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中央環境審議会 自然環境・野生生物合同部会
(平成21年度 第2回)
議事録


1.日時

平成22年2月4日(木)9:30~12:10

2.場所

三田共用会議所 3階 大会議室

3.出席者

(委員長) 熊谷洋一
(委員) 有路 信 石井 信夫 石井  実
石坂 匡身 磯崎 博司 礒部  力
市田 則孝 岩熊 敏夫 大久保尚武
岡島 成行 河田 伸夫 川名 英子
神部としえ 是末  準 桜井 泰憲
鹿野 久男 竹村公太郎 田中  正
田中 里沙 土野  守 土屋  誠
中川 浩明 中静  透 中道  宏
中村 太士 西岡 秀三 浜本 奈鼓
速水  亨 福田 珠子 三浦 愼悟
森戸  哲 森本 幸裕 山岸  哲
田島副大臣
自然環境局長
大臣官房審議官
参与
自然環境局総務課長
自然環境計画課長
自然環境整備担当参事官
自然ふれあい推進室長
外来生物対策室長
生物多様性センター長

4.議事

【事務局】 定刻となりましたので、ただいまより中央環境審議会、自然環境・野生生物合同部会を開催いたします。
 開催に先立ちまして、本日の出席委員数のご報告をいたします。所属委員51名のうち、今現在過半数の28名の委員にご出席いただいておりますので、中央環境審議会令の規定に基づき、定足数を満たしており、本部会は成立しております。
 次に、本日の審議のためにお手元にお配りしております資料につきましては、議事次第にあります資料一覧のとおりとなっておりますので、もし配付漏れ等がございましたら、事務局にお申しつけください。また、卓上のマイクですが、ボタンを押していただきますとオンになり、再度押していただきますとオフになります。
 それでは、議事に移りたいと思います。これより議事進行につきましては、熊谷部会長にお願いいたします。よろしくお願いいたします。

【熊谷部会長】 はい、かしこまりました。おはようございます。それでは、ただいまから平成21年度中央環境審議会第2回自然環境・野生生物合同部会を開催いたします。
 まず初めに、本日は田島環境副大臣がお見えでございますので、一言ごあいさつをいただきたいと思います。よろしくお願いをいたします。

【田島副大臣】 失礼いたします。皆様改めましておはようございます。ご紹介いただきました環境副大臣の田島一成でございます。本来でございますならば小沢環境大臣がこの会場に参りまして、皆様に親しくごあいさつを申し上げるべきところではございますが、本日、参議院の予算委員会が既にスタートをしておりまして、かわりまして私の方から一言ごあいさつを申し上げたいと思います。
 委員の先生方には、お忙しい中この会議にご出席いただきまして、本当にありがとうございます。また、日ごろより環境行政の推進につきまして、各方面から大変ご尽力をいただいておりますこと、心から厚く御礼を申し上げたいと思います。
 ご承知のように、本年10月、愛知県名古屋市でCOP10、生物多様性条約第10回締約国会議が開催され、議長を務めることとなりました。私どもにとっては国際的な大きな会議、何としても成功させなければならない、そんな思いで日々その準備に追われているところでもございます。また、重ねまして今年2010年は、国連が定める国際生物多様性年でもございまして、1月ドイツ政府が主催をするこのオープニングセレモニーにも私お邪魔をしてまいりました。各国がこのCOP10にかける強い思い、また議長国である日本に寄せる大きな期待を肌で感じてまいってきたところでございます。私どもとしても大きな責任を背負っているところではございますが、何としてもこのCOP10を一つの契機にして、国際生物多様性年としてのこの1年の過ごし方、また生物多様性の問題を広く国民に、また社会全体に広げなければならない、そんな責務を負っていると気持ちも新たにしているところでもございます。
 本日のこの議題でございます生物多様性基本法に基づく生物多様性国家戦略の策定でございますが、これは法定化という大きな問題であり、昨年7月にこの合同部会の場でお諮りを申し上げ、その後国家戦略小委員会におきまして熱心に議論を重ねてきていただいたところでもございます。また、これまで年末から年始にかけてのパブリックコメント、そして全国7会場での説明会等々も踏まえて本日を迎えることとなりました。私自身も当時は野党の1議員ではございましたけれども、このもととなります生物多様性基本法を策定するに当たって、立法者の一人として思い入れ深く取り組んできたところでもございました。それだけに、この法定化の国家戦略をこの場でご審議いただくことは、大変強い思いも持っておりますし、また、皆様によってお決めいただいたこの法定国家戦略を携えて、10月に迎えるCOP10に臨んでいく、そんな思いで本日皆様にぜひ真摯なご意見を賜りたく、お願いを申し上げるところでございます。政府といたしましても、早急に法定計画として位置づけまして、国内外の状況の変化に的確に対応してまいるよう、努力を重ねてまいりたいと思います。
 どうか本日、限られた時間ではございますが、皆様の真摯なるご意見をちょうだいし、実り多き会議となりますように、心からお願いを申し上げて、一言開会に当たってのごあいさつにさせていただきます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

【熊谷部会長】 田島副大臣、どうもありがとうございました。なお、副大臣におかれましては、公務ご多忙のため、ここでご退席をされるとのことでございます。どうもありがとうございました。
 それでは、議事に入らせていただきます。本日の議題は生物多様性国家戦略2010(案)の検討でございます。今回の生物多様性国家戦略の策定につきましては、7月に環境大臣より中央環境審議会に諮問がありました。これまでに生物多様性国家戦略小委員会を4回開催いたしまして、昨年11月に小委員会としての生物多様性国家戦略2010(案)をまとめました。小委員会の委員の皆様には短期間に大変活発なご議論をいただきまして、ありがとうございました。本日はその後1カ月間実施いたしましたパブリックコメントの結果を踏まえまして、事務局でさらに修正したものを用意してもらっております。これについて、合同部会の皆様からご意見をいただきたいと考えております。どうぞよろしくお願いをいたします。
 それではまず事務局より概要の説明をお願いいたします。

【自然環境計画課長】 自然環境計画課長の星野でございます。概要についてご説明をさせていただきます。失礼して座って説明させていただきます。
 まず資料1をご覧ください。生物多様性国家戦略2010の策定スケジュールの(案)をお示ししたものでございます。7月9日に自然環境・野生生物合同部会(第1回)の会議を開催いたしまして、国家戦略見直しに係る諮問をさせていただいたところでございます。その合同部会で生物多様性国家戦略小委員会の設置、そして今後の検討の進め方についてご了解をいただいたということでございます。
 小委員会第1回目を7月28日に開きました。各省のヒアリング、自治体、NGO、そして経済団体のヒアリングを経て、主要な新規事項の検討を第2回目で行いました。ここまでの概要につきましては、合同部会の各委員に審議の概要、ヒアリングの資料等の送付をさせていただいたところでございます。
 第3回目の会合、9月30日にございまして、素案、これ第1部の案文でございます。これについてご審議をいただきました。また11月24日には4回目の小委員会がございまして、国家戦略の全体の案文についてご審議をいただきまして、いただいた結果を踏まえて、修正した案につきまして12月10日から30日間、パブリックコメントにかけたところでございます。あわせて全国7カ所で説明会を開きまして、内容の説明を行ったところでございます。
 そして本日、第2回目の合同部会を開かせていただきまして、案文のご説明をして、内容についてご検討いただきたいということでございます。次回の合同部会は3月1日に予定しておりまして、できればその部会におきましてご答申をいただければと考えているところでございます。3月末までに閣議決定をいたしまして、生物多様性国家戦略2010を確定をしたいというふうに考えているところでございます。
 続きましてお手元にお配りいたしました冊子、第三次生物多様性国家戦略の実施状況の点検結果の冊子をご覧いただきますでしょうか。小委員会でご検討いただくに当たりまして、平成19年11月に策定いたしました第三次戦略の策定後の取組状況をご説明をいたしました。この冊子、本年7月、関係省庁連絡会議におきまして点検結果報告としてまとめたものでございます。第1回の小委員会にご報告いたしました後、国家戦略の(案)とともにパブリックコメントにかけたものでございます。この点検につきましてご意見、6件いただきました。一部修正を行っております。
 この点検結果の報告を踏まえまして、生物多様性国家戦略2010の(案)、本日お配りした(案)を作成しておりますので、点検報告書自体の詳細な説明は省略させていただきますけれども、ポイントだけ簡単にご説明させていただきます。
 目次の次のページ番号で2ページ目をご覧いただきたいと思います。第1部といたしまして、前回の点検時の審議会意見へ、どのような対応をしたかということを書いてございます。囲みがございますけれども、新戦略策定時、合同部会からご指摘をいただいたのがこの囲みの中でございます。点検の方法についてということで、指標の検討とわかりやすい評価が必要というご指摘をいただきました。これにつきましては以降10ページまで記載してございますけれども、生物多様性総合評価検討委員会を設置いたしまして、本年5月に日本の生物多様性総合評価報告書を取りまとめるべく、現在検討を進めているところでございます。
 2点目の普及啓発につきましては、さらに普及啓発に努力すべきというご指摘をいただきました。これにつきましては11ページ以降にご説明しておりますけれども、生物多様性広報参画推進委員会を設置して、広報参画の推進を図ってまいりました。その活動の中でわかりやすいキーワードの作成普及、そして著名人の方々のご協力をいただいて、地球規模の応援団を発足させて、それぞれの方々のご活動の中で生物多様性について普及啓発を諮っていただくという取組を進めております。また、国民の行動リストを作成いたしまして、その普及を図っております。さらには、企業の方々の参画を促進するということで、民間参画ガイドラインの作成、こういった取組を進めてきたところでございます。
 15ページ目以降に第2部として、具体的な施策の進捗について書いてございます。三次戦略で定めました四つの基本戦略に即して整理をしております。
 49ページ目以降は第3部ということで、国家戦略の本体第2部に行動計画として掲げました34の数値目標、そして約660の施策について網羅的に点検を行った結果を記載したものでございます。この三次戦略、平成19年に策定して5年間を目途に取り組む施策を掲げたものでございまして、昨年7月の時点では取組は継続中のものが多いわけですが、公表の形で各施策の進捗や今後の課題を整理をしております。第2部、第3部につきましては、膨大な量になりますので、個別の説明は省略させていただきます。
 続きまして資料2、資料3をご覧いただきたいと思います。資料2は現行の第三次国家戦略と、現在ご審議いただいております生物多様性国家戦略2010の(案)との相違点を赤字で示したものでございます。あわせて資料3をご覧いただきますでしょうか。資料3に生物多様性国家戦略2010の全体構成をお示しいたしました。資料2で示したように、全体的な構成は第三次戦略を踏襲をしております。特に変更した点といたしましては、第1部の目標に関する記述を大幅に修正しております。後ほど詳しくご説明させていただきますけれども、今年10月にございます生物多様性の第10回締約国会議、ここで世界が今後多様性の保全等に向けて進む新たな目標を設定することになっておりまして、それに対する日本から提出した意見を、この国家戦略の中にも位置づけたという修正を行っております。
 また、四つの基本戦略、資料3で見ていただきますと、第4章の基本方針の中に基本戦略を書いているところがございます。四つ掲げてございます。これらにつきまして現時点での状況の変化、さらにはCOP10に向けた取組の拡充、そういった背景を受けまして、ここの基本戦略の記述を大幅に拡充をしたということでございます。第2部は具体的な行動計画を示しておりますけれども、現行の計画660、具体的な施策を示しております。それが約60増えて約720の具体的な施策になっているということでございます。数値指標につきましても増減ございますけれども、一つ増えた35の数値指標をこの国家戦略2010の(案)の中ではお示ししているということでございます。
 続きまして資料の4でございます。これは今回の国家戦略2010の(案)のポイントを示したものでございますけれども、具体的な内容はお手元にお配りいたしました冊子、生物多様性国家戦略2010(案)というものをご覧いただきながら、ご説明をさせていただきたいと思います。
 その前に目次で1カ所訂正をさせていただきたいところがございます。目次の3枚目第2部、行動計画に書いている目次の第2節、重要地域の保全、1から10まで書いてございますけれども、この国家戦略の中で11を新しく追加してございます。「地域の自主的な管理区域」、111ページ目をご覧いただきますと、そこに書いてございます。その部分が目次から欠落しておりましたので、訂正をさせていただきます。
 それでは内容ですが、前文では生物多様性条約、そして国家戦略の位置づけと策定計画、策定経緯のレビュー、各主体の役割、点検・見直しの方法等について記載をしてございます。
 2ページ目から3ページ目にかけましては、生物多様性基本法の制定・施行の経緯について新たに追記をいたしました。
 3ページ目からは生物多様性国家戦略の策定の経緯を記載いたしておりまして、6ページ目には今回の国家戦略2010の策定経緯を追加して修正をしたところでございます。
 また8ページ目には見直しについて書いてございまして、第三次戦略の計画期間、平成19年から概ね5年間ということでございますが、この計画期間を維持いたしまして、この国家戦略2010の計画期間は平成24年度までということを書いてございます。また、COP10の終了後にCOPの成果を踏まえて見直しについて着手するということを明記させていただいております。
 続きまして第1部、10ページからでございます。ここでは生物多様性の重要性と理念を説明をしております。基本的には三次戦略を踏襲しておりますけれども、わかりやすさ、正確さを考慮いたしまして、部分的に修正・追記をしております。
 第2章、18ページ目をご覧いただきますでしょうか。ここでは生物多様性の三つの危機と温暖化の危機を説明したくだりでございます。
 22ページ目に、最新の知見によりまして森林や高山に対する影響、そして23ページ目では海洋への広域的な影響について追記をいたしました。また24ページから25ページ目にかけましては、地球温暖化の緩和と影響への適応策につきまして、専門家による検討の結果を受けまして、基本的考え方を一部追記しております。
 29ページ目から第4節に入ります。ここでは生物多様性の現状を説明いたしております。世界の現状に続きまして日本の現状を説明しているということでございます。
 38ページ目には、第5節となります。生物多様性の保全及び持続可能な利用の状況を説明してございます。38ページから39ページ目にかけましては、最近の法改正や法制定を踏まえまして、生物多様性基本法、自然環境保全法の改正の追記、そして特定地域に係る振興法を関連法という位置づけで追記をしております。
 41ページ目では、地方公共団体における最近の国内外の動きを追記をしております。
 42ページ目からは、経済界の動きということで、経団連の生物多様性宣言など、最近の国内外の企業関係者の取組を説明しております。
 44ページ目では、市民の動きといたしまして、CBD市民ネットの設立等について記述をしております。また学識経験者による動きも活発化しているということもございまして、6ということで、44ページ目になります。下に学術団体研究者による取組、ここを追加をいたしました。
 45ページから第3章、目標についての記述でございます。目標と評価についての記述をしておりまして、大きな変更点といたしましては、生物多様性条約の2010年目標、ちょうど今年のCOP10におきまして、2010年目標についての評価をいたします。この2010年目標といいますのは、生物多様性の損失速度を顕著に減少させるという目標でございます。2002年のCOP6で決定された2010年を目標年とした目標でございます。これについて記述したほか、今回COP10で新たに次の目標ということで、ポスト2010年目標を決定することになっております。これについての記述、これに対して日本から提案をしたということを説明しているところでございます。
 46ページ目を見ていただきますと、COP10、ポスト2010年目標の日本提案の中で、2050年を目標年とした中長期目標と、2020年を目標年とした短期目標を提案をいたしました。その提案内容について、国家戦略の中でも位置づけるということでございます。中長期目標につきましては、人と自然の共生を国土レベル、地域レベルで広く実現され、我が国の生物多様性の状態を、現状以上に豊かなものとするとともに、人類が享受する生態系サービスの恩恵を、持続的に拡大させるということでございます。現在の状態よりも、生物多様性の状態をよりよいものにする、豊かなものにする、そして自然との共生を実現させるということが、2050年までの目標として、提示をしてございます。
 また、短期目標につきましては、生物多様性の損失を止めるために、2020年までに1、2、3と掲げました生物多様性の状況の把握分析、そして多様性を減少させない方策を進める、持続可能な利用を進める、さらには生物多様性、生態系のサービスの恩恵への理解を社会に浸透させ、多様な主体の取組を促進させるといったような目標でございます。これが大きな修正点でございます。
 47ページ目の下からは、生物多様性総合評価の取組の方向性を記述いたしました。また50ページ目からは100年先を見据えた国土のグランドデザイン、ここの記述でございますけれども、基本的には三次戦略を踏襲しておりますけれども、一部修正を加えております。
 62ページ目、ここから第4章、基本方針になります。この中では五つの基本的な視点を書いてございまして、その内容は基本的には現行の三次戦略を踏襲したものでございます。
 66ページ目からは四つの基本戦略についての記述でございます。先ほどの資料2でご説明したように、主要な新規事項はこの部分についての内容を拡充したということでございます。このうち主な新規事項についてご説明をさせていただきたいと思います。まず1番目の生物多様性を社会に浸透させるということでございます。
 67ページ目に地球規模の応援団の設置、そしてコミュニケーションワードの普及というようなことが書いてございます。また、生物多様性地域戦略の普及を進めるということが書いてございます。
 68ページ目、民間参画ガイドラインの普及、そしてビジネスと生物多様性イニシアティブ、これは前回のドイツで開かれたCOP9の際に、ビジネス界の生物多様性保全の取組を促進する、そういうイニシアティブでございますけれども、このような日本版のB&Bというものの検討を、経済界を中心に行っていただいているというところでございます。また、認証マーク、認証制度、その他消費者への情報提供の必要性について記述してございますし、地域が主体となった取組を支援をしていくということも書いてございます。
 69ページ目には人材育成、そしてエコツーリズムを推進させるという記述がございます。
 2番目の、地域における人と自然の関係を再構築するというところでございます。70ページ目で、里山の管理につきまして、小委員会で出されたご意見も踏まえまして、人口減少社会を踏まえて、すべての里山をかつてのように維持管理するのではなく、自然林への移行を進めることも検討が必要であるという点を明示しております。
 また71ページ目では、第三次戦略で掲げていた重要な里地里山の選定という視点を改めまして、全国の特徴的な取組事例を情報発信して、助言や技術的なノウハウの提供を行う旨を記載しております。また、里山等において企業、NGO、土地所有者などが協働して地域の自然を保全管理するよう、そのあり方を検討していくということとしております。
 72ページ目は鳥獣被害特別措置法の施行を受けまして、科学的知見に基づく鳥獣の適正な保護管理を推進していくことを明記しております。
 73ページ目をお開きいただきますと、絶滅のおそれのある種について、その状況把握、あと減少要因の分析を行って、種の保存法の施行条例を評価し、効果的な対策を講じることを追記しております。またホットスポットにつきましては、現行の種の保存法による規制や保護増殖だけでなく、地域全体として保全を進めていく制度や手法の検討を行うということを記述してございます。
 74ページ目では、新たな項目を新設をいたしました。自然共生社会、循環社会、低炭素社会の統合的な取組の推進という項でございます。自然共生社会の推進を循環型社会づくり、低炭素社会づくりと一体として進めていく考え方を示したものでございます。
 3の森・里・川・海のつながりを確保する、生態系ネットワークの重要性と取組の方向性について説明したところでございます。
 76ページ目では自然公園法の改正や自然再生基本方針の改正を受けて、これらの仕組みも活用した生態系ネットワークの確保について記載しております。
 また、77ページ目では、森林、都市においても施策の方向性を一部具体化するという記述を書いてございます。
 78ページ目では沿岸・海洋につきましての記述でございます。海洋基本計画の閣議決定を踏まえまして、生物多様性の観点から重要な海域の抽出、海洋生物多様性保全戦略の策定といったような記述、また海域公園地区制度の地区の指定など、海洋保護区の制定の推進ということを記述をしてございます。
 4番目、80ページ目になります。地球規模の視野を持って行動する。四つの基本戦略の中でも特にCOP10を踏まえて重点的な見直しを行った箇所でございます。80ページから81ページにかけましては、三次戦略策定後、COP10の名古屋開催が正式に決定したこと、そしてCOP10の開催国、議長国として、ポスト2010年目標、ABS、これは遺伝資源の利用から生ずるアクセスと利益配分という問題でございます。これに関するものと、そしてカルタヘナ議定書、遺伝子改変生物の国境を越えた移動に関する議定書でございます。これに関する責任と救済の問題、こういった重要な課題に、日本としてリーダーシップを発揮しながら取り組んでいくということを記述したものでございます。
 また、COP10を契機に円卓会議の開催、これはNGO、学者、研究者、経済団体、自治体、関係省庁、さまざまな主体が情報交換を目的として集まって意見交換を行う場でございましたけれども、こういう円卓会議の開催や国際自治体会議の開催、企業の取組のための枠組み構築といったものを支援をしていく。また多様な主体の積極的参加を促進していくということも書いてございます。また、COP10が終了した後も日本はその後COP11までの2年間、ビューロー会合といいまして、各地域代表2カ国、10カ国からなる締約国会議の間の意思決定機関の議長を引き続き務めるということで、国際的な取組を主導していく必要があるということでございます。
 また、82ページ目にはSATOYAMAイニシアティブについて書いてございます。これは生物多様性を保全を進めていく上で、特に途上国を中心として持続可能な利用をいかに適切に、まさに持続可能な形で行っていくかということが非常に重要であると、そういった観点から世界の自然資源、人の手が加わった二次的な自然、農業活動等の行われている、そういった地域をいかに持続可能な形で利用していくか、その取組を世界的に広めていく、そういうイニシアティブでございます。これについての記述をしております。
 また、83ページ目では温暖化など、生物多様性の変化を把握するセンサーとして我が国が関係者の協力・連携による情報の相互利用の仕組み等を考えていく、そういう記述をしております。
 また、84ページ目では、温暖化の適応策についても積極的な検討を行うということを書いてございます。また、COP10で決定されますポスト2010年目標、これを途上国が達成してくために国際協力を積極的に進めていくという記述も加えてございます。85ページ目、新規項目といたしまして、科学と政策の接点の強化、科学的基盤の強化という項目を加えました。
 現在IPBESといっております、生物多様性と生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォームの検討を国連環境計画、UNEPを中心に世界各国が集まって議論をしております。地球温暖化でいうところのIPCCに相当する科学的な評価を行って、政策に結びつける提言を行う、そういう科学的・客観的な組織の設立が必要だろうということで議論しておりまして、日本としても積極的にその検討に関わっているということでございます。また、経済的な評価を進める研究も行っているということでございます。また、生物多様性の情報のネットワーク化、途上国の分類についての能力向上などを進めていくという点も書いてございます。
 続きまして、87ページ目以降、第2部でございます。第2部は、具体的な施策を体系的、網羅的に記述した箇所でございます。実施主体を明記して、可能な範囲で数値目標を盛り込むことで、国家戦略の実施への道筋を示すという位置づけでございます。具体的な施策が、第三次戦略ではおよそ660でございましたけれども、今回施策を充実させることによって約720に増えております。それぞれの施策の実施に当たって、項目ごとに基本的な考え方、施策の概要、現状と課題、具体的施策という順に整理をして記述をしております。
 第2部の全体の章立て、ちょっと複雑になりますが、目次をあけていただきますと、第2部で、第1章として国土空間的施策、広域連携が必要なもの、地域空間の施策ということで、生態系ネットワーク、重要地域の保全、自然再生、農林水産業、そして森林、田園地域・里地里山、都市、河川・湿原など、沿岸・海洋を書き足してございます。第2章として横断的・基盤的施策ということで、野生生物の保護と管理、遺伝資源などの持続可能な利用、普及と実践、国際的取組、情報整備・技術開発、地球温暖化に対する取組、第7節、新規に追加いたしました循環型社会、低炭素社会の形成に向けた取組、第8節といたしまして環境影響評価などという記述構成になっているということでございます。
 今回、数値目標につきましては、第三次戦略では34でございましたけれども、増減ございまして、一つ増えた35の目標を示しているということでございます。第2部では、先ほど第1部で四つの基本戦略を受けた具体的な施策、新規のものを中心に説明をいたしました。ほとんどそれを受けた具体的な取組ということでございます。
 先ほど触れなかった幾つかの点を簡単に触れさせていただきます。121ページ目、生物多様性を重視した農林水産業への理解促進ということで、農業者に取組への理解と意欲を呼び起こすという点、さらには国民の理解を促進する取組を行うという記述がございます。
 また、143ページ目をご覧いただきますと、生物多様性の野生生物の生息地として好適な水田の環境を創出・維持する農法や管理手法などについて普及・定着を図っていくという記述がございます。
 また147ページ目をご覧いただきますと、里地里山保全再生の関係でございます。モデル事業の実施を受けまして、里地里山保全活用行動計画を策定をして、全国で里地里山の保全再生活動の展開をつなげるという記述をしてございます。
 また、216ページ目を見ていただきますと、住民と鳥獣のすみ分け、共生を可能とする地域づくりに取り組むため、奥地の国有林において生息状況等の調査、生息環境の整備、鳥獣の個体数管理など、モデル地区を選定して取組を進めていくという記述がございます。
 また244ページ目をご覧いただきますと、生物多様性に配慮した賢い消費者を育成するために、さまざまな情報提供を今後行っていくという記述がございます。
 また245ページ目をご覧いただきますと、生物多様性の地域戦略策定を促進させるということで、既に策定いたしました手引の周知に努めるとともに、次回締約国会議COP11、2012年までに、すべての都道府県が地域戦略の策定に着手していることを目標とするという数値目標も掲げてございます。
 248ページ目では、省エネルギー、低炭素、生物多様性など、環境に配慮した有用な不動産が関係者に認識評価されることが必要だということで、取組を記載してございます。また291ページ目には、国土の生物多様性の損失を防止するための目標の達成状況を評価する上で重要となる指標の設定、取組という記述を書いてございます。309ページ目には、温暖化、影響評価に関する知見を整理をいたしまして、分野横断的な留意事項、各自治体の役割なども取りまとめた適応指針の策定をして、温暖化に対する適応策の推進を支援するという記述を追加させていただきました。
 以上で、生物多様性国家戦略2010(案)に関する概要のご説明とさせていただきます。
 続きまして、お手元の資料、意見募集の結果に関する冊子をご覧いただけますでしょうか。表紙を開いていただきますと、結果の概要がございます。生物多様性国家戦略2010の(案)に関しまして、昨年12月10日から30日間、パブリックコメントを行いました。このパブリックコメントの期間中、12月21日から全国7カ所で説明会を行いました。合計399人の方がご参加いただきました。札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・岡山・熊本で行いました。意見の提出数は52で、24人の個人の方、そして28の団体からいただきました。延べの意見数で399件になります。具体的な意見の分野は、この表を見ていただくとわかりますように、広範囲にわたっております。いただいた意見はできるだけ反映する方向で検討を行いまして、147件の意見については本文に反映をいたしました。
 あけていただきますと、具体的な表になります。この表の順番ですけれども、本文への意見の該当箇所の順番に整理番号をつけております。表の中のページ数、そして行がございますけれども、これは実は今回お配りした冊子のページ・行とは異なっております。パブリックコメントをするためのパブリックコメント用の冊子のページ番号、行番号でして、その後修正をしたものが今回お配りした(案)でございます。したがいましてページ数、行数はあわないということでございます。対応欄で網掛けをしたもの、例えば3ページご覧いただきますと、網掛けをしたところがございます。これはいただいた意見の趣旨を踏まえて本文を加筆修正したものでございます。対応欄の欄に下線を引いたところが具体的な加筆修正をした箇所でございます。
 また、意見の中には全く同じ内容という意見がございます。複数ある場合には、例えば7ページ目をあけていただきますと、16番目の意見の最後に(他1件)と書いてございます。このように類似の意見があるものについてはまとめて書かせていただいております。その結果、399件の意見をいただいているわけでございますが、最終ページ、130ページ目をご覧いただきますと、最後の番号が364になるということで、これは重複したものを除いた実数ということでございます。
 パブリックコメントを受けて、本文に大きな加筆修正を行った箇所について、簡単に国家戦略本文の冊子をもとにご説明をさせていただきたいと思います。まず海外への資源依存に伴う海外の生物多様性への影響や、それに対する我が国の責任、関わり方について記述すべきだという意見がございまして、この点につきましては1ページ目の32行目から、さらには2ページ目の4行目から、それから飛びますけれども、63ページ目の25行目から修正・追記を行っております。
 また、生態系サービスの文化的側面について記述を強化すべきだという意見がございました。これにつきましては16ページ目の8行目から、そして17ページ目の38行目から修正・追記を行ったということでございます。
 また、温暖化以外の気候変動に伴う影響についても記述が必要というご意見に対しましては、22ページ目の24行目から追記をいたしました。
 大量生産、大量消費、大気廃棄型社会に伴う影響につきましての記述の追記も行いました。28ページ目の15行目から追記をしたということになります。
 また、ポスト2010年目標が設定されたと、それに対応して我が国の生物多様性総合評価の見直しが必要なのではないかというご意見をいただきました。これに関しましては48ページ目の30行目から追記をいたしました。
 人口減少を見据えて、都市と農村の関係について複数の予測シナリオに基づく分析を行うことが重要ではないかというご指摘に対しましては、同じく48ページ目の32行目からに追加をさせていただいたということです。
 続きまして、国土のグランドデザインのところで、流域など空間的なまとまり、つながりで生物多様性国家戦略と地域戦略が階層的・有機的に連携するという視点が必要ではないかというご指摘に対しましては、51ページ目の冒頭、28行目になります。ここにご指摘の点を追記をいたしました。
 第2部に関しましては、91ページ目よろしいでしょうか。さまざまな空間レベルにおける生態系ネットワークに関する計画構想をどのようなタイムスケジュールで具体化し、これに基づく取組を実施していくべきか検討を進めるという点を記述をしております。
 また地域の自主的な管理に関しましては111ページ目になります。NGOや漁業協同組合など、地域の関係者によって合意形成に基づく管理領域が設定され、保護管理が行われている事例、これらについて情報収集を行って連携・協働のあり方などについて検討をするという記述を、ここに追記をしております。
 それから、緑の計画の関係でございます。151ページ目をご覧いただきますと、さまざまな空間レベルに配慮しつつ、生物多様性に適切に対応した緑の基本計画の策定が行われるよう、計画指針を策定するという記述を追記しております。
 続きまして、307ページ目をご覧ください。風力発電の関係でございます。野生生物の保護に配慮して風力発電と野生生物の保護、この両立を目指していくという記述を追記をしております。
 以上で、パブリックコメントを受けた具体的な修正についてのご説明とさせていただきます。
 私からの説明は以上でございます。

【熊谷部会長】 どうもありがとうございました。それではただいまのご説明をいただきました国家戦略2010の(案)につきましては、小委員会でまとめたものから大きな構成は変わっておりませんが、それを基本にパブコメの意見を取り入れまして、よりよいものになったのではないかとは思っております。
 それでは、これより委員の方々からご意見等をいただきたいと思います。本日は合同部会として答申案を最終的に詰めていただきたいと思いますので、修正の場合はできるだけ具体的にご指摘をいただきたいと思っております。また、議論は幾つかに区切って進めさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。
 まず初めに前文、第1部の戦略につきましてご議論をいただきまして、次に第2部の行動計画についてご議論をいただき、最後にもう一度全体を振り返ってご議論いただけたら大変ありがたいと思っております。パブリックコメントの内容やその対応についても、それぞれ該当する部分の議論の中でご発言をいただけたらと思います。一応時間の目安でございますが、第1部に関して40分程度、それから第2部について30分程度、そして最後に全体について20分程度というふうには一応考えておりますが、全体で90分、その中でご意見を賜りたいと思います。それでご発言ですが、お一方ずつ対応させていただくと大変時間がかかることもございますし、またご発言に共通な部分もあると思いますので、できましたらご意見をいただいて、それをまとめて事務局の方からご発言に対するご回答を申し上げるというような形で進めさせていただきます。会場が広いので、ご発言をいただく場合には、例によってネームプレートをお立ていただくという形で進めさせていただきます。
 それではまず初めに、前文及び第1部についてご意見をいただきたいと思います。どうぞご意見をお願いしたいと思います。それでは、竹村委員からまずご発言をいただきたいと思います。よろしくお願いをいたします。

【竹村委員】 竹村でございます。ご指名ありがとうございます。
 第1は79ページなんですが、海洋につきまして書いてございます。6行から15行まで。文章としては完璧なんですが、内容としてはほとんど不可能なことを書いてあるんで、何を言っているのか。こんな役人の文章で見るとこれはほとんど何もやらない。調査だけやっているということになっているのかなと思っています。まず特性を明らかにして、地域区分をして、重要な海域を抽出して、そしてその強化が必要な、どの程度存在するかを明らかにする。それで、そういうことをやっているうちにあっという間に5年、10年経ってしまいますので、僕は本当にこういうことをやって、この手続としては立派なんですが、文書としては立派なんですが、本当にこれで行けるのかなという心配があります。
 それで、最後の2行なんですが、「海洋保護区については、海洋基本法に基づいて関係省庁が連携して設定のあり方を明確化したうえで設定を推進します。」明確化しなければ推進しないのかということを逆に読めますので、これ文句を言うのではなくて具体的なことを言いますと、海洋保護区につきまして、またはその海域の保全につきましては、海岸法というのがあります。それには保全区域というものがあります、海洋法の第3条で。これは国土保全なんですが、第3条で、50メートルを海岸保全区域とすると書いてあるんですが、場合によっては延長できると書いてあるんです。それの事例が愛知県の渥美半島表浜です。幅40キロにわたって、約3キロの保全区域を設定したんです。昭和42年に。これでこの表浜の海域は、砂浜が守られて、砂利採取から救われたということがあります。
 結局、なぜ海洋保全区域に基づいて関係省庁が連携して明確化したうえで、と書いてあるかというと、これは水産行政と環境行政と国土保全行政の調整がつかないから、こういう書き方になっていると思うんですが、共通の認識としては、当面、大規模な砂利採取を禁止することが、当面やめさせることが大事なんだということを明確化すれば、この海岸法の保全区域の設定とか、海洋保護区域というのは全く一致するわけでございますので、この中の水産行政をどうしようかというのはちょっと横に置いておいて、当面、大規模な砂利採取は禁止しようというような明確なゴールを立てれば、もうすぐにでもこれはできるはずです。
 実際これはできています。第2部にちょっと行ってしまいまして、議長には申し訳ないんですが、各地方自治体の111ページの「地域の自主的な管理区域」というのがありますが、瀬戸内海の広島県が条例をつくりました。砂利採取禁止法、これは中国新聞が広域暴力団との対抗で、徹底的にキャンペーンを張って、広島県議会がそれはだめだということで、砂利採取禁止条例をつくったわけです、広島県が最初にです。それに基づいて次に岡山県、そして次々と瀬戸内海区域で、砂利採取禁止条例はもうできているんです。ところが日本国内でできていない県があって、そこに今砂利船が集中しています。
 つまり、もう明確なんです。地域の方々が何を守ろうかということを思っていれば、もう既に地域はやっているんです。それをこの中央の行政はエンカレッジしなければ、もうやるときはないはずです。なぜこの中央の行政がそういう地域の方々、非常に厳しい綱渡りをしながらやっている行政をエンカレッジしないんだということは、非常に私は疑問に思っています。
 この文書の中の書き方は、もっともっと強くその国土保全、そしてそれはハビタットの保全なんだということを、地方の方々の苦しさというか、乗り切ったところをフォローしてやるということが大事なのかなという感じがしております。どうもここの全体の文章は、環境行政が中心になった言い方になっていますので、国土保全だとかほかの行政で既にもうやっていることをもっともっと取り入れた、既に進んでいるということ、これからやるんじゃなくて、日本ではもう進んでいるんだと。日本はもう実質的な海洋保護区はできているんだということをぜひ言わなければ、世界各国に向かってのメッセージにならないと、私はそう思っています。

【熊谷部会長】 ありがとうございました。それでは土屋委員、そして森本委員、それから森戸委員、山岸委員、そして速水委員の順で、とりあえずご意見を伺いたいと思います。その後またお願いします。
 それでは土屋委員、お願いいたします。

【土屋委員】 お届けいただいております2010の(案)は、第三次の戦略をもとにしておりまして、それが見え消しで改良したという形になっておりますので、大きな構造的な変化ができないという条件があったかもしれませんが、第三次のときに最も問題になったことの一つは、生物多様性という言葉がほとんど定着していないということでした。これを拝見しますと、定着の度合いはやや改善されたように書かれておりますけれども、そのパーセンテージは依然としてそんなに高くありません。そうすると、私たちは何をすればいいかということになりますが、生物多様性という言葉をもっと皆さんに知ってもらうような努力をしなければいけないだろうと思います。
 恐らくこの会議に参加しておられる方々も、それからパブリックコメントを出される方々も、生物多様性も相当関心のある方々のはずなので、かなりの程度この言葉をご存じのはずなんですね。問題は、そうでない人たちにももっと知ってもらおうということなのですから、生物多様性について、もっと説明する必要があるだろうと思うのです。それにもかかわらず、この構成はいきなり生物多様性という言葉をどんどん使いながら解説が進んでいきます。それで、やっと11ページになって、生物多様性とは何かという説明をするのですね。生物多様性をもっと説明するのであれば、一番最初にそれは説明した方がよいのではないかというのが私の意見です。構造を変えることがどれくらい可能かどうかはわかりませんが、一つのコメントとしてお聞きいただければと思います。
 それから、委員長から具体的な提案をというお話でしたけれども、これを拝読いたしまして、いろいろ気になるところがありましたので、それは特に第1部については昨日お届けいただいたものに書き込んでありますので、それを後で見ていただいて、検討をいただきたいと思いますが、舌足らずの文章が多いのではないかという気がするのです。それは今申し上げました生物多様性はこうこうで重要であると、いろいろな文章で言っておきながら、その内容がうまく伝わってこないところが多々ある。例えばどんなところかというところを書き込んでありますので、ご検討いただければと思います。
 それからもう1点は、文章の中で、何々をする、こんなことを支援するという言葉が頻繁に出てきますが、環境省あるいは国土交通省等々の省庁の名前がないところは、これは日本がこういう行動をするというふうに理解していいのかというふうなことをお聞きしたいと思います。なぜかといいますと、例えば明らかに文部科学省がすべき事業がこの第1部の方にも出てまいりますけれども、それは学校の教育カリキュラムを変更しなければいけないような内容になっているところがあるんですが、これはそう簡単ではないのではないかという気がするものですから、お尋ねをいたします。
 それからあと二つあるんですが、非常に多くの略語が使われております。アルファベッドで使われておりますけれども、解説があるところとないところがあります。ここはすべて略語をスペルアウトして、詳しくお書きいただくと読者は非常にわかりやすいと思いますので、ご検討ください。
 それから最後ですが、2部とも関係しますけれども、生態系ネットワークという言葉が使われます。私沿岸の勉強をしておりまして、最近よく使われる言葉はネットワークではなくてコネクティヴィティなのです。これはいい訳がまだできておりませんので、難しいところですが、ここで使われておりますネットワークは、生態学の分野で最近よく使われているコネクティヴィティと同じものなのかどうかをお尋ねしたいと思います。内容を読んで同じように感じられるところもありますし、違う意味のようにとることもできるところもありますので、確認したいと思います。
 以上です。

【熊谷部会長】 ありがとうございました。それでは森本委員、お願いいたします。

【森本委員】 数点あるのですが、最初に67、68あたりの地方公共団体、企業や市民参画のところなんですが、「「ビジネスと生物多様性イニシアティブ」のような枠組みを検討します」ということで、これで包括的に書かれているのかなと思うのですが、近年、大変この領域がいろいろ波紋を呼んでいるというか何というか、すごくいろんな試みが始まっているところで、例えば社会的責任投資のようなところを、もっと推進するだとかいう記述があってもいいのかなと思いました。
 それから、同じように、いわゆる生物に対するオフセットの考え方がいろいろ今検討されています。先日も生態学会長が主催するそういうフォーラムのようなものもあって、海外の事例とかのいろいろな報告もあったんですが、そういう新たな枠組みを検討するというふうなところがあればいいのかな。キーワードとして、生物多様性オフセットというのが入ってもいいのではないかなと思いました。
 それから、77ページあたりの都市緑地の記載なんですが、都市が立地しているところでは、大体皆似通っていることもあって、都市があることによってというか、都市があまりやり過ぎたことによってなくなったハビタットというのがあるわけで、都市がもともと立地していた自然環境なりハビタットなりを尊重してというような言葉がどこかにあった方がいいのかなと。「もともとの自然に配慮して」というような言葉があった方がいいのかなと思います。それとともに、国際条約では遺伝子資源の公平・公正な配分ということで、途上国と先進国の関係があるんですが、国内においてもやっぱり都市と都市以外の場所、都市のフットプリントなんかに配慮した取組というのが本当は要るわけで、それはここには多分書かれないんだろうけど、そういう意識を都市緑化とか都市緑地を考えるときにも、都市の持っているフットプリントに反映してみたいな話がどこかにあってもいいのかなと思いますが、ここが適切かどうかはわかりません。
 それから80ページあたりから、地球規模の視野を持って行動するというところに当てはまるかなと思うんですが、いろいろ生物多様性に配慮した行動を主流化するための枠組みの検討というのがあるように思いまして、例えばグリーン・ディベロップメント・メカニズムというのがいろいろ検討されているように聞いております。そういうものが、今考えているのはそれはいいのかどうかというのはわからないんですが、炭酸ガスのCDMの生物多様性版みたいなやつの検討があるとしたら、日本はちゃんと最初からそれの議論に関わらないと、ルールができてからだと日本にあまり都合のよくないものができる可能性も心配していまして、例えばSATOYAMAイニシアティブからの一環かもしれないんですが、里山のような概念が本当にわかっているようでわからないというか、特に海外の方に理解してもらうのが大変困難だという点は、外国の方と話すたびに実感する次第です。
 そんなこともありまして、地球的視野というときに、これからの世界的なそういう枠組みを、GDMみたいなやつを中心になってイニシアティブをとってやっていくみたいなところが、どこかに書ければいいのかなと思いました。以上です。

【熊谷部会長】 ありがとうございました。それでは森戸委員、お願いいたします。

【森戸委員】 ありがとうございます。ではとりあえず2点お聞きしたいと思うんですが、多分意見の部分がありますけども、一つはこの国家戦略2010の位置づけというのが、本文を見ているといまいちわかりにくいところがあるんで、本文を直せというよりもここでちょっと確認したいんですけども、前の閣議決定された三次戦略に対して、今度COP10がある、あるいは基本法が制定されたという状況を踏まえて、これの三次の改訂版というような位置づけなのか、それで、前文の9ページを見ると、次期国家戦略とありますが、この次期国家戦略というのは番号で言えば第四次になるのか、そうするとこの2010というのは三次と四次の間の中間点みたいなものなのか、イメージが一つよくわからなかったので、ここをお聞きしたいということが一つです。
 それからもう一つは、先ほどのお話の関係で、PRというのか、こういうものを普及させていく話なんですが、私はこの分厚い冊子を見る人は、どんなに文言を整理しても、最終的には限られた数だと。これからPRしていこうという対象から見れば、とても少ない数ではないかというふうには思っています。ですから、この本編といいますか、この閣議決定用のための資料を厳密にすると同時に、むしろこれからCOPとかいろんな会合が開かれるたびに、さまざまな資料をつくられると思うので、この概要版というのか、PR版というのか、これをもう少し充実させてほしいと思っています。
 もう少し言いますと、言いたいことといいますか、環境省がこういうふうに言いたいということと、外国人がここを日本の方から知りたいとか、あるいはある場面で地域でいろんなこういう活動をしているというのはここが知りたいという話と、やっぱりずれがあると思うんです。そういう意味では、相手といいますか、ニーズのある受け手というか、そういう人たちと相談して概要版はみんなでつくってほしいというふうに思っている。だから機械的にこういう文章がある。それを英訳したんだとか、あるいはそれを簡略にしたんだという話だけじゃなくて、むしろ聞き手といいますか、読み手の方の意向を十分に取り入れた形の作業をしてほしいというふうに思っています。それは実は、第三次のカラフルな概要版がありますね、写真入りの。それを見たときとても感じたんですが、やっぱりこれはどちらかというと出したい方といいますか、出したい方の意向が強いんで、知りたい方のときはここが知りたいことが書いていないというのが実はあるんですよね。これは人によって違うと思うんですが、今回これを機会に社会に普及させるという戦略の具体化の一つは、そういう基本的なPRの仕方を少し転換したらどうか。特に国際会議なんかあるときにはちょうどいいそれもきっかけになるんではないかというふうに思いました。
 したがって、本文で生物多様性と一番最初に書くと、これもなかなか、かえって読んだ方もきついのかもしれないということで、あまり私はそういうところは構成にこだわらなくてもいいんじゃないかと。むしろ本当にこれから使われる場面で一番いい編集なり対応をするということの方が重要なのかなというふうに思います。
 とりあえずその2点です。

【熊谷部会長】 ありがとうございました。それでは山岸委員、お願いいたします。

【山岸委員】 ありがとうございます。冒頭、土屋委員が生物多様性はわかりにくいということ、話をしたんですが、私もわかりにくいと思うんですが、11ページに生物多様性とは何かというところで、生態系の多様性と、種の多様性と、それから遺伝子の多様性というのを書かれています。
 実は種の多様性というのは非常にはかりやすいんですね。ある種が何匹になった、それが絶滅してしまった。それがすぐにレッドリストに反映されるというように、はかる手法がもう決まっています。それから遺伝的多様性というのも、実ははかる方法があるんですね。わからないのは生態系の多様性というのでして、一体生態系の多様性ってどういうことなのか、僕自身よくわからないし、それをどうはかったらいいかというのがわからない。はかったらいいか、どうはかるかがわからないようなものはどう書いたって相手に伝わるはずがないんじゃないかと思うんですが、これは僕がこのごろ勉強していなくてわからないのか、この生物多様性総合評価検討委員会のばりばりの生態学者ですね、ここにも出ていらっしゃいますが、私はもうへろへろな生態学者でわからないんですが、検討委員会でそういう問題が出たのかどうか、できれば座長の中静さんに聞きたいと思うんです。
 ここまでは質問なんですが、もしも僕が勉強不足じゃなくて、本当にそうだとしたら、これは環境省だけがつくる国家戦略じゃないんですから、国として生態学者にそういうものを調べてもらうというような、逆の方向のものがこの戦略にあってしかるべきじゃないかと思うんですが、私の勉強不足だと言われてしまえばごめんなさいで僕、謝って終わりです。だけど僕の言っていることが多少当たっているんだったら、そういう意見を述べたいと思いますが、検討委員のばりばりの先生たち、どうなんですかね、これ。

【熊谷部会長】 ありがとうございました。後ほどゆっくりと検討委員の先生にもご意見を賜りたいと思いますが、とりあえずそれでは速水委員、そして大久保委員に引き続いてお願いをしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【速水委員】 ありがとうございます。ちょっと森林のところで70ページで、パブコメに対応したところをご意見申し上げたいんですが、ここ70ページの35行から37行に関して入っている「二次林や人工林としての適切な管理を推進する場合と、自然の遷移を基本として、自然の機能を維持発揮できる森林への移行を促進させる場合と」、というふうに入っているんですが、これよく読むとどちらにしても自然の遷移を利用する場合も、これ管理であることは間違いないんですね。どちらも適切な管理なんです。もしも管理をしないで誘導するんだというならば、それはそれでかなりはっきり書かなきゃいけない。よくいろんなところで森林の話をすると、自然林に任せる、何にもしなければ自然林になるんだというふうな捉え方をして、もしここがそうなんだというならばそれはそれで私は、私は間違いだと思うんだけど、ここが総意だというならばそれはそれで結構なんですが、もし管理をするということを前提とするならば、例えば人工林、上の行の適切な管理というところを、より積極的な管理というふうに書きかえて、その下の自然の遷移を基本としてというところを、「自然の遷移を誘導する管理」というふうに書きかえる、つまりどちらにしても何らかの管理をしておかないとまずいんだよというふうなことが多分ここには書かれていると思うんですね。それが少し読み取れないので、もし可能であれば今からでもそれは少し変えていただいた方が、一般の方が読んだときに誘導するためにも少々の管理は要るんだなということでわかりやすいと思います。
 もう1点、77ページの3行目から5行目なんですが、これもパブコメに対応したところで特に5行目のところで、「間伐の実施や、広葉樹林化、長伐期化」というふうに入っていて、それで多様な森をつくる、森林をつくるというふうに書いてあるんですが、その前のページから始まっている森林の保全整備の中で、多様性を前のページの33行のところにあるんですが、「伐採、更新を通じて変化に富んだ多様な林齢な森林を造成する」。つまり多様性を林齢で捉えていたり、単純に生物多様性で捉えていたり、ちょっとはっきりわからないというか、理解しにくいというところがあって、特にパブコメに対応した77ページの5行目のところの「間伐の実施や広葉樹林化、長伐期化」のところに、「間伐の実施」の前に、「人工林において植栽された樹種のみでなく、多様な植生種を確保する間伐等の施業」や、その後に、できれば「長伐期化・広葉樹林化」という順番に、文章を加えるのとともに、後ろの順番を少し変えてしまうと、ここは人工林の話なんだなというふうな形でわかりやすいし、多様性というものを、まずは植物種で捉えていくという方が、入り口としては非常にわかりやすいんじゃないかなと。全体は「生物多様性」というのは3行目に入っていますので、問題ないと思うんで、管理としてできるのは多分森林管理を行うことによって、直接的に動物を増やすとか、直接的に土壌生物、微生物を増やすということができなくて、あくまでも我々ができるのは、光の管理によって植物の種類をコントロールして、結果としてそこから発生する多様性をうまく拡大していくというふうなところなので、今申し上げたような変え方でやっていただければありがたいというふうに思っています。
 以上です。

【熊谷部会長】 ありがとうございました。それではお待たせいたしました。大久保委員、お願いいたします。

【大久保委員】 第1部の一番最後になるんですが、85ページで、科学的基盤の強化というのをきちっと取り上げてきたというのは、非常にいいというふうに思います。ただ、これ読んだ感じが、やっぱり僕はもっと本腰で、議長国として本当にベースになるデータを権威のある国際的機関できちっとつくっていくんだという、そこに日本がイニシアティブをとってやっていくんだという意思を、もうちょっと出してほしいというふうに思います。
 今、地球温暖化の方がある意味では異常に関心を集めているのは、やっぱり私はIPCCの存在だと思いますね。あれで我々が物事を考える場合に、ベンチマークがはっきりある。ところが生物多様性の場合には、先ほどの森本先生のお話と非常に近いんですけども、非常に多様であるがゆえにベンチマークをつくりにくいというのはよくわかるんです。よくわかるんですが、その中でこういう形での科学的基盤、IPBES、それから一方でドイツで中心にやられているTEEBの問題、ここのところにもっと積極的に関わってそれの存在意義みたいなものを明確に打ち出すということをぜひお願いしたい。
 それで、ちょっとこれ飛ぶかもしれませんが、第2部の方の247ページなんですが、第2部で経済的な問題が出てきております。それで、私としては生物多様性の問題を経済的に解決するというのは、僕は間違いだと思っているんですが、そういうスタンスと学問的なといいますか、学術的なデータをきちっと押さえていくという問題というのは、やっぱり両輪できちっと押さえておかないといかんことは押さえておかんといかん。ただその中でオフセットであるとか何とかいう格好で、それで問題、事終われりとするのは間違いだというふうに思うんですけども、そういう形でここをもう少し、今言ったように自主的にしていただければなという感じです。

【熊谷部会長】 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。あまりたくさんいただいても事務局が大変だと思いますので、この辺で一応今のご意見に事務局の方で現段階でお答えできる範囲でお答えをいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは審議官からお願いします。

【大臣官房審議官】 大変重要なご指摘、たくさんいただきましてありがとうございました。まず、いただいた意見、どんなふうにこの答申(案)に反映していくかということなんですけれども、この答申(案)、関係者だけではなくて、関係省庁と協同で今までの小委員会の意見を受けて、各省協同で作業をしてまいりました。今いただいた意見、どんなふうに最終の3月1日の合同部会でお示しする最終答申(案)に反映していけるかどうか、各省とも相談をしながら、その反映の仕方について、次回までに検討を進めていきたいと思います。今日の時点で少しご説明できるところを幾つかお話ししたいと思います。
 まず海の話であります。今回の戦略の改定の中でも、海域の生物多様性の保全の取組を進めることの重要さという点については、小委員会でも議論があって、そういう点できるだけ書いていこうという議論のもとに、海については書いてきたという経過でございます。COP10の中でも沿岸、海洋の生物多様性というのは重要なテーマになるというテーマであります。
 竹村委員からいただきました海洋の保全戦略づくりなり、海洋保護区の検討作業の記述のところで、もっともっと優先課題に応じてどんどん打てるところから優先すべきところから手を打つべきだという感じが出ていないということだったと思います。79ページのところでは区分をして重要なところを特定して保全のあり方を検討して、戦略をつくる。そして海洋保護区についてはそのあり方を明確化して、設定を進めるという記述でありますけれども、その議論の中でも例えば海洋の保護区、先ほど海岸法の保全区域についてご紹介いただきましたけれども、自然公園法の方でも法律を改正して、海域公園地区ということで従来より積極的な指定を進めていけるような仕組みの改正をして、この保全戦略の検討、あるいは海洋保護区の検討と並行して、優先して保全すべきところの保護区設定というのは、環境省の仕組みの中でも取組を進めていきたいと思っています。
 それで、この辺の表現でどう、そういう議論の中で海洋について非常にもうわかっていて、優先すべきところが見えていて、早く手を打つべき部分もあれば、まだまだ情報が足りなくて、その情報を集めてどこが手を打つべき取組なのかということを整理してから動かないといけない部分と、いろいろまざっていると思います。したがって、ここで書いたような検討をしながら、その優先課題については検討を進めながら着手するということで臨んでいきたいと思いますし、そういう表現の中でそういう工夫ができるかどうか、ちょっと考えていきたいと思います。
 それから、土屋先生からいただいたわかりやすくするというところは、コメントもいただいた上で、それを生かして全体的にわかりやすくする作業というのは力を入れたいと思います。
 それから、森本委員からいただいたビジネスと生物多様性、これもCOP10に向けて非常に重要なテーマということになります。その中で、生物多様性のオフセットでありますとか、GDMという、グリーン・ディベロップメント・メカニズムという話もいただきました。この点に関しては、生態系サービスの評価、経済的な面も含めた評価という話とセットで議論が国際的にもされていて、オフセットにしてもGDMにしても賛否両論、いろんな議論がかわされているという現状であります。この国家戦略の中ではそういったことに関しては、幾つかのところで生物多様性の経済的評価の取組テーブル、ドイツが主導してCOP9のときから始まって、COP10のときに報告される予定ですけれども、生物多様性と生態系の経済的な評価をするというプロジェクトであります。それに日本も積極的に参加をし、そういった経済的評価を受けた政策オプションの検討をしていきますという表現を書いています。そういう中で、森本委員からあったオフセットの問題やGDMの問題についても、どう捉えていけばいいのかというのを検討していくのかなというふうに思っているところであります。
 それから森戸委員からいただきました、この2010、生物多様性国家戦略2010の位置づけという点であります。この2010の計画期間が第三次戦略をつくった平成19年の11月から5年後が24年度になりますけれども、その第三次戦略の計画期間を維持するということで、この2010の計画期間を24年度までという形でつくっています。そういう意味で第三次戦略をベースにして、そして日本開催が決まったCOP10に向けて必要な視点、必要な取組を追加していく、あるいは第三次戦略ができてから制定された基本法を受けて、必要な視点を盛り込んでいく、そういった意味での三・五次ということになるかもしれませんけれども、第三次戦略をベースにして改定をして、第三次戦略の計画期間と同じ24年度までの計画という位置づけで、今回の2010の策定をしてまいりました。
 COP10を受けて、COP10で決まったことも受けてさらに本格的な改定をして、それがCOP10が終わって2年ほどかけて検討して、25年以降の国家戦略が次にできるというような位置づけで考えています。
 それからPR版というか概略版、これは今回も非常に重要だと思っています。COP10のときにも日本の国家戦略というのは、世界に伝えていきたいものの一つというふうに考えていまして、これまでも改定を定期的に重ねてきた日本の国家戦略というのは、世界の各締約国からも非常に注目をされています。そういう意味で今回の改定についてCOP10で海外の人にもわかってもらえるようなPR版をつくっていきたいと思いますし、それから、国内での主流化というのをしていく上での、非常に重要なものとなるように、日本の国内向けのPR版というのも、ぜひ力を入れていきたいと思っています。
 生態系の多様性については、中静先生に後からコメントいただければというふうに思います。
 それから速水委員の森の取り扱いのところであります。里山の扱いについては、まさにご指摘のとおりで、里山として維持していく部分、あるいは自然林に移行していく部分、どちらも程度や方法は違いますけれども、何らかの人手の管理というのが必要だと思っていますので、そういうふうに読めるような表現を工夫していければと思います。それから森林の保全整備のところの記述についても、これは林野庁の方で検討会を設けて、その多様な森林づくりというあり方を検討したことや、パブリックコメントを受けてつくってきた文章ということでございますので、いただいた意見も踏まえて林野庁ともご相談できればなと思います。
 それから大久保委員からいただきました科学的基盤の強化についてもっと積極性を出すように書けないのかというご意見いただきました。ここの科学的な基盤の強化については、環境省としても、各省も含めて非常に今回追加すべき重要な部分だと思っています。そういう気持ちで書いたところなんですけれども、生物多様性版のIPCCと言われるIPBESの立ち上げについての日本の関与、あるいは生物多様性の経済評価のプロジェクトへの日本の積極的な関与ということは非常に大事な点だと思っていまして、そこをもう少し強調できないかどうか考えてみたいと思います。
 以上でございます。

【熊谷部会長】 それではよろしければ中静委員、お願いをいたしたいと思います。

【中静委員】 生態系の多様性というのはかなり本当に難しい問題でして、私も生物多様性総合評価の委員会をやらせていただいた中では、そういう問題も、特に里山のようなところが出てくるわけです。
 生物多様性条約で三つのレベルがあると。遺伝子と種と生態系レベルがあるというふうにはよく書いてあるんですけども、生態系レベルとか種のレベルってなぜ必要かということってあまり書いていないところが多くて、多分生態系レベルの多様性が一番必要なのは、いろいろな種の中に、一つの生態系だけでは生きていけない種類がかなり多いということが重要なんだと思うんですね。
 例えば森林だけ守っていても、それは保全できないという点がすごく大きくて、餌は田んぼで取るけれども、巣は森の中だというような生物というのは非常に多いということが、生態系の多様性を保全しなければいけない理由でして、それを考えていくと、どうやってはかったらいいかというのは非常に難しい問題になるわけで、多様だからいい、多様度指数なんていうのは幾つもあるわけですが、そういう指数で多様だからいいという話ではなくて、そういうある広い地域で見たときに健全な生態系が守れるような、そのために必要な生態系が多様であるという言い方がいいのかどうなのかわかりませんけれど、必要な生態系がきちんと備わっているということが大事なんだというのが原則なわけです。そうするとそれをどうやって指標化するかというのは大変難しい問題で、里山指数みたいなものを考えてくださっている方もいらっしゃるんですけれども、それですべてのものがあらわせるかというと、これは非常に難しい問題ですので、今回なかなか指標化が難しかったというのが現状です。引き続きやっぱりそういう問題を少し考えていかなければいけない問題ではないかなというふうに思います。

【熊谷部会長】 ありがとうございました。では課長の方からお願いいたします。

【自然環境計画課長】 1点だけ、土屋委員のご質問で、生態系ネットワークという記述の中に、生態系のコネクティヴィティという意味合いが含まれているかどうかということですが、単に物理的に保護区がつながっているということだけではなくて、生態系の機能を考えたときに、その機能が十分連結されるような、いわゆるコネクティヴィティというような考え方も含めて表現しているというふうにご理解いただきたいと思います。

【熊谷部会長】 ありがとうございました。
 それでは時間の関係もございますので、1部に加えまして2部の行動計画も。

【田中(正)委員】 ちょっとその前によろしいですか。

【熊谷部会長】 どうぞ。今のことに関連してですか。

【田中(正)委員】 はい。

【熊谷部会長】 それでは田中委員、お願いいたします。

【田中(正)委員】 すみません、ありがとうございます。
 この国家戦略2010と、第三次国家戦略との位置づけについてですけども、これは明確にはっきりさせておいた方がいいと思います。というのは、生物多様性基本法ができたのが平成20年6月6日、それから第三次国家戦略ができたのが平成19年11月です。今回のこの国家戦略2010の前文に、生物多様性基本法との関係が書いてございますけども、私はこれは「国家戦略」という用語を使っているが故に非常にわかりづらい。法律の第11条には、生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する基本的な計画(以下生物多様性国家戦略という)こういう形になっているわけです。この部分を、この前書きの中にきちっと表現していただければ、位置づけがはっきりするのではないか。環境基本法とか、それに基づく環境基本計画、それから海洋法とそれに基づく海洋基本計画、そういう形で出されますと、これの位置づけというのはああそういうものかというふうに理解できるんですね。ただ「国家戦略」という名前で出てきますので、これが生物多様性基本法とどういうつながりがあるのかというのがはっきりしない。ところがこの法律第11条を読みますと、先ほど言いましたように、基本的な計画だと。といいますと、これは他の法律に基づいてつくられています基本計画というふうに読みかえればいいというふうにして理解することができる。そこのところをやはり生物多様性基本法ができた以降の国家戦略の位置づけというところで、第三次とははっきり位置づけとしては分けておくべきだというふうに考えます。
 以上です。

【熊谷部会長】 ありがとうございました。では審議官、よろしくお願いいたします。

【大臣官房審議官】 ありがとうございます。ご指摘のとおりだと思います。今回の改定の戦略からは、まさにこの生物多様性基本法11条に基づいた基本的な計画という位置づけが置かれてつくる初めての戦略ということになりますので、ご指摘の点をこの戦略の中にも書き込んでいけるようにしたいと思います。
 また、同じ基本法の中で各自治体がつくる生物多様性の地域戦略、これが今度はこの法定の生物多様性国家戦略の基本として各自治体が生物多様性地域戦略をつくるように努めなければならないという規定も基本法にあって、そういうことにも今回はそういう位置づけも行っていくと、置かれたものになるということだと思います。ご指摘を受けて対応したいと思います。

【熊谷部会長】 よろしゅうございますでしょうか。それでは2部の行動計画まで含めてご意見を賜りたいと思いますので、またご発言をお望みの委員の方は、ネームプレートをお立ていただきたいと思います。
 それでは三浦委員、そして中静委員、それから中川委員、そして岩熊委員、市田委員、岡島委員、それからちょっと遠くて、石井信夫委員、それから石井実委員の順で、ちょっと私も順番は覚えておけるかわかりませんけれども、順にご発言をいただきたいと思います。よろしくお願いをいたします。
 それでは三浦委員、お願いいたします。

【三浦委員】 今度のやつは、基本法を受けてということと、それから特にCOP10に向けてというところが特徴なわけですね。第1部の方なんですけれども、基本的な問題として、生物多様性そのものの保全ということと、それからその要素の利用というところで言えば、特にこれ海外というか、グローバルに見ていくと日本の問題というのをもう少しこの第1部では出すべきではないかということを指摘したいというふうに思います。
 それで、どう考えてもこの日本が世界の中で行っている生物多様性の要素の利用については、非常に大きな、いびつな構造をつくり出していると。それでこれは熱帯雨林についても水産資源についても、農業についても当てはまっているわけです。そういうことを第1部の中でやっぱり今度の場合には赤裸々とは言わないまでも、かなりそれは明示的に示すべきではないかなというふうに思います。
 それで、その観点から見ると、元に戻って恐縮なんですが、1部の記述としては29ページに世界的な森林の減少というのがあって、これは依然として減少が続いていると。それから海洋の生物多様性については、水産物の需要は相変わらず伸びているという、何か傍観者的な立場で、実はこれには日本は非常に大きく関わっているわけですね。
 それで、それを受けるような格好で、世界とつながる日本の生物多様性というのがあるんですが、37ページですけれども、これは全く冬鳥とか夏鳥の話で、これは日本の生物多様性、確かにそうなんですけれども、現状を受けたような格好で、やっぱり日本は非常に世界の生物多様性の利用については大きな責任を負っていて、これについてはかじを切っていくという、こういう立場を出していくべきなんではないかなというふうに考えます。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。
 それでは、中静委員、お願いいたします。

【中静委員】 ありがとうございます。今回の国家戦略は、大きく見ると戦略の部分の方はかなりよくなったなという感じはするんですけれど、問題は恐らく、その1部の戦略の部分と2のアクションの部分とが、どういうふうに結びついているかというのが、もうひとつわかりにくいところが、結構多いなというのが印象です。
 例えば、それで三つぐらい指摘したいんですけど、一つは、ネットワークの問題なんですけど、これは国土全体のデザインをするというふうには書いてあるんですけれども、それを具体化して、そのいろいろな省庁にまたがって、どういうふうにやるのかということが、アクションの方ではあまりよく見えてこない。そういうメカニズムというのは、どこかにあるのかというと、意外にそういうものはあまり書いていないというのが大きな問題じゃないかなというふうに、私は思いました。
 それから関連するんですが、141ページに里地里山のようなことが書いてあるんですけれども、これも先ほど生態系の多様性ということが問題になるというようなことを書いてありましたが、やっぱり農地と林地と川というようなものが結びついたような、そのいろんな施策というのが、なかなかしにくいというところがあるんですけれど、それが上手にあまり書いていないなという印象を持ちました。つまり、例えば直接支払なんかでも、農地には出せるんだけれども、地元の人たちが、林も含めていろんなことをやりたいと思うと、なかなか出せないというようなことと、川のことも含めてやろうと思うと、なかなか出せないというような問題があるというふうに、現場で聞いています。そういうものをもう少し何とかできるような取組がなされるといいなというふうに思います。
 それから、森林の方のネットワークに関して言いますと、昨日も東北の保護林のモニタリングの委員会に出てきたんですが、保護林として設定している面積が非常に小さいものが、まだまだたくさんあるんですね。1ヘクタールとか2ヘクタールが保護林として設定されていると。それが広げられないかというと、そうでもなくて、保護林の設定理由からしてふさわしくないという理由もあるんでしょうけれど、周囲には結構自然林がたくさんあるのに、なかなかそれが保護林として設定されていずに、非常に小さい面積で存続も危ぶまれるような状況になっているというようなケースが、結構あるんですね。そういうものを積極的に広げていくようなこと。例えば緑の回廊のような大規模なものもありますけれど、小さなものでも、そういうネットワークをつくっていくというような施策を、もう少し具体的に書いていただくと、アクションとしてやりやすいのではないかというふうに思います。それは125ページとか、136ページに関係すると思います。
 それから、二つ目は、REDDに関してなんですけど、これは途上国の森林を守って、それでCO2の排出を削減するというような、非常にいいメカニズムといいますか、やり方によってはいいメカニズムになり得るということなんですが、幾つかのページ、85ページの1部の方にも書いてありますし、275ページの2部の方にも書いてあるんです。そのほかにもちょろちょろと出てくるんですが、こういうメカニズムに対して、そのアクションプランとしてどういうふうに取り込むかというのが、あまり明確に書いていないんですね。その議論には参加しますというような書き方しか書いていなくて、これをやっぱり、もうこれだけ気候変動の方でも騒がれている議論ですし、それと生物多様性も一緒にやろうという議論になっているわけですから、そのあたりをもう少し、アクションとしてどういうふうにやるのかということを書いていただくといいなというふうに思いました。
 それから三つ目は、データとモニタリングに関してなんですけど、先ほども言いましたように、生物多様性総合評価をやらせていただいている中で思うのは、現実には非常にその生物多様性のデータがたくさん日本には埋もれているにもかかわらず、それがなかなか表に出てこないものがたくさんあると。典型的なものは、一つは森林資源データというような林野庁さんがやられているものが一つ大きなものですし、それからもう一つ問題だと思うのは、アセスメントに係る生物多様性データだと思うんですけれど、そういうものが、例えば河川の方を見ますと、電子化して、公開して、使えるようにというようなことを結構具体的に書いてあるんですけれど、例えば森林資源の方ですと、利活用を図るというような言い方しか書いていなくて、もう少し、きっちりそういうものの重要さを意識した書き方にしていただければというふうに思います。
 それと、モニタリングに関しても、そういうものを使ったモニタリングもやっていく、いろいろなところでモニタリングのことについて触れられていまして、285ページ、294ページ、296ページ、308ページというような、いろんなところで触れられているんですけれども、そういうものを、例えばいろんな省庁から出てくるものとか、アセスメントから出てくるものというものを、やっぱり統合化するということがないと、例えばこれからポスト2010年目標ですとか、いろいろなもので我々の行動を評価していかなければいけないというときにあって、統合化されたものがないという状況は、非常にまずいというか、非常にやりにくい状況になっていくので、こういうものをぜひ統合化していく拠点という方向を、もう少し明確に出していただけると、いろんなことが、評価もやりやすくなりますし、日本のやってきたことというのが表に出せるような形になっていくのではないかというふうに思いました。
 以上です。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。
 それでは、中川委員、お願いいたします。

【中川委員】 ありがとうございます。環境影響評価について申し上げます。ページは315ページ以降でございます。
 316ページの25、26行目にございますように、昨年8月に環境大臣から当審議会に対して諮問がなされておりますが、これは他の部会で今検討がなされております。実は私、その専門委員会のメンバーでございまして、現在、最終段階になっておりまして、恐らく今月中、ちょっと日程は忘れましたけれども、今月中にはその部会で最終決定をされるという、そういう段取りで今進められております。
 その方向については、ある程度の方向はここで記述があるんですけれども、ちょっと時点が古いような気がいたしますので、時点を新しくしていただく必要があると思います。ポイントは幾つかありますけれども、一つは、戦略的環境アセスメントの導入で、これについては、ほぼ法律による制度として導入すべきだという方向で、ほぼ方向は固まっていると思われますし、それが確定すれば、恐らく現在の国会に法案として提出されるんじゃないかなというふうに思われますので、そこの点がこの書きぶりだけではちょっと読み取れないという気が、ひとついたしております。
 また、そのほかの項目としては、307ページ、312ページにあるような風力発電についてのアセスへの、環境アセスの適用問題。また、事後調査についての考え方。このような点も今回の法律改正、制度改正において一定の方向を出すということで、取組が進められておりますので、そういう方向での記述に変更されることが、より望ましいと思います。
 以上です。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。
 それでは、岩熊委員、お願いしたいと思います。

【岩熊委員】 ありがとうございます。107ページのラムサール条約湿地なんですけれども、これは環境省の守備範囲なので、ちょっと述べさせていただきますけれども、ここに生物多様性とラムサールがどういうふうに連関しているかということはあまり書いていないんですが、1999年の第7回の会議で、生物多様性の保全のために重要な湿地という観点を取り入れたはずです。九つの基準のうち八つが、生物多様性ないしは生物種の個体群の保全という観点からの湿地の定義だったと思います。2005年と2008年に、十幾つでしょうか、追加された湿地のうちに、かなり水鳥以外の、例えばトンボとかマリモとか、そういう群集を保全する、群集または固体群を保全するような観点からの湿地の登録がなされています。この中で、やはりラムサール条約が現在は希少または固有な湿地ということだけではなくて、生物多様性の保全のために、国際的な重要な湿地という観点で取り組まれているということを意識して、この部分を書きかえていただけると、もう少し生物多様性の保全のために、なぜラムサール条約の枠組みの中に参加していくのかという観点がはっきりしてくるんじゃないかなと思います。
 あと、全体のバランスなんですけれども、これはいろいろな意見を取り入れていけばいくほど、バランスが悪くなるということはもう事実なので、取り上げてもしようがないかなと思うんですけれども、逆に今度は短くするというような努力もしてみる必要があるのかなと思います。意見を取れ入れれば、どんどん長くなります。ですけれども、思い切ってこの量を半分ぐらいにすると、一般の人が見ても、少しは読みやすい国家戦略になっていくのかなという気がいたします。
 以上です。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。
 それでは、市田委員、お願いいたします。

【市田委員】 ありがとうございます。COP10に向かってつくられた、この行動計画の第1部の中で、日本は生物多様性について世界のリードをとるんだと、こういう姿勢を示している。大変すばらしいことだと思います。実際のその活動計画の方を見ても、いろんなことが書かれていて、活動が、事業が広がっているということもわかるんですけれども、この274ページに書いてあるボン条約のところなんですが、このボン条約というのは、ご承知のとおり、国境を越えて移動する動物をどう守るかという条約ですね。これは渡り鳥だけじゃなくてクジラなんかを含むので、日本はもう嫌だという立場があって、この40年間、入るとか入らないとかってずっと議論しているテーマです。
 十数年前は、環境省も、じゃあやっぱり、もう100カ国ぐらい入っていますから、日本も入らないわけにいかんなということで入ろうかという、そういう方向で検討しようという話もあったんですけれども、その後、だんだんだんだん縮小してきて、前回のこの行動計画、国家戦略を見ると、入るか入らないかを検討するというふうになったんですね。
 今度、今回拝見していますと、対応の必要性を検討するというふうに、もう一段階下がった。この対応はしなきゃならんと、私は思います。入る入らないの問題ではなくて、入らないなら入らないということを言わなきゃいけないし、対応しないということはあり得ないと思うんですね。
 特に、このボン条約はおもしろくて、親条約に入っていなくても、その下にできている、例えばアホウドリ保護協定とか、そういったところだけ入るということもできるわけです。実際、今、アホウドリ類保護協定に日本が入るべきだという大論争があるんですけれども、アメリカが今度、加盟しましたので、アホウドリの繁殖地を持っている国で入っていないのは日本だけになります。
 そういう状況で、今入ってほしいという声もいっぱいあるわけで、この文章をさらっと読むと、何とかやりそうな雰囲気でもあるんですが、よく読むとやらないという。つまり、その必要性について検討するという。そうじゃなくて、何というか、対応はきちんとする中で、もし異論があるのであれば、こういう異論があるということを堂々言うべきであって、答えようか答えまいかどうしようかなということをどこかで相談しようという話は、やっぱり行動計画にはなじまないかなと思います。ご検討いただけたらと思います。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。
 それでは、岡島委員、そして石井委員お二人いただいてから、田中委員、桜井委員、神部委員の順でお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【岡島委員】 ありがとうございます。短目にやります。249ページ、自然とのふれあい活動の推進の中で、ちょうど17から22ぐらいのところに、一番大事なことが書かれておりまして、大変ありがたいと思っております。
 ただ、この中で、19行目の「総合的かつさまざまな主体の連携のもとに」云々と。それから、行政とNGOの連携とが既に進められているというふうに書いてあるんですが、具体的な施策の方で、これは中静さんが先ほどおっしゃったこととほぼ同じことなんですが、個々の取組、各省庁の取組がずらずらと並んではいるんですけど、トータルで考える視点がないんですね。
 ですから、ここでちゃんと書いてあるにもかかわらず、それに対応する具体的施策のうち、自然公園などにおける取組という前に、総合的な取組みたいなものはないのか書けないのかなと。各省庁がいろいろ絡むことですので、そんな簡単には書けないかもしれません。
 それからまた、実際に実施していく過程で、そういうことを考えてやっていきますということなのかもしれませんが、1行でも2行でも、トータルでみんなで考えていくことをしたいというふうなことは、各省庁は反対することもないと思いますので、何らかの形であった方がいいのかなと思っております。
 以上です。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。
 それでは、石井信夫委員、お願いいたします。

【石井(信)委員】 ありがとうございます。私は、外来種対策ですとか、それから哺乳類の保護管理という現場で動くことが多い人間ですから、この戦略が現場でいろんな判断をするときに、どのぐらい使える記述があるかということを気にするわけですね。
 そういう意味で言うと、例えば外来種だったら、なぜ駆除しなきゃいけないのか。殺さなきゃいけないのかとか、個体数調整をしなきゃいけないかということをきちっと説明するような記述が欲しいわけですけれども、そういう観点から言うと、なぜそうしなきゃいけないかという説明が、全体にわかりにくいと。これは全体的な印象です。
 ただ、ここまでまとめるのは、とても大変だったろうなと思って、きちっとまとめてあるので、文句も言いやすいわけですけれども、全体としてはそういうことを感じました。
 それで、もうちょっと具体的なことを申し上げますと、例えば205ページあたりに出てくる持続可能な利用とか、それから247ページに出てくる社会経済的な仕組みを考慮するというあたりに関係あるんですけれども、まずその狩猟資源ですね、それを多様性保全の中でどういうふうに考えるんだろうかという記述がないなと思うわけです。特に、農作物被害ですとか、生態系被害ということが、シカとかイノシシの個体数増加で非常に問題になっているわけです。
 それで、個体数調整とかやっているわけですけれども、それを例えば北海道の事例とか、それから最近もう全国各地で行われていますけれども、そうやってとった動物を有効活用するという動きが盛んになっています。
 ところが、その事例については、この国家戦略の中には出てこないというのが、非常に物足りないわけですね。特にそうやって駆除した個体を有効活用して、経済的な利益を少しでも回収して、コストのカバーをすると。あるいは、倫理的な観点からも、そうやってとった動物を有効に利用するという動きがあるんですが、そういうことが持続可能な利用のところにも、それから経済的な仕組みを考慮するというところにも全く出てこないわけですね。
 そうすると、北海道を初めとする全国で行っている有効活用の動きをサポートするような記述がこの中に見出せないというところは、私の意見ですけれども、非常に物足りないと思います。動物を使って金もうけをするという印象があるので、少し腰が引けた感じなのかもしれませんけれども、そうじゃなくて、コストをできるだけカバーするとか、倫理的な観点からそういうことがもうちょっと強調されていいというふうに思います。
 なぜそういうことを言うかというと、今やっているようなやり方では、シカとかイノシシの増加というのは抑えられないと思います。そのせいでいろいろな生物多様性を、私たちは近い将来、失うと思うんですね。今のやり方でやっていると。あらゆる仕組みを使って対応しなければいけないのだけれども、その危機感がちょっと薄いと思いました。温暖化なんかについては、随分いろんな議論があるんですけれども、まだこの動きは物足りないと。
 もう一つ、なぜそういうことを言うかというと、現場では、もうやむにやまれず、そういう対応をしていますけれども、多分広がると思います。うまくいくかどうかわかりませんが、要するに、国家戦略は環境省がいろんなことをリードしなきゃいけないのに、そういうことがうまくいったら、後追いでそういう動きもいいことだみたいなことになりはしないかというのが、もう一つの心配ですね。
 ということで、例えば71ページに、持続可能な資源利用の取組事例収集とかと書いてありますけれども、ぜひこういう動きを何かの形で記述してもらえないかと。位置づけはちょっと難しいかもしれませんが、そう思います。それは70ページに、人と自然の関係の再構築とか書いてありまして、そういうことにも関係のあることだと思います。
 それと、関連してつけ加えると、269ページにワシントン条約に関する対応が少しだけ書いてあります。それで、私はワシントン条約にも関わっていますので、ちょっと意見を言いたいと思いますけれども、ワシントン条約では、野生生物の商業利用、持続可能な商業利用というのは、野生生物の保全に貢献するんだと、うまく使えばですね。そういう決議があります。8.3だったかと思いますが。それに沿って、日本はいろいろな方針を決めているはずなので、できたらそういうことを書き込んでいただけるとありがたいと思います。
 以上です。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。
 それでは、石井実委員、お願いいたします。

【石井(実)委員】 もう一人の石井からやらせていただきます。私、昆虫を研究している者ですので、昆虫の立場からというか、昆虫研究者の立場から少し発言させていただきたいんですけれども。
 全般的に昆虫というのは、生物多様性保全に関わっている人でも、研究者であっても、意識は低いのかなと思いまして、全体的にこの戦略の中でも扱いというのは、変な言い方ですけど、カレーライスの福神漬け程度かなと。そんないいものでもないかもしれませんけど、例示程度にしか昆虫が出てこないのは、ちょっと不満なんですけれども。
 その中で、ちょっと、特に書いてほしいなというところだけ述べたいんですけど、209ページのところに、生息域外保全という項がございます。私もこのモデル事業について関わっているんですけれども、生息域内だけではもうやっていけない、保護ができないものがあるということで、特に昆虫の場合は極めて多くなっております。今、2種のチョウについて関わっているんですが、その生息域外保全というのは、例えば209ページの26行目に出てきますけれども、動物園とか植物園なんかを使って、あるいは水族館などを使って、そこで保全していこうと。それで、場合によっては野生復帰も考えるということなんでありますけど、実は、昆虫の場合には、日本にたくさん昆虫館というのがあるんですね。一般的には熱帯・亜熱帯のチョウを飛ばしているわけですけど、その中で昆虫の展示なんかの生きたものの展示なんかをやっているわけですけど、ぜひともこの中に昆虫館というのを書き込んでほしいんですね。
 その27行目に、日本動物園水族館協会というのがあって、この中に加盟している昆虫館というのもあるんですが、実はこの日動水という機関は、大変会費が高くて、一般の昆虫館は入っていないんです。大変もったいないと私は思っていまして、今後の昆虫の保全を考える場合には、ぜひともきら星のごとく全国にある昆虫館というのを利用していただきたいというふうに思うんです。これがまず1点です。
 それで、野生復帰というのを目指すということなんですが、ちまたでは、特にチョウをやっている人なんかが多いのかなと思いますけれども、自主的に昆虫を飼って、それをやたらにまきまくっている人たちがいて、それでまずいことが起こっているのがあります。例えば、ホタルが一番いい例かと思うんですけど、地方行政の中で、下水処理場が大変きれいな水になりましたよというのをアピールのために、ホタル祭りなんかをやると。本来はいないのに、どこかから連れてくるというので、日本のホタルの遺伝的レベルの多様性というのが、もうひどいことになっているんですね。こういうようなことというのは、やっぱり昆虫に対する軽視かなと思っていて、ぜひともその辺は、どこかに書き込んでほしいと思うんですね。例えば外来種問題というのは、219ページぐらいですかね、のあたりから生態系を攪乱する要因への対応ということから始まって書かれているんですが、その国内外来種問題みたいなことは、あまり書かれていないんですね。それでぜひともこの辺はお願いしたいと思います。
 それからもう一つ、ちょっと余計なことなんですけど、郵便局へ行くと、お孫さんにカブトムシを送ろうとか何とか、いろいろ簡単にサインすると、日本全国にカブトムシが行くことになっていて、本来、北海道には本土のカブトムシはいなかったんですけれども、かなり増えてしまっていたりするんですね。こういうところもちょっと、国民への啓発なんかが必要なのではないかというふうに思っています。
 ちょっとマイクを持ったついでにバックして、53ページです。ちょっと言わせていただきたいんですけれども。ここのところに里地里山の話が出ています。そして39行目のところに、絶滅危惧種を含む多様な生物の生息生域空間となっているんですけど、ちょっと私として書き込んでほしいのは、昆虫の場合には、いわゆる里地里山地域に、絶滅危惧種のもう6割から7割ぐらいの種がレッド種ですね、が入っていて、その中をよく見ると、日本固有種がすごく多いんですね。里地里山というと、二次的な自然。人間と関わってきたので、それはどうでもいいだろうって、そういうパブリックコメントもあったようですけれども、昆虫の立場から言うと、日本の昆虫のレッド種を守ろうと思うと、里地里山を守るというのは、ほぼ同義というのは言い過ぎですけれども、その辺に近い状態になっているというので、それをアピールするためにも、39行目ぐらいのところに、この多様に生物というだけでなく、日本固有種、あるいは日本を含む東アジアだけにしかいないものというのがとても多いというのを書き込んでほしいと思います。
 それから、56ページなんですけれども、河川の部分なんですね。ここで読ませていただいて、昆虫研究者の立場で抜けているなと思うのが、汽水域のヨシ原みたいなところにいる昆虫がかなり危ないんですね。例えば代表的なのが、ヒヌマイトトンボなんかがそうなんですけれども、汽水というのがあまりここに書かれていないのがちょっと残念で、水の中についても、節足動物、それから貝の仲間なんかで、微妙なその汽水が要求されるという種も結構多いんですけれども、その辺の書きぶりが少し足りないのかなと。
 最後ですけれども、これは昆虫と関係ないんですが、50ページのところに、グランドデザインのところが頭出しで出ているんですけれども、12行目に都市地域というのがあります。ここの定義というんですかね、書き方が、「人間活動が優先する地域」となっているんですけど、ただそれだけでいいんですかというのを、ちょっと私は言わせていただきたいと思うんですけど。もうちょっと書きようがあるのではないかと。生物多様性という観点から、確かにそうなのかもしれませんけど、自然を再生するとか、そういうふうなニュアンスが感じられるような文言にできないものかというので、ちょっとこの最後のところは昆虫と関係ありませんけれども、よろしくお願いします。

【熊谷委員長】 それでは、田中里沙委員、お願いいたします。

【田中(里)委員】 この冊子につきましては、すべてのよりどころになるものだと思うので、このままで先生方のご意見をいただいて、修正等でこのひとつ意味はあると思うんですけれども。244ページあたりにある広報のことについて、書いていただくかどうかは別としても、ちょっとそのポイントをお話しできればと思います。
 これまでも広報等、担当の方には頑張っていただきましたが、伸び率がちょっと小さくて、認知度もまだ低いというのがやっぱり問題なんだと思うんですけれども、このページを見ても、例えばいきものにぎわいプロジェクトとか、地球いきもの応援団とか、スマートコンシューマーとか、あとコミュニケーションワードというよりは、何かスローガンなんだと思うんですけど、「地球のいのち、つないでいこう」とか、いろんな文言が出てきて、やっぱり生物多様性という言葉が、広報するときにあまり活用されていないということが、ひとつ問題としてあるのではないかなというふうに思います。たった5文字の言葉、単語ですから、やっぱりこれをいろいろ言いかえずに、ほかの言葉が出てくると気が散るというところもありますので、やっぱりこの生物多様性というのをきちんと発信するというのが一つは大事なんだろうなというふうに思います。何か訴えるときにも、生物多様性と仕事とか生物多様性と、学校とか生物多様性と昆虫とか、そういうことをやっていくのが一つはポイントなのかなというふうに感じております。
 あとは、情報発信側は、やっぱりぶれてはいけないので、具体的なことで、やっぱり農業とか、海とか、里山とかそういうものを出したときにも、やっぱり、そしてこれは生物多様性なんですとか、あれも生物多様性なんですというふうにちょっと落ちをつけるというか、示していただくというか、そういうふうな広報のシナリオが、やっぱり大切ではないかというふうに感じます。
 具体的なPRを行う際には、やっぱりこの戦略というのは、国としてのシナリオになっていますので、国民の視点というのがやっぱり必要で、私もメディアをやっていますけれども、いろんなテレビですとか、新聞とか、雑誌の企画を考える方とお話しすると、生物多様性についてやりたいんですけれども、どんな切り口でやったらいいかわからないとか、どういうふうに伝えたらいいかわからないということを、メディアの方はかなり悩んでいらっしゃいます。ですから、そういう方に、やっぱり切り口を示すということが大切で、これがまたいろいろ、先ほども前半に先生方からもご意見がありましたけれども、いろんな白書とか、ガイドラインとか、パンフレットとかをこれからつくられていくと思うんですけれども、普通にこれまでの役所の方につくっていただくツールだと、漫画にするとか、簡単にするということで、全部読むと全く同じみたいなところが結構あったりするものも、多々これまでこの環境省に限らずありましたので、やっぱり一人一人の主体で、ちゃんと対象者を持っている人たちが使えるツールにするというふうな観点で、情報を出していただければなというふうに思っています。
 この内容を知っているというところまでにいくには、やっぱり国民がやる気を起こすとか、モチベーションの源泉を出すということが大切になってきますので、これはこの中の文章にありましたけれども、生物多様性は暮らしとの接点が見出せないという声があるということもありましたが、それよりは意外と低炭素社会と言われるよりも、意外と生物多様性の方が想像できる分野というのもあると思いますので、やっぱりこれは一つ一つ、別のパンフレットにもありますけれども、この一つ一つの行動がどんな成果を生み出すのかということを示すということが、やっぱり一人一人のやる気を引き出すことにつながるかなというふうに思っています。
 CO2がこんなに減りますとか、この行動によってこういうふうに変わりますということが、やっぱりモチベーションになってくると思うんですけれども、生き物と接しましょうとか、自然に親しみましょうとか、学びましょうということが、それによってどうなのと。長期的な観点ではあると思うんですけれども、そこがやっぱりもう少し具体的に示されると、行動が変わり、広報における評価というか、目標数値の成果というのが見えてくるのではないかなというふうに思います。
 以上です。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。
 それでは、桜井委員、お願いいたします。

【桜井委員】 海域の部分ですけれども、111ページですが、非常にこれは、ようやく海の自主的な管理区域というものがここで書き込まれたので、私は多少はよかったなと思うんですが。ちょっとここで、先ほど竹村委員からもありましたけれども、具体的な施策の部分でお願いがあります。二つありまして、一つは、環境省サイドでやられています自然公園の中の海域に関する普通地域を加えて保全をするというところの部分と、それから、この自主的な地域でやるというところのうまく組み合わせることが必要になると思いますので、こちらの方にもその部分を書き込んでいただければと思います。
 つまり、流域生態系プラス沿岸生態系ですね。これを巻き込むような国立公園、国定公園がありましたら、この中で海域についても、地域の自主的管理というものがいかに重要であるかというような形で、具体的な施策を書いていただければと思います。
 それから、もう1点は、これはパブリックコメントにありますけれども、海洋保護区との関連ですね。ここでは一言もそれが消えていますけれども、パブコメの方では、海洋保護区としての議論も踏まえて、この自主的に管理する海域等があるわけですから、この辺についても今後、詰めていかないと、2012年目標の海域保護の拡大という点からして、もう少し積極的な書き込みをしていただければと思います。
 以上です。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。
 それでは、神部委員、お願いいたします。

【神部委員】 私、先ほどから、先生方から生物多様性という言葉についても、わかりにくい、広まりにくいというお話が出たことを非常に共鳴しておりまして、私はIUCNの親善大使をさせていただいておりまして、イルカという名前で歌ってもおりますけれども、ちょうどIUCNの世界自然保護会議が、一昨年2008年の秋にバルセロナでありました。そのときに、やはり本部の方から、2010年には日本が議長国となって、生物多様性年、大きな会議があるので、これは単に会議で終わらせないで、本当に国民の皆さんに、一般の皆さんに知っていただくために、力を尽くしてほしいというお話がございました。
 私は、一昨年から、微力ながら自分のコンサートとか、ラジオとかを通じてお話をしておりましたけど、本当に皆さん、なかなかわかりにくいんですけど、歌を通じると非常にわかっていただけるということもありますけれど。そして、何とか本当に、これは私の力がこんなに少ないのですから、ぜひ環境省の皆さん、そして外務省の皆さんにもお力を本当に大きくいただきたいと思っておりましたところ、先日といいますか1月25日ですけど、先ほどからいろいろ何回も出てきました地球いきもの応援団、そして生きもの国内委員会というのが初めて開かれまして、私もその二つのところに名前を連ねさせていただいております。
 当日は、取材陣の皆さんもたくさんいらしてくださったので、もうこれでやっと本当に全国の皆さんに知っていただけることになるなと、待ってましたという感じで思っておりましたけれど、翌日、どのぐらいPRがされているかということを、非常にいろいろなところを見ましたけれども、ほとんど期待できなかったということで、ちょっとがっかりいたしました。
 その辺、どうしてなのかなというふうに思いました。あれだけたくさんテレビカメラも入っておりましたし、それから今、ただいま地球いきもの応援団は、ここには入っておりませんけど、約三十六、七名ぐらいおります。本当に各界いろんなところで活躍されている方も、当日出席してくださったんですけれども、本当に思ったより露出が少なかったということで、もうちょっと一面にどばっという感じで出してほしいというふうに思っておりましたけれども、そういうこともあるのかなと思っておりました。
 先ほど、もう少しわかりやすいものをつくったらどうかというご意見もございまして、ちょうど去年からですけれど、私の方のIUCNの方で、生物多様性とはということで、小さいお子さんたちにもわかる小冊子をつくりました。これはどういう形でつくったかといいますと、私のコンサートに来ていただいた方、会場のロビーに置いてあります募金箱があるんですけれど、その募金箱にいただいたお金でつくっております。ですから、そういう個人的な活動では、本当になかなか苦しいことがたくさんあったものですから、何とか国を挙げて、これは国連で定められた生物多様性年ということでもありますので、もっともっと大きく扱っていただけたらいいなというふうに、私の口から言うのはおこがましいんですけれども、常々そのように思っておりました。
 ちょうど、一昨日ですか、NHKの方で国会中継がありましたので、拝見しておりまして、いろんな質問がありましたけど、なかなかこういう環境問題に関しては質問がありませんでしたけど、約1名だけ総理に対して、今年は生物多様性年ということで、国にとって責任、そういうものはどのようにお考えですかという質問に関しまして、鳩山首相が、生物多様性年に関して、子孫をつないでいくためにも大変重要な会議であると思って、責任を大変強く感じておりますというお答えがありまして、私は大変身を乗り出して聞いておりまして、うれしく思いました。そのときに、テレビカメラが小沢環境大臣にぱんと当たりましたら、にやっとされまして、そのことで何となく私は、国会中継というものが一層おもしろいものだなというふうに思いましたけど。ぜひ、そういうことも、国を挙げて皆さんに広まっていったらいいなというふうに思っております。それにはまず、あと8カ月ぐらいですけれども、環境省の皆様がやはりリーダーシップをとっていただいて、もう少しいろいろマスコミの皆様にもお声をかけていただき、もう少し大きくそういうニュースなども扱っていただけないのだろうかというふうに思っておりまして、これはお願いになりますけれども。
 10月には、IUCNの親善大使としましても、名古屋の会議のある期間に、大きなコンサートをやりたいと思っておりますけれど、会議で大きな会場を貸していただけないということで、やっと1会場だけ名古屋の会場を押さえることができました。そのことに関しましても、いろいろな形でCDをつくりたいと言いましてもなかなか、愚痴のようになりますけれども、生物多様性というものがなかなか今広まっていないので、そういうCDをつくっても売れないんじゃないかと、まず言われてしまいます。何かこれは、鶏が先か卵が先かみたいな話になりますけれども、もっともっとこのことが本当に皆さんに浸透していけば、活動も非常にそれぞれの先生方ももっとしやすい環境がつくれていくのではないかなと思いますと、非常にこの一般の皆様に対するアピールということは、思った以上に今回の生物多様性ということに関して、本当に大きなことではないかと実感しておりまして、その一般の皆様にアピールする最前線にいるというつもりで、私、いつも考えておりますので、できる限りのことはさせていただきたい。これも私利私欲に走らず、そのように思っておりますので、今日お集まりの先生方、そして環境省の皆様にも、本当によろしくお願いしたいと思っております。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。
 それでは、磯崎委員、そして浜本委員にお願いをしたいと思います。

【磯崎委員】 ありがとうございます。ページ数で239ページ、バイオマスのところなんですが、ここでの記述がほとんどが国内の問題になっているんですけれども、追加として28、29行目で法律が書いてあるんですが、この後にエネルギー供給構造高度化法、正式名称はエネルギー供給事業者に対する非化石エネルギー・・・という、ちょっと長ったらしい名前の法律です。
 このバイオマス活用をある意味で具体化して、温暖化対策と、それからバイオ燃料の促進に関する法律で、既にその後、基本方針も策定されています。そういう意味で、その法律をもう一つ追加することと、それから、その法律との関連で、温暖化対策に効果があるような形で非化石エネルギー、特にバイオ燃料を使おうとしたときには、国内では足りないですので、必ず輸入になるということなんですが、その際に、これも先ほどから第1部の方で話に出ていた、国外の国際的な、それから輸出国における生物多様性の保全との関係での問題が出てきます。
 そういう意味で、国際的な観点でのバイオマス、特にバイオ燃料に関する記述をこの節で加えることと、それから後ろの方で305ページ以降なんですが、そこで温暖化との関連の話が出てきますので、まさにその問題に直結することになりますので、去年の7月の今の新しい法律との関連で、国際的な観点での温暖化と、それから特に輸出国における生物多様性保全との関連で生じる問題を回避することで、その手がかりに今挙げた法律がなり得るということですので、そのあたりの記述の追加をお願いできればと思います。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。
 それでは、浜本委員、福田委員、そして中道委員、今ご発言をなさるようでございますが、ほかにございますでしょうか。
 それでは、是末委員、よろしく。次に順番でお伺いしますけど、実は、限られた時間がもうなくなってまいりましたので、今の4名の方以外にございますか。それでは、大変恐縮ですけれども、浜本委員、福田委員、中道委員、それから是末委員で、森本委員は、じゃあ森本委員、よろしいでしょうか。森本委員までお願いをしたいと思いますので。森本委員、特に手短にお願いします。
 それでは、浜本委員からお願いいたします。

【浜本委員】 ほとんどのことをほかの先生方も言われたのですが、全体的に見て特に2部の2章以降の具体的な施策の中でも、この国家戦略をつくることによって、もしくはこのCOP10をきっかけにして、今後こういう保護区を増やしますとか、こういうやり方を増やしていきますとか、それを支援しますということは、たくさん書いてあるんですけれども、そこのところで、多分それをきっちりやっていくことが、普及・広報と国民的参画の推進というところに、一番具体的なものになってくるのではないかなというふうに思います。
 例えば、253ページにあります国立公園などにおける取組で、それの再生をするということを地方自治体や国民と一緒にやりますとか、例えば、もう既に登録は済んでいるラムサール条約湿地での調査や、それの湿地の保全と懸命な利用を広報していきますというふうに書いてあるんですが、それを実際に具体的にこういうことをやりますということだけではなくて、例えばもう既に国立公園や保護区になっているところ、もしくはラムサール条約に登録されたところが、どんなふうに、いい変化をしていっているのか、そうでないのか、今現状はこんなふうなんだということの国民参画、地方自治体まで一緒に入れて調査したことの、その調査結果をわかりやすく国民に知らせる。この状態になっているので、こういうふうに、いい状態にしていきましょう、そのためには、こういう取組も必要ですよねと、こういうふうに一緒に取り組んでいきましょうという、具体的な数字やモニタリングをしたことを、きちんと国民に知らせる。こういう調査をしましたから、この結果が出ました。こういうふうなことをやりますではなくて、そこに行き着くまでのことも、よりわかりやすく国民に知らせていくことにもっと力を入れないと、国民が参加して、だれもがわかりやすくこの戦略の中で中心になって動くということには、なかなか遠いのではないかなというふうに思いましたので、そのあたりをもう少し強く書く、詳しく書くということは必要ではないかなというふうに思います。

【熊谷委員長】 福田委員、お願いいたします。

【福田委員】 私の話は、ここに書いていいかどうかというのは、ちょっと思うんですけれども、結局これを先に言って、実行したりすることは、今の大人としてはわかっていますけれども、結局は先に子供たちの話だと思うんですけれど、その中の教育のところなんですが、結局子供たちに教えるというのは、教員の指導力の向上ということになるんですけれども、そこがきちんと先生たちがお勉強していただかないとだめだと思うんですけれども、文科省の話になるかもしれないんですけれども、先生たちはやりたいと思っても、忙しい忙しいということがあって、なかなかできないという。それを何とかしてほしいということなんですけれど。
 それから人材の育成ということで、大学などで環境と人間とか社会生態学などを勉強しているということはありますけれども、今の当面の問題として、教員の問題ということをやっていただかないと、先に行って大変なことになるのかなということを思います。
 以上です。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。
 それでは、中道委員、お待たせをいたしました。

【中道委員】 ありがとうございます。この戦略が非常に分厚いという話が出ておりますけれど、1部はそう厚くないんですね。2部がたくさん厚くなっているわけです。戦略からいくと、1部だけでもいいと思うんですけど、なぜ2部がついているかということをよく考えてみたらいいと思うんです。これは、やはり1部をつくるための材料をここの委員会に提供するんですね。皆さんが読まれたように、材料が用意されているということもありますし、各省を引き込んでいる。だからいろいろ実行をされ、行動される人に、いろんな施策を選択して、統合がする材料を用意しているわけですね。非常に私は、すぐれた構成になっていると思うんです。これを活用するかどうかは、やはり行動する側とか、ここで議論をする側にかかっているような感じがいたします。そういう意味では、各省の施策がいろいろ並んでおりますけど、こういうある部門ごとに、例えば幾つかのジャンルがあるかもしれませんけど、それを一緒に話を聞いてみて、実行計画を聞いて、問題点を指摘してもらう。もしくは、各省ではなしに、実際に行動した人に何が問題だったかという提案をいただく。そういうふうな議論を今後この計画ができたら、2部が活用できるようにやっていったらいいんではないかなという感じがいたします。
 私は、この計画、非常にすぐれているというのは、統合化という言葉が入っております。統合化というのは、特に環境の政策では難しいと思うんですけど、それがこの計画を進める大きな手段になっていくと思いますから、その場に活用されるものがいいのではないか、そんな感じがいたします。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。
 是末委員、お願いをいたします。

【是末委員】 鳥獣被害を軽減する、144ページなんですが、個々に書いてある、もう少し具体的に書いていただきたいなと思うんですけれどね。例えば、被害がたくさんある。被害は大体どのぐらいあるとか、一斉調査をしたときに、シシ・シカ・サル等の増加ですね。いわゆる昭和50年、昭和53年ぐらいに狩猟者が50万人ぐらいいたわけですね。現在は11万幾ら、12万を切っておるわけですね。野生と人間とのバランスは、どのくらいあったらいいかというと、28万人ぐらい欲しいわけですね。それが大きくバランスが崩れているから、農作物に被害が多い。ところが、平成14年ぐらいに環境省がここで一斉調査したときの数字からいたしますと、シカが大体1.7倍増えているわけですね。シシが1.3、サルが1.5というふうに増えておる。だから、そういうようなことを具体的に、そのために被害額がどのくらいあるかというようなことですね。だから、今、石井委員さんから現場に対する被害等でありましたように、捕獲した肉の、いわゆるジビエ料理等に使ったらいかがかというような話が出ておりました。これは農林水産省ですかね、補助金が、たしか5,000万ぐらいついておるという、そういうことも主に具体的に書いてほしいわけですね。
 それから、鳥獣被害防止特措法というのは、平成20年の2月に設定されております。一般の方々が特措法というのを、こういうものがあったら、何だろうというから、そういうのをちょっと具体的に書いていただきたいと、そういうことです。ありがとうございました。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。
 それでは、森本委員、トリでお願いします。

【森本委員】 すみません、貴重な時間、申しわけございません。292ページの上の方なんですけど、たしか今年の正月に1月5、6とブラジルのクリチバで、都市の生物多様性に関する国際会議に参加して、それから国際生物多様性年のキックオフのセレモニーものぞいたんですけど、そのときのCBDのジョグラフ事務局長の演説でも、実は経済的な枠組みというものの重要性を強く強調されていまして、そのときに、名前を出して引用したのが、民間でやっている生物多様性オフセットのNPOがありました。多分、COP10でも大変重要な課題になると明言しておりますので、そういうことを踏まえて、ここの政策課題で書かれているところで、TEEBを通して、今さっきの私の質問には対応するとおっしゃったんですけど、ぜひ効果的な保全のための指標をうまく開発するということと、それから費用などの分析があるんですけど、うまくすれば儲かってしまうことが結構あるわけで、そのために民間、結構自主的な枠組みをつくっていますので、コストがかかるというだけじゃなくて、枠組みの開発とか、何かそういうこともぜひ入れていただけたらなと思いました。
 以上です。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。
 まだご意見をいただきたいと思いますし、ご発言をなさりたい方はいらっしゃると思いますが、限られた時間でございますので、これで一応ご意見等については、打ち切りとさせていただいて、残りの時間でご意見もたくさんありましたので、特にご質問なり、あるいは環境省の考え方をお聞きしたいというような、そういうご意見を中心に、どなたから、ご回答をいただけたらと思いますが。
 それでは、渡辺審議官からお願いをいたします。

【渡辺大臣官房審議官】 2部に向けて、貴重なご意見をたくさんいただきまして、ありがとうございました。1部と同じように、2部についてもいただいた意見、1部の考え方を2部にもっと具体的に踏み込んでいけないかというようなことが多かったと思います。2部も各省と連携してつくっているところでありますので、各省と相談しながら、反映の仕方を相談していきたいと思っています。
 消費生活が世界の多様性に及ぼしている影響、そして消費生活の中に生物多様性の視点を組み込んでいくこと。これは今回の改定の中でも大事な点ということで、幾つかのところで書いたところですけれども、その辺も強化できるかどうか見ていきたいなと思いますし、いろんな各省にまたがる施策を統合化するような記述をもうちょっと2部の中でも書けないか。ふれあいの施策、あるいは中静さんからあったネットワークなり、里地里山さらにモニタリング制度。こういう各省がまたがってやっている施策が、2部で個々に出ているのを束ねたような記述ができないかというあたりも、少し工夫の方法を各省とも相談をしたいと思います。
 それから、アセスについて、ご議論、ご意見をいただきました。アセス制度の方も、この国家戦略に書いてありますように、今審議会での議論が進み、審議会での議論を受けて、法改正の各省との議論も進んでいる最中ということで、どの辺までかけるか、まだ途中段階ということで、そこが途中の段階ということで、限界もあるかなと思いますけれども、アセスの部局とも相談をしたいというふうに思います。
 それから、広報・普及の関係で、田中委員や神部委員からも意見をいただきました。まさにこの国家戦略改定を受けて、COP10という機会、そして国際生物多様性年という年を生かして、あらゆるチャンネルを使って、この生物多様性という考え方を幅広く浸透させていく、そういった取組、ぜひこの改定を受けて力を入れたいというふうに思っています。
 それから、海のところで、海洋の保全なり海洋保護区の中で、地域の自主的な管理の大切さ、そういうことと法の保護区と組み合わせていくことの大切さという点は、非常に大事な点かなと思っていまして、そこもどんなふうに反映させるか考えていきたいと思っています。
 中道委員から、1部と2部の意味というコメントをいただきました。そのコメントも生かして、今後のこの国家戦略の点検ということにもつなげていきたいと思っております。
 そのほかの委員からいただいた、もう少し具体的に書けないかという意見、それぞれの場所で工夫を考えたいと思っています。
 それから、もう1点、市田委員からありましたボン条約について、星野課長からお答えしたいと思います。

【星野自然環境計画課長】 ボン条約の関係ですが、ご意見もパブコメでいただいております。パブコメの結果の資料でいきますと、118ページ、119ページにボン条約関係、批准を明確に示すような表現をすべきだということでございます。
 これにつきましては、国家戦略本文、第三次戦略時点から既に書いていたことですけれども、条約で捕獲が禁止される動物について、我が国は意見を異にする部分があるという状況の説明をしております。したがいまして、この条約を締結することによって、どのような義務を負うことになるのかと。そういう点について、十分慎重に検討をしていきたいというふうに考えております。
 また、最近の動きといたしましては、先ほど市田委員も触れられましたけれども、アホウドリに関する個別の協定がございます。環境省の職員をその協定の締約国会議にオブザーバーとして参加させて、協定の動きをフォローしながら、環境省としてもアホウドリ保全に関して協力できるところは協力するというスタンスから、情報の提供などを行ってきたところでございます。
 今後も、ボン条約に関しましては、関連するさまざまな協定がございますので、それらの協定の動きについての情報収集を進めながら、環境省としても協力できるところについては、会議への参加などを検討してまいりたいと思っております。
 以上です。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。本日は、貴重な、またさまざまなご意見をいただきまして、ありがとうございました。本日の議論を踏まえまして、さらに加筆・修正が必要な部分もあろうかと思いますが、最終案にどう反映させるかについては、大変恐縮ですが、事務局の環境省と私、部会長で相談をさせていただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。

(はい)

【熊谷委員長】 ありがとうございます。それでは、そういう形で整理をし、次回3月1日の部会で、答申という運びにさせていただきたいと思っております。
 それでは、以上をもちまして、自然環境・野生生物合同部会を閉会といたします。本日は、どうもありがとうございました。