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■議事録一覧■


平成19年度 中央環境審議会 自然環境・野生生物合同部会
生物多様性国家戦略小委員会(第2回)

議事録


1.日時

平成19年6月8日(金)9:30~12:30

2.場所

中央合同庁舎5号館22階 環境省第1会議室

3.出席者

(委員長)
熊谷洋一
(委員)
石坂匡身、川名英子、鹿野久男、篠原修、中静透、中道宏、服部明世、速水亨、三浦愼悟、森戸哲、森本幸裕、鷲谷いづみ、和里田義雄(五十音順、敬称略)
(事務局)
環境省:
自然環境局長、大臣官房審議官(自然環境担当)、自然環境局総務課長、自然環境計画課長、生物多様性地球戦略企画室長、国立公園課長、鳥獣保護業務室長、外来生物対策室長、自然環境整備担当参事官、生物多様性センター長ほか
(関係省庁)
文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省

4.議事

【事務局】 それでは、定刻を若干過ぎましたので、ただいまより、中央環境審議会自然環境・野生生物合同部会第2回生物多様性国家戦略小委員会を開催いたします。
 それでは、まず本日の審議のためにお手元にお配りしている資料につきまして、議事次第の下にあります配付資料の一覧のとおりとなっておりますので、ご確認をお願いいたします。
 それと、委員の皆様のお手元にのみ参考資料といたしまして、新・生物多様性国家戦略、パンフレット「いのちは創れない」、生物多様性国家戦略の見直しに関する資料集、中央環境審議会関係法令をお配りしてございます。配付漏れがございましたら事務局にお申しつけください。
 それでは、これよりの議事進行につきましては、熊谷委員長にお願い申し上げます。熊谷委員長よろしくお願いいたします。

【熊谷委員長】 かしこまりました。おはようございます。それでは、ただいまから第2回生物多様性国家戦略小委員会を開催いたします。
 まず、今後のスケジュール及び先週の各省ヒアリングの追加質問の扱いについて事務局から説明をお願いいたします。よろしくお願いをいたします。

【亀澤生物多様性地球戦略企画室長】 地球戦略企画室長の亀澤でございます。
 まず、スケジュールについてですけれども、一番上の議事次第の紙がホチキス止めで2枚紙になっていますけれども、それの一番最後、ここにスケジュールを載せておりますので、これは場所も確定したものとして前回の小委員会で第3回までご説明いたしましたが、今回、左側にありますように第4回のところ、ゴシックで書いてありますけれども、そこの場所が確定しておりますので、その分を追加しております。第4回、7月17日ですが、2時からということで、経産省の別館で予定をしております。あとは前回と同様でございます。
 それから、追加質問事項というのがその次にございますけれども、前回のヒアリング時の宿題と、それから農水省分はその後、磯部委員から文書でいただいたものですけれども、温暖化の関係、農業用水の関係、環境教育の具体的内容といったところで本日付で熊谷委員長名で出す形にしております。20日までに各省から提出をしてもらうことにしておりますので、次回、26日の第3回のときには資料としてお示しできるというふうに考えております。以上でございます。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。ただいまの事務局から説明がありました点につきまして、何かご意見ございますでしょうか。あるいはご質問でも結構ですが。何か追加質問等についてございましたら、どうぞご自由にご発言をいただけたらと思います。よろしゅうございますか。
 本日の議題は、生物多様性国家戦略の見直しに関する論点についてでございますが、この議事に入る前に、先週の第1回小委員会の長時間にわたる各省ヒアリングの感想や印象などを、もしよろしければ少しお聞きしてみたいと思いますが、いかがでしょうか。それでは、まず中道委員の方からお願いいたします。

【中道委員】 最初の会議で欠席いたしましたが、資料を送っていただきましたので読ませていただきました。
 各省、随分丁寧な資料をつくられていて、非常にいろいろな試みをされている、非常に努力されていると思うのですが、基本的には、事例を示されていることが多く、面や線にはまだなっていない。
 要は、いろいろな努力が何らかの格好で、目標が示せることを次のステップにお願いできないものかという感じがいたします。生物多様性問題は、地球環境問題のいろいろなものが統合されたものですから、各省がそれぞれ地球環境問題等に対応していることを統一した指標にするということはなかなか難しいと思いますし、直接、生物多様性と結びつけるということも難しいと思うのですが、環境面でどういう方向に持っていこうとしているのか、その目標をどの辺に置こうとしているのかについて、もう一つ努力があると非常にわかりやすくなってくるのではないか。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。大変貴重なご意見として承って、これからの各省への質問、あるいは議論に役立てさせて頂きたいというふうに思っております。ありがとうございました。それでは、鹿野委員お願いいたします。

【鹿野委員】 私も先日、関係各省のお話を伺って、まず感じたことは、生物多様性ということ、それから国家戦略ということ、霞ヶ関の中では広まったなという感覚を受けました。また逆に振り返ると、前にもいくつか先生方からご指摘があったと思いますが、どうして国民一般に広がらないのかなという感じを、なお、霞ヶ関で広がっている、それに対して国民一般にどうして広がらないのかなというような、そういう印象を持ったということでございます。関係各省の取り組み、すごく進んできたという実感を持っております。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。ほかにございますか。よろしゅうございますか。それでは、そろそろ本日の議事に入りたいというふうに思いますが、まず資料について事務局より説明をお願いいたします。

【亀澤生物多様性地球戦略企画室長】 では、私から資料の説明をさせていただきます。
 [資料1]以下ですけれども、[資料1]は見直しに関する論点ということで、本日ご意見をいただきたいと思っているものでございます。これにつきましては、[資料2]以下を説明した上で、また後ほど戻って説明をしたいと思います。
 [資料2]の方は、現行の戦略がどういうふうに進捗してきたかということで、毎年点検をしているわけですが、点検結果を踏まえて審議会から意見をいただいているものを大くくりに抜き出したものです。各回の審議会からの意見というのは次のページ以下につけておりますけれども、1ページ目で大くくりにしたものをご説明いたしたいと思います。
 全体に関しましては、国の施策というのは前向きに進んでいる。しかし、それにもかかわらず多様性の3つの危機というのは依然進行しているのではないかというようなご指摘をいただいております。
 それから、個々の取り組みの中で、さらに強化をすべき項目というのをいくつかいただいておりますけれども、一つ目は、多様性の評価、あるいは施策を講じてきたことの効果を指標としてあらわすべきではないかという点。
 それから、多様性の重要性の説明をもっとわかりやすくすべきではないかということ。それから、国家戦略そのものを含めた普及・広報が足りないのではないかという点。
 それから、学校や地域における教育ですとか、生涯学習の推進、特に自然体験型の環境教育を充実すべきではないかというご意見もいただいております。
 海の関係ですと、浅海域、さらには海鳥も含めた海洋の方も含めて、海の生物多様性の保全を図っていくべきではないかということ。
 それから、地方や民間による主体的な取り組みを促進すべきであろうということ。
 それから、里地里山の手を入れていくべき対象、維持していくべき対象を明確化すべきではないかということ。
 外来生物関係ですと、水際のチェックの体制ですとか、国内の他の地域からの移動、そういうものに対する対策を充実すべきではないかという点でいただいております。
 データの関係ですと、まだまだデータが十分ではないという点ですとか、各省間のデータの連携を進めるべきではないかというようなことを、大きくいただいているところでございます。
 続きまして、[資料3]ですが、こちらは昨年の8月から今年の3月まで石坂委員に座長をお願いいたしました環境省の懇談会での論点整理ペーパーでございます。4月26日の合同部会のときにもごく大ざっぱに説明をいたしました。後ほど説明をいたします[資料1]の論点も、この懇談会の論点整理ペーパーを基本にまとめております。そういう意味で、後ほど[資料1]を説明する中で、こちらの論点整理ペーパーのおおよそもあわせてご説明をしたいというふうに考えております。
 続きまして、[資料4]ですけれども、[資料4-1]から [資料4-4]までは、今、申し上げました[資料3]の懇談会における論点整理ペーパーを公表いたしまして、意見募集と地方説明会を行った結果をまとめたものでございます。
 [資料4-2]、分厚いものですけれども、これが全国から寄せられた意見の一覧表でございます。それから、その後ろについています[資料4-3]は、全国8カ所で行った地方説明会における意見発表と、その後の会場からのご意見を会場ごとにまとめたものでございます。
 [資料4-2]と[資料4-3]というのは大変大部にわたりますし、大変細かくなっておりますので、[資料4-1]の方で、そのほんの一部にはなりますけれども、概要を整理しておりますので、それに沿って説明をしたいと思います。
 全国からのご意見、それから地方説明会でもいい意見をたくさんいただいておりますけれども、各項目ごとにざっと一部だけ抜き出して紹介する形になろうかと思います。
 まず、[資料4-1]の1番の(1)多様性の理念とか基本的考え方につきましては、[9]でございますけれども、多様性が国民生活とどのような関係があるのかをわかりやすく伝えることがスタートであり、特に農林漁業従事者には今までの自然保護との違いを理解してもらうことが重要というようなご指摘もありました。
 それから[11]番では、多様性は自然の豊かさのみならず、文化の豊かさにも関係しており、また、生存基盤であると同時に精神基盤でもあるというような意見もございました。
 次に1の(2)の超長期的に見た国土の自然環境のあり方では、[2]で、超長期を展望したエコロジカル・ネットワーク構想をもとに、自然を再生することの重要性を明記する必要があるというような意見もいただいております。
 それから次のページに行きまして、[8]番では、維持すべき里山については、場所を示すだけでなく、人の生活の変化を踏まえた新たな関わり方を示す必要があるというようなお話もあります。
 それから1の(3)多様性の評価・指標では、[2]番ですけれども、企業活動の中でも活用できるような実際的な指標も含むようにすべきというお話ですとか、[6]番ですけれども、指標化というのは大変難しいが、見直すことを前提として、できるところから早期に取り組むべきというご意見もあります。
 2番の(1)地球規模の生物多様性保全の関係では、まず温暖化の関係で、[1]ですけれども、南北に長い地形を持ち、気候変動による生物多様性の影響を顕著に観察できるであろう日本が、その点で如何に国際的な貢献をしてきているかという視点も必要ではないかということ。
 それから[6]番では、森林について、CO2の吸収が多い成長の早い樹種を選ぶのか、あるいは生き物にとって住みやすい樹種、木を植えるのか整理をしていく必要があるのではないかというご意見もいただいております。
 それから3ページに行きまして、国際協力といいますか、世界との関係でいいますと、[5]ですけれども、国境を越えて移動する野生生物の保護は国際的な協力を醸成するきっかけとなる、そうした動物の保護や外来生物問題について、近隣国と共同での戦略策定を検討すべき、というようなご意見もありました。
 それから2の(2)の学習・教育、普及広報、地方・民間の参画に関しましてですけれども、教育とか広報の関係では、[4]、学校以前の問題であって、幼児教育から行うことが重要ではないか。今の子供たちにとって必要なことは、さまざまな成長過程での自然体験としての「あそび」の積み重ねであり、その土台があって初めて学校教育が有効になるというご意見もいただいております。
 [13]番のところでは、分類群を超えた全体を見渡す生物多様性という価値評価軸に基づいた発言ができる専門家が不足していると感じる。また、生物モニタリングを行える人が絶滅に瀕していることを忘れないでほしいというご意見もありました。
 それから4ページへ行きまして、[20]番では、都市住民にとって実感しづらい生物多様性保全を進めるためには、市民生活や企業活動との関わりやとるべき行動をわかりやすく示し、ライフスタイルの転換につなげることが必要ということもいただいております。
 次の地方・民間の参画のところでは、[5]番ですが、地域における生物多様性の保全活動の財源確保に向けた新たな制度を検討すべきということや、[11]番ですが、持続可能な企業活動の不可欠な要素という認識を広めるため、「商品生産・原材料調達と生物多様性」のつながりを明らかにしてほしいというご意見もありました。
 続いて2(3)の沿岸・海洋域の保全ですが、[6]番、浅海域の保全については、漁業と保護を対立させるのではなく、保護することにより水産物の幼生が供給されるなど、保護と利用を両立した考え方の保全制度をつくってはどうかというご意見もありました。
 次のページの[11]番では、海岸の保全について言及が見られないが、自然海岸の保全・再生は重要な課題というご意見もありました。
 続いて2の(4)の保護地域、生態系ネットワーク、自然再生の関係ですけれども、保護地域関係では、[1]番のところで、国立公園は生物多様性保全上重要な役割を果たしており、科学的モニタリングに基づいた国立公園の運営管理が必要。知床の科学委員会はその見本となるであろうというご意見がありました。
 次の生態系ネットワークの関係では、[1]番ですけれども、生態系ネットワークについては、「構想を具体的に形で示す」期限を明確にし、速やかに実施すべきというご意見をいただいております。
 次の自然再生の関係では、次のページになりますけれども、[5]番で、自然再生において、順応的管理のシステムが適正に行われているかチェックが必要というご意見もありました。
 次の2の(5)里地里山の関係では、[1]で、里山問題は地域固有の自然と利用の履歴の問題であり、地域ごとのメニューの提案や支援が必要というご意見もあります。
 [6]番では、地域を本当に守るのは地元の人々であり、その人々の里山に対する意識がなくなれば守れない。その上で、団塊の世代や若者の定住と絡めた都市の人々との交流を考えることが必要というご意見をいただいております。
 2の(6)の野生生物の関係では、まず外来生物のことで、[4]番ですけれども、外来種への対応は、日本全国ではなく、島嶼部など地域を限定した規制も重要ではないかという意見もありました。
 次のページですけれども、鳥獣保護の関係では、[2]で、鳥獣管理の地域格差が拡大しており、全国規模で統一した手法による、長期間のモニタリングと特定鳥獣保護管理計画の上位の広域ブロックごとの広域管理指針の策定が必要というご指摘もありました。
 その下のその他野生生物のところでは、[10]番ですが、外来種の影響により著しく生息数を減じた種や地球温暖化やツボカビ症など感染症の影響を受ける種は生息域外保全(飼育下繁殖)の取り組みも重要であろうという意見もありました。
 最後、2の(7)のデータの関係では、まず、全般の[5]ですけれども、自然環境の情報は都道府県レベルでの集約が現実的であり、都道府県レベルでの情報収集との連携を明示すべきというご意見もいただきました。
 それから次の市民参加型調査のところでは、次のページに行きますけれども、[3]番で、インターネットを利用したより多くの市民が発信源となる多数分散型の調査モデルが有効であり、市民の認識の向上策としても重要、また、自然系博物館の機能強化と連携が必要というご意見もいただいております。
 それから最後に、その他として、都市の関係ですと、都市の[2]ですけれども、持続可能なまちづくりの観点から都市内緑地の確保・拡充について追加してほしいというご意見ですとか、真ん中辺の光害の関係では、人工光により、星空が見えなくなっている。無制限に光を放つためにホタルやウミガメなどがいなくなっている。現在のところ戦略では光害には全く触れておらず、ぜひ組み込んで欲しいというご意見もいただいております。
 ということで、ごくごく一部ではございますが、全国からのご意見、地方説明会のご意見についてご紹介をいたしました。
 続きまして、[資料5]へまいりますが、[資料5-1]と[資料5-2]、これは先週6月1日に閣議決定をされました「21世紀環境立国戦略」の関係です。
 [資料5-2]の方、本文の方は後ほどご覧いただくとして、[資料5-1]、字が小さくて恐縮でございますけれども、概要の1枚紙で全体的な構造を見ていただきながら簡単に説明いたします。
 まず、地球環境の現状として、温暖化、資源の浪費、生態系の危機があって、環境負荷が環境の容量を超え、地球生態系の均衡が崩れつつあり、このままでは社会経済の持続的発展に支障があるとしております。次いで持続可能な社会の側面として低炭素社会、循環型社会、自然共生社会を示し、これらを統合した取り組みを展開することが必要であると述べております。
 2では、環境分野における日本の強みを「自然との共生を図る智慧と伝統」、「世界に誇る環境・エネルギー技術」、3つ目としては「深刻な公害克服の経験と智慧」、4つ目として「意欲と能力溢れる豊富な人材」と分析して、これらを環境から拓く経済成長や地域活性化の原動力として「日本モデル」という形でアジア、さらには世界へと発信すべきというふうにしております。
 これを受けまして3のところでは、今後1、2年で重点的に着手すべき8つの戦略を掲げております。戦略の1から3が温暖化、生態系、資源浪費のそれぞれの危機に対応した分野別の戦略で、戦略の4から8は、地域づくりと人づくりなどの横断的なものです。
 戦略1というのは、2050年までに世界全体の温室効果ガス排出量を現状の半分にするという、そういう点を含む安倍総理の「美しい星50」という提案ですが、生物多様性の関係では、戦略2の「生物多様性の保全による自然の恵みの享受と継承」、それから戦略6の「自然の恵みを活かした活力溢れる地域づくり」が特に関係するところです。それぞれに盛り込まれた多様性の施策については、[資料1]の論点に入れ込んでありますので、そちらであわせて説明したいと思います。
 ということで、もう一度、[資料1]の方へ戻っていただきまして、改めて論点についてご説明をしたいと思います。
 [資料1]の見直しに関する論点は、事務局として見直しに向けてご議論いただきたい点を大まかに書き出しております。ここで掲げた項目に限らず自由にご意見をいただければというふうに考えております。
 論点としましては、大きく全体に係る論点と、個別テーマに係る論点に分けております。環境立国戦略に盛り込まれた施策につきましては、関連する論点の下に※印をつけて書き込んでおります。環境立国の方は、今後1、2年で重点的に着手すべきものという位置付けですので、生物多様性国家戦略の方はそれを取り込んだ形で作っていくことになるのだと思います。
 まず、全体に係る論点の最初の、構成というか体裁についてですけれども、前回の小委員会の際、普及広報という観点から全体を読んでもらうためにも戦略的なものと基本計画的なものは分けたらどうかというようなご指摘がありました。一方で、3つの危機とか理念とかがわかりやすく整理されているし、国の計画としての今のボリュームはやむを得ないというご意見をいただきました。
 確かに現行戦略の策定に当たって抜本的な見直しを行って、3つの危機や理念、目標等をある程度長期をにらんで体系的に整理したところですので、これを5年で、またガラガラと見直すことにはならないのではないかと考えておりますけれども、最後まで読んでもらえるような工夫が必要でしょうし、点検の方法を順次改善してきたということとも関連しまして、例えば、今の戦略の第4部では、関係各省の施策をまとめた具体的施策というところがありますけれども、そういうところをより行動計画、アクションプラン的な形に整理していくことも考えられるのではないかと思います。
 続いて、生物多様性の現状、理念・基本的考え方ですけれども、3点掲げておりまして、1点目は、生物多様性の重要性をより身近なこととして伝えること。これにつきましては、今の理念の中に書き込んでありますけれども、それでも、そもそも生物多様性とは何かとか、なぜ重要かということが、まだまだ理解されていないということも踏まえまして、例えば食物などの結びつきなども含めて、もう少し暮らしに身近なこととして、よりわかりやすく伝える努力が必要だというふうに考えております。
 それから、次の2点目の、人類生存に関わることとしての危機感。これは温暖化だけではなくて、生物多様性の方も人類の生存に関わる問題だということを危機意識としてもっと持ってもらうようなこともあわせて伝えていく必要があろうかと思っております。
 それから、3つ目の持続可能な利用という視点についてですけれども、これは1点目の多様性が我々の生活と密接に関係しているということとも関連しますけれども、私たちの暮らしを支える多様性が、国内さらには地球規模でも限りあるものであり、将来にわたってその恵みを享受していくために持続可能な利用という視点ももう少し出してもよいのではないかという問題意識を持っております。これは日本の農林水産業のあり方もあるでしょうし、微生物を含む遺伝資源、エネルギー資源の利用という面もあろうかと思います。この点に関連しまして立国戦略では、※印にあるように、農林水産業における生物多様性保全総合戦略等の策定というのを打ち出しておりまして、生物多様性の保全による自然の恵みの享受と継承という中に、農林水産業の活性化を通じて国土の生物多様性保全を図ることとして農林水産分野の生物多様性保全総合戦略の策定というのが盛り込まれております。農林水産省の多様性戦略を現在、農水省で取りまとめ中で、7月には策定されると聞いております。
 それから、次の全体に係る論点の3つ目。超長期的に見た国土の自然環境のあり方ですけれども、これは100年先を見通した国土の生物多様性のグランドデザインと、人口減少に向かう国土の中での人と自然の関係の再構築という2点を掲げております。これらは相互に関連をしておりますけれども、現実に100年先を見通すというのは難しいことでありますが、自然を相手にする以上、長期的な視点に立って将来目指すべき方向を示すことが必要であろうと考えております。前回、資料でご説明をしましたように、2100年には中位推計でも人口が今の3分の1近くにまで減少し、高齢化がますます進むという推定をされております。これまでの人口が増え、人間が自然に圧力をかけてきた時代から、逆に人間が自然から押し返される時代に変わっていこうとしております。既に鳥獣被害の問題が各地で出ておりますけれども、そういう人と自然の関係の変化を今後どういうふうに再構築をしていくのかを考える必要があるのではないかということです。
 立国戦略の方では、このグランドデザインについて、我が国の生物多様性のグランドデザインの提示というのを掲げておりますが、生物多様性保全にかかわらず、多様なセクターが共通のビジョンのもとで取り組みが進められるよう第3次生物多様性国家戦略において、100年先の生物多様性の将来像をグランドデザインとして提示し、自然と共生する国づくりを進めるというように盛り込まれております。現行の戦略でもグランドデザインというところがありますけれども、里山に野ウサギが跳ね、手入れされたコナラ林にギフチョウやカタクリが回復しているとか、蛇行して流れる川にサケが遡上し、紅葉する岸辺をかすめてカヌーが下っていくなど、こうなればいいなというイメージをやや情緒的に書いてあります。これをもう少し膨らませるとともに、こうしていきたいという意思も入れて目指すべき方向の考え方を示せないかというふうに考えているところです。
 続きまして、評価・指標の関係ですけれども、多様性の評価については、4月の合同部会のときにもミレニアム生態系評価を参考に生態系サービスに着目した評価ですとか、経済的な側面も踏まえた評価を行うことで、国民の関心を高めることにつながるのではないかというご意見をいただきました。そういうことも踏まえて、我が国の生物多様性が今どういう状況にあるのかということを総合的に評価し、それをできるだけわかりやすく伝えていくことが必要だと考えております。
 それから施策の効果を把握するための指標について、これについても合同部会のときにご意見をいただきました。いろいろ施策を講じてきているようだが、その結果として、我が国の生物多様性がよくなったのか悪くなったのかを把握することが大事であり、そのための指標を考えるべきである。その際、国際的な動向を踏まえることや、個別的な指標とともに、例えば美しさといった統合的な指標についても検討すべきであるといったお話がありました。こうした点も含めて、より効果的な指標について関係各省とも連携をして検討をしていく必要があると考えております。
 立国の方では、条約締約国会議の招致と次期世界目標の設定というのが入っています。日本が立候補しているCOP10が開催される2010年は2010年目標の目標年ですが、そろそろその次の目標をどうするかという議論が始まると思います。その中で目標の達成状況を評価するための指標として、より効果的なものをというような議論も出てくると思いますので、そうした流れにも乗って我が国としても指標の検討をしていかなければならないと思っております。
 もう一つ、立国では世界に先駆けた国別生物多様性総合評価の実施というのを入れておりまして、こちらについては、条約事務局が昨年公表した地球規模生物多様性概況(GBO2)ですとか、その基礎となったミレニアム生態系評価も参考にするとともに、今年3月にドイツが提案をした経済的側面を含む多様性評価、そういう動きも見ながら我が国の多様性の評価に取り組んでいきたいと考えております。
 続いて、個別テーマに係る論点ですけれども、一つ目は、地球規模の生物多様性保全への対応です。2点挙げておりまして、1点目は温暖化による生物多様性への影響。これは既にいろいろ確認をされつつあるわけですけれども、そういう点も踏まえて、温暖化の問題と多様性の問題を統合的に考えていくことが必要であろうということです。ただ、温暖化が進んでいったときに多様性に関する施策の側からどういう対応が取れるのか。多様性の温暖化の影響をモニタリングしていくということになるでしょうけれども、そのほかに温暖化への適応力を高めるための多様性の側からの効果的な施策にどういうものがあるかということについては、もう少し考える必要があろうかと思っております。
 もう1点は、自然資源の輸入など、国民生活が地球規模の生物多様性に支えられていることの認識ということですが、我が国は食料の6割、木材の8割を輸入しておりまして、我々の生活が世界全体で支えられているというか、影響を与えていることに対する認識を深める必要があると考えております。その上で、輸出国側の生物多様性保全への協力を進めていくことも必要かと思います。また、多くの資源を輸入に頼る一方で、国内を見てみますと、耕作放棄地の増加や人工林の手入れ不足といった状況にあることから、国内の農地や森林という自然資源をまずは有効に活用していくことも必要ではないかということも考えています。そのことがまた里地里山など第2の危機に対する対応になっていくのではないかという気がしております。
 続いて、学習・教育、普及広報、地方・民間の参画という点です。まず、広報につきましては、生物多様性なり、国家戦略に対する認知度アップのための広報の強化が大きな課題と考えております。戦略を新しくする機会に、その宣伝を兼ねていろいろ手だてを考えていきたいと思いますし、3年後にCOP10が日本で開催されるとなれば、マスコミの関心も高まるでしょうから、そうしたチャンスをとらえて、マスコミ等の力もお借りして広報の強化に取り組んでいきたいと思います。
 それから、学校・地域における教育、博物館の活用等による生涯教育ですが、これは点検の審議会でも必ずご指摘をいただく点であります。学校教育の中での取り組みについては、環境省としても文科省との連携をより具体的に進めていきたいと思います。文科省では、放課後を活用して地域の方々の力を借りる取り組みとして、放課後子どもプランというのを進められているということですので、その一環として、自然に詳しい地域の方が地域の自然を題材に子供たちの自然学習の手助けをするというようなことについても、文科省とも相談をしていきたいと思います。
 それから、兵庫県のある博物館では学校の先生方を対象に自然や生き物についてのセミナーを開催したりということもあるようですし、地域の中での生涯学習や学校教育との関係でも博物館の果たす役割が重要なものになってくるのではないかというふうに思っております。
 それから、次の地方版生物多様性戦略の策定ですが、前回もご指摘がありましたけれども、国が戦略をつくって国だけが取り組みを進めればいいということではなくて、やはりそれぞれの地域で、それぞれの地域の方々が地域の自然をどう保全し活用していくかが重要であって、国家戦略をそうした地域の取り組みに確実につなげていくためにも、都道府県などが地方版の戦略をつくって間をつなぐことが大事だというふうに考えております。
 現在、千葉県などで県版の戦略づくりが進んでおりますので、そうした動きを踏まえつつ、国としても地方の自主的な戦略づくりを促すようなことをしていきたいと思っております。
 また、企業活動ガイドラインの方は、民間企業というのは自然資源の利用ですとか供給をしているという点で、生物多様性と大きな関係がありますし、CSRの一環として多様性保全を進めたいという企業も含めて、最近は多様性への関心が高まりつつあるのではないかと感じております。しかし、関心はあるけれども何をすればいいのかよくわからないという声も聞きます。こういったどういうことをすればいいのか。どういうことに気をつければいいのかといったことを、具体的な事例を交えながらガイドラインのような形でまとめることで企業の取り組みを後押ししていければということを考えております。
 それから、地域での人づくりという点です。今ご説明した広報ですとか、教育あるいは地方・民間の参画というのは、多様性保全に対する裾野を広げるというものですが、それとともに、実際にそれぞれの地域でのいろいろな活動を行う人づくりが大事という視点です。これは持続可能性を目指して農林漁業に携わる方々も入るでしょうし、いろいろな活動をされているNPO・NGOの方ですとか、鳥獣被害対策も含めた鳥獣の保護管理を担う人材とか、博物館のインタープリターとか、そういう方も含まれると思います。
 それから次、立国の関係では、COP10の開催を契機に、生物多様性に対する国民の理解を深めるための取り組みや地方版戦略の策定、あるいは市民参加型調査など、地方・民間の連携による一連の取り組みを、ここに挙げましたように「いきものにぎわいプロジェクト」と称して積極的に展開することを入れております。
 続いて、個別テーマの3つ目は、沿岸・海洋域の保全です。日本は四方を海に囲まれておりますし、領海と排他的経済水域を合わせた面積が世界で6位という広さを持っております。この4月には海洋基本法が成立し、その中には海洋環境の保全が基本的施策の一つとして位置づけられております。その中では、海洋環境の保全の例示として、海洋の生物の多様性の確保というのも明記されております。今後、海洋基本計画が策定されることになっておりますが、そういう動きと連動しつつ関係各省が連携してこの問題に取り組んでいくべきではないかと考えております。
 ポイントとしては2点挙げておりまして、1点目は「里海」としての沿岸域の保全・再生。海の中でも干潟、藻場、サンゴ礁、あるいは砂浜などの海岸の浅いところは生物多様性が大変豊かなところですし、人の暮らしや利用に近いという意味でも里海と位置づけて保全・再生を図っていく必要があるのではないかということです。
 もう1点は、漁業と両立する海域保護区という点です。海の保護地域というのは環境省でも国立公園や鳥獣保護区などがありますが、国立公園では陸域のバッファーとしての指定であったり、鳥獣保護区も渡り鳥の生息地としての干潟がメインであったりという状況です。海の中の生物の多様性に着目した保護の仕組みも必要ではないかという問題意識です。ただ、漁業との関係もありますので、漁業を規制するということだけではなくて、漁業資源にとってもプラスになるような形もあるのではないか。その点では漁業者による自主管理を基本として海域管理計画を策定しようとしている世界遺産の知床の例は一つの先例になるのではないかと考えているところです。
 立国の関係では、干潟・藻場の保全・再生や、持続的な資源管理などの統合的な取り組みにより、多様な魚介類が生息する恵み豊かな「豊穣の里海の創生」ということを盛り込んでおります。
 次の裏の2ページの方へ行きまして、個別の4つ目の論点として、保護地域と生態系ネットワーク、自然再生ですけれども、生態系ネットワークについては現行の戦略での主要テーマの一つとして取り上げました。ただ、具体化がまだまだこれからという段階でございます。現在、策定の作業が進んでいる国土形成計画の中でもエコロジカル・ネットワークが位置づけられるような方向ですし、それを受けた広域地方計画の中でより具体化していくことについて国土交通省の国土計画局をはじめ、関係各省と連携して取り組みを具体化していく必要があると考えております。ネットワークの形成に当たっては、流域圏を機軸として、森、川、そして海、さらには流域の農地までのつながりという視点も重要ですし、渡り鳥が飛来する湿地、ウミガメが産卵に上がる砂浜ですとか、あるいはサンゴ礁海域のつながりなど、アジア太平洋地域との関係も視野に入れていくことが大事だと考えております。
 国立公園の役割強化と管理の推進についてですが、先日も日本地図で見ていただきましたように、国立・国定公園というのは国土の約1割を占め、大きなまとまりがあるという点で生態系ネットワークの中核をなすものと考えておりますが、生物多様性という要素も入れて、例えば照葉樹林ですとか、里地里山、海域などでの指定を進めることですとか、規制的手法ばかりではなく、地域の多くの主体が参加できるような管理のあり方を考えることなど、制度面の見直しも含めて対応していく必要があろうかと考えております。
 それから、自然再生の推進につきましては、現在、関係各省が取り組みを進めておりますけれども、成果が見えてくるまでに時間がかかるという面もあります。しかし引き続き着実に取り組んでいきたいと考えております。そのときに国土レベルあるいは広域ブロック単位の生態系ネットワーク構想を具体化させていくということで、構想を踏まえてそれぞれの地域の自然再生を進めていくという、上からの考えがあれば、ボトムアップの仕組みをとっている自然再生法の動きと、うまくつながってくるのではないかというふうに思っております。
 環境立国の関係をいくつか並べていますけれども、「優れた自然環境をつなぐ生態系ネットワーク構想の推進」、「国境を越えた生物多様性保全のネットワーク構築」、「コンパクトシティなど持続可能な都市への構造改革」、「緑豊かな国土の保全に向けた美しい森林づくり」というものを盛り込んでおります。そのうち3つ目の「コンパクトシティなど持続可能な都市への構造改革」という中では、緑地保全・都市公園の整備・屋上緑化の推進等によって、都市の中に森と呼べるような豊かな自然空間をつくることですとか、風の通り道や景観に配慮した水と緑あふれる美しいまちづくりというのが盛り込まれているところです。
 続いて、里地里山ですが、里地里山についても、現行の戦略の主要テーマとして取り上げたことで、関係各省の取り組みが前進をしたというふうに考えております。引き続き取り組みを強化していきたいと思っておりますが、3つのポイントを掲げております。
 1点目は、将来世代に引き継ぐ重要な里地里山です。里地里山というのは国土の4割を占めると言っておりますが、その全てについて、かつてのように人間が手を入れて維持をしていくというのは現実的には無理であろうかと思っています。里山について言えば、自然の遷移にゆだねて、やがては自然林に移行させていくところと、将来にわたって人手をかけて里山の二次林として維持していくところとの仕分けも必要ではないかと考えております。ここでいう重要な里地里山というのは、里地里山100選といったような形で、よく手入れされたところだけを選ぶということではなくて、今は荒れてしまっているけれども、かつての状態を取り戻したいという地域の意思があるところも含まれるのではないかと考えております。
 それから、里地里山の管理の担い手の話ですけれども、里地里山を維持したい、取り戻したいというのは担い手がなければそれはかなわないという意味で掲げております。これにつきましては、農林業の振興を通じた地域の活性化というのが基本になるかと思いますけれども、それだけではなくて、NGOや都市ボランティアの参加、自治体や企業の支援などの仕組みも必要になろうかと思います。いずれにしても、継続的な管理ができるということが重要で、その点で次の3点目に掲げている新たな資源の活用ということも含めて経済性が大事といいますか、大きな課題だと考えております。この新たな資源活用策については、農林業の振興のほかに、例えばエコツーリズムですとか、バイオマスなど、里地里山にある資源の活用も考えられると思います。バイオマスで言えば、稲わらですとか、間伐材、あるいはススキとかカヤなど、里地里山に豊富にあって、食料と競合しないものがバイオエタノールの原料として使えるようになれば、里地里山の保全にも役立つと考えられるので、そうした点での技術面あるいはコスト面での検討を進めることが重要と考えております。
 立国の関係では、里地里山に関連している項目として、「世界に向けたSATOYAMAイニシアティブの提案」、「未来に引き継ぐ里地里山」、「環境保全型農業の推進などによる農林水産業の活性化」、「みんなが参加し、「手入れ」でつなぐ、元気な故郷づくり」というのを掲げております。このうちローマ字の「―SATOYAMAイニシアティブ―の提案」というのは、我が国の里地里山ですとか、あるいはアジアなどに見られる自然共生の知慧と伝統を現代社会に再び取り戻して、さらに発展させて活用していくことを「―SATOYAMAイニシアティブ―」と名づけて世界に提案しようというものでございます。
 それから、個別の6番目の野生生物の関係ですけれども、3つのポイントを挙げておりまして、1点目は、外来生物関係ですけれども、在来生物の国内移動や非意図的に導入される生物への対応です。
 国内の種でも、国内の他の地域に持ち込むことは生態系の攪乱を招くので、この問題への対応が重要ですが、これまでには特に大事なところとしての原生自然環境保全地域と、国立・国定公園の特別保護地区については、他地域からの持ち込みを規制する措置を講じております。ですが、それ以外のところについてもむやみに持ち込みが行われないような手だてが必要だというふうに考えております。
 また、非意図的な導入の話は、外来生物法の指定種であっても、アリとかクモとか小さいものについては人とか貨物などについて、いつの間にか国内に入ってくるというようなことがあって、水際でのチェックがなかなか難しいという面があります。それからツボカビのように、見えないけれどもペットについて入ってくるとか、あるいは人には影響はないけれども両生類を絶滅させる恐れがあるという、そういうリスクがあるということで、そういった場合への対応も課題になっております。これらについて体制面とか、制度面での検討が必要かと考えております。
 それから、2点目は希少種の関係です。種の保存法に基づく取り組みを着実に進めていくことはもちろんですけれども、トキについては来年の試験放鳥に向けた準備が進んでおります。放鳥自体より放鳥後野生下で定着できるかどうかというのが大きな課題ですので、地域の協力を得た継続的な取り組みを進めていきたいと考えております。そのほかにツシマヤマネコでも野生化に向けた取り組みが進んでおりますけれども、野生に放せるまで持っていくまでは動物園ですとか、植物園ですとか、そういうところとの連携が重要と考えております。
 3つ目は、鳥獣害に強い地域づくりと重要な生態系での鳥獣保護管理の強化です。各地でシカやイノシシ、カワウ等による農林水産業被害が深刻化しております。クマについては人身被害も出ておりますが、そういう状況への対応が重要な課題となっております。農林業従事者をはじめ、地域の人口が減少・高齢化する中での、効果的な対策について農水省とも連携をして、取り組みを進めていかなければならないと考えております。
 それからシカなど大型種の増加によって、尾瀬とか、知床といった国立公園など重要な地域で植生への影響が顕在化をしております。こういうところについては、鳥獣保護法の特定計画の仕組みも活用しながら、特に重点的な鳥獣保護管理を進めていくことが必要といえます。
 論点の最後ですけれども、自然環境データの関係です。これまでに自然環境保全基礎調査やモニタリングサイト1000の推進によってデータの充実に努めてきておりますが、さらに充実をしていくとともに、ここでは3つのポイントを挙げております。
 1点目は、温暖化の影響を含めた国土の生物多様性の総合監視体制の整備です。我が国の生物多様性は3つの危機に直面をしていると言っているわけですけれども、IPCCの報告書によれば、温暖化が進むといずれ生態系の回復が追いつかなくなり、それがまた気候変動を増幅するという、負の連鎖に陥る恐れさえあるということです。温暖化の影響を含めた国土の生物多様性の状況を総合的に監視していくことが重要な課題と考えておりまして、環境立国の方でも、「生態系総合監視の実施」が盛り込まれております。モニタリングサイト1000という取り組みを既に始めておりますけれども、温暖化の観点も加えた、より総合的な監視システムというものをしっかりと構築していく必要があると考えております。環境省だけではなくて、例えば文科省で進められている地球観測データ等との連携も課題かと思っております。
 それから、2点目のポイントとして、市民参加型モニタリングです。公的機関によるデータ整備の充実に加えて、より多くのデータをより広域で収集するためにも、市民や学校などの力を借りたモニタリング体制を整備することも重要と考えております。多くの人の参加が実現をすれば、多様性についての広報や教育という意味でも効果があるのではないかと考えております。
 それから、最後は中大型哺乳類、海洋、里地里山等に関するデータの充実という点です。これまでの基礎調査などで弱い部分、充実を図るべきものとして例示をしております。昨年各地でクマの出没が問題になりましたが、一体全国で何頭ぐらいいるのかとなるとよくわからない。あるいは海についても干潟や藻場の広がりはわかっても、魚も含めた生物が何種類ぐらい、あるいはどれぐらいの生息数があるのかよくわからないとか、里地里山で竹林が広がるというのが問題だと言っておりますけれども、全国的にどれぐらいの範囲で、あるいはどれぐらいのスピードで広がっているのかとなるとよくわかっていないというようなことがあります。おおよその推定でもよいので、その手法を開発するとか、全体的にデータの更新に時間がかかっているという状況も、衛星の活用等によって速報性を高めるというような形で改善を進めていく必要もあるのではないかというふうに思っております。
 最後、3ページの方は、各省から個別に出していただいたものもありますので、それを掲げておりますが、その多くは今ご説明をした中に入っていたのではないかというふうに思っております。以上、大変長くなりましたが、私の説明を終わります。

【熊谷委員長】ありがとうございました。ただいま事務局から説明がありました国家戦略見直しの論点等について、ご質問、ご意見をお聞きしたいと思いますが、なお、本日は議論の時間が約2時間ございますので、今ご説明いただいた[資料1]の論点を大きく4つに分けまして、まず初めに1ページの全体に係る論点。次に2の個別テーマに係る論点の、「地球規模の生物多様性保全への対応」から「沿岸・海洋域の保全」まで。そして3番目に、[資料1]の2ページの残りの「国立公園等保護地域と生態系ネットワーク及び自然再生」から「自然環境データの整備」まで。そして4番目に3ページにございます各省庁からの追加分を含め、改めてそれらを含めて論点全体を通してというようなことでご質問、ご意見を伺っていきたいというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。
 まず初めに、1の全体に係る論点について、ご質問、ご意見がございましたらよろしくお願いいたします。それでは、和里田委員からお願いをしたいと思います。

【和里田委員】 先ほどの説明で、超長期的に見た国土の自然環境のあり方を相当、現計画に比べると踏み込んだ書き方をしていくというお話を伺いました。先立っては21世紀環境立国戦略というものもおまとめになったという点で申し上げたいのですが、例えば、国土計画については、生物多様性の保全という国土計画、これは確かに各省というと国土交通省なのかもしれませんけれども、これなんかも本当は各省というよりも、国土全体という観点でとらまえる位置づけであるべきなのかというふうに思います。
 次の超長期的に見た国土の自然環境あり方というところでは、国土計画ですとか、国土形成計画へのガイドラインを示すというぐらいのスタンスで書くということと、それからまた国土計画と国土形成計画をまとめる過程においては、環境省が相当、主体性を持って書き込んでいくぐらいの役割をやはり担っていくということもこれから必要なのではないかと。
 それから、たくさん都市計画法ですとか、いろいろな土地利用の関連法がありますが、そういうものの運用いかんによってどう生物多様性が守られていくのか。土地利用関連法がこうであるから、生物多様性を守っていくのに支障があるということもこれから点検して、そういうものも修正、改正してもらっていく方向にまで持っていくということまでしていかないといけないのではないかというふうに思いました。

【熊谷委員長】 ただいまのご意見についていかがでしょうか。それでは、計画課長からお願いいたします。

【渡邉自然環境計画課長】 今のご指摘の国土利用形成計画、あるいは土地利用関連の計画との関係をつけながら、国家戦略における将来像の検討、その辺を結びつけるような形で進めていきたいと思います。国土形成計画は現在、検討が続いていて、年内ぐらいに策定というふうな動きになっておりますけれども、その検討の中でも環境省の方から生物多様性の視点ということで意見を申し上げたり、かかわりを持ったりしているところです。国土形成計画の場合は、今回の計画づくりでは、全体の国土形成計画を受けて広域地方計画という、地方ブロックごとの計画づくりが進むことになっています。地方における検討体制をつくって、関係省庁も参加して広域地方計画をつくっていく、さっき出ました生態系ネットワークについても、広域地方計画で具体的な検討をしていく一つのテーマとして掲げられておりますので、そういう広域地方計画レベルでも生物多様性の視点を入れ込んでいくということで、環境省としても積極的なかかわりを持っていきたいなと思っております。

【和里田委員】 それから土地利用関連の取り組み、運用に関しては、環境省としてはどうですか。

【渡邉自然環境計画課長】 その辺も土地利用5地域区分、都道府県レベルの土地利用計画ともあります。

【和里田委員】 いやいや、そうではなくて、都市計画法だとか、いろいろな土地利用に関連する現況の法律がありますよね。そういうものの運用に対して、これからは踏み込んでいく必要もあるのではないか。注文をつけていくというスタンスをやっぱりここの戦略の中に位置づけていってもいいのではないかと思います。

【渡邉自然環境計画課長】 わかりました。その辺、関係省庁とも相談・調整をしていきたいと思っております。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。それでは、一応、森戸委員、それから中静委員、鷲谷委員、森本委員の順でお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【森戸委員】 ありがとうございます。前回ちょっと触れたので、少し今の国土形成計画の関連ということで、少し私なりの意見を言ってみたいのですが 、まず最初に言いたいのは、広報啓発活動は非常に大事だと、これはよくわかります。私のように一般国民からすれば、啓発してもらうというのは非常にいいことですから、これは全然否定していないのですが、気になったのは、本体である国家戦略は非の打ちどころがないというと大げさだけど、まあ非常にいいものだと。あとは、これをうまく国民にわかりやすく言いかえて啓発していくべきだというような発想は、ちょっといかがかなということで、やっぱり本体そのものをどういうふうに、見直すというか、つくりかえるか、というふうに考えるべきではないかと思っています。
 国家戦略というのは、基本的には、私は明確であるべきだというふうに思っているのですね。ところが今のご説明もそうだし、もちろん現行の国家戦略を見ると、ものすごい分量だし、ということは分量だけの問題ではなくて、やっぱり多様性に満ちている、国家戦略そのものが。だから、何が中心で、何かポイントで、何から攻めればこういうふうにつながっていくというストーリーとか、そういうのがよくわからない。ある意味では非常に網羅的である。分厚くするなというふうに言っているのではないのですけれども、なぜ分厚くなっているかというと、やっぱり基本計画的なものが全部入っているからだろうし、それから年次報告的なものも入っている、データも入っているということで分厚くなっている。ただ分厚くなっていること自身はやむを得ないと思うのは、これは多分、省庁間の確認事項で、閣議で決定することによって省庁間に縛りをかけるような効用もあるのだから、それを全部外して、ある部分だけだったら難しいというのはわかります。
 ただ構成上は、国家戦略的な簡潔な部分と、例えば、今回の21世紀環境立国戦略は20何ページですけれども、これと性格が違っているのは十分承知しているのですけれども、でも戦略というのは、この程度で簡潔にまとめるのが本来のあり方ではないか。だからあれもこれもじゃなくて、あれかこれか、優先順位はこれなんだということが明確になるという部分と、それから基本計画あるいは年次報告的な部分で網羅的にやる部分とを構成上分ければ、余り面倒なことなく見直しが進むのではないか、というのが言いたかったことなんです。
 それで、先ほど出ている国土形成計画との関連というのは、これは省庁間の調整という部分もあるから私はよくわからないのですが、ただ、例えば表題で「国土の生物多様性のグランドデザイン」という表現になっているけれども、本当は「生物多様性から見た国土のグランドデザイン」という方が普通の人にはわかりやすい。国土ということで考える以上は。それでそのときの国土が生物多様性から見ると、一般的に経済活動やその他から見た国土像とはやっぱり違うのだということを明確に出してほしいですね。
 例えば、海域とか、里海なるものをもっと沖合いまで広げていくのか。そういう海域の問題が国土像の中にはっきり入ると。あるいは自然公園、国立公園とか、そういうものの位置づけもそこで明快に出ていると。
 それから、できれば日本の経済活動が、先ほど出ましたけれども、途上国とか、そういうところの生物多様性に影響しているという問題も国土像の中で問題として指摘すべきなんじゃないか。そうすれば、従来の国土像とはやはり違う、生物多様性から見るとこういう国土のイメージが見えるんだという、そういう図を示すというのが戦略の大事な視点かなと思います。
 それから、さっき地方版の戦略というのが出ていましたけれども、これはどんどんやっていただいていいと思うのですけれども、私は、国がまず計画を作る、その次は都道府県の計画をつくるという、そういうパターンは生物多様性から見た国土像にはなじまないのではないか。表現は悪いのですけれども、あくまでも生物多様性から見たゾーニングのようなものを示すのであって、それは行政区域にとらわれる必要はないと思います。
 生物多様性から見れば、国土というのは、こういう地域ゾーンになるのだというのを示せばいいのであって、その後、地方行政団体がそれをもとにしてそれぞれの地方版をつくるのがいいと思うのですが、国土像を環境省が示して、あとは各地方自治体がその地方版をつくれというのはちょっと短絡的ではないか。それはその間にもう一つ地方像というか、生物多様性から見た地方の姿というものを出すという、これが戦略ではないかと思います。
 それから、できれば先ほど言ったように、国際的な影響を踏まえたものを出す。実は前の戦略で見ると国土像といいますか、国土における生物多様性のあり方というのはほんの2ページぐらいでしょう。だから本来はこれがもっと前の方にあるべきだろうというふうに思うのですね。
 まだいろいろ細かいことはありますけれども、そうすると、当然、構成の見直しが必要になるし、単に章・節が違うというよりも、戦略的に書く比重が違ってくるかなというふうに思います。ちょっと長くなりましたけれども、以上です。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。基本的な論点には大変重要なご指摘だと思いますが、いかがでしょうか。今のご意見に対して、何か事務局の方であれば。

【亀澤生物多様性地球戦略企画室長】 一つ、1点目の構成といいますか、全体のつくりの関係で、私がちょっと出した第4部のところというのは、このパンフレットでいうと後ろから2枚めくってもらったところに現行戦略の構成というのが後ろから2枚めくってもらうと21ページ、ここに全体の構成というのがありますけれども、その下から2番目に第4部、具体的施策の展開というところがあります。それから、その上の第3部の右側に主要テーマといっている7つのテーマを掲げておりまして、第3部の主要テーマの7つというのが重点的に取り組むべきこと、戦略的に取り組むべきことというイメージですが、その後に第4部として各省の施策を具体的に並べているところがあって、ここが一番ボリュームがあるのですけれども、第3部の主要テーマと第4部の各省の施策との関係が今のところ現行のものではややあいまいになっていて、主要テーマの方に入っているけれども、第4部の施策には入っていないとかいうところもあって、その辺の整理がいるのかなというふうに思っております。
 それから、わかりやすくするというか、読んでもらうためにも、第4部のところを、主要テーマで取り上げるところも含めて、具体的にどう進めていくのかというのを全部書き込んで、第4部だけを見れば具体的にだれがどういうふうにやっていくのかというのがわかるような形で、いわゆる行動計画、アクションプラン的に内容をつくり直す。その部分だけ切り離せば切り離せるような形で、それをまた点検に活かしていくという、そういう意味で第3部までを見れば、いわゆる戦略的な部分があって、第4部はそれと切り離そうと思えば切り離せる形で、各省のアクションプラン的な構成につくりかえるというのが一つ考えられるのかなというのは今のところこちらで考えているだけですけれども、そういうことも考えられるかもしれないということでございます。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。重要な論点を明確にしていったらいいというようなご意見ですので、今後の議論に十分生かさせていただきたいというふうに思いますので、それでは中静委員にお願いいたします。

【中静委員】 私の意見といいますか、考え方なんですけれども、真ん中の超長期的に見た国土の自然環境のあり方ということなんですが、この中でぜひ生かしていただきたいなと僕が思っている点は、これから100年というのは、恐らくここには人口減少とか書いてありますし、後の方では野生生物被害に強いというようなことも書いてあるのですが、気候変動についてもそうで、結局4℃上がるとか、2℃上がるとかというのは予想がつかないわけでして、そのほかにも土地利用や経済的な状況なんかもこれから100年先の予想というのが必ずしも的確に予想できるとは限らないという前提に立って、やっぱり生態系、あるいは景観ないし生物多様性がいろいろな変化に対して強いといいますか、ロバストであるというようなものを目指していくという視点を早くから持っていかないと、いろいろな変化が起こったときに対処療法的にいろいろなことをするようなことになっていくのではないかなというふうに思いますので、ぜひいろいろな変化に対していろいろな意味で適応できるというようなことを目指していくということが重要なんではないかなというふうに思います。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。貴重なご意見として承っておきたいというふうに思いますので、それでは、鷲谷委員お願いいたします。

【鷲谷委員】 超長期的に見た国土の自然環境のあり方のグランドデザインの提示というところに関してなんですけれども、現戦略でも感覚的にとらえることと、わかりやすいイメージというのは提示されていたのではないかと思うのですが、具体的に今アクションとして提案されていることと、割合、美しいイメージがあるのですけれども、その間が切れていたということが、もしかすると一番問題だったのではないかと思っています。
 それで、ご意見の中にぱらぱらと見ていましたらそういうものがあったのですけれども、今よりも少しでもいい状態にするとか、少しでもそれに関する意識を高めるということは、これまでの戦略でとても重要な役割だったと思うのですが、もうそろそろそういう将来像というものをしっかりした形で確立させて、温暖化の取り組みではないですけれども、バックキャスティングによって、そこに到達するんだったら今は何をしておかなければいけないかということを、今すぐに何をしていかなければいけないかということまですべて明確にして書き込めるかどうかわからないのですけれども、そういう考え方に基づいて実効性を高めていくのだということは、少なくとも今度の戦略の中で明瞭にしていった方がいいのではないかという気がします。
 といいますのは、生物多様性に関して一番関心が高くて、いろいろなものを見ている身としては、やっぱり生物多様性の劣化であるとか、生態系の不健全化の流れというのはかなり大きいもの、厳しいものとして受け取らざるを得ないような現実にあるのですね。それと美しいイメージというのがやっぱりどこか齟齬感を免れないような気がしますので、何とかすごく大きなイノベーション―今のはやりの言葉で言えば、イノベーションが必要になってくるのではないかと思いますけれども、そういうことを検討するということは少なくとも戦略の中に書き込んでいただけると、少し希望が持てるかなという気がいたします。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。いかがでしょうか。では、計画課長お願いいたします。

【渡邉自然環境計画課長】 前回の戦略をつくるときにも生物多様性から見た国土の将来像というのを示して、そのために何をするかというところで、将来像をできるだけわかりやすいイメージで出そうということで、試みとして現在の戦略のような表現を出したのですけれども、ぜひ今回の第3次の中で、鷲谷委員のご指摘のように、そこともうちょっと具体的な施策をつなぐ具体的な将来像をどこまで提示できるか、里地里山が国土の4割という中で、里地里山をどんなふうに多様性の目から見たら持っていきたいのかということを前回より具体的に提示することで、そのために今、何をすべきかという実効性のある政策提案につながるようなつくり方をしていければと思っています。
 具体的な将来像を示すときに、先ほど中静委員からもありましたように、例えば温暖化の影響がどう出るか、社会経済的な状況が人口はいろいろな推計が出ていますけれども、国内資源の利用の動向がどうなっていくか。そういうので不確実な面もありますけれども、そこを見込んだ上で、多様性の面から見てこういう将来像に持っていきたいというのができるだけ具体的に提示することで施策につながるようなつくり方が、できればなと思っております。

【熊谷委員長】 それでは、森本委員お願いいたします。

【森本委員】 ありがとうございます。いくつかというか、2つほどお話ししたいのですけど、一つは、全体を考えたときに、これは日本の我が国の生物多様性の国家戦略なんですけれども、日本の現状を世界との関係でとらえるという視点があった方がいいのではないかなと思いました。かなりやっぱり途上国と日本との状況が違うということを踏まえて、我が国だけのこともあるのですけれども、一緒に解決していった方がいいというようなこともあろうかと思いますので、そういう視点がちょっと入らないかなと思ったのが一つございます。
 それとちょっと関連するのは、バイオリージョンという考え方がございますね。ああいう地域の、あるいは自然立地的な考え方で土地利用だとかゾーニングだとかしていくという基本的な考え方というのが、やっぱりあらゆる産業構造あるいは土地利用の構造と関係してきますので、第1次の戦略だったのですか、あれの意義は、僕はあの考え方が少し出ていたというのが、意義がやっぱりあるのかなと思うのですけど、それと第2の戦略では、第2の戦略の新・戦略は大変よくできていると思うのですけれども、第1の戦略に持っていったらいいところをもう一度ブラッシュアップする形で入らないかなと思うことが一つでございます。
 それから2つ目は、温暖化との関係なんですけれども、ここでもやはり生物多様性が温暖化に伴って大変なことになろうかというのが各地で言われているわけですけれども、温暖化自体が過去の生物多様性の成果というか何というか、化石燃料をいっぱい使っているという、そこに基本的な課題があって、これ結局、温暖化も生物多様性の超長期的に見た、要するに、恵みをだめにしていることによることであって、結局それが回り回って加速度的に事態が破局に行く可能性もあるのだという危機感をぜひ入れていただきたいと思いますので、要するに、いわゆる被害者としての生物多様性、あるいは、今日あす何か絶滅する危機に瀕する生物に対する対応というのもあるのですけれども、超長期的な理念とうまく両方書き分けて、理念的なところをちゃんと書いていただけたらと思います。この2点です。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。ご意見ごもっともですので、事務局で今後整理をしていっていただきたいと思います。それでは、篠原委員、石坂委員、三浦委員の順でお願いしたいと思います。お待たせいたしました。どうぞ。

【篠原委員】 2つ言いたいと思います。一つは、今度、地球温暖化の問題と、それから人口減少というのが前回よりもっと明確な課題として出てきたということですよね。私はそう理解しているのですけれども、前回の5年前よりも。
 それで、国土形成計画で恐らくやっておられると思うのですけど、10年後の人口分布、20年後の人口分布、100年後はちょっと無理かもわかりませんけど、その辺、きちんとこのまま放っておいたらこうなるよというのを踏まえて、さっきから問題になっている里地里山の、この地域では全然メンテができないというのはこのぐらいになるでしょうとか、その辺のデータの予測みたいなものをどこかでばしっと出すというのが重要じゃないかなと思います。
 多分、それはこのまま放っておくと生物多様性から問題になって、少し経済産業政策も変えて、人口分布をそれなりに持っていってもらわないと困るという話にも恐らくなってくるんじゃないかと思うのです。このままだと東京ばっかりでしょう。それが一つ。
 それから、2つ目はものすごく現実的な話なんですけど、私は景観が専門なので、地方の都市の都市計画審議会とか、最近は景観行政団体なるところがふえてきて、景観計画をつくっています。さっき国、都道府県という話が出ましたけど、都市計画ではなかなか難しいかもわかりませんけど、景観計画ですと、大体、市でも全市を対象にしているのです。そうすると、山もあるし海もあるしということになっています。
 ただ、今やられている景観計画は、ここは看板が汚いよねとか、海岸をもっと保全しましょうとかと、ある意味では非常にわかりやすいです。そこに生物多様性の観点を組み込んで景観計画をつくってくださいというのは、僕は実効性がかなり上がるのではないかと思うのです。
 逆に景観計画の方から行くと、逆にこういう観点が抜けていて、単に見た目だけというのは底が浅いと。何かそれをうまく組み込めるようなシステムをやると、わかりやすいだけに市民は結構熱心なんです。我がまちを少しはきれいにしましょうという、今ちょうど次々につくっている段階ですから、何とか、だって環境省だって景観保護の許可省庁ですよね。国交省とも話して、当然、都市だけではなくて周りの農地とか農村も入っていますから、僕はわかりやすさというか、市民に浸透させるというか、意味では非常にうまくいけばうまくいくのではないかなと思ってお願いしたいと思っています。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。今のご意見についてはいかがでしょうか。亀澤室長の方からお願いいたします。

【亀澤生物多様性地球戦略企画室長】 長期的に見た人口の地方別の動向というのは資料集でいいますと、分厚い資料集の中に資料があるのですが、81ページ、それから82ページ、83ページに長期的な人口の動向というのがございます。83ページの方は2030年までの人口増減の推計をしたもの、日本地図で挙がっているのですけれども、それから表の81ページの方は、それを表で整理したものですけれども、三大都市圏と地方圏に分けてあって、地方圏の方で減少の割合が大きいという状況になっております。
 それから地方圏でも都市圏でも、それぞれの中の中心市街地での減少が比較的大きいというような状況で、いわゆる空洞化というのも進みつつあるという検討が出されております。いずれにしてもこういう資料もありますので、それも踏まえて将来的な国土のあり方、それを多様性の観点からどういうふうに見ればいいのかということも勉強しつつ、書いていきたいというふうに思っております。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。それでは、石坂委員よろしくお願いいたします。

【石坂委員】 事務局の論点の整理、大変よくできていると思います。さらにこれをもとにして議論を深めていっていただければ立派なものができるんだろうと思いますが、1の全体に係る論点というところについて一つだけ申し上げようと思うのですが、100年先を見通した生物多様性のグランドデザイン、これは確かにこういうものを頭の中に描いて、そしてこの5年の計画というものを議論していかなければならないと。まさにそうなんですね。
 これは一つのやり方としては100年前と比べて今がどう変わっているのかということが一つの目安になって、これから100年を見ていくということになるのでしょうけれども、これから100年ということになりますと、今、話題になっております温暖化の影響もありますし、どう変わっていくかということは難しいところがあると思うのですね。100年先のグランドデザインは必要だと思うのですが、どういうコンセンサスをこの審議会として持つかということを十分に議論を尽くして、そのコンセンサスに基づく処し方をしていただきたいと思います。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。そのとおりのご意見だと思いますので、十分にきっちり考えさせていただきたいというふうに思います。それでは、三浦委員お願いいたします。

【三浦委員】 私も全体に係る論点の中で一つ要望したいと思うのですが、全体に見ていくと、生物多様性条約を受け入れて今日に至っているわけですが、これまでの2回の戦略というのはそれの浸透過程といいますか、受容過程でもあったと思うのです。今後、条約そのものの基本精神は、利用やそれから生物多様性にかかわる部門において、環境政策のそのもののメカニズムに意思決定のメカニズムに生物多様性の観点を組み込むというそういう過程だと思うのです。
 特にそういう観点で見ますと、今回の第3回目については、これは長くなってしまいそうなんですが、なるべく短い方がいいということですから、付録でもいいですから、私は前戦略、過去2回の戦略が果たしてきた役割みたいなのをぜひ入れていただきたいなというふうに思うのです。
 環境省がこれまで取ってきた施策、それの到達点や問題点も含めて、前回の戦略の中でいくつかの法律制定をやったわけですけれども、そういうものも踏まえて、ある程度総括的に次へのステップというところで入れていただきたいという要望です。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。一応、本日の時間は限られておりますので、大体、予定のほぼ30分を1テーマということにさせていただいていますので、できましたらここで次の個別テーマに係る論点に進めさせていただきたいというふうに思います。
 それでは個別テーマに係る論点のうちの、地球規模の生物多様性保全への対応から、沿岸海洋域の保全までについて、ご意見、ご質問をどうぞよろしくお願いをいたします。それでは、中静委員、そして速水委員の順でお願いをしたいと思います。

【中静委員】 地球規模の生物多様性保全への対応ということと、ちょっと前の全体の論点にも少し関係するのですけれども、2点意見を述べさせていただきたいと思います。
 一つは、例えば地球規模で考えるということは大変重要なことでして、一方で、全体に係る論点のところで、農林水産業における生物多様性保全の総合戦略というようなことが掲げられていますが、結局ここでも言っているように、輸入とか、貿易に関する部分というのにやっぱり踏み込まないと、農林水産業戦略というのは難しいのではないかというふうに現状として思うわけです。今回、この条約、生物多様性条約も含んでですが、その辺のところにどれぐらいこれから踏み込んでいけるのかということは、日本の場合はかなり重要なのではないかと。
 例えば、農業を、里山を復興するとか、そういう観点から考えても、その辺のところをやっぱりWTOで自由化一本やりというようなことでは、やはり生物多様性を考えても難しくなっていくようなところが多いのではないかというふうに思うのですね。その辺のことも、ぜひ考慮に入れてほしいというのが1点です。
 それから、もう一つは、生物多様性の評価のところで書いてある次期世界目標ですとか、それから国別生物多様性総合評価のようなことにかかわって一つ意見を言いたいのですが、例えば、今回、温暖化に関してIPCCがあんなすばらしいといいますか、驚くような報告をして、それが各国政府にものすごく影響力を持ったわけですけれど、生物多様性に関していいますと、CBDの条約そのものもそうですし、サブスタ自身もそのような影響力を国に対して持っていないというのが、やっぱり現状としては認識できるわけで、一方では、前のフランスのシラク大統領が生物多様性に関しても、IPCCのような政府間パネルを持つべきだというふうな提案もされているのですね。そういうことに対してこの国家戦略というのはせっかく地球規模でということを考えると、その辺のところにもせっかく2010年にCBDのCOP10会議を招致しようというふうに考えていらっしゃるわけですから、その辺のところに対して、やっぱり国際的に実行あるシステムというのをどういうふうに考えるかということを少し考えていただきたいなというふうに思っています。以上です。

【熊谷委員長】 ただいまのご意見いかがですか。では、計画課長。

【渡邉自然環境計画課長】 ただいまの1点目、輸入の面、消費の面、そういうところにもかかわりをつくっていかなければ実効ある地球全体の多様性保全につながらないのではないかというご指摘だと思います。
 今、G8サミットちょうどやっています。それでG8サミットに先立って3月にドイツのポツダムでG8の環境大臣会合がありまして、そのときに多様性保全に関する議題が温暖化と並んで取り上げられた、その議論の結果、ポツダム・イニシアティブというものが会議の中で取りまとめられたというのがあるのですけれども、その中でもまさに今、中静委員のご指摘のあった輸入のことも含めた生産と消費のパターンというのを多様性保全のことを考慮してそういうパターンをつくっていく必要があると。そういうことも多様性保全の施策として動かしていかなければいけないという点が挙がっておりますし、IPCC、多様性の分野でのIPCCというのでしょうか、そういう科学分野と政策分野がもっと統合的に進めていけるための国際的な仕組みというのも検討していく必要があるのではないかというようなこともそのイニシアティブの中に盛り込まれています。これはG8の中での議論ですけれども、ポツダム・イニシアティブで議論されたことを来年、今度、日本でG8があります。G8の環境大臣会合もあるということで、ドイツで議論したことをさらに深めるような展開になっていくと思いますし、このG8で話されたことが多様性条約の議論の中でも、来年第9回のCOP会議がドイツであり、3年後の2010年に日本でCOP10を誘致したいというような流れの中で、そういう国際的な体制における議論が出てきている点を、今回の3次の戦略の中でもそういう国際的な議論を受けた検討を入れ込んでいくことが非常に大事かなというふうに思っています。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。それでは、速水委員お願いいたします。

【速水委員】 ありがとうございます。今、中静委員が言われた生産と消費のことに関しては私もそのように思っておりまして、森林を管理する立場の者からすると、森林の場合は自由化の中でかなりもみくちゃにされているなというのが以前から感じておるのは確かです。
 それはそれとしまして、ここの最初の丸の地球規模の生物多様性保全への対応の2ポツ目にございます、その後ろの方に、先ほどご説明があったわけですが、生物多様性に支えられていることの認識というふうなところの文章なんですが、先日、G8サミットの事前の会議で違法伐採等が少し取り扱われられたというふうに聞いておりまして、ちょうどそこに出られた方から報告を受けておりまして、そうしますと、やはり開発途上国の森林を持つ国が山を切って売りたいという意思と、先進国側、使う方がその辺をきっちり区別をつけてほしいというふうな意見と、なかなか折り合いが難しいというお話も聞いております。やはり森林の場合、違法伐採だとか、多様性を無視したような伐採とかというものは、かなり地球規模における生物多様性の危機の引き金になっているのはだれもがわかっていることなんで、そういう議論を見ていきますと、やはり消費国側のはっきりした対応というのがかなりそういう森林管理に対する悪影響を与えるものを防いでいく大きな原動力になるのだろうというふうに思うのです。
 どうしても産出国がやりなさいと言われてもシステムがなかなかうまくいってない。あるいは経済的にも自立できないというふうなところにおきますと、経済が先に優先されてしまう。そういう意味では、ここに認識としてはやはり生物多様性に支えられていることの認識と書くよりは、地球規模の生物多様性に大きな影響を与えているというふうな、そういう視点をもっと表に出していかないといけないなというふうに森林の方から見るとそのように感じております。
 かなりそれは書き方としても、ここにはっきり書いていけば認識としては違ってくるのだろうというふうに感じておりますので、そこは変えていただければ大変ありがたいし、認識もそのようにしていただければありがたいというふうに思っております。
 沿岸・海洋域の保全のところに関しては、やはり重要なのは、特に沿岸に関しては森から田園を通って都市を通って海に流れて、都市を通らないのもありますけれども、そういうふうな流域に関してのとらえ方というのは、沿岸の中に議論するときには常にそれを入れておくという意識が大事なんだろうというふうに思っております。以上でございます。

【熊谷委員長】 ありがとうございます。いかがでしょうか。特にございますか。

【亀澤生物多様性地球戦略企画室長】 1点目の地球規模の生物多様性に支えられていることという表現の仕方は、確かに、すべてが海外においてもちゃんと持続可能な形で収穫されていて、それを日本に入れているというようなイメージにも取られかねないので、実際に影響を与えている面もありますから、そういう認識を持って考えていきたいというふうに思っております。沿岸・海洋域の方についても、流域的な視点、そういうのを持っていきたいというふうに思っております。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。それでは、鹿野委員、中道委員の順でお願いしたいと思いますので、よろしくお願いします。

【鹿野委員】 ありがとうございます。沿岸・海洋域の保全というところなんですが、ここで里海としての沿岸域の保全・再生と、里海に対して注目していくというのは全く異論ないのですが、ただ、沿岸域の場合には陸上と比べて極端に情報が少ない。要するに、海の中の情報が極端に少ないわけで、ここでは里海を重要視するのはいいのですが、むしろそのことを考えれば、里海の方がまだ海の中では情報がある方なんで、余りにも沿岸域の情報が少ないことをもっと念頭に置いて、沿岸域全体をまずは情報を得るみたいなところで注目してほしいと思っております。特に人とのかかわりのないところの沿岸、少なくとも多様性情報がほとんど海の中にもぐってしまうとほとんど何もわからないというところがいっぱいあるはずです。そこをよろしくお願いしたいと思います。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。では、計画課長ひとつお願いいたします。

【渡邉自然環境計画課長】 自然環境データの充実というのは、前回も非常に重要な課題というふうに挙げたのですけれども、その中でもやはり海の部分についての情報の少なさ、自然環境の面、生物多様性の面での情報不足というのは非常に大きい課題だと思っております。海洋基本法が成立して7月から動き出します。海洋基本法の中でもそういう多様性の観点も入っていますし、情報整備の必要性というのが入っています。そういう意味で、海に関する情報の充実ということで、各省が今まで蓄積してきた情報もあると思いますし、海に関する研究者の方たちが蓄積してきた情報、そういうのもばらばらな形ではなくて、総動員して、多様性の面から見た海の状況というのがしっかりとらえられるように、足りない部分はさらに補足的に情報を補っていく。そういうところから海の保全に向けた取り組みというのをぜひ考えていきたいなと思っております。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。それでは、中道委員よろしくお願いをいたします。

【中道委員】 学習・教育の関連で小さい話ですがお願いしたいと思います。
 日本は理数系の能力が低いと言われておりますが、理数の理の中には生物も入っています。物理・数学に比べて、生物はもっと悪いのです。多分、物理とか数学については経済界等が相当、教育各機関にお願いをするかと思いますが、生物を支援をする仕組みはなかなか難しいと思うのです。
 ぜひお願いしたいのは、今でも忙しい子供に、余り詰め込みの生物の教育ではなく、できるだけ早い機会に自然に触れる感性を教える。生き物の不思議、驚きを教えることが重要です。
 私も環境教育に少し携わっていますが、そういう場に学校の先生を引き出すことは非常に難しいです。多分これは文科省等が当たられる場合でも根気のいる仕事ではないかと思いますが、ぜひその辺をご検討いただければと思います。ご返事要りません。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。貴重なご指摘というふうにお伺いしておきたいと思いますので。それでは、服部委員お願いいたします。

【服部委員】 ありがとうございます。ただいまの中道委員に関連して、学校教育というのが非常に重要だと私も同感なんですが、先ほどの全体に係る論点にちょっとかかわるのですけれども、ここのところに、人類生存に関わることとしての危機感というのが書いてあるのですが、「人類」では、一般の国民の皆さんに対しては、我がことでないように理解されてしまうのですね。
 私なんかも当時、国立公園部が厚生省にあったころ、私の友人が、死ぬか生きるかの問題を扱っている厚生省で美しい景観を守るとか何か言っても始まらないというふうに嘆いていたことがあるのです。私も当時、都市緑化なんかをやっていまして、どうも経済性の優先の方がずっと重きを置かれておりまして、まちの中の都市の緑化とか何かは二の次だみたいな感じの評価を受けていた。私は何をしたかというと、環境問題は死ぬか生きるかの問題にかかわる、という観点からアプローチをしたらいいのではないか。役人の経験者としては余り優等生的ではないのですけれども、都市緑化というのは人の問題、人類ではなくて一人一人の市民の命にかかわる問題だというふうな観点で何とか言えないかというふうに腐心をいたしました。
 個々の個別のテーマにいろいろ教育問題にかかわるのですけれども、市民一人一人がこういうふうに生物多様性の問題が市民一人一人に対して、命にかかわるぐらいの訴求するような施策といいますか、何かそういう論点が展開できないかなと。それぞれが手をこまねくことによって皆さんの命にかかわるんだよというふうな、それは1分1時間の話ではなくて、ジェネレーションスパンだと思うのですけれども、そういう論点が何かうまく対応して書けないかなというふうに思っておりまして、ぜひご検討方お願いしたいと思います。以上です。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。具体的なご指摘ですが、これまた貴重なご意見としてお伺いしておきたいというふうに思いますので、それでは、篠原委員お願いいたします。

【篠原委員】 海岸の話ですけど、日本はダムいっぱいつくっちゃって土砂が流れてこなくて海岸侵食で悩んでいて、それで突堤つくったり、防波堤つくったり、あるいは護岸をやってきました。その結果どういうことになったかというと、鳥の場所もなくなったし、魚も減少したという話になっていて、河川の方では大分前から河川法を改正して多自然型ということを随分やり出して、それで大分変わってきたと思うのです。
 海岸の方も何とかそんなふうにならないかなと思っていたら、この間あるデザイン賞の発表会で、これは個人的には渡邉さんに申し上げましたけど、木野部海岸という例が出てきて、これは青森県の大畑町だったと思いますけど、既存の護岸を壊して、公共事業でやったのをどうやって壊したかというのはもうちょっとちゃんと聞かなきゃいけないのですけど、壊して、そのコンクリートと山から持ってきた石で新しい磯をつくった。これは台風が来てもなかなか動かないように、ハードにつくっていないですから、少しは動くのですけど、それで、報告では藻がものすごくふえてというふうに聞きました。
 これはすごい面白い例で、風景としてもいいし、それから魚とかカニとかそういうのが非常にふえたと言っているのですよね。これをもうちょっと一般化して、農水の海岸もあるでしょうし、国交省の海岸もあるでしょうけど、環境省が大々的に取り上げて、これからの海岸の整備というので取り上げて、そういう方向に持っていけないかと。さっきもちょっと言いましたけど、今は公共事業でやると何十年かはもう壊せないと。税金使ってやったんだからね。そういう話になっているんだけど、いやいや、そうじゃなくて、生物多様性の観点からいうと、食料がふえるわけですから経済的にもメリットがあるので、極端な話ですけど、10年前にやったやつでも壊しても構わんというような方針が出せると、海岸の整備のやり方が随分変わってくるのではないかなと思うのです。
 それは状況によっていろいろですから、そういうやり方が全部一律的にできるかどうかはわかりませんけれども、一つのいい方向だなというふうに思っていますので、ぜひ調査されて、ほかにもそういう例があるかどうか。それを、今度は国交省が農水省に申し出るか、申し込むでもいいし、お願いするということになるのかもわかりませんけれども。

【熊谷委員長】 計画課長お願いいたします。

【渡邉自然環境計画課長】 今、篠原委員からご紹介いただいたような、今のは海岸の整備の中で多様性にプラスになる積極的な事業の展開をされたという例だと思います。そういう全体をよくしていく意味で、リーディング的な事業というのは、ぜひ私たちもいろいろ調べて、それが全国に広がるような工夫をしていきたいなと思っています。
 ちょっともう一つ川の事例でご紹介したいと思うのですけれども、知床が世界遺産地域になりました。遺産登録されるときに、知床には治山だの堰堤が川に結構多く入っていて、知床の世界遺産としての認められた形というのは、海、川、森が一体となった生態系が良好に保たれているということだったわけですけれども、そういう意味では、堰堤の中で場所によってはシロザケやカラフトマスの遡上を阻害している部分もある。そういうものについての改善の検討を進めるようにという宿題が遺産の登録が認められたときに出されました。
 それを受けて林野庁サイド、あるいは北海道庁がかかわる事業になるわけですけれども、環境省も一緒に入りまして、その堰堤の改善のための検討をかなり積極的に、一個一個その遡上をどんな程度妨げているかという検証をしつつ、その改善すべき、それからそこを例えば堰堤の高さを切り下げるようなことを実施して、遡上がそれによって回復できたかどうかというようなことで、一個一個実施をしながら、必要だと出たところはすぐに改善をして、その結果をモニタリングして、うまくいっていない場合にはさらに改善をということで、かなり先駆的な動きが出ています。
 そういったようなことも今の木野部海岸の例なんかと通ずるところがあると思いますので、そういった先駆的な取り組みが、日本の自然の質を全体にわたって高めるというのが国家戦略の最大のねらいだと思いますので、そういうのにつながるようなリーディング、先駆的なプロジェクトというようなことはぜひ把握をした上で、この戦略の中でも生かしていければなと思っています。

【熊谷委員長】 ありがとうございます。それでは、三浦委員お願いをいたします。

【三浦委員】 私もここのペーパーを見ていて、地域で生物多様性を担う人づくりという問題と、それから次のページにあります鳥獣害に強い地域づくりといった人に関連する問題について、ちょっと踏み込んだ検討をお願いしたいなと。その中身は、やはり中静委員も、それから速水委員も指摘していたように、やっぱり国際的、それから国内的な日本のスタンスといいますか、そういう記述について環境省なりの見解といいますか、そういうところを書き込む必要があるのではないかなというふうに思います。
 というのは、地域での生物多様性を担う人づくりについても、これ、できる施策としては、教育現場での先生を養成するとか、こういう多様性を理解する人たちを、いかにNGOレベルや研修レベルでつくり出していくのかといったような、こういう施策とか、それからあと鳥獣害についても、私としては、もうちょっと資格制度ぐらいにレベルアップしないと、鳥獣害に対応できる人材というのは養成できないのではないかというふうに思うのですが、いずれにしても、こういうことを続けていっても、研修レベルで人を育てるという格好ですけれども、実際には、やはり前々回の資料ですけれども、2030年には農業人口が2.3%という予測がありまして、それでいけば第一次産業従事者というのが、いわば何といいますか文化財産業ですよね。そういう枠組みの中で取り得る施策というのはやっぱり限界があるし、それからこういう言葉を使っては恐縮なんですが、末梢的といいますか、本体ではないという格好なんですね。
 それで、そういうところについて環境省としては国際・国内的に、やっぱりその枠組みについてどうなんだというやっぱり踏み込んだ見解がないと、もうちょっと強い施策といいますか、実際に人づくりに向けた内容のあるものというのはやっぱり出づらいのではないかなというふうに思います。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。大変また貴重なご意見でございますが、今、三浦委員のご意見にありましたように、議論としては、次に控えております国立公園等保護地域から里地里山・野生生物の保護管理、自然環境データという、こういういわゆる個別テーマにのっとっております論点について、さらに議論をさせていただきたいというふうに思いますので、もちろん今までお気づきの点があったらご指摘をいただいて結構でございますが、資料の2ページ目の論点について、ご質問あるいはご意見を頂戴したいと思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。
 それでは川名委員、それから森戸委員、鷲谷委員、森本委員、速水委員の順でお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【川名委員】 どうもちょっと役人上がりらしい意見で申しわけないのですけれども、要するに、これは前回の見直し、国家戦略の見直しですので、前回との関係で論じた方がいいような気がするので、前回言っていたこととどう違うのか。また、前回に加えることが何かあるのかというような視点で見た方がいいような気がするのです。
 それで、前回ので見ますと、基本になっているのが3つの危機というのがありまして、それにどう対応するかというのが基本的な考え方のような気がするのですけれども、里山の保全とか何かを見ますと、特に第1の経済活動、開発との関係をきちんとするということとか、その後どうなっているとかというのが書かれていないような気がするので、もしかするともう開発の危機はなくなったのかもしれませんけれども、もしそうだったらば、全体にかかわることなんですけれども、3つの危機を見直すということも大切じゃないか。開発の危機はもう経済が静まってしまったのでなくなったというのならそれでもいいですし、それからどなたかも言っていらっしゃいましたように、危機の中に、あと人口減少と地球温暖化を加えるというようなことがいいのじゃないか。地球温暖化というのが、どうして個別テーマではないのか。超長期的なあり方に入らないのかというのもちょっと変な気がするのですけれども、要するに、前回の国家戦略とどう変わったかというのをきちんと見た方がいいような気がしますけれども。以上です。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。この論点を通じて十分に前回の戦略等きちんと整理をし、あるいは整合させて、さらに新しい戦略をまとめていくということで、今のご指摘大変ごもっともだと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 また、今後5年間で随分、世界的、社会的、あるいはいろいろな意味で政治的なあれも含めて環境が変わっておりますので、そんなことも十分踏まえて戦略をつくっていくというスタンスを多分、委員の方々もご指摘されていると思いますので、ひとつよろしくお願いしたいと思います。それでは、森戸委員お願いいたします。

【森戸委員】 ありがとうございます。ちょっとどこで言っていいかわからないので、データのあたりにつながるかもしれませんし、教育の材料になるのかもしれませんが、生物多様性の保全あるいは再生に関する技術開発というか、科学技術振興というか、そういう柱を何とか今度の戦略中に入れられないのかなということです。
 それは今、データをどんどん出せとか、モニタリングをするとか、いろいろ動きがあるし、多分、途上国とか海外に対してもそういう協力をしているんだけど、もしこの生物多様性を国家戦略として進めるならば、その一つの基本にあるのはやっぱり科学的な技術で、これも非常に多様ですけれども、できればこの際、それを少し体系的に整理して、環境省としてあるいは国家戦略として、どういう技術開発を中心に進めれば効果があるのかと。だから個別のデータであるとか、個別の野生生物対策あるいは有害鳥獣の対策などの基本にある技術の、あるいは知見の体系としてこういうものを促進するのだというふうな施策を打ち出せないものかなと。今回3回目だから、もうそろそろそういう体系立った整理をして、推進してもいいのかなというのが一つです。
 ついでにもう一つですが、先ほど景観計画とか、海浜の関係で公共事業の話が出ましたけど、できれば今回、公共事業、あるいはそのもとになる公共計画に関して生物多様性の面からアセスをするとか、そういうものを個別モデル事業というか、社会的に実験をしていくのでしょうけれども、規範としてこれから公共事業全般に導入していくんだという、そういう視点を打ち出して、その一環として、こういうモデル事業が展開されるんだという順序にして、モデル事業に進めたらどうなのかなという気がしました。以上です。

【熊谷委員長】ありがとうございます。お答え、何かございますか、事務局で。

【亀澤生物多様性地球戦略企画室長】 1点目の技術の関係は、今お話があったように自然再生の技術ですとか、そういうものもまだ取り組み自体が始まったばかりで、各地で積み重ねがされつつあるのでしょうけれども、それを体系化していくこととか、それを踏まえて新しい技術がどうなっていくのかというのは考えていくべき問題だというふうに思っています。
 そのほかにも里地里山に関係することとして、バイオマスエネルギーの開発とか、あるいはデータの収集の仕方でも、衛星とか、あるいは最新のいろいろなシステムを使った形でどういうふうにすればいいのかとか、いろいろ技術開発の課題があると思います。それぞれの個別テーマに横断的な事項だと思いますので、そういうデータに通ずることとして考えていきたいというふうに思っております。
 それから、公共事業との関係では、点検の審議会でも速水委員から、現場レベルでは多様性の観点のチェックというのがされていないというお話がありました。多様性の観点も入れて公共事業などの評価をしている例も出つつありますけれども、まだまだ浸透していないと思いますので、そういうのが現場レベルでも、例えばチェックシートでつかめるような形、そういう方向に持っていければいいのかなというふうに思っています。そういうことも考えていきたいと思っております。

【熊谷委員長】 それでは、鷲谷委員お願いをいたします。

【鷲谷委員】 里地里山の保全というところと、前のページの2番目の丸のところにかかわる意見を述べさせていただきたいと思うのですけれども、今、里地里山の保全というところをもちろん非常に重要なことなんですが、どこにどう手を入れるかとか、インセンティブのための制度をどうつくるか、あるいは自然をどう活用するかというような技術的・経済的なことにやや偏った記述になっているという印象を受けます。そして、もちろん大変重要なことなので、それに関しても洗練された戦術・戦略をつくっていくことが重要だと思うのですけれども、もう一つ重要だと思いますことは、そこで暮らしている人、仕事をしている人の意識とか価値観の改革をどのようにして促すかという、それに関する戦略・戦術なのではないかという気がするのですね。今では地方のいろいろなレベルでの意思決定―個人の意思決定から地方行政における意思決定まで含めてですけれども、そうした要請とか、文化とか、そういうものへのまなざしというのがかなり薄くて、どちらかと言えば狭い短期的な経済的利害の考慮のみに基づいて意思決定が行われがちなような印象を受けるのです。
 昨日、私は東北地方のある地方でいろいろなことを見聞きしたのですけれども、その印象というのがすごく鮮烈で、今日はこういう発言をさせていただいているのですが、私のようなナチュラルヒストリーの研究者から見て、まさに生物多様性の宝の山と言えるようなすばらしい地域なんですね。無数のため池がちゃんとあって、それらは水草が豊かで沈水植物がしっかりあって、浮葉植物、抽水植物、水辺の植生がかっちりしていて、トンボも貴重なものも含めて非常に多様性が高いのですね。全国のほかのため池にありがちな外来生物の影響がないため池がたくさん、しかもため池一つごとに個性があって、これぞまさに秋津州扶桑豊葦原瑞穂国の農村景観だと思うようなところなんですね。
 それから、雑木林なども大体管理が、放棄はされてしまっているのですが、試行的に若干手を入れて、NGOの方の活動で手が入ったところというのは、数百種の種からなる下層植生がよみがえっていて、昆虫層も非常に、まだ調査を始めていないので印象だけなんですけれども、非常に豊かなんです。
 私たちから見たら非常に生物多様性の現状でも豊かですし、ポテンシャルも高いというふうに思いましたし、それから川の近くに三日月湖が残る、氾濫原の原自然の痕跡のような三日月湖が残っているのです。
 ところが地域の人たちは、ほとんどその価値を認識していないようでした。それはいろいろな見聞きしたものからそういうことが印象づけられるのですけど、あぜなどにもカタクリ、ショウジョウガバマを初め、調査したら、恐らく200種ぐらいの野生の植物があぜに生育しているだろうと思われるあぜがあったりする場所なんですけれども、管理の仕方を見ていますと、管理されているからいいあぜでもあるのですけれども、私たちの感覚だと、侵略的な外来牧草というふうに思ってしまうようなものだけを刈り残して管理されている。それはきっと役に立つ草なので、そこから種が飛んでふえたらいいのではないかというふうに思っていらっしゃるのかなというふうに思いました。
 それから、見た目にもすばらしくて、少しずつ色合いの違うヒツジグサなどが今、満開なんですけど、それを楽しんだり観察している人はだれもいないという感じですね。
 それから三日月湖の方に関しては、その地域はもう使われていない農地とか休耕している水田がたくさんあるにもかかわらず、整備して農地にするという計画が今、進んでいるという現状だったんです。そういうのを見て、やっぱり今までのビジネスアズユージュアルのやり方だと活用を認識するのが確かに難しかったんではないかと思うんですが、これからは、やはり里地里山の保全もしっかりしつつ、生物や自然を保全していくということになれば、その地域で暮らし働いている人たちが、今まで見えていなかったものが見えるようになったり、価値があると思っていなかったものに価値を感じられるような何らかの契機をつくるなど、そういうことがとても、私たち研究者としては、やっぱりやれることは生物多様性モニタリングを一層地域の人と一緒にしていくというようなことかもしれませんけれども、2の真ん中あたりにいろいろ書いてある地方での生物多様性戦略みたいなものを徹底することの中に、いろいろな人を巻き込んでいくとか、地域で生物多様性を担う、ナチュラルヒストリーの観点からも生物多様性を語れる人がそれぞれの地域にいるというようなこととか、そういうことが里地里山における生物多様性の保全を実効性のあるものにしていく上で、かなり大きな比重を占めないと難しい、また、はやり言葉ですけれど、意識とか価値観のイノベーションというものをどうやって促すかということに関しても、戦略の中に何らかの形で方向性を示す必要があるんじゃないかと。昨日の印象が強過ぎたので、ちょっと強調し過ぎかもしれませんけれども、そんなふうに感じております。

【熊谷委員長】 はい、ありがとうございました。じゃあ多分、森本委員も関連しているかもしれませんので、ぜひ続けてご意見を伺いたいと思います。

【森本委員】 少し関連した話もございます。
 [資料4-2]に、募集意見一覧表というのがあって、これ見ていて、実は58ページの京都府というのが一つ欄があって、これ5つの欄、実は僕が書いたやつだろうと思うんです。京都府は僕一人しか出さなかった、ちょっと恥ずかしい。この3つ目と4つ目を少しお話ししたいと思うんですけれど、今の話で自然環境データの整理ということに関連するかもしれないんですけれども、やっぱり今の施策を充実しているだけでは、ちょっと質的な転換が図られないと思っています。基本的に人づくりというときに、本当にちゃんと教育システムも含めた取り組みを始めないと、本当にだめなんじゃないかなと思っています。それが1点です。
 2点目は、リスクコミュニケーションの考え方です。今の鷲谷先生のお話は、メリットコミュニケーションというか、どちらも同じ意味合いがあると思うんです。コミュニケーションをうまくしていくというのはすごく大事で、リスクコミュニケーションといったときに、生物多様性について絶滅のリスクをいろいろ評価して、それをちゃんとみんなで認識していくということもあるんですけれども、それが失われることによって、広い意味での生態系サービスがどれだけ失われるのかという、これに対するコミュニケーションが本当、今、うまくできていないというのが大きな問題だと思っています。
 この辺を改善するのが、多分、環境教育だと思うんですけれども、一般的な環境教育じゃなくて、もう少し具体的な事例に絞ったプログラムの開発というのが多分いくらも考えられると思うんです。そういう話が、例えば防災ということをテーマにしてあると思うんですね。僕たちベトナムでちょっとやりかけているんですけれども、インターディシプリナリーが壊れただけで、台風とか災害が常襲地帯で、どうやって生活をやっていくのかというときに、いわゆる要塞型で対処していくというのを日本は今までやってきたわけですね、海岸防災。今、篠原先生のお話があったと一致しておるんですね。もっと総合的なあり方でトータルとして一番、今後望ましい方法というのがどんなものなのかというのを、これリスクをちゃんと評価しないとだめなんですね。このときにリスクというのは計算しやすいやつからみんなやってしまうんですね。
 今、本当に問題だと思うのは、これまで例えば発がん性ということに関しては、皆さん異常なばかり関心があって、ちょっと本当に異常なんですよね。ごくわずかの危険性と引きかえに、ものすごい大きな生態系のメリットを失うということを平気でやってきたというのが、これがものすごく大きな問題だと思うんです。
 リスクコミュニケーションというのは、その測りやすいやつだけ測ったらいいというのじゃなくて、生態系サービスのメリットをどれだけ評価して、それが失われる危険性というのを。というのが温暖化の危機だとまさしく最終的に思っているんですけれども、この辺をうまくコミュニケーションしつつ、多分、攪乱依存型の生物が今、危機に瀕している砂浜だとか、干潟とか里山だとかいろいろあるわけですから、この辺の実態をちゃんと定量的に明らかにする研究ができる施設、あるいはそれがちゃんと現場に合わせてできるだけの人材をつくる。そういったことを住民とコミュニケーションしていくすべを持った人を育てていくというか、そういう非常にトータルの取り組みが必要になっているんだと思うんです。
 それを考えますと、それがうまくいくと、いわゆる自然再生事業で僕たちが感じているわずか点の試みからもっと普遍的な話に行く可能性があって、いわゆる生物多様性の問題のあらゆる施策に対する内部化というんですか、通常の施策に織り込んでいくという、これが戦略でなかったら、普遍性を持たないのではないかなと思っています。
 自然再生推進法というのは大変画期的な法律で、ああいうことがリーディング・プロジェクトとしていろいろ行われるというのは大変いいことなんですけれども、あれで自然が再生されると考えたらこれは大間違いで、日本全国の生物多様性を考えるとあらゆる施策に対して内部化される必要があるわけですので、この辺をうまくやっていく仕組みをつくるということがぜひ必要です、そういう記載がないんですね。何かその辺トータルにちょっと考えていくというのをどこかに入れないといけないということで、個別論点の中でどこで言ったらいいのかよくわからなかったので、ここで言ったわけです。以上です。

【熊谷委員長】 はい、ありがとうございました。個別論点なのか全体にかかわる論点なのかも含めて、十分に検討させていただきたいというふうに思います。それでは速水委員、お願いをいたします。

【速水委員】 里地里山に関してなんですが、最近どこでも里地里山になっていまして、環境省はそこの背後に控える人工林等も含めて里地里山というふうに認識していただいているということは既にお聞きしているわけでございますが、やはり、どうしても里地里山という形で扱ってくると、そちら側の視点がどうしても薄くなっていくなという感じが、ご説明を伺っていても感じております。そうこうしているうちに、今、山の方では経済的に立ち行かなくなったんで手入れがされていかないという部分と、少し木材価格が動き始めたんで、一斉に切ってしまうという問題と、本来根っこは同じなんですけれども出てくる行動がかなり違う状況が出てきまして、どちらも多様性に関しては非常に問題があるんだろうというふうに感じております。
 そういう意味では、前から申し上げているんですが、やはり森林管理の視点の中に多様性という視点をしっかり盛り込んださまざまな施策というものを打っていく必要があるんではないかなというふうに思っております。
 例えば、私は日本の森林の特に私有林の場合は、森林施業計画という計画が長い間使われておりまして、ほとんどそれが林政の中の一つの背骨になっているわけでございますが、その中に環境的配慮であったりとか、生物多様性の観点というものはほとんどないわけでございます。それを入れておかないと、時によっては木材価格が動けば切ってしまう、時によっては手入れをされなくなっていく、あるいは経済的に土地開発が盛んになってくれば里山地域は開発対象になってしまうと。
 つまり、視点として背骨になるような多様性の視点というものがないために、どうしてもその時代、その時代の状況に応じて場当たり的な対応をせざるを得なくなってしまう、特に森林の場合は。
 森林の場合は、変化が何十年か先に起きてくるわけですね。私、森林管理の場合、大体20年ぐらいが自分の頭の中で現実的に想像しながらやっている作業でございますし、ふわっと持っているのが大体100年ぐらいのイメージを持ちながら森林を管理しているんですけれども、どうしてもその中に私はそういう多様性の問題というものが入れられるような状況をつくっておかないと、常に遅れがちになってしまうなというふうな気がいたしております。
 特に担い手の問題等も同じでございまして、担い手などもすぐに担い手をつくろうというわけにもいきませんので、常にそういう視点を、担い手を教育するときにも多様性の問題というものもしっかり入れていくというふうな必要があるんではないかなと思っております。
 もう1点、そういう経済性を前提にしながら人工林の場合は動くんですけれども、今、民間の森林の認証制度というのが結構あるんですね、漁業も動いていますけれど。それを受けた地域などを見ておりますと、審査基準の中にそういう生物多様性のような視点が常に入っておりますので、先ほど鷲谷先生の話じゃないですけれど、現場の人がそういう視点を持つように変わってくるわけです。
 あれはなかなかおもしろいなというふうに思っていて、先日も静岡で模擬的認証をやっていたんですけれど、そういう質問をすればそれに対する答えというのはみんな持っているんですね、言われてみればこうでしたという。そういう意味では、そういうさまざまな民間の動きみたいなものを認証制度なんかも使って、NGOを評価するだけではなくて、具体的に動いている認証制度みたいなものを、こういうものと一緒にリンクさせながら評価をしていくという形が結構担い手づくりには効果がかなり出ているなという気がいたしております。
 大体そんなところでございます。よろしくお願いします。

【熊谷委員長】 はい、ありがとうございました。

【速水委員】 もう1点だけ、ちょっと言い忘れました。
 もう一つ、森林の場合、農業とちょっと違いまして、10年から20年に1回の手入れというのでかなりいい状況が維持できるんですね。その視点だけはしっかり入れておかないと、そこに人が住まなくなったから突然森林が全く手入れができなくなるかというわけではないというのが現状でして、国土整備計画の方の持続的国土管理のところでも、そういう人口の大きな変化はともかくとして、局所的な部分の変化に関して、森林全体に及ぼす影響というのは、かなり移動で管理ができる、あるいは10年、20年に1回の管理で十分多様性も含めて対応できるというふうな視点がありますので、その辺はちょっと意識をしておいてもらわないと、毎年の手入れが必要な農地とは随分違うということでございます。すみませんでした。

【熊谷委員長】 はい、ありがとうございました。時間の関係もございますので、あと中静委員、中道委員、それから三浦委員の順でまずご意見、ご質問をお聞きして、それからもし事務局の方で回答できる範囲でお答えをさせていただくというふうに進めさせていただきたいと思いますので、中静委員、よろしくお願いします。

【中静委員】 短く3つありますが、一つは里地里山の保全に関してなんですけれど、この世界に向けた自然共生社会づくり―SATOYAMAイニシアティブ―って大変いいなと思っていまして、ぜひやっていただきたいなと思うんですけれど、一つだけ気をつけてといいますのは、多分おわかりだと思うんですけれど、里山的なシステムというと世界いろんなところに多分あると思うんですけれど、こういうのでうまくいっている例ってほとんど先進国の中に多分なくて、先進国でやはり、例えば途上国の人たちが先進国でもそういうことができるんだというようなモデルがないと、余り意味がないということを、そのために障害になっているのは一体どういうことなのかということをよく考えてやっていくということが僕は必要だというのが思っています。
 それから2つ目は、野生生物の保護管理のところで、ここでは述べられていないんですけれど、野性生物の問題もそうなんですけれど、実は病気の問題というのも生物多様性の問題だと思うんです。例えば鳥インフルエンザの問題なんかも、ああいうふうに遺伝的に均一なものを集中的にカルチャーすると、杉とかヒノキも同じような問題、多分、起こしているはずで、だから松の病気ですとかいろんな病気が起きてくるという側面があって、これは鳥獣害だけではなくて、病気に強い、あるいは先ほど森本さんが言われたリスクなんかもそういう問題なんですけれど、そういうことも含めて、そういうものに強い生態系をつくるという方向で考えていただきたいなというのが一つ。
 それから最後に、環境データのことなんですが、これは相互監視の実施ということなんですけれど、これは新たに始めるということも、もちろん多分ご存じだと思うんですが、もう既にたくさんのデータがあると、あるいは生物多様性に関する研究ですとか、いろんな事業なんかどんどん片一方でやられているわけですので、そういう事業の中からきちんと、生物多様性に関する情報はきちんと出していただくような仕組みを実効性ある仕組みというのを考えていただく方向で考えていただきたいなと。
 例えば文部科学省の科研費なんかで生物多様性にかかわる情報に関しては、必ずデータベースとして寄与することをある程度予算もつけた上で義務づけるというようなこととか、それぞれの研究費もそうですし、生物多様性にかかわる事業に関しては、そういうもののデータベースをするということも前提に考えていただくというような、実効あるシステムを考えていただきたいという、この3点です。

【熊谷委員長】 それでは中道委員、よろしくお願いいたします。

【中道委員】 里地里山の保全につきまして、事務局からすべて人間が手を入れることは無理だから、ある程度の仕分けが必要だという説明がありました。大変すばらしいことだと思います。今までの国土計画、環境計画に里地里山の問題に触れないことはなかったのですが、いずれも事例とか点の世界で、初めてこういうふうに取り組むということは大変難しいことですが、重要なことだと思います。ぜひ頑張ってやっていただきたいと思います。
 そのときに、考えていただきたいことを2つ申し上げますと、里地里山が大体、中山間地と呼ばれているところにあります、耕作放棄もされています。聞きかじりですが、生物多様性上なぜ重要かというと、日本がまだ列島でなくて大陸につながっていたときの生物は、よどみとか流れのないところに多い生物だったと。それが水田が開発されることによって、よどみとか流れの少ないところに住むようになった。ホタルというのは万葉集にうたわれていませんが、古今和歌集にはホタルがうたわれている。そういうふうに、よどみができることによってホタルが出てきたということもありますので、ぜひ里地里山の生物多様性上、どういう意味を持たせるかということについてご検討いただければと思います。
 もう一つは、この委員会の前の懇談会でこの委員に入っておられる高橋佳孝さんに意見を聞き、大変感銘を受けたのですが、山地放牧の実績を話されました。人手がかけられないとすると、人手をかけなくて鳥獣害に対応できるようなやり方がある。高橋委員が言われた話をぜひ取り上げていただければと思っております。私もいろいろ計算してみますと、窒素の物質循環上も非常にいい影響を持ちますので、ぜひご検討いただければと思います。

【熊谷委員長】 それでは三浦委員、お願いいたします。

【三浦委員】 私も要望が一つですが、国立公園保護地域と生態系ネットワーク、自然再生で、このことはぜひ進めていただきたいというふうに前から思っていました。
 実は、たしか1995年ですか、国土庁が生態系ネットという構想を打ち出して以来という格好になりますけれども、今の段階ですと、やはりこういうことが実際的にもできるような時代を迎えつつあるという新たな認識で、構想の推進と構築とありますが、ぜひ構想の推進だけでなくて設計図を描いていただきたいということを、設計図を描書く方向で、そういう方向に進むという書き込みをしていただきたいなというふうに思います。
 それからもう一つ、ここのところかなりデリケートな話なんですが、国立・国定公園の役割強化というのは非常に大きいと思うんですが、一方では、これは林野庁の保護林も随分重なっていて、保護林も生態系保護地域も含めてあるわけですから、これ国土レベルの生態系ネットというからには、指定した国立国定公園地域とそれから保護林のネットワーク、これは森林と森林、という意味ですが、そこのところの連携をお願いしたいということと、のみならず、これ生態系ネットワークですから湿地と湿地、あるいは湿地や河川といったような、あるいは河川と森林といった、まさにそういうネットワークを、特にどんなふうにつくられていくべきかといったようなところにまで、すぐにというわけではありませんけれども、そういう方向の設計図をこれからつくっていくんだという書き込みをお願いしたいというふうに思います。

【熊谷委員長】 はい、ありがとうございました。ほとんどの委員の方がご要望とご意見ですので、今後十分に検討させていただくしかないと思いますが、もし今の段階で委員の方々に何かお答えする部分があれば事務局からお願いしたいと思いますけれど、よろしいですか、じゃあ計画課長、お願いいたします。

【渡邉自然環境計画課長】 中静委員からありましたSATOYAMAイニシアティブというやつですけれども、確かに国によって社会条件も自然の条件も違うということで、日本の中でもこういう共生・循環の仕組みをどう再構築するかというのをしていく必要があると思いますし、それと並行して世界各地で共生の工夫をしてきた事例というのも集める中で、自然条件、社会的な特性に応じた自然共生の仕組みづくりというのを日本からも世界に呼びかけていく、そういう動きにぜひつなげていければなと思っています。
 それから生態系の総合監視の部分ですけれども、まさに環境省の生物多様性センターを中心にとってきたデータだけじゃなくて、河川のデータ、森林の資源モニタリング、いろんなデータが各省でもとられていて、研究者レベルで重ねているデータ、そういうデータが結集されて、生態系の動きがつかんでいけるような、その仕掛けというか、仕組みをぜひ考えていきたいなと思っております。

【熊谷委員長】 それでは最後の本日準備いたしました論点でございますが、今までのご意見を伺いましたものを各省庁との連携とか再確認とか、あるいはいろいろな意味での調整が必要だということをご指摘いただきましたので、資料1の3ページ、各省追加分、地域観測データ等の活用、文科省から経産省、国交省、これらに関する論点についてご意見ご質問をお願いしたいと思います。よろしくお願いをいたします。では、まず服部委員からお願いしたいと思います。

【服部委員】 ありがとうございます。先ほど私が発言したのとちょっと関連するんですけれども、生物多様性の国家戦略でターゲットといいますか、目標の最終姿みたいなものを、あるいはそれに対するタイムスケジュールを兼ねたような、そういうアクションプログラムも必要、これを確立しておくことが必要だと思うんです。それに従って粛々と進めていくということが大切だと思うんですけれども、委員の皆さん方がそれぞれの専門分野のことについて発言されたりなんかで、中身としては非常に立派なものができてくるんではないかと思うんですが、戦略として、ここにぜひ環境省でも入れていただきたいと思っているのは、今ほど国とか行政とか役所とか公務員に対する不信感の強いときはないんですよね。
 私は学校に行って若い人たちに環境の問題とかいうのを知ってもらいたい、あるいは公共事業というものはどういうものかというのを知ってもらいたいと思って、学校にかれこれ八、九年になりますけれども、若い人たちの興味は何かというと、就職をどうするかとか、経済的な側面でどうかとか、そういう面が非常に強くて、芸術とかいったところについてはだんだん学生の志望者数が減ってきている。
 やや品格の問題だとか、景観だとか、あるいは環境とかいうのは高まってきたと言われていながら、なかなか実効性に乏しい。景観法ができて景観問題についても感心が高まってはきているんですけれども、公共事業は不要ではないか、3%削減するのは当たり前じゃないか、いいぞ、いいぞという感じが国民のほとんどのそういう意識が非常に強い。
 この戦略の中に書かれていますけれども、生物多様性の保全について推進するために、各個人とか地域の意思が必要だとか、そういうことが書かれておりまして、各個人個人がその意識を持って、あるいは推進するように自分は何ができるかというふうなことまで考えられるような、あるいは各個人だけでなくてマスコミの取り上げ方、教育の面での取り上げ方、そういうのが醸成されていくような、そういう戦略。生物多様性が保全される目標値も大変必要ですけれども、それを推進していく上での実効ある戦略というのでは、ソフトプログラムというのは環境省でも少し追加して入れていただきたいなというふうに思います。以上です、ありがとうございました。

【熊谷委員長】 ほかにございますでしょうか。この[資料1]の3ページの個別の各省庁への追加分だけでなくて、全体にかかわる論点について、どうぞご意見を賜りたいと思いますので、忌憚のないご意見をちょうだいしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。はい、中静委員、お願いをいたします。

【中静委員】 地球観測データの活用というのが文部科学省から上がっているんですが、実は地球観測というか、ジオスの中では、温暖化ですとか4つの重点テーマというのが挙げられていますけれども、実際、インターナショナルには生物多様性というのは9つの利益分野の中の一つに挙げられているにもかかわらず、日本では重点分野にならなかったという残念な経緯がありまして、私はこれからのことを考えると、ぜひこれからの見直しの中で生物多様性も重点分野の中に入れていただくというような努力をしていただきたいなというふうにぜひ思っています。その理由は、もう皆さんがいろいろ議論してくださっているので、特に言いませんけれど、そういう努力をしていただきたいなというふうに思っています。

【熊谷委員長】 いかがでしょうか、ほかにございますでしょうか。一応論点についての議論は多分、本日で整理しなければいけないということでございますので、関連あるもしご意見がございましたら、どうぞお願いをしたいと思います。はい、鷲谷委員、よろしくお願いをいたします。

【鷲谷委員】 最初のときに時間がないということで発言できなかった点に関してなんですけれども、100年先を考えるということに関して、どういう手法をとったらいいかというのは大変難しいことだと思うんですけれども、物事の性質によってとるべき手法というのが変わってくるんですが、サイエンスの世界でも先を予測して、それにふさわしい例えばアクションを考えていかないといけないときに、生物多様性とか生態系というのは、不確実性の高い検証であるということが一つ、対象であるということが一つあります。
 それから、どのぐらい操作が可能かというと、それに関してもいろいろなことが複合的に作用しているので、日本のあるところである方針に基づいて何かをしたら、それがストレートに効果あらわすわけではないという意味で、操作性に乏しいという問題もあります。そういうようなときの計画法としては、今のところはシナリオ、計画法とかシナリオ分析と呼ばれているものぐらいしかないかもしれません。
 それで皆さんもよくご存じのMAに関しては4つのシナリオが想定した予測、シナリオを4つ想定してストーリーラインというものを考えて、そこに量的予測などについてはさまざまなモデルを使って量的な予測をするという手法ではあったんですけれど、もちろん生物多様性国家戦略でそういうことをする必要があるということではないんですが、多様な道筋があり得るということと、というよりは、ここ100年先のことを考えるのはここ10年ぐらいに私たちがどういう実践をし、どういう政策を立てるかということで、100年先ぐらいのことがある程度とまってしまうかもしれないということで、こういうやり方をするとこんなイメージが描けると、こうだとこうかもしれないということを多少客観的・科学的な論理やデータで補いながら記述するというやり方しか、100年先について語ることは難しいんではないかという気がいたします。
 以上です。

【熊谷委員長】 はい、ありがとうございました。では中道委員、お願いをいたします。

【中道委員】 各省に共通することですが、多分、今までみたいに、社会資本のストックを新たにつくるようなことはないだろうと思います。相当のストックができています。各省それの基準を用いまして、そのストックが構造的に劣化しないかとか、当初の目的と違った目的を発揮しないといけないのではないかとか、当然自然条件も変わっていきますから、それぞれ見直しの基準を持っていると思います。
 そういうものの一つに、今あるストックが生物多様性、生態系から見てどうだということを性能のチェックにつけ加えるようなことが各省で行われると、今やられている点とか事例が面的にも大きく広がってくる。
 これはそれぞれの事業制度が持っている仕組みなので簡単な話ではないと思いますが、例えばアセットマネジメントとかストックマネジメントとかいわれて各省手法の中に構造物が壊れると同様に、生態系にとってどうだというような視点を盛り込まれると、全体として前回説明したものがなお生きてくるんではないかなという感じがします。どこに追加したらいいのかわかりませんでしたので、最後のところで申し上げました。

【熊谷委員長】 はい、ありがとうございました。それでは森戸委員、お願いいたします。

【森戸委員】 先ほどの鷲谷委員のお話を聞いていて感じたんですが、超長期的な100年を見通すというのは、ある種のインパクトをねらったことだと思うんですが、我がこととして受け止められないというと表現は悪いですけれども、私的に言えば、30年くらいが一番インパクトがあると思っているんです。ですから、100年はやっていただいて全くいいんですけれども、100年だけにしないでほしいんです。それ、逃げになりますからね。シナリオライティングでもいいですけれど、30年かそれ以内の、超長期ではなくて中長期の国土像といいますか、生物多様性から見た国土像を出すように努力していただきたいと思います。100年だけではなくて30年もお忘れなくということです。

【熊谷委員長】 はい、ありがとうございました。篠原委員、お願いいたします。

【篠原委員】 大分前に川名さんが言われたことに関連しているんですけれど、5年前につくった新・生物多様性国家戦略、その前の最初のやつ。自分たちでつくったんだから、なかなか冷静に評価とかできないのかもしれませんけれど、この項目は割とうまくいって、この項目はうまくいかなかった、何でうまくいかなかったのかというのをいつか報告していただきたい。
 理念をバーンと打ち出すと、共感を得て進んだのか、いや、抽象的な理念は日本国民にはだめで、もっと具体的なすぐ動けるようなテーマがよかったのかとか、何か参考になるデータだと思うんですよね。森戸さんが言っているのにも近いんですけれど、なるべく明瞭に出さないと、認知科学の方で言われているらしいんですけれど、大体3から7ぐらいじゃないと覚えていられないと。それはそうなんですよ。だから、今度の新々は5本柱ですよとか、何かそういうふうに打ち出さないとぱっと入ってこないですよね。よろしく、事後評価の方で一回議論したいと思いますけれど。

【熊谷委員長】 はい、ありがとうございました。それでは森本委員、よろしくお願いいたします。

【森本委員】 今のお話ともちょっと関連するんですけれども、インパクトを出すためには変わったところというか、考え方として大事なところを打ち出す必要があるのかなと思っています。
 それで全体として僕の個人的な印象なんですけれども、自然保護というのはこれまで開発だとかなんとかに対して、どれだけ足かせをしていくかという規制と、寄るな、さわるな式でやってきたやつから、それから開発の方もこれ変わってきたわけですね。開発の方も国土計画から国土形成計画ですか、もう開発という字がなくなってしまって撤退したんですね。ただマネジメントにいく、これはやっぱり自然環境についても生物多様性についても、保護からマネジメントに変わる。これは開発が変わったのと一緒に我々というか、生物多様性の側からしても考え方を変えるんだという、だからもちろん保護からマネジメントをどうするのかという、こういうことに変わるという大きな打ち出しが必要なんではないかなと思っています。
 そういうことから考えますと、マネジメントというのも単にお金を出して何かつくっていくとかいうことだけだと、第二の公共事業のマイナス面みたいな指摘もあって、いかに経済の中で転がしていくかというインセンティブをどうつけていくのかというのが求められるわけで、仕組みづくりを含めて、何か目標を決めてやろうというときの戦略としては、どううまく仕組みをつくるか、戦略アセスなんかの仕組みも多分その一つだと思うんですけれども、戦略アセスもなんかちょっとはたから見ていると迷走している感もあるんですけれども、もっとうまい仕組みのつくり方というのもあるかもしれないんです。
 ちょっと日本の事例ではないんですけれども、例えば以前、アフリカゾウの保護が問題になったときに、規制で例えば象牙のワシントン条約で規制する、国内では禁猟というか密猟を防止するというのを力づくでやろうとしたら、ブラックマーケットができて逆にアフリカゾウの個体数は減ったという事例もあるんですね。
 それに対して地域住民管理型に変えて、アフリカゾウのハンティングを募集する。生き物というのは幸い自然増加するというのがありまして、日本の場合は逆にふえ過ぎて困っているのがいっぱいあるわけですから、それをうまくコントロールすれば資源になるわけです。
 そうすれば、逆に地域の住民にとってはアフリカゾウというのが密猟者に手を貸してもうけるよりは、自分たちで管理してやった方がうまくいくというので、一時アフリカゾウの個体数がふえたというジンバブエの事例なんかあるんです。
 ところが利権が一たんできてしまうと、それまた国がいじってしまって、あらゆる面でこれがうまくいくかどうかというと別なんですけれども、社会システムというものから考えると、もっと規制だけでやるよりは、経済インセンティブをどううまく入れていくかというのが必要で、そういう意味でいうと、農業、一次生産も多分、補助金というのが本当にいいのかどうかというのは難しいところがあるわけですね。
 規制と同じで補助金も必ずしも有効に働かないことも多いわけで、むしろ経済システムをうまく回していくという、この視点がなかったら絶対長続きすることにはならないんです。自然再生推進法もそうでして、一定程度出だしは税金等で補助しても、ずっとそれをかけるかというと、これはおかしいわけです、ある意味。ある程度からいったら自立的なところにいかないと、どこかにひずみが出てきてまずいわけでして、だから全体を通して言うと、保護と規制と、それから補助金、これではなくて、長い目で見るとマネジメントへ転換するんだと。
 マネジメントの場合は、もちろん部分的な保護とか、そういう補助金とかもちろんインセンティブあるんですけれども、何か経済の仕組みの中でどう位置づけていくのかというのを、新しい法律をつくるとかいうことだけでも結構できるわけです。
 必ずしも日本にうまく適用できるかどうかわからないんですけれども、アメリカだとミティゲーション・バンキングみたいなものをやって、自然海岸の延長にしたら増えたとかいうこともあるわけです。
 日本でどういう具合にうまくやっていくかというのは、全体としてもっと考える必要があると。そのキーワードは、保護、規制、補助金ではなくて、むしろマネジメントと経済に乗せるという、こういうことかなと思うんですけれど、この辺が全体にかかわるんですけれど、ちょっとご検討いただけたらと思います。

【熊谷委員長】 はい、ありがとうございました。ほかにご意見ございますでしょうか。和里田委員、お願いいたします。

【和里田委員】 点検のときの会議でも申し上げましたし、それから今のお話にも関係するんですけれども、やはり行政として進めるについては、国家財政あるいは地方財政ということでやるのかもしれませんが、国民総がかりでやるためには、そのエネルギーになる経済的な背景ということですから、今の話のように、そうするとやっぱり税制その他の制度を導入しながら、そういう環境のための行動のための資金を出すのを促すとか、あるいは行動を促すとかいうようなものもこれから必要になってくるんじゃないかと思います。

【熊谷委員長】 はい、ありがとうございました。予定の時間も迫ってまいりましたので、今までのご意見に対して、もし何か事務局の方からお話しすることがあれば伺いますが、よろしゅうございますか。
 本日はどうもありがとうございました。大変貴重なご意見を賜りまして、特に今までの政策のきちんとした見直しとか、あるいは最後の方には戦略の実践にかかわる貴重なご意見をいただきましたし、それと同時に、各省庁とのいろいろな今後の検討事項も含めて、課題も大変ご指摘をいただきました。
 まず、今回いただきましたご意見につきましては、十分に再度整理をさせていただきたいと思いますが、次回は先ほどのスケジュールによりますと、地方公共団体、民間団体等のヒアリングということになっておりますので、今日もしご意見をいただいた中で、さらに具体的なご質問がおありの方は、そのときにも再度ご質問いただけたらというふうに思います。
 それでは、小委員会については本日の議論はこれで閉めさせていただきたいと思います。
 なお、本小委員会の運営方針に基づきまして、本日配付の資料、議事録は公開することになっておりますので、ご承知おきをいただきたいと思います。本日は大変ありがとうございました。
 それでは、事務局にお返ししますので、連絡事項等がありましたらよろしくお願いいたします。

【事務局】 委員の皆様、本日は熱心なご議論ありがとうございました。
 次回の小委員会は6月26日火曜日、午前9時30分から午後5時15分まで、東京国際フォーラムにて行いますので、ご出席をよろしくお願いいたします。
 なお、本日配付の資料につきましては、郵送ご希望の委員の方は封筒にお名前をお書きの上、机に置いていただければ事務局から後刻郵送させていただきます。
 それでは、本日はどうもありがとうございました。

(以上)