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中央環境審議会
21世紀環境立国戦略特別部会(第6回)議事録


平成19年4月23日
環境省大臣官房政策評価広報課
<議事次第>

  1. 開会
  2. 議事
    (1)
    有識者からのヒアリング
    (2)

    「21世紀環境立国戦略」について(地球温暖化)

    (3)
    その他
  3. 閉会

午後3時00分開会

○柴垣大臣官房政策評価広報課長 それでは、定刻でございますので、ただいまから中央環境審議会「21世紀環境立国戦略特別部会」の第6回会合を開会させていただきます。
  委員の先生方におかれましては、お忙しい中ご出席をいただきまして、大変ありがとうございます。
  本日は、委員総数26名のうち15名の方々のご出席というご連絡をいただいておりまして、2名ほど遅れておられますが、いずれ、そろわれるというふうに思っております。
  まず、お手元の配付資料のご確認をお願いいたします。議事次第のところに資料一覧をつけてございます。参考資料2といたしまして、前回第5回の議事録を出させていただいております。これは本日の会合の後に内容のご確認をいただきまして、5月7日までに事務局お申しつけいただければ、修正をさせていただきまして、ホームページに公表をさせていただきたいと思っております。
  また、関澤委員から、委員の関係する団体の意見書など、5種類の提出の資料がございまして、お手元の資料の一番最後に配付させていただいておりますので、あわせてよろしくお願いいたします。
資料の不足などございましたら事務局にお申しつけください。
  それでは、以降の進行を鈴木部会長にお願いいたします。

○鈴木部会長 それでは、次第に従いまして議事に入らせていただきたいと思います。
  本日は前回に引き続きまして、審議とあわせましてヒアリングを実施しようということになっておりまして、横山宏社団法人産業環境管理協会環境管理部門長、そして石谷久慶応大学政策メディア研究科教授、鮎川ゆりかWWFジャパン気候変動プログラムグループ長、お三方に来ていただいております。横山部門長には環境経営の推進、3Rの取り組み等を中心としたご説明をいただきまして、石谷教授と鮎川グループ長には温暖化を中心にご説明いただく、こういう予定にいたしております。大変時間が短くて恐縮なんですが、10分程度でご説明をいただいた後、それぞれ個別に質疑応答の時間を設けたいと思っております。
  それでは、早速ですが、横山産業環境管理協会環境管理部門長、お願いいたします。

○横山産業環境管理協会環境管理部門長 ありがとうございます。ご紹介をいただきました、産業環境管理協会の横山でございます。環境経営の推進、新たな3Rへの取り組みと世界への発信と題しまして、お手元の資料によりまして発表させていただきます。
  タイトルがございます資料の表紙をめくっていただきまして、2ページは協会の概要でございます。現在約1,000社の企業会員を有する社団法人でございまして、3Rに関連いたします多くの調査、研究開発を行っておりますところでございます。
  3ページでございますけれども、当協会はエコプロダクツの主催事務局でございます。この展示会は、3日間で参加者15万人を超える我が国最大級の環境総合展示会でございまして、経済産業省のご支援をいただきつつ、開催を重ねております。
  右側のグラフにございますが、第1回から一貫して来場者数が増えております。引き続き、3Rへの取り組み、地球温暖化防止、持続可能な社会への取り組みの成果と普及を展示してまいりたいというふうに考えております。
  4ページでございますけれども、企業の環境経営は環境適合製品を強化していくことが不可欠でございます。日本は環境先進国といたしまして、これまでも大変強力な基礎・基盤を築いてまいりましたが、環境経営のグローバル化はこれらの基礎・基盤にさらに積み重ねをしていくことが大切というふうに考えております。
  5ページ目でございますけれども、3Rの取り組みの重要性を4つ挙げさせていただきました。第1に3Rの取り組みが市場原理の中で成立しつつあるということでございます。第2に3Rの取り組みが進められました結果といたしまして、生産性向上が達成されるということが必要であるということでございます。3番目でございますが、製品は企業の顔でございますので、環境適合製品を強化することが企業の環境ブランド力の向上につながるということでございます。4番目は、日本の3Rの取り組みは世界最先端でございますので、この取り組みを世界に発信することが企業のグローバルな展開に不可欠であるということでございます。
  次に6ページ目でございます。製品の環境対策には、サプライチェーンでの環境適合設計、Design for Environment、略しましてDfEと言っておりますけれども、DfE情報の共有がなされまして、ライフサイクルでの製品の環境影響を可能な限り低減させていくことが必要ということでございます。
  サプライチェーンの各ステージでのそれぞれの企業は、企業経営の製品に環境対策を組み込むことが、資源生産性の向上、企業ブランド力の向上という効果につながるところでございます。
  次に7ページでございますが、これまでも製品の材料からつくり込み、廃棄までのライフサイクルを考慮しつつ、3Rの対策が考えられておりますけれども、さらにこれからは「ゆりかごからゆりかご」、すなわちライフサイクルのループ全体で考えて、天然資源投入量や環境負荷を最少にしていく新たな3R対策の視点が必要でございます。
  8ページ目でございますけれども、ここから3ページは日本の3Rの取り組みの先進的事例紹介でございます。このページは家電品の再生プラスチックの自己循環の事例でございます。製品メーカー、リサイクラー、素材メーカーの連携によりまして、家電品から回収されました再生プラスチックを再び家電品に利用するという、世界的にも最先端の取り組みの事例でございます。
  次に9ページでございますけれども、事務機器の先進的な取り組み事例を示してございます。このページの左側の事例は、マテリアルフローコスト会計手法を活用いたしました、資源投入量削減の例でございます。廃棄物の発生量を廃棄物ごとにコストの形であらわします環境管理会計の手法でございます。例えばカメラ用の切削クズを金額換算いたしまして、サプライチェーンでのステージを考えながら、環境負荷の低減とコストダウンを進めた事例でございます。レンズの切削クズ、これをセットメーカーのところで出すのがよいのか、あるいはサプライチェーンの中流の部品メーカーのところで出すのがよいのかという観点をコスト面から評価しつつ取り組んだという事例でございます。
  このページの右側は、ライフサイクルの環境負荷削減対策の事例でございます。ライフサイクルアセスメントのツールを活用してサプライチェーン全体でのCO2発生量と廃棄物発生量を抑制しながら、環境負荷の統合的な把握結果を製品設計に反映させております例でございます。
  10ページ目でございますが、自動車の取り組みの事例でございます。サプライチェーン全体でのCO2発生量と廃棄物発生量を抑制するために、自動車部品の製造工程におけますCO2や廃棄物の発生量等の環境負荷を把握いたしまして、この把握結果を環境負荷の削減目標に照らして反映させるという設計手法を導入した例でございます。
  これらの自動車、家電品、事務機器などに見られます事例は、いずれもものづくりの現場で実際に行われているというわけですので、日本の製造業におけます世界的な先進事例として胸を張れるものではないかというふうに考えております。
  次に11ページでございますけれども、製品の環境規制のグローバリゼーションが進展しております。まさにグローバルなサプライチェーンの環境規制が、特にアジア地域では急速に拡大しつつあるというのが現状でございます。欧州、米国、韓国、中国におきましても、いろいろな製品規制が進んでいるところでございますが、産業界におきましては法規制内容が各国で異なることから、環境に適合する製品をグローバルに流通させる共通ルールを国際標準に求めておりまして、法規制と規格のバランスによりまして、グローバルなサプライチェーンに対応していくことが大変重要ということでございます。
  次に12ページでございますが、環境適合設計、DfEの国際標準規格への取り組みを示してございます。電気、電子製品の環境配慮設計の国際標準化活動におきましては、日本が主導的立場を発揮中でございます。特にサプライチェーン全体で環境負荷を最小化していくという手法は、資源利用効率の面でも大変効果的であるということでございます。
  IEC、これは電気電子業界の国際規格を決める場でございますが、TC-111、ここは電気電子業界の国際規格ということを決めておりますけれども、ここの議長国を日本が務めてございます。それから環境配慮設計ワーキンググループ、コンビナー、これも議長を示しておりますけれども、ここも日本が務めております。日本の進んだ取り組みを国際標準化、すなわちグローバル情報発信していくということに対しまして、まさに日本が貢献中ということでございます。
  次に13ページでございますが、ヨーロッパにおきましては2003年にIntegrate Product Policyが発表されておりまして、ライフサイクルシンキングを提唱しております。そして2005年にはEuP、Energy using Productという指令を官報に告示してございます。この指令は、電気電子製品へのライフサイクル全般を通じての環境配慮設計を義務づけるものでございます。日本はかなり先進的なライフサイクルシンキングの考え方を既に実践しているわけでございますので、このような方針の動きに対しましても、日本の取り組みを世界に発信していくという動きを、さらに継続、強化していくことが重要であるというふうに考えております。
  ページをめくっていただきまして、14ページでございますが、環境適合製品の市場拡大の必要性を書かせていただきました。DfE製品の拡大には、消費者に適切でわかりやすい情報を提供いたしまして、意識向上と新しい価値観の共有を図ることが大変重要でございます。これまでにもご説明いたしましたように、環境負荷削減をライフサイクルシンキングで評価する取り組み、これは日本が世界を主導しているわけでございますので、先進企業の事例に学びつつ、この動きを業界全体に広げて底上げを図っていくべきでございます。
  このページの中ほどに、環境ラベルによります環境価値の共有化の事例を示してございます。それから、一番下の2行でございますけれども、サプライチェーンを通じた環境情報の共有、あるいは企業が、どれだけそのようなことに取り組んでいるかとか、というような取り組みの度合いを評価する指標の開発、またそれを国際標準化していくといったことが必要と考えております。
  次の15ページ目でございますけれども、例えばライフサイクルシンキングの環境負荷を開示いたしますエコリーフ環境ラベル、これが堅実に増加しております、という事例を示してございます。
  その次の16ページでございますけれども、ライフサイクルシンキングの環境ラベルを取得して公開しております企業名を示してございます。
  最後のページになりますが、まとめを書かせていただきました。ライフサイクルシンキングが徹底された企業活動の展開、例えばサプライチェーンを通じた企業の連携によりまして、資源投入の抑制、資源の利用効率を高める高度なリサイクルを推進していくことが重要でございます。また、各国の違いを踏まえつつ、我が国の先進的な取り組みを世界に発信することで、3Rの取組環境の共通化を推進いたしまして、規格策定を戦略的に活用していくということが重要でございます。
  また、「ゆりかごからゆりかご」という考え方にに基づきライフサイクルシンキングのループ全体を考えますと、新たな3Rの推進に向けまして、企業、消費者、市場の連携を強化するための仕組みづくりが重要でございます。
  以上で発表を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

○鈴木部会長 ありがとうございました。
  それでは、ただいまのご説明に関しまして、ご質問がおありの方は札を立てていただければと思います。お二方でよろしいでしょうか。
  それでは、須藤委員。

○須藤保委員 大変貴重なお話を伺いまして、ありがとうございました。1つは、環境配慮設計をなされる中で、当然温室効果ガスの削減というか、最小限にする努力をされていると思うんですが、その辺のことについてもう一回お伺いしたいと思います。
  それから2つ目は、大変マテリアルフローで、例えば水が入るようなことは当然あると思うのですが、それも3Rの中に取り込んでいるのでしょうか。以上2点お伺いします。

○鈴木部会長 後でまとめてお答えいただければと思います。一回りご質問をいただいてから。
  それでは杉山委員。

○杉山委員 どうもありがとうございました。2点、お教えいただきたいと思います。3Rの先進事例を3つご紹介いただいたのですが、現段階で、これによるCO2の削減の量的な把握が可能なのかどうなのかという問題。それからもう1点は、このような先進事例を海外から引き合いがあった場合に、積極的に公開できるのか、あるいは企業の問題として公開できないのか。この2点をお教えいただければと思います。

○鈴木部会長 あとお二方、札が立っておりますので、それでは、平野委員、中村委員、お願いいたします。

○平野委員 私も2つ質問がありまして、1点目は今も杉山委員からご質問のあった、これをCO2の削減とどこまで結びつけられるのか。3Rへの取り組みというのは、もともと廃棄物の問題から出ているわけですけれども、環境立国戦略ということになると、やはり1つ大きな柱はCO2の削減、温暖化問題に対する国際的な協力の枠組みをどうつくるかということになってくると、この3Rについても確かに日本独自の取り組みである、これは大いにこれからも我々は対外的に主張していきたいものではあるけれども、温暖化とのリンクというものをもう少しはっきり打ち出すことができないのかというのが1点ですね。
  それからもう1点は、一番上とも関係があるのですけれども、これも戦略を我が国として打ち出す場合に、3Rに取り組んでおられるお立場から、我が国が欧州あるいはアメリカ、あるいはアジアの国々に対して、何を戦略として訴えるべきというふうにお考えか。この2点でございます。

○中村委員 マテリアルフローの事例が出ておりますが、マテリアルフローを考えていくときには、それぞれの部分でCO2がどのくらい排出量があるのか、それらが合計してどうなるのかということを考える必要があると思いますが、それを私たちも、今そういうことをメーカーの方にいろいろお願いしようと調査研究もしているところなのですが、それがうまく行けば、CO2がそれぞれ、どこにどのくらいむだな形になっているかということもわかってくるだろうというふうに思うのですが、それがまたできてくると、今度は結果としてそれぞれの製品の中に、それが貼付される。ラベリングという形で貼付されていって、それが公表されていくことにつながると思いますが、その辺のこれからの考え方をお聞かせいただきたいと思います。

○鈴木部会長 それでは横山委員、お願いいたします。

○横山産業環境管理協会環境管理部門長 多くのご質問がマテリアルフローとの関係、それからライフサイクルとの関係で、このリサイクルということを評価するときにCO2との削減とのリンクが可能かということでございますが、これはもちろん可能でございます。ただ、可能ではございますが、計算をしていくときの基準が、いろいろな条件が各企業、あるいは各地域、各国で異なっておりますので、自分がどれだけ努力をしているかということの計算は可能でございますが、一概にその数値を国と国で比較するということは、若干の課題が残っているというところでございます。
  そして、このような技術、ライフサイクルで考えていく、それからサプライチェーンの間で情報を共有していくというようなことは、もちろん海外に対して公開もできますし、海外の企業を指導していくということも可能でございます。ただ、そのためにも国際標準といいますか、国際的な整合性という中での考え方をまとめまして、日本の考え方が、すばらしい考え方を持っておりますので、これが国際的にも先進的な考え方である。これを基準にして、このような考え方で、世界でレベルをそろえましてやっていこうというような国際標準の考えが重要になってくるというふうに考えております。
  それから、戦略としてどういった方向を目指すかというご質問がございましたが、これは今申し上げました国際整合性、国際標準への取り組みということをさらに情報発信していくということが戦略になろうかと思います。海外の、例えばヨーロッパの方でいろいろな考え方が出てきて、それに追随していくということではなくて、この産業界の進んだ取り組みを逆に世界へ発信していくということが戦略になろうかと思います。
  それから、廃棄物との関係ですけれども、もともと廃棄物が少なくなるようにということで、この10ページの自動車の例に見られますように、全体のフローを考えまして、適切に削減していくということでございますので、そのときにCO2の発生量がどうなっているのかということをあわせて把握していくという技術は、やはり日本の方が世界に先んじるというふうに考えております。ただ、先進的な大手企業が大変進んでいるということは言えますので、この方の産業界の底上げという課題は残っているかなというふうに考えております。
  以上で大体お答えしていますでしょうか。

○鈴木部会長 あと、須藤委員から水の問題は。

○横山産業環境管理協会環境管理部門長 水の問題は、現在のところ、現在の評価には余りはいっておりませんけれども、エネルギー全体として水を動かすためのエネルギーの計算とか、そういうことは組み込んでおります。

○鈴木部会長 これは、ライフサイクルアセスメントするときのインパクトは、大体CO2の発生量で考えておられるのですか。

○横山産業環境管理協会環境管理部門長 はい。現在はCO2の発生量が大変多いということで、エネルギーの視点から見ております。ほかにも、例えば有害なガスとか、そういった観点からも評価は可能でございます。

○鈴木部会長 よろしいでしょうか。
  それでは、どうもありがとうございました。
  では、続きまして、石谷慶応大学政策メディア研究科教授に、資料2をもとにしまして、ご説明をお願いいたします。

○石谷教授 慶応の石谷でございます。本日は当委員会で地球環境問題を討議されるということで、特にその対応について意見を述べることと理解しております。この件に関しましては、産構審の関連委員会などで、その課題や対応についての議論に加わっておりますが、特に長期的な温暖化対策の考え方については、産構審の環境部会地球環境小委員会将来枠組み専門委員会等で3年ほど前に、COP10に備えてかなり突っ込んだ議論をいたしました。その際に、いわゆるポスト京都の対応とか戦略などにつきまして、多面的に考える機会があり、そのあたりの議論を思い出しながら、その対応法策について私見を述べさせていただきます。
  内容につきまして、こういった議論は本来結論ありきではなく、現状を客観的、定量的に把握して、各種の対応可能性とその結果を論理的に推測し、十分な知見の上で、自己の政策なり対外方針に入ることが基本であるかと思います。将来枠組み専門委員会でも、事実関係から議論して客観的な状況把握、それに基づいた議論を行いましたが、時間がございませんので、本日は結論的な要点のみを説明させていただきます。そのバックデータはその資料、報告書に詳細に載っていますので、ご興味があればごらんいただきたいと思います。したがって、資料が大変字ばかり多くなってしまったので恐縮ですけれども、内容に関しましては、地球環境問題にかかわる課題、京都議定書から今後の将来枠組みにかけての課題と方向などについて、意見を述べさせていただきたいと思います。
  次のページをごらんいただきまして、最初のスライド3には、地球環境に関する最近の議論を要約しております。最近は気候変動に関するモデリング、モニタリングなども進んで、そのメカニズムの解明も進展し、温暖化の進行に関する懸念が具体化したこと、長期的に思い切ったCO2排出削減が不可欠であるという議論が高まったことが特徴的だと思います。具体的数値は、実現可能性も含めて議論が多いと思いますが、長期的、安定な気候を維持するというFCCCの目的達成には、いずれにしろ、世界的規模の極めて厳しいCO2排出削減が不可避というコンセンサスは得られつつあると言えると思います。その反面で、実際に削減できるかどうかというと、これは駆け引きの最中で、現実的なロールバックはまだ見えていないということではないかと思います。
  削減目標が厳しい反面で、時間的には今後30年から50年ぐらい後が重要と言われ、そのころまでに抜本的対策とか行動が必要ですが、特に長期的な革新的技術が極めて重要であって、必要なのは、今何ができて何が効果的かということを明らかにすることだと思います。
  まず、スライドの4で京都議定書の意義を振り返ってみますと、先進国に限定はされましたが、初めての国際的規制に乗り出したという点が最大の意義かと理解しております。ただし、重要なのは今後、途上国が追随することが必要不可欠な点で、京都はその先駆けとして、まず先進国から始めることに意義があったと思っています。具体的に行動に移ることにより、各種の手順や課題を明確にするという試行錯誤的な経験を積むという意味でも、貴重な第一歩と位置づけられております。この経験をもとに、次の本格的削減ステップに進むのがその意図であり、言わば温暖化防止の全世界的行動のPDCAサイクルに入ろうとしているところで、現在PDまで来たといえます。今後の成否は、現状をどう評価して、どう実効的な形に改善できるかにかかっておりまして、この話はそのCAの段階の資料と考えていただきたいと思います。
  次のスライド5には、そこの課題を少し並べて書いておきました。当然ながら、当初から予想されたことも含めて、多くの課題が明らかになってきたわけですが、根本的な問題は、今後、途上国からの排出が過半を占め、途上国の参加が不可欠であるのに対して、アメリカの不参加と途上国の削減義務免除が悪循環を形成している点にあるかと思います。また、現在の枠組みは新たな参加のインセンティブに欠けること、さらに途上国からの排出を実質削減するということで工夫された京都メカニズムは、途上国に多大なメリットを与えたために、当然のことながら新たな削減義務を背負う枠組みに参加することなく、現状延長という方向が強まっているということに問題があるかと思います。
  この結果、本来の意図であった、まず先進国が始めて途上国が追随するという構図は崩れつつある。特に途上国におけるキャップなきクレジットの発生とか、上限なきベースラインといった現象は、今後の世界規模のCO2削減に対して本質的な課題というふうに考えられております。
  次の参考図は、今後、いかに途上国からのCO2排出が増え、その削減が重要かということをあらわした図です。
  次にスライド7ですが、多くの課題が顕在化したこと自体にも、京都議定書を始めたという意義があり、これを修正するのが今後重要なプロセスであるかと思います。個々の点で、まず問題になるのが数値目標ですが、これは非常にわかりやすい反面で、ホットエアなどの矛盾、インセンティブが非常に働きにくく、新たな参加を誘えない、あるいは相対的削減比率でコミットしているということから、物理的因果関係で定まる排出原単位など、絶対的な効率としては大きな格差が残っていること、また短期的目標を決めるために費用効果が低下するなど、いろいろな問題が指摘されております。しかし、先ほど申し上げたように根本的な問題は、本来世界全体で削減すべきCO2排出を一部諸国だけがキャップを持ち、それも現状ベースからの削減率といった基準で政治的に決めたことにあって、炭素リークなど本来の目標を喪失する可能性が残ることにあるかと思います。
  世界的な総量の削減をやろうとすると、これは国別割り当てが最大の課題になり、公平な目標設定が必要になるわけですが、各国の利害対立でコンセンサスが容易に得られず、時間を空費するおそれもある。最後は政治的決定をするにしても、まず論理的な分析と、そこから得られる知見を共有して議論する必要があるかと感じております。いずれにしろ、時間がかかるので、今コンセンサスが得られて、現実的、実効的な中短期的対応を直ちにとることが重要ではないかと思います。
  この次のスライドは、京都メカニズムについて同じような意義と課題を書いてありますが、時間がないので、省略させていただきます。
  これから、こういう課題に対してどう対応すべきかを幾つか示しておりますが、繰り返し申し上げているように、FCCCの目的、意義を考えると、主要排出国の参加は不可欠で、それなくしては意味がない。現状を考えますと、FCCCから外れた直接交渉も考えないと成り立たない。例えば、アメリカとか途上国が入り込まないというところが非常に大きな問題かと思います。また、参加することにインセンティブを与えるために、それがメリットで、しかも実効的に削減する方向に向かう枠組みを工夫する必要があります。他方でキャップをかぶせるならば、公平かつ全体的な削減が可能な枠組みが必要である。
  それから、これは今の議論からちょっと外れますが、今後は適応策とか被害の救済など、さらに問題が複雑になり、また排出国の責任が問われることになると思われますので、単なる削減の意味でなく、損害補償といったような厄介な課題が沸いてくることも念頭に置いておく必要があるかと思います。
  スライドの10ですが、より具体的にインセンティブを与え得る実効的な枠組みとして、以下の項目が重要と考えています。まず、中短期的には途上国が最も望む産業を含む省エネの推進、技術移転が明らかに即効的、実効的であること。経済的リターンも多く、他の環境問題の解決とか、資源確保にも効果的で、抵抗の少ない方法かと言われます。これはまた、国際的に整合した総量規制、そのもとでの経済的手段による資源コストの最適化など、経済的手法を用いた理想的な枠組みのもとで採用される最終的な手段を直接志向するものであって、非常にわかりやすいということです。これは結局、国際的な省エネ技術トップランナー方式に至るものと考えられます。他方で、長期的には抜本的な削減技術の研究開発が不可欠であり、実効性のある技術開発を推進するインセンティブも必要となってまいります。
  次の2つの図は、そのバックデータであって、対GDPエネルギー消費原単位を見ると、日本が他国と比較して極めて低い水準にあり、主要先進国の中でも効率的にエネルギーを使用している状態をあらわしています。それから、その下の図は説明にあるとおりですが、途上国の省エネが進めば、いかに効果があるかを数量的に示したものです。
  次にスライドの13番目を見ていただきたいのですが、これは今の話を図示したものです。いわゆる茅方程式と呼ばれているもので、この中でどこを詰めればCO2が削減出来るかを示しますが、この第2項をまず攻めていくのが、物理的にも技術的にも非常に効果的だということを示しております。
  もう一つ、スライドの14ですが、現在セクターアプローチというのが注目を浴びております。これはまさにCO2排出産業ごとに、国境を越えてトップランナー技術を普及、推進しようというもので、国別の境界条件を超越して同業種で評価しやすく、また技術移転の可能な産業ごとに最適化を図ろうというものです。折り合いのつかない国別キャップを超越して、実効的削減を図ろうというもので、政治的障害も少なく、実効性が高いという意味で注目に値します。具体的な手順、評価手段などについては、日本でのサミットに備えて現在IEAで作業中でして、その結果が注目されるところです。
  最後に今後の枠組みの議論について、まとめてありますが、自然の成り行きとして、FCCCの交渉上は、京都の枠組みを前提に進むという主張が強まることになるかと思います。特に、現在の枠組みで利益の多い途上国に、これを変える理由は見当たりません。これを変革するためには、産構審でも議論しましたし、この場で今お話ししたような従来の対応方向に近いAPPなどが重要な代替的な枠組みとか体制というふうに思われます。ただ、これにもいろいろ問題があります。こういった可能性も残せるように、国内の十分な議論とコンセンサス、さらに一致したバックアップが不可欠というふうに思っております。
  16番目のスライドですけれども、ここで長期的に、本格的にCO2を削減しようとすると、どういったことが論点になるかをまとめてございます。最もはっきりしているのは、世界全体の許容可能量を決めて、適切な国別割り当てを行うというのが本来のあるべき姿であって、削減そのものが目的となることから、実行されれば確実に減るという保証があります。ただ、現実には相当な反発があって、経済性に任せるという考えもありますが、この場合には経済的格差を認めることになるので、現実的ではあるが途上国の強烈な反発が予想されます。あるいはCO2排出を公共財的な財産として人口比などで配分するという考えもありますが、この場合には経済的柔軟性が不可欠になります。あるいはそのミックスとか、現状からの移行過程を認めるなど、多様な概念がありますが、どれもコンセンサスを得るのは容易ではないと思われます。
  次に経済的手段で行うという考えもありますが、今申し上げたような問題がある。さらに経済的手段は外部性の内生化という理屈になりますが、この場合には損害補償の問題と切り離せなくなってくる。今後、温暖化影響の被害が出てくれば、その配分も絡んで極めて政治的、論理的に困難な議論が必要となってくるかと思います。
  最後に、省エネ技術といったトップランナー技術の普及は効率的ではありますが、長期的な解決には技術改革が不可欠であり、これだけで完全に解決できるかどうかは疑問が残ります。いずれにしろ、これらの手段の可能性とか課題など、状況に応じて検討、把握し、世界的に矛盾のない枠組みをつくらないと、最初の目的を達成できない。その間に、即可能な短期的、即効的な手段を導入すべきかというふうに考えております。
  以上、まとまりございませんが、最初に申し上げた地球温暖化の今後の対応について、私見を述べさせていただきました。どうもありがとうございました。

○鈴木部会長 ありがとうございました。それでは、ただ今のご説明に関しまして、ご意見、ご質問ございましたらお願いします。それでは、こちらから参りましょうか、大久保委員。

○大久保委員 どうも、貴重なご報告ありがとうございました。先生の世界的により厳しいCO2削減の枠組みが必要であるという認識、大変賛同いたします。
  その上で2点、質問と確認をお願いしたいと思うのですけれども、第1点目は、先生が世界的な削減の枠組みとおっしゃる場合の具体的な中身なのですけれども、途上国とアメリカというのを同列に論じるという意味でいらっしゃるのか。そうではないと思うのですけれども、それとも、共通だが差異ある責任ということを前提として、それぞれにその責任の度合いに応じて、削減の取り組みを厳格にしていくべきであるという意味なのかをご確認したいと思います。恐らく後者だと思うのですけれども、もし前者だといたしますと、気候変動枠組条約の前提の原則をひっくり返すところから始めなければならなくなってしまいますので、それですと大変後ろ向きというふうな誤解を受けかねませんので、確認だけさせていただければと存じます。
  もう1点が、数値目標の設定と積極的アプローチとの関係なのですけれども、先生がご指摘になっている数値目標の実効性が低いのではないかという部分で、例えば達成確保のための目標数値は控え目となるといったような論拠というのは、これはある意味、論理的にはセクター別エネルギー効率の場合にも当てはまるようにも思われるのですけれども、このどちらかが優位というふうに位置づけていらっしゃるのかどうかという点を確認させていただきたいと思います。
  私はむしろ、どちらかというとセクター別アプローチというのは2つの機能があって、1つは数値目標を決める際の基準として考慮されるべきものであり、またもう1つは、数値目標を達成するための手段として、1つの指標として重要な役割を果たすというふうに位置づけております。先生ご自身も、大企業の寡占的な業界の場合には、このセクターアプローチは有効に働くということで、特にこれのみですべてが解決するというご認識では、もともとないようにお伺いしたのですけれども、その点、確認させていただければと存じます。よろしくお願いいたします。

○小池委員 これからの課題の対応のところで、2度ほど、これから温暖化が進んだときに、発展途上国などで被害があったときに、被害の救済の問題が出てくるということをおっしゃいましたけれども、これは具体的に、実際に今そういうような可能性が、この先あり得るのかどうか、これはどこまでそれをやるべきなのか、それとも、そういうことは本当にあり得るのかということも含めてコメントいただきたいと思います。

○須藤委員 ありがとうございます。先生が、省エネ技術を途上国であれ先進国であれ移転をしていくと、将来の枠組みとしてはそれが非常に重要だということはよくわかりましたし、私も多分そう思っておりますが、先生がその問題についてどういう具体的な方策をお考えなのか、もし二、三あればお教えいただきたいと思います。
  2点目は、GDP当たりの、これはよく使われるグラフなのですが、日本は結局、大変省エネが進んでいるということになるのだろうと思うのですけれども、国によって大変事情も違いますし、農業国も大変多いわけで、我が国は工業国といった方がよろしいですよね。そういう中で、要するに省エネの、これは我が国が進んでいるということを言うのはいいのですが、国際的にどういうふうにエネルギー効率を示した方がよろしいのでしょうか。2点、お教えいただきたいと思います。

○関澤委員 意見でございます。短期的には、既に存在する技術の世界的普及が即効的かつ効果も大きいということとと、セクター別アプローチの有効性に触れておられます。APPの有効性にも言及されておられますが、全く同感でございます。今後、技術を軸に、アメリカも豪州も、そして途上国も参加する枠組みづくりをするということが、この問題の最優先課題だと、このように思います。EUが20%削減目標をたてるから日本もどうだ、何%にしなければならないというような議論は、そもそも世界のCO2排出量の30%の京都議定書の枠組み内の議論でございますので、これは非常に小さな議論だろうと思います。アメリカ、中国、インドを巻き込まない限り、この問題は解決しないということが非常に私は大事だろうと、このように思っています。
  そういった意味で、冒頭、今日の会議の始めにご紹介がありましたが、ポスト京都に向けました鉄鋼連盟の意見書を提出させていただいております。同時に、産業界が今どう考えているか、これは鉄鋼だけではいけませんので、経団連、同友会、電事連、日化協、これまで出された意見書をあわせてお出しいただいております。後ほどお目通しいただければと思います。
  鉄鋼業の主張を一言だけ申し上げますと、3ページ目に述べてございますが、世界が参加できる枠組みづくりに、日本がトップの技術力を生かして、セクター別アプローチを発揮して、イニシアチブを発揮していけと、こういうものでございます。キャップ・アンド・トレードは、公平かつ合理的なキャップの設定が困難であるという理由から、これには反対しております。後ほどごらんいただきたいと思います。
  以上であります。

○鈴木部会長 それでは、石谷先生、よろしいでしょうか。

○石谷教授 どうもありがとうございました。いろいろと厳しいご質問がありますので、ちょっと抜けるか、ピントがずれるかもしれませんが、まず最初に、世界的な削減が必要というのは、非常に長期にわたってサステナブルにしようと思えば、ここでも何回か議論されたと思いますが、例の570ppmとか、あるいは2度にしろ4度にしろ、とにかく温度上昇を止めようと思えば、これは今のままCO2を排出し続けるのはあり得ない話だと。そういった意味で、最後には絶対量としての削減が必要という結論に行くということですが、そこに至るのがいつかということは、やはり実現できる範囲でなければできないというしかないかと思います。ただ、それを削減しよう思えば、やはりこれは排出国が中心になって削減しなければいけない。これは意見でも何でもなくて、客観的な事実というふうに理解しております。
  ただ、そのやり方についてはいろいろ意見がございまして、途上国と米国を分けるかどうかという話は、余り私にとっては意味がなく、とにかく下げられるところが下げなければいけない。
  先ほどちょっとスキップしましたけれども、スライドで言いますと13番目ですが、CO2削減基準の利害得失というところの式をごらんいただきたいのですが、この排出量Cというものは、エネルギー当たりの排出量。これはエネルギー種別によりますので、技術が最も効いてくる。第2項はGNP当たりのエネルギー、いわゆるエネルギー効率を広く書いたものの逆数ですが、そこは今、技術格差が非常に大きい。それから第3項は、GDPの1人当たりのレベルで、これも非常に格差が大きいわけです。アメリカの場合には、これが非常に大きいので削減は厳しい上に下げたくない。途上は、これが非常に低いから上げたいということで、やはり抑えられたくない。そういった意味で両方とも第2項、技術的な解決であれば受け入れるが、1人当たりのGNPを抑えたり縮めろという話は、なかなか現実性がない。これをFCCCだけの枠内で議論しようと思うと、多分話は解決しない。だから、できるところからやらなければいけないと考えておりまして、これはアメリカだからいいとか、途上国だからいけないとか、そういう議論とは全く無縁のものです。
  あと、セクター別についてのお話ですが、セクター別に考えるというのは、基準もはっきりして比較しやすいわけです。同業の産業の小売りうっと言うのは,気候の影響とか地域の影響とかはありますが、一般に製造業は向上の中で人為的な行動となるので、技術的にどちらが進んでいて、どちらが劣っているか、それははっきりしています。その中で劣っているものを改善するのは受け入れられやすいということです.資料のどこかに書いてありますが、これも知的所有権の確保とか、だれが負担するかといった問題は、これから詰めなければいけない。ただ、だれにとっても、いわゆるウィンウィンに近いところで実現が容易であるというところから、ぜひ始めていただきたいということになるかと思います。ちょっとご質問と多少ずれているかもしれませんが、大体それでよろしいでしょうか。
  次に小池委員のご質問なのですけど、この被害という話はまだ切り出したくない話ですが、もともとCO2が外部不経済であるという意味は、結局その排出から被害が出てくるという話であって、当然被害を受けたと思う国は、何とかしてくれと言ってくる。そうすると炭素税であれ何であれ、それを排出しているすべての国が救済すべきであるという話に必然的になるであろう。この議論を余り積極的に始める気はないのですけれども、今議論しているのは10年、20年のスパンですから、必ずその問題は出てきて、例えば沈んだ島国をだれが救済するかという話になれば、こういった議論からはもう逃げようがないのではないかという、問題提起のつもりでございます。こちらから言い出せとか、そういうことではないので誤解ないようにしていただきたい。
  それから、須藤委員の省エネ技術の移転ですけれども、これは口で言うのは容易なのですが、非常に難しいかと思っています。このあたりは、今IEAあたりがその実効可能性とか、制度の枠組みについてかなり進めて、これは多分、来年のサミットめがけて日本も費用を負担しているのだと思います。この辺の結果を私も期待しておりますが、単純に効率の比較をするにしても、効率の定義の仕方次第で随分違ってまいりまして、日本の方がいいと思っていると他の国からいいデータも出てくる。そこは条件が全部違いますので、そういったことをIEAでは細かく詰めているのではないかと思いますので、最初に申し上げましたように期待しているのと一緒に、非常に関心を持っております。
  それから、グラフのところはご指摘どおりでして、これは例の合同委員会でも同じ意見が出ましたが、やはり気温とか、その他の条件次第で随分違ってまいりますが、やはり一つの指標ではあるわけでして、これは今申し上げた具体的な産業格差とか、そういう話になってくれば、細かい要件を考えた上で、最適な技術を持っていくというような形に進められるのではないかと思います。
  最後に、関澤委員のお話は、コメントだと思いますので特によろしいでしょうか。

○鈴木部会長 ちょっと私からもお伺いしたいのですが、この茅先生の式はよく使われる式なわけですが、最終的にP分のGとG分のEを分けることが、いろいろな意味で逆に問題を生んでいる面がないかなという気がするのですね。要するに、1人当たりの最終的にバランスを取らなければいけないのはP分のEであって、それをある意味では公平化したところで、その中でGをどうするかという話はあっても、何となくP分のGとG分のEを途上国と工業化されている国とで比べること自体が、ある意味では問題があるのではないか、そんな気がします。

○石谷教授 それはご指摘のとおりだと思います。もっと言えば、P分のCかもしれないのですけれどもね。そのときに、P分のGというのはもう現に厳然として存在して、G分のEも結構格差がある。ですから、G分のEは割合評価も定量化も簡単ですし、それから対応もできる。だけど、P分のGは、もうこれは気候変動の問題ではなくて、世界経済の問題ですので、そこのところで、できるところからやろうとすると、まずG分のEから格差を縮めていく。その次にP分のGをどうするか。これはいわば経済か基本的権利の問題ですから、ここで議論しても始まらないのですけれども、とにかくこの2つに分けたときに、どこでどの国が何を言うかというのは大体見当がつく。さっき申し上げたように、P分のGが低いところは上げなければいけないし、それから高いところは下げたくない。これはもうアメリカが典型だと思います。そうすると結果としては、経済格差はまだまだ残るが、G分のEは抵抗なく下げられるであろうから、今は全力を挙げてこれを下げる.しかも結構、効果は今のところある。ですから、まず短期、中期的にはここが重要だということを申し上げたわけです。

○鈴木部会長 もう一つ、セクター別のアプローチというのは、非常にやはりある意味では重要になってくると思うのですが、IEAで検討されているということなのですけれど、具体的にセクター別でいろいろ比較をしていったときに、地球全体としての管理であり、あるいはそれを最終的には排出量を国ごとに管理していくというようなことになったときに、そことセクター別の比較、そしてまたセクターごとの、セクター間の問題もありますね。それをどういうふうに調整しようとされているのか。今後の問題があると思いますが、この辺は。

○石谷教授 私は、これは余りコミットしていませんが、スライド14にあるように、2つ大きな意義がありまして、1つは、国別でやれば国の利害に縛られる。しかしセクター別に考えると、国境を越えて同種の技術が比較できる。しかも、最近の大企業は国際的ですから、日本だけではなく海外にも根を張っているというか、もう国籍がはっきりしないようなものもあるので、そこが主体となった方が国境を越えての技術移転は実現容易である、あるいは情報も伝わりやすいということが1点。
  それから2番目は、非常に重要なところなのですが、今おっしゃったように、今の経済体制現在では殆どの産業がCO2排出の価格を払っていないわけですね、。ですから、CO2排出を内生化すれば、産業によっては同等な負担をしなければならない、乱暴な言い方をすればなくなった方がいいのがあるかもしれない。しかし経済の中にCO2排出の費用が順次入っていって、長い期間の後に初めて適正な負担が最終財に転嫁されてくるものであって、短期的にはそういうことはできない。まして現在のように国別にCO2規制基準が違ったら、それはめちゃくちゃな話になる。そういう意味で、短期的には同一セクター内だけで最適化を図っていくことが重要ですが、長期的には、それが徐々に内生化して、例えば同じ材料でもCO2排出が低い材料で代替が効くなら、だんだんCO2の低い材料に移っていけばいい。だけど、それを今直ちに、鉄はだめだと言っても始まらないわけです。ですから、そういう意味で、セクター別というのは短期的には非常に効果があるし、混乱を招かないというあたりも現実的ではないかと思います。
  長期的には、やはり産業を超えて最適化を図らなければならないのですけど、多分、今それを言っても現実的ではないと思います。

○鈴木部会長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。
  それでは、どうもありがとうございました。短い時間で本当に申しわけありませんでした。
  続きまして、鮎川WWFジャパン気候変動プログラムのグループ長にお願いいたします。資料3にいきまして「地球温暖化を危険な域に進ませないために日本の果たすべき役割」、よろしくお願いいたします。

○鮎川WWFジャパン気候変動プログラムグループ長 ありがとうございます。WWF世界自然保護基金ジャパンの鮎川と申します。今日は発言の機会をいただきまして、ありがとうございました。私は日本の環境立国宣言というか、戦略について何を入れていただきたいかということを中心に、気候変動の観点からお話しさせていただきたいと思います。
  次、お願いします。WWFとは何か。世界最大の自然保護団体でして、会員数が500万人、そして世界的ネットワークがあり、約100カ国で活動展開しております。結果を重んじる、科学的根拠に基づく行動を行っており、WWFジャパンはその各国委員会の1つでして、3万5,000人のサポーターや企業から支えられております。
  次、お願いします。プログラムが6つありまして、最初は、パンダのマークでご存じのように、種の保存というところから始まったんですけれども、種の保存をしていくうちに地球環境が非常に悪化したために、地球環境問題を解決しないと種の保存もできないというところから、名前を世界自然保護基金と改めまして、そして地球環境問題に取り組んでおります。その1つが気候変動プログラムでして、現在、南北アメリカ、ヨーロッパ、ロシア、中国、インド、アジア、太平洋などを含めて、30カ国ぐらいから50名ほどのメンバーで気候変動チームを構成しております。この気候変動問題に世界規模でかかわっているという状況です。
  目標としては、地球の平均気温の上昇を産業革命前から比べて2度未満に抑えて、危険な気候変動を防止するという点にあります。活動内容としては、一般向けに温暖化の影響などを調べたり、そして、対政府としては京都議定書交渉、そして国内政策への提言やロビー活動を行っています。あと対企業としてはクライメート・セイバーズ、企業との協定、そしてパワー・パイオニア、これは電力会社をターゲットにした協定なんですけれども、そういうようなこともやっております。
  次、お願いします。つい先日も発表されたIPCCの第4次評価報告なんですけれども、既に温暖化は起こっていて、それが人間活動によるものだということが断定されました。20世紀後半の北半球では、気温は過去1300年のうちで最も高温で、そして、最近の12年間のうち、96年以外の年は、1850年以降で最も暖かい12年だったということが言われました。
  過去100年に平均気温は0.74度上昇しました。これから2030年までに、10年あたりで0.2度気温が上昇するというふうに言われました。これは、例えば植物が適応できる範囲は、10年で0.05℃だというふうに言われていることを考えると、10年で0.2度の上昇というのがいかに高いかということがわかると思います。
  次、お願いします。既に0.74度の範囲で、ハリケーン・カトリーナであるとか、2003年のヨーロッパの熱波であるとか、日本でも2004年には台風が10個も上陸したとか、いろいろな異常気象が起きています。
  次、お願いします。北極では氷が溶けて、氷の上で狩りをするホッキョクグマが絶滅の危機にさらされています。
  次、お願いします。私たちは「温暖化の目撃者」というプロジェクトをやっておりまして、実際に既に被害に遭われている方々のお話を聞くということをやっています。これを2005年10月に日本でも開きまして、ヒマラヤのノルブ・シェルパさんをまず招きました。彼は、この20年間に多くの氷河が溶けて氷河湖ができていると。これが巨大化している。85年にはランモチェ氷河というのが決壊して、自分の家も流され、畑や牧場も流されてすべてを失ってしまった。つまり、ヒマラヤですから2,000メートルとか3,000メートルとかという高いところのくぼみに溶けた氷河の水がたまって、非常にもろい湖ができるわけなんですけれども、それが、例えば大雨が降ったことによって決壊して、大量の水が山の上から降ってくると、そういうような状況が現に起きているわけです。そういうことで、あちこちに氷河湖ができているので、そういう決壊が起こる可能性が高くなっていて、自分は起こらないようにと祈るしかないと言っておりました。
  次、お願いします。それが1つの氷河が溶けて、巨大な氷河湖ができている絵です。
  次、お願いします。それから、フィジーのペニーナ・モーゼさんもお呼びしました。そのとき彼女は、海面上昇によって魚の漁がしにくくなったことと、あと、雨が降らなくて飲み水が不足しているということを訴えました。水を貯めるタンクが各村に2個しかなくて足りない。もっとタンクが欲しいということを訴えました。こうしたことは神の試練だと思っていたけれども、人間によるものだということを知りました。人間が原因なら人間が解決できるのではないかと思うと、涙ながらに語りました。
  次、お願いします。これは昨年のCOP/MOP2、ナイロビで開かれた会議での新しい目撃者で、タンザニアのラジャブ・モハメド・ソセロさんのお話です。同じく海面上昇で、海岸線が200メートルも侵食されて、ホテルなどが崩壊されたとか、気温が上がって雨が降らなくて、水が不足している。また、河口の塩分が濃くなってしまって、魚がとれなくなり、また、穀物の生産が難しくなっていると。各国政府は、既に被害を受けている人たちに対して適応措置をしてほしいと訴えました。ですから、先ほどそういう事態があるのかというお話がありましたけれども、実際に既に被害があって、この適応に対する支援を先進国は求められています。
  先日、発表されたSternレビューでも、温暖化の対策のコストは、GDPの1%に過ぎないかもしれないけれども、温暖化の被害によるコストというのは、GDPの5から20%にまで及ぶだろうというようなことを発表されたわけです。
  次、お願いします。次は、つい最近発表されたワーキンググループIIの図なのですけれども、これはちょっと見にくくて申しわけないのですが、私たちは工業化前よりも2度未満というふうに言っているので、その場合は0.5加減するということで、1.5のところに赤い線を引いてみました。そうすると、それ以下だと余り影響はないけれども、それ以下でも、例えば生物多様性が30%ぐらい絶滅するというようなこととか、いろいろ起きているのですけれども、それを超えた右側の方に行くと、圧倒的にインパクトが水不足であるとか、食糧の生産が落ちるとか、沿岸域で非常に洪水の危険性があるとか、健康でも、マラリアなどの被害に遭ったり、熱波によって病気による人間の死亡が増えるということが、右側に行けば行くほど多いということがわかり、気温の上昇が多ければ多いほど被害が多いということになります。
  次、お願いします。これは2年前に、グレンイーグルス・サミットに向けて行われた、エクセターの会議で発表された資料でちょっと古いんですけれども、非常にわかりやすいので、あえて入れさせていただいたのですが、2度を超えると、急激に水不足人口とか、マラリアの危険性とか、飢えの危険性が増えていくということがわかります。そういう図です。
  次、お願いします。次はナイロビの会議で発表しました、温暖化の脅威にさらされている鳥類で、2度を超えると、ヨーロッパでは38%、オーストラリアでは72%の鳥類が絶滅するという報告です。
  次、お願いします。これからが重要なのですけれども、行動は今すぐとらなくてはならないという話です。というのも、今までの排出の分があるので、今すぐ排出を止めたとしても、今までの排出した分でまだ排出量というのは増大し続け、気温も上昇し続けるのです。ですから、その排出量のピークというのを、これから10年、15年の間に迎えるように、今すぐ行動をとって排出削減に向けないと、そのピークをこの15年ぐらいに迎えることができない。そのピークが先になればなるほど大幅に削減しなくてはいけないので、それが今、行動をとることが非常に重要だというグラフです。2005年にピークを迎えて徐々に減らしていくようにすれば、2015年までに現在の半分に排出量を減らすことができるということが言えます。
  次、お願いします。「環境立国」として日本に世界が期待していることですけれども、まず、気温上昇幅を「2℃」に抑えるということへの支持、これをぜひお願いしたいと思います。
  そして、長期目標として世界の排出量を2050年までに、1990年レベルから50%削減するということをはっきり明言してほしいと思います。現在の日本の政府の意見提出書では、現在の半分にする必要はあるとは言っているんですけれども、いつまでにとか、いつからとか、そういう年限が書いていないのですね。ですから、これをはっきり、90年レベルから50%を2050年までに達成するということを長期目標として掲げていただきたい。それが先進国である日本にとっては何%を意味するのか、その辺も示唆してほしい。その長期目標に向かって、バックキャスティングで、2030年にはどのぐらい、2020年にはどのぐらいかというような目標を掲げてほしいです。
  「京都議定書」の目標達成を確実にする政策導入をすることによって、2013年以降の将来枠組み交渉で、リーダーシップを発揮できるようにしてほしい。これももう1つ重要なことです。それには日本の得意とするエネルギーの効率利用、つまり省エネルギーですけれども、そういった今ある、もう日本が手にしている既存の技術の普及を目指すための仕組みをつくって、例えば省エネフロントランナーでは、2030年までに30%効率をよくするというのがありますけれども、これを義務化して「国内の省エネ目標」を数値化すると、そういうふうなことを政策として導入してほしい。そして、こういうような技術を中国、インドなどへ移転して、「クリーンな発展」を促して、グローバルな温室効果ガス排出削減に向けたリーダーシップをとるというようなことを、この環境立国の中で宣言していただきたいと思います。
  次、お願いします。ちなみに世界各国の中長期目標ですけれども、EUではつい最近、2020年までに90年レベルから20%削減というのを掲げました。イギリスは2003年の時点で、2050年までに60%削減と言っています。アメリカでも、非常に今年に入ってから動きがあわただしくなっておりまして、既に7つも新しい義務的な温室効果ガス排出抑制法案が提出されています。ほとんどはキャップ&トレード型の排出量取引提案、あるいはほかの政策措置とのポリシーミクスです。最大で、2050年までに80%削減を掲げている法案もあり、どの法案もそこに至るまでの目標値を何段階にも分けて、2030年までにはどうするとか、2020年までにはどうするとか、2040年以降は、毎年何%削減するとか、そういった具体的な目標を提示した法案になっています。そのうち3つの法案は、「2℃」の重要性に言及しています。そして、もっと重要なことは、これを産業界が支持しているという点が日本と大違いなんですけれども、産業界は義務的政策をむしろ政府に求めています。例えば、環境税であるとか排出量取引について、ぜひ政府にそれをやってほしいということを政策提言しております。
  次、お願いします。日本でも、2050年に1990年レベルから70%まで削減可能という報告書が、国立環境研究所の「低炭素社会に向けた脱温暖化2050プロジェクト」で発表されたところです。ここでは高効率機器の導入などによって、エネルギー需要を40から45%削減し、そして、供給側でも低炭素エネルギーの利用によって、これを達成できると。達成にかかる費用は、想定される2050年のGDPの1%ほどだということです。
  さっき言った、Stern報告のことをちょっと書きましたけれども、必要なのは、温暖化への国民の危機感の共有です。これが日本にはない。CO2排出の外部コストを内部化するような政策措置、つまり経済的手法ですけれども、そういう政策措置の導入が必要。これも日本にはありません。低炭素社会への合意が必要、これも日本には今ない状況にあります。
  次、お願いします。大規模排出者なんですけれども、これは私たちではなくて、気候ネットワークという別の環境NGOがやった調査によると、日本の排出量の60%は大口の大規模な事業所によるものであると。ですから、その他、中小企業とか家庭は、その他40%なわけです。ですから、この大規模排出者の削減が最も重要になっているわけです。
  次、お願いします。WWFとしては、こういう大規模排出者には、キャップ&トレード型排出量取引法が一番効果的な削減方法だということを3月5日に発表させていただきました。つまり、排出に上限を設けるので、確実な削減量が得られるということと、コストの安いところで削減できるということで、非常に柔軟性があるという制度です。要はCO2排出をコストにすることが重要なのです。
  次に、提案の中身が書いてありますけれども、これは飛ばします。カーボン市場をつくることの重要性にいきます。これは、短期的には京都議定書目標達成を国内削減を中心に行えるということと、長期的には大幅削減が必要となる2013年以降の取り組みに適応できるよう、日本の社会構造を変革させると。今のところの目達計画の議論を聞いていますと、目標達成できないところは、海外からのクレジットを買ってくることによって達成するということになっていますが、たとえ、それによって目標が達成できたとしても、その後の大幅削減が可能となる社会にはつながっていきません。なので、CO2排出にコストをつけることによって、社会全体にCO2削減へのインセンティブを与えるということと、あと今言ったような、アメリカでの排出量取引ができる、キャップ&トレードができる可能性と、そこがEU、ETSとリンクする可能性、そして、オーストラリアでも議論があって、そこともリンクする可能性とか、いろいろ考えると、今、グローバルなカーボン市場が萌芽しつつあるということに対して、日本は全く準備ができていない状況にある。つまり、その適応のために、ぜひこのカーボン市場をつくる必要があると思います。
  次、お願いします。現在「京都議定書目標達成計画」の見直しが合同部会で行われていますけれども、これは極めて不十分としか言いようがありません。先週だったか、「論点整理」が出たのですけれども、結局、日本国全体で排出が大幅に伸びているにもかかわらず、現行の目達計画の延長線上での追加対策しか議論されていません。今、言ったみたいに、大規模排出者からの削減量を担保する仕組みは全く議論されていない。自主行動計画だけで十分と言っているのですけれども、これでは不十分です。
  伸びている業務・運輸・家庭部門が重要だというふうになっていますが、そこの部門に対する削減のインセンティブを与える施策も議論されていません。
  既に委員の中からは、目標達成ができない可能性まで言及されていて、それでもいいじゃないかみたいな話も出ています。その議論は、国会で議論され批准された「京都議定書」自体への批判にも及んでいます。つまり、京都議定書が不平等だとか、不公平だとか、一部の国しかカバーしていないとか、いろいろな議論があるのですけれども、そのように京都議定書自体を批判する議論にいって、そして達成できない場合も視野に入れるべきだというような議論もされています。
  このような議論が大手を振ってまかり通っている日本は、私としてはとても悲しいし、国際的な期待を裏切っていると言えます。途上国の不信感をあおるだけですし、将来の参加を促す道にはつながらないと思います。
  京都議定書は、温暖化防止のために数値目標を掲げた初めての国際条約であるけれども、ほんの第一歩なのです。ですから、この第一歩を踏み出さなくてはいけないのです。これが重要なわけです。その京都議定書の先には、もっと大幅な削減が必要とされている中で、京都議定書の欠陥とか批判とかを云々している場合ではないのです。ですから、このような議論が本当に公に、大声で議論されているような状況では、日本は環境立国を語る資格はないと言わざるを得ないと思います。
  以上です。

○鈴木部会長 それでは、ご質問あるいはご意見をいただきたいと思いますが、ちょっと時間が大分オーバーしてしまいました。
  では、向こうから、中村委員から。

○中村委員 大変いいお話をありがとうございました。私もほとんど大賛成であります。
  それで17ページ、18ページあたりのところだけ、ちょっとお聞きしたいと思いますが、必要なのは国民の危機感の共有と経済的措置、その他、政策措置の導入、低炭素社会への合意などということで、できるだけ多くの国民の覚悟が必要だということだと思いますが、その次のページで大口排出者に対する削減のことに触れておりますが、私は一般の住環境部門での削減が非常に足りないということも考えております。これについての今の国の政策、あるいは規制、インセンティブ、その他が非常に足りないというふうに思っておりまして、その辺について、プラスのご意見があればお願いしたいと思います。

○鈴木部会長 関澤委員。

○関澤委員 15ページの2、3、4つ目あたりのところなんですが、長期目標の設定について、長期的に世界の排出量を半減するというのであれば、次期枠組みの中に、アメリカとか中国とかインド等の主要な排出国が参加することが不可欠だと思います。そのためには、やはり削減目標に関して、国別キャップでは参加国というのは増えないのではないかと思います。エネルギー効率目標を活用するなど、柔軟性を持った新しいやり方が必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  それから、17ページに国立環境研究所の話が出ておりますが、これについて前回の会合で多くの委員からも、私からも申し上げましたが、本当にこれはフィージビリティがあるのかという指摘がなされまして、そのとき話しされた方も、そうした指摘にこたえるためには、さらに2年の研究期間が必要だと言われていたと思います。これは単純に考えまして、世界一エネルギー効率が高い国が7割の排出削減を行うためには、大きな技術的なブレイクスルーと、世界のどの国よりも莫大なコストが必要だと思いますが、いかがでございましょうか。
  それから、18ページの大規模排出者というところで、ちょっと私は気になりますのは、各消費部門別に見ました時に、産業部門は、2005年まで懸命に取り組んで、大分削減してきたということから考えますと、2010年の目標値に対して、あとどれだけ削減し残しているかというと、産業部門は3,100万トン、業務・その他は6,900万トン、家庭は3,800万トンやる必要がありますので、産業部門ももちろん努力しなければなりませんが、業務・家庭部門の抜本的な排出削減が不可欠だと思いますが、いかがでございましょうか。とりあえず、ここまでお聞きしたい。

○鈴木部会長 須藤委員。

○須藤委員 ありがとうございます。京都議定書の、今の達成目標計画の議論が不十分であるということについては、私もその一員ではございますが、とにかく京都議定書は何としても達成したいという意気込みで当然やっておるつもりでございます。ぜひ、応援をしていただきたいと思います。
  そういうことを踏まえて、2つほど質問をさせていただきます。1つは、国民の危機感の共有が必要だということなのです。これは私も全く同感で、ほとんどないですよね、どうしたらいいか。つまり、活動をやっている立場でお教えいただきたい。
  それから2つ目は、琵琶湖へいらっしゃったことは当然あると思うのですが、気温のことは論じられるのですが、水温のことは余り論じられていないのですね。3月、寒かったですね。ほかの水も同じなのですが、琵琶湖が寒くなったので湖水の上部が冷えて、それで湖水が上下に循環したんですね。それまでは無酸素まではいかないのですが、酸素が非常に減っていたということもあって、非常に湖とか内海に大きな気温、特に冬の水温が上がって影響を受けていますので、ぜひ、気温とあわせて、たくさんのお仲間がいるでしょうから、水温の測定をぜひ、私どもやりますけども、ぜひ計測していただきたいと思います。

○鈴木部会長 茅委員。

○茅委員 長期の2度目標と、それから京都議定書の目標と、2つについて大変厳しい言い方で、それをおっしゃっていますが、それだけのことをおっしゃっていられるとすれば、WWFとして当然、それをどのように達成するかという議論を中でやっていらっしゃると思います。
  2℃の場合、環境研のプロジェクトの内容をリファーされましたが、ご自分で、何らかの形で実践可能性について検討されたのか。検討されたとしたならば、どうやってやると考えられたのか、教えていただきたい。
  それから、22ページの京都議定書のおっしゃることは、ある意味ではもっともですが、最大の問題点は、一般の消費者がどう行動するかということについて、国には政策手段がないということです。まさか一人一人にお巡りさんをつけるわけにはいかないわけですから。それに対してこれだけ厳しいことをおっしゃるならば、当然のことながら、国民がどのような形で行動するかについて、WWFとしてきちんとした考え方を持ち、それをアナウンスし、自分たちもやるという姿勢がなければおかしいと思いますが、ここの内容を見た限りは、それは全く私は読み取れない。その前に書いた文にも、具体的な京都議定書に対する対応の仕方が書いていない。これは私は少しおかしいのではないかと思いますが、これは私の読み違いでしょうか。

○鈴木部会長 石井委員。

○石井委員 16ページの世界各国の中長期目標に関して伺いたいのですけれども、アメリカのところで、今年に入って7つも新しく法案が提出されていると。で云々ある中で、最大で80%削減を掲げているとあります。確かに私の記憶でもそうだったと思いますし、60%から80%の削減を2050年までに達成すると書いてあったと思います。
  しかし、一方、2020年という区切りを考えてみますと、記憶だとほとんどの法案が±0%だったように思います。これはEUの2020年までに20%削減というのは、明らかに違うわけで、アメリカのこの法案においては、現在もしくは90年から2020年までの削減努力と、20年以降、50年までの削減努力で、何か極めて違う異質なものを考えているのではないかと考えざるを得ない。
  例えば、先ほど関澤委員がおっしゃられたような技術的なブレイクスルー、これを明らかに重大に考えているがゆえに、2020年から2050年までに突然80%削減が可能になるという数字を出しているのではないかと思うのですが、その辺についてご意見を伺いたいと思います。

○鈴木部会長 いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

○鮎川WWFジャパン気候変動プログラムグループ長 いろいろ質問いただきまして、ありがとうございます。
  まず、国民の危機感と国民の覚悟という点なんですけれども、私も住環境は非常に重要だと思っていて、これのインセンティブがないということが非常に問題だなと思っています。何度も言っていますけれども、CO2排出をコストにするということは、つまり国民が全部負担をするということを私は意味して言っています。ですから、やはり私たちの生活は、地球環境に負荷を与えているのだということで、その分、やはりそこにお金を払っていくというか、お金を払うというのも変な言い方ですけれども、削減のための費用をやはり払っていくということが必要なのではないかと。それをインセンティバイズするというか、それをやらせる気にするのは、例えば環境税であったりとか、そういう仕組みが必要だと思っています。
  ですから、規制も必要だと思っていますし、住環境に関しては、やはり省エネルギー型の建物でないと建築許可が下りないとか、何をもって省エネルギー型の家かというような、いろいろな技術がいろいろあると思いますけれど、そういうものを規制にするとか、断熱の基準とか、二重窓にしなくてはいけないとか、そういうようなことをもっと明確に政府として出していただきたい。そうすれば、今、次から次へと建っている新しいマンションとか、事務所ビルとか、そういうところが高断熱で省エネルギーの照明設備とか、そういうのが全部整っているような建物が建っていけば、これからの長い間、それが使われるわけですから、そこがすごく重要だと思います。そういう意味で、私は国民もそれを負担しなくてはいけない、環境コストを払っていかなくてはいけないと思っています。
  次の質問で、長期目標で、国別キャップでは、アメリカ、中国、インドは参加しないのではないかという質問に対してなのですけれども、アメリカはともかくとして、中国、インドなど途上国に関して、私たちは必ずしも今の京都議定書と同じ国別キャップを推薦しているわけではないです。その国の発展のレベルに応じて、例えば原単位目標であってもいいし、セクター別の目標であってもいいし、何らかの形でのコミットメントをそれぞれの国によってかかわると、そういう立場です。ですから、そういった国々に、国別キャップを先進国と同じようにかけるとは考えていません。アメリカはやはり先進国ですから、国別キャップをかぶるべきだというふうに思っています。もちろん、US、中国、インド、ブラジル、メキシコ、韓国とか、そういった国々が早いうちに国際的枠組みに入らなくてはいけないと思っておりまして、そういうことの必然性をG8のような首脳会議の場でメッセージとして、シグナルとして出すということが非常に重要ではないかなと思って、今年のG8、及び来年の日本のG8を見ていきたいというふうに思っています。
  それから、国立環境研究所の研究については、私も報告書を読んだだけなので、それほど深くかかわっているわけではなく、ただ、やはり私たちも電力部門に焦点を当てた、パワースイッチキャンペーンというのをやったときに、各国で、どのようにしたら電力部門からの削減ができるかというシナリオをつくったのですけれども、それぞれ需要をまず減らすということで、そして、減らされた需要をバイオマスとか、太陽エネルギーとか、そういった低炭素の技術で供給していくと。そういうふうにして電力部門の削減を行うというシナリオが、どの国からも出てきたのですけれども、そういうような方法でできるのではないかと、読んだときにそう思いました。ですから、その辺はそのぐらいまでしかちょっと言えません。
  それから、大規模排出者は削減していると言われていますけれども、排出量の量で言えば一番多いわけです。ですから、やはり一番多いところを削減することの効果の方が、排出量の少ないところで削減することの効果よりもずっと大きいわけです。ですから、やはりたくさん排出している大規模排出者についての政策が必要だと思います。
  それと同時に、もちろん業務であるとか、家庭であるとかも削減しなくてはいけないわけですから、そこに対して、キャップ&トレードは大規模排出者にしかできない制度なので、例えば中小企業とか業務とか、そういうところに対しては、私たちはこの提案の中で、ポリシーミクスとしてベースライン・エンド・クレジット、国産CDMみたいな制度の提案をさせていただいていますし、やはり家庭については、さっき言った建物と、あと一番使われているのは家電製品なので、家電製品を省エネルギー化する。省エネの家電製品が市場にもっと出回るような、少し高いけれども省エネ型のものを買わせる仕組みをつくってほしい。それが政策だと思っています。
  国民の危機感の共有なのですけれども、どうしたらいいかといったら、例えば環境税とかかけると、そんなの払いたくないとか、いろいろ議論が巻き起こってものすごい反対が出ると思いますけれども、今、日本は環境に対して負荷を与えているのだという意識を喚起するし、そういうような危機感の共有というのはできるのではないかと思います。
  もちろん水温についても、例えばハリケーン・カトリーナの理由は、水温が上がっていたからということが報道されていますので、そういったことは私たちも常日ごろ言っていますし、去年の冬のドカ雪というのは、やはり日本海の海水温が上がっていたために、それがドカ雪となって日本に来たと説明しています。
  それから、茅先生の指摘なんですけれども、私たちはどのように達成すべきかというと、今言ったようなキャップ&トレード型を大規模排出者に、そして民生部門には、今言った断熱基準の強化とか、照明器具の規制とか、ある意味で規制措置みたいなのと、あとやはり車に関しては燃費を上げるとか、交通量の制限とか、そういうようなさまざまな施策を組み合わせないとできないと思っています。それをいかに達成するか、いろいろ提案をしています。ですから、ただ言っているだけではないと言わせていただきたいと思います。
  一般の消費者の行動をどのようにさせるかということなのですけれども、やはり排出をコストにすべきだということを、私はどこの場でも言っておりますし、そういうふうな仕組みをやはり政策として導入していただかないと、なかなか一般の人も行動しないのではないかと思っています。
  アメリカの法案なんですけれども、確かに2020年までは0%というのが結構あります。つまり、今、物すごく増えてしまっているので、まず、ゼロに戻すのがすごく大変。だから、まずゼロに戻してから削減にいくというところで、そして、そこで技術的なブレイクスルーというのは、多分CCSを考えているのではないかと思います。そういう意味では、EUとはある意味で違います。確かにそれは違うのですけれども、やはり温暖化を真剣に考えて、そして計画を立てなくてはいけないと、そして、それを政策にしなくてはいけないというアメリカの試みは重要かなというふうに思います。それでないと、やはり世の中は進んでいかないのではないかなというふうに思いますけれど、よろしいでしょうか。

○鈴木部会長 よろしいでしょうか。大体お答えいただけたと思います。ありがとうございました。
  お三方からご説明をいただきましたが、本当にお忙しいところ、おいでいただきましてありがとうございました。
  続きまして、次の議題に入らせていだきたいと思います。ちょっと予定の時間を実は大分オーバーいたしておりまして、議題の2といたしましては、気候変動問題の解決に向けた国際的取組関係の主な意見の概要についてというのがございます。これは3月29日の第4回の会合でご議論いただきました論点整理案、この各論の温暖化対策部分につきまして、これまでの部会における議論の結果も再度見直しに含めていただいて、整理したものを事務局で用意していただいております。さらに、関連部分の参考資料も作成していただいておりますので、この資料につきまして、南川地球環境局長からご説明をお願いいたします。

○南川地球環境局長 よろしくお願いします。時間がございませんので、ポイントだけご説明させていただきます。
  最初の資料4でございますが、これは3月29日に提出しました論点整理につきまして、その後、その会合、さらにその後、多くの委員の先生方からご意見が寄せられました。また、意見書としてもいただきましたので、それを整理した上で、基本的に追加を行っているものでございます。構成は変えておりません。主な追加事項について、ご報告申し上げます。
  まず、最初の1の世界全体での温室効果ガス濃度の安定化の部分でございますが、5つ目から追加がございまして、5つ目は、予防的措置が必要であるということが追加されております。6つ目も新規の追加でございまして、地球温暖化については、先進国、途上国の共通だが差異のある責任があるということを追加しております。次も追加でございまして、中国、インド等の責任が大きいということでございますし、またその次の、日本のスタンスをはっきりと示すべきだということもございました。その後、[1]、[2]、[3]とございますけれども、数値の目標を議論する場合については、温暖化に対して余り深刻な影響を与えない水準であること。途上国の参加の可能性が担保されること。先進国が実行可能であるといったような条件が意見としてございました。
  1ページの一番下でございます。これは前回もございますが、加わっておりますのが真ん中の部分で、IPCC第4次報告書の、新しい知見を踏まえれば工業化以前から2℃でも十分危険なレベルであり、予防的な手を打つ必要があるという意見、この部分だけ追加になっております。
  2ページは、一番最後の部分の1文だけ追加をしております。予測には大きな不確実性が存在するということで、その不確実性を削減するためにも、より国際的な協力が必要だということでございます。
  3ページでございます。[2]の国際約束としての京都議定書目標達成というところでございます。加わった部分だけ申し上げますと、2つ目の文章につきましては、一番最後のところでの国民運動の推進という言葉が加わっております。
  続きまして、3つ目以下は全部新規の追加でございまして、産構審、中環審の評価を活用しよう。また、自主行動計画について、未策定業種に対する働きかけ、あるいは定性的目標の定量化、厳格なフォローアップの実施等々が加わりました。
  それから、バイオマスの開発・普及、ESCO事業についての言及、また、民生業務部門のような分野についての経済的手法と自主的取組、ライトアップ、24時間営業の見直し、サマータイムの検討、民生部門における情報の共有化、個人の取組の重要性、省エネ家電等の買換促進、それから、建築物についての税制優遇等の措置。
  それから、4ページも実は全部その後、意見をいただいたものでございます。公共施設の率先実行、それから、都市環境特区を創設しての許認可の簡素化等、また、環境対応型の車両開発、それから、輸送手段のモーダルシフトとしての鉄道体制、鉄道貨物の復活、また政府が率先しての太陽光発電等の実施、また「森林吸収源対策」の早急実施、最後に、環境優等生と環境劣等生との区分と、そういったことが新規に追加されております。
  続きまして5ページ、[3]としまして、京都議定書の第1約束期間以降の枠組みについてでございます。3つ目にございますけれども、日本は米国、EU、途上国間の架け橋ということで、ここが加えておりまして、要は米国、EU、途上国間の全体を見た上での架け橋になるべきだということが加わっております。
  それから、6つ目でございますけれども、先進国の責務の明確化、その上での途上国の巻き込みということが新たに加わっております。
  6ページは大部分が追加でございます。2つ目にございますように、エネルギー原単位での数字目標を認めていくアプローチが必要、また、米中印を巻き込むような枠組みとして、どのようなものがあるのかを明確にすべきだと。さらに、日本の先進的技術をアジアにいかに移転するか、それからアフリカとの協力のあり方も大事だと、また、現時点の日本と欧州のエネルギー効率についてデータに基づいた分析が必要だと、さらに「世界人民の環境権宣言」の導入というのを呼びかけるべきだと。それから、30億トンの吸収量につきましては、将来の人口で割れば0.3億トンという非常に厳しい水準になることを認識すべきだと。それから、我が国の強みであります、省エネ、新エネ等の技術の活用ということの重要性、また、エネルギー原単位の効率を高めること、それから、温室効果ガス排出量の排出量の総量削減、ともに大事だということでございます。
  7ページでございますが、[4]としまして、将来の枠組みづくりに向けた取組ということでございます。3つ目にございます、低炭素を目指す種々の技術開発、社会システムの開発についての国としての意思の明確化、続きまして、環境とエネルギー・セキュリティー、さらに産業の国際競争力、この3つがバランスを持って進んでいくことが必要だと。それから、今後の産業構造転換、インフラ等々と、省エネ、あるいは低炭素化の技術開発の組み合わせ、それから、将来的な低炭素社会に向けてのフィージビリティの検討、また、日本自身のモデルの構築、さらに、国際的なメッセージとしての先進的な科学技術を用いた問題の克服、経済成長との両立といったことの視点。それから、地域をモデルとすべきだ、また、民生部門としてのライフスタイルの変更、そして、政府がリーダーシップを持った上での早期の目標共有、社会・技術イノベーションに向けた総合施策の確立等が示されております。
  8ページは、一番最後だけ新規に加わっておりまして、ここでは省エネ、新エネ、原子力、クリーンコールテクノロジー、CCS等についての重点的な研究資源の配分が重要だということでございます。
  最後でございますが、アジア地域を中心とした途上国支援ということでございます。3つ目でございます。来年、日本で第4回アフリカ会議がございます。これを踏まえた上でのアフリカとの協力、それから技術移転、CDMを通じてのアジア諸国との環境改善に取り組むこと、また途上国支援に当たっては、地域ごとの実情に応じたきめ細かい取組が必要だということでございます。
  2つ飛びまして、技術移転につきまして、なかなか進んでいないということがございます。それから、その次でございますけれども、気候変動対策というのは、大気汚染対策との協力など、ウィンウィンの関係ということもできるだろうということで、コベネフィットということでは可能だということで、そういったコベネフィット対策ということも念頭に置いて支援を考えるべきだということでございます。
  最後の10ページでございますが、一番上にございます、国際的なネットワークでの地球観測とモデル予測の重要性、それから、下から3つ目でございますけれども、エネルギー効率向上に必要な技術の共有化、削減ポテンシャルの明確化ということで、中国を初めとする途上国に協力すべきだと。また、途上国においては、どうしても環境は優先度が低くなるということで、日本が積極的に働くべきだと、ODAについての環境部門の拡充と、そういったことについてご意見が寄せられましたので、ここに追加をいたしております。
  それから、参考資料1としまして、国際取組についての主なデータを整理しております。従来のものに若干加わっております。その分だけ申し上げます。
  2ページから8ページまでが、世界全体での温室効果ガスの濃度の安定化に関するデータでございます。2ページは濃度変化等でございまして、特に新しいことは加えておりません。3ページが将来の気候上昇の予測ということで、これもIPCCの第1次作業部会の報告書をそのまま引用したものでございます。
  4ページが温暖化が与える影響ということでございまして、従来からのものについて、下の方でございますけれども、やや新しい情報としては、IPCCの第2作業部会の報告書を引用しております。
  それから、5ページでございます。これはIPCCの第2部会の報告書をそのままここに掲示をしております。6ページは、これは各地域のIPCCの第2作業部会によって出ました各地域の影響を、環境省で地図に落としたものでございます。
  それから、7ページでございます。これは我が国が最先端の観測、数値予測技術を持っております。これによりまして、これまでのIPCCの作業にも随分貢献をしてまいりました。今後ともこれを続けていくということでございます。
  8ページでございます。これは従来から使っております、63億トンの人為的排出量、31億トンの自然吸収量でございますが、新しく「なお」ということで、4次報告書では、72億トンの排出になっているということで数値が増えております。なお、まだ自然吸収量については新しい数値が出ておりません。
  9ページ以降は、国際約束としての京都議定書達成の状況でございます。9ページは、2005年の数字が載っているだけで、特には変更はございません。
  10ページでございますけれども、特に10ページの下の方でございます。私どもの政府におきまして検討しておりますものの中で、特に1,000万トン以上の効果が見込めるということで、非常に効果が大きいものについて、ここに羅列をしております。自主行動計画の着実な実施とフォローアップ、あるいは建築物の省エネ性能の向上から、最後の方にございますけれども、森林対策、あるいは京都メカニズムの本格活用までを整理しておりまして、こういった内容につながるものを今後、特に加速化していくことが必要だと考えております。
  それから、11ページでございます。これは見直しとスケジュールをお示ししたものでございます。
  12ページからは、ポスト京都のワーキングづくりについてのデータでございます。まず、12ページでございますけれども、現在のCO2の排出量と今後の見通しでございますが、約30%がいわゆる現在の約束期間で、京都議定書によって削減に応じている国でございます。したがって、定量的には非常に効果が小さいということになるわけでございます。残念ながら、米国、豪州は京都議定書から離脱をしております。
  それから、13ページ、14ページは、エネルギー効率の国際規格でございまして、13ページがGDP単位当たりの一次エネルギー供給量、それから、1人当りの一次エネルギー供給量、14ページは、これをCO2で比較をしたものでございまして、同じくGDP当たりと1人当たりを並行してお示しをしております。
  それから、15ページでございますが、15ページは、EU、米国の動向でございます。米国の動向、これは従来お出ししたものでございますが、一番下の方に大気浄化法をめぐる最高裁判決についての情報を入れております。
  それから、16ページが新しい中国動向でございまして、特に真ん中の部分だけ一部読み上げさせていただきます。日中環境保護協力の強化についての共同声明。先日、温家宝首相が来たときに、外務大臣同士で署名したものでございます。
  四、「気候変動に関する国際連合枠組条約」及び「京都議定書」の枠組みの下で、改めて、双方は「共通に有しているが差異のある責任」の原則に基づき、国際的な協力を通じて気候変動問題の解決に関する努力を行うという政治的決意を表明する。双方は、上述の条約及び議定書の原則及び規定に基づき、2013年以降の実効的な枠組みの構築に関する過程に積極的に参加する。」ということでございます。また、次の○にございますけれども、今回の共同声明は、2006年の安部総理訪中の際の「日中共同プレス発表」の中で表明された“戦略的互恵関係”構築のための具体的協力の一環であること。また安倍総理は、今回の日中首脳の席においても、温室効果ガス排出削減と、2013年以降の実効的な枠組み構築の重要性を強調し、これにつきまして日中間で協力することで一致したということでございまして、非常に新しい、しかも重要な情報だと考えております。
  続きまして、17ページでございますが、これは従来からお示ししておりますスケジュールでございます。ここには書いておりませんが、日本サミットの後、12月のポーランドのCOP14までの間に米国の大統領選があるわけでございます。それから、2009年の11月から12月のCOPにつきましては、コペンハーゲンで行うということが最近発表になったところでございます。
  18ページ以降が、将来枠組みにつきましての取組でございます。最近、国際的に低炭素社会、ローカーボン・ソサエティという言葉が頻繁に使われております。今年の1月に、安倍総理とブレア首相との間で行いました共同声明の中では、低炭素社会、ローカーボン・ソサエティという言葉が3回使われております。また、それに先立ちますグレンイーグルズ・サミットの中では、ローカーボン・エコノミーという言葉が使われておるところでございます。
  続きまして、19ページでございます。これは低炭素社会をつくっていく上での技術開発が必要であると。そして、それを職場・家庭、あるいはまちづくりの中でも、そういったことを生かす、また生かせるような、その状況をつくっていくべきだと考えておりまして、それをイメージとしてまとめたものでございます。
  20ページ、技術開発の重要性は言うまでもございません。ここにございますように、省エネから原子力、クリーンコールテクノロジー、CCSを含めた技術開発の重要性を示しておるものでございます。
  21ページ、最後が途上国支援でございまして、適応、あるいは技術移転が極めて重要でございます。昨年の12月に行いましたCOP12等におきましても、適応についての具体的な内容が徐々に国際的な場で話し合われて、まとめられております。また、日本としましても、APN、アジア太平洋地域変動研究ネットワーク等を通じまして、さまざまなツールで、そういった国際的な途上国支援ができるような枠組みをつくっているところでございます。こういったことを取りまとめてお示しをしております。
  以上でございます。

○鈴木部会長 ありがとうございました。
  それでは、ただいまのご説明につきまして、ご質問あるいはご意見等いただけますでしょうか。
  では、こちらから、村上委員からまいりましょうか。

○村上委員 いろいろな情報をいただきまして、とても勉強させていただきました。ありがとうございます。その中で、私は2つ、意見を述べさせていただければと思います。
  1つは目標設定に関してなんですけれども、本日、いろいろ、茅先生の方程式ですとか、あとWWFの主張ですとか伺ったんですけれども、私としては、このCO2をどれだけ削減するべきかという世界全体の目標に対して、やはり人口比率で割っていくというのがとてもフェアで、だれもが納得できる、そういう数字ではないかと思います。それが実現可能かとか、日本にとって損か得かというのはその次の話でありまして、そのフェアな目標をまずは大きく掲げて、それを実現するために何をしていけるのかということをやはり考えていく必要があると思います。例えば、環境省で、今、チーム・マイナス6%というのをやっていますけれども、そういう視点からすれば、チーム・マイナス80%を推奨していってもよいのではないかというふうなことを考えました。
  もう一つは、鮎川さんのプレゼンテーションの中でも何度も出てきたんですけれども、それを実現するに当たっては、やはり経済的手法でCO2排出をコストにしていく、そういう政策をもっともっと前向きに議論していくことが必要ではないかというふうに思いました。そういう大きな経済競争のルールができたもとで、各セクター別でどれだけエネルギー効率を上げていくのか、そういうことが社会の競争力にもなっていき、かつ、国際貢献の上での日本の強みになっていくというふうに考えますので、やはり、まずは、政策的手法、経済的手法というところをしっかり考えていく必要があるということを学ばせていただきました。
  以上です。

○鈴木部会長 では、関澤委員。

○関澤委員 大変しっかりまとめられていると思うんですが、1点、6ページとか8ページに少し出てくるんですけども、原子力のことが余りにも少ないのではないかと思います。濃度の安定化を考える上で、やはり原子力を正しく位置づけるということが必要だと思います。電力等の安定供給を実現しながら排出削減を行うためには、原子力が最も現実的な手段ではないかと思いますが、もちろん、安全が大前提でありますけども、この分野というのは日本が高い技術力を有する分野でもございますので、温暖化対策の観点から重要な手段として国際的にも位置づけて、日本が国際的に貢献していくことが重要ではないかと思います。もう少し強調した方がいいと思います。
  以上です。

○鈴木部会長 須藤委員。

○須藤委員 それでは、意見を2つだけ申し上げます。
  1つは、当然ですが、京都議定書の6%削減というのは、もう、これは前提としてやるのでですね、ここでもう一回議論し直そうというよりも、それはそういう前提で、次のポスト京都について環境立国でどうするかということを記載した方がよろしいのではないか、こういうふうに、まず思います。
  それから、2点目は、先ほど私、ちょっと琵琶湖の話をしたんですが、滋賀県では、本当は嘉田委員にお伺いした方がよろしいのかもしれませんが、最近、「持続可能社会の実現に向けた滋賀シナリオ」というものを、これはまだ、県、県議会で決めたというわけではないようで、滋賀県の琵琶湖環境科学研究センターですかね、そこで取りまとめたんですが、2030年でCO2の削減率50%というのをかなり具体的に示しておりまして、いろいろなところ、特に水質保全の問題があるのと、汚濁負荷の削減が琵琶湖ですからありますので、それとひっかけて、美しい湖を守るためにということで、あわせてCO2を削減するので、その50%という、そういう循環システムの構築を一応示して、産業界も特に大きな反対とかではなくて、これをどう進めていくかという、具体的に入っているそうなので、ぜひ、環境省ではその辺を、1つの県ではありますけども、環境立国で示すのには、1つの自治体としてこういうことも既にあるんだということを示していただくのは大変よろしいのではないかと、こういうふうに私は思います。
  以上です。

○鈴木部会長 では、小澤委員。

○小澤委員 いろいろとお聞かせいただいて、ありがとうございます。
  1つご意見として申し上げたいんですけれども、消費者、生活者の危機感をあおるというのがあったのですが、私はちょっと疑問を持つのですね。というのは、今、子供たちを、私、ずっと小・中・高に行っておりますけれども、こういう問題になったのは大人の責任ではないかと、若い人たちは思っているんですね。ですから、自分たちが行動して得をするというのは、マイナスの引き算のイメージではなく、やることによってプラスになるという、そういうキャンペーンをしていかなくてはいけないんじゃないかと思っています。例えば80年代とか90年代は環境に優しい行動をと言っていますけど、客観性がないんですね。もうそろそろ、3Rも子供たちにも認知されていますので、科学的な根拠でしょうか、そういったものを示すべきではないかと。
  例えば、私の経験では、90年代初めに、生協がスイスのミグロという生活協同組合を呼んできて勉強したときに、製造過程でどれだけエネルギーを使っているか、それを全部、スーパーの表示に書かれているんですね。それをきちんと理解した上で、自分の消費行動がどういった貢献をするのかというあたりがきちんとわかるような、そういう表示をしていく。そのためには、生産者側においてもメリットがあるような対応というのが必要になってくるのではないかと。そういう意味で、エコポイント制度でしょうか、また、炭酸ガスの排出の取引などを先取りした形で、企業にそういったメリットを表示するような形の仕組みをつくっていく必要があるのではないかと。ですから、3Rのときに、例えば、スチール缶を買いますと、これは3Rということでリサイクルと言っています。そのリサイクルすることによって、どれだけ日本では原料が削減され、そして、省エネになっているかとか、そういったあたりをきちんと示す必要があるのではないかと。
  例えば、住宅のことが出ておりましたけれども、北海道のああいう寒いところでは、もう、断熱材の入っていない家をつくると物すごいむだなエネルギーを使うので、基本的にほとんどが断熱材を入れていくわけですね。それが、今、より効率的にするために外断熱か中断熱かという議論がされているぐらいですから、これは消費者だけではなく、中小の技術屋さんにも、そういうメリットというのか、講習なり、そういった仕掛けもつくっていかなければ、消費者だけあおり立てても家庭からの削減というのが出てこないのではないかと思いますので、ぜひそういったところも検討していただければと思います。
  以上です。

○鈴木部会長 それでは、小池委員。

○小池委員 はい、ありがとうございます。2点、ちょっと申し上げたいと思います。
  1つは、この2ページ目で書いていただいてありがたかったんですけれども、先ほどのお話にもありましたけれども、もう、温暖化は現実問題であると。それで100年後にはこうなるということがもうわかったような話になってしまうと、今まで続けていたような、温暖化に対するモニタリング、それからあと、そのモデリング、それをフィードバックするようなプロセスというのが、どちらかというと、それを低く見るような感じが何か出てくるのは、私は非常に危惧しております。
  この温暖化の問題というのは、言うまでもありませんけれども、ハワイのマウナロアで観測を50年間やって、それできちんとそれを示したわけですね。そういうような、地道な、長期的な努力、モニタリングの努力というのが非常に大切で、これはこれから先、その今、温暖化の影響評価、それからその適用策という、ある地域とかそれぞれのところに限ったときに、やはりそこできちんとした、温暖化が生態系にどういうような影響を及ぼすかとか、そういうことをきちんと見ていかなければ、なかなかそれに対して的確な対応はできないということで、ぜひそのことはきちんと明記していただきたい。先ほどお話が出ましたけれども、琵琶湖の水温が上がっているというのも、あれもきちんと測っているから初めて出てくるわけですね。
  私、最近見ていますと、私はいろんな観測をずっと今までやってきたんですけれども、どちらかというと、例えば日本の沿岸でも、そういうふうに続けられていた観測が、どんどん予算の関係で削られていくというような事態がございます。例えば、エチゼンクラゲがここ数年、非常に問題になっていますけども、それも、結局なかなか沿岸のモニタリングがきちんとできていないから、それに対する適用が非常に難しいという問題があります。ですから私は、日本としても温暖化に対するいろんなモニタリング、それの観測はきちんと、世界をリードしてやっていきたい、やっていただきたいというふうに思います。
  それからもう一点ですけれども、先ほどアジアに関する、いろんな途上国支援で、途上国に関しては、温暖化に対して援助するというよりは、今それぞれの国が環境に対して、一番問題になっている、例えば水質汚染ですとか大気の問題ですとか、そういうところときちんとまぜて、中で温暖化というものを取り上げていくというやり方をやっていかなければいけないと思います。
  1つ、よく私たちも海外へ行ってやるんですけれども、そのとき感じるのは、研究者レベルでは結構そこと話をして、それから、そこでの行政にもいろんなコメントはするのですけれども、やはり日本の行政のバックアップが非常に弱い。やはり、こういう環境のいろんな問題というのは、それを相手の行政に伝えるには、日本の行政の方もしっかりその研究者と一体になって、それをバックアップしていくようなシステムをぜひつくっていただきたいというふうに思います。
  以上です。

○鈴木部会長 茅委員。

○茅委員 この中で1つだけ申し上げたいのは、やはり温暖化問題の長期を考えた場合には、長期的に脱炭素をしなければいけないので、やはりそのための長期的な技術開発が必要だということも、もっとうたってほしいと思います。
  先ほど関澤委員から原子力の話がございましたが、私、原子力は当然なんですけれども、そういった場合でも、高速増殖炉、さらには核融合といった、長期の大規模のものを努力する必要があるし、また、太陽光発電にしても、現在の地上のものだけではなくて、宇宙を使っていくSPSといったコンセプトについても、今後は考えていく必要がある。そういった超長期の技術開発努力を今からスタートしないと、本当の意味での温暖化問題の対策にはならないと思いますので、それもぜひ、この中に書き込んでいただきたいと思います。
  以上です。

○鈴木部会長 大久保委員。

○大久保委員 全体のスタンスの問題で1点なんですけれども、それが私は、今までセクター別アプローチとか省エネ技術というのをどういう位置づけにすればいいのかというのを、ちょっと悩んでいたところなんですが、今日の石谷先生のお話で大変すっきりしたんですけれども、最低限必ずできることを、短期的にできることを恐らくおっしゃっていただいたのだろうというふうに思いました。ということは、逆に言いますと、政策手法で言いますと、自主的なアプローチで、かなりの部分、達成できるものということになりまして、政策措置としての戦略では、それにつけ加えてどこまで上乗せできるかというのが出発点なんだろうというのが、まず第1点です。
  それから、あとは細かい話を2点なんですけれども、3ページ目で、下から4つ目の・で「民生部門における環境関連情報の共有化」というのがあるんですが、今日の一番最初のエコリーフのお話、私、大変意欲的なお話だと思っておりまして、消費者の選択という意味でも、この民生部門だけではなく、産業部門も含めました環境関連情報の共有化というのが非常に重要であり、先ほどWWFの発表でも、20%近くの大口のところが、まだCO2の排出について非開示であるというのがありましたけれども、こういうものをどう促進していくかというのが、ぜひ、産業部門も含めて入れていただければと思います。
  それからもう一点なんですけれども、8ページ目の一番下の・で、新エネ等の技術開発の特許の話がありましたけれども、ここはもちろん、社会的な意思形成というものも大変重要な分野になってくると思いますので、その研究という意味では、文理融合というとちょっと言い方が古いのかもしれませんが、そういう社会的な意思決定の仕組みの研究も織り込んだ研究の促進という形を、もしできれば明記していただければと思います。
  以上です。

○鈴木部会長 枝廣委員。

○枝廣委員 幾つか述べさせていただきます。
  最初に、鮎川さんの発表の中で、世界を早期に半減すべきということがありましたが、私も不勉強で最近まで知らなかったのですが、これは日本政府が気候変動に関する国際交渉の場で、日本政府の見解として出したということを聞きましたので、これが多分よいスタート地点になるのではないかと。一貫性を持った形で、そのときにはいつまでにということがなかったので、それは含めてということになります。
  あと、私自身はコミュニケーションの専門家だと思っておりますが、技術や政策の専門家ではないので若干予防線を張る言い方になりますが、自分自身が今できているわけでも、やり方がわかっているわけでもありませんが、ただ、このままでは多分だめになってしまうという告発する役割も、やはりある意味必要であろうと。みんなが考えざるを得ないところで、そういう役割もあるだろうというふうに思います。これはずっと考えていることなんですが、人々にどう伝えて、どう人々を動かすかということに関しても、本当は専門家の委員会を、例えば技術開発であるとか省エネであるとかやっているように、やらないといけない時期ではないかなというふうに思っています。
  前回も述べましたが、3ギガトンしか地球が吸収できないのに7ギガトン出ている。絶対的な排出量を減らすしかないわけで、その排出量というのは原単位掛ける数量と、例えば簡単にあらわしたとして、原単位を減らす努力として、エフィシェンシー、例えば効率化であるとかプロセス改善であるとか、その技術を移転するということが行われ、これは日本の先進分野であるし、ずっと成果を上げてきた分野だと思います。
  一方で、原単位を幾ら削減しても、数量が増えていく限りは、絶対的な排出量は増えるわけですから、こちらを減らすために二通りのやり方があると思っています。1つは自発的な取り組みで、よいことをしようとか、悪いことを減らそうと、意識啓発キャンペーン、環境家計簿等、日本でもいろいろやっているところであります。ただ、これは気づいた人や関心ある人しか取り組みができないという点で、まだ、残念ながら限定的です。これを広げる努力が必要ですが、もう一つ外発的な取り組みとして、関心のない人もやはり行動を変えるという動きも同時にやっていく必要がある。これは上限を設けるという意味でキャップ・アンド・トレード、もしくは、ふやすことへのディスインセンティブということで、炭素税等が考えられると思います。つまり、温暖化対策の手法というのは、実質的な取り組みももちろんあるし、規制や炭素税、排出量取引や技術開発・技術移転、さまざまにあるのだと思っています。
  私は世界に情報を発信するNGOをやっておりますが、世界から日本が期待されているのはやはり技術であるというのは間違いのないところで、例えば日本の省エネ技術を世界に移転することで、その効果目標を数値化して、この戦略に織り込むことができないだろうかというふうに思っております。それから、温暖化に関しては、患者はかなり重篤な状態にあるという、現状は皆さん認識されているとおりで、軽い病気であればいろいろ試して最も効くものを探すこともできますが、今そのような余裕はないわけで、あれをやるからこれはやりませんとか、どれが効くかわかってからやりますと、多分恐らくそういう余裕はない。大きな問題を短時間に解決するための1つの原則として、大量行動の原則というものがあります。これは効きそうなことを10も20も30も挙げて、優先順位をつけてやっていくのではなくて一遍にやるという、そういった原則であります。もしかしたら、そういったことが必要な段階に今来ているんではないかと。
  まとめますと、絶対的なビジョンとしての、できるだけ進めましょうではなく、いつまでにあそこまで進みましょうといった形での絶対的な目標と、そこまで達成するための手法は、経済的手法も含め、今やっていないものもたくさんあるわけですから、同時にやっていく必要がある。それから、そのときに必要な危機感をたくさんの人に持ってもらう必要はありますが、とても懸念しているのは、そのやり方によっては絶望させてしまう可能性があるということです。私も子供たちと接することが多いのですが、悲しいことに子供たちの間に静かなる絶望が広がっているのはとても気になるところで、大人であってもあきらめたら行動しなくなりますので、絶望させずに必要な危機感を持ってもらう。このバランスをとりながら進めていく必要があるというふうに思っています。

○鈴木部会長 はい。ありがとうございました。
  大変いろいろなご意見をいただいたわけですが、今日、特に温暖化に関しましてのこれまでの、いろいろな、ここで出していただきましたご意見を、その概要をまとめていただいた、これが資料4ですが、この中にはいろいろと、もちろん整合性がとれていないようなこともたくさん入っているわけでありまして、これをベースにして、そしてまた、参考資料に示されました、現状、現段階をベースにして、どういう形でその立国戦略に盛り込んでいくか、これが問われているわけだと思っております。
  先ほど来出ておりますように、最終的に、結局、炭素の排出量というのが1人1年間0.3トン。今、日本で私たちが排出している量が大体20トンですね、それを要するに0.3トンまで、長期的には下げていかなくてはいけない。これは大変なことなんです。大変なんですが、それを具体的にどういうステップを踏んでどうやっていくのか、それを今考え始めなければいけない。今では遅過ぎるぐらいなんですが、考えていかなくてはいけない。そのステップの中で、限られた財源の中で、限られたいろいろな意味でのキャパシティーの中で、どうやってそれを進めていくかという、非常に重い課題を私たちは背負っているわけですが、それと同時に、絶望感をまさに持たずに、どうやって国際的に日本の立ち位置をきちんと見きわめて、そして日本が何をしていくかという、その意思をきちんと発信していく。そのときには、もちろん、世界、アジアがありますし、国内でもいろいろな、既に地域的な活動が始まっているというようなことも念頭に置きながら、明確なメッセージを送っていく。こういうことになるのかなという感じで、お聞きしておりました。
  本当に大変なことなんですが、あれもこれもというようなことがあっても大変限度がありますので、この立国戦略としては、その中のやはりポイントとなることをきちんと記しながら、具体的な、非常に数多くのとるべき施策につきましても、アネックスのような形になるんでしょうか、きちんと頭出しをしておかなくてはいけない、非常に難しい課題を事務局の方々は背負って、これから文章化していただくことになるかと思います。しかしながら、大事なところはきちんと安倍首相に決断をしていただく。トップの方できちんと決断をしていただくということが何よりも大事だろうと思いますので、その辺は、先ほどまでいらっしゃいました環境大臣等々から上げていただく必要もあろうかと思っております。
  実は、予定の時間を既にオーバーしてしまっておりますが、時間延長が可能であれば、まだこれからもう一回りぐらいご意見を伺いたいという気もいたしますけれど、もし何か、これをというご発言のご希望がありましたら。
  2つぐらいですか。では、そのお二方、ご意見をお伺いするようにいたしましょうか。
  それでは、杉山委員。

○杉山委員 それでは、簡単に申し上げさせていただきたいと思います。
  今日の議論の中で、環境と経済を両立させるということ、また、コストで考えるべきだというようなご意見が出ました。ただ、この会議の中では経済を専門にしている方は比較的少ないものですから、あえて私の方から申し上げさせていただきますと、経済学ではその辺を把握するような分析は、かなり進んでおります。例えば、近年ではCGE、コンピュータブル・ジェネラル・エクイリブリアム・モデルというようなことでもって、実証研究も進んでおりますし、また、外部性を継続するような方法もなされております。ただ、現実に、ある目的のためにこれをやるということになりますと、恐らく1年とか2年とか、そういうオーダーが必要になってきますので、それを具体的にここに盛り込むというのは非常に難しかろうと思いますけれども、そういう方向性は活用できるという点は、ぜひご認識いただければというように思います。
  それともう一点、差し出がましいんですけれども、経済学でいう限界生産性が低減する。ある一定のところまで来ちゃいますと、それからさらにそれを進めるというのは非常に難しい。逆にコストがかかってしまいます。ですから、こういうことも、各論の中でご検討いただければというように思います。
  以上です。

○鈴木部会長 では、関澤委員。

○関澤委員 産業界のいろんな意見書の中に全部触れてありますので、ぜひそれをごらんいただきたいのですが、一言で言いますと、世界で一番効率がいい日本において排出権取引を導入すると、途上国等から排出権を買ってくるコストの方が安いので、多くの企業はそっちを選択するだろうと思います。したがって、国内の排出削減が進まないということが主たる理由でございます。排出権取引制度を導入すればCO2が本当に減っていくのかというと、そういうことにはまずならないと思っております。CO2をコストにするということ、それから、グローバルなカーボン市場、この本質というのは、企業が国内で排出削減をするコストと海外から排出権を買ってくるコストを比較して安い方を選ぶということでございますので、この排出権取引には反対でございます。
  以上です。

○鈴木部会長 よろしいでしょうか。いろいろなディベートの時間がもっととれるとよろしいのですが、申しわけないことに、予定を10分オーバーしてしまいました。これはまた、いろいろと、ご意見は紙でお出しいただくというようなことも可能でございますので、ぜひそのようにお願いしたいと思います。
  今日は3人の方からヒアリングをさせていただき、その段階で大変盛り上がってしまった関係もあって、後ろの方でちょっと時間不足となりましたが、また、この部分につきましてはあとの特別部会で議論させていただくチャンスもあろうかと思いますので、その際にもよろしくお願いしたいと思います。
  では、事務局から今後の予定を。

○柴垣政策評価広報課長 それでは、今後の予定でございますが、参考資料の3という一枚紙が下の方にあると思いますけれども、次回は、近接しておりますが今週の木曜日、26日に3時から、場所はここでございます。それでまたヒアリングをさせていただくものと、それから、各論の後半部分、生物多様性、3R、その他というところの討議ということにさせていただきます。
  それから、前回お渡しした予定とちょっと違っておりますが、次々回5月10日、連休明けでございますけれども、もう一回、総論、各論、全体を通しまして、議論を再度詰めていただければということで考えております。それとまた、環境保全型農業などの関係のヒアリングもさせていただきたいというふうに思っております。
  次回26日、次々回5月10日ということで、委員の方々からの議論をきちっと詰めていただければというふうに考えておりますので、よろしくお願いいたします。

○鈴木部会長 それでは、最後になりますが、北川政務官がお見えになっておられますので、ちょっとごあいさつを。

○北川環境大臣政務官 遅れて参りまして、申しわけありませんでした。最初の方のお話を聞くことができなかったものでありますから、残念でありますけれども、各委員の先生方には、多岐にわたる、本当に貴重なご意見を賜りまして、ありがとうございます。
  先日、前回、鈴木部会長がおっしゃっておられましたように、次の世代、そしてその次の世代、50年後の世代の方々が、今回の我々の日本の環境立国戦略と、こういうものを練っていただいて、それがまとめられた案というものが、50年先の方々から見て、ああ、あのときにすばらしい提言をしていただいたなと、その羅針盤を示していただいて、それを守ってきてよかったなと、そういうものにしていただきたいと思っておりまして、我々も努力をしてまとめていきたいと思っておりますが、50年先の世代の方々が、あのときにせっかくこういういいことを言っていただいたのに守ってこれなかった人類といいますか、我々にも責任があると、そういう本当に中身の濃い環境立国戦略にしていきたいと思っておりますので、今後ともまた、貴重なご意見を賜れればありがたいと思います。どうもありがとうございました。

○鈴木部会長 ありがとうございました。
  それでは、次回は各論の、今後1、2年で着手すべき重点的な環境政策の方向の中で、温暖化以外の部分を取り上げて、審議を行いたいと思います。
  では、本日の会議を終了いたします。どうもありがとうございました。

午後5時32分閉会