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■議事録一覧■

第9回地球温暖化対策とまちづくりに関する検討会
議事概要


日時:

平成18年12月22日(金)13時00分~16時00分

場所:

主婦会館プラザエフ B2階 クラルテ

出席者:

委員

礒野委員、高橋代理委員(上山委員代理)、粂原委員、古倉委員、島委員、善養寺委員、谷口委員、林委員、松本代理委員(別所委員代理)、松橋委員、三上委員(座長)、藻谷委員、吉田委員

ゲストスピーカー

原亮弘様(おひさま進歩エネルギー有限会社)

環境省

小林官房長、鷺坂大臣官房審議官、小川地球環境局地球温暖化対策課長、岡崎環境保健部企画課課長補佐、地球環境局地球温暖化対策課大橋

〈議事〉

1.飯田市が取り組むまちづくりについて


原氏

資料1の説明。

粂原委員

資料2の説明。
谷口委員 資料1の15ページについて、出資者を募ることは非常に重要であり、これだけの出資者が集まったことはすごいことだと思う。全出資者474名に対し、飯田市内の出資者数が60名と少ないが、どのような方法でどのように出資者を集めたのか。
原氏 当初は、まず飯田市内から出資者の募集を予定していたが、計画が少し遅れていたことで、全国一斉に募集をかけた。このことが市内出資者数の割合が少ない要因の一つと考えられる。出資者に対して行ったアンケート結果から、出資者の多くが少しでも環境に役に立てば、という意識を持っていることがわかった。
磯野委員 12ページに「20年の長期契約」とあるが、長期契約を可能にした背景には、例えば、強力な理解者がいたなどということはあるのか。
原氏 飯田市は「環境文化都市」を標語に掲げており、市のトップや議会などの環境配慮への理解度が高い。ただし、行政は前例がないものへの対応が難しく、根気よくお願いしたことが功を奏したと考える。
吉田委員 出資者に元本を保証しているのか。また、なぜ太陽光発電なのか。元本を保証する上では風力発電の方が良い気がするが、戦略的なものがあったのか。
原氏 元本保証はない。飯田市は日照時間が長いことから太陽光発電に適していることや、市が積極的に太陽光発電の導入に取り組んでいたことなどの地域特性による。
松橋委員 まちづくりカンパニーについて、マンションの売れ行きや、購買層について教えて欲しい。
粂原委員 飯田市にとって本格的な分譲マンションは初めてであったが、PRの効果もあり、即日完売した。第1期の入居者の平均年齢は50代であったが、第2期は20代が2/29戸、30代が3/29戸、と若い層にも受け入れられた。理由は、防犯や防災の面で優れていることやまちの中心部にあることで利便性が高いことが挙げられる。
高橋代理委員 青森の「コンパクトシティ」は有名であり、コンセプトが明確にある。車道を2車線から1車線にして自転車道を確保したり、車道と歩道・自転車道を分離する取組が行われているが、飯田市にも同様の取組はあるのか。
粂原委員 中心市街地は高台(丘の上)にあり、中心部へのアクセスはバスや自家用車などの自動車に限定される。道路整備は進んでいるが、半径500~600mの中心部には坂が多く、歩いて移動するには範囲が広い。そのため電動機付き自転車の普及方法やワンコインバスの強化が課題となっている。また、現在、停めやすい駐車場を整備することを主体とした交通体系の整備に取り組んでいる。まちの中心部の道路にある公園風の「りんご並木」は、車道と歩道の共存スペースとなっており、道路の管理は近隣住民が行っている。りんご並木でのイベント開催など、新しい道のスタイルとして取組を進めていきたい。
高橋代理委員 青森市は世界一の豪雪地帯であり、除雪作業等が大変なため、駅前に集約するという考え方を採用している。飯田市ではりんご並木などの地域特性を活かしており、地域によって対応が異なることがわかった。
谷口委員 都市圏全体のCO2削減を目的とした場合、青森市のコンパクトシティは自動車の分担率が他の地方都市と変わらないため、必ずしもうまくいっている事例とは言えない。ただし、環境ビジネスの視点からは良い事例と考えられる。まちづくりカンパニーの取組について、自動車を利用して中心地へ向かうという点には少し問題があるかもしれない。しかし、中心地へ行けば1日滞在して楽しめるという仕組みがあると、圏域全体で考えた場合、CO2削減につながる気がする。飯田市では、このような広域的な方向性についての議論が行われているのか。
粂原委員 飯田市の70%以上が森林地帯であり、里山、城下町などのさまざまな自然資産がある。エコツーリズムや体験プログラムの実施などの実績は多数ある。文化、経済、観光の分野では東海地方との交流が深い。情報交換の中心地として、まちが機能することを目指している。
古倉委員 市街地再開発事業は利害関係が絡むものだが、どのようにして合意形成まで至ったのか。また、中心地のマンションなどの需要は今も続いているのか。今後も再開発事業を継続する予定か。
粂原委員 今回が、飯田市として初の再開発事業であった。行政と地権者が協働していたことや、地元の信用金庫が参加していたことなど、地元周辺に安定した基盤があったことが市民の理解につながったのではないか。この事業は、自ら床を埋めていき、雇用の創出、例えば、駐車場の整備によって「管理者」という雇用の創出につがった、などコミュニティビジネス型である。地権者、まちづくりカンパニー、行政、それぞれの組織の中にコーディネーターの役割を持つキーマンの存在が重要である。潜在需要としては、オフィスの需要は増加しており、自社ビルを建設している企業もある。今後は、高齢者や健康福祉の予防の観点を組み込んでいく。
藻谷委員 飯田市と青森市の違いの一つとして、飯田市は青森市に比べて格段にまちのサイズが小さいことが挙げられる。青森市は県庁所在地であり、鉄道も機能している。一方、飯田市の鉄道は、もともと地方鉄道の簡易な規格で建設されたことから制限速度が低いため、本来は東京から特急の直通運転を行えば、高速バスとの競争が可能な地域であるが、高速運転ができないため鉄道がうまく機能しているとはいえない。また、中心部が丘の上にあるという特殊な地形をしていることや、バスの本数が少ないことから、中心部へは車で行く以外の手段がなく、完全な車社会となっている。このことも大きな要因となり、中心市街地に民間投資のマンションがなかった。しかし、最近では居酒屋やスーパーなどが増えてきている。りんご並木についても当時の法律の想定を超えていたが、建設省(当時)が例外を認めるために法律をつくった。黒字の再開発事業としてとても良いモデルケースといえるだろう。
粂原委員 まちを再生するにあたり、住居や店舗などに応じて内装や資金繰りのシミュレーションを行うことがコーディネーターの役割である。コーディネーターがいなければまちの再生は成り立たず、衰退しているまちにとってコーディネーターがいないということが一番のネックと考えられる。また、海外までとは言わないが、周辺地域との関わりについて先見性を持つことがまちの活性度の容量となるのではないか。
三上座長 保育園を教育のターゲットにした理由は何か。
原様 何事も受け入れやすい時期にある子供を対象にすることが重要であると考えた。また、電力会社と系統連系する際に、高圧受電の場合は売電単価が低くなるため、低圧で受電している施設を選んだ。

2.持続可能性のあるまちづくりの方向性について


環境省(大橋)

資料3の視点を説明。
地方都市における地球温暖化対策の視点からのまちづくりのあり方を軸とした施策を総合的に展開していくにあたり、
[1]これまでのまちづくりのあり方に関しての問題点や欠如していたと考えられる点は何か。
[2]問題点等を踏まえて、今後どう方向づけていくべきか。
[3]今後のまちづくりの方向付けにあたり、どのような視点を持つことが重要なのか。
以上の3点を中心に議論をお願いしたい。

事務局(山田)

資料3の説明。
谷口委員 [1]p.34の施策のマッピングについて議論することが重要と考えられる。冒頭に小川課長から説明があった京都プロトコルとの関係や、省CO2型まちづくりの政策の中に、この検討会がどのようなことを提案すれば反映することができるのかなど、時間的な情報を考慮した上で戦略的に考えていくことが必要ではないか。まちのつくり方によってCO2削減がかなり進むことが可能性としてあるため、環境省の政策としてうまく活かしたい。
[2]p.21、p.25に関連して、上記の方向性を考えた場合、イギリスのPPG(Planning Policy Guideline;郊外開発の抑制と中心市街地の活性化へ向けての環境省計画指針)の仕組みに似てきているといえる。5年ほど前に国土交通省ではPPG導入の可能性を検討したが、切り口が交通施策に限定していたため、うまくいかなかった。しかし、本検討会の場合は、多様な施策に関連しているため、さまざまな指標を交えながら議論していくことが一つの方向性として考えられると感じた。
[3]現状では、国民に対して、地球温暖化対策とまちづくりに関する理解を深めてもらう取組が不十分であると感じたため、今後は正確な情報を提供していくことが重要だと考えられる。例えば、大都市の中心部と地方都市の郊外ではCO2排出量の差が約10倍となる場合もある。住まい方や移動手段など、まちづくりに関する工夫をすればCO2排出量マイナス6%は実行可能な範囲であるということを知らせるべきである。この検討会からもこういった情報を発信すべきである。
林委員 国内CDMに関連して、林委員から説明。

戦略(方向性)と政策(手段)を区別して書くべきである。例えば、戦略(方向性)としては、市街地を縮小する。市街地を縮小するための政策(手段)としては、郊外の放射状の道路整備をむやみに行わない、または、整備を行うにしても鉄軌道を整備する。仮に、道路を整備する場合は、どこにでもアクセス可能にするのではなく、ある程度コントロール(限定)することなどが考えられる。施策についてこのようにすれば良い、といった姿なのか、そこまでのアプローチの方法なのか、あるいは具体的な手法についてなのかを明確にすべき。例えば、車のエンジン技術を高める方向性があり、その手段として消費者に対する自動車グリーン税制が結果的に戦略として役立った。モデルの方向性及び手段を明確にすることで問題点や欠如している点がわかる。
高橋代理委員 市民、地域の違いはあるが、CO2削減・排出抑制について共通認識をいかに高めるかという視点が重要。
古倉委員 [1]p.33に関連して、まちづくり三法をつくる時、地球温暖化対策の視点はあったのか。土地利用計画などを考える際には、地球環境のような「環境」の観点を前面に押し出し、コミットしていく必要があるのではないか。
[2]市民にとってのメリットを訴える切り口が必要。例えば、自転車を利用することは経済的な効果が大きく、結果的に環境負荷の低減にも寄与する。ロンドンでは自転車利用が活性化しているが、これは中心部へ入る自動車への課金制度の影響によるものである。
善養寺委員 [1]国内CDMの話に関連して、農林水産などさまざまな関連分野があるため、省庁間連携について盛り込む必要があるのではないか。
[2]経済的なインセンティブ以外の価値の表現方法として、例えば、広報戦略的なものとして、メタボリック症候群などの健康面での貢献などを積極的にアピールすることが必要ではないか。地方の、都市化ではなく、田舎で良い、という価値観をつくっていくことも重要。
[3]日本の住宅について、戸建て、集合住宅の全国平均は参考にはならない。一戸のエネルギー消費の多少には家族構成数にも依存している。国内住宅のエネルギー消費のうち、暖房エネルギーが占める割合は大きく、マンションのような集合住宅は、部屋の配置位置によって大きく実態が異なるし、一戸の断熱性能が悪くても集合の形態上、断熱性能が良いような状況となり、暖房効率があがる傾向がある。ただ、冷房はそうならない。通風のよい戸建ての方が省エネである。日本は南北に長い国であるため、一概に北の大きな暖房エネルギーを含めて一戸当たりの平均値を算出することには問題がある。単純にコンパクトシティ化と集合住宅を増やして、CO2削減につながるか、という点については気候風土によってはそうともいえない面がある。きちんとした地域に即したまちづくりをしなければ、ヒートアイランド問題に発展する可能性がある。このような一長一短の議論があること伝えておくべきである。
粂原委員 環境問題に取り組んでいるさまざまなNPOや企業があるが、行政側はこれらの人々が環境問題を解決する種であることを認識すべき。環境省以外の省庁を始め、民間も含めてどのようなことに取り組んでいるか、また、どのような方向に向かっているのかを調べるべき。何かを始めようとしても、急に人は育たない。現状のステークホルダーの取組を確認し、環境問題に取り組んでいる人々の芽を育てることが最も重要である。
計画づくりは大事なことであるが、現在行っている事業について、一事業の決定から施行までに時間がかかり過ぎている。スピードを持って取り組むべきではないか。
三上座長 本検討会は、このメンバーだけで話し合って終わるものではなく、広く市民に対してPRすべきだろう。例えば、国レベルでは省庁間連携を進めるなど、はっきりとした方向性が出していければ良いだろう。
環境省
(小川課長)
予算の政府案を説明。
[1]「省CO2型の都市づくり」
地球温暖化対策のシミュレーションや、具体的な都市事業のサポート、補助事業などに対して、19年度予算案として、約2億5千万円。
[2]ヒートアイランド関係
クールシティのパイロット事業で具体的な街区を決めるモデル事業。5年間の事業計画で約7億円。

3.その他

次回、次次回の開催は、以下のとおりとする。
 次回  :平成19年1月26日(金)18時~21時
 次次回:平成19年2月23日(金)10時~13時(10時~12時に変更とする)