第7回有明海・八代海総合調査評価委員会 会議録

日時

平成16年1月26日(月) 13:30~17:30

場所

環境省第1会議室

出席者

事務局 環境省環境管理局長、水環境部長、水環境部閉鎖性海域対策室長

○坂川環境省閉鎖性海域対策室長 それでは定刻となりましたので、ただいまから第7回有明海・八代海総合調査評価委員会を開会いたします。
 本日は、委員21名のうち大和田委員、清水委員、森下委員を除きます18名の委員にご出席をいただいておりますので、定足数を満たしていることをご報告いたします。
 それではまず、配付資料の確認をさせていただきます。

(資料の確認)

 また、一番最後に参考資料といたしまして、第6回評価委員会における堤教授の指摘についてという資料がございます。これは、前回の第6回評価委員会におきまして、熊本県立大学の堤先生からご発表があったわけでありますが、その中で第三者委員会の報告書に関してご指摘があった部分がございました。それに対しまして、第三者委員会の委員長であられました清水委員が回答を作成されまして、昨年12月に事務局を通じて堤先生に送付したものでございます。それに対しまして、堤先生からコメントがなされましたので、それもそれに添付をしております。これらにつきましては、清水委員のご要望もありまして、今回、参考資料としてお配りしたものでございますので、ご参照いただきたいと思います。
 それでは、須藤委員長に会議の進行をお願いいたします。

○須藤委員長 かしこまりました。
 本日はどうもご多用の中を、委員の先生方及び関係省庁、関係県の皆様にはご出席をいただきまして、まことにありがとうございます。また、傍聴の方々も多数ご参集いただきましたことをお礼申し上げます。
 今回の評価委員会は、前回、前々回の評価委員会に引き続き、有明海及び八代海の再生に係る評価を行うに当たり、その参考とするため、有明海・八代海に関係する調査・研究を行ってこられた委員の方々から、これまでの研究成果についてご紹介をいただき、それについて、本日お集まりの委員の先生方で意見交換を行っていただきたいと考えている次第でございます。また、その後に、主務省、関係県の方々から、有明海及び八代海に関連して、これまで行ってきた調査研究等の概要をご報告いただく予定であります。
 なお、これらの報告は今回だけで終わるわけではなくて、次回以降も続ける予定でございます。
 それでは早速、委員の方々からご発表いただきたいと思いますが、まず最初に小松委員から、前回の評価委員会の発表の補足説明という形で、10分程度ご説明をいただきます。続きまして伊藤委員から有明海の貝類に関して、その後、山口委員からトビエイ類の食害に関して、それぞれ30分程度ご説明をいただきたいと考えております。
 それでは早速、研究成果のご説明をいただきたいと思います。
 まずは、先ほど申し上げましたように、小松先生、よろしくお願いいたします。

○小松委員 九州大学の小松です。
 以前、発表させていただいたときに、近いうちに長期間にわたる潮流の定点観測を実施する予定だとお話しして、結果が出次第またご報告したいとお話ししていたんですが、その結果が出ましたので、今日急遽10分間ほど時間をいただいてご報告させていただきます。
 皆さん、よくもうご存じのように、有明海は、非常に生産性が高いんですが、生産性が高いということは、ある程度栄養塩がなきゃいけない。栄養塩が多いということは富栄養化につながるわけで、非常に微妙なバランスの上に有明海というのは成り立っていたんだろうと思われるわけです。最近、有明海がどうも元気がなくなった。元気がなくなったというのは一体どういうことかというと、私はやっぱり流れが遅くなったのが元気がなくなった一番の原因だろうと考えております。
 これも、よくご存じだと思うんですが、流れが遅くなることによって、物質輸送のメカニズムが変化して、湾奥に滞留していく。これが赤潮の長期化・大規模化の原因であります。また、流れが遅くなること自体による透明度の増加によって、有光層が増えるということで、やはり赤潮の発生につながっていく。それから流れが遅くなると、鉛直混合力が減少して成層化が強くなる。そうすると貧酸素水塊が発生しやすくなり、また赤潮の大規模化が、二枚貝等の減少につながる。これにはほかの要因もあるかもしれませんが、これも1つの大きな要因になります。そうすると、二枚貝のろ過効果の減少、これがまた赤潮の長期化、大規模化につながるということで、この辺が負のスパイラルになっているんだろうと思います。
 赤潮の長期化、大規模化が日々言われています。こういうプロセスが、これがすべてとは言いませんが、これからこういうプロセスで考えていかないといけないと思っています。
 これは以前、やはり見てもらった図面ですが、有明海をこういう縦断方向に、水深方向にずっと計測していきますと、これは夏なんですが、こういう縦断方向の水温と塩分の縦断分布です。これで見てみますと、有明海奥部のこの辺にぽんと乗っかかっているわけなんです。ちょうどFとかGを境にして、F、Gというのはこの長洲-多比良ラインの辺りなんですが、この辺りを境にして奥部側に滞留傾向がある。貧酸素水塊にしても、赤潮の発生にしても、それから成層化、いろいろな問題点が、全部奥に原因があるわけで、ここを境にして、長洲-多比良ラインの線なんですが、ここを境にしてこちら側に滞留傾向があるというのが非常に大きな問題なんじゃないかなと考えております。
 それで、これは我々が有明海プロジェクトで計測した潮流の流速なんですが、この島原半島の沖側は流速が速い。この速い理由の1つが、ここに諫早湾があって、ここから流出してくる分が上乗せされて速くなると解釈しているんですが、この速い流速に乗って、ずっと物質が奥から流れてくる。だからここの流速が速いということで、非常に物質輸送に大きな効力を持っているということが言えると思います。
 これが長洲-多比良ライン、このライン上の塩分濃度の断面図です。これが水温の断面図、これが密度の断面図。これを見てもおわかりのように、やはり島原半島沖のこの部分で流速が速いもんですから、ここはすうっと奥側の流体が流れていって、この場合、雨が降って、河川水が有明海に流れ込んだ後だったんですが、この島原半島沖のこのラインに沿ってすうっと流れてきているというのが、この分布からもおわかりになると思います。
 それで、やはり一度潮流がどうなっているのかを、きちんと押さえておく必要があるということで、超音波流速計等を使っていろいろ計測するのですが、以前の流況データでなかなかいいデータがないということで、どのように変わったのかの比較がなかなか難しかったわけです。
ところがちょうど11年前に、雲仙普賢岳の噴火があり、その後水無川の土石流等が流れ込んだ。その流れ込んだ土砂が水産資源等にどう影響を与えるかを調べたいということで、長崎大学の水産学部がいろいろな調査を11年前にやったわけです。そのときに、電磁流速計を島原半島沿いにずっと入れまして、大体1カ月以上、各点・各部分で、全部1カ月以上、電磁流速計を入れて潮流を測っていたわけなんです。そのときには、土石流の土砂がどう拡散するかということを調べるには、あまり役に立たなかったみたいなんですが、そのデータが諫早湾締め切り以前の非常に貴重なデータとして今残っていたということで、比較のために一年の内の同じ時期に同じ場所で、同じ人が全く同じ流速計を使って計測し、それで比較を行ってみました。
 場所は、島原半島沖、後で図でお示ししますが、ここら辺に20点ぐらいの測点で計測しているんですが、我々が一番大事だと思っているライン、この長洲-多比良ライン上の2点を選んで計測をしました。P61とP62という点で、緯度・経度だとこういうことです。平均水深が、P61が15メートル、P62が32メートルというところです。
 P61については、2003年の10月8日から11月10日まで、流向、流速、これを電磁流速計を用いて、それから11年前はADCP、つまり超音波流速計は使っていなかったんですが、今回はせっかくこういう近代兵器があるんだから、これを使わない手はないということで、ADCP、それから塩分と水温もあわせて測定しております。
 こういうブイを使って電磁流速計を係留し、それから鉛直方向14点に、塩分計、水温計をつけて、また海底設置型のADCPを近くの海底に設置して鉛直プロファイルを計測しています。
 それから、P62については、電磁流速計を水深5メートルと20メートルのところにつけまして、あと11年前と違うのは、塩分計・水温計を水深1メートルのところにつけて実施しました。
 測定期間なんですが、11年前が観測期間がこの期間で、実際に使った解析対象データがこの期間の結果です。それから今回が、観測期間がこれで、実際に解析したのがこの部分のデータです。月齢を合わせて比較するようにしています。
 この観測期間中の降水量、それからいろいろな気象がどうだったのかということなんですが、11年前はこういう雨の降り方をしました。去年はこういう雨の降り方です。そんなに特別な事象はなかったということです。
 これが島原の雨量で、これが久留米の雨量です。こういう感じですね。だから、雨の降り方は多少違いますけれども、1カ月以上にわたって台風が来るとか、特に大雨があるとか、そういう特別な事象はなかったということです。
 それで、電磁流速計は定点観測なんですが、今回、ADCPを使っていますので、ADCPは鉛直方向の連続プロファイルが計れるということで、P61のところで、ADCPのデータから海底から4メートルから9メートルまでの間の、この中間層の平均流速を求めました。この平均流速と水表面から5メートルのところの電磁流速計のデータをつけ合わせてみます。そうするとこんな感じで、電磁流速計による水深5メートルの点の流速と、ADCPにより測定された中間層の平均流速はほぼ1対1に対応しています。これはどういうことかというと、この水表面から5メートルの点での定点観測なんですけれども、これがほぼ中間層の流速と一致している。多少ばらついていますけれども、ほぼあらわしているということです。
 多少、45度の線に対して寝気味なのですが、これが寝るということは電磁流速計のデータが少し大きいということなんです。だからこの中間層の平均流速より多少この水深5メートルの流速の方が大きいというぐらいの感じですね。ただ、水深5メートルの定点観測ですけれども、ほとんど中間層を代表しているというふうに考えられると思います。
 この図は単純に、流速の大きさを方向的にプロットしてみたものです。この3つが11年前、これが昨年のデータです。
 それで、こちらが東西方向、それからこれが南北方向です。11年前のP61の水表面から5メートルの点、それからP62の水表面から5メートルの点、水表面から20メートルの点、これも同じです。P61、去年の水表面から5メートルの点、P62の水表面から5メートルの点、P62の20メートルの点です。従って11年前と昨年のデータ間でこういう比較ができることになります。
 全体的に、この方向で大体潮流の向きがわかるのと、それから、この長さで潮流の振幅というか、大きさが大体わかるわけなんですが、これとこれを比べても、上下を全部比べても、昨年のデータは大体小さくなっているということがおわかりになると思います。
 それから特徴的なのが、こういうラインとこういうラインにちょっと分かれて出てきている点です。だからどうも少しスピン的な流れを示すようになっているのかなという感じがしました。あと、この点がP62が、多少西方向に流れが強くなってきています。これを見ても大体潮流は、小さくなっているのがわかるんですが、量的にこれを見てみたいと思います。それで、そのときの潮位変動はどうだったんだということなんですが、大浦の検潮所の観測データがこれです。基本的には、ほとんど潮位変動には差はなかったということなんですが、これは月齢をあわせて考えています。
 先ほどのデータを、本当は、いろいろな分潮で解析しなきゃいけないんですが、早急にやったんで、この潮位変動の大きさということで、単純にルート・ミーン・スクエアをとって、比較を行っています。変動の大きさをあらわすという意味では、ルート・ミーン・スクエアを取ればいいかなということです。そうしますと、11年前が1.28メートル、それから昨年が1.26メートルということで、この差が1.5%、昨年は11年前に比べて1.5%干満差が平均して小さくなっているということが言えるかと思います。これが潮流流速の時系列と移動平均をとったものです。潮流の流速ベクトルの絶対値の移動平均値ということですが、それがP61の水深5メートルの点で、上が11年前、下が昨年です。これを見ても、やはり小さくなっているということがわかってもらえると思います。
 これがP62の水深5メートルの点のデータです。。それからこれがP62の水深20メートルのデータです。こういう図をお見せしてもなかなか量的にはわかりませんので、単純に潮流流速の大きさ、これはベクトルの大きさですので、これを単純に平均したものを潮流流速の平均値とみなしていいと思われるので、単純に平均しています。そうしますと、P61の水表面から5メートルのところで、11年前が59.9cm/秒の流速が出ています。それからP62の水深5メートルのところで44.9cm/秒ぐらい出ている。また、P62の水深20メートルは52cm/秒です。潮流流速の減少率はP61の水深5メートルの場合で21%、それからP62の水深5メートルで33%、それからP62の水深20メートルで25%ぐらいということで、一番我々が大事だと思っている有明海のネックの長洲-多比良ラインの、それも島原半島沖の点で21%から33%、潮流が減少していたということです。この潮流の減少が有明海の流動の減少につながり、有明海が元気をなくす要因になっていたと考えています。
 それで、今後なんですが、先ほども言いましたように、西ノ首先生が11年前、26測点で実施した、やはりそれぞれ1カ月以上の定点観測のデータをお持ちなので、今後も島原半島沿いの流速の速いところで、こういう内容で同じように実施して、11年前の潮流データと比較していきたいと考えているところです。
 以上です。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。
 ただいまの小松先生のご説明に対しまして、ご質問なり、ご意見なりおありでしたらどうぞ。
 細川先生、どうぞ。

○細川委員 潮汐のデータのご説明の中でも、分潮をとらなきゃいけないんだがということで説明いただいたんですけれども、潮流についても、61、62の流速のデータについても分潮成分の比較というのは……。

○小松委員 これからです。詳細に行いたいと思っています。

○細川委員 ああ、そうですか。

○須藤委員長 よろしいですか。では先生、またよろしくお願いします。
 では、滝川先生。

○滝川委員 ちょっと専門的な項目を含んでいるんで、ご確認させていただきたいと思うんですけれども。流速の減少というものが、今、先生のこの論文で、あそこを見ると一遍書かれているんですけれども、結論が書かれているんですけれども。私どもが今までいろいろ検討したところで、外海からの流速の減少という、外海の振幅そのものが落ちている、潮位差そのものが、あるいは平均潮位によってという話があるんですが。今回の先生のご発表の中で、今後そういうのを検討するとのことがですが、個別的にですね。これは湾奥のところで平均よりもさらに低水位ですが、それとはほとんど変わらないというデータをお示しになって、そこからのルート・ミーン・スクエアではということではほとんど同じだというお話があったんですが、潮位そのものの、平均潮位そのもの。ルート・ミーン・スクエアとれば、平均水位からのルート・ミーン・スクエアはほとんど影響のないというふうにお話しいただいた部分ですが、平均潮位そのものが変動していくという可能性もありますし、あるいは外海からの変動というのも当然起こり得ると思います。
 それともう1点、この島原のところあたり、地形が違ったところですよね。切れ目とかなので、そういったこともありますので、平成13年と前年、そのあたりの地形の変化等は、あそこのものは本当にちょっと違えば違うような場所なものですから、余計にそういったところが違うのではないかと思います。

○須藤委員長 どうぞ。

○小松委員 まず最初の平均潮位、それから振幅についてですが、海洋学会等で随分議論されていて、確かに平均潮位が上がり、それから外海の外力としての干満差が少し弱くなってきています。しかしながらいずれにしてもせいぜい数パーセントというお話です。特に平均潮位の上昇はそれほど潮汐運動にはきかないんだという、大体そういう統一見解になっています。
 ですから、いずれにしても、今の場合は、干満の差は大体1.5%ぐらい、確かに弱くなっています。それから平均潮位も若干、これは観測値の平均をとればいいんですが、上がっているかと思います。ただいろいろな要因に対してシミュレーションを行っていて、平均潮位の上昇というのはそれほどきかないんだというのは大体今定説になっているものです。
 いずれにしても、ここでは、21%から33%という話ですので、数パーセント云々ではないと思います。

○滝川委員 それで数値があまりにも大き過ぎるものですから、一体何が原因なのかなというのがよくわからないというか、なかなか説明が大変難しくなってきますので。

○小松委員 いえ、私どもは、ここの潮流流速が落ちた理由というのは、やはり、諫早湾締め切りによる入退潮量の減少が原因と考えています。
 というのは、締め切りによって遮断された面積というのは全体の2.1%と言われているんですが、長洲-多比良ラインより上の部分に対しては5%の減少となっています。ということは、単純に考えれば、5%の入退潮量の減少があっていいわけです。その5%の入退潮量が、この長洲-多比良ラインの断面で平均して減少するという現象があるわけで、諫早湾というのはこの部分にありますから、特にこの島原半島沿いに強く影響が出るというのは当然なんですね。そうすると、その5%が、断面全体で平均して5%ですから、局部的に島原半島の方に大きく出れば、20%から25%、30%でもちっともおかしくないと考えています。
 それから、先生が言われた地形ですが、多少地形が変化しているかもしれません。ただ、10年間ですし、それからPの62というのは水深32メートルもある場所ですから、多少変化があっても、岸から2キロ先ですので、そんなに大きな地形の変化の影響はないのではないかと考えています。
 ただ、いずれにしても、そういうものも今後チェックしていきたいと思います。

○滝川委員 先生がおっしゃることはよくわかるんですけれども、今までの常識といいますか、我々が検討してきている外海からの潮位差の減少は、有明海全体の流速変動の40%とか60%とか、そういう言い方になっているわけです。それよりも先生はこちらの出水の方が大きいという観測結果を出されたという解釈ですが、そういったところが減少しているということが、今のお話の中で、どこでそういったものが出てきているのかなというのが、多分先生、ルート・ミーン・スクエアのもともとの基準になっている数値がどのくらい違うんですかということと、それからここらの湾奥のところで、平均潮位のままでの結びつけとしてというのは、要するに干満の差ですから、あまり影響は出ていない。平均値のあたりに集まってきていますので。

○小松委員 潮流は干満差によって違いますから。

○滝川委員 いや潮位そのものの差が、どのくらい変わっているのか。

○小松委員 それは、さっきのデータを平均すればわかるんですが、先ほども言いましたように、水位上昇はそれほどきかない。あまりきかないというのが、海洋学会での定説となっていますので、ここでは特に気をつけてチェックはしておりません。
 先生がさっき言われた、干満差云々と言われましたけれども、干満差に潮流はダイレクトに比例します。ですから、干満差が非常に大事だと思っています。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。
 小松先生、まだご検討中というお話でございまして、滝川先生があまりにも減少が大きいんでその原因をもう少しという話がございましたので、引き続いて、小松先生には検討していただいて、またご報告いただくということにいたします。申しわけございません。まだたくさんあるかと思うんですけれども、今日はたくさんのご発表を予定しておりますので、最後で時間があればまた質問いただきますが、続いて、伊藤委員から発表をお願いいたします。

○伊藤委員 それでは、早速、有明海北部海域のタイラギの資源の減少とアゲマキの大量死についてお話したいと思います。特に、今日は、タイラギの話を中心にお話しいたします。
 有明海のタイラギは、瀬戸内海と同様に、鱗片状突起の顕著なものとそうでないものがあります。佐賀県では、こちらをケン、こちらをズベと呼んで区別しています。漁獲統計などに示されております漁獲量は、この2つのタイプを合わせたものです。
 こちらは解剖したところですが、ここが閉殻筋、いわゆる貝柱のところです。そしてここが外套膜、この2カ所が可食部分です。
 タイラギの産卵期は、有明海ですが、7月から9月です。約30日間から40日間の浮遊生活期を経まして、底生生活に移行します。秋には、殻長が5、6センチメートルに成長いたします。産卵後、約1年後の、翌年の7月から9月には大きさが12、13センチメートルになってきます。今年度、久しぶりに漁獲が見られておりますが、この満1歳貝が今年の漁獲対象貝になっております。
 沖合のタイラギ漁は、潜水器漁業によって漁獲されます。これは、昨年12月10日の漁期解禁日の映像ですが、このように船がひしめいております。潜水夫がとったタイラギはこのような網で定期的に船に上げられます。通常は、タイラギの潜水器漁業は、潜水夫が1名、それから、船上に3名の計4名で操業をいたします。
 私が、その日乗船しました船は、2時間の操業で約6,000個の貝を漁獲いたしました。
 それでは、有明海の北部海域のタイラギ資源についてお話しいたします。
 ここが佐賀県海域、それからこちらが福岡県海域、この三角のラインで囲んだところが入合漁場であります。農林水産大臣管轄区域にあたります。この漁場が、佐賀県と福岡県のタイラギ漁場にあたります。
 この北部海域のタイラギ資源について、今日はこの3つについてお話したいと思います。
 長期的な資源の減少につきまして、まず、大浦漁協のタイラギの貝柱漁獲量の推移から見てみたいと思います。
 これは縦軸が貝柱漁獲量です。このように、データが昭和33年からありますが、右肩下がりで3年から8年の豊凶を繰り返しながら減少傾向にあります。
 1980年以降は、約300トン前後をピークに豊凶があります。このように豊凶の差が激しいのが1つの特徴です。
 それから、この漁獲量の推移は資源量の変動を反映していると思います。
 これは、大浦漁協のタイラギ潜水器漁業の操業隻数の推移を示したものです。これも、漁獲量の変動と同様に、増減を繰り返しながら緩やかに減少しております。ちなみに、今年の本漁期の操業隻数は約50隻ほどが操業しております。
 次に、私どもは、1976年からタイラギの生息量調査を行っております。
 これは、55の定点を設けまして、年によってこの点数は増減しておりますが、この定点でタイラギの生息密度とタイラギの大きさを測定しております。測定方法は、各定点で海底に100メートルのロープを設置しまして、そのロープに沿って潜水夫の方が1メートル幅でタイラギを採集するものです。
 これは、1976年から1999年までの結果を並べてみました。ここで示している生息密度は、漁獲対象となる貝の生息密度で、稚貝の密度は含んでおりません。
 調査を開始した1976年を見てみますと、このように高密度の点が多数見られます。すなわち、タイラギの生息範囲が広いということがわかります。
 その後、1989年から1991年にかけての漁獲のピークはここに1つありますが、これを境に次のピークが見られます1996年前後になりますと、生息域が福岡県の大牟田沖を中心とした東部海域に限られております。このことから、生息域が狭くなっていることが伺われます。この生息域の変化は漁場の変化を反映しているものと思われます。
 生息量調査をもとに、タイラギ漁場の変化を模式的に書いてみました。
 これがかつてのタイラギ漁場、黄色で示していますところが現在のタイラギ漁場にあたります。この福岡県沖から熊本県の荒尾沖にかけての漁場を私どもは北東部漁場と呼んでおります。
 この長期的な資源の減少の1つの原因として漁場の縮小が考えられます。すなわち、生息域が狭くなっていることが1つの減少要因ではないかと考えられます。
 その漁場の縮小はどうしてそれでは起こったのかということにつきましては、例えば、タイラギの生息環境であります底質の悪化、それからタイラギの生活史におきまして幼生の分散、そして回帰する過程における流れの影響が考えられると思います。
 生息量調査を行っている55の定点で2000年9月に底質調査を行ってみました。この図は、そのうちの中央粒径値の水平分布を示しております。左側は、この年と同じ場所で同じ方法で調査をしました1989年の調査結果を比較のために示しております。
 2000年9月の調査結果を見てみますと、この赤で示した中央粒径値7の範囲が10年前に比べて拡がっているように思われます。
 このような底質変化が中西部海域のタイラギ漁場が消失した要因の1つではないかと考えられます。
 このタイラギ漁場の減少原因を解明するために、平成15年度から西海区水産研究所、そして、有明4県による共同調査を開始いたしました。内容は、産卵期にあわせて浮遊幼生と着底稚貝の分布調査を行うとともに、底質と着底稚貝の生残との関係を明らかにするものです。もちろん、底質だけではなくて他の環境要因についても調査し、考察するようにしております。
 これらの調査により、漁場の縮小原因はもとより、資源変動がタイラギの生活史のどのステージで決定されているのか、そして、その決定がどのような環境要因を受けているのかというのが今後明らかになると思います。
 また、佐賀県では、独自の取り組みとして、人工飼育による初期生態の解明も行っております。
 次に、1994年から1999年にかけての漁獲量の変動について、毎年の55点調査で得られた稚貝の発生状況やタイラギの殻長組成から考察してみました。ここで言う卓越群というのは、稚貝が大量に発生したことを意味しています。
 これら赤で囲んだものは、稚貝の発生状況を示しています。
 1995年、1996年と漁獲量が順調に伸びておりますが、これは、1994年の卓越群が順調に成長して漁獲に結びついたものと考えております。また、1997年以降、漁獲量は減少しておりますが、これについては、1995年以降の加入量が少なかったことによるものと思っております。
 これは生息量調査における殻長組成を示したものです。横軸が殻長で縦軸が個体数です。
 このように、1994年の卓越群が順調に成長して1995年の漁獲に結びついたことがわかります。また、1999年の不漁は、前年の調査結果や1999年9月の調査である程度予想ができていました。
 このように、漁獲量の変動要因の1つとして考えられます卓越群の発生や加入状況の把握は、従来から私どもが行っておりました生息量調査で十分可能であり、漁獲量の豊凶もある程度推定ができるものと思っております。
 このようなことから、2000年以降につきましては、1999年に発生した卓越群が順調に生育して、資源が回復すると確信しておりました。
 ところが、2000年以降、大量死が発生しまして、北東部漁場のタイラギ漁は過去に例を見ないような深刻な状況に陥っております。
 この大量死の特徴は、このように抜き出た斃死個体が海底に立ったままの状態で残るもので、私たちは、これを立枯れ斃死と呼んでおります。通常、タイラギは底泥に潜っており、衰弱した個体がこのように抜き出てきます。その衰弱した個体の軟体部は、このように萎縮したのが特徴となっています。
 左の方のこの図は、上が2000年8月のタイラギの殻長組成です。まさに、斃死が発生しているときの殻長組成を示しております。下が大量死がおさまった12月の殻長組成を示しております。赤が生きている個体、白抜きが斃死個体を示しております。上の図から明らかなように、斃死が大きさに関係なく発生していることがわかります。
 また、重要なことは、2000年の12月に生残していた個体が約5%でしたけれども、このときの斃死していた貝の殻長組成、それから、平均殻長を見てみますと、ほとんど2000年の8月、大量死が起こっていたときとほとんど変わりません。このことから、2000年の大量死は、夏場に集中して発生したことがわかります。また、重要なことは、12月においてこのように立枯れした貝が大量に残っているということです。
 このようなことは私どもが過去から調査しております55点の生息量調査では認められておりません。このことからも、今起こっている大量死が、いかに特異的なものかということがわかります。
 立枯れ斃死の原因究明の調査は、北東部漁場のこの場所に定点を定めました。比較のために、佐賀県がタイラギ資源の回復を目的として覆砂いたしました造成漁場、以下造成漁場と呼びますが、この漁場を比較対象漁場として調査点を定めました。
 結論から申しますと、この造成漁場のタイラギは、北東部漁場と同じように年変動はありますけれども、稚貝の発生する場所です。ただ、違うのは、北東部漁場で起こるような立枯れ斃死はこの漁場では起こりません。
 調査はこのような項目について行ってきました。
 まず、タイラギの生育、それから病理、生理活性、生理機能、そして、漁場環境について調査いたしました。
 具体的にはタイラギの生残や成長を観察して、室内での飼育実験などを行ってきました。
 それから、病理学的な観点から、組織学的観察を行うとともに、感染症を想定した室内飼育を行いました。
 次に、活力の指標として、閉殻筋中のグリコーゲンの含量を測定いたしました。
 生理機能としましては、酸素消費量や酸素、塩分、水温耐性を測定いたしました。
 それから、漁場環境として、溶存酸素を中心とした水質、それから底質を調査いたしました。
 これは、2000年から2003年までの立枯れ斃死と貧酸素の発生時期を示したものです。上が、福岡県の大牟田地先、下が熊本県の荒尾地先です。熊本県の荒尾地先の結果につきましては、熊本県の水産研究所のデータに基づいて作成いたしました。上の福岡県の大牟田沖地先の結果につきましては、福岡県の有明海研究所の観測結果をもとに、私どもの結果も加えて、このような図を作成いたしました。
 ここに示していますものは、前年の稚貝の発生状況を示しております。例えば、2000年のこれは前年の1999年に稚貝がたくさん発生したということを意味しています。赤で示したのが、立枯れ斃死が発生した期間です。青で示したラインが溶存酸素を測定した期間になります。この黒い四角が、飽和度40%以下の貧酸素が確認された期間を示しております。
 立枯れ斃死が発生する時期は、年によって大きく異なります。そして、この図から立枯れ斃死が、夏前後と、それから秋と二度発生しているように見受けられます。
 また、斃死時期と貧酸素の発生時期との関係から、タイラギの立枯れ斃死が貧酸素の発生によって起こっていることは、この結果からは考えにくいと思われます。
 また、2002年につきましては、荒尾を含めて立枯れ斃死を確認しておりません。これは前年に発生した稚貝の量が少なかったことにより、観察すべき個体群がいなかったものと思われます。
 そして、2001年につきましても、秋に斃死を確認しておりませんが、この年も発生量の問題から夏場ですべて斃死したため、見かけ上、秋に斃死が確認できなかったものと思っております。
 次に、先ほどお示ししました北東部漁場と造成漁場の比較をしたいと思います。
 最初に、底質の調査結果の1例を紹介いたします。これは、1999年から2000年にかけての調査結果です。上がAVS、下が泥分の変化を示しております。
 この結果を見ますと、二つの漁場間で顕著な差は見られておりません。このような結果から、生息環境の悪化を示すような値は得られていません。
 次に、病理学的検査において、組織学的検査から病原体の感染を示すような病理学的な変化は認られておりません。ただ、北東部漁場のタイラギには、造成漁場のタイラギに比べて条虫幼生の寄生数が著しく多いことが認られました。この条虫幼生は暖海性の二枚貝には一般的に寄生しているもので、食べても、特に人体には影響があるものではありません。タイラギには、この条虫幼生は閉殻筋、それから外套膜、腎臓の3カ所にそれぞれ異なる3種のものが寄生しております。また、この条虫の終宿主が最近有明海に増えておりますナルトビエイであることも明らかになっております。しかし、現時点におきまして、条虫が直接的な立枯れ斃死の原因であるということは確認できておりません。
 この図は、両漁場の年級群別の毎月の殻長、それから肥満度の推移を比較したものです。赤い帯で示したところが、立枯れ斃死が起こっている期間を示しております。
 2001年は、このような継続的な調査は行うことができませんでした。これは前年の稚貝の発生量が少なかったためにこういう観測ができませんでした。
 このように、立枯れ斃死が発生するまでには、2つの漁場間で、年級群で見られるほどの明らかな差は認られませんでした。同じように、グリコーゲンにつきましても、2つの漁場間の値は年級群で見られるほどの差が認られておりません。
 これまでの調査結果からは、立枯れ斃死の原因を推定するには至りませんでしたけれども、室内の実験結果から、北東部漁場のタイラギと造成漁場のタイラギとの間には、飢餓耐性や酸素消費量に差があることがわかってきました。
 この図は2000年級群を使った室内実験の結果を示しております。
 2000年級群を使った実験は、2001年の1月に約9センチメートルに成長したものを室内の水槽に移しました。方法は、1つの水槽に2つの漁場のものを収容し、えさを与えず無給餌として飼育を行いました。水温は自然水温で飼育を行っております。
 結論から申しますと、北東部漁場のタイラギは水温が上昇してきた4月に斃死が始まり、5月末にはすべて斃死いたしました。ところが、同一水槽で飼育しておりました造成漁場のタイラギは斃死発生時期が遅く、5月末におきましても約40%の生残が見られております。このような差が見られました。
 この年は6月の上旬から立枯れ斃死が発生しましたが、まさに立枯れ斃死が発生する直前のタイラギについて酸素消費量を測定しましたところ、低酸素条件下での酸素消費量の低下や斃死する個体が北東部漁場のタイラギで確認されました。
 そこで、2000年級群と2001年級群を使って、低酸素条件下の酸素消費量の経月変化を見てみました。左側が飽和度100%、右側が飽和度約40%のときの酸素消費量を示しております。赤い※は有意差が認られたことを示しております。
 造成漁場のタイラギにつきましては、各実験におきまして有意差は認られませんでした。一方、北東部漁場のタイラギについては第2回目から4回目にかけて有意差が認られました。また、第1回目の6月に行った実験につきましては、40%のところで著しい酸素消費量の低下が認られておりますが、これにつきましては、斃死する個体や実験に使われた個体数が少なかったこともあり、統計上は有意差は認られませんでした。また、2001年級群を使った2月から3月にかけて行った実験については、有意差は認められませんでしたが、そのときの実験水温が14℃と低かったこともあり、酸素消費量の活性が落ちていたのではないかという仮定に基づいて、水温を他の実験値と同じように約23℃で実験を行いましたところ、有意差が認められております。
 このように、北東部漁場のタイラギは造成漁場のタイラギと比較して、低酸素環境下で酸素消費量を維持する機能に何らかの障害が起きていたものと考えられます。さらに、2001年級群については、着底後間もない早い時期にそのような障害が生じていた可能性が推察されます。
 北東部漁場における斃死の原因につきましては、現時点では明らかにすることができておりません。しかし、環境調査を含めましたさまざまな調査研究により、今まで、不明でありましたタイラギの生育や生理に関する基礎的な知見が得られ、さらに漁場における斃死状況の正確な情報を得ることができました。
 また、斃死原因の解明を進める上で興味深い情報も得ることができております。
 このような結果をもとに、今後、立枯れ斃死の原因究明に向けた調査研究を行っていきたいと思っております。
 具体的には、今までと同様に、漁場におけるタイラギの生育状況や水質を中心とした環境モニタリングを行い、斃死発生と水温、塩分、溶存酸素などの環境条件とのかかわりについてデータの蓄積を行っていきたいと思っております。
 また、病理に関しましては、昨年の西海区水産研究所の調査結果から、外套膜の組織と血リンパの形状に異常が認られておりますので、これらの点を中心に病理学的な検討を行うことにしております。
 条虫に関しましては、斃死海域のタイラギは寄生数が非常に多いことから、それぞれの器官に機能障害を生じている可能性があります。この点につきましては、生理機能の面から、再検討したいと思います。
 また、鰓換水量を指標とした水温、塩分、酸素に対するタイラギの応答についても研究が進んでおりますので、この手法を用いて酸素消費量の実験のように、漁場間のタイラギに水温、塩分、酸素に対する応答に差があるのかどうかを調べていきたいと思います。仮に差があるとすれば、何に起因するのかを明らかにしていきたいと思っております。
 このような、調査・研究をもとに、立枯れ斃死を引き起こしている要因、そして、拡大させている要因を明らかにしていきたいと思います。
 最後に、時間がなくなりましたけれども、アゲマキについて簡単にご説明いたします。
 アゲマキは有明海の湾奥部の軟泥質の干潟に生息する二枚貝で、成長に伴い生息孔が深くなります。例えば、約10センチメートルのものは最大1メートルほどの生息孔を形成いたします。
 これは、佐賀県有明海域におけるアゲマキ漁獲量の推移を示しております。明治時代は1万トンを超える漁獲量がありました。このころはほとんど干物として中国に輸出しております。近年では、1988年、昭和63年の漁獲のピークを最後に、急激に減少しております。
 漁獲量が急激に減少したのは、1988年の8月と9月に佐賀県のこのような漁場で初認された大量死が急激に漁場に広がり、約3年間でアゲマキが生息していた漁場からアゲマキが消えていきました。この原因につきましては、衰弱した個体からビルナウイルスが検出されて、ビルナウイルスを使った攻撃試験により、アゲマキが斃死することが確認されておりますが、現時点におきましては、アゲマキの斃死の原因については断定することは困難と思っております。
 このように、佐賀県の西部海域を中心としたアゲマキ資源の消失がどういうことをもたらしているかといいますと、例えば生物攪拌作用の消失を意味すると思われますので、その結果、干潟の持つ浄化機能の低下につながっているものと考えております。
 以上です。

○須藤委員長 どうもご説明ありがとうございました。
 それでは、ご質問、ご意見ございましたらどうぞ。
 楠田先生。

○楠田委員 1点お教えをいただきたいんですが、北東漁場と造成漁場のところの水深は幾らぐらいですか。

○伊藤委員 水深は12、13メートルです。

○楠田委員 いずれも同じぐらい。

○伊藤委員 はい。

○須藤委員長 ほかはいかがですか。  どうぞ、本城先生。

○本城委員 伊藤さんが説明されましたのは、主に潜水器漁業でとれるタイラギのところを説明していただいたわけですが、深いところにいるタイラギ以外に、タイラギはまた浅いところにいます。それらの数も、深いところにいる貝と同じように減少しているんでしょうか。先ほど酸素消費量の低下の話がありましたが、干潟に生息する貝も同じように低下があらわれているのか。

○伊藤委員 干潟のタイラギについてはそういう細かい実験は行っておりません。だから、あるともないとも結果的には言えませんけれども、干潟のタイラギについては、北部漁場で大量死が起こりますけれども、同様な時期に、干潟のタイラギが大量死するというのはなかなか現象としては見られておりません。

○本城委員 そうですよね。ですから何か大きな違いが環境にある。そして、その大きな環境の違いが、今日も示していただきましたような酸素消費量の違いにもあらわれてきている可能性はあります。ぜひ、干潟の貝の酸素消費量の変化を測っていただきたいなというふうに思います。

○伊藤委員 ぜひ、もし可能でありましたら16年度でやっていこうと。

○菊池委員 今、干潟ではタイラギの大量死はみられないとの話でしたので、その違いについてお伺いします。
 干潟の方は漁獲量としてはほとんど問題にならない程度ですね。1つは、干潟で大量死が起きないのだったら、もっと浅いところに主漁場を移すことは可能なのか不可能なのか、もしそれがだめだとしたら、それは外的要因としてはどういうことが制約になっているのか。

○伊藤委員 干潟につきましては、沖合で先ほどお示ししましたような、細かい発生量も含めて調査もやっておりませんので、具体的な生息量については触れることはできません。
 ただ、漁獲実態を見てみますと、佐賀県の場合を見てみますと、統計としてあらわれるほど干潟のタイラギについては漁獲の依存度というのはないように思われます。ですから、干潟に移すという、それはちょっと難しいのではないでしょうか。

○菊池委員 集まって死ぬようなものは検出されないけれども、もともとあまり浅いところでは大量には採れない。

○伊藤委員 そうですね、大量にはとれないということと、ただ、干潟については詳細な調査をやっておりませんので、例えば、梅雨時期、特に筑後川、早津江川河口域では、そういう立枯れとか死ぬということは現象としてはあります。ただ、その程度につきましては、調査をやっておりません。

○菊池委員 ありがとうございました。よろしくお願いします。

○須藤委員長 鬼頭先生、どうぞ。

○鬼頭委員 えさの問題かと思うんですね、これは。例えばタイラギとえさになるプランクトンの関係というのは、あまり注目されていないんですか。

○伊藤委員 それは、取り込むということですか。

○鬼頭委員 いや、要するに活性が落ちるとか、プランクトンの量が変化して活性が落ちるとか、そういうことですね。

○伊藤委員 それについては、いわゆる浅海定線のデータ、それから、いろいろな面から検討を一応しておりますが、それらについては、例えばプランクトンの量が少なくなっているから活力が落ちているとか、逆に、極端に増えているから落ちているということはないと思います。

○鬼頭委員 このごろアサリでは随分全国的にえさの問題が大きくなってきていますよね、方々で。

○伊藤委員 そうですね、タイラギについては、それはちょっと当てはまらないのではないかなと思っています。

○須藤委員長 ありがとうございました。  もしかしたらまだあるかもしれませんけれども、予定していた時間がまいりましたので次に移らせていただきます。  山口委員、どうぞお支度ください。

○山口委員 では、早速始めたいと思います。
 私の方は、今お話にありましたタイラギの減少の原因として、立枯れというのが1つあったんですけれども、もう1つの要因として食害があるということで、今日はその食害の実態について、それからそれにかかわるトビエイの生態についてお話をさせていただきます。
 これがナルトビエイというトビエイ、こちらがトビエイで、これをクロハトエイ、こちらをアカハトエイというふうに呼んでいまして、こちらは、資源としても利用されるんですけれども、こちらの方は全く無利用の資源です。
 それから、もう1つ結論から申しますと、このナルトビエイの方が食害としては非常に影響が大きいと考えております。
 これは干潟に残された摂餌痕で、数年前からこのような現象があちこちで見られるようになりました。これは、アサリが放流されていた場所ですけれども、満潮とともにエイがやってきて、こういったところにもう一面が真っ黒になるほどにエイがやってきて、その後、潮が引いていくとともにエイも姿を消していくということで、その後には干潟にこんなにたくさんの穴が無数に残されるというような状況が観察されていて、特徴としましては、大きな穴があいているんですけれども、少し何か鋭いもので取ったような跡が残されている。最初はだれか人が持っていったのではないかと、そういうことも随分考えられたようです。
 こちらは、沖合の方になるんですが、こちらは佐賀県になります。写真ですけれども、これはタイラギです。場所はタイラギの造成漁場ですけれども、すり鉢状の窪みがある、ちょっと見にくいかもしれませんけれども、ここがちょうどすり鉢状の窪みになっておりまして、ばらばらに割れたタイラギの殻が残されている、これが殻だけを取り出したところの写真です。
 いずれも食害の起こった後は、貝がすっかりなくなっているとともに、こういう窪みのような穴があり、そこに貝殻が残されているということがわかっています。
 これも佐賀県さんがまとめられた食害の発生状況ですけれども、少し前まで、エイによる食害のために貝が減少しているということはあまりよくわかっていませんでした。詳しくはまた見ていただきたいんですけれども、佐賀県の場合は、平成13年に初めて健全な貝が突如としてなくなるというこの現象がナルトビエイのせいではないかということを考えられ始めております。そのほかの県につきましても、長崎県さんとか、それから熊本県の方でも調査をされておりまして、熊本県のまとめられたものですと、平成8年に初めて漁業者の方からの報告があったようですけれども、県としては15年に食害の跡を認られているそうです。
 それから、これは佐賀県のタイラギについて書かれたものですけれども、そのほかにアサリなどもありまして、熊本県の松尾漁協の方では平成11年にアサリの生産がガクッと落ちたんですけれども、それはナルトビエイの食害のためであるという結論も出されております。
 食害の発生状況ですが、こちらに地図がありまして、ちょっとわかりにくいかもしれません。グレーのところは、先ほどの話にも出てきましたけれども、タイラギの消滅してしまった場所で、そしてここが造成漁場です。それから、ここがダイナン漁場と言われているところでして、こういったところで先ほど立枯れが起こっているという話があったのもこのあたりなんですけれども、立枯れによる斃死がなく、貝が順調に育っているところで、あるとき突然にして貝が減少している、あるいは消失しているということが観察されております。
 これはダイナン漁場におけるタイラギの生息密度の推移を示しているものですけれども、これを見ますと、急激に減少しているところが恐らく食害のためではないかと考えられているところなんですが、初夏に一度減少が起きておりまして、その後、秋口に減少が起きております。
 これも同じく佐賀県なんですけれども、こちらはさっき見たタイラギの造成漁場の方です。食害発生時期についてまとめられたものですが、あのグレーの「?」がついているところ、ここはしっかりと確認されていないんですけれども、恐らくそうであろうというところなんですが、これを見ていただきますと、大体4月、5月、6月ぐらいにかけて食害が発生しておりまして、その後、秋口、9月などにも食害が見られております。
 タイラギについてはほとんど春から初夏にかけて食害が起こり、それからもう一度、資源量が十分だった場合には秋口にも食害が起こるということが確認されておりますし、アサリの場合ですと6、7、8月、夏を中心に食害が起こっているということでして、この急激に減少しているあたりがそうなんですけれども、今年について言いますと、3月から7月にはもう既に全てなくなってしまったという状況です。
 ということでトビエイの、先ほどナルトビエイと言いましたけれども、ナルトビエイについてはほとんど何もわかっていなかったので生態の調査をしております。どういう場所で調査をしているかといいますと、ここに書いてあるような有明海の何カ所かで調査をしております。2001年から調査をしております。最初は私も半信半疑だったんですけれども、やはり調査をしていくと、言われているように相当な量のトビエイが有明海にいるということがわかりました。
 これは少しずれるんですけれども、底曳網による調査で、これはエイの調査というよりも魚類の調査をしていまして気づいたことなんですけれど、それはまた別の機会にお話ができるといいんですけれども、先ほども流れの話が出てきましたけれども、有明海にはほかの海域と違って独特の潮流というものがあります。それを利用した魚の生態というのがわかっておりまして、ほかの海域とは全く違う魚の生態があるということがわかってきております。そのあたりの特異な再生可能機構に、流れの変化とかそれから環境の変化というのが非常に大きく影響していまして、それで漁業資源がどんどん減ってきているのではないかなということを考えておりますが、今、調査しております。
 その調査で、魚類の調査をしているんですけれども、見ていただきますとお腹が白く見えているのがほとんどエイです。底曳網で定量的な調査をすると、有明海に相当量のエイがいるということがわかってきました。個体数では1から10%、重量、つまり漁獲量で言いますと19から77%、多いときにはもう漁獲物の8割近くがエイということがわかっております。
 軟骨魚類、ピンクの方がそうなんですけれども、軟骨魚類の中でもサメというのは非常に少なくてほとんどエイですので、エイというふうに考えていただいていいと思います。特に夏場は平均的なもので、47%もエイが出てくるという状況です。
 トビエイの話ですが、こちらがトビエイで、こちらがナルトビエイです。最近増えたと言われているのが、こちらのナルトビエイの方です。日本では、1989年に初めて、これは長崎県五島の方から報告されておりまして、有明海では1996年比較的最近に初めて記録されています。
 よく出てきますこの学名ですけれども、これはまだ十分な検討をされておりませんので、まだいろいろな検討が必要であるという段階です。
 あとマダラトビエイというのがおりますけれども、これは、ナルトビエイがいる海域にはあまりいないです。
 次の写真ですけれども、形態上の特徴はここに書いてあるとおりなんですが、分布域、熱帯から温帯の沿岸から汽水域と書いてあるのですが、最初はインドの方で記載をされておりまして、日本では和歌山、あるいは五島灘以南と分布はされているんですけれども、調べてみますと、日本海、東北、瀬戸内海、大阪湾などというところからも報告があります。ただ、とれたという報告です。すべてこれは90年代に入ってからの話です。生態についてはまだ何もわかっていません。日本では、漁獲対象とはなっていない。日本ではなっていないんですが、外国では重要な資源としても利用されています。
 1つ見ていただきたいのがこの筋肉なんですけれども、ちょっとお腹を切ってあります。大きく見えているのが腸なんですが、筋肉の部分が真っ黒です。本当にイカの墨で塗ったような黒さをしておりまして、これが利用できない、利用したらできると思うんですけれども、利用されない理由の1つにもなっています。
 ナルトビエイの食害が非常に大きいのではないかということが疑われまして、捕獲が始まりました。これは佐賀、長崎、熊本、3県のものをまとめたものなんですが、私がまとめたもので、まだほかにもあるかと思うんですけれども、平成13年度に22トンございます。14年度、15年度はそれぞれ90トン、約90トンを超えるぐらいの捕獲量となっております。このうち熊本県で約80トンとっておりますので、ほとんど熊本県ということになります。
 捕獲尾数は、今年は1万匹を超えております。
 ちょっとここに書いてありますけれども、アサリとかタイラギのほかにも、サルボウ、それからカキ、ウミタケといったもの、すべて二枚貝でこういうような食害が報告されております。
 これは竹羽瀬で捕獲されたナルトビエイの写真です。これは、湾奥部の方で竹羽瀬という、ノリをやらない時期の潮の大きいときにエビをとる目的で利用されているんですけれども、多いときには、エイが数十匹入りますので、非常に苦労されているということです。前はこれほどまでに多くなくて、やはりここ数年で増えてきたというような感じがします。
 それから、こちらは刺網でとられて荷揚げされたものなんですけれども、後で出てきますが、1匹当たり平均10キロぐらいの重さがありまして、私が船に乗っているとき一番多かったときで、刺網を仕掛けてわずか10分で100匹ぐらいはとれてしまいまして、本当に一面がナルトビエイだらけの状況になります。
 漁獲傾向を見ていただきますと、こちらが佐賀県、こちらが熊本県なんですが、佐賀県の方を見ていきますと、まず傾向としましてはどちらも同じなんですけれども、寒い時期、12月から3月ぐらいまでほとんどとれません。今年も同じです。昨年度11月から今年度の3月までは全然いなかったんですけれども、こちらはちょっと漁をやっていない時期が多いのでよくわかりませんが、こちらを見ていただくと、やはり冬場はいなくて、4月ぐらい、水温が少し高くなってきたころに有明海にやってきます。それで夏場ずっと有明海で過ごします。その後、水温が下がるとまた有明海の方から姿を消してしまうということがわかっていまして、春、夏、秋に有明海で見られることになります。
 捕獲を始めてから、これは一隻当たりの捕獲尾数を示しているんですけれども、昨年は佐賀県の海はこういう状態ですが、今年は少しこれを見ますと、一隻当たり少し増えているような感じもいたしますが、熊本県の方を見ていただきますと、熊本県の方は、80トンが上限、県として上限を決めておられますので、そこに達したところで捕獲をやめます。そうすると昨年度は、6月に始められて7月にはもう達したということで、ここで捕獲が終わっております。ただ、今年度も同じように始められたのですが、6月から始めて10月までかかったということで、熊本県の方、特に松尾漁協さんのデータなんですけれども、ここではあまり岸の方に寄ってこなくなったということを言われております。これはエイが減ったのか、あるいは漁具を仕掛けた場所に来なかったためなのかはわかりません。エイを捕獲すると、少なくとも1週間、2週間は同じ場所ではとれないといわれております。昨年度、相当岸の近くで捕獲しましたので、もしかしたらそれで寄ってこないのかもしれないということが言われています。
 体のサイズですが、ナルトビエイの雄は平均して6キロ、雌は12.3キロです。両方合わせると平均して10キロぐらいと思っていただければいいかと思います。最大は今のところ50キロなんですが、これよりも大きいものもいるようで、海から上げられないので今のところは50キロしか見つかっていません。
 それに対してトビエイは非常に小さいです。特に雄の方が平均しても1キロ、雌の方も5キロ未満ということで、かなり小さいし、それからナルトビエイのように大きな群れもつくらないしですし、それから全体の資源量として考えますと、ナルトビエイに比べものにならないくらい少ないですので、食害の影響としては小さいのでは、と思っております。
 これはナルトビエイの食性をまとめたものです。出現頻度であらわしておりまして、これは調べた個体214個体のうちの54.5%に少なくともサルボウが出現したという値を示しております。
 こう見ていきますと、先ほどから出ているサルボウ、タイラギ、アサリ、カキといったところが多くなっておりまして、ほかを見ていただきますとすべて100%が貝類、貝以外のものは食べないということがわかっております。
 307個体のうちの3割は空胃の個体です。ここに特徴があるんですが、1個体の胃の内容物からは、1種の餌生物しか出現しない。それから、内容物は同時にとれたものでも雌雄で異なりますので、雌雄別に大きな群れをつくって移動しているのではないかと考えております。
 それから、どのぐらい餌を食べるのかという、ここも関心があるところかと思うんですが、最大で体重の約10%も餌を食べております。ただ飼育下ですと、体重に対して3分の2から体重の半分ぐらいの餌を食べることが可能といわれておりますので、自然界にそれほど餌もないですし、まあこのぐらいがマックスなのかなと思います。平均1パーセントですが、これは、消化したものも含めておりますので、もう少し多いのではないかと考えております。それに対してトビエイは約半分ぐらいです(0.5%)。
 有明海、今のところ13種のエイを確認していますが、そのうち貝類を専食するのはトビエイ類のみということがわかってきております。
 あと、先ほどもお話出てきましたように、タイラギなんですけれども、初夏とそれから秋口に食害がよく起こっていますが、胃内容物でも同じように初夏と秋口によく見られました。それから、逆にアサリが夏場多く見られております。
 これは、歯なんですけれども、先ほどから摂餌痕でも出てまいりましたが、この歯の特徴でして、これが上顎歯、それから下顎歯ですね。この下の歯のところを見ていただきますと、これは口の後ろから写した写真なんですが、歯が顎よりも下に長く出ております。この歯で干潟を掘って貝を食べているのではないかと考えております。
 トビエイの方はそのような立派な歯を持っておりませんで、こちら(ナルトビエイ)は一枚歯なんですが、こちら(トビエイ)は7列の歯があります。(写真のナルトビエイの歯は)一部欠けておりますけれども、硬いものを食べて折れてしまえば、サメと同じで奥からまた新しい歯が出てきます。ナルトビエイの方が餌を食べる能力はすぐれているような感じがします。ナルトビエイは貝殻はすべて現場に残していまして、貝の軟体部だけを食べます。そして、これは消化管の写真ですけれども、ここに胃内容物が出ておりますように、普通の大きさの個体でも多いときはアサリを1回に500個ぐらいを食べておりますから、相当の餌を食べるということがわかっております。
 これが胃です。これが腸ですが、この部分に袋のようなものがありまして、空胃の状態のものでも、ここを見ますと新鮮な状態の貝が入っていることが多くありますので、1日2回餌を食べるのではないかと考えております。
 これは成長曲線で、脊椎骨で成長を調べますと、トビエイより非常に成長が良く、餌をたくさん食べるということからもわかっていただけるかと思うんですけれども、あと、雌の方が大型になり、寿命が長いということがわかっています。
 それから、これは肝臓から栄養状態を見たものですけれども、ナルトビエイについては未熟なものと成熟なものを分けておりますが、傾向としてはほとんど同じでした。有明海にやってくる4月は栄養状態はあまりよくないんですが、ちょうど7月、8月ぐらいが繁殖期で、繁殖期というのは子供を産む時期なんですけれども、その後に栄養状態が非常によく回復しまして、当初有明海に来たころの2倍ぐらいの栄養を蓄えて、そして有明海から去っていくことがわかっております。
 標識放流調査では、このような黄色のタグをつけましたところ、今までに5個体が再捕されました。今年のデータを使ってちょっと計算をしてみますと、資源量が、大ざっぱな計算ですけれども14万から24万尾くらい、となっております。今年、あまりたくさんできませんでしたので、ちょっと見えてはおりませんけれども、ちょうど尾びれのつけ根のところに棘がありまして毒を持っているものですから、大型で暴れますし、なかなかうまく標識をつけられないということもありまして、数をこなすのが難しいんですけれども、来年度もう一度挑戦してみようと思っています。ただ、秋口、冬になるといなくなってしまいます。また次の春先になると、有明海に戻ってくるんですが、それが戻ってきているのか、新たな個体が来ているのかというところがちょっとわかりませんので、資源量を今14万から24万ぐらいと推計しましたけれども、次にまた同じ個体が戻ってくるのかどうかというのもまだわかりません。
 生活史をまとめてみたものです。17度より高い水温が好きなようですが、15度より低くなると捕獲したことはありません。4月になると有明海に多くやってきます。その間、受精、出産、交尾というものがありまして、11月から12月にかけて有明海の外に出ていきます。その間、二枚貝をずっと食べるわけです。栄養状態を回復して、そして冬場は長い旅に出るのではないかと考えておりますが、まだそのあたりの詳しいことはわかっておりませんが、春から秋まで有明海で過ごして、その後、一応天草灘、このあたりで冬場でも水温があまり下がらない外洋域のところでどうも冬を越しているのではないかということがわかってきております。ただ、この下の方は、まだ未解明ですので、恐らく鹿児島の沖の方にかけているのではないかと思うんですが、結論は出ておりません。
 あと瀬戸内海や、それから、ほかのところでも同じような問題を起こしておりますけれども、とういのも、瀬戸内海の方にいましたエイも、冬場はどこへ行くともなく消えてしまうので、それが全部このあたりに集まっているとすると、毎年有明海にやってくるもの、ここから補給されていると考えると、今捕獲していますけれども、それもどのぐらいの意味があるかということも考えないといけないと思います。
 課題を挙げましたけれども、摂餌生態を解明すること、それから二枚貝への捕食圧の推定ということ、それから有明海の中での行動パターン、それから、どうも潮汐と大きく関係して動くようですので、このあたりを解明したいと思います。
 それから移動と回遊経路について。これは今衛星を使ったものがありますので、予算があれば、こういったものもできるかと思います。
 それから分布域。それから系群の解析。有明海に来ているものの供給源はどこにあるのかということをはっきりさせないといけないです。
 それから資源尾数の推定。対策として、各漁協でいろいろなことをされているんですけれども、これも1つなんですが、このように竹を立ててエイが入り込めないようにしたり、棒を立ててエイが入れないようにしたり、それから網を張ったり、いろいろなことをされているんですけれども、人手もものすごくかかりまして、それだったらもう貝の放流をやめた方がいいかなというようなところも出ておりまして、これだという決め手になるような方策というのは今のところありません。ですから、どうしたらいいのかということを考えますと、今毎年かなりの量をとっていますし、増えたとすると、それに有効に利用するというのも1つの方法なのかなと思っております。適正な捕獲尾数を設定しまして、有効に利用するという方法も、今後考えていかなければいけないというようなことではないかなと思っております。
 利用の可能性ということで、幾つか共同研究もさせていただいておりますが、練り製品の原料としては、ゲル形成能が弱いということと、あと先ほどから出ていますように、身が真っ黒、赤ちゃんのときからもう真っ黒な状態ですので、練り製品としては黒いかまぼこというのもちょっといただけないのではないかと言われておりまして、△がついております。酵素分解物、加水分解物なんですけれども、分子量1万2,000以下の多種類のペプチドがとれていて一部なめてみますと味もありますのでエキス剤として、あるいは保湿効果があるものとして、食品に添加して使うとか、それから機能性物質としてこういったものに使えないだろうか。このあたりも、今現在調べております。
 それから、比較的いいのではないかというのがしょう油です。もともと黒いですので、しょう油も黒いですから色の方は気にならない、味の方もなかなか良いということで、こういった何かに使用していくということが考えられないかと、このように思っております。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。
 ただいまの山口先生のご発表に何かご質問なり、あるいはご意見はよろしいでしょうか。
 原先生。

○原委員 今、もっぱら貝を食べると、こういうお話でございましたけれども、冬場は有明海の外に出てしまった場合に、一体食べるんでしょうか。食べるとすれば何を食べるんでしょうかというのが1つの質問です。

○山口委員 言い忘れたんですけれども、冬場はほとんど餌を食べないので、非常にお腹をすかせた状態で少しの餌で沖の方で過ごしているみたいです。好物の二枚貝も食べられませんで、少し腹足類といったものですとか、そういうものを少しずつ食べているようで、成長を調べますと、有明海を出てからほとんど成長しないままにやせて戻って来ます。有明海で成長します。

○原委員 それから、今まで諸外国も含めて文献情報で、こういうナルトビエイ等が、いわゆるトビエイの類が貝類の被害を起こしたというような事例というのは報告されているんでしょうか。

○山口委員 ナルトビエイに関しては、資源として利用していますというのがちょっとあったぐらいで、こういうような食害を起こしているというのはないようです。ただトビエイの仲間でマダラトビエイ等、例えば日本でも真珠貝を食べてしまうとか、そういうので被害はあります。

○原委員 それから、1個体はみんな同じものを食べているというのは、どういうことを意味しているとお考えなんでしょうか。

○山口委員 タイラギのような、先ほどの造成場みたいなところというのは格好の餌場となるかと思うんですけれども、大きな群れで行動していまして、好物の餌が高密度にあるところがやはり一番いい餌場になると思うので、ああいったところですとか、アサリの放流をしているようなところですとか、そういったところに集まりやすくて、たくさん、根こそぎ食べていきますので、ほぼ同じものを食べているのだと思います。

○原委員 それから、先ほどの伊藤さんのご発表とも関連するんですけれども、タイラギの斃死原因としての立枯れというのとナルトビエイによる食害と、こういうのが2つがあるように私には聞こえたんですけれども、それで間違いがないのかということと、それだったら、どっちがどのくらい寄与しているのか、どっちの要因が大きいのか、そういうことがおわかりでしたらお教えいただけると助かります。
 以上でございます。

○山口委員 立枯れで死ななかった元気に生息している貝は、造成場のようなところでも多くが食べられてしまうということで、どちらが寄与しているかというと、いまのところは難しいと思うんですが。

○伊藤委員 寄与率は、それはかなり議論しているんですが、残された漁場で考えますと、立枯れ斃死をしているところの漁場面積、それから推定の、いわゆる立枯れするまでの生息数を考慮すると、食害よりは立枯れ斃死の方が資源の減少が大きい、漁獲量の減少に与えている影響が大きいと。今年福岡、佐賀で同じ場所で捕獲をやっておりますが、先ほど山口先生が触れたのでありましたけれども、生息密度が私どもの調査で春先の半分以下に減っているんです。それを考えますと、今年の福岡、佐賀の同一漁場で捕獲をしておりますので、その漁獲量を見れば、どの程度の捕食圧かということも推定ができると思いますが、現時点では立枯れの方が現状としては大きいと思います。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。
 ほかにございますか。
 清野先生、どうぞ。

○清野委員 こういう小さな生態がわかってくるだろうと思うんですが、ほかに海外のエイ類も含めて、大量発生の事例というのはあるんでしょうか。そうでないと、環境をどういうふうにマネジメントするかということをなかなか考えられないと思いますので、そのあたりを少し。

○山口委員 海外というよりもほかの魚でもそうなんですけれども、今、有明海を含めて九州の沿岸のどの海域でもいろいろな食害というか、害魚となるようなものが増えてきていまして、従来もう少し南の分布域にあったのものが普通に生息するようになってきて、今年も今まで全くいなかった、漁師さんが何十年もやっていても見なかったというようなものも、どんどん普通に見られるようになっていまして、どういうふうにマネジメントするか非常に難しい問題だと思います。海外でもこういうような例はあったんですが、それが、水温の上昇とかそういうのではなくて、今の有明海で起こっていることはもしかしたら少し違うのかなというふうに考えております。

○須藤委員長 では、菊池先生どうぞ。

○菊池委員 おそらく山口先生はご存じだと思うんですけれども、ちょっと情報をコメントしておきますと、有明海以外でも、ナルトビエイは豊後水道もかなり入っているようでございます。山口県の東側から広島県にかけても、やはりアサリが食われて、それは、一昨年の冬でしたか、アサリの減少をどうするかというシンポジウムを広島でやりましたときに、有明海がそれで食われているんだというような話をだれかなさったら、うちでもそうだというのがちょうど山口県、広島県あたりのどこかの話が出ておりました。
 それから、水温の方は、夏の水温はもとから十分棲める温度だと思うんですけれども、今、外へ出ていっている期間というのは、冬の水温がやっぱり確実に上がっていると思うんです。九大の臨海実験所の野島さんの牛深でサンゴの調査と関連して資料を整理して書いたグラフなどを見ますと、1970代前半から、2月の平均水温、たぶんこれが一番サンゴの越冬生存にきくだろうという環境条件ですが、それはもうほとんど一本調子に上がっています。たまにちょっと下がっても、次にはまたすぐ戻っていますので、ナルトビエイなり他の暖海性魚類が冬季には湾外に去るというのも、多分冬季水温との関係で、有明海が冷えて生息できなくなっても、ちょっと外に出れば温かい水があるということではないかと思います。

○山口委員 そうですね。はい。

○須藤委員長 ほかよろしいですか。  それでは、山口先生どうもありがとうございました。
 本来ですと、ちょっとここでご休憩いただこうと思ったんですが、少し進行が遅れておりますし、今日はあとに非常に重要な議題をたくさん残しております。そういう意味では、大変恐れ入りますが、このまま委員会を継続させていただきます。
 次が、関連する調査結果の概要報告ということでございます。
 本件は、先ほど申し上げましたとおり、主務省、関係県の方々から有明海及び八代海に関連して、これまで行ってきました調査研究等の概要の報告をいただくものでございます。
 本日は農林水産省から3件、福岡県から1件のご報告をいただきますが、まず最初に、農林水産省の水産庁から、国土総合開発事業調整費調査として行われました有明海海域環境調査について報告をいただき、次いで、同じく農林水産省の農村振興局から、諫早湾干拓事業開門総合調査の報告と、それに関連して、昨年の12月に最終的にお取りまとめがなされました、中・長期開門調査検討会議の検討結果についても報告をいただきます。続いて、農林水産省の林野庁から、森林と海の関わりに関する研究等の概要についても報告をいただき、最後に福岡県水産海洋技術センターの有明海研究所から、有明海北東部漁場における貧酸素水塊の発生に関連して報告をいただきます。
 それでは、最初に水産庁からご報告をいただきたいと思います。

○田中水産庁計画課課長補佐 水産庁の計画課の田中と申します。
 私の方からは、有明海の環境改善の総合的な取り組みの一環として、平成13、14年の2カ年にわたりまして、農水省と経済産業省、そして国土交通省、環境省の4省の共同で実施しました有明海海域環境調査、これの概要についてご報告をさせていただきます。
 資料につきましては、お手元に配付してございます資料5-1に、今日用いますスライドの打ち出しを、そして資料5-2に国調費、有明海海域環境調査の報告書の概要ということで配付をさせていただいておりますので、ご参照ください。
 失礼して座って説明させていただきます。

○須藤委員長 どうぞ座ってください。

○田中水産庁計画課課長補佐 有明海におきましては、多年にわたります諸要因によりまして富栄養化が進行し、また有害赤潮が発生するなど、その取り巻く環境は大きく変化してございます。二枚貝の減少でございますとか、あるいは平成12年のノリ不作等の深刻な漁業被害が生じておりましたものですから、まずその再生についての取り組みというものが急務となってございます。
 このため、ここで行われました有明海の海域環境調査につきましては、その総合的な海域環境の改善に向けました総合的な取り組みの一環としまして、国調費、そして水産庁、大学、各県等の連携により実施しておりましたいわゆる行政特研、そして農水省に設置されました第三者委員会、有明海ノリ不作等対策関係調査検討委員会ということで、こういったところに適宜ご報告をしながら、平成13年、14年、2カ年にわたりまして行政特研とこのデータの総合点検等を行いながら実施したものでございます。
 有明海の海域環境調査は、有明海全体の海域環境の現状と推移の把握、あるいは、流動・水質等のシミュレーションモデルの構築と解析を通じまして、有明海におきます中・長期的な海域環境の改善方策と沿岸域の各種整備の方策等を検討するということを目的としてございます。
 その実施に当たりましては、先ほど申しましたように、行政特研との連携を図りつつ、また、現地調査を通じた現状把握を行うとともに、有明海環境予測モデルとして流動と水質、そして、底泥輸送、この3つのモデルを海域特性を踏まえたものとなるように留意して構築を行いました。
 これらの3つのモデルを活用しまして、現地調査や既存資料の分析とあわせて、最終的には、この中・長期的な環境改善方策の長期的な方向について検討を行ったものであります。
 調査の実施に当たりましては、京都大学工学部の酒井教授を委員長とします13名の学識経験者からなる検討委員会を設置しました。
 また、このシミュレーションモデルの構築に当たりましては、モデル専門部会としてこの10名の先生方にご参画をいただきまして、指導、助言をいただきながら行ったところであります。
 現地調査におきましては、これから順に調査の具体内容をご説明いたします。
 現地調査におきましては、既存データの収集、あるいはモデル構築に必要な流動観測、あるいは海底地形の測量、河川水質等の調査、干潟調査等を各省庁が分担して実施いたしました。
 ここにその役割分担を示してございます。具体的には、潮流観測につきましては、海上保安庁、そして、海底地形調査は、経済産業省資源エネルギー庁、河川水質等の調査は国土交通省の河川局、浮泥関連調査は国土交通省港湾局、泥質干潟の浄化機能の調査と水質等状況補足調査は環境省、そして、砂質干潟の浄化機能と干潟底質の生物調査は農林水産省で実施をいたしました。
 次に、海域環境予測モデルの構築につきましてご説明をいたします。
 有明海におけます海域環境の各種改善方策につきまして、その効果の予測に活用するため、有明海環境予測モデルとして流動、水質、底泥輸送、この3つのシミュレーションモデルを構築いたしました。
 流動モデルは、風、気温、日射量などの気象要因、あるいは河川流量、外海潮位等を境界条件として与えまして、有明海の水温、塩分、潮位、潮流の変化を予測するものであります。
 また、水質モデルにつきましては、植物プランクトンによる赤潮の発生、夏場の貧酸素現象、あるいはノリ漁期の植物プランクトンと栄養塩の推移を表現できるように留意をいたしまして、流入負荷等を境界条件として与え、有明海におけます水質の変化を予測するものとして構築をいたしました。
 また、底泥輸送モデルにつきましては、河川流量、あるいは流入SS負荷、あるいは外海潮位等を境界条件として与えまして、有明海の潮流によって輸送されます底泥の移動を予測するものとして構築をいたしました。
 次に、まず流動モデルの概要でございますが、検討範囲を有明海の全域としまして、有明海の中を900メートル、そして外海を2,700メートルの格子に分割することと、鉛直方向には有明海の潮位変化の特性等を踏まえまして、海域を14層のレベルモデルとしております。
 また、検討期間は、2000年から2001年、平成12年から13年でございますが、この期間におけます潮位、潮流、水温、塩分についての検討を行っております。
 次に、水質モデルでございますが、流動モデルと同様に有明海全域を検討範囲としまして、同様に有明海内を900メートル、そして鉛直方向には海域を14層に分割する3次元多層モデルというふうになってございます。
 また、検討期間は、流動モデルと同様に、2000年から2001年の2カ年といたしまして、モデルでは、この期間におけます海域の低次生態系の物質循環を取り扱っております。構成要素としましては、植物プランクトン、そして、動物プランクトン、栄養塩類、溶存酸素、有機物等となっております。
 そのほか、有明海の特徴であります浮泥の巻き上げ現象と、それに伴う浮泥からの栄養塩の溶脱と吸着等についても、モデルで考慮してございます。
 次に、底泥輸送モデルでございますが、これも有明海全域を検討範囲といたしまして、潮汐流によります堆積泥の再移動、そして、河川出水時の懸濁物の流入、堆積現象を取り扱っております。底泥の堆積範囲と堆積量を推定するものでございます。
 また、潮汐流によります底泥の浸食・堆積等の検討は大潮期を含む15日間を検討期間としてございます。
 次に、モデルの検証についてご説明をいたします。
 流動、水質、底泥輸送の3つのシミュレーションモデルにつきまして、現地調査結果等を踏まえまして、計算に必要なパラメータを設定しながら、2000年から2001年の2カ年の現状再現を行いまして、変動要因等のメカニズムについて検討を行いました。
 流動モデルについては、潮位、潮流、水温、塩分を対象にモデルの検証と有明海におきます流動特性等について検討しました。
 以下、各対象検討項目ごとに代表的な例を挙げまして順次、その概要をご説明いたします。
 潮位につきましては、検証結果のうち、ここでは平成13年におけます有明海湾口の口之津、湾央の三角、湾奥の大浦地点におけますシミュレーションから得られた潮位振幅――M2分潮でございますが、これの計算値と観測値の比較を示しました。有明海の湾央、湾奥部では、平均的に観測値に比べ計算値が1、2%程度大きい値を示すなど、再現性はかなり高いものというふうに考えてございます。
 潮流につきましては、検証結果のうち、ここでは物質移動の指標となります平均輸送速度を例としまして、平成13年の7月1日0時時点におけます有明海全域の水深3.5メートルから4.5メートル、第2層にあたりますけれども、その計算結果を示しました。これによりますと、大牟田市より以北の湾奥部では、反時計回りの循環流の傾向が見られ、これは既往の知見とも符合するものとなってございます。
 また、諫早湾より以南の湾央から湾口にかけましては、南下流の傾向があり、島原半島に沿う南下流が優勢となっている傾向が見られました。
 流動モデルの検証結果の概要でございます。ここにまとめておりますが、まず、潮位につきましては、有明海の湾央、あるいは湾奥部で平均的に観測値に比べまして計算値が1、2%高く、遅角も計算値の方が1、2度大きい程度の差値を示しております。
 潮流につきましては、潮流楕円で、長軸の流向と流速は十分再現がされております。
 また、有明海潮流パターンにつきましては、おおむね再現はされているというふうに考えております。
 さらに、大牟田市より以北の湾奥部では、先ほど示しましたように、反時計回りの循環流が傾向が見られました。これは既往の知見とも符合した結果であると考えております。
 また、水温、塩分につきましては、検証結果はここの説明では割愛をいたしましたけれども、年間の変動パターンが観測値と一致しており、その再現性は確認されておりました。
 また、有明海湾奥の筑後川等の大河川前面では塩分濃度が低く、有明海の湾口に向かうにつれて濃度が高くなる傾向が示されました。
 また流動モデルから年間の平均滞留時間が約50日ということでございます。季節で見ると降水量の多い夏場には40日程度になるというふうなことが計算として導かれました。
 次に、水質モデルにおきましては、栄養塩類、あるいは溶存酸素、有機物質等を対象にモデルの検証と有明海の特性につきまして検討を行いました。以下、これも時間の都合上、代表的な例を挙げまして順次その概要をご説明いたします。
 水質につきましては、浅海定線調査の測点や、公共用水域水質測定点の観測値とシミュレーションから得られました計算値、それとの比較を通じましてモデルの検証や水質特性の把握を行いました。
 検証結果のうち、ここでは、浅海定線の観測地点であります地点番号佐賀の11というものでありますが、これを選定しまして、平成13年のシミュレーションから得られました、図が小さくて恐縮ですが、上からリン酸態リン、アンモニア態窒素、硝酸態窒素、溶存酸素、CODにつきまして、計算値と観測値の経時変化を示しております。
 これにつきましても、各水質の項目につきまして、それぞれ見ますと一部の課題はあるというふうには思いますが、年間の変動パターンにつきましては、おおむね再現されたものというふうに考えております。
 有明海全体の化学的酸素要求量、そして栄養塩、溶存酸素の分布と季節変動を把握するために、2000年と2001年におけます夏季と冬季におけます水質濃度を平面分布等から検討を加えました。
 CODにつきましては、検証結果のうち、ここでは平成13年8月におけます有明海全体の平面分布を示しております。これによりますと、有明海の湾奥、もしくは大河川の河口前面海域で濃度が高く、湾口に向かうにつれまして濃度が低くなる傾向が見られました。
 DOにつきましては、平成13年8月におけます有明海全体の平面分布を示しております。これによると、有明海湾奥部で夏場に大河川からの出水が原因とみられる貧酸素水塊が発生しているというふうに見えます。
 これらは、有明海湾中部から湾口部にかけては見られず、大牟田と竹崎を結んだ以北において生じているということが確認されました。
 ここに水質モデルの検証結果並びに有明海の水質特性について簡単にまとめてございます。
 まず、CODにつきましては、冬季に見られる高い濃度に関する再現性という部分では課題を残しましたけれども、年間変動パターンはおおむね再現されておりました。
 SSにつきましては、2000年の春季から夏季にかけまして計算値が観測値より高くなっていましたが、その他の期間においてはおおむね傾向は再現されております。SSにつきましても、有明海湾奥部の大河川前面で高い濃度が見られ、湾央から湾口にかけての濃度が低くなる傾向を示しているというふうなことはいえます。
 また、栄養塩類につきましては、夏から秋にかけてやや高くなる傾向があるとともに、計算値は観測値の変動をおおむねとらえているというふうなことが確認されます。
 栄養塩についても、CODやSSと同じように、有明海湾奥等の大河川前面で高い濃度が見られ、湾央及び湾口にかけて濃度が低くなる傾向が示されました。
 溶存酸素につきましては、2000年、そして2001年とも、夏場に湾奥部で大河川からの出水が原因で貧酸素水塊が発生しております。また、大牟田と竹崎を結んだ以北においてこれは生じておりまして、湾中部から湾口部にかけては見られていないということが示されました。
 底泥輸送モデルにつきましては、SS濃度、SSフラックスによるモデルの検証を行うとともに、潮汐流の影響によります底泥の浸食・堆積傾向の推定と出水時の河川流入を考慮した底泥輸送につきまして検討いたしました。その概要をご説明いたします。
 潮汐流により輸送される浮遊泥量の平均値について、St.1からSt.4の各地点におきますシミュレーションから得られた計算値と観測値の比較を通じまして、浮遊汚泥の輸送特性の再現性を検証いたしました。これによりますと、有明海湾奥部におきまして、大潮期のSSフラックスが顕著となっており、その輸送方法は湾奥東部では西向き、湾奥西部では南東方向になっておりました。湾奥でSSフラックスパターンが再現されていることが確認されております。
 ここにその検証結果の概要をまとめております。SS濃度は小潮期から大潮期に向けて変動する変動傾向を精度よく再現していると考えられます。
 また、湾奥部でのSSフラックスパターンも再現できたものと考えております。
 潮汐流の影響としましては、湾奥の干潟部と西部海域で泥質物の堆積傾向が見られるとともに、有明海湾奥部の西側海域での観測結果によりますと、粒径の細かい泥質物が堆積しており、これは計算結果と一致していることが確認されました。
 出水に伴います懸濁物については、有明海流入河川の河口部を中心としまして、侵食・堆積量は変化は生じるものの、潮汐流に支配されるため、その傾向に大きな差は見られなかったことが確認されました。
 これは3つのモデルの全体の評価と申しましょうか、まとめでございます。
 今回、構築したモデルは有明海全体を通しまして、年間を通した栄養塩類等の濃度を再現するということを目的としているものでございまして、これからご説明します環境改善方策のマクロ的な検討に必要な精度は確保できているというふうに考えたわけであります。
 続いて、有明海における環境改善方策に関する検討結果について、御説明します。有明海における海域環境改善と沿岸域の整備方針に基づき、海域環境予測モデルを用いて、改善方策による改善効果の予測と検討を行いました。
 今回の国調費調査では、水質や泥質の関係に直接的に作用します流入負荷対策、そして、底質改善対策を取り上げまして、今ご説明しましたシミュレーションモデル、これを用いまして、2001年の現況再現結果と負荷削減ケースとの感度解析によりまして、その具体的な効果につきまして検討を行いました。
 具体的には、水質モデルを用いまして、水質の改善、これはCOD、T-N、T-P等でやりました。また、水中の溶存態無機栄養塩類、アンモニア態窒素でありますとかリン酸態リン、あるいは赤潮の発生抑制、これはクロロフィルa、あるいはPOC、こういったものを指標としまして環境の改善効果について検討いたしました。
 底質改善の効果につきましては、水質モデルによります感度解析とあわせまして、底泥輸送モデル、これも活用いたしまして、底泥輸送から見た底質改善の効果につきましても確認を行いました。
 まず、負荷削減の対策についての検討ケースでございます。
 ここでは、流入負荷量を段階的に削減すると仮定いたしまして、3ケースを対象に検討いたしました。
 ここにございますように、有明海に流入します全負荷量につきまして5%、10%、40%、これを削減した場合を想定いたしました。
 負荷削減対策にかかります検討結果のうち、ここでは水質改善効果の例として、CODにつきまして、ご説明をしたいと思います。図では、長崎、佐賀、福岡、熊本の順に値を示しております。
 負荷削減ケースの1と2であります5%、10%の負荷削減におきましては、現況とほぼ同程度の結果となりましたが、全流入負荷量を40%削減しましたケース3にあっては、現況よりCOD値が低くなり、水質の改善が図られるのではないかということが確認されました。
 次に、底質改善の対策についてであります。
 これも、有明海の底質を段階的に改善する3ケースということでございまして、底質改善を3,500ヘクタール、そして、約1万2,000ヘクタール、3万9,000ヘクタール実施する場合を想定して検討を行いました。底質改善対策の検討結果のうち、これは1つの例としまして、ノリ養殖に必要な栄養塩類が水中に確保されていることを確認するために、図中の赤で囲みました検討対象海域での2001年12月5日時点におけます現況再現結果と底質改善ケースの計算値、アンモニア態窒素、リン酸態リンの日平均値、これを比較しまして検討を行いました。
 底質改善対策の面積が多くなるにつれまして、アンモニア態窒素、あるいはリン酸態リン、そういったものは現況値よりもわずかに高くなる傾向が見られ、必要な栄養塩類というのは水中に確保されるのではないかというふうに考えられます。
 次に、赤潮の発生抑制につきまして、ここでは赤潮についても定量的な指標がございませんでしたものですから、クロロフィルaの値が日平均値で0.03mg/L以上になった場合を仮に1つの赤潮の指標と考え、図中の赤で囲みました検討対象海域におけます2001年12月における現況再現結果と底質改善ケースのクロロフィルaの日平均値が0.03mg/L以上になりましたメッシュ数、これを比較しまして、検討を行いました。
 クロロフィルaの日平均値が0.03mg/L以上のメッシュ数を見ますと、現況では202メッシュに対しまして、底質改善ケースの場合には、いずれも該当するメッシュがなく、赤潮の発生を防ぐには効果があるのではないかというふうに確認がされました。
 また、表層の日平均クロロフィルaや懸濁性の有機態炭素は、その後の底質改善によって、有明海全域のその値が現況より低くなる傾向が見られます。
 以上のことから、環境改善効果のまとめとしまして、今回検討いたしました内容をまとめております。流入負荷対策、底質改善につきましては、水質の改善、あるいは赤潮の発生の抑制に効果があり、環境改善方策として有効であるというふうに考えられます。
 また、冬季におけます無機態の栄養塩類の濃度につきましては、流入負荷削減ではあまり変化はしませんが、底質改善については現況よりもわずかに高くなる傾向があり、一方で、COD、あるいはT-N、T-Pといったもの、総量としては、改善する方向であることが示されました。
 また、流入負荷削減対策、そして、底質改善対策、これらを総合的に実施することによりまして、赤潮の発生抑制、あるいは底層の貧酸素化の抑制、さらには底生生物の増加、底質からの栄養塩類の溶出抑制等の相乗効果が期待されるというふうに考えられますが、こういったものについては今回の調査の中では十分な検討ができませんでした。こういったものについては、今後の課題ということになろうかというふうに考えてございます。
 また、本日お配りしています資料5-2の方では、既往の知見等の方から有明海におきます30年の推移というものをとりまとめております。そういった、既往の知見の整理も行っておりますが、本日は、時間の都合上、説明は割愛させていただきます。
 有明海環境改善方策のまとめということでございまして、基本的な方向性ということでございます。
 有明海及び八代海の再生に関する基本方針、特措法に基づくものでございますが、有明海の海域環境の改善、保全及び改善が目標として設定されてございます。
 今回の調査では、流入負荷の削減、あるいは底質の改善によりまして、水質の改善や赤潮の発生を防ぐ等の効果が確認されました。今後、これらの対策の実際の実施に当たりましては、対策の効果でありますとか、費用、実施の難度、こういったものを評価しながら、実態に即して推進していく必要があるのではないかというふうに考えているところであります。
 また、今回の調査、2カ年という限られた時間の中で有明海全体の検討をするということで実施したものでございますが、今後の課題というのも多々見つかってございます。負荷削減につきましては、各流域の降水量等を踏まえた流入負荷量の算定方法にかかる検討、あるいは、底質改善につきましては、覆砂等の現地に適した工法を選定しながら、モニタリングの充実等を一方で図りながら、検討を進めていく必要があります。また、底生生物の増加というのは水質改善に大きく影響すると考えられることから、種苗の放流、あるいは資源管理の取り組みとの一層の連携強化を図りながら今後もやっていく必要があるのではないかというふうに考えているところでございます。
 以上が、有明海海域環境調査の概要のご報告でございました。
 ありがとうございました。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまのご説明に対しまして、何かご質問ございますでしょうか。
 それでは、順番に、まず山室先生、その次、小松先生、清野先生。
 どうぞ。

○山室委員 2点ほど解釈の仕方を教えていただきたいんですが、まず資料5-2で、塩分の図が予測してある図があるんですけれども、そこでは塩分が成層している状態が再現されていまして、例えば13ページ、熊本20、熊本11、熊本6、これは佐賀が1つしかないのであれなんですけれども、塩分が成層している状況がよく再現されているということだと思うんです。これを見ますと、成層による貧酸素化というのが夏季に発達してもいいはずなんですが、酸素の計算値の方を見ますと、例えば25ページからずっと佐賀の11というところでとらえているんですけれども、酸素の推定している線で実線になっている部分というのが、みな1層から14層までほぼ全部重なっているということで、酸素は成層しないということになっていますね、そこでは。ただ実測値を見ますと、実際は成層して底層で貧酸素化していますね。こちらのこれをごらんになっても解釈が、溶存酸素は夏季の河川からの出水による貧酸素水塊の発生を予測できているとされているんですが、逆を返すと、こういう成層による貧酸素を予測できていないのではないかという解釈も成り立つのではないかということを1点教えていただきたいのと、もう1点は、流動モデル。塩分は、これは再現されていたんですが、例えば15ページの上層の平均流の比較というのを見ますと、先ほど反時計回りは再現できていたというご説明だったんですが、これは、素人が見ますと、時計回りっぽく見えるんです。実線の実測値が、黒の矢印ですね。ただ、計算値の赤の矢印はそれと別のベクトル、下手すると反対に近いようなベクトル、90度違っているベクトルがありまして、反時計回りになっているんです。これも、反時計回りの推測はできるけれども、時計回りの推測はこのモデルではできなかったという解釈が成り立つのかどうか、その2点について教えてください。

○須藤委員長 それではどうぞお答えください。

○田中水産庁計画課課長補佐 まず、2点目の、この流れの再現についてなんですけれども、15ページ等の図を見ると、多少ずれている部分があるんですけれども、総合的な評価としては、我々有明海の平均流の状態というのを、このモデルの中で再現できたのではなかろうかというふうに考えております。
 1点目の、DOについて、このモデルの中で成層していることが再現できていないのではないかという指摘につきましては、すみません、ちょっと今現時点でどのような形にこれを評価していいのかという部分、ちょっと検討した上でお答えをさせていただきたく、申しわけありませんけれども、次回の検討のときにお答えをさせていただくということにさせていただきたいと思います。

○須藤委員長 まず今の問題、ご説明者がおやりになったことではないですから、ちょっと検討して十分なお答えをしていただける方がいいと思いますので、今の貧酸素水塊の再現とか、このようなな時計回りのところですね。それについてはもう1回ご説明して、簡単で結構でございますので、ご意見をください。
 それでは、次に小松先生、清野先生の順にお願いします。

○小松委員 3点ほどお聞きしたいんですけれども、まず、流動モデルで、干潟の取り扱いが添付されていると思うんですが、モデルによっては連続条件が成り立っていないモデルがよくあるんです。連続条件がきちんと満足されているのかどうか、その点1点、お聞きしたい。
 それから、再現計算で、2000年、2001年、大河川前面で高い濃度が見られる云々というのが非常によくあうんだという根拠になっているみたいですが、大河川から供給しているわけですから、これは高くなるのは当たり前であって、これは根拠にはならないと思うんです。ここから供給しているわけですから、当然、1つのまとまりと。
 季節変化を再現して、なんとかあっているからモデルはいいのではないかということですが、有明海の場合には、よく皆さんご存じのように、栄養塩が出水等でポッと供給されて、そのあと、それに対して赤潮が発生して云々ということで、長期的なものももちろん大事なんですが、もっと短いスケールのもの、変動というのはすごく大事なんです。だから、そういう短いスケールに対してどうなのか。
 ちょっと数多くて申しわけございません。

○須藤委員長 3点ですね。
 どうぞ、1番目は連続条件として、この点を踏まえてどうでしょうか。
 もしすぐにお答えになれないのでしたら、今と同じように、まとめて検討していただいた方がよろしいですか。田中さんがおやりになったお仕事ではないとは思うんですけれども、どうしますか。

○田中水産庁計画課課長補佐 1点目、2点目につきましては、ちょっと保留させていただきたいんですが、ただ、この流動モデル、あるいは水質のモデル、あるいは底泥輸送モデルの再現性、あるいはその有している精度につきましては、このお配りしている報告書の中で、計算条件、あるいはそれに向けてのそれぞれの課題、あるいは総合的な評価というのをここで述べさせていただいてございます。今日ちょっとご説明の中では割愛した内容等も含まれておりまして、そういったものをいろいろ全体のものを検討いたした結果として、有明海全体の海域環境の再現、あるいはそれを検討するために必要な精度というのは有しているものというふうに、検討委員会としてはご検討もいただいた上でやったものでございます。そこら辺のお答えも含めて申しわけございませんが、次回の委員会の中で……。

○須藤委員長 3番目の問題もそうですか。短時間の変動の状況、今の精度の状況、それも含めて。すべての今のご質問3点含めて、次回にもう一度、お答えいただくということでよろしいですか。多分、今ではちょっとお答えが無理のような気がします。先生のご意見としては当然貴重だと思いますので、今承って、当然事務局の方もいますので、そういうことで。
 どうぞ。

○小松委員 次回の回答で結構ですので、ちょっとお尋ねします。。
 2000年、2001年の再現ということで、それを使っていろいろ流入負荷の削減とか、底質改善というのをやられているんですが、有明海がなんでこういうふうに弱ってきたのかという、その根本的な原因の解明なくして、例えば底質改善をしても、底質改善がどれだけ持続するのかとか、いろいろそういう問題があると思うんです。だから、根本的な原因の究明なくして、こういう再生策を持ってきても、なかなか問題が多いのではないかと思うんですが、その辺もあわせてお願いします。

○須藤委員長 これも可能な範囲で、どうぞ。

○田中水産庁計画課課長補佐 私ども、今回の調査の大きなねらいとしましては、今後の有明海におきます環境改善を、対策としてどういうものを柱に実施していったらいいのかということを基本的な方向性ということで示していきたいというふうに考えてございました。
 その中で、やはり有明海におきますその水質環境、これに直接的に作用するであろうということで、この流入負荷の削減、そして底質改善、この2つの対策がこの柱になるのではないかというふうに考えたところでございます。これは実際に、有明海の特措法に基づきます各県計画で示されている今後の事業の実施の方向、これとも符合するものであるというふうに考えてございます。そこら辺の主な対策となる2つの柱について効果があるのかどうなのか、こういったものを有明海全体の部分で検討する、確認するということで調査を実施したものでございます。
 そういう意味で、水質環境に直接的に作用するであろう対策として主なものがつくられたということであります。

○須藤委員長 わかりました。とにかく、小松先生からそういうご意見がありましたので、今日お持ち帰りいただいて皆さん内部で検討してください。
 清野先生、続けてどうぞ。

○清野委員 国調費調査は、シミュレーションがどういうものをやってくるかと、非常に研究者の間でも注目されているわけで、それで、今、先生方からご指摘あったようなものは、私は十分に出しているモデルだとは思えないし、もっと干潟のシミュレーションというのは、本当にいろいろな研究があることは、ここの場の先生方ご存じです。ですから、これを私は好意的に解釈して、資金と時間に限りがあったからだと思いますが、申しわけないんですが、これはこの領域で900メートルメッシュでいいのかとか、では委員会からご指摘があって、もうちょっと小さい領域でこういう現象を見るべきではないかと言ったものに対応しているかというと、このケースは対応していないと思いますので、そういったきちんとした議論をする場をぜひ農水省さんとして設けていただきたいんです。行政の方がこうやって説明してくださるのはいいんですが、ここの場は科学者の人たちなので、もっときちんとした議論がしたいんです。
 そういった時間の有効活用のためにも、ぜひ。1つはこの国調費のシミュレーションの委員会で何が議論されたかということを公開していただきたいと思うんです。ここにリストにある先生方が、このモデルに本当にどこまで責任を持ってこれでいいというふうに言ったのかというのは、申しわけないんですが、行政が責任をとってということがあるかもしれませんが、議事録を公開してくださることでも結構です。あるいは、きちんと時間をとって、15分とかではなくて、科学者の人たちが十分この議論を尽くしたというようなレベルになるまで、やっぱりこれで物事を判断するとしたら、そういった責任というのは、この委員会もそうです、行政側にあるんですから、ぜひ委員長さんも含めて。このすごく大事な問題に対して何かコメントをするとかいうことが評価だと私は思いませんので、ぜひ、きちんとこの計算について質問したらすぐに答える形をとってきていただいて、会議をしていただきたい。細かいいろいろな質問をしたいのですがしてもしようがないので、そういう場の設定をお願いします。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。  菊池委員。

○菊池委員 私はこの委員会に名前を連ねておりまして、中でも議論をしてまいりました。中・長期のその開門の委員会でも、私見はいろいろ述べてきたわけですけれども、1つは、この有明海は絶対的にN、Pが多過ぎるのかどうかという問題もあります。
 今、ノリ漁業者が言っているのは、「赤潮は出てほしくない。ノリのときにはなるべくNとPがあってほしい」。それは、自然界を相手にしたとき、私は随分自分の都合だけを言った議論だとは思うのですけが、しかし、もしこれで陸上からの流入をとめて、下からの溶出をとめたらば、果たしてハッピーなのかどうかという問題は、依然として残っているわけです。そういうときに、干潟の上に全部砂をかぶせたら、少なくとも今よりは細かい粘土質の成分が少なくなって、そこのベントスも棲めるものが増えるかもしれないと思いますけれども、ではその砂を一体どこから持ってくるのか。これも私、前にも言いましたが、「いや、それは一応仮定の問題として、何分の1ぐらいカバーしたらどのぐらい響くかという、そういうプランニングをやっているんです。」というお話でした。それはわかります。わかりますけれども、ただ、ある何年かの現状に仮定の条件で、こことこことこう改変すればこうなると言った場合に、では一番最初の大騒ぎになったノリ漁業にとってはどうなるんだろう。あるいはノリ漁業の生産量を今のN、Pのレベルで維持しながら、しかも違う季節に赤潮がそれを食ってしまわないようなやり方はあり得るのか。私は今もわからないわけです。でも、どうしたらいいのか、それだけでは最初の問題提起には答えていないのではないかというのを何遍か発言してきたような気もいたします。
 ただ、これも今すぐお答えいただくことではないんです。まだ、これから衆知を重ねていくことだと思いますけれども、これで1つの回答になったということ自身、私はちょっと納得ができないと思います。

○須藤委員長 滝川先生、とりあえず、質問のところをつき合わせてまとめさせていただきますので、どうぞ。

○滝川委員 見ていただくとわかりますが、報告書の5ページのところに、水質モデルの座長を仰せつかっておりますので、今いろいろなご質問等ございました。それについて、お時間があれば、いただければ、多分そういったことも詳しくご報告できると思いますし、基本的に、今回の結論は議事録等で公開……。

○須藤委員長 全部そうだったと思います。

○滝川委員 そういうふうになっておりますので、そういったことで資料をお調べいただいて、どういう議論がなされたのかと。ご指摘のあったことに対しては、この専門モデル部会等々を通じて、かなり真剣に議論いたしてきております。この点、我々はこのモデルそのものが、パーフェクトとは申しませんけれども、今の時点では最大限努力している。そういった上での議論。そういったことを含めて、皆様のところになかなか正確に伝わらないとおかしいですが、どういう議論をしたのかというのは、どうも伝わっていないようですから、先生、今、おっしゃったように、いつかそういう機会がもしあれば、改めて議論させていただけたら、お互いの不信とは言いませんけれども、不平のところがなくなってしまって、もっと前向きにいい方向にできるのではないかとか、それを期待いたしたいと思います。

○須藤委員長 どうもありがとうございます。
 今、ご提案をいただきましたので、確か滝川先生は委員長ですね。

○滝川委員 はい。

○須藤委員長 委員長みずからがそうおっしゃってくださっているので、この委員会の場で同じようにやるかどうかはともかくとして、担当者として、今後、このモデルの部分とそのモデルの出た結果について、疑義というか、懸念というか、そういうものが随分出されているし、プロセスについても出されていますので、これをクリアにしていただかないと、次の議論にもなかなか発展できないと思いますので、今日はこの辺で、とりあえず質疑応答というふうにやってもちょっと時間のロスになると思いますから、今、いろいろ出た四者の先生のご意見を踏まえて、今後どういうふうにこれを皆さん各委員に理解していただくかということについては努力をしてください。
 それで、先生方に私お願いいたしたいのは、今日初めて、これを15分か20分の時間で、理解せよというのもかなりも無理なところもあるので、先生方の方も、今日の報告書は、とりあえずはもう一度見ていただいて、問題点を後ほど出していただきたい。こういうふうに思います。
 説明者が、多分15分ぐらいでこれを全部言う、多分無理があったんだろう。言葉づかいなんかについても非常に無理があって、先ほども菊池先生のような質問にもなるので、一応ここで締めさせていただきますので、次の会議には、あるいはその次になるか、これは環境省ともご相談しなければいけませんが、この問題については重要な課題で先生方の意見が出ましたので、再度、ご説明いただくと。一般論ではなくて、今の問題点についてご説明いただく。できれば、滝川先生が委員長でございましたら、委員長のお助けも借りるというようなことにさせていただきたいと。こういうふうに思いますので、よろしゅうございますか。
 それでは、大事な議題、まだ続いていますので、どうも水産庁ありがとうございました。
 続いて、農村振興局からお願いします。

○富田農村振興局農村環境保全室長 時間も押し迫っているようなので、早速始めさせていただきます。
 農村振興局からは、大きく2つなんですが、1つは、開門総合調査の結果の概要ということで、お手元に資料6-1ということでお配りしております。それについて私の方から、パワーポイントを使いまして、かいつまんだ形になりますが、要点をご説明させていただきます。
 それから、その後、ちょっと時間をいただきまして、資料6-2です。中・長期開門調査検討会議報告書というものについて後ほど中野の方から説明させていただきます。
 まず、開門総合調査の報告書ですが、皆様のお手元にあるのは、全体版と呼ばれているものでして、実際は開門総合調査は3つの調査からなりますけれども、短期開門調査と干潟浄化機能調査、それから、流動解析等調査。これについては、今日ちょっと短期開門の方を持ってきていないんですが、それぞれ一冊あります。全体で報告書というのは大体1,000ページぐらいの内容のものになります。それの中から内容をまとめて、最終結果をまとめたのがこの総合報告書ということで、資料6-1ということになります。この内容については、九州農政局の方で実施しておりまして、学識経験者からなります開門総合調査運営会議という組織の指導助言を受けて、昨年の11月28日に最終結果を公表しています。
 早速説明に入ります。
 先ほど申しましたように、開門総合調査は3つの調査からなります。
 まず、短期開門調査。これが調整池に約1カ月ぐらい、海水を入れて潮位、潮流、水質、生物の変化を調べたもの。
 次に、この干潟浄化機能調査です。これは、諫早干潟に類似した干潟ということで、類似干潟を選定して現地調査を行う。それで、あと干潟生態系モデルということで、コンピューター解析を行って、諫早干潟の水質浄化機能を推定した。
 次に、流動解析等調査。これはコンピューターシミュレーションとあと観測データの解析でやっておりますが、先ほどの水産庁からご紹介のあった国調費のモデルですね。流動モデル、水質モデルを活用して、感度解析という形で事業の影響を評価したということであります。
 この3つの調査結果をもとに、ノリ委の見解、平成13年の12月に出されておりますが、このノリ委の見解で指摘された事項について、こたえていこうということであります。
 まず、短期開門調査について概要を説明します。
 調整池の水位ですが、マイナス1メートルからマイナス1.2メートル、20センチメートルの水位変動を起こしながら、排水門、2カ所排水門がありますけれども、南北の排水門を約1カ月間、操作しながら調整池に海水を入れたということです。
 調整池、あるいは海域、諫早湾、こういうところでの潮位・潮流、水質、底質、生物、そういうものの観測を行ったということです。
 これが、海水の導入状況と排水状況です。
 調査は平成14年、一昨年になりますけれども、4月1日から一応12月10日で。そのうち4月24日から5月20日、約1カ月間、海水導入を行っております。
 左側の青いところが導入量です。途中、小潮期というのはあまり潮位が下がりませんので、排水ができないために、導入もストップしているという状況があります。導入量は6,600万トン。排水量が1億1,000万トンという結果であります。
 このときに、現地でどのような調査をしたかですが、これが諫早の潮受堤防でして、ここが調整池であります。あと調整池の中の水質等を測るということと、生物。それから、海域は、諫早湾内、それから湾の少し外、これは潮流関係の調査ですが、こういう形で観測点を配置して、大きくこういう5項目です。気象、潮位・潮流、水質、底質、生物という、こういう項目について調査を行ったということです。
 まず、潮流への影響です。
 これは、上から諫早湾の調整池の一番北側の排水門です。潮受堤防の排水門に近い方から湾奥の2点と、あと湾の中央部、これがSt6です。あと、St3というのは湾の入り口あたり、湾の外側がSt12と一番下です。それぞれのこれは4月29日の潮流ベクトルを時系列で全部並べてあります。ここは、海水導入を行ったのが青い実線の時間帯、それから、排水を行っているのが赤い実線の時間帯です。これを見ますと、外にはこのベクトルの変化は前後とほとんど変わってないです。これは湾口、湾央でもその変化はほとんど見られない状態です。ところが湾の一番奥、排水門をちょっと拡大しますと、排水している時期にやはりベクトルが大きくなって潮流への影響が見られております。でも、導入のときはあまり変化は出ていない。主に排水時に潮流への影響は出ていたということであります。
 次に、調整池の中の塩分の変化を見てみます。
 調整池の中央部にありますS11という地点。あと参考までに、調整池の外側のS1というデータもあわせて示します。
 これは、開門調査中の下が降雨量です。
 まず、S11、調整池中央の底層塩分の変化を示します。海水導入を始めまして、3日目ぐらいから一気に上がりまして、その後1万5,000mg/Lぐらいで、若干、雨の影響か、下がる時期もありますが、その後、海水導入が終わってからだんだん落ちていくという状況が見られました。
 一方表層ですが、表層は底層より遅れて、上がり始めます。上がり方も5,000mg/Lぐらいでして、その後約1万mg/Lまで上がるということで、海水導入期間中を通じて、表層と底層で塩分濃度に差が出ているということで、塩分躍層が形成されている。ただ海水導入が終わりますと、しばらくして消えています。
 あと、底層の塩分濃度を見ますと、外海、排水門の外側の塩分濃度と大体近い数字まで行っているという状況でありました。
 次に、調整池内のCODですが、先ほどの外側のCODに対して調整池のCODは高いんですが、海水導入をした期間になりますと、最初1回上がってその後下がってきて、大体海域のCODに近づいたということです。その後、海水導入が終わってから、また戻ってきた。そうすると、この原因としては、主に海水の方がCODが低いということで、希釈効果が中心に働いているのではないかという結果であります。
 次に、負荷収支をやってみました。まず、調整池に海水を入れる前、4月1日から4月23日までの負荷収支であります。流入する負荷量はCODで計算して、内部生産が4,000kg/日、排水が8,000kg/日、これに対して、海水導入中ですが、内部生産は4,300kg/日でそう変わりません。排水につきましては、これは2万3,000kg/日。ただ海水導入で一方で入っていますので、この差分で1万5,000kg/日ぐらいということで、導入中の方がCODの海域への排出量は増加したという結果です。ただ、バックグラウンドとしての降雨とか流入も変化していますので、単純な比較はできないんですが、海域への負荷の総量はむしろ増加したという結果であります。
 次に、海域の塩化物イオン濃度を見てみますと、海水導入期間中に2回ほど海域の塩分低下が起きております。これは表層です。底層はかなり安定しています。
 1回目の塩分低下を見ますと、ちょうどここは小潮期です。小潮期に当たっていて、この雨の影響なんでしょうが、ここは排水をしていない時期に塩分濃度の低下がある。同時に、平面図で見てみますと、どうも外側の方が1万800mg/Lで、中の方が1万2,000mg/Lですから、どうもこちらの方が塩分濃度が低いという状況がございますので、低塩分水はどうも外側から来ているのではないかということになります。
 次に、海域のCODです。
 CODにつきましても、湾奥と湾央、湾口と3カ所でデータをずっととっていまして、結果としては、湾奥については、若干、前後と比較してCODは増加する傾向が見られました。ただ、湾の中央部、湾の入り口あたりでは、前後と比較して特に高い値は見られませんでした。下が排水量です。
  次が、干潟浄化機能調査であります。これは類似干潟を使って調査をやったということであります。
 考え方ですが、まず類似干潟を選んだ。ここが諫早干潟ですが、湾奥の佐賀沖です。この泥質干潟を類似干潟として選定して、ここで調査を行ったということです。
 これが、そこの拡大図ですが、この肌色になっているところが干潟部、あと浅海域も含めまして、調査地点を設けまして、測線を当方で2本、あとここに環境省の調査測線がありまして、ここでもうちの補足調査をやりまして、この3つの測線を中心に、この地域の干潟生態系モデルをつくろうということで現地調査を行ったわけであります。あわせて室内試験も行っております。
 この結果を使って、泥質干潟の生態系モデルをつくろうということで、これは、その概念図です。泥質干潟に特有の生物として、一応ムツゴロウとかカニ、あとカキ礁がありますのでカキとか、縣濁物食者としてはこの辺はサルボウですね。あと付着珪藻がかなりたくさんある。こういう形で干潟生態系モデルをつくりました。  このモデルを使いまして、まず、この類似干潟における水質浄化機能はどれぐらいあるかということをシミュレーションで評価しました。
 その次に、諫早干潟の水質浄化機能はどうかということで、このモデルを諫早干潟に適用して、諫早干潟の水質浄化機能を推定したという流れであります。
 まず、現地調査と室内試験について説明しますが、大きく現地調査として水質関係、プランクトン、底生生物、底質調査、間隙水、あと面的調査として底生生物の調査、カニ類、カキ礁、ムツゴロウの調査あと室内試験としては、底質の調査として脱窒速度と溶出速度、ほかに二枚貝としては、濾水速度と呼吸・排泄速度ということで、こういう室内試験と現地調査の状況を示しております。
 まず、底質の調査結果ですが、底質がこの地域は非常に細粒の、先ほど泥質と言いましたけれども、ブルーのところがシルトで、濃い青が粘土、こういう形で、場所によって実は砂をまいているところがありまして、砂分の高いところがありますが、全体的には非常に粘土質、9割前後は泥質であるということであります。
 この底質中の酸化還元電位でありますが、このコアで測ったものですが、ポイントとしては、夏場は特にですが、非常に還元的な環境にあるということです。
 さらに、間隙水の水質を見てみますと、上は直上水なんですが、間隙水、ここの2カ所で採っていますが、このブルーと赤が冬と夏のアンモニア態窒素です。それに対して硝酸態窒素は、亜硝酸も含めましてですけれども、ほとんどないということで、非常に硝酸態窒素が低くて、アンモニア態窒素が多いという間隙水の水質状況でございます。
 次にマクロベントスの調査結果です。
 これは、マクロベントスの分布状況、どんなものがいるかということです。青い大きいのはサルボウガイ、主に漁場ですけれども、そういうところで非常に多いということで、ただ、場所によって非常にばらつきが多いということです。そこを外れると現存量の小さな地点が多かったという結果になっております。
 次は、底質の脱窒速度の試験です。これはアセチレン阻害法ということで測定を行っているところです。
 その結果ですが、今回の調査結果では夏のデータで2.3から14.1、冬季で2.0から4.3mgN/m2/日です。ほかの地域でいろいろデータがありますが、三番瀬とかかなり高い数値が出ていますが、ほかの地域と大体既存のデータと同じ値ですが、全体的には低い結果にはなっております。
 以上の結果を入れて干潟生態系モデルをつくったわけですが、その特徴を簡単に説明します。
 まず、泥質干潟の特徴的な生物種を入れたということです。それから、室内試験、二枚貝の濾水速度、脱窒速度というものの室内試験を踏まえてパラメータが設定された。それから、底泥の巻き上げ・沈降とかリンの吸着・沈降、そういうものもモデルに入れた。それから、砂質干潟に見られるような、干満に応じた海水の自由な移動はないということで設定しております。それから、底質での酸化層、還元層の形成、物質循環への影響を再現するようにつくってあるということであります。
 これを使いまして、この類似干潟における浄化機能を計算した結果が、ここのポンチ絵になっております。
 陸域からの流入負荷が3.14トンに対して収支、実際には潮汐で毎日出入りしているんですが、総収支全体では、出ていく量は2.8トン。この差であります0.34トンが浄化機能、これは窒素で評価しております。流入負荷の大体11%。これをさらに単位面積にしますと、8.4mg、干潟域に限りますと、少し大きくなって、14.5mgという結果となっております。
 それから、次が、干潟生態モデルを使ったほかの事例との比較です。
 この黄色で示したのが今回の結果ということで、三番瀬は、窒素の浄化が100mgぐらいあるということです。いろいろあります。非常に高いところもあるということで、既存の評価の範囲内に大体あるんですが、比較的低いところにあるという結果であります。
 次に、このモデルを諫早干潟に適用して、諫早干潟の浄化機能を調べようということで、諫早干潟においては、昭和63年頃いろいろな生物の調査が行われております。この生物の調査結果を持ってきまして、先ほどのモデルに入れました。そのころのデータでは、ハイガイが非常に多いということで、ハイガイが多いところ以外は100g/m2以下という湿重量ですね。そういう地点が多かったということであります。このモデルを回しまして、諫早干潟の浄化機能を推定したということであります。
 先ほどの類似干潟よりちょっと大きいんですが、10.6mgNとなっているんです。干潟だけに限ってみると20.2mgN、これを量で見ますと、調整池への陸域からの負荷の大体窒素の36%程度が干潟で浄化されていたのではないかということで、これをさらに有明海に流入する窒素の負荷量と比較しますと、大体0.5%程度という結果になっております。
 次に、最後の流動解析等調査ですが、これは先ほどの国調費のモデルを使って干拓事業の影響を感度解析したり、あとデータの分析で検討を行ったということであります。
 全体の流れです。これが先ほどの国調費のモデルです。短期開門調査をやった結果で再現しております。あと干潟浄化機能調査による成果をモデルに組み込んだということで、モデルの構築・検証を行った上で、感度解析等をやった。
 また、あわせて貧酸素現象、これについては、現地調査の結果の解析もあわせてやっております。
 あと、公共用水域とか浅海定線のデータを干拓事業の前後で比較するなどの検討もあわせてやっております。
 まず潮位・潮流への影響です。
 これが、こちら左側、このモデルで感度解析やったわけですけど、この中央の線に沿って大潮差ですね。平成12年の1年間の大潮差を、潮受堤防がある場合とない場合で比較してみました。あとあわせて、検潮所があります大浦と三角と口之津についてもポイント的に比較しております。上の方はほとんど2本の線が重なって見えないんですが、下の方は若干差が出ている。この細い線が堤防がない場合です。ある場合がこの上の線であります。どの程度差が出ているかということですと、まず三角については大体3センチメートル程度で0.8%、大浦では大潮差が約7センチメートルで1.5%程度、潮受堤防をつくることによって若干減少したという結果になっております。
 次に、観測データからどうなるかということで、これは大浦の検潮所です。
 過去から約30年間の潮位差、干満差を年間でずっと平均してとってみると、こんなグラフになります。この辺が一番低い。平均値を100として指数化しております。大体96.8、昔、今より高いときは105ぐらいです。潮受堤防を実際につくったのはこの期間であります。前後で比較するとこの程度の差が出ているという結果であります。
 次にM2分潮、月の引力の影響による潮汐を観測データから解析した、いわゆる調和分解です。データを30年間調和分解して、30年間の変動を見たのがこの赤い線であります。上の黒い線もM2分潮ですが、M2分潮に関しては、月の公転軌道が18.6年周期で変化しますので、その影響が長期的にあらわれます。したがって、有明海の環境の議論をするときは、この長期的変化を含めて議論しなければ意味がないということになります。
 これでいきますと、大体昭和53年にピークが来ていまして、昭和63年に一番低い場所がある。その後も平成7年ぐらいにピークがあります。ちょうどここが潮受堤防の工事期間ということであります。その後のM2分潮は減っていますけれども、まだ、最低時よりは高い状態にあるという状況であります。
 次に、潮流であります。
 これも流動モデルで感度解析した結果ですが、一応、これベクトル図で左右比較してあります。これは潮受堤防がない場合とある場合ということであります。このベクトルを比較して、差が出ているのは諫早湾とあと周辺海域にとどまっているという結果でありました。
 次に、水質への影響であります。
 これも、先ほどのモデルですが、まず流動モデルです。塩分ですが、潮受堤防がある場合とない場合で感度解析を行ったということで、諫早湾の外側については、ほとんど影響は見られていないということです。
 次に、COD。これも同じように、CODは水質モデルでして、この調整池の中については、こちらでは先ほど干潟浄化機能調査でやった浄化機能をモデルに組み込んだ上で、比較計算をしております。これについても、CODは有明海に関してはほとんど有意な差は見られておりません。
 これは、T-N、全窒素ですね。全窒素についても、感度解析をやった結果で有意な差は見られておりません。
 あと、実際に観測データはどうなっているかということで検討しております。
 これは、公共用水域の水質測定地点、このデータで諫早干拓事業の前後でどうなっているかを比較してみました。
 これは青が潮受堤防をつくる前、赤がつくった後です。
 CODに関しては、これはアルカリ性法のものだけを統一して出していますけれども、工事が終わった後の方がむしろCODは低いようなデータとなっているということです。あと、湾口から湾奥に向けて高くなっていくという傾向があります。
 次が、全窒素。これは表層ですが、これは湾口でデータが古いものは入ってないんですが、これについても潮受堤防設置後のデータも、特に設置前より高いという結果は出ていないということであります。
 次に底質です。
 底質については、濁り拡散モデルということで、モデルを新たにつくりました。流れは国調費のモデルを使ったんですが、それで細粒化傾向がどの範囲で起きるかということを中央粒径で検討しております。ここで、Mdφ=4のあたり、湾口部ですが、若干夏場に特に細粒化するような場所が見られたということであります。
 あと、環境モニタリングの方でも現地で粒度調査をやっておりますので、このデータ、S10というところですが、これで経年的な変化を見ますと、一定の粒度変化傾向は見られないという結果となっております。
 あと、貧酸素に関する調査を行っています。
 貧酸素については、諫早湾内と、あとは佐賀沖です。湾内については一部エレベーター式の24時間、水深50センチメートルごとに観測する施設を設置して、ずっとデータをとっております。
 これは、湾央と湾口でとったデータです。下が溶存酸素飽和度です。上が表層の塩分です。貧酸素は、平成14年7月初め、それから8月初めに観測されております。このときの現地の塩分躍層の状況ですが、7月初めはこの雨に伴って、こういう躍層が観測されております。8月初めは、躍層がありません。これについては、東大の磯部先生の方でいろいろ研究されていまして、どうも有明海の深い方から貧酸素の水が上がってきたのではないかという見解を述べられております。
 あと、調整池の排水が塩分躍層にどういうふうに効いているのかという検討であります。
 7月19から20日にまとまった雨が降りまして、それに伴って排水を何回か行っております。この時期はほとんど排水を行ってない時期です。やはり湾奥、排水門の近く、この青い線ですが、排水するときにガクンと塩分濃度が下がるという状況が見られる。ところが、実際に継続的な塩分低下というのがこの時期に起きていまして、これを見ると逆にB4、湾の入り口の方でまず下がって、それから湾の中央が下がって、最後に湾の奥の方が下がるということで、どうも、これは先ほどの短期開門のときもお話しましたが、どうも外から低塩分水が入ってきたのではないかということであります。
 これは、平成13年7月の降雨に伴うシミュレーション結果です。シミュレーションで有明海の表層の塩分濃度を計算してみました。22の線を赤くしていますが、湾奥から湾口へ向けて表層の塩分濃度の低い水がだんだん動いていくという状況で、こういうのを見てもらえばわかるんですが、諫早湾内でどうもこちらの方からかなりの水が来ているという結果が得られております。
 これは、浅海定線のデータです。
 これは30年間のデータでもって、これは佐賀沖ですが、確率処理しまして、事業の影響を検討してみました。特に、溶存酸素が低下しているという状況は見られませんでした。
 これは、諫早湾内と佐賀沖について測線を設定して、平成14年8月に調べた結果ですが、溶存酸素の低下している部分というのは、諫早湾湾口、このあたりにあるんですが、あと一方佐賀沖については、この湾奥、北側の方で貧酸素が見られる。諫早の貧酸素と佐賀沖の貧酸素はどうも別ものであろうということであります。
 総合まとめということで、一応見解に指摘されている事項に対して結果を整理しております。これは、報告書の62ページ以降です。
 短期開門調査につきましては、特に潮位への影響は認められなかった。
 それから、流動解析等調査については1.5%程度の減少があった。
 それから、実測のM2に関しては、堤防の締め切り前後では、明らかな差はみられなかった。
 短期開門調査、潮流ですが、主に排水門近傍で潮流の変化が見られました。
 あと、シミュレーションの方ですが、観測と同様の傾向が再現されたということです。
 それから、潮受堤防の有無の条件で潮流ベクトル、平均流ベクトルを比較したところ、影響は諫早湾周辺海域にとどまっていたということで、以上の結果で、潮流に関しては、潮受堤防の締め切りは諫早湾外の流動に対する主要な影響要因とはなっていないものと考えられるという結論を得ております。
 次が、水質です。この中に干潟も入ってくるんですが、まず水質につきましては、短期開門調査で、流出負荷量は海水導入前に比較して増加した。
 あと流動解析の方で、COD、T-N、T-Pへの影響は有意な差は見られなかった。また、公共用水域のデータ等、観測データからも、前後で特に事業の影響に起因すると考えられる水質の変化は見られておりません。
 干潟浄化機能につきましても、泥質干潟の調査結果は、大体既存の評価結果の範囲内にあるものの、比較的低いということでありました。
 それから、諫早干潟の水質浄化機能を推定したところでは、10.6mgN程度という結果である。あと、これを流入負荷量で見ると、窒素ベースで36%、有明海全体で約0.5%に匹敵する。
 以上の結果を受けまして、潮受堤防の締め切りは、諫早湾外の有明海の水質に対する主要な影響要因とはなっていないものと考えられるという結論を得ております。
 次に、貧酸素です。
 貧酸素につきましては、これは短期開門のときに一時的に貧酸素が確認されたというふうに書いています。
 調整池排水と底質との関係ということで、底質の酸素消費速度については、佐賀沖の泥質についての調査結果と大体類似した数字が得られております。
 それから、あと環境モニタリングや数値シミュレーション結果では、特に諫早湾の水質に大きな変化はないということで、負荷の増大による底質の酸素要求量が増大したという可能性は考えられないということであります。
 それから、塩分躍層に関しては、排水されていない時期にも塩分躍層の形成は確認されている。
 あと、モデルによって、有明海の湾奥の低塩分水が諫早湾に達している状況が見られる。
 あと、連続観測でやりますと、調整池からの間欠排水の影響が一時的で、湾奥等に限定されているということです。
 あと、浅海定線では、佐賀沖では、70年代から貧酸素が観測されている。
 以上を受けて、調整池からの排水は、有明海の広範囲かつ継続的な塩分躍層の形成について、主要な影響要因とはなっていないものと考えられる。潮受堤防の締め切りは、佐賀県沖における貧酸素現象の影響要因とはなっていないものと考えている。そういう結論を得ております。
 あと、底質でありますが、底質につきましては、短期開門調査で、特に底質の粒度組成の変化は小さいという結果になっております。
 あと、流動解析等調査でモデルで検討した結果では、湾口の一部に細粒化傾向が見られる。ただ、そのほか、諫早湾外では細粒化の傾向は見られていない。
 あと、環境モニタリングの底質調査では、湾奥の調査地点で、一時的に粗粒化した所で堤防締め切り後に再度細粒化した場所が見られる。ただ、湾口、湾外の観測地点では、一定の変化傾向は見られなかったということであります。
 以上のまとめです。
 開門総合調査によって、干拓事業による有明海の流動、水質、貧酸素、底質への影響については、かなり明らかにできた。
 数値シミュレーションと観測データの分析により、総合的な考察を行ったところ、検討項目により若干の違いが見られますが、潮受堤防の締め切りの影響は、ほぼ諫早湾内にとどまっており、湾外の有明海全体にはほとんど影響を与えていないという結果が得られた。
 以上の結果として、干拓事業の環境影響評価と共通する項目については、その予測の範囲にほぼ収まっていた。
 なお、赤潮、底生生物については、間接的には一部を明らかにできたものの、今後調査研究が進められているということで、今後の新たな知見に期待したいということでまとめております。  引き継ぎ検討会議の報告書について簡単に……。

○須藤委員長 どうぞ。

○中野農村振興局経営体育成基盤整備推進室長 それでは、続きまして、中・長期開門調査検討会議報告書について、資料6-2にしたがいまして説明させていただきます。平成12年度に有明海で発生いたしましたノリ不作を契機として、その原因究明を図るため、農林水産省有明海ノリ不作等対策調査検討委員会、以下、「ノリ委員会」といたします、が設置されました。
 ノリ委員会での議論を踏まえ、平成13年12月に諫早湾干拓地排水門の開門調査に関する見解、以降、「見解」といたします、が示されました。
 この見解では、開門調査の意義は、諫早湾干拓事業が引き起こしたと指摘されている有明海の環境変化の諸事象について、その適否を検証することとされております。ただし、その取り扱いにつきましては、行政に総合的な判断がゆだねられたわけでございます。
 農林水産省といたしましては、見解の趣旨を尊重し、開門調査により予測される被害を防止するために有効な対策を講じることができること。原因の究明や対策のため、早期に成果を得ることなどの観点に立ち、調査方法を検討し、短期の開門調査を含む開門総合調査により、諫早湾干拓事業による有明海の環境への影響をできる限り量的に把握することといたしました。
 この開門総合調査については、関係者の容認のもと、平成14年4月に実施し、平成15年11月に報告書が取りまとめられ、先ほど富田の方からご説明のとおりでございます。
 この間、農林水産省は、中・長期開門調査につきましては、有明海における各種調査の動向、短期の開門調査の結果及びその影響、ノリ昨期との関係等の観点を踏まえた総合的な検討を行った上で、平成14年度中に設ける新たな場での議論を経て判断することとしておりました。
 このため、農林水産省の判断に必要な論点を整理する場といたしまして、環境と水産、環境と農業、環境と河川に関して、豊かな行政経験を持った委員で構成される中・長期開門調査検討会議を、平成14年3月28日に設置いたしますとともに、有明海の状況に詳しい学識経験者及び関係4県の水産試験場長で構成された専門委員会を設け整理いただきました。
 この検討会議では、昨年4月30日に第1回の検討会議を行い、12月25日までの9回の検討において、ノリ委員会以降に得られた、先ほどの国調費調査、それから、行政対応特別研究及び開門総合調査等の各種の調査結果、学識経験者からの意見聴取、学会等に発表された文献、有明海・八代海総合調査評価委員会における学識経験者の方々の研究発表からの知見等を踏まえ、有明海の現状と諫早干拓事業の現状、さらには、気象・海象に関するデータ等を収集し、これらも参考に検討が行われたところでございます。その際、検討会議では、科学・技術的な論点については専門委員会に付託し、専門的な立場から議論を深めていただくとともに、総合的な検討を行うため、漁業関係者、関係自治体など、さまざまな立場の有明海関係者からも広く意見の聴取を行い、あわせて検討会議においても、有明海の状況に造詣が深い学識経験者の方から意見聴取を行い、その論点を整理いただいたものです。
 検討会議報告書の構成といたしましては、資料をごらんいただきたいと思うんですが、目次にありますように、「はじめに」で検討会議設置の目的が、1で論点整理にあたっての検討方法として、2以降に整理されている検討方法について記述されております。2では有明海と諫早干拓事業について専門委員会で整理された現状について述べられております。
 3の「中・長期開門調査にかかる科学・技術的な論点の整理」では、まず3.1の「「見解」の6項目に沿った整理」として、潮位・潮流といった項目ごとに見解の指摘、ノリ委員会以降にやられた調査の成果、学識経験者から聴取した意見、既存文献等の整理、これらから得られる論点について整理され、3.2の「調査の進め方」では、調査のあり方、あるいは留意事項に関する論点が整理されております。
 4の「調査の及ぼす影響と対策についての検討」では、1で述べられておりますように、事前に海域・調整池背後地への悪影響の回避、防災機能や施設の安全性の確保、周辺漁業・農業への配慮といった観点から、地元住民や関係者に不安や被害を与えないような有効な対策を講じることができるかどうかについて、調査期間だけでなく準備期間や費用も含めた検討について整理がされているところでございます。
 5の「漁業等関係者の意見」では、検討会議で聴取した関係者の意見、検討会議に提出されました市民団体等からの要請、さらには、この評価委員会における現地調査、意見の聴取内容についても審議をされております。
 以上の1から5を踏まえ、6で「総合的な論点整理」がなされ、最後が「おわりに」という構成になっているところでございます。
 また、学識経験者から聴取した主な意見及び文献・報告等の整理を付表として、中・長期開門総合調査検討会議専門委員会の報告書が付属資料として報告書につけられております。
 「総合的な論点整理」として6でまとめられた要点は、諫早湾干拓事業が引き起こしたと指摘される有明海の環境変化の諸事象についての検証方法の適否、周辺の自然及び社会環境に及ぼす影響と対策、調査を実施する際に準備や調査に一定期間がかかる等時間の概念の観点、漁業関係者や地元住民の心情等の論点について、行政として時間意識や費用対効果にも照らして、総合的に判断することが必要であるとされております。
 このことにつきましては、「総合的な論点整理」で、全体を通して象徴的な部分がございますので、ご紹介として読み上げさせていただきます。
 資料といたしましては、資料6-2のページで申し上げますと、6-5の下から6-6ページの(6)でございます。
 「以上のように様々な角度から論点を整理してきたが、中・長期開門調査の取扱いにあたっては、それぞれに深い想いを持つ漁業関係者や諫早湾周辺住民の方々に配慮しつつ、諫早湾干拓事業が有明海の環境に及ぼしたとされる影響についての検証方法としての適否、海域などへの影響と対策および回避困難な起こりうるリスクの観点、有明海全体の環境改善に向けた方策との関係を、行政として時間意識や費用対効果にも照らして判断をしていく必要がある。  これらはいずれをとっても難しい課題であることに加え、中・長期開門調査の取扱いは、これらを総合的に判断する必要があり、その困難さは乗数的な大きさを持つものと考えられるが、農林水産省におかれては、有明海を豊かな海として再生し、その恵を漁業関係者や諫早湾周辺住民の方々はもとより広く国民が享受するために、有明海の環境改善に向けた取り組みとして今なすべきことは何かということに真摯に思いをめぐらせた上で判断されるよう期待する。」とされているところでございます。
 また、検討会議からは論点整理とは別に、有明海を豊かな海として再生することに少しでも早く、効果的に取り組んでいくことが重要であるとの視点から、最終章の「おわりに」において幾つかの提言もなされているところでございます。
 以上、簡単ではございますが、中・長期開門調査検討会議の報告書についてご説明いたしました。
 ありがとうございました。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。
 実は、予定した時間が来ているんですが、大変重要な議題だと認識しておりますし、私の司会の不手際でちょっと延びてしまいましたが、30分程度延長をさせてください。どうしてもご用の方はどうぞそのままお立ちくださって結構でございますが、30分程度延長をさせてください。
 それでは、ただいまのご説明、どうもありがとうございました。
 続いて、それでは、伊藤先生からまいります。その次に小松先生、清野先生。

○伊藤委員 資料の6-1についてお伺いしますけれども、41ページに書いてあります、干潟生態系モデルを活用した水質浄化機能の評価結果の比較というところで、佐賀県の海域の値が出ておりますけれども、ここの海域につきましては、私もちょっと触れましたけれども、現在の干潟の状況をたぶん正確にあらわしているんだと思うんです。今の、この干潟の浄化機能ですね。例えば、ここの場所というのは、先ほど言いましたように、アゲマキにしてもいなくなっているんですよね。その辺の今のこの評価をもって、43ページに書いてありますけれども、かつての諫早湾というか、昭和63年のいわゆるベントスをモデルとした浄化機能をシミュレーションされておりますが、これは、ちょっと無理があるのではないかなと思うんです。

○富田農村振興局農村環境保全室長 今のご質問というか、ご指摘ですが、確かに現在の干潟の状況を評価したということであって、それが、過去と比較してどうなのかという、とりあえず、現在類似干潟を設定したというのは、さまざまな現地の水質データとか、データでモデルをつくるために選定したということで、それを諫早干潟で適応するに当たっては、そこのデータではなくてというか、基本のモデルの構成は一緒なんですが、それに使うパラメーターというか、貝類とかそういうものは、あわせてハイガイの濾水速度とかいろいろ調べた上で、過去の現地で観測したデータ、先生方にいろいろお願いして昔やったデータがありますので、そのデータを入れてモデルを回したということで考えております。

○須藤委員長 それでは、たくさんありますね。ご意見で手の挙がった小松先生、清野先生の順番に参りますので、すみません、要領よく伝わるようにお願いいたします。

○小松委員 短期開門調査についてお聞きしたいんですが、この結論として、潮流への影響は見られないとか潮位への影響は見られないということですが、開門そのものが水位をマイナス1メートルから1.2メートルにとどめておいて、海水が自由に入ったり出たりしてないわけですよね。そういう状態で、何で水位への影響がないというのか、潮流への影響がないというのか。これはもう、科学者の目から見れば全くおかしな話です。まずその点から。

○須藤委員長 順番にどうぞ。ありましたら全部おっしゃっていただいた方がよろしいと思いますので。

○小松委員 締め切り堤からの総排水量が1億1,000万トンということですが、諫早湾の締め切りがなかったら、あそこに大体1億トンの海水が出たり入ったりするわけです。だから半潮汐周期の6時間で1億トン出たり入ったりするわけです。それがこの短期開門調査のときに総排水量で1億1,000万トン。ですから、もう全然話にならないような水の入れかわりだったわけで、潮位とか潮流が変わらないなんていうのは全くいえないということが1つ。
 それから、モデルですけれども、潮位とか水位で主に言われていましたけれども、潮位、水位は合わせやすいんです。というのは、水面というのは重力の加速度gで決まってきます。重力gというのはすごく大きいですから、これは非常に合わせやすいんです。  問題はやっぱり流動なんです。モデル計算で、締め切りの影響は諫早湾周辺海域、諫早湾の中かその周辺海域のみにとどまっているという話だったんですが、これも実際おかしな話で、先ほど私言いましたように、長洲-多比良ラインより上で、締め切っている面積が5%なんですよね。ということは、出入りする水の量が約1億トン、少なくなっているということなんです。ですから、このモデルで計算したときに、長洲-多比良ラインで総流量を計算して、締め切り堤がある場合とない場合で、約1億トンの流量の差が本当にあるのかどうか、それをまず検証してからでないと、潮流に差がないなんていうことは全くいえないということになります。
 それから、今の水質モデルで、窒素等は高くなっていない。締め切っても高くなっていないという話だったんですが、これも長期的な話で、私さっき言いましたように、短期的な話が非常に重要なので、短期的な話をお願いします。
 いずれにしても、この短期開門調査についても、それから、先ほどの中・長期開門調査に対する答申についても、非常に大事なことなんです。はっきり言って、多くの研究者が非常に心配している。将来に責任が持てないと言って心配しているわけです。ですから、さっき清野先生が言われたように、ぜひ、公開討論の場をお願いしたい。そこで大いに議論をして、専門家が集まって大いに議論をして、それで、いやこれでいいではないかという形になれば、それはもうみんなの責任として、みんなで責任をとる。今のままだと、一体だれが責任を持つんだと、将来に対して。それが非常に心配です。

○須藤委員長 ありがとうございました。
 ちょっとお答え、多分ほかの先生とも類似のご意見が出てくると思いますので、ちょっと伺ってみます。
 それでは、清野先生。

○清野委員 先ほど国調費のモデルについてはさまざまな課題を申し上げまして、それについては、滝川先生が非常に責任感を持って、そういった議論をしてくださるということで、非常に、私、明るい見通しが出たと思います。
 それで、それについて、今後、いろいろな時間とコストに限りがある中でつくられたモデルのどこが評価し得て、どこが不十分かというのを、この委員会、あるいはもうちょっと別の場で議論が出てきたときに、この農政局さんの方の委員会でもう一度審議してくださるんでしょうかということが1つの質問です。
 それと、そこの前提が十分伝わっていないと、行政経験豊富な方という人にきちんと海の科学が伝わるかが心配です。牛乳とか、休暇村とか、お肉とか、そういうところのご専門の方に海のことをきちんとわかっていただくためには、そこはやはり海の調査というものを、もう一度海の学者としてもきちんと申し上げたいということがあります。
 行政の専門家の委員会というのは非常に私は不思議な委員会だと思うので、ぜひ、ここの点だけを今日お答えをいただきたいんですけれども、科学者のやる委員会は、基本的には、でき得る限り、八代海の委員会のときに国土交通省が説明されたときに、委員長の弘田先生が同席されました。今回は、残念ながら、モデルについてさっき滝川先生が言ってくださいましたけれども、この場に塚原先生がいていただいて、こういう議論を受けとめていただいてもいいと思います。そして、専門委員会の委員長さんは、それだけの責任があると思います。
 今後、そういった形で、行政の方が、行政経験が豊富な方の判断というのは、科学者が言っている処方と、それから社会的にそれを認めるかどうかというのは別だという意味での判断をされるということも含めての専門だと思って、科学的な内容を審議される方々ではないと思っていますので、そのあたりの、この2つの行政の専門家という人の委員会と科学者の委員会というのがどういうふうに議論を分けているのかというのを、もう一度ちょっとその部分をクリアに、短くて結構ですが説明してください。

○須藤委員長 それは、今、後でお答えいただけますね。まだ、1人、2人ちょっと手が挙がっていますので、ちょっと……。
 それでは、今の点で先に伺いましょう。最後の質問、先生の、科学者と行政の。

○清野委員 行政というのも専門なんですよね。今回ね。
 行政というものの専門でそういう経験がある方の委員会というのと、学識で学者の専門というので、行政として専門というのはどういう専門なんですか。

○中野農村振興局経営体育成基盤整備推進室長 ちょっと質問の趣旨を取り違えているかもしれませんけれども、行政的にいろいろ今まで判断をされたと。したがって、科学的な知見以外に行政として当然見るべき問題がございますね。関係者に理解を求める必要があるとか。それから、いろいろな類似の事例で、例えばある事業があって、そのときの調査を実施するかしないかという予算等も関わってきますので、そういうときに、どういう部分でどういう論点が必要かというようなことで、先ほど行政的な経験のある方を委員にし、プラス学識経験者の専門委員会をつくったというのが、この中・長期検討会議の委員構成の割り振りの考え方です。

○須藤委員長 よろしいですか。  どうぞ。

○清野委員 私は、科学的な結論と行政判断は別なことというのは、過去もあったし、これからもあり得ると思うので、ぜひ、農水省さんにおかれまして、それを混同しないで、分けて議論していただくようにお願いしたいと思っています。
 学識の部分は学識の方の委員長さんが責任を持って、ある意味でどういうふうにこのリクエストについて答えてくださるかというのは、お考えいただくということでお願いしたいと思います。

○須藤委員長 よろしいですか。何か今混同しているのではないかということで、意味がわからないとか言われるんですけれども、清野先生の……。

○中野農村振興局経営体育成基盤整備推進室長 この中・長期検討会議の方は、先ほども申しましたように論点を、我々が判断するに当たっての論点を整理したというための検討会議を設けさせていただいたんだということと、先ほどご説明しましたこちらの方は、我々が行政として主体的にやっていますので、ここは、我々がいろんな技術的なことについてレポートをまとめるのにアドバイスをいただくためにつくったということで、ちょっとこのレポートの性格が、これも1つの責任ということで言いますと、我々が今度判断するための材料のレポートがこの中・長期の方の論点整理になる。こちらの方は、いろいろな調査の結果を我々がまとめるに当たってアドバイスをいただくと、指導をいただいたというための委員会として2つありますというふうに含めてお答えしたかと思うんです。

○須藤委員長 今の清野先生のご理解は、6-2の方の二重構造ですよね。そこを指摘しているんですよね。そこはどうしてどういうふうに分けられたんですかとか、どういう意味があるんですかとか、6-1はそれでよろしいと思います。6-2についての、要するに二重構造と言ったらいけないのかもしれませんが、そういうことになっているのはいかがですかという、そういう意味です。

○中野農村振興局経営体育成基盤整備推進室長 先ほどの答えの繰り返しになりますけれども、基本的には、やっぱり技術的なこと以外に行政的なご判断の材料もお持ちの方に入っていただくということでこういう形にしたということです。

○須藤委員長 それで、清野先生は、それはそれでいいんだけれども、その2つを混同しないできちんと行政的にというか、そういう結論と科学的なところは、一応分けて議論していってほしい、こういう意味ですよね、清野先生の結論は。お願いということでよろしいですね。ですから、私もこれは委員長としては、ここで出た意見というのは尊重したいと思うので、農村振興局の皆さんにも、ほかの先生のもそうですけれども、ぜひ受けとめていただきたい、こういうことです。
 そのほかまだ、1つ、2つあるんでしょうか。
 本城先生。

○本城委員 今日、たくさんのデータが開門調査の検討会議で得られて、そして解析されたことはわかりましたが、それらのデータを使って、さらに私たちがまだ解析してみたいようなものが、あると思うんですね。それで、先ほど小松先生のおっしゃった会議を持つことも1つでしょうけれども、今回とられたデータを使って別の側面から解析をするチャンスを持っていただけるでしょうか。

○須藤委員長 これもお願いですよね。よろしいですか。

○富田農村振興局農村環境保全室長 データの公表につきましては、我々も当然考えておりまして、特に貧酸素のデータとか、ああいうものは非常に恐らく精度の高いデータで、我々も磯部先生と一緒に論文を出して、その中にも書いたんですが、欲しい方には差し上げますということで、デジタルデータで差し上げますということを書いております。

○本城委員 貧酸素だけではなくて流れの問題とか、内側の池から流れてくる水はどういうふうに動いているのかとか、それから、それが海水と混合し始めるとどんな挙動を起こすのかなど、SSとのかかわりで非常に関心を持っているんです。
 モデルだと細粒化が湾口の一部で生じるような結果になっています。しかし、それが実際はある程度の塩分を有する海水と混ざればそこへと落ちていくことが科学的にわかっているわけで、あんなところだけに集まるようには思わないんです。もっと、もう少し違った方向からの解析もさせていただきたい。それは一例ですけれども。

○須藤委員長 もう1つぐらいいかがですか。よろしいですか。
 たくさん意見をいただいたんですが、非常に貴重な意見でありますので、これは農村振興局の方に十分ご受け止めていただいて、特に最初の方の小松先生のご意見については、ここではお答えいただかなかったんですが、影響がないということ自身は、それだけのほんのわずかなところで影響がないのは当たり前だと言っていいかどうかわからないけれども、そういう結果をして、あの潮受堤防をつくったことが影響がないというような結論ではないのではないかというようなご意見でございましたので。

○富田農村振興局農村環境保全室長 そこだけちょっと訂正させてください。今回の短期開門調査は、そういう趣旨ではやっていません。要するに堤防の影響を調べるというのは基本的にはシミュレーションでやっています。というのは、結局は排水門から出し入れしても、結局堤防がない状況を再現するということはないわけですよね。まず、流域の防災機能を当然維持しながらやるというところで、選択肢として20センチメートルでやったと。その結果、影響がほとんど出なかったよと。これはもう、逆に言えば当然の話で、そこをフォローするために国調費のモデルを使って、感度解析で影響を調べたという、そういうロジックですので、単に今回の短期開門で外に影響が出なかったから、潮受堤防の影響はないんだなんというロジックで我々は主張しているつもりはありません。

○須藤委員長 わかりました。
 先ほどのご意見、先ほどの清野先生も、小松先生も、本城先生もそうなんですけれども、この会議が適切かどうかはともかくとして、もう少し、特にご疑問がある方については、行政のあるいは委員会の委員長、あるいは副委員長、そういう方々とディスカッションをしていただきたいというようなお願いもございますので、これはここですぐお答えできることではないと思いますが、やはりお願いでもございましたので、その辺は受けとめていただいて、十分ご相談をいただきたい。どういうディスカッションかはともかくとして、それは、この場ではそういうご発言があったので、ぜひご考慮いただきたいというふうに思います。よろしいですか。

○中野農村振興局経営体育成基盤整備推進室長 農村振興局として、今日の評価委員会でいただいた議論を十分受けとめて帰りたいと思いますので、よろしくお願いします。

○須藤委員長 当然、これは、先ほどの清野先生が言われるように、科学技術だけの問題ではなくて、社会的状況だとかその背景だとか、それからいろいろな調整だとか、十分それは皆さん承知しているわけですね。そういうこととはきちんと分けた形で議論できるのであれば議論しなければなりません。こう思いますので、ここは一応科学技術の場であるということでもあるし、それは考慮するのは、社会的背景の考慮はするんだけれども、それは何となく伺っていると一緒になっているような気もしないでもないんです。そこが多分、両先生のご指摘だと思いますので、それは十分配慮して、次の会議の場にはディスカッションで臨んでいただきたい。
 どうもありがとうございました。
 それでは、最後、遅くなって申しわけありません。
 では、林野庁。
 福岡県、すみません。何か時間の都合があるので。あまり時間が十分ではございませんけれども、申しわけございません、私の司会の不手際で、あと15分か20分かかると思います。すみませんお許しください。
 ではお願いします。

○筑紫福岡県水産海洋センター有明海研究所専門研究員 福岡県有明海研究所の筑紫です。2001年から2003年にかけての3年間で貧酸素水塊の調査を行いましたので、報告いたします。
 目的ですけれども、99年度から沖合のタイラギがとれなくなりまして、2000年に確認された夏場の大量斃死以降、沖合の潜水器漁場での操業ができなくなっております。しかし、今年度、2003年度夏場に大量斃死が確認されましたけれども、一部の漁場で漁獲対象の貝が確認されまして、現在、5年ぶりに操業が行われております。
 この大量斃死の原因の1つと考えられます貧酸素水塊の発生状況を把握する目的で調査を行っております。
 方法ですけれども、2種類の調査を行っております。
 1つは、連続測定です。
 調査期間は、5、6月から9月ぐらいまでの間。
 調査点は、福岡県有明海地先で、2001年は5点ですけれども、そのうち1点は、水産庁の行政特研の予算で行っております。
 2002年、2003年は、その5点のうちの1点で調査を行っております。
 もう1つの調査は、携帯式の測定機器による鉛直分布の測定です。
 原則として、18点で小潮の満潮時、前後2時間以内に表層から海底上50センチメートルの間の測定を行っております。
 これは連続測定装置の設置状況ですけれども、ちょっと省略いたします。
 調査地点の図です。
 連続測定装置はこの黒丸で示しています5点に設置しております。
 それで、2002年と2003年は、そのうち、このSt.2でやっております。
 携帯型の調査機器によります鉛直分布調査は、この赤色の○で示した18点で行っておりまして、それ以外に必要に応じて、この青色の○で示した調査点で必要に応じて適宜調査を行っております。
 まず、2001年の結果からご説明いたします。
 上に深度の変化、下に酸素飽和度の推移を示しております。黒丸で示している部分は、機械の不調や泥詰まりで欠測している部分です。これは、6月の結果ですけれども、6月の下旬から徐々に酸素飽和度が低下しまして、7月になりますと、全体的に60%以下まで低下しまして、40%以下の貧酸素が7月中旬と7月下旬にかけて観測されております。
 同様に8月の結果です。
 8月の中旬に、40%以下の貧酸素が確認されておりますけれども、その次の、8月下旬の小潮では、酸素飽和度は低下しましたが、貧酸素になることはなく、その後、飽和度は上昇し、以後貧酸素は起きておりません。
 次に、短期的な1日での経過を、推移を見ています。
 こちらに青い線で酸素飽和度の推移、赤い線でそのときの潮位の推移を重ねて示しております。
 短期的な1日の推移としましては、干潮時にここまでは低下するという傾向を示しております。
 これは、携帯型の調査機器によりまして調査した結果です。
 これは2001年の海底上50センチメートルの酸素濃度の水平分布を示しております。
 これは日付が抜けておりますけれども、左側が6月の結果で、右側が7月下旬の結果です。
 6月中旬のこちらの結果なんですけれども、そのときは、低いところで80%以下という状況でした。この色は、赤い方が酸素飽和度が低く、青に行くにしたがって飽和度が高い。100%以上は明るいブルーで示しております。
 これは7月26日の調査結果なんですけれども、そのときは、南西部を中心に40%以下の貧酸素の海域が広く拡がっております。
 これも日付が抜けていますけれども、左側が8月上旬の結果、右側が8月下旬の結果です。8月上旬は低いところで60%以下という海域が見られますけれども、8月下旬になりますとすべての海域で100%以上となっております。
 次に年が変わりまして、今度は2002年の酸素飽和度の推移を、調査期間中の飽和度の推移をすべて出しております。2002年につきましても、6月下旬から徐々に低下しましたが、この年に貧酸素が確認されましたのは、8月の上旬の3日間のみでした。それ以降は、期間中を通して貧酸素が確認されることはありませんでした。
 これは先ほど、左側が2001年の貧酸素が出たときの底質の酸素飽和度の分布状況、右側が同時期の2002年の底質の酸素飽和度の分布状況です。2001年の7月には広い範囲で貧酸素が確認されていますけれども、同じ時期の翌年の2002年には、飽和度が低いところは見られませんでした。
 2002年に貧酸素が少なかった理由ですけれども、まず理由は2つ考えられると考えております。1つ目の理由は降雨です。2001年は、例年に比べまして非常に夏場の降水が多い年でした。それに対しまして、2002年は、水不足になるほど降雨量が少ない年でした。
 これは、各月の調査時の海水密度の鉛直分布を示しております。
 横軸に密度、縦軸に水深が示してあります。左側の2001年のグラフですけれども、この緑の線で示している線は、貧酸素が確認されたときの鉛直分布であります。このように、密度躍層が顕著にあらわれております。
 かわって、これは2002年の結果ですけれども、この水温躍層が顕著に見えるピンクの線は6月6日の調査時のデータでして、それ以降の7月、8月はほとんど躍層は見られておりません。
 このように降水量が少なく、成層の発達が顕著でなかったため、貧酸素が少なかったものと考えております。
 次に、貧酸素が少なかったもう1つの理由ですけれども、上に飽和度の推移、下に平均風速を示しております。平均風速のデータは、気象庁の大牟田の観測所のデータです。
 2002年は、酸素飽和度が低下します小潮から中潮にかけて、必ずと言っていいほど平均風速3メートル以上の風が吹いております。
 その中で、代表的な2つのケースについてご説明します。
 1つ目の、8月の上旬ケースですけれども、このときは、8月3日から5日にかけて飽和度が低下しております。
このときに、風速3メートル以上の南側からの風が吹きまして、それによって速やかに酸素飽和度は上昇しております。
 福岡県地先の海域は、北側と東側を陸に囲まれておりますので、風向は重要な要素でして、南からの風によって海況が大きく影響されます。
 次に、もう1つの8月中旬のケースですけれども、このときは、8月17日から19日にかけて風速3メートル以上の風が吹いていますけれども、このときは北からの風でありますので、海がしけることもなく、先ほどのような顕著な飽和度の上昇は見られておりません。
 次に、今年度、2003年の同様の酸素飽和度の、期間を通じての飽和度の推移のグラフです。
 今年度は、6月下旬から同様に酸素飽和度は若干低下しましたけれども、貧酸素が確認されましたのは、前の2年と比べて遅く、8月の下旬と9月の上旬に観測されたのみでした。
 今年度、2003年の貧酸素が遅く起きた理由ですけれども、これは先ほどの気象庁の大牟田観測所のデータ、同様のものですけれども、左が年ごとの降水量、右が観測期間中の気温を示しております。左側のグラフですけれども、黒い線が平年値ですが、2003年は平年並みに降水量はありましたけれども、気温を見てみますと、前の2年で貧酸素が発生しました7月、8月には、かなり気温が低く、冷夏でした。8月の下旬になってやっと急激に気温が上がりまして、この影響で遅れて貧酸素が発生したものと考えております。
 最後にまとめですけれども、2001年には、酸素飽和度の減少が6月下旬から8月中旬まで見られまして、すべての調査点で貧酸素水塊の発生が確認されております。原因としましては、降水量が多かったことと、気温が高かったということが考えられました。
 翌年の2002年は、前年に比較しまして、貧酸素水塊の発生が少ないという結果になりました。原因としまして、水不足になるほどの小雨と、それと風の影響が考えられました。
 今年度の2003年は、前2年よりも遅く、8月下旬から9月上旬に貧酸素が確認されております。原因としましては、冷夏で8月下旬になって急激に気温が上がったということが考えられました。
 今後も、貧酸素等の環境の観測を続けながら、タイラギの大量斃死要因につきまして、関係県と協力しながら調査研究を行いたいと考えております。
 以上です。

○須藤委員長 どうも発表ありがとうございました。
 どうぞ、ご質問ございましたら。ご意見、ご質問。
 本城先生。

○本城委員 1つだけ教えてください。
 2002年の貧酸素が南の風で海がしけて、貧酸素が解消したというようなご説明いただいたんですけれども、そういう説明の理解でよろしかったですか。

○筑紫福岡県水産海洋センター有明海研究所専門研究員 貧酸素というよりも、まとまった貧酸素ができにくい環境、貧酸素ではなくて、貧酸素ではないんですけれども、低下した場合も風が吹いて、かなり飽和度が極端に上昇したということです。

○本城委員 確認ですけれども、この測定しているところの水深は10メートルぐらいですか。

○筑紫福岡県水産海洋センター有明海研究所専門研究員 そうですね。ちょっと浅目なんですけれども、7、8から10メートル。

○本城委員 風が吹いても、特に波が砕けたというようなことはなかったと。

○筑紫福岡県水産海洋センター有明海研究所海洋研究員 そこは風の影響を受けにくいところでして、南の風が吹くとかなり影響があるというような状況です。南の強い風が吹くと。

○須藤委員長 よろしゅうございますか。
 それでは、どうもありがとうございました。
 これで福岡県さんの発表は終了させていただいて、最後にご発表の方は林野庁で。お願いします。

○角林野庁研究普及課課長補佐 林野庁でございます。
 ご案内のとおり、林野庁といたしましては森林・林業を担当しておりまして、研究の目的につきましても直接海というものは担当はしていないわけでございますけれども、渓流水の関係で研究を行っているものがございましたので、それを資料7として4課題提出させていただいております。
 説明につきましては、資料7の表紙に1枚概要をつけておりますので、それによりご説明いたします。
 まず、1つ目でございますけれども、「流域圏における水循環・農林水産生態系の自然共生型管理技術の開発」というプロジェクトがございまして、平成14年度から始まっているわけでございますけれども、この中の1つの課題、森林流域、いわゆる渓流において、そこの水質などがどういうふうになっているか、その成分はどうであるかという研究を森林総合研究所が参画して実施しているところでございます。
 2つ目でございますけれども、「湖沼での有機物の動態解析手法の開発に関する研究」で、これは平成7年から9年度まで琵琶湖北湖につきまして、これも同じく森林からの有機物の流出量と渓流の関係について、森林総合研究所が調査研究を行いまして、報告書を出しているところでございます。
 3点目でございますけれども、「水土保全機能強化総合モデル事業」でございます。概要に「複層林造成」と書いておりますが、これは、森の育て方といたしまして、木を一度にすべて切ってしまうということではなくて、太い木を切って抜き切りしながら育てていくという手法でございますが、こういう手法をとった場合に、木の生長量、あるいはそこの森林から出てくる渓流の水質、流量等についてデータ収集を行っているところでございます。
 木の生長は非常に長期間を要するものですから、昭和58年度から20年間以上にわたりまして、現在もデータ収集等を行っているところでございます。
 最後、4点目でございますけれども、「森林が河口域の水産資源に及ぼす影響の評価」ということでございまして、北海道の林業試験場が平成12年度から14年度まで、渓流水の成分というものに着目しまして、沿岸域の森林整備の方策を確立するということを内容といたしまして実施しております。
 以上、森林・林業関係で行われました森と海の関わりに関する研究等、ちょっと幅広目にとっておりますけれども、概要は以上でございます。

○須藤委員長 どうも要領よくご説明いただきましてありがとうございました。
 何かご質問ございますでしょうか。よろしゅうございますか。
 それでは、時間も参っていますので、それでは、どうもありがとうございました。
 以上で、これで4機関からのご説明をいただきました。
 次回の評価委員会におきましても、引き続きほかの調査機関からのご報告を受けたいと考えております。報告を予定されている主務省、関係県の皆様には準備をお願いいたします。
 それから、先ほど水産庁とそれから農村振興局のご説明については、かなり、ご質問も多く、課題もあるというご説明いただいておりますし、その問題については、その時点まででまとめられるものであれば、適宜その時点でのおまとめについて、あるいは報告をしていただきたいというふうに考えておりますので、この問題についても、当委員会に限らず議論をさらに活発にさせていたただければと考えております。
 本日は、実はもう1つ議題がございまして、「その他」がございます。
 これは、荒牧先生にご報告いただくことになっていたんですが、ちょっと時間の都合でお帰りになりました。では事務局の方からどうぞ。

○坂川環境省閉鎖性海域対策室長 それでは、最後何点か、ご連絡事項を含めましてご説明をさせていただきます。
 まず最初に、今委員長からご紹介がありました件でありますが、小委員会を別途動かしておりまして、小委員会の委員の先生方には、大学等が実施した調査研究に関する文献をお読みいただいているわけでございまして、その中からこの評価委員会での議論に参考となるものをご選定をいただいていると、そういう作業を行っております。
 この小委員会は、2月と3月にそれぞれ1回ずつ開催を予定しておりまして、次回の評価委員会におきましてその作業結果をご報告していただくと、こういうことを考えておりますので、よろしくお願いをいたします。
 それから、お手元に資料の9というのがございますが、これは有明海・八代海に関連する基礎的データ集を作成するということになっております。本日は、その作業状況ということでありまして、まだ途中でございますので、ほとんどご説明は省略をさせていただきます。現在、どこにどういうデータがあるのかというところを情報収集してとりまとめ、またその中から重要な情報につきましては、図表として整理をするという作業を行っていると、こういう状況でございまして、これは、もう少し作業が進みましてから、また改めてご説明をさせていただきたいと思います。  それから、たった今事務局の方からお配りをいたしましたのは、水産庁さんからの方の情報提供でございまして、「豊かな東京湾の再生を目指して」ということでご検討されるということでありまして、こういったことも有明海・八代海の今後の環境・漁業を考える上で、重要な1つの参考資料となると思われますので、ご参考までに配付をさせていただいたものでございます。
 それから、続きまして、次回の評価委員会の予定をご説明をさせていただきますが、よろしいでしょうか。

○須藤委員長 はい。

○坂川環境省閉鎖性海域対策室長 次回は、既に先生方に事務的にご連絡はさせていただいておりますが、3月22日月曜日の13時半から、本日と同じこの会議室で開催することを予定しておりますので、引き続きよろしくお願いをいたします。
 以上でございます。

○須藤委員長 ありがとうございました。
 私からコメントするのも何ですが、今、菊池先生がお帰りになるときに「5時半と言っておいてくれれば、私は5時半までいるように予定してきたんだけれども」と、こうおっしゃいましたので、ちょっと課題の多いとき、このようにご説明が多いときには、4時半ということではなくて、5時というご通知とか、それはまた別途ご相談いたしますが、若干そういうゆとりを持っておいてください。そうしないと、重要な議題のときにすっ飛ばさなくてはいけないということもありますので。それからお帰りになられる飛行機の皆さんのご都合があるので、申しわけないんですけれども、ちょっと遅目の時間まで設定を、4時半で終わると思っても、まだ30分ぐらいは。早く終わる分には皆さんそんなにおしかりにならないと思いますので、そういうことで、室長にお願いしておきます。

○坂川環境省閉鎖性海域対策室長 わかりました。承知いたしました。

○須藤委員長 それではどうぞ、今のご説明でよろしゅうございますか。
 どうぞ、山室先生。

○山室委員 もともとこれが出てきたのは確か第2回のときに、いろいろな調査がばらばらに行われたと。

○須藤委員長 はい、そうです。

○山室委員 だから、マスタープランのようなもの、どういったものにこういった優先順位をつけるのかって、先ほどの本城先生のご発言もこういう農水省の調査があって、ではその補足はどうするのかということに関係していると思うんですが、そのマスタープランは第2回でやり、この委員会でやりましょうということになって、第3回を6月にやったときに、もう7月には既に計画は出ているから、春にはまとめないとだめですねという話になったと思うんですが、そうしますと次の3月22日で決めるマスタープランはこの委員会でつくるということになるんでしょうか。つまり平成17年度の調査に向けてのマスタープランというのは、もう3月の時点でつくってないと間に合わないということに第3回でなったと思うんですが、その割には、資料9の段階でまだ調査のあれがまとまっていないのは、ちょっと若干遅れぎみなのかなということで質問させていただきました。

○須藤委員長 ありがとうございます。
 それでは、どうぞ。

○坂川環境省閉鎖性海域対策室長 すみません。資料9につきましては、収集すべき資料が非常に多いということで少し遅れておりますが、次回までにはちゃんとした形でご用意をさせていただきたいと思います。
 それから、平成16年度、来年度の調査の計画につきましても……。

○山室委員 ではなくて……。

○須藤委員長 マスタープランでしょう。

○山室委員 平成16年度はもう間に合わないということは第3回でわかったんです。平成16年度予算の要求がもう7月にはわかっているということで、ではもう仕方がない。今度17年度を見越してマスタープランをつくるということになっていって、議事録を見るとそうなっているんですが、その辺はいかがでしょうか。

○須藤委員長 それでは、それは、吉田部長。いいです、どうぞお答えください。今の問題については、吉田部長、どうぞ。

○坂川環境省閉鎖性海域対策室長 すみません。まず平成16年度からご説明いたします。
 平成16年度の調査計画につきましては、現在各省、各県で検討していますので、これについては、次回の3月の評価委員会でご説明することを考えています。
 それから、その後の平成17年度に関しましては、確かに予算要求が固まってしまってからではなかなか難しいという、そういうご意見が過去にございましたので、それについては、なるべく早くちゃんとご説明できるように、各省、各県に相談をしていきたいと思います。
 予算説明は、それは必ずしも3月次回の委員会でなくても、まだ間に合うかと思いますので、次回については、平成16年度の調査計画についてご説明をさせていただて、その後、なるべく早く平成17年度の調査計画をご説明させていただくという、こういうことにさせていただければと思います。

○山室委員 平成17年度の計画を説明していただく前に、今までにこういう調査があったからこういうところをやるべきではないかと、先にマスタープランをつくるのが順番ではないかというふうに私は思ったんですけれども。

○須藤委員長 どうぞ。

○坂川環境省閉鎖性海域対策室長 今後、国と県がどのような調査を行うべきかということに関しましては、昨年一度この委員会でご検討いただきまして、それについては、もうご意見をまとめていただいたと考えております。
 それに従って、平成16年度、17年度どういうことをやっていくかということをこれから考えていくということになるのかなと考えていたわけです。

○山室委員 これは第何回でもうまとまったということにされたんですか。

○坂川環境省閉鎖性海域対策室長 第3回で。

○須藤委員長 まとまったというか、例えば優劣とか、そういうことは言っていませんよね、まだ。一覧表にしたというか、そういう……。
 では、吉田部長どうぞ。

○吉田環境省水環境部長 同じことを繰り返して申しわけないですが、確かに第3回で、分野別にどういう調査計画を進めていくべきかという項目整理をさせていただいたと思います。それについて先生方に一応ご意見は伺いました。ただそのときには、それ以上、具体化の話については踏み込めない段階、つまり、先生方におかれても、具体化の話というのは、これから平成15年度の事業を進めながらそのアウトプットをお聞きいただきながら、平成16年度、17年度と進んでいきますから、基本的にそこの場でご承認いただいた調査計画というのは、枠組みとしては特段のご依存はなかったというふうに私ども考えています。
 問題は、これから具体的にどの段階でブレークダウンしていくかということだと思います。とりあえず、先ほど室長が申し上げましたように、平成16年度につきましては、今これから国会で予算審議もなされますが、それと並行して次回の会議でもあらかじめ政府案をご紹介申し上げて、有用なご意見は賜りたいと思っています。  それを受けて、まだ各省の動きというのはさらに具体的にご紹介しますと、次の年度に入りまして、夏ぐらいまでに概算要求が8月末になされますので、そのプロセスにおいて、適宜設置の後の有用なご意見、ご指摘を賜りながら、できるだけ反映をさせていくという段取りになろうかと思います。
 まずは、平成16年度の予算について、予算といいますか、金額の問題より、サブスタンス、中身の問題としてご紹介申し上げたいと思います。

○須藤委員長 どの研究機関がどういうお仕事をなさるかということですよね、次回。そういう整理ですよね。そういう意味です。
 どうぞ。

○山室委員 私、ちょっと議事録のコピー持ってきているんですけれども、だから、平成16年度についてはまあ仕方がないということを福岡先生がご発言になって、次年度からは、間違いなくこういうのが全体的にマスタープランに反映したものをできるよう、こちらの意見を言えるようにしましょうねと、委員長が発言されているんだと思うんです。

○須藤委員長 はい、記憶あります。

○山室委員 それと今の吉田部長とのご説明とのあれは一致しているんでしょうか。

○吉田環境省水環境部長 私そのときに申し上げました、平成16年度……それは清野先生がおっしゃったんでしょうか、あるいは山室先生がおっしゃったんでしょうか。
 平成16年度の実施段階でまた工夫ができることもあろうじゃないですかというご指摘も先生方からございました。私どもとしても、確かに予算上の項目は、それはそれとして、それを具体的にどうやって実施するかについてはまた工夫のしようもあろうと。それは適宜ご相談申し上げたいと思っておりました。
 それから、平成17年度については、それは要求初期の段階からできるだけ先生方のご意見が反映できるよう努力をしていくということは申し上げた記憶はございます。ただ、あくまでも各省のシーリングがあり、予算要求上の厳しい条件がございますから、すべて先生方のご指摘、100%かなうかどうかということは私どももだれも約束はできませんけれども、むしろ専門的な観点からのご指摘については、その趣旨を意を呈して、次年度以降の予算要求をし、あるいは実施段階で工夫をし、あるいはたしかもう1つ申し上げたと思いますが、環境省としてもデータの取りまとめとか、あるいは集計についてはそれなりの予算を確保いたしますという努力決意を申し上げたと思います。それもある程度確保されてくると思いますので、それも含めて平成16年度の予算の執行のあり方については、またご相談をさせていただきたいと思いますし、平成17年度の予算要求についても、先ほど申し上げたとおり、最大限努力をさせていただきたいと思います。

○須藤委員長 どうぞ。

○山室委員 予算要求を各省こうしろというものを出すのがマスタープランではなくて、各省が要求をする、こういう研究が必要だということの指針として、全体的にこういう調査はここが抜けているみたいな、全体的な今までの調査構造を、各省の予算要求の前に、今研究者として出しておくという意味のマスタープランだったと思うんですが。

○須藤委員長 そうです。それはやっているんですね。

○吉田環境省水環境部長 重ねて申し上げますが、それについては、さっき申し上げた項目として整理をし、先生方にお諮りをした記憶がございます。
 それに対して先生方、大方これでよろしいのでありましょうという話で私どもお伺いをいたしております。ただプライオリティとか、そういうことについての議論はしていませんよ。以前、十数項目あったときに。

○山室委員 A4の紙ですね。委員の皆さん、これがあのとき議論したマスタープランだと理解されていたんですか。

○須藤委員長 必要な調査研究の重要な項目であると。マスタープランという、言葉のあれは問題ですけれども、そうは……。

○山室委員 言っていないですよね。

○須藤委員長 ええ。必要な項目である。それは抜けは多分あまりないでしょうという、そういう……。

○山室委員 違うのではないかという、私たちがマスタープランと言って準備したいと言っていたのとちょっと違うのではないかと、私は判断しますけれども。

○須藤委員長 では、坂川室長どうぞ。

○坂川環境省閉鎖性海域対策室長 当時のことを思い浮かべてみますと、第2回のときに、たしかマスタープランをつくってはいかがかというご指摘がございまして、それを踏まえて第3回のときに出そうとして、これはマスタープランという言葉は使いませんでしたけれども、まさにその指摘を踏まえて、各省・各県に相談をした上で、第3回のときに、この今ちょっとごらんいただた資料をお出しして、ご意見を伺いするということでありましたので、それで、私どもこれでいいのかと思っていたわけでありますが、ただ、もしこの部分で足りないということがございましたら、またいろいろご意見いただければ検討させていただきたいと思います。

○須藤委員長 もう会議が1時間近く時間超過したので、多分今の議論だと思うんですけれども、もしも抜けているものとか、こういう順序がいいとか、そういうのがあったら、これは別に山室先生に限らないわけですが、ぜひ坂川さんの方にお出しいただけませんか。そのために委員会を22日より前にというのはちょっと無理があると思うし、22日のときには、ほかの項目に行かなくではいけないので、こういうことでということについての報告は、よろしいですかということは伺うけれども、もう1回やり直しのような部分というのは、ちょっと無理があるかなという気はしますので、山室先生、もし、その辺の強いご意見をお持ちでしたら、こうあるべきだというもしご意見があればお出しいただけませけんか。
 この間の項目は一応環境省ではマスタープラン、言葉の問題があるんですけれども、調査研究に必要な重点的な項目というんですか、それとして出してくださっているので、それがマスタープランなのかどうなのかいう点では、少し山室先生との言葉の違いがあるような気もするんですけれども、一応、環境省はそういう理解をしているので、17年度には、だからそれは次の予算要求に生かしていただくことなので、やっぱり問題なのは抜けがあってはいけないですよね、そういう項目で。多分、私もそのときに伺ったと思うんだけれども、先生方からはおおむねこのぐらいあればいいのではなかろうかということで、そう抜けがあるというご指摘はたしかいただかなかったと思います、そのときの議論では。ちょっと委員長整理は、そういう書いてくださった議事録がありませんので、何ですが、そういう形でまとめたと思います。
 まだちょっと続きがありますか。

○山室委員 また議事録をもうちょっと読んで。

○須藤委員長 そうですね。それでもしあったら、どうぞご指摘をください。それでまた、抜けているのは私ももし気がついていない、それは大事だと思いますので、そういう部分については山室先生に限らず、またこういう調査なり、こういう検討が必要だということについてはどうぞお出しくださればいいので、それは当然、私も出してくだされば読ませていただくし、また皆さんと、それは個別になるかもしれませんが、議論させていただくようにいたしますので、この場では、一応、そういうご意見賜りましたので、坂川室長の方もそのように受けとめていただいて、もしあればそういうふうにしていただきたいと思います。
 よろしゅうございますか。
 それでは、もう本当に1時間近く皆さんに引き延ばしをいたしまして大変申しわけございませんですが、これで、本日予定されましたすべての議題は終了いたしました。
 これにて、第7回有明海・八代海総合調査評価委員会を閉会といたします。
 議事進行につきましては、私の不手際で大変長くなってしまいましたが、ご協力いただきましたことをお礼申し上げます。どうもお疲れさまでございました。