第35回有明海・八代海等総合調査評価委員会 会議録

1.日時

平成27年3月23日(月)午後3時~午後5時

2.場所

環境省第2・3会議室

3.出席者

委員長:
岡田光正委員長
委員 :
秋山壽一郎委員、青野英明委員、岩渕光伸委員、上田直子委員、久場隆広委員、
古賀秀昭委員、清野聡子委員、滝川清委員、中田薫委員、中田英昭委員、
中村由行委員、西村修委員、速水祐一委員、本城凡夫委員、山口敦子委員、
山口啓子委員、山田真知子委員
臨時委員:
清水晃委員
専門委員:
松山幸彦委員

午後3時00分 開会

○高山室長補佐 定刻となりましたので、ただいまから第35回有明海・八代海等総合調査評価委員会を開会いたします。

 最初に、本委員会は公開の会議となっておりますことを申し上げます。

 初めに、早水大臣官房審議官よりご挨拶申し上げます。

○早水大臣官房審議官 環境省大臣官房審議官で水・大気局を担当しています早水と申します。よろしくお願いいたします。

 委員の皆様におかれましてはご多用のところ、本日この会議にお集まりいただきまして、ありがとうございます。

 今日は第35回の評価委員会でございます。開会に当たりまして一言ご挨拶申し上げます。

 この委員会でございますけれども、有明海・八代海の特措法が改正されて以降も既に20回以降、小委員会を含めまして開催されてきているところでございます。その中で、有明海あるいは八代海などで生じております生物や水産資源をめぐる問題点の原因と要因、それから再生に向けた評価の議論が進んできたということ、それから関係県、関係団体から早急に議論を進めて委員会報告をまとめてほしいという要望が来ておりました。

 こういうことを踏まえまして、昨年12月に開催されました前回、第34回評価委員会におきまして、平成28年を目途に委員会報告を取りまとめるということでご了承いただいたところでございます。

 本日の評価委員会でございますけれども、この委員会報告の取りまとめに向けまして、今、2つの小委員会で検討いただいております内容についてご議論をお願いしたいと考えております。まず第1に、海域再生対策検討作業小委員会の関係につきましては、有明海あるいは八代海の海域ごとの問題点とその要因・原因の考察、それから再生への取組について。もう一つの生物・水産資源・水環境問題検討作業小委員会関係につきましては、有明海の二枚貝類と貧酸素、赤潮との関連の検討、それから有明海の二枚貝類の減少要因の解明等の調査、この2点でございます。以上の点につきまして今日はご報告をいただき、あるいは事務局からも一部報告いたしまして、ご検討をお願いしたいと考えております。

 今日は時間の許す限り、専門のお立場からのご意見を忌憚なくいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

○高山室長補佐 本日の委員の出席状況ですが、欠席の連絡を小松委員と山本委員よりいただいており、本日は18名が出席しておりますので、有明海・八代海等総合調査評価委員会令第6条に基づく会議の定足数を満たしていることを報告いたします。

 また、本日は、生物・水産資源・水環境問題検討作業小委員会から松山専門委員に出席していただいております。

 続きまして、配付資料を確認させていただきます。

 資料1といたしまして委員会名簿、資料2-1「問題点とその原因・要因の考察について」、資料2-2「再生の取組について」、資料3-1「有明海の二枚貝類と貧酸素、赤潮との関連の検討について」、資料3-2「有明海二枚貝類の減少要因解明等調査について」、参考資料といたしまして「有明海・八代海等総合調査評価委員会報告について」でございます。

 不足の資料がございましたら事務局までお申しつけください。

 報道、取材の皆様は、これ以降のカメラ撮影はお控えいただきますようよろしくお願いいたします。

 これ以降の進行は、岡田委員長、よろしくお願いいたします。

○岡田委員長 年度末のお忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございます。

 早速始めさせていただきます。

 先ほど早水審議官からのお話にございましたように、今回は海域再生対策検討作業小委員会、生物・水産資源・水環境問題検討作業小委員会からそれぞれの状況についてご説明いただくこととしております。前半では海域再生小委員会で検討していただいた問題点とその原因・要因の考察についてと、再生への取組について、事務局からご報告いただきます。その後、後半で、今度は生物小委でご検討いただいた有明海の二枚貝類と貧酸素・赤潮との関連の検討について速水委員から、次に、有明海二枚貝類の減少要因解明等調査についてを松山専門委員からご説明いただき、議論を進めさせていただければと思います。

 それでは、事務局から、海域再生小委の検討事項についてご説明をお願いします。

○根木閉鎖性海域対策室長 資料2-1を説明させていただきます。

 その前に、一番後ろについております参考資料をご覧ください。

 12月、前回の評価委員会で説明させていただいた評価委員会の報告についての資料でございます。

 委員会の経緯、1つ目、2つ目の説明は割愛させていただきますが、生物小委員会で二枚貝の減少、赤潮、貧酸素水塊の原因、要因、発生機構について検討している。海域再生小委員会では、再生の評価に係る情報の収集・整理・分析のため、環境特性から海域を区分して海域ごとの問題点とその原因・要因の整理をしてきているということでございます。

 ページをおめくりいただきまして、評価委員会の報告について、評価項目の現況の議論が進んできたこと、早急に議論を進めて委員会報告を取りまとめてほしい旨の関係者の要望があることから、平成28年を目途に委員会報告を取りまとめることとしたいという方針が打ち出されたということでございます。

 次のページが委員会報告の目次のイメージでございますが、これは前回も申し上げたとおり、あくまでイメージでありまして、今後ブラッシュアップをして必要な修正をしていくものと考えております。

 この目次のイメージの中で、第4章に「問題点とその原因・要因の考察」となっております。そして、資料2-1のタイトルが「問題点その原因・要因の考察について」となっております。つまり、報告書の第4章に記載していく内容をご検討いただくために、資料2-1を準備したということであります。

 ただし、この資料は海域再生小委員会でも検討している途中のものでございまして、小委のほうで何かまとまったという段階のものではありません。あくまで本日は、平成28年目途の報告書の内容を固めたいということではございませんで、本日いただいたご意見を今後、報告書の作成に生かしていきたいという趣旨でございます。

 また、今日の後半の議事にありますが、生物の小委員会のほうで議論している内容も第4章に盛り込んでいきたいとも思っておりますので、その旨もご留意いただければと思います。

 それでは、資料2-1をお願いします。

 時間の都合で、かいつまんでポイントをご説明させていただければと思います。

 まず、1ページをお開きください。

 基本的な考え方でございますが、真ん中ほどに、有明海・八代海などで抱える諸問題の原因・要因を可能な限り的確に把握した上で、両海域の再生に取り組むことが望ましいという方針が記載されております。

 また、一番下に「なお、」ということで、今回の検討では、基本として1970年頃から現在までの有明海・八代海等の環境変化を対象として整理を行うということでいかがかということを記載しております。

 次に2、問題点の特定と可能性のある要因でございます。

 まず、有明海・八代海等の問題点は、平成18年の委員会報告では、二枚貝の減少、魚類等の減少、ベントスの減少、そしてノリの色落ちということで整理しておりまして、これらの問題点は、基本的には現在も同様なのではないかと考えております。

 次に、問題点の特定でございますが、2ページをご覧ください。

 有明海・八代海等はさまざまな環境特性を持つ。生物の生息状況も異なっていて、問題点とその原因・要因も海域ごとに異なるものと考えられる。このことから、問題点を環境特性ごとに区分した海域ごとに整理するという方向ではいかがかということであります。

 海域区分につきましては、前々回、1年前の第33回評価委員会で説明させていただいているところでございますが、ポイントを説明させていただきます。

 今日の資料では、暫定的に水質のデータを用いたクラスター解析によって海域区分を行っております。3ページが有明海の区分、5ページが八代海の区分でございます。

 一方で、生物の生息環境から見た海域区分として、別途、底生生物のうち二枚貝類の生息区分から見た海域区分の整理もございます。4ページを見ていただくと色付けした図が3つありまして、それぞれタイラギ、サルボウ、アサリの生息特性から見た区分であります。ですので、タイラギ、サルボウ、アサリの特性から見た区分と水質のクラスター解析から見た区分と、概ね一致していたということを記載しております。

 次回以降、平成28年度を目標に報告書をまとめていくに当たって、統一した海域区分の案を示していきたいとも思っておりますが、本日は暫定的な区分に沿ってご説明させていただければと思います。

 6ページからは、海域区分ごとの環境特性を表でまとめております。この内容も以前に評価委員会で説明しているものでございますので、今日は説明を割愛させていただきますが、評価委員会の報告書には、この内容をブラッシュアップしたようなものを載せてはいかがかと考えているところでございます。

 次に、12ページをご覧ください。

 問題点の特定でございます。

 環境特性により区分した海域ごとに問題点の整理を行うこととしたということであります。今日の資料ではA4海域(有明海湾奥部西部)とA5海域(有明海湾央部東部)を取り出して、このページ以降に整理しております。これは、この2つだけ整理したいということではなくて、報告書の第4章においてはA1海域から八代海の海域まで含めて、各海域の整理をしたいと思っておりますが、今日はサンプル的にこの2つの海域を取り出させていただいて、ご意見をいただいて、次回以降、他の海域を整理するときの参考にもさせていただきたい、そのような趣旨でございます。

 12ページでは、A4海域の主な問題点はタイラギ、サルボウの減少であったりベントスの減少、そしてノリの色落ちではないか、また、A5海域の主な問題点は、アサリの減少ですとかベントスの減少ではないかといったことを記載させていただいております。この辺りも、またご意見等いただければと考えております。

 13ページからは、まず、A4海域についてまとめたものでございまして、問題点と直接的な環境要因の関連に関する考察を行っております。

 A4海域は、主に干潟前面の浅海域である。全体的には泥質で、有機物・栄養塩類・硫化物の堆積量が多いものの、地点または気象イベントによって性状が異なっていて、変動の多い海域であるといったことが書いてあります。また、この後にA4海域の環境特性、例えば14ページは底質の2001年以降の推移、15ページは底生生物などに係る記述をしております。この辺りは先ほどの表とも内容的にかぶるところがありますが、報告書を整理するに当たっては、どの辺りに記載したらいいのかという辺りもさらに精査が必要かなと思っております。

 そして、16ページをお開きください。

 いわゆる連関図ということで、問題点と原因・要因との関連について図で整理するということで、A4海域の連関図のたたき台であります。この連関図についても1年前の評価委員会でたたき台をお示ししておりますが、今日はA4海域とA5海域についてお示ししたところでございます。

 少し説明させていただきますと、緑色のところが問題点でございます。ノリの色落ち、ベントスの減少、二枚貝の減少ということで記載させていただいています。そして赤枠がついている四角が9つありますが、これが問題点に影響を与えている主な要因でございます。水色は海域環境、オレンジは陸域・河川の影響、ピンクは気象・海洋の影響ということで色分けしております。灰色の部分は、主な問題点ではないのではないか、または問題点に対して影響を与えているとは余り言えないのではないかというものでございます。ただ、繰り返し申し上げますが、この辺りも、まだ作業小委員会でも議論の途中であることにご留意いただければありがたいと思います。

 また、各ボックスをつなぐ矢印につきましては、可能性があれば矢印を引いておくということで、第4章では整理することではいかがかと考えております。

 さらにA4海域の主な問題点について、連関図を説明する観点から文章を記述してはどうかと考えております。二枚貝─タイラギ、サルボウの減少要因について、ここでは枠だけ記載させていただいておりますが、この内容については生物のほうの作業小委員会において中心的に検討中であります。今日の後半、資料3で関連する内容をご説明いただくことになっております。

 また、ベントスの減少についても、連関図をわかりやすくするために文章で書いてはどうかということであります。今日の資料では、2003年以降のベントスのモニタリング結果について18ページにグラフを記載して、2008年以降は明確な減少傾向にはないとか、そんなことも記載させていただいております。また、19ページで要因の考察についても記載させていただいておりまして、例えば平成18年度の評価委員会報告では、1989年から2000年の調査結果ではベントスが減少しているのではないかといった報告になっておりまして、その辺りも含めた考察を加えておりますが、今後、この辺りの文章も精査していくことが必要かと考えております。

 また、ノリの色落ちについてもここで書いていくのかなと思っておりまして、今後、生物の作業小委員会を中心に検討予定ということだけ書かせていただきました。

 次に、20ページでございます。

 A5海域、有明海湾央部東部でございまして、主に干潟前面の浅海域であって、地点によって底質性状が泥質であったり砂泥質であったりと異なっている。泥質の地点は有機物、栄養塩類、硫化物の堆積量が多いということでございます。地形的に見て、白川、緑川、菊池川が流入していることから、出水の影響は大きい可能性があると考えられるといったことも記載しているところでございます。

 23ページをご覧いただくと、A5海域の連関図のたたき台を記載しております。

 また、24ページは今後の記載になりますが、アサリの減少要因の考察ですとかベントスの減少の考察といった辺りも、今後、記載を充実していければと考えております。

 次に、27ページでございます。

 問題点につきましては、A4海域とかA5海域とか海域ごとのページに文章で書き込んでいってはいかがかと思っておりますが、さらに直接的な環境要因の変化に関する考察については、有明海全体または八代海全体を通じて、その後に記載していくという構成ではいかがかと考えているところでございまして、今日は構成のイメージということで記載させていただいてものであります。

 平成18年度の報告書を基本として、これ以降の新たに得られた知見を追加することを基本形に記述していってはどうかと考えておりまして、その1つが河川を通じた陸域からの土砂供給についてということで、今日記載しているグラフだけではなくて、内容も精査、充実していくことではいかがかと考えているところでございます。

 次に、33ページをご覧ください。

 潮位差の減少ですとか平均潮位の上昇、栄養塩・有機物の流入について、底質中の有機物・硫化物について、こういった要因についても今後、記載を充実させていくことでいかがかと考えております。

 次に、34ページでございます。

 主な要因の1つである底質の泥化についてですが、平成18年の委員会報告におきましては、有明海湾奥部において底質が低下傾向にあると思われる、その要因の1つとして潮流速の減少が考えられるとまとめているところでございます。

 35ページから、その後に環境省が実施した調査結果の概要等を記載させていただいておりますが、これも基本的に、少し前になりますが、この評価委員会においてご紹介させていただいたデータでございます。

 例えば35ページを見ていただくと、図4.9が1989年から2000年の間。少し赤が多いですが、全体的には細粒化している地点が多いのではないかという図でございます。また、図4.10につきましては、青い地点が多いかなと思いますが、これは2000年から2009年の間は粗粒化している地点が多いのではないかということで、以前にもご紹介させていただいた資料でございます。

 この辺りのデータをまとめて37ページにも記載させていただいております。

 この辺りのデータも要素として、ご意見をいただきながら報告書の取りまとめに向かって議論できればと考えています。

○岡田委員長 ありがとうございました。

 ご意見、ご質問等ございましたらお願いいたします。

 今までのところで、よろしいですか。

○古賀委員 18ページ、19ページのベントスの件です。1989年から2000年にかけてベントスが非常に少なくなったということは実感として持っております。19ページの文章の中で、「2003年以降は、明確な減少傾向がみられない」と書いてありますが、18ページのデータ(図)だけでは1989年~2000年と2003年以降の比較ができないので、よろしければ18ページの図に1989~2000年のデータも掲載していただき、本文も具体的に記載していただければと思います。

○根木閉鎖性海域対策室長 18ページ、19ページ辺りは部分的な期間のデータになってしまっている認識しております。説明の冒頭で申し上げたように、基本として1970年頃から現在までの環境の変化を対象に整理を行うことでいかがかといった思いでこの資料をつくっておりまして、例えば12ページ、説明は割愛させていただきましたが、平成元年─1989年から2000年ぐらいのところは、平成18年報告書においてベントスが減少しているようだといったことを書いていることも、文章の中で少し触れております。平成18年報告書以降のデータを充実させるのかなという思いで18ページ、19ページを書いてしまったんですが、少し説明が足りなかったと思っております。

 ご指摘ありがとうございます。

○岡田委員長 では、おっしゃるようにこれから整理していってください。

 他にございますか。

 それでは、とりあえず進めさせていただきます。またお気づきの点がございましたら後でご指摘いただければと思います。

 続いて、再生への取組について事務局からお願いいたします。

○根木閉鎖性海域対策室長 先ほどの参考資料の目次のイメージを見ていただきますと、第5章が「再生への取り組み」となっております。

 次の資料2-2は、第5章に記載する内容を検討いただくために準備した資料でございまして、海域再生小委員会で検討している途中のものでございます。

 例えば本日、ケーススタディの辺りについてこの資料をつくっておりまして、その辺りについてご意見をいただければということでありますが、海域再生小委での検討以外に、今日の後半でご説明いただきます生物小委員会からも何かあれば、第5章にアウトプットとして盛り込んでいくことも考えられるかなと思っております。

 平成28年を目途に取りまとめる評価委員会報告で、すべての海域の再生目標、再生方策の方向性を示すことは、時間的、データ量的に少し難しいかなという感触も持っております。第5章の目次に「ケーススタディ」と記載しておりますが、次回以降、幾つかの海域をケーススタディ海域として選定して、そこについてケーススタディを詰めていくことではいかがかと考えておりまして、今日の資料ではA4海域を例として取り上げておりますので、今日いただいたご意見を次回以降の検討に役立てていきたいと思っております。

 資料2-2の1ページであります。

 再生の目標ということでありますが、この資料は1年前にお示ししているものと同じ内容でございます。要点として、下の四角の中をご説明させていただきますと、再生方策の検討方針として3つ掲げております。1つ目が、有明海・八代海等全体における環境特性、海域別の特性を理解するということであります。これは今の説明と若干違ってしまうんですが、どちらかというと、主に先ほどの第4章で整理する内容かもしれないと思っております。2つ目が、各海域の特性に応じた基本理念と個別目標を掲げる。3つ目、個別目標を達成するための具体的再生方策を検討する。この辺りを主に第5章で整理していくことでいかがかと考えているところでございます。

 次に、3ページをご覧ください。

 今回は、比較的データが豊富であって、かつ有明海の二枚貝類─タイラギ、サルボウの減少要因が懸念されているA海域(有明海湾奥部西部)をケーススタディの例として取り上げさせていただきました。先ほど申し上げましたように、今後、幾つかのエリアでケーススタディを行っていきたいと考えております。

 2.1、考え方でありますが、先ほど資料2-1でお示しした連関図を参考に、A4海域の再生方策の方向性を検討してはいかがかと考えております。

 次に、4ページをご覧ください。

 上の文章ですが、このケーススタディでは底質とか底生生物の影響を含めた栄養塩や有機物等の物質収支等の検討が可能な数値シミュレーションモデルを構築して、これをもとにケーススタディを行ってはいかがかと考えておるところでございます。

 5ページが、数値シミュレーションモデルの概要でございます。

 図2.3に示すとおり6つのサブモデルで構成されていて、表2.1ではそれらのサブモデルで計算する主な項目を示しておりますが、このサブモデルを組み合わせたモデルを使ってケーススタディを行っていくことでいかがかと考えております。

 6ページが、このモデルの中でサブモデルの構成要素の3つである水質サブモデル、底質サブモデル、底生生物サブモデルで考慮する物質循環を概念図でお示ししたものでございます。

 7ページが、モデル上の海域区分でございます。

 先ほど申し上げましたが、今回のこの区分は暫定的な海域区分ということで、ご理解いただければと思います。次回以降、統一的な区分を示して、それに基づいてモデル計算上の区分も再設定したいと思っておりますが、本日は、この暫定的な区分に基づいて説明させていただきます。

 モデル計算格子を海域ごとに、7ページの図2.5のとおり区分したということでございます。今日の説明では、主にA4海域における計算結果に着目することとしたと記載させていただいております。

 8ページをご覧ください。

 計算期間は、本日の資料では、豪雨ですとか台風直撃の影響もありました2006年1年間の計算をしたものをお示ししております。今後はさらに近年の1年間を選んで、その1年について追加で計算することも考えたいと思っております。

 9ページからが、各海域間の物質収支、水収支になります。

 まず水収支でございますが、10ページに3つ図がありまして、左側が全層、真ん中が上層、右が下層となっておりますが、A4の水収支に着目して説明させていただきますと、全層では、A3海域からの流入が最も多い。層別に見ると、上層ではA2海域からの流入が最も多い、下層ではA6海域からの流入が最も多いというものでございます。また、収支の数字については現在、精査中でございますが、これも次回以降、お示ししていきたいと考えております。

 次に、11ページ、12ページでは懸濁物質、SSの収支を計算しておりまして、12ページの図をご覧ください。

 A4海域では、全層ではA3海域からの流入が最も多い。層別に見ますと、上層ではA2海域から、下層ではA3海域からの流入が最も多かったということでございます。

 最後に、炭素、窒素、リンの物質収支であります。

 14ページが全層、15ページが上層、16ページが下層でありますが、14ページを見ていただきますと、各項目ごとにA3海域、A7海域から流入しているということであります。次に15ページ、上層を見ていただきますと、各項目ともにA2海域、A3海域、A7海域から流入。そして16ページの下層では、A3海域、A6海域、A7海域からの流域が見られるということでございます。

 こういった水収支や物質収支も踏まえて、しっかりケーススタディを行っていきたいと思っております。

 また、今後はケーススタディを行う海域について、例えば感度解析を行うことによって、問題点を生じさせている要因間の影響の大きさといったものを試算、検討していきたいと考えております。

○岡田委員長 ご質問、ご意見等がございましたらお願いいたします。

○中田(英)委員 先ほどの話ともちょっと関係するんですが、ちょっと細かいところで、ベントスの減少という問題があるわけですけれども、フロー図の中には種類組成という言葉が入っているので、多分これからモニタリングの結果のまとめの中にはそういうところも入ってくると思いますが、やはり量とか数だけではなくて、種類の組成の変化もしっかり見ていかなければいけないと思います。

 今の説明では、1ページなどに、底生生物が減少して物質循環にどう影響するかというときに、二枚貝類の減少というのが入ってきたりしているんですね。ベントスと二枚貝をどう区別して記述していくのかという辺りも、もう少しきちんとしておく必要があるのではないかと思います。

○根木閉鎖性海域対策室長 ご指摘ありがとうございます。今後の検討に生かさせていただきたいと思います。

 1点申し上げますと、ここで「二枚貝」と書いているのは、主に水産上、価値の高いものを念頭に書いているところがございます。具体的にはアサリですとかサルボウですとかタイラギといった辺りを中心に、この二枚貝の減少というところは書いておりまして、もちろんそれもベントスの一部だと理解しておりますが、「ベントス」というのはもっと広く、他の貝とか他のゴカイとか、そういうものを含めてベントスと記載させていただいています。

 これは平成18年のときもそのような整理だったかと思いますので、そこは踏襲することでいかがかなと考えております。

○秋山委員 確認したいというか、わからないので教えていただきたいんですけれども、要するにモデルを構築されるわけですが、このモデルが正しいかどうか、よくわからないわけですよね。インプット条件とかいろいろ、必ずしも明確なものではありませんから。そうすると、ただいまの資料の4ページの図2.2に、いわゆる要因と結果みたいな形で先ほど説明された、黄色いものが要因、ピンクもそうですが。そして赤枠で囲ったものがその主要な結果があるみたいなお話をされましたけれども、この因果関係をシミュレーションで調べるという意味だと理解してよろしいんですか。

○根木閉鎖性海域対策室長 今、まず考えておるのが、今日、途中経過ではありますが結果を説明させていただいた水収支、物質収支のところも、幾つか選んだ海域区分のケーススタディにおいては、この内容も生かして議論していきたいというのがまず1つ、そういったことにシミュレーションモデルを使いたいというのが1つであります。

 最後に口頭で申し上げましたが、例えば今後さらに感度解析のようなものをやることを検討したいと思っておりまして、今日は資料はお示しできておりませんが、そこにも数値シミュレーションモデルを使うということではいかがかと思っております。

 これについてはまた次回以降、具体的にご相談させていただきます。

○秋山委員 次回でよろしいのかもしれませんが、今おっしゃった感度解析というのが、図2の黒い線がどうつながっているのかという影響の度合いをシミュレーションを使って見ると理解してよろしいですね。

○根木閉鎖性海域対策室長 この図の中からさらにポイントを絞ってということが、どうしても必要になるかもしれませんが、この図をベースに、そのような感度解析をすることを検討したいと思っております。

○中田(薫)委員 例えば8ページの図2.6に、イベントがきっちり書き込まれております。物質輸送とか底質の状況とか、こういうイベントに大きく支配されるというのが結構見られることですから、シミュレーションモデルを使って解析するときも、こういうものを十分反映できるような形で結果を示していただければと思います。

○根木閉鎖性海域対策室長 ご指摘を踏まえて検討を進めたいと思います。

○上田委員 5ページと6ページの関係なんですけれども、5ページに計算の項目を書かれていますよね。底質サブモデル、水質サブモデル。それと、6ページで有機物も易分解性とか難分解性とか不活性とか書いていますけれども、こういうものはどのようにつながっていくんでしょうか。

○根木閉鎖性海域対策室長 6ページが5ページのモデルの中の下半分、水質サブモデル、底質サブモデル、底生生物サブモデル、図2.3で四角囲みをしているところについて、6ページで物質循環を図示したものでございます。実際には6ページのものだけではなくて、さらに5ページにあるとおり流動サブモデルとか波浪サブモデルとか懸濁物輸送サブモデルといったところを活用して、そこで出てくるようなアウトプットを6ページのサブモデルにインプットしていく、そんなものでございます。

○上田委員 いえ、私の質問の意図としては、このような簡単な数値というんですかね、分析した硫黄とかTOCの値だけではそういう有機物の組成等は出てこないような気がするんですけれども、そういう細かいデータがある中で、こういうモデルをつくられるということですか。

○根木閉鎖性海域対策室長 特にどの辺りがさらに必要ではないかというところ、ありますでしょうか。

○上田委員 例えば、易分解性と難分解性というのはどうやって計算されるんですか。この値の中で。私などはその有機物がどういう組成かを出すのに非常に苦労しているんですけれども。

○根木閉鎖性海域対策室長 先生のご指摘は、易分解性、難分解性辺りも考慮したほうがよいということでしょうか。

○上田委員 例えばです。

○根木閉鎖性海域対策室長 今日は確かに主な計算項目を示しておりますので、アドバイスいただければ、それをできるかどうか検討してみることはできると思いますので、この場でも、この場ではなくてもアドバイスをいただければ幸いでございます。

○岡田委員長 おっしゃるように、これは大変難しい問題で、完璧に易分解性、難分解性─というか、逆に明確に合意された定義は、多分先生おっしゃるようにないと思いますので、これは多分、シミュレーションの中で必要な範囲でパラメータを合わせながらやっていくという、かなりテクニカルなところでやらざるを得ないというところで進めていると思います。

 これを本当にやり出すとシミュレーションどころではないぐらい大変になることは、シミュレーションモデルをつくる方も一応承知しているとは思います。

 他にございますか。

○中田(英)委員 モデルの細かい中身はわからないんですが、ベントスが植物プランクトンを取り込むことで、赤潮を抑制する効果を持ったりするようなこともあると思うんですけれども、そういう問題もこのモデルの中には入っていますね。有機物の堆積だけではなくて、植物プランクトンと二枚貝の相互作用は重要です。

○根木閉鎖性海域対策室長 6ページの図をご覧ください。入っているかと思います。

○岡田委員長 入っているんですが、この図はパッと見てなかなかわかりにくいところが。─そうですね、図2.3と図2.4の細かい図のところが必ずしも100%整合していないというご指摘は、おっしゃるとおりです。

○根木閉鎖性海域対策室長 この図のほうも、ご指摘いただきつつブラッシュアップしていきたいと思います。

○岡田委員長 他にございますか。

 よろしければ、次に進めたいと思います。

 全体を見ていただいてからもう一度ご議論いただいたほうがよろしいかと思いますので、今度は生物小委の検討事項について、ご報告をいただきたいと思います。

 最初に、速水委員から有明海の二枚貝類と貧酸素、赤潮との関連の検討についてご報告をお願いいたします。

○速水委員 有明海の二枚貝類と貧酸素、赤潮の関連の検討について、私からお話ししたいと思います。

(スクリーン)

 今日のアウトラインですけれども、まず初めに、有明海における貧酸素水塊についてお話しした後、有明海の二枚貝類減少の原因・要因についてタイラギを例にしてお話しします。そして最後に二枚貝類と貧酸素、赤潮の関連についてお話しします。

 まず、有明海における貧酸素水塊についてですけれども、有明海の貧酸素水塊は、海域では諫早湾と有明海奥部の2カ所に形成されていることがこれまで知られてきましたけれども、新しい情報が入りまして、熊本市沖でも貧酸素水塊が形成されていることがわかってきましたので、ご報告します。

 これは国交省の海輝・海煌による観測結果でして、こちらが緑のラインに沿った溶存酸素の断面分布を示したものです。これを見ますと平成22年、23年、いずれも8月にこの辺り、ちょうど熊本沖になりますけれども、ここで底層で3ミリグラム/リットル以下の貧酸素水塊が発生していることが確認されました。こうしたことから、有明海の海域においては湾奥部、諫早湾に加えて熊本沖の水域でも貧酸素が発生していることになります。

 続いて、ここからは有明海の貧酸素水塊について、経年変動を中心にご報告します。

 まず、これまでの知見ですけれども、毎月1回の観測結果に基づいて、有明海の佐賀県海域、福岡県海域の貧酸素について幾つか報告がございます。

 「滝川ら、2003」では、この測点4におきまして4.3ミリグラム/リットル以下の出現状況に大きな変化は見られないと報告されています。

 また、「速水ら、2006」では、有明海奥部の佐賀県海域において、年々の成層の変動を取り除いた場合にはDOは低下傾向になることを報告しています。

 また、佐賀県有明水産振興センターの報告では、測点3から5及び11では7月から8月にかけての値が低下する傾向にあることを報告しています。

 湾奥東部の福岡県海域については、特段の傾向は報告されていません。

 次に、西海区水産研究所によって有明海奥部で行われている連続観測の結果に基づいた経年変化をお見せします。

 こちらの図は、T1、T14、P6、P1における底層の溶存酸素濃度の連続観測の結果で、7月から9月の平均値を示しています。これを見ますと、平均溶存酸素濃度はP6で最も低くなっていました。また、経年的に見ると、2006年と2012年で特に低くなっていました。こちらは筑後川の河川流量ですけれども、2006年、2012年は特に河川流量が多かったことがわかります。このように、淡水流入が多く密度成層が長期化すると、底層の貧酸素化が進み、それがこうした結果になっていくと考えられています。

 これらの連続観測のデータを佐賀県の月1回の浅海定線データと比較しました。浅海定線調査は1972年から毎月1回、大潮満潮時に実施されていまして、有明海では貴重な長期のモニタリングデータです。しかし、有明海奥部の貧酸素水塊は小潮時に発生しやすいことが知られているために、大潮時に行われている浅海定線のデータは貧酸素の長期変化を見るためには不適であるという指摘がなされてきました。そこで、浅海定線調査データの代表性を検討するために、先ほどお見せした連続観測の結果と比較しました。

 上は、浅海定線データの佐賀線の測点5における7月の底層DOの変動を示しています。このうちピンクでハッチをかけた期間について、先ほどお見せした連続観測の結果と比較しました。

 下の図の横軸が連続観測の底層の平均DOで、縦軸が浅海定線の溶存酸素濃度になっています。最も近いP6と測点5のデータを見ますと、決定係数で0.6185という非常に高い線の相関が見られました。これを連続観測の4点と比較してみますと、決定係数で0.6837と、やはり非常に高い線の相関が見られました。こうしたことから、浅海定線調査データは月1回のデータですけれども、貧酸素の指標として使えることを示しています。

 ただし、浅海定線の底層DOは年々の出水の影響を受けて大きくばらつきます。そこで、連続する11年間のデータごとに、成層強度との間で直線回帰を行いました。そうしますと、成層強度が強いほどDOが低いという負の相関関係が見られまして、両者の間で回帰直線を引くことができます。この回帰直線上のある一定の成層強度のときの値をDOsとしまして、この経年変動を調べました。

 ここからこの値をDOsと呼びますけれども、このDOsの変化は、いわば貧酸素化するポテンシャルの変動と見ることができます。このDOsについて、赤が測点1のもの、青が測点1から10の全データを平均したものですけれども、これを見ますと、いずれも1970年代から90年代にかけて低下傾向にあることがわかります。

 そして、このように成層強度に関係なくDOが低下しているということは、酸素の消費速度が大きくなっていることを指します。

 そこで、ここで赤でお示ししましたのが底層のCODの値ですけれども、注意していただきたいのは、下に行くほど高くなっています。こうして見ますと、このDOsの長期の変動と底層のCODの変動が一致していることがわかります。

 続いて、同様の解析を2012年のデータまで追加して行った結果をお示ししています。

 赤がDOsで、青が底層のCODの値に11年の移動平均を加えた結果です。そうしますと、底層のCODとDOsの間には非常によい負の相関が見られました。すなわち、底層のCODが高いほどDOsが小さいという関係です。これは1970年代から90年代にかけて、底層の有機物濃度が増えるに従って貧酸素化するポテンシャルが増えてきたこと、2000年代以降はそれが少し緩和してきていることがわかります。

 ただし、先ほどもお見せしたように、やや回復したとは言いましても、河川流量が多いと非常に深刻な貧酸素が起きるという状態が現在も続いております。

 続いて、数値シミュレーションについての検討の例です。

 これは「永尾ら、2010」から引用したもので、この研究では2001年の有明海の水質の再現計算をしまして、それを基本としまして地形、外海潮汐、平均水位、流入負荷量、二枚貝漁獲量の変化を考慮して、1930年代、77年、83年、90年、2001年の5つのケースについて計算して、比較しています。

 こちらがその結果で、上が有明海湾奥西部、下が諫早湾の計算結果です。

 グレーのバーで示していますのが貧酸素水塊の容積です。折れ線で示していますのが溶存酸素量の変化です。これを見ますと、湾奥西部では1977年から90年にかけてこのように貧酸素化が進んでいます。一方で、諫早湾では一貫して貧酸素水塊が大きくなってきていることがわかります。

 次に、このように貧酸素化が進んだ要因を検討するために、鉛直拡散係数の変化を見ています。こちらが湾奥西部、こちらが諫早湾ですけれども、湾奥西部では、1983年以降はほとんど変化がありません。一方、諫早湾では諫早湾奥の潮受け堤の建設後、減少していることがわかります。

 なお、有明海湾奥西部のこのような鉛直拡散係数の変動には、18.6年周期で変動している月昇交点の変化に伴う潮汐振幅の変化がよく対応していることもわかっています。

 続いて下は、酸素消費量の変化を示しています。これを見ますと、1930年代の酸素消費量は現状の半分以下出あったことがわかります。一方で、1977年以降で見ますと、1977年から90年代にかけて水柱の酸素消費量が増大したという結果になっています。

 次に、このような酸素消費量増大の原因についての検討結果をお示しします。

 こちらの図は湾奥西部における一次生産量の変動を示しています。なお、酸素消費に寄与する要因のうち、有機物の分解が約50%を占めることがわかっています。また、その有機物のうち約95%が一次生産起源ということもわかっています。したがって、ここで一次生産起源となっているものは、ほぼ有機物の変化だと見てもらって結構です。

 これを見ますと、1983年から90年にかけて二枚貝類による補食が減少して、一次生産のうち利用されずに分解されるものが増えたことがわかります。この濃いグレーで示したものが、二枚貝によって利用された有機物になります。

 さらに、この二枚貝によって利用されていない薄いグレーで示した部分の変化の要因を検討したのが、こちらの図です。

 一番上が湾奥の地形の改変の影響、下の2つがM潮汐の潮汐振幅の変化の影響を示していますけれども、このように、湾奥の地形の変化と潮汐振幅の影響が大きく効いていることがわかります。

 さらに、こちらの図は縦軸に貧酸素水塊の容積、横軸にM潮汐の振幅の18.6年周期の変化を示すの値を示しています。こうして見ると、潮汐振幅が大きくなると貧酸素水塊が小さくなり、潮汐振幅が小さくなると貧酸素水塊が大きくなることがわかります。

 こうしたことから、二枚貝の減少が一次生産の増加を示しているということと、外海潮汐振幅の変化の影響も無視できないことがわかります。

 月昇交点変動の話が出たところで、潮汐の長期変化をお見せします。上が湾奥の大浦のデータ、下が有明海の外の長崎の値です。黒が実際のM潮汐の振幅の変化、赤が、そこから点線で示した18.6年周期の月昇交点位置変動の影響を除いた分です。これを見ますと、潮汐変化で卓越するのは月昇交点位置の変化の影響であることがわかります。

 ただし、それに加えて長期のトレンドがありまして、2000年代の有明海は過去の40年間で最も潮汐振幅の小さい時期であることがわかります。すなわち、潮汐は確かに減少していたということで、これは潮流にも反映されたと考えられます。こうした長期のトレンドの変動は、有明海の中と外の長崎とでよく一致していまして、こうした変化は外海潮汐の変化によるものであることが推定されます。

 次に、有明海の二枚貝類の減少の原因・要因について、タイラギを例にお話しします。

 これはタイラギの漁獲量の変化です。タイラギというのは、もともと好漁と不漁の変動が大きい貝なんですけれども、2000年以降、非常に漁獲が低迷していることがわかります。現在は3期連続の休漁となっています。

 これは平成18年の委員会の報告書で指摘されたことのまとめですけれども、タイラギの長期的減少の要因としましては、中西部漁場での底質環境の悪化が着底期以降の生息場の縮小に影響したこと、さらに短期的な減少の要因として、北東部漁場での立ち枯れへい死とナルトビエイによる食害が挙げられています。そして解明を要することとして、長崎県海域での減少要因、タイラギ幼生の輸送状況に及ぼす潮流変化の影響、大量へい死の発生メカニズムが挙げられております。

 これは前回の委員会報告にあった1976年から99年までのタイラギの成貝の分布です。これを見ますと、1970年代から90年代初めにかけては湾奥全域にタイラギが分布していたことがわかります。ところが、それ以後になりますと西側での分布がなくなりまして、東側に偏った分布に変わりました。

 続いて、これは2009年から2012年までの同様の結果を示していますけれども、これを見ますと、2009年に限って特異的に西側にタイラギが分布したことがわかります。これが貝柱重量で100トン以上という久々の豊漁につながりました。ただし、これはこの年だけで、翌年以降は大量死が生じて、再び漁獲は低下しました。

 この2010年の大量死に関しては、荒巻・大隈が報告しています。

 こちらはその年のタイラギの高密度分布域を示しています。これはその年の8月初めにおける底上の溶存酸素濃度の分布を示しています。こうして見ますと、ちょうどタイラギの高密度分布域に貧酸素水塊が発生したことがわかります。

 彼らによりますと、まず、7月上旬に海底まで達するような底塩分化が生じて最初のへい死が発生、続いて、8月上旬に無酸素に近い貧酸素が10日程度続き、それが大量死の原因になったと考えています。

 その状態をさらに詳しく見るために、西水研による沖神瀬西における底層のDOの連続データと、それに近い測点3のタイラギの生残率をあわせて示しています。これを見ますと、飽和度が20%を下回るような貧酸素が1週間以上続いた8月2日になって、タイラギが全滅という急激なへい死が起きたことがわかります。

 貧酸素が直接タイラギのへい死要因になっていることは、実験的にも確かめられています。これは「郡司掛ら、2009」から持ってきた図ですけれども、彼らの実験では、間欠的に貧酸素に暴露した区と貧酸素のない対象区を比較しています。これがその結果ですけれども、貧酸素を間欠的に起こした場合でも、20日を超えるとへい死が起きることが示されています。

 次に、タイラギの大量死と底層の溶存酸素の関係を、東西の漁場に分けて見てみます。

 上が有明海湾奥東部、下が西部で、縦軸が1996年以降の年、横軸に4月から3月までの月をとっていまして、黒のバーがタイラギの大量死が起きた期間を示しています。また、黄色のバーが3ミリグラム/リットル以下の貧酸素が生じた期間を示しています。

 これを見ますと、大量へい死が東部海域で特に頻繁に発生していることがわかります。さらに、こうした東部海域の大量死は、必ずしも貧酸素と対応しているわけではないこともわかります。西部海域では大量死は目立ちませんけれども、その原因としましては、そもそも着底稚貝が少ないために死ぬだけの貝がいないことが挙げられます。

 次に、こうした東部海域の大量へい死についてさらに詳しく見るために、2010年から11年にかけての福岡県水産海洋技術センターのデータをお見せします。

 上がタイラギの生息密度、下が生きている貝の割合を示しています。赤いハッチがけをした部分が大量へい死が起きた時期を示しています。これを見ますと、冬のだらだらとしたへい死と夏場の急激なへい死、これは2009年年級群と2010年年級群、両方で起きていますけれども、この2回のへい死が起きていることがわかります。これがいわゆる立ち枯れへい死と言われる大量へい死です。現時点では、なぜこの時期にへい死が起きたのかなど、原因解明にはまだ至っておらず、今後の重要な課題となっています。

 続いて、タイラギの浮遊幼生についてです。

 これは平成18年の報告書から持ってきた図ですけれども、下が1981年、上が2003年の浮遊幼生の量を示しています。

 この時期、漁獲の低下は問題になっていたものの、浮遊幼生の密度は豊漁期に関しても決して少ない量ではありませんでした。しかし、近年になってこの浮遊幼生の量が激減しています。

 これは、全国水産技術者協会から提供していただいた2008年以降の浮遊幼生の出現密度を示しています。これを見ますと、2008年から2011年まではこのようにある程度、浮遊幼生の出現が見られるんですけれども、この赤、オレンジ、さらにグレーで示したラインを見ていただくとわかるように、2012年以降は幼生が激減しまして、現在に至っていることがわかります。

 最後に、二枚貝類と貧酸素、赤潮の関連についてです。

 タイラギについてご紹介します。サルボウ、アサリについては参考資料をご覧ください。

 次の委員会報告では、有明海・八代海を幾つかの海域に区分して海域ごとの問題と要因を整理する方向になっています。

 これは、右が第32回の委員会で海域再生小委から報告された有明海の海域区分の図です。黒で囲った部分が水質をもとにして分かれた海域になっています。一方、こちらが第31回の委員会で生物・水産小委からお出ししたタイラギ、サルボウ、アサリについての海域区分です。今回は、二枚貝類に関する海域区分について、できるだけ海域再生小委の区分に対応できるように再検討するとともに、今後の海域管理に向けて、できるだけ扱いやすいように、すべての種について同じ海域区分を適用するように検討しました。

 二枚貝の分布には、底質が大きく影響します。これは有明海奥部の干潟を含めた詳細な底質分布ですけれども、これを見ると、全体として西側が泥底、東側が砂泥ないし砂で、境界は海底地形に沿っていることがわかります。

 また、二枚貝の分布にとっては干潟域と浅海域という違いも重要な要素です。干潟域は干出の影響を受けるだけではなくて、夏季でも鉛直混合が強く、強い密度躍層が形成されにくいという特質を持っています。そこで、有明海の奥部を浅海域と干潟域に分けまして、さらに底質で西と東に分けました。また、熊本県沿岸域の干潟域、これはアサリ漁場になるわけですけれども、ここを一まとめにしました。今回、このようなそれぞれの海域について問題点と要因の関連性を検討しました。

 これは第31回委員会で生物・水産資源小委からお示しした、タイラギを中心にした連関図の例になります。今回はこれをベースにして、各要素の関係がよりわかりやすくなるように-、これまでの研究結果をもとに再検討いたしました。

 再検討するに当たって留意した点です。

 まず1つは、これまで有明海の環境の悪化あるいは資源の減少といった場合に、一体どの期間を考えていくのか必ずしもコンセンサスがありませんでした。そこで、ここで1975年から85年にかけての10年から、2005年以降の10年にかけての期間を基本に考えることにいたしました。

 次に、こうした図を描く上で検証されているパス、これは査読付の論文が掲載されているもの、あるいはデータで説明できるパスと、そうでないパス、すなわち仮設にとどまっているものとを明確化するようにいたしました。

 また、関連が薄いと認められている要素は取り去りました。すなわち、こちらの図でグレーあるいは黄色になっているパスです。

 また、タイラギの浮遊幼生の供給のように、以前の図では入っていなかった項目について追加しています。

 また、時間スケールの統一を行いました。これに関しては月昇交点の変化のような周期的な変化を除きまして、長期トレンドと生物の資源変動に大きな影響を与えるような気象影響等に焦点を当てました。

 最後に、こちらの図では青で示した部分、これが対策になるんですけれども、対策については図から省きました。

 これは有明海湾奥西部のタイラギを中心にした連関図です。

 二枚貝につながるパスを赤で示しています。そのパスについて、論文で示されているものは論文名を、パスの検証がまだ不十分であるものについては「?」を付しております。

 本海域のタイラギについては、生物・水産資源的な影響としましては、ナルトビエイによる食害、漁獲圧、浮遊幼生の供給の減少といったものが挙げられます。ナルトビエイに関しては、平成18年の委員会で述べられたいたとおりであり、浮遊幼生の減少は、先ほどお示ししたとおりです。

 海域環境からの影響に関しては、夏季の底層の有機物増加、浮泥の増加、貧酸素、冬季・春季の珪藻赤潮の減少が挙げられています。底質中の硫化物については、有明海では影響があるとする報告があるんですけれども、この海域に関しては底質が粘土質であるために、間隙水の動きが不活発であると考えるため、ここでは影響がないとしております。

 夏季の赤潮との関係では、冬季・春季の珪藻赤潮の増加、さらに成層の強化が夏季のシャットネラ赤潮の増加に影響した可能性が示唆されています。一方で、夏季の赤潮の増加は底層の有機物を増加させた可能性があると考えられ、有機物の増加が底層の貧酸素の促進を引き起こしているということは、先ほどお示ししたとおりです。

 さらに、タイラギを含めた二枚貝の減少は、補食活動の低下を通して夏季の赤潮の増加に働くと推定されています。

 冬季・春季の赤潮の減少に関しては、ここでは佐賀県の有明水産振興センターによる浅海定線の調査のデータをお示ししています。これを見ると、1980年代から2000年代にかけて、沖合域、湾奥沿岸域ともに減少傾向にありまして、特に湾奥沿岸域ほど大きいことがわかります。これはタイラギにとっては餌環境が劣化したことを示すと考えられます。ただし、タイラギの成長に必要な餌量とあわせての検討は、まだこれからの課題になっています。

 これは、秋、冬季の珪藻赤潮の減少が夏季のシャットネラ増加に影響するメカニズムを示したものです。

 シャットネラという生き物は、冬季にはシストの形で底泥中におりまして、これが春に発芽して、増殖して、夏場に赤潮を形成します。このときに珪藻と種間競合が起こります。そのために、春の珪藻が少なくなるとシャットネラにとって有利になり、シャットネラの赤潮が発生しやすくなると考えられています。

 次に、有明海湾奥東部の連関図です。

 タイラギに至るパスの湾奥西部との違いは、貧酸素からの矢印がないこと、代わりに硫化物からの矢印があることです。これは、東部海域では湾奥西部と異なって、平年は深刻な貧酸素水塊の発生が見られないこと、間隙水中の硫化水素がタイラギに取り込まれてへい死に影響している可能性を示すという報告があり、砂泥質のこの海域ではそれが生じ得ることが理由です。

 続いて干潟域ですけれども、干潟域の西部についてはタイラギの生育がほとんど認められないために、ここでは図をお示ししていません。これは干潟域東部の連関図です。

 こちらの図では、タイラギに至るパスの湾奥西部との違いは貧酸素の影響がないことです。これは、干潟域では鉛直混合によって貧酸素の影響が小さいことが理由です。また、海域環境においては、鉛直混合が強いために成層強化、貧酸素水塊という2つの要素が除かれ、それに関連するパスもないために、かなりすっきりした図となっています。

 以上、駆け足でしたけれども、私からの報告を終わります。

 ご清聴ありがとうございました。

○岡田委員長 ただいまの報告について、ご質問、ご意見等ございましたら承りたいと思います。

 どなたかございませんか。余りにたくさんの資料でついていきにくかった(笑)、速水先生が悪いわけではなくて、速水先生には短時間で全部報告してくださいとお願いせざるを得なかったスケジューリングが問題かもしれませんが。

○中村委員 大変詳細な検討のご報告をありがとうございます。

 スライド14番目、数値シミュレーションの検討結果の3番目で、酸素消費速度と一次生産の比較をされたと思うんですが、左下の「二枚貝の減少が一次生産増加をもたらしている」というのが、このページの他の図とどう対応しているのかよくわからなかったので、ご説明いただきたいと思います。

○速水委員 こちらの図が一次生産量なんですけれども、一次生産のうち二枚貝によって利用されたものが、この濃いグレーで示した部分です。二枚貝によって利用された部分が1977年に比べて83年、90年と減っています。その結果、二枚貝に利用されない、そのまま沈降して分解される有機物が増えている、そういう結果です。

○中村委員 そうすると、一次生産の増加をもたらしているのではなくて、一次生産されたもののうち高次の生物に利用されない、貧酸素化につながるような割合が増えていく、そういう理屈でしょうか。

○速水委員 厳密にはそうではなくて、二枚貝類が減りますと一次生産自体も増えます。といいますのも、種が多いですから。

○中村委員 一般論としてトップダウンの効果が効いているという主張と、この上の図が対応しないのではないかというのが私の質問の趣旨です。

 上の図でわかるのは、二枚貝が減っていきますと下のグレーのほうの割合が増えていく、それで高次の生物に利用されない割合が増えるというのはよくわかるんですが、この図から、下の一次生産の増加をもたらしているという結論には、直接にはいかないのではないかと思ったんですが。

○速水委員 この図では、二枚貝の減少が一次生産量の増加につながっているという、そういう示し方になっています。おっしゃることに関しては、論文の中身をもう一度精査してお答えできればと思います。

○岡田委員長 この論文自身は速水先生が書いた論文ではないんですよね、たしか。ですので、もう一度速水先生のほうで独立した目で見ていただいて、今の中村先生のご指摘も踏まえて最終的な結論というか、提言につなげていただけたらありがたいと思います。よろしくお願いいたします。

 他にございますか。

○西村委員 33ページのスライドについてご質問させていただきます。

 検討の方向については大筋このような形でいいと思うんですが、3番に「関連が薄いと認められる要素は取り去る」と書かれている、ここの論理性はどのようになっているんでしょうか。

○速水委員 これに関しては、今回は資料をお見せしていませんけれども、幾つかこれまでに研究例がありまして、その結果、前回の報告などでは1度は要因として挙げられてはいるけれどもそれほど大きい影響はないだろうと判断されたもの、例えばマンガンの毒性、それからシャットネラの増加によるタイラギのへい死、こういったものは減らしております。

○西村委員 ということは、論文にはなっていないけれども科学的な根拠があるといった意味での「関連が薄い」という意味でしょうか。

○速水委員 この黄色で表しているようなものに関しては、論文がございます。それからグレーで示されているものに関しては、おっしゃるとおりです。

○西村委員 であれば、グレーのラインについては、一番いいのは多分論文に書かれることだと思うんですが、明確にその論理性がわかるようにしていただければいいのと、例えば、ちょっと思いつきで話をして申し訳ないんですが、35ページにプランクトン沈殿量か減少しているというデータがございますけれども、これは非常に長い間のトレンドで明確に出ているようですし、例えばこれに、先ほどグレーで関連が薄いので取り去ると書かれたノリ養殖業の影響というのは、全く関係がないと言い切れるのかどうか。これはいかがなものでしょうか。

○速水委員 ノリ養殖業が冬季・春季の珪藻赤潮の長期変化を経由して影響している部分については、ここでは直接図に入れていません。あくまでも冬季・春季の珪藻赤潮の直接影響だけをこの図に入れています。

 ノリ養殖が冬季・春季の珪藻赤潮に影響したかどうかについては、今後、必要であればこの図の中に、ノリ養殖からこちらに至る矢印を入れていくことを検討したいと思います。

○西村委員 すみません、私の理解がちょっと不十分なんですが、この図は、例えば赤潮に関して資源量として減少したということを描いた図なんですか。全体として生物の資源量が減少していたということを網羅的に描いた図だと理解してしまったんですが、例えば立ち枯れとか、そういうものも入っているのではないんですか。

○速水委員 立ち枯れは具体的にメカニズムがよくわかっていませんので、ここには入っていません。

 それから、要因と結果に関して二段三段の論理になっている場合は、直接的な影響の分だけをこの図に入れています。

○西村委員 とりあえず図の意味はわかったんですが、それで今後の検討をするのに十分であるかどうか、私、少し疑問に思うので、まだ十分理解できていないんですが、何か後で考えてコメントさせていただきます。

○速水委員 よろしくお願いいたします。

○岡田委員長 他にございますか。

 それでは、次に進ませていただいて、お気づきの点はまた後にでもいただきたいと思います。

 続いて、有明海二枚貝類の減少要因の解明等の調査について、松山専門委員からご報告をお願いいたします。

○松山専門委員 水産総合研究センターの松山でございます。

 私から、資料3-2のご説明をいたします。

 本委員会の活動を行う上で、各種の膨大な資料を収集・整理・解析する必要がございますけれども、場合によっては重要ですけれども知見がない、少ない、こういったもののデータを直接収集する必要もございます。そこで、環境省の事務局から依頼を受けまして、平成25年から有明海二枚貝類の減少要因解明等調査ということで、西海区水産研究所を中心に、佐賀大学さんにも入っていただきましてこのような調査事業を実施しております。

 本日は、その2年間の取組状況について簡単にご報告させていただきます。

 まず、有明海における水産上有用な二枚貝類3種、先ほどから出ておりますアサリ、タイラギ、サルボウ、この3種の漁獲量の長期的変遷を示しております。

 漁獲量のデータはいろいろなところの発表で冒頭に出てくる資料ですけれども、海域の生物量を把握するには、実は資源量と漁獲量と2つの項目がございます。本来であれば資源量が海域に存在する二枚貝の絶対量ですので、資源量の調査結果に基づいて議論されていく必要がございます。しかしながら、広大な海域に特定の種がどれぐらい生息しているかを推定することは、現在でもかなり技術的に難しい部分がございます。そこで一定の資源量に対して、同じ漁具、漁法でやっている限りは資源量と漁獲量はある程度相関を持って変動することが知られておりますので、この漁獲量の変動は、便宜的に資源量の変動と見なしてもそう大差はないと言われております。

 見てもおわかりのとおり、アサリ、タイラギは70年代から80年に大変漁獲が多い時代がございました。それに比較してサルボウに関しては、その時代はむしろ少なくて、80年代に入ってから漁獲量が増えた。このサルボウの漁獲量の増大に関しましては、天然採苗技術を徹底して行って、漁場を拡大したという人為的努力がございますので、この部分に関しては、そういった人為的努力が影響していると見ていただければよろしいかと思います。

 ただ、そのサルボウも90年代後半から、やはりこのように漁獲量が低下しているということで、90年以降は、ほとんどすべての二枚貝漁獲量がかなり悪い状態に陥っていることがわかると思います。

 こうした中、我々が行っている調査ですけれども、目的に関しては、有明海における有用二枚貝の保全回復と再生、これが最終目標でございます。ただ、「再生」という言葉は簡単なんですけれども、時空間的に大きく異なる対策があります。1つ目としては、個々の二枚貝類の漁場における再生事業。これは前回、第34回の親委員会におきましても農林水産省さんのほうから各種の取組についてご報告があったと思います。

 それとは別に、海域全体の資源再生、実はこれが最終目標になるわけですが、これは大変時間のかかる取組です。特に資源の状態がいいときに管理していくことは、そう難しくないんですけれども、減ってしまったものをさらに再生するというのは大変な努力を必要とします。

 しかし、ここが再生を目指すための最終目標であることには変わりないということであります。

 こうした海域全体の生物の資源再生を目指すために、何がボトルネックになっているのかというところ、特にその重要な項目を解明いたしまして、それに対する効果的な対策を講じていく必要があるだろうと考えております。

 先ほどの速水委員の取りまとめの結果にもありましたように、現状、資源の再生産、特に浮遊幼生から着底稚貝の発生するところが危機的状況に陥っているというところもございます。そこで本調査におきまして、いろいろな減少要因があるわけですけれども、その中でも特に海域全体を俯瞰した場合に重要であると想定される項目を抜き出して、調査等を行っております。

 1つ目は、上にありますように有用二枚貝の母貝生息域の特定です。それから濁り、今後の発表では浮泥という言葉を使わせていただきますけれども、浮泥という言葉で定義される濁り、こういった2つを大きな柱として取組を行っております。

 課題自身は1)2)3)と3つございますけれども、実質は、1)の二枚貝の浮遊幼生ネットワークの解明、それと、2)と3)は共通するわけですけれども、先ほど言いました浮泥に関するもの、大きくこの2つの内容が含まれております。

 二枚貝は、体外受精のために大量に受精卵を海水中に放出するなど特異な生活史を持っております。その過程で産卵母貝、これをしっかり保全していくことが再生のための第一歩として重要でございます。しかしながら、有明海全体を対象とした母貝の生息調査あるいは出現した浮遊幼生の調査、これは実は過去にほとんど行われておらず、ある漁場におけるスポット的な調査のみがある状況でございました。これだと二枚貝の再生策を実行していく上で障壁になりますので、全域を俯瞰した調査が必要だろうということで、課題として取り組んでおります。

 2番目と3番目に出てきます浮泥でございます。

 底質に関しましては、平成18年委員会報告、それと本日の海域再生小委からの資料にもありましたけれども、当初、有明海全域で細粒化か進行していて、これがタイラギ、アサリの資源減少に影響していると指摘されておりました。しかし、近年の状況を見ますと、必ずしもそうではないというデータが出ております。もちろん沖合のほうでは粗粒化が進行している場所もあるということです。

 それにもかかわらず二枚貝資源が減少しているという中で、沖のほうで夏場を中心に、極めて流動性の高い表層堆積物、これは漁業者あるいは我々を含めて浮泥という仮の呼び方をしているんですけれども、どうもこれが出現すると貝の再生産に悪影響を与えているといった指摘がございます。そこで、2番目の課題におきましては、浮泥とはそもそもどういうものであるのか物理科学的な特性の把握、それから、浮泥は本当に二枚貝に影響を与えているのかという実験なり調査を行っております。

 3番目としては、そうした浮泥のモニタリング手法であるとか影響回避策、そういったものにも取り組んでいくということで、実施しております。

 時間がございませんので、業務全体の概念図はお手元の資料でご確認をお願いします。

 それでは結果について、簡単ですが、ご説明いたします。

 ここにお示ししている図は、幼生調査の結果でございます。

 図が2つありまして、左は平成25年度の調査結果、右が平成26年の調査結果。これはタイラギの浮遊幼生の出現パターンを示しております。

 調査定点は有明海全域で8定点、この赤い丸で示している場所を2年、全く同じ場所に設定しておりまして、こちらは定点ごとの時系列的な出現パターンを示しております。

 平成25年(の二枚貝幼生)は7月上旬に1回だけのピークがあって、その後ほとんど出現しないというパターンでありました。平成26年、昨年の夏ですけれども、6月下旬と8月中下旬に小さい山が2つあるという発生のパターンでございました。

 出現場所を見てみますと、タイラギの浮遊幼生に関してはかなり広域に出現しております。今年のデータで見ますと、最も出現密度が高かったのは8月のP6と、緑川の河口になりますMという場所で出現が見られています。日齢を見ますと、こちらが日齢1から17が混じっている状態、こちらは日齢2から4という非常に若い幼生が固まって出現するというパターンでございました。

 最近、タイラギの資源は沖のほうでほとんどいない中で、こういう干潟の縁辺部に若い浮遊幼生が検出されたことを考えますと、干潟にわずかに生息しているタイラギの親が浮遊幼生の供給源になっているということを、スポットに捉えた結果になっているのかなと判断しております。

 タイラギに関しましては、どこに親が生息しているのか、どのくらいの密度で生息しているのかという情報は極めて少なくなっているわけですけれども、タイラギを対象とした粒子の輸送モデルをつくりまして、コンピュータ上でシミュレーションをかけております。A、D、こちらがC、Bという4カ所の海域から、コンピュータ上にタイラギの粒子を流した場合に想定される輸送パターンを模式化したものでございますけれども、実はこの主要なタイラギ漁場にたどり着く浮遊幼生のソースは、コンピュータ上では有明の南部で生まれたものが一番可能性化ある。母貝団地としては南のほうが重要だということが示されております。

 こういう漁場で生まれたタイラギに関しては、とどまるものもあるんですけれども、かなりの部分が南部へ輸送される、あるいは湾外に流出するといったパターンがこの度わかりました。

 次に、サルボウの調査結果を示します。

 調査定点は、先ほどと同じ8定点でございますけれども、先ほどのタイラギと比較しまして出現率が3桁、幼生の密度が高いことがわかります。高密度の出現が見られるのは西側海域の3定点で、いずれの年もサルボウの浮遊幼生が大量に出現することがわかりました。

 サルボウに関しましては基礎となるデータが比較的ございます。これはサルボウの産卵する親、成貝の分布を示しております。このように、有明海西部の非常に底質が泥っぽいところに親が分布していることがわかります。

 今度は産卵するタイミングですけれども、これも過去に知見がございまして、ここに筑後川の流量が青の線グラフであって、サルボウの浮遊幼生は赤のラインで示されております。過去の知見によりますと、出水があった後に塩分が回復するとき、出水の後、しばらくしてから産卵が一斉に起きることがわかっているわけですけれども、そのようなパターンをこの3年間示していることがわかりました。

 この湾奥の3つの海域から、サルボウの幼生をシミュレーションで流します。これはFVCOM、広く公開された物理モデルですけれども、これに基づいて粒子を放出した結果をお示しします。

 これは2010年の計算結果でございますけれども、先ほどの福岡県海域のところですね、こちらから流した場合です。サルボウの場合、大体2週間もしくは3週間で着底すると言われていますけれども、この海域から流しますと、かなり広範囲に幼生が散らばることがわかりました。南部まで達するということですね。

 主要なサルボウの生息地であります西側の奥の海域から粒子を流しますと、2週間たってもかなりの部分が親の近傍に残っています。南に流出する量が先ほどよりは少なくなっております。

 西側の一番沿岸に近いところから放出した場合は、より拡散が少なくて、とどまる割合が高くなっております。

 この輸送仮定を模式図化しますと、Aの福岡県海域で生まれたものは比較的南部に輸送されるのに対して、BもしくはCで生まれた幼生は親の近傍にとどまることがわかりました。

 続きまして、浮泥の特定を説明します。

 時間の都合上、細かい説明はできませんけれども、通常、浮泥というのはこういうコアで採泥した場合、表層に変色域が1センチから3センチほど見られます。これは夏場を中心に見られます。この変色層、原地盤から1センチから3センチの変色層を、我々は浮泥と呼んでおります。通常これは採泥してコアを抜くときに流出する割合が非常に高い成分4です。どうもこれが二枚貝に何らかの影響を与えているのではないかということで、調査を実施しているわけです。

 浮泥の堆積層の変動と筑後川の流量の図を示しておりますけれども、やはり筑後川の出水時に浮泥厚が高くなるということで、陸起源のシルト・クレイ分が、まずベースにあるのではないかと想定されました。なおかつ東側海域、西側海域を比較しますと、赤で描いた西側海域のほうが常に浮泥厚が高いということで、西のほうが浮泥は多いことがわかります。

 浮泥の特性に関しても、さまざまな化学的性状解析をしております。こちらが東側でこちらが西側、詳細は省略させていただきますけれども、化学成分的には東側の浮泥も西側の浮泥も大差はないということで、量自体は西のほうが多いんですけれども、成分的には大差ない。有機物の量としては西のほうが多いんですけれども、根本的に物が違うということではなさそうだということがわかりました。

 最後に、浮泥が二枚貝に与える影響に関する室内試験の状況です。

 基本的に二枚貝は、こちらの軸に与える餌の濃度、こちらが単位時間当たりのエネルギー収量、濾水、同化率と見てほしいんですけれども、ある程度のところまでは指数級数的に食べますけれども、餌がある程度飽和すると、これ以上は食べれませんということでグラフがねてくるというパターンです。もしここに無機の、これは栄養分にならないわけですけれども、そういった濁り成分、浮泥が入ってくると、常に濃度依存的に負の作用を示しますので、このように、低濃度のときはいいんですけれども、ある程度のところから急激に同化効率が落ちてきて、二枚貝に害作用を示す、こういったことが仮説として想定されました。

 そういった条件を室内試験で再現して実験しているところで、この2年間はアサリとサルボウを使った実験を行っております。実験とした濃度としては、一番濃度が高いところで1,000ミリグラム/リットル、1,000ppmですね、2週間程度の暴露実験をしております。

 これはアサリを使った実験結果であります。

 左側が浮泥、無機の部分を暴露した場合、こちらが濾水率になります。低濃度のときは対象区とそう変わらない濾水率が見えておりますけれども、この緑の網かけ、これが濃度で言いますと200ミリグラム/リットル以上、ここら辺りを超えるとアサリはさすがに濾水をほとんどやめてしまうということで、高濃度の無機懸濁物で濾水量の阻害が認められるという結果でありました。

 ただし、現場の海域でこの200ミリグラム/リットルが出現する頻度は、実測値から推定しますと大体3%前後ですので、アサリに関しては、この濁りによる成長阻害はほとんど軽微はないかと推定されます。

 次に、有機物も含めた天然の浮泥の暴露試験結果を示しております。

 これはサルボウとアサリと2種類試験をしておりまして、こちらに先ほどの定点からとってきた負泥の濃度を示しております。最高が200ppmですね。上がサルボウで下がアサリになります。こちらは成長でデータを見ているわけですけれども、対照区と比較して、この25~50ミリグラムというところに高い同化効率があるということで、サルボウに関しては適度な量の、これが適度かどうかちょっとわかりませんけれども、ないよりも少しあったほうが成長はいいと言えます。ただし、250を超えると逆に今度はマイナスになっていくという結果がありまして、サルボウは大体100以上で成長が低下することがわかりました。

 アサリに関しては濃度がより低いところにありまして、10ミリグラムでは成長はいいんですけれども、その後、急激に落ちてくるということで、25ミリグラム以上になりますと成長が低下することがわかりました。

 ですので、このデータを比較しますと、サルボウのほうがまだ浮泥に強い、アサリのほうが弱いことがわかりました。

 現在、来年度に向けてタイラギも同じような試験を予定しておりまして、少し予備試験を本年度やっております。これは今日の資料の中には入っていませんけれども、アサリよりもさらに低い懸濁物濃度で濾水量が低下するという結果が出ておりますので、恐らく来年度の結果は、そういうものが出てくるのではないかと考えております。

 早口になりましたけれども、以上でございます。

○岡田委員長 ただいまのご説明に関しまして、ご質問、ご意見等がございましたらお願いいたします。

○山田委員 興味深いご研究の成果をどうもありがとうございました。

 ちょっと教えてください。

 今「浮泥」という言葉が出てきたんですけれども、その浮泥の組成といいますか、大体無機質がどれだけで有機質がどれくらい含まれているのか、それからサイズの問題ですね、どのくらいの大きさのものを浮泥と言っているのか。それから、その浮泥ができる要因ですね、成因についてご説明いただければありがたいと思います。

 それから、昔の浮泥と今の浮泥では少し変化しているのかどうか、そこら辺は昔の浮泥のデータがないので大変だと思うんですが、どのように考えておられるのか考え方を教えてください。

○松山専門委員 我々のほうでは浮泥の発生要因として、仮説というか、もう一般的によく言われているものを絵にしておるわけですけれども、陸域から粘土、シルト分ですね、先ほどのシルト・クレイ分が流入してきて、これが恐らく核になる。ここに海域で発生した植物プランクトン、有明海は夏によく赤潮が発生するわけですけれども、これが凝集・沈降していく過程でマトリックスを形成していく。つまり、プランクトンの死骸─有機物と無機懸濁物の凝集体が浮泥の正体であろうと考えて調査しているところです。

 先ほど途中の化学分析のところで生データを示しておりますけれども、一応調査項目としては、有機炭素とクロロフィル色素の含量、それから珪藻類の細胞外に透明のエクストラセラー・ポリメタリック・サブスタンス、我々EPSと呼んでいますけれども、そういった無機分の泥と有機物をくっつけるような接着剤的な成分、こういったものの分析をしておりまして、それぞれの組成をここに生データとして示しております。

 ですので、やはり浮泥というのは粘土シルト分プラス海域で内部生産された植物プランクトン、及びその死骸、そこから出てくる有機物の複合体ということで調べておりまして、ただ、どこからどこまでが浮泥でどこからどこまでが原地盤の中に含まれる普通の有機物なのかという線引きは、なかなか難しい状況があります。、今、我々のほうではサルボウと同じ比重を持った塩ビの小さいマーカーを泥の中に埋めて攪拌して、その比重で「ここから上が浮泥でここから下が原地盤の成分だろう」といった分け方をしながら、両者を区分して調査、モニタリングをしている状況です。

 それと、昔と今というところですけれども、先生おっしゃるとおり昔のサンプルがございませんので、浮泥の性状が昔とどう変わったかいうところに関しては、なかなか知見を持ち得ません。漁業者さんたちは「昔はこういう成分はなかったんだ」とおっしゃるんですけれども、サイエンティフィックに本当に昔もなかったのか、少なかったのかというところまではなかなか詰め切れていないところがございます。

○岡田委員長 他にございますか。

 今日は、特に後半では大量の資料をまとめてご紹介いただきました。そういう意味で一遍で理解しにくかった面もあるかもしれませんが、全体を通じて何かご質問、ご意見がございましたら追加して承りたいと思います。いかがでしょうか。

○中田(薫)委員 最後に浮泥を使った暴露試験をなさっています。これは、新鮮な水の中にアサリとかサルボウを入れて、そこに浮泥を加えてその影響を見ておられると思いますが、本来、海域であればそれが分解したものの影響もあると思いますので、そういうこともきっちり考慮して評価しないといけないのではないかと思います。

○松山専門委員 担当者とも論議をいたしまして、とってきた浮泥を冷凍したものを少しずつ溶かしながら、こういった実験をやっているわけですけれども、完全に現場海域の、時々刻々と物が変わっていっている状況を忠実に再現したものではないことは理解しておりまして、できればそういう浮泥の発生している海域に直接貝を移植して、ずっとモニタリングしていくといったことも、将来的にはやっていかなければならないのかなという話はしております。

○古賀委員 資料3-2、スライド7の1)二枚貝類の母貝生息域の特定、保全調査②という図ですけれども、この図の中に、C海域が「奥部タイラギ資源の母貝団地として機能」と書いてありますけれども、本当にそうなのかな?というのがあります。例えばA海域、D海域、C海域で100個幼生があったときに、それぞれの海域にどのくらい滞留するか、移動するか、そういうデータはあるのでしょうか。

 基本的には近年、タイラギはA海域に非常に多かったわけですね。そのことからすると、A海域は幼生の主な供給源であったと思うのですが、この図の表現を見ると、A海域で生まれた幼生は南へ非常に多く輸送されているということで、母貝団地として、A海域はC海域よりも価値が小さいような感じをちょっと受けたものですから。だから、それぞれの海域に100個の幼生があったとき、それぞれのところにどれくらい滞留し、輸送されるのか、そういう数字があれば非常にわかりやすいかなと思いまして、質問したところです。

○松山専門委員 シミュレーションはあくまでも「ここから来たら、このくらい流れてくる」という供給を、ソースというか、流れのルートを解明するためのツールではございますけれども、実際に流れていった幼生が途中で死んでしまったりとか、行った先で着底に失敗して、それこそ貧酸素とか浮泥で死んでしまうといったこともありますので、これがこのまま資源再生切り札的な場所ですよということにはなりません。ただ、やはり海の流れに二枚貝の幼生は勝てませんので、ある程度湾内の動きを想定して母貝をきちんと残していくということは、やはり考えなければいけないなということを主張するために、こういう絵がかかれている状況です。

 実際には、幼生の調査結果とこれをうまく反映させながら、このモデルをよりブラッシュアップしていくということで幼生の調査をしているわけですけれども、どうもタイラギの産卵が、あるときドバッと生む年もあればだらだらと産卵する時期もあるし、母回がどうもあちこちに散らばっていそうだということがあって、コンピュータ上で幼生の動きをきちっと押さえていくというのは、タイラギの場合はまだまだ道険しいのかなと思います。サルボウに関しては非常にシミュレーションに合致させることができるんですけれども、タイラギはまだまだ時間がかかるなというのが正直なところです。

 ですから、あくまでも現段階での全体的な流れをつかむための絵とご理解いただけたらと思っています。

○岡田委員長 他にございますか。

 特によろしければ、これで本日予定されていた議事は全て終了いたしました。ご協力どうもありがとうございました。

 最後に、事務局から何かございますでしょうか。

○高山室長補佐 事務局から2点お願いがございます。

 次回のスケジュールでございますけれども、6月、9月の後半に2つの小委員会を開きたいと考えております。また、その小委員会の結果を10月に開催する第36回の本委員会でご紹介したいと考えております。その間、委員会報告につきましては、小委員会も含めてブラッシュアップしたものを皆様にご提示することができればと考えております。

 また、本日の議事録の確認につきまして、後日お願いすることになると思いますので、よろしくお願いいたします。

○岡田委員長 ありがとうございました。

 それでは、以上をもちまして第35回有明海・八代海等総合調査評価委員会を閉会いたします。

 議事進行へのご協力に感謝申し上げます。どうもありがとうございました。

午後4時57分 閉会

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