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■議事録一覧■

中央環境審議会 自然環境・野生生物合同部会(第1回)
議事要旨


1.日時

平成24年8月29日(水)13:30~16:30

2.場所

全国町村会館 2階ホール

3.出席者(敬称略)

(部会長)

武内和彦

(部会長代理)

山岸 哲

(委員)

加藤順子、佐藤友美子、鷲谷いづみ(五十音順)

(臨時委員)

石井信夫、石井実、磯崎博司、磯部力、磯部雅彦、市田則孝、大久保尚武、河田伸夫、神部としえ、小泉透、小菅正夫、小長谷有紀、佐々木洋平、下村彰男、白幡洋三郎、白山義久、高村典子、田中正、辻本哲郎、土屋誠、中静透、橋本光男、浜本奈鼓、速水亨、マリ・クリスティーヌ、三浦慎悟、宮本旬子、涌井史郎(五十音順)

(特別委員)

あん・まくどなるど

(事務局)

環境省(伊藤自然環境局長、星野大臣官房審議官、上河原総務課長、亀澤自然環境計画課長、中島野生生物課長、桂川国立公園課長、岡本調査官、奥田生物多様性地球戦略企画室長、牛場生物多様性施策推進室長、堀上自然ふれあい推進室長、関根外来生物対策室長、奥山生物多様性センター長)

4.議事概要

(1)生物多様性国家戦略(案)の検討

環境省より[資料1]から[資料7]に基づき国家戦略の変更の案を説明。この後、その内容について検討した。

<前文及び第1部について>

前回の生物多様性国家戦略2010の時にも意見を述べたが、生物多様性国家戦略は生物多様性基本法第11条に基づく「生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する基本的な計画」という位置づけである。基本計画は実現可能性を十分踏まえた上で策定する必要があるが、この膨大な計画が本当に実現可能なのか。また、タイトルが2012-2020となっているが、2020年まで見直さないでよいのか。副題を付けるのも結構だが、生物多様性基本法を受けての第2次生物多様性基本計画という位置づけが明確になるタイトルがよい。
全体で3部構成としているが、見えづらい。例えば、第2部の国別目標B-4-1で侵略的外来種リストを作ると書いているが、どういうものになるのかが具体的に見えにくい。D-1に対応する愛知目標14は女性、先住民、地域社会、貧困層及び弱者のニーズが考慮されるとなっているが、国別目標では女性が出てこない。E-2に対応する愛知目標18、19、20はCOP10の議論の中でも重要とされていたものだが、それに対する国別目標がこんなに簡潔で良いのか。愛知目標に対する他の国々の認識と日本の認識にずれが生じているのではないか。第3部についても、生物多様性の保全に貢献している事業主体や団体に対して、生物多様性賞などにより表彰することで国民に普及していくことが出来ると良い。
最初の意見について、他の委員からも御意見をいただきたい。生物多様性国家戦略のこれまでの経緯を整理すると、最初の生物多様性国家戦略は1995年にでき、その後2002年と2007年に改定し、2008年に生物多様性基本法が制定されたことを受けて、2010年に最初の法定計画として生物多様性国家戦略2010が策定された。今回は、愛知目標を受けた改定であり、国家戦略2012-2020とした。
法定計画となる前後で、手続きに違いはあるのか。法律に基づく基本計画であるなら、それを明記した方が良いと思う。また、今後、計画期間が法定計画とどのように対応していくのか、明確にしておかなければならない。
資料5の前文、2ページの下の方にこれまでの経緯を示している。生物の多様性に関する条約の第6条に「国家的な戦略若しくは計画を策定」することが求められている。したがって、生物多様性国家戦略は条約に基づくものでもある。それから2008年に生物多様性基本法が制定されて法定計画となった。基本法の第11条では「生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する基本的な計画(以下「生物多様性国家戦略」という。)」とされており、法律上も「生物多様性国家戦略」という名称である。手続きについては、最初の生物多様性国家戦略は閣議決定をしていない。その後、2002年の新・生物多様性国家戦略は地球環境保全に関する関係閣僚会議において決定した。2007年の第三次生物多様性国家戦略では閣議決定をしている。2008年に生物多様性基本法が制定される以前から、閣議決定という手続きはしており、基本法はそれを踏襲した手続きとなっている。今回の国家戦略は法律に基づくものとしては第2次になるが、これまでの経緯から考えると、第2次とするのは逆に分かりづらいと考える。また、今回の国家戦略は愛知目標を踏まえたものであり、各国の例にも倣いターゲットイヤーを明記したタイトルにしたい。見直しについては、4ページの前文の中で記述しており、愛知目標の達成状況に関する中間評価の結果も踏まえて見直すこととしている。(生物多様性地球戦略企画室長)
事業者の表彰制度については193ページで記述しており、こうしたことを通じて事業者の生物多様性の保全に寄与する取組を促していきたい。(生物多様性施策推進室長)
愛知目標を受けていないという御指摘もあったが、愛知目標の決議では、各国の生物多様性の状況やニーズ、優先度等に応じて国別目標を設定し、各国の柔軟な枠組みの中で取り組んでいくこととされていることから、わが国の国家戦略の中でどれだけ書き込めるか議論をしてきた結果、現状でこのとおりまとめた。(生物多様性地球戦略企画室長)
外来種ブラックリストについては、206ページに具体的な記述をしている。ブラックバスやブルーギルなど既に法律で規制の対象となっている種だけではなく、規制の対象となっていない種について注意喚起することが主な目的であり、リストに掲載したからといって直ちに規制の対象となる訳ではない。(外来生物対策室長)
第2部は「愛知目標の達成に向けたロードマップ」と書いてある。愛知目標は日本の地名も入った目標であり、一つひとつの個別目標についてもっと丁寧に対応していくことが日本の責任であると考えている。どうでも良いような部分の記述が多く、重要な部分の記述が少ない点に不満がある。
今後の見直しプロセスも含めて、記述に足りない部分がないか検討していきたい。(生物多様性地球戦略企画室長)
73ページの社会経済的な取組について、非常に消極的な表現が多いと感じた。生物多様性は企業にとってある意味ではチャンスと捉えることができると考えている。積極的に新たな技術開発が可能な分野でもあると考えており、海辺、護岸の整備など、企業の技術開発を促す、前向きな取組を促すような書き方にできないか。もっとみんなでやっていこうという宣言であっても良い。
44ページ12行目「汀線に人工構造物がない自然海岸」とあるが、汀線は海と陸の境界のある一点を指している。環境省では、干潮の汀線と満潮の汀線の間の潮間帯に人工構造物があるかないかで、人工海岸と自然海岸を定義している。このため、「汀線」ではなく「潮間帯(潮の干満に伴う汀線の移動範囲)」とした方が良い。
次に、67ページ20行目に塩性湿地という言葉を入れたのは適切であるが、他の記述との統一を図ったらどうか。25行目は「干潟、藻場、サンゴ礁」とあるが塩性湿地は抜けている。
67ページ23行目の「断崖」は海崖という言葉に置き換えたらどうか。30行目の「沿岸域は津波や高潮といった自然災害を受けやすい地域」について、干潟とかサンゴ礁の地形変化を考えると、海岸浸食がもっと大きな意味合いを持っていることから、「沿岸域は津波や高潮、浸食作用といった自然災害を大きく受ける地域です」など、「浸食作用」という言葉を入れておくべきであろう。
68ページ1行目、「現存する自然海岸や藻場・干潟等の浅海域の保全を優先するものとし、」は「現存する干潟、塩性湿地、藻場・サンゴ礁等の自然海岸を含む浅海域の保全を優先するものとし、」としたら良い。
御指摘のあった書き方のトーンとして弱いという点については、個別のところで新たなビジネスチャンスであるといった内容など積極的なことも記述しているが、御指摘の部分に反映できるかどうか検討したい。(生物多様性地球戦略企画室長)
企業の役割について、活動の主体は広がってきている中で、目標をきちんと持ちながら進めていけるようにして欲しい。保全と利用という問題、エコノミーとエコロジーの両立を図っていくというところで我々は生きているので、そこをやっていきたいが、その日本人としての覚悟を戦略の中で謳っていただければありがたい。

<第2部について>

109ページ、主要行動目標B-4-2の外来種防除について、担当省庁の中に国土交通省が入っていないことにかなり違和感がある。河川局(現水管理・国土保全局)のテリトリーである河川域は侵略的外来種の影響を大きく受けている。河川では河川水辺の国勢調査が行われており、現状把握が進んでいて、対策マニュアルも出来ている。対策マニュアルを活用した住民の取組も活発に行われているのが河川域であるので、ここに国土交通省が入るのが自然。法律でも河川法では環境も位置づけられている。本来の仕事としても、国土交通省が入ることに問題はないと思われる。
今回、愛知目標と国家戦略の関係が明確化し、指標群まで示したことは良かった。
国別目標A-1は企業の方の実施状況について、第1部ではサプライチェーンなどのことについてもっと踏み込んで書いている。指標についても踏み込んだ指標を設けた方が、企業の方の取組につながるのではないか。
国別目標B-2の農林水産業の持続的実施は何処に位置づければよいのかよく分からないが、農林水産業の問題は国内だけではなく国際的な農林水産業についても持続的な取組を進めるように書いて欲しい。主要行動目標D-2-3の森林施業について、劣化した自然の再生に関わるものとして、林野庁でやっている広葉樹林化、混交林化も含めて良いのではないか。
個別目標E-1について、主要行動目標E-1-2で地球環境ファリシティー(GEF)、生物多様性日本基金を位置づけているのは良いが、外部評価でどのくらい効果あったかが分かる指標があれば良いと思う。
ロードマップを具体的に施策として表現しているのが第3部で、118、119ページに国別目標との関係が表にまとめられているが、国別目標と具体的施策との対応関係は確認しているのか。目標はあるが、具体的施策はないという状況になっていないか。
御指摘のあった主要行動目標B-4-2について、外来種被害防止計画を策定することとしているので、それを所管している省庁を示した。これ以外の省庁がやらないというわけではない。第3部の具体的施策では国土交通省も河川の外来種対策を進めていくと明記している。
国別目標A-1に企業の方の活動に対してサプライチェーンも含めての支援を書き込めないかということについて、主要行動目標A-1-5に包括的に含まれていると考えているが、どういう用語で趣旨を含められるか、関連指標で具体的に示すことで明確に出来るかも含めて検討したい。また、劣化した生態系の主要行動目標D-2-3については農林水産省とも相談したい。
国別目標E-1の生物多様性日本基金やGEFの貢献度について、指標に含められないかという点について、具体的なデータとして示せるかは検討したい。
御指摘の第2部と第3部の関係を示した表について、国別目標と行動計画との対応は、約700の行動計画が愛知目標のどの個別目標に対応しうるかを検討したが、直接的に関係するものだけでなく、間接的に関係するものもあり、複雑であることや、関係性の検証も十分でないことから今回はこのような整理としている。直接・間接を問わなければ、全ての目標に対応した具体的施策がある。(生物多様性地球戦略企画室長)
経済、事業者と生物多様性について、環境省は国民が最後に国土を守ってくれる駆け込み寺だと思っている。ABSも弱い者が搾取されないための仕組みづくりだと思っている。経済をこの中に引っ張り込んできた時に、例えば農業が非常に農薬を使って環境を壊した時に誰がそれを止めるか。ビジネスに関する項目は愛知目標の中にも入っていない。それはプロセスの中で取り組んでいくしかない。林業も人の手を入れないことで守られないということもある。日本はハイデラバードで、各国の見本となる国家戦略を世界にアピールして欲しい。そのためには、愛知目標を拡大解釈するのではなく忠実に対応する必要がある。SATOYAMAイニシアティブや漁業をしすぎないで持続可能な利用を図っていくことなど、ビジネスか生態系・生物多様性を守る仕組みをつくるのか、バランス良く、統一して欲しい。
関連指標で施策を評価するというのはとても良い試みだと思っている。その上で指摘するが、関連指標群には全般的なものと例えばマングースの数のように個別具体的なものとがあり、個別具体的なものが必ずしも網羅的に示されていない。第2部の最初に「関連指標を示します。」と簡単に書いているが、全般的な指標と、主要な事例として挙げている個別具体的な指標があることを説明して欲しい。また、指標群もそれがわかるような整理にして欲しい。
愛知目標の達成は、具体的には生物多様性の減少が止まらないと分からないが、緊急性があるものと長期的なものとがある。緊急性があるものは優先的にやっていかなければならないが、並列的に書いてあるので分かりにくい。環境省の環境研究総合推進費S9でも研究者が頑張って指標づくりをしている。2012年から2020年の間に大きな研究成果が出てくると思っている。ロードマップに科学的成果を盛り込むことや、関連指標に途中で入れ込むこと等について可能かどうか教えて欲しい。
御懸念のような問題が一部であるということは承知しているが、COP10でもビジネスと生物多様性の決議(Ⅹ/21)がされている。また、国家戦略の中でも資源動員をどうするかということも議論されている。ビジネスということだけで敵視するのではなく、生物多様性に貢献できるビジネスこそ事業活動が持続可能となり、得をすることが重要と考えている。第1部も第2部でもそうした視点で記述している。
関連指標群の中身・性格にさまざまなものがあるという御指摘について、105ページに指標そのものが完全なものではないと書いており、御指摘の点を記述に含めるかどうかは検討したい。現段階で指標群を色分けするのは若干難しいと考えているが、読み手が分かりやすいような工夫をしたい。
御指摘である新しい知見を取り入れられるのかということについては、見直しや充実を図ることとしていると記述しており、総合的点検や見直しの時に分かりやすい指標や、不足している指標がないか等については検討したい。(生物多様性地球戦略企画室長)
105ページでは「環境や社会経済等の状況に即し」とあるが、科学的な知見の充実で見直すという視点が抜けていると思われる。重要な点なので、それが分かるように明瞭にしておいていただきたい。

<第3部について>

全体を通してだが、55ぺージの「自然共生圏」という概念は非常に重要だと思う。生態系サービスに関する生産と消費の非常に抽象的な概念であるため、これを具体化するための取組を個別のステップとして踏み出していくことが必要。例えば、SATOYAMAイニシアティブや生態系ネットワーク、ユネスコの生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)など。131ページなどに生物圏保存地域が入っているが、生物圏保存地域は人間と生態系の利用と保全の関係を学術的に保存するということで、文部科学省が中心に取り組んでいるが、人間の利用も含めて「自然共生圏」に近い枠組みを推進しているといえる。世界的にはユネスコの生物圏保存地域は地域毎の生態系の枠組みを保存しているが、今のやり方では狭いので、地域的、全国的に拡大していくために文部科学省とも相談して欲しい。
生物多様性条約第9条で、生息域外保全に関する条項があり、国の義務になっているが、生物多様性基本法の中に生息域外保全は入っていない。トキ、コウノトリ、イリオモテヤマネコを含めて生息域外保全を種の保存法でやっているが、もっと大きな枠組みの中でやっていったらどうか。少なくとも調査くらいはやってほしい。
150ページのあたりの生物多様性保全をより重視した農業生産の推進について、農薬の使用の一般的な話が書いてあるが、ネオニコチノイド系の農薬のことが世界的に問題になっている。水田で使用されたネオニコチノイド系農薬が日本の固有種であるアキアカネの激減を招いているといわれており、それ以外にも影響が大きいと考えられる。ネオニコチノイド系の農薬の使用に配慮するといった記述が欲しい。
152ページ19行目に総合的病害虫・雑草管理(IPM)について記述されているが、特に水田等の農地において、生物多様性に配慮したIBMに踏み込むべきだとの意見もある。「更に生物多様性に配慮した」との記述を含めるよう検討して欲しい。
第3章の東日本大震災に絡んで、第2章第10節に「自然共生社会、循環型社会、低炭素社会の統合的な取組の推進」があり、第3章第2節の「新たな自然共生社会づくりの取組」と内容が重複しているのではないか。第3章では地震の被災地を対象にしたものなのかどうか。整理が必要と思われる。また、第3章の基本的考え方では東日本大震災についてかなり幅広に書いてあるが、第1部の東日本大震災絡みではいろいろ書いてはあるが、タイトルにあるのは45ページと52ページのみで内容が限定されている。第1部の方にももう少し書き込んだ方が良いのではないか。地産地消などは第1部にあまり書いていないので、第3部との整合性を図って欲しい。
担当省庁の並び順については主従など意味があるのか。主担当をゴシックにして目立たせるなど、主担当の省庁が分かるような工夫をして欲しい。
174ページと177ページで、希少生物の科学的知見の集積・充実を図ると全く同じ記述があるが、別の項目なので表現を変えるなどの工夫ができないか。
238ページでは、森林については技術開発だけが書いてあり、調査研究はしないということか。御検討いただくかあるいは理由があれば教えて欲しい。全体としては逆に技術開発という点での記載が少ないと感じた。技術開発は今後、重要な点ではないかと考える。
212ページのエコツーリズムは節として特出しした形だが、全体としてはここにだけ突然出てくるという印象。海の健康度を数値化した「Ocean Health Index」で日本の評価は低い。特にエコツーリズムの項目については、日本は100点満点中1点であった。小委員会の検討時にはそのような情報はなかったが、国際的な視点からはエコツーリズムは重要視されているので、こうした視点での見直しをお願いしたい。
生息域外保全について、もう少し力を入れるべきだと考えている。今回、カワウソが絶滅したとしたことは30年来目撃がないことを認めたということだと思うが、30年間何もせず、実感のないまま絶滅してしまったという印象。生息域外保全はその種がどのような状況になった時に始めるのかということを、いくつかのモデルケースを作って検討して欲しい。絶滅してしまった種について検証し、これからの対応を考えるべきである。
第2部の国別目標E-2の生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する伝統的知識等が尊重されるということについて、第3部で具体的に何処に施策があるかが分からない。環境省、文部科学省で「継承・活用の促進を図る」と書いてあるが、明示的に分かるよう整理をお願いする。
約20年前と比較すると、生息地そのものは変わっていないが鳥や虫の数は激減している。これには農薬の問題が大きいと考えている。農薬問題は解決している訳ではない。特にネオニコチノイドは水に溶けるので、影響が広がっているのではないか。千葉県の谷津干潟では干潟の環境は変わっていないにもかかわらずオオヨシキリの飛来・繁殖数が急激に減っている。第3の危機でそれとなく書いてはあるが、もう少しはっきりと書いて欲しい。
186ページの「自然とのふれあい」は重要であり、ふれあうからこそ自然を大切にしようという心が沸いてくる。スズメを見ても感激しないが、タンチョウやシマフクロウを見ると感激する。しかし、感激するような自然には過剰利用の問題が出てくる。見せない、触らせない、ということが基本的な姿勢となっており、地域の積極的な取組の足かせとなっている事例が多々ある。ヨーロッパでは絶滅危惧種のカラフトフクロウの巣を一つだけ公開するなどの取組もある。希少な生物とのふれあいはやってみようとすると壁があるが、それを乗り越える取組を行って欲しい。
トキの野生定着について198ページ14行目に「※7月末の分科会のロードマップ素案も踏まえて実現検討」とあるが、分科会は終了しておりその結果について反映をお願いする。
消費者が何を使っているかという視点は、193ページと254ページに全く同じ文章で2回しか出てこない。日本の国民が自然共生圏という考え方の中で、何をどのように消費していくかというメッセージを、もっとスマートコンシューマーがどういうものであるのかを膨らませて書いた方が良い。
自然再生の節などにおいて、生物多様性地域連携促進法に関する記述が見当たらない。自然再生や里山の保全等にこの法律を活用していくという記述があってよい。
国土交通省河川局(現水管理・国土保全局)に関わることで、167ページの水力発電については経済産業省との連携でやっていくものではないか。水質についても人の健康という視点では、厚生労働省との協力体制が必要ではないか。水質ではリスク物質について、健康項目と生態系との微妙な関わりについて書かれていない。下水処理の中でどのようにリスク物質を扱っているかを考えていただきたい。168ページに河川の調査研究が書かれているが、第8節の科学的基盤のところでまとめて書いた方が良い。最後に第10節の自然共生社会、循環型社会、低炭素社会の統合的な取組の推進について、自然共生についての取組があまり書かれていない。東京湾再生推進会議など3大湾で行っている湾を中心とした自然共生型流域圏を考えて負荷を減らしていくような取組に環境省、国土交通省も関わっているが、こうした取組を自然共生社会の取組の代表例として書き加えるとよい。
森林に関する施策全体について、他と比べると民間の活動についての評価、目標が少ない。施策を実施して最終的にそれを受け止めるのは、民間の森林管理がどう変わっていくかということ。森林教育についても国がやることが書いてあるが、民間でも森林教育は一生懸命やっているところがたくさんあり、そのような活動を評価して欲しい。民間が引き受けて実施している持続可能な森林管理や森林教育などの取組を、どう広げていくかという視点が不足している。木材等の調達方針等も民間が方針を立てていくことに対する評価をしっかりすることが、認識が広がっていく。143ページの人材育成の目標にあるフォレスター育成についても、国有林や県職員の人だけでは結果的に広がっていかないので、民間人をどれだけ認定したのかということも目標に位置づける必要がある。
各委員からの御指摘の点については、それぞれ修正が可能かどうか関係省庁とも相談して検討したい。
第3章第2節が被災地の取組に限定しているかというご質問については、大震災をきっかけにした新たな自然共生社会づくりの取組を記述しており、被災地に限定はしていない。第3部の東日本大震災の記述の中から、第1部にフィードバックして記述を充実できるかは検討したい。
御指摘のあった調査研究と技術開発の整理については、河川のことも含めて検討をしたい。
御指摘のあった伝統的知識・自然文化についての具体的施策は254ページ18行目に若干記述しているが、その他に記述できるかどうか検討したい。
御指摘のあった消費者の取組については、第3部というより第1部でどう厚く記述できるかということだと思うので検討したい。
御指摘のあった民間団体の取組については、関係省庁とも相談したいが、国の計画としてどこまで記述できるかは検討したい。
ネオニコチノイドについては、今回の改定にあたりいろいろと議論し、関係省庁とも協議した結果、国家戦略の中で明確に記述するだけの因果関係と状況の把握が出来ていないため、このような記述とさせていただいた。引き続き情報収集を続けるとともに、今後の課題としたい。(生物多様性地球戦略企画室長)
域外保全については重要性が増していると考えている。なるべく早い段階で取り組むのが重要で、生息域外保全に関する基本方針を作っているが、議論が不足しているので今後の課題と受け止めている。種の保存法の保護増殖事業計画で生息域外保全に取り組むと書けば取り組むことは可能であり、法的な整理がネックにはなっているわけではないため、必要があれば取り組んでいきたい。
御指摘の7月の分科会でのロードマップの検討結果については反映する。(野生生物課長)
事業者と消費者に関する取組は、まず183ページからの生物多様性の主流化の推進の中で、国、地方自治体、事業者、NGO、国民など様々な主体が連携して取り組むことが必要で、そのための普及啓発を図っていくことなどを記述している。その上で、特に事業者と消費者の取組を推進することが重要性であることから193ページに記述しているという構成になっている。(生物多様性施策推進室)
エコパークについては、今年の7月に新しく宮崎県綾町が登録されたが、自然と人間社会の共生を目的としているので、最近の動きを踏まえて文部科学省や農林水産省とも連携して取り組んでいきたい。
生息域外保全については基本方針に加えて、野生復帰の基本的考え方も作成した。パンフレットも作っており、モデル事業も行っているので普及していきたい。(自然環境計画課長)

<全体について>

国家戦略は本日の意見を踏まえて加筆修正し、事務局と私で取り纏めて9月13日に答申案として示したい。