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「地球温暖化対策とまちづくりに関する検討会」
第5回会合 議事概要


〈日時〉

平成18年4月21日(金)10時00分~12時30分

〈場所〉

虎ノ門パストラル 新館5階 ローレルの間

〈出席者〉

委員:

粂原委員、古倉委員、島委員、善養寺委員、林委員、別所委員、松橋委員、三上委員(座長)、藻谷委員、吉田委員

環境省:

小林地球環境局長、桜井大臣官房審議官、佐野総合環境政策局環境計画課長、鎌形総合環境政策局環境経済課長、大倉大臣官房総務課課長補佐、芳野地球環境局地球温暖化対策課課長補佐

<委員の追加>
今年度より、宇都宮大学工学部の森本章倫助教授に参加していただくことになった。

1.地球温暖化対策に寄与する自転車の活用方策について

古倉委員 資料1「地球温暖化対策に寄与する自転車の活用方策」の説明。
  • 移動距離が300mから5kmの間は自転車による移動が時間的に有利であるが、特に地方都市においてこのような短距離における自動車移動が多い。この部分は、自転車移動に代替させる余地がある。
  • 自治体は、環境目的をお題目に自転車利用の推進を図っているが、住民は利便性や経済性が高いから自転車を利用している。このように自治体の目的と住民の目的に乖離が生じているのは問題で、利用者が何を欲しているかよく見極めて啓発すべきである。
  • 東京23区内では、この10年で自転車通勤者が3割近く増加しているが、自転車走行部が歩道や車道と分離されていないなど自転車の走行環境があまりよくない。
  • 欧米では、積極的に自転車利用を推進しており、米国などでは自転車に対し、道路利用について自動車と同等の権利義務が付与されている。また、イギリスやドイツなどでは国中にネットワークの自転車道の整備が積極的に進められている。
  • わが国の自動車の平均販売価格は、欧州諸国と比較すると著しく低い。自転車が安いため、自転車が使い捨てられ、撤去された放置自転車が引き取られないケースも激増している。安全性、快適性及び迅速性からみても都市交通として利用するには適しない。
  • 自転車の方が便利な5km圏の人が転換するだけで温室効果ガスの排出量はかなり減少する。
善養寺委員 日本と海外の自転車利用の男女比がわかれば教えてほしい。
古倉委員 日本のデータは、国勢調査を調べればわかるかもしれない。外国における自転車利用の男女比の資料がないのでわからない。しかし、パリやベルリンなどでは、女性が自転車を利用している姿を多く見かけるため、必ずしも男性ばかりではないと言える。走行距離との関係について、いわゆるママチャリは値段が安いが20~23kgと車体が重く、また1万円以下のものを調査した際、一部に欠陥が見つかった。安かろう、悪かろうの可能性がある。アルミ製の高価なものは10kg程と軽量であり、遠くまで行くことができる。安全性、快適性、迅速性を考えた場合、良い自転車を選んでほしい。
松橋委員 道路の使い方について。高齢化社会が進むにつれ、電動車いすや電動カートの利用が増えることが予想される。歩行者、車いす、電動カート、自転車、自動車の共存に関するお考えや、また、外国では専用レーンなどがあるのかどうか、事例などあれば教えてほしい。
古倉委員 自転車以外の具体的な事例は分析していない。安全面を考えると自転車と車いす、カートは別々の空間にするべきだと思う。欧米では、自転車は車道を走ることが原則なので、車いすやカートと同じところを走ることはほとんどないと思う。
粂原委員 自転車利用者が車道で自動車の後ろを走る場合、排気ガスを直接吸い込むことによる健康被害が懸念されるが、人体に対する影響について、事例があれば教えてほしい。
古倉委員 例えば、米国などでは、自動車と自転車が同じ車道を走る共用路線が多い。しかしながら、安全に関する法令があることで、自動車と自転車はお互いが走行を尊重し距離はある程度保たれるため、排出ガスが人体に及ぼす影響はそれほど大きなものではないと思う。また、外国では自転車走行空間のネットワークは交通量の激しい所は避けるので、あまり濃い排出ガスのところは結果的に避けることになる。外国では自転車を利用することによる影響、例えば、交通事故死等よりも、自転車を利用しないことにより生じる健康上の被害、例えば、肥満等で死亡する率の方が大きいと考えられている。
松橋委員 自転車利用者の健康影響に関連して、交通手段や走行ルートによる暴露量の違いについては、日本でも研究が行われようとしているところである。また、自動車道路を整備する際に、幹線沿いではなく、例えば、鉄道沿いや河川沿いにすることで、暴露を気にせず快適に利用することができると思う。
三上座長 欧米では職住接近というスタイルが浸透しており、自転車を利用しやすい環境にあるが、日本は遠距離通勤者が多い。しかし、自転車利用促進に向け、駅前に駐輪場を増やせば、例えば、駅まで向かう際にバスではなく自転車を利用する人が増えるのではないか?
古倉委員 全員に自転車通勤を勧めるということではなく、目的地まで5km圏の距離に住み、なおかつ自動車を利用している人々に対しては自転車に転換してもらいたい。

2.まちづくりのためのエネルギー消費の選好分析について

吉田委員 資料2「まちづくりのためのエネルギー消費の選好分析」の説明。
  • 大都市では自動車を利用しない距離であっても、地方都市では自動車を利用してしまう傾向がある。地方都市で増え続ける普通車、軽自動車の利用をどうするかが大きな問題。特に短距離移動は、エンジンが暖まらないうちに移動を終えてしまうので、カタログ値よりも悪い燃費(多いCO2排出量)となる。この部分については、自転車への転換を促すか、電気自動車の軽自動車の普及を目指すとよい。
  • 自動車の単体対策としては、グリーン税制による消費者の誘導とトップランナー方式によるメーカー規制があるが、CO2削減率の観点からは、トップランナー方式の方が効果的。なお、グリーン税制とトップランナー方式による規制には相乗効果が見られる。
  • 太陽光発電の普及のためには、補助金支給よりも売電価格を上げることの方が効果的。現在1kWあたり23円のところを27円に上げれば、政府目標の2010年480万kWは達成できる試算。
林委員 自動車のCO2の削減に関して、グリーン税制の施策は効きが弱く、トップランナー方式の方が効きが良いとあったが疑問がある。用いる変数によって感度は変わることがある。グリーン税制は、消費者の選好行動を通じてメーカーの供給に影響を与えるという意味で、政策手法としては優れているのではないか。
吉田委員 このモデルの結果では、特にコンパクトカークラスで燃費が良いものは売れている。一方、大型のクラスでは、年間の経費に関係するガソリン代にはグリーン税制が効いているかもしれないが、全体の流れから考えると、消費者は燃費が良いものを買う傾向があるといえる。
林委員 燃費が良いと購入の際の税金が安くなり、利用段階でも税金負担やガソリン代が低くなる。どの段階においてもコストが低いというイメージで消費者が選んでいるのではないか?
吉田委員 年間の経費を考えた場合、低コストの要素は入っている。
林委員 コストと税制の関係はもっと一般化して考えるべき。燃費の良い自動車であれば、税制は必要ない。しかし、そこに税制優遇している。トップランナー方式は企業に拠るところがあり、税制では消費者にとってどうやって買いやすくするかという視点に立っているので消費者に対する直接的な効果は十分あると思う。モデルの枠組みは意義があるので、結論を固定せず、様々な視点を入れて検討を続けていただきたい。
島委員 地方都市は、車依存社会ではなく、車必需社会である。車は必需品なので、安ければ買う。省エネ製品だから買うという人は多くないだろう。環境問題が危機的状況にあることをもっと明示し、環境負荷が重要な価値判断基準であることをもっとアピールする必要があるのではないか。
善養寺委員 自分も自動車を購入するときはあまり税金のことは考えない。燃費性能等から選んで購入し、後から税金負担が軽いことに気づくパターンなのではないか。よほど勉強している人でないと税金のことは知らない。税制優遇について一般の人たちへの理解促進には、単純明快なCMなどや、幼少期からの教育がかなり重要だと思う。
太陽光発電については補助金を打ち切っても良いと思う。太陽光発電の設置コストは現在約60万円だが、セカンダリー・シリコンの供給が追いつかず、バージン・シリコンを使わざるを得ないため、これ以下にはなかなか下がらないのではないか。高止まりというより60万円が適正価格であるというイメージを浸透させる必要がある。なお、最近個人的には効率や設置コストの安さから太陽熱温水の方を奨め、太陽光発電から温水器にウエイトを切り替えている。また、売電価格を考慮した普及予測で、普及率が100%という範囲まで予測されているが非現実的な話ではないか。
吉田委員 60万円/kWhで高止まりしてしまうという予測は、税制措置を考慮していない。普及率100%というのは数式上の値であり、現実の値の近傍のみを見るべきである。
過去に、エコ住宅について検討し、省エネの価値を評価したが、結果的に、エコ住宅においては教育や広報活動により環境意識を高めることが補助金よりも効果的であることがわかった。自動車や家電製品の選択は、省エネや機能よりもデザインなどの外形で決められることが多い。そのような不確実性を踏まえた上で定量化している。自動車の型式別シェアは個別では使えないが、全体としてのズレは少ないという統計的な信頼性はある。

3.これまでの検討内容の整理について(案)

大倉補佐 資料3「これまでの検討内容の整理について(案)」の説明。
島委員 P4の4の(1)に、「…ストックを重視し、『自然資本』を…」や、(2)の[2]に「…自然の恵みを最大限活かし…」とあるが、「社会的ストックを活用すべき」などの文言をつけてはどうか?また、P5の「郊外開発の抑制と中心部への集約」の中にある「中心部」を「集合部」といった表現に変えてはどうか?
藻谷委員 まちづくり三法でも議論になっているが、「中心部」という用語は使い方に注意が必要。地理的な中心でなくても、ある程度の人口密度が集積しているところということなのではないか。例えば、「集合部」や「中高密度地区」といった表現が良いのではないか。また、社会的費用にも区別が必要である。P4、4の(2)の[1]に「環境負荷」と「財政負担」とあるが、切り分けて記述し、両方あるということを明示すべき。「環境負荷」には、関心を持たない人もいるが、納税者の経済的利得の損失である。「財政負担」は、都市維持管理コストなどの直接の税金の損失である。
島委員 P3の3の[2]高齢化社会の記述に、「交通弱者」とあるが、交通弱者は社会が作り出している。この場合、「交通制約者」が良いと思う。
古倉委員 P4の4の(2)の[2]環境都市計画の検討に、「自然生態系」という記述が必要。都市に自然生態系の観念を導入するという上で、緑被率又は緑の容量などの指標を考えてはどうか?自然生態系を持つ里山や屋敷森などを保全していくことは重要だと思う。
粂原委員 P5「[4]人づくり」の案があるが、その前に、お金も人もない地方自治体が実際どのように持続可能なまちづくりを進めるのか、スキームの提示が必要なのではないか。
善養寺委員 粂原委員の意見に同感で、検討するための時間と費用が必要。いろいろな可能性を検討し、街まちに当てはめ、住民参加型のまちづくりが必要。都市の場合は、緑被率ではなく、緑の容積率や緑による効果率を指標にしていただきたい。また、借景権が存在するようになれば、保全につながるだろう。
島委員 我が国は国土に占める道路面積が大きく、環境負荷の少ない道路舗装の研究が進めば、活気的な温暖化対策が得られるのではないか?
三上座長 現在、透水性や保水性などについて研究しているが、例えば、舗装面の色が変わると運転しにくいといった不都合も出てくる。検討することはまだまだある。
林委員 良くまとまった資料だと思う。政策や技術を統合し、全体としてどういう方向へ向かうのかを明らかにした上で、戦略を作ることが大事。個別の政策が足を引っ張り合う場合もあるので、バラバラではなくパッケージで提示する必要がある。また、以前作った税制を現段階で見直してみると、環境改善を阻害している可能性があるので、「税制の再設計」といった検討が必要ではないか。
松橋委員 タイムスパンを明確にしてほしい。京都議定書目標達成計画の目標年次である2010年までであれば、都市の面的対策はあまり効果がないことになる。都市計画は30~100年のスパンの話であり、長期的視点を盛り込んでいくことが温暖化対策にも重要という整理を加えてほしい。また、先の発表では総費用を扱っていたが、イニシャルコストとランニングコストあるいは商品対価と税では、消費者の受け止め方が異なる(イニシャルコストの方がインパクトが大きい)と考えられる。このような歪みを税制で是正するのは有効だと思う。

4.宇都宮市におけるパイロット調査について

芳野補佐 資料4「宇都宮市におけるパイロット調査について」の説明。

5.その他

次回の開催は、平成18年6月19日(月)18時~とする。

以上