますが、最初に述べましたように、生物多様性というのは、生態系の基盤構成要素でございますので、生態系全体の保全ということも考えないといけません。これが他方において、ということになるのですが、他方においては、生態系保全というものを十分に考えていかなければならないことになります。
 したがって、1つの新しい考え方という意味で、「エコシステムアプローチ」ということを提案したいと思っております。これまでの施策をさらに強化していくというのは、ただいまの2つの側面で説明したものを統一的にとらえる必要がある。そのためには、エコシステムアプローチという考え方が必要ではないかということでございます。これまでの施策のレビューの結果から、生物多様性の保全に係る課題としては、保護地域外、保護地域内という言い方をしておりました。この2点に関しては、特に生態系の健全な維持ということが不可欠であります。「健全」の定義についてはいろいろございますけれども、今ここではそれ以上のことは申しませんが、第5回生物多様性締約会議では、このエコシステムアプローチが原則として有用であると言われております。このアプローチは、人間の生態系の主要な構成要素として認識すべきであるということがまず第1番にきます。
 その次に、生態系というものは、人間が接していく場合は、管理しながら利用するということが必要不可欠である。その場合には、生態系の機能、構造を十分に認識した上で、これは生物の世界ですので、「不確定性」というものを非常にたくさん含んでおります。そういう不確定性を持ったものであるということを十分に認識して行う必要がある。このような管理の方式を私どもは「アダプティブマネジメント(順応的管理)」と呼んでおります。これがエコシステムアプローチの基本になると思っております。
 様々な主体で、特に地方社会が関わって生態系の管理をこれからはきめ細かく検討すべきことになろうかと思っております。管理に当たっては、社会的な経済的な側面を重視すべき点もまたエコシステムアプローチの重点であります。
 今後すべての生物資源、土地資源を扱う者が生物多様性の保全を考える上で考慮しなければならない原則としてこういうものを御提案申し上げるわけであります。
 報告書につきましては、事務局の方から説明していただきたいと思います。

【塚本自然ふれあい推進室長】 では、事務局の方から御説明申し上げます。自然保護局の自然ふれあい推進室長の塚本と申します。よろしくお願いいたします。
 お手元の「生物多様性の保全検討チーム報告書」を御覧いただきたいと思います。まず1枚めくっていただきますと、目次が書いてあります。この報告書は、「はじめに」のほかに4つの章から成っておりまして、「生物多様性の保全に関する施策の流れ」、「生物多様性の現状と推移」、次に「生物多様性国家戦略に基づく施策のレビュー」、最後に「生物多様性の保全にかかる施策の展開」をそれぞれまとめております。このほかに付属資料として、いま小野先生から御指摘のありました生物多様性条約のCOP5で採択された2つの文書、「エコシステムアプローチについて」と「外来種:予防、導入、影響緩和のための中間的原則指針」というものを最後に付けております。
 まず1ページ目ですが、「はじめに」というところでは、生物多様性の意味あるいはそれ自体の重要性、その保全の意味というものが簡単にまとめてあります。
 次に、2ページ目におきましては、「生物多様性の保全に関する施策の流れ」の概略を述べております。これは1993年に生物多様性条約を我が国が締結し、その後、生物多様性国家戦略を策定し、毎年レビューを行いながら、そのレビューの結果を公表しているということを述べております。
 次に、3ページから9ページまでに「生物多様性の現状と推移」というものを述べております。ここでは、我が国の生物多様性がどの程度危険な状態にあるかについて、主要な生態系の多様性と種及び種内の多様性の2つの側面に分けて述べています。
 まず、主要な生態系の現状に関しましては、環境庁が実施しています自然環境保全基礎調査のデータを用いて把握しております。3ページの下から陸域、森林と書いてありますが、それぞれの類型ごとに四角で囲ったものが5ページまで順番に書いてあります。詳細な説明は省略いたします。
 続きまして6ページですが、「種及び種内の多様性の現状と推移」について、6ページから9ページまでに記してあります。種の多様性につきましては、レッドリストに基づきまして、絶滅の状態を把握しております。その全体的な状況は、7ページ目にあります別表に数字として示してあります。中身を見てみますと、分類群によって差がありますが、絶滅のおそれのあるというランク付けがなされた種が全体の4分の1以上を占めている分類群があったり、あるいはメダカに代表されるように、身近に存在すると考えられていた種にも絶滅の危機が生じてきていることが、このレッドリストを作成する過程でわかってまいりました。
 それぞれの分類群ごとの状況につきましては、8ページと9ページに記してあります。詳細な説明は省略いたします。
 続きまして10ページ目を御覧ください。10ページから18ページにかけては、「生物多様性国家戦略に基づく施策のレビュー」を記してあります。ここでは、生物多様性国家戦略に基づく主な取組について、どんなことをしてきたかということをレビューいたしまして、今後の施策を展開する上での課題をそれぞれ整理してあります。
 四角で囲んである部分につきましては、それぞれのレビューです。これにつきましては、毎年公表していますので、説明を省略いたします。
 これらのレビューを踏まえまして、今後の課題を整理しております。その課題につきましては、19ページにまとめてありますので、19ページを御覧いただきたいと思います。最初に「課題の整理」として、今後の課題のことを書いてあるのですが、便宜上3つの側面に分けて課題を取りまとめております。1つ目は「国家戦略の目標と戦略効果的実施」の側面から取りまとめたもの、2つ目は「保全のための施策」に関するもの、3つ目は「共通的基盤的施策」の側面から取りまとめたものです。後でまた述べたいと思いますけれども、それぞれまとめました課題について、今後展開すべき施策がこの後に書いてあります。
 まず、課題の方ですが、「国家戦略の目標と戦略の効果的実施」に関しては、戦略の目標に到達する方法が必ずしも明確ではないので、各主体の施策が向かうべき方向性が定まらないことと、施策の効果を、例えば生物多様性の現状の推移として、指標を設けてモニタリングし、評価することが困難なことの2点が課題としてあげられました。
 次に「保全のための施策」についてですが、ここでは、生物多様性の保全上重要な地域について基準を明らかにし、保護地域化するための施策を進める必要があること。あるいは保護地域の連携(ネットワーク化)に関して、現実的な検討を進めていく必要があること。また、二次的な自然など、これまで保護地域の設定ではカバーできなかったような課題に対して、施策の展開がみられていないという御指摘も受けております。そのほか、様々な主体が取り組むべき施策の方向性を示すことが急務である点。あるいは多数の生物種を絶滅の危機に追い込んでいる現状をどのように改善していくかということについての具体的な取組が必要であるということなどが指摘されております。
 3つ目の「共通的基盤的施策」については、現状把握、十分な調査の必要性、あるいは調査の結果わかった情報を体系的に整理し、広く提供していくことが大事だということが指摘されています。併せて、これらの調査をするために必要な基礎的な調査研究を行う専門家の養成が重要であるという御指摘もいただきました。
 このような課題を解決するためには、「エコシステムアプローチ」が有効であるということが20ページ以降に書いてあります。エコシステムアプローチにつきましては、先ほど小野先生から御説明がありましたので、省略したいと思います。
 続きまして23ページです。これまであげられた課題に対する今後の施策の展開について、ここから後の部分に記述してあります。まず、「国家戦略の目標と戦略の効果的実施」については、3つの側面が必要であると言われております。まず1つは、目標の再検討が必要であろう。2番目は、目標に到達する道筋を明確にすることが必要ではないか。最後に、目標の達成状況の的確な把握がさらに必要であろうということが述べられております。
 次に「保全のための施策」につきましては、4つのカテゴリーに分けまして、それぞれの分野から今後の課題を検討いたしました。1つは、保護地域の中での保全の施策、次が、保護地域外での保全の方法、3つ目が、野生生物の保護管理について、4つ目が、影響の回避、低減と回復措置という側面です。
 25ページになりますが、まず、保護地域での保全です。ここでは、現行の保護地域の区域、管理方法を再検討する必要があること。また、保護地域間の連携化の検討を国土レベルで進める等の取組が必要であること。これらを進めるに際し、基盤的情報として、指標として選定する種の遺伝的多様性に関する調査が不可欠であるということが指摘されました。
 次に、保護地域外での保全に関してですが、ここでは、保護地域外での生物多様性の維持・回復が必要であるという必要性が述べられまして、二次的自然環境の管理の必要性についても触れられています。加えて、26ページになりますが、環境タイプごとの保全について、特に干潟など、面積が減少してきている環境タイプについては、量的な減少をとどめ、回復していくための方策の検討が急務になっているという指摘がなされています。また、重要な植生タイプの現状、推移について的確に把握するための調査が必要不可欠であるということが指摘されました。
 続いて、野生生物の保護管理に関しては、絶滅のおそれのある種の保存・回復への取組、野生鳥獣の個体群の科学的・計画的保護管理と被害問題への対応が重要であるということが述べられています。
 また、最近話題になっている移入種問題については、今年の5月にナイロビで開催されました生物多様性条約のCOP5に至るまで条約の締約国会議で横断的な検討事項として取り上げられていますように、国際的にも移入種問題は高い関心を集めております。第5回締約国会議では「中間的原則指針」が採択されまして、その中で、外来種による生物多様性への影響への対応については、外来種の定着の段階に応じて、まず入れないとか、入ってしまった場合の初期の撲滅による定着と拡散の防止、あるいはたくさん入ってはびこっているものを抑制する長期的制御措置というような3つの段階のアプローチが必要であるとの指摘がなされています。今後は、COP5で採択された中間的な原則指針も踏まえて、関係省庁が連携を図りながら、とれる対策を検討していくことが大事であろう、急いでやらなければいけないという指摘がなされています。
 保全のための施策の最後のカテゴリーの影響の回避・低減と回復措置につきましては、環境影響評価の技術手法の向上、環境影響評価の情報基盤の強化が必要と述べられています。
 最後に「共通的基盤的施策」についてですが、この分野につきましては、遺伝的多様性の調査の推進、生息域外保全の強化の必要性、さらに、生物情報データベースの構築が必要であるということが指摘されています。
 この報告書の本文はここまでで、以下、付属資料を2つ付けてあります。
 以上で説明を終わります。

【森嶌部会長】 それでは、ただいまの御報告に関して御質疑と併せて御議論いただきたいと思います。どうぞどなたからでも結構ですので。

【鈴木委員】 エコシステムアプローチが取り上げられたのは、非常にいいことだと思いました。私がちょっと気になりましたのは、我が国の生物多様性に影響を与えているかもしれない、あるいは与えるかもしれない要因としてどんなものに考慮しているのか、というあたりの記述がよくわからないところであります。例えば、人間も含めて、自然と文化のブランスも考えて、という立場に立ったときに、これから使われるいろいろな新しいテクノロジーの影響をどう評価するかというのは、非常に大きな問題になると思うんです。1つの例は、ジーンテクノロジーであります。ジーンテクノロジーが、例えば農業に導入される中で、生態系の生物多様性に対して与えるかもしれない影響みたいなものを我々はどう考えておくのかという問題が、この中からは見つからなかったものですから。
 もう1つは、これは後で北野先生が報告される化学物質の問題とも関連しますけれども、化学物質による環境汚染とそれに伴って起こる生物種の減少の問題は、かなり緊急の問題のように私には思えるのですが、今回の生物多様性の議論の中ではその辺はどう扱われているのか、その辺のところも聞かせていただけるとうれしいと思います。

【小野委員】 直接の答えになるかどうかわかりませんけれども、自然とか生物多様性を考慮に入れなさいということが環境影響評価法ではうたわれているわけですが、私どもが日常接するところでは、いろいろな事業を行っていく上で、平たい言葉で申しますと、刺し身のツマ的に扱われているような感じがする場合もございます。そういう認識があるからこそ、何か事業を計画して、例えばクマタカが出てきたとか、バラタナゴが出てきたということになりますと、そこで大騒ぎが始まるというのが普通なんですが、そうではいかんのではないか。むしろ、初めから自然というものが、自分たちが事業を行う相手全体として、その事業体自身もエコシステムの中に入り込んでいるのだという認識をもって考えていただきたいというのがエコシステムアプローチの基本的な発想なんです。その辺のところが御理解いただけるかどうか、私も自信がないのですが、説明不足かもしれません。
 ついでに言わせていただきますと、1つは、行政的対応が力不足であると私は思っております。というのは、生物多様性という場合に、貴重種とか絶滅に瀕した種類の対策も考えないといけません。基本的には、すべての種類が絶滅に瀕しないことだと私は思っておりますので、そちらの方にもっていくためには大変な努力が要るだろうと思っております。
 それともう1つは、今の健全エコシステムという考え方なんですが、その2つを同時にやるというのは、なかなか1つの部局では対応しきれないと考えております。だから、種の保全と生態系の管理という側面は、行政的にも少し工夫していただきたいという願いがありますので、ついでに申し上げておきます。
 例えば、地方自治体に参りますと、自然保護課とか緑地保全課とかいろいろあるのですが、御承知のとおり、大変弱体でありますので、なかなか対応できておらないというところがございます。その点は、こんなところで申し上げるのも悪いのですが、ついでに発言させていただきました。

【森嶌部会長】 レッドデータブックに挙げられているようなものは逆に増えて、全体としては種は減っているという現象については、最初に書いてあって、あと、対策が書いてあるわけですが、いま鈴木先生が質問されたように、例えばジーンテクノロジーの生物多様性に対する影響とか、化学物質の生物多様性に対する影響などをどういうふうに評価しておられるのかということはいかがでしょうか。

【塚本自然ふれあい推進室長】 鈴木先生の御指摘の点は、実は検討していないのです。それは10ページ目のところにちょっと触れたのですが、どの範囲を検討するかというのを最初にこのチームで御検討いただいたときに、遺伝資源の保存と利用の部分については、人間との関わりが非常に深いものなので、いろいろ難しい側面を含んでいるので、今回はあえていわなくてもよいのではないか、というような議論がなされたと記憶しております。それで、真ん中辺に書いてあるのですが、「利用」に特有の課題は少ないと考えられる
 ことから、ここでは、国家戦略の目標の部分、保全のための施策、共通的基盤的施策について検討いたしまして、遺伝資源の保存と利用を含む持続可能な利用のための施策については検討を行っていない、という整理をしております。10ページ目の記述とともに12ページ目の図を御覧いただきたいのですが、言い訳をしますと、点線で囲んだ「生物多様性国家戦略項目再整理」の1、2、3、5を今回検討いたしまして、鈴木先生の御指摘の4の3)の遺伝資源の保存と利用は、今回の検討の対象としなかった、という整理をしております。

【星野委員】 大変技術的なことをお伺いしたいのですが、21ページにエコシステムアプローチの12の原則がありますが、その中の原則4、これは33ページに少し解説がしてありますが、まず「経済的観点から生態系を理解し」という意味がよくわからないのです。後ろの解説を読むと、例えば「市場のゆがみを軽減し」というのは、生物多様性、人とか自然というものについて、市場ではなくて、多分、経済評価が低すぎるからゆがんでいる、こういう理解のように読めるわけです。それを受けて、さらに(c)、「可能な範囲で、生態系における損失と利益を内部化すべき」というのですが、まず、評価をどうするかということは、適正な評価がないと、多分、損失と利益も内部化できないわけですから、一体ここのところはどういうふうにお考えになられ、具体的にどのような実用化を図ろうとされているのか、多分大変な試みをやられていると思いますが、どんなことをやられているかお教えいただければと思います。

【塚本自然ふれあい推進室長】 大変難しい質問なんですが、まず、この文章の性格なんですが、これは締約国会議で全会一致で採択された文章で、英語をなるべくかみ砕いて翻訳したものですから、英語の原文とやや違うニュアンスが伝わってしまうのかもしれません。原則4の(a)の部分の「悪影響を及ぼす市場のゆがみ」というのは、いわゆる貿易障壁みたいな話をしているのではないかと考えまして、それについて何か具体的にやっているのかと言われると、私は即答できなくて申し訳ありませんけれども、貿易のゆがみを直すための国際的ないろいろな取組が挙げられるのではないかと思います。

【星野委員】 評価をするというのは、多分無理なのかもしれないという気もするんです。この原則は、大ぜいの人が作った原則だから、正しい原則だと思うのですが、経済的観点と結びつければ結びつけるほど泥沼に入って、実用化できないことになるから、先ほど先生が御説明になったような、むしろ生物多様性そのものを正面から擁護するようなことを言っている方がはるかにいいのではないか。経済と絡めると、必ず経済に負けるのではないかという気がするので。これは直感なんです。

【天野委員】 今のお話で、もちろん貿易による市場のゆがみというのも当然あると思いますけれども、ここでは、私の印象では、もっと広い話で、先ほど星野委員がおっしゃられたように、生物多様性に対する評価をしていない、ほとんどゼロ評価になっていて、非常に価値のあるものが価値のないような扱いを受けているというのが基本的な市場のゆがみだと思うんです。これはUNEPで決められたものですから、当然、欧米諸国の意見が強く反映されていると思いますが、御承知のとおり、アメリカなどでは、費用便益分析、先ほど星野委員は、そういうのをやれば経済に負けるとおっしゃったのですが、費用便益分析の中で自然の評価をきちっとやれば、非常に大きな便益が出てきて、環境保全というのが正当化できるという意見が強いわけです。
 米国とかカナダでは、政府のいろいろな開発政策等にそういう評価を必ずやることというのがありまして、方法自体はまだ開発途上ですが、例えば生物多様性を維持するときにどれだけの経済価値が生まれるかというのを評価に入れるわけです。アメリカの各省庁のそういった評価を全部合わせて、全体として行政的な手法でどれだけ費用と便益の差が生まれたかというと、評価を入れれば、ものすごく大きな環境保全をすべき根拠というのが出てくるというのはわかっているわけです。毎年、行政局がそういう評価をして、連邦政府全体として費用と便益の比率がいくらになっているかという計算もちゃんとやっているわけです。ですから、そういうことを先進国、途上国を問わず広げて行けば、市場のゆがみそのものを評価することによって、これまで以上に大きな環境保全への弾みがつくはずだという認識があると思うんです。多少未完成の手法であっても、それを使うことによって環境保全が進むような手法を導入しましょうという趣旨でこの原則4が書いてあるのではないかと私は思いますので、これをあまり矮小化しないで、「損失と利益を内部化すべき」ということの趣旨をきちっと理解すべきではないかというのが私の感じです。

【森嶌部会長】 天野先生に質問しますが、生物多様性のベネフィットといいますか、ある程度クオンティファイされた評価方法というのは、アメリカではもうできていますか。

【天野委員】 これはアメリカだけではありませんで、アメリカでもイギリスでもカナダでもそういう研究が進んでおりまして、学者がいろいろ開発していますけれども、実際にそれを使って評価している。しかも政府の関連部門が評価している。

【森嶌部会長】 日本ではやっていないのですか。

【天野委員】 日本でも研究が進んでおりまして、特に最近では農林水産省がこの手法に大変関心を示しておられて、研究もやっておられますし、具体的な例を取り上げても評価もしておられます。国内の学者でも、例えば湿地を保全するとどれぐらいの価値が生まれるのか、そういう評価もぼちぼち出てきておりますから、空をつかむような話では決してありません。

【森嶌部会長】 それでは、事務局の方も勉強しておいてください。

【廣野委員】 私は生物多様性の問題は完全に素人ですので、これから申し上げる点は素人の発言として聞いていただきたいのです。ただ、こういう問題は大抵ほかの素人の方も同じようにいろいろ疑問を持っていると思いますので、そういう意味で素人を代表して質問させてもらいます。
  10ページの(1)の「国家戦略の目標と戦略の効果的実施」という中で、一番下のところに(a)(b)(c)と3点掲げてあって、こういう長期的な目標に対してはだれも反対がないと思います。しかし、27ページに「移入種問題」というのが書いてありまして、私たちは新聞、テレビその他でこういうこともよく聞いているわけです。ところが、非常に疑問に思いますのは、そういうふうにはここに書いてありませんけれども、全体的に見ると、国外とか地域外から入ってくるものはすべて悪いのだ、だから、そういうものはできるだけ止めなければいけない、そして、在来の近縁な種との交雑を避けなければいけない。そうすることによって国内の純粋種を守る、あるいは生態系を守るのだ、そういう感じが非常にするのです。
 私自身、素人ですからよくわかりませんけれども、国外とか地域外から入ってくるものが、人為的にもってきた場合には、急に影響を与えるわけですから、当然そういうことはありうると思いますが、自然というものは、100年、200年、500年という単位で考えると、いろいろなものがいろいろな格好で地球上に動いているわけですから、国外と私たちが言うのは、国というシステムをつくったから言うのであって、国というシステムがなければ、もともと自由に動いているわけです。ところが、ネーション・ステートができて、国とか国の中とかいうことを言い出す、あるいは地域のことが出てきて、そういうことを言い出す。そういうことになることによって、外国からくるものは悪いものだ、だから、できるだけ在来種を大切にしなければいけない、そういう若干封建的あるいは国家主義的な考え方がときどき生物多様性のことを議論する方からお受けするのです。
 そういうことを考えると、UNEPでやったエコシステムアプローチの原則は非常にすばらしいものが書いてあって、特に原則9を見ると、「管理するにあたって、変化は避けられないことを認識すべき」と。地球上のあらゆるものはすべて変化するものであって、変化に対して、もちろん対応を間違えると絶滅するわけですが、変化自身は常に地球上にあるのだということを十分に考えた場合に、27ページの「移入種問題」というのが何となく後ろ向きに聞こえる。変化というものを私たちはおそれずに、そういうものを十分に取り入れて、そこから生まれてくるもろもろの悪影響は最小限にしなければいけませんけれども、変化そのものは大いにポジティブにとらえてやっていくのがこれからの地球社会ではないか。哲学的なことなんですが、私は素人ですから、素人的な発言で申し訳ございませんけれども、その点について、移入種問題を真剣に考えている専門家の方はどうお考えなのか、お伺いしたいと思います。

【小野委員】 移入種問題について一番根本に関わるいい御質問をありがとうございました。実は移入種問題というのは、攪乱ということと必ず関係がございます。入ってきた種類が、現在ある生態系に対してどのような攪乱を起こしているのか、その攪乱の度合いが多ければ多いほどこれは悪い種類ということになります。これが1つです。
 もう1つは、自然界では、おっしゃるとおりに自然に種類というのは入れ替わってまいります。私どもはこれを「自然回転率」と呼んでおりますが、鳥の種類だって、同じところに同じものがいつもいるわけではありません。自然に回転していきます。こういう自然回転も実はこれは侵入しているわけです。だけど、私どもが「移入種」という言葉で特に表した場合は、「人間の経済活動に伴う」という条件が入っているわけです。それで特に入ってくる種類が生態系に対して攪乱を起こした場合を特に移入種問題、侵入種問題という形で取り上げているわけでして、実際に花卉、花に類するものは随分外国のものがたくさん入っております。こういうふうなものは、実は種子を散布しないものというのは、ほとんど問題なく現在でも市場に出ているものと思います。例えばセイダカアワダチソウのようなものが花卉で入ったものですから、ああいう事態を起こした。これは攪乱植物ということになります。そうなりますと、これは当然ここの議論の対象になって、何とか除かないといけないということになりますので、1つは時間ということ、もう1つは攪乱ということをお考えいただければ、移入種問題は形が割合にはっきりしていると私は思っておりますが、それではいけませんでしょうか。

【廣野委員】 いまのお言葉はよくわかりますが、ただ、もう1つ、どうしても考え方として残るのは、自然に入ってきたものは構わない。だけど、人間が経済活動の一環としてやったものに対しては、それがかなり攪乱的要素になるという前提が大抵あると思うんです。人間がいろいろな形でもって経済活動の一環として入れるものが本当に攪乱するのかどうか、すなわち、人間が入れたことを既に攪乱と考えるのか、それとも人間が経済活動の一環としてやることは、何も攪乱ではなくて、ある意味では変化を促進する。変化の促進というのは、特に経済などをやっていると、貿易の自由化、投資の自由化という中で、資源の効率的配分というわけですが、そういうような意味からすると、何か変化を抑えるような格好になるのではないか。もちろん、その変化が悪影響という格好ではっきりわかるような、自然科学の分野において、科学技術の点において知見がはっきりしていて、それが攪乱するのだということがはっきりするものは、私も大賛成ですが、ただ、移入することによって、それがすぐ攪乱というとらえ方がちょっと強すぎるのではないか。もちろん、そうでないというお答えだと思いますけれども、もしできれば、若干説明的なことを入れていただいて、もう少し素人にわかるような格好でやっていただけるとありがたい。

【小野委員】 今のことは肝に銘じておきますが、1つ申し上げたいことは、例えば遺伝子攪乱のような問題がございます。これは現在、国内でも攪乱を起こしているわけです。例えば、あちこちにホタルを持っていって勝手に放しますが、ホタルの原種はどこだと言われると、もういないのではないかというぐらいに遺伝子の攪乱を起こしてしまっているわけです。だから、そういうのは移動ですが、移入なんですね。そういうことも中に含んでおりますので、その辺もお考えおきいただきたいと思います。
 特に、海の動物では、バルジ・ウォーターといいまして、バランス用の水(海水)を持ってきます。その中に幼生がたくさん入っておりまして、大部分は死ぬのですが、中に底にいていつくものが結構海岸の動物の攪乱の原因になっております。そういうことも事例として頭におとどめおきくださればありがたいと思います。

【天野委員】 私もあまり詳しくわかりませんので、ひょっとしたら見当違いのことを申し上げるかもしれませんが、23ページに「国家戦略の目標と戦略の効果的実施」というのがあります。その中で、目標に到達する道筋がこれまであまり明確でなかったので、それをはっきりさせるべきだ、という御提言がありますが、ここでおっしゃられている「目標」というのが、例えば10ページの国家戦略の3つの点だといたしますと、これはある意味で目的というか、もっと大きな範疇であって、例えば特定の種の絶滅を守らなければいけないということになれば、目標、ターゲットになるかと思うのですが、目的というのは、非常に大きなものですから、これはあまり変わらないと思いますが、目標というのは、現状に合わせていろいろ変わっていくものだと思うんです。ということは、目標そのもの、あるいは目的そのものからの現状の乖離している部分がどんどん大きくなっていく。ですから、それに伴って目標も当然変わってくるのではないかと思うんです。そういう目的から現状がどんどん遠ざかっていっている、そういう表現がどこかにあったと思いますけれども、それがどういうことから起こっていて、特に人間社会、人間活動の影響がどういう形でその拡大を促進しているのか、ということが一つ間に入ってくると思うんです。そういうことが入ってきて初めて、どういう対策が必要になるか、人間社会の組織をどういうふうに変えなきゃいけないかという政策が出てくると思います。何を変えるかということが明らかになったときに、次は、どういうふうにしてそれを変えるか。こういういろいろなステップがあると思うんです。恐らく「道筋」というのは、そういうステップ全体を表しておられるのだと思いますが、漠然としすぎていて、これではとても政策がとれないというか、何を明らかにするのかがもうひとつよく見えていなくて、その辺を少しきちっと生物多様性についてはこういうことが必要なのだということをおっしゃっていただけると、我々も非常によくわかるようになるのではないかと思います。

【森嶌部会長】 御意見ということでよろしゅうございますね。
 ほかにございませんか。
 それでは、生物多様性に関する議論はここまでにいたしまして、続きまして、環境への負荷の少ない交通検討チームの御報告をいただきたいと思います。
 それでは、太田主査、よろしくお願いいたします。

【太田委員】 それでは、私の方から、環境への負荷の少ない交通ということで、大きな議論の流れといいますか、筋書きについて御紹介したいと思います。詳しいものにつきましては後で事務局から説明させていただくことにしたいと思います。
 関連資料としては、報告書と資料編、その後に3枚もので簡単な全体の骨組みを書いたものがございますので、私の方は、この3枚もので大きな流れを御説明させていただきたいと考えております。
 交通の問題というのは、もちろん私どもの日常生活に直接関連していることと、産業にも直接関連しており、その中の環境問題は大変難しい状況になっているということで、私どもは、どんな形で痛み分けをしながら次の発展を考えたらいいのかということを議論してきました。
 具体的なメンバーの方の名前等はそこに出ておりますので、省略させていただきます。
 目次等にございますが、私どもとしては、まず、交通の現状あるいは環境問題の現状、それに対して今までどういう対策をとってきたのかということをまずレビューし、その中で、特に環境基本計画の見直しという中で、これから特に重点的に対象とすべきものは何かという形で、交通全体あるいは交通に係る環境問題全体というよりは、多少絞らせていただいております。交通の対象もそういう意味では重点を決めないとうまくいかないのではないかという形で整理しております。そういったものをベースに、この場合、私どもは、交通に係る問題、いわゆる地域的な環境問題、NOx の問題とか最近非常に問題になっているSPMの問題といった大気汚染関係、また、前から議論になっていてなかなか改善が進まない騒音・振動の問題、それから、これは地球規模ということになりますが、CO2を含めた地球温暖化の問題、そんなものを中心にして、その他、エコロジーの問題その他ございますが、これは横に置きながら、焦点としては、そういった身近な問題とCO2関係を中心に議論したらどうかということで絞ってきております。
 そういった場合の交通の範囲、これも航空機、鉄道、船舶、自動車といろいろあるわけですが、私どもの検討の結果、環境問題、CO2の問題で一番焦点になるのは、自動車について私どもはどうしていったらいいのか、その点に焦点を当てるべきだということにいたしました。特に身近な環境問題ということになりますと、NOx、SPMといった健康の問題に絡むものはディーゼルとの関係が一番強いということで、貨物車、ディーゼル車にかなり焦点を絞った形で、どんな対応をしていったらいいのか、そんな形で議論を進めてきました。
 議論全体としては、自動車がもってきた今までのいろいろな役割を最初の現状の把握というところで整理いたしまして、全体としては、交通関係全体が経済活動に伴って増えている。必然的にそういう分野があるでしょうし、所得が上がる、それぞれ多様なニーズに応えた形でモビリティを高めるという意味で、自動車が大変大きな貢献をしてきたという前提あるいはそういう今までのトレンドの中で、この先どんな問題があるだろうかということで議論させていただきました。
 具体的な考え方につきましては、第3章の「環境への負荷の少ない交通と実現シナリオ」ということで、社会経済のこれからのトレンドを踏まえながらと、少し長期的な見通しといいますか、そういう方向をみた上で、特に環境基本計画で短中期的にやるべきことは何かということで取りまとめたわけでございます。
 交通関係というのは、モビリティというのはこれからますます増えていく可能性がある。ただ、それをネガティブな部分をなくす形で、それぞれのニーズに合った、あるいは経済成長、経済発展、当然これも国民の求めるものですから、うまくバランスをとる形がないだろうかという視点で進めてきたと思っております。
 そういった長期的な見通しの中で、特に自動車交通も現在の枠組みでいきますと、どんどん増える。ですから、それが特別に環境に大きな問題をもたらさないように、そういう新しい枠組みを作っていかなければいけないのではないか。従来の対策、単体対策をはじめ大変努力されてそれなりの効果をあげておりますが、それでもなお環境の問題はなかなか解決に向かっていないということで、少し抜本的な取組の方向を取りまとめたらどうかということで議論しております。
 一応そんな流れできましたので、最初に具体的な現状認識で見ていただきたいものは、3枚ものの資料の2枚目から、具体的に地域の環境問題はどういうふうになっているのだろうか、具体的な指標はまさに大気汚染レベルということで、これは全国の測定地点をプロットしていただいて、環境基準を上回っているところはどこかというのを見ていただいたものです。1枚目がNO2の場合の一般局、その裏が自排局(道路沿道)。NO2の原因として自動車からの排出が多いということがございまして、これを見ていただきますと、従来の特定地域ということでNOx対策をしている地域以外にもばらばらと大都市圏で環境基準を超えるような点も見え始めているということです。
 それ以上に問題なのはSPMで、一般局の図が4ページにございます。大規模な都市のところではそういう問題が環境基準を超えるという形で発生しております。
 最後のページは自排局の部分ですが、赤いポツポツが全国かなり広域にわたっております。ですから、私どもとしては、ごく身近なところで環境基準をきちんと守っていくという仕組みを作る。その中で自動車関係がかなり大きな比重を占めているのではないか、そういう一つの認識の下に、この環境基準の達成状況だけから見ますと、実はまだ騒音関係が入っておりません。騒音を入れますと、幹線道路沿道は全国的に赤点になるという状況です。こういった問題をそれぞれの地域の状況に合わせて対応していく、そういうきちんとした計画の仕組みが必要ではないかということで、最終的には、そういった方向の取組をどうしていったらいいかということで、基本的な考え方を整理するということになっております。
 3枚ものの1ページ目に、その辺の基本的な考え方として、基本計画の目標、これは特に短中期、環境基本計画の中で、来年から環境省になるということですから、新しい取組として枠組みを作ってやったらどうかということで、環境基準のあるものについてはそれを達成する。CO2関係については、国際的な約束がございますので、まず当面それを目指して交通関係でできることをやるという形です。
 基本的な視点を一般論で1~6に挙げてございますが、特に説明するようなことはないかと思います。いずれにしても、かなり基本的な枠組みに関わる部分から見ていかないと難しいのではないかというのが基本的な考え方です。
 対策のメニューも、従来からいろいろな形で出ております。私どもは、単体対策をベースに進めていくのが一番重要かと思っておりますが、それだけではカバーできないために、いよいよ交通量・交通流について、直接的な需要関係に対して誘導していくような、あるいは場合によっては低減していくような、そういう話を議論せざるを得ないのではないかということでございます。
 対策実施の枠組みということですが、ここでは全国レベルと地域レベルの2つに分けてございます。ベースになるものは全国全体で広げた方がやりやすいし、そうしないと対策が立たないもの、地球温暖化に関わるCO2関係は当然全国レベルということになります。というのは、地域交通だけではなくて、地域間交通を含めてすることが必要でしょうということです。
 それから、全国的な大気汚染対策、騒音・振動対策ですが、NOx特別地域だけ特別なことをやるというのもあるかもしれませんが、前提として、国全体のレベルで単体対策をそれぞれ強化して、それを前向きに普及させていくということを含めた様々な対策が国レベルでは必要ではないかと思います。
 そうはいっても、各地域、特に交通との関係は地域、都市の特徴によって異なりますので、国レベルで達成できない部分について個別に対応していく。特に地方分権化の中で、都市計画あるいは交通計画もそういう意味ではだんだん地方が責任をもたざるを得ないという中で、環境ということと併せて計画作りを進めていく必要があるのではないかということで、地域レベルの取組として、「地域交通環境計画」という形で、交通の面から環境の基本的な目標、1、2にあげましたようなことを地域として責任をもって対策を立てて、進行管理をする。そういうことを都道府県レベルを中心に、交通の圏域という従来の交通整備の方のマスタープラン的なものがございますので、そういったものを活用してやったらどうかということでございます。
 それぞれその段階で国が様々な技術的な支援もございますし、基本的なベースとしての仕組みを作る。その中には、地域交通環境計画を支えるための財源とか、そのための条例その他に対する支援といいますか、専門的な支援もございますし、そういったもののフレームを国が作っていくということがあろうかと思いますが、具体的な推進は、あくまでも地域交通環境計画の中で、地方がもっと参加して主体的にやってもらったらどうか。そんな方向で議論しております。
 ただ、極めて短い時間の中でかなりインテンシブな議論をしたわけですが、いくつか細かいところまでといいますか、合意のとれるところまで議論の熟さないこともございました。例えば、道路整備と環境問題との関係をどの程度までバランスをとるかという問題、あるいは具体的な政策レベルで経済的施策、税、グリーン税その他の具体的な内容についてどこまで踏み込むかということは、十分議論が尽くせなかったために、こういった様々な意見があるということで御紹介するような形になっております。
 いずれにしても、様々な検討の中で、現在の交通絡みの環境問題ということでは、環境基準を満たしていないというだけではなく、社会経済的な意味は大変大きいだろう。日本ではまだちゃんとした推定は出ておりませんけれども、EUの推定等では、大気汚染関係だけでもGDPの1.5%ぐらいに達するのではないかという指摘もございます。この辺もある程度数値がつかめる状況になってきておりますので、そういったものを含めて、きちんとした推定の中でそれを内部化する仕組み、これはまた別途石先生の方で検討されているということで、それはむしろ全国レベルの環境税なり炭素税の中で議論していただいて、それでも達成できないものについては、地域レベルで、ロードプライシングでやったりとか、そういったものも考えなければならないでしょう。それに合わせて、当然、規制的なものでベースを作り、それをサポートする形で経済的な施策あるいは啓発的なものとを組み合わせていく必要があるのではないか。その辺は私どもはメニューだけ挙げて、具体的にはそれぞれの地域でやったらどうかという形でのまとめ方をさせていただきました。
 多少長くなりましたけれども、全体はそんな姿勢で書いておりますので、多少意見が一致していないところもございますが、取りまとめということで御報告させていただきます。

【櫻井大気保全企画課長】 それでは、報告書の内容をかいつまんで御説明させていただきます。今、太田先生からかなり概略的にお話しいただきましたので、重複を避けまして、ポイントだけ御説明させていただきたいと思います。
 この報告書の目次のところで御覧いただきますと、「I.交通の現状と環境問題」、これは現状と施策についての現状を紹介した部分でございますので、説明は省略させていただきます。
 18ページ以下の「II.報告書で対象とする環境問題、交通の範囲」、これも先ほど太田先生から御紹介いただきましたので、省略させていただきます。
 「III.環境への負荷の少ない交通と実現シナリオ」の部分は、20年程度を見越しまして、その間に社会経済と交通の需要がどのように変わっていくだろうかということを簡単にスケッチしたものでございますが、この辺も詳しい紹介は省略させていただきたいと思います。
 主として24ページ以下の「短期の取組」の内容につきまして御説明させていただきたいと思います。
 それでは、本文の方に入っていただきまして、24ページまで飛んでいただきたいと思います。御紹介に当たりましては、ページ数と左にパラグラフの番号が小さい数字で入っておりますので、それを引用しながら御説明させていただきたいと思います。
 まず、24ページの下、94と左の方に小さい字で書いてございますが、「環境への負荷の少ない交通への基本的視点」というところでは、自動車交通による環境負荷を低減するためには、単体対策等の対策強化に加え、従来の需要追随型の交通施策を見直し、自動車による環境負荷が大きく、自動車の交通需要が過剰と考えられる場面では、これを抑制・低減していく必要がある、というスタンスを冒頭明らかにしております。
 25ページの真ん中以降、95のパラグラフ以降には、今回の基本的視点の1つ目として、「環境負荷の少ない自動車の大量普及」ということを書いてございます。95のパラグラフの4行目あたりから、特に、ディーゼル車については現在規制実施の時期の前倒しの検討が進んでいるわけですが、可能な限りの早期実施を図るべきということ、また、規制基準を満たすに止まらず、より環境負荷の少ない自動車の普及を進めることが重要であるという点を述べておりまして、それに関連して、今後は、低公害車4車種(電気自動車、天然ガス車、メタノール車、ハイブリッド車)に限らず、低公害車等排出ガス技術指針というものを定め、この4月からその技術指針に基づく認定も行われているところでございまして、燃料や原動機を問わず環境負荷が少ない自動車の開発・普及を進めるべきということを記述しております。
 26ページですが、「(2)ビジネススタイル・ライフスタイルの変革」という中では、自動車については、国民生活あるいは経済活動に緊密な関係がありますので、101のパラグラフの2行目あたり、自動車の依存性をどのような場合にどのような内容で低めるかについて社会的な合意を形成し、環境負荷の少ないビジネススタイル、ライフスタイルの普及を進めていくことが必要だという趣旨のことを書いてございます。また、そういうことに関する環境教育も必要であろうということに触れております。
 102のパラグラフの2行目あたり、自動車交通による環境コストを自動車や燃料の価格や道路の通行料等に適切に反映させるなど、市場メカニズムを活用して各主体の商品や行動の選択を環境負荷を少なくする方向に誘導することの重要性に触れております。
 3番目の視点として、技術開発ということで、低公害車の開発の促進あるいはITS等の各種情報技術等を活用して、交通情報の提供や交通管理の最適化を図ることが必要であるという旨を述べております。
 27ページにまいりまして、「(4)交通による環境負荷の少ない都市、施設の整備」ということで、108のパラグラフですが、都市部においては、交通渋滞、交通公害対策として、交通需要そのものを調整・低減する交通需要マネジメント(TDM)を進める必要があるということに触れております。
 109のパラグラフの2行目あたり、コンパクトな都市、公共交通機関の整備及び利用を促す計画的な都市の形成が必要であるということに触れております。同じく109のパラグラフの下から3行あたり、交通モード間の乗り継ぎをしやすくする交通サービスのシームレス化を図るといった取組の必要性あるいは自動車による短トリップの代替を促すため、都市内の自転車道、歩道の整備も必要だということについて触れているところでございます。
 28ページにまいりまして、視点の5つ目として、「環境コストの内部化」でございます。これは一般論でもございますが、111のパラグラフの2行目あたりから、自動車利用に伴う環境コストを製品・サービスの取引価格に反映させることで市場に内部化するような仕組みを作れば、需要側の行動を環境負荷の小さいものへと変化させ、あるいは供給側に環境保全型の技術開発を積極的・継続的に行うインセンティブを与えるということで、そういうことにより、環境への負荷の少ない交通の実現を図っていくべきだということについて触れております。
 112のパラグラフ、28ページの下から3行あたりですが、そういった環境コストもユーザーが公平に負担する仕組みが必要であることから、そのため従来の環境負荷の低い自動車の選択を促進する税制優遇措置に加え、税全体の負担の水準を自動車が社会にかけている費用を適切に反映したものにすることで、自動車に依存するライフスタイルを変革し、交通需要を抑制していく制度を検討していくべき、ということに触れております。
 その次の113から114にかけてですが、113の4行目から「昨年末の……」というくだりがございます。これは昨年、いわゆる自動車税のグリーン化という税制要望の議論がありました中で、最終的には自民党の税制調査会あるいは政府税制調査会において、環境問題に対する総合的な取組を進めるために、原因者負担を基本としつつ、税制面での施策について検討するという方針が示されておりますが、自動車の取得、保有、走行に関する諸税制についてもこのような観点からの検討が必要ではないか、ということに触れております。
 114のパラグラフですが、先ほど太田先生からも御紹介がございましたが、「これに関連して大気汚染や地球温暖化対策としての自動車関係税制のグリーン化や揮発油税と軽油引取税の税率の格差是正をすべきとの意見があった一方、具体的な税制に対する提案は、効果や影響について慎重に検討・考察を行った上でするべきとの意見があった。」と記述しております。
 117のパラグラフですが、経済的措置により得られた財源については、自動車環境施策に投入し、より大きな効果を得ることを目指すことも検討すべき、という点に触れております。
 同じく29ページの118のパラグラフの下3行あたりですが、ここでは、地域の特性を踏まえた適切な対策が必要だということで、都市の規模、都市構造に応じ、活用できる交通機関の状況は大きく異なるので、そういった特性を踏まえた対策が必要だということについて触れております。
 30ページの120のパラグラフ、中長距離の地域間交通、主として大気汚染対策という観点から都市地域の問題を取り上げているわけでございますが、運輸部門からの二酸化炭素排出の削減については、都市内交通のみならず、中長距離の交通にも着目した対策が必要ということについて触れておりまして、積載効率の改善や、大型の自動車の利用による輸送効率の改善、鉄道や内航海運などによる環境負荷の少ないモードの利用云々というところに触れているところでございます。
 3の「短期的に取り組むべき対策」につきましては、30ページの下の方にあります1~6の対策のオプションを、この資料の一番最後に参考として付けております。ここでは考えられるような対策、現在議論されているようなものを並べておりますけれども、こういった対策につきましては、123のパラグラフの4行目あたり、短期的には、早期に明確な効果が期待できるもの、あるいはすぐには効果が現れないが、構造的な変革につながる対策を行うことが必要である、という対策のオプションの選び方といいますか、考え方を示しているところでございます。
 31ページの「各主体の取組の重点」ということで、国、地方公共団体、次のページにまいりまして、事業者、事業者の場合、運輸事業者、一般事業者等の取り組むべき内容を書いてございますが、そこは省略させていただきます。
 34ページには、事業者の続きとして、自動車メーカー・燃料生産者、さらに、市民、NGOの役割ないしは期待される役割を書いてございます。
 35ページから、先ほど太田先生からも御紹介のございました「地域レベルでの計画策定による取組」ということで書いてございます。
 35ページの「(1)計画の必要性」、135のパラグラフですが、繰り返しになりますが、大気汚染や騒音・振動は基本的に地域レベルで生じる問題であることから、単体規制をはじめとする全国的な対策の強化はもちろん必要ですが、全国的な対策のみでは問題が解決できない場合には、更にそれぞれの地域レベルでの一層の対策が必要だということを書いております。
 136のパラグラフの3行目の終わりあたりから、そのため、各地域において、具体的な計画期間を定めて総合的な計画を作成することが必要ということを書いております。
 35ページの下の(2)、「地域交通環境計画(仮称)」と書いてございますが、そういった観点から、地域交通環境計画なるものをどういうふうに考えるかというのが以下に書いてございます。この計画につきましては、36ページの144のパラグラフ、計画策定の主体は、都道府県が適当ではないかということ、さらに145のパラグラフ、対策の実施には、様々な主体の取組が必要であることから、計画の策定に当たって、事業者、住民、NGO等の参加を得て、広い社会的関心と合意の下に策定が必要だということが書いてございます。
 36ページの下3分の1ぐらいのところから「汚染物質排出量による目標設定」ということで、148のパラグラフの2行目あたり、「対象となる大気汚染物質について、環境基準等に照らして目標削減総量を設定し、個別の対策メニューによる削減量を策定する」という考え方を示しております。
 そういったものから、計画はどんなプロセスかというのが、37ページの150のパラグラフの1~4に書いてございます。1が、今申し上げました削減が必要な排出総量の算定というのが第1ステップに書いてございまして、2番目に、交通分野からの寄与率、交通分野で削減すべき排出量の設定。さらには、個別の施策によってどの程度の削減を見込むのか、削減方策の選定とプログラム化。実際に実施して、そのフォローアップをし、計画の進行管理を行う、というようなことが書いてございます。
 こういった計画について、37ページの153のパラグラフ以下に並べておりますが、計画実施を担保するために、例えば関連計画との整合性の確保が必要であること、あるいは37ページの一番下、関連事業との整合性の確保が必要であること、あるいは38ページのコラムの下になりますが、財源の確保が必要であること、あるいは39ページにまいりまして、関係者の参加を得た協議会といったような組織の設置が効果的であるということに触れているところでございます。
 以上、報告書の内容をごくかいつまんで御紹介させていただきました。

【森嶌部会長】 それでは、ただいまの御報告に関して御質疑あるいは御意見を賜りたいと思います。

【西岡委員】 交通公害の問題というのは、もう何年も大体同じようなスタイルでいろいろな提案がなされて、おさまるところはないという状況と私は判断しているのですが、特にこれからは、今回のレポートにありましたように、地方自治体が自分たちで計画を立てて、かなり先導的に交通の規制をやっていかなければいけないという時代に入ってきているのではないかと思われます。このレポートでも、ヨーロッパの例などが四角に囲んで書いてあります。例えばオランダのABC方式なども非常に効果的なものになるのではないかと考えられるわけです。
 私の質問は、地方自治体が交通規制等をやっていくときに、多分、中央との政策手段として規制の権限といったものが強化されなければいけないのではないかと思っているのですが、このあたりについては、ここでは計画ということはいつも言われていて、それが実施できるかどうかが問題なんですが、そのためには、政策手法あるいは規制の権限といったものについてさらに一歩突っ込む必要があるかにも思われますが、このところについて、この10年ぐらいの間、どのような動きがあったのか、もしくはなかったのかということについてお伺いしたいと思います。

【太田委員】 私どもは、政策の担保をどうするかというのは大変大きな課題だろうと思っております。ただ、今回どこまで議論したかということになりますと、時間の制約から、大きなフレームを作って、仕組みを考えるまでで、その具体的なやり方についてはまだまだ議論が十分行うに至っていない。ただし、規制的手法があって、特定地域にNOx対策などでありますような特定車種を普及させる。場合によっては、今回新たにSPMとの総合施策の方で検討が進むと思いますけれども、そういった規制的手法ありきで、そこに経済的なインセンティブをかける。そして、もっと別に啓発的なもので全体を支える。そこが全部そろわないと難しいだろうと思います。今回の報告では、規制的なものをどこまで踏み込むかという個別議論まではまだ入っていないということは事実だと思います。ただ、事例の中にいくつか海外でそういうことをやられている例を紹介したつもりですが、そんなものを含めながらこれから議論しなければいけないかと思います。特に、ロードプライシングその他、経済的なものもそれに伴った、それを担保するためのチェックをどうするかという意味で、交通警察にどこまでお願いできるかとか、様々な具体的な手段は、今後、国全体の中で議論しなければいけないことだろうと私は理解しております。そういう意味では、過去10年、こういった方面で特別なことがあったかどうかは事務局の方からお願いします。

【櫻井大気保全企画課長】 過去10年に規制権限的な意味で地方公共団体の権限がどのように強化されたかという意味では、制度的にこういう権限が付与されたというものはそんなにないかと思います。ただ、全般的に地方への分権の話もございますし、あるいは自動車の交通環境の対策におきましても、地方公共団体がいろいろな取組をする中で、そういう方向に向かおうとしているのは事実であろうかと思っております。この報告書の中でも、例えば仙台市の例を掲げておりますが、独自に自動車交通に起因する環境問題に対応するような計画作り、さらには何かをやっていこうという姿勢が見られるところでございます。
 それから、環境庁におきましては、現在これも中環審の方に御審議をお願いしているところでございますが、いわゆる自動車NOx法の見直しの議論の中で、今後、事業者に対する規制といいますか、どういった取組を求めていくのか、あるいはその事業者も自動車の運送業だけではなくて、自動車を広く使う大口の事業者さん、あるいは自動車メーカーにどんな取組を求めていくのかということを、広い意味での規制といってもいいかと思いますけれども、その取組を法律上どうやって求められるかという点についても、今後の議論の課題になるのではないかと考えております。そういったような趣旨は、この報告書の中でも一部触れておるところでございます。

【森嶌部会長】 小早川さん、今度の地方分権推進法で、先ほどちょっと出てきた外国のようなことを地方自治体ができるようになるのですか。例えば駐車場を制限するとか、一定の賦課金を課するなどがありますが。

【小早川委員】 具体的なことは一々頭に入っておりませんが、大どころとしては、都市計画法あたりの計画権限が県から市町村へ、国から県へ、国の関与を弱めるという形で、全体的に地方自治体へシフトしているということは言えるわけです。私も先ほどのお話を伺っていて、1つのポイントは、交通環境管理計画と都市計画とをどうリンクさせるのかということかと思っています。ですから、質問にはお答えできませんが。
 余計なことを申し上げさせていただきますが、今の観点からしますと、計画論としてどうなるのだろうか。先ほどの御説明を伺っていまして、環境基準の発生源を交通に限定した、それのブレークダウンした、そういうものかなという感じもしまして、単なる言葉の問題かもしれませんが、これを計画というのがいいのか。その辺が、まさに計画論的にさらに詰めていく必要があるのかなと。構想としては大変結構なことだと思います。

【森嶌部会長】 計画なるものは行政上の用語がありますので、事務局の方で何かお考えがありますか。

【櫻井大気保全企画課長】 今回、「地域交通環境計画」という名前で書いておりますけれども、一つの現にある計画として、自動車NOx 法に基づく各都府県が定める「総量削減計画」という名称でやっているものがございます。これはNOxの各県ごとの削減目標を定めて、それに必要な施策を各県ごとに作っていくというものでございますので、単にNOx だけではなくて、SPMなり、その他の大気汚染物質への広がり、あるいは今後、騒音問題等もそういったアプローチが可能かどうかということではないかと思っております。

【藤井委員】 車のことはまるっきり素人なんですが、バイオディーゼルの小さな地域モデルをやっている中から、ディーゼルについては非常に関心をもってこの間見てきました。3枚ものの資料の1枚目のところに「特にディーゼル車に留意する」ということを含めて、石原知事の「ディーゼル車NO」のことなど日本で様々起きているわけですが、18ページ、26ページにもディーゼルについて触れたところがあります。そこでお尋ねですが、EU、特にドイツなどではディーゼルに対して、日本の石原知事のような「ディーゼルNO」の動きがあるのかないのか。つまり、CO2の観点からいうと、ディーゼル車はガソリン車と比べて非常に負荷が少ないという評価もできるわけで、もしドイツで「NO」という大きな動きがないとすれば、燃料の精製プロセスの問題と、販売前の車の技術、ここにもちょっと触れてありますが、フィルターの問題など、それを義務づけて販売するということでクリアしているのか、その辺のEUと日本の現状の違いをまず踏まえないと、「ディーゼルNO」ということが先行したときに、本当にこれでいいのかということが非常に気になります。そのあたりのことを教えていただきたいと思います。

【櫻井大気保全企画課長】 ディーゼル車の位置づけにつきまして、特に都知事がおっしゃっていることは別にしても、ディーゼル車から排出される粒子状物質が健康に影響があるというのは、WHO等の国際的な機関でも指摘されているところでございまして、そこの認識は同じなのではないかと思います。ただ、ドイツで「ディーゼルNO」と言っているかというと、そこは言っておりません。発がん性等いろいろな健康影響があるという議論と同時に、直ちにディーゼル車の走行をやめるのだという選択をとるのか、あるいは温暖化対策の観点からディーゼル車の優位性をある程度認めつつ、ドイツあるいはEUの中においても、ディーゼル車の排ガスの基準は順次厳しくしていくというスケジュールになっておりますので、これは都知事が言っておられますけれども、日本より厳しい水準にいくということです。これはプログラムの中で次第に厳しくしていくのが、日本より厳しいというプログラム化をしているわけですが、「NO」という表現で拒否するということではないかと思います。そういった対策を打ちつつ、ディーゼルの、温暖化対策には優位があるという点を認めながらやっているのではないかというように理解しております。

【横山委員】 29ページのパラグラフの114で、自動車関係税制のグリーン化の問題を取り上げられていますけれども、中環審として方向性を出すのに、自動車税のグリーン化というのは非常に重要なテーマだと思います。それで中身がどうなのかなと思って見ましたら、賛否両論ですが、これはかなり議論をして、それでどうしてもまとまらなかったということなのか、あるいはさらっとやって、さらっと「賛否両論があった」と書いただけなのか。重要なところなので、その辺の裏話を教えていただけますか。

【櫻井大気保全企画課長】 まず、この報告書全体が「環境への負荷の少ない交通」を環境基本計画でどう扱うかという観点からの全体的な検討でございまして、自動車税のグリーン化だけを議論するという場ではございませんので、この問題だけに何回もの回数を費やしたという意味ではございません。ただ、この部分につきましては、委員の間で意見の一致をみなかったということでございます。自動車税制のグリーン化については、特に温暖化対策という意味で、温暖化チームの方でも御議論いただいているのではないかと思いますけれども、交通チームの方では、交通に起因する環境問題全体を見る観点からそのような議論をしたということでございます。

【森嶌部会長】 普通の答申ではなくて、環境基本計画という形でまとめていくときに、こういう意見がありました、一方こういう意見がありましたというのは、環境基本計画としてはあまりノーマルな形ではないと思いますので、この問題について、検討チームで御意見をいただいて、まとまらなかったとすれば、この企画政策部会でやっていく過程で、後で申しますが、小委員会で少しまとめ方を御検討いただきますけれども、その後で、ここに出てきた段階でここでも御議論いただいて、方向性が出るものかどうかわかりませんけれども、環境基本計画としてはあまり甲論あり、乙論ありというわけにはいかないだろうと思っておりますので、今のお話を受けて、環境基本計画のドラフトをここで検討するときに御議論いただければと思います。

【渡辺委員】 考えようによっては大変マイナーなことかもしれませんが、先ほどの藤井委員の御発言に絡んでお聞きしたいのです。ディーゼル車の排ガス規制、特にSPMの規制に関して、どうして日本がなかなか厳しい規制ができないかというと、ある人から聞いて、私は、日本の公害対策は世界で最も進んで、欧米よりもはるかに進んでいると理解していたことからすると、まことにびっくりしたのですが、軽油に含まれている硫黄の低減の度合いが日本は非常に遅れている。これをまず徹底してやらないと、規制の強化もできないというので、私は大変不明を恥じたのですが、事実は事実としてきっちり認識して進まないといけないのではないか。あるいはどこかの新聞記事でも似たようなことが出ていました。軽油に含まれる硫黄分に関する規制といいますか、実態といいますか、そういうことではいけないし、それを欧米並みに低くしようとすると、大変な設備投資がかかる。それでなかなかできなかった。その辺の事実関係を教えていただいて、それをどうしようとしているのか、お伺いしたいと思います。

【櫻井大気保全企画課長】 軽油中の硫黄分につきましては、今、委員からお話のありましたような日本の石油精製の過程で、まず、日本で使っている中近東を中心とした石油には、北海原油とかヨーロッパで使っているものに比べて硫黄分が高いという理由が一つございます。さらには、日本の場合、民生用の灯油を優先的に石油からとりますので、そこでは硫黄分をかなりとるわけですから、その残ったものからさらに硫黄分を落とすという精製過程になります。そういった意味で、軽油中の硫黄分を削減することは、技術的に不可能ではありませんが、設備投資がかかるということもあって、硫黄分が高くなっているのだろうと思います。ただ、欧米に比べて日本の軽油中の硫黄分が格段に高いかというと、日本でも順次下げてきておりますし、これから軽油中の硫黄分の規制を厳しくしていくというプログラムにはなっております。
  さらには、ディーゼルの規制が、特にPMの規制が比較的緩いのではないかという御議論については、日本ではNO2の環境基準達成を主としたNOx 対策に非常に力を入れてまいりましたが、NOx 対策を進めると、自動車のエンジンの構造上は不完全燃焼というと言い過ぎなんですが、低い温度で燃焼させるため、NOxの規制基準を厳しくするとPMの規制基準がやや緩くなるという技術的な問題もございまして、ある種のトレードオフの関係にあることから、日本は欧米などに比べますと、NOx の基準は厳しくなっており、それに比べてPMの基準が緩いという現状になっておりまして、この辺は今後また審議会でも御議論をお願いしなければいけないと思っている点でございます。

【廣野委員】 これは主に企画政策部会の部会長にお聞きしたいことなんですが、今までいろいろな検討チームが報告しているわけですが、私の国際的取組の方もそうなるかもしれませんけれども、報告を聞いている中で一つちょっと気になることがあるんです。それは何かというと、私は、今回は環境基本計画の見直しということで、見直しということに、ある意味で強い心を持っていまして、そうであるとすると、せっかくこれからミレニアムの新しい時代に入っていく中で、環境基本計画の見直しが必ずしも徹底した議論ではなくて、中途半端な議論で終わっている。そして、難しい点はできるだけ避けて通るという感じでなっているように思うんです。
 1つの例を申しますと、先ほど西岡委員からもお話がありましたが、私は長い間、武蔵野市に住んでおりましたけれども、私たちまちでもっていろいろなことをやりたいと言うと、実際にはどうしても現在の日本の法制度あるいは税制その他が立ちふさがって、地方自治体がもっと前へ進もうと思ってもなかなかできない。住民からかなりいろいろな声が出てくるのですが、その住民の声を実施しようとすると、税制、法制度その他からできない。そこで、今回、環境基本計画の見直しということですから、ある程度大胆にそういうことに対して言えるような基本計画の見直しであった方が好ましいのではないかと考えたのです。
 例えば37ページにも「計画実施を担保するための手段」という項目が書いてあるのですが、そこでうたっていることは何かというと、「このためには、既存の制度、仕組みの最大限の活用を図るとともに、必要に応じ国、地方レベルで新たな枠組みを作ることも検討すべきである。」と。非常にふんわかとしていて、ちょうど幼稚園の先生が幼稚園の子供に言っているようなことであって、もう少しはっきりと言うことができないか。どこが意見が違うかはっきりわかっていると、例えば企画政策部会、小委員会などで議論するときに議論しやすいのです。ところが、意見が違う点がはっきりわかっていない格好で書かれてしまうと、次に小委員会その他で議論するときに、議論の題材があまりにも曖昧である。我が国の一つの大きな欠点は、意見の違いをはっきり出さないというところだと思っています。私たちはできるだけ意見をはっきりさせて、現状の中でこの点をどう処理したらよろしいか、という次のステップのときにそういう妥協を考えればいいのであって、最初の段階では、できるだけ意見の違いをはっきりさせる方が仕組みとしてはいいのではないか。あるいは地方自治体における「計画実施を担保するための手段」ということを書くのでしたら、ふんわかとした書き方ではなくて、例えばこういうふうなやり方があるという格好で書くことによって、よりはっきりしてくるのではないかと思います。せっかくの環境基本計画の見直しですので、そういう方向が出せたらうれしいなと思うのですが、そこらあたり、部会長としてどうでしょうか。

【森嶌部会長】 御質問というよりも、検討チームの報告書に対する御注文というふうに承りますが、元来的には、これは環境基本計画の見直し--「見直し」という言葉の問題はありますけれども--ということですので、少なくとも新しい方向性とは何なのか、それの持っているメリット、デメリットあるいはフィージビリティの問題があると思いますけれども、検討チームではその辺を御検討いただくということが期待されているのだろうと思います。先ほど申しましたように、検討チームで、こういう意見がありました、それに対して、こういう意見もありましたというのは、そういういろいろな御議論があることは確かだと思いますけれども、これを環境基本計画として打ち出す際には、フィージブルでない、ただ絵に描いた美しい餅をつくるということは意味がないですが、少なくとも計画として前のものよりは、新しい事態に即して、あるいは新しいポリシーなどが出てきているわけですから、それをどう取り入れていくかということだと思いますので、基本的には、私は廣野先生の御意見に100%賛成でありますけれども、これから企画政策部会で御議論いただくときに、いつものように甲論乙駁やっていただいて、その中で企画政策部会として何をとっていくかということを御議論いただきたいと思っております。
 思い入れの程度が廣野先生と私とでどっちが強いかというのはよくわかりませんけれども、少なくとも姿勢としては、現段階でだめなものは捨ててしまう、今なら動くというものだけを計画に載せていくというのは、ここに期待されていることではないと思うんです。しかし、先ほども申しましたように、全く実現不可能なものをここで「どうぞおやりなさい」というわけにはいかないということだと思います。

【天野委員】 今回の報告書では、経済的な手法について随分検討されていろいろな提案をされておりますので、私としては大変評価すべきだと思っております。ただ、これは検討チームの検討の仕方にも関連することかもしれませんが、ここでは「環境への負荷の少ない交通」を考えるという交通の検討部会なので、例えばCO2のような地球温暖化に関する議論は入っていない。例えば、先ほどのディーゼルの話ですが、CO2の削減に対しては貢献するけれども、SPMについては負荷が大きいというふうになりますと、検討チームがそれぞれ地球温暖化対策の検討、環境への負荷の少ない交通の検討というふうにしますと、違った結論がそれぞれの検討チームからあがってきて、では、基本計画としてはどうなのだという議論がどうなるのか、その辺が私はちょっと心配なんです。
 この報告書を拝見しておりますと、例えば28ページに、環境コストを内部化すべきだという非常に大きな主張が含まれているわけですが、環境コストというのは、先ほど申しましたCO2、SPMはもちろんですし、NOx も騒音も振動も全部環境コストになるわけですね。ですから、そういうものを内部化するということになりますと、例えば二酸化炭素は少ないけれどもSPMが多いというのと、二酸化炭素は多いけれどもSPMが小さいというのとが全部ひっくるめてみれば、どちらも環境に負荷を与えているではないかと。相対的にディーゼルとガソリン車を比べれば差は出ますけれども、自動車全般としては環境負荷というのはあるわけですから、それに対してどうするかという議論を企画政策部会としてはすべきだと思うんです。そういう点から、検討チームから出てきた意見を部会としては統合化する議論をぜひお願いしたい。これが1つです。
 もう1つは、環境コストを内部化するというのは、先ほどの差別税制を導入するかどうかという話とは少し性格が違いまして、先ほど私が挙げましたような、環境負荷を全部同じ単位で計算して合計をして、それを経済的に内部化するという作業が必要になりますので、ここにも少し数字が挙がっておりますけれども、全体的な環境コストを評価する、そういう仕事がこれから環境省の中では非常に重要な役割をもつことになるのではないかと思います。先ほどの生物多様性のときにも出てまいりますけれども、環境負荷をどう評価するか。これは、私は、内部化する以上は避けて通れないところではないかと判断しておりまして、今度の基本計画では、そういったことも含めて、環境省が新しい一歩を踏み出すのだということをぜひ盛り込んでいただきたいと思います。

【森嶌部会長】 次回に、安原部会長代理が主査をしておられる地球温暖化対策検討チームの御報告がありますので、消極的権限争いをしないで、仮にそうなっていたとしたら、部会でその辺の橋渡しを十分議論できるようにしたいと思っております。

【塩田委員】 たくさんの委員が御指摘になりましたように、交通に対しての環境対策に有効な施策というのは、日本のみならず、世界中で長い間議論されていまして、それは皆さん御承知のとおりです。
 最近、自治体によっては、例えば鎌倉市の動きとか、東京都の動きもそうですが、そういう面でも今までとはかなり違った面が出てきていると思います。私は、この場でのこの問題の取り上げ方について意見を申し上げさせていただきたいと思います。
 その前に、太田主査を中心に、この検討チームに参加させていただいたのですが、皆様いろいろな範囲からこの問題を議論していただいて、こういう形で問題点をまとめられたことに敬意を表したいと思います。
 いま太田主査が説明されましたこのペーパーをベースに、これからやっていかなければならない問題はいくつかあると思うのですが、1つは、地球温暖化の問題、二酸化炭素の抑制の問題というのは、たまたま安原主査を中心に今議論しておられるわけですから、どちらかというと、議論はそちらに集中した方がいいのではないか。ここでは、地球温暖化の問題、二酸化炭素以外のガスを中心にこの問題を考えていく方が問題が整理しやすいのではないか、ということが第1点です。
 先ほど太田主査をはじめ事務局から御説明がありました内容は、大部分、地球温暖化以外の部分に関係するような内容だと私は理解いたしますが、その点は御議論いただけばいいと思います。
 2番目に、対策は今までたくさん論じられているけれども、私の感想は、たびたびこの場でも、あるいはほかの場でも申し上げましたが、定量化されていない、要するに定性的な議論が多い。たまたま地球温暖化の問題というのは、定量的な目標があると思うのですが、それ以外のガスについては、果たして定量的な問題があるのかどうか、まずそこからスタートしなければいけないのではないかという気がいたします。
 そういうことを議論しますと、二酸化炭素以外については、当然のことながら、これは非常に地域的な問題だということで、地域で取り扱うのになじむと思うのですが、その場合に最も有効な対策は、皆様御承知のとおり、単体対策で、これは地域の対策になじまない面があります。これははっきり認識しなきゃいけないだろうと思うわけです。ですから、単体対策の面でどういう施策が有効かという問題は、規制と、あるいは一般的に適用があるような経済的な措置だと思いますので、そういうものからどういう政策的な選択がありうるかということは、この報告書にも書いてあるわけですが、こういうものからどういうものがピックアップできるかという議論をしていくというのが妥当なのではないかという気がするわけです。先ほど横山委員から御質問がありました点も、その点に関すると思うので、私もそれは全くおっしゃるとおりだと思います。
 もう1つ、基本的な問題で、環境の面からはもちろん必要ですが、モビリティというものをどう考えるかということも、環境サイドからも一応考えておくべき問題なのではないか。要するに交通が過剰だというのは、何に対して過剰かというのは、そう簡単な問題ではないと思うんです。私の自分の意見を申し上げますと、交通が渋滞している、だから過剰だというのは、短絡すぎると思うわけです。交通が渋滞しているところに対して、どんな問題があるかを掘り起こして、それをそれぞれ対応しなければならない主体が対応して、まだどうしようもないということがあれば、それは過剰だと言ってもいいかもしれませんが、最初から過剰だということは言いにくいのではないかという気がいたします。だから、そういう点についてもやはりこういう場での御議論が要るのではないかと思います。
 いくつか論点を申し上げましたが、そういう観点からみますと、対象地域というのは、とりあえず三大都市圏ぐらいに限定して、あるいは重要な幹線道路ぐらいに集中して、これはほとんど自動車交通の問題ですから、極めて限定された対象に対して、差し当たりこの数年間の計画だということであれば、どういう対策を講じていくべきかということを正面から取り上げていくというのが妥当なのではないかと私は思います。
 以上、私の意見ですが、私はこの検討チームに参加させていただいて、いろいろ意見も言わせていただきましたので、このリポートは、いろいろな問題点を提起しているという意味で、私はこの内容については賛成している一人でございます。

【森嶌部会長】 大変適切な御指摘をいただいて、3枚ものの資料を見ましても、確かに真っ赤になっているところは2カ所ないし3カ所しかありませんので、おっしゃるようなことだと思います。

【寺門委員】 ビジネススタイルとかライフスタイルの変革というのは、交通問題ばかりでなくて、個人の生活から、企業を含めて、あらゆる問題についてひっかかってくるわけですが、ここでは、すべてのものが協力、参加する条件を整えるというふうに書いてありますが、結局、形としては、「社会的合意を形成して、環境負荷の少ないビジネススタイル、ライフスタイルの普及を進めることが有効である」というふうに書くわけですが、では、ビジネススタイル、ライフスタイルはどういうものがいいのかというコンセンサスはなかなか得られないのが現状だと思います。
 今のお話のように、過剰であるか過剰でないかというのは、地域によって違いまして、私は何年か前に名古屋の方におりましたけれども、名古屋の都市というのは、自動車交通が非常に強いところです。例えば地下鉄網を張るのかということになりますと、実は朝の30分と夕方の30分しか利用が立たない、あとは非常に閑散としている。これでは経済的には成り立たないので、なかなか公共の交通網、本当の地球にやさしい交通網だといっているものに移動していかないという問題が生じているわけです。
 そうしますと、今の国民がサービスのスピードアップとか、快適なサービスを受けるとか、そういうものとどういうふうに両方を満たしながらやっていくのかというところに結局行き着くわけですが、それは多分、議論してもなかなか答えが出ないので、こういうふうに「普及に努めましょう」と、では、どういうものが普及の対象になるのかというと、「自転車に乗りましょう」、「公共交通機関に乗りましょう」、「バスに乗りましょう」という程度しか実際には言えない。それでどうするのかということになっていくと、利用される人は快適性を追求するわけですから、快適性を犠牲にしてまでということには必ずしもならない。どういうものとどういうものが因果関係があるのかということがなかなか読めていないというのが現状ですね。そこで認識の差がだんだん出てくるのだと思います。これは地球温暖化の方でも同じことが起こるのだろうと思いますが、そこのところを、認識が共通化できるかどうかわかりませんが、もっと議論しておかないと、なかなか先に進まないような気がするのです。ここでただ問題提起していてもいけませんけれども、ビジネススタイル、ライフスタイルの変革というところで、何か勉強になるような議論がございましたら、ぜひお聞かせいただきたいというのが最終的なお話ですが、お願いできますでしょうか。

【森嶌部会長】 これは交通のチームだけではなくて、すべてのチームについて出てくる話で、端的にいうと、どこのチームどころか、企画政策部会自身も最終的に環境基本計画の見直しのレポートをまとめるに当たっても、今おっしゃったようなことを模索しながら、何かいい知恵がないか。環境教育から始まって、強い規制に至るまでいろいろな御議論がおありだと思いますけれども、私自身は、パーフェクトを求めて始めるのではなくて、いろいろやっている中で、ここでコンセンサスを得ることはなかなか無理だと思いますけれども、少なくともこの中で、これだけの頭脳と人数が集まっているわけですから、何かいいアイディアが出てくることを私は信じております。

【太田委員】 もちろん大変難しい問題で、おっしゃるとおり、私も具体的な姿で言える部分というのはかなり限られるだろうと思います。ただ、そういう方向に向かうべき仕組みとして何があるのだろうかということで、それぞれのビジネスあるいは我々の生活の中で意思決定のレベルで、そういう方向に向かわせるような仕組みをどう作ったらいいかということで議論してきたつもりです。そういう意味では、これはむしろ環境経済学に頼らざるを得ないかなというところがございまして、啓発その他をしたとしても、意思決定をするときに、では、快適性と事故と環境とをどうやって比べて、どっちを選びますかと。選択の自由を最大限尊重したい。そのときに適正な選択ができるように、費用面では、こういう費用がかかっていますということをきちんと内部化して、料金は自動車を使うとこれだけ高くなりますよ、混んでないところで使うときはもっと安くなりますよという選択肢を示す仕組みを作ることが私は一番大事なことだろうと考えております。
 そういう意味で、環境費用の内部化等の議論で、一桁で議論がずれるような推定値もございますけれども、かなりの程度で環境費用について様々な形でやられておりますから、そういったものを参考にしながら、少なくともそういう選択ができる方向にする仕組みを作る。そして、具体的に、その結果、どういう住まい方がいいとか、どういうことをしたらいいというのは言えないと思います。むしろ選択の余地でこういう選択をすれば、少なくとも環境はよくなるし、コストはこれだけの負担で済みますよということをどこまで示せるか。それを私どもとしては市場メカニズムに委ねたいということで、ある意味では逃げているかもしれませんが、そういうことを進めるためには、経済メカニズムだけではだめで、規制という方で枠組みを決めて、その目標を達成するため、自分の地域ではこれだけしなければいけないと、その中で一番いい方法が選択できるような形にしたい、そういうメカニズムをどう作るかという議論なので、両論併記しましたのは、むしろそういうことなので、部会全体でその辺の方向を議論してほしいという意味も含めてまとめたつもりでございます。

【森嶌部会長】 それでは、もう1つ議題がございまして、だんだん交通だけでなくて、企画政策部会の議論のあり方そのものに関わってくるような御議論になってきましたので、もしもお許しいただければ、ここで5分ばかり休憩させていただいて、その後、北野委員から化学物質対策検討チームの御報告をいただきたいと思います。
 それでは、5分休憩させていただきます。

【森嶌部会長】 再開させていただきます。
 次に、北野主査から、化学物質対策検討チームの御報告をお願いいたします。

【北野委員】 それでは、化学物質対策検討チームから報告させていただきます。
 お手元の報告書の1ページを御覧ください。この対策検討チームでは4回の会合をもちまして、ここに氏名の記されている委員の御協力を得まして、まとめたものであります。
 本報告書は、目次にありますように、「背景と現状」、「今後の化学物質対策の基本的考え方」、「重点的に行うべき取組及びその目標」となっております。
 最初に私の方から背景について申し上げさせていただき、次に、現行環境基本計画策定後の取組状況について事務局の方から説明いただきます。その後にまた私の方から、基本的考え方と重点的に行うべき取組及びその目標について報告させていただくことにします。
 それでは、3ページを御覧ください。実は現行の環境基本計画の中に「環境リスク」という言葉が初めて公に使われたわけです。この「環境リスク」という言葉は、「環境の保全上の支障を生じさせるおそれ」という概念なんですが、化学物質のリスクをきちんと評価して、生産、使用、廃棄の各段階において環境リスクを低減させる、そのための各種の取組を進めていくことが大切であるということが現行の環境基本計画に書かれています。それに従いまして、現在までにPRTR制度とかダイオキシン類対策等の法的な整備がある程度拡充されてきていることは事実だと思うのですが、一方、「環境リスク」という言葉がまだまだ十分に認識されていないということもありますし、昨今では内分泌かく乱化学物質、いわゆる環境ホルモン問題のような国民的な不安も高まっていることも事実です。
 その辺の背景を踏まえまして、3ページのイ、特に内分泌かく乱化学物質とダイオキシン類ですが、内分泌かく乱化学物質については、平成8年の『奪われし未来』で世界的に注目されたわけですが、この問題については、試験方法と評価方法が確立していないことと、科学的な未解明な点が多いという事実があるわけです。一方、国民にとってみれば、日常生活において身近に使用されている物質でもあって、非常に不安が大きくなってきているわけです。したがって、科学的な解明を図るための科学的知見や関連情報の収集・蓄積に努め、すべての者がこれら知見や情報を共有できるようにわかりやすく提供する必要があるのではないか、こういう背景が一つございます。
 もう一つ大きな問題として、ダイオキシン類の問題があるのですが、これは今までの他の物質と違って、ごく微量でも人の健康に被害を生じさせるおそれがあるという特徴があるのですが、これについては、平成11年7月に「ダイオキシン類対策特別措置法」が作られました。しかしながら、従来の対策技術レベルとは格段に違うものが必要となってきて、これについても調査研究や技術開発の一層の推進が必要になってくるわけです。
 もう一つ、4ページの3ですが、これまでダイオキシン類以外でも汚染土壌、PCB等の廃化学物質の処理についても、どう処理していくのか、それらの対策に要する費用や処分の方法を含めて、研究・技術開発とともに、社会的な合意の形成等の取組が必要となってきているのではないかと思います。
 こういう化学物質が従来主として人の健康に対する不安ということで出てきたのですが、もう一方、4ページのウにありますように、人の健康だけではなくて、生態系への化学物質の影響の重要性が認識されつつあります。生態系への化学物質の影響というのは、生態系を構成する生物に対する影響も含んでいるわけですが、これについては、昨年11月に「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」、いわゆるPRTR法に基づいて、従来の人の健康を損なうおそれに加えて、動植物の生息若しくは生育に支障を及ぼすおそれがある物質も対象とすることになりました。このように人の健康以外の生態系の生物への影響も視野に入れなくてはいけないということがあるわけです。
 さらに背景として、5ページのカのところですが、PCB、DDTなどの残留性が高く生物濃縮されやすい物質(POPs)による地球規模の汚染を防止するための条約が現在検討されている中で、このような物質の使用の禁止・制限、排出の削減や保管されているPCB等の処理の推進が緊急の課題として求められているわけです。これは当然のことながら、化学物質による地球規模の汚染という観点からも重要なテーマになっております。
 そのような背景がございまして、これが現在化学物質にもたれている懸念なり関心だと思っております。
 この後、事務局から、現行環境基本計画策定後の取組状況について御説明をお願いいたします。

【上田環境保健部環境安全課長】 今、北野主査から背景や基本認識が示されました。こういう基本認識の下で、現行の取組状況を見ていきますと、当然次にやるべきことが見えてくると思います。また、化学物質の分野はいろいろな略語などがございまして、難しい面もございますので、若干後ろの資料なども使いながら、現行の環境基本計画策定後の政府全体の取組状況について御説明いたします。
 6つの部分に分けて書いておりますけれども、まず最初が、法律などの制度的対応でございます。今主査から御説明のございましたPRTR制度でございますが、59ページを開けていただきますと、PRTRの実施の手順ということでスキーム図が載っております。これは先ほどございましたように動植物への影響も含めて、人の健康などに影響、有害性のある化学物質を対象化学物質と定めまして、それを環境中に排出あるいは廃棄物の処理に伴って移動させている事業者を定めまして、この化学物質をどれだけ環境中に排出しているかなどということを報告していただく。この制度が来年の4月から始まります。国では、事業者以外の、例えば農地とか家庭等の非点源からの排出量も把握して、年1回公表するというシステムが始まるわけでございます。なお、このシステムの中には、個別事業者データの開示という仕組みも含まれております。
 6ページに戻っていただきまして、地球サミットのアジェンダ21にもこういう考え方、概念が示されておりまして、OECDの中でも加盟国にこれを導入するよう勧告がなされ、我が国では昨年の7月に法制化されました。併せてMSDS、化学物質の物性や有害性に関する情報を化学物質の取引に伴って提供するという制度も始まることになっております。
 それから、2のダイオキシン対策でございますが、平成11月2月に閣僚会議が設置され、同年3月に、ダイオキシンの排出総量を平成14年度までに平成9年比約9割削減することを盛り込んだ「ダイオキシン対策推進基本指針」が策定されました。また、昨年7月には「ダイオキシン類対策特別措置法」が制定されまして、先ほどの排出約9割削減をはじめとした具体的な対策が進められているところでございます。
 3の有害大気汚染物質対策、地下水汚染対策につきましても、平成8年以降、様々な取組がなされております。
 次の「その他」でございますが、平成9年に、ベンゼン、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンが大気環境基準に追加され、また硝酸性窒素等の水質環境基準への追加等が行われているところでございます。
 また、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律、「化学物質審査規制法」あるいは「化審法」といっておりますが、この化審法と呼ばれるものは、化学物質規制の入り口になるような法律でございまして、48ページ、49ページに化審法関係の資料が出ておりますけれども、様々な他の規制法と絡めて、化学物質規制の根幹をなしている法律でございます。
 50、51ページに、現行、化審法は、環境庁は関与するだけですが、環境省発足とともに関与から完全に共管するという形で、新しい省になりましたら、51ページのような体制で取り組んでいくことになっています。
 7ページに戻っていただきますが、廃棄物処理法等におきましても、それぞれ化学物質に関連する部分で様々な強化等が行われてきております。
 次に8ページでございます。2番目に大きな項目の「科学的知見の充実」でございます。まず、内分泌かく乱化学物質、いわゆる環境ホルモンでございますが、これは先ほど御説明がございましたように、科学的にはまだまだ未解明な点が多いということがポイントでございまして、OECD等の国際機関におきまして、まず、化学物質にそういう作用があるかどうか、有害性があるかどうかという試験法の開発が積極的に進められておりまして、我が国も参画しております。また、我が国では環境庁が「環境ホルモン戦略計画」というものをまとめまして、こういうものを中心にして、今、総理のミレニアムプロジェクトなどにも取り上げられまして、政府をあげての取組が進められているところでございます。
 2の「環境リスク評価の推進」でございますが、いわゆる環境ホルモンと呼ばれるもの以外、もちろん環境ホルモンも含めてもいいのですが、数多くの個別の化学物質について、環境リスク評価をしています。現行の環境基本計画に初めて「環境リスク」という言葉が取り入れられたわけですが、それに基づいて、現在、個々の化学物質についての環境リスク評価が進められております。また、その取組そのものはOECD等や世界各国で進められておりまして、例えばOECDでは高生産量化学物質(一国で1万トン以上の生産量のあるもの等)について約4,000物質ございますが、そういうものの初期スクリーニングの評価が進められているところでございます。
 また、化審法の中では、新規の化学物質に対する審査があるわけでございますが、既存の何万といわれる化学物質についての様々な評価、生分解性、生物濃縮性、さらに、9ページになりますが、平成7年度からは環境庁が藻類、ミジンコ、魚類等の生態影響の観点からの評価も行っているところでございます。
 4の環境汚染実態調査でございますが、これは昭和49年度より実施しておりまして、既に800近い物質を調査しておりますけれども、環境リスク評価を進めるには、有害性のデータ以外に、どれだけ生態系あるいは人が汚染されるかという暴露の評価が必要であり、それの基礎になるデータを20年以上にわたって収集しているということで、世界的にも注目されているものでございます。
 その他、様々な化学物質の具体的な評価手法のあり方とか、シミュレーションモデルを用いた暴露評価やリスク評価等の手法も検討され、さらに、室内汚染対策なども進められているところでございます。
 次に10ページですが、次の大きなカテゴリーの「対策技術の開発・普及」ということで、PCBとストック汚染、その他に分けておりますが、PCBにつきましては、74ページの資料を御覧いただきたいと思います。御案内のように、先ほどの化審法で1974年に製造・使用が原則禁止となっておりまして、新たな製造、輸入はないわけでございますが、現在使用されているもの、保管されているものがございまして、この処置・処理が必要なわけでございます。ただ、今までのところ、1987年に行われた鐘淵化学工業の5,500トンの処理以外はいずれも挫折しておりましたが、昨今、新しい燃焼以外の処理として化学的処理というものが開発されてきまして、これが法律上の手当もされまして、75ページの上にございますが、昨年の12月から、民間企業3社が新しい化学的処理によってPCB処理を始めたということでございます。
 10ページに戻っていただきますが、これからの大きな問題になるかもしれないストック汚染について、様々な浄化技術の開発、資金的措置がなされております。
 「その他技術開発の推進」の中には、測定には費用と時間がかかるということで、免疫酵素法を使ったような高感度の検出技術、バイオテクノロジー等を使った有害物質の無害化・除去技術の開発も進められているところでございます。
 次に、エの「各種基盤及び体制整備」でございますが、ここはデータベースの整備、施設の充実、人材の育成、地方公共団体との連携、これから非常に必要になってくる部分ではないかと思います。今まだ若干十分でないという認識を持っておりますけれども、データベースについては、信頼できるデータベースを国民の皆さんに提供する、あるいは国際的にそういうものを確立していくという作業が関係省庁において進められているところでございます。
 また、施設の充実につきましては、例えばいわゆる環境ホルモンについては、国立環境研究所に内分泌かく乱化学物質に関する施設が新設されるなどの対応を行っているところでございます。
 また、地方公共団体との間では、国環研と地方公害試験研究機関との交流などが行われているところでございます。
 11ページのオ、「民間を含めた取組の推進」という大きなカテゴリーでございますが、1が「企業における自主的取組の推進」ということで、「レスポンシブルケア」という言葉がございますが、11ページの下に小さな字で説明が書いてありますが、要するに、業界が自己責任において化学物質の自主的な管理を進めるということをいっております。また、化学物質の管理に関する企業の取組は着々と進んでおりまして、ISO14001を取得するあるいは環境報告書を発行する企業も増加しているところでございます。
 12ページですが、政府機関等の情報の提供と共有でございますが、環境庁はもとより、各種政府機関のホームページ、政府機関によるパンフレット類の配布、あるいは今後の大きな課題となっておりますリスクコミュニケーションの手法の検討等が今進められております。
 また、NGOからは様々な意見、要望が出されておりまして、こういうものに対しての対応、取組がなされているところでございます。
 次に12ページのカの「国際協調・協力の推進」でございます。化学物質は一国の問題ではなく、グローバルな問題であるという認識が必要ではないかということでございます。
 (ア)の「アジェンダ21第19章のフォローアップ」でございますが、地球サミットのアジェンダ21のフォローアップとして、IFCSという政府間の協議体が設立されまして、政府間フォーラムが2年おきに開催されており、本年はブラジルで開催される予定になっております。
 その他、IOMC等の機関も設立されているところでございます。
 しかし、化学物質に対する取組で一番中心となっているのは、言うまでもなく、13ページのOECDでございます。これにつきましては、我が国も多くの人材あるいは資金の提供、負担などを行っておりまして、化学物質の問題を国際的に考えていくプロジェクトに積極的に参加しているところでございます。
 主なものを拾ってみますと、先ほどの高生産量化学物質の安全性点検、内分泌かく乱作用に関する試験方法の開発、GLP(優良試験所基準)は、その試験所が出したデータが信頼できるかどうかということを評価する仕組みでございます。それから、PRTRの推進、リスクコミュニケーション。これにつきましては、資料の96~97ページに各論が書いてありますから、後ほど見ていただければと思います。
 2番目がIPCSでございますが、これはどちらかというとWHOに近い、WHO、UNEP、ILOが中心となって動いている機関でございますが、人の健康を中心に国際化学物質安全性計画というものの取組がなされているところでございます。
 14ページの(ウ)化学物質に関する条約でございます。1が、PIC条約あるいはロッテルダム条約というものでございますが、資料の100ページを御覧いただきたいと思います。101ページに化学物質の名前がございますが、こういう化学物質については、輸出入するときには同意するかどうかについて事前通報しておくという仕組みで、平成10年9月にPIC条約、ロッテルダム条約が採択されまして、我が国も平成11年8月に署名し、発効待ちの状況になっております。
 14ページの2、残留性が高く生物濃縮されやすい物質による地球規模の汚染を防止するための条約(POPs条約)が今議論されておりまして、本年12月の第5回交渉会議において成案を得て来年には採択される見込みでございます。これは資料の98ページでございます。99ページに、その条約の対象となる12のPOPsと呼ばれる化学物質。大部分は我が国では化審法による規制、ダイオキシン法による規制措置が既にされていますけれども、さらにこういうものの使用禁止や回収とか様々なことが今後盛り込まれる可能性がございまして、こういうものへの国内対応が今後必要になってくると考えられます。
 さらに、3のIMOなどがやっておりますTBT等の対策等も今動いているところでございます。
 15ページに、その他の国々あるいは国際機関の取組ですが、米国を中心に、より環境にやさしい化学産業を目指して安全性の高い化学物質の開発や生産プロセスの導入等を行うGreen Chemistry という考え方が提唱され、既に一部で動いているところでございます。資料の102ページに Green Chemistry の概念などが書かれております。後ほど御覧になっていただきたいと思います。
 また、OECDは、こういう考え方も含めて、Sustainable Chemistry として推進されております。
 2のところは、いわゆるPrecautionary Principle 、予防的原則あるいは予防的アプローチとか予防的方策と呼ばれるものが国際機関や国際社会で議論されておりまして、まず最初に、地球サミットのリオ宣言の中でも取り上げられております。平成9年のマイアミでのG8環境大臣会合でも、子供の環境保健に絡めて予防的な原則ということが出ておりますし、本年大津で開かれたG8環境大臣会合においても、リオ宣言の予防的アプローチを再認識するということが盛り込まれております。また、EUにおいても予防的な原則を重視した取組が開始されているということで、今、国際社会では少し注目の概念になっているところでございます。
 15ページの3ですが、その他、米国においては、PBTという概念で対策が強化されておりますし、内分泌かく乱化学物質のスクリーニング計画等も行われているところでございます。
 一方、英国におきましては、情報の公開、様々な利害関係者によるフォーラムの設立、最終的には未試験物質の市場からの駆逐を目指した新たな化学物質戦略が出ておりまして、これは104ページにございます。時間がございませんので説明は省略しますが、かなり新たな概念を含んだ戦略が英国によって提唱されています。
 また、北欧の国を中心に、特にスウェーデンにおきましては、化学物質そのものではなくて、製品という観点からの規制を検討する。このような動きがあるところでございます。
 以上でございます。

【北野委員】 今のような状況を踏まえまして、17ページに「今後の化学物質対策の基本的考え方」を6項目書いております。簡単に説明させていただきます。
 1は、化学物質の環境リスクの適正管理、情報の提供と理解の増進、環境リスクの低減等、さらには政策決定のための合意を形成していこうということが柱になっております。
 2つ目は、人や生態系に対する影響を早期に発見する手法を開発するなど、化学物質対策に資する研究や技術開発をさらに一層進めていこうということです。
 3つ目は、生態系に対する影響の適切な評価と管理です。
 4つ目は、「環境リスク」を科学的に定量的に評価し、それと併行してリスク低減のための様々な取り組みを促進していくということです。
 5つ目は、従来の規制に加えて、国民、産業界・事業者、行政が情報を共有し協力して、事業者における自主的な化学物質の管理の改善を促進するということです。
 6つ目は、国際的協調の下での地球規模での化学物質対策の推進です。
 これらに共通する考え方として、下から3行目にありますように、環境を保護するための予防的方策を広く適用するということが基本的な考え方になっております。
 最後に18ページ、「重点的に行うべき取組及びその目標」ということで、ここでも6項目挙げております。
 簡単に説明いたしますと、まず1番、基礎的データと人材です。どういうデータかといいますと、環境に放出されて人の健康や動植物に影響を与えるようなもの又はそういうおそれのあるものの環境中における存在実態の把握(環境モニタリング)、人や生態系に対する影響の実態の把握(疫学調査、生態学調査等)等のデータをきちんと収集していこう。そして、これらのデータを評価、管理できる科学者、技術者の人材の育成というのが第1項目です。
 2つ目は、環境リスクの評価ということで、特に生態系に関する環境リスクの評価を充実していき、将来的には生態系に関する環境基準等の設定の可能性等を検討していくべきであるということです。
 イは、産業界・事業者の協力の下に、必要なデータを効率的に収集し、高生産量化学物質、PRTR対象物質等の環境リスクの評価を加速化していくことです。
 ウは、内分泌かく乱化学物質についての手法の開発や評価です。内化学分泌かく乱化学物質ばかりではないのですが、このような物質の評価を国際的な協力の下で推進していくということです。
 19ページに移りますが、先ほどの基本方針にもありましたように、人の健康や生態系に対する影響を早期に発見していく手法などの研究や技術開発を一層推進していくべきであると同時に、QSAR(定量的構造活性相関)や暴露予測モデル等による評価手法、ライフサイクルアセスメント(LCA)等の研究開発を進めていきたい。また、specimen bank 等、環境試料や食材の長期継続的保管・活用というものも考えていくべきであるということです。
 3番目は「多様な手法による環境リスクの管理の推進」ですが、環境リスクを評価したら、当然、リスクの管理に適用すべきである。そして、様々な手法を用いてその環境リスクを低減させないといけない。と同時に、先ほどのGreen Chemistry 又は Sustainable Chemistry の考え方で、より安全な化学物質への代替や、安全性の高い製造プロセスへの転換を促進していこうということです。
 4番目は「化学物質関連情報の適正な提供による国民等の理解の増進と合意形成」ですが、これについては20ページ、特にウのところだと思います。PRTR法等の施行に伴い、化学物質のリスクコミュニケーションが非常に大事になってくるということで、PRTRの結果を国民に正確でわかりやすい形で公表するとともに、広報活動や環境教育・環境学習等を推進していくということです。
 5番目は、ダイオキシン類の排出削減対策、PCBの処理及び化学物質による汚染土壌対策を推進していくということです。
 最後の6番目は、国際協調・協力ですが、これはOECDやIFCS等に積極的に参加し、リードしていくことは当然なんですが、エとして、アジア地域におけるリファレンス・ラボラトリーとなるなど、アジア地域での調査・研究の拠点となるとともに、我が国で開発された簡易分析法、排出抑制技術、環境リスクの管理手法等について、アジア地域等の途上国に対して、それぞれの国の実情に応じた支援が可能となる技術移転等を図っていく。
 以上6つが重点的に取り組むべき項目とその目標でございます。
 以上で説明を終わらせていただきます。

【森嶌部会長】 それでは、ただいまの御報告に関して御質疑、御意見をいただきたいと思います。

【幸田委員】 初歩的な質問かもしれませんが、こういうデータベースはこれから、21世紀になればなるほどますます重要になってくると思うんです。この間、化学工場の火災事故などもありましたね。多くの住民がそういう化学製造会社が地域にあることを知らなかったというのもありますけれども、これからPRTRなどによってデータが収集されるようになりますと、身近な住民が地域にどういう化学製品が貯蔵されているのかという情報がもっと得やすくなる、そういうサービスを含めたデータ収集がこれからなされると考えてよろしいのでしょうか。

【上田環境保健部環境安全課長】 PRTRの対象物質は354ということで、何万とある化学物質すべてをカバーしているわけではないのですが、人への影響、有害性、生態系性への有害性等を加味して選びましたので、主なものはカバーできるのですが、単に爆発性だけあるものについては対象外になっています。それは別の消防関係等の仕組みがございますので、そういうものを含めて政府全体で対応していくことになります。ただ、今回、PRTRで354の対象物質ができたということで、その排出量などの情報については把握できるようになったと思っております。

【福川委員】 一、二教えていただきたいのですが、今御質問も出ましたが、データベースというものの国際的なネットワーク化がどの程度進んでいるものかということです。これはそれぞれ各国でいろいろな条約があったり、あるいは法律があったりして蓄積されると思うのですが、国際的なネットワーク化が非常に大事だと思います。それがどういうふうになっているかということが1つ。
 もう1つは、最後のところに発展途上国の問題等もございまして、アジア地域におけるリファレンス・ラボラトリーというのがありますが、今現実にこの分野について発展途上国のキャパシティ・ビルディングというのはどの程度行われていて、何が一番弱いのか、教えていただきたいのです。

【上田環境保健部環境安全課長】 まず前段のデータベースでございますが、データベースにもいろいろございまして、専門家が評価して信頼できるものと、ただデータを集めてきて載っかっているもの。最近のインターネットなどで少したぐれば、いくらでもデータベースになるようなものはあるのですが、信頼ができるということになれば、専門家の評価が要る。それはかなりの労力と費用もかかるということで、そういうものの確立にOECDをはじめ、海外ではEPAなどが率先してやっていて、我々も関係省庁とともにいろいろやっておりますけれども、評価がされた信頼できるデータベースという点ではまだ道半ばの部分がある。ただ、そういうものをできるだけ集めて、例えば11ページの上に書いておりますGINC(地球規模化学物質情報ネットワーク)の構築などが今なされているところでございます。
 それから、アジアのキャパシティ・ビルディングはそれぞれの国で若干違うわけですが、技術者が不足している、あるいは機材が不足しているというレベルもありますし、全くそういうことに関心がないというレベルございまして、それぞれの国によって違うのではないかと思います。例えばダイオキシンに対してもあまり関心のない国もあり、一方、硫黄酸化物に対して非常に関心がある。いろいろな国のレベルがございますので、一概には言えないのですが、そういうことに対して日本は積極的に関与して、お節介ではなくて、きちっと協力する、あるいは技術移転をするという仕組みを作っていきたいと考えております。

【北野委員】 私の方から補足させていただきたいのですが、化学物質の管理の法律というのは、従来、化学物質を作る国が主として1970年代からできてきたのですが、90年代に入りますと、例えばフィリピンとかマレーシアとか、どちらかといえば化学物質を使う国にそういう法規制が入ってきました。そうすると、化学物質を評価しないといけない。そうなると、他の国で出たデータをただうのみにするのではなくて、自分で評価していきたいという動きがあります。例えば、マレーシアなどにはJICAの協力事業で毒性試験所をつくったり、また、職員の教育等を我が国でやったりしております。

【浅野委員】 24ページに、現行計画の中の化学物質の環境リスクについての記載が載っております。ここでは、リスクの評価をするということと、リスクを低減するという2項目が掲げられているだけなんですが、5年間で状況がどれぐらい変わったかというと、様々な施策はあるのですが、一番根本となるリスクの評価というところについて、これほど多様な化学物質について非常に遅れている。ですから、それを今回特に強調する必要があるだろう。それから、リスクの低減ということについても、前回は、低減しなければいけないという決意表明に終わっておりますけれども、さらに、これも個別の話は基本計画のレベルにはとても乗らないわけですが、「多様な手法による」ということを書いている気持ちとしては、単に規制手法ではだめであろう。既に政策手法のレポートが出ておりますが、あの中にある手法を総動員するという形での総合的なリスクマネジメントシステムを今後は構築すべきだということをここでは言っております。
 幸田委員が御指摘になった点は、実は率直に言いますと、現行PRTR法はストック量については報告義務を課していないわけですが、その部分についても当然リスクマネジメントをしていただくということの中には、その把握が前提になるわけです。それから、少なくとも「安全性に関した情報を公開していく」という記載の中には、気持ちとしては、そういうところでの情報もいずれちゃんと出ていくような仕組みを作るべきだろう、つまり総合的なリスクマネジメントシステムをつくるときは当然それがあるのだということを意識しながら書いているつもりでありますけれども、現在のところ、流れの中からいうと、こういう書きぶりになっているということです。前の計画を作ったときよりもかなり動いていっているのですが、先の姿を今完全に作り上げてしまうというのは、まだちょっと難しいということで、この程度にとどまっている。ですから、さっき幸田委員が言われたことは今後の課題であることはよくわかります。

【横山委員】 21ページの国際協調・協力のことでお尋ねしたいのですが、「アジアのリファレンス・ラボラトリーとなる」と書いてありますけれども、これは化学物質、特にダイオキシンとか環境ホルモンなどは日本が欧米に比べてかなり遅れている、10年ぐらい遅れているとか、いろいろ言われているわけですが、アジアに限って、世界の拠点となるということをいわなかったのは、ヨーロッパ、アメリカにはもうかないませんということが含まれているのでしょうか。

【上田環境保健部環境安全課長】 そういう意味ではなくて、例えば分析技術などは決して欧米にひけをとらない、むしろ我々の方が進んでいるところもあると思っています。ですから、そういう分析技術などをアジアに提供する、あるいは標準物質を提供することも含まれています。それから、データベースなどを整備して、アジアの方々に利用していただく。様々な研究の場を、もちろん欧米とは共同でやるのですが、同じアジアの中で地球規模にこういう問題を考えていくには一緒にやっていくべきだ、そういう視点でアジアということをここに書いているのでありまして、決して日本が遅れているとか、アジアを見下しているという意味ではなくて、この地域全体として日本が責任をもつべきだろうという観点で書かれていると認識しております。

【河野委員】 18~20ページに今後に行うべき重点的な取組が出ていて、中心的には予防的な取組とか、情報の国民への開示というのは、結構なことだろうと思います。24ページの平成6年の環境基本計画のところで、1、3、4、特に3に、土壌汚染、市街地の土壌汚染の調査ということが書いてありますが、それから数年たっております。とすると、土壌汚染の今後の対策で、20ページの(5)でいえば、例えばダイオキシン類等の汚染土壌の浄化の推進とか、こういうことは考えられないのでしょうか。外国の先進工業国の関わる土壌汚染の浄化対策についてかなりいろいろなことが出ておりまして、日本でもこういうことを進める必要があるのではないかと思っているのですが、これについてはいかがでしょうか。

【上田環境保健部環境安全課長】 先ほど御説明いたしましたダイオキシンに関する法律として特別措置法が今回できたわけでございますが、その中で、土壌に関しても環境基準を決めております。それから、ダイオキシンによる汚染土壌に対する施策も書き込まれております。そういう点では、その施策を実現するためにはどうしてもこういう技術開発が必要だということで、ここに書いているわけなんですが、我が国でもそういうことで基準があるので、必要であれば、汚染除去対策は行うことになっているところでございます。

【河野委員】 まだ制度的に対策をとるほど汚染が確認されていないというふうに理解していいのですか。

【上田環境保健部環境安全課長】 例えば大阪の能勢地域にございます焼却場の周辺で高濃度の汚染が出ております。それは法律ができる前から既に対策がとられていましたけれども、そういうものがほかにもあるかもしれませんので、あれば、そういう措置がとられるということでございます。

【浅野委員】 化学物質によるリスク管理というのは、将来に向けてのリスク管理と同時に、既に汚染が生じている、そこから出てくるリスクの管理というのは、当然含まれるという認識があります。ですから、議論しておりまして、それは、例えば、今のところでは「技術」ということを特記して書いているのですが、特にそれが非常に重要な課題だということです。
 それから、ここでははっきり表現には出ていないのですが、これから先、合意形成ということを特に強く書いているのは、過去分のリスク管理の場合、どのレベルで管理するのが最も合理的かというところが本当は問題なんです。際限なくきれいにしろと言われると、ある意味では限られたバジェットが一定のところにしか投入されない。だから、どのレベルのところでクリーンアップするのが一番環境リスクマネジメントとしては適正かということが問題だということは、ワーキングではかなり議論しておりまして、そのような気持ちが中に含まれておりますので、計画の中ではもう少しわかりやすく表現をすべく努力をいたします。

【西岡委員】 国際的に予防原則ということが論議されているリオ宣言の15原則に書かれているという話がございました。これはどういうふうに解釈しておられるかということについてお伺いしたいのですが、予防的原則というのは、リスクの管理については、多分大きく2つに分かれる。1つは、どんんどん突き詰めていくと、どこに分布して、どれだけ毒性があるかという形でどんどん評価していって、マネジメントするというのがメインのストリームでありますけれども、やろうにもやれない、新しい製品についてなかなか評価しにくいという場合には、むしろこれを回避するというのが2つ目の手だと思われます。そのとき、むしろ後者の方、すなわち確率も何もよくわからないものについては、あえて市場に参入させないようにしようというのが予防原則ではないか、これは私の解釈でありまして、皆さんの解釈をお伺いしたいのですが。そういう面からみて、例えばイギリスの例、未試験物質を市場から駆逐するとか、難分解性・高蓄積性と思われるものは初めから排除してしまおうと、それが安全かどうかということを評価していけばわかるかもしれませんが、という一段より厳しい態度が予防原則の中に含まれていると思うんです。
 その点からいいますと、24ページに現在のリスク対策として書かれているのは、評価しましょう、評価してリスクがあったら、それを低減していきましょうという、マネジメントするという前提でもっての対策が書かれているわけですが、私が申しました意味でそれが正しいかどうかは論議があるところかと思いますが、初めからリスクを回避するといったような方策は検討されるのでしょうか。

【上田環境保健部環境安全課長】 その点は非常に難しいことだと思っております。今、委員御指摘の2つの考え方があると思っております。国際的なルートを通じていろいろな関係者に聞いてはいるのですが、おっしゃったように、回避するという考え方もあれば、リスク評価を行って、その結果をみてという考え方もあるようです。ただ、口をそろえて言うのは、データが不完全だから何もしないということはだめだ、何らかのアクションはとるべきだということは一致しています。しかし、直ちに回避までいくか、そこはケース・バイ・ケースだというのが我々の認識なんですが、いずれにしても、この辺の議論は、それぞれの国あるいは担当者によって受け止め方が違うようですので、もう少し情報収集をしていく必要があるのではないかと思います。ただ、回避するにしても、ただ噂だけで回避するというわけにはいきませんから、きちっとしたリスク評価といわないまでも、何らかの科学的な検討を行って、その結果において行動するということは必要ではないかと思っているところでございます。

【西岡委員】 付け加えておきますが、今のような回避という方針を立てるとしますと、ある製品を上市するときは、完全に安全であるという証明は、つくる方がやらなければいけないとか、後の手順にきいてくると思うんです。そういう面でお伺いしたわけです。

【鈴木委員】 今の予防原則の問題で、西岡委員の発言に関連するのですが、結局、だれがいかなる手続をもって当該のものの有害性を考えるか、そこのところの社会的な合意の形成の仕方だと思います。どういうシステムをつくってやれば、それができるのか。そうではなくて、初めから、例えば薬剤の場合と同じように、化学物質の安全性を証明するのは、つくって売る方の責任ですよという形で全部さばいてしまうやり方も場合によってはあるかもしれません。しかし、それは恐らくものすごく効率が悪くて、経済的にも実際上も多くの問題をつくり出すだろうと思います。問題は、ある化学物質がいかなる有害性をもっているかを推定する妥当な、もっともらしい根拠があるのかないのか。ないとすれば、どんなテストをやって、どうチェックすればいいのかというあたりのシステムづくりをやらなければいけないのだろうと思っています。

【天野委員】 環境影響評価などでもよく議論されるのですが、「開発をどの程度やりますか」というところで議論するのと、「全くやりません」という選択肢を入れて議論するのとはかなり違ってくると思うんです。今のお話でも、西岡先生のおっしゃっているのは、「新しい物質を導入していいですか」という決定をするときに、何もしない、つまり導入しないという選択肢を入れた上でシステムをつくるということが問われているのではないかと思うのですが、そういう意味で、環境問題について一般的な予防原則というのは、そういう形で適用すべきではないかというのが私の意見です。

【森嶌部会長】 それでは、まだ御議論がおありかと思いますが、これで終わらせていただきたいと思います。
  この後、小委員会のことを申し上げますので、名簿をお配りいただきたいと思います。
 〔環境基本計画小委員会名簿配付〕

【森嶌部会長】 次回は、安原委員から、地球温暖化対策検討チームの御報告と、廣野委員から、環境における国際的寄与・参加の在り方検討チームの御報告をいただく予定であります。
 この2つを御報告いただきますと、これでほぼ全部終わったわけですが、前にも申しま
 したように、廃棄物対策等物質循環の在り方検討チームは、循環型社会形成推進基本法の立法の動向を見極めた上でということになっておりまして、実は本日からこの検討チームの御検討が始まったところでありますので、廃棄物対策等物質循環の在り方検討チームの御報告はもう少し遅れると思います。そこで、ほぼ検討チームの御報告が終わったということで、この辺から小委員会を設けまして、論点整理に入りたいと思っておりまして、小委員会に中間とりまとめのたたき台を起草していただき、それに基づいて部会の審議を行っていきたいと思っております。
 中環審の運営規則によりますと、小委員会のメンバーは部会長が指名するということになっておりますので、皆さんのお手元にお配りしました小委員会のメンバーを私の方から指名させていただきたいと思います。
 ここに書いてございますように、委員長には安原部会長代理にお願いしたいと思っております。よろしくお願いいたします。
 本日、時間の関係で御発言いただけなかった方は、来週の21日頃までに事務局に文書でお知らせいただければと思います。
 次回の日程でございますが、6月26日(月)の午後2時から開催することとなっておりまして、場所はホテルフロラシオン青山のふじの間でございます。
 それでは、本日はこれにて閉会いたします。どうもありがとうございました。

 <以 上>