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■議事録一覧■

中央環境審議会 自然環境・野生生物合同部会
第1回 生物多様性国家戦略小委員会
議事要旨


1.日時

平成24年3月16日(金)9:00~12:15

2.場所

TKP赤坂ツインタワーカンファレンスセンター7階「ホール7A」

3.出席者(敬称略)

委員長:
武内和彦
委員長代理:
山岸哲
委員:
あん・まくどなるど、大久保尚武、小泉透、櫻井泰憲、下村彰男、白幡洋三郎、白山義久、辻本哲郎、中村太士、宮本旬子、吉田謙太郎、吉田正人、鷲谷いづみ(五十音順)
事務局:
環境省(自然環境局長、大臣官房審議官、自然環境局総務課長、自然ふれあい推進室長、自然環境計画課長、生物多様性地球戦略企画室長、生物多様性施策推進室長、国立公園課長、野生生物課長、鳥獣保護業務室長、外来生物対策室長、生物多様性センター長ほか)
関係省庁:
農林水産省、国土交通省、経済産業省

4.議事要旨

(1)生物多様性国家戦略小委員会における検討の進め方について

環境省から[資料1]に基づき、生物多様性国家戦略の生物多様性条約及び生物多様性基本法における位置づけ、これまでの経緯、今後の検討の進め方、スケジュール等について説明。

<委員意見等>

今後の会議資料として、新戦略計画に基づいて戦略を策定しているEUなどの先行事例について情報提供を行ってほしい。また、生物多様性地域戦略についても策定が進められており、優れたものを全国に広げる観点からも策定済み又は策定中のグッドプラクティスについて紹介してほしい。
国と地域の計画は空間階層に違いがある。国際的視野で取組を進めていく一方で、ローカルという視点も重要。両者をどう関係づけるのか配慮してほしい。

(2)各省施策に関するヒアリング

(2)-1 環境省

環境省より[資料2-1]に基づき説明。

<委員意見等>

生物多様性の主流化が大きな柱になると考えるが、低炭素の問題に比べて生物多様性分野は非主流の認識がある。生物多様性が低炭素の問題とどう関連するのか。持続性の観点から資源確保の中で生物多様性の重要性を捉えるべきであり、各省連携にあたっても、そういった視点の広がりが必要である。
EUでも世論では生物多様性は認識されてないが、取組が成功しているのは指令に基づくトップダウンの仕組みをつくったことによる。EUが力を入れたところには資金も流れ、組織も動く。次期国家戦略では、車の両輪として、ボトムアップの取組に加え、EUにおける指令のようなトップダウンによる仕組みについても書き込んでいくべきである。
一番気になるのは人口減少の問題である。SATOYAMAイニシアティブを発信して日本はこの分野のリーダーとなっているが、その里山で急激に人がいなくなっている。人の撤退や野生生物の問題も絡む中、そのような地域における今後のビジョンを示すことは非常に大変なことである。
エネルギーとの関係も議論する必要があるのではないか。
生物多様性国家戦略に基づいて何かしようとすると、その戦略を担う組織が必要である。特に生物多様性センターの位置づけと役割、今後の活用方法について示してほしい。
「温暖化」という言葉で地球環境の変化を代表させているが、フロンガス、PCB、海洋酸性化等の地球規模の問題が十分表現されていない。温暖化以外の地球環境の変化に関する問題についてもしっかり取り上げてほしい。
海洋に関しては、内閣府海洋政策本部との連携を始め、省庁間で連携を進めてほしい。
森-里-川-海の連環は大切であるが、これまでは流域単位でどう考えるかといった視点が欠けている。戦略的に流域単位での物の見方を考えるべき。地方行政との連携も重要。
我が国の「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)」は1992年に制定され、その後、2002年に策定された新・生物多様性国家戦略では第2の危機、第3の危機が認識されてきた。これらの危機については従来の規制的手法では十分対処できない。イギリス、アメリカ、カナダでの環境スチュワードシップのような奨励的な手法が必要ではないか。種の保存政策においても省庁間の連携が必要である。
IUCN(国際自然保護連合)では、保護地域の目的によってカテゴリーを分けているが、わが国でも保護地域のカテゴリー分けの分析を行った方がよい。また、わが国の海洋保護区の面積は(領海の)約8%とのことだが、どのような目的を持った制度が含まれるのかが不明であり、中身の分析が不十分。
「生物多様性リテラシー(情報を選び活用する能力)」のようなものがないと、生物多様性の価値を認識できない。この点が他の先進国と比べて日本が弱いところ。EUの生物多様性戦略では、ビジョンのところに生物多様性の存在価値を重視することが出てくるが、それがリテラシーである。生態系サービスのように利益を実感できるところから入ることでもよいが、生物多様性に関するリテラシーの向上が必要。そのためには、生物多様性の構成要素に対する国民の認識を高める必要があり、これまでの教育では自然科学、自然史に関するものが欠けていた。
資源としての生物多様性ということが、ますます重要になってくる。人間の生活では自然物を資源として利用しているが、その場合、自然破壊とトレードオフとなる関係が出てくる。資源としての生物多様性への取組を取り上げ、持続可能な利用としている観点をもう一歩深めていくべき。
技術開発は将来の鍵になるものであり、企業が貢献できる分野。それをどういう形で国家戦略に取り込んでいくかが課題。生物資源を保全するためだけではなく、遺伝子や微生物の利用も含め、利用に関わる技術開発の方向性やスタンスについても踏み込んでほしい。
経済活動はあらゆることをグローバルな世界の中で考えざるを得ない。例えば、認証制度やサプライチェーンの問題など、一企業ではどうにもならない問題が多く存在する。グローバルな視点として、どういった視点を捉えていくべきか、道筋について議論を深めていくことが必要。
自然再生事業に関する資料において、自然再生事業の対象地域に関する考え方が整理されているが、現行の自然再生協議会はその対象地域に対応しているのか。また、これ以外の自然再生事業についても把握しているのか。
資料でお示ししたものは自然再生協議会に関するものであるが、これ以外の自然再生に関する取組についても情報は入手しているので、今後紹介していきたい。
文部科学省、外務省に対するヒアリングも実施してほしい。
次回小委員会で実施予定である。
野生生物に関する資料において、野生絶滅の鳥類が1種となっているが、これはトキになるのか。もし、そうであれば、トキを野生絶滅としておいてよいのか。
レッドリストについては、平成24年度に見直すこととしており、現在見直しに向けた議論を進めているところ。トキを野生絶滅としたままでよいか否かについては、IUCN(国際自然保護連合)の基準に照らして判断する必要があるが、まずは野生下でヒナが孵ることが重要な鍵になると考えている。
第2の危機は日本社会、国土政策の問題でもあり、次期国家戦略で大きく取り上げるべき。里地里山は単にボランティアで成立するものではなく、よりメリットのある政策誘導が必要。SATOYAMAイニシアティブは途上国から高く評価されており、提唱した日本から様々なモデルを提示していくべきである。
生態系サービスは人間の目に見える便益、価値であるが、保護地域の指定によって利用が禁止された時に残る価値が存在価値である。そういった見えない価値を見える化していくことが重要である。
現行の生物多様性国家戦略において、生物多様性の危機の部分は分かりやすいが、どう優先順位を付けて保護していくのかが見えにくい。例えば、絶滅危惧種がたくさんいるが、そういった種を1種も絶滅させないよう戦略的に進めていくことが見えるようにしてほしい。
鳥獣被害対策については省庁横断的に取り組むことが大切である。世界中を見ていくと、絶滅危惧種であってもコンフリクトが生じ、問題となっている場合がある。どのように保護していくかは経済だけでなく、倫理の問題でもある。

(2)-2 農林水産省

農林水産省より[資料2-2]に基づき説明。

<委員意見等>

農林水産省の資料内容は非常に意欲的であり、戦略的に取り組もうとしている。是非実現していただきたい。
環境保全型農業への支援が大切。水鳥の生息環境の向上に資する冬期湛水などの取組は国際的にも評価されるものであり、より効果的な取組を農家に求めるべき。
カバークロップ(農作物を栽培しない時期に地表面を覆うために植えられる作物)などは外来生物問題を新たにもたらす可能性があるが、このような取組が奨励された場合、生物多様性の保全と矛盾することになる。日本型に改良する必要はあるが、イギリスのスチュワードシップなども参考にし、生物多様性の保全と矛盾しない、国際的にも主張できるような制度にしていってほしい。
奨励措置についてはイギリスを参考にしている。カバークロップ等については、レンゲなどこれまでに使用されてきた作物などが利用されており、現時点では問題ないと考えているが、注意しながら進めていきたい。
愛知目標の個別目標3に関して、ヨーロッパは有害な奨励措置を廃止することだけを提案したが、日本は奨励措置をプラスになるよう変えていくことを提案したことは非常に評価される。農林水産省の配布資料において、「今後実施する奨励措置についてはこの目標に整合するように努めていく」とあるが、既存措置についてはどうしていくのか。
既存措置を対象としないという意味ではなく、今後は毎年の予算の中で努めていくという意味である。
これまで経済価値評価は代替法で行われてきたが、他の機能とマッチする形で評価できると分かりやすい。MA(ミレニアム生態系評価)も踏まえて評価するとよい。
農地、水田の減少によって、生態系サービスが失われてきたことが分かると良い。潜在的なものを代替法によって評価してきたが、人々の需要を踏まえて評価していくと分かりやすくなる。
新しいものも取り入れ、チャレンジしていきたい。
民有林にも貴重な種が生息等しているが、民有林でも国有林のノウハウが活用できるのではないか。
国有林での取組を、民有林でも応用していきたい。
森林・林業再生プランでは10年後の木材自給率を50%以上にすることを掲げているが、生物多様性に関する議論が薄い。人工林の中でも生物多様性の取組は重要であるが、指標ができていないということは、どういう施業をすれば、どう応答するのかが評価できないからではないか。施業方法の違いによる生物多様性への影響について科学的なデータを取って施業にフィードバックしてほしい。
風倒木が生じた場合に、一斉に伐って、一斉に植えることがあるが、海外では、ある程度風倒木を残した方がよいとされている。レガシー(過去の自然現象の遺物)である生物をどう残していくかについても検討されたい。
風倒木を残すような施業を民間では進めている。施業の中でどう取り入れていくのかは課題であり、研究をしていきたいと考えている。
過去の保護林については、木材生産上の重要性で位置づけられており、生物多様性の観点から指定されていない。遺伝子資源も木材生産にとって重要な種となっていて、生物多様性について重要だからとなっていない。森林調査簿に記載されている生物種は限られている。調査内容に生物多様性の観点も含めてほしい。
森林の生物多様性をどう高めていくか今後も勉強したい。
里海を日本型海洋保護区とするなど、日本として海洋保護区のクライテリアを決めていくのか。地元の人たちは海洋保護区について全く知らない。漁業者が海洋保護区について理解を深めることが重要。どう一般化していくかが省庁をまたいだ課題といえる。
日本型海洋保護区をどのように組み合わせて作っていくのかについては、各省とも連携して検討していきたい。
農林水産省における指標の開発について詳しく教えてもらいたい。指標生物に関する取組は進めてほしい。
これまで経験則の使用だったが、科学的立証には指標が大事だと思う。指標もこれに限らず、もっと広いランドスケープで捉えるものもあると思う。佐渡では、ドジョウを評価種としてHEP(ハビタット評価手続き)により評価した例もある。目的にあわせた指標の活用方法を研究していきたい。
基本的なことをやっていかないと生物多様性の保全は進まない。「生産性と生物多様性が両立した、持続的な農業の発展に貢献」とあるが、これまでの「生産性と自然に資する」といった場合とではどう違うのかが分かっていないと議論ができない。
生産性と生物多様性その他の環境要素はトレードオフの関係となるものもある。様々な要素の相互関係やライフサイクル的な評価方法との関係もあり、長期的課題と捉えている。

(2)-3 国土交通省

国土交通省より[資料2-3]に基づき説明。

<委員意見等>

国交省では海運の視点を盛り込んでほしい。バラスト水など移入種の問題がある。
バラスト水管理条約がまだ発行していないが、昨年秋に外国製機械の使用がスムースにできるよう手続きについて見直たところ。
社会資本重点整備計画において、生物多様性がプログラムの一つという位置づけとなっている点は不満。エコロジカル・ネットワークとして重要な地域を結ぶといった説明があったが、単に都市緑地とか河川とかだけでなく、河川、海岸、港湾、都市など、あらゆる空間のコネクティビティ(連結性)を考えていくべき。エコロジカル・コリドー(回廊)でもいいが、それが一つのプログラムとしての位置づけとなってしまうのであれば、自然環境に関する施策をグリーン・インフラストラクチャーの整備に資するものとして捉え、社会資本重点整備計画に位置づけてもらいたい。
従来の社会資本重点整備計画はそれぞれのインフラごとの整備計画であったが、2003年からは同じ政策目標を実現するための事業については政策のまとまり毎に実施していくこととし、同じ目標を共有する事業のまとまりをプログラムと呼んでいる。従って、プラグラムとの呼称を用いているのみで、方向性は同じである。
都市の生態系については大事だと思うが、生物多様性地域戦略はどれくらいできているのか。また、様々な事業について説明があったが、生物多様性がどのように変化したのかが見えてこない。事業によってどのような影響があったのかを教えてほしい。
緑の基本計画については政令市では策定が進んでおり、最近は何らかの形で生物多様性の視点を入れている。
生物多様性地域戦略については、15道県11市で策定済であり、策定中の自治体も数十ある。
生物多様性というのはよく分からずイメージが分かる程、定着していない。国土交通省の説明で「自然環境の保全に寄与する」という部分は「生物多様性の保全に寄与する」と言い換えることができるのか。この点は、今後、自分自身でも考えていきたい。

(2)-4 経済産業省

経済産業省より[資料2-4]に基づき説明。

<委員意見等>

経産省では地球環境の問題として、エネルギーと生物多様性の問題も重要である。もっと踏み込んだ内容を検討してほしい。
今日はNITEの説明だけであったが、技術的協力以外にも資金メカニズム、能力形成、伝統的知識などの話があると思うので、これから議論を膨らましていってほしい。
ABSに関する制度枠組の話では、名古屋議定書を批准したのは2カ国である。政府間での議論では、どういう仕組みにしていくかについての相談は始まっている。途上国側の能力が不足しており、キャパシティビルディングがポイントとなっている。資金メカニズムも大事であり、本年7月にインド・ニューデリーで政府間会議が開催される予定であり、その場で初めて第10条について議論される予定である。まずはその議論を聞いてみたい。伝統的知識については、各国も困っているというのが正直なところである。国境が入り組んでいるような場合、複数の国を移動する人が持っている知識を誰が所有する知識と位置づけるのかは各国の責任となっているが、そのままではなかなか進まない。NITEでも技術視点だけでなく、アクセスする国家制度についてもアドバイスすることを考えている。利用する側と持っている側のバランスがとれないと政府が制度を作っても動かない。1カ国毎に丁寧にやっていくしかない。

(3)その他

各省からの補足資料がある場合は提出していただき、次回ご紹介することとしたい。