1.日時
平成17年11月28日(月)10:00~12:30
2.議題
京都議定書に基づく国別登録簿制度を法制化する際の法的論点の検討
3.議事内容
会議及び資料は非公開で行われ、議論がなされた
今回の検討会をもって、京都議定書に基づく国別登録簿制度を法制化する際の法的論点についてすべての論点が抽出され、それぞれの論点について議論が尽くされたため、検討会の場における委員の意見を踏まえて、座長が報告を取りまとめることとなった。
○主なコメント
【準拠法の問題について】
- 準拠法が問題となる典型例として、A国内のCDMプロジェクトから発生するクレジットの法的性質が債権として位置づけられ、譲渡について、意思表示のみによって権利移転が生じる場合、A国のY社とクレジットの売買契約を締結したものの、日本の国別登録簿上ではクレジットの記録を得ていない日本法人X社は、日本における裁判上、クレジットの権利者として認定されるのかという問題をどう考えるのか。
- 準拠法の話は、力関係で途上国側が決めることが多い。債務不履行の際の強制執行までを考えると、現地に行かざるを得ず、そのときに日本の裁判所の判決文を持って行っても仕方ない。契約上は、国際私法の適用を排除し、契約上で細かく規定している。
- 準拠法の問題は、この検討会のスコープとは別の問題として、依然として存在するのではないか。先の事例などは、起こり得る。国際私法上の準拠法の問題は、今後の課題としたらよいのではないか。
【クレジットの法的性質について】
- クレジットが債権ではないのは、準拠法以前の話。債務者の行為が観念できないことがその理由としてずっと重要。クレジットは、無体物だと思うが、回路利用配置権や育成者権のような無体財産権ではなく、権利の帰属を明確にしておくことが重要という意味において、動産と近くなるという話。
- そもそも、有価証券がどうして動産なのかということを考えた場合、動産ではない権利を証券上に表章して動産化し、動産法理を適用するという法技術的な話。振替社債については、ペーパーレス化により、それを口座簿上で行うこととし、同じく動産法理を適用している。クレジットの占有が観念できないのは、当たり前の話であり、できないから法技術でカバーしている。
- 民法第205条の準占有とは何かという議論は別途あるが、理解としては準占有でいいのではないか。クレジットの記録に対してどういう効果を与えるのか、記録を介してのクレジットの管理・支配をどう整理するかの話。
- クレジットの流通性を確保するために動産類似のものとして観念するという話と、取引の安全の確保のために効力発生要件とするという話の2つがあると思う。
- 整理すると、クレジットの流通促進のためにはクレジットを動産とみなす方向性もあり得るが、国際調和等の様々な問題を勘案すると、法文上は明示する意義は小さいということなのではないか。
【クレジットの善意取得について】
- 善意取得は、従来の民事法上の善意取得(善意の第三者が対象物を原始取得する)とは違うのではないかと思っている。善意取得というよりは、善意者の保護ではないか。
- 振替社債法では、譲受人の側から考えて、平穏・公然・善意・無過失で原始取得されるもの一切を善意取得と言っている。その中には、従来の民事法上の善意取得もあれば、そうでないものもある。振替社債法では、口座管理機関が誤って社債を多く記録してしまった場合、債務として存在しない社債を口座管理機関が市場から調達してそれを消却することとしており、そういうものも善意取得として整理している。一種の損害賠償である。誤解をされないためには、「無権利者であってもクレジットを取得する」ということを書いた方がいい。まず、登録簿上のクレジットの総量が増えない話と増える話があり、その後に誰に責任があるのかという話になる。クレジットの総量が増える場合は、原則として国に責任がある。
- 国家賠償法上の損害賠償責任なのか、民法上の損害賠償責任なのか。おそらく前者だろう。過失責任か無過失責任かという話だが、登録簿に公信力を認めるなら無過失責任だろう。