III-1 今日の段階からの取組の意義 III. 今日の段階から取り組まなければならない事項

 京都議定書の履行を担保し得る総合的な取組を行うに当たって、検討になお時日を要する課題もあるが、その間、時間を空費することなく、今日の段階で実施可能なものについては直ちに着手、制度化すべきである。そして、残された課題については、検討が進められた段階で、総合的な対策の一環として組み入れていくべきである。

1. 今日の段階からの取組の意義

 政府は、1990年に、2000年以降1990年レベルで二酸化炭素の排出量を安定化すること等を目標に掲げ、地球温暖化防止行動計画を定めたものの、この行動計画は、既存施策の運用の改善の範囲にとどまり、地球温暖化の防止をその施策の目的に掲げていない、いわば借用的な施策を列挙したものであって、二酸化炭素等の確実な削減量を見込める仕組みとなっていなかった。実際にも、我が国の二酸化炭素の排出量は、地球温暖化防止行動計画策定後も、基本的に増加基調にあり、1996年度には1990年度比で9%以上増大している。
 他方、京都議定書が採択されたことにより、現行条約上の努力義務であった2000年以降1990年レベルでの二酸化炭素排出量安定化という目標を超えて、法的拘束力のある目標として「2008年から2012年までの第1約束期間に1990年レベルから6%削減」することという目標が設定された。
 「2008年から2012年までの第1約束期間に1990年レベルから6%削減」を単に二酸化炭素の排出量削減のみで行うという大胆な仮定により計算すると、1996年度までの増加基調がその後も続いたとすれば、1990年レベルと比較すると、1997年度にはこれを10.5%も上回る排出量となり、今日の時点で直ちに対策を強化するとしても、1998年から2010年までの12年間で16.5%もの削減が必要となる。さらに、現状の増加基調のまま2年経過すると、対策実施期間が10年間に減る一方、削減率は3%ポイント高まる。2004年まで経過すると、今から対応した場合に比べ6%ポイントも大きな削減を、極めて短い8年間のうちに達成することが必要になる。このように対策が遅れれば遅れるほど、短期間で大幅な削減を達成しなければならなくなり、より厳しい対策を講じざるを得なくなる。

 したがって、国内における総合的な制度を確立する以前においても、「2008年から2012年までの第1約束期間に1990年レベルから6%削減」という目標を達成できるようにしていくために、現在の二酸化炭素等温室効果ガスの排出量の増加傾向に歯止めをかけ、一刻も早く減少へ転換させるよう、できるだけ早期に削減のための対策をとることが必要である。
 このような今日の段階からの取組は、温室効果ガスの増加傾向を改め、できるだけ早く温室効果ガスの排出量を削減する方向へと、事業者の生産活動、消費者のライフスタイル等を誘導することに役立つことになることはもとより、将来において一層の対策を行う場合の社会的摩擦を低減させる意義もある。


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