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「環境ビジネスウィメン 環境と経済の好循環を語る」(第2回)の概要



○日時 平成16年5月17日(月) 10時-13時
○会場 環境省省議室
○出席者  崎田構成員、枝廣構成員、鈴木構成員、善養寺構成員、薗田構成員、染谷構成員、堤構成員、安井構成員、小池環境大臣、松本総合環境政策局長、小林審議官、谷環境計画課長
○オブザーバー 金融機関の方々
 
【議事要旨】
  1. 小池環境大臣から挨拶
     役所というのは委員会、審議会など多いが、この環境ビジネスウィメンの会合は私は最も力を入れている。前回も非常に私自身、インスパイアされるような話を伺えて、大変元気になった。
     今日は金融機関の皆様にも集まっていただき感謝している。ここにはいっぱいビジネスの種があると思う。それをとれるかとれないかは金融機関の力次第、センス、感覚次第だというふうに思っている。
     他の皆様方にも、ぜひここに来たいと言われるような会にしていきたいと思っている。

  2. 薗田構成員、堤構成員、鈴木構成員、善養寺構成員、枝廣構成員からこれまでの経験、意見等について発表。

    (薗田構成員)
     クレアンはクリエイティブな仕事が好きでライフワークとしてやっていきたいと思い、1988年に女性を中心にマーケティング会社として設立した。1995年ころから環境情報をインターネットで発信するようになり、現在は環境報告書あるいはサステナビリティーレポートと呼ばれる企業の環境情報の発信の媒体を主につくっており、サステナブルな社会をつくることを目指している。
     環境報告書は企業と社会のコミュニケーションツールとしての社外的(社会的)役割とマネジメントツールとしての社内的役割の2つの役割があるが、最近の流れとしては環境だけでなく社会面、経済面も入れていこうというサステナビリティレポートや企業が社会的な責任もちゃんと入れていこうというCSRレポートという形に向かってきており、サステナブルな社会に向け、企業が社会と信頼関係を築くためのコミットメントツールになってきている。
     サステナブルな社会に向けては、CSRは企業だけでなく市民も巻き込んでやっていかなければならないという意味でシチズンソーシャルレスポンシビリティも持っていかなけらばならないと考えている。
     提言としては、環境と経済の好循環ビジョンの中でシナリオだけでなく、具体的な行動計画を織り込んでいただきたい。企業に対しCSRに立脚した企業ビジョンとその長期行動計画をつくりなさい、ということを言っていただきたい。小池大臣に、環境CSR大臣という形になっていただき、省庁横断的な役割を果たしていただければと思う。

    (堤構成員)
     タケエイは建設混合廃棄物という廃棄物の専門処理会社で、現在は、処理の機械化、リサイクル素材の利用技術の開発、分別小口回収に始まる循環型ロジスティクスの研究に取り組んでいる。
     建設混合廃棄物という廃棄物は、現在、大方が埋め立て重視の処理に回っているが、それは悪貨という悪循環、埋立本位という悪循環、リサイクルの要求のない公共施設、低レベルなリサイクル品という4つの要素がリサイクルを阻害していると考えている。これらの処理の世界こそ、率先して物質循環を万能にする経済システムへと考え方を切りかえていかなくてはならない。
     多品目ジャンルのリサイクルは可能であるが、現場と中間処理施設の間を中継がない状態で動くということは非常に大きなコストがかかるため、小口回収がシステムとして動くには課題がある。
     行政に期待することは、1つ目として、多品目の分野に埋立ありき、という選択肢がある限り、リサイクルは育たないということに目を向けていただきたい。2つ目として、第三者機関なりの形で、このサービス業の世界に権威ある価格、あるいはリサイクルの質、そういったものを問う仕組みをつくっていただきたい。
     環境物流について、ロジスティクスの機能の中に安定供給、品質平準化などのつなぎの技術を盛り込むことが求められてくると思う。こういった分野をさらに支援していただきたい。
     女性へのアドバイスは、もし廃棄物を望まれる方がいたら、自分の中にしっかりとした目的を持って、広い視野で考え、希望を持って循環の回路づくりに参画していただけたらうれしい。

    (鈴木構成員)
     平成15年10月にNPO法人環境リレーションズ研究所、同年12月にエコロジカルスタンド(株)の2つの法人を立ち上げた。個人事業主のころから目指したことは、一般生活者と中小企業者の「環境の環」の中への参加促進のための下地づくり、現状まったく環境ムーブメントの中に入ってこれない人たちを引っ張り込むための下地づくりで、これがNPO法人環境リレーションズ研究所のビジョン。もう一つが、環境で売上を伸ばそうとする事業者のプロモーション強化のお手伝いで、こちらが、エコロジカルスタンド(株)のビジョン。
     具体的には、普通の生活者の興味の傾向、声の収集のための「環境コミュニティ運営」、知りたい・聞きたいにまとめて答える場所としての「環境情報ナビゲーションシステムの構築」、専門的過ぎるコンテンツを生活者向けに通訳するという「専門コンテンツのインタープリテーション」、環境関連技術の評価、特許の申請代行、顧客ネットワークの運営代行等「環境商品・事業のプロモーション支援」等を行っている。
     今後の取組は、NPO法人としては、第三者としての中立公正な対場から、環境対策事業に対応しうる優良な、信頼できる事業者を選別する環境対策ニーズの橋渡し事業を、エコロジカルスタンド(株)としては、環境ビジネスにおける需給双方の事業者のデータベースをもとに営業セクションの代行、ビジネスマッチングといった環境プロモーションサポートをしていく。
     行政の役割として期待することは、環境政策に関する省庁間の串刺し的な機能の提供調整役・施策コーディネーター、それで環境対策事業に関する企業間ネットワークの構築。「環境」をキーワードにした生活者、市民、NGO、企業、行政共通参加型の場所をつくっていただきたい。

    (善養寺構成員)
     オーガニックテーブルという設計事務所を営んでおり、環境と共生する建築という切り口で事業を展開している。
     自分の家を実験住宅として、あれこれチャレンジしてみることで、施主に対して自信を持って様々なことを勧めることができるようになり、この住宅は大きな広告塔として、環境建築の情報基地のようになっている。 
     現場管理の一環として、職人への技術指導なども行っている。建築をより性能良くつくるには、個々の職人が建物の性能の意味を知って、自分の役割を理解することで大幅に違ってくる。環境建築に取り組んでいけばいくほど、施主にも、現場にも同業者にも環境活動の知識や環境教育の必要性を感じる。
     昨年、環境省に既存校舎のエコリノベーション&環境教育というタイトルの環境政策提言を行い、採択され、今年度は具体的な方策を明らかにするためのフィージビリティ調査を請け負うことになっている。
      行政への期待は、一つが政策提言で出したことのほかに、ソフトに対する評価のできる国にしてほしいということ、事なかれ主義の役人ではなく、仕事の目的達成を目指して知恵を貴ぶ公務員を育てていただきたい。
     エコ住宅は高いと言われるが、自然エネルギーや自然環境をうまく利用することで、ワンランク上の生活クオリティを得て心地よさや健康といった金額でははかれない付加価値を得ていることを考えれば、初期投資は必ずしも贅沢ではないと思う。本当の経済性は何なのか知らせる必要があると感じる。
     環境分野で仕事をしたい女性へのアドバイスとしては、融資面では女性は不利だということ、多くの知識と経験に培われた個人のスキルが物をいうので、長い下積みが必要となるが、建築に限って言えば女性であるハンディはないので、誇りある職業を目指すのであれば、精神的な余裕を持って、長い目で先を見て、目的を持って精進することだと思う。環境ビジネスは発展せざるを得ない分野なので、仕事の種はいっぱいあると思う。

    (枝廣構成員)
     NGOのジャパン・フォー・サステナビリティ(JFS)は日本の色々な環境の進んだ取組みとか、技術とか、考え方、昔からの知恵、匠の技、これを世界に発信しようと考えてつくったNGOで、基本的に月30本、日本の色々な取組みをWebに載せて海外に配信している。それに対して海外からたくさんのフィードバックがきている。記事を出す仕組みはボランティアですべて回している。
     (有)エコネットワークスは通訳や翻訳、そして企業への環境コンサルティングを提供している会社で、JFSの財政的支えとなっている。
     (有)イーズは、自分のできることを通じて、さまざまなものとのつながりを取り戻し、自分の頭で考えて、自分で選ぶ人をふやす、変化の担い手を育てて、そしてネットワークを広げていきたいという思いから立ち上げた会社。
     もともと環境に関心のある人たちにもっと知ってもらうのも重要だが、環境では関心のない、そういう本は読まない、講演会に来ない人たちに違う切り口で来てもらって、でも同じ重要なメッセージを伝えていけたらと思っている。
     行政に期待することは、50年後の日本をどうしたいのか、そのためには行政はこれが必要だ、一般の人はこれをやらなくちゃいけない、企業はこういう役割だというふうにみんなが共有できるビジョンを示しその仕組みをつくることと、お金の流れを変えることだと思う。情報とかニーズ、シーズの出会う場を設定し、顔の見える日本の環境の取組みを世界に発信していただけたらと思う。
     アドバイスとしては、環境の仕事というのは何も会社の名前に環境とか、いかにも環境をやってますというものではなくて、どこにでも見つけられると思っている。環境の時代はビジネスチャンスだというが、個人にとっても史上最大の生きがいを見つけるチャンスではないか。

  3.   意見交換

    (染谷構成員)
     女性と環境とビジネスとなると結構大変で、まだまだいないと思っていたが、話を聞いて、現場でやっている方が本当に大勢いるということを心強く思った。次の社会はどうしていくかというのは見えているが、その中で動かないもどかしさがあって、でも何とか切り開いていこうというところで現場の皆さんが頑張っていることに感動、関心した。私もインスパイアされて、また何かを広げていく力にしていきたいと思った。

    (安井構成員)
     とても勉強になった。皆さんの仕事とか考えを伺って、さらにグレイスが考えているグリーン雇用というものが、ここにお集まりの皆さんに対しても、きっとお役に立てる会社として成長していきたいと感じた。

    (薗田構成員)
     報告書ビジネスとして非常にかかわっている時間が長い分、事業が大きくなればなるほど、あるいは、かかわる人間が増えれば増えるほど、資金繰りが大変になる。お金の流れを変えるという意味では、大企業がCSRを進めて、それをSRI、社会的責任投資の方にどんどん持って行くという、その流れはものすごく重要だと思うが、できれば、ソーシャルベンチャーとかエコベンチャーとかやっている人たちをどんどん頑張って支援していくようなサポートの仕組みが日本の金融機関としてできればと思う。

    (善養寺構成員)
     保証協会も、もう少しあり方を考えてもらえたらいいと思う。以前、継続融資をお願いした際、個人から法人になったことで狭間で借りられないという現実があった。今の環境ベンチャーに対しての融資枠というものが理由らしいが、気づかずに狭間でかなり苦労しなければならない部分を改善していただけたらと思う。

    (鈴木構成員)
     私も金融機関であまりいい思いをしたことはないが、今までの環境商品とかサービスみたいなものを金融商品の中に取り入れようと、逆に提案くださった金融機関の女性もいました。そういう方のセンスみたいなものを大事にしていただくような行内の社風はどうなっているのかお話を伺えたらと思っている。

    (薗田構成員)
     融資ということでいうと、情報とかソフトはなかなか認めてもらえない。ただ、だんだん時代も変わってきたので、人を見てもらったり、ソフトの部分できちんと将来どんなふうになるかというビジョンをつくっていかなくてはいけないと思う。

    (堤構成員)
     私の会社は、ずっとダーティーな世界との戦いで信用はほとんどいただけず、お金ではかなり苦労した。コミュニケーションあるいは情報、こういったものを我々は持ち合わせていなかったが、最近では金融機関にお話をさせていただく際、我々はこうゆうことをしていて、こういう考えで、実はこういう状況であるといったことを伝える姿勢をもてるようになった。昨年、リサイクルピアという大変大きなお金が動く施設の調達の際、金融機関の方に色々な意味でかかわってもらい、まったく変わってきたなと感じることが多くなった。

    (枝廣構成員)
     よいコミュニケーターの3原則は、第1に伝えたい、伝えるべき内容を持っていること、第2に伝えたいという気持ちがあること、第3に伝えるためのスキルを持っていることだと思う。また、学習スタイルは人によって様々であるので、何かを伝えるときに、単に印刷媒体として目から入るだけではなくて、色々なツールでやることが必要じゃないかと思う。
     お金の話で言うと、金融業界においても、環境にかかわる事業に融資を有利に行って いるとか、お客様に配るノベルティも環境製品にするとか、色々な形で少しずつやって いるところがある。私たち一般の人たちが、そういう先駆的な取組みをしているところ を応援していく必要があると思う。

    (崎田構成員)
     色々な立場を超えて、企業、市民、そして行政のメンバーなどがパートナーシップを組んで、情報を交流させ、ともに社会をつくっていくという、信頼関係づくりが非常に重要だと思う。
     活力ある人をどういうふうにもっと育てていくか、そしてその人たちがしっかり働ける場をつくっていくか、そこがポイントとして大切だと思う。

    (小池環境大臣)
     国富の使い方が、今、極めて重要な課題。行政としてのチャンネルのつくり方であるとか、国の富の使い方を考えていく必要があると強く思っている。
     環境の原点は身近にあるというのは、まことにその通りだと思っている。
     環境と女性の感覚・視点・経営のこまやかさ、そして経済、この3点は新しいビジネスの3要素だと思っている。その裾野はどんどん広がりつつあるので、金融機関の皆様にしっかりとバックアップしていただくことによって、日本の経済、社会のシステムそのものも変えることができるのではないかと思っている。
※ 次回は6月9日(水)4時から。