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■議事録一覧■

平成21年度 中央環境審議会 自然環境・野生生物合同部会
生物多様性国家戦略小委員会(第1回)
議事要旨


1.日時

平成21年7月28日(火)13:00〜16:58

2.場所

ホテルフロラシオン青山 1階 はごろも

3.出席者

(合同部会長)
熊谷洋一
(委員)
有路信、石坂匡身、磯崎博司、大澤雅彦、川名英子、桜井泰憲、鹿野久男、竹村公太郎、田中里沙、土野守、中道宏、西岡秀三、浜本奈鼓、森本幸裕、山岸哲、鷲谷いづみ
(五十音順、敬称略)
(事務局)
環境省:
環境省:自然環境局長、大臣官房審議官(自然環境担当)、参与、自然環境計画課長、生物多様性地球戦略企画室長他

4.議事要旨

(1)生物多様性国家戦略小委員会における検討の進め方について
◆ 環境省から、生物多様性国家戦略小委員会における検討の進め方について、資料1を用いて説明。
(質疑)なし
(2)第三次生物多様性国家戦略の実施状況の点検結果について
◆ 環境省から、資料2−1、資料2−2を用いて、第三次生物多様性国家戦略実施状況の点検結果について説明。
(主な質疑・意見)
【広報・普及について】
生物多様性を普及するうえで、学識研究者の視点では見落としている視点があるのではないか。マスコミ、NGO、教員、子どもと懇談する機会を設けるなど、視点を変えなければならないのではないか。「COP10」も認知されておらず、ロゴマークもマーク単独では生物多様性を連想させることはできない。
例えば、NGO、研究者、企業、自治体等の様々なセクターの人に集まってもらい、国内の何カ所かで国内対話会合を開催し、COP10の1年前の本年10月には神戸で国際対話会合を開いて、意見を聴いていきたいと思っている。
 また、ユース会議を開催し、今年はアジア地域、来年度は世界の若者の意見を聞く予定。いろいろな形で、社会に浸透させる工夫をしていきたい。
様々な活動が行われていることは理解するが、その影響がどの程度あるかということについては、疑問を感じる。自然に触れる機会は減っており、認識の低下から、知識もない、関心もないということになっていく。そういう点からすると、もっと普遍的に、あらゆる場所で活動が進められるような企画をする必要があるのではないか。
生物多様性を社会に浸透させるということ自体の目標設定があいまいであるため、生物多様性を理解・共感してもらって、行動を起こしてもらうんだという認識を新たにすべき。具体的なことが一般の人にはわかりづらいため、広報の視点で見直して情報発信していけるとよい。また、やや堅い部分もあるため、みんなが参加できるようなイベント的な要素を入れて情報発信していくことも考えると良い。
 国民の行動リストなども、生物多様性と教育、生物多様性と学び、生物多様性と遊びなど様々な切り口で具体的なものが出てくると思うが、コミュニケーションの部分について、きめ細かく対応していくことが重要。
来年は、COP10もあるが、国連の国際生物多様性年でもあり、いろいろな立場の人に集まっていただき、アイデアを出し合う国内委員会というものを立ち上げていきたいと考えている。生物多様性を社会に浸透させる効果的な行動を練りながら動かしていきたい。
生物多様性民間参画ガイドラインは誰が「参画」するガイドラインなのか。すそ野の広い啓発活動というものを考えていかなければならない。
ガイドラインについては事業者を対象にしたが、大企業だけでなく、町工場の人にも理解してもらえるような内容とした。
地球の中に動物が入っているロゴマークは、使えるものなのか。わかりやすいマークがあるとよいと思う。
事務局で調べてみたい。ほかに、来年の国際生物多様性年のロゴマークを条約事務局が作成しており、COP10のロゴマークを日本で作成していく。インパクトのあるロゴマークづくりをしていきたい。
【温暖化への対応】
2007年のIPCCのレポート、農水省での検討、気象庁での生物季節の観測等で温暖化による様々な影響が観測されていると思うが、地球温暖化については、今度の国家戦略の検討ではどのような扱いになっているか。
温暖化への対応の一つとしては、生態系ネットワークが考えられる。保護区をつないでいくことが、少しは対策になると考えている。
 温暖化と多様性は、生物多様性条約でも重要な議論になってきている。
 この問題に対しては、多様性に対する影響を捉えていくこと、森林や湿地の保全、里山のバイオマスを石油代替エネルギーとして活用するなど、生物多様性と温暖化の両面から役立つ施策としてどういうものがあるか、温暖化による影響をできるだけ小さくするために生物多様性の面から何ができるかという3つの視点について第三次戦略にも書き込んだ。今回の見直しで、さらに強化できるところがあれば、御意見をいただきながら、反映していければと思う。
【関係省庁の連携】
国家戦略の点検結果に関する「今後の課題・見直しの方向性」の中に、連携が必要であるといった説明が少ない。各省のそれぞれの施策、省庁間の施策ともに連携がないと広まらない。特に一番大事なのが、それぞれの地域において生物多様性をどう考えるかという視点であり、それがないと施策を総合化し、融合する手法というのが発達しないと思う。生物多様性を地域でどう持つかと言うことと合わせて、各省の施策が組み込まれるとさらに前進するのではないか。
国レベルでの連携は今後も深めていきたい。地域レベルでの連携についても、生物多様性基本法に努力義務規定として、地方公共団体が生物多様性の地域戦略を作っていくことが規定されたところであり、都道府県の中でもいろいろな部局が横断的に施策を進められるようにしていきたい。
(3)各省施策に関するヒアリング
◆ 環境省から資料3を用いて、生物多様性施策に関して説明。
(主な質疑・意見)
【目標の必要性・経済的な視点】
様々な施策が進んでいることはたいへんうれしく思う。三次戦略は良く書けているし、自然再生事業、トキやコウノトリなどについても成果が上がっている。しかし、日本全国を見渡すと、生物多様性の劣化は進行しており、倫理観やCSRに期待したり、広報をうまくやっていくだけでは、生物多様性は社会の本流になり得ない。
 戦略アセスもそれなりに進んでいると聞いているが、目標そのものが合意されていないと、片肺飛行の感がある。
 例えば浅海域、干潟、陸水域の氾濫源湿地といったところは悲惨な状況にあり、減少傾向は止まっていない。こういったところに、ノー・ネット・ロスの原則を合意するといいったことがないと、政策としては倫理観に期待するということにしかならない。
 生物多様性オフセット、キャップ・アンド・トレードというような考え方があることも踏まえて、経済的な手法の検討に期待したい。経済との関係というのがこれからの大きなテーマ。
COP10においても経済的手法についての議論は取り上げられる可能性は高い。今後も注意深く見ていかなければならないと思っている。
【支援措置】
生物多様性保全の理解を高める取組や国際的な舞台での活躍が始まっていることはすばらしいが、生物多様性の劣化のスピードは、前世紀からの人間活動の結果のあらわれ等もあり、むしろ高まりつつある。全体の理解が高まることも重要だが、既に理解をして、努力をしている人ががんばり続けられるような支援も重要なポイントではないか。
生物多様性保全推進支援事業の拡充など、地域のそういった取組の支援を強化していきたい。
【地方の取組】
地方の取組の普及の程度が不十分ではないか。点検報告を見ても、保護区やモニタリングというと国立公園、国定公園、鳥獣保護区などがまず優先であるが、COP10後に誰が取組の主体となるのかということをもう少し前面に出していかないと、実践力が伴ってこないのではないか。自治体における生物多様性地域戦略の策定の取組をきちんと広めていくということがとても重要ではないか。
第三次戦略においても、国家戦略をベースにしながら地方戦略が作られることが欠かせないといった記述を書き込んだが、それを受けて生物多様性基本法でも「地方公共団体は、単独であるいは共同して生物多様性地域戦略を策定することが努力義務として規定された。ここでは代表例5つを挙げているが、地域の動きを加速させることが重要と考えている。地方戦略の手引きも自治体の意見も入れながら使いやすいものにまとめたい。
 来年のCOP10においても自治体の関わりはテーマであり、国際自治体会議という関連会合も開催される。地域戦略づくりを足がかりとした動きが全国に広がるようにしていきたい。今回の見直しの中でも大切な課題と考えている。
◆ 農林水産省・林野庁から資料を用いて、生物多様性施策に関して説明。
(質疑)
【農林水産業分野における配慮】
生物多様性に配慮した農業農村整備事業の割合は全体の事業量のどのくらいの割合を占めている。
面積や事業数の数値を持ち合わせていないが、基本的にはこのような整備は様々な配慮を行っていくことになり、事業費が高くなる傾向にある。このため、そういったことを選んでいただく必要がある。全ての事業でどんどん採用しているわけではないが、最低限、事業の調査の前に、生物多様性の状況等を調べるようにしているところ。正確な数字が必要であれば担当部局に問い合わせて報告する。
佐渡の例では、全水田の25%ぐらいが、減農薬、無農薬の水田と聞いている。農水省には、コウノトリやトキなどのスターがいないところでも対策を進め、コウノトリがどこに飛んでいっても食べていけるような水田にしていただきたい。
滋賀県は、魚のゆりかごというマークにして、いろいろな生物の組み合わせを示している。
新たに農地造成や人工林化を行う段階での配慮がないと、広大な開発をしてしまった後で保全される生物多様性には限界がある。このような段階における配慮のメカニズムはあるか。
新たに農地にするというのは、たくさん余地があるところではない。今あるところをどうしていくかというところが主体になる。
 森林については、面積自体はほとんど変化がなく、人工林を広葉樹林や複層林にする取組などが一部で進んでおり、民有林でも小面積で間伐し、広葉樹を植えてモザイク状にしていくといった動きも出てきており、全部一律人工林化するという方向にはならないと思う。
【流砂系に対する配慮】
藻場、干潟等の個々の場所ではなく、流砂系というか、山から土砂が出て、それが海に出て、海岸を養うといった物質の流れと生物多様性が関係しており重要だという観点で、流域としてこういった取組があるか、また、藻場・干潟の造成が本来こういった場所で行われているのかということをお伺いでしたい。
水産庁の事業で漁場保全の森づくり事業というのがあるが、砂ばかりではないと思うが、栄養塩といったことにも少しづつ着目してやっている。全て上流を意識してやっているかという点については、必要であればまた調べて報告する。
 下に人家がないような、例えば知床では、ダムをスリットにするなど様々な形で上下流の連携等をとるというようなことを進めており、徐々にそういった配慮をしたダムの作り方が広がってくると思っている。
【農業の多面的機能・直接支払】
生物多様性の保全を重視した農林水産業を強力に推進という目標は心強い。多様な生態系サービスをバランス良く供給できるような行政体系や水産の現場などが確保されれば、農業にとってもその効果が大きい。マルチ・ファンクショナル・アグリカルチャーという方向性は、世界的にも重視されるようになっており、そのマルチ・ファンクショナルであることの指標のそれぞれを調整することはできないが、生物多様性に注目することでそのバランスを確保できると思う。エコファーマー、有機農業等も、もともとは安全・安心と言う観点だったものが、実際に生物多様性にどのぐらい寄与しているか、これから指標を用いて検討すると思うが、ヨーロッパなどでは膨大な実績があり、日本も同じ方向に進むと良いと思う。
直接支払制度の検討の状況を教えていただきたい。
コベネフィットや直接支払の施策については、現在食料・農業・農村基本計画の改定について、農林水産省の審議会でもご議論いただいているところであり、その状況にご注目いただきたい。ただ、考え方として、環境政策はやはりコベネフィットだけでなく、パラドックスもある。例えば、水田の水生昆虫のために水深を深くする期間を長くするとメタンの発生が多くなる、これを減らそうとして中干しの期間を増やすと水生昆虫の避難場所が必要になる。まず、そういったことをプラクティスごとに整理する必要がある。
 直接支払ということについては、欧米で行われており我が国でも期待が高いが、よく言われることとして、例えば生物多様性に良い影響が出たときにその生態系サービスを受けるのは、誰なのか、農家もいい結果を受けると言うことになれば、その分を引かなければならないかと言った議論も出てくる。そういった政策上の問題が突破できないところもある。
 もう一点は、日本では経営規模が非常に小さく、面積払いで、同じペースでいけば額が合わないという点もある。
 いずれにしても農業と環境についてはきちんとした政策対応が必要であり、検討を進めたい。
【指標】
生物多様性を認識・分析し、解決に向けたアクションの達成度を評価するため、指標の開発は重要である。例えば、農薬抵抗性の害虫や雑草の広がりや種数など、負の指標を入れていくことが重要。生態学的には中途半端に殺すようなものは、抵抗性を進化させる可能性があり、これらが増えるとコストがかかることにもなる。農業分野らしい指標になるのではないか。
現段階では分かりやすい指標生物を選定し、農法の変化によってそれがどの程度変わっていくかといったことを見ている。ご意見は研究の部局にも伝えたい。
【鳥獣害対策】
最近鳥獣害が非常に多い。被害の額ではなく、農業に意欲的な方が意欲をなくしていくのが一番大きな問題である。これが農地や山林の荒廃につながる。対応に非常に苦慮しており、農水省としての考えがあればお聞きしたい。
鳥獣害対策の議員立法として特措法が成立しており、市町村長に駆除の権限が下り、市町村が駆除隊を編成することも可能となった。様々な問題はあるが、シカの捕獲方法等の研究も進めており、また、いろいろな取組の事例もまとめているところ。
◆ 国土交通省から資料を用いて、生物多様性施策に関して説明。
(質疑)
【モニタリングにおける連携の重要性】
日本は南北に3000キロも長い国であり、亜熱帯から亜寒帯まであるのはそのうち、世界で4カ国。その中で、データを克明に調査して公表しているのは日本だけである。日本は地球上のセンサーになりうる特徴を持った国である。このデータを収集し活用するためには、環境省、国土交通省のそれぞれの分野だけでなく、水産試験場、農業試験場、林業試験場など様々な人たちが持っているデータを集めていくと、非常に面白いデータになる。環境省が主導して、関係省庁、各地方の国民のセンサーを上手に集めていくと、世界に冠たる観測データが集まるのではないか。そういうことが国民に勇気を持たせ、楽しい思いをさせるという気がする。行政の枠だけではなく、国民自身がセンサーになるんだということをけしかけてもらいたい。関係省庁も連携しなければならない。
 例えば、海面上昇のデータは非常に難しいが、厳島神社の神官が調べているデータを中国地方整備局が上手に発掘して公表している。連携の強化が不可欠。国民全体が地球上のセンサーになりうる特徴をもった国(亜熱帯から亜寒帯を含み、詳細な調査データを公表している)として、世界でも唯一の特徴を生かすべきである。
【河川におけるNPOとの連携】
特に河川は、NPOや周辺団体との協力をされていると思うが、今後の取組のいい指標になるのではないか。スポーツ、教育、散歩等やモニタリングということにも活用できるのではないか。ぜひ、さらに活発にしていただいて、その数を計数に入れていただきたい。
山形の長井で町場の方が河畔林の散策路の整備を一部されている。また、NPOと一緒に調査に取り組んだりしているところである。
【生態系ネットワークにおける連携】
エコロジカル・ネットワークにおいては、保全と再生がある意味では一体化したものであるはず。エコロジカル・ネットワークという概念からすれば、都市も森林も海も、関係省庁がうまく調整してやっていくことが重要。
今年調査を開始するところであり、川だけということでなく、連携できるところはできるだけ連携していきたい。
 県、市町村等の中でそれぞれ連携が図られるように、各省各局が連携していくことが良いと考えている。
【環境配慮不動産・緑化地域制度の推進】
環境に配慮した不動産投資市場の評価は、非常に重要。現在は、企業がこういった問題にCSRといったレベルでしか参画していない感じがするので、成果が上がるよう期待する。
通常の不動産投資の延長線上で、環境に配慮した不動産が適正に評価され、市場が活性化していくような情報整備・情報提供の仕方を考えていきたい。
緑化地域制度については、名古屋市と横浜市しか事例がないのはなぜか。
取組自体が都市計画であり、他の地域の取組を見つつ他も取組をすすめようとしている。検討中のところは多くある。
【施策の進捗の全体傾向】
施策に関しては、個別には良いことが行われているが、それがどこまで一般化しているのかが重要。例えば、多自然型川づくりなどは、全てそういう方向に向かっているのかを含めて御説明をいただいた方がよかった。
河川整備においては、2〜3年前に調べたところ、約7割が多自然川づくりに取り組んでいる。さらにどう良くしていくかというところにはまだ課題が残っている。
【沿岸域の総合管理計画】
海洋については、生物多様性条約でも総合的な管理が求められているが、全総のもとでの沿岸域総合管理計画の進捗状況について聞きたい。
【生物多様性教育関連施策の進捗について】
今後、他の省庁からの進捗状況をヒアリングする機会はあるのか。生物多様性基本法第24条に、学校教育と社会教育がしっかり書かれており、点検の資料にも指導者を養成するとあるが、教員の方が学校教育現場でどう取り組んでいいかということを学んできていない現状もよくわかる。
 生物多様性について国民全体に広めていくために、広報と教育がどうしても必要な柱になってくるのではないか。できれば、文部科学省の施策に関する進捗状況を希望する。
部会長と事務局で検討してお答えする。
【全体の議論をする場について】
全体的なことだが、総合評価の検討会にはそうそうたる生態学者が入っている。日本の生物多様性がどうなっていて、それにどういう問題点があるのかというのは、生態学者が検討すればよいが、今日の問題は国家戦略の問題であって、戦略というのは生態学ではなく、政治であり、行政であり、事業であると思う。この検討委員会を2つつくって、一つは生態学委員会でも良いが、もう一つは行政を評価する委員会として別々に討議して、最後に一緒に問題点を掘り出すということも必要ではないか。
部会長と事務局で検討してお答えする。
(以上)