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中央環境審議会 自然環境・野生生物合同部会
生物多様性国家戦略小委員会(第1回・1日目)


平成13年10月30日
 

議 事 次 第

1 開 会

2 議 事
 (1)生物多様性国家戦略小委員会における検討の進め方について(1日目)
 (2)生物多様性の現状と関連制度の概要について(1日目)
 (3)各省庁施策に関するヒアリング

 

配 布 資 料

○小委員会名簿  
○資料1−1 生物多様性国家戦略見直しのスケジュール
○資料1−2 第1回小委員会(各省庁ヒアリング)スケジュール
○資料2−1 植生の状況
○資料2−2 海岸・干潟の改変状況
○資料2−3 動物の分布状況例(シカ・ウサギ)
○資料3−1 自然環境保全に関する地域指定制度概要
○資料3−2 国立・国定公園と国設鳥獣保護区の全国配置
○資料3−3 国土計画・土地利用関連制度の体系
○資料4−1 絶滅のおそれのある野生生物の種数
○資料4−2 動物RDB種及び植物RDB種の分布状況
○資料4−3 二次林の植生タイプ別分布図
○資料4−4 里地里山の活動フィールド分布
○資料4−5 重要湿地の選定(中間報告)
○資料4−6 主な獣類の捕獲数推移(全国)及び栃木県におけるシカ捕獲頭数・農林業被害金額推移
○資料4−7 シカ日光・利根地域個体群分布域と日光国立公園・鳥獣保護区
○資料4−8 移入種の影響・移入経緯
○各省庁説明資料  



生物多様性国家戦略小委員会名簿

委 員 長  辻井  達一  北里学園大学社会福祉学部教授
委員長代理  岩槻  邦男  放送大学教授
委   員  安達  瞳子  花道家
 阿部  永  元北海道大学農学部教授
 大澤  雅彦  東京大学大学院新領域創成科学研究科教授
 岡島  成行  青森大学大学院教授
 奥山  文雄  ( 社) 港湾荷役機械化協会会長
 川名  英子  ( 財) 生協総合研究所客員研究員
 熊谷  洋一  東京大学大学院新領域創成科学研究科教授
 篠原  修   東京大学大学院工学系研究科教授
 瀬田  信哉  ( 財) 国立公園協会理事長
 服部  明世  大阪芸術大学環境計画学科教授
 三浦  慎悟  森林総合研究所東北支所地域研究官
 三澤  毅  ( 社) 日本林業技術協会顧問
 森戸  哲  地域総合研究所所長
 山岸  哲  京都大学大学院理学研究科教授
 鷲谷  いづみ  東京大学大学院農学生命科学研究科教授
 渡辺  修  (財) 休暇村協会理事長
 和里田 義雄  ( 財) 河川環境管理財団理事長
 



                                午前11時00分開会


●小野寺自然環境計画課長 時間がまいりましたので、中央環境審議会自然環境・野生生物合同部会第1回生物多様性国家戦略小委員会を始めたいと思います。あとお一人、熊谷委員がいらっしゃっていませんが、小委員会を始めたいと思います。
 辻井委員長にお渡しする前に、局長からご挨拶があります。

●小林自然環境局長 皆さん、お忙しい中お集まりいただきまして、大変ありがとうございます。
 去る10月17日に合同部会において当小委員会が設置されまして、今日が第1回目の会合でございますけれども、早速に3日連続の各省庁ヒアリングということでお忙しい先生方に大変お手間をとらせていただきます。どうぞよろしくお願いします。
 今回の戦略の改定でございますけれども、自然との共生のトータルプランとして政府としても非常に意味が大きいものということでいろいろなところで使われております。
 先生方もお忙しいと思いますけれども、3日間どうぞよろしくご議論いただきまして実りのあるものにし、新しい国家戦略に反映させていただきたいと存じます。
 ありがとうございます。

●辻井委員長 皆さん、おはようございます。
 では早速、今日の議事に入らせていただきますが、生物多様性国家戦略小委員会、まず検討の進め方につきまして事務局からご説明をお願いします。

●小野寺自然環境計画課長 今、局長から挨拶がありましたように今月17日に設置いたしました小委員会の第1回の会合でございます。よろしくお願いします。
 いきなり各省ヒアリングという形で3日間やらせていただきますが、平成7年にこの計画をつくった時と今回で一番違っているのは、自然環境や生物多様性に関わる各省の取り組みがより積極的になっているということです。我々としてもその議論を相当重視して計画を作りたいと思っておりますので、この3日間の意義は非常に大きいと思っておりますし、また期待もしております。
 各省のヒアリングに移る前に非常に簡単な概略ですけれども、今の自然環境の現状と自然環境を中心とした制度の概要を事務局から簡単に説明させていただきたいと思います。当然、これからヒアリングを終わって作業を進めていく段階で、また改めて我が国の自然環境の現状とか制度等の必要な限りでの詳細についてはご説明させていただくつもりでおります。今日のご説明はヒアリングに入る前の簡単な概略ということでご理解いただきたいと思います。
 資料1−1は前回の17日の合同部会の時にもお配りいたしましたけれども、全体はこういう形で進めさせていただいて3月下旬を迎えたいというスケジュールでございます。その裏は各省ヒアリングのスケジュールで、3日続けて小委員会を行いたいと思います。
 私からは以上でございます。

●辻井委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、今の説明があった生物多様性国家戦略小委員会の進め方については、これでよろしゅうございましょうか。どうぞよろしくお願いいたします。
 次に、生物多様性の現状と関連制度の概要のご説明をお願いします。

●渡辺生物多様性企画官 自然環境計画課の渡辺でございます。自然環境の概要あるいは保護制度の概要につきまして大急ぎで全体をざっと説明したいと思います。
 初めに資料2−1の束でございますが、その資料で国土全体の自然環境の状況につきまして自然環境保全基礎調査の結果を幾つか選んで大まかに概観してみたいと思います。
 まず、頭の資料2−1は植生の状況でございます。
 全国をカバーしています最新の5万分の1の植生図を基に、植生を人為の影響の度合いによって10の「自然度」に区分して表示したものでございます。自然草地、自然林を合わせました自然植生は国土全体のおよそ5分の1弱でございます。また、自然林と二次林と植林地を合わせた森林面積の合計ですと国土のおよそ3分の2を占めてございます。
 次のページにその植生の5年から10年間隔の経年比較を載せてございます。自然林あるいは二次林が減少する傾向が示されております。
 林業統計によりますと、最近の森林の伐採量は昭和30年代前半と比べておよそ5分の1程度、また、都市的土地利用への転換量は全国総体として見ますと昭和40年代の高度経済成長期あるいはバブル期と比べて減少しておりまして、全体としては植生の改変圧力は低下してきております。しかしながら、都市周辺の里地里山などの中間領域を中心に地域限定的に植生の改変が続いていると考えられます。
 次の資料2−2は海域調査の結果で、1枚目が海岸線の改変状況を調べたものです。自然海岸の割合が減少しております。平成5年の調査結果によりますと、自然海岸の割合が全国総延長の55%、本土部だけで見てみると45%ということで5割を割っております。海域別に見ていきますと、東京湾、伊勢湾、大阪湾などで人工化の割合が異常に高くなっています。
 2枚目は干潟です。生物の生息場所や水質浄化などの面から非常に重要な機能を持っております干潟の状況を調べたものでございます。平成6年の第4回基礎調査で確認された干潟面積は全国で約 5,100haとなっておりまして、前回調査以降およそ10年の間に約4,000 haの干潟が消滅しております。昭和20年から見ますと、全体のおよそ4割の干潟が消滅したことになります。埋立の統計資料によりますと、最近の埋立面積は昭和40年代のおよそ5分の1程度となっております。沿岸域の量的な改変の度合いは鈍化してきております。ただ、程度は鈍化しておりますが、残された干潟あるいは藻場の減少が依然続いている状況にあると考えられます。
 次の資料2−3は動物の分布状況の例ということで、シカとノウサギを挙げました。全国の分布図と生息動向を推し量るデータということで鳥獣関係統計の捕獲数の経年変化をあわせて示しております。
 シカは北海道、西日本に多く分布しておりますが、各地の調査結果から近年は分布域や生息数が非常に拡大・増加傾向にあることが示されてきております。全国の捕獲数は2つのグラフに分かれていますが、その推移を見ますと1980年(昭和55年)前後を境に捕獲数が急激に増えております。有害駆除の数も増加しております。地域的に見ると北海道や近畿、九州などで捕獲数が多い状況が出ています。暖冬が継続して死亡率が低下するなどが増加の要因として挙げられております。
 次のページのノウサギは減少傾向を示している動物の例です。分布域は全国に広がっていますが、捕獲統計の捕獲数を見ると減少が著しくなっています。1970年代後半から減少傾向にありますが、この傾向と全国の造林面積の減少傾向が似通っています。餌場として適していた伐採地あるいは新植地の減少が関係しているとも考えられますけれども、キツネなどの捕食者が増加したことが要因ではないか。そういった他の要因が絡んでいるという指摘もございます。こういった形で環境条件の変化に伴って動物の生息状況も増加したり、あるいは減少したりというダイナミックな変動が起きております。
 次に、資料3−1です。多様性に関連する制度の概要についてご説明いたします。
 資料3−1は環境省の保護地域制度の概要でございます。4種類の保護地域を挙げてありまして、この中で面積を見ていきますと国土レベルで面積的に相当程度カバーしているのは自然公園と鳥獣保護区でございます。
 まず、自然公園は自然公園法に基づいて、優れた自然の風景地の保護と利用のために指定されるものでございます。国が指定する国立公園・国定公園と、県が条例に基づき指定します都道府県立自然公園がございます。この自然公園の制度ですが、昭和6年、自然の大風景の保護とその観光利用を目的として国立公園法が制定されました。それが出発点となっています。戦後、昭和24年に国定公園制度が創設され、昭和32年に自然公園法が制定されまして、国立・国定プラス県立という自然公園体系が確立いたしました。米国、カナダなどの営造物性の国立公園とは異なりまして、土地の管理権を取得することなく公園区域を指定する。そして、風景保護の観点から工作物の設置や森林の伐採など一定の開発行為を規制するという「地域性」の仕組みを採用しています。公園計画によりまして区域内を特別保護地区、特別地域、普通地域に地種区分(ゾーニング)を行いまして規制の程度に強弱をつける仕組みになってございます。
 もう一つの鳥獣保護及び狩猟に関する制度ですが、これは明治維新後の銃によります無秩序な狩猟に伴う危険の防止を目的として明治6年に制定された鳥獣猟規則が出発点でございます。明治25年には一部の鳥獣の捕獲禁止などを含めた狩猟制度の根幹を定めた狩猟規則が制定されました。そして大正7年に狩猟できる鳥獣を明定して、その他は捕獲禁止とする現行の鳥獣保護法の基となる狩猟法が新たに制定されました。戦後に入って昭和25年の狩猟法改正で鳥獣の生息地保護のための鳥獣保護区制度が初めて取り入れられました。そして昭和38年の改正で従来の禁猟区、つまり狩猟を禁止する地区を鳥獣保護区として設定し、さらに鳥獣保護区の中で生息地保護のために開発を規制する地区を特別保護地区と指定する現行の鳥獣保護区制度が確立したところです。国が設定する国設鳥獣保護区と県が設定する都道府県設鳥獣保護区がございます。
 残りの自然環境保全地域ですが、これは昭和47年制定の自然環境保全法に基づいて、優れた自然を厳正に保全する目的で指定されてございます。国が指定する原生自然環境保全地域、そして自然環境保全地域と県が条例に基づいて指定する都道府県自然環境保全地域がございます。
 もう一つ、生息地等保護区です。これは平成4年に制定された「種の保存法」に基づいて絶滅のおそれのある動植物種を「国内希少種」と指定して、その生息地・生育地を保護するために生息地等保護区を指定する仕組みです。
 A3の資料3−2という全国マップに国立公園、国定公園と国設鳥獣保護区の全国配置を落としてみました。緑色が国立公園、赤が国定公園、青い線のくくりが国設鳥獣保護区でございます。国立・国定公園は全国の山岳あるいは海岸、島嶼部に分布しております。左上の表に示しましたように国立公園は28カ所で約200 万ha、国定公園は55カ所で約130 万ha、合わせて国土の約9%をカバーしております。開発行為が許可制となります特別保護地区と特別地域を合わせますと、国立・国定で国土の約7%を占めています。これらの面積は陸域の公園面積です。陸域の地先の海面に海域普通地域が指定されておりまして、その一部に海中公園地区が指定されています。
 一方、鳥獣保護区は国設が全国54カ所で50万ha、県設の方が3,830 カ所で約300 万ha、合わせると国土の約1割を占めています。しかし、その鳥獣保護区の内訳を見ますと県設鳥獣保護区の割合が多く、また、生息地保護に意味のある特別保護地区は国設と県設を合わせても国土の0.7 %を占めるにとどまっております。
 国立・国定公園と鳥獣保護区の重複状況を3つ目の表に出していますが、公園を含む1km四方のメッシュに国設または県設鳥獣保護区がかかっている割合は全体で46%です。図の方を見ますと北アルプスのように国設鳥獣保護区が公園全体に重なっているところもありますが、日光、越後三山只見地域のように全く重複していないところもございます。
 この国立・国定公園の国土における配置の特性を概観してみますと、主要な脊梁山脈の多くに公園が指定されています。しかし、区域を見ますと、多くの場合、山裾までは公園区域に含まれておらず、公園区域が中腹で途切れるという実態がございます。河川についても同様で、国立・国定公園が重なるのは河川の上流側に偏っております。右側の表に示しましたように基礎調査が対象とした全国113 の主要河川の調査区間に公園が重なっている割合は全体の1割弱という状況です。海岸線延長の方で見ると4割強が国立・国定公園に指定されています。
 こういった国土の配置特性を反映しまして植生との関係を見ますと、標高の高い山岳部の自然植生については公園がカバーしている割合が高くなっています。自然度別に見てみますと、自然林、自然草原、自然林に近い二次林を足した面積の約2割が国立・国定公園に含まれています。二次林ですと約6%が公園に含まれるという状況でございます。
 資料3−3ですが、これは国土計画、土地利用計画制度の体系を示したものでございます。土地利用の混乱あるいは地価の高騰、自然環境の破壊といった問題を背景としまして昭和49年に総合的・計画的な国土利用を図ることを目的として国土利用計画法が制定されました。同法に基づいて全国レベル、都道府県、市町村の3つのレベルの国土利用計画が策定されます。現在の全国計画は平成8年に閣議決定された第3次計画でございます。平成17年を目標年次とした計画となっています。その中で「国土利用の基本方針」とか「農用地、森林、宅地等の地目ごとの国土利用の基本方向」、あるいは「地目ごとの将来の規模の目標」などの数字が示されております。この第3次計画では土地利用転換圧力の低下といった状況変化などを受けまして策定されていまして、その基本方針の中で国土利用の質的向上の三本柱の一つとして「自然と共生する持続可能な国土利用の観点」を挙げております。
 また、この国土利用計画法に基づきまして、既存の土地利用規制関係の法制度を体系化いたしまして、各県ごとに都市地域、農業地域、森林地域、自然公園地域、自然保全地域の5地域の区分を行うこととしております。それとあわせまして、土地利用の調整方針を各県ごとに定める土地利用基本計画が策定されることになってございます。この計画に適合するように土地取引の規制を行い、併せて、この図の右側にあります各個別法による土地利用の規制措置が講じられていくという仕組みになっております。
 右側の一番上の都市地域ですが、これは都市計画法に基づく都市計画区域が対象であります。都市計画法によりまして市街化区域と調整区域の区分、あるいは用途地域や風致地区などの指定、開発許可制度に基づく規制が行われております。また、この都市計画には道路や公園や下水道などの都市施設の整備とか市街地開発事業に関する計画も位置づけられる仕組みとなっております。
 2番目の農業地域は農業振興地域の整備に関する法律、いわゆる農振法に基づく農業振興地域が対象でございます。農用地区域の変更とか農地の他の用途への転用が農振法や農地法によって規制される仕組みでございます。
 3つ目の森林地域ですが、これは森林法に基づく国有林と地域森林計画の対象民有林が対象でございます。森林法に基づいて全国森林計画が策定され、それを受けて民有林を対象とした地域森林計画を県が作成し、また国有林を対象とした地域別の森林計画を森林管理局が作成して、その中で森林の保全や整備の方向や目標が示されております。また、水源涵養機能等の公益的機能の維持増進を目的とした保安林制度、保安林以外の民有林を対象とした林地開発許可制度による規制が行われております。
 そして、4つ目の自然公園地域は自然公園法に基づく自然公園区域が対象で、5つ目の自然保全地域は自然開発保全法に基づく自然環境保全地域が対象となっています。
 これらの5地域区分ですが、一部で相互に重複しております。単純に合計しますと、国土面積の約1.6 倍という数字になっております。また、国土保全に関連した法制度としてここに出ている森林法のほかに河川法、砂防法、海岸法、地滑り等防止法などがあります。こういった法律に基づいて治山・治水事業が実施されます。その他に社会資本整備に関連する主な法律として土地改良法、漁港法、港湾法、道路法、都市公園法といった各種の法律があります。こうした一連の制度につきましては、午後から始まる各省の施策ヒアリングの中でそれぞれの省庁から具体的な説明が行われるものと思っております。
 次にもう一つ、資料4−1の資料の束を取り出していただけますでしょうか。これは生物多様性に関連した最近のトピック的な課題を幾つか選んで資料としました。
 まず、資料4−1は絶滅のおそれのある日本の野生生物の種数を出しております。
 絶滅危惧種が総計約2,660 種、このうち脊椎動物あるいは維管束植物は全体の2割前後の種が危惧種ということになります。これらの危惧種の中身を見ていきますと、島嶼や山岳に生息する種も選ばれていますが、加えてメダカ、キキョウといった生活域周辺の二次的自然に普通に見られた種や水辺の生物が多く選定されております。それらが危機的状態にあることが大きな特徴として挙げられます。植物の減少要因がその裏のページにありますが、開発に伴う生息地の消失、分断・孤立化あるいは乱獲、園芸用の採取に加えまして、放置による遷移の進行とか移入種の侵入の影響、あるいは水質等の環境悪化が要因として挙げられております。
 次の資料4−2は絶滅危惧種として選定された動物と植物の全国の分布状況を分析してみたものです。1枚目が動物で、2枚目が植物のレッドデータブック種を示しています。
 これは基礎調査の動植物の分布情報を基にしまして10km四方のメッシュ毎に危惧種の確認された数を調べ、その多さを2段階に区分して表示したものです。濃い青色が5種以上の絶滅危惧種が確認されたメッシュです。動物・植物ともに地域の固有種が多い南西諸島などの島嶼部や高山、奥山の自然地域に確認種数の多いメッシュが出ています。しかし、同時に標高の低い平地から丘陵地といった二次林や水田を含む里地里山地域に絶滅危惧種の確認種数が多いメッシュが高い割合が分布していることが注目されます。動物も植物も危惧種が集中する濃い青のメッシュは5割前後が里地里山地域に含まれている状況になっています。
 次の資料4−3ですが、こうした里地里山の中核をなす二次林を分析したものです。自然度7の二次林と自然度8に含まれるシイ・カシ萌芽林を対象に、その全国分布あるいは自然特性を分析してみました。この二次林は合わせまして約770 万haであります。国土の約2割を占めておりますけれども、植生の中身によりましてミズナラ林、コナラ林、アカマツ林、そしてシイ・カシ萌芽林の大きく4つのタイプに分類されて、それぞれの自然特性や生じている問題に応じて異なる取り扱いが必要ということが明らかになってまいりました。
 この図には二次林のタイプ別の全国の分布状況を示しています。管理せずに放置されたコナラ林では、遷移の進行に伴ってカタクリやスミレなどの希少な林床植物が消失したり、あるいは竹林やネザサ類の侵入・繁茂がありまして樹林の更新や遷移が阻害されるといった問題が生じております。また、アカマツ林ではマツ枯れで一斉枯死した跡にツツジなどの低木林やネザサ類のやぶなどが形成されて多様性が低下するといった問題が生じております。こういった二次林が手入れされずに放置されたときに特に多様性への影響が大きいのは4つのタイプの中でコナラ林とアカマツ林ということが出ております。
 資料4−4は里地里山で自然観察あるいは雑木林の維持管理活動などのふれあい活動を行っている活動団体、活動フィールドに関する情報をアンケートやインターネットで広く収集したものです。情報が得られました約1,000 件の活動フィールド(活動場所)の分布を落としました。国土の約5%に当たります3大都市圏から50km圏内(赤い●)にフィールド総数の34%が分布しております。都市近郊にふれあい活動のフィールドが集中しておりまして、都市住民の里地里山に対するニーズがとりわけ高いことが出てきております。
 その次のページに活動内容を示していますが、こういった里地里山が身近な自然観察活動あるいは環境教育の活動の場として活用されているということが出ております。その下の里地里山が抱える問題点ですが、最も多く挙げられましたのは宅地、道路、ゴミ処分場などの開発事業による消失、加えてゴミの不法投棄とか手入れ不足による雑木林の質の低下も大きな問題として挙げられております。
 次は資料4−5です。重要湿地選定の中間報告の概要をつけました。
 これは湿原あるいは干潟などの湿地の減少・劣化に対しまして国民から保全を求める強い要請があります。また、ラムサール条約締約国会議で登録湿地倍増が決議されるなど、国内外の湿地保全の気運が非常に高まってきています。そういった動きを受けまして、規模の大きな湿地や希少種が生息する湿地といった全国レベルで重要な湿地を専門家の意見を踏まえまして、全国で 500カ所選定いたしました。中ほどに重要湿地の選定基準を挙げております。裏のページには主な湿地タイプ別の件数、全国の位置図を示しております。こうした情報は今後の生物多様性保全施策の基礎資料になると思います。保全地域指定の検討とか開発計画におけます環境配慮に活用されるものになると考えられます。
 次の資料4−6は主な獣類の捕獲数の全国推移、それから事例として栃木県内のシカの捕獲頭数、農林業被害額の推移をお示ししました。
 シカ、サル、イノシシといった一部の野生動物の分布域、個体数が拡大・増加傾向にありまして、深刻な農林業被害が発生するなど人と野生動物との間の軋轢が生じておりまして、各地で社会問題化しております。グラフにもシカ、サル、イノシシのこの10年間、捕獲数の増加を示しております。こういった問題を背景として平成11年に鳥獣保護法を改正いたしました。地域的に著しく増加した、あるいは減少した鳥獣の個体群の安定した維持を図るために科学的・計画的に保護管理を行うという特定鳥獣保護管理計画制度が導入されています。
 栃木県の日光のシカの例でいきますと、昭和59年の豪雪でシカが大量死しましたが、その後に平成に入ってから個体数、分布域が急激に増加拡大しています。それに伴って農林業被害も急増しています。さらに、湿原植生、高山植物の被害など生態系への影響も出てきております。県ではこうした被害や影響を抑えながらシカの個体群を安定的に維持するための保護管理計画を策定していまして、現在その計画に沿った捕獲が進められております。
 次の資料4−7には日光地域のシカ個体群の分布と国立公園、鳥獣保護区の関係をお示ししました。
 最後の資料4−8は移入種問題に関する資料ということでおつけしました。
 移入種が生態系の攪乱をもたらすことにつきまして、近年、問題意識が高まっていまして、環境省では平成12年度から移入種問題の検討会を立ち上げています。現在、対応方針の整理を進めているところですが、この資料については日本で移入種による生物多様性への影響の事例を整理した資料です。捕食、競合、土壌環境などの攪乱、遺伝的な攪乱といった具合に影響の種類を分けまして、国内で影響が確認された種(黒い■)と影響のおそれがある種(白い□)の種を示しています。あわせて移入の経緯を整理してお示ししております。
 この移入種については昨年の生物多様性条約締約国会議で移入種の中間原則が決議されました。その中では第1に移入の未然防止、第2に侵入した種の初期段階の撲滅、第3に定着したものの駆除・管理といった3段階の対応が必要としています。今後、各段階の対策を実施していく必要がありますが、この移入種問題は環境省だけでは解決できない問題でございます。水際の規制や淡水魚対策など、関係省庁の協力なしには有効な対策の具体化が図れないと考えてございます。
 以上、駆け足で多様性の現状あるいは関連制度の概要、トピック的な課題についてヒアリングに先立ちまして、ごく概略的に説明いたしました。事務局で用意しました資料の説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。

●辻井委員長 どうもありがとうございました。
 おさらいということで現状と関連制度の概要を説明してもらいましたけれども、これについてのご質問、ご意見がございましたらどうぞ。いかがでしょうか。

●岩槻委員 多様性を保全するという場合、先程から里山のような例がよく出てきているのですけれども、これはもともと原生の植生とか種の多様性ではなくて人為的な結果つくられたものを保全することだと思います。特に農林水産省や国土交通省は人為的な作業を担当しているお役所だということになると思うのですけれども、里山の多様度が高いというのは、結局は原生種がそこに保全されていることと、様々な移入種がそこに適応して生活環境が複雑化されてきたために維持されてきた結果だということになると思います。
 それにもかかわらず今問題になっているのは、やはり里地里山が人為的な影響を受けてつくられてきたものだから非常に脆弱であって、その管理が少し変になってしまうと破損するということだと思います。ゴミの廃棄などによる破壊という問題がありますが、そういう問題はごくごく限られた場所だけの問題です。里山全体の多様性が危機に瀕しているというのはもともと脆弱であったところに人間のライフスタイルそのものが変わってきたために管理できなくなってしまったという基本的な問題にまで踏み込まないと、例えば里山の多様性の保全ということは成り立たない。先程局長がおっしゃった省庁間の調整ということはむしろそういうところが必要になってくると思うんです。
 勝手に推察したらいけないのかもしれませんが、環境省、各省、等からご説明いただくのは、「この法律に従ってどういう対応をします」という話になると思うのですが、質問としてはやはり基本的な、例えばライフスタイルの変化に対してどう対応されるのかということを伺わないことには省庁間の連絡はできないと思うのですが、今日のヒアリングはそういうところまで突っ込んだ議論をするのかどうか。特に最後の移入種の問題は、今のご説明は主として国境を越えた移入種の問題ですけれども、例えば里山を議論するときには国内での移入種が非常に重い意味を持ってくると思います。そういうことも歴史といいますか、ライフスタイルに非常に深く関わってくることなので、そういうことまで議論するのかどうかというあたりを伺っておきたいんです。

●小野寺自然環境計画課長 もちろん委員が興味のある根本的なところは質問していただいて結構ですし、また質問していただくべきだろうと思うのですが、実際は説明に来ている人がどこまで深く認識した上で見解を示せるかということが一つあると思います。
 ただ、割と総論的な、やや文明論的な認識の話は重要だと思いますけれども、そこだけだと議論としてはなかなかかみ合わないのかなという心配も自らを省みてするものですから、そこを踏まえて、やや具体的にやるべき施策に関する基本認識とその方向性みたいなものの中の内容についてという方が役人としてはどちらかというと答えやすいのかもしれません。

●渡辺委員 今の件に絡んで大変事務的なことを申し上げますが、ヒアリングに出席された方が委員の皆さん方の多分に専門的な質問に答えられないということは計画課長が答えたとおりだろうと思います。その場合はそれで終わりにせずに、持ち帰って省としての考え方を文書で出してもらうという形で補ってヒアリングをより有効なものにしていただいたらどうかと思います。

●辻井委員長 ありがとうございました。他にいかがでしょうか。

●瀬田委員 この3日間の日程の中でほぼ3分の1ぐらいがバイオテクノロジーなんです。それは環境省、あるいは今ご説明があったのはほとんど自然界の話になるのですが、環境省として、あるいは自然保護局ではないのかもしれませんけれども、バイオテクノロジーをどういうふうに位置づけるためにこれだけのヒアリングを各省からされるのかお聞きしたい。
 それから、環境省としての資料といいますか、あるいはヒアリングのために用意すべきものはなかったのかについて伺いたい。

●小野寺自然環境計画課長 これは意見陳述とヒアリングを受けるに際して、各省に対応を求めた時のやりとりの結果なのですが、基本的には相手が希望することについてやるということになりました。当然、瀬田委員が今おっしゃったような意見───つまり、この省とこのテーマで十全なのかどうかというのは一つあると思いますし、そこについてはまた改めて意見をいただいた上で審議会としてどうするかを決めていただいて結構だと思います。
 それから、環境省としてのバイオテクノロジーの関係については、別途この小委員会の検討スケジュールの中で資料を出すなりしてやらせていただきたいと思っております。

●岩槻委員 他の省庁は生物多様性条約の理解のされ方がサステイナブルユースの「ユース」に重点を置いた話になりますので、どうしてもバイオテクノロジーの説明が多くなってくるのではないかと思うんです。当然、保全だけの問題を議論するわけではなくて、サステイナブルユース全体の生物多様性条約に合わせた戦略ということになるわけですね。ですから、バイオテクノロジーの議論も大分しないといけないことになるのではないかと思います。

●辻井委員長 今の問題も含めてどうでしょうか。他にご意見をいただければと思います。
 阿部先生、動物関連で何かございませんか。

●阿部委員 今でもそうですが、外来動物の問題は非常に難しくて、今は基本的に入ってくるものの規制が非常に弱いものですから、そこをどうするかというのが非常に重要な問題になる。本当はこれまでにやってこなかったわけで、不透明な部分もあるわけですけれども、今後さらに難しい問題がどんどん出てくるだろうと思います。入ってきたものを規制するのではなくて、入る時の規制をもう少ししっかりやらないと、ますます物流が激しくなってきますので。それはどういう趣旨がとれるかというのが大きな問題だろうと思います。

●辻井委員長 先程岩槻先生がおっしゃった里山などにも今の帰化生物、がまず生息・生育する場所になるだろうと思うんです。ただ、一方では生物多様性を維持しなければいけないだろうけれども、じゃあ多様性が高まればいいのか、それが帰化生物的なものも含めてか、ということになるとこれは意味が違ってきますね。植物もそうですけれども、動物もそうだと思います。一番難しい問題でもあり、難しい場所でもあると思います。他にいかがでしょうか。
 それでは、今の説明については特別この他にないといたしますと、これで午前中の議事は終了ということでよろしゅうございますか。

●篠原委員 極めて事務的なことです。説明に来られる各省庁の担当は例えば農林水産省と国土交通省がいろいろ議論して見解をまとめるとはとても思えませんけれども、例えば国土交通省の中で河川と道路と都市はそれぞれ議論して、それである程度統一的な見解をしゃべるのか、それとも各局がばらばらにしゃべるのかというのでこちらの聞き方も違ってくると思います。それが一つ。
 あとは環境省が生物多様性国家戦略の見直しをやっていることについて環境省から説明して、それで十分勉強の上で来ているのか。それとも、そんな事前準備はなくて一般的な知識で生物多様性に関連する政策とか事業を「こういうふうに展開しますよ」ということで説明するのか。その辺はどうでしょうか。

●小野寺自然環境計画課長 最初の質問からしますと、役所によると思います。どこかそういうところがあるかわかりませんけれども、もし理想的な役所があるとすれば官房窓口で相当議論して省全体の見解を過不足なく伝えてやるのが省の見解を出すときの一番表に発表するやり方だと思いますが、これは推測です。やっている省庁はあるかもしれません。しかしながら、もしあったら失礼な言い方になりますが、多分、各局でまとめてとりあえず臨んだというのが現実ではないかと思います。
 ただ、見直しをめぐる関係閣僚会議の下に関係省庁の連絡会議がありまして、これはかなり頻繁にやっております。その中では「各省のヒアリングをやるのでよろしくお願いします」、「中身はできるだけ充実したものにしたい」ということはかなり時間の余裕を持ってお伝えしておりますので、午後からのヒアリングは中身のあるもの、ある程度準備されたものが出されてくると我々は期待しておりますが、渡辺委員の発言にもありましたけれども、もちろんそこで全部言えないことがあるかもしれませんし、資料を持ってきていないものもあるかもしれません。それについてはまた改めてというのは時間的に難しい。審議会の委員の先生のスケジュールも限界に達していることはよくわかっておりますので、我々事務局が何かまとめて伝えるとか、中身については確実にフォローできるようにしたいと思っている次第です。

●辻井委員長 もう一つは環境省から向こう、ヒアリング側に十分レクチャーをしてあるのかということですが。

●小野寺自然環境計画課長 事務的にはこういう意味があるので非常に大事なヒアリングの機会であるということは伝えているつもりですが、それが伝わっていることを信じております。

●辻井委員長 わかりました。そういうことだそうですが、よろしゅうございますか。

●森戸委員 倫理的な質問をさせていただきたいのですけれども、今は生物テロみたいな話が出ておりますね。そういう生物資源を凶器や兵器に使うことを制限するという話は国家戦略としては大事なのでしょうけれども、この話は生物多様性国家戦略の中に入るのか、それは国家安全保障みたいな枠組みでとらえるのか。バイオテクノロジーの話が先ほど出たからちょっと思ったのですが、これはプリミティフな話ですから、環境省で考えられていることを聞ければと思います。

●小野寺自然環境計画課長 設置法上の規定ですとバイオテロ的なものについては、警察になるか国家安全として自衛隊を含めたものになるか、官邸・内閣が主としてやるようなものについては我が国家戦略では及ばないということだろうと思います。ただ、我々の今の整理でそれがいいかどうかわかりませんけれども、バイオテクノロジーで何かをつくったものが自然の中に入っていって一定程度そこに存在している動物や植物に影響を与えることについては我々として責任上そこは関わっていかなければならないのではないか。ただ、直接的なテロの安全ということで言うと、そこまでは我々は及ばないと今考えています。

●辻井委員長 他にいかがでしょうか。もしございましたらどうぞ。よろしゅうございますか。
 それでは、午前中の議論はここまでということにいたします。どうもありがとうございました。

●渡辺生物多様性企画官 どうもありがとうございました。同じ場所で1時から農林水産省ヒアリングを開始したいと思います。よろしくお願いいたします。

                                午前11時55分休憩


                                午後1時00分再開


●渡辺生物多様性企画官 1時になりましたので、午後の農林水産省のヒアリングを開始させていただきたいと思います。辻井委員長、よろしくお願いします。

●辻井委員長 それでは、議事再開ということにしたいと思います。
 農林水産省からお出向きいただいてありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。各省庁施策に関するヒアリングで今日の午後から明日にかけて農林水産省からの説明を伺いたいと思います。資料1−2にありましたように農林水産省分は4部構成となっていまして、初めに基本的な方針について農林水産省大臣官房及び農林水産技術会議事務局からご説明をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

●農林水産省大臣官房(水間) 農林水産省大臣官房の水間と申します。よろしくお願いします。
 今ご説明がありましたように、まず私の方から省としての全体の方向性に関して簡単に説明いたしまして、その後に各論に移りまして、今日はバイオテクノロジーとか遺伝子資源管理・バイオセイフティについて技術会議の方から説明いたしまして、その後に農業農村整備関係、その後に漁業、明日の午前中に林業ということで進めさせていただきます。
 そういうことで、まず私の方から説明いたしますのは資料1でありますけれども、1ページ目をお開きいただきたいと存じます。
 まず、我が国における農林水産業の必要性でありますが、国民生活の安定向上とか国民経済の健全な発展を図っていくためには人間の生命の維持に欠くことのできない食料や木材等々の生活資材等を安定的に供給することに加えまして、国土の保全とか水源の涵養、文化の伝承等の多面的な機能を持ちます農林水産業が不可欠であるという認識でおります。これは右の方にありますように平成11年に施行されております食料・農業・農村基本法でもしっかり位置づけられておりまして、第2条第1項に「食料の安定供給の確保」、第3条に「多面的機能の発揮」としまして国土の保全、その中で自然環境の保全も農業の持っております多面的機能の一つということであります。
 農業基本法は昭和36年につくられまして、これが廃止されて平成11年に新しい食料・農業・農村基本法ができたわけです。どちらかといえば旧法は農業が他の産業の所得水準に追いつくという産業政策的な観点が強かったわけですけれども、それとはかわって新しい法におきましては農業の持つ機能を新たに盛り込むということでございます。 2は「農林水産業の生産活動の特徴」です。
 その不可欠な農林水産業がどういう生産活動の特徴を持つのかということを書いてありますけれども、(1)としまして動植物という生物を対象とし、かつ自然界の循環機能を利用することによって成り立つ活動であることから生物多様性に大きく依存している。自然界の循環機能を簡単に申し上げますと、植物が光合成によって生育して、それを動物が食べる。微生物がその廃棄物を分解して、それがまた植物の栄養になるというグルグル回っていくようなものですけれども、そういう機能を利用して農林水産業が行われている。この自然界の循環機能につきましても新しい基本法の中に「自然循環機能の維持増進」として入っております。5ページ以降に関係条文が並べられておりますけれども、例えば第3条が多面的機能、第4条に農業の自然循環機能といたしまして「農業生産活動が自然界における生物を介在する物質の循環に依存し、かつ、これを促進する機能」であるということで維持増進することも規定されております。
 前のページに戻っていただきまして、(2)につきましては活動地の生態系の改変等によって生物多様性に正負の影響を与え得る。正というのは植物多様性の保全を図っていくことでありますけれども、例えば堆肥等によって土づくりをやっていくとか森林造成をするとか、あるいはつくり育てる漁業、あるいは干潟等の調整・維持をやっていくということがありますし、逆に負の話をすれば例えば農薬の過剰散布とか森林の過伐採、あるいは漁業資源の乱獲みたいなものがある。要するに農林水産業の生産活動をどういうふうにやるか、それ次第によって環境面に対して正にも負にもなるという関係でございます。
 (3)ですけれども、さらに新品種の開発・改良、天敵を利用した害虫防除等を進めるために生物多様性を保全・利用する観点もあるということです。
 そういうことで生物多様性から影響を受けつつ、さらに逆に影響を与え、さらにそれを利用するような活動を長期にわたって安定的に繰り返すことによって二次的な自然環境が持続的に形成・維持されることが特徴として挙げられます。この二次的な自然環境といいますのは二次林とか二次草原とか農耕地等々、要するに人的な活動が加えられた自然環境のことを言っております。
 右の方にイメージ図を描いてあります。全く人の手が加えられていない生態系は生物多様性の保全に重要であると思いますけれども、その一方で人間の経済活動と調和した二次的な自然環境自体も生物多様性の保全ということで貢献しているのではないかと考えております。
 次のページにまいります。以上、説明を申し上げました特徴を踏まえて、それでは我が国において持続可能な農林水産業の生産活動を図っていくためにはどういう施策の方向性を持っていくかということであります。
 [1]としまして、生物多様性が構成要素となっている自然生態系の健全性の維持・増進に配慮した生産活動方法を採用する。生産活動方法次第ではどういう方向にもいくということであります。右に具体例がありますけれども、例えば農業につきましては農薬・肥料の適正な使用、あるいは家畜排泄物を適切に処理していく、あるいは有効利用していくということがありますし、林業につきましては複層林・長伐期施業とか、水産業で言いますと資源管理型漁業の推進等々によってこの施策の推進を図る。
 [2]としまして、業として必要な効率性を考慮しつつ、長期的な視点に立って可能な限り生物多様性を保全する。産業活動として農林水産業が重要であるわけですけれども、それと環境保全とのバランスをいかにとっていくか、そして生物多様性を図っていくかということであります。右に例がありますけれども、例えば農業で言いますと農業の基盤整備事業をやる場合、例えば水路をつくる場合ですと今までは川底とか川の横をコンクリートで固めていったということでありましたが、例えば動植物の生息環境を回復するために側面部分は土にすることによって環境に配慮するとか、段差を緩和した水路の施工によって例えば魚が川の上に上がっていけるような工法を取り入れていこうということをやっております。
 [3]ですけれども、生物多様性の持続的かつ有効な利用を可能とする生物遺伝資源の収集・保存と研究開発を推進することと、遺伝子組換え技術の適用に当たりましては環境に対する安全性と国民の理解を確保することが重要である。この部分は私の後、説明があります。
 [4]ですけれども、水田、里山、藻場等の二次的な自然環境の適切な維持を図っていく。これが要するに適正な農林水産業の生産活動として維持されているということでございます。
 次のページにまいりますけれども、部門間でどういう連携をしているのか、あるいは国際協力はどういう状況になっているのかということですが、農業・林業・水産業間の連携ということでそれぞれが互いに密接なつながりを持って存在していることもありますので、三業間の連携を図る。取り組みの具体例としまして右にありますように宮城県唐桑町、ここに限らず、これはかなり、水産の資料ペーパーにも入っておりますけれども、全国各地でこういう取り組み、林業等との連携がされているようでありまして、例えばこの町で言いますとカキの養殖を行っている養殖漁場の環境保全を図るために上流に広葉樹の植林を行って漁業の振興に役立てているような例もある。ここには書いておりませんけれども、農業の世界では畜産農家で排出される糞尿堆肥を耕作農家の耕地に還元していって農業の循環機能の増進を図っていくという取り組みもかなり力を入れてやっております。
 それから、関係省庁間の連携ということであります。農林水産業は原生的な自然生態系や河川・湖沼、都市等とも関わり合いを持つことから関係省庁間の連携を図っていくということで、現在予算要求中の例をここに挙げてあります。機能が著しく低下している水源地域の森林部分について広葉樹などの導入を図るとともに、これ以下は環境省の事業になると思いますけれども、湿地とか生態系の復元を図るということで豊かな緑を再生する自然再生型公共事業を実施することでございます。
 続きまして(3)でありますけれども、国際協力の場面ではどういうことをしているのかということであります。貴重な遺伝資源が消失する危険性が高い開発途上地域における遺伝資源の多様性の保全と利用のために国際的な共同研究を行う等、国際協力を図る。右にありますように現地と協力して現地における最適な遺伝資源の保存法あるいは利用技術、あるいは遺伝資源保存施設導入のための資金協力、JICAプロジェクトの活用、そのようなことをやっている。
 非常に簡単ではありますけれども、とりあえず以上が基本的な方針であります。

●辻井委員長 どうもありがとうございます。続いてお話しいただけますか。

●農林水産技術会議事務局(長谷川) 農林水産省農林水産技術会議事務局技術安全課長の長谷川でございます。本日、資料2「遺伝資源管理・バイオセイフティ」について私と先端産業技術研究課長の塩田と分担いたしましてご説明させていただきたいと思います。
 それでは、資料の1ページをご覧いただければと思います。私ども農林水産省における遺伝子組換え技術、多様性国家戦略、安全性ですが、それに関する基本的な考え方をまず、整理します。遺伝子組換え技術につきましては私ども、この技術の持つ大きな可能性については正当に評価がなされることが重要であると認識しております。
 右の上の枠の中に遺伝子組換え技術の可能性として大きく3点挙げてございます。まず、消費者ニーズに沿った食品の生産です。今、例えば栄養に富んだ農作物とかアレルギーになりにくい農作物、あるいは日持ちの良い農作物が研究されております。また、生産力の大幅な向上による食料問題解決への貢献ということで超多収の品種の作出、あるいは砂漠や低温地帯といった悪条件の中でも栽培可能な作物の作出、害虫や病害抵抗性の品種の作出がございます。このうち、害虫や病害抵抗性の品種については既に実用化されているところでございます。それから、環境や資源問題の解決への貢献ということで、自然に分解するプラスチックの作出とか環境浄化に役立つ組換え体の作出について検討が進められているところでございます。
 こういう大きな可能性を持つ技術でございますけれども、これにつきましては新しい技術ということもございます。最新の科学的な知見に基づきまして環境や健康等に与える影響についても十分な評価が行われる必要があるところでございます。私ども技術安全課では、この遺伝子組換え作物等につきましての環境に対する安全性を担当しております。
 (3) でございますが、消費者の方々の関心に対して的確に応えていく。情報提供その他のニーズにしっかりお応えする必要があると考えておりまして、この3点を私どもの基本的な考え方としているところでございます。農林水産省の分担は先ほどちょっと申し上げましたが、農林水産業あるいは食品産業分野での組換え体の利用、産業利用に係る安全の確保を図るために指針(ガイドライン)に基づきまして環境に対する安全性を確認しています。
 右の下の方の組換え農作物の安全性評価の通常の流れをご覧いただければと思います。大きく文部科学省、農林水産省、厚生労働省という順に並んでおります。
 文部科学省は組換えDNA実験指針に基づき実験レベルでの安全性の確認、具体的に申せば下の左の2つの枠にあるような安全性の確認についてこのガイドラインに基づいて担当しております。
 私ども農林水産省は、まず農林水産分野等における組換え体の利用のための指針に基づきまして周りに影響を及ぼさない隔離された圃場(隔離圃場)の一定の実験が終わりまして、産業として利用することを目的とするようなGMOが作出されました場合に隔離圃場でさらに実地できちんとデータをとる。それについて、まず審査、認可、確認を行っております。そのデータを加えまして、もともとあるデータも含めまして最終的に栽培していいか、あるいは輸入していいかという確認をもう一回行います。2段階の確認を行っておりまして、これが環境に対する安全性の部分でございます。
 例えば花でございますと、それが人の口に入るということもございません。あるいは餌として使われることもございませんので、そうなりますと栽培の安全性が確認されました場合には一般圃場での商業栽培あるいは輸入していいということになります。また、それを動物の餌として使う場合には農林水産省、食品なり食品添加物として使う場合には厚生労働省が安全性をさらに確認することになっているところでございます。
 私どもはこういう研究開発の促進と安全性の確保、さらには国民の理解の促進を3つの柱として今まで進めているところでございます。
 そこで、遺伝子組換え農作物等の環境安全性の確保につきまして2ページにやや詳しく説明させていただいております。
 若干繰り返しになりますが、遺伝子組換え農作物を商業的に利用するためには栽培あるいは流通に先立って各々の遺伝子組換え農作物ごとに安全性を確認する制度が設けられております。先ほど申し上げました「農林水産分野等における組換え体利用のための指針」に従って専門家の方々による審査を行っているところでございます。
 手順でございますけれども、開発者は遺伝子組換え農作物について利用する農作物等の情報あるいは実験室とか非閉鎖系温室等で得られた遺伝子の性質や導入遺伝子の安定性といったデータをきちんととった上で農林水産省に提出し、専門家による審査をその段階でまず行った上で隔離圃場において試験的な栽培を行います。そして、その花粉の飛散性やほかの生物に及ぼす影響などに関するデータを収集して環境に対する影響を調べる。その結果をさらに農林水産省に提出し、専門家による審査の結果、環境に対して安全である、影響を与えないと確認されたものが一般の農作物と同様に一般圃場で栽培あるいは輸入することが可能となるという仕組みになっているところでございます。
 下の枠に組換え農作物の安全性評価項目の例が大きく3つございます。
 まず、使用された農作物、組換えの元となる農作物に関する情報でございまして、自然界でどのように分布しているか、あるいは栽培なり食品としてどのように利用されているのか、さらに生殖なり繁殖の特性はどうか、雑草性や有毒物質の産生性はどうかといったことについて情報を得る、データを得るということでございます。
 それから、導入遺伝子等そのものについての構成遺伝子の由来や機能、塩基配列、あるいは発現タンパク質の有毒性の有無といった情報でございます。
 それから、(3)遺伝子を導入した組換え体に関する情報として、遺伝子そのものの情報として農作物への導入方法や組換え農作物の育成過程や導入遺伝子の遺伝的安定性と発現の安定性といったことについて評価しているほか、環境に対する安全性につきましては使用した元の農作物と組換え農作物の差異を花粉の飛散性などの生殖特性あるいは種子の発芽率、近縁種との交雑性等について調査を行っております。
 これらのデータをもとに審査を行っていただいているところでございまして、右の表の一番下にございます環境に対する安全性ということで申しますと、本年9月28日現在で60件につきまして安全性が確認されているところでございます。
 なお、環境に放出されることはあまりございませんが、例えばバイオ等で食品酵母等を生産する組換え微生物とか実験用のマウス、ラットについても私どもはこの指針に基づきまして安全を確認しているところでございます。
 3ページ目をご覧いただければと思います。このような形で安全性の確認を行っているわけでございますけれども、それも含めまして私どもは多様性国家戦略の一番最後の方にあったかと思いますが、バイオテクノロジーに関する国民の理解の促進もやっております。遺伝子組換え技術を初めとするバイオテクノロジーの実用化を図るためには安全性の確保はもちろんでございますけれども、また新しい技術であり、不安や不信をお持ちの方々も現実問題として、特に新聞等でいろいろ種々取り上げられるようなことがございます。そういう意味で国民の方々に対して正確できめ細かな情報の提供や理解の促進に努めることが肝要である。これは言うまでもないことでありますが、そのように認識しております。
 右にございますが、1つは国民理解の促進に向けた取り組み、情報提供等でございますけれども、大きく4つございます。広く一般市民を対象とした3泊4日の体験研修とかシンポジウム。3泊4日の体験研修では例えばDNAの抽出実験のようなものも行いまして、DNAとはどんなものなのかということを身近にご理解いただける実験なども行っております。それから、いろいろな情報としましてのパンフレットあるいはビデオを配布したりしております。さらに、私ども農林水産省もホームページを持っておりますので、そこを通じた情報提供を行うほか、一般市民をパネリストとする会議の開催。昨年、いわゆるコンセンサス会議としてでございますけれども、そういう会議の開催、あるいは市民の方々の提案に基づきました調査研究を実施しているところでございます。
 同じことが続きとして(2) にございますが、このため、我が国として先ほど申し上げました最新の科学的知見に基づく安全性の評価や遺伝子組換え食品への表示を実施するとともに、国民の理解を得ていくために技術の内容や成果等について消費者等、国民の方々に的確に対応した情報提供に努めておりまして、先ほど[4]で申し上げました市民の方々の提案に基づいた調査研究、平成13年度につきましては右下の枠にございます3つを行っております。遺伝子組換え農作物について短期的な安全性はともかくとして、ずっと環境中にあった場合はどうなるのかについて不安もあるということなので、私どもとしては念のためということでございますが、実際に目で見てもらおうということで長期栽培のモニタリングを今年から開始しております。また、国内の栽培状況につきましての体系的な情報把握とか、種子あるいは遺伝子組換えに関する情報の高度な保管システムの構築を平成13年度から始めたところでございます。
 4ページをご覧いただければと思います。これは後ほど環境省からもご説明があろうかと思いますが、生物多様性条約に基づきましてバイオセイフティに関するカルタヘナ議定書が昨年1月に採択されました。EMの環境安全性に関する初めての国際的な枠組みということになろうかと思っております。ご参考までにということで挙げておりますが、議定書の概要ということで趣旨のところにございますようにLMOの環境中への放出――LMOというのは「※」に書いておりますような遺伝子組換え技術や科を越える細胞融合により人為的な改変を加えられた生物でございますけれども、その環境中への放出により生物多様性の保全及び持続可能な利用に悪影響を与えることのないよう、LMOの輸出入について国際的な枠組みを定めたものでございます。経緯といたしましては1992年の生物多様性条約採択以降、国際的な検討が進められ、2000年1月にモントリオールの特別締約国会議再開会合で採択されたところでございます。
 なお、主な内容は右の上の方をご覧いただければと思います。
 まず、対象範囲は生物多様性の保全と持続可能な利用に悪影響を及ぼす可能性のあるLMO、そういう意味でも非常に幅広くなっております。ただし、人の医薬品は対象外ということでございます。
 また、輸入に関する手続といたしましては開放系利用LMO、いわば栽培するようなものとお考えいただければいいかと思います。これにつきましては、輸出に先立っての輸入国との事前同意手続、リスク評価に基づく輸入の決定が規定されております。また、食料・飼料・加工用LMOにつきましては事務局を通じた情報の提供、議定書に整合的な国内枠組みに基づく輸入の決定を行うことが決定されております。そのほかにリスク評価や管理、輸出に関する手続が規定されております。
 なお、[5]にございますように発効要件でございますが、議定書は50カ国が批准してから90日後に発効することになっております。これは2001年10月20日現在6カ国でございまして、採択されて1年たったわけでございますけれども、50カ国にはなかなか進んでいないということでございます。私ども農林水産省としましては現実に遺伝子組換え生物の中で商品化されているものはほとんど農作物ということになっております。そういう意味でリスクの評価や管理についての国内法制の整備が非常に必要かと思っておりますけれども、環境省と連携しながら一緒になって検討に参画しているところでございます。

●農林水産技術会議事務局(塩田) それでは、引き続きまして5ページは生物遺伝資源の収集・保存ということでございます。
 ここにございますように種だとかという遺伝資源、こういうものは実際に熱帯関係あるいは批准国等、遺伝資源消失の危険性が非常に高いということで、こうした遺伝資源を本来たくさん持っている保有国についても、なかなか最近では遺伝資源を集めることについても非常に難しいところでございます。生物、いろいろな能力、多様性を保全するという意味からも貴重な遺伝資源という意味では、それを収集・保存していくことが後世、さらに次世代に引き継ぐということが大事であるということでございます。
 そういう視点で私ども農林水産省の関係ではジーンバンク事業と称しているのですけれども、国の方で昭和60年からこの名前で立ち上げました。国内あるいは国外の遺伝資源を集めて、また集めたものについてその特性を評価する、あるいはそれを保存する。また配付する、こういう事業として進めております。ただ、平成13年から実は中央省庁等の再編ということで、このジーンバンク事業を中心に行っていました農業生物資源研究所というところが独立行政法人にこの4月からなりました。そういうことで事業主体は変わらないのですが、平成13年度からは独立行政法人の農業生物資源研究所という形で新たに事業を進めております。
 こうした遺伝資源でございますけれども、やはり研究開発材料として非常に有用なものであるということで現在も、また将来にわたっても研究開発の一つの基本でございます。このジーンバンクは国内、我が国が我が国の中に持ってくるだけではなくて、これは世界的な遺伝資源、あるいは利用ということが(3) に書いてありますけれども、国際的な共同研究という形で各国とという形での共同研究、あるいは国際的な農業関係の機関に資金あるいは人的協力をしております。また、JICAの方でプロジェクト、あるいは資金援助等がございますので、そういう形でも我が国の農業関係の遺伝資源の保全等に努力しているところでございます。
 右側には我々が一般的にジーンバンクと呼ぶ絵でございますけれども、対象としているのは植物、動物、微生物、DNAです。また後ほど林産、水産別に出ておりますが、春までは全部一緒の事業としてやっております。ジーンバンクについてはメインバンクとサブバンクという支所みたいな形で位置づけて連携をとりながら全体を推進してまとめて動かしております。
 ジーンバンクの一つの流れ、例えば植物でしたら稲とか麦、大豆等、こうした種などはまず集めたものの特性的な特徴を調べる。これも実際に目で見たり形を見たりということで、見ただけの特性から実際の性格まで調べるというかなり手間のかかる仕事です。また、これを保存するためには一定の量を保存しなければいけない。こんなふうにして利用者の方がわかるようにする。現在のところ、平成12年度末で植物で約21万点、動物で 600点余り、微生物で1万 8,000株、DNAで23万点、以上のような数字でございます。
 続きまして、次の6ページはバイオテクノロジーの利用ですが、遺伝資源という意味では、一つの生物の持つ遺伝資源としての能力を活用するということで考えております。ゲノム解析ということで書いておりますけれども、ここに書いてあるようにゲノムはご存知のとおりヒトゲノム、イネゲノムということで、イネについてここで出させていただいております。イネはご存知のとおり我が国を代表する穀物ということですけれども、これは世界的にも約3割を占めるほどの穀物です。このイネゲノムをそういう意味では我が国の主食として長い間研究してきたということで、ゲノムについて調べようといったときにイネというのが非常に重要である。
 おもしろいことに、イネを調べると小麦とか、その他の植物のモデルにもなる。我々はゲノムサイズと言うのですけれども、ゲノムというのは一つの植物の一つずつの細胞の中に核がありまして、ご承知のとおり核の中に染色体がありますけれども、それをさらに見ていくと塩基配列がずっとありまして、情報が核の中の染色体の中に閉じ込められているわけですけれども、それを読んでいく、あるいはその中から有用な塩基の塩基遺伝子を取り出していく。こういう研究を活用するというゲノムの研究がございますけれども、そういう意味ではイネが他の植物に比べて非常にコンパクトな構成になっているということで全体の中のモデルでもあり、コンパクトでもあるということでイネを軸にして進めております。
 このゲノムの研究というのはヒトゲノム、イネゲノムといいますのは、昆虫、家畜いろいろな、もちろんそれぞれの生物のゲノムでございます。今申し上げましたように細胞の中の塩基配列、イネでしたら12本の染色体がありますけれども、その中の細かい塩基配列、その中の遺伝子として例えば塩基配列で言ったら1万ぐらいの配列を、その遺伝子の特徴、機能を明らかにしていく。このあたりをしていくと、いろいろ特許をとって、それを活用していくという研究でございます。
 そのイネゲノムにつきましては(3) にございますように、そういう意味では我が国を代表する穀物でございまして、世界の中でも先駆けてリードして今進めておりまして、(4) にございますように12カ国で進めております。日本、アメリカその他12カ国でコンソーシアムという一つの共同体をつくって研究を進めております。読み方ももちろんいろいろございます。この(4) で国際的にやっているのは順番に細かく高精度に読みます。新聞にも時々載りますが、精度によっては 99.99%という非常に高い精度で読む。荒っぽくやればもっと荒っぽくも読めるのですけれども、そういう意味では読み方はいろいろあるかと思います。
 ここで今現在のところ、9月末の数字で申し訳ないのですけれども、約3分の1強の塩基対、細かい塩基の並びの約37%のうち日本が73%を担当したということです。ちなみに、1億 5,900万と書いてありますけれども、イネの小さい塩基、この塩基は4億 3,000という塩基対がございますので、4億 3,000に対して37%、その中で遺伝子は現在まだ25個となっています。
 近年、そうしたゲノム研究は一つの手法として急に伸びてきました。これからそういう意味では一番細かなところを調べて、その成果を食料・農業、日本及び世界にかかわらず環境問題等にも、またこうしたゲノム研究を生かした新産業の創出への活用が今後図られていくということで期待しております。
 右の方には今申し上げました塩基の細かいところ、細胞の中の塩基を読むということからすると37%ということから、これから、もう一方ではそうした遺伝子を一つずつ調べていくことでは、私どもの目の前にある例えば植物一つ、生命科学についても光合成とか、よく言われますけれども、ああいう仕組みがどうしてできるのだろうかということとか、環境への適応が非常にとしながらも、いろいろな環境に耐えられるとか、そういう意味では病害虫にも耐えられるとか、いろいろな意味の抵抗性を持っていたりするのは何かそういう遺伝子が関与しているだろうということで、それらを探していこう。将来的に社会経済には食料・農業問題の社会的環境あるいは自然産業にもつながっていくということでお示しさせていただきました。
 以上でございます。

●辻井委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、今の基本的な方針についてと、続けてバイオテクノロジーについての説明をしていただきましたが、これについてのご質問、ご意見を委員からいただければと思います。

●岩槻委員 総論的なことなので、総論的なことを二つ質問させていただきます。
 最初は資料1に関してですが、全体の流れは十分理解できるのですけれども、問題は生物多様性の持続的利用ということです。その線に沿ってご説明いただいたのですけれども、どうしても言葉というのは概念を表現するものですから言葉に引っかかってしまうのですが、二次的な自然環境ということを非常に強調されている。最近よく使われるのですけれども、実は僕はもともとこの二次的な自然環境という言葉は言葉として間違っている言葉だと思っているんです。おっしゃっていることは多分、「自然の要素が残っている人為的な環境」ということを言うべきだと思うのですけれども、あえてこういう言葉を使って、農林水産省としては何をご主張されたいのかということが一つ。
 それに関連して、イメージされているものはわかっているのですけれども、そういうものを持続的に利用しようということになりますと、原始的な自然環境とはちがって、人為的な環境はやはり人為的な保全が必要です。それはある意味では短期的に移り変わるものです。現に今ここで挙げられている二次的自然はせいぜい二千数百年ぐらいしか続いていない状態のものだと思うのですけれども、それがさらに変貌しながら続いていくことに関しては人為的な管理が非常に大きなウエートを占めると思うんです。いずれそういうことについて後でいろいろご説明をいただくと思うのですけれども、そういうことに対する基本的な考え方をもう少し農林水産省全体としてご説明いただければ理解し易いと思うんです。よろしくお願いします。

●農林水産省大臣官房(水間) まず、二次的な自然環境という意味では現行の国家戦略に既に入っておりまして、それが一つのものだと思いますけれども、やはり農林水産業自身が業として国民生活に不可欠だという中で、それを前提にした中で農林水産業活動が行われるわけですが、そこにいろいろな生物が住み着く。それは全く手つかずのところにもいろいろな多様性がありますけれども、農林水産業活動によってつくられた環境の中にもいろいろな生物が全く手つかずの自然とは別の生態系として存在するということです。それが農林水産業の持続的な活動をやることによって維持・増進されるということで、国民生活に重要な業を司るのとバランスをとりながら二次的な環境に住み着いていく生物の生態系を維持していくことが重要ではないかということです。

●岩槻委員 前に使っていたからそのままフォローされたということですね、おっしゃっていることの内容は先ほども申しましたようにわかっているのですけれども、個人的にはできたらこの言葉自体を変えていただきたいと思っているんです。自然環境の保全ということが目的ではないんですよね。それを目的にすると、生物多様性の持続的な利用は非常に難しくなってしまう。特に農林水産省は自然環境の保全ということが目的であれば、むしろお困りになるはずだと思うので、自然環境の保全という言い方をされるよりは自然の残されている人為的な環境をどう維持していくかという視点でおまとめになる方が農林水産省とか国土交通省的ではないかと理解するのです。全体のまとめも実はそうでないと生物多様性の持続的利用には継がらないと思って言葉の意味・解釈についてお伺いしたということです。

●農林水産技術会議事務局(長谷川) この二次生態系ということはたしかこの前改定されました環境基本計画にも――前の環境基本計画にも同じ言葉が使われていたかと思いますけれども、今回改定されたものもたしかその言葉を使っているのではないかと理解しております。そういう意味におきましては一種ご議論もいただいたものだと思います。
 なお、先生が今おっしゃったような意味について例えば農業の自然循環機能とか用水路等も含めました水利系、そういうところでのいわば生態系も含めました自然の保全機能については後ほどそれぞれの局なりからご説明があるとは思います。

●岩槻委員 資料2についてもお伺いしたいことがあるんです。まさに人為的な環境といいますか、農業生産を高めるためにバイオテクノロジーのようなことが必要だというのは今さら議論することではないと思うので、そのことに対して二次的なことを非常に慎重に検討されるのは当然必要なことかと思うのですけれども、これについても、生物多様性の持続的利用に関することなのでご質問したいんです。
 里山とか、二次的な自然環境とおっしゃっているところを保全するためには、そういう場所が新石器時代以後つくられてきたのは人々の生活に対する多様な欲求がそこで生かされてきたから多様な自然が維持されてきたという側面があるわけです。ところが、遺伝子組換え食品のような人工的なものは今の進み方や経済効率をみると、どうしても単一化あるいは同一のものの大量生産という方向に進んでいく危険性がありますね。長期的な計画を考えるならば、今の時点でバイオテクノロジー、遺伝子組換えによる食品について、ここでおっしゃる二次的な自然環境を維持するためには、遺伝子組換えによって人々の生活の多様性をいかに維持していくかという視点が全体の計画の中に入っていないといけない。
 短期的に今すぐどう対応するか、もうすぐ人口が 100億人になりそうだから 100億人に対応するためにどうすればいいかという施策は非常によくわかるのですけれども、生物多様性の持続的な利用ということは何千年とか何万年とか、生物多様性の観点から言えば40億年です。そういう視点で物を考えなければいけないと思うんです。そういう意味で遺伝子組換えを農林水産省として推進していかれる時に、食べ物の多様性保全というものまで含めて、どういう指導をしていかれる計画をお持ちなのかどうかということを伺いたいんです。

●農林水産技術会議事務局(長谷川) 食生活につきましては私どもは直接の担当でもございませんし、食生活というのは私ども農林水産省も一緒に食生活の協議といいますか、日本型食生活ということについてご理解いただくような啓発活動もやってはおります。また、いずれにしろ消費者の方々が最終的にどれを選ばれるかは私どもが強制できるものでもございませんし、そちらの方はあれさせていただきまして、環境への安全性といいますので先ほどご説明を申し上げました。
 このカルタヘナ議定書の趣旨にもあろうかと思いますけれども、私どもは環境安全性について確認するときにどういう視点かと申しますと、先ほどの評価項目もあれですけれども、一般的に作物というのはご存知のように人の手をかけなければ枯死してしまいます。環境の中で生き残ることがなかなかできない。現在扱っている農作物も大体そのようなものがほとんどでございますけれども、そういうものがさらに例えば遺伝子組換えによって競争力を増して自然の中で生き残る、あるいは優占種となってしまうとか、あるいは交雑してしまって、そういうものがさらに優占種になってしまうということが起こりますと、短期的なのかもしれませんが、私どもは確かに生態系なり環境に悪影響があるということだろうと思っております。
 そこで、そういうことが起きないような、例えば交雑化しないのか、あるいは交雑するような野生種が日本にはいないのかということを調べまして、あるいは種子の吸引性がないから越冬できなくてすぐ死んでしまうのかということについて評価した上で、元の作物のデータも比較しまして新たに環境に対して強くなったものではないという形で安全性を確認しております。そういう意味でごく長期的にというのはどの程度のタームかというのはあれですけれども、私どもは安全性を確認しておりまして、少なくとも当分の間そういう環境や生態系に悪影響を与えることはないようにという目で審査しているつもりでございます。

●岩槻委員 今ご説明いただいたことは議論すればまだ議論する余地があるのですけれども、それは今お伺いしたいことではありません。
 おっしゃる通り、確かに食品の嗜好は人それぞれの嗜好であって、お役所が決めるものではありませんし、それはわかります。しかし、何が生産されるかによってリードされてしまうのが現実なんです。その意味で多様性のある食品、多様な嗜好に応えられる食品を提供するかどうかは行政にリードしていただかないといけないと思います。そういうことを国民の嗜好だからとか別の部局のことだからとおっしゃらずに、むしろ遺伝子組換え食品を研究される過程では、日本の国土全体を見て考えればどのような食品を提供すればいいのかという視点で遺伝子組換えということも検討していただかないと。生物多様性の持続的利用に関して言えば例えば里山のような自然を続けることを国土全体で見て、その上でどのように食品を、遺伝子組みかえという複点もいれて検討してほしい。安全性のことだけが問題ではないと思う。

●農林水産省大臣官房(水間) ですから今、農林水産省は日本型食生活的なもの、食生活指針みたいなものをやって健全な人間生活を送れるようにということでやっております。要するにタンパク質や脂肪等のバランスがとれるような食生活の方向性はやっておりますけれども、生態系への負荷なりをあまり増さないような農林水産業活動面での工夫をやっていくことによって生物多様性を阻害しないような生産活動をやっていくということではないかと思います。

●鷲谷委員 ご報告を伺って、生物多様性の利用に関する関心は大変高いけれども、日本列島に固有な人の営みの場としての生態系とか生物多様性を適切に保全しながら持続可能な農業を健全に保全・発展させるという視点があまり十分でないような気がしました。生物多様性という言葉は入っているのですけれど題目だけで、有効な施策に十分なっていないような印象を受けます。
 生物多様性の保全という視点から見ると、どんな人間活動が問題になっているかということについては国際的にも整理がついていて、[1]生育場所の分断・孤立化など、[2]人による乱獲や過剰利用、そして[3]外来種の問題です。3つ目は、生態系に含まれていなかった生物が入ってきて在来種の絶滅要因になったり、そのほかのメカニズムを通じて生物多様性を低下させるということです。そういう3つの点についてどういう政策を持っていらっしゃるかということを聞きたい。
 分断・孤立化の問題とか乱獲・過剰利用については恐らくこれから後の局のご説明の中で出てくるのではないかと思うのですが、外来種の問題はもしかしたらここでお聞きしておく方がいいようにも思います。今、日本でも生物多様性の保全ということを考えますと外来種はとても重要な問題になっているのですけれども、それは農林水産業のかなり根本的なあり方とも関連しているように思うんです。例えば生きた生き物を穀物についてくるものも含めて大量に輸入していることがあります。飼料にする穀物の輸入に伴って、多くの外来植物が入ってきて、農耕地で健全に農業・畜産業を営む上でも問題になっていると思いますが、そういう外来種が里山のような半自然の生態系に入ってくるという問題があります。
 また、農業に使うもので、敷きわらも含めてさまざまなものの問題もあると思います。本来だったら日本の生態系の中から十分に供給できるものも外国産のものを利用している現状があります。日本の資源で有効に活用できる植物資源はたくさんあるのに、恐らくコストのこととか利用という視点と経済性だけから見ているので外国のものを使うという形になっていると思うのですが、日本の環境を守るという立場からはそういうあり方も考えていただかなければいけないのではないかと思います。国際的には保護貿易主義だという批判があるかもしれませんけれども、私たち国民が日本列島の環境、生物多様性はかけがえがないと考えるのだったら、そういうことも十分に検討しないといけないと思います。
 また、水田が持つ生物多様性保全機能というのは保全生態学の立場からは本来とても高い機能があると考えているのです。自給率を高めるという目標はお持ちのようですが、水田を守ろうという方針にはなっていないような印象をもちます。又、畑に転換して大豆をつくるということもあるようですから、お米をもっと利用するような仕組みをつくって水田を守るという視点も重要ではないかと思います。
 話が横道にそれてしまったので外来種に戻りますが、環境にやさしいということで生物農薬を利用することをこれから促進するということですけれども、農業に使うということで輸入された昆虫で既にセイヨウマルハナバチのように野生化して問題を引き起こしているようなものもあります。生物農薬のような目に見えないようなものだとモニタリング自体がとても難しいですし、生き物は増殖してしまうのでよく目に見えないけれども生態系にいろいろな影響が及ぶこともありますので、海外から輸入する生物農薬に関しては慎重になっていただきたい。日本の昆虫などもきちんと研究すれば生物農薬として有効なものがたくさんあると思います。
 全体の視点として農業は農地の中だけで完結するという印象がありますが、農地と外の環境のつながりということも考えながら、農業自体を健全に発展させることが必要なのではないかと思います。
 農水省は、検疫を担当していらっしゃる。現在の視点は作物に被害が及ばないようにという視点からだと思いますが、今後それを生物多様性の保全という目的も入れて拡大していくようなことはできませんでしょうかということです。外来種は水際、入ってくるところでチェックできれば一番有効だと思いますので、そういうお考えがあるかどうかだけ伺いたいと思います。
 話が右往左往してしまって申し訳ございませんでしたけれども、何かお気づきのことをお教えいただければと思います。

●辻井委員長 外来種対策ということを中心に。

●農林水産技術会議事務局(長谷川) 後ほど生産局から……。

●農林水産省大臣官房(水間) 生産局とか水産庁、いろいろそれぞれあります。

●農林水産技術会議事務局(長谷川) そちらの方から直接にまた後でありますから、詳しいこともあろうかと思います。
 外来種についてセイヨウマルハナバチを例にお挙げになりましたが、あれは農薬といいますよりは活動を与えるという受粉昆虫でございます。先生がおっしゃったのはクメリシュカブみたいなものとかオンシツヤコウバチとか、オランダあたりで承認されている天敵昆虫です。ああいうものにつきましては農薬として使われる以上は農薬取締法に基づくということで、そのときにそういう意味では環境に逃げ出したりするのかどうかというようなこともありまして、そういう意味では例えばオンシツヤコウバチは温室の中でないと受粉できないということです。

●鷲谷委員 セイヨウマルハナバチについて日本では野生化できないというリスク評価のもとに使われて、事実野生化しているということだと思う。生態的な評価は遺伝子組換え生物についてもまだまだ不安がある。いろいろな可能性を検討する必要がある。検討が偏っているというか、生き物は増殖したり、遺伝子が突然変異を起こしただけでも寄生生物だったら宿主が変わったりということが起こります。そういうことまで考慮した検討も必要だと思います。

●農林水産技術会議事務局(長谷川) 先ほど一つだけ言おうとしてあれだったのですが、なお日本にもともといる天敵昆虫という意味ではたしかヒメハナカメムシという捕食生物の増殖といいますか、天敵昆虫の研究が進んでいるとは思っております。

●鷲谷委員 在来のものを使う場合には地域を意識していただきたい。生物多様性の保全というのはその地域の系統を守るという内容もあります。ある地域のものを大量に増殖させて日本中で使うということになりがちなのですが、生物の系統の歴史を否定してしまうことになります。恐らく地域を意識した新しいシステムをつくらないといけないと思うのですが。

●辻井委員長 ほかの方のご意見も伺わせていただこうと思います。ご質問がございましたらどうぞ。

●篠原委員 私の質問はそんな専門的な話ではないのですが、バイオセイフティの方の2ページ目の左に安全性確認のプロセスを書いてあります。情報を農林水産省に出して専門家が審査するとか、農林水産省に提出した審査の結果を報告する等です。これは誰がどういうシステムでやっているんですか。つまり農林水産省の技官が直轄でやっているのか、研究所の人が直轄でやっているのか、外部に委託しているのか、あるいはコンサルタントみたいなものは実力がないから実際にそういうことを扱っているメーカーに頼んでいるのかという質問です。
 もう1つ、質問ですけれども、資料1の2ページ目にも水田、里山、藻場の自然環境の適切な維持と書いてありますが、だれがどういうシステムでやるのかという観点から考えると、従来は1軒の農家あるいは農家が共同してやっていたと思うのですけれども、今、農家には人手がないので今までのように農家に頼るわけにはなかなかいかなくなってくるのではないかと思います。そうしたときに農家以外の団体、あるいはどういう人に頼んで維持していこうと考えているのか。つまり、共通する質問は誰がやっていくか、誰が責任をとるのかという問題です。

●服部委員 今のに関連してバイオセイフティの2ページの表に書いてあるので、これはいつから評価されたのか。評価時間はどのくらいかけられたのか、評価の時点で落ちたのがあるのかないのか、評価してダメになったもの、あるいは評価して安全だとやったけれども、その後、一般に使っているうちに失敗だった、やはり安全ではなかったという例があるかどうか。そのあたりを一緒にお願いします。

●農林水産技術会議事務局(長谷川) まず誰がどのような形か、これはデータをつくるのは申請するメーカーでございます。その内容について審査するのは、私どもは農林水産技術会議事務局と申し上げましたが、技術会議という合議体がございまして、その下に組換え体利用専門委員会を設けております。その利用専門委員会の委員の方々は大学の先生とか、いわゆる学識経験者の方々で構成をお願いしておりまして、その先生方に審査をお願いしているということでございます。
 いつからということですが、これは最初にガイドラインができましたのが平成元年からということで10年ちょっと前からガイドラインに基づく審査、安全確認が始まっております。
 評価時間ですが、先ほど2段階で安全性の確認をしていると申し上げました。最初の研究開発のレベルで何時間かかるわからないのですけれども、その環境安全性の模擬的環境の試験を行うと、大体の場合は作物ですので一作という期間がかかります。ですから1年とかかかりまして、その後にデータをまとめてということですので、模擬的環境の試験を始めるときからといいますとかなりの時間かかるというのが現実でございます。
 もう一つは安全性に問題が生じたような事例があるのかということでございますが、栽培の安全確認をとったものでも商品化されていないものがかなりございますので、そういうものは別といたしまして、我が国を含めまして商品化されたGMOが原因で環境に影響が生じたとされるものは今まで承知をしておりません。なお、一時期といいますか、2〜3年前に害虫抵抗性のトウモロコシ、アメリカでオオカバマダラが死んだというのが記事になっていたかと思います。あれにつきましてはかなり異常に多いといいますか、自然状態では起こり得ないような花粉ということで、トウモロコシにふりかけて食べさせた結果ということを研究員の方も認めていらっしゃるようです。そういう意味では自然状態ではなかなか起こり得ないようなものであろうかと思っております。
 今のはあくまでも実験の話ですから自然界で起きていないということですけれども、私どもはこの点につきまして先ほどの利用専門委員会の先生方にもご検討いただいた上で基本的にそう問題になることはないだろうと思っておりますが、私どもはその結果も受けまして、いわゆるBTという害虫抵抗性の毒素を異常に強く花粉に持つようなものが出てくると、まさに危ないことがあり得ますので、それについて影響を与えるかどうかの評価をするための試験を評価のために追加して害虫抵抗性のものについてはそのデータも提出してもらうことにして、そのデータも一緒に審査してもらっております。そういうことを追加して策定委員会はやっているところでございます。
 もう一つ、安全性審査の過程でボツになったものはございます。それでデータをつくり直して1年後といいますか、改めてデータをつくり直して再審査でOKになったものもございますし、そのままやめてしまったものもございます。私の記憶でございますけれども、とりあえず差し戻しになったというのは昨年といいますか、この1年ぐらいで2割強ぐらいがそういうことです。とりあえず差し戻しで、その後はデータを出したかどうか、昔のことはよく覚えておりませんけれども、そういうことはございますので、すべてOKということはもちろんございません。

●辻井委員長 もう一つ、服部委員から水田、里山等の維持を誰がやるのか。これは推進の方針だから、必ずしもここで誰がという話ではないかもしれませんが。

●農林水産省大臣官房(水間) これは農林水産行政の今のいろいろな課題の中に農業労働力の高齢化等々がありまして、要するに農山漁村の活力をいかに向上させていくかというのは生物多様性に限らず業としての非常に大きな課題でありまして、後継者の育成なりUターンの方々も少しずつではありますけれど増えていくとか、あるいは地域地域の大規模化政策の向上みたいなものも一方ではある中で地域地域の農業に従事していただく方々の集団的な取り組みを強化する。活力を高めることによって強化することを図っているものであります。

●篠原委員 NPOとかNGO的な団体に農林水産省として補助金を出したり支援しているようなことはまだないんですか。

●農林水産省大臣官房(水間) 各論的な話は私も存じていないので、また農業の際の説明のときに質問していただけるといいかと思います。先程いろいろご質問があった件の総論的な話を私の方から一言。
 農林水産行政、かなり昔は要するに業の効率性あるいは農業従事者、農林水産業従事者の生活向上がメインにありましたので、環境の側面がかなり薄かったわけでありますけれども、時代の要請ということもありまして、ますます環境の保全を重視する方向性に来ております。これもそれぞれの部局からご説明があると思いますけれども、例えば農林水産の公共事業につきましても予算の仕組みというのは毎年毎年ありますけれども、来年度以降は特に環境保全を積極的にやっていくような公共事業を仕込む取り組みもやろうとしている状況にありますし、特に漁業の世界では漁業の資源状況に対する関心が国際的に非常に強まっておりまして、各魚種の国際機関でもって漁獲規制等々が行われている状況にあります。これもまた説明があると思いますけれども、水産庁としても持続可能な漁業を進めている。これは非常に積極的に各国際機関に参加して議論しているということで理解しております。

●篠原委員 先ほどの安全性のことについてこういうふうに理解してよろしいのですか。つまり、そういうことは非常に難しい問題だから、メーカーにデータをつくってもらって出してもらって専門の審査会をつくって審査している。そうすると、農林水産省の担当の方はわからない。

●農林水産技術会議事務局(長谷川) わからないといいますか、私どもが事務的に……。例えば資料ですと審査官という制度を役人でやっている場合もございますけれども、これにつきましてはわからないというとわからないということになりましょうけれども、私どもは立場に当たっていないということでございます。

●篠原委員 これは農林水産省の問題だけではなくて、これだけ知識が高度化してどんどん進んでいるから担当の方がわからないのはしようがないと思うけれども、それで本当にいいのかなという気がします。もう少し言うと、農林水産省は附属の研究所でも何でもいいけれども、そういう人を独自に自分で持つような育て方はしていないのですか。判断は全部外の機関等へ出しているわけですか。

●農林水産技術会議事務局(長谷川) 育てると申しますと、私は行政ですので技術的には素人でございますけれども、もちろん安全性に関する研究を行っている農林水産省関係の独立行政法人はございますし、そういう意味での知識を持った人はおります。ただ、そういう者は今のところ委員として入っていないということがございます。
 もう一つは先ほど鷲谷先生のご質問とも関連するのですが、環境安全性の確認につきましてはどういう項目が考えられるのかということなり、やり方につきましてはOECDで専門家によりましてガイドラインが一応できております。私どもは大体それに準じた形でやっておりますけれども、その中で先生がおっしゃったとおりかもしれませんが、特に植物とか何とかで非常に多様性があったり性質もさまざまであったりするものですから、実験室では各ステップでちゃんとデータを積み上げていくとか、最終的な判断はケース・バイ・ケースということも十分考えて、その特性に応じた判断をするということがやり方としても挙げられているようでございます。そういうことになりますと私どももなかなかそれを一度にというわけにはまいりませんので、生態とか、いろいろな専門家の先生方にご審査をお願いしているということであると考えております。

●岩槻委員 私が最初に申し上げたことが十分理解されていない部分があるかと思うのでもう一度。例えば里山を考えても今の田園地帯の維持の仕方が確かに直線的にはどういうふうに維持していくかということが現在の対策としてやられている。本当に今の農村のようなものがこのまま続き得るのかどうかというそういうもっと長期的な視点に立ってご検討いただかないと。今はじいちゃん・ばあちゃん農業になっている。若い人にどんどん変えてもらおうといっても、それは限られた範囲でしかできないと思うんです。農村あるいは林業・漁業もそうですけれども、100 年先を見通してどういうふうに考えるかというのを今から考えておかないと本当の生物多様性の維持はできないのではないかという危惧がある。

●森戸委員 委員の先生方が危惧されたようなお話を私なりに解釈すると生物多様性に基づく従来とは少し違う新しい農業というか、農林水産業のあり方みたいな方向が農林水産省としてもう少しはっきり出ているといい。つまり、生物多様性がところどころにチラチラと出るというよりも、生物多様性に基づいてストーリーを組み立てれば農林水産業の新しい展望が出てくるということだろう。
 さておいて、お聞きしたいことはジーンバンク事業のことです。現状はわかりましたが、評価をお聞きしたいんです。農水省側から見て、ジーンバンク事業には国際協力と書いてありますが、国際競争という部分もあるわけで、そういうことも含めて国際的な位置づけの中でどう評価されているのか。又、ジーンバンク事業は十数年たっているわけですけれども、十数年の経過を振り返って今後どういうふうにしていきたいのかという点もきかせて下さい。後で資料ではっきり出していただければさらにありがたいのですけれども、時間の範囲の中でちょっとお答えください。

●農林水産技術会議事務局(塩田) 先生のおっしゃるとおり評価については全くそのとおりだと思うんです。事業内での遺伝資源をどう評価するかという特性の評価ということだと、それとは違ったジーンバンク事業といいますか、遺伝資源の保存ということ、それすべては事業そのものの評価で両方の側面で、多分こういうことかなと思うのですが、やはり今、世界的に遺伝資源をどのようにして保存していくかが大事だということで進んでおります。
 当然ながら我が国は遺伝資源の輸入国という立場で進んできておりますので、先ほど申し上げましたように例えば具体的にスリランカチームカブツサンとか、こういった遺伝資源のモデルというんですか、パキスタン、先ほども言いましたように、そういうところに遺伝資源の保存施設をつくってみたり、あるいはプロジェクトとして委員としてこちらからチームを送って、そしてこういう保存をすると。そういう意味では国際的に技術的な協力を進めるという形もあるんです。ただ、やはり我が国としては今まで国内外から遺伝資源を集めてきて、また実際に独立行政法人になってこれから5年ごとに独立行政法人計画全体の中で見直していく中で5年間の計画という形で、例えば植物でしたら2万トンぐらい集める。これは実際にジーンバンクという意味では保存・提供までだと思うのですが、その活用に向けての、そういう意味では多様的なバラエティあるものに対応していかなければいけないというふうに思います。
 一方、実質的な意味での評価ということでいきますと、やはり集めてきたものをすべて評価するし、どういうふうに生産を調べていくのか、このあたりについてもなかなか我が国は場所等に非常にかかる作業でございますので、そういうふうに終わったものについてはパスポートデータという形で集めて、それをつけて保存をしていくという形です。そういうことですと、ジーンバンクについてはなかなか……。一方では現実の流れとしては特に海外などはそれぞれなかなか出すような状況でなくなってきたりというか、こういう仕組みを主張されるようになってきて、そういうふうになってくる。あるいはそこでの保全ということに関しては先ほど言ったとおりという形で、行政と協力しながら我が国に持ってくるということについても世界的になかなか厳しい状況です。

●鷲谷委員 生産と生物多様性の保全ということでは矛盾が起こる場面も多いと思います。鳥獣被害の問題とか水田の在来の雑草が絶滅危惧種になっているような問題等があります。そうすると、多面的機能と生産の両方を追求していこうと思うと農家の方が困らないような施策が必要だと思うんです。生物多様性に寄与する場合の直接支払いの制度はお考えでしょうかということを伺いたいと思います。これは矛盾する場面で農家がデカップリングという言い方をしているのかもしれませんが、そのようなことは研究されていますでしょうか。

●辻井委員長 農業農村整備の問題やもっと広い範囲も考慮してお答えいただけますか。

●農林水産省大臣官房(水間) 農業農村の担当の方から説明することにさせていただきます。

●辻井委員長 鷲谷先生、よろしいですか。後ほどまた。

●和里田委員 1番目の資料の2ページで生物多様性の保全・利用のための農林水産施設の具体例、農業・林業・水産業のところで農薬・肥料の適正な使用という「適正」という言葉をお使いになっているのですが、これまでは生産者任せというか、生産者の企業秘密であるから介入しないというスタンスをおとりになっているのではないかと思うんです。ここに書いておられる具体例毎に、具体的な指導方針に基づき、これから取り組んでいくというご覚悟だということでよろしいですか。

●農林水産省大臣官房(水間) これも農業の方でよろしいですか。農業の方でまたその説明があると思います。

●辻井委員長 どうも長い間ありがとうございました。先ほどの岩槻先生のご質問といいますか、ご意見で例の二次的な自然環境という言葉は必ずしも農林水産省としてこれにこだわるというのではないわけですね。前に使っていたけれども、今度また別の言い方になるかもしれないと理解してよろしいでしょうか。こちらで使ったからこういうふうに書いてあるということでしょうか。

●農林水産省大臣官房(水間) それは要するに事実関係として言っただけでありまして、これは我々としては二次的な自然環境であるということで認識しておりますので、言葉を変えればいいということではないということです。

●辻井委員長 わかりました。ありがとうございました。
 それでは、これで最初のご説明は終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
 引き続きということで恐縮ですが、農林水産省生産局からお願いいたします。

●農林水産省生産局(福嶋) それでは、引き続きまして農業農村整備のうちの農業に関わる部分、資料といたしましては資料3が2つございますが、「農業」は専ら生産活動に関わる部分のお話をさせていただきまして、もう1つ資料3といたしまして農村整備についてのものがございます。
 私、生産局農産振興課環境保全型農業対策室の課長補佐の福嶋でございますが、説明させていただきます。
 資料の1ページ目でございますが、これは先ほど基本的な方針のところで官房からも概念的な説明があったものと一部重複いたしますが、農業と環境の関係について私どもとしてどのように考えているのかということでございます。右側のフローといいますか、図でお示ししておりますとおり健全な農業生産活動が展開されることによりまして国土環境の保全とか水資源の涵養、ここに生物多様性の保全が含まれることになるかと思いますが、そういう農業の多面的機能が発揮されることになると考えております。これは環境に対するプラスの働きかけということでございます。
 他方、残念ながら近年の農業生産活動のあり方の中で本来は物質循環を基本とする農業生産が右側に書いておりますような土づくりの後退、過度な肥料・農薬の使用、不適切な家畜ふん尿処理といった不適切な行為によって環境に対する負荷、それは農耕地生態系にとどまらず周辺環境に対するマイナスの働きかけを及ぼし得るということです。特に農業の世界で言いますと欧州などが肥料とか農薬に伴う環境へのマイナスのインパクトを80年代ぐらいから問題としてとらえて、環境にやさしい農耕に施策の重点を置いてきているところでございます。我が国においても一部地域において硝酸体窒素に伴う地下水汚染等の問題が事例的には生じてきているところもございまして、適切な持続的な農業生産の確保が生物多様性の保全を含む農業の多面的機能の発揮に通ずると考えてございます。
 農業の自然循環機能につきましては先ほども説明がありましたが、右下に書いておりますように農地を基本といたしましたさまざまな物質循環の中で営まれるものでございます。近年は大量の食品廃棄物とか家畜排泄物についても、家畜排泄物については基本的に農地還元を主眼としておりますが、一部不適切な利用、処分が行われることによって環境へのマイナスの影響を与え得るとか、食品廃棄物につきましてもリサイクルを促進することによって循環を増進するということでリサイクルの推進等にも取り組んでいるところでございまして、そういう形で農業の自然循環機能の強化に取り組んでいこうと考えているところでございます。
 現行の生物多様性国家戦略におきましても、農業の生物多様性に及ぼすプラスの面、マイナスの面を踏まえて適切な農業の活動を通じて農業の環境保全能力の適切な維持を図るために環境保全型農業の推進に取り組むこととされているところでございます。
 資料の2枚目でございますが、そのような背景のもとに現在、私どもといたしまして持続性の高い農業生産の推進に取り組んでいるところでございます。食料・農業・農村基本法については先ほども言及がございましたが、私どもの基本的な法律の中で多面的機能、農業の持続的な発展、自然循環機能の維持増進がきちんと位置づけられまして、同年、農業の自然循環機能を生かして持続的に発展できる農業機能を十分に発揮できるようにということで持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律を平成11年10月に施行しているところでございます。
 これはどういうものかと申しますと、右の真ん中のボックスでございます。各都道府県がその地域の特性に応じまして持続性の高い農業生産方式の導入指針を策定いたしまして、そして農業者がその指針に基づきまして農業生産方式導入計画を策定いたします。都道府県知事がその計画を認定いたしまして、認定を受けた農業者に対して金融及び税制上の優遇措置、支援措置を講ずるものでございまして、この認定を受けた農業者の愛称をオコファーマーと称しているのでございますが、現時点では3,500 名程度という数字に上っております。
 なお、持続性の高い農業生産方式というのはどんなイメージなのかが2ページ目の一番下のボックスでございます。具体的には土づくり、施肥、農薬散布等につきましてそれぞれ技術的な裏付けに基づきまして化学肥料とか農薬散布回数を減らしていくという形で環境への負荷を低減していくというイメージで考えてございます。
 資料の3枚目でございますが、このような基本的な法律なり枠組みに基づきまして、これまでも各種事業を通じまして環境保全型農業の推進に取り組んできているところでございまして、引き続き生産現場の取り組みを支援するための支援、各種助成制度等を強化していくとともに、関連する研究開発を実施していきたいと考えているところでございますし、あわせて農業部門における生物多様性をどう評価するのかということも問題になろうかと思います。
 この点につきましてはOECDの中で農業が環境に対して及ぼすプラス・マイナスのインパクトをどう評価するかという観点で農業と環境委員会の合同作業部会が1993年以来設置されておりまして、その中で農業が環境に及ぼす影響を客観的に評価するために農業環境指標の検討が進められております。この作業はまだ途中段階でございますが、2003年度を目途に報告書をまとめようということで、その中で農業における生物多様性をOECDとして各国共通のメルクマールでどう評価していくのかについての議論を作業の一環として進めていくことにしております。基本的な概念としましては生物多様性条約でも規定されております遺伝子レベルの多様性、種の多様性及び生息地レベルの多様性という3段階において、遺伝子レベルの多様性であれば例えば家畜の品種がどういうふうに変動していくとか、種の多様性であれば野生生物なりの生物種の分布とか数がどういうふうに動いているのか、生態系レベルで生息地という観点で各生物の生息地としての農地がどういうふうになっているのか。こういった切り口で統合的な整理されたデータは各国も十分ないのでございますが、私どもとしましてもこういう作業に積極的に参画していって定量的な評価を何とか検討してまいりたいと考えているところでございます。
 先ほど委員の方々から何点がご質問があった中で、この紙には書いてございません点で補足させていただきたいと思います。
 まず、1点は生物多様性の保全に関わる環境支払いについて農業の世界でどうかということでございます。現在、ヨーロッパ諸国でも農業が生物多様性保全のための取り組みを行った場合にそのための環境支払いを行うという施策が実際取り組まれておりますし、直接支払いという意味では中山間地の不条件農家に対する支払い制度が農林水産省でも動き始めております。私どもといたしましては外国でのそういう取り組みとか、実際に直接支払い制度が動き始めておりますので、そういった状況等を十分検討していきたいと考えております。
 一方でWTO協定の中で農業協定の中で環境支払いについてもきちんと枠組みがございまして、農家が環境保全のために何らかの取り組みを行った場合、そのために追加的な費用を負担した場合、あるいはそれによって収入が何らかのレベル失われた場合、その部分について支払うことが認められるということが緑の政策として位置づけられております。そういう国際ルールとの整合性なども配慮しなければいけないということで鷲谷委員からのご指摘については各方面からもご意見をいただいておりまして、私どもとしましては現在検討中ということでございます。
 検疫の問題につきましては、基本的に先ほど申しました農業のOECDの生物多様性の指標の議論の中でも外来種の問題が議論されております。それは基本的に農業生産に対して外来種が負のインパクトを与えるという観点で、それを数量的に把握できないかという観点でございますが、検疫というのは一義的には農業生産に対するマイナスの影響を及ぼさないように水際で処理することでございますので、そういう大目的が基本的には我が国の多様性保全にも資することになっているのではないか。これは私の個人的な意見でございますが、考えております。
 あとは先ほど何点かご質問があった中で農薬・肥料の適正な使用についての考え方がどうなのかというご質問があったかと思いますが、これについては例えば飼料の施肥基準がございます。各都道府県で一種の目安として農家の方につくっているものでございますが、より環境にやさしいような農耕を営むという意味で施肥基準の見直しも各都道府県で進められているような状況になっております。現状としてはそういう取り組みを行っているところでございます。
 ご質問いただいた中で漏れました点が若干あるかもしれませんが、とりあえず私からの説明は以上でございます。

●辻井委員長 どうもありがとうございました。

●農林水産省農村振興局(川合) 農村振興局でございますけれども、私は農村振興局で農村環境保全室長をやっております川合でございます。隣におりますのが事業総合調整室長をやっております五十嵐でございます。この2名でもって今日の説明に当たらせていただきます。今日ご説明いたしたいと考えております資料はお手元の「環境に配慮した農業農村の整備」という15〜16枚の冊子でございます。
 私どもがこの5年間を振り返ってみますと、恐らく大臣官房からご説明があったと思うのですけれども、食料・農業・農村基本法の制定あるいは近年では土地改良法の一部改正が行われております。特に食料・農業・農村基本法の中で食料の安定供給の確保のほか、多面的機能の発揮、あるいは農業の持続的発展、農村の振興ということがございます。私どもは従来、構造改善局と言いましたけれども、それと今回の農村振興局の違いの部分は、従来ですとどちらかというと生産にシフトした対策が行われておりましたけれども、今回の省庁再編を通じた中で農村地域という扱い方を打ち出しているということでございまして、農村地域が生産と生活一体の場であるということに基づいて総合的な施策展開を図っていくことになっております。農業の持続的な発展を図る上ではどうしても地域の特性に応じて環境との調和に配慮しつつ、事業を効率的に実施することが私どもの役割でございまして、その中では農地の区画の拡大、あるいは水田の汎用化、農業用用排水施設の整備・保全、このようなことをやっております。
 農村の振興に関して言いますと、従来は先ほど言いましたようにどちらかというと生産対策を中心に生産基盤の整備をやっておりましたけれども、それにあわせまして他省庁と連携しつつ、交通なり情報通信なり衛生、教育、文化等の生活環境の整備あるいは福祉の向上を総合的に推進する。これはあくまでも他省庁と連携しつつということでございまして、農林水産省の施策、事業そのものは一部そういうものに関わる部分がございますけれども、すべてを取り込んだものではないということでございます。さらに、先ほど中山間地域の直接支払いのお話がございましたけれども、中山間地域等の振興を図る定住促進、多面的機能の確保ということから直接支払い制度等の導入を図っております。
 私どもはこういう基本法の流れを受けまして今年度、土地改良法の一部改正を行いまして、第1条の目的規定に環境との調和への配慮という趣旨を入れました。また、地域の意向をより的確に反映させるため、『市町村長からの意見聴取』を『市町村長との協議』に改めて土地改良事業を進めることとしております。恐らく公共事業の中では珍しいと思うのですけれども、住民意見の聴取という仕組みを土地改良事業制度の中に取り込んでございます。これは従来行っております土地改良事業の3条資格者といわれる人たちのご意見ではなくて地域住民を中心とした方々から意見を聴取することを法制しているということでございます。
 前置きが非常に長くなりましたけれども、農村振興局の施策展開の基本的な考え方が時代の流れあるいは国民の要望に応じて変わってきていることをお伝えして、次に資料のご説明に入りたいと思います。
 資料3の1ページを開いていただきたいと思います。
 目次に4項目ございまして、農村地域の二次的自然環境、それから2、3といきまして、最後にいきまして農村の環境保全と利用ということで締めくくってございます。私、1番と3、4番をまずご説明させていただきまして、それから五十嵐室長にお渡ししたいと考えています。
 農村地域の二次的な自然でございますけれども、もともと農村地域は生活と生産の活動を重層的に持っている場所でございます。そこでの環境は言ってみれば自然と人の動き、活動が織りなしてでき上がっている縄みたいなもの、縄で寄り合わされたような形態の自然であろうと考えております。その要素は水田とか畑等、周辺の雑木林や屋敷林あるいは水路とかため池という農業施設、それから人が住んでいる住居すら含んで、そういう地域の生物相が育まれ、あるいは多様な生態系が形成されているだろうと思います。また、このような自然環境を日本人、私たち国民は美しい良好なものだと理解し、あるいはそういうものに懐古するといいますか、懐かしいふるさと意識を持っているだろうと考えております。
 これらの自然や景観がどういうふうに維持管理されてきたかを考えてみますと、先ほど申し上げましたように結局は生産と生活、こういう下で初めて現在の二次的な自然環境が維持形成されている。しかも、この維持形成されている自然環境は一点にとどまって固定されているものではなくて、やはり時間とともに推移していっているものだろうと考えております。特にこういう農村地域で例えば耕起、草刈りあるいは水管理等の人為的なストレスが生態系に与えられ、その結果として生物が多様であったり、あるいは貧弱であったり、いろいろな多様な状態が生まれてきていると考えております。
 2ページ目をお願いします。実は私どもは先ほど言いましたように基本法の中でも、あるいは土地改良法の中でも自然環境との調和への配慮ということを非常に強く主張しております。そういう意味でいきますと、それを担保していくためには農村地域における自然環境情報の十分な把握が必要だろうということで、平成13年度からは環境省とも連携いたしまして「田んぼの生きもの調査」を全国展開しております。こういうふうに得られたデータ、それから他省庁あるいは地方自治体等で得られたデータをデータベース化して全体の環境マップみたいなものをつくりまして、いわゆる環境配慮の事業が全国展開できるように情報整備を図っていこうと考えております。この情報データベースについては平成14年度から着手するべく財務省に予算要求をしている最中でございます。
 次の環境との調和に配慮した農業農村整備事業につきまして五十嵐からご説明を申し上げたいと思います。

●農林水産省農村振興局(五十嵐) 続きましてご説明させていただきます。
 3ページ目でございますけれども、農業農村整備事業という言葉が出てまいります。これは今まで土地改良事業と呼ばれていたものでございまして、昭和20年代の頃から食料増産を対象といたしまして大きなかん排事業とか開拓事業をするために土地改良法をつくりまして、それでずっとやってきたものでございますけれども、最近、私どもの役所の方では土地改良事業だけでなく農村の整備もやらなければいけないということで、そういう意味も含めまして農業農村整備事業という名前で仕事をしてございます。全体の予算が今年は国費で1兆 700億円ほどあります。大変大きな金額でございまして、立派な仕事をしなければいけないと思っております。
 今お話しさせていただきましたけれども、次のページの食料・農業・農村基本法という農政の動向のところに書いてございます。目的が農業者や農業関係の産業に対するものだけでなくて、食料生産のみならず農村対策ということでございまして、食料もそうですけれども、みんなのための事業をしなければいけないという反省のもとに基本法の目的が変わりました。その中で多面的機能という言葉のご説明がありましたけれども、これに合わせまして土地改良事業の関係につきましても24条で環境との調和に配慮することが明文化されてございます。これを受けまして今年の6月に土地改良法の改正を行いまして、土地改良事業として有すべき条件ということで何点かあるのですけれども、その基本的な事項の中に環境へ配慮しなさいということが大きく義務づけられました。これが今度の法改正の最大の目玉になってございます。
 3ページ目に戻っていただきたいのですけれども、農業農村整備事業は農村に張り巡らされた水路網と農地が生み出す環境の保全・整備をやっていきたいという話をさせていただきました。農地と水路のネットワークということで環境という側面からいたしますと、国土保全の水資源涵養の問題とか景観なり、リサイクルの問題なり、あるいは田んぼの学校なりで教育関係もやってございます。そういうことがあるのですけれども、従来そういった機能に着目した環境対策を、田んぼの関係はごく最近の話ですが、やってまいりました。しかし、例示の2番目の環境と生態系の保全という意識では必ずしも私どもは仕事をしてこなかったという反省のもとに、例えば水路の改修などをやる場合、景観への配慮ということはやっていました。公園を少しつくったらどうかとか石垣の水路にしてはどうか、そこまでは考えたのですけれども、それが生物にとってどうなるのかというところまではあまり頭になかった。
 次の4ページ目に仕事の流れの展開と限界という意味で少し書かせていただいたのですけれども、一番下がハード事業の関連でございまして、平成3年に土地改良事業を実施する時に事業費のある一定のパーセントまで環境整備をやってもよろしいということを部長通達で対応してまいりました。それ以外の環境対策につきましては土地改良事業とは別の形で、例えば生態系空間を形成するための事業ということで自然環境保全整備事業と書いてありますけれども、それから地域用水事業とか、こういう別の事業を立てることによって仕事をして参った経緯がございます。
 また、平成11年に地財措置ということで、土地改良事業関係で環境に対してやることについては事業費のある一定の率(10%)まで地財の措置で組もうということをやってまいりましたけれども、どちらかといえば別事業なり何なりでこれまでやってきたということだったんです。これが今度、私が申し上げたいのは土地改良法の改正によりまして本体の土地改良事業そのもので環境対策をやるようにしなければならなくなったということで、そういう政質の大きな変化があったということでございます。
 このソフト施策のところでいろいろあるのでございますけれども、ぜひご紹介させていただきたいのは真ん中辺に平成9年、市町村農村環境計画という項がございます。これは環境省も市町村の環境計画をつくられてございますけれども、私どもは農村部の農振地域を中心とした環境の計画をビジョンという形でつくっていただいております。しかし、土地改良法の改正で環境配慮が義務づけられていないこともありまして、これに取り組まれた自治体の数が非常に少ない。120 しかないという実態にございます。環境配慮は今までどれだけやってきたのかということですけれども、国営事業の大体半分、県営事業で3割もいかないぐらい。これは特別の環境型事業も入れてということでございまして、その割合はまだまだ小さい。仮に取り組んだ内容についても必ずしもすべて立派に取り組めていると言えるのかどうかということもあります。
 時間がありませんので、5ページだけ簡単に紹介させていただきます。
 今年、平成14年度の施策につきましては武部大臣の指導のもとに「美しい国づくりに向けて」というプランのもとで農村においても美しいきれいな水、きれいな空気、美しい自然ということで「都市と農村の共生・対流」を目標としてございます。農村があって都市があるし、都市があって農村が成り立っているという相互作用の循環の中にみんなが生きて、それが持続できればいいのではないかという考え方のもとに仕事をしていこうということでございます。その施策の中として予算的なものにつきまして『田園環境の創造』がありますけれども、そのために田園環境マスタープラン、環境省との連携ということを位置付けました。これは国立公園との連携事業を環境省とぜひやりたいと思っています。
 6ページ目を見ていただきたいと思いますけれども、私どもの乏しい知識で土地改良事業と環境との調和をどういうふうにやったらいいだろうかということをいろいろ考えました。構想の段階ということで田園環境整備マスタープランを市町村にビジョンとして持っていただこうと、それは先ほどの市町村の農村環境計画の数が少ないということによるわけです。
 この田園環境マスタープランとは一体どんなものかということにつきましては、その次の7ページ目にごちゃごちゃした絵を描いてございます。青く色を塗ったところが環境創造区域でございまして、従来そういう環境にはなかったのですけれども、一歩進めてそういうものまでやるという区域です。例えば批判を受けました三面張りの水路を側溝だけの水路にして、魚巣ブロックなども入れて今までよりはずっとよくするようなことが環境創造区域ということになります。環境配慮区域と申しますのは、いろいろ工事をやりますときに生物種を移動させたり、貴重な資源があるときはそれを迂回するとか、環境に配慮しながらやっていこうという区域でございます。また、この中に水路と農地だけではなくて既存の緑ということで里山とか、こういうものもあわせて田園環境整備マスタープランとして作っていきたいと思っております。
 これは平成14年度の新規補助事業、国営事業におきまして全国で約 1,300地区ほど採択いたしますけれども、これを平成14年度事業を行う市町村は全部つくってもらおうと思っております。大体 500〜 700市町村で事業をやり、大体3カ年ぐらいやることになるかと思っております。予算措置はありませんけれども。
 6ページ目に戻っていただきまして、その構想づくりを今年は緊急ということで田園環境マスタープランという形でつくってもらうのですけれども、土地改良法の改正が来年4月から適用になります。そうしますと、事業が採択になりますときに事業の中身をどういうふうにするかということで皆さんがいろいろ相談されて計画づくりをやることになります。計画をやりますときに環境についての調査を義務づけたいと思っております。また、この土地改良法の中で住民の方がこの事業の計画について意見を言うことができるという権利規定を法律事項にいたしましたので、周りの住民だけではなくてどちらの方も事業主体に対して意見を言うことができる形になってございます。また、構想づくりでもマスタープランのところでも事業の計画を環境絡みも含めましてつくりますときに住民も参加する。今度は法律的に事業計画の内容は市町村の協議事項になりましたので、そういうこともありますけれども、いろいろな形で予算化していただくということで、そういう仕掛け(マスタープラン)を考えていきたいと思っています。
 また、環境問題は専門性がありますので、経験の乏しい我々関係者はそういうことにつきましていわゆる環境相談員という資格制度を将来的には来年度以降つくっていきたいと思います。高等学校の先生とかNPOの専門家の方を登録させていただいて、この環境マスタープランをつくったり、事業の計画をつくりますときにいろいろご指導していただけたらいいと思っております。事業を着工するときには環境の協議会組織的なものもつくりまして、県の段階なり国の段階なりで、そこで地元から出てきました事業の計画が環境に配慮されているのかどうかを第三者的にも見ていただく仕組みもつくっていきたいと思ってございます。
 8ページ目はご存知のとおりアメリカの環境政策法に基づくミティゲーションの5原則でございまして、湧水池も生態系維持に必要なものであれば保全して整備するなり、道路でもルートを変えるなり、最小化の方は一番パターンが多いのではないかと思いますけれども、できるだけ環境に負荷を及ぼさない形のもの、それから修正なり軽減なり代償という形でやっております。マスタープランのところで申し上げましたとおり、単なる回避、最小化だけでなくて、今まではできなかったけれども、今度せっかくやるのならここまでという考えも持って取り組んでいきたいと思ってございます。
 先ほど外来種の取り扱いのお話がございまして、私どもも水田や水路についてどういう生物がいてどういう行動をとっているのかということを素人ながら整理もいたしたところでございますけれども、2月以来延べ10回ぐらいにわたりまして専門家の先生方に審議会の場でいろいろご指導を受けているところでございます。私どもは全く考えてもみなかったブラックバスといった外来種の問題が出てきたこともあり、今ある古来の種、生態系を保存するという観点から管理していくことも考えております。また、待機ぐるみの管理例もあります。
 いずれにしても景観なり、そういうレベルの環境配慮対策から今申し上げましたような生態系も含んだ環境の方に大きくシフトする。土地改良法の環境というのは、ぜひそちらの方にもシフトさせまして、今年は用水路、ため池を中心に環境に配慮した土地改良事業をやる場合の調査・計画のやり方なり設計のやり方の手引を作ろうとしているところです。これを、来月からパブリックコメントをして、とにかく代表的な土地改良施設について取りかかりをしたということでございます。これからさらに例えば農道をどうするか、ダムをどうするとか、それから植物というか水生植物の知識もありませんけれども、水生動物、魚類の専門の先生方の意見をよく聞いて試行錯誤しながら前に進んでいこうという取り組みを進めようとしているところでございます。

●農林水産省農村振興局(川合) それでは、続けて9ページをお願いします。環境に配慮した事例ということでご説明したいと思います。
 先に一つだけ加えておきますと、土地改良法で行っている事業は受益者が費用を負担いたします。いわゆる土地改良事業で事業を実施いたしますと、当然その受益たる農地を保有している人がその費用を負担するという事業です。もう一つは、土地改良事業自体は申請主義でございます。いわゆる3条資格者が15人以上集まって事業を申請してくるという事業でございます。そういうものが中心になっていることをあらかじめご説明しておきます。先ほどいろいろな場面で出てまいりましたけれども、その関連で環境配慮施設をつくった場合に誰が維持管理するのかという問題、誰が費用を負担するのかという問題が非常に長く重くのしかかってまいります。
 まず、9ページは岩手県の胆沢平野で行っています圃場整備を中心とするいさわ南部地区の事例でございます。この地域はいわゆる散居形式で、それぞれ1軒1軒が暴風・防雪林を持っております。水路はその屋敷に沿って曲がりながら配置されているということでございまして、この地域を整備するに当たりまして水路とため池の生態系ネットワークを組むという考え方で水路配置を考えております。水路に隣接する樹林等については極力保全するということで、例えば私どもが事業をする場合、経済的効率性を見れば直線水路にするのが一番安いんですが、地域住民の合意が得られましたので、この散居形態に沿った格好での水路配置をしながら生態系ネットワークを組んでいくということを行っております。
 10ページでございます。これは農業用水路の整備の事例でございます。左側が極力自然に近い格好で整備しましょうということで、断面的には農業用水路としての流量が流れるような設計になっております。これは群馬県桐生市にあります岡登用水地区でございます。
 右側が栃木県上三川町にあります神主地区でございます。これは左側の地区と少し違いまして多少人工的な色彩を持っておりますけれども、魚巣ブロック、自然石による護岸、植生等をやっておりますし、隣接したところに湿地帯をつくってトンボの生息環境のビオトープをつくるということで自然観察をも兼ね備えた環境整備をやっております。
 11ページでございます。これはため池の整備事例でございまして、大阪府岸和田市にございます久米田池でございます。ため池は本来、水をためておく施設でございますけれども、そこに浅場をつくりまして水鳥が飛来できるような環境条件をつくっております。
 12ページでございます。これは栃木県河内町の河内東部地区でございます。ここは湧水地帯で、圃場整備をする際に湧水が幾つかございました。この湧水地帯に農業者から共同減歩でもって土地を生み出して、生態系保全のための保護地区をつくったということでございます。土地を提供するというのはなかなか難しい問題でございますけれども、圃場整備等の換地手法をつくって生態系の保全空間をつくったという事例でございます。
 13ページは岐阜県谷汲村で構想したものでございます。これは谷地田のちょうど頭のところに休耕田がございまして、荒廃していたところに地域の谷汲小学校の先生方とご相談して、カエル、トンボ等を中心とした里山と農耕地の間の生物相ができる生態系ネットワークの構想でございます。この中では道路の付け替えをする他、この道路の下には当然、カエルが移動できるようにボックスカルバートでトンネルをつくる等が考えられています。
 14ページでございますけれども、これは実は生態系保全のための施設等をつくりますと維持管理と費用負担が非常に問題になってまいります。私どもは生産施設については農業者に費用負担をさせるという格好でやっておりますから、当然、自然環境について恩恵を被る方々が費用負担をすべきであろうと考えております。その際、それを地方公共団体が肩代わりするか、あるいはNPOなりNGOなりが参加して費用負担をしてくるのか。形式はいろいろとあろうかと思いますけれども、受益に応じた費用負担の公平が必要だろうと思っております。この事例は地域に市民団体が参加してきて労力奉仕をして清掃・草刈りをやる。もう一つは水にまつわる祭りをして地域を開放し、そういった市民団体の方々が中に入り込めるようにやって環境学習をしていく。小学生についても地域の用水路の清掃あるいは花壇の植栽等については自ら参加するような形態をとっております。これは山形県の寒河江川下流地区の事例でございます。
 15ページでございます。計画づくりからの地域住民の参加という問題で、栃木県河内町で行いました西鬼怒川地区では地域住民自体がワーキンググループを設定して、あとは専門家のアドバイザーグループ、それを統括して行政を中心とする西鬼怒川エコビレッジ推進委員会をつくって、ここで計画を策定して実際の行動に移っていく。将来的にいいますと、このワーキンググループ部分が実は維持管理の主体になってまいります。年間何回かの草刈りや安全施設の整備についてワーキンググループが現在、多少主体になりつつあるという状況になっております。ただ、いろいろお話を聞くと、忙しいのに何であの水路の草刈りに出ていかなければいけないのか、地域に一緒に住んでおられる都市住民の方々は草刈りなんかやったことはないよという話になりまして、地域での意思統一はなかなか難しい問題を含んでいると思っております。
 16ページでございます。環境と教育という問題です。これは直接的な話なのですけれども、私どもの農業用水施設は都市外縁の発展に伴いまして都市区域の中を通っている水路施設が結構多うございます。そういうものがたまたま例えば小学校の横を通過している場合に小学校の中を迂回させて、その中にエコパークをつくるようなことをやっております。これは東京都日野市の潤徳小学校の事例でございます。同じような事例は愛知県の明治用水土地改良区も土地改良区と豊田市の協力で小学校にこういう施設ができ上がっております。これはありがたいことに農業用水は消費するものではなくて通過させればいいので、水源手当は考えなくてできるということで有意義に活用していただいております。
 17ページでございます。そうはいいましても、環境環境と言ってもそこで人が生活できなければ環境は成立しない。特に二次的自然環境は人の営みが継続され、かつその地域が発展してこそ初めて環境が維持されると考えておりまして、写真は左側が能登の田毎の月の棚田でございます。
 右側が京都府美山町の茅葺きの居住群落でございます。これはすべて人が住んでおります。こういう中で都市と農村の共生、交流、現実に物事が進めば自然な対流が起こって美しい村がぜひ保全され、国土全体が環境保全される状況に持ち込めればと考えながら農村振興局では農村地域の活性化という問題に取り組んでおります。
 以上でございます。

●辻井委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、ご質問、ご意見を今伺っておけばよろしいかと思います。

●瀬田委員 2点ございます。初めの方のバイオのことにも関連するのですが、今日今までお聞きしている中には畜産草地の話が一切なかったんです。
 畜産の話で申し上げるならば、日本の多様性ということから言えば大型な牛とか馬を飼うのと、もともと日本にいるシカなりイノシシなりの中型哺乳類を、バイオなり何なりでどうするのかわかりませんが、もっと食用にしていく方法が考えられるのではないか。その時に、山林も含めてかもしれませんけれども、日本の草地をどういうふうに考えれば良いのかということです。実は「消費者のニーズに」というのが私はあまり気に入らなかったんです。アレルギーという問題がある。いわゆる食物そのものを変えてしまうあるいは長持ちする食品へということよりも日本に在来からいる動物を食用にしていく方法をお考えいただけなかったのかというのが一つあるんです。
 もう一つは採草放牧地です。実は森林・原野という時の原野(採草放牧地)はあくまでも農地ですから、その中のいろいろな貴重といいますか、草原の植物あるいは昆虫は結構重要な位置を占めていると思います。今までのお話ではほとんど物をつくる、あるいはつくり方の方向転換のお話を伺いましたけれども、いわゆる草地を管理するといいますか、あるいは草地をそのままに草原を残しておく方法についてのコメントが全くなかったので、その辺をお聞きしたいと思います。

●辻井委員長 いかがでしょうか。草地あるいは畜産関連でございます。

●農林水産省生産局(福嶋) 畜産の点については作物も家畜も同様かと思いますけれども、生物の多様性の生産場面での利用ということでは同じかと考えております。遺伝資源を活用した作物、家畜の品種改良は取り組んできているところでございますし、今後も引き続き取り組んでいくということで、生物多様性の持続的な利用を図ることについては作物についても私の方からご説明を申し上げておりませんでしたが、生物多様性の利用という意味では農業は植物・動物の多様性を基本として改良して活用してきているという意味では引き続き取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

●農林水産省農村振興局(川合) 一つ、私どもが先ほど説明しました施設整備とか、どちらかというと水田の整備の話ばかりいたしました。その中でどう配慮しているかということもお話ししましたけれども、いわゆる草地での管理技術の問題は確かにございます。いわゆる耕作、耕起する農地に比べれば確かに草地の方は改良水準が低く、管理の手の入れ方が少ないということがございます。ただ、少ないがゆえに地域地域の気象特性なりに合致しない草種はどんどん衰退してしまって、より自然に近いところにいくであろうということも想定されます。そういう採草放牧地は阿蘇の採草放牧地などで見られますように恐らく適度に人の手が入らない限り維持できない。
 もう一つは、畜産などからしますとギシギシなどは撤去しない限り非常にまずいと思います。例えば九重山系などではアセビが生えてまいります。これは牛が食べたらコロッといってしまう状態のものですから、そういう毒草なり毒木なりを排除する作業もしなければならない。その際、そういう草地系の中では乾性のときに生えてくる希少な野生植物、それから野鳥類が生息環境の中で繁殖するものでございますから、当然その中で一定程度の人の活動との調和を図りながらそういうものが確保されてくるような管理への配慮が必要になってくるだろうと思っております。

●山岸委員 水田のことに戻ります。長いご説明を受けたのですが、やはり僕は生物多様性と農業の関係がいま一つよくわかりません。
 結局は岩槻先生が最初に言われたこととまた同じことを僕も繰り返すことになるのですが、その理由は資料3の1枚目に農業と環境の関係という図がございます。これが甘いのではないかと僕は思うんです。どういうことかというと、一番上の健全な農業生産活動を展開すれば国土環境の保全、水資源の涵養とか多面的な機能が発揮できる。生物多様性というのは恐らくここに入っていると思うんです。ですから、この資料でいくと健全な農業生産活動を展開すれば生物多様性は戻ってくる。このくらいの考えでは恐らくろくなものが出てこないと思うんです。
 その次にできれば「生産あるいは効率を重視した農業」という四角を入れまして、右へ引いて、それをやると「生物多様性が減少する」という四角をつくる。そうしますとどういうことかというと、その下に描いてある絵があるのですが、生物の多様性を減少するというのは全部人間がとろうとするから、例えば雑草を取って昆虫、鳥も取って、そうやって全部とることによって水田の生物多様性が減っていくと思うんです。
 今月多々説明されたきれいな資料にあるように、こうやればトンボが戻ってくるとか、こうやればうまくいくとか、非常に個別な各地域のうまくいった例だけを並べてあたかも水田の生態系が戻ってくるような、健全な生物多様性が戻ってくるような風になっているが、もっと全国にある1枚1枚の水田の中で何が起こっているかということを考えない限り水田の生物多様性は取り戻せないのではないか。そうすると、先ほど鷲谷委員が言われた昆虫をどこまで許して、雑草を許して、鳥を許すのかというところあたりをどうするかが一番重要になるのではないかと僕は思います。

●農林水産省農村振興局(川合) お答えします。
 実は私どもは今、環境省と連携して佐渡のトキの再生問題に取り組んでおります。恐らく生物多様性の問題あるいは絶滅種の日本での再生の問題は人間自らがその生活体をどこかで、その生物種あるいは自然と自らを調和するように変えていかないと恐らくできないだろうと考えております。水田の生物多様性の問題ですけれども、生物の多様性という観点から言えば水田の乾田化、用排分離、用水路のパイプライン化、コンクリート水路化、こういうものは恐らく先生方から見ますとすべて多様性を阻害した要因であると見られると思います。一方では、やはり食料の安定的確保、生産性の向上は私どもの宿命でございまして、やはり国民の安全保障、食料確保という面からいくと欠かすことができない。基本的にそのバランスの問題と生物多様性の絶対価値観という問題、この辺の世論の統一がない限り達成できない。
 佐渡の地域で申し上げているのは、地域の問題はまず地域で考えなさい、あなた方は自分の犠牲を強いた上で自らが行動できますか、その覚悟がない限り下手にトキの再生なんて地域で言わないでくださいという話になってくるだろうと思います。やはり私ども人間が生物種の一つとしてその中に全体として組み込まれていくようなシステム、いわゆる共生のシステムをつくっていかないと先生が言われましたような生物多様性の問題についてもきれいごとに終わってしまうと考えております。

●服部委員 お答えが非常に難しい質問だったと思いますので、私は答えやすい簡単な質問をさせていただきたいと思います。
 田園環境整備マスタープランづくりというのがありましたけれども、あるいは環境相談員を置かれるというご説明があったのですが、これは土地改良法の中で行政指導なのか、あるいは法律の中で位置づけされたことなのか、これでは理解できなかったので教えてください。
 土地改良が非常によくなってきた絵を見せていただいたのですけれども、これまでやられてしまった土地改良が随分ありますね。申請制というお話があったのですが、それは全体計画としてこれまでどのぐらいやられて、これからどのぐらいの感じで進められるようなことを考えておられるのか、行き当たりばったりの計画なのか。
 もう一つは最後に地域住民で水路の手入れとか管理について農村的な生活をしている人と都市的住民との間でいろいろ感じが違うとおっしゃいましたけれども、そもそも水路の改良とか土地改良をするところで都市的居住者が多いようなところと農村地域というのか、土地改良をするところの区分けはどういうふうに調整されるのか、その3点です。

●農林水産省農村振興局(川合) 一番最後の都市的住民と農村的住民、いわゆる泥をなぶることを汚いと思わない人と泥をなぶることを汚いと思う人という世界の話をしましたけれども、土地改良事業は現実には例えば名古屋市の真ん中とか、東京でも何十万という人が住んでいる間を通過していっている水路は多々ございます。そういう水路はどちらかというと従来であれば、生活雑排水の流し込み、あるいはゴミ捨て場にされたりして非常に汚れておりました。ただし、都市住民の方々はどちらかというと自分の庭先の前に落ちているゴミは電話して地方自治体に拾わせるという性格が相当強うございます。生産施設ですから、農村の方々は自ら管理していくという意思が強うございます。そういう中で調和させて、例えば費用については市町村が負担し、実際の管理作業は土地改良区が行う。あるいは、受益数が非常に少なくなって管理母体ができなくなってしまったところは、施設そのものを行政に移管してしまうようなやり方をやっております。

●服部委員 甚だ不勉強なのですが、土地改良用の水路というのは決まっているわけですね。

●農林水産省農村振興局(川合) ええ。土地改良法でつくりました土地改良財産という格好で法的に決まっております。

●服部委員 河川とは違うわけですね。

●農林水産省農村振興局(川合) 河川ではございません。

●服部委員 わかりました。

●農林水産省農村振興局(川合) 土地改良施設は人間が生まれてから延々と歴史的に積み上げてきた施設が多うございます。何百年、下手すると1,000 年近い施設が多々ございます。そういうものを含めて私どもが管理しております。

●農林水産省農村振興局(五十嵐) 田園環境マスタープランとか相談員は法律関係の事項かということですけれども、法律関係の事項ではございません。田園環境マスタープランは、これに先駆けて4年前から市町村農村環境整備計画を先ほどご紹介いたしましたけれども、あれをもう少しスピードを上げてやっていただくために環境整備の目標とか、構想づくりとして行うものです。
 ただ、法律事項でもなければ権限がないのではないかということかもしれませんけれども、これは土地改良法の中で先ほど申し上げましたように環境配慮が守らなければならない法律事項になりました。それに伴いまして、これについても事業の計画認定しますときに専門技術員の意見を聞くことになっております。これは土地改良法に基づく事項として書いてありまして、それが適正なのかどうかという意味合いです。意見を聞く事項としては費用対効果の話もありますし、土地利用の達成の可能性とか、そういうものもあるのですけれども、その中に環境配慮に対する事項への評価ということが書かれることになった訳です。したがいまして、法律事項的にはそういうものがあるわけですけれども、いきなり環境の先生方がこれに署名しろと言われたとき、環境の調査もしていなければ環境のビジョンもなければ、判断できないという話に必ずなるはずです。したがって、たどっていけば必ずそういうものが必要になるでしょうということで、そうした仕組みを設けているところでございます。
 土地改良事業の実績とか今後の計画という関係ですけれども、これも土地改良法に長期計画という法律事項がございまして、農林水産省の土地改良事業の場合は期間が十数年ですけれども、現計画は来年いっぱいまでで再来年には改定するということにしてございます。中身につきましては、面の整備については整備水準が例えば現在は面積で55%ほどですけれども、これを何%かという目標に関して言えば食料増産の関係で一定の水準を目標にすることになります。線の関係については水の水路とか、そういうものはほとんどこれから改修の仕事でございますので、新しくやるというものは少ないと想定しています。
 あとは農村整備の関係で、今までの基礎的な環境整備であったものが今度はいろいろと福祉関係とか情報化とかリサイクルということも出てくることと思います。ただ、これも財政の関係がいろいろございまして、どういう形でつくるのかということはこれから調整しなければいけない状況にあります。

●三浦委員 資料3の整備事業の例を見せていただいたのですが、この中に要望といいますか、そういう話で言いますと積極的に手を加えないというか、要するにいじらないという位置づけはないんですか。

●農林水産省農村振興局(川合) 実際にそういう事例はあります。要するに、地区除外をして放置してしまうということです。例えば山際のゲンジボタルの水路はいじる方がむしろ危ないということで、その水路をそのまま放置して新たに水路を別途つくるという回避措置を講じた地区が幾つかあると思います。

●三浦委員 実は曲がりくねった水路や昔ながらの前面に草が生えるようなため池は生物多様性にとって非常に大きな拠点であったんです。位置づけとして積極的に残していくという施策がこの整備事業の中にあるべき。先程のデカップリングも含めたような制度も積極的に導入していきながら、全部が全部食料生産オンリーという格好ではなく、生物多様性を大きく維持してきた日本の農業あるいは生産のタイプを積極的に戻していくことが必要。公共事業を入れないというかハードを入れないような施策をきちんと政策的に位置づけていただきたい。
 もう1点ですが、先程のは象徴的な例だと思うのですが、これはコウノトリとかトキなどは農村自体の生態系が存続し、川の魚が育つようなつまり切り立った三面張りが極力少ないような生態系の中で成立していく生物相です。これは一種の日本の農村の生態系を回復するというシンボルとしては農林水産省として積極的に取り組んでいけるのではないか。先程地域の人が生産基盤として、生産がすべてだという位置づけだったけれども、そういう生態系を回復させることについては積極的に位置づけて、推進する方向が多様性の点でいけばシンボル時に重要だと。

●鷲谷委員 農業の方へのお願いですけれども、2つあります。
 1つは野生鳥獣と農業被害という具体的な問題について解決に向けての基本的な考え方を戦略の中に書いていただけたらと思っています。生息地の調査、農業被害の十分な調査を踏まえて、棲み分け的なことも含めて、被害を防ぐための有効な方針を検討していくことが今求められていると思うんです。
 今は対症療法的に有害駆除がなされていますけれども、被害もかなり大きいと思うんです。農家だけに負担を押しつけるような形ではなくて、やはりデカップリング的な政策で共存・共生していくためにということを考えると、どうしてもその辺の方針の検討が必要になると思います。
 もう一つは園芸についてですけれども、園芸も農業の領域でよろしいんですね。まず一つは園芸用の乱獲で植物の絶滅危惧種が非常に多くなっているという問題があります。また、園芸で使われていた植物が逃げ出して外来種になっていることもあるんです。園芸と生物多様性というのはかなりいろいろな関係があると思うのですけれども、その辺の検討といいますか、生物多様性の保全に配慮した園芸のあり方みたいなものについても考えていただく、あるいは国家戦略の中に書き込んでいただけたらと思います。

●辻井委員長 よろしいですか。今の園芸用の乱獲とおっしゃったのは自然のものをとるということでしょうか。

●鷲谷委員 自然のものをとるということと、それを使った栽培ということになると思います。

●農林水産省生産局(福嶋) 全体の位置づけの中で環境省なり関係省庁ともまたご相談させていただきます。

●辻井委員長 それは含んでお考えいただければと思います。ありがとうございます。
 他にいかがでしょうか。

●篠原委員 農業農村整備事業計画については随分方向転換したなと思っているのですが、いろいろ危惧される面もある。まず第一に確認したい。先程言われた1兆何百億円を使う、農業農村整備計画の対象は700 市町村ぐらいだというお話がありましたけれども、予算は年間どのくらい使って何年計画ぐらいでおやりになる予定でしょうか。

●農林水産省農村振興局(五十嵐) お尋ねの件は田園環境マスタープランのお話かと思います。
 田園環境マスタープランの関係につきましては予算措置はありません。来年、事業を着手する市町村に自力でつくっていただきたいと思っています。今年は11月ぐらいまでにつくるようお願いしています。来年の予算は、これの専用ということではありませんけれども、別の予算が流用できるものも中にありますので、そういう中でやりくりしてもらいたいと思っております。事業を実施するときには環境の調査をズバリやらなければいけません。ですから、田園環境マスタープランのような構想レベルではなくて、実際にそういう工事なり何なりをするとしたら、その工事箇所やその周辺にどういう生物があって、どういう影響があるのかというほぼ具体のものをやらなければいけない形になりますので、構想づくりの方は自助努力でやっていただきたいと思っています。
 マスタープランは、市町村の方でもいろいろ既存のデータがおありでしょうし、5年ぐらいを目標ということにしておりますけれども、その中でゾーニングしていただいて、環境整備の目標をどういうふうにやるのかという構想のような形のものをやっていただこうかと思っております。それで5年の間ですからいろいろな仕事も出てきますので、そうすれば、見直しもしなければいけなくなると思います。ただ、何もビジョンもなくていきなり工事着手でいいのかということで、先ほど三浦先生から環境シンボル的な話がありましたけれども、田園環境マスタープランで環境に対するシンボル的なものをぜひ出してもらいたいと思っております。

●篠原委員 そうすると、田園環境整備マスタープランは地元でお金を出して、あるいは人を出してやってくださいと。それをつくった後、6ページのフローで言うと事業実施になってようやく調査費がつくという理解でよいのですか。

●農林水産省農村振興局(五十嵐) そのとおりです。

●篠原委員 計画のところから調査費がつくのですか。そうすると、その1兆幾らというのは何のお金ですか。

●農林水産省農村振興局(五十嵐) これはこの事業の実施なり計画なり、いろいろ入った全体のものでございます。農業農村整備事業の全体の部分でございます。

●篠原委員 工事費ということですか。

●農林水産省農村振興局(五十嵐) 工事費もありますし、計画調査費もありますし、人件費とかいろいろありますので、そういうものです。

●篠原委員 私の専門はどちらかというとプランニングをでして、川のデザインをお手伝いしている立場から言うと、700 市町村も短期間に計画をつくる。昔、建設省がやった「みどりのマスタープラン」がそんな感じだったと思うのです。これは非常に画一的なものになっているんです。だから、そういうプランのつくり方で本当にいいのかというのが一つです。それから、700 市町村がやるとすると、そういうプランづくりを担える専門家がどのくらいいるだろうかということです。
 この会議もそうですけれども、私が川のデザインをやっていて実感することは、魚の専門家の方、植物の専門の方はいるが、魚の専門家の方は魚のことしかわからないということがよくあります。つまり、農村田園で全体としてどうバランスよくプランをつくって、実際に施設をどうデザインするかという話はまた別の専門家が必要なわけです。残念ながら日本の社会はそういう知恵にあまりお金を出してこなかった経緯がありますから、そういうプロが非常に少ないんです。ですから、このままのスタイルでやると、「みどりのマスタープラン」のことを言って申し訳なかったですけれども、かつて全国一律にコンクリートで水路を固めたような失敗がまた来るかもしれない。
 ちょっと拝見すると、例えば10ページの右側はかなりレベルの低い整備だと思いますし、11ページの魚巣ブロックというのは昭和40年代に河川局が随分やりましたけれども、ほとんどうまくいっていない。生態的にもうまくいっていないし、景観的にもうまくいっておりません。申し訳ないですけれども、この事業については僕の今までの経験から言うとかなり疑問を持っております。事業のやり方を環境省と一緒になって話されるという話なので、ぜひとも今までの問題点が何で、その教訓を踏まえると違ったやり方をしなければいけないということは相談してほしい。先程保全地域を残してほしいという話がございましたけれども、このままやるとかえって農村の風景が画一化するかもしれない、あるいは生態系も貧相になるかもしれないという恐れを感じたものですから申し上げました。

●岩槻委員 農林水産省も環境の問題にも非常に積極的になっているという姿勢は十分理解させていただく上で、それでも、さまざまな問題点がまだ残っているということです。生物多様性国家戦略の現行版が出た時に、これに対する一番強い批判は各省庁からの作文をたばねただけではないかというご批判があったと思うんです。まず生物多様性のサステイナブルユースは農林水産省として一体どういうふうにお考えになるのかがはっきり出てこないと統一されたものにならないと思うんです。
 先程から私は里山のことをこだわって何度も言っていますが、里山というのはご存知のように自然破壊の産物なんです。もともとあった自然的な要素にプラスして、そこに住んでいなかったさまざまな生物が入ってきているものだから多様度が非常に高くなっている。もともとよりも高くなっているんです。ところが、実は生物多様性というのは多様度が高ければいいというものではない。例えば砂漠は多様度が低いのがあそこの自然なのであって、砂漠に緑をというのは生産性を高めるためには非常に有用だけれども、自然に対して破壊行為です。そういう前提で話を進めないといけないと思うんです。その意味で最初に僕は自然という言葉にこだわったのです、これはメディアの責任でもあるのですが、この頃自然という言葉が非常に気楽に使われている。字引に合わせて言えば自然というのは人為・人工が加わらない様なんです。
 そうしますと、農林水産省は自然を破壊するのが元来の仕事なんですよ。自然を破壊しないで自然を維持するということはあり得ない仕事です。そういう理解の上に立って、その上で生物多様性と先程から共生ということを盛んに言葉としては使われるのですけれども、その上で共生するとは一体どういうことなのかということを詰められないと本当の生物多様性戦略は出てこないと思うんです。そういうものをまとめていただいて、その上で各論を挙げていただくと統一された生物多様性戦略をまとめる上では非常にやりやすいと思うのですけれども。これからの他の省庁のお話も聞かないとわかりませんが、今のままだとどう一本化していくかというのは私もお手上げだという感じがしているんです。

●農林水産省農村振興局(川合) 1点だけ答えさせていただきます。
 まず、食料・農業・農村基本法も土地改良法もそうですけれども、自然環境との調和と言っています。これは国会でも論議がございまして、調和を保全としろというご意見が非常に強うございましたけれども、私どもは元来、自然に働きかける仕事をやっているという意味で保全という言葉は使えないということで条文が成立しております。そこは私どもも認識した上で取り組んでいる現在の結果だと思っております。

●岩槻委員 誤解があったらいけませんので、もう少し時間をとって申し訳ないのですけれども、僕は自然破壊という言葉を今使いましたが、自然破壊即悪というのは間違っていると思っています。だから、農林水産省を自然破壊をするのが本来の仕事だと言いましたのは、農林水産省の仕事が悪いとは決して思いません。非常に大きい貢献があると思いますし、僕自身も里山に育ってきていますから、自然破壊の産物を一番高く評価していると思うんです。ただ、その破壊の仕方は最近になって困ったことがいろいろ起こっているから問題なので、その困っていることが何かというのをきっちり整理していただいて、それこそ新石器時代をつくったお先祖様たちのような自然と共生できるような非常に上手な自然破壊をやっていただきたい。そういうプランをつくっていただきたいというお願いをしたいんです。

●篠原委員 非常に難しい問題だと思いますが、休耕田はどういうふうにお考えになっていますか。

●農林水産技術会議事務局(塩田) 現時点では水田の生産能力をフルに発揮してしまうと過剰になってしまうということで農業生産調整の観点から行っているということでございます。

●篠原委員 それはわかるのですけれども、今度の生物多様性との関係では何も考えていないんですか。

●農林水産省生産局(福嶋) 今後の検討課題ということかと思います。

●鷲谷委員 休耕田を利用して生物多様性に寄与するような活動をしていらっしゃるNGOが結構あるのですけれども、それに対する支援があまりないんです。例えば絶滅危惧の水生植物を休耕田で栽培するようなことだと、むしろ栽培させてもらうのが難しい現状なのに、そこにコスモス、ヒマワリなどを植えれば補助金が出るような、休耕田に関しては生物多様性保全ということから見るとかなり疑問を感じざるを得ないような施策になっていると思いますので、休耕田を環境のために生かすような施策をもう少し重視していただけたらと思います。

●辻井委員長 ありがとうございました。
 休耕田をどう扱うかというのは非常に難しい問題ではないですか。生態学的というだけでなく、恐らく法的な面でも非常に難しい問題があるわけでしょう。ですから、ここですぐにどうということについてのお答えをいただこうという考えではございませんが、そういった意見もあることを覚えていただければと思っております。ありがとうございました。
 それでは時間のこともございますので、まだあるかもしれませんが、よろしいですか。こんなところで農林水産省からのご説明は承ったということにしたいと思います。長時間にわたってどうもありがとうございました。

●農林水産省農村振興局(五十嵐) 環境対策の面の話につきましては、正直申しまして私どもの局では蓄積が十分とは思っておりません。今日、いろいろご指摘をいただきました。どうか私どもの方で農業農村整備の仕事をしてまいりますが、貴重なアドバイスを今後ともいただければありがたいと思います。今日はどうもありがとうございました。

●辻井委員長 申し忘れましたが、先程牧野の問題、草地の問題がございました。それにお答えしていただくのではなくて、畜産局になりますか。

●農林水産省生産局(福嶋) 担当は生産局となります。

●辻井委員長 今日はお答えいただかなくて結構ですけれども、そういうご質問もあったものですから、牧野関連はどういうふうになるだろうということを後で環境省の事務局にメモをいただければありがたいと思います。

●農林水産省生産局(福嶋) 相談いたします。

●辻井委員長 どうぞよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
                                

午後3時52分休憩

午後4時01分再開


●辻井委員長 それでは、再開したいと水産庁からご説明をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

●水産庁(重) 水産庁生態系保全室長の重でございます。どうぞよろしくお願いいたします。水産庁関係の生物多様性国家戦略見直しヒアリング関係をご説明させていただきたいと思います。
 冒頭、まず最初に先ほど全体総括の方で説明があったかとは思いますが、農林水産省の一番の基本的な方針のところをご覧いただきたいと思います。まず1ページをご覧いただきたいと思います。
 この中で2の農林水産業の生産活動の特徴ということで全般的に農林水産業の生産活動の特徴を述べてありますが、水産業におきましても基本的な考え方の特徴は大体これと同様でありまして、(1)の中で自然界の循環機能を利用するということですが、漁業におきましても主たる漁獲対象物、例えば魚類は野生生物でございますし、食物連鎖の中の1過程を系外に持ってくるといった形での自然界の循環機能を利用した形で活動している産業でございますので、そういう観点で生物多様性に大きく依存する形にございます。
 (2)で述べております生物多様性に正負の影響を与えるということですが、これも同様な形の活動になっておりまして、やはり漁業対象生物がいわゆる野生水生生物であることと、食物連鎖の中の1過程を占めているということで過大な圧力をかけ過ぎると負の影響が出てくるといった問題もございます。
 また、一方でいろいろな品種改良といった観点で生物多様性を利用したようなさまざまな品種の改良も行われております。そういう観点では生物多様性の保全利用といった形のものについても、うまく利用しているような状況でございます。
 翻って2ページ目をご覧いただきたいと思いますが、そのような特徴がある中で漁業におきましても持続可能な活動を図る観点から、基本的にはそこにございますような自然生態系の健全性の維持増進を配慮した上での活動、もしくは[2]にございますような効率性とか、いろいろなことを考え、生物の多様性を保全した中で漁業を調和的に存在させていくこと、研究開発の観点での生物多様性については国民の理解の促進といったことは当然のことでございますが、先ほどから里山の話も出てまいりまして、いろいろご議論があるところだと思いますが、いわゆる海で言いますと藻場・干潟といった人間活動に一番近いところにつきましては二次的な観点での生態系も形成されておりまして、そういうものも含めた生態系の適切な維持利用が水産庁としては中心となっております。
 また、そういう観点からして、水産庁といたしましても例えば河川では環境省、国土交通省とか、海におきましても関係する国土交通省の海洋関係とか、産業関係では経済産業省、いろいろな各省庁との連携も必要でございますし、当然、全体を踏まえましては環境省との連携を図って推進していくといった各省庁との連携を基本的に図っております。
 具体的に漁業関係の資料に戻りまして、ご説明させていただきたいと思います。資料4をご覧いただきたいと思います。
 資料4の1ページは基本的考え方でございますが、ここで持続的利用の観点と野生動植物の保護といった生物種からみた観点、そして沿岸海域等におけます生態系自然生息域の保護、すなわち場としての保護、この3つさの大きな考え方に分けさせていただいております。ただ、先ほどご説明申し上げましたとおり漁業というのは基本的に海の生態系、水系の生態系の食物連鎖の中の一つの生物を利用するといったことから、漁業のあり方そのものがある意味では各分野にまたがり生物の多様性と密接な関係を持っているといったことで、いろいろな分野の施策と関連しております。それを一応、今回こういう形で漁業本来のあり方である利用といった観点と保護の観点を合わせました持続的な利用と生物、そして場としての保護といった形でとりあえず分けさせていただいておりますので、その観点に基づいてご説明いたします。
 まず、漁業につきましては(1)の水産生物の持続的な利用でございますが、基本的な考え方といたしまして私どもは我が国が海に囲まれた、いわゆる寒流・暖流が交錯する生物多様性に富む豊かな漁場を有している。こういう環境の中で古来から漁業が営み続けられてきたわけでございますが、我が国の漁業は基本的には漁獲対象種、いわゆる対象とする水産生物が非常に多く、また規模とか漁獲する方法についても多種多様な形態があるという非常にバラエティに富んだ環境にあると理解しております。
 そういう漁業の第二次世界大戦以降の状況につきまして若干そこに書いてございますが、沿岸、沖合、沖合から遠洋といった状況の中で近年、国連海洋法によります海洋分割がありまして、遠洋から沿岸への回帰といった形が見られているわけでございますが、一方で我が国の排他的経済水域が逆に我が国が世界で6番目の排他的経済水域を持つといった形で大きな漁場を持っていることが改めて再認識されておりまして、そういう観点から周辺漁場の重要性が認識されているといった状況にございます。
 我が国の周辺漁場の状況につきましては、基本的には公海域と我が国周辺の国内漁場の利用があるわけでございますが、公海漁場、国際漁場につきましては国際的な資源管理に協力して世界トップクラスの漁業国として責任ある立場で推進していくことと、我が国周辺の資源につきましては有効に利用するために持続的な利用の観点によりまして資源管理型漁業、資源管理の推進を進めるとともに、つくり育てる漁業を推進していくことが必要である。あわせまして希少な野生水生生物等につきましても、水生生物の多様性を図っていくことが漁業の健全な発展のためにも重要であるという観点から、積極的に対応していく必要がある。そのような観点に立ちまして対応を考えているところでございます。
 一方(2)でございますが、野生動植物の保護につきましては我が国では昔から基本的に生物の多様性という観点ももちろん入っているわけですが、そもそも漁業のあり方として漁業法という制度がございます。また、水産資源保護法といった法律がございまして、この2つの法律によりまして漁業そのものの許可制度等による管理と、漁業対象物である水生生物の資源保護とか産卵場の保護を実施してきております。そういう2つの公的な制度を使いながら、野生水生生物たる水産資源、水生生物の保護管理を行って資源の利用を進めてきているところでございますが、近年は特に多様性のある水生生物環境を維持することが漁業生産の維持にもつながるといった従来にはなかった新しい概念も導入いたしまして、減少が著しい種とか存在が脅かされている種を特定して調査等を実施いたしまして、先般、平成10年に日本の希少な野生水生生物に関するデータブック、これは環境省で出されているレッドデータブックの水生生物版にあたるものですが、これを出させていただいているところでございます。現在、この資料等を参考にいたしましてこのような希少水生生物等につきましてのいろいろな保護水面とか密漁防止、産卵場の造成等の保護・培養並びに採捕とか販売の制限・禁止といった取り締まり措置等を実施しているところでございまして、特にそのうち必要な緊急種等につきましては現在、生態環境調査とか増殖技術調査を実施しております。また、河川におきましても同様に生息・生育環境の調査について実施しているところでございます。
 3点目に場の関係でございますが、沿岸海域等におけます生態系とか自然生息地の保護といった観点から、特に海浜沿岸域の生産性の高い水域の重要性に鑑み、特に干潟、藻場、サンゴ礁といった生物の多様性にも富んでいるような場所につきましては、水質浄化の点でも重要な機能を有していることの理解の上に、このような場の生態系とか生息地そのものが適切に保存されるように努めているところでございます。水質の悪化環境、海底の汚泥堆積といったマイナスの問題も多々ございますが、このような問題に対処いたしまして海水流動改善、藻場・干潟の造成、いわゆる浚渫とか覆砂といった土木工学的な措置により浄化策を進めるような施策も実施しております。あわせて、漁業の基盤であります漁港区域におきましても同様に排水処理とかヘドロの除去について実施するようになりまして、全体的に生態系、自然生息地の保護といった事業が近年推進されるようになってきております。
 その関係につきましては添付しております参考資料の1ページをご覧いただきたいと思います。後ろの方に参考資料としてつけておりますが、基本的に私どもは漁業関係、多岐の分野が多様性保全に関連すると考えておりますが、そういう意味ではそのベースとなるのが漁業の本来の活動であります漁獲活動を中心とした持続的利用と、生物そのものに対しての保護を図るという観点での生物に着目した野生水生生物の保護、場、先ほどご説明したようなこの3点に基づきまして、持続的利用の観点では資源の管理を行う対象漁獲物そのものが野生生物種であり、それを保全することがまず必要であるという観点と、その種自身が食物連鎖のチェーンを通しての生態系の構成員であり、そこを健全に守るといった観点からは漁業のアプローチとして資源管理が重要であろうと考えておりますし、大きなくくりではそのような資源は、有用種ですのでいろいろな漁獲利用等がございますので、減少したりしているものについて積極的に資源添加といった形でつくり育てる漁業を推進することが必要だと思っております。
 野生水生生物におきましては先ほどの希少生物の保護とか移入種対策という施策を展開することがこれらの保護につながる重要施策だと考えておりますし、この下にございますような漁業対象種ではない、例えば海鳥とか海亀の混獲対策につきましては持続的利用の観点と当該生物種の保護といった観点からも重要でございます。
 藻場・干潟の保全なり、こういう場としての環境の保全では、ハードの話だけではなくて海浜美化活動とか漁民の森活動も重要であるといった観点に基づきました施策を展開していくことが漁業分野におけます水生生物の多様性保全に貢献するのではないか、これを支える施策ではないかと考えております。
 もとの説明資料に戻りまして、これから個別に具体的な施策についてご説明させていただきたいと思います。
 2ページ目でございますが、生物多様性に配慮した漁業の実施ということでございます。ここは幾つかいろいろ書いてございますが、まず( 1) と( 2) は国際分野におけます資源管理のあり方について書いております。基本的には国際的な資源管理が公海域もしくは国際的に入り組んだ海域、要するにそれぞれの200 海里水域の外においては、各国がオリンピック競争でやっていた時代ではなくなりまして、基本的には世界中の海が国際的な管理機関によって管理されるような時代になってまいっております。そこに書いてございますような国際漁業機関、現在、大きなもので大体14機関ございますが、このようなものにつきまして我が国は積極的にこういう中で資源管理のあり方について貢献するような形で資源の保存について取り組んできております。
 具体的に申しますと、例えば太平洋まぐろ類国際保存委員会等は非常に古い漁業機関の一つでございますけれども、各国が集まって当該年のマグロの許容漁獲量を定めて、それに基づきまして各国の漁船に割り当てて、それを各国がという範囲で取り締まり等を管理して適正にやるといった形のほか、こういう国際保存委員会、国際管理機構に属さないでイリーガルな形で漁獲をするような国につきましては国際的にそういう国に対して貿易制限等も行いつつ適正化を図る努力をまいっているわけでございますが、そのような取り組みを図ってきている。( 2) につきましては、そのような国際機関で決まった内容につきまして取り決め遵守のための国内規制措置をやっているといったことでございます。
 このような国際的な管理の問題につきまして現在、今後の問題といたしましてはフリーであった公海域が、その地域ごとの漁業管理機関が大体でき上がってきて一定の管理ができるようになってきたわけでございますが、一方で取り締まりや規制の内容について海域によって幾つかばらつきがございます。このようなものについて全体的にバランスをとるといった観点からはFAOを中心的にいたしまして、取り組みを今後進めていくことが必要であると考えております。このような観点に基づきましてFAOを通じた世界的な合理性の合った管理を今後進めていく必要があると考えております。
 今のお話は基本的には漁業対象種のお話ですが、( 3) は漁業非対象生物の混獲対策といったことで、いわゆる本来の漁業対象種に関します資源管理・保全もございますが、そういう漁業活動の際にサメとか海鳥とか亀といった本来の対象種ではない生物種が混獲されております。これは先ほどありました生物多様性にとっての漁業活動の負の部分であろうということでございますが、こういうものにつきましては最小限にするための努力が必要だということで、現在そこに書いてございますような第23回FAO水産委員会におきまして、はえ縄漁業によって偶発的に混獲される海鳥の削減に関する国際行動計画を我が国が中心になって取りまとめまして、これはサメについても同様の行動計画を取りまとめたわけでございますが、各国がそれぞれの国の責任において実施する行動計画をつくって実施していくといったことを取り決めて、本年2月に我が国の定めました国内行動計画につきまして水産委員会に対して提出しているところでございます。
 これは基本的に海鳥の関係とサメの関係でございますが、まずデータの収集から入って具体的な海鳥の偶発的な捕獲の回避のための装置の開発、業界への指導を内容にしております。この問題につきましては始まったばかりではございますが、現在これからより多くの漁業者に、こういう問題につきまして理解を求めていくことと、実際に効果があるような形にしていくためにいろいろと実証試験調査を進めて、最終的に全部の漁業者にこういうものについて理解していただいた上でこういう措置について積極的に対応していただくことを考えております。
 その関係する資料につきましては先ほどの参考資料の2ページをご覧いただきたいと思いますが、ここに関係漁業協定一覧ということで、これは世界の海域で日本が関与しておりますバイとマルチの協定で、そのうちマルチの国際漁業管理機関に関するものが14、バイの漁業協定が15あるということを示している図でございます。
 次の3ページをご覧いただきたいと思いますが、これがはえ縄漁業によります海鳥の偶発的捕獲を削減するための国内行動計画、これは抜粋でございますが、これにつきましてはII.内容にございますが、はえ縄漁業におけます海鳥、主として日本近海ではアホウドリとかクロアシアホウドリ、コアホウドリ、オオミズナギドリの偶発的捕獲を削減するための努力といたしまして、その下に書いてございますような吹き流し装置(トリポール)の導入、この改良といった形で捕獲を回避し、こういう装置を漁業者の方に導入していただくよう、もしくは仮に海鳥が捕獲された場合にできるだけ速やかに生きたままリリースするような方法についてもパンフレットといった形での普及啓蒙をやっております。
  また、具体的な措置として現在、行政指導という形でIII以下を関係漁業者の方たちにお願いしているところでございまして、特に一番下の特定水域、鳥島の距岸20マイルの水域の10月から5月の時期はアホウドリの繁殖期間であることから特にこのような措置を具体的に実施していただくことについて今、漁業者の方たちに指導普及といった活動を行っているところでございます。
 次のページが今やっております具体的な啓蒙普及ですが、これ自身は漁業者に対するパンフレットのPRの中の一つでございます。これが「海鳥回避のために」ということで上の方に絵がございますが、従来、海鳥はまぐろはえ縄の餌を食べに鳥が来て餌をとる。漁業者に対するパンフなので、そこには従来の漁業では海鳥に餌をとられることがある、とられてはよくないのでこういうことをしましょうという言い方になっていますけれども、基本的には餌をとるときに海鳥がかかってしまいます。これを避けるために2段目の真ん中の絵にございますが、トリポールと称しまして、いわゆる長いポールにリボンのような吹き流しを流しまして、これで鳥を威嚇して餌に近寄らないようにするような手法です。これも何だと思われるような手法かもしれませんが、これがなかなか効果がある手法でございます。現在、これをいかにして簡便にするかが課題となっています。漁業操業というのはご承知のとおり 200日もずっと出っ放しで帰ってこないような操業をされるような方々なので、面倒な作業をお願いすると海の上での実施の担保ができませんので、効果があり、なおかつできるだけ労力のないような方法につきまして今、実証を進めているところでございます。そういった観点での混獲防止といった形の資源管理も重要だという観点で実施しております。
 次の3ページの[2]につきましては、その実証調査をやっているということでございます。
 資源管理の観点で水産関係で一つ大きな問題といたしまして、鯨類の資源問題がございます。これにつきましては皆様もいろいろなところで私どもがIWC(国際捕鯨委員会)で外国といろいろな交渉をやっているところにつきましてはいろいろなメディア等を通じましてご承知の部分があるかと思いますが、基本的に私どもは持続的利用と鯨類資源の保護の両立を目指しておりまして、そのベースになるのはあくまでも感情的な問題意識ではなくて科学的な調査研究に基づく検討ではないかと考えております。そういう意味で現在、[2]になりますが、国際捕鯨委員会の管理下にあります大型鯨類、IWCの対象となっているのは大型鯨類に限るわけですが、そのうち資源の回復等が見られていると考えられておりますミンククジラ等につきましては捕獲調査を行っておりますし、一方で資源の回復がいまだに見られていないシロナガスクジラ等につきましては捕獲調査でない形の手法をとりましたいろいろな資源調査を実施しております。また、IWCの管轄外のイルカ等につきましても我が国周辺に分布する資源につきましては資源管理のためのいろいろな調査を実施しているところでございます。
 この問題につきましては皆さんも従来ご承知のとおりだと思いますが、私どもとしては今後とも科学的調査に基づく合理的な観点からの利用と保護を目指していくべきだということで今後とも努力してまいりたいと思います。その中で近年いろいろな調査の中でわかってきた一つの問題として鯨類が非常にたくさんの水産資源を食べている実態がわかってきてまいっております。この問題につきまして我が国が提案したところ、第24回FAO水産委員会とか第53回IWC年次会議、FAOの前回のレイキャビック会合でもこういう問題につきましての認識が各国にも持たれ、今後ともこういう問題については調査する必要があるという共通認識ができ上がったところでございます。こういう問題につきましても今後とも日本が中心となって進めていかなければならないと考えております。
 その問題につきましての資料は参考資料の5ページ以降でございますが、これは私どもがよくIWC等のところで使っている資料でございますけれども、基本的に現在のクジラ資源のうち、上のシロナガスクジラとナガスクジラはE(適正資源水準)より下の水準で、回復しておりません。これはいろいろな理由がありますが、大きな理由の一つにその下の既に回復しているイワシクジラと、もともとあった資源以上に増えているミンククジラといった小型鯨類、小型といっても大型の鯨の中の小型なのですが、こういうクジラの繁殖増大によりまして特に減少が著しかったシロナガスクジラやナガスクジラが回復できないような実態に現在ございます。逆に言えば、このミンククジラとかイワシクジラは戻ってきている状況にございますし、ミンククジラに関してはさらに積極的に資源管理を行わなければ、シロナガスクジラ等が戻ってこないことにもつながる問題だと認識しております。
 鯨類が食べる海洋水産資源につきましては次のページでございますが、これが近年の研究によってわかってきた内容でございます。鯨類につきましては哺乳類の仲間ですので、当然、水中では恒温動物でございますが、体温を保つための大量のエネルギーが必要で、そのためにたくさんの餌を食べなければならないといった状況にあります。現在79種あるクジラのうち37種の餌の捕食量を推定いたしましたところ、下の表のように左の方にあるのが世界全体での海洋漁業におけます生産量 8,000万トンでございますが、鯨類資源による海洋生物の捕食量は推定値で幅がありますが、そこにございますように2億 4,000万から4億 3,000万トンといった量の水生生物を食しているといった状況で、このようなものにつきましても今後さらに調査して、全体的な資源管理を考えていかなければならないと考えております。
 次のページは今回関係ございませんが、これは現在、各国で捕獲していますクジラの頭数でございますが、これは資源量に対して一番右のところが捕獲頭数の割合になってございます。みんな1%を切っている状況です。基本的には適正漁獲量といいますか、上限が大体4%から10%と言われている中、この程度であれば調査自身は問題ないといった理解を持っております。
 引き続きまして、今までが国際関係での資源管理といった問題でございますが、次は国内におけます資源管理の問題でございますが、これにつきましては[1]から[3]でございますが、国内での資源管理につきましては海洋法の批准に伴いまして我が国の排他的経済水域ができたということで、それにつきましては利用する権利と保存管理しなければならない義務があることになりまして、それに基づきます国内法「海洋生物資源の保存及び管理に関する法律」を平成8年に制定させていただいております。この法律に基づきまして、漁獲可能量制度を今実施しております。漁獲可能量制度の対象となる魚は現在、あじ、さば、いわし、ずわいがに、すけそうだら、さんま、するめいかの7魚種において行っております。今後とも資源管理の中でTAC制度(漁獲可能量制度)が中心になりますので、さらに資源評価が高いレベルでできるように調査を進めていくことが今後も必要であると考えております。
 この中心となるTAC制度のほかに、我が国には7魚種以外にも多くの水産資源がローカル資源として、また回遊資源にございますが、そのようなものにつきましても近年やはり全体的には減少傾向にある中で、TAC魚種以外の魚種等を中心にいたしまして、そういうものにつきましても全体としての漁獲努力量の削減とか、一方で種苗放流等による資源添加、あとは漁場環境の保全といった場の管理も計画的に進めていくことが必要であるといった観点から、「資源回復計画」をつくって、これを進めていくことが必要であるということで現在この「資源回復計画」について作成に着手して進めているところでございます。
 さらに、[3]の資源調査は当然のことでございますが、こういうものを進めていく上ではちゃんとした資源調査が必要であるといったことでございますが、それに関係する資料といたしまして参考資料の9ページを先にご覧いただきたいと思います。9ページにTACについてのパンフレットで使っている資料でございますが、基本的には魚等の生物資源はいわゆる産んで増えていくといった形で持続的再生産が可能な資源であるという理解から、いわゆる利子論ではないのですが、成長の一部をうまく利用して自然減耗になる前にそれを先取り利用する形で、もとの資源に影響のない範囲での利子にあたる部分をうまく利用して再生産を続けていくことが可能な資源ということで、適正に管理すれば資源の保護にもつながるといったことでTACをやっているわけでございます。
 その下の方に指定基準などがございますが、こういう指定基準に基づいてできるものは今のところ7種、それ以外のものにつきましては資源回復制度で進めるということでやっております。資源回復制度につきましては10ページにございますが、左の方の下の白い部分が先ほどから申し上げていますTAC制度等の考え方でございます。右の方に関わる部分が資源回復計画でございますが、基本的にTAC制度は資源状況から最大漁獲可能量を設定して、それ以下でとらせるといったやり方でございますが、右の方の資源回復計画は右の真ん中の辺にございますが、漁獲努力量削減実施計画、要するにどうやって漁獲努力量を減らすかということを漁業者の方を中心にして具体策を検討していただきまして、それに対してその実施に当たっていろいろと漁獲努力量削減のための努力をするに当たって、例えば休漁するとか漁業をやめて減船してしまうといったものに対する支援措置をとるといった形で資源管理のための施策につきまして推進しているところでございます。
 続きまして、説明ページ4の(5) 水産資源の保護でございます。水産資源の保護につきましては先ほどご説明しました水産資源保護法という法律に基づきまして、動植物の産卵とか稚魚の育成に適した藻場とか干潟の水面を指定するなどしまして水産動植物の保護・培養を図っております。その水産資源保護法に基づきまして保護水面を指定した後、保護水面につきましては[1]と[2]にございますが、保護すべき動植物の採捕の制限とか漁獲手段の使用制限、さらには取り締まりとか広報とか、積極的な手段として保護水面の指定水面におきましての産卵場の造成といった活動、さらにはそのために監視・取り締まり活動を実施しております。これにつきましては従来からずっと実施してきている施策でございますけれども、特に本年制定されました水産基本法の中でも水産動植物の繁殖地の保護・整備が改めて位置づけられておりますので、今後とも都道府県の漁業調整規則による管理とか環境整備のための事業を推進していくことを考えております。
 (7) のつくり育てる漁業の推進でございますが、これにつきましては水質の悪化とか河川工作物による生息域の分断とか水産動植物の繁殖、生育の場の減少といった悪化している漁業・養殖業、水産動植物の環境を改善するための措置として実施しておりますのが栽培漁業、放流による資源添加、それとイの養殖業があるわけでございます。先ほどの話ではございませんが、やはりこれも生物多様性とか環境に対してはマイナスに当たる部分もございますので、そういうものを最小限に抑える措置、それと積極的にさらに環境を整備する観点での漁場整備とか産卵場造成といった事業、こういうものに加えまして養殖等の負の影響につきましてのいろいろな問題につきまして対抗する技術開発を現在進めております。
 このようなつくり育てる漁業につきましては、やはりこれまで当初、減少した水産資源を増大するといった観点で、ある意味では種の多様性とかそういう問題について十分配慮が図られなかった部分もございますが、近年、技術開発とかその辺の問題も少しずつ進んでまいりまして、現在も多様な親魚とか地元系種苗の確保といった多様性の確保についても配慮するようなことを現在始めておりますし、このような観点の技術開発、研究等をさらに推進いたしまして資源や生態系に配慮した漁業・養殖業を確立したいと考えております。
 この辺の関係につきましては参考資料の13ページをご覧いただきたいと思います。
 13ページの左の方につくり育てる漁業ということで私どもが整理している概念的なことを幾つか書いてございますが、つくり育てる漁業といいますと、いわゆる放流を行います栽培漁業と養殖業といった観点、さらに一般的な増殖といったいろいろなものがございますが、整理として種づくり、場づくりによる資源増殖と養殖業を分けて、さらに種づくり、場づくりを種づくりのものと場づくりものに分けて考えたときに種づくりとして、一番上でございますが、クルマエビとかガザミ、このようなものから始めた栽培漁業、それとさけ・ますの種苗生産・放流、こういうものが種づくりであります。その下には資源増殖のための場づくりとして人工魚礁とか増殖場造成事業とか定着性水産動物の漁場造成といった場づくりの施策もございます。
 さらに、養殖業としての展開のための養殖場の造成とか防疫事業をやっているところでございますが、栽培漁場につきましては種づくりのうちさけ・ますを除いたものということでございまして、右の方でございますが、近年は大体80種強の種苗生産・種苗放流を行っております。特にそのうち魚類2種類、甲殻類3種類、貝類5種類、その他2種類といった12種類におきましては 1,000万尾を超えるような種苗生産も行われておりまして、大体 153億尾ぐらいの種苗放流を実施しております。
 引き続き参考資料の方でご説明したいと思いますが、14ページをご覧いただきたいと思います。
 今のがさけ・ますを除いた栽培漁業ということでございますが、さけ・ますの人工ふ化放流事業につきましては皆様もご承知のとおり非常に歴史が古い事業で、これは技術的にもかなり確立され、回帰率等もある事業でございます。これにつきましては今、右の方にございますが、基本的な仕組みといたしましてはふ化放流事業の点線の中の左側にございますが、独立行政法人のさけ・ます資源管理センターが中心になって実際のふ化放流、調査研究と指導を行ってまいりました。これは昔からここが中心になっていろいろやってきたわけですが、こういう技術開発が民間にもどんどん波及いたしまして、真ん中の下の方の民間ふ化場といった形で北海道と本州10県におきましては民間のふ化場でも稚魚の生産・放流を行っております。そういう形でさけ・ます資源管理センターで実施してきたいろいろな技術が民間へ伝播いたしまして、現在、ふ化放流の中心というか実際の放流そのものは民間ふ化場の方でかなりやられるようになってございまして、現在、さけ・ます資源管理センターではさまざまな試験研究とか技術的な問題の指導とあわせて系群の保全を図る観点でのふ化放流といった若干視点を変えた放流事業を実施して進めているところでございます。
 15ページが現在のふ化放流の実績でございますが、北海道と本州を合わせまして近年、大体20億弱尾の放流がございまして、北海道では大体3%強、本州では大体2%強の回帰が見られるといった状況になっております。このさけ・ます養殖事業につきましては今後は資源の継続的安定はもちろんですけれども、一方で北太平洋に放流して、そこで索餌回遊して戻ってくるといったことから北太平洋溯河性魚類委員会とか日露関連の国際協定の関係もございますので、いわゆる国際的な調査研究も協力して進めていく必要がある。その中では生態系と調和した増殖事業を今後目指していかなければならないと考えておりますし、国内では多様性の観点からいたしますと現在、主要5系群を代表する河川におきましてそれぞれ系群ごとの代表するような形で、要するに交雑しないような形である意味での多様性に配慮した形で種苗放流を実施しているような状況にございます。
 引き続きまして、6ページの3.漁場・海洋環境等の保全でございます。
 漁場・海洋環境等の保全ということで、この場合、ソフトとハードといった形でございますが、ソフトの方が(1) でございます。現在、これまで私どもも従来は藻場・干潟についての重要性に対する認識は通り一遍のところもございましたし、そういう意味では実態把握がなかなか進んでいなかったわけでございますが、近年の藻場・干潟の見直し、周辺沿岸環境の重要性の見直しに鑑みまして、現在、実態把握、省庁原因究明のための調査を進めているところでございます。そういうソフトの調査、さらには民間団体とかボランティアグループが実施いたします海浜清掃美化運動、要するに海岸環境の改善を図るために、まずそこのゴミを拾うことによって海岸環境に目を向ける活動、その中心となります指導員の育成も進めております。さらには、近年話題になっております漁業者が山に木を植えるといった形での沿岸環境改善のための植樹活動が進んでいるところでございまして、今後ともこういう問題につきましては啓蒙普及の観点も含めまして進めてまいりたいと思います。
 関係する資料として17ページをご覧いただきたいと思いますが、現在、私どもがいろいろ支援して実施しております中で各地でされているクリーンアップ事業の一こまでございますが、現在、各県にアンケート等で問い合わせた中で集計できた中では、近年は毎年でございますけれども、大体100 万人規模でこういう活動に参加されているといったご報告もいただいております。
 引き続きまして18ページでございますが、これは漁民の植樹活動の事例でございます。現在、全国28道府県で44カ所、実際は1カ所の中にもたくさん入っておりますので、いろいろありますが、有名なところで言いますと例えば襟裳岬の植樹活動とか[12]の牡蠣の森はハタケヤマさんの海は森の恋人の植樹活動でございますが、こういう形で昔からやっているところもございますし、最近始めたところもございますが、全国的にこういう活動が見られ、漁業者中心に市民も交えて山に木を植えて海の水をきれいにしようという活動が行われているところでございます。
 引き続きまして6ページ、ハードの方に戻りますが、沿岸漁場の整備といったことでいわゆるハード事業、公共事業でございますけれども、そこにたくさん書いてございますが、いわゆる水産基盤整備事業ということでハードの魚礁の設置とか環境保全ということでヘドロの浚渫とか海水交流の促進とか、沿岸環境の改善・回復といった観点での事業を実施しております。
 7ページをめくっていただきますと、左側はメニューでございます。このような形で魚礁の投入とか藻場の造成が行われています。そういうものに関しては地域資源とか広域資源に着目した形で場所とか形態が若干違うこともございます。[4]では浚渫とか、そういうものを実施しているということでございます。
 同じくハードの中で、今のは漁場整備といった観点でございますが、(3) はいわゆる海に隣接した漁港・漁村、海に環境負荷をかける存在としても見られる漁港・漁村において環境調和型漁港づくりとか藻場・干潟の海浜整備、あとは汚水処理といった観点で集落排水といったハード事業につきましても公共事業等で推進しているということでございます。
 この概念図につきましては参考資料の19ページをご覧いただきたと思いますが、19ページには漁場整備の観点、海の方から見たイメージの沿岸といったことで人工魚礁をつくったり海中林の造成を図ったりといった形での展開をしております。
 その次の20ページは藻場の重要性といったことでいろいろPRに使っている資料でございます。
 21枚目は環境省の調査で78年から91年にかけて藻場・干潟が減少している。こういうものをできるだけ回復するようなことも考えていかなければいけないということで載せております。
 22ページは漁場整備事業の内容でございますが、左の上でございますが、魚礁設置で魚が集まる。増殖場を造成いたしまして、イセエビとかアワビの増殖場、成長の場をつくる。あとは養殖場造成とか漁場保全のための澪づくりとか干潟の造成といった事業関係でございます。
 さらに23ページが陸の方から見たイメージでございますが、これが先ほど申しました漁港・漁村の陸の方からの環境のための考え方でございます。そこにございますように生活環境のための集落排水の処理とか漁港の浄化施設、陸の方から見ますとこういう観点、見方で海の環境保全のための公共事業的な整備事業を進めているということでございます。
 さらに説明資料の8ページ、希少生物の保全でございますが、先ほどご説明申しましたように、これにつきましては水産庁版のデータブックを作成して、現在これに基づきまして可能なものから調査、そして保護手法の検討、技術開発を実施しております。
 これは関係資料の25ページと26ページにございますが、この進め方につきましては25ページにございますけれども、野生水産動植物の保護に関する基本方針がございまして、これは平成5年に農林水産省告示ということで種の保存法ができたのに合わせた私どもで検討して今後進めようということで決めた基本方針でございまして、そこに書いてございます[1]から[5]に従いましてデータ整理のデータブック、調査分析、そして保護すべき野生動植物の特定、増殖事業等の展開、保護水面の積極的活用、規制措置を進めていくことを定めまして、それに基づきまして現在[1]のデータブックの整理、[2]の調査の推進、保護手法の調査を進めておりますし、今後の課題といたしましては、さらに新しい種の調査、保護手法の検討、さらには具体的な保護措置、規制等の検討を進めていかなければならないと考えております。
 8ページに戻りまして、5が移入種による影響対策でございます。これにつきましても皆様ご承知のとおり近年、ブラックバス、ブルーギルといった外来魚の問題が水産分野におきましても非常に大きな問題になっておりまして、基本的に生態系の破壊、悪化、在来種の激減に加えて、内水面漁業にも大きな被害がある。これに対しまして、外来種の生息域の拡大防止等の対策として現在その[1]から書いてございますような対策として、まず一つは各県にございます内水面漁業調整規則、条例でございますが、これに基づきまして外来魚の移植の禁止を講じております。あわせてブラックバス等外来魚に関しましては、いわゆる生態的な解明と効果的な抑止策のためのいろいろな調査を実施しているところでございまして、今後さらに苦情対策並びに移入種の抑制対策を進めるとともに、一方でこれから可能性として出てくる問題となる可能性もあります養殖の対象種として移入種を入れた場合の管理方策につきましても今後の課題として検討して進めていく。そういう過程におきましては、こういう問題につきまして国民各層のいろいろなご意見をいただいた上で具体的な対応方策を決めていかなければならない。そういう意味ではいろいろなご意見があって難しい問題だと理解しております。
 これにつきましての関係資料として27ページに水産庁において今実施しておりますブラックバス等外来魚対策の概念図がございますが、基本的に生息域の拡大防止、生息数の抑制、そして抑制技術の開発を進めまして、生育環境の保全と改善に役立ててまいりたいと考えております。
 最後に9ページでございますが、遺伝子組換え水生生物についてでございます。遺伝子組換え水生生物につきましてはこれまで水生生物の観点では実際に研究途上だったということで、具体的なリスク評価とか管理に関しましては研究があまり行われてこなかった。ただ、近年、外国中心に産業利用を目的とした幾つかの研究事例等が出てきておりますので、現在こういうものにつきまして情報を収集するとともに、こういったものを開放系で利用する場合、もしくは逃げて開放系に入った場合、いろいろな問題につきましての安全性に関する基礎的な研究の検討を始めております。
 これにつきましては始まったばかりではございますが、いわゆる陸上の生物の情報・知見等も利用いたしまして、リスク評価・管理につきましていろいろと検討していきたいと思いますし、安全の観点につきましては国民のご理解が得られるような形で進めてまいらなければならないと考えております。
 遺伝資源の保存につきましては、水生生物関係では藻類と微生物等を中心に行っているところでございますし、この問題につきましてもデータベース化して遺伝資源の適切な保存を図っていく必要がありますので、今後ともこの辺につきましては整理して進めていきたいと考えております。
 時間をとりまして申し訳ございませんが、取り急ぎのご説明は以上でございます。

●辻井委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、時間も大分押していますので、早速ご質問、ご意見がおありの方はどうぞお願いいたします。

●鷲谷委員 資源の管理とか生産に視点を置いたお話がかなり多くて、生物多様性の保全ということではまだご関心が薄いのかなというふうに聞いておりました。調査についても今日たくさんご紹介がありましたけれども、恐らく資源としての調査と生物多様性という視点からの調査は内容が異なるのではないかと思うのですけれども、生物多様性という視点からの調査もかなり実施されているのでしょうか。それから、調査結果を踏まえた具体的な保全の努力が行われているのでしょうかということを伺いたいと思います。
 あまりに茫洋としておりますので、例えば沿海の海生哺乳類に関する調査や保全の具体的な対策とか、これは資源を育む場ですけれども、干潟とか藻場、サンゴ礁の重要性についてお話しされていましたけれども、その再生に向けての調査とか計画がどうなっているかということをお聞きしたいと思います。
 もう一つ、種苗放流に伴う問題ですけれども、あまり生物多様性保全上の問題点について一部だけ出てきましたが、問題点を整理して、それで生産と環境をバランスよく進めていくためのやり方を考えていただくことも必要かと思っております。放流した魚種だけではなくて、それに伴っていろいろなものが一緒に動いていて、広く言う意味での外来生物の問題を引き起こしていると思いますので。

●辻井委員長 では、最後のはご意見ということでよろしゅうございますね。前の方のご質問についてお答えいただけますか。

●水産庁(重) ありがとうございます。私どもは確かに今おっしゃられたように資源調査といいますと、従来から私どもの調査そのものが漁業対象資源の調査が中心になっております。一方で、さらに最近は生物多様性の問題に着目した希少生物関係の調査も始めております。ただ、量的にはまだ少ないのが実態です。
 私どもの考え方としては基本的な資源調査の部分で、いわゆるマクロな意味では漁業の資源は野生水生生物で生態系の中のフードチェーンの中の一つのチェーンであるという観点から、その保全を図ることが多様性の観点とは当然、同じ方向性にのっているというのが一つの考え方でまずあった上で、それとあわせて希少生物の生物多様性の観点に関しましては現在、先ほど申しました平成5年の方針、データブックの作成の後、現在、北海道から沖縄、例えばイトウとかイタセンパラとかシナイモツゴという希少生物に関しての現状把握、その保存のための現実的措置といった観点での委託調査を各県の水産試験場にお願いして、今実施しております。そういう意味で私どものやっている事業は先ほどもご説明いたしました希少生物のところでのご説明の部分の調査がそういう観点での生物多様性の観点に入る事業、調査であると考えております。
 これはまた我田引水になるかもしれませんけれども、いわゆる単なる資源調査だけではなくて生態系全体としての考え方という意味では例えば南極海の生態系、生物多様性といった観点では我々としては今回のクジラの問題は非常に大きな問題だと考えておりますので、そういう意味ではクジラというのは今、私ども現在は漁業対象種という形にしておりませんので、そういう意味での多様性の一つの調査ではないかと考えております。

●辻井委員長 あとは沿岸部の海生哺乳類、恐らくジュゴンとかイルカということをお考えなのかと思います。それとサンゴ礁です。

●水産庁(重) ジュゴンとイルカの問題につきましては現在、水産資源保存法の施行規則で漁業におけます採捕の禁止をジュゴン、スナメリ、カメ等につきまして告示しておりまして、それにつきましては完全に漁業の採捕の禁止といった形で手当しております。ヒメウミガメ、オサガメ、シロナガスクジラ、ホッキョククジラにスナメリにジュゴンにつきましては既に採捕の禁止をかけております。今後の問題といたしましては先ほど申しましたとおり、今例えば各県にお願いしているイトウとかイタセンパラ、そういうものの調査をいろいろやっている中で具体的な手法の一つとしてそういう規制措置が必要であるといったことになってくれば、そういう方向での検討を進めることを考えております。
 サンゴにつきましては私どもの関係の独立行政法人水産研究センターで種々研究しているところです。

●鷲谷委員 藻場とか干潟についても保護が重要、サンゴ礁だけではないんです。

●水産庁(重) 私どもは藻場・干潟につきましては基本的には漁業の観点から見ても非常に重要だという形で取り組んでおりまして、藻場・干潟の回復もしくは造成、あとは漁港等事業をやるに当たってできるだけ藻場・干潟をつぶさないでできるように検討するし、もし仮につぶすようなことがあれば、安易に使ってはいけないのでしょうが、ミティゲーションといった形での藻場の造成も検討の視野の中に入れてやるようにするといったことを行なっていますが、基本的にはまず私ども自身が現在の藻場・干潟の状況を必ずしも正確に把握しておりませんので、現在、3カ年の予定で昨年度から藻場・干潟、特に漁業関係での利用が中心的なところに着目しまして、全国での状況について来年度までの3カ年調査で今調査を実施しております。また先ほどのハード事業などもございますので、そういうものを今度は個別に、そういうところに生かしていけるような形にしたいと思います。

●鷲谷委員 藻場・干潟は他の省庁との連携などが必要だと思うのですけれども、そのことについてはどうお考えでしょうか。

●水産庁(重) 特に藻場・干潟の問題等につきましては例えば現在やっております調査の元データが環境省のかつて調べられた基礎調査、環境省の基礎調査の元になったのはかつて私どもがやった調査が元になっているとか、そういうお互いにデータの交換、有効利用を図っておりますし、現在、国土交通省もしくは昔の国土庁でやっていらっしゃるデータ等も私どもの方で一部お借りするような形で進めております。そういう意味での実態に当たりましての連携は進めさせていただいております。

●鷲谷委員 調査の段階が終わって計画ということになったときもそういう連携で取り組まれるのでしょうか。

●水産庁(重) 計画になりますと、いわゆるほかの省庁でやっていらっしゃる公共事業等の問題は別にいたしまして、私どもが実施しております藻場・干潟の造成とか沿岸の保全といったものにつきましては基本的に都道府県・市町村の方でやりますが、そのときにそちらの方で関係するほかの省庁の事業との整合性なども整理された上でやっていると聞いておりますし、そう行われるように指導、調整しているところでございます。

●辻井委員長 よろしいでしょうか。ほかの方どうぞ、ございませんでしょうか。

●瀬田委員 今、クジラがどれだけ魚をとっているかという調査をされているとおっしゃったのですが、これは私が10年ほど前にモナコの海洋委員会の人から聞いた話に関連して質問があります。クジラが死んで海洋の中で分解されていく。そのプロセスが15年、20年、35年ということらしい。そのときにそれに関わるプランクトン、あるいはいろいろな生物がいるのが海、特に深海といいますか、大陸棚でない砂漠のようなところでのオアシスになっているという話を伺って、日本には全部それを陸に揚げてしまって食べているけれども、そうすれば本来は海に帰すべき資源がないではないかということだったんです。マッコウクジラはアメリカなり何なりは油だけ抜いてしまえば海に捨てたというのがあるけれども、陸揚げをしてすべて有効に使っていれば陸の論理はあるけれども、海の論理が全然ないのではないだろうかという議論をしたことがあるのですが、これについてはどうお考えですか。

●水産庁(重) 先ほどご覧いただいた5ページのクジラの採捕量のデータを見ていただくとおわかりになると思いますが、資源的にはこういう状況にあるということで、7ページをご覧いただきたいのですが、例えば太平洋のミンククジラが76万頭いるうちで現在調査で捕獲しているのが0.06%ですけれども、これは仮に万が一の話ですが、捕鯨が再開されたとして、これで出てくるクオーターが例えばこの1%とか3%といったことになるのだろうと思います。そういう意味では適正水準の資源量を保つよりもはるかに下のレベルでの漁獲量になると思いますので、そういう意味ではそれだけ間引いたところで残りの九十数%は自然の生態系サイクルの中で残っていきますので、それ自身がすべてを利用しているというのは、とったものはすべて海の恵みだから完全利用するという概念は我々も持っていますけれども、資源そのものはすべて利用するのではなくて、その中の一部だけを利用するというのが私どもの基本的な考えでございますので、そういうことにはならないと考えております。

●辻井委員長 他にいかがでしょうか。

●三浦委員 混獲のことをお聞きしたいのですが、混獲についてのデータはとれているのでしょうか。

●辻井委員長 どれぐらい鳥が混獲されているかというデータですね。

●水産庁(重) これにつきましては先ほどご説明した私どもの国内行動計画を今年2月にFAOに報告いたしまして、それに基づきまして今、了承されたというか、報告した形以降、関係漁業者等々と調整しているところでございます。そういう意味では個別にばらばらのデータはこれまでもそれぞれやられた船とか何かがあるわけですけれども、そういう意味でそれを目指して全体的なところでやるのはこれからの取り組みということになります。

●三浦委員 基本的に混獲したものをデータとして提出するというインセンティブはあるんですか。

●水産庁(重) そこは非常に難しい問題ですが、いわゆる今の取り組み、例えば既に鳥島の20マイルという問題については漁業者の方たちの一定の理解を得つつあるところでございますし。出したから規制がさらに増えるような仕組みになってしまうと漁業者の方もなかなかのってくれないのだろうと思います。そういう意味で我々が先ほどご説明した混獲回避のための努力がある意味ではまどろっしいようなことをやっておりますが、漁業者の方に理解してもらって納得してもらった上で取り入れてもらうものでないとダメだろうということで非常に苦しいのですけれども、逆に言えば今そういうことであれば漁業者の方たちもやってもいいというところが少しずつ出てきているので、そういうところをうまく掘り起こしてやっていこうと思って進めているところです。

●三浦委員 そのデータをきちんと出してもらいたいと思います。
 もう1点、同じ問題で刺し網も結構大きな混獲がありますね。海亀とか、そのほかの海獣、大型ではなくて小型のものなど、ジュゴンもそうですが、こういうものについて保護水面の漁業の法律の中である一定の地域の中にある程度のコントロールをかけることは可能なのでしょうか。

●水産庁(重) 制度の理屈の上では可能です。ただ、現実的にこれまであった漁業者の方々の生計を営んでいる活動をそこでストップさせてしまうようなことになりますので、これについてはやみくもに発動できるようなものではないと思っておりますし、基本的に漁業者の理解を得た上でないと強制的には進められないと考えております。

●三浦委員 幾つかのエトピリカとかウミガラスとかジュゴンとか、アホウドリもそうですけれども、これは国内希少種も入っていますし、それに該当するような、生物多様性の上から見るとかなり大きな種が幾つかあるわけです。その生息地もかなりの部分わかっているわけです。そういうことに対して水産庁側が今後どうしていくのかというのは何か記述があってもいいのではないかと思うのですが。

●水産庁(重) わかりました。その辺は少し検討させていただきます。

●岩槻委員 僕は海のことがあまり強くないので発言をためらっていたのですけれども、参考の6ページの資源に対するクジラの影響は非常におもしろい発想でとられたデータだと思うのですけれども、こういう数字を見ますと、この数字がどこまで確かなのかというのをついつい疑ってしまう。サイエンティストはそういうことをついついやってしまうのですけれども、海の生態系あるいはフローラ、ファラナーは陸と比べると圧倒的にわかっていない。もしこういう数字を出そうと思えばそういう基礎的なデータが取り込まれないとできない。こういうデータを出す以上、やはり信憑性のあるデータでないと人に対して説得力がないと思うのです。海に関しては、大学関係者は知っているのですけれども、水産庁関係あるいは府県関係でこういう基礎調査、こういうデータを提供するような人は一体どれぐらいいらっしゃるのか。陸と比べて、それは本当に満ちたりている数字なのかどうかということを数字で、正確な数字はわからないでしょうから桁で結構ですけれども、伺えればと思います。

●水産庁(重) まず、全体の話でございますけれども、これは私どもがやっております鯨類の調査がございます。それをデータベースにして推定している数字で、これ自身もそういう意味では先ほど申しましたFAOとか、その手の委員会にデータごと提出して、いろいろな議論の素材としてやっていただいていて、さらにそういう意味でデータも全部出した上で、これだけではなくてFAO全体としてこういうものについては外国の関係者も含めて今後議論していくような形にしております。
 それから、研究者の数ですと例えば私どもの関係でいわゆる大学の先生以外でやっていらっしゃるということになると現場の都道府県では水産試験場があるわけですが、そういうところで専門にやっていらっしゃる方はいないのですけれども、一方でやっている魚が分野的に非常に近いような方、例えば今うちでやっている淡水漁にご協力いただいているところは水産試験場ですが、淡水試験場の皆さんはそういう意味では希少種に関しての知見がかなりある方々でした。海の方でも特定の種、例えば私どもが今、希少種の一つとして検討しておりますマツカワは食べてもおいしい魚だからやっているところもあるのですが、これに関しては試験場などでも情報がかなりありますし、内容によってかなり千差万別なのですが、圧倒的に少ないと言えば少ない、例えば都道府県の水産試験場で数人ずついらっしゃっても、うちの研究所を全部足して100 人ちょっと超すとか超さないといったオーダーではないかと思いますが、そこはまた改めて調べた上で機会があればお示ししたい。

●岩槻委員 お伺いしたのは水産資源の本当の確保ということを考えれば、そういう基礎的なデータがなければ非常に弱いところがあり、それはもちろん水産庁の責任ではなくて文部科学省の責任だとおっしゃるところもあるのかもしれませんけれども、やはり現場の方がデータを出されないと本当に説得力のあることが出てこないと思いますので、お伺いしたんです。

●水産庁(重) ありがとうございます。やはり水産関係の中でもそういう問題に関していろいろと調査研究する人間を増やしていかなければならないとは考えております。

●辻井委員長 他にいかがでしょうか。

●小林自然環境局長 先ほど鷲谷先生がおっしゃったつくり育てる漁業に関連する質問ですけれども、ちょうど先ほどの国会の質疑の中で水産庁長官が新しい水産基本法に基づくこれからの新しい漁業は生態系を保全した上で持続的な利用を図っていく。そういう意味で生物多様性保全の方向と非常に合致するところで、大変心強いと感じたわけです。
 先ほど鷲谷先生が言いかけて途中になってしまったのですけれども、つくり育てる漁業の中で参考資料の13ページに対象魚種などを書いてあります。クルマエビとかガザミ、アガイ、アワビ、そういう特定の1種を、絶滅のおそれがあるものを増やすのはいいのですけれども、特定の1種をワアッと増やしていって、それで生物多様性の保全に資する事業という説明に聞こえたものですから質問するわけですけれども、そういったものだろうかと疑問に思いました。
 例えば先程のミンククジラのことでも、ミンククジラが非常に増え過ぎてしまってシロナガスクジラの回復に影響を与えているというご説明だったのですけれども、例えば鷲谷先生がおっしゃった養殖漁業についての影響を調べなくていいのかいう質問と同様にある1種を特に増やすことでほかの生物に大きな影響を与えていないだろうかという関係についてご見解はいかがでしょうか。

●水産庁(重) その問題につきましては私どもがやっているものがそもそも生物多様性を確保するために放流しているというよりは、私どもの活動そのものが全体の中での自然の食物連鎖なり生物循環の中のものを利用しているという観点で、やっていることのかなりの部分が生物多様性とも関連があるという観点でのことです。ただ、今のお話の放流関係については過去あった資源量が今ずっと悪くなっている。今はある意味では過去に存在した資源量まで戻すことを目標にしておりまして、それをはるかに越えた状況は今のところほとんど出てきていない。そういう意味ではある種、さけ・ますが過去の資源量に匹敵するところぐらいまでは今戻ってきているかなというぐらいで、それすらも過去の資源量を越した状況になっていて、それが全体のほかのものをどこまで圧迫しているかが明確な形での証拠が出ていないと言えば出ていないわけです。ただ、その辺に対する問題意識は私どももございまして、その問題につきましては一番成功しているさけ・ます等につきましては北太平洋全体の中での各国から来ているさけ・ます資源の放流関係とか餌の取り具合の状況、そのような全体のバイオマスとの関連での調査を視点に入れた調査を今進めているところですし、瀬戸内海等におけますガザミ等につきましては環境自身が悪くなって環境収容力がどこまで落ちてきた中でどこまで増やしていくのかということになりますと我々もそこまでの整理はできておりませんが、やはり一方では過去の最大を目標にする中でまだそこまでいっていないので、現実的にそこまではあまり気が回っていないというのが実態でございます。

●和里田委員 サケが量的にはかなり増えてきているということですけれども、河口で全部とってしまって人工ふ化という形になっていますね。サケというのは川の生態系の一要素でもあると思うんです。ですから、川の生態系に戻してあげる部分も考慮いただけたらと思うのてすけれど。

●水産庁(奈良) さけ・ますを担当している者ですが、例えば北海道の例ですと今、増殖河川ということでさけの放流を120 河川ぐらいで行っております。親魚の捕獲は従来は80河川、そこで親魚をとって卵をとっていたのですが、そういう一つの事業の効率化を進めて、あとはほかの河川についても一部、天然産卵も観察する。そのような状況も含めて今は捕獲を50河川ぐらいに絞ったような状況にしております。そこでは自然に遡上するものもありますし、ただ、今は人工的な資源が多くなってきておりますので、普通、自然遡上させますと、そこで天然産卵するものもかなりいますけれども、自然状態では産卵できる条件の整った場所はないものですから、次に上ってきたものがまた掘り起こすとか、非常に多くなりますと腐敗して死に、かなり住民の苦情が出るとか、そういう状況にもなりますので、その辺は適宜海でとるなりの手立てなど、その辺の調整等を進めながら今、人工ふ化放流をやっている状況です。

●辻井委員長 今のお話で私も伺いたかったのですけれども、いわゆる自然産卵系統の維持は今お答えになったように河川の状況も必要であるわけで、これはどちらかというと明日の河川局の話になるのかもしれないのですが、水産庁としてはそういう自然産卵系統もかなり重視する必要があるわけでしょう? つまり、全部を人工ふ化にしてしまうのではなくて、自然産卵できる場所も含めて自然産卵系統種を確保しておかないと、要するに全部が人工ふ化というのは非常に不自然な形ではないだろうか。私も専門ではありませんが、現在、北海道に住んでいますから余計そういうことを身にしみて感じるんです。

●水産庁(奈良) ただ、先ほど言いましたが、天然の川ですと生産力が非常に限られておりますので、そういう意味では人工的に手立てをしないと今の大きな資源が維持できないんです。

●辻井委員長 それはよくわかります。数は限られるけれども、そういう系統種の保存というか意義は必要ではないかと思うんです。

●水産庁(奈良) それで私たちは今、人工ふ化放流で気をつけているのは、それぞれの地域集団をさけでも大事にしております。例えば北海道は海が5つの海域に分かれているのですが、それぞれの海域海の系群に一つの地域集団がある。その中で人工ふ化放流する場合又は移植する場合はその範囲内で行うとか、多様性を保全している河川につきましては人工的に受精したものが前期なら前期という資源に偏らないように、遡上期間が長いものですから、その辺は幅広い資源量ができるような形で卵どりをするとか、人工受精するときに特定のものだけ、例えば大きいものを掛け合わせるとか、そういうことの人為的な選択をしないような形でやるとか、その辺は系群の保全に留意しています。

●辻井委員長 それはここにも書いてありますね。人為的選択をしないように。

●水産庁(奈良) そういう点に留意した人工ふ化放流を今進めているところです。

●辻井委員長 ありがとうございます。他にいかがですか。

●鷲谷委員 一言、人為選択をしないとおっしゃっているのですが、遡上させないことが大きな人為選択だと思います。遡上するのに必要な能力はなくてもいいことなってしまいますね。やはり大きな人為選択を河口でとってしまうことによって付与しているということでないかと思います。

●水産庁(奈良) 人工的にふ化放流をやっている場合、親魚を確保しているのですけれども、全部が全部、河口でとっているわけではなくて、100 キロの上流とか支流とか、その辺は親魚を捕獲している形態はさまざまでございます。
 それから、完全に川をとめて魚を全部取り上げるのは不可能ですので、実質的には大雨が降りますと全部とめを越えて魚が上る状態も起きますので、全部を完全にシャットアウトして人工ふ化放流をしているという状況ではありません。

●辻井委員長 他にいかがでございましょうか。

●三浦委員 もう1点お伺いしたいのですが、ブラックバス等の外来魚についてですが、これは水産庁の基本的なスタンスというか、生物多様性にとって外来魚はどうなのかということを明確に言っておくことが必要だと思うんです。全体としては拡大の防止、生息数の減少を図ると言っているのですが、それ以上に踏み込んだ、要するにブラックバスのような外来の移入種を河川に入れることがどうなのか。やはりそういうことは基本的にダメだということを明確にしておく必要がある。それから、特定の場所はともかくとしても基本的には根絶させていく方向、そういう姿勢なのでしょうか。そういうことも国家戦略に書き込んでいただきたいと思うんです。

●水産庁(重) 基本的には先生のおっしゃるような方向で私どもも考えておりますので、記述等について検討させていただきます。

●辻井委員長 他にいかがでしょうか。よろしゅうございますか。
 それでは、時間も大分押してしまいましたので今日はここまでということにさせていただきます。事務局の方からお願いします。

●渡辺生物多様性企画官 明日は10時半から、今度は場所が環境省の第1会議室、22階です。10時半から行いますので、引き続きよろしくお願いします。朝から長時間にわたりまして、どうもありがとうございました。

●辻井委員長 先ほど申し上げるのを忘れましたが、小委員会で配布しました資料、議事要旨、議事録は公開となります。これは前にも申し上げましたので繰り返しになりますが、公開となることをご承知おきいただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。

午後5時35分閉会