中央環境審議会第78回企画政策部会会議録

1.日  時  平成12年6月2日(金)14:00~17:00

2.場  所  中央合同庁舎第5号館2階 講堂

3.出 席 者

(部 会 長)森 嶌 昭 夫
(部会長代理)安 原   正
(委    員)浅 野 直 人
江 頭 基 子
木 原 啓 吉
佐 竹 五 六
塩 田 澄 夫
中 野 璋 代
福 川 伸 次
星 野 進 保
松 原 青 美
宮 本   一
村 杉 幸 子
渡 辺   修
天 野 明 弘
北 野   大
幸田シャーミン
佐 和 隆 光
鈴 木 継 美
平 岡 正 勝
藤 井 絢 子
松 原 純 子
三 橋 規 宏
村 岡 浩 爾
谷田部 雅 嗣
(特別委員)飯 田 浩 史
太 田 勝 敏
横 山 裕 道
石   弘 光
廣 野 良 吉
(専門委員)寺 門 良 二西 岡 秀 三
(環 境 庁)丸山官房長
太田企画調整局長
廣瀬大気保全局長
浜中地球環境部長
小林官房審議官
富田企画調整局企画調整課長
岩田水質保全局地下水・地盤環境室長
小木津企画調整局調査企画室長
細谷企画調整局環境計画課長

松本自然保護局長
遠藤水質保全局長
西尾環境保健部長

小沢水質保全局水質管理課長


大林企画調整局環境計画課計画官

4.議  題

(1)環境基本計画の見直しについて
(持続可能な経済社会の実現のための投資の在り方(環境投資)検討チーム報告・環境保全上健全な水循環の在り方検討チーム報告等)
(2)その他

5.配 付 資 料

持続可能な経済社会の実現のための投資の在り方(環境投資)検討チーム報告書
(持続可能な経済社会の実現のための投資の在り方(環境投資)検討チーム提出資料(抜粋))
環境保全上健全な水循環の在り方検討チーム報告書
(「環境保全上健全な水循環の在り方」に関する検討チーム報告書参考資料)

6.議  事

【細谷環境計画課長】 時間がまいりましたので、中央環境審議会第78回企画政策部会を始めたいと存じます。
 開始に先立ちまして、まず資料の確認をさせていただきたいと存じます。
 

(配付資料の確認)

 資料は以上でございますが、お手元にそろっておりませんようでしたら、お申し出いただきたいと存じます。
 それでは、部会長、よろしくお願いいたします。
 
【森嶌部会長】 それでは、ただいまから第78回企画政策部会を開催させていただきます。
 本日は、前回に引き続きまして、環境基本計画見直しの各論的事項について、各検討チームで御検討いただいておりましたテーマについて御報告をいただく予定でございます。まず、環境投資検討チームから主査の三橋委員に御報告いただきたいと思います。そして、この御報告に対する質疑と併せて御議論いただきまして、次に、環境保全上健全な水循環の在り方検討チームから主査の村岡委員に御報告いただきたいと思っています。そして、この御報告につきましても質疑と併せて御議論いただくつもりでございます。
 それでは、三橋委員、よろしくお願いいたします。
 
【三橋委員】 それでは、私の方から環境投資の報告書についてアウトラインを報告させていただきます。私の説明の後、事務局にさらに各論について説明していただきたいと思います。
 目次を見ていただきますと、「はじめに」から始まって、1章、2章、3章、4章という構成になっております。これの簡単なアウトラインについて報告させていただきます。
 日本は、公共部門、民間部門の積極的な投資に支えられた高度成長期を卒業して、現在成熟社会に入っています。したがって、地球環境の保全という視点からいえば、投資活動は経済活動の中でも最も環境負荷を伴う経済行為であるわけです。それだけに地球の限界に遭遇している現在、あらゆる投資活動には環境配慮が必要な時代になっていると思います。しかし、「環境配慮」というスローガンを掲げて、実際には環境に大きな負荷を与えるような投資活動が行われる可能性もまた少なくないと思います。
 そこで、この報告書は、「はじめに」のところで次のような指摘がしてあります。この報告書を御覧いただきたいと思います。「持続可能な経済社会の実現のためには、環境負荷の低減につながるインフラ整備や環境配慮型の製品・サービスの供給、生産の前段階の調査研究・技術開発等のための投資が大切である」という視点に立って、公共セクター、民間セクターの投資のあり方について検討しているわけでございます。
 まず、報告書の4ページの2章の「環境投資とその意義」のところで環境投資の定義を行っております。「環境面から見て持続可能な経済社会を構築するために必要あるいは望ましいと考えられる投資」を「環境投資」とここでは呼んでいるわけです。
 次に、このように定義された環境投資の中身を4分類にしてあるわけです。これは4ページの下のところにありますが、「環境負荷の低減、処理のための投資」。その例として、廃棄物・リサイクル、下水道、ゼロ・エミッション等、生産工程のグリーン化、低公害車の生産。2番目が「環境の維持、復元、創造のための投資」、3番目が「資源・エネルギーの使用の削減、効率化、再生可能なものへの転換等のための投資」、4番目が「持続可能な経済社会に関する技術開発、モニタリングのための投資」という形で、投資の中身を4分類にしているわけです。
 次に、5ページに移っていただいて、このように定義された環境投資は、これからの経済社会の建設にどのような意義を持っているのかということが、(3)の「環境投資の意義」以下で述べられています。とにかく環境投資が行われることによって持続可能な経済発展が可能になるというのが最大のポイントであるわけです。環境破壊がこれ以上どんどん進んでいけば、投資活動そのものもできなくなって、経済そのものが破綻してしまうということですから、経済の持続可能な発展のために環境投資が必要であるというのが一番大きな目的であるわけです。
 それから、環境投資は、いわゆるGDPの需要項目を構成している投資活動ですので、それ自体が需要を喚起するわけです。特に不況局面では景気の下支え役をするわけです。例えば1970年代の初めに石油ショックで景気が低迷したときも、当時は公害投資が積極的に行われて景気の下支えをしたということもあるし、第2次石油ショックの後も同じような傾向が見られたわけです。そういうことで、環境投資は、景気に対しても一定の役割を果たします。
 もう一つは、環境投資を積極的に行うことによって、技術革新あるいは生産工程の改善といった分野でも新しい知恵を開いていく可能性があるわけです。そういうことで、環境投資は持続可能な発展を作るほかに、景気対策あるいは新しい技術、生産システムの改善といった点でも大きな効果を持っています。
 次に、3章の「環境投資の検討の基本的な考え方」に移ります。これは環境基本計画との関係について触れております。環境基本計画の中で「循環」と「共生」ということを強調しているわけですが、環境投資も「循環」と「共生」という視点からその必要性を考えておく必要があるだろうということです。
 2番目の特徴としては、公共部門と民間部門のそれぞれの特徴を生かした環境投資というものがあるということです。これについては4章以下でも各論が述べられています。
 4章は「環境投資の推進に当たっての課題」ということです。これは分量的にもこの報告書の中の要になっているわけで、報告書の結論部分がここに込められているわけです。
 公共部門の投資については、その優先度を検討する手がかりとして、環境保全経費の改善を提案しています。ただ、環境保全経費は、各省庁がそれぞれ自発的に「この投資は環境保全経費である」というふうに見積もっているわけで、統一した基準がないわけです。したがって、他の省から見たり、専門の学者から見ると、これが環境保全経費の中に入っているのかなと思えるようなものも多々含まれてしまうわけです。したがって、「環境保全経費の改善が必要であり、そのためには統一的なガイドラインのようなものが必要ではないか」という意見も出されたわけです。環境保全経費のあり方を改善することによって、公共部門の投資に影響を与えていくことができるのではないかというのが一つのポイントです。
 そのほか、公共投資一般については、環境アセスメントあるいは環境マネジメントシステムのような手法の検討。それから、財源の問題もありますので、PFIの活用といった形の検討も必要であろうということで、この部分についても盛り込まれております。
 民間部門の環境投資につきましては、「企業の自発的な環境投資をいかに引き出すかということが重要なポイントである」という認識で委員の皆さんの意見は一致していたと思います。したがって、民間の自発的な投資を引き出すため、それを阻害している要素を取り除くことが必要であるということです。
 環境投資を阻害している要素を取り除いて、民間が積極的に環境投資に取り組めるようにするためには、例えば循環型社会構築のための将来像とそこに至るシナリオをはっきり提示すること。それから、環境コストの市場内部化を何らかの形で盛り込んでいくことが必要であろう。それから、いわゆる消費者の協力です。環境配慮型の製品を消費者が積極的に購入してくれるような、そういう消費者の支持をどのように広げていくか。また、金融機関がやっているエコファンドも企業に環境投資を促進させるためのインセンティブになりうるのではないかということが盛り込まれている報告書になっているわけです。
 それでは、各論は事務局の方にお願いいたします。
 
【細谷環境計画課長】 引き続きまして、私の方から補足的に説明させていただきます。ただいま三橋先生から基本的な組み立てについての話がございましたので、私の方からはこれをやや詳しく敷衍する形で説明させていただきたいと存じます。
 まず、1ページの「はじめに」につきましては、先ほど三橋先生からお話があったとおりでございますが、以下の記述との関係で申しますと、このチームの基本認識が2つ目の段落のところに書かれておりまして、「公共部門、民間部門を通じ、直接環境保全に効果を有する環境のための投資を促進するとともに、あらゆる投資にきめ細かく環境配慮を織り込んでいくことが極めて重要である」ということ。すなわち、環境投資と投資全体にわたるエコ化、グリーン化、この両方がともに重要であり、環境投資というのは、投資全体のエコ化を先導し、その基盤を整えることなのだ、ということが書かれております。
 なお、委員の中から、「少しでも環境に関連すれば、環境投資であるとのレッテルの下で進められるようなことはおかしい」という指摘がございましたので、その旨が最後の段落に付記されております。
 ページをおめくりいただきまして、1の「環境問題と投資をめぐる情勢」でございます。まず(1)におきまして、人類の文明が地球の容量の制約に直面しつつある中で、生産や消費のパターン、すなわち経済社会システムやライフスタイルを大きく転換していくことが必要になっており、持続可能な発展の考え方が内外のコンセンサスになっている、ということに触れております。
 次に(2)におきましては、最初のパラグラフでございますが、我が国の社会資本整備の状況を概観しまして、新規投資から維持管理あるいは更新のための投資にウエートが移りつつあるということ。あるいはこのような流れが従来型の社会資本整備から、持続可能な経済社会に向けての諸システムの転換を図っていく上で必要な社会資本整備に重点を移していく絶好の機会を提供することになると考えられる、ということを述べております。
 第2のパラグラフにおきましては、我が国の経済動向や財政事情から財政の対応力が低下し、社会資本整備についても限られた財源の重点的、効率的配分を求める要請が高まるものと考えられるであろう、ということが述べられております。
 第3パラグラフでは、国民の社会資本に対するニーズも生活をより充実する方向あるいは単なる量的充足から個性豊かで活力に満ちた地域社会を求める方向へと大きく変化してきている、ということが述べられております。
 さらに第4パラグラフにおきましては、社会資本の整備や運営の手法について、民間の資金やノウハウの活用の方式が模索されている、ということに触れております。
 第5パラグラフは、以上のような情勢を総括したものでございますが、「我が国が持続可能な経済社会を構築していくためには、環境上の「負の遺産」の解消や環境の復元を含めて、社会資本整備における環境の保全のための、あるいは環境保全に資する投資の推進を図るとともに、投資全体に環境配慮をシステム的に織り込んでいく努力を行う必要があると考えられる。」ということを述べております。
 (3)におきましては、「民間投資の状況」を概観しております。
  第1パラグラフにおきましては、民間投資における環境配慮の織り込みが、循環型経済社会システムや共生型社会に新たな豊かさを認める消費者のニーズの変化に沿った形で展開していくものと考えられるということ。また、企業の経営方針の決定に際して、環境を考慮すべき主要な要素の一つと考える傾向が強まっていることから、持続可能な経済社会にふさわしい市場への質的な変化が期待されること。また、このような市場の質的変化こそ持続可能な経済社会を実現するための前提であるということ。これらを指摘しております。
 また、なお書きにおきましては、我が国の経済構造の変化が相対としてそのような方向に寄与するであろう、ということが指摘されております。
 第3パラグラフでは、反面、環境のように外部経済性の強い事柄について全面的に市場に委ねれば足りるというものではなく、市場価格への内部化や資源・エネルギーの削減、効率化等のための投資の推進など、市場の質的な変化を促すための基盤的な施策を進めることが重要である、としております。
 これを受けまして、最後のパラグラフで、民間投資に関しては、行政は、可能な限り民間の自主性を前提として、必要な投資が確保されるための枠組みを整備するとともに、民間において所要の投資が確保されがたい場合には、必要に応じ、支援策を検討すべきである、ということを述べております。
 4ページからは、「2 環境投資とその意義」としまして、環境投資について、それがなぜ必要なのか、これが何を指すのか、また、どのような意味を持つのか、という点について整理をしております。
 (1)におきましては、環境基本計画が目標とする「循環」と「共生」を基調とした持続可能な経済社会を構築していくための具体的な方策として、環境の視点から見て必要な、あるいは望ましい投資のあり方について、環境基本計画において一定の方向性を示すことが必要である、ということを述べております。
 次に(2)におきましては、ただいま三橋先生の方からお話がございましたように、最初のパラグラフで環境投資の定義を行いまして、第2パラグラフではそれの類型化を行っております。なお、この場合の投資につきましては、最初のパラグラフの中にございますが、資金ベースの概念ではなく、公共投資や設備投資など資本の形成ベースの概念としてとらえられておりまして、そのような投資を行うために必要な資金の問題というのは、そのような資本の形成の財源として考えることとした、ということが注記されております。
 第3パラグラフでは、「環境投資」と一口にいっても、直接環境保全施策につながる投資、すなわち環境保全のための投資とでもいうべきものと、間接的なもの、すなわち環境保全に資する投資とでもいうべきもの、この2つがあるということを述べております。
 第4パラグラフでは、検討会における議論を踏まえまして、このうち環境保全に資する投資については、どの程度環境に資するものであれば環境投資といえるのか、ほんのわずかでも環境に資すれば環境投資といえるのか、という問題があることを指摘しまして、この点については、投資と環境の関係の判断、評価を政策決定過程に組み込んでいくための枠組みが必要であること。また、その判断の基礎となる環境に関する統計のあり方を検討することが必要であること。こういうことが議論されたということが述べられております。
 (3)におきましては、先ほど三橋先生のお話にございましたところですので、1のところは省略させていただきたいと存じます。
 2におきましては、環境投資の性格や効果を公共部門と民間部門に分けて整理しております。
 最初のパラグラフにおきましては、その前提となる公共部門と民間部門の役割についての考え方をまとめております。ここでは、公共部門というのは、自らの環境投資を通じて社会基盤を環境配慮型のものに変えていくこと、あるいは民間が投資への環境配慮の織り込みを行いやすくする環境を整える役割を担う、ということと位置づけておりまして、民間部門というのは、これを受けて自発的に投資行動や消費行動に環境配慮を織り込み、環境保全型の市場形成を図っていくものとした上で、市場が現状においては、投資行動や消費行動への環境配慮の織り込みや、環境保全が豊かさの重要な要素であると十分に認知するほど質的に転換しきれていない。そこで、当分の間、公共部門が先導的な役割を果たす必要がある、ということを述べております。
 アにおきましては、公共部門の環境投資が環境配慮型の活動のインフラを提供すること、あるいは環境産業等の成長に寄与すること、技術の革新や新たな市場の創造につながること、こういう点に着目しております。
 イにおきましては、民間部門の環境投資について、環境の修復等に要する社会のコストの削減につながること、あるいは天然資源の使用を抑制し、環境負荷が低減された経済社会への転換につながること、さらにビジネス・チャンスの創出の契機となる。こういうことに触れまして、6ページの一番下のところから、「持続可能な経済社会への転換という大きなシナリオの中において環境投資を促進するための条件整備を行いつつ環境投資の戦略的な展開を図ることが、環境と経済が統合された経済社会の運営に道を開くためにも、我が国産業が国際的競争力を維持しつつ産業構造の転換を図っていくためにも、必要不可欠なものとなっている。」としております。
 7ページの4行目以下には、これを裏づける動きを、国際的な枠組みや産業構造、環境施策の動向等に触れながら、ポツで示してございますが、6点ほどに分けて記述しております。
 なお、(注2)におきましては、環境産業の動向等について整理しております。
 9ページからは、「3 環境投資の検討の基本的な考え方」として、本検討会における検討に際して踏まえた視点について触れております。
 (1)におきましては、本検討会の検討は、「循環」と「共生」の双方を視野において行われた、ということを述べております。
 次に(2)におきましては、環境投資を公共部門と民間部門に分けて検討した趣旨、これが資金の出どころ、あるいは投資主体、目的、主として実施される分野等、相当な相違があることであるということに即して述べられております。
 10ページにまいりまして、公共投資、民間投資、研究開発につきまして、それぞれ研究に当たって踏まえるべき視点を述べております。そこでは、公共投資に関しては、例えば公共投資のグリーン化の積極的な推進の必要性。あるいは高度成長期に大量に整備された社会資本が更新期を迎えることを契機として、社会資本の環境配慮型のものへの転換を積極的に推進することの必要性。循環型社会のために必要な社会インフラの積極的整備の必要性。環境上の「負の遺産」の解消のための投資の必要性。こういうような事柄に触れております。
 また、民間投資に関しましては、行政の関与、特に規制は最小限にとどめるべきこと。あるいは環境コストの市場価格への織り込み等の適切な条件整備が必要であること。こういうことを始めとして、環境の市場化、価格メカニズムへの環境容量の織り込みの必要性、循環型経済社会システムの構築の推進等に触れております。
 さらに、研究開発につきましては、官民の役割分担の考え方や投資を促進する基盤となる研究開発の必要性、既存技術やローカルな技術、いわゆる適正技術、これらの幅広い目配りが必要であること。さらに、環境面における技術革新のためには、環境政策の方向性あるいは目標を明確にした上で、産業界と連携した戦略的な誘導を図ることが有効であること。こういうような事柄に触れております。
 12ページからは、「4 環境投資の推進に当たっての課題」として、今後環境投資を推進するために必要な事柄を整理しております。
 (1)におきましては、公共部門に関する課題を整理しております。その内容につきましては、柱書きのところに要約されております。この柱書きで説明させていただきますと、最初のパラグラフにおきましては、我が国経済社会を持続可能なものに転換していく上で、環境投資が重要であるとともに、環境投資以外の投資についても環境配慮が織り込まれていること、すなわち投資のグリーン化が必要であることを述べております。
 第2パラグラフでは、これを受けまして、中長期的には投資全般をめぐる環境が厳しさを増す中において、環境投資を充実させていくためには、必要な環境投資の内容を明らかにし、これを優先度の高いものとして扱っていく枠組みが必要であり、そのような枠組みとして、予算編成に関連して行われている環境保全経費の見積もり方針の調整を活用すべきことを述べております。
 第3パラグラフにおきましては、より広く公共投資一般に環境配慮を織り込んでいく枠組みとして、公共事業官庁等を中心にやっている事業評価システムに環境配慮の状況を重要な視点として適切に織り込んでいくこと。また、環境アセスメントについて技術手法の確立等のきめ細かい対応を行うこと。戦略的環境アセスメント、環境マネジメントシステムのような手法について検討すること。こういうことを挙げております。
 第4パラグラフにおきましては、公共投資の分野において、民間の資金やノウハウが活用される場合の注意書き的な事柄が書かれております。
 以下、1から4まではこれを敷衍して記述しているところでございます。若干コメントを加えますと、1におきましては、極めて広範多岐にわたり、複数の関係省庁において取り組まれている環境保全施策を政府全体として効率的な展開を図るため、環境庁が関係行政機関の環境保全経費の見積もり方針の調整、すなわち「環境保全経費」といっておりますが、この仕組みを環境投資の推進の枠組みとして活用すべきではないか、ということを提言しております。
 そのためには、12ページの下のところにあるような課題。先ほど三橋先生の方から紹介されましたが、施策の登録基準とプライオリティー付けが不十分であるという点。あるいは環境基本計画との一体的運用、国民に対するアカウンタビリティーが十分でないということ。こういう点についての改善が必要であるということを述べております。その上でこの仕組みを使えということでございます。
 2におきましては、公共事業関連官庁において取り組まれている様々な事業評価に対しまして、環境配慮の視点を織り込んでいくため、公共投資に際しての環境配慮のガイドラインを早急に整理する必要がある、ということを述べております。
 3におきましては、手続的な環境政策手法。先般、グリーン化メカニズムの方で御報告がありましたが、それに関連して、3つの点について指摘がございます。1つは、環境アセスメントの適切な実施を図ること。2つ目は、いわゆる戦略的環境アセスメントについて、制度化を早急に検討すべきではありますが、当面は諸外国における実施事例を踏まえて、手続、内容、評価方法等の原則を明確化しつつ、実例を積み重ねていくことが重要であること。3つ目は、日常的現場レベルの環境配慮織り込みのための取組をシステム的に進めるための基盤として、環境マネジメントシステムといわれる手法を公的部門に導入することが有効である、ということを述べております。
 14ページからは「民間部門における環境投資の促進」について触れております。柱書きのところにおきましては、先ほど御紹介がございましたように、「民間部門における環境投資の促進のためのポイントは、企業の自発的な環境投資を引き出すという点だ」という認識が述べられております。
 そして、3つ目のパラグラフにおきまして、環境投資に関する課題を5点に要約しておりまして、これらに対する対応の方向性を15ページの1から3までにまとめてあるわけでございます。
 すなわち、1のところでは、個別企業の環境投資が適切な方向性と規模をもって実行されるためには、経済社会の将来像とそこに至るシナリオが提示されることが望ましい。そのための仕組みとして、経済計画あるいは全国総合計画というものがあるわけでございますが、新しく5年前にできた環境基本計画もその役割を担うべきである、ということが述べられております。
 さらに、このようなシナリオの下に、環境産業の活性化、環境技術の振興、環境に関連する社会基盤の充実等の論点を含む環境投資の促進に関する基本的なシナリオが提示されることが望ましい、としております。
 2におきましては、いわゆる「市場の失敗」といわれるような問題を解決し、民間主体による環境投資を促進していくためには、「規制措置や経済的措置を通じ、環境の利用のコストを市場に内部化することにより、これまで潜在していた環境保全のニーズを顕在化させ、環境投資のための需要を形成していくことが必要であり、効果的である。」と述べております。
 3におきましては、「環境投資の促進のための環境整備」として、まず、「企業における環境経営の促進」と題しまして、環境マネジメントシステムや環境会計といった企業が環境経営を実施していく上で必要なツールの提供、あるいは企業の環境保全対策に関する情報についてのコミュニケーションを図るためのツールの開発が必要であるということが言われております。
 以下、イからオまでにおきまして、環境投資の促進と一体となった社会インフラの整備の必要性。グリーン購入の助長による需要面からの環境投資の促進。あるいはエコファンドや企業の環境の観点からの評価。こういうものによる環境投資のための資金調達の円滑化。18ページにまいりまして、「税財政、政策金融上の支援の枠組み」という点について触れております。
 (3)におきましては、公共部門、民間部門を通ずる問題についてまとめております。
 まず、1におきましては、「環境研究及び環境技術開発」について述べております。この部分につきましては、19ページの一番下のパラグラフにございますように、昨年7月に本部会で環境研究技術基本計画を審議、答申しております。これを踏まえて記述されておりまして、20ページの2つ目のパラグラフにございますが、環境基本計画の見直しに当たっては、環境研究技術基本計画を踏まえて所要な整理を行うとともに、それらの実現のために必要な施設・設備の投資について環境投資として推進すべきである、ということを述べております。
 次に、2におきましては、環境情報が環境保全という共通の利益を実現していく上で必要不可欠なものである。また、産業振興という点でも、環境情報の不足が予測可能性の低下をもたらし、環境投資の促進の妨げになっているということを指摘しまして、そこにポツでお示ししているような3つの点について検討すべきことを提言しております。
 最後に3では、環境投資の推進に当たって、地域における連携というものが極めて重要であるということについて述べております。
 報告書は、「おわりに」のところにおきまして、新しい環境基本計画の策定に当たりましては、環境投資をどのように位置づけるかという点、また、環境基本計画の取りまとめに当たって、もう一度各チームの検討結果を踏まえて、今後促進することが望ましいと考えられる項目を具体的に再整理することを提案いたしまして、全体の検討を締めくくっているわけでございます。
 なお書きは、環境投資を考える場合に、世界の中の日本ということを十分認識して対応すべきだ、ということを付記したわけでございます。
 なお、別冊になっております参考資料につきましては、この報告書を取りまとめるに当たって検討チームに提出された資料の一部を抜粋したものでございます。
 かなり重複した説明で申し訳ございませんでしたが、以上でございます。よろしくお願いいたします。
 
【森嶌部会長】 それでは、三橋委員と今の事務局の御説明に関する質疑及び御議論がございましたらどうぞ。
 
【天野委員】 3点ばかりお伺いしたいことがあります。まず第1は、前書きの「はじめに」の部分の最後の段落と関連があると思いますが、4ページに環境投資とはどういうものかという定義があります。投資というのは、大きなプロジェクトの中でいろいろな種類の投資が混ざって起こることが多いのですが、その一部分がこの定義に合うのだけれども残りの投資はそうではないという場合に、全体をどういうふうに判断すればいいかということが曖昧になるかなという感じがするのですが、その辺をどういうふうに整理されているかということをお聞きしたい。
 2つ目は、14ページに「必要な投資のレベルが確保されない場合」とありまして、これは民間投資の中で環境投資が十分に行われていないと判断されたら、ということだと思います。もう1カ所、3ページにも「環境投資が所要の水準に達していないと判断されたら、何らかの支援をする」という記述があります。必要な投資が確保できているかとか、所要のものがされているかというのは、数量的にみて足りないということなのか、あるいは適切な分野に行われていない、その分野は民間があまり上手な投資ができないところだから、公共部門が補っていかなければいけない、そんな質的なものなのか、その辺がよくわからないのです。
 もし数量だとしますと、例えば国としてはこれだけの量の環境投資が行われるべきだという考えがあってということが前提になりますけれども、それがどこから出てくるのか。何か計画みたいなものを持っていて、将来像とかそこに至るシナリオを数量的に描いてみて、環境投資のレベルは大体これぐらい、全体の固定投資の何%ぐらいという基準があって、しかし実際に調べてみるとそれに達していないということであれば、前提となる数値目標みたいなものが必要になってくるのですが、これは大変難しい話だと思うんです。
 もう一つの、ある特定の領域について民間の投資が十分に行われないので、それを補う必要があるというのであれば、どういう基準でそういう領域を判定するのかということが必要になると思います。この点が2つ目です。
 最後は、これは全体に国内の投資の話だと思うのですが、御承知のとおり、日本は対外的に非常に多くの投資を行っていて、企業の対外投資などがありますが、それについて全く触れる必要がないのか。投資についてこういうふうな考え方があるのであれば、そういう点も配慮が必要ではないかと思うんです。経団連は、対外投資をするときには、環境配慮してこうこうするという方針をちゃんと打ち出しておられますけれども、民間に任せるなら任せるという記述が必要なのか、あるいは政策的な配慮が必要なら、それを書き込むことが要るのではないか。この3つです。
 
【三橋委員】 全体の投資の中で、一部が環境投資であって、一部が環境投資でない場合にどういう配慮をするかということについて、ここでは「投資のグリーン化」ということをいっているわけですが、それはアセスメントとか、これまでに開発されたいくつかの方法で対処していくというような議論だったと思うんです。今日はこの検討会に属している福川さん以下おられますので、後で補足していただけるとありがたいのですが。
 それから、必要な投資ができないということと、必要な分野に投資できないという議論では、必要な分野に投資できないという議論はあまり積極的に問題意識として上がってこなかったような感じがしますけれども、これは事務局の方で後で追加的にお願いしたいと思います。
 それから、最後のところがよく聞き取れなかったのですが……。
 
【森嶌部会長】 ここでは国内の投資のことを扱っているけれども、国際的な投資のことについては触れなくてもよいのか、という御趣旨だったと思います。
 
【三橋委員】 一番終わりのところで触れてあるのは、国際的な投資ということをまともには扱っていなかったですね。それはこの環境基本計画があくまで国内問題を中心に作られているということで、海外の投資のあり方についてまで、テーマとしては出てきたのですが、突き詰めた議論をしていません。
 
【森嶌部会長】 今の点につきまして、1ページに検討チームの委員のお名前が載っておりますから、委員の方から何かコメントがありましたらどうぞ。
 
【福川委員】 議論の過程でいま天野先生がおっしゃったような点が議論になりましたが、特に投資の中の一部に環境関係があり、その他の部分もあると。確かに設備投資というのはそういう傾向のものが非常に多いだろうと思います。それから、産業構造が変わっていく場合について見ると、直接的に環境保全でなくても、全体として見ると経済のパフォーマンスがよくなるという分野もきっとあるのだろうと思うんです。
 したがって、非常に複雑なものですから、そこをどうとらえるかなんですが、ここで投資のインセンティブ等を考えるとすれば、一つは市場の選択からくる分野と、もう一つは投資のインセンティブというところからくる分野があって、その場合に、インセンティブを与えるとすれば、環境の投資ということですと、環境に関する部分についての注目を集めた投資政策ということが重要になるだろう。
 もう一つ、広い視点でいうと、産業構造政策のような形で構造を変えていくというところもありますけれども、そこまで広く「環境投資」といってしまうと、少し焦点がぼけてしまうと思いまして、そこは全体の産業構造投資という観点でとらえてはどうだろうかというのが、少なくとも私の認識でした。
 国際関係の問題についは、この報告書の最後のところにも若干、「世界的規模で環境技術の開発や環境産業の成長が見られている」というふうに指摘しておりまして、御指摘のような点は非常に重要だと思いますし、現に産業界ではそういう見解を持っていろいろ海外投資も行っているということですが、これは別途、廣野先生が中心になってやっておられる、国際協力に関する分野の検討チームがありまして、私もそれに伺っておりますが、これについてはそれこそ国際協力銀行、貿易保険とか、いろいろなインセンティブの手段があります。これはむしろ国際関係の研究グループの方で取り上げているということでしたので、ここでは主としてこういう問題があるということを「おわりに」のところで指摘したにとどめておりまして、廣野先生の方の検討会でそれは検討しているというふうに私は理解しております。
 
【天野委員】 2番目の話はどうですか。
 
【森嶌部会長】 何をもって必要な投資がなされたと見るか、量か、質か、はたまた分野か、ということだと思います。
 
【福川委員】 とちらかといえば、結果として環境関連の投資がどういう水準であるかというのは出てくると思いますが、結局、投資した後のパフォーマンスがどうかということですので、主として議論としては、質に関する分野、それこそ持続可能な状況であるか、例えば二酸化酸素の排出がどういうふうになるか、その結果を見て、その結果を実現するための必要な投資をどういうふうにするか。なかなか計算上きちんとマッチするというふうにはいきませんけれども、結果としては投資効果がどういうふうになっているかという、主として質の面で考えていって、それが十分でなければ、量のインセンティブの方に転化していく、そのような議論をしております。
 
【天野委員】 大体わかりましたが、経済と環境がもろに絡んでいるような分野は、何らかの数量的な裏づけが必要になってくるかと思うのですが、経済の場合ですと、たっぷりとそういう情報があって、それで意思決定しているわけですね。ですから、ここで所要の投資とか必要な投資という判断をするときに、環境に関するインデックスと経済に関するインデックスを見比べて我々が判断できるような材料を用意することが大変重要だろうと思うんです。ですから、環境省になられたら、そういう点はしっかりとおやりいただければと思います。
 
【森嶌部会長】 事務局に対する御注文だと思います。本文には出ていなくても、資料の中には少なくとも匂わせるような資料があるのですか。
 
【細谷環境計画課長】 検討会の中で一番議論されましたのは、環境に関する統計や情報が非常に不足しているのではないかと。したがって、いま天野先生から御指摘があったような点を本当は検討したいと思うわけですが、そういうものがほとんどない。そういうことが非常に強く指摘されまして、その結果、この報告書の中では、「情報に関するそういうものをきちっとやれ」という注文が4の(3)の2の部分に書き込まれているということでございます。
 それから、先ほど数量の問題とか分野の問題の話がございましたが、こういう記述をするに当たって頭に置いておりましたのは、例えば投資のスピードにタイムラグがある、社会インフラと一体になって環境投資が行われるものについて、インフラ部分が非常に遅れている場合にそういう問題が出るだろうと。あるいは環境上の「負の遺産」がどんどん増えている。そういう状態ですと、当然のことながら、必要な投資が十分に行われていないという問題があるでしょう。さらに、非常に有望で、これを行えば環境負荷が低減してくるという技術がある。しかしながら、その技術の普及が非常にゆっくりしている。そういう場合には、必要な投資が必ずしも十分に行われていないのではないか。そういうことがあろうということで、こういう表現を使わせていただいたということでございます。
 
【森嶌部会長】 公害時代でしたら、ターゲットもはっきりしていて、例えば総量規制でこれだけ低減する必要がある、それに対していくら投下したかというのは、公害のころの『環境白書』などにはかなり出ていますけれども、私は経済学者ではありませんが、それ以後、特に地球環境になってきますと、何を目指して投資した金額がどうかというのは、ないというよりも、作りようがないということかもしれませんけれども、経済学者の方で何か御提言がありますか。この報告書に間に合わせるのはとても無理ですけれども、今後考えてもらう。
 
【天野委員】 長期的な点から考えましたら、例えばオランダ、アメリカ、イギリスとかいろいろなところがそういうモデルをつくって、モデルで意思決定をしちゃうわけではないのですが、モデルからいろいろな経済と環境に関する情報が出てくるわけですね。そういう情報を見ながら議論をするという形になっています。それが完全に解決になるとは思いませんけれども、少なくともそれぐらいのレベルの準備は必要ではなかろうかと思っています。
 
【浅野委員】 私もこの報告をずっとお聞きしたときに、5ページの上から6行目のところに、「政策決定過程に組み込んでいくための枠組み(判断基準、パフォーマンス評価の手法、手順等)の必要性、またそのベースとなる環境に関する統計のあり方についての検討の必要性が議論された」と。こういう問題意識を持って議論しておられて、これが後どういうふうに展開するのか、非常に興味を持って見ておりましたら、最後のところで、「統計について情報基盤が整備されるべきだ」ということで、それについて公的部門の役割と民間ベースで提供されるものという整理が20ページにあるということでしたので、ああ、そういう整理をされたのだなと思って見ていたのですが。
 確かに、ここのところで統計の数字がいくらあっても、統計の数字そのものは単に事実を表すだけですから、それをどう評価していくのか、どう使うのかという問題が最後に残るわけですが、その問題は、天野先生ともども、部会長から「まだ宿題を完全に果たしていない」と怒られそうなんですが、まさに指標の問題であるわけで、自分で自分につばきをするようなことではあるのですが。
 しかし、ここでいうように、指標を直ちに判断基準だといってダイレクトにその話をし始めると、間違えるととんでもないことになる。昔、どなたかが指標を使って東京都の環境改善をやったら、数字の上で1しかよくならなかったといって知事さんに怒られた。「しまった。これだったらもっと数字が劇的に上がるように式を変えればよかった」という話になるわけで、そういうロジックはときどきあるわけですから、指標を直ちに判断基準だという言い方をすることには問題がありそうなので、天野先生が「モデルを使って、それから出てくる数字をじっと見ながら考える。それが大事だ」とおっしゃったのは、その辺がポイントだろうと思うんです。
 部会長がおっしゃるように、何か数字の目標を掲げて、それが達成できたかどうかとか、そこにいくまでにあといくらお金を突っ込んだらどうなるのか、という議論で解決できるものがあれば、それはそれでいいのでしょうが、ならないところが大変だということは、環境教育の効果測定の議論をしたときに全く同じような議論が出てきましたので、これは共通に課題として残っていることを意識しながら、環境基本計画の中で解決できるところはできるだけ解決の道を示していく以外にないという感じを今のところ持っておりまして、さらに今後の検討チームの他の報告を見ると答えが出てくるかもしれませんから、少し期待したいと思っております。
 
【森嶌部会長】 ないものねだりではなくて、あるものについて何かコメントがございますでしょうか。
 
【佐和委員】 2点、簡単に御質問したいのですが、1つは、「はじめに」の最後のパラグラフで、「環境投資が積極的に行われることは歓迎すべきことであるが、環境投資の範囲を無制限に拡大することは、環境投資の意義を曖昧にし、結果としてその推進の支障となるおそれがある」と書いてあります。それで、4ページの1、2、3、4で、環境投資はこんなものですよということで定義を下されているわけです。従来、我が国においては、道路の建設が環境投資であるというふうにみなされてきたわけです。今回のこの報告書は、道路が依然として環境投資としてみなされるのかどうかということをお伺いしたい。つまり、環境投資の中に道路を入れるかどうかです。あるいは、むしろそれを意図的に排除するような書きぶりなのかどうかということが第1点。
 もう1点は、簡単にと申しましたが、やや複雑なんですが、3ページの「(3)民間投資の状況」の下の3つのパラグラフの意味が私にはよく理解できないんです。まず最初のパラグラフに何が書いてあるかといいますと、「循環型経済社会システムや共生型社会により豊かさを……」と、そういう社会を豊かな社会だというふうに消費者が考えるようになるということを意味しているわけですね。そして、企業が経営方針を決定する際にも環境を考慮する主要な要素の一つとみなすようになる、そういったことが市場の質的変化だ、というふうにおっしゃっているわけですね。つまり、消費者行動が変わり、企業行動が変わるということが……。経済学っぽくいえば、消費者の効用関数が変わり、企業の利益とか利潤の評価関数のようなもの変わるということですね。それを「市場の質的変化」と呼んでおられる。
 ところが、その下のパラグラフにつながらないんです。といいますのは、第2パラグラフの最後のところに2つのことが書いてあって、「いずれもそのような方向へ大きく寄与すると考えられる」。「そのような方向」というのは、市場の質的変化ということですね。では、何が上に書いてあるか。1つは、「金融部門も含め投資効率が高く付加価値の大きい分野にシフトしていく」と、産業構造の転換のようなことをおっしゃっているわけです。そうすると、製造業の占める比率が低下することによって、CO2なども含めて汚染物質の発生が減るということを意味しておられるかどうか。仮にそうだとします。
 それから、「国際的に資源・エネルギーの制約が強まる見通しの下、資源の効率的利用や再利用など資源効率性の向上が極めて重要な課題となる」とおっしゃるわけですが、制約が強まるというのはどういうことかというと、石油を始めとする資源・エネルギーの価格が上がるということです。価格が上がれば、資源効率性の高いような設備投資を行うことは当たり前で、別に市場の構造が変わらなくても、ごくごく普通のマーケット・エコノミーで起こり得ることなんです。ですから、産業構造の変化が市場の質的変化をもたらすというのもよくわからないし、同時に、エネルギーや資源の制約が強まった結果として市場の構造が質的変化を起こすというのもよくわからないです。
 次のパラグラフも同様で、意味がよくわからないんです。「環境のような外部経済性の強い事柄について全面的に市場に委ねることとした場合には、予定調和的に最適状態が実現することは期待できず」というのも、「外部不経済」という言い方をしますが、ここには「外部経済」と書いてあるのはいいとして、「全面的に市場に委ねたら最適状態が達成できない」というわけですが、市場にもともと環境というものを明示的に、放っておいても配慮するような仕組みが備わっていないということは事実ですね。なぜかというと、環境コストのようなものが内部化されていないからです。ですから、そういう意味で、「最適状態」という書き方をしているのは一体何なのか。つまり、環境を破壊しても、それによって経済効率を高めることが最適状態だと考える人がいれば、「最適状態が実現されているじゃないか」と言われても仕方がないので、この辺の意味がはっきりしないということです。
 その次に「市場価格への内部化のための措置など適切な政策対応や資源・エネルギーの使用の削減、効率化、再生可能なものへの転換等を、経済面から見ても強力に推進する必要がある」と。「強力に推進する必要がある」というのはわかるのですが、「経済面から見て」というのはどういう意味なのかがわからないです。そして、ここの結論として、「市場の質的変化を促す基盤的施策を進めることが重要である。」ということで結ばれているわけですが、この辺のパラグラフのつながりとか意味がわかりにくすぎるのではないかと思います。
 
【森嶌部会長】 第1の、道路に対するを投資を環境投資と考えるかどうかという点は、イエスかノーかでわかりやすいのですが、2番目は、私は聞いていまして、学会に行ってようやくPh.Dの論文を書いた人が報告をした途端に、大先生から「おまえの言うことはよくわからん」などといって怒られるような感じで、たぶん非常にお答えしにくいと思います。第1の点についてまずお答えいただいて、第2の点について、文章の構造から逐一お答えにならなくても、概括的にお答えがありましたら、よろしくお願いいたします。
 
【細谷環境計画課長】 道路の問題につきましては、実は大変な議論があったところでございまして、「これは環境投資とはいえないのではないか」というところから、「そうではない」というところまで幅があったということでございまして、最終的には、ちょっと歯切れが悪い形でございますが、環境保全経費を判断していく、その辺について改善をしていかなければいけないなと。そういうような事柄の中で、公共部門における投資が環境投資といえるのかどうかという問題について、その枠組みの中で検討するというところに当面委ねてあるという御理解をいただければと思います。
 
【森嶌部会長】 入るのか入らないのか、どっちですか。
 
【細谷環境計画課長】 この検討会としてはっきりした結論は出ていない、そういう仕組みの中でおまえらがちゃんと検討しろ、ということになったということで御理解いただければと存じます。
 
【富田企画調整課長】 今の計画課長の話にございましたように、12ページの・の「環境保全経費の改善」の中でどうするかということを議論しようということでございます。なお、現在の環境保全経費については、全体でいくらかという形で毎年国会等の委員会に報告しているわけでございますけれども、この中では道路は入っておりません。この中に「運輸・交通の分野における施策の推進」という項目がございますけれども、これは例えば公害防止用のいろいろな輸送機器の研究とか、どういう形で交通体系をしたら環境にいいかという調査研究ものは入っておりますけれども、実際に道路そのものは入っておりません。ただし、道路の中でも、沿道整備で木を植えるという形で、CO2対策とか環境をよくするというものが特別出せる場合のみ入れているというのが現状でございます。
 なお、これに対しては、道路そのものは、例えばバイパスをつくることによって交通渋滞がなくなり、排気ガス対策に資するのではないかといった形で、道路はもっと幅広く環境に資するのではないか、という議論もございます。
 
【森嶌部会長】 第2の論理のもっていき方については……。
 
【細谷環境計画課長】 (3)のところの整理があまりよくないという話でございますが、いくつかの点が混じり合って書かれてしまったということではないかと思います。1つは、民間投資の状況ということで、今どういう状況にあるのかということで、一番最初のパラグラフは、民間投資全体がどっちの方向に向かって動いているのかということを書いたつもりであったわけでございます。民間投資は基本的に需要が引っ張っていくことが前提である。そういう意味で、消費者のニーズの変化に沿った形で展開していくのだろう。企業においても、経営方針を決定する際に環境を考慮すべき主要な要素と考え出してきた。そういう中で、そういう消費者のニーズの変化というものをしっかり追っていく形になるのではないだろうか。そういう流れの中で、持続可能な経済社会にふさわしい市場が形成される。あるいは需要と供給、生産と消費のパターンも持続可能な経済社会にふさわしいものに変わっていく。そういうことが期待される。その方向に沿った形で動いているということを記述したかったわけでございます。
 2つ目は、なお書きになっておりますように、若干付け足し的なことでございまして、我が国の経済構造が今どっちを向いているのか、あるいは資源・エネルギーの制約が強まる中で生産構造がどっちの方向に向いているのかと。言葉がよく熟していないところはございますが、そういうような大きな動きも生産と消費のパターンが持続可能な経済社会にふさわしいものになっていくということに反する方向ではないだろうと、そういうような事柄を書きたかったわけでございます。
 それから、「しかしながら、……」で書いておりますのは、そういう流れからすると、ちょっと異質な部分があるのかもしれませんが、市場に全面的に委ねることはなかなか難しい。通常言われている事柄でございますが、そういう中で、市場価格に環境を内部化していく対応が必要だろうと。
 その下に、資源・エネルギーの使用の関係で、「経済面から見ても」というのは、本当はなくてもいいわけですが、環境の面から見ても、経済面から見ても、方向性としてこの方向は指示されることである、そういう事柄として書かせていただいたわけでございます。
 
【森嶌部課長】 佐和教授の口述試験に合格したかどうかわかりませんけれども、この後、その点を検討していただいて、もしも報告書を修正する必要があると主査が御判断になったら、多少手を入れるということで、このところは済ませたいと思います。
 ほかの点で御議論がございましたらどうぞ。
 
【廣野委員】 読んでいて大体わかると思いますけれども、この部会の方々は、物理的な投資を投資として考えるという格好でかなり限定されていて、ソフト的なものはあまり投資と考えないと。環境研究も一つの投資であるということであれば、これはソフトなんですけれども、そこは入っていると思うのですが、例えば、我々は「教育投資」という言葉をよく使いますね。「教育は投資なり」、「人づくりは投資なんだ」と。そうすると、環境教育というのは投資と考えられないのかどうか。これは投資と考えないことにしてあるという格好になっているのか。なぜ環境教育投資が投資ではないのか、そのあたりを伺いたい。
 
【福川委員】 確かに教育投資も一種の公共投資だといえるかと思いますが、教育ということになると、教育の中で環境の教育がどのぐらいかというのは、なかなか摘出もしにくいし、ほかの教育と非常に絡んですることもあったりしますし、どちらかといえば、いわゆる民間の設備投資に関する分野の投資の方向づけというところに焦点を置きましたので、今のところはここの中で教育投資を正面から取り上げるということはしませんでしたが、重要な問題であることは確かですし、教育投資の効果はどうかという測定は大変難しい問題になってしまいますし、範疇も難しいという問題もございます。問題の点は重要だと思っておりますが、ここではそこまでは入れずに検討したということでございます。
 
【浅野委員】 先ほど富田課長から御説明があった部分、12ページから13ページにかけての「環境保全経費の改善」という記述は、非常に重要な指摘をしていただけたと思います。いま福川委員が御説明になった環境投資の全体フレームの話とこの部分は多少ずれがあるかなという気がしながら聞いていたのですが、環境保全経費として積算するときには環境教育分が上がってくるんですね。ですから、全体として政府が環境保全のためにどれぐらい予算を投入しているかというのを見る一つのバロメーターになっているわけですが、それがここに掲げられているように、現実にはかなりはっきりした哲学で一貫した方針があるかどうかよくわからない面がある。
 幸いにも今のお話で道路は入っていないということがわかったのですが、実は今NOx 法のヒアリングをやっている中で、道路を整備すると車が増えるのか増えないのかという議論がこの間あったやに聞いております。そんな調子で、一つ一つの省庁にとっては「これは環境保全経費だ」という主張があっても、それをそのままうのみにしていくと、前の地球温暖化の計画みたいに何でもかんでも全部入ってしまうということになりますから、ここら辺のところを指摘されたのは非常に大事な点だと思います。
 「環境基本計画と一体的な運用が行われているとは言いがたいので、それを改善しなけ
 ればならない」ということについて、結局は事務局に考えろといっているのだということだというような話ですが、チームの中でもう少し突っ込んだ御議論があったかどうか。これは非常に重要な御指摘だと思います。これはぜひとも今後何らかの形で表に出していかなければいけない部分だと思いますので、道筋についての御議論があれば、それについて御紹介いただければと思います。
 
【福川委員】 あるいは座長の方からお話があろうかと思いますが、前座として申し上げますと、この環境保全投資をどういうふうに整理するかというのは、実はいろいろ議論がございました。普通、各省庁が予算要求をしているわけですけれども、それについて環境庁がどこまで各省庁の予算にものが言えるか言えないかという点について、いろいろ議論がございまして、「それを効率よくすることをもうちょっと環境庁で考えてはどうか」という意見もありましたが、現実の問題としては、環境庁としてはなかなかそこまで手が回っていないというか、何が回っていないというか、とにかく回っていないというのが現実で、「しかし、もうちょっと何か工夫ができないのだろうか」という点について委員からいろいろ意見が出たのは確かでございます。
 
【三橋委員】 環境保全経費の各論に入ると、はっきり申しますと、省庁間の縦割り行政にどこまで切り込めるか。省庁の独立主権というのはおかしいですが、そういうものにどこまで切り込んでいけるか。環境庁が庁から省になる過程でどこまで実力が発揮できるかという大問題がその後ろにあるわけですね。そういうことで、内部では相当の意見があったわけですが、その辺の書き方が非常に難しいという形でここに至っているわけです。
 
【森嶌部会長】 それでは、まだ御議論もおありかと思いますが、ただいまから10分休憩いたします。
〔休 憩〕

 
【森嶌部会長】 それでは、再開させていただきます。
  次に、環境保全上健全な水循環の在り方検討チームで、村岡先生、よろしくお願いいたします。
 
【村岡委員】 与えられました課題は、「環境保全上健全な水循環のあり方」ということです。これまで3回の会合で検討いただきました。検討チームの委員は、木原委員、小早川委員、佐竹委員、谷田部委員でございます。また、地盤沈下部会から高橋委員、水質部会から須藤委員と福井委員にも御協力いただいております。概要説明を私の方から10分か15分やらせていただきまして、詳細説明は地下水・地盤環境室の岩田室長にお願いしております。
 さて、水循環ですが、この概念を簡単に示しますと、前に映っている図で大体御理解いただけるのではないかと思います。もともと水が流れる場所というのは、河川ですが、それ以外に下水路とか、農業用水路とか、いわゆる「表面流」といわれる形で理解するわけですが、実はあの図の山の奥の方に行きますと、雨が降りまして、その雨が浸透する段階から既に水の循環は始まっているわけです。そういうことで、山の方では森林域が普通ですが、そういったところの水の循環の始まりがあり、中流部では田畑に水をためたり、あるいは灌漑用水として水を使いますので、それが浸透する、あるいは農業用水路を伝わって河川に出てくる、そういう過程がございます。
 そういうことですから、人間の体でいいますと、毛細血管のようなものでして、「流域」と呼ばれる空間的な位置づけされた場所から、延々と長い時間かかって河口に出てくるわけです。したがって、流域という場での水循環を考える場合には、地下水の流れを無視するわけにいかないのです。
 しかも、これまで水の環境問題といいますと、人間社会の活動の結果出てきた負荷をいかに低減させるかということ。また、河川をはじめ水域での水質問題がありますので、そういった水質問題をいかに解決するか、改善するかということ。それから、生物の生息・生育の場でもありますから、そういった点で適切な水環境があるかどうか。こういった視点でこれまで主に水環境問題を取り上げてきたのではないかと思いますけれども、今言いましたように、流域という場所全体を考えますと、水の流れというものを伴っているわけです。負荷の低減にしても、生物の生育・生息の場を考えるにしても、水の量とか水の流れというものを無視しているわけではありませんけれども、これまでの水環境問題のとらえ方としては、今私が言いましたように、水の流れという観点から水質環境を健全なものにする、悪いところを改めていくという視点が、ややもすると、無視はされておりませんけれども、取り上げられる機会が少なかったのではないかと思います。
 そうしますと、流域という問題を取り上げるということは、まさにそれは水域の問題ではなくて、土壌とか地盤といった空間にも水の流れ、循環は及びますから、水循環を考えるということは、水環境を考えると同時に、土壌環境あるいは地盤環境についても考えるということになります。
 水循環に関する考え方あるいは討議は、今回の討議に始まったものではありませんで、既に実体ある討議としましては、環境庁では平成9年、10年、11年といくつかの討議結果をまとめております。その中で一番新しいのが、平成11年4月に「健全な水循環についてのあり方」ということで大臣に意見具申を行いました。これが今回の討議の母体になっていると考えてもよろしかろうと思います。また、水循環の課題につきましては、環境庁だけではなくて、建設省では河川審議会の水循環小委員会でも平成10年7月に「健全な水循環のあり方」についてまとめられております。
 さらに、私が注目したいのは、昨年の10月ですか、水に関係する関係6省庁の連絡協議会で「健全な水循環についての共通認識」を持ちまして、中間報告という形でまとめられております。もともと水に関わる行政もしくは事業は、その内容によって、その性格上縦割りになっております。水資源は国土庁などで、治水、上水、工水、農水、下水と、それぞれ関連の省庁が事業あるいは政策を進めております。
 関連6省庁でありますが、その中で、例えば「治水と下水をもっと一元的に考えて総合的な事業を行おうではないか」という話し合いがもたれたことを考えましても、人によりましては、「調整に3年ぐらいかかるんじゃないか」と言われております。6省庁ですから、3×6=18年はかかるだろうと私は予想しておりましたけれども、その点につきましては、わずか1年足らずで6省庁の共通認識がまとまったということは非常に喜ばしいし、また、今後の水環境を考える上で非常に重要な結果ではないかと思っております。
 さて、環境基本計画の構成の中にも「水環境の保全」という点が取り上げられているのはよく知られているところですが、その中で、必ずしも「水循環」ということだけではなくて、第2節の2番、3番、4番、5番でも挙げられておりますように、負荷の問題あるいは生物の生息の問題、水域、特に閉鎖性水域の汚濁問題は、努力はされておりますけれども、その結果は必ずしもはかばかしくないという点で、そういったものも重要な視点であるということは認めなければいけませんが、今回、特に1番に挙げられているような「水循環」という視点でもって環境基本計画を見直そうと、ここが今回の我々の検討のポイントであると言うこともできると思います。
 それでは、どういう検討の焦点をもって我々はこの作業を進めてきたかということで、次のOHPを見ていただきますと、これが先ほど言いました「環境保全上健全な水循環」とは、ということで、環境庁の立場としましては、自然の水循環がもたらす「恩恵」が基本的に損なわれていない状態のこと。
 それはすなわち、「水の浄化機能をはじめとする自然の水循環の有する様々な機能が十分に発揮され、水環境、地盤環境等が良好に保たれていること」をもって「健全な水循環」としております。
 これをどういう検討の焦点を当てて検討するかということで討議しました結果、1つは水の循環の構造を理解することはもちろんですが、その構造が歴史的にどういうふうに変わってきたかという点をまとめなければ意味がないだろうということで、焦点を当てております。
 特に水の循環の構造が大きく変わりつつあったのは、誰もが認識している昭和20年代に入ってからのことです。20年代の水に関する事業というのは、3つぐらいポイントがあると思うのですが、1つは、台風とか台風による高潮、津波といった雨と海からの災害をいかに防御するかという治水の面で大きく進展したと思います。それは必ずしも自らの危険性を避けるということだけを目的にしたわけではなく、そのついでというわけではありませんけれども、「治山・治水」ということで、我々は荒れていた山を治め、砂防あるいは山腹工事でどれだけ水循環に貢献してきたかということが、計り知れないほど大きな貢献を生んでいると私は思っております。
 2番目は、水力発電のエネルギーの開発です。これは昭和20年代にどん底にあった日本の生活基盤を立て直すということで、絶対に必要な開発事業であったと思われますし、それに伴って水需要の増大から水資源を確保していくという水資源開発の行動が取り上げられてきて、このことによって国民の生活が大きく向上したことは事実であります。
 とはいえ、そのあたりで止まっていればよかったものを、昭和30年代になりますと、いわゆる高度経済成長という時期に入って、歪みが現れてくる。歪みというよりか、持っていたプラスの機能を徐々に低減させていくという結果になったのではないかと思われます。御承知のように、40年代は、公害国会もありましたし、それによって公害をいろいろ規制することによって、ある程度公害の沈静化という結果をもたらしました。それと同時に、自然の保護あるいは自然との共生、ひいては現在の地球環境問題へと、水問題に関わってもそういう点で取り上げられる時代になってきたわけです。
 こういう経過を考えますと、原始時代の水循環が一番よかったとは必ずしも言い切れません。私どもが開発事業を行ってきた昭和20年代の成果を見ますと、そこで我々の生活基盤ができたというプラスの面も当然あるわけです。そういったことを踏まえて考えますと、我々が注目する歴史的な経過の中での比較の時代は昭和30年前後であろうかというふうに議論されたところです。昭和30年前後でなくてもいいのですが、ちょうどその頃になりますと、いろいろな水に関する観測、気象、特に水文気象といわれる雨とか水に関係する気象情報が豊富になってまいりまして、それと現在とを比較することがかなりしやすくなっているということが一ついえます。
 そういったことで、その頃と比較するということを念頭においた上で、問題の構造を取り上げていこうというわけですが、水循環というのは、一番最初に示しましたように、流域という一つの空間をもっておりまして、その空間の中の特徴が際立っておりますので、必ずしも全国一律に問題構造を議論するわけにはいきません。
 そこで、いろいろな流域が持っている自然的、社会的特徴を考えまして、5つの検討する対象流域を挙げました。それは利根川、相模川、不老川、野川、白子川という5つの河川であります。次のOHPでそれがどんな位置にあるかを示したいと思います。
 利根川は、言うまでもなく空間的にも大流域だし、流域が抱える諸問題という点でも日本一の流域です。相模川は、上流の森林域で森林の劣化が認められる、特に人工林が危機に陥っていることから、下流の方から上流の水源林の保全に対して一つの行動を起こしているという場の空間であります。不老川は、もともと農業活動の盛んなところで、現在、市街地化がどんどん進んでいる状況の小さな河川流域であります。白子川は、都市河川そのものでありまして、雨が直接地面に浸透しない不浸透面積率がどんどん増加する一方です。この5つの河川に着目しまして、目指すべき健全な水循環の姿はどういうものかということを検討したわけであります。
 報告書の4番に挙げました「目指すべき健全な水循環の姿」、5番の「健全な水循環の回復のための手法」、6番の「具体的展開」、このように私たちの報告書は進んでいくわけですが、「健全な水循環の回復のための手法」と「具体的な展開」につきましては、先ほど挙げた流域特性に対応した手法を整理しようということで、大流域を対象としたもの、山間部を対象としたもの、農村及び都市の近郊部を対象としたもの、都市域を対象としたもの、そういった個々の特徴ある空間でその手法をまとめております。
 その中にあって、当然、国は何をすべきか、どういう取組をすべきか、あるいは流域ごとの都道府県という地方自治体では何をすべきか、また、地域の住民の自主性というのはどういうふうな取組があるか、そういったものも検討しております。こういった関係主体が協力しまして、例えば流域ごとに水循環を診断するという一つの制度を作る、あるいはそれに基づいて保全計画を立てるという具体的な提案までさせていただいております。
 その結果、「あとがき」ということで全体をまとめたわけですが、まずは、流域が今回の検討の対象であったということで、河川とか農業用水路、下水路といった表面流だけではなくて、地下水を問題にする必要があったということです。地下水抜きにして水循環は語れないという立場からであります。
 そして、この意味で、健全な水循環が持っている機能を仮にうまくまとめ、活用していくことができますと、それが良好な水環境とか良好な地盤環境を生み出していくということでありまして、必ずしもここで直接的には取り上げなかった水質問題、負荷の移動というものとか、積み残してはおりませんけれども、直接とらえていない閉鎖性水域の問題とか、微量有害化学物質の問題とか、こういった問題も当然考えていかなければならない、というふうに記述しております。特に有害化学物質につきましては、これは水だけの問題ではなくて、大気の問題でもあり、廃棄物の問題でもあり、健康リスクという点からも考えなければいけませんので、これについては今後、鋭意関係組織と一緒に考えなければいけないと思います。
 有害汚濁物資に対する汚染は、これまで単に規制行政からの検討で反省すべき点あるいはうまく実現できなかった点を、これから広く水循環の健全性に照らしてその対策を求めるという視点が今回の検討でできたのではないか、ここが大きなポイントではないかと思っております。新たな保全手法の開拓というものの中に、これまで取り上げてこなかった「水循環」という一つの切り口を提案できたという点が一つの成果ではなかったかと考えております。
 以上、概略を説明いたしましたので、詳細につきましては岩田室長の方からお願いします。
 
【岩田地下水・地盤環境室長】 それでは、報告書の概要をお手元のチームの報告書に基づいて簡単に御説明させていただきます。
 先ほど村岡先生からお話がありましたように、大きく7つに区分されておりますけれども、第1章は「検討の趣旨」であり、検討の焦点など、先ほど先生が御説明されたとおりであります。第2章から順次御説明させていただきます。
 4ページでございます。まず、歴史的経緯を振り返ろうというお話が検討チームでありました。その前に、その大前提として、日本の河川の特性はどうかということで、(1)に書いてありますが、よく知られておりますように、我が国の降水量は比較的多くて、世界の平均降水量の2倍である。ただし、1人当たりの降水量は世界の平均の1/4程度となるということでございます。また、河川の特徴として、短くて急勾配であるということが挙げられます。このために、水を利用するにしても、安全性を確保するにしても、どうしても大規模な開発が必要になるという状況であります。
 (2)は高度経済成長以前の状況であります。もちろん、大昔からすべてレビューしたわけではありませんで、主に近世でございますが、森林地域、水源地域、利根川の場合、一部スギやヒノキの造林が始まりましたけれども、部分的なものにとどまっておりました。それから、利根川は徳川家康によって大きな流路変更がありましたけれども、これも治水の関係とか新田の開発の関係によって、当時、最初は江戸湾に流れていたものが現在のように銚子の方に流れるようになったということであります。このような変更などを行っておりますけれども、高度成長以前は水循環の状況を大きく変えるような状況ではなかったということであります。
 5ページの(3)は、「高度経済成長を支えた各種計画の成果と水循環の変化」ということで、昭和30年の「経済自立5ケ年計画」に始まり、各種の経済計画が策定されたわけでありますが、それによって我が国は非常な高度経済成長を遂げたわけであります。それに伴って都市への人口集中などが起こりました。
 そういう面がある一方、水循環に関して、5ページの下のポツのところですが健全な水循環が損なわれた面ということで、1つは、森林、農地が住宅・工業などの開発用地に転換されたことによって、雨水を地下へ浸透させる面積が減少し、洪水時のピーク流量が増大するという問題があります。それから、都市化の発展に伴って水空間がなくなっていき、住民が水とふれあう場が減ってきたということが挙げられます。
 6ページですが、[2]として、用水の需要の増大についてでございます。表1は上水道の給水普及の状況ですが、昭和30年は給水人口が35.8%で、一人1日当たりは263Lであったものが、平成9年にはその約1.5倍の給水量になっているということであります。
 表2は上水道の水源別供給量ですが、昭和14年当時は8割近くが河川自流によって取っていたものが、最近ではダムから取っているものが一番多くなっているということであります。
 工業用水も需要は伸びておりますけれども、水使用の合理化が進んで、補給水としてはそれほど大きなものにはなっておりません。
 こうした水の需要とともに、その排水ということで、下水道の普及率も、昭和40年には16%であったものが、平成10年度には58%まで向上しております。
 こうしたことから、[3]の上のポツに書いてありますように、水循環に関しては、水道整備が進むに従って、蛇口をひねればすぐ水が出てくるということから、節水の文化が失われてきたのではないかということ。それから、人工的な給水システム、排水システムによって、自然の水の流れとは別のネットワークができてきたということが言えます。
 [3]は「水資源開発」であります。8ページの図1にありますように、水力発電の量も、最近は伸びが鈍っていますが、開発されているということであります。
 8ページの下のところですが、ダムの建設などによって、下流の生物の生息や生育環境を悪化させたり、土砂を下の方に流さなくなったことによる弊害、あるいは河川の流量が減ってきたというような問題が生じてまいりました。
 9ページは治水対策であります。これも治水の観点からダムや堤防ができてきたわけでありますけれども、ポツのところにありますように、河川の保水・浸透機能の低下などの問題が生じております。
 [5]は農業関係でありますが、農業の構造改善によって生産性の向上などが行われてきたわけでありますけれども、10ページになりますが、水路が三面張りになってきたことから、生物への影響があったということであります。
 [6]は林業の発展ということで、11ページの図2を見ますと、全体の森林面積はほとんど変わっておりませんが、一番下の黒い自然の広葉樹林の面積が減ってきて、一番上の人工の針葉樹林の面積が増えてきているということが一つあります。
 それから、森林は適切な維持管理が必要なのですが、最近の状況では、林業の経営の収益性が悪化してうまく維持管理ができていないという状況になっており、それによっていろいろな問題が生じてきているという状況であります。
 12ページであります。こうしたいろいろな水循環に関わる問題が生じてまいりまして、先ほど村岡先生から話がありましたように、環境基本計画の中にも「環境保全上健全な水循環」という施策が入りましたし、関係省庁でもこれに関する議論を行っているところであります。
 13ページからは問題の構造の解析ということで、先ほど御紹介がありましたような河川に対してデータの分析などを行っております。
 まず、14ページの(1)でありますが、大流域ということで、大流域の水循環を詳しく解析することは非常に問題が複雑であって困難なものですから、単純にここでは水の量の変化について比べております。
 15ページの図の円筒状のものは、左が利根川の上流の方で、右が下流の方ですが、それぞれの観測所において観測した平均の流量を示しております。上が昭和30年頃の流量で、黒い見沼代用水等というところで農業用水などの取水をしております。下が平成9年頃で、昭和43年に昔の見沼代用水のところに利根大堰ができまして、そこから都市用水や農業用水を取っている、流域外に取水しているということで、中流域の流量が減少しているという状況が見られます。
 次に16ページ、「山間部の水循環」ということで、17ページの図6に極めて一般的なフローを描いております。山間部、森林の水源涵養機能が重要になるわけですが、先ほど申し上げましたように、人工林が増えてきたり、あるいは維持管理がうまくいかなくなってきたということから、森林の貯留・涵養機能が低下してきたということで、地下水量の減少や降雨時の流量の増大といった問題が生じてきているということであります。
 18ページは「農村・都市郊外部の水循環」であります。埼玉県を流れる不老川の例を見ますと、右側の図7でありますが、大正5年当時は市街地は15%であったのが、平成2年には44%。ここでは農村・都市郊外部ということで入れておりますけれども、もは
 やそうもいえない状況になってきております。
 図8ですが、地下水の水位も、昭和30年頃は地表面近くまで高かったのですが、やはり高度成長時期に下がってしまったということであります。
 20ページの図9は、不老川流域の水収支の大体の状況をお示ししているものであります。昭和20年頃と平成7年頃ということで、地下への浸透が可能な面積が減ってきて、洪水時の直接流れる表面流出の量が増えているということ。それから、流域外への排水が増えているという状況であります。
 21ページの図10は、これも農村部の一般的な問題のフローでありますが、水田や農地がなくなってくると、貯留機能などが低下して、地下水量が減少したり、湧水が枯渇したりするということであります。
 22ページは「都市部の水循環」ということで、東京都のいくつかの河川について御紹介しております。
 23ページの図11が野川であります。調布や狛江のあたりを流れております。湧水群はまだありますが、渇水期には瀬切れを起こしたりします。ただ、このあたりではまだ生物がすんでいるという状況で、野川公園ではホタルを見ることもできるという状況にあります。
 これの支流に仙川というのがあるのですが、それが24ページの図12であります。この写真でお分かりのように、三面張りであって、そもそも河川の流量もほとんどない状況でありまして、下水の処理水で流量を保っているという状況にあります。鳥やほかの生物が豊富に見られる状況にはありません。
 下は白子川という練馬区のあたりを流れている川でありますけれども、これについてもコンクリートの護岸であるといったような問題があります。
 25ページの図14は、都市部における状況ということで、地下水位の低下、表面流出量の増大などの問題が生じております。
 26ページは、また白子川の話に戻ってしまうのですが、「白子川流域の土地利用の推移」ということで、ここも市街地が増えているという状況であります。
 下は「地下水位の推移」ということで、ここも昭和30年頃の地下水位には、いったん下がって回復しておりますけれども、まだ戻っていないという状況です。
 図17は「白子川流域の水循環の概念図」で、ここも不浸透面積率が、昭和20年代は6.6%であったものが、平成2年には28.3%に増加しているために、地下への浸透が減ってきているという状況にあります。あと、流域外からの水の流入、流域外への排水といったことも起こっております。
 28ページは、4番目の柱であります「目指すべき健全な水循環の姿」ということで、先ほど村岡委員からお話がありましたように、昭和30年頃を一つの目安にしようということで、(1)の「目標とすべき姿」の4つ目のパラグラフですが、「このため、今後は、現在及び将来の社会経済状況、技術レベル、生活の質の維持を考慮しながら、災害や健康リスクを最小限にしつつ、自然の水循環の持つ恩恵を最大限享受できるような新しい水循環の形を構築することが求められる」ということであります。その際の自然の持つ恩恵とは何かということで、目標とする姿は、昭和30年頃の自然の水循環が持っていた恩恵が参考になるでしょう、という御議論がなされました。
 [1]からは各地域ごとの目指すべき姿であります。
 29ページの(2)は「健全な水循環の指標について」ということで、今申し上げましたような「目指すべき姿」ができたとしても、具体的に定量的にどのような目標とすべきかということで、やはり何かの指標があった方が施策が講じやすいということであります。ただし、一つの指標でもって健全な水循環かどうかということを表す指標がないものですから、どうしてもいろいろな指標で総合的に見てみるということになります。
 その場合、30ページでございますが、水収支に関連する普段の河川の流量や、地面や道路で覆われている割合がどのように増えてきたのか、あるいは地下への浸透量がどれぐらい減ってきたのか、といった指標が参考になるでしょう、というお話になりました。あるいは地下水の状態を示す指標として、地下水位とか年間雨量に対する地下水の取水率といったもの。なお、渇水時にいろいろな影響が出るものですから、水量が著しく減少した日数がどれぐらい増えたのか減ったのか、あるいは瀬切れが発生した日数、湧水の湧出が停止した日数等を比較することでもその指標になりうる、という議論になっております。
 31ページの5番は「健全な水循環の回復のための手法」ということで、いろいろな関連する施策を組み合わせて対策を講じていくことになろうかと思いますけれども、それに関連する施策を、既に行われている事例も含めて、ここで整理しております。省略させていただきます。それが35ページまであります。
 36ページに「具体的展開」ということで、まず、「国の取り組み」でありますが、検討チームの御意見でありますが、「関係省庁で知恵をしぼり積極的に対応していく必要がある。」ということであります。流域でいろいろな対策が講じられるときに、国としては技術的、財政的に支援していくべきであるということ。それから、水循環の状況を診断・評価することが非常に難しいということで、そのための情報提供システムを整備することなどが国の行うべき取組となされております。
 (2)は「流域ごとの水循環保全計画の策定」ということであります。実際に水循環を回復していくためには、やはり計画的に施策を講じていく必要があるということで、水循環保全計画の策定が望まれるものであります。この場合、「都道府県、国の出先機関等の所轄行政機関が流域の状況に応じて策定するのが妥当であろう。」という御意見であります。
 この水循環保全計画の構成は、37ページの上の方に書いてありますように、計画区域をどの範囲にするか、現在の水循環の状況はどうであるか、目標とする水循環をどうするのか、それに向かってどのような対策を講じるのか、これが基本的な姿になるというものであります。
 重要なことは、流域住民の自主的な取組ということで、関係者が自主的に連携して取り組んでいくということであります。
 (4)が関係主体の協力ということで、計画策定に当たっては、流域住民の意見を積極的に取り入れていく仕組みを検討すべきである、関係者の協力体制を確立することが必要である、という結論になっております。
 38ページは「あとがき」で、先ほど村岡委員が御説明されましたように、水に関してはまだいろいろ問題が残っているので、そういったことを総合的に行うべきである、という御意見でありました。
 以上でございます。
 
【森嶌部会長】 それでは、ただいま御報告がございました「環境保全上健全な水循環のあり方」に関しまして、御質疑、御意見等を承りたいと思います。あるいは検討チームの委員の中から補足がございましたらどうぞ。
 
【北野委員】 2ページに「環境保全上健全な水循環」の定義がされておりまして、「自然の水循環がもたらす『恩恵』が基本的に損なわれていない状態」と。その「恩恵」をどこまで考えるかということなんですが、今伺っていると、水の量的な面、一部質的な面のお話があったのですが、例えば親水公園等の水に親しむというようなところは、この水循環の報告書の中では触れられているのでしょうか。範囲外と考えるのでしょうか。
 
【村岡委員】 御指摘ありがとうございます。親水ということも非常に重要な水環境を支える一面であろうかと思いますけれども、そのことに関しましては、これまでもいろいろな討議の中でとらえてきた問題でもあるということが一つあります。そういうことで、今回は「水循環」ということに関わって討議しましたけれども、親水性の中で、例えば下水処理水を公園に導水するという意味での水循環はあるわけですね。ただ、ここでとらえた水循環というのは、もう少しスケールが大きいというか、流域というものを対象にした場合ですので、その中で当然親水に絡むような課題も出てこようと思いますけれども、具体的にその面に絞って討議してこの報告書には載せておりません。
 
【幸田委員】 歴史も含めて大変すばらしい報告書をどうもありがとうございました。短く3点ほど質問させていただきたいのですが、34ページにも出てまいりますけれども、「健全な水循環」の「健全」という中の一つに汚染対策ということも含まれるかと思うのです。今、下水管からの漏れとか、地下鉄工事の凝固剤などが漏れ出しているということで、昭和30年代でしたら、5mぐらいの深さの浅い井戸からのお水も飲めたのが、今は20mぐらい深いものでも地下鉄などの近くは危ないということも部分的に言われておりますけれども、こういう漏れなどに対する罰則とか対策はどのようなことをイメージしていらっしゃるのか。こういうインフラの責任というのもこれから大事だということをもっと強化してほしいと思うことが1つ。
 それから、「浸透ます」ということも同じページに出てきて、これはとても大事なことだと思いますが、例えば新築住宅、一戸建てなどに対する義務化ということまでも考えていらっしゃるのかどうか。こういうのも今後の措置としては大事なのではないか、あまりお金もかからないものでもあるし、と思うんです。
 3番目は、今、フライブルグ市などでは分割下水道料金制度というのが導入されていて、生活排水あるいはお手洗いなどの汚水の部分は通常どおり料金をとりますが、雨水をどれだけ下水に流しているかという下水に与える各家庭の負担によって、下水道料金が上がったり下がったりするというのもやっています。こういう経済的なインセンティブをこれから導入していくことも必要とお考えなのか。この3点、御質問したいと思います。
 
【村岡委員】 私が全回答できるかどうかわかりませんが、最初にいただきました御質問で導水の問題ですが、これは確かに大きな問題です。特に最近、大深度地下開発というものもありまして、都会ではいろいろな地下構造物があるわけですから、それによる地下水障害という形で流れを遮断したり、あるいはとんでもないところから水が漏れてきたりということもございますので、その点は確かに大きな問題です。ただ、今回の検討事項の中で、それに絞って取り上げるというのは、データもございませんし、できなかったわけです。罰則の問題は事務の方からお願いしたいと思います。
 それから、2番目の種々の住宅地域における浸透促進装置ですが、これはかなりのところで、特に大きな住宅地域ではやられていて、この効果は、不浸透でくるんだ住宅地と比べますと、流出の状況を変えるというデータがはっきり出ております。浸透させるということで、それだけプラスになっているわけです。地下に浸透させるという装置なり考え方はこれからもどんどん進めていかないといけませんし、まさしくそれは森林でも、あるいは農村地区でも同じようなことではないかと考えております。
 3番目の下水道の雨水に関することですが、下水道に雨水が入るかどうかというのは、合流式下水道か、単独式かということで大体決まってきます。量的にはそれで押さえられますけれども、その後、下水道料金がどうなっているのかは私はよくわかりませんので、事務局の方から御説明いただきたいと思います。
 
【小沢水質管理課長】 まず、2つ目の浸透ますのお話ですが、ここでは浸透ますであるとか、あるいは公的部門の貯留浸透施設の整備というのは、都市部では浸透涵養能力を高めるような施設整備が必要であって、そういったものを計画的にやっていったらどうか、ということまで話していますが、それを民間部門に義務づけるかどうかの議論はしておりません。おそらくはそれは地域ごとにそういった計画を作る中で、どうやって民間部門に実行を担保するかという議論の中でいろいろ議論されるのだろうと思います。規制ということもあると思いますが、もう一つは助成的な、支援的な措置もあると思います。この検討会では特にそこは義務づけるべきだという議論はなかったと理解しております。
 2つ目の料金等の問題でございますが、この検討会の中では、「水を便利に使い過ぎてしまって、そのことが流れを変えてしまっている。したがって、節水の文化ということを考えなければいけない」という指摘はありました。確かにそこを突き詰めていくと経済的手法という議論があるかと思いますが、ここの中では料金制度については直接は議論がなかったかと思いますが、水の収支ということを流域全体でいっていますので、そのことも考えてみると、水の使い方についても流域の単位の中で考えなければいけないという問題の指摘はなされているかと思います。
 
【岩田地下水・地盤環境室長】 直接は議論していないのですが、各流域で御議論いただくときの参考になるであろうということで、先ほど時間の関係で御説明しなかったのですが、報告書の32ページの上から5番目の段落で、これは下水道ではなくて水道料金なんですが、神奈川県が上流の森林を整備するということで、森林整備のために水道料金の一部を充てているということがありますので、こういったことも非常に参考になるのではないかと考えております。
 
【横山委員】 最近、「食料問題とかエネルギー問題よりも、むしろ水問題の方が将来は重要になるのではないか」と言われていて、私も大変興味深くこの報告書を読ませていただきました。
 お尋ねしたいのは、世界的にも水問題が大変叫ばれている中で、日本の水事情の将来がどうなるのかということをどの程度判断なさったのか、あるいは6省庁の会議などでもそういう話は出ているのか。例えば50年後になると、このままいけば今の市民が1人当たり使っている水の半分しか使えなくなるとか、そういった将来像みたいなものがあって、かなり深刻だということがわかれば、報告書のインパクトも違ってくると思うんですね。ここを見ていても、現状がどうなっているかということと、流域ごとにいろいろなことをやらなければいけないということが書いてあって、それはそれでよくわかるのですが、日本の場合は、世界的に見て、10年後、20年後の水事情はそんなに悪くならないのか、今のままいったら日本だって危ないのだぞということがあるのか、その辺が知りたかったのですが、いかがでしょうか。
 
【村岡委員】 水問題の将来ということですが、これは確かにこの報告書では直接的には扱っておりません。ただ、需要の将来予測とか問題については、これも縦割りだと思うのですが、そういうことを扱う省庁として、水資源ですから、国土庁とかがあります。そういうデータを参考にしながらということでしか話はできないわけですが、私が大体のところ知っておりますのは、現在、原単位、1人何リッター使うかということにつきましては、大都市での原単位は減りつつありますけれども、地方都市はまだまだ発展しようという性格の都市も多いものですから、必ずしも減少に向かっているということではありません。
 ただ、昨今は環境問題が大きい時代ですから、いかに水利用を合理的にしようかという工夫はそれぞれなされておりますけれども、それを合わせた形で、例えば今から30年先、50年先はどうかというところまでは、おそらくどこも予測していないのではないかと思われます。
 なお、この点につきましては、事務局の方がもっと詳しく御存じかと思いますので、補足していただきたいと思います。
 
【小沢水質管理課長】 この検討チームで「健全な水循環」を取り上げましたのは、どちらかというと流域を念頭におきまして、山の浸透能力が落ちて、雨が降るとザッと流れてしまう。そして、途中ではいろいろな形で水利用が増えているので、川の水自体がなくなってしまうとか非常に少なくなって環境問題になる。そういった問題が健全でないので健全にしようという方法を考えていますので、流域の発想であります。したがって、全国的に見て日本の水資源がどうなるかという議論はこの中ではしてなかったと思います。
 それから、関係省庁ではどうかということですが、おそらく国土庁などは日本の水がどうなるかということをいろいろ心配されていると思いますが、6省庁が集まって健全な水循環について議論したのは、この検討会と同じなのですが、いろいろな土地利用をやり、水利用をやって、そういう中で歪みというか、水がなくなってしまう、あるいは都市の治水上非常に不安定な状態が起きている。こういう事態を何とかしなければいけないという認識でやっています。つまり、将来的に日本の水資源が心配だということではなくて、今の人が手を加えてきた水循環が好ましくないいろいろな問題を持っている。この状態を各省庁が、利水、治水、いろいろな立場がありますが、それぞれ手を打ってもう少しよくしなければいけない、現状で既に問題があるという認識で何とかしなければいけないという発想で各省庁がやっております。
 
【森嶌部会長】 将来の水資源について、この検討会でやらなかった、関係省庁でやらなかったということはよくわかりましたけれども、将来日本の水がどうなるかということについては、推測しているような水資源開発公団とか、そういうものはあるのですか。そういう情報は持っておられないのですか。
 
【小沢水質管理課長】 今、詳細はわかりませんが、国土庁が、温暖化が進むと日本の水資源がどうなるかという研究をしているということは聞いたことがあります。結果はよく承知しておりませんが。
 
【村杉委員】 大変わかりやすくおまとめいただいてありがとうございます。1つお尋ねしたいのは、都市部における中水道の整備ということです。なるべく水利用を合理的に行うために、今、日本では上水道と下水道という2本の道しか整備されておりませんけれども、ヨーロッパで行われているように、長期的に中水道の整備をどうするのかということがこの中には含まれていなかったので、お尋ねする次第です。
 
【村岡委員】 中水道のことについては、この報告あるいは我々の検討チームでは検討しておりません。中水道のことについては、それが衛生上よろしいかどうかという問題も含めて、とてもとても我々の検討チームの中では検討し得なかったことです。
 ただ、水を使う場合に、上水と工業用水のほかに中水道の考え方は当然あるわけです。特に、それに代わるものとして現在進んでいるのが、ビルなどで屋根からため込んだ、浸透ますを経たりして雑用水に使うということです。
 私の考え方は、下水道の処理水を再利用する。屋根等に降った雨を再利用する。さらには、都市では特に洪水対策がシビアになっておりますので、どうしても現在の稼働だけでは足りないということで、地下河川をつくってみたり、あるいは大きな貯留施設を地下につくってみたりということをやっております。そういった水は雨水がほとんどだと言っていいわけですが、そういった水をこれからいかに活用するかという一つの課題があることはありますけれども、正直言いまして、そういった点はまだ学問研究レベルではないかと理解しております。
 
【浅野委員】 現行の環境基本計画の32ページ、33ページのところで、「水環境の保全」という項目で書き出したときに、「水循環」という言葉を用いた理由は、公害対策基本法ではどうしても「水質汚濁」ということが言葉としてまず出てくる。水質の問題から話を始めるのでは、環境基本法の環境基本計画の流れとしてはどうもまずいのではないか。そこで、いろいろ考えたあげく、「水環境」という言葉を先に出して、そこで「水循環」という言葉を使ったわけですが、32ページにあるように、水循環の流れの中で、例えば汚染物質が浄化されるとか、利用の段階で水環境への負荷が生じている。で、水の自然的な循環の過程での浄化能力を超えないようにということを一切含めて、「水循環」という言葉で議論を始めたという経過があるわけです。
 この環境基本計画の議論を受けて一番最初に出されたのが、松尾先生が座長になられた「水環境ビジョン」のプランだったと思います。この水環境ビジョンは、「水循環」と書いたここのイメージをもっとふくらませることによって、要するに水質汚濁行政から水環境行政に変えようという試みをやりまして、社会的な水利用とか、歴史的な要素とか、生物との関係とか、ありとあらゆることを全部その中に書いてしまったものですから、その後の施策としては非常にやりにくかったのだろうと思います。その中で「水循環」という部分だけが切り出されて、水循環の懇談会が行われ、さらには両部会合同の水循環の意見具申に至ったと思うんです。
 その流れをずっと追いかけて、今回、「水循環」が特にテーマとして挙がってきたという一連の流れがあるわけですが、残念ながら、参考文献の中にも一番最初のオリジナルの水環境ビジョンが全く出てこないんですね。つまり、環境庁の担当者が3年ごとに替わりますから、その頃やった人はすっかりいなくなってしまって、水環境ビジョンがこの話の出発であるということがどこかで消えてしまっているのではないかと思うんです。水循環のところから始まって、そのペーパーがずっと出てきて、それがたたき台になってきたのではないか。
 だから、全体としては、先ほどから出てきている話を聞いていても、大きなストーリーが、いつの間にか水だけが取り上げられて、水だけが循環するというふうになっているんです。しかも、一番気になるところは、最後に海に流れていくというところの話がプツンと切れるんです。しかし、この報告書を見ると、そうはならないような書き方がちゃんとしてあるとは思うんです。例えば、3ページのところでは「水の全体的な『流れ』に着目する必要がある」とありますし、12ページのところの書き方の中にも、「地球環境問題の観点からも、生物多様性と水循環との関連が重要であることを認識しなければいけない」という記載がきちっとあるわけです。生物との関わりということが、もともと水循環ということを言い始めた一つの重要なキーワードであったわけです。
 そういう目で見ていきますと、例えば、特に私は有明海を控えている九州におりますから、有明海のような海ですと、あそこに流れ込んでくる水の量が減ってしまうと、完全に塩分濃度が変わる、そこに生態系の変化が生ずるということが問題になっているわけです。ですから、「福岡市が筑後川の水を持っていって、それを博多湾に流してしまうのは、有明海の生態系の攪乱につながる」という議論もあります。ですから、水循環というのは、そこまでずっといって話が終わるはずなんですが、そういう意味では、17ページのところにも「生物生息環境の悪化」とありますけれども、何となく川口のところで話が終わっているような気もするんです。そうではなくて、「循環」というときには、大きな循環があるということをもっと強調する必要があるというのが私の認識であります。
 その意味では、このペーパーの28ページの「……姿」と書いてあるところが、たぶん今度の環境基本計画の改定のときにかなり大きく取り込まれる部分だろうと思って見ておりますけれども、特に「大流域で……」と書いてある部分は非常に重要な記述だろうと思うので、大流域というときには、河口の先のところまで含めた大きな流れがあるということを読み取っていく必要があるだろうと、この報告を見ながら思っております。
 「カスケード利用」ということも非常に重要な政策の提案でありまして、こういったような重要な指摘がこの報告書の中にありますので、これを高く評価しながら、全体として、水循環のための水循環ではなくて、それを一つのキーワードとして考えようとしたということを生かしていく必要があるだろうと思います。ですから、次の計画段階では、このペーパーに書かれている水循環のテーマをもっとふくらませていくことが必要ではないか。
 最後に意見なんですが、38ページの「あとがき」のところに書かれていることが、実は非常に大事な計画の中に取り込まなければいけない部分だと思います。例えば個別施策についていうと、前から言っているように、「地下水の流れについての研究が不足である」という非常に重要な指摘があります。これを何とか今後、計画レベルの話ではないかもしれないけれども、環境庁が施策として考えていかないと、地下水問題とか土壌問題は手のつけようがない状態になっていくだろう。
 それから、閉鎖性水域における水質問題についても、「水の流れの視点をも考慮した総合的な負荷削対策の推進も重要である」と。これが今まさに閉鎖性水域のところで議論しているキーです。ですから、どんなに伊勢湾であがいてみても、どんなに東京湾であがいてみても、工場の排水に規制をかけてみても、上流のところで何にもしなければどうにもならないということが、水質部会で散々これまで議論されてきたことでありますので、それはここの水循環の議論の中に当然入ってきていいはずであります。
 環境基本計画は、「水循環といっても、水の流れだけではなくて、だから水の汚れも問題なのだ」といって、最初のところに環境基準を書いたのは、かつて環境基準があったから、それを落としてはいけないというので書いているのではなくて、水循環を考えるときの基本はそこなんだ、そのことを意識しながら流れを考えよう、といって書いてきたわけですが、その辺がやや弱くなっていると読むのは間違いかどうか。
 むしろ事務局にお聞きしたいのですが、かつての水環境ビジョンなどで書かれたことが、こういうペーパーを作るときにどれぐらいバックに意識としてあったかどうか、その辺をお聞きした上で、我々の計画の段階で、非常に貴重な御提案がいっぱいありますし、個々の施策については、計画よりももっと別のレベルの話も入っていると思いますが、基本計画の中に入れられるものがいっぱいあるなと思いながら見ておりますので、まず、全体のフレームはどの枠の中で考えられているのかということだけお聞きしたい。特に、参考文献に私が一番大事だと思っていた文献が落ちているのはなぜなのだろうと非常に気になっているのです。
 
【岩田地下水・地盤環境室長】 浅野委員の御発言でございますが、まず、水環境ビジョンなどについて、「人事異動とかもあって忘れてしまったのではないか」というお話でしたが、参考資料には特に明示的には掲げておりませんけれども、私どもが仕事上常に持っている資料として、水環境ビジョンなり、その後出た懇談会報告書とか意見具申は常に頭の中に入れて考えてきたつもりであります。これを作るときにも、適宜参照しながら資料の作成などを行ってきたつもりでございます。
 それから、「幅広くとらえるべきである」という御意見でありましたけれども、検討チームの委員の先生方からも全く同じような御意見が出まして、「沿岸域についても重要である。沿岸域も含めて議論すべきである」という御意見をいただきました。しかしながら、私どもの作業チームの能力が至らなかった点もあろうかと思いますけれども、あまりにも幅広い議論にしてしまうと、報告書としてうまくまとめきれないのではないか、あるいは重要な点として今回はまさに水の流れについて議論を絞ろうということで御議論いただいたものと理解しております。
 最後の「あとがき」にも先生方の御意見が書かれておりますけれども、私どもは水質の問題を全く無視していいと考えているわけでは当然ありませんで、環境基本計画の改定に当たっては、そういったことも含めて積極的な対応を記述してまいりたいと考えております。
 
【森嶌部会長】 ぜひよろしくお願いします。
 
【藤井委員】 滋賀県では、「琵琶湖総合開発」から「琵琶湖総合保全」へということで、総合保全は「マザーレーク21」という名前が付いて動いていますが、そこで分析した中で、歴史的な分析は概ね同じようだったと思います。具体的に、37ページにあるような流域協議会を住民と企業と行政という形でつくってやることが望まれるということで、実際に赤野井湾の流域で5年前から流域協議会をつくってやっておりますが、この流れをきっちりとつくっていこうとしますと、建設省のいろいろなことにぶつかる。水利権にぶつかる。そして、川の水循環だけではなくて、生物多様性を何とか一部地域でもやろうとすると、今度は土地改良区とぶつかるということで、結果的には、36ページの上にあるような「関係省庁で知恵をしぼり積極的に対応」といっても、現場では全然できていないんですね。先ほどの環境投資のチームの中でも、「この中で環境庁がどのぐらい主導権を発揮していただけますか」ということを申し上げましたが、まさに水循環のここのところでは主導性を発揮していただかないと、小さな流域でも非常に難しい。
 そして、「琵琶湖の総合開発から環境保全へ」の中で最も大事なのが、流域における水環境の保全と水循環をどう戻すかということ。もう一つは森林の再生なんです。水循環はまさにこういうあり方に沿ってうまく使えるといいのですが、実際に動いている中ではなかなかうまく使えていないことが多くて、今申し上げたようなことがずいぶんあります。
 それから、地域の水量のこともありますが、水量の中で、下水道の処理水を戻していくというのは、この間、いくつかのところでやられていると思いますが、下水道の処理水を戻したところは、水質があまりよくないので、子供の遊び場にしない、生物多様性も戻らない、むしろその地域にとって非常にふさわしい水環境が再現されるわけではない。とすれば、思い切って下水道の分流式の雨水管を外して、それを地域の川に復元するというようなアウグスブルグのような例がどこかでできないか。赤野井湾の流域のところでそれらの小さい仕組みを、「大きな川でなくて、里中の河川でやってみよう」と言っていながら、そこででも実現できないのです。ですから、37ページにあるように、流域協議会で非常に有効な形が打ち出せるにはどうしたらいいかということまでも含めて、ぜひあり方の中に盛り込んでいただきたい。
 とはいえ、この議論の中で、全国に非常に有効なこういう協議会があって、そこで「健全な水循環のあり方」がかなり再生してきているというのがここの中でイメージされて議論されたとすれば、その具体的な例をお聞かせいただけるとありがたいです。
 
【森嶌部会長】 流域協議会で具体的なイメージがあるのかということですが。
 
【岩田地下水・地盤環境室長】 地下水が特に貴重な生活用水になっている熊本市あたりでは、保全回復計画を作って、地下水保全指針というものを作って、その回復に努められているようであります。熊本の場合、量のみならず、地下水汚染などに対しても積極的な対応が行われているということであります。
 それから、協議会でありますが、環境庁で委託調査ということでモデル的にやり始めている事業があるのですが、富山県と静岡県の方で関係者が集まって、協議会という名前ではありませんけれども、そういった会議の場を設けていただいて、その地域の水循環のあり方について議論していただいている途中であります。したがって、そういったものがうまくまとまれば、「これがモデルケースです」ということで全国にお示しすることができるかと考えております。
 
【天野委員】 小さいことで恐縮なんですが、一つお伺いしたいのは、7ページに、下水道の普及率が高くなった、58%と書いてある。これは先進国に比べても大変低い数字なんですが、これは全国平均だと思うんです。実際には都道府県によってこの数字はものすごく違うと思うんです。先ほど来、「水環境はかなり地域的特性が大きい」と言われているのですが、全国を平均的に政策を論じるというのがあまりふさわしくない状況ではないかと思います。つまり、先ほど熊本の例が挙がりましたけれども、地域によってずいぶん事情が違うと思うんです。もう少し地域の特性に合った、状況に応じた説明はどこかに必要ではないかという気がするのですが、いかがでしょうか。
 
【岩田地下水・地盤環境室長】 ここでは、水循環の変化に係る歴史的経緯を概観してみようということで、かなり大ざっぱといいますか、全国的なレベルでどのようになっているかということをとりあえず分析したものであります。先生の御指摘のとおり、流域ごとに非常に異なる状況でありまして、そのためもあって、最後で、計画を作るときには、流域ごとに実際に調査をして、その対策を個別に考えていくという取組が示されているというふうに理解しております。
 
【佐竹委員】 先ほど浅野委員から「海の問題も当然取り上げるべきではないか」、藤井委員から「そういう実例があったら教えてほしい」ということですので、私の知っている限りで申し上げますと、今、沿岸漁民が非常に山に関心を持っているんです。というのは、山が荒れると魚が獲れなくなる、あるいはホタテとかカキの養殖がだめになる。一番最初はホタテから始まったのですが、北海道、三陸、広島等の漁師が積極的に山林所有者、森林組合系統と一緒になって、いかにして流域全体の水環境を守るか。そのためには、当然のことながら、水質だけではだめなわけで、さっき環境庁からも説明がありましたし、皆さんから御指摘いただいたように、流域全体の水環境をよくしなければだめだということで、そういう試みが各地で出ております。
 もう一つ、お近くでは、「矢水協」といっているのですが、たしか水ビジョン懇にも入っておりました内藤さんという方が中心なんですが、愛知県・矢作川の流域で一種の王国をつくりまして、行政上の権限はもちろん県が行使するのですが、矢水協が「うん」と言わない限り絶対に開発できないというシステムをつくっている。長野県の山林所有者から三河湾の漁師までみんな入った協議組織ができております。これは10年以上の実績を持っておりますので、御覧になられたらそれなりに参考になるのではないかと思います。
 
【森嶌部会長】 私も矢作川のことをここで言うと、時間が長くなると思って控えておりましたけれども、結構いくつかあるようですね。
 
【木原委員】 いろいろな御指摘があって、なるほどと感銘深く伺っておりました。特に親水性の問題とか、アメニティの問題とか、こういうものは水循環が豊かにあってはじめて形成されるもので、その基盤を何とか確保しようというのが我々の委員会の目的だったと思います。
 流域というふうにとりましたから、幅広い問題はまだいろいろあると思いますので、今後もこういう問題について、環境行政は幅広く見ていくべきだということを痛感しました。特に農薬汚染とか化学物質汚染の問題も非常に重要な問題だと思います。この報告書の前の方で、既に各省庁もかなり答申を出しておりまして、河川審議会の平成10年7月の報告書などの作成に当たった人々、私も含めてですが、この委員会にも入っておりまして、今後、各省との連絡に努めていきたいと思っております。
 
【森嶌部会長】 いま木原委員からも御指摘があったように、今回は、先ほど事務局あるいは村岡先生からお話がありましたように、水系の循環、水の流れということに焦点を合わせて、あまり拡散しないように御議論いただきましたけれども、環境基本計画ということになりましたら、もう少し広げて--どこまで広げるかという問題はありますけれども、事務局の方にも資料等を用意していただきたいと思います。
 それでは、時間がきておりますので、今回はこれで終わらせていただきたいと思います。
 次回は、本日に引き続きまして、各論の検討チームから御報告をいただくことにしたいと思います。「環境への負荷の少ない交通」の検討チームからは太田委員に、「生物多様性の保全」の検討チームからは小野委員に、「化学物質対策」の検討チームからは北野委員に御報告をお願いしたいと思います。
 また、本日の御議論でさらに追加すべき点がございましたら、6月9日ぐらいまでに事務局に文書でお伝えいただければと思っております。
 次回の日程でございますが、既に事務局から連絡がいっていると思いますが、6月14日(水)午後2時から開催することになっておりまして、場所はまたここでございますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、閉会させていただきます。どうもありがとうございました。

 <以 上>