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■議事録一覧■

平成21年度 中央環境審議会 自然環境・野生生物合同部会
生物多様性国家戦略小委員会(第2回)
議事要旨


1.日時

平成21年8月26日(水)13:00~16:40

2.場所

三田共用会議所 3階 大会議室

3.出席者

(合同部会長)
熊谷洋一
(委員)
有路信、石坂匡身、磯崎博司、大久保尚武、大澤雅彦、岡島成行、川名英子、桜井泰憲、佐藤友美子、鹿野久男、竹村公太郎、中道宏、西岡秀三、浜本奈鼓、福田珠子、山岸哲(五十音順、敬称略)
(事務局)
環境省:
自然環境局長、大臣官房審議官(自然環境担当)、自然環境局自然環境計画課長、生物多様性地球戦略企画室長他

4.議事要旨

(1)前回の小委員会の指摘事項に関する補足説明

◆ 第1回小委員会の補足説明として、資料を用いて以下について説明。

(主な質疑・意見)
○文部科学省
【学校教育について】
「生物多様性」という言葉は、高等学校では出てくるが、小中学校では使っていないのか。
学習指導要領の中の言葉としては、小中学校では使っていないが、生物多様性に関わる基礎的な事項は、小中学校の理科等を通じて学習することになっている。学習指導要領は、教育課程の基準のもととなるものであるため、教科書については高等学校では生物多様性という言葉が確実に出てくるが、小中学校でも出てくる可能性はある。
小学校や中学校の教員から、生物多様性をどう伝えていいかわからないという声を頻繁に聞く。体験を通した環境教育は強化されているが、理論的な、基礎的なところをカリキュラムの中で強化する必要があると強く感じる。
今回の資料には、主に学習指導要領に新たに加わった事項を掲載しているが、基礎的な部分は小学校、中学校の生活科、理科等で行っており、昨年3月の小中学校の学習指導要領の改訂においても、理科等の授業時数増等、内容の充実を図ったところである。今後もこれを活かしつつ周知に努めていきたい。
【天然記念物について】
天然記念物や天然保護区域は非常に重要な役割を果たしていると思うが、都道府県が保全管理をしているところ等で、文化庁が現状をしっかり把握し、指導していく体制がとれているのか。地元の天然記念物に対する理解が十分でないことがあり、文化庁の中での管理方針等を検討する体制が重要である。
一定の補助等を行うことにより、保護を行っているが、御指摘については文化庁に伝えたい。また、指定をされると、規制等により地域との距離が遠くなってしまうのではといった意見もあるので、地域の自然と文化の結びつきを知るなど、天然記念物への理解を深める普及啓発活動についてもさらに進め、実施体制整備についても何ができるのか考えていきたい。
○環境省
【生物多様性を社会に浸透させる取組】
COP10の準備期間も重要だが、COP10期間中の取組が社会教育の場として特に重要である。92年のリオサミットや97年の(地球温暖化)京都会議のことも考えると、今年9,10,11月あたりの対応に力を入れるなど、メディアが動きやすい体制に気を配って欲しい。
この10月にはCOP1年前としていろいろな行事等が予定されている。こういう機会を活用して、いろいろな立場の人が関心を高め、行動していくうねりが高まる契機としていきたい。
「理科」の大事なところに対応しながら、「理科でない人たち」に対し、伝えることが重要であり、哲学者や芸術家の参画、文学との結びつけなどが必要。「地球生きもの応援団」にも野球選手のような方が入られる道筋をつけていただきたい。
一般の方になじみやすい分野の方に入っていただけるよう努力したい。
環境省がお知らせするのでは、今の市民は乗ってこない。市民が主体的に参加し、役所はそれを盛り上げていくといったプログラムも必要ではないか。事例があれば教えてほしい。
NGOが主体になって生物多様性を広めていこうという動きもある。これらに対して講演で参加する、情報発信をしていくなど連携する方策を考えていきたい。
イベントもよいが、山に行って活動をするようなことも考えてはどうか。

(2)関係団体のヒアリング

◆ 議事次第の順に資料に基づき関係団体からのヒアリングを実施

[1]兵庫県:県の現状、取組、生物多様性ひょうご戦略について説明。
(質疑)
侵入生物についてはどのような対策を考えているのか。
特に農業被害のあるアライグマやヌートリアは県や市町が一緒に対策に取り組んでいる。また、それら以外では、住民が活動されており、県は何らかの形で支援しているというものも多い。
地球温暖化(の影響)に対するデータ収集等の体制整備は、どうしているか。
レッドデータブックの2回の改訂のデータをまとめていく中で、把握できてくるのではないかと考えている。また、あまりうまく機能していないが、住民から情報提供を受けるナチュラルウォッチャーという制度を作っている。
財源はどうしているか。
森づくりについては、県民緑税という特別の超過課税を充てている。また、CSR活動の財源としても昔から超過課税を行っており、その一部を森づくりにも充てている。それ以外は県全体の一般財源で対応している。
県の取組事例と生物多様性ひょうご戦略との関係を説明してほしい。
現状、取組、行動計画はすべてこの戦略の中で一体的に書いている。
「生物多様性保全のための予防的措置(スライドp17 4②)」はどのような措置か。
人と自然の博物館のジーンバンクなどが該当するが、検討段階のものとしては、環境アセスメントの中での生物多様性オフセット等をその適否も含めて検討していきたいと考えている。
瀬戸内海の再生については、県独自の取組以外に各県の取組がどうなっているか。
1971年に瀬戸内海の環境保全知事・市長会議を作り、様々な取組をしている。また、国際エメックスセンターという財団法人を兵庫県が提唱して設立し、閉鎖性海域の環境保全に関する国際的ネットワークの取組も進めている。
[2]川崎市:緑地の保全を中心に生物多様性保全に向けた市の取組、課題について説明。
(質疑)
緑地の買取に年間16億円の予算措置があるとのことだが、特別な財源があるのか、また、この予算額で十分か。13市町村連携での取組についても財源の問題について共通の意識があるか。
緑地保全予算は、1/3が国庫補助で、残りが起債と一般単独費である。緑地保全全体は、規制をかけて保全する制度であり、特別緑地保全地区になったときの不許可処分等への対処措置としてこの予算があるため、当面はこの予算額で賄えている。広域連携の財源については、一部川崎市が負担している部分があるが、基本的にはまずは手弁当の中で進めている。
臨海部は企業の取組が中心という印象を受けたが、将来的な臨海部の土地利用転換等を見越した方向性を市として持っているか。
臨海部等、大規模な土地利用転換については、都市基盤整備機構等の専門家と連携をしながら、計画的な緑地の確保の検討をしていくという考え。
これらの対策にどれくらいの数のスタッフが関わっているのか。
緑の専門職員が150人くらいいるが、緑の計画を進めているのは、課長である自分を含めて8人程度。
保全する緑地の近くの住民はヤブ蚊が出て苦情を言うなど、都市の生物多様性保は、難しい問題があると思うが、何か経験があるか。
雨樋に葉が落ちる、クマザサが繁茂する、ヤブ蚊がすごいなど苦情は多いが、年間5千万円くらいの管理予算の中でこれらの問題にも対応している。また、1つの緑地保全地区に一つの市民団体を立ち上げ、市民主導の管理を進めていきたいと考え、実践している。
大都市周辺の農地が今後重要になる。産地直送、地産地消、都市住民による農園等の利用が考えられると思うが、何か対策をしているか。
市には380haくらいの生産緑地があるが、解除されていく傾向にある。農地は災害時の一次避難地やネットワークの構成要素としても重要であるためJAと連携しながら市民農園、体験型農園等で農地を維持できる方策を紹介するなど、普及啓発を図りながら、保全を図っていきたい。
[3]日本経団連自然保護協議会:日本経団連生物多様性宣言を中心に、最近の活動状況を紹介し、課題認識、経済的手法の問題点等について説明。
(質疑)
サプライチェーンや生物多様性の経済評価に関する課題認識について、非常に感銘を受けた。経団連自然保護協議会や他の委員会の中では、どのような議論があるのかお伺いしたい。
率直に言って各企業・団体の中でいろいろな意見がある。本日の説明は、自然保護協議会会長としての意見であり、経団連としてまとまった意見ではない。特に、経済活動は必ず自然に何らかの負荷をかけることから、最後にはバランスの問題になる。皆が納得する形でのバランスを見つけるべきと考えるが、まだ具体的方向性を決めるところまで至っていない。
[4]生物多様性条約市民ネットワーク:ネットワークの概要・活動内容について紹介し、新たな国家戦略策定への提言等について説明。
(質疑)
市民ネットワークの中に団体会員とあるが、関連する学会等は入っているか。
学会に所属する個人的な研究者とのリンクはあるが、学会としての参加はない。

(3)生物多様性国家戦略の主要新規事項(案)について

 今般、新たに追加・改定すべき主たる事項について、三次戦略の「4つの基本戦略」に即して整理した(資料3)に基づき、環境省から説明。

(主な質疑・意見)
2.4 循環型社会の視点が入ったことは良いが、物質が循環するだけでなく、生命が循環する、物質は生命がないと循環しないという視点を入れることで生物多様性の役割が明確になるのではないか。
美しい事例ばかりではなく、ただの鳥・ただの虫を保全することが重要であり、それには「人の生きざま、なりわいとの折り合い」をつけることが必要であり、行動計画の記載に当たっては、そういう視点から、統合化、俯瞰視といった視点が少しでも入るよう各省にご努力いただくと良い。
科学的基盤の強化は重要であり、生物多様性情報のネットワーク化の視点が盛り込まれたことを評価する。
 データには著作権があり、知的財産であることを重視し、データを特定の機関が抱え込むのではなく、環境省が各セクター、機関、個人の知的財産を尊重しながら、みんなが喜んで情報・知恵を書き込んでいけるような、データ提供者側にも評価される従来とは全く違った仕組みを作ることに全精力を挙げてほしい。
三次戦略以降の事柄や三次戦略に書いておけば良かった事柄等、重要な事項はほとんど網羅されていると思う。特に、基本戦略4(地球規模の視野を持って行動する)に盛り込まれた、戦略計画における計測可能な目標の提案、経済的視点の導入、効果的な政策オプションの検討、科学的基盤の強化に係る中心的機構の整備について検討、IPBESが効率的となるよう貢献、気候変動のコベネフィットアプローチの検討着手などいずれも方向性は賛成だが、どれもかなり難しい問題である。書く以上、それなりの覚悟と見通しを持って書いていかなければならない。
「生物多様性」がなぜ浸透しないかだが、言葉の使い方がすごく難しい。「生物多様性」は、温暖化問題でいえば、「気候変動」という言葉にあたるのではないか。気候変動の問題が温暖化という言葉で普及したように、言葉の使い方にもう一工夫が必要。
地域連携を考えていくためには、自治体の運営が厳しいような財源が豊かでないところをどうしていくかというのが非常に重要。地方では豊かでないところでいろいろな生物多様性の問題が起こっている。
病原菌などやっかいなものとどう折り合いを付けていくかということをどこかでふれて欲しい。SARSや鳥インフルエンザにしても、人間が生き物とのつきあい方を変えたことで、起こってきている問題で、生物多様性は種数だけの問題ではないので、病気等をどう考えるのか、それらの多様性をどう考えたらいいのかというのは非常に難しい問題だが、どこかで考えて欲しい。

(以上)