生物・水産資源・水環境問題検討作業小委員会(第9回)会議録

1.日時

平成27年2月26日(木)10:0~12:00

2.場所

アクロス福岡 606会議室

3.出席者

小委員会委員長 青野英明委員長
委員 岩渕光伸委員、古賀秀昭委員、滝川清委員、速水祐一委員、本城凡夫委員、山本智子委員
専門委員 鎌賀泰文委員、大村浩一委員、川村嘉応委員、藤井明彦委員、松山幸彦委員
事務局 水環境課閉鎖性海域対策室長、水環境課閉鎖性海域対策室長補佐

午前10時 開会

○高山室長補佐  定刻よりは2分ほど早いですけれども、委員の先生お集まりいただきましたので、ただいまから有明海・八代海等総合調査評価委員会 第9回生物・水産資源・水環境問題検討作業小委員会を開催いたします。

 最初に、本小委員会は公開の会議となっておりますことを申し上げます。

 委員の出席状況についてですが、欠席の連絡を柳原委員よりいただいております。また、本日は評価委員会の岡田委員長にもご出席いただいております。

 続きまして、環境省水・大気環境局水環境課閉鎖性海域対策室長の根木よりご挨拶を申し上げます。

○根木室長  おはようございます。環境省閉鎖性海域対策室長の根木でございます。

 本日は皆様、ご多忙のところお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。作業小委員会の開催に当たりまして、一言ご挨拶を申し上げます。

 有明海・八代海の再生につきましては、有明海・八代海等を再生するための特別措置法に基づいて、関係省庁、関係各県がそれぞれ各種対策を実施しているところであります。しかしながら、昨年も赤潮の発生、有明海湾奥部で貧酸素状態が続くなど、生き物の生息には厳しい環境となりました。また、今年も一部の海域で珪藻赤潮の発生によるノリの色落ち被害が発生するなど、有明海の現状は予断を許さない厳しいものとなっております。

 本小委員会では、有明海・八代海で生じている二枚貝などの問題点を特定しまして、さらにその原因、要因に対して効果的な対策を検討していただくという重責を担っていただいております。昨年度、今年度と、二枚貝、赤潮、貧酸素についてご議論をいただきました。また、昨年12月に開催した評価委員会では、評価委員会報告書を平成28年を目途に取りまとめるという方向性を打ち出されたところであります。本日は、これまでの検討結果及び新たな調査結果を踏まえて問題点を総合的にご検討いただきたいと考えております。委員の皆様方におかれましては忌憚のないご意見をいただければと考えています。どうぞよろしくお願いします。

○高山室長補佐  続きまして、配付資料を確認させていただきます。

 まず、議事次第が一番上にございまして、続きまして資料1として委員名簿、それから資料2といたしまして、昨年12月に開催されました第34回の「有明海・八代海等総合調査評価委員会報告について」という資料でございます。次が目次のイメージ図がついてございます。それから資料3といたしまして、「有明海の二枚貝類と貧酸素、赤潮との関連の検討について」、それから資料4といたしまして、「有明海二枚貝類の減少要因解明等調査について」という資料が配られております。参考資料につきましては、午後1時半からこの場で開催予定の海域再生小委員会の配付資料を添付させていただいておりますが、これは委員のみの配付とさせていただいておりますので、ご了承願います。不足の資料等がございましたら、事務局までお申しつけください。

 報道取材の皆様につきましては、これ以降のカメラ撮影はお控えいただきますよう、よろしくお願いいたします。

 これ以降の進行は、青野委員長、よろしくお願いいたします。

○青野小委員会委員長  本小委員会の委員長を務めております青野でございます。よろしくお願いいたします。

 それでは、議事を始めさせていただきます。本日の議題については、議事次第にありますように、まず「有明海・八代海等総合調査評価委員会報告」について、昨年12月に評価委員会に報告された内容について事務局からご説明いただきます。続きまして、これまで当小委員会で検討してきた二枚貝類と貧酸素、赤潮との関連につきまして取りまとめたものを速水委員からご報告いただきます。最後に、環境省が実施している有用二枚貝類の減少要因解明等調査についての中間報告を、実務を担当している西海区水産研究所の松山委員からご報告いただきます。

 それでは、議題1、有明海・八代海等総合調査評価委員会報告について、事務局からご説明お願いいたします。

○高山室長補佐  昨年12月に開催されました第34回有明海・八代海等総合調査評価委員会におきまして、平成28年度をめどに委員会報告を取りまとめることが決まりました。少しその経緯をご説明したいと思います。

 まず、平成23年8月に有明海・八代海を再生するための特別措置に関する法律が改正されました。改正特措法の第25条の委員会の所掌事務といたしまして、国及び県が第18条第1項の規定により行う総合的な調査の結果に基づいて、有明海及び八代海等の再生に係る評価を行うこととされております。

 平成23年10月に改正法の下で初めて開催されました第28回有明海・八代海等総合調査評価委員会におきまして、いつまでに再生に係る評価を打ち出すかについては、審議を進める中で、評価項目の具体化、審議体系等とともに決定していくこととされておりました。それに基づきまして、評価委員会は第29回で、生物資源をめぐる問題に係る原因・要因発生の究明を進める、それから有明海及び八代海の再生に向けて科学的な見地で成立し得る再生像を具体的に提示するとともに、その再生像を実現し得るために最も効率的かつ現実的な再生手順を明らかにすると整理いたしまして、第30回評価委員会において、生物小委と海域再生小委の2つの委員会を立ち上げたところでございます。

 評価委員会報告につきましてですけれども、改正前の評価委員会報告は、特措法第25条に定められた委員会の所掌事務といたしまして、特措法施行5年以内の法案の見直しに役立てるために、有明海・八代海の再生を評価することとされていたため、この法の規定に基づきまして、評価委員会は平成18年度に評価委員会報告を取りまとめ、主務大臣に提出したところでございます。ただ、改正特措法にはそういった規定はございませんが、小委員会を含めて22回の評価委員会を開催し、審議を進める中で、有明海・八代海で生じている生物、水産資源をめぐる問題の原因・要因の議論が進んできたこと、それから関係県、関係団体からは、委員会報告を取りまとめてほしいといった要望があることなどから、再生委員会の評価を打ち出す時期を明確にする必要があるということで、平成28年度をめどに、前回の委員会報告以降の調査結果を整理した委員会報告を取りまとめることになりました。

 次のページの別添の目次(イメージ)を見ていただきたいんですけども、これは18年度報告を基本にイメージしたものです。基本的にはこれに小委員会の検討結果を加えた形の報告になると思います。この生物小委員会での検討結果につきましては、主に第4章、第5章に記述されていくことになると思います。

 以上です。

○青野小委員会委員長  ありがとうございました。

 ただいまの事務局の説明につきまして、意見、質問ありましたらお願いいたします。特にございませんでしょうか。

 特にないようですので、この方向で進めていただければと思います。

 続きまして議題の2番、有明海の二枚貝類と貧酸素、赤潮との関連の検討について、速水先生からご報告をお願いいたします。

○速水委員  おはようございます。私のほうからは、有明海の二枚貝類と貧酸素、赤潮との関連の検討についてということで、ご報告したいと思います。

 二枚貝類の減少要因については、第31回の親委員会で、貧酸素については第33回の親委員会でご報告したところですが、今回はこれらについて要点をまとめるとともに、夏季の赤潮を含めた相互の関連性について整理いたしました。説明に先立って、本日のデータ等は関係各県の皆さんに多大な努力、それから時間をいただいて取りまとめたことを申し上げます。どうもありがとうございました。

 なお、お手元の資料で数点、加筆修正点がありますけれども、それらについては発表の途中で触れさせていただきたいと思います。

 今日の話のアウトラインとしては、まず有明海の二枚貝類減少の原因、要因について、これまでのまとめと補足ということでお話しします。次に、有明海における貧酸素水塊、これは復習と補足ということでお話しします。最後に二枚貝類と貧酸素、赤潮の関連についてお話しします。

 まず最初に、二枚貝類減少の原因、要因について、これまでのまとめと補足ということで、タイラギとアサリについてお話しします。サルボウについては後述します。

 まずタイラギについてです。このグラフは有明海におけるタイラギの漁獲量の変遷を示したものです。見てわかりますように、タイラギはもともと好漁と不漁の変動が大きな貝でした。しかし、2000年以降は非常に漁獲が低迷していることがわかります。現在は3期連続の休漁となっています。

 平成18年の委員会報告で指摘されていたことは、主に3つの点です。1つは、タイラギの長期減少の要因として、中西部の漁場での底質の環境の悪化、それによる着底期以降の成育場の減少です。2つ目は、タイラギの短期的減少の要因として、北東部漁場での立ち枯れへい死とナルトビエイによる食害が挙げられています。3つ目に、解明を要することとして、長崎県海域での減少要因、タイラギ幼生の輸送状況に及ぼす潮流変化の影響、それから大量へい死発生のメカニズムが挙げられています。

 この写真が北東部漁場で大きな問題になっている立ち枯れへい死の状況です。

 次に示すのは、1976年から1999年までのタイラギの成貝の分布です。これを見ますと、1970年代から90年代にかけてはタイラギは有明海の奥部全域に分布していたことがわかります。その後、分布が湾奥の東部に偏るようになり、西部の漁場での漁獲が減少しました。

 続いて示すのが2009年から2012年の分布です。不漁が続く中で、2009年に限って特異的に西側にタイラギが多く分布したことがわかります。これが貝柱重量で100トン以上という、久々の豊漁につながりました。ただし、これはこの年だけで、続く年には再び大量死が生じて、漁獲が減少しました。

 こうした西と東の漁況の違いについて考えるために、底層の溶存酸素との関係を見てまいります。このグラフは、縦軸に1996年以降の年、横軸に4月から3月にかけての季節をとったものです。黒色のバーはタイラギの大量死が起きた時期を示しています。そして黄色が、溶存酸素濃度が3mg/L以下の期間、そして青色が1mg/L以下の期間を示しています。これを見ると、大量死が主に東部海域で起きていること、そしてそれが必ずしも貧酸素と対応していないことがわかります。西部海域で大量死が目立たない原因は、そもそも着底稚貝の数が少ないためです。

 こうした中で、2010年に起きた西部海域での大量死について少し詳しくお見せします。図の一番上の折れ線グラフがタイラギの成貝の割合を示しています。赤色の線が中央部の測点19で、緑色の線が沖側の測点22の結果です。そして、この縦棒で示すのが佐賀における降水量になります。また、下の図は、底層における溶存酸素濃度の分布を示しています。これを見ますと、7月上旬に最初のへい死が発生し、その後、小康状態が続いた後、8月の上旬に2回目のへい死が起きて、ほぼ壊滅したことがわかります。このうち、最初のへい死については、貧酸素はまだ始まったばかりであり、6月中旬からの大量の降雨の後に起きていることがわかります。ここでは示しておりませんが、このときには底層まで塩分約25までの低塩分化が生じており、それがへい死の主要因になったと考えられます。一方で、8月上旬に関しては、貧酸素が持続的に続いており、それがへい死の原因になったと考えられます。

 その状態をさらに詳しく見るために、西海区水産研究所による、沖神瀬西における底層DOの連続データをお示しします。この折れ線は、この近くの測点3におけるタイラギの生存率を示しています。これを見ますと、飽和度で20%を下回るような貧酸素が1週間以上続いた後に全滅という急激なへい死が起きたことがわかります。

 次は、2010年から11年にかけての東部海域における大量へい死の様子です。福岡県水産海洋技術センターのデータをお示しします。上段のグラフがタイラギの生息密度、下段のグラフが生きた貝の割合を示しています。赤いハッチをかけた部分が大量死が起きた時期を示します。これを見ますと、冬季のだらだらとしたへい死と、それから夏季の急激なへい死という、2つの時期にへい死が起きていることがわかります。現時点では、なぜこの時期にへい死が起きたのかについて原因解明には至っておらず、今後の重要な課題となっています。

 続いて、タイラギの浮遊幼生についてです。こちらは前回の平成18年の委員会報告から持ってきた図ですが、この当時、漁獲の低下は問題になっていたものの、浮遊幼生の密度は豊漁期に比べても決して少ない量ではありませんでした。しかし近年になって、この浮遊幼生の量が激減しています。このグラフは全国水産技術者協会に提供していただいた、有明海奥部におけるタイラギの浮遊幼生の出現密度の経年変化を示しています。これを見ますと、2008年から2011年までは年による変動はあるものの、ある程度の浮遊幼生の出現が見られたのですが、2012年以降に激減して現在に至っていることがわかります。

 以上、タイラギに関しての内容をまとめますと、まず、湾奥西部浅海域においては、貧酸素水塊の発達や低塩分によってほとんどの資源が消滅する現象が繰り返されています。次に、湾奥西部海域では、タイラギ大量死を引き起こす溶存酸素濃度は飽和度で20%以下であると推定されます。湾奥東部浅海域に関しては、大量死が頻発していますが、貧酸素の発生は西部よりも軽微であり、因果関係は不明です。一方、東部海域では産卵期を中心とした立ち枯れへい死が最大の減耗要因であり、これに対しては引き続き原因解明が必要です。そして、2010年以降、タイラギ浮遊幼生の高密度出現期間が短くなり、2012年以降、連続して浮遊幼生の出現がほとんどなく、着底稚貝減少による資源の凋落現象が非常に顕在化していることがわかっています。

 続いて、アサリです。

 このグラフは有明海におけるアサリの漁獲量の経年変化で、下のグラフは福岡県海域における冬季のプランクトン沈殿量の経年変化を示しています。これを見ますと、冬季のプランクトン沈殿量の変化はアサリの漁獲とよく一致していて、プランクトン沈殿量が多かった時期にアサリの漁獲も多かったことがわかります。

 次に示す2つの図は、熊本県の主力漁場の緑川河口域における2000年以降のデータで、熊本県による春と秋の調査結果を示しています。こちらが春でこちらが秋ですね。下の図は、春・秋における殻長の組成になっていますが、これを見ますと、春の調査の結果では、この時期の個体の多くが前年の秋に発生した貝であることがわかります。上の図は2006年以降にアサリ資源が回復したことを示していますけれども、こうした秋生まれ群が資源増大に寄与しています。このときの増加は漁獲の回復にまで結びついています。しかし、近年は再び資源量が低迷し、秋だけではなく春生まれ群も低密度になっていまして、再生産サイクルの低下が顕在化しています。

 次の図では同じく緑川の河口域におけるアサリの浮遊幼生の出現状況を示しています。資源が比較的回復した平成13年から20年ぐらいにかけては、秋の浮遊幼生の発生量が多くなっていることがわかります。しかし、その後、浮遊幼生発生量は減少して、近年はほとんど周期の山が見られなくなっています。

 次に、これは資源が比較的高水準にあった2002年から2011年にかけてと、それから資源が減少した2009年から2011年にかけてのアサリの肥満度の季節変化の平均値を示します。このグラフを見ますと、資源が高水準であった時期には親貝の秋の肥満度も高かったのに対して、資源が減少すると秋の肥満度が下がっていることがわかります。これは、資源量が多かった時代は肥満度が高く浮遊幼生の量も多かったのが、資源が減少期になると親貝の肥満度が低下して、それに伴い浮遊幼生量も減少すること、着底稚貝も減少することを示しています。

 以上、アサリについてまとめますと、有明海中部東部海域のアサリ資源は2009年以降に激減しています。資源の減少は、稚貝の発生状況、特に秋季発生群が低迷していることが主要因です。そして、平成21年度以降、秋季発生群に影響すると思われる夏季のプランクトン沈殿量の低下とアサリ肥満度の減少が顕著になっています。このことが親貝の成熟度を低下させ、結果的に浮遊幼生の発生量、稚貝発生量が低位で推移する原因となっていると推定されました。

 次に、有明海における貧酸素水塊について復習と補足を行います。

 この図は有明海の貧酸素水塊の分布を示したものでありますけれども、このように湾奥西部を中心にした海域と諫早湾の2カ所で貧酸素が発生することが知られています。

 次に、貧酸素の発生状況についての補足です。これまでの委員会では、有明海奥部と諫早湾以外では、有明海の海域では貧酸素は確認できないと報告してまいりました。しかし今回、国交省の調査から、熊本市沖、このラインのこのあたりになりますけれども、そこで夏季に貧酸素水塊が発生していたという事例が確認されました。

 続いて、長期的なDOの経年変化についてご紹介していきます。まずはこれまでのレビューですけれども、滝川ら(2003)によると、1976年から2000年の測点4では4.3mg/L以下の出現には大きな違いはないと報告されています。一方、速水ら(2006)では、1972年から2001年7月のデータから、同じ成層強度ではDOは低下傾向にあること、特に観測点1で最も優位であることが示されています。また、佐賀県有明水産振興センターの2013年の報告では、佐賀県海域は7月から9月の表底層の差が年によって顕著で、測点3・4・5・11では7月、8月の値が低下する傾向にあると報告されています。一方、福岡県海域では特段の傾向は見られません。

 次に、西海区水産研究所による、これらの点における自動観測データの解析結果をお見せします。このグラフは、この自動観測によって得られた7月から9月の底層溶存酸素濃度の平均値を示しています。T1からP1までの4点のデータです。これを見ますと、平均溶存酸素濃度は4点のうちP6で最も低いことがわかります。また、2006年、2012年は特に平均飽和度が低いですが、これは密度成層の長期継続により、貧酸素の継続時間が長く、貧酸素化が進行したことによるものだということがわかります。

 次に、これらのデータを佐賀県による月1回の浅海定線調査データと比較します。といいますのも、有明海奥部の貧酸素水塊は小潮時に発生しやすいのですが、一方で浅海定線調査は大潮時に行われているため、貧酸素の長期変化を見るためには不適であるという指摘がなされていたためです。上のグラフは、佐賀県による浅海定線調査データの測点5の7月の底層のDOです。これを先ほどお見せした連続観測の底層DOの平均値と比較しました。横軸が連続観測の底層DOで、縦軸が浅海定線のDOになっています。左のグラフは連続観測のP6と浅海定線のステーション5のデータを比較したものですけれども、両者の間には非常によい正の相関が見られます。右のグラフは連続観測の4点を比較したものとの間でも高い相関が見られます。ただし、これは測点5について非常に高い相関が得られたもので、浅海域については必ずしもこのように高い相関は得られていません。これは浅海定線のデータは大潮時のデータのために、浅海域は鉛直混合しており比較できないということを示しています。ただし、湾の中央部では、出水によって成層強化される7月には成層が大潮時でも維持されているために、このように十分な代表性があると考えられます。

 そこで、この浅海定線調査データを解析した結果についてお見せします。ここでは年々の出水等の影響を除くために、連続する10年ごとについて成層強度と底層DOの回帰直線を求めまして、その回帰直線上で一定の成層強度のときの値をDOsとしまして、その変動を見ることにしました。この線が測点1の結果で、この線が測点1から10の全データの平均です。これを見ますと、測点1が最もこの回帰直線の代表性が高い点ですけれども、この点と、それから全点平均した場合とで、傾向としてはほぼ一致することがわかります。そして、このように成層強度を除外しますと、過去30年間で有明海奥部の7月の底層DOは低下傾向にあることがわかります。

 このように成層強度に関係なく底層DOが下がっているということは、酸素消費速度の上昇を示唆しています。過去30年間で底層の有機懸濁物が増えたのではないかということが示唆されるわけです。

 そこで、底層のCODと比較してみます。グラフのこちらがCODの軸で、注意していただきたいのは、下ほど大きくなるように逆向きに目盛りを打ってあることです。これを見ますと、DOsの経年変動と珪藻のCODの変動は非常によく対応していることがわかります。このことは、底層の有機物の増加が貧酸素ポテンシャルの増加に寄与したことを強く示唆します。

 そこで、2012年までデータを増やして解析した結果が次の図です。ここでは、底層のCODについて、11年間の移動平均を掛けたものをあわせてプロットしています。こちらのグラフは、この11年移動平均した底層のCODとDOsの関係を見たものですけれども、両者の間には非常に強い負の相関があり、底層のCODが多いほどDOsが下がっている、すなわち貧酸素化しやすくなっていることを示しています。この結果は、有明海奥部では1990年代以降、底層の溶存酸素濃度が低くなるというポテンシャルを持った状態が続いていて、近年やや回復しているものの、それでも1970年代から80年代前半に比べると低い状態にあることを示しています。

 続いて、数値シミュレーションによる検討です。ここでは1930年代と1977、1983、1990、2001年の比較を行った永尾ら(2010)の結果をご紹介します。ここでは1930年代、1977年、1983年、1990年、2001年における有明海奥部と諫早湾における貧酸素水塊の容積、これは縦棒ですね、それから溶存酸素の存在量を示しています。これを見ますと、1983年から1990年にかけて貧酸素が大きく発達している様子がわかります。諫早湾については、1983年以降、2001年にかけて増えています。

 その原因について検討したのが、こちらの図です。上の図は、水柱で平均した鉛直拡散係数の変化で、左が湾奥西部、右が諫早湾になっています。これを見ますと、湾奥西部では1983年から2001年までの間でほとんど変化がないことがわかります。一方、諫早湾では1990年から2001年にかけて減少しており、これは諫早湾の潮受け堤防建設の影響を示しています。

 また、湾奥西部について、M2分潮の振幅の18.6年周期の変動を示すf値と、それから鉛直拡散係数の強さを比較したのが右の図です。これを見ますと、潮汐振幅が小さくなると鉛直拡散が小さくなり、大きくなると鉛直拡散が大きくなるという明瞭な対応が見られます。

 次に、全酸素消費量の湾奥西部における経年的な変化を示します。これを見ますと、1983年から1990年にかけて酸素消費量が増えていることがわかります。こうした変化は、先ほどの浅海定線調査の解析結果と整合的です。

 次の図は、湾奥での一次生産量の変化を示したものです。濃いグレーで示した部分が、そのうち二枚貝によって捕食された量を示します。なお、有機懸濁物の分解が酸素消費の原因の約半分を占めていまして、さらに有機懸濁物の95%が一次生産起源となっています。これを見ますと、1983年から90年にかけて二枚貝による捕食が減少しており、一次生産のうち、利用されずに海中で分解されるものが増えたことがわかります。

 さらにこちらは、二枚貝に利用されなかった湾奥の一次生産量の変化について、その要因を調べたものです。これを見ますと1930年代からの地形の変化が最も大きく効いていて、続いて月の昇交点変動の影響が効いていることがわかります。

 さらに、月の昇交点変動と貧酸素水塊の容積の関係を示したのがこちらの図ですけれども、潮汐振幅が大きくなりますと貧酸素水塊が小さくなり、振幅が小さくなると貧酸素水塊が大きくなることを示しています。これは二枚貝の減少が一次生産の増加をもたらしていること、それから外海の潮位振幅の変化の影響を無視できないことを示しています。

 月の昇交点位置の変動について触れましたので、潮汐振幅の長期変化についても触れたいと思います。このグラフは、上が大浦、下が長崎におけるM2分潮の潮汐振幅の1970年からの変化を示しています。黒の実線が実測で、赤の線がそこから18.6年周期の変動を除いたものです。この点線の変動ですね。これを見ますと、潮汐の振幅の変化で最も卓越するのは月昇交点位置の変化の影響であることがわかります。ただし、それに加えて長期トレンドがあり、2000年代の有明海は過去40年間で最も潮汐振幅の小さい時期であったことがわかります。このことから、潮汐は確かに減少しており、これは潮流にも影響したであろうということがわかります。また、こうした長期トレンドは、有明海の奥部と有明海の外の長崎でよく一致しており、外海の潮汐振幅変化が有明海の内部にまで影響したと考えられます。

 次に貧酸素水塊の経年変化についてまとめていますけれども、これは時間の都合で飛ばして先に行きたいと思います。

 最後に、二枚貝類と貧酸素、赤潮の関連についてです。これは右の図が第32回親委員会で、海域再生小委から報告された有明海の海域区分となります。水質の観測結果によって分けられた海域が、黒線で囲った黄色の水域で示されています。一方、左の図は第31回の親委員会で生物・水産資源小委から報告したタイラギに関する海域区分になっています。このように、諫早湾、有明海奥部の浅海域が2つ、それから湾奥の干潟域というように分けられています。下の図は、サルボウについての海域区分ですけれども、サルボウに関してはこのように湾奥部を大きく2つに分けています。さらに、次はアサリについての海域区分ですけれども、アサリに関しては、諫早湾、湾奥の干潟域、熊本県沿岸の干潟域の、この3つに分けられました。

 今回は、これら3種の海域区分について、できるだけ海域再生小委の区分に対応できるように再検討するとともに、今後の海域管理に向けた利便性のために、全ての種について同じ海域区分を適用するように検討しました。二枚貝の分布には底質が大きく影響します。この図は有明海奥部の干潟を含めた詳細な底質図です。左が砂分の割合、右が粘土・シルトの割合を示したものですけれども、これを見ますと、全体として西側が泥質、東側が砂質ないしは砂泥質だとわかります。

 また、二枚貝の分布にとっては、干潟域と浅海域という違いも重要な要素です。干潟域は干出の影響を受けるだけでなく、夏季でも鉛直混合が強く、強い密度躍層が形成されにくいという特質を持っています。そこで、有明海奥部を大きく浅海域と干潟域に分けまして、さらにそれを底質によって湾奥西部と東部、湾奥干潟域西部と東部に分けました。さらに熊本沿岸は、アサリ漁場となる干潟域だけで一まとめにしました。今回はこのような海域について、問題点と要因の関連性を検討いたしました。こうして見ますと、ほぼ海域再生小委で行われた海域区分と対応することがわかります。

 次に示すのは、やはり海域再生小委から提案されている、有明海における問題点と原因、要因の連関図の例です。委員会の次期報告書では、海域ごとにこうした連関図を作成する方向で検討されています。一方で、これは第31回の委員会で生物・水産小委からお示しした図ですけれども、今回はこの図をベースにして、各要素の関連がよりわかりやすくなるように、これまでの研究結果をもとに再検討いたしました。なお、お手元の資料ではこちらが「32回」となっていますけれども、「31回」の誤りですので修正を願います。

 再検討に当たっては、6点のポイントを意識して行いました。まず、変化の期間に関する共通認識を持つということです。有明海の漁況の低迷あるいは環境の悪化と言った場合に、一体いつからいつまでの変化を見ているのかは必ずしもコンセンサスが得られていないんですけれども、今回整理するに当たっては、1980年を中心にした10年ぐらいと2005年以降の10年を比較して、その間の変化を基本といたしました。

 次に、検証されているパス、いわゆる査読つきの論文に掲載されていること、あるいはデータで説明できることを条件としましたが、そうしたパスと、そうでないパス、いわゆるまだ仮説であるというものの明確化を行いました。次に、関連が薄いと思われるパス、グレーや黄色であらわされていたパスですけれども、それは取り下げました。また、タイラギの浮遊幼生の供給のように、これまで入っていなかったものを追加しました。次に、18.6年周期の潮汐振幅の変動のように、周期的に起きている変動は除外しました。さらに、この図ではブルーの矢印で対策が入っていたんですけれども、これに関しては今回は図から省きました。

 次に、タイラギについてお示しします。これは湾奥西部海域におけるタイラギを中心にした連関図です。二枚貝につながるパスを赤で示しています。そのパスについて、論文で示されているものは論文名を、パスの検証がまだ不十分であるものはクエスチョンマークをつけて示しています。本海域のタイラギについては、生物・水産的な影響としましては、ナルトビエイの食害、それから漁獲圧、浮遊幼生の供給の減少といったものが挙げられます。ナルトビエイについては18年の委員会でも触れられていまして、浮遊幼生の減少については先ほどお示ししたとおりです。

 海域環境からの影響については、夏季の底層有機物、浮泥、貧酸素、それから冬季・春季の珪藻赤潮の減少などの影響が考えられます。底質中の硫化物に関しては、有明海で影響があるとする報告があるんですけれども、本海域については影響が小さく、それは底質が粘土質で間隙水の動きが不活発であるためと考えられています。

 次に、夏季の赤潮との関連で言いますと、冬・春の珪藻赤潮の増加、それから成層の強化がシャットネラの増加に影響した可能性が示唆されています。一方で、夏季の赤潮の増加は底層の有機物を増加させ、さらにそれは底質中の有機物、硫化物の増加、また貧酸素の促進につながっています。これについては先ほどお示ししたとおりです。さらにタイラギを含めた二枚貝の減少は、捕食圧の減少を通じて、夏季の赤潮の増加、それから冬季・春季の珪藻赤潮にも影響を及ぼしていると推定されています。貧酸素については先ほどもお示ししたとおりですので、飛ばして先に行きたいと思います。

 貧酸素の影響に関しては、フィールドデータだけではなく、現場実験からも影響が確認されています。これは郡司掛ら(2009)の論文から持ってきた図ですけれども、タイラギを繰り返し貧酸素の水に暴露した場合と、貧酸素の影響を受けない場合との生存率の比較をしています。これを見ますと、20日以上にわたって貧酸素に反復暴露した場合は、顕著に生存率が低下しています。

 次に、冬季・春季の赤潮の減少に関しては、佐賀県有明水産振興センターによる浅海定線調査で調べられているプランクトン沈殿量のデータをお示しします。これを見ますと、春季、冬季のプランクトン沈殿量は浮遊珪藻の量と対応がありますけれども、長期的に減少傾向にあることがわかります。これはタイラギにとっての餌環境が劣化したことを示すと考えられます。

 次に、秋・冬季の珪藻赤潮の減少が夏季のシャットネラの増加に影響するメカニズムを示した模式図を示します。シャットネラは春にシストから発芽し、春から夏にかけて増殖し、夏に赤潮を形成するものですけれども、春から夏の時期に珪藻と種間競合が起こります。そのために、春の珪藻ブルームが小さくなりますと種間競合が弱まって、シャットネラにとって有利になると考えられるわけです。

 次に、湾奥東部の連関図です。先ほどの湾奥西部の図に記入した文献と同じものはここでは表示せずに、追加の文献だけを示しています。タイラギに至るパスの湾奥西部との違いは、貧酸素からの矢印がないこと、代わりに硫化物の増加からの矢印があることです。これは湾奥西部と異なって、東部海域では平年は深刻な貧酸素水塊の発生が見られないこと、そして間隙水中の硫化水素がタイラギに取り込まれて底質に影響しているという可能性を示す論文があり、砂泥質のこの海域ではそれが生じ得るということが理由です。

 次に、湾奥東部、干潟域の連関図を示します。西部の干潟域についてはタイラギの成育がほとんど認められないために、お示ししていません。こちらの図では、タイラギに至るパスの湾奥西部浅海域との違いは、貧酸素の影響がないことです。これは干潟域で鉛直混合によって貧酸素の影響が小さいことが理由です。また、海域環境においては、鉛直混合が強いために、成層の強化、それから貧酸素という2つの要素が除かれ、それに関連するパスもないために、浅海域に比べるとかなりすっきりした図となっています。

 続いて、サルボウです。まず湾奥西部における連関図を示します。この図で、お手元の資料については岡村ら(2010)、それからYoshinoら(2014)等という2つの文献を追加していますので、修正をお願いします。こちらの図では、海域環境内の各要素の構成関係はタイラギの場合と同じですので、サルボウにつながるパスについてのみご説明します。

 ナルトビエイの食害については、18年の委員会報告で述べられているとおりです。それから、底質中の硫化水素によるサルボウへの影響については、岡村ら(2010)が指摘しています。浮泥の影響については、現在、研究途上であり、次の松山からの発表で触れられると思います。貧酸素の影響については、岡村らに加えてYoshinoら(2014)でも指摘がなされています。これは非常に重要な要素と考えるんですけれども、ただし、どの程度のDOでサルボウが影響するのかといった定量的な閾値の解明にまでは至っていません。また、本海域のサルボウについては、冬季の低温化あるいは出水による淡水化によっての漁業被害が報告されています。冬季・春季の珪藻赤潮の減少については、先ほどタイラギについて述べたのと同じで、餌環境に与えた影響があると思われます。また、貝の多寡は逆に植物プランクトンの量に影響すると考えられます。これについては後で説明します。

 これは、サルボウに関する貧酸素と底質悪化の影響を示したもので、こちらが水中の溶存酸素の鉛直分布の時間変化を示しています。こちらは底泥中の酸化還元電位の鉛直分布の変化を示しています。この年には、7月の終わりから8月の初めにかけて急激にサルボウのへい死が進みました。この時期の溶存酸素濃度の分布を見ますと、貧酸素が1週間以上続いており、また、底泥中の酸化還元電位については表層まで還元化が進行している様子がわかります。これらがサルボウのへい死につながったと考えられています。

 サルボウに対する貧酸素の影響に関する定量的な検討としては、金子らが三河湾で調べています。彼らは、酸素飽和度が50%を下回ると、ろ過速度が低下し、成長が停滞するということを報告しています。特に低塩分と貧酸素が重なった場合には高いレベルでえらの損傷が起き、さらに1週間以内で半数が死亡する、そのような結果を彼らは示しています。

 実際の海域では、貧酸素と硫化水素は複合的に影響していると考えられます。次に示すのは、それを示唆する佐賀県有明水産振興センターによる実験結果です。上の図の縦軸が生残率で、下の図の縦軸が硫化水素の濃度を示しています。ここでは、毎日DO1mg/L未満の貧酸素水で水かえをして飼育した場合と、連続して貧酸素下で飼育した場合の比較をしています。これを見ますと、換水せずに連続して貧酸素下で飼育した場合には、6日目以降、水中で硫化水素が発生し、それに伴って急激なサルボウのへい死が起きていることがわかります。

 サルボウに対する塩分低下・低水温の影響に関しては、宮本・初田が報告しています。左がろ過速度、右が生残率で、上が塩分、下が水温の影響を示しています。これを見ますと、水温が20℃以上では、塩分が15以下ではろ過速度が低下して、31℃では大きく生存率が低下するということがわかります。また、8℃以下の水温では塩分にかかわらず、ろ過速度が大きく低下していることがわかります。

 次は、平成23年に佐賀県海域でサルボウの大量へい死が起きたときの降水量の変動を示します。このときには平年に比べて6月中旬、7月上旬に非常に多くの雨が降りました。

 そして下のグラフが平成13年から23年までの早津江タワー、この点における塩分10以下の日数及び15以下の日数を示しています。これを見ると、塩分15以下の状態がこの年に長期間続き、それがこの年の大量死につながったことがわかります。これは宮本・初田の実験と整合的です。

 次に、サルボウの多寡が植物プランクトンに与える影響についてです。なお、お手元の資料の「淡水滞留時間の」となっているところを「物理的な交換量の」に訂正をお願いします。これは佐賀県における二枚貝の漁獲量の変動を示したものです。この90%以上がサルボウになっています。1990年代には1万5,000トン以上の漁獲があったんですけれども、2000年代に入って減少し、現在は3分の1程度にまで減っています。このサルボウのろ水量は、2001年の調査結果で1.6?/㎡/日という値であることが調べられています。

 そこで、有明海奥部のサルボウ全てによるろ水量を求めるために、これに有明海奥部の漁場の面積を掛けた値を求めると、このような値になります。

 さらに、サルボウがもっと多かった1990年代前半にどのくらいだったかを調べるために、この漁獲量が資源量に比例していると仮定しまして、この漁獲量の比と掛け合わせました。そうしますと、310×106/?/日という値が出てきます。このろ水量で有明海奥部の容積を除しますと、7.2という数値が出てきます。これに対して有明海奥部の淡水滞留時間は年平均で15日ですので、この結果は、1990年代前半には有明海奥部におけるサルボウによるろ水量は、物理的な交換量の約2倍もあったことを示しています。

 一方で、2000年代には、ろ水量は物理的な交換量の約2分の1まで低下します。すなわち、有明海奥部の水を全部サルボウがろ過するのに26日、この平均滞留時間の約倍かかるということがわかります。これだけの大きな変化は、有明海奥部の植物プランクトン濃度に十分影響を与えたと考えられます。

 そこで、ここでは秋・冬季のプランクトン沈殿量と、それから今お示しした二枚貝の漁獲量の変化を比較しました。これが先ほどお見せした二枚貝の漁獲で、細い線のほうがプランクトン沈殿量です。ここではプランクトン沈殿量が下ほど多くなるようにプロットしていることにご注意ください。こうして見ますと、両者の間に非常によい対応関係が見られます。相関をとりますと-0.56という負の相関が見られました。すなわち、二枚貝が増えるとプランクトン沈殿量は減少し、二枚貝が減るとプランクトン沈殿量が増えるという、このようなサルボウを主とした二枚貝の捕食による植物プランクトンへの影響を示唆する結果が得られています。

 続いて、有明海湾奥東部におけるサルボウの連関図を示します。こちらでの西部との違いは、有機物、硫化物からのパス、それから貧酸素からのパスがないことです。これは、湾奥東部が貧酸素化しやすいことによります。また、現場での報告では、低水温・低塩分の影響も少ないのではないかと言われています。

 続いて、湾奥干潟域西部の連関図を示します。こちらに関しても同様の連関図となっていますが、こちらの海域では低温・淡水化の影響はかなり大きいと言われています。湾奥干潟東部についてもほぼ同様です。

 最後に、アサリについて簡単にご紹介だけしたいと思います。熊本沿岸干潟域における連関図を示します。こちらの図で、お手元の資料では、堤ら(2013)、関口・石井(2003)という2つの文献が入っておりませんので、これを補足願います。

 アサリについては、生物・水産的な影響としては、ホトトギスガイの大量発生、ナルトビエイの食害、漁獲圧、浮遊幼生の減少が挙げられています。ホトトギスガイに関しては堤ら(2013)の報告があり、ナルトビエイは18年の報告書で触れられているとおりです。漁獲圧に関しては中原・那須(2002)が触れており、浮遊幼生に関しては、先ほどお示しした図とともに、関口・石井(2003)が既に報告しています。

 海域環境の影響としましては、浮泥の増加、淡水化、冬季・春季の珪藻赤潮の減少が挙げられます。ただし、浮泥に関しては実態が不明確で、現場では有明海奥部における浮泥とは質的に違うものを見ている可能性があります。一方で、アサリの減少は植物プランクトン量を増加させ、赤潮の発生状況に影響している可能性があります。いずれにせよ、これらの複数の要因の相対的重要性については検討が不十分であり、今後の課題となっています。

 以上、駆け足でしたけれども、私からの報告を終えたいと思います。どうもご静聴ありがとうございました。

○青野小委員会委員長  ありがとうございました。

 かなり豊富な内容をご報告いただきました。これから質疑に入りますけれども、アウトラインで3点、速水委員から示していただきました。1点目として、有明海の二枚貝減少の要因、これまでのまとめと補足、2点目として、貧酸素水塊の復習と補足、3点目として、二枚貝類と貧酸素、赤潮との関連ということです。まずは各項目についてご議論いただければと思います。よろしくお願いします。

 初めに、二枚貝類の減少要因についてのまとめと補足というところをやりたいと思いますが、ご質問、ご意見ありましたらお願いいたします。

 岩渕委員、お願いします。

○岩渕委員  1点確認をさせていただきたいんですけれども、アサリの最後のまとめの浮遊幼生、着底稚貝に関する概要のまとめですが。

○青野小委員会委員長  スライドの22番ですかね。右下に書いてある番号では。

○岩渕委員  22ですね、はい。③の「平成21年以降は、秋季発生群に影響すると思われる夏季のプランクトン沈殿量の低下とアサリ肥満度低下が顕著である」というところの、「夏季のプランクトン沈殿量の低下」ですが、夏季のプランクトン沈殿量は低下しているとは思いますけれども、ここでは冬季のプランクトン沈殿量の低下のグラフが載っているんですけれども、冬季・夏季に関しては、③のまとめに関しては「夏季」で正しいのでしょうか。

○速水委員  これも「冬季」に修正を願います。ここでお見せしている図が冬季でして、前回の小委員会で報告したときには、まだ夏季のプランクトン沈殿量で議論をしていたために、このような記述が残っておりましたけれども、冬季のほうがプランクトン沈殿量の代表性としても妥当だと思いますので。

○岩渕委員  冬季ということですか。

○速水委員  はい、冬季ということでお願いします。

○青野小委員会委員長  スライドの22番、③の2行目冒頭の「夏季の」を「冬季の」という修正でございます。

 そのほかいかがでしょうか。

○岡田委員長  秋季発生群でいいのかどうか。

○青野小委員会委員長  ああ、そうすると、1行目の「秋季発生群に影響すると思われる」というところも。

○速水委員  そうですね。これに関しては、持ち帰ってから回答させてください。

○青野小委員会委員長  はい。

 鎌賀委員、お願いします。

○鎌賀委員  熊本県の場合の話なんですけれども、冬場はノリの関係でプランクトン沈殿量をかなり頻度高く測定していますが、夏場は浅海定線などでの沈殿量しか見ていなくて、具体的にきちんとしたデータがそろっているのは冬場だけだということで、先ほどの18枚目の有明海におけるアサリ漁獲量とプランクトン沈殿量、こういった図ができ上がっているんだと思いますけど。

○速水委員  そうですね。調査の頻度もあります。プランクトン沈殿量は浮遊珪藻とは比較的対応がいいんですけれども、鞭毛藻類とは対応がよくありませんので、それも含めて冬季あるいは春季のほうが妥当だと考える次第です。

○青野小委員会委員長  よろしいでしょうか。その他いかがでしょうか。

 古賀委員、お願いします。

○古賀委員  関連してパワーポイントの22ページで、言葉の使い方についての質問です。①の1行目と最後の四角で囲んだ部分の1行目に、「中部・東部海域」と書いてあります。また、「東部海域」と書いてありますけれども、有明海湾奥西部というのはよくわかりますが、「東部海域」と「中部・東部海域」というのは、どこを示されているんでしょうか。

○松山委員  松山でございます。

 ここで書かれている「中部・東部海域」は、アサリの海域区分の図がスライドの41に出ておりますけれども、熊本沿岸の紫色の部分を、ここでは「中部・東部海域」と呼んでいます。ちょっと海域区分が生物小委と海域再生小委とでまだ入れ子になっている状態で、どう調整をしていくか、まさに今日ここもそういう話になるかと思うんです。海域の区分の呼び名を、海域再生小委のほうではA1からA8・9と呼んでいるんですけれども、我々のほうは日本語で呼びならわしておりまして、その辺、混乱がないよう整理していく必要があると思っております。今そういう整理を行っている途上ですので申しわけありません。

○青野小委員会委員長  今、検討中の内容が含まれておりますので、ご了解いただければと思います。

 それでは、時間もございますが。滝川委員、お願いします。

○滝川委員  手短に確認させていただきたいんですが、今、二枚貝の減少の要因として、主に塩分濃度の低下、貧酸素だとか、さまざまな要件があるというご説明があったんですけれども、その時その時に生じた現象についてはこのご説明でよくわかるんですが、全体としてこの二枚貝の生息環境をどう捉えているのかが、ちょっとよくわかりません。

 それと、こういう連関図をつくられているのでなおさら確認したいんですけれども、水質とか底質とか物理的な環境等のコメントといいますかね、考察というのが、聞いていてよくわかりませんでした。ですから、こういうふうに連関図を描かれているならなおさら、西部なら西部という海域を分けたなら、この物理環境との関連の中でご説明いただかないと多分、ここは貧酸素が出ます、出ませんということで判断してしまうと、そこの海域そのものの特徴がよく見えないんじゃないでしょうか。メカニズムがよくわからないと言ったほうがいいかと思うんですけれども。

 それと、底質に関するデータというのは、今のこの二枚貝の減少についてはあまり触れられていないんですけれども、そういったデータはあるのかないのか、あるいは整理されていないのか、ちょっとそこを確認させていただきたいんですけれども。

○速水委員  最初のほうのご質問は、相対的なこれらの要素の何がどのくらい効いているのかわからないということだと思うんですけれども、それに関しては、その定量的評価にまだ至っていないのが現状だというのが正直なところです。したがいまして、この図の中でも、本来でありましたら、影響の大きいもの、影響の小さいもので矢印の太さを変えるような表現が求められるわけですけれども、あえてそういった違いはなしにして示しています。

○滝川委員  いや、それで非常に危険だなと思っているものですから申し上げているんです。この連関図にかかわったときに、どう定量的な方向性で議論をするか、そこについてのご見解といいますか、今後の展望が必要なのではないかなといった意味で申し上げたんです。

○速水委員  現場データからだけですと、どの要素がどのぐらい効いているかがなかなか評価しにくいのが実情です。一方、実験系で複数の影響を定量的に検討するのはかなり大変です。したがいまして、モデル化することで水中シミュレーションでどの程度検討できるかがポイントになるかと思いますけれども、実際は、完全な定量化に至るにはかなり困難も想定されます。

○青野小委員会委員長  もう少しクエスチョンマークが取れてきてやっと、その影響の強弱が科学的に示せるのかなと思っておりますが。

○速水委員  あと、2つ目のご質問に関しては、底質の影響に関しては、底質中の有機物、硫化物の増加、それからもう一つ、これは底質というか水質というか、両方にまたがる部分ですけれども、浮泥の増加の部分を考慮しています。

○滝川委員  そういう意味ではなくて、過去のデータで、二枚貝の減少要因といいますか、そちらのほうの話で、なぜ底質についての考察がないのかなと思ったんです。その連関図の中の底質の話ではなく、現実の底質のデータをもとにした減耗要因とか何かというデータがありませんかということです。

○速水委員  それに関しては、今回はあくまでも二枚貝と貧酸素、夏季の赤潮の相互の連関を中心にお話しでして、また、時間の都合もありましたので、このあたりの長期の変化に関しては割愛させていただきました。今後は海域再生のほうでも触れられると思いますので、我々もそちらを参考にしたいと考えております。

○青野小委員会委員長  よろしいでしょうか。

 それでは、2つ目の貧酸素水塊の部分につきまして、質問、ご意見ありましたらお願いいたします。

 鎌賀委員、お願いします。

○鎌賀委員  52ページのシャットネラの生活史と珪藻類との種間競合との関連図ですが……、じゃあ、関連してありますので、済みません、それは後ほど質問します。前の課題のところと関連するんですが、貧酸素水塊の発生と潮流の関係、あるいは河川水との関係を出してあったんですけれども、ここ最近の状況を見ますと、台風との関係、非常に浅いところでは底質まで攪拌するような影響があろうかと思いますけれども、そういったものがこういった中にはデータとして織り込まれていると考えてよろしいんでしょうか。

○速水委員  台風のような一時的な現象については、今回は、全体の長期的なトレンド、それから二枚貝の資源に非常に大きな影響を与える要素に集中したいと考えまして、除いています。長期的なトレンドを考える場合、台風の影響による混合などは、こちらの計算では除外されていますし、それからモデルのほうでは当然、台風の影響を含めた気象の変化が織り込まれています。

○青野小委員会委員長  よろしいでしょうか。

 滝川先生、お願いします。

○滝川委員  35ページもしくは37ページのまとめのところでいいかと思うんですが、ちょっと教えていただきたいのは、この地形の変化とは、具体的にどういう地形の変化なのかというのをまず確認させていただきたいと思うんですけれども。

○速水委員  大きく効いていますのは、有明海奥部の場合、1930年代から1970年代の間の湾奥の干拓ですね。それから諫早湾に関しては、1990年代から2000年代にかけての干拓の影響です。

○滝川委員  それと、まとめの37ページのところで、「二枚貝類の減少は有機懸濁物を増加させ、貧酸素を促進し」と書いてあるんですが、二枚貝の減少が有機懸濁物を増加させるのか、あるいは懸濁物の増加にかかわる要因があって二枚貝の減少につながるのか、ベクトルがどっちに向いているのかという確認をさせていただきたい。というのが、先ほどからご説明なさっている要因、原因の連関図の中で、「底層の有機物、硫化物の増加」という方向からはベクトルが向いているんですが、「二枚貝の減少」のほうからはベクトルは向いていないからです。この解釈の仕方は、どちらがどちらというご判断なのか確認させてください。

○速水委員  これは二枚貝の減少が有機物に与える影響です。それに関してはシミュレーションによっても検討はできているんですけれども、逆向きというのは、これまできちんと研究されておりませんので、ここでは挙げておりません。

○滝川委員  そういう意味でよければよろしいんですが。そうすると、先ほどの連関図ですが、二枚貝の減少といいますか、タイラギでも何でもいいんですが、そちらのほうから逆にベクトルが向かうという説明になっていますよね。なぜそちらに向いていないのか。そこの絵です。

○速水委員  これは両方あって、こちらに関しては餌が減っているという方向ではなく、むしろ赤潮が増えているということなので、減少に効くというポテンシャルを持った矢印にはなっていないということですが。

○滝川委員  いや、左下のほうの「底質の有機物、硫化物の増加」という方向から、タイラギの減少があれば矢印は向かわなきゃいけないですよね、今のこの文章がそういうふうに解釈されているならば。

○速水委員  ですから、それはこう効いたものがこちらに効いて、それを通してこちちに効くわけです。ですから、それは入っています。

○滝川委員  ああ、そういう解釈ですか。そういう図になっているということですか。

○速水委員  そうです。そういう図です、はい。

○滝川委員  対策を打つときにどちらが先なのかというのが。要するにアサリというか、二枚貝をたくさん増やすようにばらまけば環境がよくなるという解釈につながらないかなと思って、そういう意味でお伺いしたんです。

○速水委員  そこは相互に連関しています。全体にこういうふうな連鎖になっていますので、この連鎖の中のどこをいじるのかということだと思います。

○青野小委員会委員長  ほかございますでしょうか。

 では、アウトラインの3番及び全体を通して、質問、ご意見があればお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

 古賀委員、お願いします。

○古賀委員  先ほどのタイラギの連関図に関係するんですけれども、パワーポイントの51ページの図です。プランクトンの沈殿量の長期変動傾向と書かれていますが、確かに長期的に見るとそう見えます。ただ、タイラギの不漁が始まったのは、2000年よりちょっと前ぐらいからなんです。そこから見ると逆に、沈殿量が減っているという傾向はあまり見えません。だから、どこから、どういったとり方をするのかが大事ということです。

 もう一点が、冬季と春季の沈殿量ということですけれども、タイラギとの関係で、どうして冬季と春季の沈殿量なのかなと、ちょっと疑問に思いました。

○速水委員  後のほうの質に先にお答えすると、プランクトン沈殿量と植物プランクトンの量の対応を見るときに、浮遊珪藻が卓越する冬季、秋季は非常に対応がいいわけですね。夏は対応が悪くて、プランクトン沈殿量を指標にしての議論は非常にしにくいです。そこでずっと見たところ、冬季に減少が顕著で、まあ浮遊珪藻以外も入ってくるんですけれども、春季に関してもこのように下がっていたということで、これら2つをお示ししました。

 最初のほうのご質問については、餌の変化がタイラギの資源の減少を全て説明するとは考えられないということで、長期的に資源が減少した要素の一つとして、やはりこうした餌環境の悪化が効いているのではないかと、それを示すデータとしてお出ししました。ただ、これに関しても、実際にタイラギにとって必要な餌の量がどのくらいあるのかという量と、それからプランクトンの量との定量的な関係を今後さらに検討する必要があるとは思っております。

○青野小委員会委員長  よろしいでしょうか。

 山本先生。

○山本委員  済みません、滝川委員のご質問とも関連するんですが、今のご質問の51ページのプランクトン沈殿量、これはタイラギの餌としての評価だと思うんですけれども、63ページでは今度は、サルボウが減少することでろ過量が減ってプランクトン沈殿量は逆に増えているという説明がされています。また、前半のアサリのほうでは、冬季か秋季かというか、冬季か夏季かというのでちょっとありましたけれども、18枚目のスライドではアサリの漁獲量とプランクトン沈殿量の対応ということで、アサリの餌としての評価ということになると思うんですけれども、これは例えば佐賀県沖ではサルボウが減ることでプランクトン沈殿量は増えているけれども、福岡県海域ではプランクトンが減ることでアサリが減っているといった、そういう海域による違いということなのか、それともプランクトン沈殿量というデータで示されているけれども、アサリやタイラギの餌として評価できるものと、ろ過の結果として評価しているものは違うという含みが背景にあるのか、お考えというか意図というか、解釈を教えてください。

○速水委員  正直申し上げて、そのあたりはまだ十分に整理し切れていない部分があります。ただ、有明海の奥部に関しては、資源としては圧倒的にサルボウが効くんですね。そのため、植物プランクトンの量全体に関してはサルボウの多寡が大きく効いていて、それを反映した植物プランクトン量の変化がタイラギやアサリに影響しているのではないかとは考えています。

○山本委員  じゃあ、佐賀県沖ではアサリやタイラギにとっては、餌環境だけで見るとよくなっているということですか。

○速水委員  えっと……、そういう話になりますね。ただ、現実は餌が減っているので。そのあたりはちょっと、時間スケールのことも含めて、もう少し検討させてください。

○松山委員  松山です。補足します。

 餌としての植物プランクトンの絶対量が、全ての海域、全ての季節できっちりと30年スケールでとられていれば、この解析はすごく容易だとは思うんですけれども、残念ながらクロロフィルのデータは90年代の半ば以降しかありません。そういう中でプランクトン沈殿量というか、間接的なデータ、ただし非常に長期の海域のデータがありますので、これを持ってきて今論議をしているという状況です。ですから、そこの調査内容のデータの精度は含んだ上での論議をしていただきたいというのが、まず一つです。

 それと、二枚貝の捕食圧は、先ほどの推定値を見てもわかるとおり、相当莫大な影響があることがわかります。ですから、当然、ボトムアップ・コントロールとトップダウン・コントロール、どちらがどのように効いているかという論議に今度はなっていくかと思いますけれども、それもやはり先生がおっしゃるとおり海域ごと、あるいは季節、いわゆるサルボウなんかは冬に水温が低くなるとあまり食べませんので、また貝の生息分布によって、そのコントロールの割合、あるいは今度、プランクトン側の発生と二枚貝の再生産の応答も変わってくると思います。これはこれからの課題にはなってくると思うんですけれども。マクロに70年代、80年代と、近年の二枚貝資源の減少の数字を突き合わせた場合は、餌環境的に厳しくなっているという数字と、貝の再生産を落としていっている、いわゆる肥満度が落ちるとか幼生の発生量が落ちるとかいったことの関連性は、やはりベースにあると我々は考えています。

○山本委員  はい、ありがとうございました。

○青野小委員会委員長  よろしいでしょうか。

 あと一つほどよろしいですか。岩渕委員。

○岩渕委員  53ページとか54ページの連関図ですが、海域区分ごとに出てきておりますので、干潟域東部ですとか湾奥の東部は、福岡県の地先に非常に近いというところで、これは意見なんですけれども、福岡県の浅海定線のデータ、その他のデータを見ますと、まあ、ここの小委員会で検討するものではないんだと思うんですけれども、一番下の「陸域・河川の影響」の中の「栄養塩負荷増大」という項目が、どのデータを見ても栄養塩の負荷が増大していることを表すものが見当たらないと感じております。東部に限れば、少なくともこれに関してはクエスチョンマークがつくのではないかと思います。

○速水委員  栄養塩の陸域からの負荷については、前回の18年の委員会報告にまとめられていますけれども、実は1度増えた後、また近年下がってきているんですね。その結果、1980年前後に比べると決して増えているとは判断しにくいのが現状です。ただ、海域別に詳しくそれが検討されていませんので、今後の検討によっては、海域によって栄養塩負荷が増えているという結果が出てくるかもしれません。その場合には、こちらの連関図に栄養塩負荷の増大からの影響が入ってくることは十分に考えられます。

○青野小委員会委員長  よろしいでしょうか。それでは、議事2は終了させていただきます。いただいたご意見を検討いたします。また、全体で祖語のないような報告を上の委員会に上げていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 それでは3番、有明海二枚貝類の減少要因解明等調査について、松山委員、お願いします。

○松山委員  ありがとうございます。水産総合研究センターの松山でございます。私のほうから資料の説明を申し上げます。

 本委員会の活動を行う上で、各種の膨大な資料を収集、整理、解析する必要がございますけれども、場合によっては、ない部分のデータを直接収集する必要もあります。そこで、環境省の事務局の依頼を受け、平成25年から有明海二枚貝類の減少要因解明等の調査について、西海区水産研究所と佐賀大学、あるいは、いであさんにも入っていただいて調査を実施しております。本日はその2年間の取り組み状況についてご報告させていただきます。

 まず、有明海における水産有用二枚貝類3種、先ほどから何度もお話がありますように、アサリ、タイラギ、サルボウの漁獲量を同じ時間スケールで示しております。この漁獲量のデータというのは、いろいろな発表の冒頭に出てくる資料でありますけれども、漁獲量と資源量という2つの指標項目があって、本来であれば資源量というのが海域に存在する二枚貝の絶対量ですので、資源量の調査結果に基づいていろいろな論議がされていく必要があります。残念ながら、広大な海域に特定の種がどのくらい生息しているかを推定することは、かなり技術的に難しい部分がありますが、一定の資源量に対して同じ漁具、漁法でやっている限りは、このトレンドというか、資源量と漁獲量はある程度相関を持って変動することが知られておりますので、実際はこの漁獲量の変動というのは資源量の変動とみなしており、それでもそう大差はないと水産の世界では言われております。

 見ておわかりのように、アサリ、タイラギというのは70年代から80年代に大変漁獲が多かった時代があります。それと比較してサルボウに関しては、その時代はむしろ少なくて、その後、80年代から漁獲量が増えています。これは天然採苗技術を徹底して行うことによって漁場を拡大したという人為的努力が影響しております。ただ、そのサルボウも90年代の後半から、先ほどもお話があったように漁獲量が低下しているということで、3種二枚貝ともかなり悪い状況に陥っているのがわかります。

 そうした中、我々で行っているこの調査ですけれども、目的に関しては、ここにありますように、有明海における有用二枚貝類の保全、回復と再生、これが最終目標でございます。ただ、再生という言葉は簡単ですが、時空間的に大きく異なる対策があります。1つ目としては、個々のそれぞれの二枚貝類の漁場における再生事業、これは第34回の親委員会におきましても、農林水産省のほうから各種の取り組みについてご報告があったと思います。それとはまた別に、海域全体の資源の再生、実はこれが最終目標になるわけですけれども、これは大変時間のかかる取り組みです。特に資源の状態がいいときに管理をしていくということはそう難しくはないんですけれども、減ってしまったものをまたさらに再生するというのは大変な努力を必要とします。しかし、ここが再生を目指すための最終目標であることには変わりございません。

 そうした海域全体の資源再生を目指すために、何がボトルネックになっているのかといったところ、特にその重要な項目を解明いたしまして、それに対する効果的な対策を講じていく必要があるだろうと考えております。先ほどの速水委員の取りまとめの結果にもありましたように、現状、資源の再生産、特に浮遊幼生から着底稚貝が発生するところが危機的状態に陥っているというところもございました。そこで、本調査におきましては、各種いろいろな減少要因があるわけですけれども、その中でも特に海域全体を俯瞰した場合に重要と想定される項目を抜き出して調査等を行っております。一つは有用二枚貝類の母貝生息域の特定という項目、それと先ほどの浮泥、後ほどもう少し細かく説明しますけれども、これらの定義であるとか、モニタリング手法の確立。あと、それらの適切な管理方策等を取り組もうということで実施をしております。課題が、1)から2)3)と3つございますけれども、実質は1)の二枚貝の浮遊幼生のネットワークの解明というところと、2)と3)の浮泥に関するもの、その大きく2つの内容が含まれております。

 二枚貝は体外受精をして、大量に受精卵あるいは幼生を海水中に放出するという特異な生活史を持っております。そういった部分を考慮いたしますと、きちんと大量の受精卵や幼生を海域へ放出するための母貝をしっかり保全していくことが再生のための第一歩になります。この再生のための第一歩となる母貝の保全ですけれども、有明海全域を対象とした母貝の生息調査、あるいは幼生の出現調査は実は過去にほとんど行われていなくて、ある漁場におけるスポット的な調査のみがあるという状況でありました。これだと貝の再生策を打ち出していく上でかなり障壁になりますので、全域を俯瞰した調査が必要だろうということで、課題として取り組んでおります。

 それと、2番目と3番目に出てきます浮泥でございます。底質に関しましては、平成18年委員会報告において、有明海全域で細粒化が進行して、これがタイラギやアサリの資源の減少に影響していることが指摘されております。ただ、小委員会の活動をしていく過程で、近年の底質のデータを収集している状況ですけれども、どうも沖合のほうでは細粒化の進行は必ずしも起きていないという結果が出ております。それにもかかわらず、二枚貝の資源が減少しています。そうした中、夏場を中心に沖合で極めて流動性の高い表層堆積物、これを我々は「浮泥」という仮の呼び方をしているんですけれども、どうもこれが二枚貝類の再生産に悪影響を与えているのではないかと漁業者等から指摘されております。そこで、2番目の課題におきましては、浮泥とはそもそもどういうものであるのかという物理化学的な特性の把握、あと、浮泥は本当に二枚貝に影響を与えているのかという調査を行っております。3番目としては、そうした浮泥のモニタリング手法であるとか影響回避策、そういうものに取り組んでいくということを行っております。

 時間がございませんので、業務の全体像の概念図は、お手元の資料にお示ししております。先ほど申し上げましたように、基本的には浮遊幼生の調査と親貝の探索という部分と、あと先ほどから申し上げておりますように、浮泥の発生要因、特性解明、あるいはモニタリングの手法というものに取り組んでおります。

 結果について、簡単ですけれどもご説明いたします。お示ししています図は幼生調査の結果でございます。有明海全域に8定点を赤い丸で記しており、夏場を中心に9回ほど調査を実施しております。これはタイラギの浮遊幼生の調査結果でありまして、こちらのほうに定点ごとの出現密度、それと実際に出現した日、あと、そのときの幼生のサイズから推定した日令をこのように書いております。左側が平成25年の調査結果で、右側が今年度、平成26年度の調査結果となっております。

 平成25年は、幼生は6月を中心に、この丸で囲った湾奥海域でほんの一瞬だけ出現して、その後ずっと出ないで、7月上旬に出現をしたという状況で、全体の動きがよく把握できないような状況でございました。

 右側の平成26年のほうは、各定点の出現密度を書いておりますけれども、これもやはり非常に低密度の出現でございました。ただ、よく見ますと、6月下旬と8月中下旬に2つの山があるということで、昨年の夏、タイラギは2つ山があったことがわかりました。出現場所を見てみますと、かなり広域に出現しておりました。最も出現密度が高かったのは、8月11日のP6という、いわゆる沖神瀬というところの定点ですね、それと8月25日のMという定点、これは緑川の沖なんですけれども、そういったことで、トン当たり10個体程度をやや超える出現が見られました。

 それで、日令を見ていただきたいんですけれども、8月11日に湾奥で出現したときの幼生は、日令が1日目のものから17日目のものまでと、かなり複数のサイズが混じっておりましたけれども、緑川河口では、タイラギの浮遊幼生は、日令2~4という産まれたばかりの幼生がまとまって検出されておりました。ということは、おそらくこの近傍に親貝がある程度生息していて、そこから発生した幼生を短時間で検出することができたと判断しておりまして、先ほどの資源量の調査結果は細かく示しませんでしたけれども、今、沖合にほとんどタイラギがいないという中で、浮遊幼生の発生ソースも干潟域に限られているのではないかと推定する結果になっております。

 実はタイラギに関しては、どこに親が生息しているのか、どのくらいの密度で生息しているのかという情報が極めて少なくなっているわけですけれども、タイラギを対象とした粒子の輸送モデルはコンピューター上で既に作成いたしております。コンピューター上で仮想的に粒子を各海域から流した場合の結果を、ここに示しております。A、Dという湾奥の2カ所、それとB、Cという中南部の2カ所から粒子を流した場合の漂流パターンを概念図として示しております。Aの海域から流した場合は、南部のほうに輸送されるものが非常に多くて、一部のみが湾奥に留まり、Dから流した場合はかなりの部分が湾奥に残るんですけれども、それでもやはり南に流出するものがあるということがわかりました。逆に、南部のほうのBあるいはCから放出した場合は、外海に流出する部分と湾奥に向かって流れる2つの大きな動きがありまして、タイラギの浮遊期間から推定いたしますと、ちょうど着底時期に、赤丸で囲ったタイラギの主要な生息域というか漁場に到達することがわかりました。ですから、この湾奥部のタイラギ資源を再生しようと思えば、やはり中南部から放出される浮遊幼生、そのもととなる親貝をきちんと守っていくことが重要ではないかと推定されました。

 タイラギに関しては、基礎となるデータが不足している部分がありますが、サルボウに関しましては各種のデータが揃っています。先ほどの調査と同じもの、これはサルボウの調査結果を2カ年並べております。上が平成25年で下が平成26年になります。サルボウに関しては、絶対的な出現密度は昨年が多くて、しかも7月上旬に大きな山が1つ入っています。昨年、平成26年の夏は、7月中旬と、あと小さい山が8月中旬にありました。先ほどのタイラギと同じように山が2つということです。いずれの年も、サルボウの浮遊幼生は、P6、O、B3という湾奥の西部海域で高密度に出現するということがわかってきました。サルボウの成貝の分布調査、これは佐賀県有明水産振興センターさんが精力的に調査されておりまして、どこの海域にどのぐらい親貝が生息しているのかという情報がきちんと数値として捉えられております。2008年から1年ずつ親の生息域の調査をしているわけですけれども、やはり、大体、湾奥西部のところに親貝が生息して、そこが母貝になっていることがわかっております。

 今度は産卵するタイミングの問題ですけれども、これもモデルを回す上で重要になります。佐賀県さんで、サルボウの浮遊幼生に関する出現調査がこの5定点で行われていまして、データが詳細に取得されています。後ろに青い太い線が描いてあるのは筑後川の流量になります。過去の知見におきまして、出水の後、低塩分化が回復するときに浮遊幼生が大量に出現すると報告されているわけですけれども、2009年、2010年、2011年、いずれも、出水と出水の合間、これも大きな出水の後、こちらも大きな出水の後ということで、過去の知見どおり、サルボウの親貝は出水の後の塩分回復期に産卵することが、実際のデータでもわかっております。こうした情報を加味しまして、2010年、2011年に、このA、B、Cの3つの場所から粒子を流してみて計算を行っております。物理モデルは、先ほどのタイラギもそうなんですけれども、FVCOMという公開された情報に基づいてプログラムを組んでいます。ちょっと時間がありませんので、詳細は省略いたします。

 これは2010年、サルボウの浮遊幼生を福岡県の地先に近いA海域から放出した場合で、それぞれ1週間後、2週間後、3週間後、4週間後の幼生の拡散パターンをお示ししております。サルボウの浮遊幼生は2週間もしくは3週間目ぐらいで着底すると言われていますので、その時間スケールで見てみますと、福岡県海域で発生したサルボウの幼生は、有明海全域に結構分布をするということがわかります。

 次に、主要な親貝の生息している佐賀県の海域から放出した場合の図を示します。これを見ますと、先ほどの福岡県とパターンは似ているんですけれども、2週間目、3週間目に至っても、湾奥の西側の部分にかなりの量の浮遊幼生が留まっていることがわかります。さすがに4週間たつと全域に分布しますが、先ほどの福岡県海域から産卵された場合よりも、湾内に留まるという効果が高いと見受けられます。

 最後に、最も奥まった湾奥の西側海域から放出した場合ですけれども、これはさらに留まる割合がかなり高くなりまして、先ほどのB海域同様、親貝とほぼ同じ場所に留まるという効果が高いことがわかります。

 それで、幼生の挙動を模式図にしました。福岡県海域から流れてきたものは、南のほうに行くものがかなり太いんですが、BもしくはCから流した場合は、これらの中で幼生が長期に滞留して資源の再生産につながっていくことが推定されるわけです。

 次に、浮泥の特性であります。時間の関係上、細かい説明ができませんが、通称、浮泥をこういうコアで採泥した場合に、ここに薄い茶色い変色層が見えるかと思いますけれども、原地盤の上に1センチから多くて3センチ程度、変色層があります。これは通常の採泥操作のときに流出するようなやわらかい成分です。これが二枚貝に対して何らかの影響を与えているのではないかということで調査を実施したわけですけれども、ゼロから35ミリまでの実際の浮泥の堆積厚、それと筑後川の瀬の下の流量を示しているわけですけれども、やはり出水期に浮泥厚が高くなるということが読み取れました。おそらく陸起源のシルト・クレイ分が含まれてもいるのではないかと。あと、この定点ごとに見てみますと、西側海域のほうで東よりも浮泥が多いことがわかりました。

 そして西と東で浮泥の特性が違うのかどうかというところで調査をしました。浮泥の中のクロロフィルa、フェオ色素、有機炭素含量、それと水溶性EPSですね、これは植物プランクトンが分泌する多糖類ですけれども、それと浮泥がマトリックスを形成するということが既往知見としてありますので、その成分を分析しました。浮泥の絶対量としては西が多いんですが、成分で見ますと特に東西で大きな差はありません。量は西が多いのですが、成分としてはそう変わらないということがわかりました。

 次に、浮泥が二枚貝に与える影響に関する室内試験の状況です。基本的に二枚貝というのは、ある一定の餌量を与えると、どんどんとエネルギー収量が上がってきて、ある程度のところで飽和していくだろうと。ここから先は変わらないと。ただ、無機の有機懸濁物がここに加わってくると本来食べるべきものを食べない、いわゆる無機の懸濁物が多くなればなるほど負の作用が出てくるのではないかと想定されました。そういう仮説のもとに室内試験をしております。この写真は実際に有明海の表層の浮泥を入手いたしまして実験をしているところです。

 この図はアサリの結果を示しております。縦軸がろ水量で、右側が浮泥の中の無機懸濁物のmg/Lを示しております。結論だけ先に申しますと、やはり高濃度の無機懸濁物があると、ろ水障害が認められます。このドットが緑のところに入ると、ぱたっとゼロに近づいていくのがわかるかと思いますけれども、そういったろ水障害が認められました。ただし、その閾値が200mg/Lということで、有明海では確かに濁りが大きいんですけれども、200mg/Lを超える濁りの出現頻度は3%程度なので、アサリに関しては濁りの影響はそれほど大きくないのではないかということが推定されました。

 今度は、有機懸濁物の影響ですね。浮泥そのもの、有機物を含んだ状態で実験をした結果を示します。サルボウとアサリの試験をしております。これを見ますと、同じようにこちらが成長、こちらがSSの濃度ということになるわけですけれども、サルボウに関しましては、ある程度のところまではプラスの作用がありますけれども、それを超えると今度はマイナスになると。その濃度というのは大体25から50mg/Lのところにプラスの作用があるということですね。餌として寄与している可能性があるということです。アサリに関しては10mg/Lのところに閾値があって、それ以上になると減っていくということで、両者を比較しますと、サルボウのほうがこうした浮泥に対してプラスの作用の閾値がかなり高いところにあり、アサリはサルボウよりニゴリに弱い、このようなことが室内試験的にわかりました。

 3年間の予定で本調査事業をやっておりますので、3年目にこの二枚貝の浮遊幼生の出現状況、あとモデル、親貝の探索、それと先ほどから出ています浮泥の影響解明等を行って、本委員会のほうにも適宜データなり資料、結果を上げていきたいと思っております。

 以上でございます。

○青野小委員会委員長  ありがとうございました。

 それでは、ただいまのご説明に意見、質問あれば、お願いいたします。よろしいでしょうか。はい、ありがとうございます。それでは、議題の3番を以上で終了いたします。

 議題の4、その他でございますが、特に皆様から何かありますでしょうか。

 山本先生、お願いします。

○山本委員  確認ですけれども、この小委員会では主に有明海の問題をやっていると思うんですが、最初の資料2のご説明にあった報告書の目次案だと、特に有明海と八代海とを分けて記載するような案にはなっていません。しかし、有明と八代では、水産資源の状況は大分違います。この小委員会では有明を扱って、有明海と八代海のどの部分を包括してどうするかは本委員会のほうで話し合われるという理解でいいんでしょうか。

○青野小委員会委員長  事務局、よろしいでしょうか。

○根木室長  本日ご議論いただいた内容が、有明海のことが少し中心になってしまったのかもしれないんですけれども、例えば前回、八代海の赤潮のことについても議論をいただいているところでありまして、八代海のことについても今後もご議論いただければと考えております。本日、冒頭で目次のイメージというものを説明させていただきましたが、28年を目途に評価委員会の報告書を取りまとめるというようなことで打ち出されましたので、その目次のイメージもあくまでイメージで、今後変わり得ると思っておりますが、そこも念頭に置いていただいて、八代海も含めてご検討を引き続きいただければと考えております。

○山本委員  有明海と同じ濃度で八代海も扱える項目というのが、全部の項目を同じ濃度で扱えないと思うんですね。重点的に扱うべき項目を絞ったほうがいいと思います。

○根木室長  ご指摘ありがとうございます。今後の検討の参考にさせていただきます。

○青野小委員会委員長  よろしいでしょうか。その他ございますでしょうか。

 それでは、本日検討いたしました結果は、3月に予定されている評価委員会のほうに報告していきます。また、引き続き各委員の皆様、関係省庁の皆様、都道府県の皆様には、検討作業に必要な情報の提供等をよろしくお願いいたしたいと思います。

 では、本日予定の議事を全て終了いたしましたので、進行を事務局にお返しします。また、議事進行が少々おくれてしまい申しわけありませんでしたが、ご協力ありがとうございました。事務局、お願いします。

○高山室長補佐  事務局からご連絡が何点かございます。

 次回のスケジュールでございますけれども、親委員会である評価委員会は3月23日に開催する予定にしております。また、次回の小委員会は6月を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。また、委員の皆様には後日、議事録の確認をお願いいたします。

 それでは、これにて第9回生物・水産資源・水環境問題検討作業小委員会を閉会いたします。ありがとうございました。

午前12時 閉会

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