生物・水産資源・水環境問題検討作業小委員会(第6回) 会議録

1.日時

平成26年2月20日(木)13:30~15:30

2.場所

環境省第一会議室

3.出席者

小委員会委員長 有瀧真人委員長
委員 岩渕光伸委員、古賀秀昭委員、滝川清委員、速水祐一委員、本城凡夫委員、山本智子委員
専門委員 梅崎祐二委員、大村浩一委員、川村嘉応委員、福留己樹夫委員、藤井明彦委員、松山幸彦委員
事務局 水・大気環境局長、水環境課閉鎖性海域対策室長、水環境課閉鎖性海域対策室長補佐

午後1時28分 開会

○高山室長補佐 ただいまから有明海・八代海等総合調査評価委員会第6回生物・水産資源・水環境問題検討作業小委員会を開催いたします。
 最初に、本委員会は、公開の会議となっておりますことを申し上げます。
 まず、昨年の評価委員会委員の改選に合わせまして、もう一つの小委員会であります海域再生小委員会との連携を高めるため、海域再生小委員会の滝川委員長にも本委員会の委員を務めていただくことになりましたので、ご紹介いたします。
 本日の委員の出席状況ですが、欠席の連絡を福留委員よりいただいております。
 また、本日は、評価委員会の岡田委員長にもご出席いただいております。
 また、海域小委員会で事務局をお願いしております川岸主任研究員のほうから、議題の2につきましてご説明のためにご出席いただいております。
 続きまして、環境省水・大気環境局長の小林よりご挨拶申し上げます。

○小林水・大気環境局長 環境省の水・大気環境局長の小林でございます。
 委員の先生方におかれましては、大変ご多忙の中をご出席を賜りまして、誠にありがとうございます。第6回の小委員会の開催ということで、逐次お世話になってきておりますが、本日もよろしくお願いを申し上げます。
 この委員会は、ご承知のとおりでございますが、有明海・八代海の再生に向けてということで、特別措置法に基づきまして基本方針も定め、いろんな施策を各県で進めていただいているところでございますが、まだまだ大変課題が多いという状況はご承知のとおりでございます。昨年も赤潮の発生、また、有明海の湾央部では貧酸素状態が続きました。サルボウとかタイラギなどの二枚貝の生育には大変厳しい状況になっているということで、我々も大変重く受け止めているところでございます。また、本年に入りまして、珪藻赤潮が大量発生しているというようなことで、また、ノリの色落ちというような被害も懸念されているところでございます。
 この委員会では、逐次テーマを上げて、大変重要な課題を解明してきていただいておりますが、この難しい問題の原因究明をしていただくということで、大変重い役割を担っていただいているものと感謝しているところであります。今日の小委員会でも、貧酸素水塊についてご審議いただくということで、これも非常に大事な課題であるというふうに考えているところでございます。
 私自身は、今、国会中のこともありまして、中座をお許しいただきたいと思っておりますが、委員の先生方には忌憚のないご審議を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。

○高山室長補佐 続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。
 まず第1に、資料1といたしまして委員名簿がございます。次に、資料2として有明・八代海における貧酸素水塊、資料3といたしまして、海域再生対策検討作業小委員会(第6回)資料がございます。この資料3につきましては、午前中にこの場で開催されました海域再生対策検討小委員会の配付資料をつけさせていただいております。委員のみの配付をさせていただいておりますので、ご了承願います。不足の資料等がございましたら、事務局のほうまでお申しつけください。
 報道取材の皆様は、これ以降のカメラ撮影はお控えいただきますようよろしくお願いいたします。
 これ以降の進行は有瀧委員長、よろしくお願いいたします。

○有瀧小委員会委員長 有瀧でございます。よろしくお願いします。
 本日も限られた時間でございますが、活発なご議論をよろしくお願いします。
 それでは、早速ですが、先ほどの資料の中に議事次第があると思いますが、そちらをご覧ください。
 先ほど事務局のほうからもご説明がありましたが、二つの課題を用意しております。一つ目が、有明海・八代海の貧酸素水塊についてということで、これを今から大体15時前ぐらいまでを目処に、ご説明と議論をよろしくお願いします。それから、15時以降なんですが、海域再生小委員会のほうで、本日、午前中に検討されました海域区分と、それから連関図について、概要説明をお願いしたいと思っております。よろしくお願いします。
 それでは、速水先生のほうから貧酸素水塊についてのご説明をよろしくお願いいたします。

○速水委員 それでは、私、速水のほうから、有明海・八代海における貧酸素水塊に関してご報告したいと思います。
 最初に、資料の修正のお願いがあります。一つ目が、12ページのスライド23の6行目になります。「有明海奥部の貧酸素水塊は2004年以降、毎年発生」と書いてありますのを「2001年」に訂正願います。
 二つ目のほうは、これは16ページのスライド32の2行目です。下のスライドです。これも「浅海定線調査データの解析4(2009年までのデータ解析)」とありますけども、これを「2012年度」に修正願います。
 それでは、本題に入りたいと思いますけども、前回の小委員会でも貧酸素についてお話ししましたけども、そのときには、まず「貧酸素水塊とは」についてお話ししまして、それから、有明海・八代海等における貧酸素水塊の発生状況、貧酸素水塊の形成・変動メカニズム、それから、貧酸素水塊の経年変動、魚介類への影響、八代海における貧酸素水塊のお話をしました。これに関して幾つものご指摘をいただきましたけれども、そういったご意見をまとめたところ、主に三つの課題が挙げられました。
 一つ目は、重要海域の絞り込みです。これに関しては、有明海奥部・諫早湾を重要海域として考えることにいたしました。理由は、それぞれ重要な漁場であり、二枚貝の斃死等、漁業被害の顕在化が起きているためです。これに関しては、後で詳しくお話しします。
 二つ目は、前回ご指摘を受けた大きい問題ですけども、2000年以前を含めた長期変動の整理と検討をしてほしいということです。そこで、これに関しては、今回、新たに追加をしました。
 三つ目に、貧酸素化の軽減のための対策について、前回、全く触れませんでした。そこで、これについても、今回、新たに追加いたしました。このように追加をしましたので、貧酸素水塊の形成・変動メカニズム、魚介類への影響については、今回は割愛させていただきたいと思います。
 それでは、今日の私の話の内容ですけれども、まず、貧酸素水塊とはについて、簡単にお話しした後、有明海・八代海等における貧酸素水塊の発生状況、それから、貧酸素水塊の経年変動、これは2000年以前を中心にお話しします。それから、貧酸素化の軽減のための対策についてお話しした後、簡単にまとめます。
 最初に、復習を兼ねまして、貧酸素水塊とはどういうものかについて、簡単にお話しします。
 水中の溶存酸素については、mg/L、ml/L、mmol/L、飽和度等、さまざまな単位が使われています。このうち、飽和度は、試水の酸素量を試水と同じ水温塩分における飽和酸素量で割って、100を掛けたものです。これらのうち、最近の学術論文では、mg/Lを単位として使うことが推奨されています。したがって、本委員会における取組でも、基本的にこの単位に統一して話をしたいと思います。ただし、漁業者からは、飽和度(%)のほうがわかりやすいという意見もあるため、一部、こちらも併用します。
 次に、海域における貧酸素水塊の整理についてお話しします。
 まず、飽和度(%)で見た場合です。飽和度で見た場合の貧酸素の基準に関しては、文献により、高い文献では城(1989年)の50~60%から、低い文献では柳(2004年)の25%まで、かなり広い範囲でばらつきがあります。ただし、柳(2004)では、同時に40~50%以下という記述もあります。
 また、酸素飽和度に関しては、水温、塩分によって変化します。こちらは横軸が塩分になっていますけれども、塩分が高くなるほど飽和酸素濃度は低くなります。また、水温が高くなるほど飽和酸素濃度は低くなります。
 夏季の有明海の典型の場合、塩分30、水温25℃という値を用いますと、飽和度40%が2.78mg/L、30%が2.08mg/Lとなります。この数値は後でまた使いますので、覚えておいてください。
 次に、mg/Lで示した場合の貧酸素水塊の整理です。こちらに関しても、最も高い場合で3ml/L、これは4.3mg/Lに等しい値ですけども、水産用水基準に使われているこの数値から、低いところではDiaz(2001)のレビュー、あるいは環境基準(環境保全)に使われている2mg/Lまで、かなり広い範囲でばらつきがあります。ただし、これを見ますと、多くの文献で3mg/Lないし2ml/Lという値が使われていることがわかります。2ml/Lとは、これは2.86mg/Lと等しく、3mg/Lに近い値です。そこで、本委員会では、有明海では3mg/Lという、この範囲をベースにして、貧酸素について検討することにいたしました。先ほどお話ししたように、40%という飽和度が、塩分30、水温25℃のとき、2.78mg/Lですので、飽和度で考える場合には、40%というのが一つの基準と考えることができます。
 次に、貧酸素水塊の基本的な形成機構についてお話しします。貧酸素水塊は、水塊への酸素供給速度が酸素の消費速度よりも小さい状況が継続すると発生します。
 内湾や湖沼では夏季に成層が強まり、鉛直的な酸素輸送が妨げられると、底層水への酸素の供給速度が小さくなって、貧酸素化します。
 問題になるのは、同じ水域で経年的に貧酸素化が進む場合ですけれども、そういった場合には三つの要因が考えられます。一つは、水域の鉛直混合が弱まるなどの原因で成層が強くなり、酸素の鉛直的な供給が減少する場合です。二つ目は、酸素の鉛直的な供給量は同じなのですが、酸素消費量が増加する場合です。三つ目は、酸素の鉛直供給量、それから酸素の消費量は同じなのですけれども、水塊の持つ初期酸素濃度が低下する場合です。すなわち、有明海などの場合は、沖合から高密度の海水が進入してきて、その水が貧酸素化しますので、その入ってくる水が低酸素化すると貧酸素化しやすくなるわけです。
 次に、有明海・八代海等における貧酸素水塊の発生状況についてお話しします。これは2010年に西海区水産研究所を中心に行われた一斉観測による有明海の底層の溶存酸素濃度の分布です。赤が3mg/Lを示しています。これを見ますと、湾奥の浅海域と諫早湾の2カ所で、同時期に別々に貧酸素水塊が形成されていることがわかります。これが同じときこの赤のラインに沿った断面図を示しています。上が密度、下が溶存酸素です。これを見ますと、水深4m付近に顕著な密度躍層があり、この強い密度成層が形成されている状態で、躍層よりも下が貧酸素化していることがわかります。また、その中でも特に湾奥浅海域底層で貧酸素化が著しいことがわかります。また、こうした貧酸素水が躍層の下に沿って沖合の中層へと拡がっている様子もわかります。
 次に、こちらのP6という点において、西海区水産研究所が行っている連続観測の結果をお見せします。2004年から2012年までの毎年の6月~9月末にかけての底層の溶存酸素濃度の変化です。これを見ますと、年によりその程度に違いはあるのですけれども、2004年から2012年まで、毎年、夏になると貧酸素が発生しているということがわかります。
 前回、お話ししたように、有明海の貧酸素水塊は小潮時に発達することが特徴です。しかし、2000年以前に関しては、大潮満潮時に行われる浅海定線調査以外に貧酸素水塊をトレースできるようなデータはありません。それに対して、2001年、この年には村上ら(2001)あるいは木元ら(2003)が報告しているように、有明海湾奥西部・諫早湾底層で貧酸素化が起きているということが広域分布観測によって捉えられました。2002年では、諫早湾の小長井沖で木元ら(2003)が連続観測を行い、間欠的に貧酸素化が起きているということを示しています。また、2003年には、有明海奥部で3mg/L以下の貧酸素水塊を観測していることを堤ら(2007)が報告しています。こうしたことから、2001年以降、年による変動はあるものの、有明海では毎年、貧酸素水塊が発生しているということがわかります。
 これは有明海における貧酸素水塊の一斉観測の結果で、2010年、2011年、2012年の結果を示しています。海底直上の溶存酸素濃度です。これを見ますと、貧酸素水塊の範囲や強度は年により大きく変動している様子がわかります。
 次に、より広い範囲をとりまして、有明海の湾奥から熊本沖のこのラインに沿った溶存酸素濃度の断面分布を示します。このラインに沿った溶存酸素の分布を見ますと、過去にこの熊本県のSt.1~St.6までの測点のうち、St.6では貧酸素化が観測された例がありますが、St.1~5までは、これまで貧酸素は確認されておりません。したがって、有明海奥部に発生する貧酸素は、このSt.6よりも奥に限られると考えられます。
 次に、有明海奥部から諫早湾にかけてのこのラインに沿った水温、塩分、密度、溶存酸素の断面分布を示します。先ほどお話ししたように、有明海奥部の貧酸素は、躍層の下に沿って中層に拡がるというパターンを持つということをお示ししました。この図においても、中層に湾奥から貧酸素水塊が拡がっている様子がわかります。ただし、この貧酸素と諫早湾の底層に形成されている貧酸素水塊とは別々であるということがわかります。したがって、湾奥の貧酸素は沖合中層に拡がりますが、諫早湾奥の貧酸素はそれとは別に発達しているということがわかります。ただし、貧酸素の規模が大きい場合には両水域の貧酸素水の交流の可能性はあります。
 次に、福岡県による溶存酸素観測の結果をお示しします。大牟田沖のこの4点における平成21年~25年にかけての海底上5cmにおける溶存酸素濃度の連続観測結果がこの図です。これを見ますと、毎年、夏季になると40%以下になるような貧酸素が間欠的に生じているということがわかります。こうしたことから、これまであまり注目されてきませんでしたけれども、大牟田沿岸浅海域でも夏季には間欠的に貧酸素化するということがわかってきました。
 また、これは吉田(2004)のデータをもとにして、佐賀県有明水産振興センターが観測した六角川感潮域における溶存酸素濃度の観測結果をグラフにしたものです。これを見ますと、3mg/Lを下回るような貧酸素水がしばしば観測されていることがわかります。
 また、こちらは水資源機構筑後大堰管理室から提供していただいた図ですけれども、筑後川感潮域のこの点においても、やはり年によって3mg/Lを下回る貧酸素が観測されていることがわかります。こうしたことから、これまで着目されてこなかった有明海奥部の河川感潮域においても、貧酸素水塊が時によって発生するということがわかってきました。
 次に、橘湾における観測結果です。これは長崎県総合水産試験場によって観測されたデータで、この図のこの赤の線で観測された海底上1mの溶存酸素の分布を示したのがこちらの図です。これを見ますと、40%以下になるような範囲が広く広がっています。このうち、この点における水温、それから、塩分、溶存酸素の鉛直分布を示したのがこちらの図です。これを見ますと、海底直上に弱い水温躍層がありまして、その下が貧酸素化していることがわかります。海底付近では、ほぼ無酸素にまで下がっております。このように、橘湾においても貧酸素水塊が発生することがあるということが、初めてわかってまいりました。
 次に、八代海です。八代海に関しては、これまでは貧酸素水塊は発生しないと言われてきました。しかし、2013年7月2日の熊本県水産研究センターによる観測によって、貧酸素水塊が観測されました。こちらの図は、この図の測点1~4にかけての水温、塩分、密度、溶存酸素の断面分布になっています。これを見ますと、溶存酸素3mg/L以下の貧酸素水塊が、測点2の底層から4にかけて分布しており、測点4の底層では2.1mg/Lという値になっているということがわかります。
 また、鹿児島県水産技術開発センターの観測結果からでも、1989年以降、溶存酸素濃度が3mg/L以下になったケースが5回報告されています。最低値は2mg/Lで、いずれもこの測点10、あるいは測点12でもって観測されています。時期としましては、小潮ないし小潮から大潮に向かう時期に観測されておりました。こうしたことから、今後は八代海においても貧酸素水塊が発生しやすい小潮の時期のモニタリングが重要であると考えられます。
 貧酸素の発生状況の説明の最後に、培養実験で得られた全酸素消費速度の比較をお見せします。これは前回もお見せしたものですけれども、有明海における水も含めた酸素消費速度は0.28~1.39mg/L/dayという値が実験的に得られています。これを柳(2004)がまとめた志津川湾、東京湾、燧灘、周防灘、大村湾における結果と比較しますと、有明海の値は非常に大きく、東京湾に匹敵するということがわかります。また、底泥だけの酸素消費速度に関して、丸茂・横田(2012)の結果と比較しますと、英虞湾、広島湾、豊前海、こういった海域よりも有明海の値ははるかに大きいことがわかります。こうしたことから、有明海奥部では酸素消費速度が非常に大きく、それが貧酸素の発達にきいているということがわかります。
 以上、貧酸素水塊の発生状況についてまとめます。
 有明海の貧酸素水塊は、基本的に有明海奥部と諫早湾の2カ所で発生します。密度成層の形成に伴い、密度躍層より下層が貧酸素化する、干潟縁辺に近い浅海域で貧酸素化が発達することが特徴です。貧酸素水塊の範囲、それから強度は年によって大きく変動します。ただし、有明海奥部の貧酸素水塊は2001年以降、毎年発生しています。大牟田沿岸の浅海域でも間欠的に貧酸素化が発生し、六角川や筑後川等の河川感潮域が貧酸素化するということがわかってきました。また、八代海、橘湾の底層においても貧酸素水塊が観測されました。さらに、有明海奥部の酸素消費速度は大きく、東京湾に匹敵するということがわかってきました。
 このように、研究・調査の進展で、貧酸素化が生じることが明らかになった海域が増えてきたために、今後も観測・モニタリングを継続する必要があると考えられます。一方で、漁業生産への影響の大きい有明海奥部・諫早湾については、優先的に対策を検討する必要があると考えられます。
 続いて、貧酸素水塊の経年変動について、2000年以前を中心にお話ししたいと思います。有明海の貧酸素化のデータに関しては、2000年以前は、まとまったデータとしては、各県が実施している浅海定線調査データしかありません。これに関して、最初にまとまった論文として公表されたのが、滝川ら(2003)です。この図はこの論文から引用させていただいたものですけれども、佐賀県のSt.4という観測点における1976~2000年までの溶存酸素濃度の変化を示したのがこちらの図です。上のほうがゼロで、下に行くほど高くなっていることにご注意ください。この図は1年間全てのデータを用いていますので、春から夏にかけて溶存酸素が下がって、夏から秋にかけて上がるという、こういう毎年のサイクルを繰り返しています。そして、4.3mg/Lのところに点線でラインを示していますけども、これと比較しますと、この期間で観測点4においては、4.3mg/L以下の出現に大きな違いはないという結論が述べられています。
 次に、佐賀県水産振興センターから提供いただいた2012年までのデータをお見せします。こちらは有明海湾奥西部の中心である測点5における7月の底層の溶存酸素濃度の変化で、これを見ますと、減少傾向にあります。一方で、同じく7月の底層溶存酸素濃度でも、測点8の場合は上昇傾向にある、このような点もあります。測点1~10までの平均をとりますと、ほぼ横ばいから、やや減少といった傾向になっています。
 次に、浅海定線調査データの解析3として石谷ら(2007)の結果をお示しします。この論文では、この図の縦棒で、佐賀県の浅海定線調査データの1972年~2000年までのデータ全てのうちから、貧酸素化が発生した回数を示しています。また、コンターでは、こちらの図では底質の含泥率を、こちらの図では底質のCODの分布を示しています。この結果からは、有明海奥部では、底質の含泥率やCODの高い西岸域を中心に貧酸素水塊の発生回数が非常に多いということがわかります。
 次に、この論文では、底層の溶存酸素飽和度と、それから成層強度、ここでは表層と底層の密度差でもって示していますけども、その関係を調べています。これを見ますと、成層が強いほど底層の溶存酸素濃度は低くなっている。すなわち、貧酸素化しやすくなっているということがわかります。
 また、こちらの図は、横軸に佐賀における降水量、縦軸に成層強度をとっていて、これを見ますと、両者の間によい正の相関があることがわかります。すなわち、夏季の有明海奥部では、成層強度が強いほど底層の溶存酸素濃度は低く、降水量が多いほど、言い換えると、河川流量が多いほど成層は強いという結果を示しています。
 このように、有明海湾奥の底層の溶存酸素濃度は、河川流量と気象の影響を非常に強く受けているということがわかります。そこで、こうした年々の河川流量、あるいは降水量の変動の影響を除いた底層DOの変動を調べることを試みました。その結果について、速水ら(2006)から引用します。この論文では、成層強度と底層DOの間で、連続する11年ずつの間で回帰直線を作成しました。こちらの図は佐賀県の測点1の7月における1972年から82年までのデータに関して、横軸に成層強度、縦軸に底層のDOをとったものです。このように、きれいな負の相関関係が見られます。この図で回帰直線を求めまして、その回帰直線上である一定の成層強度、ここでは2という値を使っていますけども、そのときの回帰直線の示す値、これをDOSとします。こうしたDOSの計算を、1973年~83年、次に1974年~80年というように、1年ずつずらして連続する11年ずつ計算をしていくと、成層強度の影響を除いた底層DOの値を示すことができます。こちらがその結果で、佐賀県の測点1における結果です。緑が相関係数を示していますけども、いずれも5%の有意水準で有意な相関が得られました。この青で示しましたのがDOの生値で、赤がDOSの値です。これを見ますと、1970年代から80年代にかけてDOSは減少し、その後、横ばいから少し上昇しているということがわかります。
 これをさらに、測点1だけではなく、測点1~10の全データの平均を示したのがこの図です。測点1~10平均にしますと必ずしも有意ではないですけれども、変動パターンとしては、両者、非常によく似た結果になってきました。この結果は、成層強度の影響を除外すると、過去30年間で有明海奥部の底層DOは低下傾向にあるということを示しています。そして、成層強度に関係なくDOが低下してきているということは、これは酸素消費速度の上昇を示唆します。そのことから過去30年間で底層の有機懸濁物が増加した可能性があるのではないかということが考えられます。そこで、この結果を底層のCODのデータと比較してみました。こちらの図のここが、先ほどのDOSの結果で、赤が底層のCODで、下に行くほど高い値になっています。これを見ますと、CODとDOSの間には非常によい対応関係が見られることがわかります。
 そこで、佐賀県有明水産振興センターからデータを提供いただき、2012年までのデータに関して同じ解析を行いました。こちらの図が佐賀県浅海定線1~10までの7月の平均で、赤がDOS、それで、青が底層CODについて11年間の移動平均をかけた結果です。CODに関しては、下に行くほど高くなるように目盛っています。これを見ますと、1980年代にDOSが大きく低下して、その後、横ばいないしやや上昇していることがわかります。CODに関しては、1970年代~80年代にかけて増加し、その後、横ばいないしやや回復しているということがわかります。一見してわかりますように、底層のCODとDOSの間には非常によい対応関係が見られます。そこで、横軸に底層のCOD、縦軸にDOSをとって、両者の相関を見たところ、R2で0.87と、非常に高い相関が見られました。
 また、こちらの下の図は、筑後川の河川流量を示しています。この線は、DOSが最も低く、また、底層のCODが最も高かった1993年の時期です。このときは河川流量が非常に多かった年ですけども、この年の佐賀県の浅海定線のDOがどうだったかといいますと、大潮の満潮時であったにもかかわらず、平均で3.0mg/Lで、これは佐賀県の浅海定線で、過去から現在のうち、7月としては下から2番目の値を記録した年でした。こうした結果から、有明海では、1980年代にDOSが低下し、貧酸素化がしやすくなったことがわかります。その後は横ばいから回復していますが、ただし、1970年代~80年代前半に比べると、DOSは依然低いレベルにあります。また、DOSが回復しても、2006年以降のように河川流量が多いと、これまでもご紹介しているように、深刻な貧酸素が発生しております。
 次に、浅海定線データと連続観測の比較をお示しします。といいますのも、浅海定線はあくまでも1カ月の間に1回、大潮の満潮時の観測があるだけですので、それがどの程度、貧酸素を代表できているかどうかという、そういう疑問が常にあるためです。
 こちらの上の図は、前回もご紹介した西海区水産研究所による解析結果で、7月~9月の測点P1、P6、T14、T1における底層の溶存酸素濃度の平均値です。このうち、測点P6に一番近い佐賀県の浅海定線St.5における底層のDOを比較しました。横軸がP6における連続観測結果の7月~9月の平均値、縦軸が佐賀県のSt.5における7月の浅海定線の調査結果です。これを見ますと、両者の間には相関的係数0.62と、かなり高い正の相関がありまして、回帰直線の傾きも1に近い値になっています。さらに、縦軸は同じく佐賀県の浅海定線の測点5の値を用い、横軸にこの4点の連続観測結果の平均値をとりますと、さらに相関係数は上がって、R2で0.68という非常に高い相関が見られました。
 浅海定線の調査は、これ以外にも、この測点T14やT1に近いような浅いところでも行われています。ただし、大潮のデータのために、浅海域は鉛直混合していることが多く、比較できません。一方、湾の中央部の測点5では、出水によって成層が強化される7月には、成層が大潮時でも維持されていて、その結果、その年の平均的な貧酸素強度をある程度反映しているものというふうに考えられます。
 次に、数値シミュレーションによる検討結果についてお話しします。永尾ら(2010)を引用し、この仕事では3次元数値生態系モデルによる長期的な環境変化と貧酸素水塊の発生の関係性に関する検討を行っています。
 この研究では五つの計算をケースとして扱っています。1930年代、1977年、1983年、1990年、2001年です。そして、地形改変、外海潮汐、平均水位、流入負荷量、二枚貝漁獲量の変化を考慮しています。計算は2001年の現況の再現計算を基本にしていまして、その年の気象や河川流量データを与えて、それに対してこういった条件を変えて計算を行っています。こちらの図は地形改変の状況を示したもので、1930年代には薄いグレーで示したこういうところが海域であったというふうに指摘しております。また、2001年には、黒で示したこういう海域が海域でなくなった。さらに、白抜きの四角で示したこの海域の水深が変わったとしています。
 次に、各年代の計算の条件です。潮汐に関しては、月昇交点の変動による外海の潮位振幅を考慮しています。これは2001年、現況を1としまして、それに対して1977年は3%大きく、1990年に関しては2.8%小さくなるように潮汐の振幅を変えています。1930年代に関しては2001年と同じです。
 平均水位に関しては、これは現況に関して最も大きい場合で、1983年のように8.9cm低く与えています。
 流入負荷量に関しては、これは流域モデルで計算したL-Q式をもとに負荷量を与えています。そして、2001年、現況を1としまして、例えば1983年の場合だと3割増、90年の場合だと35%増といった数値を与えています。また、T-Nに関しては5割~6割強多く、また、T-Pに関しては3割~5割多く、1977年~90年の時期には与えています。ただし、1930年代に関してはデータがないので、瀬戸内海における過去の文献をもとにして、CODが2001年の0.63、T-N、T-Pが約半分という値を与えています。
 それから、二枚貝の生息量に関しては、現況に対して、アサリ+タイラギが、1977年、1983年には約15倍、それから、サルボウ+アゲマキが0.7倍、ただし、1990年代には2.5倍、カキは1977年には8.3倍という値を与えています。ただし、1983年のアサリ+タイラギに関してはデータがありませんので、1950年代の漁獲量に漁獲率10倍を仮定して与えています。
 これがその結果で、貧酸素水塊の規模を示したものです。上の図が、こっち側の海域、有明海湾奥西部エリアの結果です。下のほうが諫早湾エリアです。この黒の折れ線で示したのが溶存酸素の存在量です。ton×10-1で示してあります。それから、このバーで示したのが、貧酸素水塊の容積を示しています。これを見ますと、1930年代~2000年にかけて、底層の溶存酸素存在量は減少してきている様子がわかります。また、1983年~1990年にかけて、貧酸素水塊の容積が急激に大きくなっていることがわかります。諫早湾においても底層の溶存酸素量は減少していました。また、貧酸素水塊の容積は、全体として増加傾向にありました。すなわち、有明海奥部全体としまして、貧酸素水塊の容積は経年的に増加していました。また、有明海湾奥西部海域では、1980年代から90年代にかけての増大が大きいという結果になりました。
 それでは、こうした貧酸素の経年変化の要因について検討しているので、それをお示しします。
 上の図は、こちらが有明海湾奥西部エリア、こちらが諫早湾エリアにおける鉛直拡散係数の比較です。これを見ますと、湾奥の干拓がなかった1930年代に約13%、鉛直拡散係数が大きかったということがわかります。それ以降は大きな変動はありません。
 一方で、諫早湾では、1990年から2001年にかけて、急激に鉛直拡散が小さくなっていることがわかります。これは諫早湾の締め切り・干拓の影響を示しています。また、湾奥の西部海域に関して、こちらは横軸にM2分潮のF値、すなわち月の昇交点変動による変動成分と、縦軸にこちらの図に示した鉛直拡散係数を示しています。これを見ると、F値が大きいほど鉛直拡散係数が大きく、F値が小さいほど鉛直拡散係数が小さくなるということがわかります。したがって、1977年以降の湾奥西部エリアのこの鉛直拡散の変化に関しては、月の昇交点移動の影響が大きいということがわかります。この結果は、潮汐振幅の変動、地形の改変に伴って鉛直拡散係数が変化する。つまり、鉛直混合の強度が変化しているということを示しています。
 一方、下の図は、これは水柱での全酸素消費量の比較で、湾奥西部エリアの結果です。湾奥部の干拓がなかった1930年代が際立って小さくなっていますが、その後については、1983年~1990年にかけての上昇が目立っています。なお、8月の酸素消費量の約50%は懸濁態有機物の酸化分解によるということが、論文に書かれていました。
 それでは、こうした酸素消費速度増大の原因についての検討結果をお示しします。先ほどもお話ししたように、有機懸濁物の分解が酸素消費の要因のうち約半分を占めていました。そして、有機懸濁物の95%が一次生産起源でした。
 そこで、こちらの図は、一次生産について、1930年代~2001年までの結果を比較しています。これを見ますと、1930年代には際立って一次生産が小さかったことがわかります。その後に関しては、1983年~1993年にかけての一次生産の増加が著しいことがわかります。この図のうち、薄いグレーで示した部分が、これが二枚貝に利用されなかった。つまり、水中で分解されて酸素消費に効いた一次生産物を示しています。これを見ますと、もし1983年と同じ量だけ、90年にも二枚貝によって一次生産物が利用されていたら、この残余の部分は1983年よりも少なかったということがわかります。こうしたことは、二枚貝類の減少が一次生産の増加をもたらし、さらには水中の酸素消費量を多くしているということを示しています。
 また、モデルの中では、一つの項目だけを変えて、その影響を調べることができます。ここでは2001年の再現計算について、地形だけを変化させた場合が一番上の図です。地形としては、1930年代の地形を与えています。その場合の二枚貝に利用されない湾奥部での一次生産量の変化を示しています。この図のこのグレーに相当する部分です。こうしてみますと、1930年代の地形を与えることで、二枚貝に利用されない湾奥の一次生産量は5%以上少なくなるということがわかります。また、下の二つは、潮汐振幅だけを変えた場合で、F値を最も大きくした場合と最も小さくした場合です。これを見ますと、潮汐振幅を最大にした場合と最小にした場合で、やはり5%以上、二枚貝に利用されない一次生産物の変化が起きているということがわかります。さらに、下の図は、横軸にF値をとりまして、縦軸に2001年を基準にした貧酸素水塊の容積を示しています。実線が有明海の湾奥西部エリア、点線が諫早湾エリアです。これを見ますと、F値が小さくなると貧酸素水塊の容積は大きくなり、F値が大きくなると貧酸素水塊の容積は小さくなることがわかります。こうしたことから、外海潮汐の振幅の変化の影響も無視できないということがわかります。
 以上、貧酸素水塊の経年変化についてまとめますと、夏季の有明海奥部では、成層強度が強いほど底層の溶存酸素濃度は低く、降水量が多いほど、言い換えると、河川流量が多いほど成層は強くなります。
 外海の潮汐振幅が大きいほど湾内の鉛直混合は強くなり、貧酸素化しにくくなります。月の昇交点の変化などの自然要因による潮汐振幅の変化は、有明海奥部・諫早湾の底層DOに影響し得るという結果が得られています。
 二枚貝類の減少は海域の有機懸濁物量を増加させ、貧酸素を促進した可能性があります。
 地形の変化は、鉛直混合の強度、それから一次生産物量の変化を通して貧酸素化の促進に影響した可能性があります。
 その他、これまでに検討されていない要素として、シャットネラ等のラフィド藻赤潮の増加について、今後、検討する必要が考えられます。
 最後、貧酸素化の軽減のための対策についてお話しします。
 まず、貧酸素化の軽減の目的ですけれども、三つあると考えられます。一つは魚介類の生息の場の確保です。これは生理的に斃死が生じない、あるいは少ないことが条件になります。これに関しては、貧酸素の直接影響以外に貧酸素によって生じる硫化水素の影響も含んでいます。二つ目に魚介類の再生産の場の確保です。これは幼生期に十分な生残ができることが条件になります。三つ目は漁場の確保です。これは遊泳可能な生物が逃避せずに漁場が形成されることが条件になります。
 そこで、こうした貧酸素化に関する対策に関して、楠田(2012)が検討した結果をご紹介します。この研究では、生物生息モデルによって再生技術の評価をしていまして、底層のDOが評価項目の一つとして挙げられています。用いられた技術としましては、囲繞堤、覆砂、海底耕耘、なぎさ線の回復、粗朶搦工、カキ礁の復元、それからノリ養殖の減作、この7項目になります。
 これが、それぞれを実施した海域で、囲繞堤と粗朶搦工の条件1は、湾奥のこうした点々で示されたような海域のみで施工した場合です。次に、囲繞堤、粗朶搦工2は、諫早湾から湾奥の全域で、このように施工しています。覆砂に関しては、有明海の5m以浅全域でもって、ここで示した部分に関して施工するとしています。海底耕耘については10m以浅、図のここで示した領域全体について施工したというふうにしています。なぎさ線の回復の1に関しては、有明海奥部と諫早湾の人工海岸に関して施工した場合、なぎさ線の回復2は、有明海全域の人工海岸について施行した場合を検討しています。カキ礁の復元は、1977年を基準にしていまして、ここの海域にカキ礁を増やしたとしています。最後は、これはノリの養殖の海域です。
 こちらがその結果で、こちらの図が貧酸素水塊の年間累積値、こちらが一次生産量の年平均値で、赤で示したのが現況です。これを見ると、なぎさ線の回復、それから覆砂の効果が貧酸素水塊に関して大きいことがわかります。また、カキ礁の復元、海底耕耘の1も、それに次ぎます。一次生産量についても、覆砂、なぎさ線の回復の影響が大きく、カキ礁の回復がそれに次ぎます。こうした一次生産量の減少が貧酸素水塊の緩和につながっているものと考えられます。
 カキ礁に関しては、これ以外に環境省の有明海生態系回復方策検討調査の中でも検討されています。一般に二枚貝類は、カキに限らず、水中の有機懸濁物を除去して、貧酸素を緩和する効果を持つのですけども、サルボウなどの場合、貧酸素によって斃死してしまう影響もありますので、それに対してカキ礁はごく浅海域に分布するために、貧酸素水塊が発生しても影響を受けにくく、対策として有利だと考えられます。
 そこで、この事業では、有明海奥部に関して、現況と筑後川奥部にカキ礁を造成した場合、それから、湾奥にカキ礁を造成した場合、湾奥西岸沿いにカキ礁を造成した場合について、数値計算を行い、比較を行いました。カキ礁は現状のバイオマスの2倍になるように与えています。2007年の気象条件で計算を実施しています。この図の赤はカキ礁が全くない場合ですけども、これに比べると、このブルーのカキ礁がある場合は、貧酸素の容積がかなり小さくなっていることがわかります。さらに、カキ礁を2倍にすると、さらに貧酸素の容積が小さくなることがわかります。ただし、カキ礁の造成だけでは、カキを現状の2倍にしても、現在の貧酸素水塊を抑制するには効果が不十分であるという結果にもなっています。
 その他の方法として、流況の制御による貧酸素の抑制というものが提案されています。これは円筒型流況制御ブロックを使った例でして、小松ほか(1997)が提案し、楠田(2012)から引用したものです。このブロックは、こちら向きの潮流とこちら向きの潮流で抵抗が異なり、こういうブロックがあることで鉛直混合を促進するとともに、上げ潮と下げ潮に対して非対称な潮流、すなわち、残差流をつくり出します。こちらがそのブロックの実際の例の写真ですけども、多数のブロックを設置することで、任意の潮汐残差流パターンを形成して、海水交換や物質輸送を促進し、そして、貧酸素の緩和につなげようということが考えられます。
 最後に、これは人間の手による方策ではないのですけれども、潮汐振幅の経年変化について触れたいと思います。この図は、田井ほか(2010)に追加・改変したもので、M2潮、半日周潮の長期変化を示しています。この図の点線が、これがfと言われる効果で、月の昇交点の変動による18.6年周期の潮汐振幅の変化を示しています。これに対して、この黒の実線が田井らによって解析された結果です。これを見ますと、大体この18.6年周期に合うように変化しているのですけれども、1970年代に比べて最近のほうが振幅が小さくなっていることがわかりました。この赤のラインは、18.6年周期のfの効果を除いた潮汐振幅の変化です。これを見ますと、長期的に潮汐振幅が小さくなってきていることがわかります。こうした変化は、有明海の中、大浦だけではなく、長崎でも同じように起きており、かなり広い範囲で起きている現象だと考えられます。したがって、現在はfの効果に伴って潮汐振幅は増加傾向にあるのですけども、この次のピークである2015年のピークは、以前のピークほど大きくはならないということが予測されます。
 以上、貧酸素化の軽減のための対策のまとめです。
 覆砂・海底耕耘、それから、今回は触れませんでしたけれども、微細気泡装置による底質改善等の対症療法的対策が実施、あるいは現地試験がされています。ただし、これらに関しては効果の持続性という問題点があります。数値シミュレーションによる効果の確認では、なぎさ線の回復の効果が大きいということが示されました。ただし、モデルでは湾奥と諫早湾だけで50km2の面積を与えており、実施可能な規模がどの程度なのかということを、今後、検討していく必要があります。
 また、カキ礁の造成も効果があるということが示されました。けれども、単独で貧酸素を緩和するには不十分という結果が得られています。
 その他の可能性としては、構造物による流況の制御、それから、今回は触れませんでしたけれども、干潟の成長促進が考えられます。これは言うならば、海域側へのなぎさ線の回復で、堆積による海域の有機物の除去、潮流強化による鉛直混合促進等が期待されます。
 その他、考慮すべき事項として、外海の潮汐振幅が挙げられます。これは月昇交点変動により、現在、増大中で、これは貧酸素を抑制する方向に働きます。ただし、前回の極大によりも振幅が小さいということには留意しなければなりません。
 最後、簡単にまとめます。重点海域である有明海奥部・諫早湾における貧酸素水塊のまとめです。
 現状では、成層が強まると必ず貧酸素化します。酸素消費速度が大きいことがその要因で、その酸素消費速度は東京湾に匹敵します。貧酸素化することにより、二枚貝を中心にしたベントスが減少し、その結果、植物プランクトンの捕食圧が低くなることで、海域底層への有機物負荷が増大、それがさらに貧酸素化を促進するという結果につながっています。
 貧酸素水塊の年々の変動には降水量あるいは河川流量の影響が大きいです。ただし、トレンドとしては過去の地形改変、外海潮汐の減少、有機懸濁物の増加が貧酸素化を進行させている可能性があります。
 これらに関して、根本的な対策というものはなかなか考えにくいのですけども、対策としては、人間が手を加えることで貧酸素化を緩和し、それが二枚貝類の増加につながり、その結果、有機懸濁物が減少し、それが貧酸素化のさらなる緩和につながるという、こういうサイクルをもたらすことが重要であると考えられます。
 これについて、簡単に模式図で示したものがこちらになります。まず、有明海奥部・諫早湾では、地形改変、外海潮汐の変化が鉛直混合強度を低下させ、貧酸素化しやすい条件をつくっています。そして、二枚貝類の減少、あるいは夏のシャットネラ赤潮の増大が底層への有機物の負荷量を増大させ、貧酸素化を発生させやすくしています。
 この二枚貝類の減少に関しては、前々回の本小委員会でのご報告でもありましたように、冬~春の珪藻類の減衰あるいは基礎生産の低下が原因の一つとして疑われますが、全体として、卵が先か鶏が先かよくわからないという状況にあります。ただ、こうした中、現在、少なくとも、貧酸素が二枚貝を減らし、二枚貝が減るとシャットネラ赤潮が増大し、シャットネラ赤潮が増大すると有機物負荷量が底層で増大し、それがさらに貧酸素化を深刻化するという負のスパイラルに陥っています。それらに加え、底層への有機物負荷量の増大と貧酸素の発生は、底泥からの栄養塩の溶出をもたらして、それがシャットネラ赤潮をさらに増大させる。また、底層への有機物負荷量の増大は、底泥中への還元物質の蓄積をもたらして、それが貧酸素化の発生をさらに強めています。
 これに対して、どういう対策を打つべきかですけども、例えばカキ礁の造成によって二枚貝を増やしてやる。また、構造物による流れの制御やなぎさ線の回復等によって底層への有機物負荷量を減少させてやる。あるいは、構造物・なぎさ線を回復させることにより貧酸素を緩和してやる。こうした対策を打つことにより、貧酸素の緩和が二枚貝を増加し、二枚貝が増加することにより赤潮が減少し、赤潮の減少が底層への有機物負荷量を減少させる結果、さらに貧酸素化が緩和されて、二枚貝がさらに増える。こういう正のスパイラルへ向かって回転するように、自然に手を加えてやるということが重要だと考えられるわけです。
 最後に、今後の課題です。まず、二枚貝に関しては、浮遊幼生の輸送と貧酸素水塊の関係の解明、それから、二枚貝による有機懸濁物除去能力が貧酸素化を抑制する効果の定量化が課題です。それから、魚類等(遊泳性動物)に関しては、仔稚魚の輸送と貧酸素水塊の関係の解明が課題です。それから、懸濁物と底質に関しては、有機懸濁物の海域での挙動・輸送の解明、それから、化学的な酸素消費の定量的評価が必要です。それから、言うまでもありませんが、モニタリングが重要です。特に有明海・八代海のように、間欠的に貧酸素が発生しているところでは、広域連続的なモニタリングが重要です。
 一方で、今後、検討が求められる課題もございます。一つ目は、二枚貝幼生、稚貝、仔稚魚期の貧酸素耐性の解明です。こうした研究が進むことにより、貧酸素が生活史全般や資源動態に及ぼす影響の解明へつながります。また、貧酸素が漁場形成に与える影響の解明も今後の課題です。そして、貧酸素が物質循環や生態系に及ぼす影響の定量化、それから、貧酸素抑制のための根本的対策の検討といったことが最終的な大きな課題としてあると考えられます。
 以上です。ご清聴ありがとうございました。

○有瀧小委員会委員長 速水先生、どうもありがとうございました。短い時間の中で、非常に膨大な資料をちゃんとまとめていただきました。本当に感謝します。
 それでは、今の説明に関して、ご意見、ご質問等ございましたら、よろしくお願いいたします。

○梅崎委員 2点ほどお願いします。一つは、シミュレーションで有機懸濁物が近年増加している。2000年付近まで増加しているというシミュレーション結果でしたが、昨年度、7月の第4回の本委員会で松山委員が、1980年以降、プランクトンの沈殿量が減少しているという、そういうデータをお示しになられまして、そのときはプランクトンの全体的な生産量も減っているのかなというふうに思ったんですが、ただ、沈殿量というのは、大型プランクトンの0.1mm以上のものが主にかかるということで、小さい部分のプランクトンについては沈殿量に反映しないのかなというふうな考え、見方もあるんですが、その有機懸濁物の増加と沈殿量の減少との関係について、何か説明いただけたらと思っておりますが。

○速水委員 プランクトン沈殿量の減少については、あれは冬場のデータですね。それに対して、こちらのほうでお示ししたのは8月の平均値です。そして、8月に関しては、プランクトン沈殿量でもって、水中のプランクトン量、あるいは有機物量を対比をさせるのは、それは困難だということは、松山委員の発表のときにもあったかと記憶します。

○梅崎委員 ということは、夏場は有機懸濁物量は増えているけれど、冬場は必ずしもそうではないかもしれないということでしょうか。

○速水委員 夏場の有機懸濁物量に関する長期のデータがありませんので、ですから、確実にそうだということはできないですけれども、モデルの上では夏場は増えているという結果になっています。

○有瀧小委員会委員長 ほかには何かございませんか。

○梅崎委員 すみません、あと一つ、対策のところで覆砂の効果というのが示されておりましたが、アサリを5倍にしたというのは、覆砂をすることによって、アサリの生息量がそれで5倍増えるという、そういうことでしょうか。

○速水委員 そのとおりです。

○梅崎委員 具体的に、m2当たりどれぐらいの数値でしょうか。

○速水委員 今、手元にそこまで詳しい資料がありませんので、もし必要でしたら、論文の著者に聞いて、お知らせします。

○梅崎委員 わかりました。どうもありがとうございました。

○有瀧小委員会委員長 じゃあ、速水先生、よろしくお願いします。
 ほかには何かございませんか。

○山本委員 実測値とか、モニタリングの値とか、モデルの結果とか、いろいろ結びつけて、最後、対策までラインをつくっていただいたんですけども、この対策をやっぱり強く言うには、一個一個のラインがどれぐらい確からしさを持って検証されたものとして言えるかというのがすごく重要だと思うんですけども、で、幾つかお伺いしたいんですけど、貧酸素水塊発生要因の一つに有明海は酸素消費速度が非常に大きいと。東京湾にも匹敵するという結論だったんですが、これは東京湾とかのデータは(柳,2004)からなんですけれども、有明海のデータはどういうデータでしょうか。

○速水委員 これに関しては、西海区水産研究所が実験で行ったもので、現在、西水研の木元さんが論文を執筆中ですので、近くパブリッシュされると思います。

○山本委員 早くパブリッシュしていただいて、そうすると、ちょっと速水先生に聞くことなのかどうかはわからないですけど、これ、東京湾もそうですが、かなりばらつきがありますね、値自体に。このばらつきが、例えば貧酸素水塊発生の年変動とか、そういうところに結びついていくのかと、ちょっと想像するんですけど、そのばらつきの要因まではわからないんですか。

○速水委員 これもちょっと私が実験をしたわけじゃないので、わからないですね。恐らく年による赤潮の発生量などによるばらつきがあると思います。

○山本委員 それで、後半のほうでは、例えば18ページの計算とかの条件にこういう結果を、今は入っていないと思うんですけど、こういう結果を入れてあげれば、より精度の高いモデルになったりするんでしょうか。

○速水委員 そうですね。特に長期の連続観測データをきちっと検証データとして用いることで、モデルの精度は上がりますので、そういった取組ができる環境が早くできればと考えています。

○山本委員 ありがとうございます。

○有瀧小委員会委員長 ほかには何かございませんか。
 私のほうから、これは意見というか、お願いなんですが、今回の速水先生には、貧酸素の全体像について詳細なデータをもとにと示していただいたんですが、今後、もうちょっと海域を絞り込んで考えていく必要もあると思うんです。これは後ほどお願いするんですが、将来、貧酸素と二枚貝、夏場の赤潮との間で関連性について横串を刺すと必要が出てきます。貧酸素水塊については、特に西部海域で貧酸素化が進むということがございますよね。ですから、そういう点でも、奥部の例えば西部海域であるとか、諫早湾にぐっと絞っていって、何が起こっているのか、どうしていくのかということを検討する必要が」あるのではないでしょうか。

○速水委員 おっしゃるとおりで、特に効果的な対策を考える意味でも、湾奥西部と諫早湾に絞っていくことが大事だと思いますし、それと、あともう一つ考えられるのは、貧酸素というのは、ある意味、有明海の環境変化の症状でして、その症状が最もはっきりと現れているのが諫早湾と、それから湾奥西部とも考えられることができますので、湾奥西部と諫早湾の環境、特に底層の溶存酸素が上がるようにするということが、ひいては、有明海全体の生態系の回復につながる可能性があるのではないかと考えています。

○有瀧小委員会委員長 ありがとうございます。今おっしゃっていただいたことは、今後の課題になると思うんですが、また、検討をよろしくお願いしたいと思います。
 それと、もう1点あるんですが、資料の27ページのところで、今後の課題について、1、2というふうにして挙げていただきました。これは、すみません、ちょっと私の理解不足かもしれないですが、今後の課題1というのは、既にもう着手されているもの、それから、2というのが、まだまだ着手もされていないので、検討が必要なものというふうに考えてよろしいんでしょうか。

○速水委員 そうですね。そういう理解で結構です。

○有瀧小委員会委員長 わかりました。
 ほかには何かございませんか。

○松山委員 松山です。
 負のスパイラルに関しては、二枚貝の減少要因、あと赤潮の発生要因からも、このスパイラルが仮説として出されてきたわけですけども、今回の貧酸素においても、これが補強されるような結果が出ているのかなというふうに感じました。
 この後、さらにこの仮説の検証等をこの小委で進めていかなきゃいけないと思うんですけども、湾奥西部と諫早湾という極度に貧酸素が、二枚貝に対して致死的な貧酸素が発生する海域でのこれは仮説でありますけども、現実には有明海の全域で二枚貝の減少が起きていると。特にそれはもう貧酸素が発生しない海域、中部あるいは東部の海域というところもそういう現象が起きているわけなんです。そういった場合に、有明海の中にこういうスポット的、かなりの面積ではあるんですけども、局所的にこのように致死的な貧酸素が発達する海域があった場合、それが貧酸素が発生しない海域にどういうふうに横に影響していくかというところを、今後、我々、詰めていく必要があるのかなという気がいたしましたので、既往知見等を整理していただければ助かると思います。

○速水委員 おっしゃるとおりだと思います。既往知見、まだまだ多くはないと思いますけれども、今後、検討していきたいと思います。

○有瀧小委員会委員長 ほかには何かございませんか。

○藤井委員 長崎県の藤井です。
 16ページの下の段の、ちょっと聞き漏らしたのかもしれませんけれども、70年代~80年代にDOSが低くなっていて、また回復している。これは懸濁物量の増加と関連しているという話をされたと思いますけど、その要因、考えられる低下と回復した要因を教えていただければと思います。

○速水委員 要因は、実はこのデータ解析からだけではわからないのです。ただし、一つ、非常におもしろいのは、こちらのモデルの結果でも、1980年代~90年代にかけて、この酸素消費速度が大きくなっているんですね。それで、このモデルの結果は、これは二枚貝の減少がきいているという結果になっているので、ですから、一つの可能性として、やはりこの二枚貝の減少というものがきいている可能性があると考えています。

○藤井委員 2000年代から、16ページの下のグラフになりますけど、上昇、回復している様子が見られますけれど、これについては、その二枚貝と単純には関係していると判断できにくいところがあるんじゃないかなと思ったものですから、お聞きしたんですけれども。

○速水委員 そうですね。私も、この回復傾向は、ある意味、意外な結果でして、原因についてはちょっとよくわからないですけども、ただ、CODとの関係がここまできれいに出ているということは、やはり何らかの回復傾向はあるのだと思います。可能性の一つとして挙げられるのは、陸地からの負荷量が90年代に比べて、2000年代に入って減っていますので、それも一つの要因かとは思います。

○藤井委員 ありがとうございました。

○有瀧小委員会委員長 ほかには何かございますか。

○山本委員 貧酸素水塊が八代海とか、それ以外の海域でも出ているというお話だったんですけど、ただ、このデータは、結局、ある意味、スナップショットなんですけれども、これ、こういう海域でもモニタリングの必要性を提案されたわけですが、そうすると、そのモニタリングの間隔を決めるにしろ何にしろ、どれぐらいの継続、今回、貧酸素水塊、どれぐらいの酸素濃度だと危ないのかというお話もしましたけれども、どれぐらいそれが継続したらというところをもうちょっと、何か知見があったらお願いします。なければ、何か多分集めないとというか、検討しないといけないんじゃないですかね。

○速水委員 そうですね。実際に、水産生物がどの程度の時間、貧酸素にさらされると影響を受けるのかという知見はあまり多くはありません。また、単純に連続的に貧酸素にさらすだけではなくて、間欠的に何回も貧酸素にさらしていると、ついには衰弱死してしまうという研究結果もあります。したがって、単純にその貧酸素継続時間が幾ら以上にならないようにと規定することも、また難しいですし、やはり大事なことは、地道なモニタリングを続けていくということと、それと、貧酸素が小潮に発生することが多いので、小潮時にしっかりと分布調査をしておくことが大事だと考えられます。

○有瀧小委員会委員長 ほかには何かございますか。
 それでは、大体時間も来ました。
 3月11日に評価委員会の本委員会のほうが開催されます。速水先生には、前回と、今回の取りまとめを合わせていただいて、説明していただくことになると思うんですが、前回が5項目、今回が4項目と、非常に多岐にわたりますので、申し訳ないですが、これをコンパクトにして、それから一本芯を通していただくということも、また作業的にはお願いすることになると思います。よろしくお願いします。
 速水先生、どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、議題の二つ目、午前中に海域再生小委員会が開催されて、そこで海域区分と、それから、それぞれの連関図についてご説明があったんですが、概要のほう、ご説明をよろしくお願いします。

○川岸主任研究員 では、お手元の資料をお願いいたします。表紙をめくっていただいて、目次をお願いいたします。この資料は、海域再生小委員会で検討してきたストーリーがわかるように、必要な部分を全て入れております。
 1章には、この再生方策を考えていく上に、どういう前提に立とうかというところを一応整理して入れてあります。
 それから、2章には、環境をまず把握しようと。把握するためにはどういう視点で、どういうやり方でやろうかというところを整理してあります。
 それから、3章では、幾つかの観点で環境特性を把握しようという試みをどうやってまとめようかというところが書いてあります。
 それらを合わせて4章では、有明海・八代海を幾つかの海域に区分しております。区分した海域ごとに、どういう環境になっているのかという整理をしています。
 それから、それらの情報をもとに、平成18年に出されました評価委員会の委員会報告に「問題点とその原因・要因の考察」という章がございます。そこにいろんな項目の関係が書かれている図があるんですけれども、ここでは連関図という名称で示しておりますけれども、それを海域ごとにつくって入れてあります。
 3章まではお時間があるときにみていただければと思うんですが、4章の環境特性を少し説明をさせていただいて、海域区分ごとの連関図と課題の案を説明したいと思います、40ページからです。
 有明海・八代海は場所によって環境の特性が違います。そこで、幾つかの海域に区分をして、環境を把握しようという、その区分をどうするかということで、ここでは底質環境という観点からみたとき、それから、水質という環境からみたとき、それと、それらの各環境の中の底生生物の生息環境がどうなのかという整理を作業としてやってきました。底質と水質の区分を重ね合わせた図面が40ページの図面です。これは有明海の図面です。黄色のハッチをかけているところ、A-1~A-8まで、8区分ございますが、これが水質からみたときの海域区分、その下に色分けして細かく分かれていますけれども、これが底質という観点からみたときの海域区分でございます。今回はこのA-1~A-8という水質から見た海域区分の中での環境特性の整理というものをやっています。
 それから、同じような作業を八代海もやってきておりまして、それは41ページに入れておりますが、Y-1~Y-5ということで、水質からみた5区分、それから、その下に、色がちょっと薄くて見づらくて申し訳ございませんが、ハッチをかけているところが底質からみた4区分に分けているんですけれども、ここでは、水質からみた区分、有明は8区分、八代は5区分で、区分された海域の中の環境がどうなっているのかという整理を一覧表の形でしております。
 43ページをご覧ください。まず、有明海でございます。
 有明海につきましては、先ほどの速水先生のご発表にありましたように、湾奥の部分を中心に、調査あるいは研究がされていまして、情報が平成18年の委員会報告以降も増えております。そういう関係もあって、表の中が充実しております。環境の整理については、43ページの表の左上からご覧ください。底質環境、それから、そこにすんでいるベントスの生息状況、それから、そこの水質あるいはそこへ入ってくる負荷、それと、その海域の流況、流動、懸濁物の挙動、水塊構造、それから表が続きますけれども、44ページに行きまして、赤潮の発生状況、貧酸素水塊の発生状況、それと、二枚貝類、魚類といったような観点からの環境特性を整理しております。今日、お話がありましたような貧酸素水塊の発生状況につきましては、後ほど、この表の中にまた追加させていただこうというふうに考えております。
 八代海も同様に、45ページ、46ページのほうに整理をしておりますが、先ほどの有明海と見比べておわかりのように、情報は少ないので、書いてある文字数といいますか、欄の中もがらがらになっております。こういう情報をもとに連関図、問題点と原因・要因の関連の可能性を見直そうということをやっております。
 次に、48ページをご覧ください。これは平成18年の評価委員会の委員会報告に記載されました図面でございます。これをこの資料の中では連関図と称しております。上は有明海、下は八代海でございます。これをベースに、先ほどの各海域ごとの環境特性を整理した表がございましたけども、あの表をもとに、海域ごとにこの連関図を見直しております。この連関図、両方とも評価委員会の委員会報告をつくった当時に問題とされていた部分を赤の枠で記載されております。有明海でいきますと、底質の泥化とか、底質中の有機物・硫化物の増加、それから、貧酸素水塊の発生、赤潮の発生件数といったような問題点があって、それらとその他の事象との関係、それから、特に生物・水産資源との関係というものを示した図になっております。これを海域ごとに見直すとどうなるかという案を示しております。
 49ページから各海域ごとになります。海域は、先ほどお話ししましたように、有明海はA-1~A-8という区分をして整理をしております。A-1につきましては、今集めている情報では、48ページの図面でお話ししましたような底質のデータ、あるいは底質中の有機物・硫化物の増加、貧酸素水塊の発生といったような問題点が、今のところ、確認はされておりません。ただ、赤潮については発生件数がどうなっているかというのはわかっているんで、50ページに入れております。ですので、今日の案としては、赤潮の発生件数の増加というものを入れた連関図を作成しています。
 ただ、午前中の委員会の中で、可能性のあるものは入れておいたほうがいいのではないかというご意見もありましたので、ここについては、今後修正する予定でございます。
 それから、A-2という海域、区分は53ページの図面で確認していただければと思うんですが、湾奥の部分でございます。この部分については、調査・研究が進んでいるんですが、ご存じのように、湾奥の干潟の部分のデータというのはなかなかございません。その前面の浅海域の部分が中心になってしまうんですが、そこでの連関図、確認ができた問題点、ここは底質中の有機物や硫化物の増加とか、貧酸素水塊の発生、あるいは赤潮の発生といったような知見が寄せられていますので、それをもとに連関図をつくってみると、54ページのような形になるのかなと考えています。
 なお、この54ページの図面で説明させていただきますと、生物・水産資源のところ、それから、海域環境のところ、色分けをしています。海域再生小委のほうでは、真ん中の海域環境というところを中心に検討していますので、そこについての枠を入れています。こちらの小委員会のほうで検討された結果を、最終的には生物・水産資源のところに、この連関図の上に重ね書きというか、追加をさせていただこうと考えていますので、今日のところは、グリーンのところはその部分が抜けております。
 それから、55ページにはA-3の海域、東側の海域でございます。ここも赤潮の状況はわかっていますし、先ほど速水先生の発表にもありましたように、貧酸素水塊の発生も確認されているということがございますので、そういう情報を入れた形で57ページに連関図を入れております。
 それから、58ページからはA-4の海域ということで、これは先ほどから議論になっていましたように、貧酸素水塊の発生が最も顕著といわれる海域でございます。ですので、データもたくさんありますし、それをもとに連関図をつくると60ページのような形になります。
 それから、61ページにはA-5の海域、ここも干潟域がずっとあるんですが、干潟域はデータが集まりませんでしたので、浅海域の情報がもとになるんですけれども、63ページのような形で連関図は作成しております。
 それから、64ページからはA-6ということで、この辺の海域区分の線引きについても、今後、見直していくことになるんですが、今回、A-6という区分をつくったんですけども、この区分ではなかなかやはりデータがないんで、ここで貧酸素水塊が発生している、あるいは底生生物が減少しているというふうな情報、多分場所によっては、スポット的、あるいはミクロ的にはあるんではないかと考えているんですが、なかなか情報が得られなかったので、今のところ、66ページのように、確認ができた赤潮だけで連関図をつくっております。
 それから、67ページはA-7海域なんですけども、ここについては、いろいろ情報がありますので、69ページのようなA-4等の情報があるところと同じぐらいの精度の連関図ができるかなと考えています。
 それから、70ページはA-8海域として、湾央~湾口まで、今日のところでは一つの海域にくくっております。ただ、71ページの赤潮の発生状況をみていただくとおわかりのように、湾口と湾央と分けたほうがいいのかもしれません。この辺も今後、作業の中で検討をしていきたいと思っている部分です。ここについては、赤潮は、湾央のほうが発生しますので、そこは問題点かなということで、72ページのような連関図を示しております。
 以上は有明海ですが、八代海は、先ほどお話ししましたように、情報が有明海ほどたくさんあるわけではございません。ですので、連関図についても、例えば一番データがある湾奥、Y-1という海域については75ページに入れているんですが、48ページに入っていた平成18年のときの委員会報告から、ほとんど変わらないという状況でございます。
 それから、76ページ、Y-2の海域というのは球磨川の河口の地先になるんですけれども、八代海の中ではある程度情報があるんですけども、有明海ほど詳しい連関図ができないという状況にあります。
 それから、79ページはY-3、湾央の部分になります。これについてもほとんど情報は変わらないということで、連関図も変えようがないという状況でございます。
 それから、82ページ、湾口で、東側の海域については確認ができていない部分があったので、今回の連関図では削っているということはありますけれども、84ページのような連関図に今のところなっています。
 それから、Y-5、長島海峡は、もうほとんどデータがなくて、一番最後のようなページのような海域区分になっています。
 これらの作業をやっていて、連関図をつくる、あるいは海域区分の線を決めるという点で課題がかなり上がってきました。一つは、最初のほうに少しお話ししましたけど、有明海・八代海、両方とも共通のことなんですけども、浅海域の部分についてはデータがあるんで、それなりに整理ができても、干潟域については、なかなか長期間、同じ地点で、同じ方法でモニタリングをされているというデータがなかなかありませんというのが、一つ、やはり課題かなと。だから、連関図をつくるにしても、環境特性を整理するにしても、どうしても片手落ちといいますか、できない部分ができています。
 それから、もう一つは、どこでも結構ですが、先ほどの海域区分の図を開いてみていただくとよろしいんですが、今、有明海を八つの海域に分ける、あるいは八代海を五つの海域に分けて、環境特性を整理をしようとやっているんですが、この海域ごとの関係、例えば有明海ですと、A-1、A-2、A-4、A-6、A-8といったような、海域間の関係、物理的な関係、化学的な関係、生物的な関係も含めてですが、関係がどうなっているのかというのが、集まっている情報ではなかなか検討が難しいと考えていて、別な検討が、今後必要かなと考えています。
 それから、特に八代海がそうなんですけども、先ほど来、速水先生のお話にもありましたような連続観測、あるいは同じところでのずっと長期的なモニタリングというのは、八代海は非常に少ないです。状況がどうなっているのか、集めた情報を整理して提示をしようとしても、なかなかそこがうまくいかないというところが課題となっています。課題となっている部分については、今後作業を進めていきますので、最終的には、この区分の形が変わる、整理の内容も変わるという可能性がございます。そこはご了承ください。
 先ほど、環境特性の整理をしましたという一覧表をお見せしました。その中に、二枚貝のタイラギとサルボウとアサリの各海域ごとの生息状況の整理というのを入れていたんですが、お配りしている資料の一番最後の2ページ、先ほどの海域区分の資料が終わると、参考資料という表紙がありまして、そこの後に(1)からページを振っております。そのページで行きますと(5)ページです。ここには、こちらの小委員会でつくられて、評価委員会に報告をされた海域区分を参考までに入れています。(5)ページには付図の3として、タイラギの生息実態から見たときの有明海の海域区分、それから、(6)には付図の4として、サルボウの生息環境、それから、(7)ではアサリというふうな海域区分が、この海域区分についても、海域再生小委でやっている作業がまだ途中ですので、これが終わったところで、この海域区分の(5)ページから(7)ページの重ね合わせという作業をやっていきたいと思っています。なおかつ、今日、速水先生からお話がありましたような貧酸素の情報についても取り込んでいくという作業をやった上で、最終的に今ある情報での有明海・八代海の環境特性、それから、そこの各海域ごとの問題点がどうなっているのか、その原因と要因がどうなっているのかという連関図を作成をすることを、今後、やっていきます。
 以上で説明は終わらせてもらいます。

○有瀧小委員会委員長 ありがとうございました。
 ご質問、ご意見等ございましたら、よろしくお願いします。

○梅崎委員 連関図のお話ですけれど、書いてある整理の方向ですけれど、例えばシャットネラ赤潮と珪藻赤潮を一つの図の中に入れられて、そして、それに関係している要因をつなげてあるわけですけれど、夏場はシャットネラの赤潮が発生するということで、これは、夏場は成層ができて貧酸素水塊、そして、またそれに関連してシャットネラ赤潮が出ますよというところの関連が一つあるかなと思います。冬場は、珪藻赤潮が大量に出た場合にノリの色落ちが発生するという問題が発生します。夏と秋から冬、その辺の問題と関係は、1枚の図にすると、ちょっとわかりにくいところがあるのかなと思いまして、その時期的なものを含めて整理されたらどうかなと思っております。

○川岸主任研究員 おっしゃるとおりだと思います。最終的に区分の数が変わるかもしれませんが、今のところ、有明海では8海域、八代では5、全部で13海域あって、それを単純に季節でつくると、3~4枚とかになってしまってということもありまして、シャットネラと珪藻は季節が違うし、その要因は変わるというのは理解できますので、少し工夫をして、その違いがみえるようなレイアウト、書き方を考えてみます。

○有瀧小委員会委員長 ほかには何か。

○速水委員 3点あるのですけども、一つ目は、特に有明海のほうですけども、海域区分の海域をもう少し少なくできないのかということであります。といいますのも、界面がありますよね、水域と水域との。海域の数が多くなればなるほど界面の数が増えて、その結果、海域間の関係が複雑になるので。ですから、できるだけその海域間の関係をシンプルにできるような区分を意識していただければと思います。よろしいですか。
 それから、二つ目が、A-1なんていう点がありますけども、これはたまたま筑後の河口沖に点があったから、独立しているだけで、海洋学的に言うと、恐らくこれは有明海奥部に流入する河川のエスチュアリーという位置づけなんだと思うんですね。したがって、このA-1という部分ではなくて、たとえそのデータがなくても、有明海湾奥に流入するエスチュアリーという形で、六角川感潮域とかの感潮域を含めてまとめられたらどうかなと思います。
 三つ目に、今の二つ目のコメントと関係するのですけれども、海域区分をするに当たっては、海洋学的な海域特性に基づいた哲学みたいなものが何か欲しいなというふうに感じまして、それに基づいて相違を示す。例えば海洋構造や、あるいは物質の分布の図、赤潮以外の、そういったものとあわせて海域区分の結果をお示しいただければ、より理解が深まるのではないかと思いますので、どうかよろしくお願いします。

○川岸主任研究員 海域区分の数、区分の考え方は、ご意見を参考に見直したいと思います。
 あと、海洋学的に、この区分された海域がどういう位置づけになるのかというものにつきましては、今日、速水先生の発表にありましたような、ラインがどの程度、うまくぴったり沿うかというのは確認してみなきゃいけないんですが、有明海の縦断方向か、横断方向かの水温、塩分等の鉛直プロファイルでみると、ここの海域はこういう環境、位置づけにあるというものを整理をした上で、表の中に書き込むということで、対応させていただければと思います。よろしくお願いします。

○有瀧小委員会委員長 ほかには何かございませんか。よろしいですか。
 それでは、どうもありがとうございました。
 それでは、私のほうから、ちょっと1点、確認といいますか、今後のスケジュール等をご相談したいんですが、足かけ2年かけて、二枚貝、それから夏場の赤潮と、今回の貧酸素ということで、この3項目について、それぞれ取りまとめと、それから仮説の提示をしてきました。速水先生も先ほどまとめていただいたものも、先ほど言ったように、本委員会のほうに提示し、いろんなご意見もあるでしょうけども、そこで一応貧酸素については大枠をまとめたという形になります。
 前々からご相談しているように、次の段階としては、この3項目について、関連性を検討しながらやっていきたいということで、今年度、25年度はもうここで終わってしまうんですが、26年度、1年かけて、できればこの3項目の取りまとめ、それから、先ほど海域再生のほうでは連関図が出てきたんですが、この3項目の可視化、連関図についても生物小委のほうでまとめていきたいというふうに考えているんですが、その辺はどうでしょう。皆さん、何かご意見ございましたら、よろしくお願いいたします。
 ご異存ないということで、よろしいですか。
 それでは、そういうふうに進めさせていただきますので、今後ともまたよろしくお願いします。
 それと、もう1点あるんですが、先ほど海域再生小委のほうから、海域区分が、ある程度の形をもって示されております。生物小委のほうで、先ほどの3項目についても、海域ごとの取りまとめ、それから整理が必要になってくると思うので、そろそろこの二つの小委員会のすり合わせと意見交換を始めなきゃいけないというふうには思っています。我々は、ご存じのように、この小委員会の下に有明海・八代海勉強会というワーキンググループを持っていますので、そこで海域再生小委から出席いただいて、今、説明いただいた海域区分についての提示と意見交換をしていきたいんですが、この辺は、川岸さん、どうでしょうか。そろそろそういう時期に来ているとは思うんですが。

○川岸主任研究員 こちらからもお願いしたいぐらいなので、やらせていただければと思います。

○有瀧小委員会委員長 ありがとうございます。また、連絡と、それからご相談しますので、よろしくお願いいたします。
 それと、先程申し上げた3項目の連関について、ある程度形がつくのが、恐らく来年いっぱいはかかると思います。それと同時並行といいますか、ちょっと遅れるとは思うんですが、来年の末ぐらいから、ノリと冬場の赤潮について、そろそろ検討していきたいと思っています。午前中の海域再生小委のほうでも、ノリの養殖というのは大きなキーワードになるということで、いろいろなご質問もありました。ノリの養殖と冬場の赤潮についてはやはり水産側、それから生物側から、検討すべき課題なので、できるだけ早く取り上げていきたいと思いますので、こちらのほうもよろしくお願いいたします。
 それでは、一応用意された議題については、これで終わりたいと思うんですが、事務局、いかがでしょうか。

○高山室長補佐 ありがとうございました。
 事務局からの報告が3点ございます。まず、評価委員会の日程でございますけれど、3月11日に、ここの環境省第1会議室での開催を予定しております。
 それから、26年度のスケジュールですけれども、来年度は大体3回程度を予定しておりまして、次回は6月の開催を予定しておりますので、スケジュールの調整等のご連絡を差し上げますので、よろしくお願いいたします。
 それから、本日の議事録の確認の依頼を後ほどお願いいたしますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、これにて第6回生物・水産資源・水環境問題検討作業小委員会を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。

午後3時17分 閉会

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