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■議事録一覧■

中央環境審議会 自然環境・野生生物合同部会
(平成19年度 第3回)
議事録


1.日時

平成19年11月14日(水)10:30~12:00

2.場所

フロラシオン青山 2F 芙蓉

3.出席者

(合同部会長)
熊谷洋一
(委員)
石井信夫、石井実、石坂匡身、磯崎博司、大塚直、岡島成行、加藤順子、川名英子、隈研吾、是末準、齋藤勝、鹿野久男、篠原修、高橋佳孝、田部井淳子、土野守、中道宏、中村大士、西岡秀三、野田節夫、浜本奈鼓、原重一、原田純孝、三浦慎悟、森戸哲、森本幸裕、山岸哲、山極壽一、鷲谷いづみ、和里田義雄(五十音順、敬称略)
(事務局)
環境省:
地球環境審議官、自然環境局長、大臣官房審議官(自然環境担当)、自然環境局総務課長、自然環境局自然環境計画課長、国立公園課長、自然環境整備担当参事官、生物多様性地球戦略企画室長、鳥獣保護業務室長ほか
農林水産省、国土交通省、文部科学省、経済産業省

4.議題

(1)
「第三次生物多様性国家戦略」(答申)案について
(2)
その他

5.配付資料

  • 小委員会 座席表
  • 小委員会 名簿
  • 生物多様性国家戦略見直しのスケジュール
資料1 第三次生物多様性国家戦略案の全体構成
資料2 第三次生物多様性国家戦略(答申)案
[参考資料]
  • 新・生物多様性国家戦略
  • パンフレット いのちは創れない
  • 生物多様性国家戦略の見直しに関する資料集
  • 中央環境審議会関係法令等

6.議事

【司会】 それでは、定刻となりましたので、ただいまより、中央環境審議会自然環境・野生生物合同部会を開催いたします。
 本日の審議のためにお手元にお配りしている資料につきましては、議事次第の下にある配付資料一覧のとおりとなっております。参考資料につきましては、委員の皆様のお手元にのみお配りしておりますので、ご確認をお願いいたします。配布漏れがございましたら事務局にお申しつけください。
 それでは、これよりの議事進行につきましては熊谷部会長にお願いいたします。熊谷部会長、よろしくお願いいたします。

【熊谷部会長】 はい、かしこまりました。
 おはようございます。それでは、ただいまから平成19年度第3回の自然環境・野生生物合同部会を開催いたします。本日の議題は、第三次生物多様性国家戦略(答申)案についてございます。前回の第2回部会におきまして各委員から出された意見への対応について、事務局の説明をまずお聞きいただきまして、問題がなければ答申として決定したいと考えておりますので、どうぞその点をお含みの上、格段のご協力をお願いいたします。
 それでは、事務局より答申案の説明をお願いいたします。

【亀澤生物多様性地球戦略企画室長】 生物多様性地球戦略企画室長の亀澤でございます。私より資料に沿って説明をさせていただきます。座って失礼をいたします。
 前回5日の合同部会で、三次戦略の答申案についていろいろとご意見をいただきました。前回いただきましたご指摘への対応として、文章の追加、修正が必要な箇所につきましては、できるだけご指摘の趣旨を反映できるように、各省とも調整をいたしまして、修正作業を行いました。本日は、資料に答申案の冊子がございますが、そちらの方で修正箇所のうち主なところを説明いたします。
 まず冊子の20ページでございます。第2章第2節温暖化と生物多様性のところですけども、土屋委員から、この節は必ずしも生物多様性の話になっていないのではないかというようなご指摘もございました。それも踏まえまして、最初の1、温暖化による多様性への影響の最初の段落のところですけども、上から2行目「温度変化により」から始まるところに、下の方にありますホッキョクグマなど個々の種の話に加えまして、ここで、温暖化に伴う変化が種や分類群によって異なるために、生物間の相互関係に狂いが生じるというような趣旨で、全体的な話を書き込むことで、生物多様性全体にかかわることだと、そういう感じが出るように修正を加えました。
 続きまして30ページになりますが、第2章4節、多様性の現状の日本の生物多様性の中の「レッドリストの見直し」のところでございます。「レッドリストの見直し」の上から二つ目の段落のところですけれども、齋藤委員の方から、このページにヤクシマザル、ホンドザル、ニホンザルというのが出てきていて、一般の人にはわかりにくいというご指摘がございました。これを踏まえまして、ヤクシマ、ホンドザルというのがともにニホンザルの亜種であるということがわかるように修正を加えました。それから、ほかのところの種の名前についても、全体的にチェックをいたしまして整理をしました。その中で、シカとかクマにつきましては、自然環境保全基礎調査を引用しているような箇所では、学術的なニホンジカ、ツキノワグマというような形で記述をしておりますが、この戦略案全体の中では、全体としてトーンをやわらかく、なじみやすいものにするという観点から、特に混乱のおそれがない限りは、シカ、クマという簡単な形でそろえることにしております。
 次、続きまして41ページでございます。3章の目標のところに柱書きを追加をいたしました。これは、前回川名委員の方から、現状、課題、目標、基本方針という全体のつながりが少しわかりにくいというか、しっくりこないというようなご指摘がございました。それを踏まえまして、3章の目標の柱書きとして、その前の1章、重要性と理念を背景として、2章の現状と課題に対応し目標を示すということを書いた上で、この3章で何を書くかということを記述しました。
 それから、同じく川名委員からの指摘に対しまして、54ページ、第4章になりますけども、こちらでも柱書きを追加しまして、2章の現状と課題を踏まえ、3章の3つの目標とグランドデザインの実現に向けて展開していくべき施策の基本方針をここで示すんだということと、ここで基本的視点と基本戦略を記述するということを書きまして、前とのつながりが出るようにしました。
 次は59ページでございます。4章2節の「基本戦略」の中の社会に浸透させる。そのうち地方公共団体、企業、市民の参画のところですけども、59ページの上の方ですが、篠原委員から、地方版戦略というのは、法定計画など義務的なものにしないと、予算とか人材の乏しい公共団体ではどうしても後回しになるというようなご指摘がありました。これを踏まえまして、戦略の中で地方に義務づけるというところまではできませんけども、ご指摘の趣旨を少しでもあらわすために、この59ページの上から3行目末尾のところですけども、地域の特性に応じた戦略を作ることがもとは「必要」とあったものを、ここで「不可欠」という形で、より強い形で書きかえました。
 それから同じ59ページ、同じ段落の最後の方ですけども、これも篠原委員から、取り組みの具体的な事例を示した方が取り組みが進みやすいというご指摘がありました。地方や民間による取り組みは、この戦略の中でもできるだけ具体的事例を入れておりますけども、これから戦略を実施していく上でも、さまざまな取り組み事例を紹介していきたいというふうに考えております。この点は、その下の企業の関係では、取り組み事例の紹介というのは入れておりましたけども、地方のところにも入れました。真ん中あたり、「最近」で始まるところのすぐ上のところですけども、地方の関係でも事例紹介を進めることを、地方版戦略の指針づくりに加えて記述を加えました。それから、地方、民間を通じて広く事例紹介をする杜位は、第2部の関連するところにも追加をしたところでございます。
 以上が1部の関係で追加、修正をしたところですけども、続きまして73ページ2部に入りますが、「まえがき」のところです。前回中川委員から、第1部の方では、国以外の地方、民間などの主体が果たすべき役割が書いてあるけれども、第2部の実施主体は各省だけが出てくるので、第2部の「まえがき」にでも、第2部には国の施策を示しているけれども、地方や企業、NGOの取り組みの呼び水にしたいというような趣旨を記述してはどうかというご意見をいただきました。これを踏まえまして、このページ、「まえがき」の真ん中より少し下、「第2部には約650の」というところから始まるところですけども、前回も、地方や企業、NGOなどさまざまな主体による自主的な取組を促進するというふうに書いてございましたけども、ご指摘も踏まえまして、第2部の各施策に連動する取組を促し、それとの連携を強化するという形で、趣旨を生かすような表現に変えました。
 それから、同じく「まえがき」の中ですけども、1部の基本戦略と2部の行動計画の対応関係がわかりにくいというご指摘を前回岩熊委員からいただきました。第2部の「まえがき」、このページの「まえがき」の最後のところに、1部4つの「基本戦略」と第2部の具体的施策との関係を2部の16の節単位で大きく整理をしたということを書いて、次のページにその表を新たにつけ加えました。2部の16の節単位という大きな単位ですので、○が複数の箇所についておりますけれども、650に対応する細かい施策単位での整理については、今後、点検作業を行っていく中で整理するということも考えたいと思っております。
 なお、第2部の方の整理というのは、5年後、それから10年後の見直しをしていく中でも、内容の充実はあるにしても、基本的な構成は変わらない、いわばベーシックな、基本的な整理であると思っております。それに対しまして、1部の基本戦略の方は、当面取り組むべき重点テーマとして、数も含めて、見直しの際に柱立てとか順番が変わり得るものというような、そういう性格の違いはあろうかと思っております。
 続きまして、修正箇所は159ページでございます。159ページの2部の1章の8節、河川・湿原のところの4.2、市民団体による自然体験活動の推進のところですけども、「現状と課題」の2段落目にあったNGOの連絡協議会RACの関係でございますけども、前回浜本委員から、NGOの全国連絡協議会としてはほかにもたくさんあるのに、ここにだけRACという特定の協議会が特記してあるのは不自然というようなご指摘をいただきました。もともと特別の意図があったわけではありませんけども、ご指摘を踏まえまして、全国各地にはいろんな団体があり、全国規模の協議会も設立されているという形で、一般的な表現に改めました。
 それから172ページでございますが、「沿岸・海洋」の2の「里海・海洋における漁業」という項目名、タイトルの関係で、前回桜井委員から、この節の沿岸・海洋の中の漁業のところで、項目名として「里海・海洋」という言葉が使われているけれども、「里海」という言い方はまだ定着していないし、全国どこでも使えるわけではないから、これは節のタイトルの「沿岸・海洋」にそろえるべきではないかというご指摘をいただきました。これを受けまして、前回部会が終了後に、農水省もまじえて桜井委員とお話をさせていただきまして、その中で、農水省としてはこれから里海という概念を広げていきたいということをご説明をいたしまして、結果として、項目名はそのまま里海・海洋を使うことでもいいけれども、ここでなぜ沿岸でなくて里海を使うかという説明は書き加える必要があるだろうというご指摘をいただきました。それを踏まえまして事務局として整理をしたのが、ちょっと戻っていただきますけども、165ページ、この節全体の沿岸・海洋という「基本的考え方」の中で、三つ目の段落ですけども、「このように」から始まるところです。その2行目、「特に」以下で、沿岸域の中でも高い生産性と多様性の保全の図られているところは里海として適切な保全が必要なことから、この9節では、沿岸・海洋における漁業を「里海・海洋における漁業」と記述したという断り書きをつけ加えました。
 具体的な修正箇所は以上でございますけども、最後に、全体として各施策の指定件数とか面積とかいった数字につきましては、改めて全体を19年11月時点の最新の数字に更新をいただきました。その結果、ご指摘をいただいた重要文化的景観も2件から4件に訂正をしたところです。
 以上が、前回ご指摘をいただいたものに対する主な修正箇所でございます。
 最後に今後のスケジュールを申し上げますが、本日答申としてまとめていただければ、午後には熊谷部会長から大臣に答申を手渡していただきたいというふうに考えております。また、答申をいただいた上で、まだ日取りは確定しておりませんけれども、できれば11月中に政府として三次戦略を閣議決定したいというのが事務局として考えているスケジュールでございます。
 政府としての決定の仕方は、これまで2回の戦略は、総理も含めてほぼ全閣僚が参加する地球環境保全に関する関係閣僚会議で決定してまいりましたが、このたびは生物多様性に関する問題がより重要性を増しているということもありまして、この三次戦略に関しましては、閣議で決定するという方向で調整しているということでございます。
 それから、三次戦略決定後には、ご指摘にもありました用語集、そういうものも含む普及版ですとか英語版、それからパンフレットなどについても、できるだけ早く作成をしたいというふうに考えているところでございます。
 以上で私の説明を終わります。ありがとうございました。

【熊谷部会長】 ありがとうございました。前回出たご意見はほとんど反映しているように思います。また、振り返ってみましても、これまでの先生方のご意見にもよく対応していただいたというふうに思っております。したがいまして、本日のこの答申案でご承認をいただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。よろしゅうございますでしょうか。

【山岸委員】 地球温暖化に関係して、20ページ、21ページのところに、今ごろになって言うのはおかしいんですけど、前に僕指摘してライチョウの話が入っていたと思うんですが、高山帯の。抜けちゃったんですか、どこかで。ないような感じですが。抜いたとしたら、なぜ抜いたのか。僕が休んでいるときかもしれませんが、ご説明ください。

【亀澤生物多様性地球戦略企画室長】 ご指摘をいただいて、いろいろ調べて、入れることも考えたんですけども、いろいろデータとかを示す必要もありまして、ここでは、ここに書いた幾つかの例を示した上で、いろんな例はほかにも研究論文とかたくさんあると思っています。それはそれで戦略策定後も収集をしていきたいというふうに考えております。

【山岸委員】 ご説明はわかりました。きのう着きました「日本鳥学会誌」にライチョウの総説が出て、そこにはっきりそういうのがあります。それで、これを見ると、例えばコムクドリの繁殖が早まるとか、ヒシクイが分布が拡大して、だからどうしたんだというような話ですよね、これ。それよりも、ライチョウの問題なんていうのは、今後何年かたって、今の率で温度が上がっていくと、どうなって、何%ぐらい個体群が減るだろうという重大な指摘ですからね。これよりははるかに僕は大事だと思いますが。あとは意見です。

【熊谷部会長】 はい、ありがとうございました。今のご意見に対しては何か。前半の事務局のご説明については理解をしていただいたんですが、ご意見として今の。

【山岸委員】 その意見について、ごらんになっていますか。きのうのきょうですから、見ろと言っても無理なんですが、もしも見られたら、これで必要と考えられたら、入れるべきではないかと僕は再度思います。外したのが論文がないという理由ならば。

【熊谷部会長】 はい、計画課長、お願いをいたします。

【渡邉自然環境計画課長】 小委員会の議論のときに、山岸委員から、今ご指摘のよう例示を追加することも検討してほしいということをいただいて、パブコメで出た意見も含めて、何らかの形で追加を、パブコメでまとめた例示より足していく方向で考えたいというようなお話をして、ライチョウのことも含めて、あとパブコメでいろんなご指摘がありました。事務局として調べたのもあったんですけれども、その中で足したのは、マガン、ヒシクイの関係がパブコメで意見としてあったものですから、例示として加えようというときにこの例示を選んだわけですけれども、今の最新報告のご紹介もあったので、それについては情報を入手して、最終的に政府決定をしていく際に反映できるかどうかということも含めて、ちょっと検討させていただきたいと思います。

【山岸委員】 結構です。

【熊谷部会長】 はい、ありがとうございました。それでは、ほかに何かございませんようでしたらば、いかがでしょうか、こんなところでご承認をいただきたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。
(異議なし)

【熊谷部会長】 はい、ありがとうございました。それではご決定をいただきました。ありがとうございました。
 時間はまだあるようでございますので、ここに至るまでのご感想や、あるいは今後の戦略の実施に向けてアドバイスなどをぜひお聞きしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。和里田委員、お願いをいたします。

【和里田委員】 短期間にここまで立派な計画をおまとめになられたと非常に敬服いたしておりますが、この計画は、ある意味においては、国にしろ、地方公共団体にしろ、NGOその他の行動にしろ、よく知っている人たちが行動する事柄で、これに基づいて歯車が動いていくということなのかもしれませんけども、この過程において、何度か話もしましたけども、やはり、1億人の個々の国民の日々の行動が生物多様性の問題を大きく左右するんじゃないかというふうに思います。特に最近モラルが低下していると言われているこの我が日本国ですから、なお必要だと思うんですが、日常の生活の中で何をしなきゃいけないのか、何をしてはいけないのかというような事柄を、いろいろな課題ごとに、盛りだくさんな形で、また論文形式で示してしまったら、全然わからないわけでありますが、政府広報ですとかいろんなメディアを活用しながら、いろんなケース、ケースごとにわかりやすく示していただくことが必要なんじゃないかと思います。
 特に今回の計画では、生物多様性をよくわかっていただけるようにということで、「いのちと暮らしを支える生物多様性」というような形でかみ砕いて書いておられるわけですが、それを踏まえて、じゃあ我々は何をしたらいいのか、どうしなきゃいけないのかというのは必ずしも見えてこないんじゃないか。現実に私も、1週間に二、三度、家内よりも早く家に帰ったときには食事当番をやっているんですけども、食材の選択から料理の過程等、いろいろ間違っていることをしているんじゃないか。生物多様性という観点からも気になることも多々あるいはわけでして、そういうことに至るまで、いろいろ環境省が国民を指導していくということが必要なんじゃないか。それは各省行政にかかわるということもあるかもしれませんけれども、まず基本的に環境省が情報発信していくということ。
 それは、ある意味においては、生産から流通に至るまでの産業、経済におけるいろいろなシステムをも左右するものにもつながってくるかと思います。そういう意味では、各省の産業政策その他とも結びつくかと思いますけれども、もうここへ来て待ったなしという状況の中で、国民個々がどうすべきなのか、産業界がどうすべきなのか。産業界がNGO活動でお茶を濁すということじゃなくて、生産から流通までの過程の中でどうしなきゃいけないのかということも多々あると思いますので、そういうものをこれから、計画ができたということを踏まえて、環境省はニシアチブをとって進んでいっていただきたいというふうに思っております。

【熊谷部会長】 はい、ありがとうございました。複数ご意見がおありのようでございますので、また、失礼ですが、順番にご質問、ご意見をいただいて、それから事務局からまとめてご返事をさせていただきたいというふうに思います。
 それでは、岡島委員、高橋委員、山極委員、鷲谷員委員、そして森本委員の順でとりあえずお願いをしたいと思います。岡島委員、よろしくお願いいたします。

【岡島委員】 はい、ありがとうございます。大変立派な戦略がまとまってよかったと思います。一言だけ申し上げたいんです。毎回というか、こういう大きなことがあるときいつも申し上げているんですけど、環境省自然環境局に、野生生物、動物は結構です、大変いいことだと思いますけれども、もう何人かの委員の方にも申し上げているんですけど、今一番の絶滅危惧種は野山で遊ぶ子供たちじゃないかと思うんですね。ですから、多様性国家戦略なども大変な作業ですから、少ない人員で大変だと思いますけれども、今回は特に一般の人たちにもわかっていただきたいというようなことが掲げられておりますので、施策として10年来言い続けているんですけども、自然ふれあい体験、今回は体験学習も入れていただきました。大変ありがたいんですが、具体的な施策としてぜひ効力のあることを一歩でも進めていただきたい、そう思います。以上です。

【熊谷部会長】 はい、ありがとうございました。それでは引き続きまして、高橋委員、お願いをいたします。

【高橋委員】 二つほど希望ですけれども。一つは、内容的にすごくわかりやすいし、皆さんの意見の修正をされて随分よくなったんだろうと思うんですけど、特色というのは二つの部に分かれているということですね。第1部と第2部で。第1部と第2部の内容というのは、どうしてもすごい齟齬を感じるんですけれども、例えばよくマスコミなんかで取り上げられる第2部の批判として、目標値とか行動計画がないとかいうことがあるんです。それも一つのことなんですけど、もう一つは、私個人的に、行動計画そのものが的外れなものがかなりあるんじゃないのかなという気がします。
 私がここで言いたいことは、今回1,000に及パブリックコメントが寄せられてきた、この重みを何とか今後もずっと持続できないかということなんです。前回どの程度パブリックコメントをいただいたかわかりませんけど、例えば国立公園の指定や何かではほんのわずかなパブリックコメントしか来ないのに、今回1,000を超えるものがあったというのはすごいことだなと思いました。ただ、これは、この場しのぎで忘れられていいものではなくて、今後5年間、次の戦略がつくられるまでに、常に何か牽制をするような形で盛り込めないのかなという気はします。
 例えば、これから点検作業をずっとやられると思うんですけれども、単に施策と国家戦略案の内容だけのそごとか、それに応じた行動がどれぐらい進んでいるかということだけではなくて、国民の視点とどれぐらい乖離しているかということをそのたびに検証してはいかがかなと思います。例えば私が幾つか要望を出したこと、全部取り入れられていないわけですけれども、でも、パブリックコメントを見ると、かなり共通したことをおっしゃっている方がやっぱりあるわけです。そうなると、実際の省庁のやっていることというのは、言い方は悪いですけど、国民的視点から見るとピンぼけの施策であると言われても仕方がないところが多々あるんだろうと思います。そういうところを、今後計画を進めていく段階で、本当にパブリックコメントに対応できているかというような、そういう仕組みづくりが何かできたらいいなという、これは勝手な発想なので、単なる希望ですけれども、そういう気持ちがあります。
 それから、今回、多様性国家戦略を形づくっていく上で、いろいろな団体でまた戦略について論議をされたと思うんですね。例えば農水省では多様性戦略を出しましたし、学術会議でも、先日見せていただいたような立派な答申をいただいているわけで、それにかかわっている委員の方がここにいらっしゃるので、実際、今回まとまった国家戦略とそれぞれの戦略との間でどういう位置関係がある、どういう齟齬がある、あるいはどういう今後の将来的な展望があるか、何か意見をいただける場があってもいいんじゃないか、あるいは、そういうものをまとめていただいて参考にするというのも必要じゃないかなと思うんですけど、この二つです。

【熊谷部会長】 はい、ありがとうございました。それでは、山極委員、お願いをいたします。

【山極委員】 まず、これまでのご努力に関しましては、大変いいものができたということで、お礼申し上げたいと思います。
 私、今ご意見がありましたけれども、1,000に及ぶパブコメを全部読んできたら、なかなかおもしろいと思いました。一つだけわからないところがあって、それは人材の育成なんですね。私、研究を通じていろいろ現場にかかわっておりますが、例えば新しく国立公園ができても、鹿児島県の口永良部島が今回国立公園に編入されましたけれども、全くレンジャーがつかないという状況ですよね。パブコメの中にアクティブレンジャーについての処遇改善の要望がございましたけれども、一体だれが責任を持って国立公園の管理運営及びさまざまな地域住民の意見を収集していくのかという点については、余り改善されていないという気がいたします。
 一つは、専門家の育成も大事ですけれども、地域住民の環境に対する関心を高めるためには、むしろボランティアをふやす、あるいは学校教育と連携して、子供たちの活動を通じてさまざまな環境保護の取り組みをやっていくということが必要なんですが、現状では、実は地域活動というのは少数の人にかなり集中していまして、しかもプロジェクトが、市町村レベル、県レベル、国レベルと、さまざまに同じことが違う名前で行われているのが現状です。これでは、多くの人を巻き込んで、同じキャッチフレーズのもとに、正しい理解のもとに環境に対する関心を高め、保護活動を実践していくということはできません。それに対する抜本的な改革が私は必要だと思うんですが、今回の実行計画、実施計画の中には余りそういうきれいな絵が見えません。私、先回欠席いたしましたので、そういう質問をすることはできませんでしたけれども、これは実践面で、今後なるべく新しい政策をつくり、実施していただきたいと思います。
 環境省がこれだけ強いイニシアチブを持ってさまざまな計画を立てておられるのですから、それを浸透させるような、各省庁との連携だけでなく、市町村レベルにまで浸透するようなことをぜひやっていただきたい。これは要望でございますが、よろしくお願いいたします。

【熊谷部会長】 はい、ありがとうございました。それでは、鷲谷委員、お願いをいたします。

【鷲谷委員】 感想と、それから先ほども学術会議の分科会についての言及もございましたので、その点について発言させていただきます。
 今回完成した第三次国家戦略は、現在の社会全体の意識や認識から比べると、かなり高い志を示すものになっていて、世界にも誇れるものではないかと思っています。ですけれども、だからこそかもしれませんが、5年間で実現していくとなると、かなりの努力が必要になると思うんですが、成果をしっかり上げていくためには、この戦略づくりに関与したということは、社会全体の平均から見れば、ずっと生物多様性にかかわる事柄をよく理解している個人とか主体の役割というのは大変大きいものではないかと感じています。
 前文に各主体の役割というのが書いてあって、まさにそのとおりだと思うんですが、社会においては大変マイナーな存在なので、こういうところに取り立てて書き込まれるようなことはないんですけれども、こういう分野にかかわりのある研究者や研究者コミュニティーの役割というのも極めて大きいだけではなくて、責任も重いものだと思っています。
 学術会議の自然環境保全再生分科会がこの問題について審議を重ねて、その結果を文章にまとめて提出させていただいて、かなりの部分取り入れていただいていますし、これからこの戦略を実行していくに当たってぜひ考慮していただきたいこともたくさん書き入れてあるんですけれども、それにとどまらず、分科会としては、この戦略の中に書き込まれたことのうち、研究者、科学者がまず頭を使わなきゃいけないようなことに関しては、すぐにでも審議を始めたいと思っています。
 それが、まず一つは総合評価ですね。生物多様性総合評価、これを科学的、客観的に進めると同時に、生物多様性にかかわる活動はすべてそうだと思うんですけれども、科学と参加を旨とするということがとても重要だと思いますので、今、生態学等の科学の先端の技術を使う評価であると同時に、広く国民の皆さんが参加できるような評価というのはどういうものであるかということで多少考えておりますのは、参加型の生物多様性モニタリング。これは既に環境省なども基礎調査のときにそういう形で実施していることもありますし、NGOでも、NACS‐Jが、長年自然しらべという形で、たくさんの皆さんが参加するような生物多様性のモニタリングを実施していますし、私どもの研究室などでもそういうプログラムの研究などもしているんですけれども、認識を高める、実際に使えるデータをとるだけではなくて、何かライフスタイルの中に新しい要素を組み込むという意味も大きい。というのは、参加してくださる方がとても生き生きとモニタリングしてくださるものですから、そういうようなことと、それから科学性をどう両方組み合わせながら評価をしていったらいいかというようなことも考えていきたいと思います。 
 それから、自然再生に関する意見については、今後戦略を具体的にしていく中で、自然再生に関する法律がちょうど5年目を迎えるということもありますし、学術会議の中でまだこれから議論することもあるのではないかと思っております。
 ちょっと長くなりましたので、このあたりにしておきたいと思います。

【熊谷部会長】 はい、ありがとうございました。それでは、引き続いて森本委員、お願いをいたします。

【森本委員】 立派な答申で、よく読めばすべて書いてある感じなんですけども、強調しておきたいのは、いろんな省庁なり主体なりステークホルダーの連携と、それから統合的な取り組みなんだろうと思います。近視眼的に何か一つだけオーケーという形では、逆にまたほかに問題も出てくる。そのときに、一般の方を巻き込むことの大事さのときに、結構いきものが指標になって、いきものにまず目が行って、いきものの保全というのは大変大事だということなんですけども、それよりも、生息地というか、ハビタットの整備がもう少し広い意味では大事であって、ハビタットを整備しようというので、いろいろ事業があったりするんですけども、実はハビタットをつくっているプロセスの方が、より長い目で見ると持続可能性に大事だというような面が出てきますね。
 そういう統合的な取り組みをどうやって具体的な現場でサポートできるかというのが大変大事で、そのためには、連携とかいろんな情報を共有できる環境をうまく整備していくというのが必要なんだろうなと。里山関係のいろんな取り組みを見ていて、例えばそういうことを思います。
 例えばオオタカという種の保存法で指摘が一つ出てくると、それだけに目が行って、ハビタットとか、プロセスとかに目がなかなか向きにくいという、そういう面もあるので、これからここを浸透させていくときに、うまく理解を得るには、ただ大事ですよということをわかってもらうのは、いきもののレベルと、ハビタットのレベルと、長い時間のレベルが必要だという、そういうことがあると思います。
 それからもう一つは、本当に循環可能な生物多様性の状態というのは、いろんな努力の成果でもあるんですけども、経済的にうまく自立しているというか、文化的に持続可能だという、そういう前提があると思うんですね。今回、閣議決定ということ目指しておられるということは大変いいことで、単にいきものに取り組む省庁だけではなくて、経済活動を主に担うところ、それから財務活動、融資、クリーンディベロプメントメカニズムみたいなものを例えば流域レベルでもう少し考えると、生物多様性みたいなものの保全がうまく進む可能性もありますね。
 大事だと言われながら、統合的取り組みとか連携というのはだれも否定しないんですけども、いざどう進めるかということになってくると、議論百出で進まない。十手取り縄式の規制か、あるいは倫理観に頼るか、こういう話になりがちなんですけども、これから中身を実践していくに当たっては、どうやって社会の中で受け入れられるものにするかという、その取り組みの工夫が要るなと。これはみんなで考えて、新しい社会をつくっていくような、新しい文化をつくるようなものかなというのが感想です。

【熊谷部会長】 はい、ありがとうございました。それでは、引き続きまして、中村委員、西岡委員、三浦委員、それから石井委員、森戸委員の順でご意見をちょうだいしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。中村委員、お願いをいたします。

【中村委員】 すべて出席していただきたいわけではないので、この立派な冊子ができるまでの過程でいろんな議論があったと思うんですけども、最初の会議のときに、先ほど委員から意見も出ていましたけど、一般の方々に知られていないということが随分問題視されていたと記憶しています。例えば北大の学生に言っても、この言葉自体ほとんど知らないのが現状です。ただ、仮に「新・生物多様性国家戦略」という言葉を知らなかったとしても、実際には、例えば3つの危機がどこにどういう形であるのかということがわかれば、私はそちらの方が重要だと思います。言葉自体を、それ自体が理念としてわかったとしても、より具体的な行動を起こせるような、そういった議論がない限り、この5年後においても同じような結果になってしまうんじゃないかということを危惧していました。
 いろんな議論の中で、私は、3つの危機を地図化したらどうかという発言をしたのを覚えています。それが今回の冊子の中で42ページにきちんと書いていただきました。大変私としてはありがたいなと思いました。「生物多様性の危機の状況を具体的に地図化し、危機に対する処方箋を示すための診察記録として活用する」というふうに書いてあって、ぜひともこれを5年後を目指してやっていただきたい。できれば、今現状の地図を早くつくって、5年後、その危機が少なくともいろんな施策を打つことによってある程度少なくなっていくというような、そんな状況ができるとすごくいいなと思います。
 実際には、地図ができることによって、例えば北海道では今どんな問題が起こっている、九州ではどんな問題が起こっているのかということを具体的に地域が知ることができて、地域ごとの取り組みができるんじゃないかなと思います。自然再生も、一般の地域の人たちには余り知られていません。なぜやるのかということ自体もまだ通じていないなという感じすらします。そういう意味では、より具体的な行動を起こすためにも、そういったマップができるということは、将来に向かって一歩踏み出せるんじゃないか。
 どちらかというと、危機のマップというのはネガティブなマップになってしまうんですけど、これは、逆の軸で言うならば、保全すべき場所をある程度明らかにしていく。危機じゃない場所といいますか、自然がまだ残っている場所もあらわしていくということで、それは、今後の開発に対しても先行的にそこを保全すべきじゃないかということを打って出られるというふうに思います。これは当然環境省だけではできないことで、対象とする生態系によって各管理する省庁が変わってくると思いますので、ここの議論の中でも、データベースの統一化といいますか、いろんな官庁がいろんな調査をされてはいるんですけども、それが生物多様性という形でまとまっていくと、なおすばらしいなという感じがします。5年後にそういうものができて、より具体的な行動が見えてくることを希望しています。以上です。

【熊谷部会長】 はい、ありがとうございました。では、西岡委員、お願いをいたします。

【西岡委員】 西岡でございます。温暖化の研究をやっている者から言いまして、今回一つ節を設けていただいて、温暖化のことについて書いていただいたのは非常にありがたく思っております。
 お願いは、多様性がいかに人間にとって重要なのであるかということについての説明をぜひみんなにわかりやすくされてほしいということで、それが一つと、それから、先ほど鷲谷さんからもお話がございましたけれども、国民を巻き込んだ、いってみれば早期警戒警報みたいなものをぜひつくっていただきたいというぐあいに思っております。
 今、温暖化の状況というのは、ここにも書いてございますけれども、昔は10年で0.2度ぐらいの温度上昇というのはいろんな意味で生態系に問題があるなという話があったんですけども、最近そういうことは余り明快には言われておりません。既にそのレベルに達しているわけですね。レベルでいって、あと10年あるいは20年たつと、EUの言うところの2度にすぐ達してしまうという、非常に緊迫した状況に私はあると思っているんですけども、ところが、既にあちこちの生態系が壊れているという話をIPCCも書かれているにもかかわらず、案外皆さん目をつぶっているところがありまして、また3度、4度上がったら種の絶滅30%ぐらいになると言われても、ほとんど、ここにいらっしゃる方、あるいは野生生物や生物多様性に関心のある方以外は、それがどうしたという反応になってしまうんですね。
 これから、洞爺湖の話も含めまして、本当に削減しなきゃいけないというこれまでの話から実行に移ってきたときに、今、抑制側の方がおっしゃるには、とてもそんなに抑制できない、今の生活をひっくり返してまで抑制することはできない、だからこれだけまけてくれないか、3度でも4度でもいいんじゃないかという話に今移りつつあるんですね。それが私非常に心配しておりまして、そこの最後の突っ張りといいましょうか、そういうものが多分この多様性の問題に私はあると思っております。
 食糧はどうなるか。食糧は何とか、2度、3度でも儲かるところもあるからというようなことで、そういう話はなさるんですけども、多様性が重要であるから、それをどう守らなきゃいけないかということになると、いや、鳥というのはみんなアダプトするから、まだ大丈夫じゃないか、そういう話になっちゃうんですね。そういう意味で、私のお願いは、先ほど申しましたように、ぜひその大切さということをいかにみんなに知らせるか、あるいは、そのことを計量的にといいましょうか、そういう形で示すことについても今後大いに努力していただきたい。
 それから、先ほど申しましたように、既にいろんなところで変わっているような様相が、我々の集めたデータではあるんですけれども、モニタリングシステムを国民の参加でぜひつくっていただいて、早期警戒システムみたいなものをつくってもらいたいなと思っております。以上です。

【熊谷部会長】 はい、ありがとうございました。三浦委員、お願いをいたします。

【三浦委員】 第三次の生物多様性国家戦略の策定に当たって、二つばかり要望したいというふうに思います。
 小委員会の検討等ずっと参加してきた中で感じたことでありますけれども、この国家戦略は、第一次のものは、種の保存法みたいなものに結実していったという、そういうものを持っているわけですね。それから新・国家戦略は、外来種法とか、それから再生法という格好で結実させていったということで、そういう点で言うと、この第三次というのは一体制度的な整備でどういうところをターゲットにしているのかというのが、もうひとつよくわからない。恐らく、これまで環境省がとってきた多くの施策そのものに全部やっぱり、特に外来種法等はさらなる強化が私は必要なのではないか、全部を点検しながら、もうちょっと進めていく必要があるんではないかなというふうに感じます。
 そういうことを考えていきますと、この戦略の中でも、先ほど地方版戦略といったようなことを促している。これは、そのものはとてもいいことだというふうに思うんですが、現状のこの政策を地方に下ろしてきた段階で、ちょっと言葉を選ばずに言えば、余りにも地方にお任せという格好のところがあって、現状の地方というのは、生物多様性なんかの枠組みはほとんど考慮できないような状況で、お金がないということですね。それから、先ほどの人材がいないということと、もう一点は、今回ここで問題にされてきた中身は、県境をまたいでいるようなかなり広域の問題がある、そういう状況だと思うんですね。そのことを考えていくと、今回の多様性、これを実行段階に進めるときに、すべてが分権のレベルでいいかどうかというところは、もうちょっとコミットとしていく必要があるんではないかなというふうに思います。
 これについては、山極委員もお示ししたように、人材の問題とか、それから、広域計画をもう少し国主導でできるような、そういうふうに転換していく必要があるんではないか。そういうものを同時にここで見直せるように、強く要望したいというふうに思います。ありがとうございました。

【熊谷部会長】 はい。それでは、石井信夫委員、お願いいたします。

【石井(信)委員】 はい、ありがとうございます。感想と、それから要望を述べたいと思うんですが、今回のこの新しい国家戦略というのは、私が気がついたところですけれども、考え方の大きな変更を迫るというようなことが三つぐらいあると思います。
 一つは、54ページにも出てくるんですけども、二つを含んでいますけれども、科学的認識と予防的順応的態度ということですね。これは、前の戦略では後ろの方についていたんですけれども、1番目に出てきているということです。まず予防的ということは、科学的な証拠が完全でないから対策を延期するというようなことはしないで、積極的に対策をとっていくんだと。これまでは、確実性がない場合は、何もしないで、とりあえず様子を見てみましょうというような考え方もあったわけですけれども、そうではないんだということが明確にされているわけですね。これは、私が直接かかわっている仕事なんかでいいますと、外来種の防除ですとか、それから、ニホンジカが生態系に及ぼす影響の管理、こういうところに使える概念だと思っています。
 それから、2番目ですけど、順応的ということは、これは言葉はやさしいですけれども、今やっているいろんな政策とか方針、それがどこで失敗しているか、あるいはどこで間違っているかということを、当然そういうことが起こり得るものだということで、常に積極的に見つけようという態度だと思うわけですね。そのために、モニタリングを通じて常に有効性をチェックしていくということが求められるわけです。これも、今までみたいに政策とか方針というのは基本的には間違いがないものだというような考え方から、大きく変わってくるものだと思います。こういう言葉がこの戦略の中に入っているということは、私も幾つか多様性保全にかかわるような仕事をしていますけれども、大変ありがたいと思いますし、重い言葉だというふうに考えています。
 それから、3番目に気がついた点は、これも今まではどちらかというと、自然を守るというときには、なるべくさわらないようにして、利用というのも最小限にしていくのがいいんだというようなか感じがあったわけですけれども、戦略のあちこちには、場合によっては積極的に自然に干渉していくんだ、里地・里山の管理なんかがわかりやすいと思うんですが、場合によっては資源利用を通じてそういうことをやっていくんだ、そういうことが多様性の維持につながるんだという考え方が入っていると思います。そういうふうにかなり大きな考え方の転換を迫るような概念というのが盛り込まれている戦略だと思います。多少我田引水に使わせてもらうような場面もあるかと思いますけれども、私はそう考えるわけですね。
 そういう概念が、かなり重要な概念が含まれているんだけれども、第2部の具体的施策にどれだけ反映されているかということを見ると、まだまだいろいろ改善の余地はあると思います。これからこの戦略を使っていろいろな実践が始まるわけですけれども、今私が述べたことがそのまま同意されることではないかもしれませんけれども、考え方の意味合いがより今後明確になっていくということを期待しますし、そういうことが今後の新しい戦略にも反映されていくということを期待したいと思います。以上です。

【熊谷部会長】 はい、ありがとうございました。それでは、森戸委員、石坂委員、山岸委員、そして中道委員の順でお願いしたいと思います。よろしくお願いいたます。

【森戸委員】 感想はほかの方と重複するので、時間がもったいないですから省略して、ちょっと質問をさせてください。
 先ほど、今回の国家戦略は閣議決定ということでレベルを格上げするというお話がありました。そういう大事な国家戦略をこれからどういうふうに推進していくのか、組織とか体制のことをちょっとご質問したいんです。役所のやる気というのは組織と予算で決まるという。そういう意味で聞いているわけではないんですが、そういう気持ちもないことはないということでちょっとお聞きしたいんですが、環境省の担当は、この名簿を見ますと、生物多様性地球戦略企画室というところでやっている。国家戦略というよりはちょっと広い地球戦略ということでやっているんですが、この組織は、これから格上げするという表現は悪いんですけど、何か新しい仕組みで進めるようなお考え方があるなら、ちょっとお聞きしたい。今までと別に変わらないというなら、それでも結構です。
 それから、省庁間の連携ということが非常に強調されているんですけども、何か新しい連携するような組織みたいなものを考えておられるのか。今までいろいろご苦労されて、いろいろ調整した連絡をやられていたんですけれども、恒常的に戦略を進める上で何か省庁間の組織をつくられるのかどうか。
 それからもう一つは、地方公共団体とか、あるいはNGOといいますか、市民団体とか、それから企業とか、事業者とか、そういういろんな団体とも連携するということなんですが、先ほどもちょっと出ていましたけど、やはり環境省がイニシアチブをとる部分が必要で、みんなお任せというわけにもいかないというお話も出たんですが、団体と連携するような組織体制のようなものは考えておられるのか。あるいは個別に対応するのか。それから、そういう人たちが一堂に会するような会合とか、あるいはイベントとか、何かそういう推進する仕掛けみたいなものを考えておられるのか。これは多分国家戦略に書き込む話ではないと思うので、そういうお考えがあれば、お聞かせいただきたいなと思います。以上です。

【熊谷部会長】 はい、ありがとうございました。石坂委員、お願いをいたします。

【石坂委員】 ありがとうございます。この戦略は1部と2部から成っているわけですけれども、この1部というのは、戦略の考え方とか、理念とか、哲学とか、そういったものを述べている部分ですけれども、その深まり、深さですね、それと新しい事情を踏まえた書きぶりというふうなことで、前戦略よりはかなり進歩したものになっていると思います。
 この第1部の部分は、これからの5年間だけの理念、考え方、基本方針ということではなくて、かなり永続性のあるものだと思うんですね。これはもちろん、5年たったところでもう少しリフレッシュをしてさらにということはあると思いますけれども、その根幹を成す部分はそう変わりようのないことが書いてあると思っておりますし、それゆえに、この多様性国家戦略というものをみんなに知ってもらうとか、あるいは国民全体のいろんな行動につなげていくという上において、この第1部の考え方なり基本方針というものを広く浸透させていく。あるいは、PRをしていくということになるのかもしれませんが、それが極めて大切なことであるというふうに思います。
 そういう意味で、こういう戦略なり基本計画をつくりますと、すぐに最初の年からフォローアップということが始まるんですけれども、それもちょっとおかしいので、最初の年はフォローアップじゃなくて、できたこの戦略というものをいかに国民の皆さんに浸透させるかということに精力を使うべきであって、フォローアップはその後の話だと思うんですね。したがって、まずは、そうした国民への浸透と。地方が地方版の国家戦略をつくるべきだというふうなことがこの中に書いてありますけども、そういう地方への浸透ということも含めまして、これを広く知ってもらうということに全精力を注ぐべきだと思いますし、そういう企画等をつくり、またそういう予算をとっていくべきであろうというふうに思います。
 第2部は、これは現時点、それから近い将来見通し得る時点での行動計画しか書かれていないわけで、書かれてあることを実行するのは当然のことでありますけれども、さらに、この5年間の間に新しい展開というものをどんどんつけ加えていってほしいということを要望したいと思います。

【熊谷部会長】 はい、ありがとうございました。それでは、お待たせしました。山岸委員、お願いをいたします。

【山岸委員】 まず、この膨大な第三次の生物多様性国家戦略をつくるのにご苦労さまでした。私も、時々資料を持っていって、研究所に置いておいて、所員に見てもらうんですが、非常に評判がよくて、高い評価を得ています。それはやっぱり、頭の部分が非常に格調が高くなったということと、アクションプランが、まだこれでは足りないと言う方もいらっしゃるんですが、前よりはよくなったということだと思います。その上で、今石坂委員の国民の浸透ということに関係して、私から三つお願いしたいと思います。
 一つは、閣議のレベルに上がって各省庁連携するというんですが、一番連携してもらいたいのは文部科学省じゃないかと思うんです。文部科学省の学習指導要領にどうしてもこの生物国家戦略というものを取り込んでもらう。そして、義務教育なり高校教育の教科書にきちんと位置づけてもらうのが、まず第一に国民に浸透を図る方法だと私は思います。ちょっと高校の教科書を調べる機会があったんですが、残念ながら皆無だったと思います。さっき中村先生から、言葉だけ教えてもだめだという意見もあったんですが、そういうものがあるということぐらいはやっぱり教科書に載せてもらいたいものだなと私は思います。これが1点です。
 2点目は、非常にいい国家戦略ができたんですが、この国家戦略そのものと事業をやるときのものがちょっと乖離しているような気がします。例えば国土交通省が多自然型河川をやるというようなときにも、結局はこの国家戦略にのっとっているわけなのに、それは全く表には出てこない。もちろん、国土交通省が生物多様性を保全するために川をつくるなんて言えば、怒られますので、この川をつくっているのは、後ろの方でもいいんですが、最後の方でもいいんですが、国のこういう生物多様性国家戦略にのっとっているんだということは、その都度国民に言っていかないと浸透していかないと思います。これは国土交通省だけに言えるんじゃなくて、環境省の事業にしても、例えばトキの野生化とか、アホウドリの移住とか、自然再生とか、自然公園の保全とかいろいろあるんですけど、それすらこの生物多様性国家戦略の中に位置づいたこういうことをやっているんだという宣伝なり位置づけというのが足らないような気が僕はします。
 三つ目は、これは非常に漫画みたいな話なんですが、生物多様性の保全を国民に知らせるには、祝日をつくって、生物多様性の日をつくってもらって、みんなで休んでしまう。これは非常にいい方法ではないかと思います。以上です。

【熊谷部会長】 はい、ありがとうございました。それでは、中道委員、お願いをいたします。

【中道委員】 私は割に早い時期からこれに関係させていただきまして、事務局のこれまでのご苦労よくわかっております。本当に敬意を表したいと思っております。立派な計画できましたので、今後各分野でこの施策を実行することになるだろうと思います。中でいろんな議論が出てくるだろうと思いますけど、この計画で一番私優れているなと思っているのは、そういう実行する際に統合的な考え方でやろうということを示されたというのが非常に大きいだろうと思うんです。統合的というのは非常に難しい言葉で、具体的にどういうふうにやるかというのは難しいんですけど、言えることは、今まで環境問題が二項対立的にとらえられた、そういう問題ではないということは事実だろうと思うんですね。それからもう一つ、総花的ではないという感じだと思うんですね。総花的でないということは、例えば多様性の3つの危機を言っています。第1、第2、第3、圧倒的に第1が大きいわけですから、いろいろ実行する場合には第1をどうするかということが基本になっていくだろうと思うんですね。
 そういう意味では、二項対立的でない、総花的でない、総合的でない、何だというと、やはり私は、そういう議論や検討をするときに視角をはっきりさせる、それから、どういう方向に持っていくという展望をはっきり言う。展望をどう言うかということははっきりしているわけです。地球環境問題をどうするか。生物多様性もその一つですから、地球環境問題をどうするかということに展望をそろえて、どういう視角で議論するかということが大事ではないかなと思います。
 本当に、重ねて皆さんのご努力に敬意を表しまして、終わります。

【熊谷部会長】 はい、ありがとうございました。いかがでしょうか。篠原委員、お願いいたします。

【篠原委員】 よくできている。要望も取り入れてもらったので、今日は黙っていようと思ったんですけど、いろいろ話が出ましたので、一言だけ。
 各省管轄といったらいいのか、各団体で、それなりの専門家を対象に研修とか講習会というのをやっていますよね。環境省の講習会にも時々出させてもらっていますけど、国土交通省の国土交通大学校とか、あるいはコンサルタントとか設計事務所の職員を対象にした講習会とか、いろいろありますね。多分こういうのは環境省管轄ではやっていくんでしょうけど、国土交通省の研修なり講習会、あるいは農水省関係の研修会なり講習会に、一こまでもいいから生物多様性に関するこま数を入れてもらって、環境省の人が出ていってしゃべる。どこかで聞いたことがあれば、やっぱり何かやるときに引っかかりますから、ぜひともそういうことをやられるといいんじゃないかなと今思いました。

【熊谷部会長】 はい、ありがとうございました。それでは、磯崎委員、お願いをいたします。

【磯崎委員】 この戦略が、生物多様性条約の方から考えたときにも、定期的に、そして全面的に3回にわたって改正されてきているというのはほかにないかと思いますので、そういう意味で、国際的に、あるいは条約の観点からも高い評価が与えられるかと思います。
 それから感想で、これまでにほかの方々から出た意見とほとんど重複するんですが、一つだけ。第一次、第二次と比べて内容が非常に広範になってきているという点は、評価する方向ではあるんですが、もう一方で、生物多様性という概念がわかりにくいというのがあった上に、さらに広くなってわからないという方向へ来てしまわないかというちょっと心配があります。
 具体的には、例えば環境基本計画であったり、そのほかのものと重複する分野がふえてきているんですが、生物多様性の持っている本来の意味からして、そこまで広がってくるのは当然なんですけれども、先ほどの、これから国民の間へ浸透していったり、または実際に動かしていくという段階で、ほかの環境関係の、または経済開発、あるいは農業や国土関連のものとのかかわりでどうなのかということと、それから、同じように取り上げられる分野、またはこの戦略の中でも、第2部では、かなりたくさん環境以外の分野の事業計画なども入っているんですが、それを生物多様性の方から見て、同じ事業、それから同じ分野の事柄であっても、生物多様性という観点から見てどうなのかという、その光の当て方だと思うんですが、それをどうやって確保していくのかというのが重要だろうと考えています。

【熊谷部会長】 はい、ありがとうございました。いかがでしょうか。森戸委員、まだございますでしょうか。よろしいですか。大変貴重なご意見あるいは今後のいろいろなサゼスチョンをいただきまして、ありがとうございました。
 総じて、前回よりもかなりグレードアップをしているというご評価はいただいたというふうに思っておりますが、すべてのご意見、ご質問にお答えするのは、多分、今、現段階では事務局からも大変だと思いますので、お答えできる範囲、特に今後のご質問に対して何点かございましたので、その辺についての考え方と、それから、ご意見の出ました何人かの先生方に対して、幾つかにまとめて、現段階で事務局の方から発言をしていただければと思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。それでは、渡邉計画課長、お願いいたします。

【渡邉自然環境計画課長】 大変重要なご指摘をありがとうございました。幾つか現時点でお話しできることをお話ししたいと思います。
 まず、多かった点として、社会への浸透というのに力を入れるべきだと。和里田委員、石坂委員、山極委員、多数からいただいたと思います。消費者としての性格も含む国民が具体的にどんな行動をしていったらいいのか、あるいは企業が具体的に多様性保全のことでどう活動したらいいのか、この辺戦略にも盛り込んだところですけれども、いきものにぎわいプロジェクトというようなことで名づけまして、そういった、政府だけじゃなくて、地方や民間や国民がともに立ち上がるような、具体的な行動につながるような形の提案というのをまとめていければというふうに思っています。
 岡島委員からあった子供たちが大切だというところ、学校教育の面での充実ということも今回書き込んだところですけれども、身近なところから山岳地まで、いろんな場所での体験学習ということをプロジェクトとして動かしていければというふうに思っています。
 それから、高橋委員からありました今後の点検のあり方、国民の視点を入れた評価のあり方。今回国家戦略をつくる過程で、前回とは変えて、審議会に諮問する前に地方で説明会を開いたり、審議会に諮問する前にあらかじめの意見を聞くような機会を設けたりもしました。そんな形で、今後この第三次戦略策定を受けて、今度は点検ということになりますけれども、その中でも、国民の声をそういう点検の中でもどう生かしていくか、事業展開の中でどう生かしていくかというようなところは、いろんな工夫をしていけたらなというふうに思っています。
 人材育成の大事さというお話もありました。国立公園のレンジャーやアクティブレンジャーのこともありましたけれども、国立公園でいえば、そういった職員、スタッフの増強とあわせて、地域協働の公園管理運営体制づくりというのが大きな課題だと思っていますし、多様性保全の現場で、専門家の人の関与も含めた多様な人材で支えていく、そういうネットワークの体制づくりというのをぜひ力を入れたいなと思っています。
 鷲谷先生からは、学術会議の今後の動きをご紹介いただきました。総合評価あるいは自然再生ということで、引き続き学術会議でも議論いただけるということで、この国家戦略に向けての提言でも、私たちも参加をして意見交換をさせていただくような形で、この戦略づくりに反映してきたんですけれども、総合評価や自然再生の今後の展開に向けても、学術面からの支援、サポートというのをぜひいただきたいし、私たちとしても生かしていければというふうに思っています。
 森本委員、中道委員からは、統合的なアプローチの大事さというご指摘がありました。この戦略で掲げた国土全体の自然の質を高めていく、森から海までのつながりを確保していく、そういったことを進めていく上で、やはり、社会経済的な側面からのアプローチもあわせてやっていくことがとても大事かなと思っています。
 そういう国土全体の自然の質を高めるという上で、中村先生から3つの危機の地図化の話がございました。どこの地域でどういうことが問題になっているのかということを国民の人も含めてみんなが共有することができるような情報提供というのが、具体的な行動を起こしていく上でとても大事かなと思っていまして、今回提案をしました総合評価の中で、そういった危機の状況の地図化ということも取り組んでいけたらなというふうに思っています。
 温暖化と生物多様性のリンク、関連ということで、西岡委員からいただきました。ここは今回の戦略でも力を入れたところであります。今後、この戦略の具体化に向けて、温暖化の対策と生物多様性の対策を、ばらばらではなくて、結びつけながら両方が進むような、そういったことを、国民へのアピールということも含めてぜひやっていければというふうに思っています。
 地方戦略づくり、さらにその研究をまたいだ広域計画づくりというご指摘もありました。三浦委員からいただきました。地方版戦略については、任せるということではなくて、地方版戦略づくりの効果的な進め方、そういったことを地方と一緒に手引づくりというのを進めていきたいと思っています。実際に幾つかの自治体で、千葉県をさきがけとして動きが出ていますので、そういった動きをぜひ全国に推し進めたいと思いますし、広域ブロックでの計画づくりというのは、これは県境を越えて県にも参加してもらいながら、関係省庁で、例えば生態系ネットワークの具体化をするための地図化といった作業も広域レベルでぜひ進めていければなと思っています。
 それから、森戸委員からはご質問という形でいただきました。いろんな体制はどうなっているのかということでありました。まずは環境省の中での体制ですけれども、今まで自然環境計画課というところでこの戦略づくりをやってきました。ことしの4月からそれを強化しようということで、地球戦略企画室というのを新しく組織として立ち上げたところです。国内の戦略づくりと国際的な多様性条約への対応、それを車の両輪としてやっていこうというようなことで、新しい室をつくったということであります。その辺の機能の拡充というのは今後さらに考えていきたいと思っているんですけれども、省庁間の連携に関しては、従来から、関係省庁の国家戦略づくり、あるいは国家戦略の点検のための連絡会議というのがあります。今9府省が参加していただいているんですけれども、今回の戦略づくりを通じて、さらにまだ入っていない府省に参加をしてもらうということで、そんな動きになっています。
 政府の間の連携はそういうことなんですけれども、民間、企業やNGOとどういう連携でというところであります。冒頭申し上げたいきものにぎわいプロジェクトというのをこれから動かしていこうと思いますが、社会に浸透させるためのいろんなアイデアを出し、それを実施していくためのプロジェクト、それをどんなことをしたらいいのかということを検討していく行政と民間のパートナーシップの委員会、数十人から100人規模ぐらいの委員会を設置できないかなということを考えています。そういった民間のさまざまなアイデアも入れながら、社会に浸透させる取り組みを、提案だけじゃなくて実施も担ってもらえるような官民のパートナーシップ委員会というのをつくっていきたいと思っています。
 きょうはご欠席ですけど、経団連の大久保委員からも、経団連自然保護委員会として、この多様性の問題に経団連としても今後さらに力を入れていく、経団連の中にもチームを設けて、行政と意見交換をするような機会をつくっていこうというような話もしているところでございます。
 そんなところで、いただいたご意見について踏まえながら、今後戦略の実施に向けて力を入れていきたいと思っています。
 磯崎委員から、この国家戦略の見直し3回目をつくるのは世界でも初めてかもしれないというご意見がありました。まだ戦略をつくっていない国も一部あったり、見直しがされている国、2回の見直しをした国というのはまだまた少ないかと思っています。多様性条約の議論の中でも、各国が情勢の変化に応じて国家戦略を改定をしていくということは、多様性保全のための重要な取り組みだという位置づけで、各国の国家戦略づくり、あるいは見直しを進めることを重要な課題として掲げています。そんな問題認識で、条約事務局が、世界の各地域に国家戦略づくりを進めるワークショップというのを年明け以降計画がされています。1月にアジア地域でそういった国家戦略づくりのワークショップが行われる予定で、ぜひ日本のこの国家戦略見直しの経験というのは、そういう場でも各国に伝えていければというふうに思っているところでございます。
 ほかにもいただいた意見、大切な意見として受けとめて、今後の実施に当たって生かしていきたいと思います。どうもありがとうございました。

【熊谷部会長】 はい、ありがとうございました。本日の段階でお答えできる範囲で事務局から回答をしていただきました。まだいろいろとおありかと思いますが、このあたりで本日の議論は終了させていただきたいというふうに考えております。
 なお、「てにをは」を含めた表現ぶりの変更等については、事務局の環境省と私、部会長に一任していただけたらと思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。また、本部会で取りまとめました答申は、本日の午後、環境省において私から鴨下大臣にお渡しする段取りを整えていただいております。委員の皆様方には、答申取りまとめにご尽力をいただきまして、大変ありがとうございました。改めて御礼を申し上げます。
 では、以上をもちまして、自然環境・野生生物合同部会を閉会といたします。本日はありがとうございました。
 なお、中央環境審議会の運営方針に基づきまして、本日配付の資料、議事録は公開することになっておりますので、どうぞご了承をお願いしたいと思います。
 それでは、最後に、桜井自然環境局長からごあいさつをいただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

【桜井自然環境局長】 生物多様性国家戦略の見直しにつきまして、本日答申をまとめていただきまして、大変ありがとうございました。
 4月の大臣からの諮問以来、6回の小委員会と、本日を含めまして3回の合同部会を開催していただきました。この間、地方公共団体、あるいは企業、NGOなどからのヒアリングのほか、パブコメによりまして幅広く国民のご意見をお聞きし、何よりも委員の先生の皆様方のそれぞれのご専門の立場からご指導をいただくことができました。おかげをもちまして、第三次国家戦略案は、現行の戦略に比べましてよりわかりやすくなったのではないかというふうに考えておりますし、地球規模の視点、あるいは地方や民間の参画といった点でもより幅が出たものではないかというふうに考えております。
 ただ、いずれにいたしましても、きょういろいろご指摘をいただきましたように、戦略という文章をつくっておしまいというものではございません。むしろ、この答申をおまとめいただいたところがゴールではなくて、私どもにとりましてはこの三次の国家戦略のスタートになるわけでございまして、実施に当たって数々の課題あるいは問題点まだたくさんございます。先ほど来ご指摘いただきましたような点を、よく事務局におきましてもそしゃくしながら、今後の国家戦略の具体化に努めてまいりたいというふうに考えております。
 最初にも申しましたように、今月下旬には閣議決定という方向で今準備を進めておるところでございますが、この戦略が今後5年間の生物多様性の保全と持続可能な利用に関する施策を展開していく上でのよりどころになるのはもちろんでございますが、この三次の国家戦略を実施していくに当たって、特に、生物多様性国家戦略に関する国際的な議論、来年度の我が国で開かれますG8サミット、あるいは2010年の生物多様性条約の締約国会合など、我が国がその開催を立候補しているわけでございまして、生物多様性について、国際的な議論の中で我が国が果たしていく役割が非常に大きくなってくるというふうに思っております。また、そういう中で、この国家戦略が、世界に我が国の立場を積極的にアピールしていくという際のよりどころになっていくものというふうに考えております。
 最後になりましたが、大変お忙しい中、4月から11月までの8カ月にわたり、集中的かつ熱心にご議論いただきましたことに感謝申し上げたいと思います。今後、この戦略の実施に当たっても、引き続きこういった審議会の場だけではなく、今回の戦略においては、各省庁の施策も含めてたくさんの具体的な行動計画を掲げておるところでございまして、これらの実施に当たっては、いろんな局面で委員の先生方のご指導、ご協力を引き続き賜りたいというふうに思っております。きょうは本当にありがとうございました。

【事務局】 4月以降開催してまいりました国家戦略の見直しに係る合同部会は本日で終了でございます。答申の取りまとめ、ありがとうございました。まとめていただいた答申は、本日午後に、熊谷部会長から鴨下環境大臣に直接手渡していただくこととしております。
 それでは、事務連絡といたしまして、本日配付の資料につきまして、郵送をご希望の方は、封筒にお名前をお書きの上、机に置いておいてください。事務局から後刻郵送させていただきます。
 それでは、本日はどうもありがとうございました。