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中央環境審議会 自然環境・野生生物合同部会
生物多様性国家戦略小委員会(第1回・2日目)


平成13年10月31日

                             午前10時30分開会


●渡辺生物多様性企画官 おはようございます。
 10時半になりましたので、昨日に引き続きまして自然環境・野生生物合同部会生物多様性国家戦略小委員会を開催いたします。
 議事の進行につきましては、辻井委員長、よろしくお願いいたします。

●辻井委員長 おはようございます。
 また今日も夕方まで長時間にわたりますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。
 午前中は、昨日に引き続きまして農林水産省の施策についてのヒアリング、午後は国土交通省からのヒアリングということになります。
 では、最初に林野庁森林整備部からご説明をお願いいたします。

●林野庁森林整備部(香月) 説明の前に、資料の確認をさせていただきます。
 昨日お配りいたしました林野庁の資料はページの関係がちょっと間違っておりましたので、朝、改めて配らせていただきました。右肩の「資料5」の下に「平成13年10月31日配付版」と書かれたものをご覧ください。

●林野庁森林整備部(岸) よろしくお願いいたします。
 私、林野庁研究普及課長の岸でございます。座ったまま説明させていただきます。
 資料5を1枚めくっていただきますと目次が書いてございますが、基本方針、それから取り組み状況、今後の課題について、ご説明させていただきます。
 まず、1ページでございます。
 生物多様性に関する基本方針、基本的考え方と書いてありますが、森林は野生動植物の生息域であり、生物多様性が極めて高く、遺伝資源の宝庫であるということでございまして、この10月26日に森林・林業基本法に基づいて閣議決定しました森林・林業基本計画に基づきまして多様な森林を整備する中で、特に貴重な動植物が生息する森林については、「森林と人との共生林」という形で区分をいたしまして、これにふさわしい施業を行うとともに、その他の区分においても、生物多様性の保全に十分配慮する。
 この下に区分を書いてございますが、全国の森林を3つに区分いたしました。1つは水土保全林、それから「森林と人との共生林」ということで、これが多様な生物の遺伝資源の保全や貴重な動植物の保護など、自然の保全を重視した森林という部分になります。
 1枚めくっていただきまして、重視すべき機能に応じた森林の区分でございます。
 森林・林業基本計画、先程申しましたように10月26日に閣議決定いたしましたが、我が国の森林を重視する機能に応じて「水土保全林」「森林と人との共生林」「資源の循環利用林」に区分しております。
 この基本計画におきましては、区分に応じ望ましい森林の姿を示しておりまして、それとともに、望ましい森林整備のあり方を示しております。貴重な野生動植物の生息・生育の場として重要な森林につきましては「森林と人との共生林」に区分をして、これにふさわしい森林整備を推進するとともに、「森林と人との共生林」以外の「水土保全林」「資源の循環利用林」についても、多様な生物の生息・生育の場として生物多様性の保全に寄与していることを踏まえまして、森林施業の実施に当たっては、生物多様性の保全に十分配慮することとしております。
 なお、ここに「望ましい森林の姿」という形で整理しておりますが、「原生的な自然環境を構成し、学術的に貴重な動植物の生息・生育に適している森林」ということで、望ましい森林ということにしております。
 なお、国有林におきましては、このような森林・林業基本計画の考え方に先がけまして平成10年に国有林の抜本的改革を行っておりますけれども、その管理経営の方針の中で、公益的機能の維持増進を旨とするものに転換しております。新たな区分に当たっては、こういった公益機能の発揮を重視する公益林の占める割合が、それまでの5割から8割に拡大しております。
 それから3ページ、「森林と人との共生林」における森林施業の方法でございます。
 動植物の生息・生育に適した森林、住民等に憩いと学びの場を提供する森林等への誘導を旨として、広葉樹の導入等による森林構成の多様化、森林環境教育、健康づくりの森の整備を推進するということでございます。
 特に、原生的な自然や自然環境の保全上重要な野生動植物の生息・生育地である森林を初め、優れた自然や景観を構成する森林については、自然の推移に委ねることを基本として保全管理するということでございます。
 右側に書いてございますが、「森林と人との共生林」におきましては、その対象全体の6割を天然林施業といたしておりまして、ここにアンダーラインを引いてございますが、自然の推移に委ねることを基本としております。
 それから、育成複層林施業でございますが、広葉樹と針葉樹の混交を含む複層状態の森林ということでございまして、「森林と人との共生林」の約3割がこの対象になっております。
 それから、育成単層林施業でございます。里山等の緩傾斜地に存在し、成長量の高い針葉樹単層林等については、景観等への影響を配慮した適切な保育及び間伐を基本として単層状態の森林として育成管理するということであります。これは「森林と人との共生林」の1割に満たないものとしております。
 次に4ページ、現行生物多様性国家戦略策定後の取り組み状況・内容などについてご説明いたします。
 まず、我が国の森林における生物多様性の現状でございますが、我が国は南北に細長く、脊梁部は山脈が連なっております。このため北部と南部、太平洋側と日本海側、海岸部と山岳部などで植物の生育環境は大きく異なっておりまして、森林は多様な姿を見せております。
 右側の表にございますが、例えば、亜寒帯に属する北海道や中部以北の山岳部では、トドマツやトウヒ等の針葉樹を中心とする森林が分布しております。ブナ、ミズナラ等に代表される落葉広葉樹の森林は、東日本を中心に見られております。それから、西日本にはシイ、カシ等の常緑広葉樹から成る森林が広く分布しておりまして、南西諸島ではマングローブ林等の亜熱帯の森林も見られるということでございます。
 我が国の森林面積は約 2,500万ヘクタール、国土の7割でございますが、このうち人口林が 1,000万ヘクタールでございます。
 次に、森林に依存する生物種でございます。右下の表をご覧いただければと思いますが、我が国で確認されている種の数は、哺乳類で 188、鳥類 665、爬虫類87、両生類59、昆虫類は3万強、それから維管束植物で 5,300でございます。森林に依存する種の数として確立した資料はございませんが、これらの種類のうち、例えば哺乳類では、陸生及び沿岸種は約 100種で、そのうち食物の一部または全部を森林から得ていると判断されているものは約8割。鳥類では、陸生種が約 150で、そのうち森林に営巣するものは約 100種。両生類では、森林に棲むものは56種と言われております。また、その他のものについても、陸生のものの多くの種が森林に依存していると思われます。
 次のページをめくっていただければと思います。
 (2)生態系及び自然生息地の保護でございますが、まず、保護林でございます。
 ご承知のとおり、国有林野の保護林制度は大正4年に発足いたしまして、以来、学術の研究、貴重な野生動植物の保護、風致の維持等の面で重要な役割を担ってきております。そういう意味では、森林保護の先駆的な制度として機能しているわけでございます。
 平成元年には、生態系保護の視点等を導入いたしまして、保護林をその目的に応じて森林生態系保護地域、森林生物遺伝資源保存林等の7種類に体系整理をいたしまして、それぞれの設定目的に応じた管理を実施しております。
 ちなみに、平成7年7月、現行の国家戦略の策定時には 787カ所、約47万ヘクタールでございましたが、平成13年4月1日現在では全国の国有林野で 817カ所、53万9千ヘクタールの保護林が設定されまして、今後とも、その適切な維持・拡充を推進したいと考えております。
 右下の、保護林の保護・管理の欄を見ていただきたいと思いますが、国有林野では、森林の適切な保護管理のための巡視を行っているが、特に保護林については重点実施をしております。
 巡視に当たっては、山火事・病虫害などの各種森林被害の防止、それから高山植物などの保護に係る指導及び取り締まり、注意標識等の設置の確認、入山規制等に対する啓発活動等、ボランティア等の協力を得ながら実施しているところでございます。
 それから、ダメージを受けた植生の回復措置、あるいは環境教育の場としての整備、希少野生動植物の生息・生育状況の調査や生息・生育環境の維持・整備等、適切な保護・管理を進めるための事業を実施しております。
 このダメージを受けた植生の回復措置につきましては、平成9年より国有林野事業で保護林保全緊急対策事業を実施しているところでございまして、外部からの影響により植生が荒廃しているものについて、保護区の設置であるとか、あるいは被害木の除去とか、そういった外部要因の除去を行うことと、それから、植生の後退の著しい箇所について移植等を行って、植生等の回復を図っております。
 それから、下から4行目にございます「環境教育の場としての整備」でございますが、これは後程ご説明いたします森林生態系保護地域を、バッファゾーンとコアの部分に分けて管理しているわけですけれども、この中で環境教育と申しますか、標識、歩道等の整備、あるいは学習用資料の作成等を行っているところでございます。
 それから、希少野生動植物種の生息・生育状況の調査や生息・生育環境の維持・整備に関しましては、国有林野事業で希少野生動植物種保護管理事業を実施しておりまして、これにつきましては、生息・生育地等の環境の維持・整備手法の調査と実際の事業、それから保護のための巡視等を行っております。
 例えば、小笠原の国有林におきまして、非常に繁殖力の強い移入種でアカギという木があるわけでございますが、これが小笠原固有の植物を駆逐してございまして、そういう意味では、希少野生動植物の生息・生育に悪影響を与えているということがございます。このため、関東森林管理局の東京分局と小笠原総合事務所では、アカギについて巻き枯らしという措置をとりまして、それから郷土樹種であるオガサワラグワ、シマホルトノキといった6種の郷土樹種を植栽して、その保護を積極的に進めているといった事例がございます。
 次に、6ページをご覧いただきまして、森林生態系保護地域についてご説明させていただきます。
 森林生態系保護地域は、我が国の主要な森林帯を代表する原生的な天然林等を保存することにより森林生態系から成る自然環境の維持、動植物の保護、遺伝資源の保存、学術研究等に資することを目的とするもので、この保護林制度の中核をなすものと考えております。
 平成13年4月現在、全国の国有林野において32万ヘクタール、26カ所が制定されておりまして、これは現行の国家戦略が策定されました平成7年現在に比較いたしますと、箇所数で2カ所、面積において1万ヘクタール増加しております。ちなみに、保護林全体の面積は、資料5ページにございますように約54万ヘクタールでございますが、このうち32万ヘクタールが森林生態系保護地域となっております。
 その管理の方法でございますが、森林生態系保護地域においては、原則として人手を加えずに自然の推移に委ね、森林生態系の厳正な保全を図る保存地区(コアゾーン)と、保存地区の森林に外部の環境変化の影響が直接及ばないよう、緩衝の役割を果たす保全利用地区(バッファゾーン)の2つに区分いたしまして、厳正に保護・管理をしております。
 先程ちょっとご説明いたしましたように、バッファゾーンについては森林環境教育等に利用しているということでございます。
 それから、このうち屋久島、白神山地は世界遺産に登録されているわけでございますが、白神山地はその全域、屋久島は民有地の区域を除いた全域、95%程度に相当しますが、これについて森林生態系保護地域として厳正な保護・管理を実施しているところでございます。ここにつきましては生態系モニタリング調査、あるいは植生等回復措置、屋久島におきましては屋久杉の樹勢回復措置等、世界遺産保全緊急対策を実施してございます。
 右側に地図がございますが、北は北海道から南は西表まで、このような形で設定してございます。
 ちなみに、5ページのご説明の際に各保護林についてご説明いたしませんでしたので、若干そのご説明をさせていただきます。
 ただいま森林生態系保護地域についてはご説明しましたので、2番からご説明させていただきますと、まず、森林生物遺伝資源保存林でございます。ここにつきましては、森林と一体となって自然生態系を構成する生物の遺伝資源を、将来の利用可能性を考慮いたしまして、森林生態系内に保存することを目的としてございます。平成7年時点で2カ所、約1万ヘクタールでございましたが、平成13年4月現在、12カ所、3万6千ヘクタールに増加しております。
 それから、林木遺伝資源保存林でございますが、これは主要な林業樹種、それから希少樹種等の林木の遺伝資源を森林生態系内に保存することを目的としております。平成7年時点で 336カ所、9千ヘクタールございましたが、平成13年4月現在、 329カ所、約9千ヘクタールということでございます。これは減っております。
 それから、植物群落保護林でございます。我が国または地域の自然を代表する植物群落及び歴史的、学術的価値を有する個体の維持を図り、併せて学術研究等に資することを目的としております。具体的には、希少化している植物群落、それから分布限界に位置する植物群落、その他、保護を必要とする植物群落、それから個体が存する区域を指定することとしております。この面積につきましては、平成7年が 341か所、約9千ヘクタール、平成13年4月現在で 354カ所、約12万6千ヘクタールでございます。
 それから、特定動物生息地保護林でございますが、特定の動物の繁殖地、生息地等の保護を図り、併せて学術研究等に資することを目的として設定しております。具体的には、希少化している動物の繁殖地または生息地、それからほかに見られない集団的な動物の繁殖地または生息地、その他、保護が必要な動物の繁殖地や生息地を指定することとしております。これにつきましては平成7年時点で26カ所、約1万2千ヘクタールございましたが、平成13年4月現在、31カ所、約1万6千ヘクタールに増加しております。
 次の特定地理等保護林につきましては、生物多様性とかかわりが薄いわけでございますが、我が国における特異な地形、地質等の保護を図り、併せて学術研究に資することを目的として、平成13年時点で33カ所、約3万ヘクタール設定しております。
 それから、郷土の森でございますが、地域における象徴としての意義を有する等、森林の現状の維持について地元市町村の強い要請のある森林を保護し、併せて地域の振興に資することを目的として設定しております。平成7年時点で28カ所、約2千ヘクタールでございましたが、平成13年4月現在32カ所、面積は同じでございまして、約2千ヘクタールでございます。
 次に7ページ、「緑の回廊」でございます。
 現行の保護林は孤立・分散しているものが多く、特定の生物種の保護・保全にとっては有効でございますが、森林生態系の構成者である野生動植物の多様性を保全して、豊かにするためには、野生動植物の移動経路を確保して、その生息・生育地の拡大と相互交流を促すことが必要でございます。
 このため、動植物の保護、遺伝資源の保存等の保護林の機能をより高度に発揮させ、森林生態系の一層の保護・保全を図る観点から、この移動経路としての「緑の回廊」を国有林野事業として設置し、保護林をネットワーク化しております。
 その設置の経緯でございますが、平成12年度には、平成11年度に定めた設置基準等に基づいて設定委員会を設置いたしまして、学識経験者、NGO等の意見を聞いた上で、全国10カ所の「緑の回廊」を設定しております。
 左下に概念図がかいてございますが、こういった保護林を「緑の回廊」で結びつけて、野生動植物の移動経路として寄与するということでございます。
 右側に各回廊の面積、延長が書いてございますが、知床半島、大雪、支笏、それから奥羽山脈、越後、三国、日光、秩父山地緑の回廊、それから戸隠、大隅半島とございます。この面積及び延長でございますが、10カ所の合計で19万8千ヘクタール、延長は 804キロに及んでおります。
 例えば、奥羽山脈緑の回廊は、奥羽山脈の稜線に沿いまして北は青森県八甲田山周辺、南は宮城・山形県の蔵王周辺まで幅約2キロ、延長 400キロを設定しております。面積は、ここにつきましては8万8千ヘクタール、連結される保護林の面積を合わせますと約15万ヘクタールでございます。
 続きまして、8ページをご覧いただきたいと思います。
 保安林、林地開発許可制度でございます。
 保安林制度を通じた森林の保全、それから保安林以外の森林についても無秩序な開発がなされないように、林地開発許可制度というものがございまして、これの適切な運用に努めることで、生態系及び自然生息地の保護にも寄与しております。
 この保安林の指定面積、右側に 947万ヘクタールと書いてございますが、実面積で申しますと平成11年度末で 887万ヘクタールでございます。と申しますのは、重複して保安林種をかけているもの、例えば、水源涵養保安林に対して保健保安林を重複してかけているものを延べ面積で表したのが 947万ヘクタールでございます。これは、我が国の森林面積約 2,500万ヘクタールの3分の1でございます。
 その下に、林地開発許可処分の推移がございますが、このような形で減少しつつございます。
 9ページ、森林保全と防災対策でございます。
 病害虫、森林火災等による森林被害は、多様な生物の生育域の喪失にとどまらず、各種森林の多面的な機能の低下にもつながるわけでございます。こういったことから、健全な森林の育成や保護を推進し、各種の森林被害に対して適切に対応していくことが必要であると考えております。
 その中で、外来性の伝染病である松くい虫被害は、右側に被害の推移を書いてございますが、高い水準で発生しておりまして、的確な防除の実施、地域の防除体制整備などの総合的な対策を推進しております。また、野生鳥獣による森林被害面積の推移は、その下の表のような傾向でございますが、野生鳥獣による被害につきましては、防護柵の設置等による防除の実施、野生鳥獣の生息環境となる広葉樹林の造成など、野生鳥獣との共存にも配慮した対策を総合的に実施しております。
 林野火災でございますが、平成11年度で見ますと 2,661件、約1千ヘクタールの森林が林野火災の被害を受けてございます。そういったことから、入林者等に対する防火意識を高めるための普及活動や、予防体制の強化等の取り組みを推進するとございます。
 それから、酸性雨につきましては、これまで10年以上にわたって全国の森林にモニタリングスポットを設けまして、いろいろと分析しているわけでございますが、こういったモニタリングを引き続き進めていくことが必要であろうと考えております。
 次に10ページ、巨樹・巨木の保護活動の推進−森の巨人たち百選−でございます。
 これも国有林野事業でございますが、巨木を中心とした生態系に着目いたしまして、これらを健全な形で次世代に守り伝えていくことを目的としております。そういった中で、国有林野の代表的な巨樹・巨木を「森の巨人たち百選」として平成11年に選定しております。これが全部で35都道府県、針葉樹13種49本、広葉樹23種51本でございます。
 選定された 100本の巨木は、北は北海道から南は沖縄・西表島に及んでおります。これらの巨木のある地域では、自治体や市民団体等から成る協議会が設置され、自主的な巨木の保護活動が進められております。
 次に11ページ、二次的自然環境の保護−里山の保全−でございます。
 里山と申しますのは、居住地近くに広がり、かつては薪炭用材の伐採、落葉の採取等を通じて地域住民に継続的に利用されることにより、維持・管理されてきた森林でございます。
 近年、こういった薪炭用材の伐採なり落葉の採取が行われなくなってきている状況の中で、里山林の利用が非常に低迷しているわけでございます。そういったことから、放置され、荒れた森林が随所で見られる状況にございます。
 右側に、森林のタイプ別面積の推計が書いてございますが、里山林、全国 2,500万ヘクタールの中で 456万ヘクタール、都市近郊林につきましては 224万ヘクタール、そういう意味ではかなり大きなウエートを占めてございます。
 こういった身近な里山林、都市近郊林が人々に継続的に利用され、維持・管理されるよう、森林所有者と都市や地域の住民の連携及び協力のもとで、整備及び保全活動と利用活動を一体的に推進できる条件の整備が必要であると考えておりまして、平成13年より「里山利用林」の設定と、「森林の育ての親」募集を内容といたします里山林の新たな保全・利用推進事業を実施しております。
 内容でございますけれども、まず、里山を利用活動の場として設定するという趣旨で里山利用林を設定した上で、「森林の育ての親」として団体あるいは家族を募集いたしまして、その人たちに施業の分担を含めていろいろな保全・整備を行っていただくという内容ございます。こういった活動の中で、里山林の保全を図っていきたいと考えております。
 次に12ページ、(4)生息域外保全等(遺伝資源の保存−ジーンバンク事業−)でございます。
 森林に賦存する多様な遺伝資源は、科学技術の進歩に伴い、その利用はますます拡大すると思われるため、後世への多様な遺伝資源の継承、それから利用のため、独立行政法人林木育種センターでジーンバンク事業を実施しておりまして、利用価値の高い育種素材、天然記念物、絶滅に瀕している種などの林木遺伝資源を幅広く収集、そして増殖・保存しておりまして、現在、林木育種センター内に成体で約2万系統、貯蔵施設に種子・花粉約6,000 点、それから優良遺伝子群として人工林 242カ所の 990ヘクタールを造成し保存、それから国有林内の 399カ所、4万 5,600ヘクタールの天然林を登録しております。
 それから、これも独立行政法人でございます森林総合研究所におきまして、森林に係るキノコ等微生物遺伝資源、約 2,400点を収集・保存しております。
 右側に林木遺伝資源の保存方法、保存形態、保存場所が書いてございますが、1つは施設保存でございまして、生殖質である種子とか花粉を貯蔵庫、冷蔵・冷凍庫の中に保存する。もう一つは、真ん中の生息域外保存で、成体を集団あるいは個体で人工林保存林として保存、あるいはクローン・家系を保存園として保存する。それから天然林につきましては、これは国有林の中でございますが、こういった遺伝資源について、天然林をそのままの状態で保存するという措置をとってございます。
 次に13ページ、生物多様性の持続可能な利用でございます。
 森林の生物多様性の保全とその構成要素の持続的な利用のためには、森林の状況に応じた適切な保育、伐採の実施等、適切な森林管理が必要でございます。そのための具体的な方策としまして、適切な森林管理に不可欠な林道整備を行う上での新たな取り組み、あるいは国民参加の森林づくりを推進しているところでございます。
 まず、[1]エコ林道の整備でございます。
 林道は、多面的機能を有する森林の適正な整備及び保全を図り、効率的かつ安定的な林業経営を確立するためには不可欠な施設でございます。
 こういった中で、小動物に配慮した側溝、あるいはのり面に鳥類の餌木となる植生を導入するなど、自然環境保全のための林道技術の確立を図り、自然環境にやさしいエコ林道の整備を推進しております。
 下に絵がございますように、このような、けものみちなどを配置しているわけでございます。
 それから、国民参加の森林づくりでございます。
 環境保全機能など、森林の有する多面的機能を持続的に発揮させていくためには、森林の整備・保全は社会全体で支えるという国民意識の醸成が非常に重要であろうと考えております。このため、広範な国民の参加による森林づくりを推進しておりまして、平成11年度予算による実施件数は 746件でございます。それから、ボランティア団体が最近、非常に増えておりまして、森林施業を行っている森林ボランティア団体数は平成9年時点で約277 団体と把握しておりましたが、その3年後の平成12年になりますと倍を超えまして、581 団体に増加しているわけでございます。
 次に15ページ、今後の課題、取り組みの方向でございます。
 まず、移入種への対応というのが1つございます。移入種につきましては、在来の近縁な種との交雑の進行、同種の在来個体群との交雑による遺伝的汚染、他の種の補食や生息場の占奪等による在来種の圧迫等による生態系の攪乱のおそれがございます。その意味では、生物多様性を損なう場合があるという国家戦略の記述でございます。
 こういう中で、林野庁におきましては、先程ご紹介いたしましたように、小笠原において移入種であるアカギの巻き枯らしを行って、アカギに駆逐されつつある地域の固有種でございますオガサワラグワなどの植生の回復と、それらの実を食べる希少な鳥であるハハジマメグロの繁殖を助けたり、また、外来性の伝染病である松くい虫の防除を行うといった取り組みを行っているわけでございます。
 現在、環境省におきまして、移入種についてのガイドライン作成に向けた取り組みが行われていると聞いておりますけれども、林野庁及びその他関係省庁も、移入種対策に向けた総合的な取り組みに対し、協力していく必要があるものと考えております。
 2点目は、遺伝子組み換え生物への対応でございます。
 遺伝子組み換え生物は、低農薬化といった環境問題への貢献も期待されますが、反面、使い方によりますと、在来種との交配あるいは在来種の駆逐等、現在の生態系に悪影響を及ぼす可能性も考えられます。
 遺伝子組み換え林木につきましては、現在、国内において商品化されたものが流通している事例はないと承知しておりますけれども、海外において野外実験を行われている例が多数報告されているわけでございます。昨日、恐らく農林水産省の技術会議事務局から説明があったと思いますが、この遺伝子組み換え生物の輸出入の規制につきましては、生物多様性条約の中で生物安全性に関するカルタヘナ議定書が採択されておりまして、我が国においても、この批准に向けて関係省庁が一体となって対策を講じるということでございますが、林野庁におきましても、その批准に向けて、リスク評価等につきまして検討を行っているところでございます。
 以上、ご説明についてはこれで終わらせていただきます。

●辻井委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、ご質問、ご意見がありましたらどうぞ。

●渡辺委員 大変単純な質問なんですけれども、冒頭でご説明のありました、森林・林業基本計画で日本の森林を3つに区分されたというのと、随分古くからあります保護林とか保安林との関係はどういうことなんでしょうか。極めて単純なんでしょうか、それとも入り組んでいるんでしょうか。

●林野庁森林整備部(岸) この基本計画を策定するに当たりましては、森林の機能を評価する中で3区分に分けているわけでございまして、そういう中で、例えば水源涵養保安林に指定されているものについては基本的には水土保全林に区分される、概念的にはそのような形で区分していると考えております。
 それから保護林につきましても、そういった中で、例えば、森林生態系保護地域等につきましては「森林と人との共生林」に区分されていると考えております。
 そういったことでございますけれども、よろしいでしょうか。

●渡辺委員 保安林、保護林は、もう昔から線引きされているわけですね。それに対して、新しい3区分は必ずしも線引きされていないんですか。しかし、何万ヘクタールと書いてありますけれども。
 だから、後で結構なんですけれども、マトリックスのようなもの、保安林はこれとこれにまたがっているとか、保護林はこれとこれにまたがっている、あるいは完全にここへ含まれる。3区分ですからね、すべての森林を森林・林業基本計画では3区分して、一応線を引いているのではないかと思ったんですけれども。

●林野庁森林整備部(常冨) まず、森林・林業基本計画にあります3区分ですが、これの区分けにつきましては現在、作業中でございます。保安林にしましても保護林にしましても、いろいろ目的がありますので、それに応じてそれぞれ3区分に分けていくことになります。必ずしも、どれがどれという当てはめが今の時点であるわけではございませんけれども、例えば水源涵養保安林等の保安林につきましては、その目的に応じて当然、水土保全林という区分けになっていくと思いますし、保安林につきましては、それぞれ民有林も国有林も入ってはいますので、それぞれの状況に応じて適切に3区分に分けていくということで現在、作業しているところでございますので、今の時点でそういったマトリックスというか、当てはめのようなものはないとご承知おきいただければと思います。

●鷲谷委員 まず、基本的な考え方について述べている1の(1)の文章がちょっと気になるんですけれども、一番最初の「森林は野生生物の生息域であり、生物多様性が極めて高く、」という文章ですが、限定的にこういうことが言えるかどうか。どういう森林かによって、生物多様性という点で意味があるか、ないかは随分変わってくると思うんです。自然林であればこういうことが言えると思いますけれども、あるやり方の植林だったら、これは言えないこともありますので、もうちょっとそのような視点……、つまり、どのような森林であれば生物多様性に寄与できるかという視点であるとか、現状の厳しさですね。今までのやり方で損なわれたものもあると思うんですけれども、そういうものを今後どう取り戻していくかというような視点も必要なのではないか。私は保全生態学という立場から発言しているんですけれども、そのような気がします。
 共生林などに関しても、もし野生生物との共生を目指すのだとしたら、広葉樹林への転換−−広葉樹林というのは野生の動植物の生育場所として、とても重要な意味を持っていたんですけれども、かなり縮小したり分断・孤立化してしまっている現状がありますので、そういうものと共生とか保護ということを考えれば、より積極的に広葉樹林への転換というような方針を出した方がいいのではないかという印象を受けます。
 それから、野生の生物に関しては、調査に関しても配慮等に関しても「希少」とか「貴重」という言葉が頭についているんですけれども、一部の希少な動植物だけではなくて、日本の森林を構成している生物群集とか生態系というような視点も必要かなと思いました。
 それから、ここに書き込まれてはいないんですけれども、新たな大規模林道を整備する計画があるということで、自然を守りたい人の中ではかなりご心配されている方も多いのではないかと思うんですね。その辺が、こういう生物多様性保全とか持続可能な森林ということと矛盾しないのかどうか、検討していただく必要があると思います。雇用促進ということが一つのテーマだとは思うのですけれども、それは多面的な機能を発揮させるための雇用であってほしいと思うんですね。従来型の事業ではなくて。
 次に、里山保全に積極的に取り組まれるということですが、ただ管理をするということではなくて、もう少し生物多様性、動植物の視点ですね、そういうものも入れていただいた方がいいような気がします。
 それから4番目、林業として生産をする場に関してのことなんですけれども、林業そのものを持続的で、生物多様性の保全と矛盾の少ないものにしていくためには、恐らく施業のやり方とか、いろいろなことにおける工夫というのもあると思います。国際的には、そういう議論も随分なされていると思いますし、国際的な認証制度、FSCとかありますね。そういうものの利用を推進するようなことを考えていらっしゃいますでしょうか。これは質問です。
 それから最後、5番目はお願いになります。
 移入種のことでアカギとか松枯れのご説明はありましたが、林野庁がかかわっていらっしゃることで一番大きな問題は、治山工事の際にイタチハギ、ハリエンジュ、ウィーピングラブグラスやケンタッキー31フェクスなど外来牧草であるとか外来のマメ科植物を非常に大量に使って、そこから種子が分散して、下流の川とか牧草地がこういったものの群落になってしまって生態系が変わってしまいます。
 これは林業にも被害が返ってきまして、例えば北関東では、足尾の治山工事で牧草地のようなところが広がってしまって、冬のシカの生存率が高くなってしまった。もちろんそれは一因で、バックには温暖化とか他の要因もありますが、移入種が関わって北関東でのシカの個体群が大きくなってしまって、奥日光とか尾瀬にまで影響が及んでいます。これはまだ十分なデータで証明されているわけではないですけれども、そういうおそれもあります。
 のり面緑化など、他のいろいろな工事でもこういうものは利用されていますが、余りに大量で、恐らく、量的なことが一番問題だと思いますので、地域の在来植物を利用した緑化の技術を、コストがかかったり、やや技術的に難しい面があるかもしれませんが、利用していくことが日本列島全体の生物多様性を保全するという意味ではとても重要なことだと思います。

●辻井委員長 ご意見ということで、4番目のご質問だけ、もしお答えいただけるんでしたらお願いしたいと思います。

●林野庁森林整備部(岸) 一般論として認証制度というか、里山保全とそこの関連……

●鷲谷委員 里山ではありません。
 林業の場、生産をする場での配慮というのもあり得るわけですね。持続可能な林業であるとか生物多様性の保全ということに関しては。そういう点ではどのようなことを考えていらっしゃるのかということです。
 もう一つ具体的に伺ったのは、国際的には、そういう施業をしている森林に関する認証制度があると思うので、それを国内で利用していくようなお考えがあるかどうかということです。

●林野庁森林整備部(岸) 認証制度につきましては、世界的に今、FSCなりISOなり、あるいはカナダなり、それからヨーロッパはヨーロッパなりの認証制度をつくってやられているわけでございます。この基本的な考え方は、基本的に、そういう認証制度を使うことによって森林経営を持続可能なものに導きたい、そういう認証をすることが、持続可能な森林経営というもののインセンティブになるということであろうと考えております。
 そういう中で、我が国でも既に、例えば高知県等がFSCの認証を取ったり、あるいは森林所有者によっては取ったりするような形になっております。そういう意味では、林野庁といたしましても我が国全体の森林について、持続可能な森林経営に向けて努力しているわけでございまして、そういう中で、認証制度というのは非常に有効な方策ではないかと考えております。
 特に、例えばFSCですと、最終的に木材まで認証してラベリングをする形になっておりますので、そういうものを買うことによって、我が国で適切に施業されて育成された森林から出た木材が、要するに、そういう意味での付加価値というものが出てくるのではないかと考えておりまして、当然その中に生物多様性の保全みたいな配慮事項も入ってくるわけでございまして、そういうことであろうと考えております。

●森戸委員 先程鷲谷委員も質問の中で触れておられました、林道の関係で。
 今回のご説明では林道の話が出ていなかったんですけれども、林道整備というのは林業生産の中の1つ、基盤整備ということで必ずどこでも出てきていますし、今度の新しい基本計画の中でも出ていますけれども、林道整備による生態系への影響というのは非常に大きいんですね。
 ですから、この林道整備に関して、今、一般道路でも見直しとか、必要性とか利用度の問題が論議されていますが、今までの林道に関しての総括といいますか、点検といいますか、そういうことをやった上で、さらにこれだけの林道整備が必要だということなのか、それとも雇用対策とか地域経済振興のためにともかく林道に予算をつけるというスタイルなのか、その辺、林道そのものに関する基本的な視点として新しい考え方を持っておられるのか、あるいは林道の整備の仕方においても、環境への負荷を少なくするような対応を積極的に進めているのか、その辺のことをお聞きしたいんですけれども。
 できれば後で資料をいただきたいんですけれども、とりあえずさわりだけでも、今、口頭でお願いできるとありがたいです。

●辻井委員長 では、細かいことはともかくとして、お考えといいましょうか、ご返事いただけるんでしたら。

●林野庁森林整備部(岸) 林道、作業道、それぞれ森林を管理する上で不可欠なインフラだと考えております。今回の基本計画は、森林の多面的機能をどう発揮するのかというのが一つのテーマでございまして、これを最大限発揮しながら、公益的機能に重点を置いた施業をしていこうと考えております。
 そういう中で、例えば複層林という形での施業、それから広葉樹を含めた森林造成といったものを盛り込んでいるわけでございまして、そういった森林の適正な整備であるとか保全を図るという中で、林道の整備は不可欠であろうと考えております。
 そういう中で、林道のつくり方の問題があるわけでございますけれども、それぞれの森林の区分に応じた路網の整備を基本計画にも盛り込んでおりまして、例えば、水土保全林におきましても積極的な施業を実施することがあるわけでございますが、こういった場合については高密な路網を整備するわけでございます。一方で急傾斜地、あるいは崩壊の危険性が高い箇所につきましては、こういう場所を回避しながら整備するということ、それから必要な排水対策ということ。それからもう一つは、運搬車両の通行に必要な最小限の幅員に抑制するといった取り組みが重要だと考えております。
 それから「森林と人との共生林」でございますけれども、これにつきましても森林体系の活動の場、健康づくりの場等いろいろあるわけでございまして、こういった森林へのアクセス等に必要な路網の整備が必要なわけでございます。こういうものにつきましても、その景観、それから生態系の保全、これは生物多様性も含めますけれども、こういったことに配慮した線形であるとか構造、施設を選択する必要があるのではないかと考えております。
 もちろん、林道自体がこういった森林の適正な整備、それから保全を図るツールであるとともに、ある意味では、先程ご指摘のとおり生産手段という一面もあるわけでございますけれども、こういった効率的、安定的な林業経営があって初めて森林経営というものが成り立つわけでございまして、両々相まったような形で森林の多面的機能を発揮できるよう、適正な整備をしていきたいと考えております。

●大沢委員 今回、森林・林業基本計画を作成するにあたって、努力目標とか達成目標みたいなものはたくさん盛り込まれているんですけれども、現実に野外で具体的にどういうふうにするかというのはどうでしょうか。森林を相手にしたときに、例えば先程保護林が3区分の中にどう対応しているのかというご質問がありましたけれども、今の林道の問題も含めてそういうものとの対応をきちっと面的につけていくときに、これまでの林道建設なり何なりの問題点というのはいろいろ指摘されているわけですよね。森林・林業基本計画の中で実施していくに当たって、生物多様性の保全というものを新しく一つの重要な機能として基本計画で取り上げているわけですから、システムとして新しい形を考えるとか、例えば林道をつくるときには地元なり専門家ときちっとした協議を進めるとか、そういう構造的な改革といったものをきちっと盛り込んでおかないと、結果的に、最終的につくったものが問題を起こすことにつながりかねない。
 エコ林道整備のところでも、何か特定の野生動物とか種類に対して配慮しているような言い方なんですけれども、実際に今まで大規模林道などが起こしてきた問題というのは、そういう特定の生物種にとってバリアになるということだけではなくて、むしろ地域の森林生態系そのものに大きな影響を与えてしまうことが問題になっていたと思うんですね。そういう視点を個別具体的な表現の中に盛り込むのは、キリがないところでなかなか大変かもしれませんけれども、そういうことを今後きちっと対応していくんだという、その構造というか組織というか、システムというか、そういうものを保障しておくことが、国民の不安とか心配に対してきちっと対応できることにつながるのではないかと考えるんですけれども、いかがでしょうか。

●辻井委員長 今のはご意見ですけれども、何かお答えといいましょうか、お話になることがございましたら。

●林野庁森林整備部(岸) 森林・林業基本計画、先程申しましたように10月26日に閣議決定しておりまして、その中で、まず、林道自体が先程申しましたような位置づけになっております。森林施業については、他の区分に応じても生物多様性に配慮した施業をやっていくということで基本方針にも書いてございますけれども、そういう中で、林道のつくり方についても同様な配慮をしながらやっていくことになると考えております。

●阿部委員 河畔林のことでお尋ねしたいんですが、保全林とか共生林の場合には当然保護されるんだろうと思いますけれども、循環利用林の場合には河畔林はどう保護されるのかということ。これは多様性保護の中では非常に重要な位置を占めるだろうと考えますので、それに関してどういう見解を持っておられるのかお聞きしたいんですが。
 具体的には、何とか河畔の一定の幅を保護していくことができないものか。できることならぜひやっていただきたいという希望でもあるんですが。

●辻井委員長 ただ、国有林で河畔林の大きいのというのは、どうなんでしょう。
 今おっしゃったのは、川の縁ですね。

●阿部委員 いろいろな生物にかかわってくると思うんですね。伐採をやるときに、河畔まで全部伐採している場合が多いですね。そうしますと川もかなり荒れるわけですので、少なくとも、狭くても河畔のベルトを破壊しないような形で施業ができないものかということなんですが。

●林野庁森林整備部(岸) 今回の森林・林業基本計画自体が、森林の有する多面的機能の発揮を重点的にやっていこうということになっておりまして、そういう意味では、資源循環利用林につきましても、施業の実施に当たってそういったことに配慮するというのは、もちろん、そういう形で考えております。河畔林を含めて、そのような形でやっていくことになると思っております。

●熊谷委員 森林は我が国の70%を占めているわけですから、自然環境とか、あるいは日本の国土の風景とか、さらには文化ということで、私は非常に重要な存在だと思っていますし、そういう意味で林野庁の役割は非常に重要だと思っています。今日お聞きしていて気になったのは、私の理解不足かもしれませんけれども、基本的に林野というのは、森林の多面的な機能を発揮させるということで、これまでいろいろな機能評価等もやってこられたんですが、その中で生物多様性という評価は必ずしもきちっとされていなくて、お聞きしていると、そのままできるだけ放置して保護をしておけば、そこでは生物多様性が高くなるというような感じもちょっと受けました。
 しかし、日本の国土ということを考えますと、必ずしも生物多様性だけではなくて、資源とか文化とか、そういう意味でも森林が持っている役割は非常に大きいと思います。ですから、それに対しては適切な手入れをしていくことが必要で、それはどういうことかというと、単に複層林施業とかいろいろ考えられている中で、間伐というものが大きな要因になってくるだろう。つまり、今まで間伐不足で全国的に森林が荒れているという状況が指摘されているわけですから、そういうものをどのように考えて生物多様性と結びつけていくか、あるいはそういう部分については生物多様性とは切り離して考えるのか、これをクリアにしないと具体的な施策に結びついていかないだろうと思います。
 ですから、できるだけ具体的な今後の間伐あるいは施業の面積であるとか、あるいは年次計画であるとか、あるいはそれをどのような手法でやるのかというようなことについて、もし具体的な案なり予算化なりを考えておられるようなことがあればお聞きしたいと考えております。

●辻井委員長 いかがでしょうか。細目の数字はまた後でも結構ですけれども、今のような点に対して。

●林野庁森林整備部(岸) 間伐というのは森林整備、特に人工林施業の中で非常に重要なポイントであろうと考えております。1つには、例えば、間伐をしなければ土壌の流出であるとか、諸被害と申しますか、生物体が自然災害なりそういうものにやられてしまう。そういう意味では、森林生態系といいますか、生物多様性の基盤と申しますか、森林自体が失われてしまう可能性があるわけでございまして、人工林については積極的に間伐を進めていかなければならないと考えております。例えば間伐をすることによって広葉樹が入ってくるとか、そういう効用もございますので、そういう意味では必要である。
 今現在の間伐の進め方でございますけれども、林業経営、例えば材価が3年前に比べても非常に下がっている、現在も下がりつつあるという状況の中で、なかなか森林所有者がペイする形で間伐ができないという実情がございます。そういう中で、補助事業を使いながらいろいろと進めているわけでございまして、具体的には、平成12年度から間伐について緊急間伐5カ年計画というものをつくって、平成12年から平成16年までの間に、少なくとも緊急的に必要な 150万ヘクタールについて間伐を実施していくということで、現在、進めているところでございます。

●熊谷委員 間伐を進めることと生物多様性の保全を図ることは必ずしも矛盾しないという観点で、これから林野はいろいろ施策を進められる、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。つまり、積極的に生物多様性を保全するためには、それなりの適切な施業も手入れも必要である、こういう認識であると伺っておいてよろしいですか。

●林野庁森林整備部(岸) 少なくとも現状で、例えば人工林であるところについてその生物多様性を保全していくためには、そういった施業が必要になってくるだろうと考えています。

●熊谷委員 ということは、やはりそれなりに、従来の間伐以上にいろいろな工夫をしたり、あるいは研究したりという形で進めていかないといけないというのが私の考え方なんですが、そういうことも含めて考えられているかどうか。ちょっとしつこいようで申しわけないですけれども。

●林野庁森林整備部(岸) そういう意味では、いろいろな手だてを使いながら間伐を進めていくということでございます。

●和里田委員 7ページで「緑の回廊」のご説明をいただいて、今10カ所の設定をされたということですが、この設定をしたことによって何が変わっていくのか、あるいは変えようとしているのか。さらにまた設定箇所が増えたりするのか、南の方は比較的少ないようですけれども。それから、設定したらそれで結果として何か自然に変わっていくということなのか、そこのところが不明瞭なように思いますが。

●林野庁国有林野部(川浪) まず、これから増えていくのかということですけれども、昨年から「緑の回廊」を属地的に設定するという作業をスタートしまして、今年、平成13年4月1日現在では10カ所だったんですけれども、現在、各森林管理局レベルで何カ所か、まださらに検討を進めているところがありますので、今後も何カ所かは増えていくと考えています。
  ただ、今現在のところ国有林を主体に「緑の回廊」を設定していますので、7ページの配置図を見ていただくとおわかりになりますように、国有林の分布がどうしても、北の方は結構たくさん連続的にあるんですけれども、西の方、南の方というと孤立して分布しておりますので、北の方のように非常に大きいものを設定するのは、ちょっと難しいのかなと考えています。
 それから「緑の回廊」を設定して、今後、何が変わってくるのかという部分ですけれども、現在のところ、この回廊を設定するという取り組み、日本では非常に新しい取り組みなものですから、実際のところ、これを設定したから急にその地域の生物多様性が高まるとか、そのようなことはちょっとまだよくわからない。考えられるかどうかも含めてわからない状態にあります。
 森林の取り扱いなんですけれども、「緑の回廊」に設定された区域は単一的な施業ではなくて、いろいろな林相、いろいろな樹種があるような多様性の高い森林の分布というものを、これから取り扱いの中で徐々に変えていこうとは考えています。その中で、今後の課題になってくるんですけれども、モニタリングをしまして、「緑の回廊」に設定したことによって、森林というものが多様性という面でどのように使われているか、どういう状態にあるのかをこれから見ていって、その結果を見て、どういう効果が上がっているのか考えていくという、現時点では、そのような課題を持っているところです。

●和里田委員 設定したことだけで人気とりとか自己満足に陥らないように、より意味のあることをもっと政策的に、積極的にやっていただきたいと思います。

●瀬田委員 今の関連なんですけれども、緑の回廊を設定して、今度は具体的なその手段というのは何かといえば、鳥獣保護区に指定するとか、そういうことが次に行われるというのが手段だと思います。そのことをお考えになっているのかどうか。
 それから、動物は国有林だけにとどまるのではなくて、民有林にも移っていくわけですから、当然そういうところで連続性を持った場合に、そういう鳥獣保護的な、あるいは生物多様性保全というようなもので手当てをしていくのかどうかを伺いたい。
 また、冒頭の渡辺委員のご質問に対して、いわゆるマトリックスは今、作業中だとおっしゃいましたが、水土保全林にしろ共生林にしろそれはみな計画です。具体の手段としての保安林なり保護林なりに当てはめていくという目標を持っておやりになるのか、作業だけあって、いわゆる10年後の目標とは別だと切り離されるのか、そこもついでに伺いたいと思います。

●林野庁国有林野部(川浪) まず、緑の回廊の部分ですけれども、鳥獣保護区なり何なり、そういう保護地区としての設定をどうするかというご質問、まず1点目だったと思います。それにつきましては、必要があれば鳥獣保護区の設定をしていくという考えは持っております。

●瀬田委員 では、必要な時というのは、どういう時ですか。

●林野庁国有林野部(川浪) 例えば、鳥獣保護区に設定した場合に、例えば狩猟圧がそこの地域については非常に高まっていて、それを排除するために鳥獣保護区の設定が必要であるというような具体の場所については、そういう保護区の設定は必要だろうと考えています。
 それから民有林について、その取り扱いをどうするかというところですけれども、ご承知のとおり、民有林の場合はそれぞれ個別の森林所有者さんがおられて、いろいろな林業経営の考え方を持ってやっておられますので、なかなか国有林のように一編にバッと「緑の回廊」ですよという形で書けるのは、現実問題として、これだけ国有林並びでやるというのは、まだ難しいのかなと考えています。
 ただ、国有林の中でも、必ずしもずっと国有林が続いているわけではありませんので、地域によっては回廊として設定した国有林の間に民有林が介在する場合もございます。今、各森林管理局で検討している地域の中にも、そういうところはあるんですけれども、できるだけ周囲の民有林にも話をしまして、ご協力をいただくような形で、結果として全体が回廊として扱えるように、今のところ努力をしているところでございます。
 それから3点目、マトリックスの話なんですけれども、例えば保護林なんですけれども、国有林の方は機能分類の当てはめを先行して行っているところがありまして、保護林の場合はすべて共生林というタイプ分けをしております。そもそも保護林というのは、積極的にこれから手を加えていこうという地域ではなくて、その地域の今の自然を保全して保護地域として扱っていこうという考え方にありますので、そのまま共生林の考え方に当てはまるということで、タイプ分けとしては共生林に入っております。

●岩槻委員 今の議論にもちょっと関係して。林野庁さんが今の国家戦略ができてから生物多様性条約の方向に従って非常に配慮していらっしゃるということは、外から見て評価させていただいていますので、そういう立場で発言させていただきたいと思います。
 その上で、さらに今度の改定以後、積極的に生物多様性条約に従ったような方向でというご提案が今日も出ています。特に、例えば一番最後の移入種の問題などは「各省庁一丸となって」というような表現もお使いになっていますけれども、生物多様性のサステイナブルユース、保全ということを考えますと、林野庁の施策と環境省の施策というのは、必ずしもいつでも一致して進んではいないわけですよね。省庁間の連絡はしていらっしゃるとは常々承っていますけれども、省庁間の連絡というのは、やはり農水省は農水省の意見、環境省は環境省の意見をお持ちになって、それを調整されるということなんですよね。
 例えば、屋久島が一番わかりやすいでしょうから屋久島で考えますと、屋久島の森林は、別に環境省の施策で生物多様性を議論してほしいとか、農水省のとか、ユネスコのとか、そういうことは全然なくて、やはり「屋久島の」森林として、どうすれば生物多様性の保全ができ、サステイナブルユースができるのかということを、多分、期待するんだと思うんですね。その意味では、生物多様性条約が国家戦略をつくれと指示している意図というのは、やはり生物多様性に関するそういう施策を一本化して、生物多様性という一つの視点で絞ることを期待しているのではないかと思うんですね。
 その意味では、今、議論されていたことも、まさにそのとおりだと思うんです。こういうことを言いますと、林野庁の意図しているところと環境省の意図しているところは違うとか、それから依存する法が違うとか、生物多様性のことだけを考えているのではないとか、保護を設定している地域が違うんだとか、いろいろ反論は出てくると思いますけれども、しかし、やはり生物多様性ということを考えますと、それを超えて屋久島の森をどうしていくかという視点での議論が必要になると思います。
 そのためには、やはり省庁という枠を超えた−−実は、これは予算の枠も超えていただかないといけないので、一挙には無理だと思うんですけれども、そういう発想で、例えば共通の委員会のようなものをつくるといったことを次のステップでは考えていただきたい。「省庁一丸となって」というのは標語としては非常にいいんですけれども、やはりなかなか具体的には実現してこないということになりますので、ぜひ、林野庁だけではなくて農水省全部でしょうけれども、それはそれで環境省さんの方にも、ここにはたまたまこの2省しかいらっしゃらないから、その2省についてですけれども、ほかの省にも呼びかけて、そういうものをつくることが本当は国家戦略をつくる基本的な意味だと思いますので、ぜひそういう方向で積極的に進めていただきたいと思います。

●三澤委員 今の岩槻委員のお話はそのとおりだと思いますけれども、今日は余りお話が出ていない海外の関係、昨日の説明で終わっていると言えばそれまでなんですけれども、とにかく、約1億立方メートルの木材を消費して、その2割しか自国内では賄っていない、つまり、8割は海外に依存しているという現実ですね。
 国内の生物多様性についてはかなり配慮がされてきて、林野庁も立派だと思いますけれども、海外において無秩序、無制限に伐採が行われ、生物多様性が損なわれるという可能性はあるわけですから、そういうことに思いをいたして、海外の技術協力等についても積極的に、その視点から何か言っていただきたい、老婆心ながらこういう気がいたしております。それだけ一言つけ加えさせていただきます。

●渡辺委員 幾つか資料をお願いしたいと思います。
 私、今日の林野庁の資料を拝見していて、何か基本的に足りないのではないかと思うのは、日本の森林の現状がどうなっているかという資料です。一言で言うと、もう日本の山や、森は、荒れている。神奈川県の水源地について勉強する研究会などにも参加しておりますけれども、国有林、民有林、公有林というのがあるかもしれませんが、すべてを通じて日本の森林は荒れているということなので、その現状、そして、どうしてそういうことになったのかの分析が必要ですね。
 私が知っていることで申し上げれば、国有林野について言えば、昭和三十何年かから特別会計にして独立採算制をとった。これは日本の国有林全体について、そういう制度をとってきましたけれども、大きな社会、世の中の、あるいは国際的な流れの中で、国有林全体が施業に適しているわけではありませんから、それで林業に適している部分とその他の部分と分けるというようなことを新聞等で今日も拝見しました。その現状がどうなって、その分析をどうして、その課題をどうして、これからどうする。民有林には民有林の問題があるんだろうと思います。そこから伺ってスタートしないと、どうもわからない。「これからこうします」というきれいなお話だけでは、どうも私としてはストンと来ないなという気がいたします。そういう資料を後程お出しいただければと思います。
 それから、つい数日前に閣議決定された基本計画の全文とか、さっきお話が出ました林道についての現状、あるいはこれまでの総括に関連する資料をいただきたい。私は林道をどう区分するのかよく知りませんが、少なくとも大規模林道がこのくらいの延長キロ数あるとか、どういうところにどう配置されているとか、そんなことを含めたデータもいただきたい。
 現状についての資料をもっと十分いただきたいと思います。

●辻井委員長 では、資料はまた後程、こういうものがいただきたいということで申し上げることにいたします。
 私から2つ程なんですが、生物多様性の維持ということになると、例えば、ここで述べられているのはほとんど経済木だと思いますが、そのほかの樹種、灌木、草までというのは林野庁に酷かもしれませんけれども、そういうことを含めて。
 もう一つは、いわゆる森林植物以外の例えば高山植物なども、これはつまり一番の地主なので、実際には、いわゆる監視など含めて各地でやっていらっしゃるのはよく知っていますけれども、そういったものについてはどういうふうに含まれるんでしょうか。ほとんど今日のご説明の中には入っていなかったように思いますが。いわゆる緑化木などは、林業試験場の方でかなり研究されていることはよく知っていますけれども。

●林野庁森林整備部(岸) 高山植物はさて置きまして、今回の森林・林業基本計画は、基本的に多面的機能の発揮をするということで、例えば複層林造成とか間伐の促進、そういう中で、安定した森林と申しますか、例えば複層林にしますと光が入ってくるわけでございまして、その中で下層植生なりそういうものの生育が非常によくなってくる。それから土壌を広く……、そういう樹木の根が広がるというような形ですね。森林自体が健全になっていくという考え方。そういう中で、生物多様性の保全がより図られていくんだろうと考えております。
 それから、高山植物については公園法で保全されているものもございますし、あるいは先程申しました貴重な植物群落という形で、保護林制度等で保全しているものがございます。先程ご説明した部分については、そういうことだということです。

●大沢委員 林野庁が随分方向転換をして、多面的機能ということで生物多様性の保全とかそういうことに意を配し始めたということは、私も非常に高く評価したいんですが、現実に営林署が整理・統合されて数が減っている、それから、もともと林野庁そのものが、大部分は林木生産に特化した機関としてこれまで機能してきたというようなことを考えていきますと、例えば、「森林と人との共生林」の中で天然生林施業が全体の6割を占めているわけですね。そして3ページを見ると、そういうところの管理を「自然の推移に委ねることを基本とし」という部分にアンダーラインが引かれております。そういうところでの管理であるとか、今の高山植物の管理をどうするかとか、そういった側面については、今は生物多様性保全という国家戦略をつくろうとしている会議の場ですから、そういうことを申し上げるんですけれども、そういう視点に立ったときに、やはり先程も岩槻委員がおっしゃったように、環境省なり他の省庁と一体化したような形での協議といいますか、そのためにどういう配慮をしたらいいのかというようなことについては、やはり林野庁だけが責任を持ってそれをやるというのは不可能ではないかと感じます。
 そういう意味で、例えば林道の問題についてもそうですけれども、そういう森林、特に「森林と人との共生林」などにおけるいろいろな施策つまり、生物多様性を維持・管理するような方向については、十分他の省庁と一体化した方針の樹立が必要です。計画の立案というか、あるいはNGOなどでもそういうことについて非常に一生懸命やっているところもありますし、何かそのように組織的に考えていく、改善していく、そういう方向性がこの辺で出てこないかなという感じが非常にするんですね。
 環境省が中心になるのか、あるいは林野庁ではないのかもしれませんが、ちょっとそういうことについて、省庁間をまたがった形での生物多様性保全ということはきちんと確立していく必要があるのではないかなと思います。これは環境省に対しての意見になるかもしれませんが。

●篠原委員 今、大沢委員がおっしゃられたことは11ページの里山の話にもつながると思っていて、これは農水も関係するし林野も関係するし、都市も関係するし、都市河川の水源ということで河川の方も関係するし、この辺、もう少し何か連携をとって、議論をぜひしていただきたいと思います。

●鷲谷委員 戦略は、もっと戦略らしく積極的に書いてほしいなという思いで、一例だけ申し上げます。
 8ページの保安林のことですが、里山地域で、保安林の解除を伴って、生物多様性保全上、問題のある開発が進められることが少なくないという印象を持っています。せっかくこういう保安林の制度が、目的はちょっと違うかもしれませんけれども、ありますから、地域の生物多様性の保全に寄与できるように運用していただけたらと思います。
 それには恐らく、里山の森林というものを生産とかレクリエーションの場としてだけではなくて、生物多様性保全の場としてしっかり認識して、位置づけるようなことが必要なのかなと思います。
 それから、1つ変な言葉を見つけたんですけれども、8ページの「自然生息地」という言葉は、ちょっと何のことかわからないですね。野生動植物の生息地とかいった意味ならわかるんですが、これはどういう意味でしょうか。

●辻井委員長 8ページの文章の最後の行に「自然生息地」という言葉がある。普段、余り使わない言葉だと思いますね。

●鷲谷委員 特別な意味があるんでしょうか。この章全体のタイトルにもなっているので、目立つんですよね。

●林野庁森林整備部(香月) 「自然生息地の保護にも寄与」と書いてあるんですが、これは現行の国家戦略にも書いてある言葉でございまして、でも、この改訂の際にはまた……

●鷲谷委員 そうですか、書いてあるんですね。すみません。

●岩槻委員 余り大きいことではないんですけれども、1つだけ。
 4ページの森林に依存する生物種数の例、ここで数字を使うのは非常にわかりやすくはありますけれども、一般に使うときには非常に危険だと申し上げたいんですね。これ、注がついていますので私自身は理解しているつもりですけれども、7割が森林で哺乳類の場合には半分以下、鳥類は6分の1しか依存していないんだったら、森林は生物多様性には余り役に立たないではないか、そういう数字に読める危険性があるということを指摘させていただきます。

●阿部委員 今のご指摘、例えば哺乳類に関して言いますと、我が国に生息している種の数が 188となっていますが、実はこれは亜種なども含めての話でございますから、実際は100 余りなんです。
 これはいろいろ問題があるものですから、そういう点を、一般の方はそういうことをわかっていないだろうと思いますので、ちょっと申し上げておきます。
 海生哺乳類を入れれば種類は 150ぐらいになると思います。

●林野庁森林整備部長(岸) そういう意味では、この数字自体が必ずしも適切だとは考えておりません。少し数字を出した方がいいのかなという趣旨で、ご説明の資料として載せているとご理解いただければと思います。1つの研究報告だけですので、そのようにご理解していただければと思います。

●辻井委員長 それでは、大分時間もたちましたが、これでよろしゅうございましょうか。
 それでは、ご説明どうもありがとうございました。
 これで午前の部を終わることといたします。

                              午後0時07分休憩

                              午後1時00分再開


●渡辺生物多様性企画官 1時になりましたので、午後の部を始めたいと思います。
 辻井委員長、よろしくお願いいたします。

●辻井委員長 それでは、再開いたします。
 今から明日の午前中にかけましては、国土交通省のご説明を伺うことになっております。
 初めに基本方針について、総合政策局と国土計画局からご説明をよろしくお願いいたします。

●国土交通省総合政策局(原田) 総合政策局国土環境・調整課長の原田と申します。窓口をしておりますので、基本的な取り組みについてご説明いたしたいと思います。
 まず最初に、「環境政策大綱の概要」という1枚の資料がございます。これは旧建設省時代からですけれども、環境というものを所管行政の内部目的にするということで、今後の基本的な考え方をまとめたものでございます。
 環境政策大綱は平成6年1月に既に作成しておりますけれども、そこで建設省としての環境施策の基本的な考え方を明らかにするとともに、中・長期的に展開する政策課題と施策の展開の方向を取りまとめたものでございます。
 この中で、真ん中の枠に「環境に対する基本認識と環境政策の理念」と書いてあります。
 まず、建設行政の本来的な使命といたしまして「健全で恵み豊かな環境を保全しつつ」ということで自然環境の保全、それから「ゆとりとうるおいのある美しい環境を創造し」ということで自然との共生、そして「地球環境問題に貢献することが建設行政の本来的使命であることを認識」するということで、既にこの時点から、環境を建設行政の内部目的としてとらえて施策を推進していこうという方針で臨んでおります。
 具体の事業の例といたしまして、そのときに打ち出しましたものが下にございます。
 「環境リーディング事業の推進」とありますけれども、例えば、多自然型川づくりということで、自然の川の持つ多様な機能を尊重し、多様性に富んだ環境の保全、生物の良好な生息・生育環境、自然の川らしい美しい風景を保全・創造するということを打ち出しておりますし、一番右側では、自然生態観察公園(アーバンエコロジーパーク)という事業を打ち出しております。特に、多自然型川づくりというのはこの頃から始めまして、今では川づくりの標準的なやり方になっております。
 そういうことで、環境政策大綱をつくって所管の行政に生かしてきたと思っております。
 それから、最近の状況をご紹介しますと、政府全体ですけれども、今年7月に「21世紀『環の国』づくり会議」で報告が出ておりますけれども、その中で、自然再生型公共事業を国民の協力を得て展開するということになっております。その例といたしまして、国土交通省で取り組んでおります、例えば都市における森づくりとか、あるいは水と緑のネットワークづくりとか、干潟や藻場の保全・再生、それから海域、海岸、河川、森林、農地等における豊かな生態系と自然景観等を保全・回復するための事業、そういうものが挙げられておりまして、積極的に取り組んでいるところでございます。
 それから、国土交通省になりましてからの基本的な方向として、1つ冊子をお配りしております。
 「人が動く、国土が躍動する。」これは国土交通省のキャッチフレーズですけれども、まず、1枚開いていただきますと真ん中に「国土交通行政の使命」とございまして、「人々の生き生きとした暮らしと、これを支える活力ある経済社会、日々の安全、美しく良好な環境、多様性ある地域を実現するためのハード・ソフトの基盤を形成すること」ということで、美しく良好な環境を実現することを国土交通省の大きな使命としております。
 その国土交通行政の目標といたしまして、左上に5つの目標を掲げておりますけれども、その中でも、4番目に「美しく良好な環境の保全と創造」として「地球環境問題の解決に向けた貢献、良好な環境の保全・創出、国民が誇りを持てる美しい日本の形成」ということを掲げて、重点的にやっていくことにしております。
 それから、来年度に向けての動きといたしまして、もう一つ「平成14年度 国土交通省重点施策」という冊子をお配りしておりますけれども、その中で環境の関係いろいろやっておりますが、そのうち生物多様性の関係、自然共生との関係につきましては、例えば11ページ、一番上に「[3]複数事業間の連携等による美しい国土、地域の形成」ということで、緑地の保全と併せまして公園、河川、道路という複数の事業を一体的に整備して緑の骨格軸・ネットワークを構築する、「緑の回廊構想」と言っておりますけれども、そういうものを推進しまして多様な水と緑のネットワークの形成を進める。
 その下に、白黒ですが絵がありまして、公園緑地を中心にする固まりと、あと河川の緑の回廊、それから道路を軸とする緑の回廊、そういうものをつなげて水と緑のネットワークを形成していきたいということで、推進していこうと思っております。
 それから、13ページの一番上でございますが、河川の蛇行復元とか乾燥化傾向のある湿地の冠水頻度増加などによる自然河川、ウェットランドの保全・再生、それから砂浜、干潟、藻場等の保全・再生等の自然共生施策を推進していきたいということで、国土交通省といたしまして、中・長期的にもそういうことで考えていますし、来年度に向けましても、そういう具体な施策を進めていきたいと思っております。
 全体については以上でございます。

●国土交通省国土計画局(西山) 国土計画局計画官の西山でございます。
 続きまして、国土計画局におきます生物多様性に関する取り組みにつきまして、ご説明申し上げたいと思います。
 まず、平成10年3月に、5番目の全総計画であります21世紀の国土のグランドデザインが閣議決定されております。
 参考資料1のパンフレットを開いていただきますと、右側に、5つの基本的課題と4つの戦略がございます。この基本的課題の3番目に「恵み豊かな自然の享受と継承」とございまして、それを受けるような形で、戦略の最初に「多自然居住地域の創造」というのがございます。
 最初のペーパーに戻っていただきまして、全総計画の本文では「生物の多様性の確保という視点も含め、望ましい国土構造を支える自然のネットワークを重視」するとか「人の活動と自然とのかかわりを再編成していく」といったことが記述されております。
 また、全総計画の中には国土の保全と管理に関する施策がございまして、その中で自然環境の保全につきまして、国土規模での生態系ネットワークの形成ですとか、自然とのふれあいのための条件整備、ミティゲーション等の基本的方向が提示されております。
 これは、参考資料3の全総計画抜粋の中で、「第2部 分野別施策の基本方向」のところに書かれているものでございます。
 まず、国土規模での生態系ネットワークの形成ということで、野生生物の生息・生育に
適した空間の連続性、一体性を確保することが求められる、といった記述がございます。
 次のページにまいりまして、ミティゲーションについて、国土開発に係る事業の実施に際して、自然環境の保全を図るには、環境影響評価の実施等を通じて、適切な対策を講じなければならないといったような記述がございます。
 また最初のペーパーに戻りますけれども、閣議決定のレベルの計画で生態系ネットワークの形成とかミティゲーションということが位置づけられたのは、平成10年時点では全総計画が初めてでありました。
 それから2番目、国土審議会における新たな国土計画体系の調査・審議でございます。
 これは平成11年から始まっておりますけれども、国土計画について、理念を明確化しなければならないといったこととか、地方分権とか行政改革等の諸改革に対応しなければならないということで、新たな国土計画体系の確立につきまして、国土審議会政策部会と土地政策審議会計画部会等において調査・審議が進められてきておりまして、平成12年11月に報告が出されております。
 その報告の抜粋が下にございますけれども、この中でも「生態系の多様性を維持しつつ人間の諸活動と生態系が共生し得る、環境共生型の国土形成を図ることが国土計画に求められている」といった記述がございます。
 平成13年から国土審議会基本政策部会で引き続き調査・審議中でございまして、来年を目途に部会報告の取りまとめという予定になっておりますけれども、その中でも国土計画の課題を5つ程挙げております。
 これは参考資料5に出ておりますけれども、国土審議会の調査・審議事項として、現在、国土計画の課題と国土計画の制度の検討をしておりますが、その課題の中には5つありまして、一番下に書かれておりますが、5番目に「循環型・環境共生型の国土の形成」が入っております。
 国土計画局からは以上でございます。

●辻井委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、今の全体にわたってのご説明について、ご質問、ご意見を承りたいと思います。
 多くのご説明がありますので、時間がかなり限られると思います。ご質問、ご意見はできるだけ簡潔にお願いいたします。
 どうぞ、どなたからでも結構でございます。

●篠原委員 最初にご説明いただいた環境政策大綱の概要ですが、環境リーディング事業をいろいろやってこられたことは私も十分承知しておりまして、一定の成果は上がっていると思いますが、今回の生物多様性戦略の改定に伴って、国土交通省としてはそれを受けとめて、運輸省と国土庁と一緒になったわけですから、従来の建設省がつくっていた環境施策大綱を見直すようなことは考えておられるんですか。

●国土交通省総合政策局(原田) まだ見直しまでいっていませんけれども、昨年、建設省では「国土と環境を考える委員会」をつくりまして、この環境政策大綱をフォローアップして、また発展させるような勉強をしております。そこでは、先程の環境政策大綱では、環境というものを所管行政の内部目的化するところまでやっていたんですけれども、今度は国土とか地域というものが環境の面からどうあるべきかとか、そういうことを考えて、それに向けて施策をやっていこうというような方向を打ち出しております。
 それから、運輸省の方でも同じように、運輸審議会で報告を出しておりまして、その辺を調整して総合的にできたらと思っておりますけれども、まだ具体的なものにはなっておりません。

●篠原委員 川については随分進んでいるのは知っているんですけれども、かなりの埋立地を持っている港湾とか、それから、海岸は防災で随分やっておられたのは知っていますけれども、生物的な対応は割と遅れているのではないかというのが私の感想なので、その辺をやると、もっと総合的な話になるのではないかと思ったものですから。

●国土交通省総合政策局(原田) また後で港湾局の方から説明があると思いますけれども、港湾の方でも干潟の保全等やっていくことにしておりますし、逆にまた再生するというのもやっていったり、そういうことも含めて考えていきたいと思っておりますので、また後でご説明いたします。

●辻井委員長 それでは、個々の問題についてはまた後でご説明のときに伺うことにさせていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
 ありがとうございました。
 それでは、続いて河川における生物多様性保全について、河川局からお願いいたします。

●国土交通省河川局(岡山) 河川局河川環境課長の岡山と申します。ご説明させていただきます。よろしくお願いいたします。
 お手元に資料をお配りしておりますが、その中の主だったものをパワーポイントでお示ししながら、説明を進めさせていただきたいと思います。
                (スクリーン)
 表紙の目次にございますとおり、まず、基本的な方向を最初にご説明させていただいて、その後、今後の課題、今後の取り組み、こんなことをご説明させていただきたいと思います。3つ目に、前回から何をやってきたか、現在どんなことをやっているか、こういうことになっております。
 3番目の、現在、何をやっているかについてのご説明は、2番目の今後の方向の中で一緒に進めさせていただきたいと思います。
 最初に、基本的な方向でございますが、ご承知のとおり、平成9年に河川法を改正させていただきまして、行政の大きな変化がございました。若干おさらいになってしまいますが、まず、基本的な方向として、そのあたりのところをご説明させていただきたいと思います。
 ご承知のとおり、日本の自然条件の1つ、降雨でございますが、欧米に比べると非常に量が大きく、季節的な変動も大きい。モンスーン地帯で非常に多雨な地帯でございますし、集中的な雨も降ります。
 川の地形でございますけれども、小さな国土、急峻な山ということで、非常に短く急峻な川になっております。
 そういうことから、河川の流量の変化は激しくて、ヨーロッパ、アメリカ等の川に比べると急に洪水が出る、あるいはすぐに水が引いてしまうという環境にございます。
 また土地利用も、沖積平野中心に開けているということから、天井川のある中に都市が開けている、高度な都市利用が進んでいる、こんな状況になっているわけでございます。
 山の方を見てみると、かなり急峻な山なので土地利用が進まない。結果、森林が豊かに残っている。欧米の森林国と肩を並べる森林面積、7割近い森林面積を今も誇っているということでございます。
 こういうことで、豊かな森林に守られて雨の急激さ、あるいは地形の急峻さがある程度カバーはされているわけですが、しかし、国土の利用を考えてみると、非常に厳しい環境にあるということでございます。沖積平野が国土の10%ございますが、その中に人口の51%、資産の75%が集中するという土地利用になっていることから、雨が降ったときの洪水の対策は非常に重要な課題になっております。
 最大流量と最小流量の比も大きいです。この図の白い大きい方が最大流量、小さい方が最小流量ということを考えてみますと、欧米の川ですと1桁しか違わないけれども、日本の川だと2桁違うという、非常に流量の変化の大きな川でございます。
 また、気象の変化が最近、言われておりますが、これは明治30年からの年雨量のトレンドでございます。最大と最小の幅のぶれがだんだん大きくなってきている。最近、集中豪雨も多くなり、時間 100ミリ当然のように降ってくるということですし、特に、少ない雨量ということがたびたび頻発してきている。地球環境の問題も言われますが、こんな傾向が事実としてはございます。
 こんな中で、私どもは治水、利水中心で河川行政を進めてきたわけでございます。
 これは戦後の風水害による死者数でございますが、戦後、山の荒れていた時代には、やはり 1,000人規模の死者が出ていた。それが国土の保全、森林の整備あるいは河川の整備を進めてくる中で、だんだん 100人オーダーになり、ぶれはございますが現在では10人オーダーぐらいでおさまるようになってきたということで、これは国土保全の一つの成果ではないかと考えております。
 こういう時代の変遷、明治9年からの 100年の歴史を見てみますと、河川法が明治29年に治水目的でつくられまして、今、申しましたような沖積平野の安全を守り、国土を利用していく上で、基本的な治水対策中心に進めてまいりました。
 この棒グラフは、GDP(名目)のグラフでございます。昭和30年ごろから高度成長に入り、現在、一番右側の平成10年、ここあたりから安定成長ということで、ほとんどGDPが伸びない安定成長の時代に入り、21世紀に入ったわけでございますが、この高度成長の期間、やはり水資源の開発が必要になるということから、利水対策を河川法に加えました。これが昭和39年でございます。そして水資源の整備もし、都市の整備も進んできた。この段階で、川を利用する、あるいは洪水対策をするということで、いろいろ川を痛めてきた、無理をしてきたということがございます。その中で川の自然も、残念ながら少し後回しというか、忘れられてきた部分もある。
 こういったことから、やはり日本の国土は山紫水明であり、瑞穂の国という中で、日本文化のこともありますし、また、人々が川から離れていくというようないろいろな問題も生じてきます。また、生態系の問題もあります。こういったことから、これから安定成長の21世紀は、急成長ではなくて、安定的に国土を管理していくという意味で環境整備が必要であるということから、平成9年に河川法に環境も入れ、3つの目的で、これから河川法に基づく行政を進めていくことになったわけでございます。
 これが今の話をまとめたものでございますが、平成7年に河川審議会から「河川環境のあり方」という答申をいただいております。お手元にパンフレットをたくさんお配りしておりますが、「ときめき川づくり」というパンフレットの中にこの答申が入っております。
 そういった中から環境のあり方についての議論が始まりまして、環境を行政の内部目的化する。治水事業をするときの配慮事項ではなくて、「環境保全」を行政の目的に持ってくるということで、河川環境の整備と保全が河川法の目的の1つに入れられたわけでございます。
 雨の量、川の流れの量、こういったものの変動は自然現象でございます。まさに自然環境の1つであるわけですが、これが多過ぎるとき、少な過ぎるとき、これが治水、利水の対策が必要な状況でございますけれども、その時だけではなくて、 365日毎日毎日の川の姿を国民にとっていい姿、あるいは国土にとっていい姿に管理していく、これが河川法であるという、「 365日の川づくり」という観点から環境という目的を内部目的化したということでございます。
 ちょっと遠くて見にくいかと思いますが、これは資料1.15でございます。
 河川法の改正の中で、河川づくりの計画を河川整備計画という形で位置づけておりますが、その基本方針について、治水レベル等は行政で決めてまいりますが、具体的な地域の川づくり、河川整備の目標については、右端にあるように学識経験者の方々、あるいは地域住民の方々、公共団体の方々、こういった方々と協議しながら河川整備計画を決めていくという合意形成の手法を、この法律改正で新たに取り入れております。
 環境を目的に取り入れるという中で、やはり多様な価値基準を同時に議論しなくてはならない、あるいは流域ごとのそういった調整をし、合意形成をしていくことが必要になってまいります。これは工事をする上でも管理をする上でも必要になってくるということから、川づくり、川の整備のあり方、管理のあり方、こういったことを地域ごと、流域ごとに議論しながらみんなで進めていく、こういう体制が整ったわけでございます。
 1つは、環境を内部目的化したということでは、これは釧路湿原でございますが、この赤い区域を平成12年に河川区域と指定いたしまして、湿地の保全を図ることといたしております。河川の水の流れているところだけではなくて、環境保全のために必要な区域を河川区域として位置づけた一つの例です。これはまた後程詳しくご説明します。
 また、河川の整備のあり方も、これは宮崎県の北川の例でございますが、大きな洪水の後、河床を掘削する際にも、そこの河川敷における生態系、植生、こういったものを考えながらモニタリングをし、どういう形の植生を残すか、あるいはある程度、工事をした後その評価をし、フィードバックをし、また対策を計画していくというアダプティブな対応をする、こういったやり方もとるようにしております。
 また、大きなプロジェクトについては当然アセスメントが必要になるわけでございまして、これについても技術論を専門の先生方にご指導いただいて、広く担当者が進められる体制をつくっているところでございます。
 私どもの河川法では、1級河川を全国に 109水系決めておりますが、その流域の国土面積は64%になります。また、県が管理する2級河川、これを含めますと93%になります。そういった中で雨水、雨量、水位等を全国 2,000カ所で計測しております。また、こういった流域の管理をする上で、直轄の1級河川については全国 210カ所の事務所を置き、出張所も置きながら、適切な維持・管理を進めていく体制を整えているところです。
 そういった中で、やはり地域と連携した取り組みということで、地域の方々に一緒に巡視をしたりしていただくというようなことも、新たな管理の仕方として入ってくるようになってまいりました。このあたりも、また後程詳しくご説明いたします。
 以上、基本的な取り組みについてお話をいたしました。
 続きまして、今後の課題、取り組みの方向のうち2.1、国土構造面からの取り組みということで、少しマクロな議論、少し前を向いた議論を最初にさせていただきたいと思います。
 これは流域をとらえたときに、自然と共生した流域という環境で現象を考えていくのが一番いいだろう。そのときに、都市あるいは人間の活動、生活、こういったものとどう関係していくか、その中に生態系というシステムがどう組み込まれているか、その辺の複雑な系を流域圏という中でとらえて、今後、21世紀の流域管理のあり方、国土管理のあり方を考えていこうという大きな構想、研究でございますが、この程総合科学技術会議の重点研究の1つに選定されまして、関係省庁連携して進めていきたいと思っております。
 まず、第1段階としては、水や物質の循環、こういったものが大事でありまして、このモニタリングをし、あるいは一方では生態系のモニタリングを並行して進めたいと思っています。
 そして、そのモデルを構築し、GISを活用して総合的なモデルを検討していきたいという、研究のベースでは、こういったことが進められ始めているところでございます。
 グランドデザインという意味では、これは首都圏の美しい国土、水と緑による美しい首都圏再生という意味で、資料2.1.6でございます。干潟であるとかウェットランドであるとか、あるいは河川、水辺のネットワーク、こういったものをネットワーク化して、美しい首都再生、都市再生に結びつけていきたいというグランドデザインのイメージでございます。
 1つの都市の中で考えたときにも、水と緑のネットワークというものを水空間、緑地空間ネットワークして、良好な都市空間をつくっていこうという考え方もございます。
 特に水利用、水資源という意味でも水循環というものを考えながら、雨水の利用、あるいはヒートアイランドの対策、地域の水利用、上流、下流の水の利用の協力関係、こういったものが流域の水循環という意味でもございます。
 こういったことで、例えば、鶴見川という神奈川県横浜市の小さな流域、昔から都市水害で困っている川ですが、ここで総合治水という取り組みがございました。現在これをさらに発展させて、まさにこういった生態系も含めた、流域における健全な水循環の構築に向けた水マスタープランを流域の協議会、地域の方、学識者、あるいは自治体と一緒に検討していくという取り組みを、一つのモデルとして、全国に先がけて鶴見川で進めているところでございます。
 特に水循環の物理的な現象といたしましては、雨水が貯留・浸透するという物理的なメカニズムの中で、貯留をし、浸透しやすいまちづくりを進めることについて、補助事業、あるいは政策誘導等をしながら事業を進めているところでございます。これは現在、進めている事業ということで、3.2の方に入っている事例でございます。
 資料3.2.5でございますが、水循環、特に水利用という面では、いろいろな人たちが水を利用している。そういった水循環について共有した情報の中で、水環境を合理的に、あるいは適正に保全していくというような統合化が必要になるわけです。
 それを議論するための基本的な情報として、水循環のGISというような情報データベースを揃えていくことを、今後、検討したいと考えております。
 これに当たっては、地下水、地表水も含めた総合的な解析が必要になってくるというモデルづくりが一つの課題になっております。
 これは一つの単純な取り組みの例でございますが、埼玉県の荒川の支川である小畦川の例でございます。
 非常に都市化してくるに従って、不浸透域が拡大しております。
 都市流域でございますので、都市用水は外から水道水で運ばれ、農業用水も外から運ばれ、あるいは下水道も70%まで整備されているというような流域です。
 そのような流域で、浸透域の減少によって雨水、洪水量の増大が起こる。
 あるいは河川平常流量の減少が起こることが実際観測され、またシミュレーションしてみると予測されるということになり、物理的な水循環という意味でのこういう測定、あるいは予測という技術を各地で適用して検討を進めているところでございます。
 以上、物理的な流域水循環でございますが、これを生態的に捉えるとどうだろうということでございます。やはり流域の山から川に連なるいろいろなランドスケープの中で、生態系が多様なかかわりを持っている中で、川づくりの中で、やはり流域の山から川、海に至る土地利用、あるいは地形、こういったものを総合的に分析し、生物のハビダットがうまい連携をとれるような、そして複層的な、生物多様性のある国土にしていくことが必要だろう。これにはまだ技術論、計画論、施策論、いろいろ必要でございますが、今、こういったところを技術的に進めていきたいと考えております。
 一つの例として、荒川では川の本川、支川、それから近くの里山、丘陵、こういったところへの生態系でのネットワークのつながりを今、分析し、必要な対策を議論しているところでございます。
 特に、荒川は広い河川敷を持っておりますので、その中でビオトープに整備できるところ、いろいろな空間がございます。この河川敷の土地利用、あるいは地形、冠水頻度だとか生態系の分布、そういったものを今、勉強しながら、地域のNPOの方々と整備を進めているところであります。
 こういったことを行政的に一歩進めるという意味で、来年度から新たに自然河川やウェットランドを再生させていくということ、つまり環境保全をまさに主目的に挙げた事業を進めていきたい。今までいろいろな取り組みがございまして、こういうことは既にやっていることもたくさんあるんですが、やはり「自然再生」というキーワードが世の中に出ている中で、この流れの中で、私どももはっきりそれを旗頭として揚げて、全国的にこういった整備を進めていきたいと考えております。
 資料2.1.16でございますが、こういった自然の復元でございますので、自然の変化に対応した速度で進めなければいけないということで、順応的、段階的に進めていきたいと考えていることと、NPOの方々と一緒に進め、NPOの方々を支援するような形で進めていきたいと考えております。
 湿地の再生であるとか自然河川の蛇行河川の再生、あるいは河口干潟の再生、こんなことをメニューに挙げて考えているところでございます。
 全国の湿地、湖沼、干潟の分布でございます。この程、環境省さんも重要湿地 500を出されましたけれども、私ども、このように色分けしてみますと、やはり湿地は東北部に多い、干潟は西の方に多いというような国土の傾向が見てとれます。
 先程申しましたように、日本は10%の沖積平野と申しますが、もともとは湿地だったわけでございまして、この 100年間の変化を見てみますと、明治、大正期には14万ヘクタール程あった日本の湿地面積が8万ヘクタール程減って、現在は、河川の周りにあるものでは6万6千ヘクタール程に減ってしまっている。日本全体では現在8万2千ヘクタールの湿地面積がある。これは国土地理院の調査に基づくものでございますが、こういった状況で、湿地は大幅に減り、高度な土地利用がなされてきている。
 川沿いの稲作、そこに舟運によって都市ができるということから、沖積平野に都市が開け、あるいは農耕地が開けるということから、湿地は大幅に減少してきているような現状でございまして、この一部でも取り戻し、あるいは重要なものは保全していきたいと考えているところでございます。
 この湿地は現在、国土面積の 0.2%しかございませんが、その中で、希少種のかなりの部分、2割がこういったところに依存しているというふうに、生物にとって重要な地域であるという認識の中から、こういったものを保全していきたいと考えております。
 全国の湿地、干潟、湖沼のうち当面復元・再生が求められるところということで、来年度からの事業実施候補箇所を挙げております。この幾つかをご説明させていただきたいと思います。
 これは釧路湿原、先程見ていただいた絵でございますが、上流の開発によって干陸化が進んでおります。土砂が流入し、あるいは周辺の農地の開発によって地下水位が低下しております。農地の治水のために河川を直線化しておりまして、そんなことも問題になるということから、対策をいろいろ考えていくわけです。
 干陸化が進んでいる状況の絵でございます。50年前に比べて、緑のところにハンノキが繁るというような乾燥化が進んでおります。湿地というのは自然の営みの中でだんだん乾燥化してくるわけですが、それを大幅に超えた速度で、人の手によって乾燥化が進んでいる。これをできるだけとどめておきたいということでございまして、現地で専門の先生方にご指導をいただいて、辻井先生にも委員長になっていただいて、この春、提言をいただきました。流域全体の管理から進めていく必要があるということで、現在、現場で関係省庁、関係機関連携して、この対策を検討しておるところでございます。
 また、首都圏の近くの荒川におきましても、民地である農地の中に蛇行河川の旧河道が残され、ごみの投棄あるいは埋め立てがされるというように非常に危うい形になっておりますが、これを用地買収し、また水が流れる環境にし、生態系の保全に役立つ空間にしていきたいと考えております。
 これは渡良瀬遊水池でございますが、ここも干陸化が非常な速度で進んでおります。ヤナギの木が繁った森になりつつございますが、やはりヨシの繁った湿地の環境を保全しようということで、掘削あるいは蛇行化について試験施工を始めつつあるところでございます。
 荒川の河口部では、船の通行で河岸が痛まないようにコンクリート護岸をつくったわけですが、この波の打ち返しによって干潟がだんだんなくなってきております。こういったところで、干潟が飛ばないような木を使った柔らかい工法を今、検討して、試験的に進めているところでございます。
 また、山におきましても、これは砂防の事業ですが、この白黒写真、左側の白いところは雪ではなくて岩山でございます。ハゲ山になっているところに山腹工によって緑を復元するということで、国土の防災と生態系の多様性の確保といったことを実現しつつございます。
 これは神戸の六甲山でございます。山際まで開発が進み、さらにデベロッパーによって開発されようとしておりますが、砂防の急傾斜の危険地がますます増えていく。これを危険地ができる前に手を打とうということで、都市沿いの山の緑を用地買収して、グリーンベルトとして保全しようということでございまして、市街地の危険地の拡大を防止するとともに、生態系の保全にも役立つようなグリーンベルトの創出を進めているところでございます。
 これは、間伐材が売れなくて森林整備がなかなか進まないことから、間伐材を公共事業に使っていこうということで、今年できたグリーン購入法の中でもこれを位置づけておりますが、間伐材を川の木工沈床に使う、あるいは砂防の施設に使う、こういったことを精力的に進めたいと考えておりまして、現在、全国で1年間に2万立方メートル使うところまで来ております。
 やはり山で土砂を止めると川の河床が下がり、海岸の侵食が進むというように、土砂の管理の問題がございます。これは資料2.1.28でございますが、こういったことも土砂の管理として進めていきたいと考えております。
 以上、国土管理、国土構造という意味から、少し幅の広いご説明をさせていただきました。
 次に2.2、河川の整備計画における環境保全目標といった意味で、川づくりの中で、具体的な生態系を考えたどういった計画論が進められているかといったところをご説明したいと思います。
 2.2.1でございますが、今、こういった目標について我々が言葉で集大成してみると、こういったことになるというものでございます。
 治水の必要な安全性を確保しつつ、生物の良好な生育・生息環境をできるだけ改変しないという基本原則、そして、もともとあった河川環境にできるだけ近づくように戻していく、あるいは維持していくということを目標にし、自然の中での攪乱、流量変動など河川自身が持つ自然のダイナミズムをうまく活用し、そういったものをまた生かしていくという方向で、洪水への耐力、あるいは川の自然の復元力といったものを考えていく必要があるだろうということで、もともと有していた多様な河川環境を考える、あるいは連続した環境、あるいはその川らしい個性を重視した環境、あるいは水の循環を確保する、あるいは地域の市民等の理解、協力を得ながら進める、こういったような基本的な進め方をしているところでございます。
 そして、河川環境に絡む一つの目標としては、動植物、生態系の議論、そして景観の議論、そして人とのかかわりの議論、こういったものを総合的にバランスをとりながら進めておるところでございます。
 そういったことから、先程もお話ししましたが、河川の整備のあり方は、やはりアダプティブにモニタリングをしながら効果を把握し、フィードバックしていきながら、自然と対話しながら進めていくというのがこれからのやり方であるということで、そういう見地で進めつつあるところでございます。
 そういった河道管理をしていくためには、やはり河道の情報が必要でございます。河川環境のGISを活用しながら、こういったものを進める。これについては2.2.5で出てくることでございますが、また後程ご説明いたします。
 次に、河道の空間論に加えて、やはり川というのは水が流れているという環境でございますので、水量、水質の議論が必要です。河川の計画には、河川の正常な機能を維持するために必要な流量を記載することになっておりますが、これを決めるためには利水の現況あるいは動植物の生息、あるいは水質の環境、あるいは人との関係、景観、観光、その他いろいろな利用との関係を総合的に含めた流量を設定する中で、やはり動植物が生息するために必要な流量というのはどういうものなのか、しっかり把握した上で進めていくことにしております。
 その中で、「一定の流量」という考え方が「最低限の流量」という意味で今まで決められておりましたが、今後は、やはり生態系によっては流量変動が必要である。魚の産卵場であるとか底生生物、付着藻類の生育環境として、やはり流量変動がないと生態系が不自然なものになってしまう。そのためのフラッシュ流量、あるいは流量変動のあり方、こういったことを、ちゃんとこれから計画論としてつくっていかなければならないと考えております。
 水質につきましても環境基準がございまして、水質観測をし、必要な水質の改善を進めておりますが、やはり目標論として、河川環境として、人々との触れ合い、生物の豊かさ、飲み水としての安全性、こういったものを直接的に表すような指標を設定して、今後、河川の計画をつくっていく必要があると考えております。
 3.2の方に飛ばせていただきますが、こういった水の環境について、特に水質について現在どんな取り組みがされているか、ちょっとご説明させていただきたいと思います。
 大きな河川については、水質はだんだんよくなってまいりました。下水の整備、あるいはいろいろな法令の整備によって進んでまいりまして、 10ppmを超えるようなところはなくなってきたわけですが、やはり生活空間の近くの小さな水路、小さな河川等での水質がまだまだ悪いといったことから、河川事業、下水道事業、地域の方々の取り組みを一体として、緊急行動計画を立てて清流を回復していこうということで、2000年を目がけて「清流ルネッサンス21」という取り組みを進めてまいりました。その成果の幾つかをご紹介したいと思います。
 これは松江市内の堀川、城下町を流れるお掘の水路のネットワークです。非常に汚い水質で、人も近寄らなかったところでございますが、清流ルネッサンスによって、地域の方の取り組みも含めて水質が改善してまいりました。川から浄化用水を導入して水路を回すということが特に効果があったわけでございますが、 10ppmだったものが3.2ppmまで改善し、現在では観光船を浮かべる、地域の観光資源になるような水路に復元してきております。
 これは徳島市内を流れる新町川でございます。これも地域の方々が遊べるような水質にまで改善してきております。
 これは四国の清流、仁淀川の支川、宇治川でございます。地域に和紙の製紙工場がございまして、その排水がこの小さな川に入って白濁していたわけですが、礫間浄化施設をつくって河川を浄化することによって、仁淀川のアユがここまで上ってくるようになってきたということでございます。
 これは、特においしい安全な水ということでございます。江戸川は、この赤いところで首都圏 300万人の飲み水を取水しておりますが、その直上流に千葉の方から、坂川という大変汚濁した川が流入しておりました。その水が水道水に流入しておったわけです。それぞれ水道事業で高度な浄化施設はお持ちでございますが、安全、あるいはおいしさといったことを考えたときに、やはり川の水からきれいにすることが必要であるということで、河川敷に浄化施設を設け、この浄化した水をさらに取水地点の下流に放流し直すということで、取水しないように改善しました。
 それによりまして、BODでもかなり改善いたしましたし、カビ臭のもとになる2−MIBという指標で見ても、かなりいい。いわゆる富栄養化の現象の中で、生態系も絡んだ安全な水づくりといったことも川の中で進めているところでございます。
 これは埼玉県の水質ワーストワンで有名な綾瀬川でございます。ここも下水道の整備等を含めて大分改善してきておりますが、今年、南北線が延伸した埼玉新鉄道、この地下鉄の中に水路管を入れて、荒川の水を浄化用水として北の方に運び、綾瀬川に放流して浄化用水として機能させようということで、この12月に試験運用が始まるところでございます。効果が期待されているところでございます。
 それから、水質の問題は、ダイオキシンあるいは環境ホルモンといった高度な問題になってきております。1級水系等で観測をし、また専門の先生方にご指導をいただきながら、こういったものによる生態環境、あるいは人間の活動に対しての影響度を調査しているところでございます。特に環境ホルモンについては、魚類との関係について、川の流れの中での生態系として、どういう影響があるかを調査しているところでございます。
 それから、水量の問題で、現在どんな取り組みがされているかということでございます。
 水力発電というのは自然エネルギーのクリーンエネルギーでございますけれども、水をバイパスしてしまうということで、その間、川の水が減ってしまう、あるいは水なし川になってしまうという問題がございました。昭和63年から水利権行政の中で、発電事業者に協力を求め、水利権更新の際に一部、水量を川に維持流量として戻していただくような協議を進めております。全国的に、この減水区間が 9,500キロメートルございますが、現在のところ、この3分の1の 3,100キロメートルが清流回復しているところでございます。残り 6,000キロについてもさらに協議を進めていきたいと思います。
 回復する前はこんな水なし川だったものが、このように清流が回復しているという九頭竜川の例でございます。
 この流量についても、最低限の一定流量ということではなくて、やはり季節変動のある水が欲しいということが生態系上はございます。これは信濃川の中流にあります大変大きな発電所の例でございますが、60キロに及ぶ減水区間がございます。
 これは先程のガイドラインで、協議で0.25トンの維持流量を残していただきました。上の絵でございます。これをさらに、下の絵でございますが、魚の遡上する期間、あるいは夏の期間は水をたくさん流していただくというように、下の左の絵のような季節パターンを持った流量を流していただくことでこの夏に協議がまとまりまして、進めさせていただいております。これは、雨が降って川にたくさん流量があるときは増電していいということとペアで、チャラになるような、減電補償は必要ないような施策でございますが、こういったことを進めております。
 さらに来年度からは、こういった減電補償も国のダム管理の中で進められるような施策を、現在、検討しているところでございます。
 ダムの下流の最低の維持流量という中では、やはり先程申しましたいろいろな障害があるということから、治水ダムの治水容量を一部、洪水が来ないときには弾力的に試験運用という中で、フラッシュ放流のために使うという実験をしております。これは東北の寒河江川の下流で藻類が溜まっていたものが、フラッシュ放流によってきれいに流されたという例でございます。
 これは東北の三春川の下流で、やはりフラッシュ放流による効果が表れているという例でございます。
 これは北海道の金山ダムの下流で、トンボの生息数がたくさん確認されるようになった、種類が増えたという例でございます。
 このように、今、現地でいろいろな努力を進めているところでございますが、こういったことを進める上で、やはり基礎的な情報、基礎的な調査、基礎的な研究がまだまだ必要でございます。そのあたりのことを資料3.1でご説明していきたいと思っております。
 「水辺の国勢調査」という河川の生物調査を平成2年から進めておりまして、国勢調査ということで5年ごとに1クールで、今年から第3クールに入ったというところまで実績を積んでおりますが、全国1級水系を中心として、魚や生物等の調査を進めているところでございます。
 こういったデータが既に10年分集まっておりますので、これをわかりやすい形で行政に活用し、あるいは市民の方にも活用していただこうということから、GIS化を進めておるところでございます。
 これを河川環境情報図というような形で、先程お見せしましたが、複数のレイヤーを重ね合わせるような形で河川改修計画、あるいは河川管理をしていく上での情報として、現場で活用を進めつつあるところでございます。
 こういった生態系と河川の管理とのかかわりの中で、どういった生態学的なかかわりがあるのかという研究が急務でありますが、学問的にも、まだ河川工学と生態学との間の連携が十分ではないという状況の中で、両方の分野の先生に1つの同じ現場に入っていただいて、河川生態学学術研究という研究会をつくって、全国4つの川で共同研究を進めていただいておるところでございます。
 これは、多摩川においてカワラノギク等が少なくなってきておりますが、それを保全するにはどういった河川管理が必要か、あるいはどういった現象がその中で仕組まれているのかというところを研究していただいているところでございます。
 千曲川では、大きな洪水が起こりました。そのときに大きな州の変化がございましたので、そういった洪水による氾濫、攪乱、こういったものが生態系にどう影響していくかといったところを中心に研究していただいております。
 これは淀川上流の木津川で、砂州の中の生物の営み、こういったものがどういう形で、砂州の移動等に伴って、あるいは浄化機能等に伴って起きているのかという現象を解析していただいております。
 これは九州、宮崎の北川でございますが、大災害があった後、大規模な河川改修による掘削が必要になっておりますが、その洪水敷掘削が生態系にどういう影響を与えるか、動物に発信器をつけたマルチテレメトリーというシステムを活用しながら、その行動解析等、研究を進めていただいているところでございます。
 こういった生態系と川の物理現象とのかかわりを、実際の川ではなくて実験水路で調べたいということで、自然共生研究センターという土木研究所の出先機関が、木曽川中流部の大きな中州のわきに延長 800メートルの人口水路をつくりました。そこに水の量をコントロールできる仕組みをつくって、曲がった川、直線な川、こういったものを比較するというようなことをしております。
 現在のところ1つつかんでいるデータの例でございます。「ヨーイ・ドン」で水を入れて直線の川と蛇行した川を比べてみますと、赤いプロットの蛇行河川の方が魚の種類数、あるいは現存量、どちらとも多いというデータが得られております。
 また、木杭により流れを抑制する工法がございます。こういった伝統工法等の中で、どういった生態系とのかかわりがあるかということも実験しておりまして、こういった木杭工等によって複雑な生態環境ができることから、魚の数、種類等も増加してくることが確認されております。
 また、植物につきましても、外来種が増えているという環境の中で、やはり除草した方が外来種は少なくなり生態系に良いということが確認されております。
 また、こういった物理現象あるいは自然現象による改変、あるいは人工的な改変、こういったインパクトが自然の中でどんなレスポンスとして出てくるかというようなことを体系的に研究するという考え方で、こういった一連の研究をまとめていこうと考えているところでございます。
 今もお話ししましたが、生態系に関して幾つかの話題をご説明させていただきますと、外来種の問題がございます。専門家の先生方、鷲谷先生等にもご指導いただきまして、レポートをいただいたところでございますが、外来種に対しての取り組みといったものを1つ課題としております。
 先程の河川、水辺の国勢調査によって見てみますと、全国の多くの川で最近入ってきた外来種がたくさんはびこってきているという現状が把握されております。
 例えば、よく言われますオオクチバスについて見ますと、現在はすべての都道府県に広がってしまったということでございます。
 伊豆沼の漁獲量でその変遷を見てみますと、1996年にオオクチバスが侵入して以来、タナゴ、モツゴ類がほとんどいなくなってしまったことが確認されております。これはたまたまハスが洪水によって97年に枯れてしまったことも関連していると思われますが、大きな影響が観測されているところでございます。
 また植生についても、これは多摩川でございますが、赤く示しているのがハリエンジュとかオオブタクサ、外来種でございます。これが非常な勢いで繁茂を進めてきているという状況でございます。
 こういったことに対応する取り組みを、今後の課題として検討しているところです。
 また、希少種についての取り組みも幾つかご紹介したいと思います。
 猛禽類についても、特に山の中でダムをつくったりするときに、猛禽類との共生の問題が課題になっております。十分な調査をアセスの段階、あるいはモニタリングの段階で今、進めているところでして、その成果を調査方法としてマニュアルにまとめ、さらに研究をいろいろ進めているところです。
 淀川にワンドというような池があるわけですが、その中にイタセンパラという絶滅危惧種がございます。こういったものの生育環境について、いろいろ実験の池を掘ったりして生態環境保全のための取り組みをしているところでございます。
 こういった調査に加えてというか、現実に現場ではどういう事業を進めているのかということでございますが、幾つかご説明したいと思います。
 いわゆる多自然型の川づくりということは、もうここ10年来あちこちで進めているところでございまして、全国各地で自然豊かな川が取り戻されつつあります。
 これは横浜のいたち川でございます。土地利用から川幅を狭められている中で、ぎりぎりの選択で、両側のコンクリート護岸は残したままですが、河床の中における自然環境をいかに取り戻すかという工夫をしている取り組みの例でございます。
 これは千曲川の広い河床の中で、どういうふうに生態系豊かな河道環境を維持していくかという取り組みをしている例でございます。
 これは横浜の和泉川でございますが、宅地造成に伴って川幅を最低限に狭められ、早く、安くつくるために左側のような鋼矢板の非常に哀れな川にされてしまっていたわけですが、地域の方々が、この川の自然を取り戻すためだったら用地も提供したい、このようなお話があって、これは全く同じショットでございますが、左側にあった家が立ち退かれまして、こういった自然豊かな川が戻ってきたという一つのすばらしい例でございます。
 こういった取り組み、全国で進んでおりますので、量的に申しますと上向きのカーブで数が増えてきております。過去5年間で約1万 4,000カ所で施工が進んでおりまして、さらに全国的に伸ばしていきたいと考えているところでございます。
 また、「魚がのぼりやすい川づくり」ということが叫ばれております。農業国ですので、農業用水をとる堰がたくさんございます。こういったところの魚道が機能していなかったり、なかったり、これは設置者にお願いするのが筋なんですが、なかなか受け入れていただけないという中で、やはり河川環境を保全する河川管理の行為として、これをつくっていくということに取り組んでおります。
 これは一つの堰の例ですが、バーチカルスロット式の魚道を専門家の先生方にご指導いただいてつくった結果、魚道をつくってから魚の数、種類が増えてきているという成果の例でございます。
 こういったモデル事業を幾つかの川で縦断的に、連続しないと意味がございませんので、モデル区間をつくって、現在、鋭意進めているところでございます。
 また、希少種という意味では、オオサンショウウオものぼれる川にしようということで、山の上流の方で砂防の床固めをつくるときに、オオサンショウウオがのぼれる河道整備をしているという例でございます。
 砂防堰堤をつくる時も、こういうスリットの入った、生態系を遮断しないような砂防堰堤をつくるということも進めているところでございます。
 以上が具体的な川づくりの中での取り組みでございます。
  最後に、こういったことを進める上で、市民との連携、あるいは環境教育、住民参加といったことも進めていかないと、いい環境づくりはできないということでございます。そういった中から「川に学ぶ」そういう社会をつくっていく必要があるという河川審議会からの答申もいただきました。パンフレットに入っておりますので、また見ていただければと思います。あるいは市民活動といったものと連携した河川行政を進める必要があるという提言もいただいておるところでございます。
 これに基づきまして、資料は2.3と3.3、両方同時に説明させていただきたいと思いますが、まず一つの課題としては、川づくり、河川整備計画をつくる段階での市民団体、市民活動との連携でございます。
 これは冒頭に申しましたように、新しい河川法の中で位置づけられたわけでございますが、一つの例として多摩川での動きをご紹介させていただきますと、左側、行政として、やはり流域の協議会をつくっていくという動きは過去からございました。そして市民の中でも自然保護団体の環境の協議会ができ、多摩川センターというNPOも平成6年にはできておったわけでございますが、これを河川流域懇談会という1つの流れに合流させていこうということが、平成10年から始まりました。
 こういった地域の方々と川について協議するということは、実は言うはやすく行うは非常に難しいことでございまして、価値観の違う方、立場の違う方、いろいろな方々が集まって議論しますと、対話の仕方からまず問題になってまいります。非常に長い時間かかってまずできたのが、こういった対話のルールでございます。左は3つの原則で、自由な発言、徹底した議論、合意の形成、これを目指していくんだということ。右側は7つのルールでございます。こういったものをまず合意形成して、話し合いの基盤をつくり、その上で話し合いを進めているという状況でございます。
 こういった中で河川整備計画を議論していくということが、現在、進められて、一定の成果を得つつ、もう少したつとこの整備計画ができるという状況まで来ております。
 このような計画論での市民との連携の次には、管理の面での市民との連携という意味で、これは岡山の旭川で、流域のNPOの方々に河川管理に参加していただいている例でございまして、清掃事業等もお任せして、いわゆるアドプト・プログラム−−里親制度というようなもので地域の方々と一緒に管理を進めるという仕組みの一つの先進的な事例でございます。
 これは北上川の閘門の管理を、地域で活動する河川のNPO、カヌーに乗ったり川下りをする方々に委託をして、土曜でも日曜でも自分たちの好きなときに閘門を開け閉めして通過できるような、そんな管理の体制を整えている例でございます。
 これは長良川の環境レンジャーということで、これも地域のNPOの方々にパトロール、あるいはごみの掃除、あるいは子供たちへの環境教育、こういったものを河川管理者と一緒に進めていく体制をつくり始めた例でございます。
 これは荒川におきまして、やはり地域の方々と自然を取り戻す湿地づくり、あるいは清掃活動、こういったものを一緒に進める体制を進めつつある例でございます。
 これは霞ヶ浦で、アサザというきれいな水生植物を復元しようということで、下にありますような間伐材を使った柔らかい波消し工法を私ども河川管理者の方でお手伝いしながら、子供たちがアサザの苗を植えて育てるというような形で、これを周りの市民団体あるいは森林組合、いろいろな組織が連携して、こういった湖沼、湖辺の自然再生に取り組んでいるという例でございます。
 こういった取り組みとあわせて、やはり川は人がいろいろなことを学べる場だと。特に子供たちにとって、自然体験をする貴重な空間であるということで、その環境づくりを進めているところでございます。これは一つの例ですが、文部省さんの方のデータでございます。自然体験のある子供の方が道徳観、正義感がある、このようなアンケート調査があるわけでございます。
 これはコンピュータ・ゲーム会社のイベントで、東京ドームに子供たちが集まっている写真で、4万人を超える子供たちがゲームに熱中して静まり返った。この異常な現代の子供たちに対して、私ども、21世紀、非常に危惧を持っているわけでございます。こういった子供たちを川に放り込もう、こういう仕組みを現在、進めているところでございます。
 これは水辺の楽校ということで、地域の教育関係者、地域公共団体、あるいは市民団体一体となって、川に子供たちを連れ込む仕組みづくり、場づくりをするということで、全国で既に 200カ所程これが進みつつあるところでございます。
 この川に入った子供たちの笑顔が、やはりこれからの私たちの期待であるということでございます。
 そういった中で子供たちの環境教育、来年から総合学習が本格的に始まりますので、私ども、いろいろなお手伝いをしていきたいと思っております。これは福島の例でございます。
 これは横浜の例でございます。
 こういった活動の中で、やはり川の水質、水生生物調査というのが一つのツール、課題としてよく行われます。環境省と連携して進めておるわけですが、昨年からもう統一した手法でやることにいたしました。だんだん参加人数が増えておりますが、いよいよ8万8千人までに増えております。さらにこういった取り組みを全国で進めていきたいと考えております。
 こういった学習を進める上で、今までは、やはり学校の先生方は「危ないから川に行くな」と言わざるを得ない環境でございました。そういう中で、川での指導者、あるいは川で何を学んだらいいのか、その教材、こういったものを提供するホームページを立ち上げたところでございます。
 特に、そういった指導者を育成していく必要がある。今までの地域社会ですと、がき大将が後輩を連れていくということがありましたが、そういったことはない、親もなかなか行かない、先生もだめだということから、地域のNPOの中に指導者を育成していこうということで、昨年、市民団体が連携して協議会をつくって講座を開きました。
 今年は全国で 1,000人程が受講いたしましたが、1日講座、あるいは指導者育成講座、こういったものを全国で今、展開しつつあるところでございます。
 こういった地域の方々と一緒に、子供たちの将来も考えつつ、生態系の多様性を確保する河川行政を進めていきたいと思っております。
 大変長くなりましたが、これで説明を終わりにさせていただきます。ありがとうございました。

●辻井委員長 どうもありがとうございました。
 ただいまのご説明について、ご意見、ご質問ございましたらいただきたいと思います。

●三澤委員 ご説明ありがとうございました。
 気になる点が一つ二つあるんですが、1つは、釧路湿原を河川指定されたということ、これはもちろん行政上、必要なことで、結構なことだと思うんですけれども、湿原維持のために河川サイドから、当地に対して何か具体的なお考えがおありだと理解してよろしいかということが1つ。
 もう一つ気になる点は、外来種の問題でございますけれども、今、ハリエンジュが何か俎上に上がっているんですけれども、ハリエンジュも考えてみれば昔、日本の明治からの公害跡地の復旧、治山等に大変役に立った樹種でございまして、これは確かに外来樹種でありますけれども、むしろ日本名ニセアカシアと言った方がなじみが深いのかもしれません。そういうことで、邪魔になるところでは除去するのは結構だと思いますけれども、ぜひ一律な考えはお持ちにならないようにお願いしたいということ。
 それから、これは大変除去が難しい樹種だと思いますので、恐らく根こそぎとか、薬品を使うとか、何か相当ハードなことをしないと除去できないのではないかと思っております。
 それから、ハチミツの養蜂業者は、実は大変この樹種をありがたがっておりまして、全国一律にやりますと養蜂業者を敵に回すことになりかねないので、その点ご注意になったらいかがかと、こんな老婆心を持っております。

●国土交通省河川局(岡山) 釧路湿原の話でございますが、先程ちょっとご説明が足りなかったんですが、今までは、蛇行した川を真っ直ぐにして周辺の農地の洪水対策をするというようなことをしてきたわけですが、それによって水位が下がることで乾燥化が進むという一因もございます。そういった意味で、蛇行した川にも水を入れて、地下水位を少し上げて湿原に戻すというようなことを、当面、試験施工として進めていきたいということで、現在、現場で協議しているところでございますが、やはり農地への悪影響があるかもしれないということもございますので、そこは慎重に協議をしながら進めていきたいと思っております。
 あるいは、土砂がどうしても上流から入ってくるので、その土砂をためるような施設を川の脇(その流入する箇所)につくるというようなことも計画、あるいは提言もいただいているんですが、それに基づいて計画していきたいと考えておりますし、また、山での植林だとかいろいろな提言があるわけでございますが、これは関係機関と協力しながら、連携して進めていきたいと思っております。
 それから、外来種につきましては、おっしゃるとおり、いつ以降入ってきたものが外来種かという議論もありますし、非常に有用なものもあるかもしれません。地域ごとに付き合い方というのは結構違うわけでございますので、ハリエンジュだけではなくて、例えば鮎だって、ほかの水系から入れるのがいいか悪いかという議論をされる方もいらっしゃるわけでございまして、地域ごとに協議しながら、先程申しました協議会のような場で議論をして、地域の方々の手も借りながら、一緒に要らないものは駆逐していくし、いいものは残していくというようなことを地域ごとに選択していく仕組みが必要かと思いまして、幾つかの地域でそういったことが進められております。子供たちがセイタカアワダチソウをとって希少種を残すというような地域活動が進んでいるところもありますが、やはり地域、地域の考えで選んでいただくということかと思っております。

●鷲谷委員 湿原の再生であるとか流域の土砂管理などは、うまく実施されれば生物多様性を保全する効果が非常に高いと思うんですけれども、生物多様性により多く寄与させるために、物差しとして、河川や水辺に固有な絶滅危惧種を取り上げて、こういう再生事業であるとか管理の中に絶滅危惧種の回復計画みたいなものを組み込むことが、意義が大きいのではないかと思っております。
 霞ヶ浦のアサザ・プロジェクトのご紹介がありましたけれども、あれはアサザだけを回復させるということではなくて、水辺の植生帯であるとか、もっと広く水辺の自然を回復させるための指標としてアサザを用いているわけなんですね。どのぐらい再生できたかとか、それから有効な管理になっているか、いろいろな物差しで測らないといけないとは思いますけれども、生物多様性ということでは、絶滅を防ぐこともとても重要な視点ですので、そのような視点も取り入れていただけたらと思います。

●国土交通省河川局(岡山) ありがとうございました。
 先程アサザの説明に関して、そういう意味では少し舌足らずだったと思いますが、おっしゃるとおり、地域の方々の合意を得ていくためにも、希少種、絶滅危惧種、こういったもものの復元を目標に掲げることは非常に有効な手段だと思いますし、また、その効果を把握する上での物差しとして利用していくことも重要だと思います。
 希少種だけではなくて、どこの水辺にも昔いた、メダカであるとかホタルであるとか、そういったものを復元しようという取り組みも全国で展開しておりますし、そういったものも一つの物差しになるでしょう。いろいろな物差しをつくりながら、国民、市民がみんな一緒になって進められるような仕組みをつくっていきたいと思っております。

●鷲谷委員 今、私が言ったのは、希少種という意味ではないんです。かつては生活域の川とか水辺に普通に見られたものが今は絶滅危惧種になっているということで、メダカもアサザもそうなんですが−−ただ「絶滅危惧種」と言わずに「身近な絶滅危惧種」という言葉を使わせていただいてもいいと思うんですけれども、特に生態系の健全性が失われていることと関連があるようなものを、物指しとして取り上げるのが有効ではないかと思います。

●岩槻委員 今のご意見とも関連して、これはある意味では残念なことなんですけれども、非常にいいプロジェクトをたくさんやっていらっしゃるんですけれども、そのほとんどは自然を昔のように回復させることが軸になっているんですよね。昔へ回復させる、一旦変貌したものを元へ戻すというのは、歴史は逆には戻せませんから、完全に元へ戻るわけではないんですね。ですから、その戻ったものが以前のものとどう同じか、同じでないかをモニターすることが非常に大切だと思うんですよね。
 多くの場合は原始、自然であったところではなくて、人手の入った場所がさらに変貌していたのを元へ戻すということですから、その元の人手が入っていたところへどう戻るか、それは非常にクリティカルなことだと思うんですけれども、そういうモニタリングに対してはどのようにやっていらっしゃるのかをお伺いしたい。

●国土交通省河川局(岡山) 計画論とモニタリング論、管理と2つあると思いますが、目標論としては、やはりどの程度の昔まで戻すかというのが1つ議論になるわけでございまして、先程の釧路湿原でも、太古の昔まで戻すのか、それとも 100年前に戻すのか。各地で議論していると、高度成長の前、昭和30年ごろ、その辺が一つのターゲット、目標になりやすいところだと感じます。私どもが子供のころ経験した、体験したノスタルジーのある環境、そういったものが、皆さんの合意が得やすい一つのイメージとしてあるようでございます。
 しかし、やはり化石燃料にこれだけ依存する時代ですから、かなり薪炭林という意味では森林は保全されておりますし、江戸時代とは随分違った都市と流域との関係があるわけでございます。その中で、それではどういう環境が取り戻せるのか、水利用が増えて下水に依存する中でどういった水環境が復元できるのか、いろいろな議論をしないとわからないと思いますし、その辺はまた地域、地域ということになってしまうんですけれども、その流域の特性、自然の特性、人の住まい方の特性、そういったものとのバランスの中で地域、地域で選択していくものだと思いますが、モニタリングという意味では、確かにそういった目標に対してどこまでできているかということを測りながら、また必要なフィードバックをかけていくことになると思います。
 お答えになりましたでしょうか。

●岩槻委員 これはいろいろなご意見があるかと思うんですけれども、「回復させる」ということ自体に、先程申しましたように疑念があるんです。
 やはり一旦変わってしまったものですから、「新しく創る」という発想の方がいいのではないかと思うんですよね。そのつくる場合に昭和30年ごろが一つのモデルになるというんだったら、それはそれでいいと思うんですけれども、その場合、もう昭和30年ごろの状態に「戻す」のではなくて、昭和30年ごろに似た状態を「創っていく」ということだと思うんですよね。ですから、それに対するモニタリングが必要だということなんですけれども。

●国土交通省河川局(岡山) ありがとうございました。

●三浦委員 たくさんのモデルを見せていただいたように、生物多様性のウェイトが非常に高いさまざまな事業をやっていらして、それから、基本的には市民参加というところへかなり踏み出していると思うんですが、ここまで発展しているというか、前向きといいますか、そういうことであれば、この際、環境影響評価の問題で言えば、多様性を取り込むということで、いわば今まで事業アセスだったものを計画アセスそのものに踏み出していく。今まで多くの建設行政はそこまで踏み込んでいないんですが、これからはぜひ必要だと思います。もちろん河川局は自信があるだろうと思うんですが、先陣を切ってそういうところへ踏み出すことをぜひ考えていただきたいと思うんですが。

●国土交通省河川局(岡山) 非常に重要なテーマだと思っておりまして、実は先ごろ、先々週ですか、研究委員会を立ち上げたところでございます。
 どういった意味で立ち上げたかといいますと、先程ご説明したとおり、新しい河川法では地域の方、専門家の方、いろいろな方と協議しながら河川整備計画をつくっていくという仕組みになっております。その中で、いろいろ必要なプロジェクトに対して、河川整備計画の中で複数案、代替案を考えて絞り込んでいくことになるかと思います。
 例えば、上流のダムがいいのか下流の河道改修がいいのかという議論の中で、治水効果、あるいは経済性、社会的な問題、当然環境の問題も含めて代替案の総合比較がなされるわけですけれども、そのときに、それぞれのプロジェクト案がどういった効果と影響を持っているのか、それぞれの面からまず把握、測定する必要があるわけで、それを環境面からいかに分析し、測定するかということは、地域の方々と相談し、専門家の方々と相談するという仕組みの中で、まさに計画アセス的な一つの仕組みになっているんだろうと思っています。
 現在それを幾つかの地域ごとに進めつつございます。その中で、治水的な効果については、河川の雨の量あるいは流れの量を判断したら、結構どうなるのか分析できます。ところが環境については、実はかなり難しいのです。事業アセスの段階で、こういう工法をとり、ここに道路をつくり、ここに何メートルの何をつくるという設計図がほぼある段階で、その測定をしよう、分析をしようと思えば、事業段階ですから予算もありますし、いろいろな調査が現地で可能なんですが、計画段階ですとそこまでなかなか予算を許していただけないという中で、それでは、どの程度の情報の中でどういう判断ができるか、その測定、分析にどういう手法があるのか、その辺で非常に悩んでおります。
 その辺のところをぜひ先生方に教えていただきたいということで、先々週、委員会を立ち上げまして、環境省のご協力も得ながら一緒に研究をし始めたところでございまして、課題だとは思っていますが、すぐできるものではないような感じを持っております。そういう考え方は私どもも仕組みとして持っているんですが、手法論として、どれだけ十分なものにしていけるか、これからさらに勉強していきたいと考えております。

●阿部委員 今まで徹底的に壊してきた河川を回復させるということで、たくさんご説明いただいたんですが、その前提として、やはり本来は自然河川を守るということが一番最初になければいけないと思うんです。自然の構造を持った河川がもうないのかもしれませんけれども、必ずしもそうではないだろうと思いますから、工作物をつくったりする場合に、もっと自然の構造を壊さないための手法といいますかねそういうものをとり入れていただきたい。それに関する説明はほとんどなかったように感じたんです。今のご説明は、大部分が壊したものを回復させることが主眼で、むしろそれよりももっと前の、壊さないで何かをするというような、そういう発想での将来に向けての計画とか何か、そういうものはないんでしょうか。

●国土交通省河川局(岡山) おっしゃるとおり、当然、壊してしまったものを戻すだけではなくて、これから何かつくっていこうと思ったときに壊さない手法というのも必要だと思っていますし、そういった取り組みもいろいろしております。
 先程言葉でご説明した、資料2.2.1のところでございますけれども、例えば治水計画上、川幅を広くしなくてはならないときに、昔の川は本当はもっと広かったはずなので、逆に言うと元に戻すような河川改修をするということなのかもしれませんが、その中で、今まであった川の姿をちゃんと考えよう、もともとあった河川環境にできるだけ近づけようと。まさにそのものを復元はできないだろうという先程のご意見のとおりで、できるだけ近づけるというようなことで考えております。できるだけ元のものを置いておくという考え方は基本にございます。その上で、もし変えなくてはならないときに、その変える部分を最低限にしていこう、こういう考え方でございます。
 ちょっと抽象的でわかりにくいかもしれませんが。

●篠原委員 1つは、そちらの委員から話が出たことなんですけれども、例えば道路をつくるとなると、道路をつくる場所には実際には道路はないわけですから、それは事業が始まる目途が立たないと調査費とか計画費とか設計費が出ないのもよくわかるんですけれども、川は厳然として今あるものですから、それを突破口に、何かもうちょっと知恵代に金がつくようなシステムをお考えになっていただけないかと思います。これは財務省相手になるんでしょうけれども。
 これはもう河川に限りません。本当は道路でもそうなんですけれども、計画段階でもう少しお金がつくと、後の無駄な工事費その他がなくなると思うんですよ。これは日本の通弊だと思いますけれども、何か事業をやらなければ調査費がつかない、あるいは計画費がつかないというように、余りにも工事中心主義でずっとやってきたので、それを何とか打破できないかなというのが1つです。
 もう一つは、「自然の再生をしましょう」とか「湿地に戻しましょう」とか、さっきからいろいろ話が出ていますが、私が知っている範囲では、もともとこのモデルはドイツとかスイスの河川工法の導入であったと思います。しかし、ドイツやスイスとは気候条件も違えば雨の降り方も違う。非常に簡単に言えば、日本では植生が非常に旺盛に繁茂しますね。10年の実績があると言われましたけれども、こういう旺盛に植生が繁茂する日本の気象条件の中で、実はいろいろメンテその他の面で問題が起こってきているのではないかと思うんです。あるいは、むしろ人が近づきにくくなってしまうとか、その辺の問題はいかがでしょうか。
 それから、多自然とか自然再生とかいろいろやっておられますけれども、この面でのプロの計画者とか設計者を、省内あるいは附属の研究所、それが無理であればコンサルタントとか設計事務所で育てていこうとしているのかどうか。つまり、それなりのキャリアを持って知識をストックしていけば、よりよいものがどんどんできてくるわけですね。随分普及はしてきていると思いますけれども、もう一段レベルを高めるためには、そういうプロを育成する必要があるのではないかと思います。住民参加ももちろん大事ですけれども。
 最後に、これは私の感想ですけれども、多自然型その他は自然の材料を使っているから、ちょっと悪い言い方をすれば余りぼろが出ないんですけれども、さっきご紹介いただいた魚道とかオオサンショウウオの生息に配慮した何とかというのは、これはいかにもデザインのレベルが低い。せっかくの川にこういうものを持ち込んでしまうと、今やっておられることに逆行しているという感じがします。

●国土交通省河川局(岡山) 確かに、今まで人口も増え、土地利用も変化する中で、いろいろな対策、整備、工事をしないとみんながハッピーに住めない国土だったわけですが、人口ももうそんなに増えない、逆に減る時代に入りますし、土地利用もそんなに変わらないだろうという中で、今後の河川整備のあり方がどうなっていくか。ある意味では、まさに環境宣言に言われているように持続可能な環境を維持していく、やはり新たに工事していくというよりは、維持・管理の方により軸足を置いていく時代だろうと思います。
 そんな中で私どもも、確かに、物をつくるときしか大きな予算がとりにくいというのはこれからの時代、課題になってくるだろうと感じておるところでございます。これは非常に大きな問題でございますから、ここでどうこうというお話はできないわけですが、やはりそういった仕組みづくりがこれから非常に重要になってくるのではないかと思っております。
 私ども、やはり基礎的な調査、あるいは管理を淡々としていく中で、どうしても必要なものも出てくるわけでございます。これだけ「小さな政府」という時代でございますから、できるだけ地域の方々と連携して−−お手伝いいただいてとはなかなか言いにくいんですが、一緒に進めていくような体制も一つの道だとは考えておりますが、おっしゃるとおり、財政論的な考え方でも、1つ検討していかなければならないものがあるのではないかと思っています。
 それからもう一つ、川の自然が戻ってくると、やはり植生が繁茂してしまうという問題も確かにあります。地域の方へ行きますと、実は「コンクリートできれいに川を整備してください」というニーズの方が多うございまして、草刈りは面倒だということです。そういう「草刈りする、しない」といった維持・管理費のことを考えてもトータルコストはどっちなんだという議論も財政的には出てくるわけですが、やはり地域、地域で望むものが違います。
 先程の横浜の川の例では、用地も提供します、川の管理もしますというような地域の方が出てきております。カやヘビがいても自然の方がいいという方々は、自分たちで環境管理をしたい草刈りもしたいし、ごみ拾いもしたいし、その中で生物と一緒に遊びたい、そういう方々もいらっしゃる。そういう多様なニーズがあるわけですので、地域、地域に応じた管理の体制が必要だろうなと思っております。
 また、私どもとしても、どういう維持・管理が必要なのか、これから技術的にも、あるいは体制的にも考えていかなくてはいけないと思っております。
 それから、プロの育成という意味では、水辺の国勢調査等を進める中で、全国もう10年間、ある意味ではかなりの投資をしてきたという意味で、これはノウハウができてきただけではなくて、やはり人も育ってきていると思います。そういった意味では、自然環境については民間でもかなりの人間が育ってきておりますし、NPOの方も育っています。また、庁内どうなんだということですが、庁内でも、そういうことを進める中で、内部の研修等を含めてかなりレベルが上がってきております。こういったもののインセンティブは省内では完全に上がってきておりますが、おっしゃるとおり、景観の面ではどうだというようなお話になると、これはまたさらにレベルの高い問題で、なかなか難しい問題でございます。
 とりあえずは機能的な問題で、自然再生のために、その機能を維持する設計をしているんだけれども、それは本当に景観としてどうなんだ、馴染んでいるのかという議論がまだ少し足りないものもあるのが実態だと思いますが、だんだん成熟していくことを期待しておりますし、努力していきたいと思っていますので、またご指導いただければと思っております。

●篠原委員 最初の問題については、ちょっと誤解があると思うので。
 私は、メンテも必要なわけですけれども、調査、計画、設計、工事という段階に分けたとき、もっと計画の段階にお金を使うようなシステムにしていかないといいものができないと言っているんです。河川の方は、ちょっとピンと来ないかもしれませんけれども、例えば道路でいくと、最初にどこに道路の線を引くか、それによって橋の数もトンネルも違いますし、その辺で知恵を使うと、むしろ安くていいものができる。その辺にちっともお金がつかないものだから最後の工事になって非常に苦労するとか、実際は工事費がかかってしまう。
 それは余りマスコミなども叩かないから、そんなに表面には出てきませんけれども、私はそういう経験を幾つもしていますので、省全体として、もっと初期のプランニングの段階に知恵を出す、知恵のためにお金を使う、そういうシステムにしていかないと、いかに自然回復の工事であろうと、やはりトンカチ集団だという話になるのではないかと思うんです。
 これは予算のシステムの話ですから、河川局一局でどうという話ではございませんけれども。

●国土交通省河川局(岡山) 予算というより計画づくりの仕組みとしては、先程お話ししたように、河川整備計画でいろいろな代替案を地域の方と一緒に考えていく中で、その効果、影響を分析するには非常に労力がかかりますし、地域の方とお話をするための説明資料をつくるのでも、これは手戻りをしながら、何度も何度も繰り返し議論をする。時間もかかるし、それだけの職員をそこに充てるということは、すなわちコストがかかっているという話でありますし、そういったことで、結果的にもうならざるを得なくなっておるのが実態でございます。

●森戸委員 少しダムについてお聞きしたいんですけれども、今日の配付資料を見ますと3.2.7、8あたりにダムのことが出ていますね。
 これは上流域の話ですけれども、今までは大きなダムをつくってきたが、これからは必要最小限のダムをつくるというような図解があります。その下の方に「ムダのない事業」と書いてあるので、今までは大分無駄があったのかなと。これは「ダムのない事業」と読みかえてもいいのかなと思ったんですけれども。(笑)
 ダムを今、大分見直しして、一部は中止していますよね。つくる予定だったものをつくらないで代替手段でやったのはいいんですが、少しやりかけたものとか、それから私が長崎県あたりで見たような、砂防ダムを下から上まで10も20もつくって、ほとんど山に対するアートみたいだなあと見ていたんですけれども、ああいうふうに、景観上も問題のあるダムに関しては、回復という形でないにせよ、改良するとか、あるいは新たなスタイルを創出するとか、そういう試みはしているのか、それから今後の見通しとしてはどのように考えているのか、その辺のことを教えてください。

●辻井委員長 ダムは河川局ばかりではなくて、今のお話ですと、例えば治水のダムというのはまた別なところでもつくっていらっしゃるだろうと思いますが。

●国土交通省河川局(岡山) 事業が適正なものかどうかということは、評価審査会、監視委員会というものを事業ごとにつくって審査する仕組みができておりますので、一つ一つ各段階でチェックしているところでございますけれども、そもそもどういうものをつくっていくかという案の中で何を考えるか、今、具体にお答えする材料は持ち合わせていないんですけれども、やはり河川の整備計画をつくる中で、いろいろな代替案を比較するわけですから、そこで下流の遊水地の方が、田んぼを用地買収して遊水地にまた戻すといったことが可能であれば、そういったものと比較することも可能だと思います。
 そういう可能性はあるわけですけれども、その流域の本当の合理性、地域の合意をどういうところで得ていくかという中で、その実現可能性は決まってくると思います。具体にどういう案を考えているかというと、技術論ではちょっと今、頭に浮かぶものがないんですけれども。
 ご質問の趣旨、ちゃんととらえていないかもしれませんけれども。

●森戸委員 中流や下流では確かに関係する人も多いし、住民も多いから、ここに書いてあるようないろいろなモデル的な事業や事例があるのでしょうが、上流部においては何かそういう画期的な事例はあるだろうか。回復した事例とか。ダム造成に関して、やらないというものは別として、やりかけたものに関しては、何か新しく対応しているものがあるかどうかということです。

●国土交通省河川局(岡山) これもお答えになっているかどうかわかりませんけれども、例えばダムをつくると、ダム湖の水質の問題であるとか、そこで土砂が止まってしまうとか、あるいは下流の洪水時の濁水が長期化するとか、いろいろな影響が指摘されておりますけれども、それぞれできる範囲で、土砂のバイパスをつくるとか清流のバイパスをつくるとか、あるいはダムにも魚道をつけてしまうだとか、あるいは湖辺の緑地を再生させるだとか水質の改善をするとか、選択取水を設けて下流へ水質の問題を及ぼさないとか、若干力ずくのところはございますが、いろいろなミティゲーションはとっております。それはおっしゃる画期的な進歩という中に入っているかどうか、ちょっとわかりませんけれども、個別いろいろな努力はしているところでございます。

●篠原委員 河川局のやっておられること、これからやろうとしていることはよくわかったんですけれども、昨日から農水省の方の話を聞いていて、実は、水が流れる場所もスケールによって、今、問題になっている生物多様性の問題がいろいろ違ってくるのではないかと思うんですね。
 国土交通省が直轄でおやりになっているのは割と大きな川だし、2級河川においてもまあまあ大きな河川での事業が多いんだけれども、農水がやっておられる水路とか、そういうものがありますね。それは大体河川から取水して、もう一回戻す。これは実際はつながっているわけですよね。スケールが違うのでもっとおもしろいと思うので、その辺の連携事業なんていうのは全然視野にないんでしょうか、せっかくここまでやられているんですから。

●国土交通省河川局(岡山) これは、いろいろな面で連携していこうと考えております。とりあえずの例としては、先程魚が上るというお話があって、魚道を堰につけたりしていますが、大きな魚は川に上るけれども、小さな魚で田んぼまで上りたいのもいるんだよというお話がありまして、やはり農業用水の水路、それから田んぼ、これもつないだネットワークを考えていこうということで、今、実験のモデル箇所を一緒に探して進めていこうというようなことを始めております。これは一つの取りかかりでございますが、いろいろな面で連携していきたいと考えております。

●辻井委員長 ほかに、よろしゅうございますか。
 それでは、どうもありがとうございました。 ここで10分程休憩したいと思います。

                              午後2時48分休憩

                              午後3時15分再開


●辻井委員長 再開いたします。
 ここからは港湾局、国土技術政策研究所、総合政策局の方にご説明をお願いします。
 まず最初に港湾局から、どうぞよろしくお願いします。

●国土交通省港湾局(岩瀧) 港湾における環境への取り組みについて、ご説明させていただきます。
 私、国土交通省港湾局環境整備計画室長の岩瀧でございます。よろしくお願いします。
 まず、港湾行政は総合行政ですということでございますが、物流、産業、生活といった機能がバランスした、総合的な港湾空間づくりを精力的に進めております。
                (スクリーン)
 右側の図にありますのが物流の事例でございますが、全国4カ所の中枢国際港湾、これは東京湾、伊勢湾、大阪湾、北部九州の4カ所でございますが、こういった地域に拠点的に国際港湾を整備していこうということでございます。ちょっと色が見えにくくて恐縮ですが、そのほかに中核国際港湾というのが8個ございまして、この中枢・中核国際港湾をもって、我が国に国際競争力を持った港湾を整備してきておるのが実態でございます。
 港湾行政の課題でございますが、3つの機能のうち、まず物流に関しては、物流コストの削減による国際競争力の強化ということでございます。
 1980年にはアジアにおける物流の中心、ナンバーワンが神戸、横浜といった位置づけだったんですが、10年後の現在では、我が国の国際港湾の競争力は非常に地位が低下しております。香港、シンガポールを初め釜山、高雄等、周辺アジア諸外国の港湾が軒並み力をつけてきておりまして、ハード・ソフト面をいかに強化して国際競争力を持った国際港湾をつくっていくかが一つの大きな課題でございます。
 左の写真にありますように、ハード面では水深15メートルないし16メートルのコンテナターミナルをつくっていく、併せてソフト面の強化をしていくということでございます。また一方、産業に関しましては、かつての臨海工業地帯、かなり重厚長大産業が立地しておるわけでございますが、その後の経済・社会情勢に対応して、臨海部の有効活用、再編を図っていくという取り組みも行ってございます。
 右下の図面でございますが、港湾文化交流施設等、いろいろな賑わい空間をつくったり
ということで、補助、民活事業、いろいろな取り組みを行っているところでございます。
 3つ目の生活空間でございますが、これも自然との共生、また廃棄物・リサイクル対策といったことが急がれております。
 左下の図面は大阪港、南港におきます野鳥公園でございますが、親水空間として整備された事例でございます。
 また、右側の図面は堺泉北港の廃棄物海面処分場でございます。これはフェニックスと称しまして、尼崎・西宮・芦屋港を初め堺泉北港、神戸港、大阪港、それぞれに廃棄物海面処分場をつくって大阪の2府4県 192市町村が合同で廃棄物を処分していくということで、4つ目の大阪港におきます処分場も、ようやく護岸整備の着工の段階に至っておる状況でございます。
 港湾における環境への取り組みの経緯でございますが、大きくは、左にありますように公害の防止という取り組みから始まって、生活環境の改善、環境との共生という流れになってきております。
 最初は昭和42年、船舶から出てきます廃油の処理施設の整備事業に端を発しておりまして、昭和48年に港湾法の大改正を行いまして、港湾環境整備事業制度というものをつくってございます。その中で、緑地等施設の整備を補助事業として取り組み始めたということでございます。明くる昭和49年度には三大湾で、直轄事業として、浮遊ゴミ油の回収事業も実施しております。
 また、平成6年度には港湾環境政策、いわゆるエコポートを打ち出しまして、新たな環境への取り組みがこの時点でスタートしたということでございます。
 昨今の変化としましては、平成11年度には港湾法を大きく改正しまして、その目的に環境政策の取り組みを大きく掲げてございます。また、これを受けて平成12年度には、国土交通大臣がつくります「港湾の開発、利用及び開発保全航路の開発に関する基本方針」を大幅に変更してございます。
 海洋環境整備事業でございます。下にある日本地図は一部しか出ておりませんけれども、いわゆる東京湾、伊勢湾、瀬戸内海の3海域におきまして、ゴミ油等の回収事業を行ってございます。ここに書いてあります9ブロックに分けて、それぞれ環境整備船を配備しましてゴミ油の回収を行っておるということでございます。
 右側にございます双胴船は、東京湾に配備しております、ごみを回収する「べいくりん」でございます。先週、横浜の方で油が漏れまして、「べいくりん」が出動して一部回収しております。
 また、左側には「油流出事故で活躍する清瀧丸」と書いてございますが、これは常時名古屋港に配備されておりまして、名古屋港における航路泊地の浚渫を行っておるわけですが、いざ油の流出が起こりますと、これが出動して油を回収する。ご記憶の方も多いと思いますが、ナホトカ号の油流出事故の際にも日本海に出動して油を回収してございます。
 実は、開発保全航路でございます関門航路でも海翔丸というのが浚渫を行っておりまして、これも 3,000トンクラスの船でございますが、一昨年リニューアルしまして油の流出事故に対応している。また、新潟港に配備しております白山も現在、新造船をつくっておりまして、2002年には3隻体制で、出動から48時間で全国をカバーできるようになります。
 次は、環境事業の代表でございます海域環境創造事業、いわゆるシーブルー事業と称しております。上の図面で茶色の部分は汚泥がたまっておって、そこから水質の悪化を来して魚が非常に苦しんでおる状況でございますが、この汚泥の上に良質な砂を乗せることで、汚泥から出てくるメタンガス等の発生を抑え込むということでございます。その際は、航路等の浚渫によって発生するもので覆砂するということで、言ってみれば浚渫土のリサイクルという形になりますが、こういった形で水質環境の改善も図ってきておる状況でございます。
 先程申しました、平成6年につくりました環境と共生する港湾、エコポート、この基本理念が3つございまして、1つは、将来世代への豊かな港湾環境の継承ということでございます。2つ目が、自然環境との共生、3つ目がアメニティの創出ということで、この背景にあります図は、いろいろな取り組みをしている状況を表したものでございます。
 この目標は4点ございまして、第1点は、自然にとけ込み、生物にやさしい港づくりということでございます。2点目が、積極的に良好な自然環境を創造する港ということでございます。3点目は人々の憩いの場ということで、アメニティの高い、人々に潤いと安らぎを与える港ということでございます。4点目が、環境に与える負荷が少なく、環境管理のゆきとどいた港ということでございます。
 その一例でございますが、左上が小樽港の小樽運河、現在、大変人々で賑わう空間となってございます。この取り組みとしましては、歴史的港湾環境の保全を図るということで、歴史的港湾環境整備事業というものをやってございます。具体的には、こういう散策路とか、たまり場の整備をしているものでございます。石造りの倉庫を活用した、非常に歴史を感じる空間づくりができておる事例でございます。
 右上は「良好な景観形成を図った伏木富山港」ということでございますが、もう一つ、景観形成モデル事業というのをやってございます。これは良好な景観形成を行う計画づくりというのをまずやりまして、それに基づいて事業を進めるということで、伏木富山港に帆船海王丸を係留しまして、人々の賑わい空間をつくっておるという事例でございます。
 下の写真は「人工干潟で潮干狩りを楽しむ人々が賑わう三河港」でございますが、奥の緑が竹島というところでございまして、その陸地からの間の部分に干潟を造成してございます。大変賑わう空間となってございます。
 平成12年、正確には港湾法の改正が平成11年度でございまして、それを受けて平成12年度に基本方針の変更ということでございますが、まず、港湾法の改正につきましては、目的の中に、港湾の整備等に当たって環境の保全に配慮することを明記したという改正でございます。
 港湾管理者に港湾計画なるものの策定が義務づけられているわけですが、その港湾計画の指針ともなります基本方針に何を書くのかということを港湾法に書いているわけでございますが、その何を書くべきかの中に、港湾の開発等に際し配慮すべき環境の保全に関する基本的な事項、これをきちんと書きなさいということをつけ加えまして、環境の保全に関する港湾行政の取り組み姿勢を明確にしたというところが、環境関係での大きな改正項目になっております。
 基本方針の変更につきましては、良好な港湾環境の維持、回復、創造、人と自然の触れ合い等について記述することになってございます。
 港湾整備事業におきます人工干潟とか覆砂、シーブルー事業の実施状況でございますが、全国的にはこういったところで実施中であり、実施済みであるわけでございまして、ちょっと見にくいですが、赤い丸が実施中の港湾でございます。黒丸は実施済みの港湾を示してございます。人工干潟につきましては18港27カ所ございます。そのうち造成済みが10港16カ所でございます。造成中が11港11カ所という状況になってございます。一方、シーブルーにつきましては14港20カ所、そのうち4港5カ所が実施済みになってございます。
 後程細川部長から詳しいご説明をいただくことになろうかと思いますが、国土技術総合研究所に干潟の実験施設がございます。
 干潟の造成に当たりましては、波、潮流等に関するいろいろな知見が必須になるわけでございますが、併せて生態学の知見も必要である。それで約20年前から干潟、藻場等の再生について、旧港湾技術研究所でございますが、研究を行ってきております。平成6年に世界最大規模の干潟の実験施設が完成してございます。これらの研究実績を活用しながら、
各地で干潟をはじめとする環境と共生する港づくりを進めておるということでございます。
 その一例でございますが、大阪南港におきます野鳥公園でございます。面積が約20ヘクタールございまして、干潟部がそのうち約13ヘクタール、昭和53年から58年にかけて整備しております。この野鳥公園の中を南と北と西と3つに分けておりますが、西と北の部分については外海との海水交換が行われるような構造にしておりまして、非常にたくさんの生物等が棲みついております。
 その整備効果でございますが、鳥類の飛来種で申しますと、これまで 252種を観測しておりまして、これは大阪府下の85%にも及んでいるという状況でございます。また、レッドデータブックに乗っております希少種に指定された種も、20種ほど飛来しておりまして、日本全体の鳥類の45%が確認されております。入場者数も、年間10万から15万人が来園しておるという状況でございます。
 三河湾の干潟再生事業でございますが、この赤く網がかかった部分が、悪いヘドロ等が溜まったエリアでございます。黄色の丸がシーブルー事業を実施しておる場所でございまして、ブルーの丸が沿岸整備事業、いわゆる漁港の中での整備ということでございます。湾口の黄色い部分が中山水道。開発保全航路で整備をしておりますが、この中山水道の浚渫土砂を有効活用しております。この航路整備事業は平成3年から進められておりますが、左下は、浚渫の状況を示した写真でございます。ここで浚渫した土砂を黄色、ブルーのところに置いておるわけでございますが、先程ご紹介しました蒲郡地区では、大変な賑わいを見せております。また、西浦地区、あるいは田原地区といったところでも非常に環境が改善されてきておるという状況でございます。
 なお、蒲郡の干潟につきましては、来訪者は年間50万人ほどございます。
 三河湾の整備効果でございますが、水質、底質の改善ということで、CODが削減され、底泥のDO消費量の削減がなされております。また、貧酸素水塊に対する改善としまして、下の図面にありますように、先端の潜堤のあたりで貧酸素水塊を遮断してしまうという効果も持っておりますし、底生生物の生物量、種類数の増大もかなり見られております。ちなみに、0.05平米当たりの個体数で言いますと、干潟部では9種 157個だったのが14から29種に増えまして、数も 307から 2,251個というように増えてございます。覆砂部におきましては3種16個でございましたものが、5から11種、95から 317個に増えておるという状況でございます。
 次は、港湾施設の整備の中での環境の取り組み事例でございます。上は北海道の地方港湾、浦河港でございますが、防波堤の外側の消波工のところに小段を設けまして、そこに胞子を付着しましたところ、写真の左上にありますようなコンブが生えてきておりまして、天然岩床には少ないミツイシコンブが、小段上ではかなり繁殖しております。
 下の図面は釧路港の防波堤でございますが、釧路港に入っていくための航路の浚渫が必要でございますが、その浚渫土砂を、通常であれば廃棄物埋立護岸みたいな形で囲って処分するわけでございますが、これは防波堤の内側に傾斜堤を設け、その防波堤との間の空間に浚渫土砂を入れ込みまして、その上に割石等を置いて藻場を造成するということでございまして、浚渫土の処分もできますし藻場も造成できるし一石二鳥ということで、これは今からやる事例でございます。
 事例4は、茨城県鹿島港の防波堤でございますが、根固ブロックに横穴をつくりまして、タコが生息しやすい環境をつくった事例でございます。平成10から12年度に実施しております。
 下の図面は、港内、港外の海水交換を促進する防波堤ということで、山口県の三田尻中関港でございますが、平成6年度から実施しております。縦型のスリットを設け、海水は通して波は防ぐという構造でございまして、魚もたくさん集まってきておるという事例でございます。
 こういった取り組みを行ってきておるわけでございますが、21世紀を見据えて、これからどういうふうに取り組んでいくかということでございますが、港湾におきましても沿岸域の環境保全、創造に貢献することが強く求められておるという認識に立ちまして、干潟や藻場の造成など、新たな生物生息環境を積極的に創造する取り組みを進めてまいりたいと考えております。
 「〜地球と共生する「環の国」づくりの推進〜」ということでございまして、1つは、自然と共生する社会の実現に向けた自然再生型公共事業の展開、2つ目に、閉鎖性水域における水環境の改善への取り組み。目標としましては、1つは、港湾空間の緑化率でございますが、平成12年度現在、約7%でありますものを、21世紀初頭には約1割まで持っていこうという考えでおります。この量は、お台場の海浜公園約 190個分の親水空間に相当します。また、干潟・藻場の回復面積でございますが、近年失われたものの約6%が平成12年度現在、回復されておるわけですが、これを21世紀初頭には約3割にまで高めていこうということでございます。
 また、平成14年度要求でもいろいろな予算要求をしてございまして、「自然と共生する社会の構築」という柱で干潟の創造、それから臨海部での大規模緑地の整備、さらに、都市の海岸で非常に老朽化した護岸等、なおざりになっておるところをきちんと砂浜に再生するとような取り組みといったところが、自然と共生する港湾づくりということでございます。
 さらに、東京湾蘇生プロジェクトでございますが、1つは、左側にありますように汚染メカニズムの解明ということで、先程ご紹介しましたゴミ油の回収や、水質監視の強化を行う。また、測量船による堆積物の調査を行ったり、灯浮標を利用したモニタリングを行っていこうということでございます。
 右側には、それを受けての総合的な水質改善策の実施ということで、下水におきます連携事業、それから我が方におきましては海域環境の改善といったような総合的な取り組みのもとに、赤潮になりやすい閉鎖性水域の環境改善を行っていこうというものでございます。
 以上、簡単でございますが、ご説明を終わらせていただきます。

●辻井委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、今のご説明についてのご意見、ご質問をいただきたいと思います。

●鷲谷委員 1つは藻場とか干潟の造成ということ、「環の国」づくりの会議で提案された自然再生型公共事業と関連づけてご説明があったような印象があるんですけれども、ちょっと「環の国」づくりの自然再生公共事業とは性格がちがうような気がしました、もしかしたら、そういうことを十分配慮していらっしゃるのに今、ご説明がなかっただけかもしれないんですけれども。といいますのは、あそこではNGOとか研究者、他の省庁との連携などで、失われた生態系の再生というような性格だったと思うんですけれども、ご説明の中では、何か浚渫した土砂の一つの処理の仕方として考えていらっしゃるというような印象がありました。また、全く生き物の名前がご説明の中になかったということも、ちょっと心配の種なんですけれども、生物多様性の保全に寄与するような形にできるものなのかどうかということが、やや心配になりました。

●辻井委員長 先生、ちょっとお待ちください。
 実は、この後に今のお話についてのご説明がありますので、それを先に伺ってからにした方がよろしいかと思います。ちょっとお待ちくださいますか。生物的なことはこれからご説明がございますから、その後でしていただいた方がいいと思います。
 それでは、恐れ入りますが、続けて港湾の生物環境に関する研究例についてお話しください。

●国土交通省国土技術政策研究所(細川) それでは、先に私どもの研究例をご紹介させていただきます。
 私、国土交通省国土技術政策総合研究所沿岸海洋研究部長の細川でございます。
 OHPでご説明させていただきたいと思います。
 私どもの組織は、この4月から国土交通省国土技術政策総合研究所となったわけですけれども、それ以前は、ずっと前は運輸省の港湾技術研究所という組織でありまして、そこで港湾に関連して、港湾に片足を置いたような格好での生物環境に関する研究をしてきておりましたので、その辺の私どもの研究のスタンスとか、研究成果の政策への役立たせ方みたいなところを研究所の立場からご紹介させていただければと思います。
 1枚めくっていただきますと、私が勝手に思っている、私どもがやらなければいけない研究の場の認識が書いてあります。
 1つ目は、港湾はどんな場所かということでございます。
 今、国土交通省港湾局の方からご説明がありましたけれども、ちょっと斜めから見てみますと−−研究所なもので、行政の言葉でうまく話せないんですけれども、ちょっと斜めから見てみますと、港湾というのは、船を使って海上の交通をして、その荷物や人を陸に揚げる場所ということで、海と陸の結節点に位置します。
 海と陸との結節点というのは、生態学的に言いますと、陸からだんだん水っぽくなって海に入っていく、だんだん環境が変わっていく、環境勾配の大きな、いわゆるエコトーンというような場所でもあって、その両者が一致するという意味では、場所の奪い合いの競合関係にあります。
 さらに言いますと、陸でいろいろな人間活動が起きて、そのしわ寄せ、負荷が最初に入ってくる場所が港湾で、水質的、あるいは底質的に非常に悪いものがポンポンと出てきやすいということがあります。
 3番目に、船をつけて荷卸しをしたり人が乗り降りしたりするために静かにしなければいけないということで、どうしても囲い込むようなことが多いんですが、そうすると、汚いものがちょっと入っただけでなかなか外に出ていかないということで、負荷に弱かったり、汚いものがそこに長いこと滞留するものですから、だんだん沈んでいって底質が悪くなったりというようなことが起きやすい。
 加えて、船をつけるというようなことで直立の壁が多い場所です。海辺で直立の多い場所というのは確かにいろいろあって、砂浜などと違って岩礁といったような海岸線はあるわけですけれども、自然の岩礁場というのは非常に波が荒くて、流動の激しいところなんですけれども、港湾では、直立の壁が多いところでありながら、静穏であるといった状況で、生物層としては、岩礁生態系でありそうで岩礁生態系とちょっと違うというような、非常に変わった生物層の場所になっています。
 さらに言いますと、日本の場合、海岸線は潮汐があって、潮で水位が上がったり下がったりする、こういう日変動があったり季節変動があったり、あるいは台風が来たりして大きな擾乱があったりというということで、自然の変動の大きな場所になっています。こういった意味で、そこに形成される生態系というのは、自然変動の大きい場に形成される生態系としての特色を持つことが多い。そのような場所に港湾というのはあると思っております。
 つまり、港湾というものと自然の理解という点では、こんなふうに場所を認識しておるといったところです。
 それでは、そういう場所での生物研究というのは、どういうスタンスでやるべきなのだろうか。これも私の思っておるところを勝手に書いたところですが、平成11年に港湾法が改正されたというご紹介がありましたけれども、それに先だって環境基本法が制定されたりということがありまして、環境に対する政策が大きく変化しております。
 海あるいは岸辺といったところで、政策の要請としてどんなことを知っていかなければいけないのかということで、私は3つほど大事だと思っています。1つは、エコの視点です。それまで水質あるいはCODといったものは非常に大事に思われていたんですけれども、そればかりではなくて、生物、生態系の生息といったことに配慮しなければいけない。
 2番目には「総合化・広域化」と書いてありますけれども、生物に配慮するということは、生物というのはその場所だけに棲んでいるわけではないということで、視野を少し広くとらなければいけないというようなことが出てきます。さらに、環境基本法の中で連携とか参加という話がありましたけれども、港湾というのはいろいろな人が総合的に使っているということもあって、連携といったところで話をすると、いろいろな人にいろいろなことを知らせる情報化、あるいは参加、連携といったようなことが大事でしょう。政策の要請として、行政の言葉で言うといろいろな言葉になるんでしょうけれども、研究のスタンスとしては、こんなところを踏まえなければいけないでしょうということです。
 エコ的な技術としては、保全・修復・創出といった技術としてはありそうです。ただし、手を加えてよい系、いけない系、こういったものについての判断も必要でしょう。先程、日本の海岸線は自然変動が大きくて、非常に回復力の強い生態系が見られるような場であるというご説明をしましたけれども、そうでない場も確かにあって、回復力が遅くて手をつけてはいけないシステムもきっとあるでしょう、そこの峻別は必要でしょう。
 その上で私どもは、港湾というところは物理的な環境に手を加えるというようなことがありますので、技術として物理的な環境を変えるのは得意、あるいは技術的な蓄積がありますので、岸辺の個別の生態系と物理環境の関係性、こういったものをよく調べて、どういう物理的な環境改変がいいか、悪いか、あるいはどういう物理的な環境改変に対してどんな物理的な環境保全、あるいは配慮をすると、生態系にとっていい方向にいくのかというようなことを考える必要があるでしょう。
 加えて、広がりを持った場で考えなければいけないので、個別の技術のシステム化とか場づくりの技術といったようなものへの統合化、こんなものが技術的な研究としては必要でしょう。さらに、平成11年の港湾法の改正で、内湾などを広く、個別の港湾を個別の港湾管理者が見ていくのでは、どうしても見落としてしまうところがあって、複数の港湾管理者にわたるようなところについては、国もいろいろなことを指導していく必要があるというようなヒントが出されていまして、それに見合うような、内湾の空間構造とか生態系の構造とか、あるいは循環構造とかといったものを見るような研究も必要と考えております。
 それでは、実際どんなことをどんなふうにやっているのか、以下、具体的に幾つかご説明しますが、物理環境と生態系との関係、あるいは場づくりと個別の生き物の、個体との関係、こういったものが私どもの研究の大きな興味のあるところであります。
 1枚めくっていただきますと、どんな順番でどんなふうにご説明しようか悩んだんですけれども、ちょっと南の方の生き物から北の方に順番に上がっていくのがいいのかなと思って、まず、マングローブのお話です。
 マングローブに非常に興味を持っている研究者がおりまして、オーストラリアやタイへ行って、なぜそんな地形がそこに成立するのかといったことを研究しております。マングローブ林が大事だというのは、これは皆さんご承知だと思いますのでここは飛ばして、物理環境と生き物との関係を、こんなふうに調べていますというマングローブの一例をご紹介します。
 「波の減衰機能」というページがあると思いますが、マングローブの中に入ってみますと、マングローブの入口と奥のところでは波の静けさが違う。マングローブが気根というんですか、根っこをたくさん生やしているということで、これが波を阻止する阻波の効果があって、マングローブの林の中を浅い方に波が遡上するにつれて波のエネルギーがだんだんなくなって、静かになってくる、こんな様子が観測されました。つまり、植物あるいは生態系、あるいはその場が持っている物理環境を変える機能があります。
 マングローブ林をよく見てみると、流入土砂も余りないのにマングローブ林がだんだんテリトリーを広げていくといったことがよく観察されますが、どうやってその地形が維持できるんだろうというところを見てきました。
 そうすると、マングローブ林の中には水路があって、水路の奥に林がワッと広がっているという構造がよくあります。そして水路が網の目にように広がっていまして、その水路を伝って泥が結構遡上する。流れが早いものですから、泥が沈まずに水路を伝って海の方からマングローブ林に押し寄せてくる。そして今度、下げ潮のときにそれがどんなふうに海に戻っていくかということでマングローブ林の中にシャーレなどを置いて沈降フラックスを調べてみて、上げ潮のときに持ち込まれた泥のどのぐらいがそこに溜まるのか観測すると、どうも泥をマングローブ内にためて、そこに地面、地形として残していくというような機能をマングローブが持っていることがわかりました。自分がマングローブ林の海との第一線のところに木を生やす、そこで阻土効果を持たせる、その効果で背後が土地になる、ますます外側にマングローブ林が発達するというような、非常に頭のいい植物であることがわかりました。
 そういった機能を維持して保全するようなことをどう考えていったらいいんだろうということで、人間のプレッシャーとの関係での保全の方策を、マングローブ林の中で維持されている、生態系の保持機能みたいなものを壊さないように保存することが必要だということを考えています。
 マングローブ林のご説明はそのぐらいにしておきますが、要するに、生き物は生き物の周りの物理環境を自分の都合のいいように変えるらしい、それから物理環境によって生き物の生息の様子も決まってくるらしい、そんなことを少し勉強しました。
 次は、サンゴ礁の例ですが、これは那覇の周辺、沖縄で特にいろいろサンゴが見られています。那覇港では、サンゴ礁で浅くなっているところをうまく利用して防波堤をつくり、港をつくっているわけですけれども、その防波堤の海側には少しサンゴ礁が残っています。それで、いきなり深くなっている肩のところに生き生きとしたサンゴがいっぱいいるといった状況があります。那覇の周辺で、海がきれいだということもあって、那覇港の人たちが、サンゴを防波堤の周りにふやそうという努力をしています。
 どんなことをしているかというと、生きているサンゴをちぎって、細かいものを接着剤などで波消しブロックにくっつけたりというようなことをして、どんなことが起きるだろうと見ています。波消しブロックをサンゴが覆って新しいサンゴ礁が形成されるといったことも見られてきているわけですけれども、このように、条件が合えばうまく着いてくれるようなものがありそうだと。では、どんなところが、例えば、小さなサンゴのかけらを接着剤でつけて、サンゴを増やすためには、どういう場所を選んだらいいのかどんなふうに増えるんだろうかというような技術検討をしているという例です。
 1枚めくっていただきますと「サンゴ礁の保全の留意点」ということで、サンゴはうまく増えるのに見合った場所を見つけて、そこで増えていきます。その増え方については、右下に、島と風当たりとの関係で例がありますように、周りの環境で増え方や生息の仕方を変えているとよくいわれているところですが、事港で言うと、こういう大きな環境の変化の他に陸からの大きなプレッシャーがかかって、すぐ近くでの人間の活動など、スケールの小さなところでのいろいろなプレッシャーによって随分変わるだろうというようなことに気がつきます。
 サンゴ礁の増え方に関して、第一線の防波堤になぜサンゴが着くんだろうかということで、サンゴ礁の増え方の中の有性生殖で、幼生が浮遊してどんなふうに通るのか那覇港を例にして計算してみたのが次のページです。
 「港湾におけるサンゴ礁の保全」ということで、左側の細い線は、放出された幼生がどんなふうに漂うかを計算した例なんですが、これでいくと、下手側、もうちょっと南側のサンゴ礁と那覇港の防波堤の外側のサンゴ礁というのは結びつきが強い。さらに、もうちょっと右側のサンゴ礁と結びつきが強いというようなことで、ちょうどいい場所に防波堤があって、その外側は幼生の通り道としても大事だということがわかってきました。
 それから、人間のプレッシャーがどれだけあるかが左下で、コンターラインが川の出口から書いてありますけれども、こんなコンターラインが書かれて、防波堤があっても、陸の影響はそれほど沖合まで及ばないような格好になっていて、ちょうど防波堤が陸から海への影響を防いでいるという格好になっています。こういう場所にサンゴを植えるということは、場所の選定としては適切だったのかというようなことがわかりました。
 次に、ヨシの研究もしていたんですが、時間も押していますのでこれは飛ばします。
 3枚ほど飛ばしていただきますと、「Tidal Flat in Port」−−港の中の干潟というのが出てきます。これは先程行政の方からご説明がありました、大阪南港の全体の写真です。クレーンがあって船があって、港に荷卸しがあるというのが真ん中あたりに見られると思いますけれども、その海側に池が3つほど見られると思います。池の外側に護岸があって、海につながっていますけれども、ここが大阪南港の野鳥園で、先程「20ヘクタールほどの公園です」といったのは、こういうところです。港の整備とともに埋立地の中に干潟をつくったという例です。
 こういった干潟造成のために、どんなふうに生態系が回復してくるのか、初期の介入はどうなのかといった研究をするための実験装置をつくって、平成7年1月ぐらいから本格運転しました。
 ページをめくっていただいたところに実験場の様子があります。20平米ほどの泥の面積を持った干潟で、屋内において自然海水を無処理のまま導入して、干満を1日2回起こすというようなことです。
 1枚めくっていただきますと、干潟の生態系の大きな概念図が書いてありまして、生産者と分解者と消費者といったようなところでの系のシステム図が書いてあります。
 目立つ消費者としては、二枚貝とか多毛類とか巻き貝とか甲殻類といったところですが、こういった数センチ体長の小動物までで、干潟の中の物質循環あるいは栄養の循環とい
うのはほぼ説明できて、水鳥がその上前をはねているといったようなところであります。
 先程の実験施設で、最初、生物が何もない状態で土を入れて、自然海水を導入して1日2回の干満を起こすというようなことで、ほぼ9カ月目の状況がその次のグラフになっています。
 ベネティック・コミュニティの構造ということで、横に生き物のサイズという軸をとって、分解者、生産者、それから消費者−−消費者は小さいのと大きいのと分けて書きました。そして縦軸に個体数密度を書いて、□の実験場の中で得られた値、●の東京湾の自然干潟で見られた値を見ると、似たような分布をしていて、系としては、半年、1年ぐらいでこの程度の系がつくられる。多分、生物は自然海水に乗って移入、定着して、そこに棲み着くというようなことだろう。そういう意味で言うと、回復力の非常に強い系が干潟の中にある。
 ただ、大きな個体、マクロベントスといいますか、マクロファウナについては、種がちょっと違う。自然とは運転の仕方等で違うので、ちょっと違うというようなことが次のページに書いてありまして、バンズではアサリとかホソウミニナといったものが見られるけれども、干潟の実験施設では、アサリは見られるんですが、チョクタツハッセイというんですか、余り浮遊期間がないホソウミニナは見られなくて、かわりにブドウガイが見られますというようなことで、干潟の生態系の回復力の早さは、浮遊期があってというような生物のライフサイクルにも大きく依っていることがわかりました。
 それでは、東京湾のどこに干潟をつくったら、どこの干潟から種が移送されるんでしょうみたいなところで、東京湾の環境の構造性、空間構造みたいなものを調べながら適地を選ぶなんていうこともきっと必要になるでしょうということもあって、東京湾の環境の勉強をしております。
 最後の3枚ほどをパラパラッと見ていただきたいと思いますが、東京湾というのは、大潮のときに潮が入ってきて、小潮のときに余り潮が入ってこないというのは大きな間違いで、非常に複雑な流れをしております。それぞれが流れのセルをつくって、それが入れ子状にといいますか、ヒエラルキー的に構造をつくっておりまして、これが雨が降ったとか台風が来たとかいったときに多く擾乱を起こします。こういったものを十分把握して、その上で東京湾の、例えば干潟造成みたいなところに役立てようということで、観測とモデル化を行っております。
 1つ皆さんに自慢したかったのは、最後から2枚目なんですけれども、HFレーダーという非接触型のレーダーで、海の表面を数キロ四方にわたって平面的に流速を測る手法を開発しまして、実際に東京湾で測っております。この前、台風15号が首都圏を直撃したときも、川の流れ出しとか、台風の風によって表層の流れが大きく変わる様子がうまく観測できていまして、お見せしたかったんですけれども、ご興味ある方は、ホームページにぶら下げてありますので見ていただければと思います。
 そのようなことも含めて、一番最後のページですけれども、いろいろな施策・検討ツールにお役に立てるような技術開発をしております。
 右側の絵は、東京湾全域の海岸線を全部砂浜にしたら、東京湾の水質がどれだけきれいになるだろうかというような遊びの計算ですけれども、そんなことをやっています。
 個々の生態系のシステムについては、「もしつくるんだったらこういうふうに」というようなことでの技術マニュアルを作っております。干潟のマニュアル、サンゴ礁のマニュアル、それから、ご紹介しませんでしたけれども、埋立地護岸に藻を生やすときにはこんなふうにしたらいいよというようなマニュアルを、ノウハウや技術を文章にして皆さんに見ていただくというようなことで、出版などもしております。
 長くなりましてすみません。以上です。

●辻井委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、改めて今までのところでのご質問、ご意見をいただきたいと思います。

●鷲谷委員 先程申し上げたことは、ご説明を聞いても同じ意見ですので、そのままコメントということにしたいと思います。
 もう一つ、コメントになるかと思いますけれども、恐らく港湾で行われるいろいろな工事などは、港湾の中だけではなくて外の生物多様性にも随分影響を与えているのではないかと思っております。例えば、突堤などの構造物は海の中の生物だけに影響を与えているのではなくて、河川から供給された砂の海岸線に沿った動きを阻害することで、浜辺を痩せさせてしまう部分があったり、本来なら砂丘が発達するところが痩せてしまったりという問題も起こっている場所がありまして、海浜の生物、海浜特有の植物の生息・生育条件が失われているようなこともあるんですね。そのような認識も持っていただけたらと思います。
 何か事業を行ったときに、そこの場所だけではなくて、それによって海の水の動きがどう変わって、そのことが周囲の環境を変えることを通じて生物多様性にどんな影響を及ぼすかというような意識ですね、そういうものも持っていただけたらと思います。

●瀬田委員 非常に単純なんですけれども、初めの方の説明でシーブルー事業というのがありましたね。あの図を見ていると、覆砂後のときに堤防が入っているんですが、この堤防は必要要件なんですか。

●国土交通省港湾局(岩瀧) 前面は砂止めの潜堤ですね。今、委員がおっしゃられたのは、人が立っているところの話ですか。

●瀬田委員 そうです。

●国土交通省港湾局(岩瀧) 必ずこういうものが必要だという話ではございません。

●瀬田委員 なくても砂は定着しますよね。

●国土交通省港湾局(岩瀧) はい。

●辻井委員長 必ずしも必要なものではないということですね。

●三浦委員 これに関連してもうちょっと詳しくお聞きしたいんですが、これは、汚泥が無酸素状態でそのままになるわけですね。だから、物は残っているんですね。浄化されるわけではないんですね。

●国土交通省港湾局(岩瀧) はい。内部生産が抑えられるということです。

●三浦委員 これでこの上が汚れると、またやるという格好になるんですか。

●国土交通省港湾局(岩瀧) 長い年月たてばそういうこともあるかもしれませんが、一応はきれいな砂を、今、積んでおります。

●三浦委員 それから、最後の方のページなんですが、お聞きしたいのは、結局、干潟、藻場の回復面積を、現在6%のものを約3割にしたいというのは、やはり基本的には公共事業ベースで、人工干潟とか人工藻場といったものを適切に配置していくというか、そういうスタンスですね。

●国土交通省港湾局(岩瀧) はい。

●三浦委員 ただ、人工干潟については細川部長のデータでも、ミクロな、これは動物相の構成によっても違うと思うんですけれども、大型種については必ずしも回復していない。デンシィティ(密度)で見ても、低いですね。組成によるんでしょうけれども、つまり、例えば渡り鳥が飛来するといったような、いわゆる自然の干潟に比べると、質的にはやはり同等ではあり得ないだろうと思うんですね。
 そういうものを「自然の再生」という格好で全国の港湾の中で位置づけていく、つまり、それを生物の多様性の回復だという格好で位置づけていくことが妥当かどうかという問題があるのではないかと思うんですが。

●国土交通省国土技術政策研究所(細川) 2つ議論があって、つくったものが自然と同等かどうかという議論と、行政的、施策的に全国展開するといった意味は何かという2つの議論だと思います。
 前者について、まずご説明したいと思います。
 鳥が飛来する有名な干潟というのを環境省の方で調べられております。この干潟のリストを見ますと、自然でない、人間の手が入った干潟、これもかなりリストの中に入ってきております。鳥が何を食べて、その食べる生物がどんなふうに回復・定着するのかというようなところの研究は、確かに十分な知見がないところでありますが、比較的回復力の早い、ここで言う日和見種的な種であっても、それが鳥の餌になり得る、鳥にとっては餌場として比較的うまく使われている場合も、どうもあるようだというところがあります。そういう意味で言うと、研究すべき課題はあるにしても、「自然と同等」といったところの基準をどこに考えていったらいいのかというような議論として一旦整理しておく、そういう議論の場は必要かと思います。
 第1点目のご指摘に対して、私はそんな意見を持っております。
 第2点については、行政的なところでどうかと言われても私はうまく答えられないんですが……

●三浦委員 つまり、渡り鳥というか、我々が多様性の象徴にしているようなものが環境を選択するときには、よりよい選択をしていくしかないわけですね。渡り鳥にとってはかつては選択肢があったわけですけれども、ほとんどもうそういうものがなくなった上で、選択し得るところはどこかと言ったときに、他に行くところがないから人工的干潟へ下りていく、そういうファクターが現状、多分かなり大きくあるんだろうと思うんですね。
 それで、質問に戻るんですが、それを今後の港湾の整備といいますか、水との接点のところの整備の進め方として、むしろ何もしないといいますか、積極的に手をつけないで回復を図る方がはるかにベターなものができるのではないかというお考えはないでしょうか。

●国土交通省国土技術政策研究所(細川) 手を加えないことで自然に生態系が回復するとか、干潟ができる、そういう場があればそれは大事にしていくべきというご指摘であれば、それは十分配慮すべき点だと私は思っています。
 それで、手を加えることが自然に干潟ができるということに比べていいか悪いかというところについては、また場所によっても違うだろうし、それから、規模とか早さとかいろいろな要素があって、なかなか一概に言いにくいのかなというのが1つあります。
 それと、都市近くの自然というのは原生林的なものとちょっと違うけれども、それでも里山的な管理の意味はありそうですねという議論、これが片方にあると思うんですが、港湾の立地する位置とか対象とする干潟の性格とか、こういったものについては十分考慮した上で、どうするかというのは個別に議論しないとなかなか……

●三浦委員 おっしゃるとおりだと思います。それで、このペーパーにも書いてありますように、保全とミティゲーションの間でさまざまな選択肢があると思うんですね。その中で港湾局がおとりになる選択が、ここで出てきた範囲では非常に右にあるというか、左にあるというか、かなりの手を加えているという方向が並び過ぎているのではないか。それほど手を加えなくても、ちょっとした人為的操作で自然に急速に回復し得るという選択肢が、私自身は非常にデリケートな生態系の中でかなりあるのではないかと。そういう選択肢がほとんど選択されないまま、砂をとったからそれを持っていくだとか、それから人工干潟で周りをコンクリートブロックで囲ってしまった上でといったような、余りにも重工な、そういうものをおとりになり過ぎているのではないか。選択肢をもうちょっと広げてお考えになるべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

●国土交通省港湾局(岩瀧) 先程ご紹介しました三河湾の例で言いますと、あの三河湾がいろいろ内部生産を起こしている状況を放っておいて、自然回復するのかと言うと、これはだんだん悪くなっていくのではないかと思うんですけれども、そういうところに内部生産を抑えるように手を加えるということは、必要ではないかと思います。

●辻井委員長 それでは、もう一つご説明がございますね。重冨さんはおいでいただいているんでしょうか。

●鷲谷委員 その前に、今のことに関して一言だけいいでしょうか。
 資料の13ページ、研究所における研究について書いてある部分に、干潟の造成には「海岸工学の知見が必須。併せて生態学の知見も必要」と生態学もおまけにつけていただいているんですけれども、干潟というシステムをつくっている中では生物もとても重要な役割を果たしていますし、そのシステムの研究をするのは、やはり生態学なんですね。「知見も必要」ということで、この研究所の中だけで生態学の研究者がどのぐらいいらっしゃるのかわからないんですけれども、そういう干潟の適切な保全あるいは造成ということに関して、必要な情報が全部得られるのかということについても、お話を伺いながら多少疑問を感じました。
 干潟をフィールドにしている生態学の研究者もいて、既存の知見も蓄積していますし、また、場所によって個別の問題があるので、調査が必要な場合にも、参加できる生態学の研究者はいるのではないかと思いますので、そういう研究上の連携等をはかっていただきたい。また場所は孤立しているわけではなくつながっておりますので、他のいろいろな主体、他省庁、他局との連携も考えていく必要があるのではないでしょうか。

●辻井委員長 ありがとうございました。
 それでは、まだ海岸の問題についてもご説明があるわけですから、ご質問、ご意見はまた後ほどいただければと思います。

●国土交通省総合政策局(重冨) 国土交通省総合政策局、海洋室から参りました重冨と申します。本日はお時間いただきましてありがとうございます。
 私はこれから、ちょっと今までとは違う話になるんですけれども、船舶の関係しておりますバラスト水の問題に対する取り組みについてご説明させていただきます。
 国土交通省海洋室は、国土交通省に係る海洋汚染の取りまとめをしている部局でございまして、特に船舶に関係するものが多いことから、この問題はIMOと申します国際海事機関、国連の専門機関なんですが、ロンドンに本部がございますが、そこで議論されている問題が多いことから、我が方でその対応などをやっております。
 今日はプロジェクターを使ってご説明するつもりでカラーの資料を用意してきたんですけれども、残念ながら機械の調子が悪いということで、ちょっと小さいんですけれども、お手元にお配りしております資料でご説明させていただきます。
 この分野、大変先生の中にはお詳しい方もいらっしゃると思いますし、歴史的には実はそんなに新しい問題ではないんですが、最近、急速に国際的な認識が高まってきておりますので、前半、状況に関してご説明したいと思います。
 目次といたしましては、本日は6項目に分けて順を追ってご説明したいと思っております。そもそもバラスト水とは何かということから、実際にこれに起因した問題というのは何なのか、具体的な被害例にはどんなものがあるのか、それから現在の我が国の取り組み方針、それから、後ほど中身をご説明しますが、有害性の生物の処理をしようということがありまして、その開発状況はどうか。それから今後のスケジュールという6項目でご説明したいと思います。
 資料の1番、バラスト水とは。
 なかなか聞き慣れない専門用語なんですけれども、一言で言いますと、船が空荷のときに、船をある程度沈めるために重しとして積載しております海水でございまして、カラーだとよくわかるんですが、イメージ図がございます。余り空で船が浮いてしまいますと、それこそ船尾にありますプロペラが海面上に出てしまって、推進が非常に悪くなるとか安定性が悪くなるということから、通常、船が航行する場合は何らかのバラスト水を積んでおります。主たる目的は、いずれにしても安定性を図るためです。
 我が方の行いました試算では、日々、国際海運(船舶)動いているわけですので、常日頃、まず、空で出発する港でそういうものを積んで、荷物を積み込むであろう港に入った際に出発地で積んだバラスト水を排出するわけです。そして完全に空にした状態で積みたい荷物を積んで、喫水がまた下がって国際航海に行くということから、世界中の港と港の間でバラスト水が移動していることになるんです。そういう現象が実際にありまして、我が方では、年間およそ 100億トンのバラスト水が移動していると試算しております。
 では、日本で見るとどういうことになっているかといいますと、基本的な産業構造、最近いろいろ変わりつつありますけれども、単純に言うと、自動車などの原料を輸入して製品を輸出するという考え方からは、重たいものを入れるわけですので、バラスト水を輸出する量の方が多くなるわけです。そのイメージ、大体の試算なんですけれども、年間
1,700 万トンが日本の港に持ち込まれて、逆に3億トンが持ち出される。ですから、例えば日本からオーストラリアに鉄鉱石を積みに行く船があったとしますと、行くときは基本的に空ですので、安定性を図るためにバラスト水を積んでいきます。そしてオーストラリアの港で捨てて、鉄鉱石を積んで戻って来るときはバラスト水を積む必要はない。そのように、行く・帰るという行為に伴ってバラスト水の移動が生じるわけです。
 あ、幸いプロジェクターが復活しましたので、こちらで説明したいと思います。
                (スクリーン)
 今のが、まずバラスト水とは何かというご説明でございます。
 2番目に入りまして、そういう現象があるんですけれども、問題となっていることといたしまして、出発地である港で積み込みましたバラスト水にその地にいる生物が混入いたしまして、それがバラスト水と一緒に世界中に拡散する。そうしますと、拡散した生物につきましては、本来の場所でないところで排出されるわけですから、そこで何らかの、例えば大繁殖などが起きて被害が出ているというようなことがあります。
 具体的に3つ例示してございますが、いわゆる移入種問題として生態系を破壊するとか、漁業活動など経済活動へ被害をもたらしているとか、病原菌などによって人の健康に被害を及ぼしているというようなことが、世界中で問題視されております。
 右側にありますのは一つのイメージとして、先程も申しましたけれども、鉄鉱石の運搬船の場合、1回でドラム缶 250本ぐらいのバラスト水が捨てられているのではないかと試算しております。
 生物多様性条約との関係におきましては、今年3月に開催されました第6回SBSTA会合、補助機関会合でも、IMOでやっている取り組みに関して報告がなされておりまし
て、双方の事務局で連絡を取り合って状況報告がされているというつながりがございます。
 これまでも申しましたが、具体的な被害例としてサンプルを3つほど例示してございます。
 一番左の[1]は、有毒プランクトンによる養殖貝の毒化。これはオーストラリアでいわれているウズベンモウソウというものです。それから、五大湖でムール貝が異常発生して、発電所の取水口が目詰まりを起こして止まってしまいました。3番目としては、クラゲによるアンチョビの漁獲減少が地中海で起こっているといったことで、世界的に問題になっております。
 そのようなことから、国際的な海運国家であります日本としてもこういう問題は無視できないということから、そもそもこういうものは地球規模での問題ですので、基本的な方針として4つ掲げてございます。
 まず、やはり船舶を介して移動しているわけですので、これまで船舶にかかわる油とか汚染物質の規制の枠組みは既にできているんですが、バラスト水問題の枠組みはまだできていませんので、国際条約による世界的な規制の実現に努めるというのが大方針でございます。それから、その分野の専門機関でありますIMOで検討する。それから、我が方からIMOに条約案を提案するということで、実際に生物を殺滅したり除去したりする処理を船に義務づけることにより拡散を防止するという狙いをもって、条約案を提案したいと思っております。それから、それに必要な具体的な処理技術の開発を促進する。この4つが基本方針でございます。
 要するに、何もしなければそういう拡散が続いてしまうわけですので、船の方で処理できないかという発想に立ちまして、現在、考えられております処理技術を例示させていただきました。
 5つほど表にしてございますが、単純に言いますと、一番簡単なのはバラスト水を交換してしまう。先程言いましたように、出発地の港で積んで到着地の港で排出するという基本的な仕組みがあるんですけれども、そうではなくて、いわゆる途中の公海上といいますか、洋上で、しかも水深が深くて余り影響が出ないと思われるところで交換する。これは今の船の設備でもできる話なんですけれども、やはり走っている途中ということで安全上の問題などがあって、なかなか難しい点はあります。ただ、現在も国のボランタリーな要請に基づいて、実際に実施している船舶もございます。
 それが一番単純な話なんですけれども、それから下は何らかの具体的な処理を加えるというイメージで、破壊処理。特に国土交通省の所管している団体で、今いろいろ開発もしているんですけれども、特殊なパイプの中に発生する水の剪断力みたいなもので生物を殺滅できないかということで、かなりいいものができるのではないかというところで今やっております。
 それから、世界的にもそれぞれいろいろなことをやられているんですけれども、紫外線ですとかオゾンですとか熱処理など、かなりこの分野でやられておりますが、経済性なども含めて難しい点が多々あります。
 以上のような現状の問題と取り組み状況なんですけれども、今後のスケジュールといたしまして、特にIMOでのスケジュールが中心になりますけれども、来月−−11月にIMOに対して我が方から条約案を提出する予定で、今、関係省庁を含めて調整しております。これは一つのドラフトとしてIMOに出す予定なんですけれども、来年3月にIMOの定期会合であります海洋環境保護委員会というものがありまして、47回目の開催なんですけれども、そこで条約案の審議を始めて、さらに来年の秋にもう一度あって、今のIMOの予定では、平成15年−−2003年に外交会議を開いて条約案を採択したいなということで、IMO事務局も考えております。
 条約案の主な内容を1つ例示してございますけれども、先ほどから申しております処理を義務づけるという話と、実際に船舶を持っている人に、そういった適正な処理とか管理体制などを義務づける。それから、さらにそれを管理するところである国としての責務を明記するという中身になっております。
 非常に簡単ですけれども、この分野に関する取り組みについてご説明いたしました。

●辻井委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、今のご説明について、ご質問、ご意見をどうぞ。
 一種のというんでしょうか、まさに移入種とか、あるいは、これは帰化ということには
ならないのかもしれませんけれども、ボリュームが大きいですから大きな問題ですね。
 どなたか、いかがでしょうか。

●三澤委員 それはよくわかりましたけれども、船の底に着く貝類ですね。これの除去とか錆止めで、いろいろな薬剤とか塗料を使っていると思うんですが、その関係はよろしいんですか。その辺はどうでしょうか。

●国土交通省総合政策局(重冨) 実は全く別の枠組みが、今月なんですけれども条約ができました。有害防汚塗料という塗料を塗って、それを3年に1回とか塗りかえたりしているんですけれども、その中に含まれる有害性の疑いがあるものを規制しようという枠組みが今月、IMOの方で採択されました。それは今後、各国批准に向けて動いていくと思います。

●辻井委員長 他にいかがでしょうか。
 バラスト水によってそこに帰化というか、もうずっと定着してしまうようなケースもたくさんあるんですか。

●国土交通省総合政策局(重冨) 運ばれたものが、ですか。

●辻井委員長 ええ。

●国土交通省総合政策局(重冨) それは、実はもともとあるものと、運ばれてきたものと、まず区別が難しいということもありますし、その後どうなっているかというすべてのフォローアップは、正直言って現状、世界的にやられていない状況なんですけれども、逆に、先程お示ししたような顕著な被害例がクローズアップされていまして、それは何が原因かというと、それこそDNAから調べて、もとはどこなんだということから問題になっている話でございます。

●鷲谷委員 今、調査が余りないとおっしゃっていましたけれども、生物多様性という観点からは、かなり国際的にも認識されていまして、例えばバルト海とか黒海とか、そういうところの生物層を構成している種が、もう北アメリカの五大湖あたりでたくさん生息するようになっているという事実があります。
 恐らく、ここで挙げられている例は、経済的な被害として表れたものだと思います。生物多様性とか生態系ということでは、もっと深刻な問題がたくさん生じていると思うんですけれども、我が国では、やや研究が遅れている−−もちろん全然ないわけではないかもしれませんけれども、遅れているような気がします。

●辻井委員長 他にございませんか。
 それでは、どうもありがとうございました。
 先程も鷲谷先生を初めとしてご質問等ございましたので、ちょっと前からのご説明を含めて、全体を通じてご質問がございましたらどうぞ。

●岩槻委員 細川部長、先程の議論に返らせていただきたいんですけれども、よろしいですか。
 実は河川のときにも同じようなことを申し上げたんですけれども、研究分野の方がいらっしゃるともう少し話が通じやすいかと思いますので、細川部長を名指しさせていただきました。
 先程の議論にありました、いずれにしても回復するためには手を加えないといけないということは、多分、問題はそこまで深刻になっているということだと思います。その手の加え方が、本当なら研究部門からプロポーズされなければいけないはずなんですけれども、これは私も研究者の端くれとして非常によく知っていることなんですけれども、今のサイエンスの実力は、そういう完全なプランニングができないということなんですよね。
 先程研究所の事例を挙げていただきましたけれども、それも、ある現象のある側面をごくわずか明らかにしたということでしかないわけで、総合的に「こういうふうにやれば、こういう結果が導かれます」という計画というのは、実は立てられないんですね。そのことをはっきりと理解してから話を始めないといけないと思います。
 そうだとしますと、目指した工程によって、例えば、非常にいい面ばかりをご説明いただいたので優等生的なお話になっていると思うんですけれども、鳥がたくさん返ってきた、そういう事例はたくさんあると思います。しかし、例えば、河川局も30年前ぐらいの状態を想定して自然回復の事業で行うとおっしゃいましたけれども、その30年ぐらいの前の状態に鳥が戻ってきたとしても、そこにある生物多様性の生態系は、想定といいますか、想像している30年くらい前のものとは多分全く違ったものになっているんですよね。
 ですから、鳥は戻る、それから何かを戻させることはできるかもしれませんけれども、元通りの生態系を回復させるようなプランニングというのはほとんど不可能に近いということを、まずしっかり認識しないといけないと思うんですよね。
 もしそれが理解されたとしますと、国土交通省の建設省で非常に重要な責務は、そこで何が起こっているのかを明らかにすることではないかと思うんですよね。それが想定されたとおりになっているなら非常にいいですけれども、想定されたことにプラスして何が起こっているか。
 例えばバラスト水だって、初めは全然そんなこと想像していなかったんですけれども、バラスト水を流してみると非常に変な結果が出てきたというのが今の例なんですよね。しかも、それも幾つもの事例がありますけれども、本当に悪者がバラスト水であるのかどうか 100%確定はされていないわけですよね。いろいろな事例から見て「多分そうだ」という推定をされているだけなんですよね。だけれども、推定をした以上それを防除するのは非常に重要なことですから、だから国際的にそういう提案をされるのは今、緊急の問題だと思うんですけれども、それにしてもですよ、例えば入ってきたかもしれない生物を全部殺滅してからバラスト水を流すことになれば、多分、薬剤の投下ということになると思うんですけれども、そうしたら、その薬剤が後でどういう悪いことをするかというトレースがどうしても必要になるわけですよね。こういうところでの研究機関の非常に重要なことというのは、それだと思うんですよね。
 さまざまなことで、非常に悪い結果が出てきたから回復を図らなければならないようになってきたというのは、さまざまな行為は何も悪いことをしようと思ってやったわけではなくて、非常に重要だと思ってやってきた行為が、その結果として悪いものをもたらしてきたという歴史的な事実があるわけですよね。その意味で、人手を加えるときには、人手を加えたことに責任を持ったモニタリングがどうしても必要なので、そのところを研究所のテーマとして重点的に取り上げていただくことができないのかをお伺いします。

●国土交通省国土技術政策研究所(細川) ありがとうございます。幾つか、「そのとおりだ」と思う部分と「私の感じとちょっと違うな」と思う部分とがあります。
 基本的には、わからないことが多いので、手を加えるなら幅広く長期にわたってモニタリングをし、その様子を見ながら、それに応じて手の加え方を変えていくというような、いわゆるアダプティブ・マネジメントみたいなことが必要だろういう基本的なところ、それから、そのために研究所はしっかりモニタリングすべきであろうというところ、ここは私もそのとおりだと思っております。
 ちょっと先生と、多分同じなのかもしれないですけれども、ちょっと感じ方が違うなと思った点が2つほどあって、完全に元通りに戻すというようなことを、人が手を加えることでそこにあった自然と同じものをつくりますというようなこと、これは昔と今と境界条件というんですかね、社会の条件も違うし、それから、そこの場所に入ってくる汚濁の負荷もきっと違うだろうしというようなことを考えると、あるいは周りの状況を考えたりするとかなり違うので、例えば、明治時代にそこにあったのと同じものをつくりなさいとか、あるいは昔、佃島があったあたりはヨシ原で、それと同じヨシ原を東京湾の中につくりなさいとかいうふうなところは、やはり無理なのではないですかね。

●岩槻委員 いや、そのことに関してだけ言いますと、それは私も午後の早い時間に申し上げたんですけれども、「回復」という言葉を盛んに使われますからね。だから「回復」ではなくて新しい環境をつくっているんだ、元へ戻すなんていうことは不可能だというのが私の申し上げていることの前提なんです。

●国土交通省国土技術政策研究所(細川) 言葉遣いに気をつけなさいというご指摘であれば、不注意であれば、それは直さなければいけないと思っていますが、だから、手を加えるといったときに「明治時代の干潟と同じものをつくります」というような言い方は、私はできないと思います。それは、社会的な条件も違うし自然の条件も違うという中では無理だろうというのが1つ。
 それから、もう一つですが、鳥の戻ってくる時間が30年程度というような……、先生の方である種の時間スケールを、「30」という言葉が正しいかどうかはともかくとして、そのぐらいということで時間スケールの目途をおっしゃられたけれども、先程のご指摘もあったように、ほかに餌場がなければ仕方なくそこに来るというようなこともある。それと、干潟の底生生物みたいにライフスパンが短くて、いわゆるR戦略というんですか、浮遊期があるような生き物が戻る時間というのは、私も最初はもっと時間がかかるかなと思っていたんですが、ある日和見種だけでできている発達途上の生態系、それに意味があるのかどうかはまた別にするんですけれども、そういったものは、干潟の場合はもうちょっと、30年というようなタイムスケールとは違ったタイムスケールではないかと思うんですね。

●岩槻委員 それもちょっと私の言うことを誤解されているようですけれども、実はさきの河川局のお話のときに、回復させるときに目標とする一つの事例として、30年ごろの自然に戻した方がいいのではないかとおっしゃったということを申し上げたんです。30年で回復するということを申し上げたわけではないので、それもちょっと言い方が下手だったと思うんですけれども。

●国土交通省国土技術政策研究所(細川) すみません、私の方が誤解していました。
 そうであれば、先生のご指摘のように、しっかりとモニタリングして何が起きているのかよく見ながら、その上で注意深く手を加えるのが筋でしょうというところでは、そのとおりだと思います。

●和里田委員 ちょっと教えていただきたいんですけれども、干潟・藻場の回復面積が書いてあるんですが、これは絶対的な必要性、目的が何かあって、そして回復するということなのか、それとも、港湾整備における宿命として航路浚渫をしなければならないけれども、出てくる土砂は従来のような埋め立てができないから、その再利用の方法として干潟や藻場という形でつくっていくというのであれば、「回復」と言わないで、むしろ積極的に「創造」という言葉をお使いになった方がいいのではないかと私は思うんですが。

●国土交通省港湾局(岩瀧) 別に浚渫土砂の量に拘束されて3割という目標をつくっているわけではございません。先生おっしゃるとおり「創造」という思いも強く持っておりまして、積極的にそういうものをつくっていこうという趣旨でございます。

●和里田委員 そうすると、「回復」という言葉を使うと、かえって誤解を招くのではないかと思いますね。

●森戸委員 ちょっと教えていただきたいんですけれども、東京湾の環境の話が最後の方に出ていまして、いろいろデータがあるらしいんですけれども、例えば、東京湾の海水の温度上昇とか、そのようなデータなり研究はされているのかどうかお聞きしたいんです。
 というのは、多分、東京湾は非常に小さいというか、相対的に小さな湾の中に発電所とかいろいろな産業活動があって、排水も大分出ているし、こういうものが海水の温度にも多分、影響を与えているのではないのかなと。そうすると、当然それは生物環境にも影響を与えているだろうけれども、この辺に関しては、そちらの研究所ではどのように考えておられるんですか。

●国土交通省国土技術政策研究所(細川) 東京湾の海水の長期のトレンドといったような解析、私自身も、それから私どもの研究所も特に気をつけてしていないので、今のご質問に対してどうこうというお答えは、直ちにはできません。
 ここから先は、ちょっと簡単なオーバーエスティメートしなければいけないと思うんですけれども、東京湾が引き受けている熱量というのは誰が一番担っているのか。外海から来る熱量がありますよね。それから川から来る熱量があるし、太陽の日射で表面を温めるという熱量もあって、そういった自然の作用と比べて、人工的な発電所からの温排水のカロリーがどの程度のものなのかというのは、ざっと比較して見るのは価値がありそうな気がします。
 それでかなりの割合を人工廃熱が占めているということであれば、これはちゃんとモニタリングすべき課題になりそうな気がします。

●篠原委員 よくわからなかったので岩瀧さんにお伺いしたいんですけれども、シーブルー事業というのが出ていて、これは砂を被せますよという話なんですよね。それで干潟などの環境を創造しますと書いてあるんですが、人工干潟をつくること以外に何かやっておられるのか。砂をかける事業と目的との関係がよくわからないんです。
 つまり、砂をかけることによって人工干潟もつくるし、他のこともやっているのか、人工干潟をつくるのに、砂をかけるだけではなくて他のやり方もあるのか。その辺の目的と手段との関係がよくわからなかったので、そこをちょっと説明してください。
 一番わかりやすく言うと、人工干潟は砂をかけるやり方だけでつくっているんですか。他のやり方はないんですか。その辺の、全体の目的と手段のところがよくわからなかったんですが。

●国土交通省国土技術政策研究所(細川) 技術に関するところについて、ご説明させていただきます。
 人工干潟について幾つかの写真をご紹介いたしましたが、埋立地の中に人工の干潟をつくる場合もあって、これは掘って池をつくるんですね。

●篠原委員 それは大阪南港ですか。

●国土交通省国土技術政策研究所(細川) 大阪南港です。

●篠原委員 そういう説明をしていただかないと、何か全然わからない。

●国土交通省国土技術政策研究所(細川) すみません。
 掘って池をつくって、そこで干潟にふさわしい泥を見繕って、大阪南港の場合は大阪湾の海の底の泥を持ってきて敷いて、それで干潟をつくっています。
 その他の干潟の事例でいきますと、他の港では、周辺の干潟と粒径がよく似た泥を海の底で見つけて、それを播くという例が多いです。
 砂浜的なもので、少し粗くてもいいからつくりたいといった時には、これは横浜の例ですけれども、山の砂を持ってきて海の中に数年置いておいて、馴染ませて、それで使っているという例もあります。
 干潟のつくり方といった点では、材料のとり方というのは、そのようにさまざまあります。そこの場で、波当たりとか何とかいろいろなことで粒径が決まってくるので、ふさわしい粒径、ふさわしい土質を選んで、それに見合った生き物が棲みついてくれるということだと思います。
 それからシーブルー事業で使う砂は、下から染み出す栄養塩類などをとにかく抑えて栄養の負荷を減らす、それから、下から腐った泥が吸収する酸素、これを減らして水質の悪化をともかく減らすといったことによって上水の中での植物の増殖、赤潮の発生などが減れば、その植物のブルームによってつくられる有機物がまたそこに溜まるという悪い循環をとにかく1回断ち切る方向になるので、そういう意味で砂を播きましょうという事業です。結果として、腐った泥にしか棲まないような多毛類の、ある限られた種しかいなかった場が、砂に見合ったような生き物が棲むようになりましたというような目的の事業だと思っています。

●篠原委員 わかりました。
 そうすると、全国で埋め立てて割と遊んでいる土地とか、あるいは工場で実際にはそんなに要らない土地とかいうのは随分あると思うので、チャンスさえあれば、そういうものも浚渫型で干潟化できるということですね。そう理解してよろしいわけですね。
 それからもう一つは、今、干潟の話ばかり出ましたけれども、ほかにも人工海浜の造成もやっておられるんでしょう。それが出ていないので、何か干潟ばかりやっているように受け取られるのはおかしいのではないかと思って聞いていたんですけれども。

●国土交通省港湾局(岩瀧) 後ほど海岸の方がありまして、そちらが専ら主流になっておりますので、そちらで説明があると思います。

●篠原委員 最後に一言だけ要望したいんですけれども、後ろの方に、干潟を3割回復したいというのと一緒に、港湾緑地を10%に持っていきたいと書いてございますけれども、一時期、港湾で随分緑地をつくっておられて、私も興味があったり、仕事の関係で随分回りましたけれども、残念ながら、いいものが余りない。これは私の個人的な評価ですけれども、港に緑地的なものがあって実にいいというのは、山下公園を超えるものができていないのではないかと思うんですね。あれは大正の末にできた。残念ながら、港湾ではなくて都市公園なんですね。
 ですから、今は生物多様性の問題で緑を増やそうとかいろいろとなっていますけれども、公園というものは、それだけの機能ではなくて、都市ともっと結びついているものですから、それも総合的に考えてやっていただきたいと思います。

●国土交通省港湾局(岩瀧) 先生のご指導、よろしくお願いしたいと思います。

●辻井委員長 それでは、今日もまた大分時間が押してしまいましたので、先へ進ませていただきたいと思います。
 次は海岸についてのご説明ですが、海岸については複数の省庁が連携してやっていらっしゃるわけで、今日は港湾局が代表して説明してくださることになっています。どうぞよろしくお願いいたします。

●国土交通省港湾局(森下) 今、資料をお配りしますけれども、海岸は、海岸省庁といいまして、2省の4つの部局で日本全国の海岸を分割して担当してございます。今日の資料は「自然豊かな海岸づくりの推進」ということで、今年は港湾局が海岸省庁の幹事をやっていますので、港湾局が代表して、私、港湾局の海岸・防災課長ですが、ご説明させていただきます。
 開いていただきますと、全体の構成の目次が書いてございます。日本の海岸の概況から今後の生物多様性の確保に向けた取り組み方針まで、簡単にご説明させていただきます。
 まず、1ページを開いていただきますと、日本の海岸の現況ということで、中程にカラーの表がございます。日本の海岸線は3万 5,000キロということで、面積の割に非常に長い海岸線を持っています。地球の赤道の延長が4万キロですので、それよりわずか5,000 キロ短いぐらいの海岸線です。
 その中で、保全すべき海岸線というのを決めています。要保全海岸線延長、これが1万6千キロ、約半分ございます。その中で、保全区域というものを指定して海岸保全の整備を行っております。それが1万4千キロ。まだ未指定で整備も行っていないのが2千キロぐらいある、こういう状況でございます。
 1ページの下では、日本の臨海部への人口、経済活動の集中動向をグラフにしてございます。市町村別に見ますと、海岸線を有する市町村は約3分の1の面積を国内で持ってございます。人口は、日本の人口の約半分がこの市町村に集中しています。少し特徴的なのは、商業販売額が圧倒的に臨海部市町村で多いという状況でございます。
 2ページは、海岸における諸活動の例ということで写真をつけてございます。漁業に利用される海岸、あるいは環境面で生物の育成等にも役に立っている海岸、また、港湾の例ですが、生産活動あるいは流通活動に使われている海岸線、一番下は、文化とかイベントといったようなことで祭りにも海岸が使われている、こういう状況でございます。
 3ページには、戦後これまで我が国で行われてきました海岸事業の変遷をざっとまとめてございます。
 戦後、大きな台風が幾つも上陸しまして、そのときの海岸線の防護の水準が低かったこともございまして、戦後、我が国は非常に大きな災害を立て続けに受けてございます。そうした中で、昭和31年に海岸の防護を目的とした海岸法が制定されました。これに基づいて海岸事業が発足したわけでございます。
 この昭和31年までの海岸事業というのは、一番上に書いてありますように、それぞれ個人がやっていたり、干拓事業でやっていたり埋立事業でやっていたり、単独事業、あるいは災害復旧といったように、それぞれの分野が海岸のいろいろな整備をしていたというのが実情でございます。昭和31年の海岸法の制定以降、海岸事業というものが動きまして、その後、防災を中心に整備を進めてきたという状況です。
 ただ、昭和31年の直後、昭和34年に伊勢湾台風により 5,000人を超える方が亡くなるという大きな災害を受けまして、この昭和34年以降、三大湾などで高潮対策を一気に整備してきたという状況です。
 この昭和30年代、40年代を通じて防災対策をやってきたというのが海岸事業の状況でございます。
 現在は、平成8年度を初年度とします第6次の海岸事業7カ年計画にそって、平成14年度−−来年度までの長期計画に則って事業をやっている、こういう状況でございます。
 その中で、実は最近の環境面とか利用面に関する要請を受けて、平成11年、海岸法を一部改正してございます。これは海岸法制定以来の大改正でございまして、後程その概要をご説明いたします。
 さらに平成12年、新しい海岸法の方針を受けた形で海岸保全基本方針を策定し、海岸の整備、検討に入っているところでございます。
 4ページは生物多様性国家戦略策定後の取り組みということで、代表的なものを3つほど掲げてございます。
 まず第1が、海岸法の大改正でございます。平成11年5月に、これまで防護一辺倒であった海岸法を、防護プラス利用あるいは環境にも配慮した海岸の整備というものに大きく衣替えをしました。
 5ページを見ていただきますと、こういった環境利用という面を法の目的に加えまして、海岸の管理面の強化をするということで、新しい海岸法には、個々の海岸の保全上、支障となる行為の禁止というものが加わってございます。具体的には、海岸を汚したり、海岸保全施設を壊したり、油の漂着とか、あるいは保全施設の損傷、それから自動車の乗り入れの禁止。これはウミガメ等の卵への配慮といったものを入れてございます。また、船舶の放置等の禁止というのは、廃船等が海岸線に不法に放置されるというような事態に対応するための管理の法制化をしてございます。
 それから、5ページの中程に書いてございますが、これまで海岸保全区域以外の海岸の中で、ほとんど海岸法の対象ではございませんでしたが、一般公共海岸区域というものを新しい海岸法の中に概念として入れまして、管理する制度をつくってございます。具体的には、一番下の表に書いておりますように、一般公共海岸区域というのはこれまで国有財産法で一部、管理をしていたという実態でございますが、この海岸についても土砂の採取、あるいは不法占用、こういったものに対する取り扱い、あるいは海岸の汚損といったような行為、あるいは放置艇等の対策について、海岸管理者が管理する資格を持つという法改正をしてございます。
 その他というのがまだ残ってございます。 7,000キロ。これは実は海岸法の対象外の、鉄道の護岸であるとか道路の護岸であるとか、あるいは港湾施設の海岸、いわゆる埋立護岸であるとか、そういったものがまだ 7,000キロぐらい海岸法の対象外でございます。
 6ページには、海岸保全基本方針の策定の概念をまとめてございます。
 新しい海岸法の中で、防護、環境利用といった調和のとれた海岸を整備し、管理していくという考え方の中で、国が海岸保全の基本方針を定めて、都道府県知事がそれに沿った形でそれぞれの海岸の海岸保全基本計画をつくるという制度になってございます。
 下の表は、改正前と改正後という形になっていますが、これまでも都道府県知事が海岸保全施設の整備基本計画、これは主として工事の計画ですが、こういうものをつくって海岸管理者が事業を実施していく、こういう形で進んでおったわけでございますが、昨今の情勢の中で、この改正後に見られますように、国が海岸保全基本方針というものを決定しました。これは平成12年5月に決定して、現在、各都道府県知事がそれぞれの海岸の海岸保全基本計画を策定する作業に入っている、こういう状況でございます。
 ただ、特徴的なのは、この海岸保全基本計画に海岸管理者の案を入れていくときに関係住民の意見を聞く、公聴会等を開いて関係住民の意見を反映していくという制度を入れました。そのほかに学識経験者、それから関係市町村、それから、都道府県知事とは違う海岸管理者もございますので、各海岸管理者の意見を聞いて計画を決定していく、こういう制度になってございます。
 今年度から、もう複数の都道府県で検討が始まっておりまして、平成13年度中にこの計画を決定していく都道府県も複数ございます。計画はまだでございますが、今、計画策定中という状況でございます。
 7ページは取り組みの2番目でございまして、防護・環境・利用の調和のとれた海岸整備の中で、1つ代表的なものとして、面的防護方式というものがございます。
 概念図の一番上を見ていただきますと、これが従来の海岸の防護方式、線的防護と我々、ちょっとわかりにくく言っておりますが、直立堤で背後の住民、民家を守る。前面に消波を置いて高潮等から村や町を守る。このこれまでの直立堤を「かみそり護岸」と言っておりまして、かみそり状の非常に薄っぺらい護岸で守っていた。
 こういったところが被災を受ける例が中程に書いてございます。大きな高潮等のときには前面の砂浜が大きく侵食されます。それと同時に越波で背後の住宅が水没する、こういう災害が出てございます。これを中段のように、沖合に潜堤という構造物をつくりまして、沖合から侵入する波を小さく砕いて砂浜の侵食を防護する。同時に養浜等を行って広大な砂浜をつくって、それから、これまでのかみそり護岸を緩傾斜堤というバリアフリーの形の整備をしている。これら全体を併せまして面的防護方式ということで、災害に対して粘り強い海岸の防護工法ということで進めてございます。
 下に事例が書いてございますが、これは香川県の津田港海岸の道路でございます。これは整備前、整備後、同じ場所でございます。写真に写っている民家、実はこの松の木の背後に同じ民家があるわけでございますけれども、前面の離岸堤、潜堤等によって、これだけの砂浜と海岸、護岸等を整備しているという例でございます。
 8ページは対策その3でございますが、多様な生物の生息・生育の場となる砂浜の保全ということで、砂浜の回復、保全を積極的に図っていこうと考えています。
 これは大分前に海岸関係で調べた調査の中から、日本の国土のうち、ここに書いてございますように、年間 160ヘクタールもの砂浜が毎年なくなっていく。30年間たつと、ちょうど東京都のうち、三宅島1島がなくなるぐらい(約 5,000ヘクタールあるわけですが)これぐらいの侵食が日本の海岸線で進行している。こういったことの対策として、海岸線の保全、あるいは砂浜の回復を図っていこうというのが海岸事業の一つの方向でございます。
 下の方に「侵食対策の取り組み」と書いてございますが、養浜工、あるいは潜堤、さらに潜堤より幅が広い人工リーフ、こういったような構造物の設置で砂浜の侵食を防ぐ。さらには突堤あるいはヘッドランドといったような工法、岬効果を期待するような工法を使って砂浜を維持していく、こういう努力をしています。その他、後で出てきますが渚の創生ということで、サンドバイパス事業等も新しい事業制度として位置づけて、進めておるところでございます。
 9ページからは、海岸における事業制度の幾つかをご紹介してございます。
 1つは、平成8年度からエコ・コースト事業というのを海岸省庁共同で進めております。ここに書いてありますように、ウミガメとかカブトガニといった海生生物、あるいは野鳥といった生物に配慮した海岸整備、あるいは海岸の自然景観そのものも保全していくような事業をプロジェクト事業として海岸4省庁で認定して進めている、こういう状況でございます。今年、4省庁で46海岸ぐらい、全国でこの事業で整備を進めている状況でございます。
 10ページは、先程出ました渚の創生事業。平成9年度から、これも海岸4省庁共同で動かしている事業でございます。実は、海岸線の砂がどんどんなくなっていく海岸の近くの港湾の浚渫土、あるいは漁港の浚渫土、あるいは河川の土砂、最近はダムにたまっている土砂でも、有効であればそういった土砂を活用して、サンドリサイクルとも言っておりますけれども、海岸線を侵食から守っていこうという事業でございます。
 下の写真は、天の橋立のサンドバイパス事業の状況でございます。海域の砂の移動等を調べまして土砂の投入場所を決めて、港湾の浚渫土砂、河川の流下土砂をそこに海域投入して、天の橋立を維持していく事業を実施しておるところでございます。
 11ページは、「白砂青松の創出事業」と言っておりますが、これは平成12年度から行っております事業でございまして、林野庁と連携をとる事業でございます。白砂青松の海岸線が失われつつあるというものに対しまして、林野庁の治山事業と海岸事業、これは潜堤等の砂浜を維持する事業を組み合わせて実施するということで進めてございます。これも海岸省庁共同で、平成12年度からでございますが、全国でもう25海岸ぐらいを整備しておるところでございます。
 12ページは平成14年度概算要求の概要ということで、来年度の海岸の要求の概要をお示ししてございます。
 防護、環境、利用の調和のとれた海岸整備をするという予算要求をしておりまして、平成14年度の海岸事業予算、国費で 982億円、対前年度比0.98、こういう要求をしています。非常に厳しい中で、非常に少ない予算でございますけれども。
 ただ、今の政府の基本方針にのっとって重点7分野というのが示されておりますが、こういった分野への重点投資も含めて要求しています。
 その重点分野のうち、環境面に関するものが2つございます。1つは、循環型経済社会の構築に向けた対応については重点投資しようということで、先程ご説明しましたエコ・コーストであるとか白砂青松、サンドリサイクル事業、こういったプロジェクト事業を中心に重点投資をしていこうという形で進めてございます。また「人材育成、教育」というような項目もございまして、その中では、厚生労働省さんと共同で健康海岸事業といったプロジェクト事業を組んでおります。こういったものとか、文部科学省と連携した、いわゆる「生き生き・海の子・浜づくり」とかいうような名を打って青少年の育成等、野外教育等に活用される海岸整備をしていこうという形で、事業を重点的にやろうということで進めているところでございます。
 あと新規要求で、これまで平成8年から進めておりますエコ・コースト事業の制度拡充をしようということで、これはソフト対策でございますが、地域の住民参加型の海岸事業をしようと。地域の方にいろいろな生物のモニタリング等をしていただいて、そういった成果を海岸事業に生かしていこうということで、NPO等の参加型の事業制度を今、要求しておるところでございます。
 13ページは、今後の生物多様性の確保に向けた取り組み方針ということで、いずれにしましても、今、全国の海岸で計画が進んでおります海岸保全基本計画の策定の中で、そういった海岸の防護、環境、利用の調和のとれた海岸の保全基本計画ができるようにということで考えてございます。基本方針で昨年5月に出した項目がここに書いてございますが、こういった方針を受けて、各海岸管理者、各都道府県が今、海岸保全基本計画策定の作業をしているところでございます。
 また、「具体的取り組み」というところで、最近、海浜のごみ対策等で、こういう地域住民のボランティアを活用したような形の海岸の清掃等の奨励といったようなことも実施しています。
 最後に「自然共生型海岸整備のための調査・研究」ということで、これにつきましても海岸省庁、これまでご説明しましたような新しい海岸整備が具体的にどういう成果を上げているかという調査をしておりまして、そういった調査成果をもとに、海岸管理者が整備していく上でのマニュアルのようなものを、ここ一、二年のうちにまとめようということで、海岸省庁で調査を進めているところです。
 概要は以上でございます。

●辻井委員長 どうもありがとうございました。
 先程申しましたように、港湾局で代表してご説明いただきましたけれども、河川局、それから農水省の農村振興局、それから水産庁漁港漁場整備部からも出席していただいておりますので、ご質問、ご意見をいただきたいと思います。

●岩槻委員 4つの部局で一緒に案をつくって実行されるというのは、どういう母体をつくって進めておられるのかお伺いしてもよろしいでしょうか。

●国土交通省港湾局(森下) 調査ですか。

●岩槻委員 いや、事業そのもの。

●国土交通省港湾局(森下) 海岸事業は、実は国がいろいろな計画づくりといいますか、事業の中で方針とかを決めるようになっていますが、具体的な海岸保全施設等の整備は、半分以上が地方の海岸管理者に任されています。海岸の管理もですね。
 それで、実は全国の海岸管理者を見ますと、この4省庁と言っておりますが、それぞれの部局の担当する海岸管理者というのがございまして、必ずしも1つの都道府県になっていないというのが実情でございます。具体的な例でいきますと、港湾区域内の海岸は港湾局が海岸管理者になってございますが、これは市町村であったり県であったりします。また、国の方も4つの部署に別れてございまして、これが連携をとってやるために、もう20年ぐらい前から連絡協議会といいますか、そういう形で順次連絡をとり合って、一緒になって制度をつくっていくという形で動かしてございます。

●瀬田委員 今おっしゃったように、港湾は、ある意味で港湾の機能のために海岸を保全していらっしゃると思うんですね。昔の建設海岸というのは、領土の保全とでも言うんでしょうか、それから防災といいますか、いわゆる国土が減っていかないと言うと言い方が変かもしれませんが、そういう面でのサポートですよね。多分、水産の方から言えば、それはまた魚つき保安林だとかそういう魚の分だというふうに、一つ一つ目的があるんでしょうけれども、どうも生物の多様性ということとの絡みは余り見えないんです。
 いわゆる、人がいないというのは極端ですが、人がいなくて領土として主張しなければ海岸保全はやらなくていいのかどうかというふうに、極端にうけとってもいいのかなと思ったんですけれども。

●国土交通省港湾局(森下) 具体的には、今、非常に財政状況が厳しくなっておりまして、それぞれの海岸保全の整備を始めますときに、その整備の投資効率というのを求められます。
 それで、今、先生から言われたように、守るべきものの価値が低い場合にはなかなか手がつかないというのが実態です。防災事業、保全事業だと言いながら、やはりどうしても費用対効果、投資効率のあるところをやっているというのが現状でございます。そのために、やはりある災害が出ると、災害である程度対応していくという形になってございまして、今4省庁でやっておりますが、それぞれの中でも、やはり投資効率のあるものを整備しているという状況であります。
 その中で、実はこの環境面、あるいは利用面というのが一昨年、新しい法律で入ってまいりまして、そうは言っても、新しい制度を見ていただきますと、平成8年ぐらいから最近の世の中の動向といいますか、要請を受けて、そういう環境面への配慮、あるいは地域の人たちの海岸の利用への要請、そういったものを取り込むような事業制度に、ここ数年、切り替わってきてございます。これから整備が進むという状況でございます。

●渡辺委員 少し予算の量的な配分のことを伺いたいんですが、 982億円とありますね。これはすべてが防護、環境、利用の3要素を含んでいるのか、それとも、ここは防護重点、ここは環境重点、あるいは利用重点、そういう区分けがもしあるなら内訳を知りたいんですけれども。

●国土交通省河川局(櫻井) 河川局海岸室長の櫻井でございます。
 今、森下課長からもご説明しましたように、やはり防護というのが基本にありまして、環境、利用に配慮というんですか、調和をとっていくというやり方になりますので、すべてに防護はあります。それで、防護だけかと言われますと、できるだけ環境、利用にも配慮するというのが方針でございますので、ちょっと今のような切り分け方は、なえなか難しいなと思っております。
 私どもで管理しています沖ノ鳥島というところ、これこそ人もいませんけれども、領土保全という観点、40万平方キロの排他的経済水域確保のために管理しておりますけれども、あのときはどうだったのかと言われると、確かに防護中心だったかもしれませんけれども、それ以外ですと必ず環境、利用なりに、今から見るとご批判があるような形の整備になっているかもしれませんが、当時としてはそれなりの配慮、また、今後もしていくことになると思いますが、申しわけありません、そういう分類は日常的にしておりません。

●国土交通省港湾局(森下) それから、先程ご説明しました白砂青松のプロジェクト事業、こういうものは管理者の方から計画書を出していただいて、認定をしてどんどん進める、こういう形をとっているわけでございますが、その事業の実態は、侵食対策事業であるとか、あるいは高潮対策事業であるとか、既存の事業制度の事業を読み取って、こういう新しい社会要請に適合したものだということで進めてございます。
 また、エコ・コースト等は、それに伴う生物層への効果のある施設整備を一部つけ加えるとか、そういうものをつけてございます。具体的には、従来の侵食であるとか高潮であるとか、海岸環境整備事業であるとかいう事業制度の枠の中で運用しておる。ただ、ちなみに、ちょっと事例的に申し上げますと、白砂青松のプロジェクトは今年度、実施しておりますが、全国で大体80億円ぐらいでございます。海岸事業全体が海岸4省庁で 1,800億円ぐらいの事業の中で、白砂青松プロジェクト事業を全部拾い出しますと24海岸ぐらいで80億円ぐらいかな、それぐらいの規模の投資を、それぞれプロジェクトと言いながら全国でいろいろな切り口で展開している、こういう状況でございます。

●渡辺委員 そうすると、この 982億円というのは、 1,800億円のうち半分強を、よく知りませんが、この重点7分野といいますか、特別扱いを受ける事業として要求している。

●国土交通省港湾局(森下) いえ、重点7分野も含んだ全体国費でございます。
 この 982億円というのが海岸省庁の来年度の国費の要求額でございまして、これを事業費に換算すると 1,800億円程度、正確には 1,700数十億円でございますが、これは重点分野も入れて、重点分野は少し伸ばしてございますが、そういうものから外れるものは大きく圧縮されている、こういう格好になってございます。

●三浦委員 ちょっと確認したいんですが、海岸法の改正によって総延長3万5千キロメートルの、いわゆる保全対象地域の1万4千に一般公共海岸区域1万4千を加えているわけですね。それで、いわゆる防護という意味では重点的に保全区域をやってきて、一般公共海岸区域も利用、環境という面で対象地域にするということは、後の方にありますいわゆるヘッドランド工法、あるいは突堤、こういう養浜、潜堤、人工リーフ、こういうものの対象地域がすべてであるということではないんですか。

●国土交通省河川局(櫻井) それにお答えいたします。
 突堤とか養浜という行為も、特に養浜という行為を今回の改正で海岸保全施設としましたが、ハードではないんですけれども「施設」というふうな、そういう目的を持ったものということで位置づけております。そういう意味で、海岸保全施設を整備しなければいけない区域は、海岸保全区域でございます。ですから、一般公共海岸区域は、あくまでも環境、利用のために管理を強化するという面だけでございますので、ここに施設的な手を加えるという前提ではございません。加える必要が生じた場合には、保全区域にして手を加えます。
 変なことを言いましたけれども、あくまでも一般公共海岸という概念は、5ページに書いてございますように、管理をするために法的な位置づけを与えたということでございます。施設を建設する予定はありません。

●三浦委員 そうすると、この長さというのは随時指定をしながら保全区域になり得るという、指定対象のネーミングなんですね。

●国土交通省河川局(櫻井) まず、一般公共海岸というものを定義いたします。そして、一般公共海岸のうち保全区域を指定するという行為になります。そして残りが一般公共海岸という概念でございます。

●三浦委員 それは変わり得るんですね。

●国土交通省河川局(櫻井) 必要に応じて、その指定によりまして保全区域が増えることはあり得ます。

●辻井委員長 指定されればそうなるということですね、災害が出たりして。

●国土交通省河川局(櫻井) ええ。それとか侵食傾向になったなというようなことがあれば、変わります。

●三浦委員 大きく変わる可能性はあるんですか。

●国土交通省港湾局(森下) 1ページを見ていただきますと、要保全海岸延長が1万6千キロ。いわゆる個々の背後はいわゆる資産もあって、海岸保全施設を整備した方がいいよという海岸が1万6千キロというふうに考えてございます。これは多少変わりますけれども、現在指定しているのが1万4千キロでございますので、あと2千キロぐらいは背後が少し、海岸保全区域を指定してやった方が安全ですよ、こういうところです。

●三浦委員  2,000キロですね。

●国土交通省港湾局(森下) これは今、一般公共海岸になってございます。

●三浦委員 概ねそれくらいが対象になると。

●国土交通省港湾局(森下) そうです。これから10年、20年のうちに出てくるでしょうというところです。

●辻井委員長 他に、いかがでしょうか。よろしゅうございますか。
 それでは、港湾局初め皆さん、ご説明、あるいはご質問に対してお答えいただきましてありがとうございました。お礼を申し上げます。
 それでは、今日も大分また時間を超過いたしましたが、本日のヒアリングはこれで終了したいと思います。
 明日のことは、また事務局からお話ししていただきますけれども、私、明日は座長を岩槻委員にお願いして、申しわけございませんけれども欠席いたしますので、岩槻委員、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、事務局の方から何かご連絡がありましたらよろしくお願いします。

●渡辺生物多様性企画官 明日、3日目の各省ヒアリングでございます。明日は午前中、国土交通省の都市、緑地というテーマで行って、午後は文部科学省、経済産業省、厚生労働省、外務省というスケジュールでございます。10時半から今日と同じこの会議室で行いたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。
 昨日に引き続きまして遅くまで、長時間にわたりまして本当にどうもありがとうございました。

                              午後5時40分閉会