中央環境審議会第77回企画政策部会会議録

1.日  時  平成12年5月22日(月)14:00~17:15

2.場  所  KKRホテル東京 瑞宝の間

3.出 席 者

(部 会 長)森 嶌 昭 夫
(部会長代理)安 原   正
(委    員)浅 野 直 人
池 上   詢
江 頭 基 子
幸田シャーミン
佐 竹 五 六
塩 田 澄 夫
中 野 璋 代
福 川 伸 次
松 原 青 美
谷田部 雅 嗣
天 野 明 弘
井 手 久 登
北 野   大
小 澤 紀美子
佐 和 隆 光
鈴 木 継 美
波多野 敬 雄
星 野 進 保
村 上 忠 行
渡 辺   修
(特別委員)太 田 勝 敏
横 山 裕 道
猿 田 勝 美
(専門委員)寺 門 良 二

阿 部   治
(環 境 庁)岡田事務次官
太田企画調整局長
遠藤水質保全局長
西尾環境保健部長
櫻井大気保全局企画課長
松村企画調整局環境保全活動推進室長
寺田企画調整局環境影響評価課長
細谷企画調整局環境計画課長

松本自然保護局長
浜中地球環境部長
富田企画調整局企画調整課長
清水企画調整課調査官


大林企画調整局環境計画課計画官

4.議  題

(1)環境基本計画の見直しについて
(経済社会のグリーン化メカニズムの在り方検討チーム報告・環境教育等検討チーム報告等)
(2)その他

5.配 付 資 料

経済社会のグリーン化メカニズムの在り方検討チーム報告書
(参考資料1 経済社会の推移と環境政策)
(参考資料2 環境政策の各手法の特徴と有効性)
(参考資料3 環境政策手法の評価基準について)
環境教育等検討チーム報告書

6.議  事

【細谷環境計画課長】 定刻を回っておりますので、これから中央環境審議会第77回企画政策部会を始めたいと存じます。
 開始に先立ちまして、まず資料の確認をお願いいたします。

(配付資料の確認)

 そのほか、各検討チームの進捗状況を1枚紙の票の形で整理したものをお配りしております。
 なお、グリーン化メカニズムの報告書につきましては、参考資料1~3をお付けしております。また、環境教育の報告書に関しましては、昨年12月、本部会で行われました環境教育に関する答申をお付けしております。
 なお、委員の皆様方の机の上には、前回までの提出資料のうち、参考になると思われるものを若干置かせていただいております。
 資料は以上でございますが、もしお手元にそろっておりませんようでしたら、お申し出いただきたいと存じます。
 それでは、部会長、よろしくお願いいたします。

【森嶌部会長】 それでは、ただいまから第77回企画政策部会を開催させていただきます。
 本日は、前回に引き続きまして、環境基本計画の見直しの各論的事項について、各検討チームで御検討いただいておりますけれども、そのテーマについて、検討チームの主査から御報告をいただきたいと思っております。
 本日は、経済社会のグリーン化メカニズムの在り方検討チームの御報告について天野委員からお話をいただきます。その次に、環境教育等検討チームの御報告について小澤委員からお話をいただくことを予定しております。そして、それぞれ御報告をいただいた後に、報告に対する質疑と併せて御議論をいだたきたいと思っております。
 それでは、まず、「経済社会のグリーン化メカニズムの在り方」につきまして、天野委員、よろしくお願いいたします。

【天野委員】 それでは、「経済社会のグリーン化メカニズムの在り方」報告書の御説明をさせていただきます。
 報告書の1ページの左下にございますが、3月8日から5月15日まで4回にわたる検討会を開きまして、委員の諸先生方に非常に熱心な御討議をいただきました。また、事務局の御尽力もありまして、報告書を取りまとめることができました。
 「最近の環境問題は、経済社会の在り方と大変密接に関連しており、環境配慮を経済社会に内在化させるための様々な手法を経済社会システムのあちこちに埋め込む必要がある。そのために検討を行う必要がある」という企画政策部会の付託を受けまして、新しくできる基本計画で推進すべき環境政策手法のそれぞれの適性とはどういうものか、さらに、各種の手法を最善の組み合わせによって実施するにはどういう方法があるか、こういったあたりの検討をいたしました。その内容は追って御説明いたしますが、39ページをお開きいただきます。
 39ページには、この報告書の末尾に当たるわけですが、環境基本計画の作成にあたって、様々な手法に対する考え方をどういうふうに位置づけるかということについての検討会の皆さんの意見をまとめております。
 まず、いろんな政策に関する基本的な考え方は、環境政策の根本に関わる問題でございますので、しかも環境政策は自然環境だけではありませんで、様々な施策の横断的な関連を考えて策定されねばならないということがございますので、政策手法の基本的な考え方とか適用の方針については、総論部分に書き込んでいただくのがよいのではないか。そして、各論部分につきましては、経済社会の仕組みの中に、重点的に、あるいはシステム的に組み込む必要のある政策手法は、各論の初めで一体的にまとめて記述していただくことにしまして、個別の具体的な政策については、様々な検討チームで御検討いただいております具体的な提案をお書きいただく。こんな書き方がよいのではないか。少しあちこちにわたりますけれども、総論的な部分での基本的な考え方、各論におけるかなり広範囲にわたる政策手法の一般的な記述、そして個別具体的な政策の記述、こんな形で書けば政策体系はよくわかっていただけるのではないかと考えております。
 そこで、最初に戻っていただきまして、目次が最初のところにございますが、その目次の2の「環境政策の手法の意義と役割」というところに(1)~(6)の手法を分けております。ここでは検討の対象になるような手法を分類したわけですが、厳密に分類するのは大変難しゅうございます。最近になって出てきたような手法がたくさんありまして、それぞれがお互いに関連しているところもありますので、この分け方はあくまでも便宜上といいますか、ある程度の類似性を持ったものを集めて6つに分けたという程度にお考えいただければと思います。
 それぞれの手法については、いろいろな特徴があるわけですが、近年の各国の環境政策等を見ておりますと、複数の手法がお互いに組み合わされて実施される。パッケージとかミックスとかいう形がとられることが多いわけですが、ここではとりあえず分類されたそれぞれの手法について、その内容を簡単に説明し、それぞれの長所と短所がどのあたりにあるか、手法の性格を明らかにする。それから、実際に政策手法として採用する際にどういう留意点を考えることが必要か、こういったことを述べておりまして、それぞれの政策手法を、単独ないしは複数で効果的に用いるための判断材料を提供しております。
 またあちこちに飛んで恐縮ですが、31ページの上のあたりに、そういった個別手法を組み合わせて使う、ベスト・ミックスを考える際の基本的な考え方が書いてありますが、これは大きく分けますと2つのことを申しております。1つは、第1段落にあるようなことですが、それぞれの長所を生かしながら短所を補うという形で補完的な手法を組み合わせて最大限の効果を引き出そうという考え方と、もう1つは、そういった政策策定に当たる策定の仕方についての注文と申しますか、いろいろな考慮すべき問題点、考慮すべき事項のチェックリストを作る。それから政策手法の評価をする。評価の基準とか評価の方法をきちっと整備して、ある種の手順に従っていけば、ベスト・ミックスの政策が作られるような、そういった考え方が必要ではないかというふうなことを述べております。
 先ほどの6つの手法に戻らせていただきますが、それぞれ説明が違いますので、便宜上、私が最初の(1)~(3)の手法の説明をして、(4)~(6)は事務局の説明に譲りたいと思います。
 それでは、4ページの「直接規制的手法」というところから入らせていただきます。
 普通、「規制的手法」という表現で、ここで申しておりますような直接規制的な手法のことを申す場合が多いのですが、「規制」というのは英語では「レギュレーション」で、レギュレーションというのは、ここに挙がっているような6つの手法すべてをカバーするぐらいの広いものと理解しておりますので、ここではできるだけ混乱を避ける意味で「直接規制的手法」という言い方をしております。
直接規制的手法というのは、社会全体が達成すべき一定の目標、最低限の遵守事項を示し、法令に基づいて統制的手段によって目的を実現しよう、こういう手段でございます。
従来からの公害対策あるいは環境政策というのは、こういった直接規制的手法が多用されてきたわけですが、近年の環境問題の発生のメカニズムは、原因と被害、影響というのが1対1とか直線的に関連しているものばかりではなく、発生のメカニズムが大変複雑になってきておりまして、対象地域がグローバル化している。そういうことから、直接規制的手法がいろんなところで限界にぶち当たっているということが明らかになってきております。
ただ、そうは申しましても、直接規制的手法は、政策の実施が画一的に行われる、そして強制力が大変強い、こういうことから、効果が確実性を持っておりますし、どういう効果が発生するかという予測可能性も高い。技術革新に対するインパクトを与えることもある。そういった長所がありますので、健康とか安全あるいは自然環境保全といった問題に対する対処としては、今でも優れた政策手段と考えられております。
ただ、先ほど申しましたような環境問題の性格の変わり方から、5ページないしは6ページに、様々な欠陥があるという指摘がなされるようになりました。5ページの方は文章
で書いておりますので、6ページの第2段落を御覧いただきますと、キャッチフレーズのような形でまとめてございます。非常に多くの点で問題があるという認識が広がってきたということが書いてあります。
したがいまして、直接規制的手法を採用する場合も、先ほど申しましたように、原因と被害とか原因と影響の関係が大変はっきりしているとか、あるいは健康とか安全のようにどうしても最低限これだけの基準は守るべきだ、こういった環境問題に対してはこれからも一定の役割を果たすべきだと考えます。ただ、手法が効率性を欠くことがないようにとか、費用効果性をできるだけ高めるとか、あるいは決定と実施のプロセスが透明性を確保できる、こういったことを考慮して採択されるべきであろうと考えております。
 そして、OECDがずっと以前から主張しております汚染者負担原則とか、拡大された生産者責務--「責任」よりむしろ私は「責務」という方がいいと思います--という理念を打ち出しておりますけれども、そういうものをベースにして規制効果分析の対象にする。こういった国際的な直接規制の改革の流れがございますので、そういう流れに我が国が外れることがないというふうな考慮も重要な課題であろうかと書いてございます。
 続きまして、2番目の手法として、ここでは「枠組規制的手法」というのが8ページから書いてございます。これは従来の直接規制とか経済的手法とか、あるいは後ほど出てまいります教育とか普及啓発、こういった分け方とは少し違った形ですけれども、個別具体的な行為を直接規制するというのが直接規制ですが、そうではなくて、目標の提示とか、手順、手続を踏んで何かの活動をする、そういった行為の枠組みを規制するというタイプの手法でございます。
そこにはPRTR法、「特定化学物質の環境への排出の把握等及び管理改善の促進に関する法律」という大変長い名前の法律が昨年制定されまして、来年から施行されますけれども、こういった手法が典型的な例であろうかと思います。つまり、枠組みを規制するけれども、内容といいますか、具体的なことについては、それぞれの主体の自由度が非常に高い、そういう種類の政策でございます。
環境政策は、特に最近、個別企業といいますか、事業主体が持っております専門的な情報に依存することが大変多くなってきております。そういうことを従来型の直接規制的手法で対応しようとしますと、モニタリングの費用が大変高くなるということがございます。しかも個別企業に対する規制がそういう形でかかってまいりますと、大変煩雑な生産体系ができあがってしまう。そこで、この枠組規制的手法の考え方というのは、情報の公開、社会的な監視、社会的な注目、そういうことによって自発的な創意工夫を高めるという効果を考えた手法と言えるかもしれません。これは先ほどの直接規制的な法規制による側面と、それぞれの事業体の柔軟な自主的な発想という両方の効果を組み合わせよう、こういう手法の特徴ができるかと思います。したがって、モニタリングの費用(行政とか政府側の費用)とか、遵守する側の遵守費用、どちらもが大変低くなって、自主的な対応が促進されるわけです。したがいまして、直接規制的な手法のように因果関係があまりはっきりしない状態で適用が難しいということはございませんので、予防的なやり方あるいは先行的な政策手法として利用されることになろうと思います。
ただ、この枠組規制的な手法は、直接規制的な手法との関係で常に考えられておりまして、従来、直接規制的手法で行ってきたものもこういった枠組規制的な方向へ変えることができないかどうか、あるいは後ほど「自主的取組手法」というのが出てまいりますけれども、それとこの枠組規制的手法もかなり関係が深い面がございまして、そういう自主的取組との組み合わせといった点で枠組規制的な手法が使われると効果が大きいのではないかと書いてございます。
続きまして、10ページの「経済的手法」にまいります。経済的手法というのは、手法の形も大変多くございますし、主な政策効果の発揮されるルートが、経済的なプロセスを使うという点で、従来の直接規制とか枠組規制のような環境政策とかなり違う側面がございますので、いろいろ議論の多いところではあります。しかし、国際的に見ますと、環境政策の中で経済的手法の果たす役割は年々増大の一途をたどっておりますので、ここではかなりページ数を割いて様々な側面の説明を行っております。
簡単に申しますと、経済的手法というのは、経済的なインセンティブを与えて、主体の経済合理性に基づく行動を誘発する。それによって環境目的を達成しよう、こういう方法であります。つまり、経済の論理に従った行動が環境保全の方向に自然に適応するという考え方でございます。
近年の環境問題は、御承知のとおり、不特定多数の主体の日常的な行動が環境問題を引き起こしているという側面がありまして、そういった日常的な行動(消費活動、生活上の行動、事業体の生産活動等)は、従来型の直接規制によって禁止をしたり制限をしたりというやり方にはなじまないわけです。しかし、仮に直接規制を使ってそういうものを統制しようとすれば、実効性を担保するための費用は非常に膨大なものになるということで、従来は手がつかなかった状態であったわけです。
この経済的手法の性格としましては、先ほど申しましたように、価格というシグナルを出しまして、そのシグナルを通して、今までは市場の活動の外側に置かれていた、環境を利用するための費用、社会が負担すべき費用を、市場の中に取り込んできて、環境利用の費用も含めた効率的な資源配分を実現するということが一番重要な点でございます。ただ、環境負荷を低減する活動は、それぞれの主体の自由に任されることになりますので、直接規制的手法に比べますと、活動主体の自由な行動範囲は非常に広いわけですので、効率的な政策の実施が確保されるという長所を持っております。
この経済的手法は、類型別検討という形で様々な形態が後に出てまいりますけれども、補助金とか、租税上あるいは金融上の優遇措置も経済的手法に入ります。ただ、この場合は、報告書にも詳しく書いてありますように、研究開発とか、環境上の負荷を軽減するような特別の活動とか、そういったものに関連する助成措置以外は様々な欠点も備えておりますので、慎重な評価をして使う必要があろうかと思います。
経済的手法は、12ページ以降に、ここでは4つの類型に分けて書いてあります。アとしては「税・課徴金」、イで「助成措置」、ウで「排出取引」、エで「その他」、この4つの種類の類型についてそれぞれいろいろな特徴とか問題点を調査して述べてございます。
まず、「税・課徴金」は、先ほど申しましたように、環境を利用するためのコストが、市場経済では市場の外に置かれてしまっていて考慮の対象にならない。これを専門的には「市場の失敗」といいますが、本来考慮すべきものを考慮しないで活動させてしまうという意味で失敗なわけですけれども、そういった市場の失敗を是正する最も有効な手法の一つとして税・課徴金というのが考えられております。
財政学の方では、税あるいは課徴金というのは、民間の経済活動に特定の方向への影響を及ぼすことはだめだという、経済活動に対して中立的な性格を持つようなの手法を採用しなければいけない、そういう原則がございますが、環境政策の中での税・課徴金というのは、特定の方向への行為を誘導するためですから、そういう定義から言いますと、中立性原則と一見対立しているようですけれども、環境政策としての税・課徴金というのは、先ほど申しました市場の失敗を是正するというポジティブな面を持っておりますので、市場の失敗の存在しないという状態での中立性原則に必ずしも抵触するとは言えない、これが一般的な学界の議論でございます。
税・課徴金は、環境政策として使われてきた経緯を見ておりますと、当初は個別の環境政策--水の問題、大気の問題、土壌の問題、こういうところに適用されるというふうに使われておりましたけれども、最近では、環境整合性を持った税制の体系全体をそういう方向へ改革するという、より大きな形での適用の仕方の方向に向かってきております。これは課税とか課金のベースになる事柄と環境負荷の水準が非常によく対応している場合には効果が出ますけれども、その対応がずれているときには効果がなかなか出てこないということがございます。そういう対応がとられていない状態では、中立性原則に反するようなことも起こるわけですので、その辺の配慮が大変重要になってくると考えられます。
 ここでは、エネルギーに対する課税あるいは炭素税という問題を特記しておりますが、これは御承知のとおり、地球温暖化という非常に大きな問題に対する経済的手法の適用例の一つであります。
 ここでは、よく議論されているいろいろな問題、例えばエネルギーに課税をしても需要の反応が非常に鈍い、つまり税をかけてもあまり需要が減らない、価格弾力性が低いという問題がありまして、これは短期的な反応と長期的な反応では対応が違って、長期的な反応はかなりの大きさの影響が出てくるという議論とか、産業部門では割合効果が出るけれども、運輸とか民生部門ではなかなか効果が出ないということとか、あるいはエネルギーの価格が変化するときに、人々が通常の、例えば世界の原油市場の需給関係で値段が上がったり下がったりするという事柄に対する反応と、政府が課税をして、そのためにエネルギー価格が高くなることに対する反応とがかなり違う。つまり後者の課税による価格の上昇は、かなり恒久的にその変化が続くだろうという見通しから、反応の程度が大きくなるという研究もございます。
 エネルギーに対する課税というのは、必需品的な性格の消費課税とよく似ておりますので、逆進的な性格を持っているとか、先進工業国では、国際的な枠組みでの課税以外のやり方をすると国際競争力に問題が生じるとか、そういった問題点も挙げてございます。エネルギーに対する課税については、税収がかなりの規模になる可能性もございますので、そういった税収がどういう形で使われるか、使うときの根拠は何か、こういったあたりのことを常に明確にして政策を実施すべきであるという考え方を述べております。
 補助金とか税制上の優遇措置については、環境改善事業とか環境技術開発といった助成措置については一定の役割があるのですが、16ページを御覧いただきますと、助成措置というのはかなり多くの問題点を持った政策手法である。これは国際的にもそうですし、あるいはOECD等でのいろいろな調査でもそういうことがわかっているということが述べてございます。そのために、他の経済的手法に比べて補助金とか税制上・金融上の優遇措置については、こういった欠点を含まないような形の慎重な配慮が必要であるということを述べております。
 もう一つのタイプの経済的手法として、最近、京都議定書で随分問題なっております排出取引というものがございます。これは汚染物質の排出許可証を政府あるいは政策主体が発行して、その発行量によって排出量をコントロールするというものであります。発行された許可証は市場で売買することが認められる。売買するということは、手持ちの許可証を自分で使わないで、つまり排出を削減して余裕が出た許可証をマーケットで売却して、それが経済的な利益につながるということから、排出削減を促進する特徴を持っております。ここでは「キャップ&トレード」という形態あるいは「ベースライン&クレディット」という2つのやり方が書いてございますが、京都議定書ではどちらも国際的な制度として議定書の文面上は導入されておりますので、発効すればそういうことが使われるようになりますが、こういったやり方は決して国際的な制度だけではありませんで、国内の制度としても構想できるようなものであります。
 17ページの真ん中あたりから下にかけて、各国で国内制度としての排出取引制度の導入について、どういう取組の例があるかということが紹介されております。いずれもかなり前向きな検討が進んでおりますが、それだけでやろうというわけでは必ずしもありませんで、先ほどのエネルギーあるいは炭素に対する課税とこういった排出取引の手法を組み合わせて使うという考え方もかなり広く見られるところであります。
 2つの方式にはそれぞれ長所あるいは短所がございますが、「ベースライン&クレディット」というやり方をとりますと、ベースラインを決めて、そこからどれだけ削減されたかということを測ります。したがいまして、ベースラインの設定が大変重要になりますけれども、ベースラインを説得力のある形で推定することに大変コストがかかります。
 「キャップ&トレード」の方式の場合には、許可証を提示すべき義務を負う主体が出てまいりますけれども、どの主体に対してそういう義務を負わせるか、あるいは許可証を最初どういう形で排出主体に配分するか、こういうことが大きな課題となっております。現在、先ほど申しましたような各国の政府、国際機関、NPO等がこういった手法の持っている問題点をどう解決するかということに取り組んでおります。
 「その他」のところでは、デポジット・リファンド制度、これは廃棄物のリサイクル等に関連した経済的手法の代表的なものですが、そういうものとか、‘Pay per bag'制度、これは廃棄物を捨てる袋1枚についていくら払うという形で経済的な負担を課すような廃棄物処理の手法であります。そういったことが挙げられております。
 今までの直接規制的手法、枠組規制的手法あるいは経済的手法は、今申しましたような環境政策として有効に機能する側面がそれぞれ違うことは御理解いただけたと思いますし、それぞれの手法は、環境に対する効果、あるいは費用を通した国民経済に与える効果という点でも違っておりますので、単一の手法の採択で、これがいいか悪いかという検討よりも、それぞれの政策の長所を生かしながら、どういうふうに組み合わせるかという考え方が重要になってくるのではないか。そして、経済社会の中でこういうものが適用される場面は非常に多くあるわけですから、あれかこれかという選択ではなくて、むしろ適した場面にそれぞれの政策をはめ込んでいって、全体としての政策体系を形作るという考え方が特にこういう経済的な手法の場合には必要であろうと思うわけです。
 あと、(4)~(6)の手法につきましては事務局の方にお願いしたいと思います。私はここで一応終わることにいたします。

【細谷環境計画課長】 それでは引き続きまして、ただいまの天野先生の御説明に補足する形で、「自主的取組手法」、「情報的手法」、「手続的手法」の部分を中心にして報告書の説明をさせていただきたいと思います。若干重複する点があろうと存じますが、御勘弁いただきたいと存じます。
 本報告書の検討の趣旨は、2ページの「はじめに」のところにございますが、検討チームにおける報告書の取りまとめに当たりましては、関係省庁からの御意見もそれぞれ伺っているところでございます。
 また、構成につきましては目次のとおりでございまして、先ほど天野先生の御説明にあったとおりでございます。
 それでは、報告書の中身につきまして若干御説明させていただきたいと存じます。
 まず、1の「環境政策の現状と課題」でございますが、ここにおきましては、まず、(1)のところで、環境問題の変化の特徴的な点、すなわち問題発生の原因への不特定多数者の関与、あるいは発生メカニズムの複雑化等々6点ほどにわたって整理しております。
 (2)のところでは、このような環境問題の変化に伴いまして、環境政策というものも環境と経済の統合的なアプローチの方向へと大きく変化しておりまして、その契機が環境基本法の制定であったということを述べております。
 (3)のところにおきましては、2つ目の段落ですが、環境政策の基本的な考え方の変化を、汚染者負担原則、環境効率性、予防原則、環境リスク評価・リスク管理、こういうものに触れながら記述しております。
 その次の2つの段落におきましては、環境政策手法の変化をもたらす動きを記述しております。
 そして下から2つ目の段落になりますが、そのような動きの中で、政策手法の多様化と、先ほどお話のございましたベスト・ミックスが必要とされていること、及びそこにおけるいくつかの傾向を記述しております。そのような傾向として、ここでは、政策手法のコスト・パフォーマンスが重視されるようになったこと、政策手法の対象者の意志決定の自由が可能な限り尊重されなければいけないということ、政策手法による市場の攪乱の可能な限りの防止、政策対象者の創意工夫の助長による目標達成のための最適な選択の実現、手続的あるいはシステム的な対応の重視、これらを挙げているところでございます。これが以下の記述の基本的なトーンになっているわけでございます。
 4ページ以降では、「環境政策の手法の意義と役割」と題しまして、環境政策手法を、先ほどお話がございましたように便宜上6つのタイプに分けて記述しております。ここでは、最初の段落にございますように、環境政策手法は、政策パッケージの形で用いられることが通例であることを認識しつつ、まずはそれぞれのタイプごとに適性分野や射程、長所、短所等を検討して、その上で、それらのベスト・ミックスについて検討するというスタンスをとるということが述べられております。
 また、次の段落では、このような類型は必ずしも厳密に割り切れるものではなく、ある政策手法が他の政策手法の性格を合わせ持つこともある、こういうことが注意的に述べられております。
 以下、個別の環境政策手法ごとの記述に移るわけでございますが、記述のスタイルはほぼ共通しておりまして、まず当該政策手法の概要を述べまして、それがどのような経緯で成長してきたのか、また、それらがどのような性格、長所、短所を持つのか、これらを整理した上で、採用に当たっての留意点を述べております。
また、直接規制的手法、経済的手法につきましては、政策評価の問題に触れております。
なお、経済的手法、情報的手法、手続的手法、これらは非常に広範な内容を含むものでございますので、さらにこれをタイプ別に分けて検討しております。
「直接規制的手法」から「経済的手法」につきましては、天野先生の方から御報告がございましたので、私の方では19ページ以下、「自主的取組手法」、「情報的手法」、「手続的手法」について御説明申し上げたいと存じます。
まず、「自主的取組手法」でございますが、これは19ページの[1]の「概要」のところにございますように、「事業者等が、自らの行動に一定の努力目標を設け、自主的に環境保全のための取組を行うもの」でございます。この報告書におきましては、自主的取組手法につきましては、「新たなタイプの環境問題や事業者の専門的知識と創意工夫なしには改善が図れない複雑な環境問題に対し、迅速に、かつ、柔軟に対処することができると同時に、技術革新への誘因という利点や、関係者の環境意識の高揚や環境教育にもつながるという利点もあるため、多くの取組が行われ、実績を上げてきた。」という形で高く評価した上で、「その効果が最大限に発揮されるためには、社会的な信頼感が増進させていくことが重要であり、自らの行動について設定した努力目標が公表されたり、行政主体と何らかの取り決めが結ばれる等、何らかの形で、第三者の関与が確保されていることが基本となる。」としておりまして、この上でさらに、第三者の関与の在り方等から、「公的自主計画」、「自主協定」、「片務的公約」、この3つのタイプに分類しております。
次に、20ページの[2]の「経緯」のところでございますが、ここでは、この手法が重要性を増してきた経緯がるる記述されておりますが、末尾のところにございますように、今後、多様な展開の可能性があるということについて特記されております。
[3]の「性格」のところにおきましては、まず、この手法の特徴として、迅速性、学習効果、柔軟性、自発性、企業の自主性、創意工夫の重視、監視費用の削減、このような問題を挙げまして、次に問題点としましては、拘束力の問題あるいは取組に参加しない企業の扱い、目標設定の在り方等について触れております。
 これらを踏まえまして、[4]のところに「採用に当たっての留意点」とございますが、ここでは冒頭にございますように、「この手法の最も本質的な問題は、部外者に対するアカウンタビリティの確保である」としまして、取組状況の公表、第三者の関与の必要性を強調しております。
また、その他の留意点としましては、21ページの下の方にございますが、目標の設定に関して、明確で、通常業務の推移だけで達成できるようなものではない量的目標を設定すること、また、公開することの必要性を挙げております。
また、行政当局の支援としては、「ただ乗り」防止策を講ずること、技術的な支援や公的な実行方針を提示すること、公正取引に関する措置、これらの3つの問題について触れております。
次に23ページ以下におきましては、一応「情報的手法」と名付けておりますが、これについて言及いたしております。
まず、[1]の「概要」のところにございますように、この報告書では、「『情報』の提供が、市場経済の中に事業活動や消費活動における環境配慮のインセンティブを組み込む側面を有する」ことに着目しております。そして、これを一つの政策手法としてとらえております。
情報的手法が効果を発揮するためには、その情報が事業活動等による環境負荷等を正しく反映するものであることが極めて重要でございます。そこで、このことを踏まえて、事業活動や製品等の環境面からの評価の手法というものも情報的手法の重要な要素である、といたしております。
[2]の「経緯」のところでは、情報的手法が次第に重要性を増してきている現状を記述いたしております。
[3]の「性格」のところですが、情報的手法は、「情報」という手段を活用することにより、市場経済の中に環境配慮のインセンティブを組み込むという効果が期待される一つのインセンティブ型の手法として、「経済的手法」に準じた性格を持つのだ、ということが記述されております。
以上を踏まえまして、[4]の「採用に当たっての留意点」のところでは、事業者やNGOなど関係者のパートナーシップの下で発展を図る必要性があること、あるいは評価手法の整備や情報の交通整理、情報の流通基盤など社会基盤的性格を持つ部分に果たす行政の役割、さらに、情報の信頼性を確保するための仕組みの検討の必要性、こういうものに触れております。
また、[5]の「類型別検討」のところでは、情報的手法というものを「情報開示・提供手法」と「評価手法」に分類いたしておりまして、前者の「情報開示・提供手法」につきましては、項目で申しますと、環境報告書と環境ラベリングについて触れております。また、「評価手法」につきましては、環境パフォーマンス評価、環境会計、ライフサイクル・アセスメント、これらについて、それぞれ意味、現状あるいは課題を整理しております。詳細はお読みいただくことにして省略させていただきますが、それぞれの項目の末尾に記載されております課題に共通しておりますのは、情報的手法はいずれも形成途上でございまして、その確立のために関係者間で様々な努力が必要であるということだろうと存じます。
次に27ページ以下でございますが、ここでは「手続的手法」と名付けたものについて言及いたしております。
 手続的手法は、[1]の「概要」の冒頭のところにございますように、「意志決定過程の要所要所に環境配慮のための判断が行われる機会と環境配慮に際しての判断基準を手続的に組み込んでいく政策手法であり、環境配慮を行う機会を確実に設けることにより、環境配慮型の行動を促そうとするもの」でございます。
「経緯」、「性格」のところは飛ばしていただきまして、[4]の「採用に当たっての留意点」のところを御覧いただきますと、「手続的手法においては、環境配慮の機会が設けられることが主眼であり、その結果行われた環境配慮の適正さについては、意志決定過程や結果の公表により透明性を高めることや当該手続中に第三者の意見を聴く機会を設けること等により、別途これを担保する措置を講ずることも重要である。」ということが注意書き的に書かれております。
[5]の「類型別検討」のところでは、簡単に申しますと、まず、「環境マネジメントシステム」以下の項目について、それぞれ意味、現状、課題を整理いたしております。
これにつきまして、意味や現状に関する部分はお読みいただくことにして、課題のところに絞って若干説明申し上げますと、まず、アの「環境マネジメントシステム」につきましては、今後の課題として、中小企業への取組の拡大、取組の内容、結果についての情報公開の指針等を挙げますとともに、環境基本計画に基づく率先実行計画の問題点として指摘されている点が、環境マネジメントシステムの導入により克服しうることが述べられております。
また、「環境適合設計」につきましては、ISOで現在検討が進められておりまして、これに我が国としても積極的に協力すべきことが述べられております。
また、「戦略的環境アセスメント」につきましては、環境影響評価法制定時の国会附帯決議におきまして、「制度化を早急に検討すべきである」とされているところでございまして、「当面は、対象となる政策・計画が多様であること、我が国の政策・計画の策定過程等を踏まえて柔軟に考えるべきであること、及び我が国での実例がなお乏しいことを踏まえ、現段階においては、諸外国における戦略的アセスメントの実施事例を踏まえ、戦略的環境アセスメントの手続、内容、評価方法等の原則を明確化しつつ、実例を積み重ねていくことが重要である。」という指摘が行われております。
 「環境アセスメント」につきましては、「新たに導入された方法書手続や複数案の比較検討等を通じて、開発行為への環境配慮の統合を一層進めることが必要である。」としますとともに、実施レベルの問題点を4点ほど指摘しておりまして、これらについて、きめ細かな対応が必要であるということを述べております。
31ページ以下には、「環境政策の政策手法のベスト・ミックス」についての考え方が示されておりますが、そこでは、「基本的な考え方」としまして、「環境政策の実施にあたっては、環境政策の政策手法の適性分野や短所、長所を勘案し、その分野に最も適性を有する政策手法を中心として、複数の政策手法を組み合わせることにより、短所を補い、政策効果を最大限に高めること(政策手法のベスト・ミックス)が重要である。」ということを述べております。
また、政策手法の具体的な組み合わせについては、良好なパフォーマンスを達成することができた政策手法の組み合わせ事例をモデル的な政策パッケージとして念頭に置くことが有益であることを述べております。
さらに、「基本原則や政策決定に当たって念頭に置くべく事項を整理したチェックリスト、選択肢となる政策手法の評価の方法(例としてアメリカにおける規制効果分析等)を含むシステムとしてこれを組み上げ、政策立案に当たっては、そのようなシステムに定められた手順を踏むこととすることも政策手法のベスト・ミックスを達成する上で極めて有効であると考えられる。」ということを述べております。
以下の点につきましては省略させていただきます。
 34ページ以下でございますが、ここはいわば結論部分でございますが、「環境政策の展開の方向性」としまして、新たな環境基本計画に盛り込むことを検討すべき事項を挙げております。
 まず(1)は直接規制的手法の部分でございまして、「枠組規制的手法や経済的手法等他の方法に代替することが容易であり、効果も大きい場合には、可能な限り、それらの手法によることとすべきである。」という考え方を基本としまして、「個別具体の環境問題に対し直接規制的手法を用いることの適否を判断するためのチェックシートの在り方や他に取りうる政策手法との比較考量を含め、環境保全効果と経済的効率性の両側面から規制効果分析を行うための考え方について検討する必要がある。」ということ、あるいは「他の政策手法との組み合わせにより、より規制的な色彩を薄めることを検討すべきである」ということ等を述べております。
 次に「経済的手法」でございますが、これは先ほど天野先生からお話がございましたようなことでございますが、結論のところでは「税・課徴金や排出取引等の経済的手法の環境政策上の活用の在り方について、幅広く検討を進めていくことが必要である。」ということを述べております。
 次に「自主的取組手法」でございますが、これは「今後も積極的に活用されるべきである」という認識が示されておりまして、「他の手法との組み合わせや第三者の関与の在り方等自主的取組が活用されていくための方策について検討する必要がある。」ということを述べております。
 次に、「情報的手法」及び「手続的手法」につきましては、現在、形成途上の政策手法でございまして、このことに鑑みまして、個別手法ごとにかなり具体的な点を指摘いたしております。
 まず、情報的手法につきましては、環境報告書等5つの項目を挙げているわけでございます。
 「環境報告書」につきましては、取組の普及の促進方策、情報交流の基盤整備、環境会計や環境パフォーマンス評価のための手法の検討、報告書の信頼性確保のための手法、これらの点を検討すべきであるということを言っております。
 「環境ラベリング」につきましては、エコマーク制度の充実、国際エネルギースタープログラムの推進、製品環境情報の開示を行う新たな環境ラベルの検討、これらについて触れております。
 「環境パフォーマンス評価」につきましては、評価のための指標群を整備することが重要であるということについて触れております。
 「環境会計」につきましては、ガイドラインを核とした民間の取組を支援すべきであること、環境関係の信頼性を高める方策を検討すべきであること、国際的議論におけるイニシアティブを発揮することが必要である、こういうことについて触れております。 
 最後に「ライフサイクル・アセスメント」につきましては、引き続き手法の開発、確立を進めることが必要であること、環境保全型製品等への導入の手法、仕組みを検討することが必要であること、情報提供、普及のためのツール、仕組みを検討することが必要であること等に触れております。
 一方、「手続的手法」につきましては、環境マネジメントシステム等4つの項目が挙げられております。
 「環境マネジメントシステム」につきましては、普及のための情報提供等の支援や、中小事業者向けに既にある環境活動評価プログラムの普及等の取組を進めることが必要であることを述べております。
 また、政府の部門におきましては、率先実行計画の取組を一歩進めまして、国における環境マネジメントシステムの在り方を検討する必要があるということについて述べております。
 「環境適合設計」につきましては、ISOの検討に参加、貢献すべきであるということでございます。
 「戦略的アセスメント」につきましては、先ほど触れたとおりですが、国において実例を積み重ねるため、戦略的環境アセスメントについて具備すべき手順、内容を明らかにするとともに、計画の類型ごとに主要な評価等の項目、利用可能な技術手法とデータの整備状況、留意点等を明らかにしてガイドラインを作成し、これを踏まえて、国自ら実例を積み重ねるとともに、地方公共団体の戦略的環境アセスメントへの取組の促進を図るべきであるということ。また、これらの実例を踏まえつつ、引き続き、戦略的環境アセスメントの制度化に向けた検討を行う必要があるということ、この2つを述べております。
 「環境アセスメント」につきましては、環境影響評価法により新たに導入された方法書手続や複数案の比較検討等を通じて、開発行為への環境配慮の統合の一層の推進を図ること、新たな制度、項目に対応した技術手法の調査検討を推進すべきであること。また、一般住民、地方公共団体等に対する情報の提供、技術的支援の充実、あるいは専門家の技術の向上を促すための措置が必要であること、こういうものについて言及いたしております。
 報告書は、最後に「政策パッケージ」に関しては、政策手法のベスト・ミックスの考え方に基づきまして、「多様な政策パッケージを検討し、それぞれの政策課題に応じ、複数の政策パッケージの中から適切な選択を図っていくことが重要な課題である。」ということを指摘いたしております。
 また、情報的手法と手続的手法の発達を踏まえた日常の国民活動に環境配慮を織り込んでいくための政策パッケージ、これにつきましては38ページに簡単な図で説明いたしておりますが、こういう政策パッケージを提案いたしております。さらに、消費者の日常的な消費行動への環境配慮を織り込んでいくための政策パッケージが現在存在しないので、その検討を行う必要性があるということを指摘いたしております。
 報告書は、「おわりに」におきまして、環境基本計画の策定に当たって、政策手法をどのように位置づけるかというようなことに触れまして、検討を締めくくっているところでございます。
 なお、参考資料の1~3は、この報告書を取りまとめるに当たりまして、検討チームに提出されました資料の一部を参考までにお付けしたものでございます。
 説明は以上のとおりでございます。
 報告書は、「おわりに」におきまして、環境基本計画の策定に当たって、政策手法をど
 のように位置づけるかというようなことに触れまして、検討を締めくくっているところで
 ございます。
 なお、参考資料の1~3は、この報告書を取りまとめるに当たりまして、検討チームに
 提出されました資料の一部を参考までにお付けしたものでございます。
 説明は以上のとおりでございます。

【森嶌部会長】 どうもありがとうございました。
 まず、政策手法について、それぞれの手法がどういう特色を持っているのか、また、どういう課題を抱えているのか。したがって、どういうところでその政策手法を使うことがより効果的であるのか、こういう分野ではあまり効果的ではないのではないか。また、個々の政策手法を独立して、ある分野のレギュレーションに使うというのではなくて、その政策手法のベスト・ミックスを目指すべきであるということで、いわば政策を考える場合の政策手法について分析をしていただいたものであります。
 企画政策部会では前回から、各検討チームの各論的な御報告が始まったところでありまして、今日もこの後、環境教育の御報告もいただくわけですが、検討チームの一つでありますけれども、全体の検討チームを通じて、総論的な部分と申しますか、各チームがそれぞれの分野で、例えば化学物質なら化学物質、温暖化なら温暖化というところで、どういう政策手法を用いることが、分析された問題に対応するのに有効であるかということをぜひ各検討チームで、今日の道具といいましょうか部品を提示いただいたわけですので、今後6月いっぱい企画政策部会で各検討チームから御報告いただくわけですが、今日の御報告を拳々服膺しろとは申しませんけれども、少なくとも最大限御参照いただいて、各チームで問題点を分析し、それに対してどういう計画を立てていくべきか、どういう政策的アプローチをするか、ということをお考えになるに際して、ぜひ今日のこの枠組みをお使いいただきたいと思います。
 この報告書の1ページ目に、検討委員の名前が、天野先生以下出ておりますけれども、検討委員の中で、ただいまの御報告に加えて、あるいはここには書いてないけれども、私はこういう意見だったということも含めて何か御意見ございますでしょうか。何かございましたら、付加していただきたいと思います。それに対して、検討委員のメンバーでなかった先生方に御質問とか御意見をお願いしたいと思います。委員の方、何か追加ございませんか。
 では、御意見が出てきたら、その都度御参加いただくことにしまして、御質問、御意見ございましたらどうぞ。

【星野委員】 御報告いただきまして、大変頭の整理をさせていただくいい報告書をいただいたように思いますので、中身について、こう直せとか、そういうことを申し上げるつもりはございません。
 一つだけ、私の勝手な思いつきなのかもしれませんが、天野先生から御説明いただいた(1)、(2)、(3)と比べて、(4)、(5)、(6)はちょっと異質な気がしたわけです。
 (4)、(5)、(6)というのは、多分これからIT革命が進んでくると一体化してしまうのではないか。一体化する部品を我々は今まで5年なり10年なり、OECDも含めてずっと個別に勉強してきたわけですが、それが情報化してきて、これはまた一つ大変問題なんですが、情報格差がなくなってくる。消費者サイドあるいは企業サイドにもなくなってくると、従来型の市場そのものが、ここでは市場については語っていないので、経済的手法というのは、既存の市場を前提にしながら言っているわけですが、市場自体が変化してくる。つまり従来ですと、非常にわかりやすく言うと、釈迦に説法ですが、操作型の市場、要するに技術的に進んでいる情報格差を持っている方が、商品を提供することによって販売能力を持つという格好ですが、恐らくこれから共同型マーケットになる可能性が非常に大きいと思うのです。それが最近、逆オプション型のマーケットとか、そういうのが出てきておりますが、これはほんの大海の一滴であります。いずれにしても、市場そのものがどんどん変化してきますから、そのときには、恐らく4番目、5番目、6番目、つまり情報の問題、手続の問題、こういうのは全部、企業というより、企業と消費者間での市場での自主的決定にかなり収れんしていってしまうのではないだろうかと思うわけです。
今の段階では、これを変えろという意味ではなくて、今までやってきた手法として一歩一歩積み上がっておりますから、今回の計画では、これをむしろ今までの努力、さらに前へ発展する素材としてお使いいただくことは大変重要だと思います。ただ、将来としてはそうなるのではないか。それを示唆しているのが、たぶん9ページの最後の方に、枠組的手法と自主的手法を重ねて使うという思想が出てきておりますが、恐らくこれから世界中が同じように情報が均質化してくるに従って、やるべき手法としては、枠組的手法と自主的手法とがうまく組み合わさることが見えてくるのではないかと思います。ただ、我々の報告は今年中に行われるわけですから、そういう意味では、将来のイマジネーションを描いても実際意味がない。ただ、考え方として一つお願いは、9ページの最後の方のような示唆をどこかの計画の中に入れておいていただくと、この審議会で散々議論した人間も、将来、たぶんあと5年か7年たつとこういう姿になっているはずですから、ああ、あの頃もうわかっていたんだなと思っていただける担保としてお入れいただくことをお願いしたいと思います。以上です。

【森嶌部会長】 時期的にも、次の計画の見直しのときにタイミングよく、5年先に出てくるわけですが、そのときに大いに星野先生の予言が当たったということになるのではないかと思います。
 天野先生、何かございますか。

【天野委員】 特にございません。おっしゃるとおりです。

【森嶌部会長】 ほかにコメントございますでしょうか。

【福川委員】 今の星野委員の御発言に刺激されて発言をしたいと思います。今、世界中でIT革命が滔々と進んでいるわけで、これが実は市場の構造に非常に大きな変化を与えるのだろうと思います。一つは、企業活動に時間と距離というものを超越させるという可能性がありますから、いろいろな企業活動が日本の中だけではなくて世界のレベルで行われるし、諸外国もまた同じようなことになります。
 また、一般的に言われているのが、情報についてのマージナルコストはほとんどゼロに近いと言われています。これがこれからインターネットなどで環境情報というものが出ていったときに、それをどういうふうに使っていくかということになりますが、これが実は市場の構造を非常に大きく変えていくだろうと言われています。
 3つ目が、収穫逓減の法則よりも収穫逓増の法則が働きやすいということですから、情報関係の改善策は収益と結びつきやすいという可能性があります。
 4つ目に、情報というものの価値のビンテージが非常に短くなるという性格が非常に出
てくるだろうと思います。ですから、一般に情報経済というと、そういうことが言われておりますが、そこが非常に大きく変わってくる可能性があるわけで、最近、欧米でも、今日もWRIの人たちといろいろ話をしていたのですが、情報革命が環境的にサステイナブルである方向にもっていくために何をしなければいけないかということが実は既に非常に重要になっているのではないだろうか。
 また、環境も温暖化だけではなくて、いろいろなバイオダイバーシティだとか、有害物質とか、いろいろなものが情報化が進むことによって連動してとらえられる形になってきているという、非常にコンプリヘンシブなメカニズムになってくるのではないか。したがって、どのように情報化そのものを環境にサステイナブルにするか、あるいは環境そのものを情報化することによって、より優れた解決策を見出すかというふうになっていくだろうと一般に言われているわけで、私も星野さんと同じように、これはこう変えろなんてことを申し上げるつもりは全くないのですが、実はこれからそういうことで市場の構造が非常に変わっていくであろうと思われますので、そういうことを念頭において、いろいろな手法を組み合わせることについての政策効果がどういうふうに出てくるか、ということの政策評価の手法が情報化でまたそこで出てくることになりますので、これはすぐ今回というわけではないのですが、そういう方向の研究をこれから進めていく必要がある。これからの政策手法の研究の方向を何かどこかで示唆しておくというのも一つの方法ではないかと思います。

【森嶌部会長】 ほかにございますか。
 あまりにもこれはきちっと模範答案のように整理されているものですから、間然するところがないという感じで、意見を言うにもどこから言っていいのかよくわからない感じがしますが、何かありますか。

【佐和委員】 あまり御質問が出ないので、この検討チームの委員の一人として、先ほど星野さんがおっしゃった、9ページの一番下のパラグラフについて、若干のコメントを私なりに加えさせていただきたいと思います。
 確かに、ここに書かれていますように、直接規制的手法というものは、なるべくなら課さない方がいいわけです。そして枠組的規制手法と直接規制的手法を比べたときに、枠組規制的手法の方が相対的には望ましいという立場で書かれているわけです。そして自主的取組と枠組規制的手法をうまく組み合わせることによって、直接規制的手法と同様ないし同程度の効果を発揮できれば、それが最も望ましいというわけです。これに関しては、政府は何か枠組みを決める。枠組みはきちっと守ってくださいと。ただし、何かを義務づけたり、あるいは禁止したりはしませんというわけです。
 そうしますと、さっきの情報化ということとも関係するわけですが、消費者が枠組規制的手法というものをよく知り、生産者がどういう行動をしているか、何をしているかということも情報が開示されて知ることによって、例えばA、B、C、D、Eの5社の自動車を比較して、どれを買おうかというときに、ある消費者がA社の自動車を買ったとしますと、「なぜあなたはA社の自動車を選んだのですか」と尋ねられたときに、「A社は、一言でいえば、十分な環境配慮を払っている」という答えが返ってくることを期待すべきだと思うんです。
 わりと最近、日経BP社が千数百人の消費者(主として読者だと思うが)にアンケート調査を行っていて、自動車を買うとき、あるいは食品を買うときとか、いろいろあるのですが、どういう点について配慮しますかという問いに対して、もちろん「機能」とか「価格」が当然上位にくるわけですが、4番目か5番目に、ほとんどあらゆる商品について、その企業の環境配慮ということがくるわけです。自動車の場合は、自分が買う自動車の燃費効率とか、汚染物質の排出の度合いとか、そういったことももちろん環境配慮に入るわけですが、それだけではなくて、Aという自動車メーカー、Bという自動車メーカーのそれぞれが、生産プロセスや経営プロセスにおいてどれだけ環境に配慮しているかということも含めて考えるとアンケートに答えているんです。ですから、そういう兆候は既に出ているということで、ここに書かれているということは、星野委員にほめていただいたわけですが、5年先あるいはこういう兆候が既に出ているということを先取りしているというふうに御理解できればと思います。

【幸田委員】 一つ質問ですが、34ページの自主的取組手法は、第1点として、他の手法との組み合わせが考えられるということと、第三者機関の関与の在り方、もう一つ、ここには、例えば前の方に出てきますけれども、情報公開ももちろん大事ですし、ポリシー・ミックスも大事ですが、約束が果たせなかった場合の手段も含まれていると考えてよろしいのでしょうか。それとも、何らかの罰則規定がないままでも自主的取組というものは評価するという方向性なのか、そこら辺、もしはっきりしていれば教えていただきたい。

【天野委員】 自主的取組というのは、いろいろなレベルがありまして、全く完全に自主的に取り組んでいるもので、国とか自治体が完全にタッチしないものから、国の方で、ある種の枠組みを決めて、その中に入ってくる人はどうぞお入りくださいというスタイル、ちょうどその中間に民間の団体と国とがネゴシエーションをして中身を決めていくという3種類ぐらいありまして、一番最初に言いましたような、完全に自主的な取組というのは、自主的取組を行っている人たちがクレディビリティをつくりだすということが存立のかぎですから、それはその人たちの取組に任せる。あとの2つは、何らかの形で政府が関与するわけですから、そういうスタイルの取組については、実行できなかったときにはどうするということも一緒に入ってくると思います。ですから、レベルが違いますので、完全な民間団体の自主的な取組についてまで政府が関与して、何か条件をつけるということはないと思うのです。その辺はちょっと違うと思います。

【浅野委員】 今の天野先生の御説明で大体おわかりいただけたと思うのですが、いろいろなレベルのものを、ともかく全部鳥瞰図を作って整理してみようということですから、「自主的取組」という書き方で一つのことだけを述べているわけではないのです。(4)、(5)、(6)は確かに関連性がありまして、在来は「自主的取組」という枠の中で全部言われていたものもあるわけですが、あえて「(4)自主的取組手法」というところで整理しましたのは、実はOECDが出しているレポートが若干の下敷きになっていまして、そこで我が国でも伝統的に昔から行われている公害防止協定のようなもの、オランダ型の協定、あるいはここでは「片務的公約」という言い方をしていますが、これは全部OECDが使っている用語で、ほぼ我が国にも同じようにこのような枠組は使えるだろうという発想で、まず、これをある種の自主的取組の大きな制度的枠組み、フレームという位置づけでここに挙げています。
 そして(5)と(6)のところは、どっちかというとそれに合わせて使われる部品のようなものを並べてみようということで、あえて「情報的手法」という言葉を使ってみたわけです。
 「手続的手法」というところには、環境影響評価の手法のような、ある意味では法的制度の中に持ち込むことができるようなものも並べておりますけれども、環境影響評価制度というのは、もともと環境配慮の細かいことについてはあまりうるさく基準をあげないで、自主的に環境負荷低減の努力をしてくださいということが目的ですから、大きな枠組みでは、枠組規制なり自主的取組のためのフレームだという位置づけでここに入れております。若干性格が違うものが混じっているということはあるのですが、ここの並べ方は、そういう一応の意識を持って並べたということです。
 幸田先生の御質問の自主的取組ということについては、天野先生のおっしゃったことで尽きると思いますけれども、これも随分議論がありました。最初のドラフトの段階では、もっといろんなことが書いてありまして、最初から自主的取組に対する不信感を前提にして書いているのではないかという議論が内部ではあったわけですが、そんなことはないと。例えば、大防法は、現在もう5年たちそうなんですが、5年たってもし効果がなかったら次に何するのだというようなことをあらかじめプログラム化しておいて大防法を改正したというのがありますから、自主的といっても、ものによっては、ちゃんと次に何をするんだというプログラムを用意される場合がありますし、それから、もともとそういう形でプログラムを作らなければどうにもならないという切羽詰まった問題でないような場合は、また違ったアプローチの仕方もあるわけですから、一概に約束が守られなかったからペナルティだというふうにはならないだろう。あるいは高い目標を掲げておいて半分まで到達したのだから、よかったね、さらに頑張りましょうという場合もあるだろう。いろんな場合があるだろうということを考えているので、どっちかというと、ある一つのモデルを考えて、こういう場合の自主的取組はちょっと危なっかしいのではないかという立場を我々はとっていませんので、おっしゃるようなことが必要な場合もあれば、もっと違うやり方でうまくいく場合もあるだろうという発想法でこれは整理してあります。

【佐和委員】 幸田委員の質問に対して、私のような経済学者なら次のように答えるでしょう。
 「もし自主的取組を怠るような企業があるとすれば、その企業は市場によって懲罰を受けることでしょう。それで十分なんではありませんか。」。つまり、国が監視していてあれこれ言ったって、そんなものは仕方がないことであって。ただし、仮に遵守義務が課せられたときに、遵守しているか否かという情報は政府は公開することは必要でしょう。それを見た上で消費者が判断して、この会社のつくる製品は買わないということで市場によって懲罰を受ける。そのときに、これは個人もそうですし、企業も、なるべく格好よくありたいという気があるわけです。そうしますと、例えば、こういうものを遵守しないとか、環境に配慮しないということは、非常に格好悪く見えるようになるわけです。既にそういう時代に入っていると僕は思います。格好悪いから、そういうことで十分マーケットを通じて消費者によるペナルティを既に課せられるようなメカニズムができ上がっている、既に備わっているというふうに理解すべきではないかと私は考えます。

【天野委員】 先ほど星野委員、福川委員から、IT革命との関連で環境政策は将来どうなるかという御指摘がございました。特に後半部分の情報的手法につきましては、生産者というのはいろんな拠点で国際的に活動しておりますし、対象になるような顧客とか、あるいは自分たちの従業員もグローバル化しているわけです。そういう意味では、情報の流れがグローバルになっているということで、単に国内でどうするかということではなくて、グローバルなマーケットでどういうふうなビヘイビアをするかということが重要になってきていると思うのです。
 これは企業だけではなくて、消費者についても、例えば日本のメーカーは、国内で生産していても海外の消費者の目を意識するというふうな情報の流れ、あるいは消費者だけではなくて、投資家、どういう資金提供をするかというのは国際的にあるわけですから、そういうところへの配慮が当然必要になってくるということで、こういった環境に対する取組の仕方というのは、国とか地方の政策によっても影響を受けるでしょうが、それ以上に、そういったグローバルな情報からの影響を受けるという面が出てくると思うのです。私はそれについては全く賛成いたします。
 同時に、今回のこういう報告書をまとめるときに、私たちは、海外のいろんな政策手法がどういうふうに進んでいるのかということを丹念にチェックしたのですが、OECDとかEU、個別の国で申しますとアメリカとかカナダ、そういった国々の環境政策は、確かにそれぞれの国情に合わせた違いはあるのですが、統合化といいますか、同じ方向を向いているというのはよくわかってくるわけです。
 ただ、そういう情報はどこにあるかというと、みんな英語なんです。英語で膨大な情報が次から次に生まれて流れている。そういう点からいうと、我々はよっぽど頑張ってついていかないとラグができてしまうという心配があります。情報革命というのは民間の市場の革命ではありますけれども、それぞれの国とか機関がそれに追いつけないようなことになっては大変困るという気がいたしまして、そういう意味では国際的な環境政策の流れ方というか行方を常に注視していく必要がある、そんな時代になったのではないか。
 ですから、環境基本計画についても、これは日本という国の計画でありますけれども、世界の情勢、世界の流れにさお差した計画を作るべきだという点で大変勉強になったと思います。

【森嶌部会長】 もう一つ付け加えますと、世界が流れているときに日本だけ後から追いかけていくというのではなくて、日本もこういうことをやっているわけですから、ちゃんと英語で発信して、世界の流れの一翼を日本も担わないといけないのではないか。いま天野先生のおっしゃったこと、中身に全く異存はないのですが、おっしゃりように関しては、日本は依然として後進国で、ほかから学んでようやく動いているという感じがしますので、少なくとも中環審としては、そういうあれではなくて、世界と肩を並べるぐらいのことをやりたいし、また、これは事務局などに負担がかかるのかもしれませんけれども、やったことの情報を発信しないと、日本だけ異質の国で、今もって談合しかやらない国だというのは、それこそ、先ほどの佐和さんの話ではないですが、世界市場は日本に対して誤った情報を持って、日本が世界市場から排除されてしまうことになりますから、ちゃんと日本も情報を出す必要があるのではないかと思います。天野先生はそういうことをおっしゃりたかったわけではないのでしょうが、聞いていると、ついついそういうことを言いたくなります。

【天野委員】 そういうことを申し上げたかったので、今日のペーパーも、できたらこれが英語で同時に出てくるということが必要ですね。

【森嶌部会長】 そうですね。それは事務局にもあれしまして、我々の審議の中身が、単に日本の国内に透明なだけではなくて、他の国にも、全部の情報を出すというのはコストの面で無理かもしれませんけれども、できるだけそういう方向でやりたいと思っております。
 ほかに御意見ございませんか。

【横山委員】 1点だけお尋ねしたいのですが、検討チームで経済社会のグリーン化メカニズムをやって、その一方で、石先生が委員長をやっていた環境庁の委員会で、炭素税についての報告書がちょうど先週出ていますが、それとの絡みはどうだったのでしょか。石先生はこのメンバーには入ってないと思うのですが、あれでは炭素税についてポリシー・ミックスで有効だという中身になっていたと思うのですが、この14ページ、15ページを見ると、長所と短所が列挙されているだけで、あまり積極的にこれがいいぞということになっていないと思うのですが、その辺の関連が何かありましたら教えていただきたいと思います。

【細谷環境計画課長】 それでは事務局の方からお答え申し上げます。 
 この検討会の整理の仕方でございますが、基本的に、先ほどちょっとお話がございましたが、鳥瞰図的にまず整理しようと。環境政策の手法全体をまずざっと整理する。そしてそれぞれの長所、短所あるいは射程というものについての整理をやってみましょう、そういう発想で進められております。したがいまして、かなり具体的な問題、例えば炭素税とか排出取引の問題、これらは特に温暖化に関係するわけですが、こういうものについてはこのチームではそれ以上立ち入った検討はしない。1ページ目のなお書きのところにございますが、「環境政策手法の地球温暖化対策など個別具体の環境問題へのあてはめ、解決の道筋については、他の検討チームの検討を待つこととした。」というのは、そういう趣旨でございまして、現に石先生の研究会の報告につきましては、温暖化のチームの方でされております。そういうものを踏まえて、温暖化のチームの方で検討が進む。そういうことでございますので、こちらの方ではそこのところで筆を止めたというふうに御理解いただければと存じます。

【天野委員】 事務局にとお願いしましたのは、石先生の方の委員会、私もつい最近、報告書をいただいたのですが、この委員会と我々の検討チームの関係がどうなっているのかというのは私はよく知りませんでしたので、その説明をお願いしようかと思っていたのですが、そういう意味では独立に進んでいると申し上げていいと思います。
 今、事務局の方から御説明がありましたように、我々の方は、特に温暖化対策というふうな個別のテーマで何か議論しているというわけではありませんで、それは気候変動に関するような検討チームの方にお任せすると考えておりまして、ここでエネルギー課税とか炭素税というのは、そういう意味では経済的手法の一つの適用例という形で取り上げております。ですから、我々の方で、仮にこういう問題を取り上げるとすれば、例えば排出取引と税の関係はどうなるかとか、その他の自主的取組の関係はどうなるかということまで含めて気候変動の対策を議論するのは我々の職務ではないというふうに理解したわけです。
 ほかの手法についても、先ほど事務局から説明ありましたように、それぞれの手法を使うときにどういう点に気をつけて使う必要があるのかということも併せて長所と一緒に書くというスタイルをとっておりますから、ここでもエネルギー課税、炭素税については、こういういいところもあるけれども、こういう問題点が指摘されている面もありますと。ですから、使うときには、問題点のあたりを上手にカバーするようなやり方をして長所が発揮できるような使い方をする。そういうのが全般を通してのこの検討チームの考え方でございますので、お読みいただければと思います。

【森嶌部会長】 私の方からも申し上げましたように、これはこういう特徴を持った道具ないしは部品がありますということを整理していただきまして、各検討チームで、例えば温暖化にしろ、交通にしろ、水循環あるいは物質循環にしろ、現在の問題点を分析された上で、こういうことをこういう方向で改善しなければならないという方向付けをなさったときに、それを実現するためにはこういう政策手法あるいはこういう政策手法のミックスを使うことが有効であるということで、今日の報告書の考え方をぜひお使いいただきたいと私が申し上げたのは、これは非常にきれいに整理されていますけれども、これはこれで出て、他の検討チームは知らん顔ということになりますと、何のためにここで検討していただいたのかわかりませんし、環境基本計画としてこれを取り込んだ場合も、道具だけがこっちに並んでいて、計画の中には具体的な政策を展開していく場合の手法が触れられていない、あるいは検討されていないということになりますと、各論的な計画も絵に描いた餅ということになってしまいますので、各検討チームで検討が進んでいると思いますけれども、拳々服膺しろとは言わないけれども、ぜひこれを御覧いただいて、各論における政策提言にお使いいただきたいと申し上げたのはそういうことでございます。
 ほかにございませんか。
 それでは、ここで10分休憩いたしまして、休憩後は、小澤委員から、環境教育等検討チームの御報告をいただくことにしたいと思います。
〔休 憩〕

【森嶌部会長】 それでは、再開させていただきます。再開後は環境教育等検討チームの報告に移りたいと思います。
 なお、環境教育につきましては、このチームの専門委員でおられる阿部先生にも審議に御参加いただいております。
 それでは、小澤先生、よろしくお願いします。

【小澤委員】 担当いたしました小澤でございます。この検討会の名称は、「国民の環境に対する意識を高め、行動を喚起するための政策の在り方検討チーム」となっておりますが、以下「環境教育等検討会」ということで報告させていただきたいと思います。
 私の方からまず大きく3点御報告したいと思います。1つは、検討の趣旨とその経緯についてです。2番目に、この報告書の中心となる、中長期的に政策を展望したことについての概念、考え方を御報告したい。そして3番目には、環境基本計画見直しへの提案について御説明申し上げたいと思います。
 まず初めに、検討の趣旨とその経緯についてでございますが、環境教育・環境学習は、持続可能なライフスタイルや社会経済活動を実現する上で共通の基盤となる重要な政策手段であって、特定分野のみに求められる課題ではありません。また、環境教育・環境学習が行われるのは、国民があらゆる場面に及び、扱われる内容も環境のみならず社会経済の広範多岐な分野にわたっているというとらえ方に立っております。
 このようなとらえ方を踏まえまして、国民の環境に対する意識や知識を高め、具体的行動を喚起していくために、先ほど佐和委員から御指摘がありましたような、情報一つをとりましても、きちんと選択できるという具体行動で示すことが環境教育の狙いとしてあるのではないか。そのような具体的な環境教育をどのような場面で、どのような対策を講じるのが効果的かという観点から、検討チームにおきましては、環境教育・環境学習の戦略的な進め方について検討を行ってまいりました。
 経緯につきましては、報告書の1ページ目に、担当の委員のメンバーが書いてございますが、平成11年12月に中央環境審議会から答申「これからの環境教育・環境学習-持続可能な社会をめざして」というものが出ましたが、皆様のお手元に配付されております。お読みいただいているかと思いますが、この答申の基本的な考え方に基づいて検討チームでは進めてまいりました。特に、この答申で示されました基本的な考え方に沿って、具体的な環境教育・環境学習に関する施策を中長期的にどのように進めていくかということで行ったわけですが、チームとしまして、浅野先生、阿部先生、江頭先生、幸田先生、猿田先生、村杉先生の7人のメンバーで検討を3回行ってまいりました。ただ、この3回の過程におきましても、郵便、速達郵便、ファックス等でやりとりをしていただいて、今日報告書をまとめた次第でございます。この報告書を取りまとめるに当たりまして、事務局の方に多大な尽力をいただきましたことを厚く御礼申し上げたいと思います。
 この報告書の内容ですが、裏表紙のところに目次が印刷されております。その目次を見ていただきますと、大きく3部の構成になっております。
 まず第1部が、環境教育・環境学習をめぐる様々な状況変化の中で注目すべき傾向、トレンドを再整理いたしました。
 第2部(4~10ページ)におきましては、現在の基本計画に規定されている環境教育・環境学習に関する施策の施行状況をレビューいたしました。また、個別分野の温暖化の問題、廃棄物の問題についての環境教育・環境学習についても取り上げ、さらに、実施状況の評価の在り方についても検討してまいりました。
 第3部(11~25ページ)におきましては、答申に示されました方向に沿って、これからの環境教育・環境学習に関する施策の中長期的な展望について検討したものです。
 2番目に、この報告書のキーとなる考え方についてお示ししたいと思います。
11ページのところで、環境教育・環境学習の意義についてまとめておりますが、環境教育・環境学習とは、「『「環境に関心を持ち、環境に対する人間の責任と役割を理解し、環境保全活動に参加する態度や問題解決に資する能力を育成すること』を通じて、国民一人ひとりを『具体的行動』に導き、持続可能なライフスタイルや経済社会システムの実現に寄与するもの」と整理しております。つまり、ただ体験をするということではなく、あるいは知識伝達、地球環境問題のキーワードをただ学ぶのではなく、自分自身が変わり、そしてまた社会を変えていくということが求められているかと思います。
 答申の考え方の中で、今回の環境基本計画の見直しに当たって、特に重要と考えましたポイントを12ページの(2)の「答申における発想の転換」の中にまとめてあります。それは次の3点になります。
 まず第1点に、環境教育・環境学習の範囲の広がりです。今いろんなところで学校教育を始め、地域においてもいろいろな環境活動をやっておりますけれども、それをただ単に環境汚染の問題教育や自然保護教育のみならず、持続可能な社会の実現という観点から、消費者教育等も含め、また、地域づくりの教育まで含めて考えていくという視点です。特に国際的な動向を踏まえながら、従来とは違う幅の広がり、例えば今後の環境教育というのは、消費、歴史、文化、食、居住、人口等、自然系、都市・生活系等の様々な要素を含んだ非常に広い範囲にわたっている。そういった分脈の中で、「持続可能な社会実現のため」ということで考えていくべきではないかというふうにこの答申ではまとめております。
 2番目に、多面的な学習による問題解決能力を育成する。これは参加できる資質を育てることにもつながります。現在の環境問題は多様化し、かつ複雑化しておりますけれども、様々な物質循環やエネルギー、食料、人口問題を始め、現在のライフスタイルからそれを支える社会経済システムに至る様々な事項が相互に関連しながら環境に与えた結果起こってきております。したがって、その理解のためには問題を全体的あるいは全関連的にとらえていく必要があります。
 こうした環境問題の解決のためには、自然の仕組みや環境問題に関する知識に加え、批判すべき点も含めて多面的に物事を考え、自ら課題を見つける能力、問題を社会的、経済的、文化的な分脈も含めて多角的に分析する能力、様々な主体間の調整を行うためのコミュニケーション能力等、様々な分野にわたる多面的な能力やスキルの育成が必要となります。こうした面から、知識蓄積型の教育ではなく、体験を通じて、自ら考え、調べ、学び、そして行動するというプロセスを重視した学習が必要となります。
 3番目に、「トップダウンからボトムアップへの発想」が必要かと思います。現在の環境基本計画における環境教育の施策は、国から地方へ、地方から現場へとトップダウンの流れとして推進するという観点から記述されています。しかし今後は、関心の喚起、理解の深化及び参加する態度・問題解決能力の育成を通じて、国民、NGO、事業者等の活動主体が地域からの発想で自発的に行動することを中心に構成し直すこと、すなわちボトムアップの発想に組み直すことが重要であると考えております。
 「今後の環境教育・環境学習の施策展開に当たっては、国民一人一人を中心に位置付けて、地域の行政が、NGO、企業、その他の団体を含めた連携の中で環境教育・環境学習に関する様々なサービスを提供できるように、環境学習のネットワークを形成し、国は、こうした地域における環境教育・環境学習を支援するための基盤整備を行うという発想転換が必要である。」とまとめております。
 次に、「具体的な施策の推進方策」についてですが、答申で示されました施策の方向を踏まえまして、18ページ以降に、「人材の育成」から7番目の「国際協力」というところまで、これをつなぐという概念でまとめてありますが、後で事務局の方から具体的に報告をさせていただきたいと思います。
 特に、地域におけるネットワーク形成を地域の行政が支援し、国がそのための基盤整備を行うという発想で組み立てておりますので、15ページの図1、16ページの図2、17ページの図3にその概念図を示しております。
 特に16ページの図、「中長期的なライフスタイル見直しのための施策展開イメージ」ですが、真ん中のところにステップ1からステップ3までございますが、関心を喚起する、そして理解を深めて、そして行動する。これが一回で終わらずに、だんだんとこの輪がらせん状に広がって、国民が環境市民として変わり、自らを変えていくという発想でまとめております。
 こうしたものを受けまして、それでは、環境基本計画見直しについてどういう提言をしているか申したいと思います。26ページに「おわりに」としてまとめてございます。
 報告書で繰り返して強調しておりますように、環境教育・環境学習に関する施策は、具体的行動を通じてライフスタイルや社会経済システムの変革につながることを意図して実施されるものであります。したがって、環境基本計画の見直し作業に当たりましても、環境教育・環境学習をすべての個別政策分野において問題解決のための有効な政策手法を提供するものとして位置付けていただければと考えております。
 また、環境教育・環境学習は、パートナーシップ型の新しい行政手法により行うことが望ましいので、行政側の意識改革にもつながるものであると考えます。したがいまして、環境行政のすべての個別政策分野において環境教育・環境学習の手法が検討されることにより、環境行政について、より国民に開かれた形で、国民の理解と協力の下で強力に推進することができる基盤形成を期待したいと思います。
 以上、私から主な考え方をお示ししましたので、個別の論点については事務局から説明していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【清水企画調整課調査官】 企画調整局の調査官の清水です。事務局として御説明させていただきます。
 基本的な考え方については、小澤先生の方から御説明がありましたので、個別の内容について2ページから少し御説明したいと思います。
 中央環境審議会の答申が出ておりますので、今回の検討作業に当たりましては、なるべく実証的なデータに基づきまして、個別的な施策の内容に即して議論を行い、抽象的・観念的にはならないようにという配慮をしております。このための資料も、例えば資料1は、27ページ以降にかなり詳しい資料などをまとめておりますので、適宜御参照いただければと思います。
 まず、2ページの第1部が「環境教育・環境学習をめぐる状況の変化」ということでございます。
 まず最初に「環境問題の構造の変化」ということで、今日の環境問題は、かなり多様化、複雑化しており、その解決のために、人々の生活や事業活動の在り方そのものを変えていかなければならないというような、環境問題をめぐる構造の変化がある。こういう構造の変化に対応して、政策手段としての環境教育・環境学習というものが非常に重要になっているということが述べられております。
 それから、「人口構成の変化」につきましては、28~29ページなどの資料に示しておりますが、言われておりますように、少子化・高齢化の傾向が現れてきております。
 こういった少子化・高齢化の傾向などを踏まえまして、環境教育を行う場の変化あるいは多様化という問題が出ております。これは2ページの一番下のところに書いてあることでございますが、環境教育・環境学習の場という面から見ると、小・中学校の数、高校の数などが減りつつある、あるいは横這いの傾向にある。一方、公民館、図書館、博物館等、学校教育以外の学習施設の数が近年特に増えている。
 3ページの2行目あたりから、「環境学習センター、環境情報センター、リサイクルプラザ等、地方公共団体の環境学習拠点施設については、いまだ絶対数は少ないものの、増加しつつある。」というような記述があります。これは33ページを見ていただければと思います。環境学習関連施設、これは環境庁によるアンケート調査でございまして、すべての施設を網羅したものではありませんが、とりあえずアンケートで回答があったものでございます。こういう中を見ましても、環境活動・情報拠点、リサイクル拠点等を含めて、近年環境学習のための施設の設置が進んでいるという状況があるわけでございます。
 また3ページに戻りまして、変化で注目すべきところとして見ましたが、環境教育・環境学習の担い手の変化ということで、各行政分野の中でかなり環境教育・環境学習が行われつつある。そういう中で指導者に対する需要が増している。特にNGOあるいは企業などが環境教育・環境学習の担い手として非常に重要な地位を占めてきているということが様々なデータで裏付けられております。
 3ページの最後のところでまとめまして、「変化に対応した環境教育・環境学習推進の留意点」として、就学年齢層の減少、大家族の減少、一人暮らしの世帯数の増加という傾向あるいは環境問題の複雑化・多様化を踏まえると、学校や家庭が引き続き重要な環境教育・環境学習の場であり続けるとしても、今後、公民館、図書館、博物館、児童館など学校以外の公的な施設や地方公共団体などの環境学習拠点、自然のフィールドなどが環境教育・環境学習の場として非常に重要な役割を担っていくのではないか、そういうトレンドを見ております。
 第2部、4ページ以降は、現行の施策を個別施策レベルまで見てレビューしたものでございます。これは環境庁の方で環境保全経費という形で各省庁の施策を取りまとめております。具体的な施策は、51ページ以下の資料2として、横長の細かい表に分類してございますが、こういった施策を現在の環境基本計画の環境教育・環境学習の部分で、ここに[1]のア、イ、[2]のア、イ、ウ、エと書いてございますが、これが現行の基本計画の構成そのものでございます。現在の環境基本計画の構成に沿って整理したものが4ページ以下の施策のところの記述になっております。
 まず、[1]の「学校教育における環境教育の推進」ということで、アが「初等中等教育」でございます。現在の状況としましては、社会科、理科、家庭科等、各学科の中で環境教育が行われております。さらに特に注目されるのが、平成10年度に改訂された新しい学習要領によって「総合的な学習の時間」が出てきたということを記述しております。
 四角の中は個別の施策例でございますので、逐一は触れませんが、例えば中ほどに「エコスクール整備モデル事業」という形で、個別の学校施設も環境に配慮したものにしていて、その中で環境教育にも役立つようにしている、そういう施策がとられております。
 5ページの[2]が「社会教育等における環境教育の推進」で、アが「学習拠点の整備」ということで、施策例の中でも様々な学習拠点が整備されているような現状が書かれておりますが、まだまだこれらの施設間の連携は不十分ではないだろうかというふうな形で評価しております。
 それから、「学習機会の提供」ということがイのところで書かれております。これも現在、各省庁において様々な施策が展開されているところでございます。特に5ページの一番下の地球温暖化防止対策とか、次の6ページにいきますと、個別の政策分野で様々な環境教育に関する施策が各省庁によって展開されているということがございますが、まだ全体を体系的に整備するという段階までは至ってないのではないかということです。
 ウで「人材の育成・確保」ということでございます。特に環境庁では環境カウンセラー事業などをやっておりますが、人材の活用方策ということで見ますと、まだ不十分ではないかというような結論で書かれております。
 それから、「教材・手法の提供」が7ページ、「広報の充実」ということが書かれております。これが現在の施策について見たものでございます。
 8ページに(2)として、「個別分野の環境教育・環境学習」について書かれております。検討チームの中でも個別分野についても例示的に取り上げるべきであるという御意見がございまして、特に個別分野の中で最近注目を集めている地球温暖化対策、廃棄物・リサイクル対策の2つについて、現在の環境保全経費を中心に整理したものをここに載せております。ただ、当然のことながら、この2つだけが重要分野ということではございませんで、当然、環境教育・環境学習が即効性をもって効くような分野はほかにもいろいろあると思います。例えば、富栄養化問題、交通公害問題、近隣騒音問題等があるのではないかということで記述しております。
 10ページで、「実施状況の評価の在り方」について議論しております。環境教育の政策評価というのは、かなり難しい議論がございまして、環境教育・環境学習をした学習者自体の能力育成がどこまでいっているという議論は、国際的にも国内的にも試みがなされているわけですが、むしろ、理解したというよりは、その学習の結果によってどれだけ行動ができた、あるいはその結果どれだけ環境がよくなったというところまで含めた評価ということが議論になったわけでございます。現状を見ますと、環境教育・環境学習を、単に獲得された知識量のみならず、むしろ行動の量あるいは環境改善効果との関係で評価するというのは、現段階では手法が未開発の状況でございます。ただ、東京の世田谷区などで行われた社会実験などがこういった観点から非常に注目されるということが書いてあります。
 [2]のところでは、それでは個別政策ごとにフォローアップをしていこうということで、個別政策は多面的に見ていくべきであるということで、評価軸といいますか、多面的な評価に当たって、答申の考え方を踏まえれば、総合性、目的との関連性、体験を重視すること、地域性の観点が重要であるということが書いてございます。
 もう一つは、「関心の喚起→理解の深化→参加する態度」を通じて「具体的な行動」を促すということなので、どれぐらい関心に注目した政策になっているか、あるいは理解の深化を促すような政策になっているか、あるいは行動を促す政策になっているかというような観点から見たのが、61ページ以降に資料3として書かれているものです。これは環境庁の施策だけですが、環境庁もそれぞれの施策について、評価軸A、評価軸Bという形で単に○を付けてみました。61ページの資料3につきましては、ある施策について、それが関心を呼ぶような形の施策なのか、それとも理解を深めさせることを目的とした施策なのか、それとも行動を促すことを目的とした施策なのかというのを評価軸Aとして単純に○を付けてみました。それから、連携ということで、各省連携のもとにやっているか、あるいは地方自治体連携でやっているか、事業者連携、NGO連携もやっているかということで○を付けてみました。必ずしもこういった評価だけとは限りませんけれども、現在の評価軸Aで見ますと、今の環境庁の施策も、関心の喚起あるいは理解の深化ということにかなり着目した施策になっておりますが、行動を促すという意味からすれば、まだまだ効果的な施策にはなっていないのではないか、そういう結論で書いております。
 11ページ、12ページ、13ページは、小澤先生の御説明のあったとおりでございますので私の方からは説明いたしません。
 第1図、第2図、第3図というのも小澤先生の方から御説明がありましたが、補足的にお話ししておきますと、まず第1図は、環境教育・環境等学習の答申の概要をこういう形でまとめてみました。施策レベルで言いますと、大きな丸の中、真ん中に「人材育成」、「プログラム整備」、「場や機会の拡大」、「情報提供」という4つの施策メニューが掲げられている。そういった施策を、下に「各省庁間の連携強化」、「国と地方公共団体の役割分担及び連携強化」、「民間事業者等を活用した環境教育等の推進」ということで、こういった主体が相互に連携しながら支えていくというイメージで書いております。それ全体を国際協力ということでつなげていく。そういうのが環境教育・環境学習答申の内容でございました。
 第2図は、先ほど小澤先生の方から御説明のあったとおりでありますが、ステップ1:関心を持つ、ステップ2:理解する、ステップ3:行動するというそれぞれの段階において、人材育成、プログラム整備、場や機会の拡大、情報の提供という分類をして、現在、環境庁でどんなことをやっているかということを施策レベルで当てはめてみた整理表のようなものでございます。
 第3図は、ライフステージに応じて、それぞれの場をつないで政策を実施していくのが重要であるという考え方でございます。
 18ページ以降は、今の環境教育・環境学習の答申の考え方の8項目に沿いながらまとめてみたものでございます。ここにおきましては、先ほど小澤委員の方から御説明のありました、地域における学習ネットワークを中心に置き、そういうものが形成されるような
形で、地域がそれを支え、国はそれを基盤的な面から支えるという発想を、地域を中心にした発想で政策を組み替えるとどうなるかという形で[1]~[7]まで書いております。
 「人材の育成」というところを例にとって申し上げますと、環境教育・環境学習の推進のために、地域において自主的、自発的に活動を企画・推進・調整する仕組みを作っていく。そういう仕組みを支える人材の育成を行うことが必要である。ここではプランナー、ファシリテーター、コーディネーターという言葉も使っておりますが、こういったそれぞれの役割を担う人をいろいろな部門で育てていくことが重要かと思います。
 そういう観点から、具体的施策としましても、環境カウンセラーを始め、現在民間に存在する環境の専門家をまず活用し、それから地域におけるネットワークを支えるような人を育成し、それから地方公共団体の職員に対する研修の充実などを図っていく。もちろん学校教育とかその他の個別分野の人材育成も当然重要でございますので書いてございます。
 「プログラムの育成」という観点からは、18ページの[2]以降でございますが、現在のプログラムの整備がまだまだ体系的になっていないという観点から、プログラムの体系的な整備を図ることが重要であるという観点から書いてあります。
 そのための施策としましては、具体的施策の中で、地方公共団体におけるプログラム開発のため、特に国がモデル的な支援を実施したり、あるいは国自体の施設における先進的なプログラムの整備を推進していくという考え方で書かれております。
 19ページの[3]が「情報の提供」ということでございまして、特に「環境の状況や環境問題に関する正しい情報が欲しい時に欲しい形で入手できるような基盤整備を行う」ということで、具体的施策の中では、「EIC」と書いてございますが、環境庁の作っておりますインターネットなどを利用した情報ネットワークでございますが、こういったものを中心にきちんと情報の整備を進めていくという考え方で書かれております。
 [4]が「環境教育・環境学習の場や機会の拡大」ということでございます。ここは様々な場や機会の整備という観点から書かれておりますが、「具体的施策」の最初では、環境学習センターや公民館、児童館、博物館等、現在地域にあります様々な施設が環境教育・環境学習の拠点として機能を果たしつつありますので、そういったものを更に一層推進していくという観点から書かれております。
 21ページ以降が「各種主体の連携」という形で、地域における各種民間の主体、地方公共団体、国という形でそれぞれ何をすべきかということで書かれております。この整理の考え方も、先ほど小澤先生からお話がありましたように、地域におけるネットワークづくりを地域で支え、それを国が基盤的な面から支援する、そういう書き方になっていると思います。
 22ページ以降が、「民間事業者等と環境教育」ということでございます。環境教育の議論の中では、民間事業者に2つの役割を考えておりまして、1つは、野外体験とか学習機会の場を企業あるいはNGOの方に提供していただく。つまり、環境教育・環境学習を担う主体として一つのサービス提供といいますか、そういう施設等の提供も含めて非常に重要な役割を果たしていただく。
 もう一つが、そういった環境学習の機会を提供することとは離れて、一般の企業においても、企業内教育という形で環境教育を推進していただく。あるいは企業の自主的、積極的取組なども、広い意味での環境教育・環境学習活動の一環と位置付けて、その上で推進していく、そういう考え方で書かれております。これが[6]のところでございます。
 [7]で「国際協力」ということが書いております。特にここにおきましては、「開発途上国におけるキャパシティビルディングの一環として、環境教育・環境学習に携わる人材の育成が重要である。」、そういう考え方から具体的な施策を書いております。現在やっております様々なプログラムの推進に加えまして、途上国を対象とした人材育成、教材開発等の各種の環境の教育支援プロジェクトを実施していくというような考え方で書いております。
 24ページは、「個別分野における施策の方向」ということで、レビューに対応した形で、地球温暖化対策、廃 棄物対策の両方について書いております。この部分については時間の関係上、割愛させていただきたいと思います。
 以上、小澤先生の説明しなかった部分を中心に御説明申し上げました。以上です。

【森嶌部会長】 どうもありがとうございました。
 この検討チームの報告書の中にあります「答申」といわれるものは、この企画政策部会で昨年の夏、小澤先生のチームにお願いをして、暮れにこの場に出していただいて、基本的な考え方については御検討いただきました。つまり、「持続可能な社会をめざして」というのをゴールとしての環境教育という点については御議論いただきましたが、本日は、それに基づきまして、かなり具体的な施策についての御提案をいただいたわけであります。
 報告書の1ページに、検討会のメンバーが記載されておりますけれども、メンバーの方から追加的に御発言ございましょうか。

【阿部委員】 先ほど小澤先生及び事務局から全体の概要の説明をいただきましたけれども、とりわけ今、事務局からもありましたように、各個別政策におきましては、地域を大事にする。これは先ほど論点の中で、トップダウンからボトムアップというのがありましたけれども、地域というのは非常に大切な視点ではないか。そういった意味で、冒頭に、先ほど小澤先生の説明でもありましたが、環境教育・環境学習をかなり広い視点、総合的にとらえる。そういった意味では、地域における持続可能な社会づくりに環境教育・環境学習が収れんしていくことが意味があるのだ。そういった意味合いもありまして、今回の基本計画の見直しの検討チームの一つとして、「環境から見た地域づくりの在り方」というものがありますが、その内容はどういうふうな論点で整理されているかわかりませんけれども、環境教育・環境学習というものが、例えば学校とか社会教育、そういった教育の場、学習の場だけではなくて、私たちが生活している地域そのものを環境教育・環境学習の場として使っていく。そして、それに関わるあらゆるセクター、あらゆるアクターが、地域を持続可能な社会づくりの視点から組み替えていく、それが環境教育・学習の狙いなんだと思っております。

【森嶌部会長】 前回、「環境から見た地域づくりの在り方」というチームから御報告いただいたのですが、ちょっと観点が違うのですが、ぜひ阿部さんも読んでいただいて、どういうふうにして維持するか、環境基本計画に取りまとめていくときに、どういう形で両者を関連づけるかということについてお考えいただいて、またいずれ各論を検討する際にアイデアを出していただければと思います。別に阿部さんだけではなく、検討チームの皆さんそうなんですが、とりわけ阿部さんにぜひお願いいたします。

【浅野委員】 既に審議会では環境教育についての答申をまとめてくださっておりますので、その意味では、答申に皆さん賛同してくださっている以上は、もうこちらは人質をとったようなものなので、大筋についてあまりあれやこれやと言われる心配はないだろうと思うのですが、今回、特に、現在の計画がトップダウンであって、それではうまくいかないということをかなり強調しているわけです。
 最終の成果物の中にどの部分がどう入るかということはこれからの検討だと思いますけれども、ここに書いてある具体的施策を一つ一つ挙げろという意図ではありませんで、これはあくまでも思考の便宜のために例示として挙げているという理解をしていただきたいわけです。14ページから後のところの読み方は、どうやってこの報告書をまとめたらいいのかというのでかなり苦慮したのですが、やはりなかなかうまくいかないなと思っているのですが、18ページから後で、[1]、[2]、[3]……[7]まで並びますと、これだけが浮き彫りになって読まれると、何となく、それをやれば環境教育かねというふうにとられてしまう。しかも書かれていることの中身からいうと、ああ、そうか、では、これは国が予算をつけてやればいいんだろうねというふうに読まれてしまうのはチームの本意ではありません。チームとしては、この[1]~[7]の頭のところに14ページに書かれていることがかぶってくる。そういうつもりで読んでいただきたいし、そういうつもりで報告書を書いている。一つ一つがすべて、まず、個人の主体的な学習、そしてNGO等の支援、そのために地域におけるネットワーク化が必要であり、さらに、それを自治体が支援する。そして国がそのための基盤整備を行う、という観点から、人材の育成、プログラム整備、こういうふうに全部がつながってくるということは補足的に申し上げておきたいと思います。

【北野委員】 環境教育の中におけるマスメディアの役割ですが、19ページに[3]の「情報の提供」という中に、「マスメディアを含む様々なメディアを効果的に活用する」という表現があるのですが、マスメディアというのは非常に大きな影響力を持っておりまして、環境教育の中でどういうふうにマスメディアというものを利用していくのか、そういう議論はされたのでしょうか。

【小澤委員】 マスメディアを利用するという、どういうふうに情報リテラシーをつけていくかということが環境教育の基本にあるのではないかと思うのです。先ほど佐和委員から御意見があったように、ただ単に問題の情報を知るのではなく、自分で解決あるいは地域の中で組織として解決していくときに、どういう状態になっているのか、あるいは国際的な比較を通してということもこれから求められる、そういう観点から検討してきたつもりでございます。
 ほかの委員の方でいかがでしょうか。

【猿田委員】 今、小澤先生がお話しになったことに尽きていると思いますけれども、マスメディアの活用というか利用と単純に言いましても、なかなか難しいところがあるわけでして、逆にどういう情報を提供されているのかということも問題だろうと思うんです。正しく理解して広報されているかどうかということもあるわけで、その辺のお互いの理解度の問題が非常に重要になってくるのではないか。それによって、それをどう活用していくかということになるわけで、最近、ダイオキシン問題を始めとして、いろいろな地域での問題が出ておりますが、新聞を比べてみると、かなり差のあるような内容で、正しい情報をどう提供していくかということも一つ問題でしょうし、そういう状況をどう把握していくかということも環境教育・環境学習の課題の一つではないかと思うわけです。ただ単に利用するとか、そういうことではなく、そういう正しい情報の理解・提供、その辺がすべてに通じることかと思います。

【浅野委員】 今の発言を少し補足しますと、マスコミも正しく情報を知ってほしいという意図で言っているのではなくて、「各主体の連携」というところが非常に重要である。例えば、NGO、NPOの方々が、自分たちがやっていることを積極的にマスコミの方々にあらかじめ情報として流して取材をしてもらう。それがNGOの活動に参加者をますます増やすとか理解を増やすという効果が上がっている。同時にまたマスコミもしつこく、毎回イベントをやるために連絡をとって、毎回テレビでニュースを流してもらうというすごく上手な団体が福岡にあるのですが、マスコミが継続してそれを報道するということの意味をマスコミ側もよく理解できるようになっていく。そういう意味では、「各主体の連携」という中で、もちろん行政とマスコミもあるでしょうし、NGO、NPOとマスコミの連携もあるだろう。あらゆる主体が連携をとり合っていくことが、効率よく環境教育の成果を上げるための手法なんだという意識を我々は持ってこれを書いておりますので、マスコミというのをあまり特出しをしていないのは、確かに御指摘のようにあるのですが、何かを利用するというよりも、すべてつなぐという発想でこれからの施策を進めるべきだというのがこの報告の中身であります。

【森嶌部会長】 私の質問というか意見というか、4ページから現在の各省庁の施策が書いてありますが、最初の環境基本計画のそれぞれの見直しの点では、各省庁一生懸命やって施策を出しておられるけれども、それがばらばらで、有機的なつながりがないではないか。ぜひ有機的につなげていくことが必要だというのが点検のときの結論だったと思うのです。
 そこで、第2次の環境基本計画をつくる場合に、第1次の計画のときの評価、反省という前提に立って、例えばボトムアップしていく場合に、ここでは簡単に「国は」と書いてあるのですが、いままではトップダウンだったから、それをボトムアップに直すということなんですが、それぞれの省庁は、どういうふうに有機的にコーディネートすれば、まず第1に、トップダウンからボトムアップにできるのか。そしてボトムアップにしたときに、どういうふうにコーディネートすれば、各省の施策がうまくサステイナブル・ディベロップメントにつながっていくのか。これは環境庁という一つの省ですから、俺のところがやっているのが一番いいぞ、俺の後に続けとは言えないというのはよくわかるのですが、せっかく我々は、第1次で有機的なつながりがないのはだめだ、みんな並んでいるだけだと言っていて、ここを見ると、また並んでいるだけだというので、その辺、非常に難しいとは思うのですが、先ほど浅野さんが、ここにいろいろ書いてあるけれども、みんなそれは一つの例示であって、これを一つ一つ計画の中に書き込むわけではないとおっしゃったのですが、それならばなおさら、いままでの環境教育についての各省の施策をどういうふうに第2次の環境基本計画でコーディネートさせていくのか、有機的につなげていくのかということを、これは報告書として出ているものですから結構ですが、基本計画を作るときの各論として出てくるときには、ぜひそういう視点でもう一度検討委員会の方々に御検討いただければと思います。もう既に答えはありますか。

【浅野委員】 一部分はあります。例えば、各省の施策の中で、子供たちにいろんな仕掛けをする場合に、各省が同じような仕掛けを次々にお考えになっているわけです。受け皿になる現場の方は1つなんです。地域は1つ、子供は1つなんです。それをいろんな形で各省メニューで来られますから、ある地域では何々省の子供何とかができる。あるところでは全く別の省の何々ができるというようなことがある。だけど、もう一回発想を逆転させていって、地域から逆に上げていく。例えば山の緑を何とかということだけでいうなら、それでいいわけですから、それを各省協力してやってくださればいいわけで、それをばらばらにやられるのは困るねというのがこれで考えている一つの答えなんです。しかし、これで完ぺきかどうかわかりませんけれども、一応議論の中でそこまでは考えました。

【森嶌部会長】 計画ですから、そうなるかどうかはともかくとして、そういうのだったら、どういうふうにやれば各省が力を合わせて、緑なら緑で、同じ子供たちに多角的に活動してもらえるか、その辺のアイデアが示されると、ないものねだりかもしれませんけれども、ここではぜひ必要なことではないか。答申の方は非常にきれいごとを書いてありますから、もう少しフィージビリティのある、そういう感じのする計画にしたいと思っていますので、ぜひお願いいたします。

【浅野委員】 それはそうですね。協議会をつくるとかいうことぐらまでの議論はしていますけれども、それでは十分でないというのはわかりますから。環境省の調整機能というのは、今度は、いままでと違った省の前提で使えますので、いままで以上にその辺の道具立てをいかにうまく使うか、事務局と一緒にまた考えて検討することになると思います。

【森嶌部会長】 なかなか難しい問題だと思います。

【鈴木委員】 リスク管理の中で、リスクコミュニケーションというのはものすごく大事な仕事だと考えているのですが、環境教育とか学習という仕事とそれは恐らく濃密に絡み合っていると思うのですが、その辺のところはどういう位置付けになっているのでしょうか。

【森嶌部会長】 北野先生の方の検討チームかもしれませんので、北野先生の方から、リスクコミュニケーションというのを環境教育の方にどういうふうに入れてほしいかというのは、あるかもしれませんし、もう既に環境教育の方で検討済みであれば、そういうお答えでも結構ですが。

【北野委員】 私どものやっている化学物質の方では、リスクコミュニケーションの大切さというものは位置付けているのですが、一般的に環境教育の中で、化学物質というものは何となく入ってこないような、自然環境の保全みたいなものが環境教育みたいな感じがしてきまして、そんなことでこの中にリスクコミュニケーションが抜けたのかと思っているのですが。化学物質の管理も環境教育の一貫に入れていただければ、鈴木先生おっしゃったように、リスクコミュニケーションというのは大事なものとして位置付けないといけないと思いますが。

【小澤委員】 いままでの環境教育は、わりと自然保護あるいは環境汚染に対する教育がメインだったわけですが、先ほどの非常に広がりを持っているというところには環境コミュニケーションあるいはリスクコミュニケーションという概念も入れているわけです。ですから、私どもがこれをまとめる中で、つけたい能力の基盤としてあるのが、情報処理能力といわれていますけれども、それは自分で情報を集めてきて、その情報を判断していく
 能力とか、データを継続的にとっていく能力とか、そういったことも必要になってくる。その中で、得たリスクをどう判断するかというところで洞察力あるいは分析力もつけていかなければいけない。ただ、そこまで踏み込んでここには書いておりませんけれども、そういった内容も含んでいるという前提でここでは書いております。

【浅野委員】 リスクコミュニケーションを全く議論してないというわけではなくて、例えば消費者教育といわれていたものも今日では環境教育の範疇の中に包摂すべきであろうという意識があります。それから、企業との関係で、双方向という意識はこの中にはあるんです。つまり、企業から一方的に発信するだけではない、双方向のコミュニケーションがあるだろう。あるいはNGOをことさら強調しているのは、リスクコミュニケーションの中でのNGO、NPOの役割という意識がありまして、ちょうど真ん中に入ったコーディネーター役とかトランスレーター役を果たすようなものとしてのNGO。あまり詳しく書いてはいませんが、NGOというのはいろいろな役割があり得るので、リスクコミュニケーションの中でのNGOの役割が意識されて、「各主体の連携」という書きぶりに一応なっているつもりですが。どこで書いても最終出口は一緒ですから、化学物質の方でもうちょっと丁寧に書く方がいいかもしれません。

【森嶌部会長】 鈴木先生がおっしゃりたかったのは、リスクコミュニケーションというのを環境教育・環境学習という場でどう位置づけるのかと。だから、役所のお答えのように、それもちゃんとこの中に読み込んでありますという話では、お答えになっているけれども、多分、鈴木先生が提起されたことではないので、例えばリスクコミュニケーションについては、環境教育の場ではそこまでやっていませんよとおっしゃるなら、そうおっしゃっていただいて、もしもそうでないということならば、これは環境基本計画にもっていくときに、今の御指摘をどう受け止めた形で書くかということで、既にお考えのようでありますから、少し取り入れて考えてみたいと思います。

【浅野委員】 わかりました。少なくとも環境教育の中では、こういうテーマをという形では必ずしも整理しきれてないことは事実です。ですから、これが環境教育のテーマとして挙がっているのか挙がってないのかという言い方をされると、この報告書は多少弱い点があることは事実です。ただし、一番最初のところにもあるように、従来、何となく環境教育というのは自然だろうと言われていて、ある部会でも、今度は逆に、温暖化ばかり環境教育かね、交通問題が環境教育に何も関係ないのはおかしいではないかという発言も出てくる。そんなふうにそれぞれの部会で、自分のところのテーマは環境教育と結びつくはずだという意識をみんな持って発言しているわけです。そういう意味では、最後にあるように、それぞれの施策ごとに環境教育の視点を入れろという言い方をしてあるわけですが、今のことよりも、むしろリスクコミュニケーションということを議論する場合に重要なのは、テーマがというよりも、どういう仕掛けで、どういうふうに相互理解をするかというところなんだろうと思うんです。ですから、そのことを今後の環境教育では重視しなければいけないということがとりあえず出ているということで御理解いただいて、その上で、もう少しどう書いたらいいかということを言っていただくとなおいいと思います。

【鈴木委員】 一番最後のお話で私のポイントをどうやらわかっていただけたと思うんです。要するに、社会的なファンクションとしての環境教育があって、というふうに考えるのだったら、当然そのファンクションの中には、広い意味でのリスクコミュニケーションと呼ばれているものは含まれていなければいけないんです。そうでなければ、実際にリスク管理なんてものは世の中に根づいて生きていくものにならない。だから、あまり機械的に分けて、テーマとして入っているか入ってないかという話ではないんです。

【森嶌部会長】 要するに、そういうものを取り込め、あるいはそれを扱えるような形で環境教育が広がっているというわけですから、それを意識して最終的には書く。これは検討会の責任ではなくて、部会の責任でありますけれども、今の御指摘は十分に受け止めたいと思います。

【幸田委員】 今の御指摘は本当に重要な部分だと思いますので、部会の皆様の御意見をまた拝聴して、どういうふうに入れたらいいか。PRTRなどもそうですが、地域の問題にもなるわけですね。自分の地域にどのような危険物質があって、それに対して何かあったときには敏速に、みんなの協力態勢をよくして、ダメージをいくら小さくできるか。そういう意味で地域をよく知るとか、実に重要な部分で、学習でもあると思いますので、どこまで広げて入れるかということを、こういう御意見を参考にさせていただいて、考えていければと思います。

【佐竹委員】 リスク管理という観念自身が、中央省庁でもそれほどなじみがないのだろうと思います。少なくとも私どもが現役であった10年前、リスク管理という発想で国会で答弁すると、「そういう難しいことを聞いているのではないのだ、要するに安全か安全でないか、どちらかはっきりしろ」と、こういうことですから。
  また、最近は、中央省庁、特に厚生省等ではリスク管理という考え方を正面から打ち出されていると思うのですが、しかし、先ほどマスコミ云々というお話もございましたけれども、実際の担当者としては、昔の方がよかったのではないか。要するに「役所に任せておけ。そうすれば、我々がその辺は全部判断する」と、そういう時代の方が楽だったと思っている人は多いのではないか。
 例えば、私が実際に経験した話でいえば、ダイオキシンが焼却場の灰から検出された。そうすると、全国の廃棄物処理場の用地買収が一斉に止まってしまった。そういう事態が現にあったわけです。これは伝聞でございますし、確かめたわけではございませんが。そういう事態があるわけで、まさにこれからはリスク管理という考え方を入れないと、実際の行政運営ができなくなるのではないかという感じは確かにしますから、ぜひそういうことを環境教育の一環として取り上げていただくことは大変大切だと思います。しかし、最近は国会の議論はあまり詳しく聞いていませんが、少なくとも10年前はそういう議論は受け付けないという状況も頭に入れておかなければいけないのではないかと思います。
 それから、発言の機会が与えられたので。私は教育については全然識見がないので、質問させていただきたいのですが、昨年12月の答申の際にも欠席いたしましたので、あるいは解決済みかもしれませんが。
 私どもの経験的な感じから申しまして、ものの使い方とか食物に対する接し方を第一番に教わったのは家庭だったと思います。様々なことわざという形で両親からいろいろな教育を受けてまいりました。17ページの図等を見ても、就学年齢等では家庭内の教育・学習のウエートがかなり高うございます。しかも、そういう教育の場というのは、特に食物についての教育というのは食事のときが多かった。ところが、現在どういう状況にあるかというと、個食化が非常に進んでおります。家庭で家族が一緒に食事をするという傾向はほとんど失われている。食品メーカーもそのことを前提にマーケティングを展開しているわけです。これは廃棄物問題などにもつながってくると思います。もちろん家庭教育の機会というのはいろいろあるわけですから、別に食事のときには関係ございませんが、少なくとも私どもが子供のときに父親、母親と接触した時間と比べておそろしく会話の時間が減っていることは事実だろうと思います。
 そうしますと、昔、家庭で環境教育も含めた社会教育を果たしていた機能を、今度は地域が担当するのか。これに指導者の養成その他というのがいろいろ出てまいりますから、家庭での教育というのは現実問題としてなかなか難しい以上、そういう機能はどこかほかのところで代替するという考え方に変わっていくのか、それとも家庭は大事なので、今の家庭の在り方がおかしいから、家庭そのものを昔に戻す--ということは不可能だと思いますが、とお考えなのか、その点が1点です。
 もう一つ、私は1955年に役所に入ったのですが、その当時からいうと、例えば農村においては都会の生活が非常に羨ましい。つまり隣は何をする人ぞ。蛇口をひねれば水が出るという生活をすることが望ましいから、ぜひそういう形に農村もしていくべきだと、現実にそういうことを農林省もやってきたわけです。厚生省でも同じように上水道の普及をやってきたわけです。ところが、そうもいかなくなってきているのが現状ではないか。廃棄物の処理等を通じて、都会でも地域の何らかの組織、小集団が一定の役割を果たす、そういう機能が必要になってきているのではないかという感じがするわけです。
 正直に申し上げますと、戦争中の隣組の印象等もあって、そういう機能を持つ地域の団体がそういう機能を果たすことは必ずも好ましいことではないという考え方も一方であるわけです。その辺をどのようにお考えになるのか。つまり、地域の小集団が地域社会の生活に際して一定の機能を果たすということは、近代化された市民社会においても当然あり得ると考えるのかどうか。その辺についてお考えがあれば教えていただきたいと思います。大変難しい質問で、短時間でお答えになりにくいかもしれませんが。

【森嶌部会長】 先に御意見をいただいて、それから、お答えがあるならばお答えいただくということにします。

【猿田委員】 先ほどリスクコミュニケーション等について鈴木先生からもお話がございましたが、現実に環境教育・環境学習という視点から見ますと、最近、化学物質等に関するいろいろな問題が各地で起こっています。私はたまたま藤沢市に住んでおりますので、藤沢でもいろんな問題が起こっておりまして、そういう学習のチャンスがたくさんあるんです。この頃ものすごく増えてきています。ただ、その際に、リスク管理とか、そういうものを表明してやっているのではないんです。しかし住民の方々がお考えになっているのは、まさにリスク管理とかリスクコミュニケーションに関して知りたい。では、どうすればいいのかということを意識して勉強してらっしゃる。というのは、今日の中にも廃棄物の項目がございますが、それが廃棄物からきているのならば、私たちはどうやったら減量化できるのだろうかというようなことも今、私もちょっとお手伝いしている面もあるのですが、そういうことをやっている。ですから、そこでリスクコミュニケーションあるいはリスク管理ということがうたわれないから、環境学習になるのかならないのかということはまた別で、最近は特に化学物質に関する意識を皆さん非常にお持ちになっていらっしゃるので、もし表明するならば、この中にそういう言葉を入れればいいわけです。学習の際のテーマの選び方によっていろんな面があるわけでして、これを羅列すると逆に大変ではないか。最近の経験からちょっと申し上げました。

【塩田委員】 環境教育というのは、答申も最近出されたわけですが、普通の教育というのは、学校あるいは大学という教育機関の場において、どなたが何によって教えるというのが大体検討がつくわけです。今のお話で、重要な項目として、これから学校以外のところの教育あるいは学習が大事だというと、そういう場において、一体誰が、何によって教育するかとか、学習の機会を与えるかというイメージが必ずしもぴったり私には理解しにくいので、大変初歩的な質問で申し訳ないのですが。
 そういう観点から、今、佐竹さんと猿田さんが質問されたこととも関連するのですが、学校の教科書によらない場合に、例えば、ごみを減らすという観点からいえば、木が多いところのごみは、木の葉っぱが多いわけです。これを家のそばで、ちょっととした危なくないところがあれば、燃せば一番いいと思うのですが、木の葉に限って燃しても、最近はあまり歓迎されないということがあるわけです。木の葉というのは大変なごみの量になると思います。そういうようなことを、例えば、この環境基本計画とか、あるいは学校の教科書などで決めてあるものをみんなで守ろうというような話は理解しやすいのですが、ここで学習というのは、そういう問題を地域ごとに考えて、逆に提案していくということをイメージしておられるのかどうか。
 ごみの話、どういうものをどういうふうに捨てるのが一番いいのかというのは、私はいつも隣の方に伺いながらやるということになってしまっているのですが、そういう問題をもう少し具体的に、24ページに書いてくださっている地球温暖化あるいは廃棄物・リサイクル対策について、普通の学校教育は説明は要らないと思うのですが、今の公民館等をベースにした自主的な教育あるいは学習というものは、イメージとしてどんなものなんだろうか。私はイメージが必ずしもよく浮かばないのですが、ここはぜひもう少しイメージがわくようにしていただきたい。そういうものは体系化とかは無理なのではないかと思うのですが、総合性が要るとかいうことを総括的にはまとめておられる。地球温暖化対策あるいは廃棄物は2つとも非常に具体的でわかりやすいテーマだと思います。例えば、地球温暖化対策で、「乗用車の使い方はどうすればいいのか」というテーマで、どんな学校以外のところの教育あるいは学習というものがあり得るのかとか、廃棄物の捨て方あるいは処理の仕方に関してどんなことがあり得るのかというのを、国が決めたことを上から下へ下げるだけではないのだという御指摘はごもっともだと思いますが、それではどんなものがイメージとしてあり得るのか、この辺をぜひイメージがわくようにしていただきたいと思います。

【森嶌部会長】 江頭先生、検討チームのメンバーですので、御意見がありましたらどうぞ。

【江頭委員】 私の勘違いかもしれませんが、環境教育・環境学習というのは、子供から大人まですべての世代が学習するものであり、そして活動するものであると小澤先生はおっしゃったような気がするんです。ですから私は、これはすべての政策に対するベーシックなものであるとずっととらえています。
 先ほども自分が自主的にいろんな規制をかけていくということが4番目にありましたね。本当はそれが一番理想的な社会になると思うのですが、それのもう一つベースとして環境教育・環境学習がある。地域社会とか家庭教育ということをおっしゃったのですが、家庭教育も、地域社会の教育力も今非常にレベルダウンしている。そこでいろんな人間としての欠陥が出てくる状況もぼちぼちあるのではないかと思うのです。それをもう一回復活させていく。昔の教育へ戻るということは非常に難しいけれども、心の教育だけは非常に必要である。いろんなことを知って、そしてそこで考えて行動する。ここの中にもあったのですが、そういう心を育てていく。そして行動力を具体的に、塩田先生がおっしゃるように、ごみはどうすればいいの?とか、自動車はどうすればいいの?ということまで、末端にいる私たち市民が考えていかなければいけない。それは個人ではなくて、個人も考えなければいけないけれども、みんなで考えようというネットワークづくりが必要だと思うので、学校教育だけでやるものではないと私は思いますし、地域社会あげてやらなければいけないし、それは国もあげてやらなければいけないことだとずっと考えておりました。
 文部省もいろんな政策を出してきて、「総合的な学習の時間」もつくりなさいということで、平成14年から完全実施されますが、今年から部分的に始まっております。
 一番のメインは、「生きる力を育む」。生きる力と環境教育・環境学習は目的が同じだと思うんです。そういうところに視点を当てて、そしてすべての政策が、「人間としていかにあるべきか」というところから発想していくべきではないかとずっと思っておりました。

【池上委員】 先生方の御議論を聞きながら感じたことをちょっと申し上げまして、もし御参考になればと幸いだと思います。
 さっき教育という立場ですが、これは何となしに御説明を聞いていますと、上から教えてやるのだというのが非常に強いようなイメージを受けました。マスコミを通して、それから、いろんな会合でテーマを選んで、こういう御発言が多かったのですが、もう一つ、学習というのは、自分が欲しい情報をとりにいくという機能が非常に大事なのではないかと思いました。例えば、リスクという概念はどんなものだろうというのも、これはその人が調べたいと思って調べていくタイプのものだと思います。ですから、ここでお考えいただきたいのは、そういうふうなより高度の情報を得ようとしたときに、どういう手段でそれが採集できるか、こういうシステムを構築するのがいいのではないかという感じがいたしました。
 さっきIT革命の話がありましたが、それには、ここにも書いてあるEICネットをもう少し充実するようなことで、教育の一環あるいは自主的学習の教材にする。それはもちろん小さな子供たちだけではなくて、大人も、例えば専門家も、そういったところをインターネットで見に行けばそれが得られる。さっきのリスクもそうです。そういうふうな仕組みをこしらえていただくのが、環境省となられる、この教育の一つの重要な柱ではないかと思いました。
 したがって、私が言いたいのは、教育というのを一つだけ分けて考えるのではなしに、教育からだんだんいろんな情報まで横に広がったようなものを教育あるいは学習のデータ・情報として提供いただけるような仕組みをつくっていただきたい。7ページに1つだけ、「EICネット等による情報提供」と書いてありますが、それは一つの独立した部分にでもしていただきまして、これが環境庁の教育・学習の一つの柱であるというぐらいのところまでやっていただいたらいいのではないかと感じました。

【天野委員】 この報告書の26ページ、「おわりに」というところで大変重要な御指摘があるのですが、環境教育・環境学習というのは政策手段の中でも非常に重要なもので、いろんな環境行政の個別政策分野すべてにわたって、これを政策手段として使うようにという御指摘があります。私は先ほど経済的手法とかいろんな政策手法の話をいたしましたが、例えばOECDなどでも、インフォメーション&コンサルテーションという形で政策手法の一つに位置づけているわけです。ですから、普通、我々が「環境教育・環境学習」という表現をすると、教育の話というふうになってしまうのですが、御指摘どおり、一つの重要な政策手段であるという認識が出ておりますので、これは報告書としてはいい御指摘であろうと思います。
 ただ、英語に直しますと、インフォメーション&コンサルテーションなんですが、コンサルテーションというのは、最近の海外のいろんな国の環境政策を見ておりますと、国の方でいろんな案の骨格になるような話をまず固めて、それをコンサルテーション・ペーパーという形にして、民間にいろんなところから意見を徴収して、またその内容を改めるという手続をとっていくやり方が多くなってきています。重要な政策であるほどそういうやり方をするということで、インフォメーション&コンサルテーションというのは、そういう政策形成のための一つの手法として定着してきていると思いますので、ここの環境教育・環境学習というのを、そういうふうな意味合いで御指摘いただいているということは非常に大事なことであって、学習というのはやりとりがあって進むものですから、それをこれからの環境基本計画に生かしていくという点では非常にいいことをお書きいただいたと思っております。

【中野委員】 先ほど佐竹委員からも御指摘がありましたように、今どの省庁も環境の視点からいろいろと施策を考えてくださっていると思うのです。その中でも特に学校での体験ということをよく言われておりますが、私はやはり地域での体験が大切ではないかと思います。34ページにも、親はある程度いろいろ体験をしていただいておりますが、今の子供の体験は、学校のみの体験が多いと思います。子供たちに、例えば選挙とか、緑とか、ごみとか、いろいろな面でポスターなどを書いていただくと、子供の考えていることがよくわかります。そうしたことで、家庭が一番大切ではないか。日々の親の教育とか、話していることが大切ではないかと思いますので、小さいときから環境への心を育むということ。学校だけではなくて、小さいときからの環境の心ということがいろいろな点で一番大切ではないかと思います。

【幸田委員】 先ほどの佐竹先生の御指摘で、家庭での教育をどういうふうにこれから力を入れていくのかという中で、その役割のすべてでは決してないのですが、最近だんだん情報としてボリュームが増えているのは、マスコミ、テレビなどの影響も結構大きいのではないかと思うのです。そういう意味で先ほど北野先生が御指摘になったことはすごく重要なことで、どうやってマスコミを活用していくのか、活用という期待だけではなくて、具体的にどうしていくかというのをもっと詰めていかないと、また、そのやり方も、池上先生がおっしゃったように、押しつけではなくて、どういう形でマスコミを通してやっていくか、これからもっと力を入れていかなければいけないところではないか。それもなかなか簡単には答えが出ないのですが、少し皆様のお知恵も借りていきたい部分だと思いました。

【小澤委員】 いろいろと御意見をいただきましてありがとうございます。
 この検討会の報告としては、基本的に昨年出しました答申を踏まえているということで、具体の家庭で、あるいは学校でということではなく、すべてにわたってということで、学習の場が変化しているということをまずきちんといっているのではないかと思います。
 それから、環境教育というのは、生き方教育というのが世界の共通の認識だろうと思います。その生き方というのは、人と自然あるいは環境との関わり、あるいは人と人との関わりから学ぶ、そこで体験的な学習ということが出てきます。
 それから、池上委員からも天野委員からも御指摘がありましたが、知識伝達型の教育ではないのです。学びのプロセスであるということが重視されているかと思います。
 ユネスコの「21世紀教育国際委員会」の報告集の中で、『学習-秘められた宝』という中でこういうことが言われています。「学ぶということは、知ることを学ぶだけではなく、なすことを学ぶ、共に生きることを学ぶ、人間として生きることを学ぶ」。そういう意味で環境教育というのは内なる自然の破壊に対しても応えていくものだと思いますし、社会の仕組みをどう変えていくのかということは、お互いに学び合う中から、仕組みがおかしい、いや情報の提供の仕方がおかしいということにきちんと気付いて、そしてそれを変えていくような人材をつくることが大事だと。ただ、それは一人ではできませんので、地域の中でNGOあるいは行政がコーディネーター、プランナーとしてそういった仕掛けをつくっていく。あるいは学び方の対応として、ファシリテーターとしてやっていく。そういう人材をつくっていくことが求められていると思います。
 そういう意味で今、学校教育でも「総合的な学習の時間」で、環境教育、国際理解、情報、健康、福祉というものが行われるということで、もう移行期間として始められて、東京では今年、小学校で年間平均55時間行われるという予定がたっているそうですが、そういったことも行われる。しかし、それも学校5日制を視野に入れますと、学校だけではできないので、地域で、自然に触れる、自然との関わり、あるいは地域のNGO、父兄の方たちと関わり合いを持つということでの、土日を活用しての体験型学習も取り入れながらということで期待されているところではないかと思います。そういう意味で、個々のテーマ、あるいは家庭でこれをやれということは書いておりませんけれども、考え方の基本には入っているのではないかと思います。
 そういう意味で、第1図から第3図までが概念、18ページ以降に「人材の育成」から始まりまして、具体的に書いているところではないか。そこで大事なのが、「つなぐ」というキーワードが昨年の答申にも出されましたし、これはチェンジング・エージェンシーとしての役割が、いままでの縦割りの省庁の中での施策をより有効なものにしていくために、「つなぐ」というキーワードが大事。これは地域でも、学校とPTAをつなぐ、あるいは家庭でできない教育も児童館の中でやっていくという、そこを我々が意識的に行っていくことが大事だということを、この検討会の報告書の中では盛り込んだのではないかと考えております。

【森嶌部会長】 どうもありがとうございました。
 なお、今日の議論で環境教育がおしまいということではありませんで、検討チームからの報告書をいただきましたので、全体の環境基本計画の取りまとめをする際に、これがベースになることは確かでありますけれども、環境基本計画として起草された段階でまた御意見を伺いたいと思います。起草する際には、今日の御意見を十分に踏まえたものにしていただきたいと思っております。
 次回は、本日に引き続きまして、検討チームの報告としては第3回目になるわけですが、村岡委員から、「環境保全上健全な水循環の在り方」の検討チームの御報告と、三橋委員から、「環境投資」の検討チームの御報告をいただくことにしております。
 なお、本日の審議に際して、こういうことを言っておくべきだったということがございましたら、5月29日までに事務局に文書でいただければと思います。
 こういうことでだんだんと検討チームの報告をいただくわけでありますが、総論につきましては、既に一種のフリーディスカッションという形で何回かやってまいりましたけれども、ぼつぼつ検討チームのも出てまいりましたので、取りまとめも一方で考えていかなければならないと思っております。どういうふうに取りまとめていくかということにつきましては、前回のときもそうでありましたけれども、起草のための小委員会をこしらえまして、そこで、ここでの御議論を踏まえて、環境基本計画の形を作っていただいて、それを部会で御議論いただく。
 大体のスケジュールとしましては、6月末ぐらいまでに各検討チームの御報告が終わるはずでございますので、その直後から起草小委員会にやっていただいて、それをここに出して御議論いただいて、中間取りまとめという形で、これはいつごろですか。

【細谷環境計画課長】 想定いたしておりますのは8月以降ということでございます。

【森嶌部会長】 6月に終わって、それから7月、8月ということですので、そう時間があるわけではありませんけれども、これは中間取りまとめをして、国民各層からの御意見を伺う、また、各地でヒアリングを行うということでありまして、これは秋に入ってすぐということになると思います。そして、それを終えた後に取りまとめて、環境庁が消える前に出しておく。環境庁が終わるときには、現在の形の中央環境審議会も終わりまして、ほかの審議会なども吸収して形を変えたものになりますので、あまり組織の変動がないうちにということになりますと、遅くとも年内には計画という形で出したいと思っております。そういうことで、基本的にはここで全部審議をいたしますけれども、その準備のための起草小委員会をつくりたいと思っております。誰に、どういうふうにということはまだ決まっておりませんけれども、一応ここで、そういう方向で調整していくという点を御了承いただければと思っております。
 次回でございますが、6月2日(金)の午後2時から、中央合同庁舎5号館の講堂だそうでございます。
 事務局の方から何かありますか。

【細谷環境計画課長】 1点御報告させていただきたいと存じます。これまで検討チームの報告につきましては、6月26日の会合までで一巡するという予定でございましたが、本日お配りしてあります1枚紙の検討チームの検討の進捗状況を御覧になっていただきますと、一番右の欄に検討チームの部会への報告時期を記載してございます。そこのところに、「廃棄物対策等物質循環の在り方」検討チームにつきましては、未定という形になっております。これは現在、循環型社会形成推進基本法案が国会で審議中であることと関連しておりまして、すなわち、この法案におきましては、循環型社会の形成に関する施策についての基本的な方針等を定める「循環型社会形成推進基本計画」を定めることとなっておりますが、この計画は、環境基本計画を基本とし、なおかつ、中央環境審議会の意見を聴きつつ策定することになっております。したがいまして、環境基本計画におきまして、物質循環の在り方を議論するためには、このような点を十分に意識する必要があるわけでございます。現在、物質循環のチームの検討自体がまだ始まっていないということもございまして、当面、報告の扱いにつきましても、ペンディングの扱いにさせていただきまして、部会長及び検討チームの平岡主査と御相談しながら、状況の見極めを行った上で、その扱いを検討させていただきたい、このように考えている次第でございます。

【森嶌部会長】 ということで、やむを得ないことでございますので、そういうふうにさせていただきます。
 本日はこれにて閉会いたします。6月2日午後2時からよろしくお願いいたします。時間を超過して御審議いただきましてありがとうございました。

<以 上>