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中央環境審議会総合政策・地球環境合同部会
 第22回施策総合企画小委員会 議事録


平成17年11月4日 午前10時00分 開会

○鎌形環境経済課長 おはようございます。ただいまから施策総合企画小委員会を開催いたしたいと思います。
 それでは森嶌先生、よろしくお願いいたします。

○森嶌委員長 本日は2つございまして、1つは、先日、10月25日に環境省が公表いたしました環境税の具体案についてご議論をいただきます。これは前半約1時間を想定しております。
 それから、2番目に、ドイツからお招きしております環境NGOのグリーン・バジェット・ジャーマニーの会長をしておられますドクター・ギョレスさんから、ドイツの環境税の改革についてお話を伺いたいというふうに思っております。ギョレスさんは、日本で、今ドイツ年をやっておりまして、今年と来年にかけてのドイツ年のシリーズでありますが、それに関連して文化の日の前、いろいろなイベントに参加をして、今回、きょうの会議にもご出席いただくことを快諾していただきました。
 本日の会合は、おおむね12時までということでございますので、それぞれ1時間を予定しておりますので、よろしくご協力いただきたいと思います。
 それでは、まず、最初の議題でございますが、資料1について事務局からご説明をお願いいたします。鎌形さん、よろしく。

○鎌形環境経済課長 それでは、資料1に基づきまして、環境税の具体案についてご説明いたします。このほか参考資料といたしまして、横長の資料で「環境税について」、平成17年11月、環境省というものがございます。ご参考までということで幾つか適宜データなども入れ込んだ資料でございますので、ご活用いただければと思います。ご説明は資料1に基づきましてさせていただきます。
 10月25日に環境省といたしまして、環境税につきまして、環境省の具体案を公表させていただきました。これまで、この施策総合企画小委員会を初め専門委員会などなどで、さまざまな議論をいただいてまいりました。そういった議論の状況も踏まえまして、私どもとしての案を作成して公表したということでございます。年末の税制改正論議に向けて議論をいただきたいと、こういうことでございます。
 1ページ目でございます。基本的な考え方でございます。今回の具体案を作成いたしました背景でございますけれども、地球温暖化問題につきまして、昨年と異なるという点がございます。それはこの2月に京都議定書が発効したということ。これによって6%の削減約束が、我が国の国際的義務となったということでございます。そして、これを受けまして、この4月に京都議定書目標達成計画を閣議決定して、目標達成に向けた道筋を示した。これが昨年と違った状況ということでございます。
 そこで、この京都議定書目標達成計画でございますけれども、この計画はご承知のとおり、6%削減を達成するために、どういう対策を積み上げていったらいいのか、例えばクリーンエネルギー自動車の導入とか、あるいはコ高効率給湯器の導入とか、具体的な技術、機器、設備につきまして、具体的な台数あるいはそれに伴う削減量というものを示して、これを積み上げていけば、これを実行すれば、6%削減の約束が達成できるという、こういう道筋を示したというものでございます。
 その中で、具体的な対策は示されているということでございますけれども、それをどうやって裏づけて、実際に実現していくのか、実施していくのか、こういったことが引き続き課題となっているということでございます。
 その意味で、京都議定書目標達成計画の中にも、環境税につきましては、真摯に総合的な検討を進めていくべき課題、とこういうふうな位置づけも明確にされてございます。そういう意味で、この計画に位置づけられた対策をより一層確実に実施する、そういうために環境税は必要なものだというふうに、私ども考えまして、具体的な案を提案申し上げたところでございます。
 1ページ目、一番目の○でございますけれども、環境税の考え方でございます。これは昨年来、基本的には同様の考え方ということでございます。二酸化炭素の排出量に応じて、幅広い主体からご負担を求めるということ。そして、広く国民に対して温暖化対策の重要性についての認識を促す。それから価格の効果などを踏まえまして、排出量の削減を推し進めていくということ。そして、あと目標達成計画の実施に当たって、必要な安定的財源の確保にも資する、こういう点を環境税に期待しているというものでございます。
 それから、2番目の○、中長期的な意味合いでございます。こういった環境税という価格のシグナルによって誘導していくという仕組みを、経済社会の中に組み込むことによりまして、国民のライフスタイルなどを改革していく。あるいは環境技術を進めていく。そういった中で新しい社会経済を具体化していく、こういう手法だということでございます。
 そういう位置づけのもとに、今回の環境税を構成するに当たっての考え方でございますが、3つ目の○でございます。環境税の税収につきましては、森林整備、保全や家庭、企業の省エネル促進などのうち、緊急性が高い対策に用いる、こういうふうなコンセプトでございます。昨今の原油価格の高騰など、さまざまな状況を踏まえまして、できる限り絞った形の規模の税にしようという考え方です。現在、既存の予算で申しますと、従来、地球温暖化対策大綱の関係予算、あるいは今回18年度要求のベースでは、京都議定書目標達成計画関係予算ということで、直接削減に効いてくる予算は、政府全体でおよそ5,000億円ということを、先日もご報告申し上げたところでございますけれども、こういったものに加えて、さらに緊急性が高い対策という意味での、そういった対策に税収を充てていこう、そのための税を構築するという考え方です。
 それから、税の仕組みの構築に当たりましては、最近の原油価格高騰などの状況も踏まえたということでございます。後ほど具体的にご説明申し上げますが、国民の負担、あるいは産業の国際競争力への維持、こういったことへの配慮、それから、さらにインセンティブ効果を追求するという意味で、一定の削減努力をした企業に対して軽減措置なども工夫する、というような工夫をしているということでございます。
 それから、最後の一番下のところでございますけれども、現在、特別会計や特定財源のあり方についての検討が行われています。こういったところで、2点に関しまして環境税の新設とあわせて、でございますが、2点につきまして要望をしてございます。
 まず地球温暖化対策の観点から、税率の水準の問題でございます。揮発油税、その他エネルギー課税などの環境負荷に関連する諸税でございますが、暫定税率も含めた税率の水準がございます。前回もご報告いたしましたけれども、例えば、この暫定税率というものを廃止したという場合には、COの排出量が延びてしまう、こういうことをご報告申し上げました。前回ご報告したのは、長期的には基準年比1.8%増ということが試算されたわけでございます。こういったことが温暖化対策の観点から、暫定税率の水準を含んだ税率水準は維持していただきたいと、こういう要望を私どもとして、させていただいております。
 それから、もう1点でございます。温暖化対策、先ほども申し上げましたけれども、相当規模の費用が必要ということでございます。今回、この提案でいたしておりますのは、緊急な対策に絞っているということでございますので、それで確保できるのはその限りということでございます。そういう意味で特別会計、特定財源の改革に際しましては、その財源を温暖化対策にも充てるということを要望したいということでございます。
 次に、2ページ目で、提案いたしております具体的な環境税の仕組みについてご説明申し上げます。まず、課税対象、課税段階でございます。すべての化石燃料に対しまして、広く薄く、かつ炭素量に比例してご負担をお願いする、こういった考え方がまず基本でございます。そして、その課税段階につきましては、化石燃料の流通さまざまであるということ、あるいは主要の形態がさまざまということで、ここでは3つに分類した課税の仕方を提案させていただいております。主に家庭、オフィスで使用される化石燃料、ガソリン、LPG、灯油でございます。使用の場面は非常にご家庭まで含めて多岐にわたっております。そういう意味で、徴税コストなども配慮いたしまして、石油精製会社からの蔵出し段階、いわゆる上流課税ということとさせていただいております。
 それから、[2]、主に事業活動、工場を中心に使われる化石燃料、石油、天然ガス、重油、軽油、ジェット燃料と挙げてございますけれども、これらにつきましては、主として産業に使われるというものであって、大口排出者による申告納税ということを提案させていただいております。逆に申しますと、小さい規模の企業につきましては、課税されないということでございます。この大口排出者のラインにつきましては、省エネ法で燃料の使用量などの届け出義務がかかる水準がございます。いわゆる熱管理工場というものでございますけれども、原油換算で年間1,500キロリットルの水準で裾きりの基準にしたいというふうに考えてございます。
 それから[3]でございます。電気ガスの扱いでございます。発電所あるいはガス製造者におきまして使います化石燃料に対する課税という形にしてございます。昨年は、電気ガスは消費者にご負担いただくという前提で構成しておりました。その場合、例えば電気でありますと、発電の構成、石炭火力なのか、あるいは重油をたくのか、天然ガスなのか、あるいは原発、風力とさまざまございますけれども、こういったさまざまな電源構成でありながら、昨年の場合は一律の税率というものが想定されていたわけでございますけれども、今回、炭素量に比例した課税というものを徹底するという意味で、発電用燃料、あるいはガス製造用原料に課税するという形にしてございます。ということで、燃料に応じて税率は変わってくるということです。
 以上が原則でございますが、その下に(注)とございます。ガソリン、軽油、ジェット燃料の扱いでございます。昨今の原油価格の高騰といった状況、それから既存税負担の状況ということでございます。既存税負担の状況に関しまして申しませば、ガソリン、軽油、ジェット燃料、それぞれ揮発油税、軽油引取税、航空機燃料税という個別の燃料課税がかかってございます。これを含めますと、この税の負担の水準というのは、この3つの燃料につきましては、販売価格の中に占める割合でございますけれども、現状で申しますと3割5分から5割弱というところで、ほかの燃料種に比して高い水準にございます。こういった状況などを踏まえまして、当分の間、適用を停止するというような扱いにしてございます。
 それから、(2)、税収額、税率でございます。先ほども申しましたとおり、研究に必要な温暖化対策に必要な規模にしていくという、そういう意味で絞っていくということを申し上げました。そこで税収額は約3,700億円という規模で設定してございます。この3,700億円でございますけれども、先ほどのガソリン、軽油、ジェット燃料の課税を停止している、そういう前提のもとでの試算でございます。
 これに相当する税額でございますが、下にございます税率は炭素1トン当たり2,400円ということになります。石炭の税率は平均で1キログラム当たり1.58円、発電用燃料の課税につきましては、電気に換算すると、これは全部一律にならせば1キロワット当たり平均で0.25円となります。先ほど申しましたように発電のやり方によって、税の税率は変わってくるということでございます。
 それから、ガソリンについて、でございますけれども、当分の間、停止ということでございますが、その停止が解除された場合、適用がされた場合には、1リットル当たり1.52円ということになります。
 それから、3ページ目に参ります。ご家庭の負担ということでございます。以上のような課税によりまして、ご家庭では、例えば電気、ガス、灯油、LPG、こういったものが使われているものでございますけれども、これをすべて全世帯平均したというところで試算いたしますと、1世帯当たり年間約2,100円、月額約180円ということになります。これもガソリン、軽油などを課税停止した時点での数字ということでございます。
 それから、(3)税負担の減免措置ということでございます。国際競争力の確保等々の事情に配慮した軽減措置ということでございますが、昨年に比して、若干すっきりさせた軽減措置ということで、3点設けてございます。1点目は、大口排出者の削減努力への配慮ということでございます。先ほどの大口排出者に対する課税ということで、石炭、天然ガス、重油、軽油、ジェット燃料というものがございました。これにつきまして一定の削減努力をした場合には、5割軽減するということ、そして、さらにエネルギー多消費産業に属する企業、エネルギーコスト比率の高い企業というものでございますけれども、それにつきましては、さらに1割軽減率を上乗せして、都合6割軽減ということでございます。この一定の削減努力ということにつきましては、具体的な基準を定めて、例えば排出総量を削減するとか、あるいは排出原単位を改善するとか、こういったものを、例えば過去5年で何%とか、そういったものを定めて、それを達成した企業を評価して軽減する、こういった仕組みを設けたいというふうに考えてございます。
 それから、2番目の点でございますが、鉄鋼等製造用の石炭、コークスなどということでございます。この、いわゆる原料炭といわれる範疇に入るものでございますけれども、鉄鋼などの生産量そのものに直結する使用の仕方ということで、ふだんのエネルギー使用に効率化というのが非常に困難なそういった部類でございます。こういったものにつきましては、諸外国の事例も参考にしつつ免税という扱い、昨年もこのような形にさせていただいておりました。
 それから、3点目、灯油の扱いでございます。ご家庭で広く使われ、かつ寒冷地での使用が非常に多いというものでございます。地域間隔差などもございます。上流課税ということで、個別の配慮というのは困難ではございますけれども、全体として格差を少しでも縮めていくというような趣旨から、一律税率を2分の1の水準にするというような扱いにさせていただいてございます。
 それから、税収の使途でございます。全額を地球温暖化対策として森林の整備保全、自然エネルギー等の普及促進、住宅ビルの省エネ化などに用いるということでございました。昨年環境省から提案させていただいたときには、一部社会保険料など、企業活力の維持向上のために用いるんだというようなご提案をさせていただきましたけれども、今回、緊急に必要な規模に絞るということもございまして、さまざまな議論も踏まえながら、全額を充てるというような提案としてございます。
 それから、もう1点でございます。今回の税収の使い道といたしましては、ここにございますように、地球温暖化対策を支援する税制優遇措置の財源、つまり減税財源にも充てようというようなことでございます。できる限り、こういった減税財源にも充てるということを通しまして、政府の歳入歳出規模を単にふやすということではなくて、スリム化を図っていきたいというようなことでございます。
 こういったことで、税収は特別会計に入れるとか、特定財源にするということではございませんで、一般財源として、温暖化対策を充てていく工夫をする、こういう形を構成したいというふうに考えてございます。
 それから、地方公共団体との関係でございます。地方公共団体では、さまざま身近なところで温暖化対策に取り組んでいただいております。そこで、今回の環境税収につきましても、税収の一部を、地方の対策に充てるために地方公共団体に譲与するというようなことを考えてございます。具体的にどれだけの額を、どういった基準で配分していくかということは、今後の議論に応じて検討していきたいというふうに考えてございます。
 それから実施時期でございます。“温暖化対策待ったなし”でございまして、2008年からの第1約束期間まで、あと3年ということでございますけれども、そういうことで、できるだけ早くという要請がございます。ただ、新しい税ということでございますので、準備の期間も要ります。それから昨今の原油価格の高騰といったような状況も踏まえまして、平成18年度税制改正での対応ということでございますが、平成19年1月からの実施ということの提案でございます。
 以上が、今回の提案させていただいた仕組みでございますけれども、これに基づきまして環境税の効果、影響はどれだけかということでございますけれども、私どもの試算では、この税収を使うことによる温暖化対策の促進効果、あるいは税を課すことにより増す化石燃料の価格上昇に伴います価格効果によりまして4,300万トン程度、基準年比3.5%程度の削減が見込まれております。現在、さらに、まだ精査しているというところでございます。
 経済への影響について、でございますけれども、現在、モデルを回して試算中ということでございますが、昨年の環境省案では、税率は同じ炭素1トン当たり2,400円でございまして、これをもとに計算したときに、GDPにいたしまして、年率0.01ポイントの減ということでございました。昨年はガソリン、軽油などの課税停止措置というものを含まない形での試算でございました。今回も、先ほど申しましたとおり、現在試算中でございますけれども、同じような規模になるのではないか、というふうには推察しているというところでございます。
 それから、4ページ目でございます。4ページ目は炭素1トン当たり2,400円という場合の各燃料の税率ということでございます。石炭であれば1キログラム当たり、灯油であれば1リットル当たり、重油も同じくということでございます。以下、そのような形での税率を並べております。
 それから、5ページ目には、先ほどご説明いたしました家庭のご負担についての内訳でございます。全体で年額2,100円ということでございますが、灯油、LPG、都市ガス、電力に分けた場合にどうなるかということでございます。
 それから、最後の6ページ目は、税収の使途についてのイメージでございます。ここに森林、家庭、企業、自然エネルギーなど、あるいは地域レベルということで、先ほどご説明した内容が具体的に書いてあるということでございます。
 簡単ですが、私どもからの10月25日に提案いたしました環境税の具体案についてのご説明とさせていただきます。

○森嶌委員長 鎌形さん、どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまのご説明につきまして、ご質問ございましょうか。鳥井委員、どうぞ。

○鳥井委員 何点か申し上げたいと思います。
 まず、第1点目が、非常に上流課税になっているということで、しようがないのかなという側面は大いに認めつつも、こういうやり方をするとすれば、アナウンス効果をきちんと発揮させる、その特別な仕組みというのを、本気で考える必要があるというのが第1点でございます。
 第2点目なんですが、三千何百億かのお金が入ってきて、それで対策を立てるということですが、一般論でいいますと、国の予算というのは非常に無駄に使われるような仕組みでなされているというのが現実だと思うんです。主に単年度予算というところから、それが来るわけですが、せっかく新税をつくるのであれば、そこについても何か非常に効果的に使えるような仕組みというのを新たに提案をして、財務省に認めてもらうという、そこのしっかりした努力が必要かなという感じがします。
 3番目であります。いずれ将来、国内での排出権の取引というようなことが起こるかもしれない。それとの絡みについてどう考えるのかということについて、明確な説明が必要だというふうに思います。
 最後であります。森嶌座長が、さんざんここの役割と役所の役割ということについて分けて考えるべきだ、ということをお話をされています。現実的な対応としては理解できないわけではありませんが、このやり方が社会に対して説得力があるかというと、若干疑わしいという気がいたします。
 一般論で考えますと、審議会のあり方の根幹にかかわる議論でありまして、ここが税の専門家集団であるかどうかわからないわけですが、審議会というのは、社会の中で専門性を大事にしていこうという、政策の中に専門性を取り入れていこうという、そういう試みだというふうに理解するとするならば、その専門性を無視して政策をつくるということ、小泉政権は非常にそれを大変得意にされているような気がするわけでありますが、そこの説明の仕方というのを、もう少しちゃんと考えないと、何だ専門家って要らないんだね、という風潮に結びつきかねないというところを心配いたします。
 以上であります。

○森嶌委員長 最後の点については、私の方で後でお答えいたしますが、1番目と2番目は、ご注文ということですので、それでは、順番として、あるいは私が順番を間違えているかもしれませんが、今のところ、小林委員、久保田委員、天野委員、永里委員、平松委員と、その後、また申し上げますので、その順番で、当面、ご発言いただきます。それでは、小林委員、どうぞ。

○小林委員 私の方からは環境税につきまして、結論でございますが、早急なる導入を望みたい。近年の気候変動等によりまして、国民の関心は大変高まっているというふうに思います。今回の環境省案につきましては、小ぶりという問題、それと多方面への気配りがあり過ぎるということから、本来の環境税の考え方から見ると大変不満はある。これはさておきと思いますが、ただ、今年のクールビズの盛り上がりなんかも考えますと、環境税の導入というアナウンス効果というのは、大変大きく期待できるのではないかなというふうに考えます。税率とか、税収の低さ、使途の内容、他の税との調整等々、大きな課題は大変あるわけでございますが、とりあえず、という言い方は悪いかもわかりませんが、低いレベルで、とりあえず導入し、そのアナウンス効果を働かせていくということが重要ではないかと思います。その後、いろいろな課題につきましては、一つ一つ解決していくというやり方で、十分、物事は進んでいくのではないか。
 私自身思うんですが、これは大変失礼な言い方ですが、今までの国の政策というのはよくありますが、検討する、検討する、時期尚早という議論の繰り返しをしていって、結局として時期を遅れてしまって、結果としてその効果が薄れてしまうというようなことがよくあるわけです。そういう意味からいきますと、早急なる実施というのを望みたいと考えます。
 もう一点、一番最後のこの章にありますが、経済影響という問題が書いてあるわけですが、課税することによる影響と、課税したことによるアナウンス効果で省エネが進んでいって、それで経済が一部停滞することがあると思うんです。それによる効果というのを十分見極めてやらないと、地球温暖化対策をすること自身が、経済には一部影響が出て当たり前な話で、それを課税による影響というふうに見違えないように、ぜひお願いをしたいと思います。
 以上です。

○森嶌委員長 久保田委員、どうぞ。

○久保田委員 労働組合の立場で何点かご意見申し上げたいと思います。
 まず、今回の環境省が発表された、この環境税案に対するコメントという意味からしますと、去年と同様の言い方しか、今、労働組合としてはできないのかなというふうに思っています。環境省の苦労なり、苦悩といいますか、それは痛いほどよくわかるんですが、ある意味で国民的議論といいますか、そこまで行き着いているか、あるいは煮詰まっているかという点については、否定的な見方をしております。
 先ほど、どなたからかのご意見もありましたけれども、国民的土俵といいますか、そういうレベルの議論の煮詰まり方は進んでいない、それから3つ目に、政府の中で、まず、省庁横断的に統一的な見方といいますか、共通認識ができ上がっているのかというような観点からしても、“急がば回れ”という言葉もございますが、粛々ともう少し、国民的土俵の上で議論を詰めていくという作業が必要ではないかという意味で、そういうこととは別に環境省が責任を持って出されたということについては、コメントのしようがないというのが率直なところです。
 一方で、地球温暖化対策との関係性を、もう一度しっかり焦点を当てることは必要かなというふうに思っています。短期的には第一約束期間の6%削減というものが、いかに大変か。2004年の速報値も出されたようでございますが、温室効果ガス削減の7.4%を0.5%まで下げる、約1億トンの削減をどう実現できるのかということが、この税なり経済的措置がどこまで効果を持つのかというような観点も必要です。それから、森林吸収源のことが非常に言われていますけれども、実は3.9%削減というのは非常に大きな量にもかかわらず、全く見えていない。これはこういう税を入れるか入れないかにかかわらず、一般予算措置も含めて、一体どうするのかということについては、さっぱり道筋が見えてこない状況が続いているのではないかという感じがいたします。今回の税の提起の大きなウエートに森林吸収源というのがありますけれども、これについてはさらに踏み込んで、一体国としてどうするのかということを、環境税の導入とは別の視点で、徹底的に詰める必要があるんじゃないかという問題意識を持っております。
 もう一度、国民に選択肢を広く提示をしながら要は幅広の入り口といいますか、一度整理をきちっとしていく必要があるのではないかと思います。合わせ技のあいまいさみたいなものが一方である。、価格インセンティブ効果なのか、財源効果なのか。限りなく財源効果の方にどうしても近づきつつあるような印象もいたしまして、そういう意味ではそもそもの税のあり方、税収中立なのか、財源をある程度狙ってのことなのか、というようなこと。まだ税の使途についても、一応労働組合内部では環境目的に絞るべきだ、という考え方に集約していますが、一方で労働組合として過日ヨーロッパにも調査団を出しまして、EU中心に二重の配当、すなわち環境問題だけではなくて、社会保障や年金や、それら全般のあり方等々についても使うという発想が、全く別の角度から、そういう設計図の書き方もあるのかもしれません。個人的表現ですが入り口で全部閉ざしてしまってやるということでいいのかな、というふうに感じております。
 最後に、1ページ目の下に、道路特定財源の関係とか、既存エネルギー税制との関係性のことが少し記述をされています。温暖化の観点で、いま税率を下げることが温暖化対策と逆効果になるということについては、十分重く受けとめるべきだとは思いますが、しかし、既存の税制のあり方ということについては、総合的に見直す時期に来ているのではないかというふうに考えます。
 労働組合としては、特定財源に関連する石油諸税とか、自動車関係諸税のあり方については、前々からずうっと一貫して、一度きっちり見直すべきだという意見を持ってきました。原油の輸入段階から末端まで、非常に複雑に税が課せられている。あるいは消費税導入のときには、廃止もしくは税率調整が行われなかったことから、二重課税のままではないか、あるいはもともと本則税率の2倍以上の暫定税率がここまで続いているということはおかしい、本来の姿をしっかり議論すべきであるという、基本的な考え方は一貫して持っておりますので、税制全体のグリーン化だとか、グリーン税制改革というような視点で、今まで環境負荷を拡大する方向で活用していたものを、環境負荷の軽減ということを内部に取り込む税制のあり方とは何か。あるいは各省庁がそれぞれ権益化し、端的な言い方ですが、そこがまた天下り先のように見られていた、そういう税制というものが、いつの間にか国民も税はとられるもの、そして一たんとられた税は、既得権益化し、いつの間にか本来の理屈とは違う方向でとられてしまうみたいな、税に対する不信感のもとにもなっているのではないか。そういう意味からしても、一度、20世紀型といいますか、これまでのあり方に徹底的にメスを入れて、21世紀型の税体型、あるいは環境に対応する税のあり方ということについて、抜本的に見直すべきではないかというふうに考えておりますので、便宜的に、あるいは目先の短期的対応をするというよりは、本格的な見直しのスタートを切るというふうな姿勢で、ぜひ臨んでいただきたいというふうに思います。以上です。

○森嶌委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、天野委員。

○天野委員 ありがとうございます。
 今回の具体案というのは、京都議定書遵守という1つの目的がありますけれども、私は京都議定書を遵守するというのは、1つの方向であって、実際の温暖化の問題というのは、京都議定書に限定されない、もっと大きな問題であると思います。そういう非常に大きな問題に対する対処のとっかかりのような提案であるというふうに理解しておりまして、京都議定書の達成だけを目的にして、この提案を議論するというのは、少し視野が狭過ぎるのではないかということを常々考えております。
 そういう意味では、環境政策の中で、こういった経済的な手法が導入されるというのは大変画期的なことでありまして、非常に大きな将来の温暖化対策を考えますと、どうしても国民全体の費用がかからないような政策手法の確立ということが求められているわけでして、そういう点からいいますと、今回の提案はそれに対しても大きなインパクトを与えるものではないかというふうに思っております。
 ただ、京都議定書の遵守というのは、先ほど、どなたかおっしゃいましたけれども、急ぐべき課題でありまして、緊急の政策を施す必要がある。それに対しまして、きょうの環境省の政府に対する要望にもありますように、税制改革というのは、もう少し時間をかけて検討するような課題であると思いますので、この両者は必ずしも対立するものではなくて、私はグリーン税制改革も含めて、中長期的な問題として両者を議論する、というスタンスが必要ではないかというふうに思います。
 特に、そういう少し長目のスパンで考えますときには、経済的手法というのが非常に優れた環境政策の手段である、我が国ではそれほど実施をされておりませんけれども、そういう点をはっきりさるためには、同じ環境効果を上げるのに、国民の費用負担が非常に少なくて済む手段である。今日、提出されている意見にもありますように、できるだけ国民の負担の少ない政策を実施すべきであるというご意見もあるようですが、経済的手法というのは、まさにそういう手法なんですね。ですから、そういった点をはっきりさせるためには、環境政策のさまざまな手法の中で、環境税のような経済的手法と、従来型の直接的手法とで、同じ効果を上げようとするときに、どれぐらい費用が違うのかという評価をする必要があると思うんですね。諸外国ではそういう評価がいろいろ行われておりまして、それに基づいて経済的手法が大変優れた手法であるという認識が、国民に受け入れられていると思うんですけれども、日本でも環境政策の政策評価の基本計画というのが策定されて、現にそれが進行中なわけです。その中には政策の必要性、政策の効果、それから政策の費用、この3つを評価しなければいけない。これは事前評価については、特にそういうことを強調しておりますが、残念ながら、経済的手法に関しては、必ずしもそういった費用の面に関する評価を十分行っていない。それが環境政策の理解を妨げている1つの原因ではないかというふうに私は考えておりますが、ぜひ、この点は環境省で実施をしていただきたいというふうに思います。
 それから、3番目、余り大きな点ではありませんが、先ほど来、アナウンスメント効果が非常に大きいと。これは確かにそういう要素がありまして、ですから、今回は平成19年度の1月からというので、少し実施までの期間があります。ですから、もしこの案が具体的に政府の決定ということになれば、確実に、その間、アナウンスメント効果は働くということは考えられます。
 ただ、この審議会でのご議論で、“アナウンスメント効果”と呼ばれているものの中には、もうちょっと広い意味で、“情報伝達効果”、英語ではそういう言い方をして区別をしておりますが、環境政策の中で、こういった非常に大きな効果を持つような手法を導入せざるを得ない状況に、現在立ち至っているという情報を国民に伝えて、国民全体が、その情報をもとに行動するという情報伝達効果というのがありますので、それも政府がこの案を具体化するという決定をすれば生じる効果であります。ですから、そういう意味では、この審議会を含めて、環境省としても、できるだけ、この具体案が政府の決定になるように努力をしていただきたいというように思っております。以上です。

○森嶌委員長 まだ、永里、平松、関沢、武田、先ほど鮎川委員が手を挙げられましたので、大分発言者の数がありますので、なるべくサスティナブルな運営をよろしくお願いをいたします。
 それでは、次、永里委員、どうぞ。

○永里委員 ありがとうございます。
 まず、後で森嶌委員長、お答えなさるということですが、消費税の導入というのでわかるとおり、税金というのは国民の納得というか、コンセンサスを得ながら進めていくものだと思っています。この審議会とか、ほかの省庁でもいろいろな審議会があって、それらの審議会が、まだこれを審議している最中に、環境省の方から新たにこういう提案で出てきていることについては、非常に疑問を感ぜざるを得ない。要するに、国民の納得の上で運ばれるものについて、何か拙速のような気がします。
 そのことを、まず言いまして、次に、何かあるたびに新しい税を導入するのは小泉内閣の“小さな政府”の方針に反するんじゃないかと思います。これからの日本は社会保障費等、増加することは見えているわけですけれども、これは否定しようがないんですが、こういうときに、1円のコストでも削減しようとして、地球温暖化対策のために自主行動計画で達成しようとしている産業界にとっては、これまでいろいろ対策を立てて、実際に実行してきているんですが、そういう産業界にとっては、この環境税というのは、いわゆるコストアップにつながっていくわけでして、何のために自主行動計画をしているのか、しかも、それをちゃんと粛々と行っているわけですから、その辺のことは考慮してほしいと思います。
 そして、鳥井委員もおっしゃっていますが、環境税の使い道については、どうあるべきかということについても疑問を感じています。その辺についてはご説明願いたいと思うんですが、新税のうち、例えば1,900億円を森林の方に充てていらっしゃいますけれども、3,700のうち1,900億円ですね。国のインフラ整備とか、森林の保全、補修というのは非常に重要なんですけれども、このために環境税を導入なさるのだろうかと、ちょっと疑問を感じます。
 そのほか、産業界の細かい話で恐縮なんですけれども、激しい競争にさらされている産業界では、環境税が課せられても、環境税の負担を製品に転嫁するということは、製品価格を上昇させることで、実質上、非常に難しいんですね。今回の案では、原油価格高騰に配慮して、ガソリン等に、いわゆる非課税措置を講じて、結果として税収の大半を電力、都市ガス業界に負担をさせていますが、大半の負担をさせられている電力業界とか、都市ガス業界は、ご存じと思いますが、近年、規制緩和と自由化の進展でもって非常に競争が激化しております。環境税の負担の価格転嫁が非常に難しくなっている、ということについてご理解を賜りたいと思うんです。このような価格転嫁が困難な状況下では、環境省が従来から主張なさっている3つの効果、環境税を負担していることが、広く国民に伝わることによるアナウンス効果とか、環境税による価格上昇が、消費を抑える価格インセンティブ効果が余り期待できそうにないということは、単に産業界だけが負担を増すだけで、実効性が失われるこの環境税の導入については、非常な疑問を感じています。この点に関して、環境省はどうお考えになっていらっしゃるでしょうか。以上です。

○森嶌委員長 それでは、質問は後でまとめて、今の環境税の使途の問題と、アナウンスメント効果を含めた効果の問題ですが。
 それでは、平松委員、どうぞ。

○平松委員 ありがとうございます。何点か手短に、1つの意見として申し上げさせていただきます。
 今回、緊急性のあるものに絞ってということで、お話があったわけですが、現在、地方の現場では、環境省での環境税の論議に非常に注目をしておりまして、どういう方向に向くのか、各都道府県レベルでは、必ず環境基本計画というものを策定しておりまして、中央環境審議会での動きというものに非常に注目をしている。したがいまして、ここでの環境税の論議があいまいになりますと、地方がどういう方向に、今後、通常、基本計画10カ年の計画を立てますので、その辺が非常に不安になるなという感じがいたします。
 それと、仮に、今回、課税の対象にしても、使途にしても、緊急性のあるものに取り組むということならば、今後、戦略的に、当面はこういうものにやっていく、その後、こういうようなスケジュールというわけではありませんが、こういうものに取り組んでいくんだというメッセージを、もうちょっと示す必要があるんじゃないか。そういたしませんと、緊急性のあるものの次に、どういうものに力点を置いてやっていくのか、先ほど、久保田委員からも、国民へのメッセージというものがありましたが、やはり国民に対しても、どんなふうに、今後、温暖化対策に取り組んでいくのか、全体的なメッセージも必要なんじゃないかと、こんなふうに、1点思います。
 それから、もう一点は、今回、エネルギー課税の水準を維持すると。この記述の中に、現行のエネルギー課税が、環境負荷に関連する税の税率の水準を維持するというような規定というか記述になっているわけですが、道路目的財源、さまざま論議がある中で、ちょっとこの辺の記述が、ややあいまいというか、いろいろご苦労された結果だろうと思うんですが、先ほど、久保田委員が言われた道路目的財源あるいは自動車関連の税制というものについて、もっと切り込んでいかなければいけない時期にあるものですから、環境省としても、環境税を、今後きちっとつくるので、現行のエネルギー課税は整理をするなり、そういう方向に持っていくべきではないかと。なかなか言いづらい部分もあるんでしょうが、その辺が思います。
 最後に、先ほど、ほかの委員から、新たな税制をつくるときに国民の納得がいく。これは好ましいことに間違いないんですが、新しい税制をつくるときに、国民の納得がいくということは、何をもってそれが認識されるのか。また同時に、そんな簡単に新しい税制が納得されて進むなんていうことは、多分、日本においては、そんなに容易ではない。あるいは、あり得ないんじゃないか。そういう面では、かなり強いメッセージを出すことによって、あるいはそれをどういうような効果を与え、どういうものに使うということによって、後づけ的に国民の方々に徐々に理解が広まるというようなことがあってもいいんじゃないかと、こんなふうに思います。以上です。

○森嶌委員長 だんだんと、途上国は後から来たからといって、パーキャピタで同じように発展をさせろと、みんなおっしゃるんですけれども、後から浅野委員、大塚委員が出てきましたけれども、それでは、それでは、関沢、武田、鮎川、浅野、大塚委員と、それぞれ出ていますので、どうぞ後の人のことをお考えいただいてご発言いただくようお願いいたします。

○関沢委員 では、簡単に申し上げます。関沢でございます。
 まず第1点は、この手続き論でございますが、ポリシーミックスの活用ということが、目達計画の中でうたわれていて、あり方について総合的に検討を行うということが言われておるんですが、これは政府部内でのコンセンサスを得られているかどうかということは、改めてちょっと確認しておきたい。
 それから、その中身の中で、非常に国民負担や行財政コストを極力少なくするとか、小さくするとか、あるいは関係審議会の意見も全部踏まえて、温暖化対策にかかわるさまざまな政策的手法の検討に留意しながら、国民、事業者などの理解と協力を得るということが目達計画の中でいわれているわけですが、こういった点で、本小委員会における検討も、先ほどお話があったように、きちっと踏まえた上での議論にしたいと思います。
 それから、温暖化対策の財源についてですが、これは既存の予算を活用するということが、まず前提だろうと思うんですが、税制要求をしなければいけないということが、なぜなのか。新税創設による増税によらざるを得ないという理由を、はっきりさせる必要があるんじゃないか。
 それから、産業界の温暖化対策の取り組みについては、先ほどもちょっとお話がございましたが、産業界は非常に多大なコストを負担して、自主行動計画に取り組んでおるわけでございます。これは成果も上がってきておるというふうに認識しておりますが、そういった中で、ここに非常に重点的に上流課税をかけなければいかん、という基本的な考え方を伺いたい。それから、温室効果ガス排出増の原因。これは民生運輸での排出が非常にふえているわけですが、そのための対策が、どうこの税とリンクしているのかということ。それから、環境税の効果でございますが、4,300万トン程度削減とありますが、このうち、価格効果というのは0.5%とお聞きしております。残りはアナウンスメント効果や財源効果と、こう考えていいのかどうかという点。それから、今も現行予算の中で、真水部分が5,000億あるいうことでいわれているんですが、それにもかかわらず減っていないというのはどういうことなのか。今回の税だと、なぜこれが減るのか。こういった点を明らかに説明していただきたいと、このように思います。

○森嶌委員長 それでは、武田委員、どうぞ。

○武田委員 ありがとうございます。
 この案について、いろいろな方からいろいろなご意見がございましたが、いい悪いは別にして、非常に現実に即した二枚腰の案だなと、そういう感じを受けます。
 まず、最初のところの考え方は、環境コストを広く国民に負担してもらう。これは非常に多く納得される部分もあると思います。
 それから、3番目の○の使途でございますが、今までは、余り何に使うというのは明示されなかったんですが、今回はこういう格好で、具体的に、もっとどうするのかお聞きしたいところでございますが、一応こういう使途――要するに財源効果ということですかね――が大枠でありますが示されているということは、理解される余地はあるというふうに思います。
 そういう前提を置いて申し上げるんですが、しかしだからといって、今の状況でこれが納得、理解されるかとなると、なかなか難しい点があると私は思います。今の日本の財政状況というのは、ご存じのとおりでございまして、非常に膨大な財政支出を抱えている。財政構造非常に大変だと、こういう状況になっているわけで、企業でも団体でも政府でも、どこでもそうだと思いますが、危機的状況になったときは、支出を見直すということが、まず大前提だし、国民もそういう意識が非常に強いと思います。政府も、今、そういう旗を掲げているわけです。
 今回の案は、それはそれとしてということで、若干負担してくださいと、こういう負担増の案に妥協的になっているわけでございますけれども、支出構造の見直しを置いておいて、小さくても増税構造になっているということが、企業だけではなくて、国民の多くの人から納得が得られるのはなかなか難しいんじゃないかと私は思います。
 したがって、この支出の見直しのところが、最初に申し上げた二枚腰のところでございますけれども、この4つ目の○の特定財源特別会計、これの改革が行われる場合は温暖化対策に充ててくれと、こういう要望が入っているわけでございまして、この辺がいい悪いは別にして、現実的に全体の税収の中で環境に踏み入れていくんだ、それが必要なんだというのは総意だと思いますので、ここのところをもっと掘り下げてというか、政策的にというか、ウエートを置いて対応するということが、当面非常に大事なことだと。
 税全体の議論は、今、いろいろお話がございましたが、非常に広がりがある議論で、社会保障費とか消費税とか、直間比率の問題とかございますので、非常に時間がかかると思います。したがって現実的に環境に対する財政支出をどのように持っていくのかというところが、まず非常に喫緊の課題だと思いますので、その辺にウエートを置いて運営をお願い申し上げたいと思います。以上であります。

○森嶌委員長 それでは、鮎川さん。

○鮎川委員 ありがとうございます。大変遅刻しまして申しわけなく思っております上に、発言させていただいて恐縮です。
 まず、環境省が、この税の提案を再びなされたということに関しては、非常に評価できると思います。特に地球温暖化対策の上で、経済的措置は欠かせないものだと思って、京都議定書目標達成計画には、その経済的措置がないことが最大の欠陥だというふうに思っておりますので、それはよかったと思っていますが、特に、今、対策がない家庭や運輸部門への効果的な環境税は、そういった意味で効果的な対策だと思いますので、これは非常に重要だというふうに思っています。
 そしてまた課税対象に、家庭やオフィスにおいて使用されるガソリンとかLPG、灯油などが挙げられているということは、はっきりそこに家庭を対象にしているということを明示されていることが評価できるかなと。そしてまた、減免措置のところでは、一定の削減努力をしたというふうに条件がついたということが評価できる点かなというふうに思います。
 ただし、欠点というか、批判的に言わせていただくと、税率が低いので、これではCO排出がコストであるということを、皆様に広く感じさせる税率にはなっていないのではないか。CO排出がコストであるということを、国民の一人一人が全部感じるような税率でないと意味がないのではないかというふうに思います。特に家庭やオフィスにおける、今いった課税対象になっているガソリンとかLPG、灯油が上流課税になっているという点において、どのようにして家庭やオフィスに炭素税がかけられているのか、というふうなことを知らせるのかという方法が、ちょっとわからないので、その辺を教えていただきたいというふうに思います。
 そしてまた、中央のところで「ガソリン、軽油、ジェット燃料などは、原油価格高騰及び既存、税負担の状況などにかんがみ、当分の間、適用を停止する」というふうにあって、その「当分の間」というのはどのくらいの期間のことを意味するのか。そしてまた、せっかく対象になっているのに、ここで一定程度適用停止ということでは、意味がなくなってしまうのではないかという点が懸念されます。
 そしてまた減免措置のところで、「鉄鋼等製造用の石炭、コークス等は免税する。そして、灯油の軽減等を行う」と、ただ書いてあるんですけれども、これはなぜそうなったのかという理由を、もっと明示するべきであり、特に石炭とかは課税するべき対象であり、これを課税しないということは意味がない。そして、灯油も家庭で使われている量が多いということもあって、これも軽減するというと、家庭への意識啓発とか、家庭の部門における意識啓発に結びつかないのではないかということで懸念されます。
 そして、税収なんですけれども、全額を地球温暖化対策にするということは、基本的に増税になるので、税収中立の制度設計を検討してほしいなという思いがあります。そしてまた、温暖化対策の中身も、使途の中身を、もっと精査して明示するべきだというふうに思います。
 ありがとうございます。

○森嶌委員長 浅野委員。

○浅野委員 いつも同じことばかり言って申しわけないんですけれども、まず、これが環境省から出たということについては、森嶌委員長が前もおっしゃっていたように、環境省のお考えでしょうから、それはそれとして、手続きはどうだこうだという議論をする気は全くありませんが、当然わかった上で、こういうことを言っておられるのでしょうけれども、環境税だけで問題が解決するわけではない。つまり、ポリシーミックスということは何人もの委員がおっしゃったわけですが、いろいろな手法の組み合わせの中で、環境税というのはこの部分で特に効くんだということをはっきり言っておかないと、環境税が出れば何か問題が全部解決するというような誤解は大変困るわけですね。そういう誤解の上に立って、他の手法と比べて費用対効果がどうかということを検討しろ、というような議論になってしまうわけですけれども、それはちょっと話が違ってくるんじゃないかという気がしてしようがないわけです。
 それで、改めて考えてみると、自主行動計画でいいじゃないかとおっしゃっているわけですけれども、これは本当はカバー率が十分でない場合にはフリーライダーが出てくると問題があるわけでしょうし、家庭に至っては、そのようなものは全くないわけで、ある意味では完全にフリーライダーということになるわけで、自発的に削減努力をしている者だけが費用負担をするという不公平な状態になるわけですから、そのときには、先ほど鮎川委員が言われたように、家庭やオフィスにおいて使用されるようなもの、ということをはっきり明示して、上流課税というか、多少、手法としてはやむを得ないにしても、どう転嫁するかという問題があるのでしょうけれども、こういうようなことは、公平という観点から見て重要ですし、それから使い道のところの合理性さえ担保されれば、増税ということには必ずしもならないわけで、個人的に全く費用負担して、対策を講じているものに対して公平性を維持できるということになりますから、そこはそうだというふうに思います。
 使途というところで、これがどういう手法と結びついて、使途のところにつながるかということをはっきりさせることによって、税という手法をとりながら、もう一つ他の手法、さまざまな手法と結びつくということになってくるわけです。
 今回の提案は、余りにもシンプルなものですから、他の税制改革の議論はとても環境省だけでは言えないということもあって出ていないのでしょうし、それから他のさまざまな政策手法についても、十分に、まだメニューが出尽くしていませんから、それとの結びつきを、ここで環境税提案だけに結びつけて何か言えといっても、それは無理な点はあるわけですけれども、意識としては、こういうものは、これですべてでないということをはっきりさせるという点が非常に大事な点です。ですから、その辺の誤解がないように、これを、もし環境省として、今後進めていくとすれば、はっきりと出していかなければいけない。それをやらないで、税で何か問題が解決するかのような幻想を与えるようなことは、余り今後の政策を進める上で、よくないんじゃないかという気がいたします。

○森嶌委員長 それでは、最後に大塚委員。

○大塚委員 3点、ごく簡単にサササーッと申し上げたいと思います。
 1点は、これで90年レベルと比べて3.5%減るとすると、かなり大きな効果があると思っております。現実的な非常にスリム化した制度にしたというのは大変結構なことだと思いますし、6%削減が達成できない場合はどうなるかというと、日本国として排出権を買ってくるとか、CDMを買ってくるということをしなくてはいけないわけで、それには当然費用がかかるわけですので、それと比べてどっちがいいかということを考え、なおかつ税でやれば、国内インフラの脱温暖化ということが達成されるということにはなりますので、そういうことも考えたとすると、この方法というのは、決して悪くない。ひょっとすると、むしろ得かもしれないというふうに考えるわけでございます。
 さらに、先ほど天野委員もおっしゃったように、グリーン税制改革の問題とか、道路の特定財源の問題が当然あるわけですけれども、これは中長期的な課題として、引き続き取り組むということで、環境省にもしっかりやっていただきたいと思うわけであります。
 第2点ですけれども、3ページの税負担の減免措置の中で、一定削減をしたエネルギー多消費産業に属する企業に対して6割軽減というところで、目標を掲げて、それを達成した方にはさらに削減するというお話がありましたが、これは大変インセンティブを与えるという点で結構なことだと思っております。
 それから、第3点ですが、これは少しお願い、要望ですけれども、税収の使途については、3つ掲げられていて、これも結構だと思いますけれども、ぜひ、費用効果性の高いものをやるということにご注意いただきたいということと、ばらまきにならないように、きっちり減らせるような方法を入札等によって、イギリスの方法ですけれども、とっていくということが肝要ではないかと思っております。
 以上です。

○森嶌委員長 今までのご意見はともかくとして、ご質問もかなり大きな、この議論の最初に立ち戻らなければならないようなご質問もありますけれども、かなりスペースィフィックな、例えば関沢委員のご質問なんかありますので、その中で、今の時点でお答えになるべきものについて、田村局長の方から……。

○田村総合環境政策局長 それでは、私の方からお答えをいたします。また、使途の部分や地球温暖化対策全体にわたる部分もございましたので、それは小林局長の方から答弁をさせていただきたいと思います。
 まず、私から、1つは、小泉内閣の小さな政府の方針に反するのではないかというところ。これにつきましては、私どもこの温暖化対策特別会計をつくろうなんてつもりは全くございませんし、環境税は一般財源というふうに提示をしております。また、決して補助金のばらまきにならないように、その使途においても、例えばエコ減税の財源に充てるというようなことによって、歳出を膨らますというようなことを考えていない、できるだけスリムなものにしているという点でございます。
 それから、自主行動計画との関係でございます。私ども自主行動計画、大変現実に数字としても成果が上がっておりますから、非常に評価をいたしておりますし、これからも、京都議定書を進めていく上に1つの大きな柱だとも思っておりますけれども、これと税との関係につきましては、やはり自主行動計画自体が、そのさまざまな基準で、それぞれの業界に即したことでやっておられますので、評価しておりますけれども、税の何かの基準に入れるには、もう少し客観的な、ここには「一定の削減努力」と書いてございますけれども、具体的には、例えばCO排出量を生産量で割ったCO原単位といったようなものを、客観的に入れたいというふうに思っております。
 それから、全体的なメッセージを示す必要があるということがいろいろ言われました。環境税の具体案の1ページで、課長からご説明を申し上げましたように、京都議定書温暖化対策も待ったなしの課題だと思っておりまして、その中ではっきりと計画の中にまだ十分とされていない財源的な問題も含めて、より一層確実に実施する上で環境税が必要であるとか、その規制を受けているものとか、あるいは非常によくやっている企業のみの限られた範囲の対策ではなくて、みんなが工場、企業、家庭、幅広く負担を求めて皆で参加してやっていくというのが、私どもの大事なメッセージでございますし、また、税だけで解決するという幻想はよくないというご議論もありました。私ども、全くそのようには思っておりません。税も1つの手段にすぎないので、あらゆる施策の総動員だというふうに考えております。
 それから、環境負荷に関連する税率水準維持という部分の記述があいまいで、もう少し切り込まないと、という話がありました。特会特定財源の議論、現在まさに行われているところでございます。私どもとしても、多くがエネルギー課税ということでありますから、当然環境税との関係があるわけでございますので、2つの具体的な主張をしております。1つは申し上げたように、水準の維持ということが第1点。もう1点は、その改革の際には、地球温暖化対策にも財源を充てるということが第2点。この2つを、いわば私どもとしての切り込み方として申し上げているということでございます。
 それから、政府部内のコンセンサスが得られているのかという、関沢委員からのご質問でございます。京都議定書目標達成計画の中に環境税というのが、はっきり位置づけられました。位置づけられたその中に、環境税というのは、一部、既に、今、ご質問の中にもありましたけれども、国民、事業者、さまざまな協力を得ながら、そしていろいろな問題点について留意しながら、今後、環境税について真摯に総合的な検討を進めるべきなんだと、前向きにきちっととらえて、決して後送りなんかしないで、きちっと考えるべきなんだということが、そこの中にはっきりと閣議決定されております。そういう中で、私どもは進めているということでございます。
 もちろん、その中の手法はさまざまでございますし、この具体案で政府のコンセンサスが、これで全部統一されたわけでは全くございません。これは私どもの案でございますけれども、そういう背景のもとで出しているということでございます。だから、これまでのさまざまな環境審議会、特にこの中環審の議論を踏まえて、十分そういう議論が踏まえられての意見が入っているのかということでございますけれども、これにつきましても、もう今回は22回目の施策小委でございますので、森嶌委員長のもとで、ずうっとこれまでさまざまなご議論を戦わせてきていただきましたし、昨年の12月には、留意点ということで、いろいろな観点からの留意点を既に答申として取りまとめていただいております。
 また、今年も夏に6回ぐらいにわたって、地方公聴会とかいろいろしていただいておりました。それらの意見を踏まえて、今回、大きく変えた点として、例えば使途、圧倒的に地球温暖化対策一本にすべきだという議論も大きかったです。こういうこととか、あるいは現在の原油価格の高騰とか考えて、ガソリンや軽油との関係、これも当分の間、適用停止ということにいたしました。
 先ほど、「当分の間」というのはいつごろまでか、というご質問がありました。当分の間というのは、私ども、3点考えておりまして、1つは原油価格高騰の状況もありましょうし、あるいは1つは、この3つの、例えば揮発油税、軽油引取税、航空機燃料税といった、それらの税負担の状況を見守っていく必要がありましょうし、もう一つは運輸部門の具体的なCO排出量、これが相変わらず増え続けていくというのは、課税をすぐ考えなければいけませんし、そこら辺の3つの総合的な判断というふうに思っております。また、電気料金やガス料金、前回はこれに対して直接課税するというのは、昨年の案でございましたが、今回は発電燃料という燃料の方に着目して課税をすると、これも変えております。これもさまざまな意見を、まさにこの審議会でもいただきましたし、公聴会でもその意見はありましたし、また、世の中の議論もそれが多かったですから、より環境税らしい、というと恐縮でございますけれども、そういうふうな観点から、いわばそちらの方に変更しているというような、さまざまな、私どもでは改善だと思っていますけれども、そういうことをまさに、これまでの議論を踏まえて直してきているつもりでございます。
 それから、3.5%の点につきまして、アナウンスメント効果、財源効果がどう入っているのかということでございます。0.5%程度、これはモデル計算でごさいますが、価格効果と思っております。3%部分は、これらの使途に充てた場合の財源効果でございます。アナウンスメント効果は、私ども非常に大きいと思っておりますけれども、これをちょっと定量的どれだけというふうにはいえませんで、定量的な効果は、特にこの中には入っておりません。試算しておりません。
 それから、上流が中心なので、転嫁について十分考えるべきではないかという議論がございました。そのとおりだと思います。上流、下流のミックスしたハイブリッド方式をとっておりますけれども、特に円滑な展開を考えていく上で、1つは制度の中で何か考えられないか、外税の問題とか、あるいは国としての努力とかいうようなものを盛り込むかどうかというような議論とか、あるいは執行の面で、少しでも、例えば領収書の中に明記するというような方式をお願いできないかとか、そのようなことを踏まえて、転嫁の問題は十分考えていきたいと思います。
 ざっとした説明でございますが、以上でございます。

○森嶌委員長 小林地球環境局長。

○小林地球環境局長 使途の関係でございます。時間が押しておりますので、はしょった説明になろうかと思いますがお許しください。
 まず、今、田村局長の方からお話し申し上げました3.5%の考え方といいますか、そこのところで、少し伺っておりましたら、受けとめ方の違いが委員の間にそれぞれあるのかなというふうに思いました。例えば端的に言いますと、浅野委員からは、ほかの政策手段も使っている中でのポリシーミックスで税が分担するところということで、税が全部、削減量を出してくるというふうに考えるのは幻想ではないかということが言われ、また、他方、すぐその後の大塚委員からは、3.5%減るので、なかなかいいじゃないかというご議論がありました。
 実際に私どもの考え方としては、京都議定書の目標達成計画上、それぞれの対策に削減可能量といいますか、期待量といいますか、削減できる量が割り当てられておりますが、それを裏打ちするファイナンスが十分でないというふうに思っていますものについて、ファイナンスを継ぎ足すということでございまして、この3.5%、正確にいいますと、その財源効果といいますか、対策支援効果は3%でございますが、それはもともと京都議定書目標達成計画の外数としてあるわけでございませんで、いわば財源不足で、恐らく息切れする、失敗がある、そういうものについて重点的に裏打ちをする、こういうふうに考えている次第でございます。場合によっては、関係の方々の中には、裏打ちをしなくても削減率が出るんだというふうにおっしゃる方もないわけではない。それに対して、そうではないんじゃないかと、私どもは、思っている。こういうことでございます。
 そうなりますと、個々具体の話になりますが、関沢委員からは、現在の予算でも5,000億、真水があるじゃないか、それで足らないのか、ということでご意見がございました。これも考え方にわたるところでございますので、少し補足をさせていただきたいというふうに思っておりますが、お配りしました参考資料の方、「環境税について」というところで、参考の25ページというところかと思いますが、後ろの方でございますけれども、地球温暖化対策の予算のうち、京都議定書の目標達成に直接効果があるものは幾らか、というのを、これは平成18年度の要求ベースで各省の合意のもとで計算をし、オープンにしたものでございます。これを見ますと、25ページのAというところにございます直接効果があるもの、というふうに各省納得しておりますものは、5,175億円、これは平成18年度の要求ベースでございます。ちなみに平成17年度の確定予算ベースといいますと、4,800億円弱というのが現状でございまして、京都議定書目標達成計画ができて初年度の要求ということで、各省頑張って積み増しをして要求をしてございます。この査定がどうなるかがありますが、ただ、私どもとしては、このペースがずうっと続いたのでは、とても、実は、京都議定書目標達成計画の、例えば2010年というところでは削減量が稼げないではないかというふうに、個々に思うものを積み上げて、今回、それの裏打ちをしようというふうに考えているわけでございます。
 その中で、これも関沢委員の方からお話がございましたけれども、例えば産業界なんかは環境税収による助成は要らないんじゃないかというご意見があったわけでございます。これについて言いますと、今後の削減量につきましては、環境税についての一番上の方に書いてございます。2ページでございますけれども、これが2004年の速報値までが入った実際の排出量の推移でございます。これを見ますと、工場なんかでも、これから先、2004年から2010年までに3,700万トンの削減が必要でございます。自主行動計画は、すべてを恐らくカバーしているわけでございませんで、経団連以外の工場がございますし、また、工場で使います電気については、ここにちょっと資料がなくて申しわけございませんが、ご専門家の方、よくよくご承知と思いますけれども、最近、炭素密度が上がっている。ダーティになっている。そういうことで、電気については自動的に転嫁をされますので、そういう意味で、これも心配要因でございます。
 それから、同じ産業界といいましても、自主行動計画の外にございますのが、業務オフィスビル、これも実は外にいまして、ここも今後3,000万トンを削らなければいかんということで、大変大きな削減量が期待をされております。これの裏打ちも、私どもとして心配をしてございます。当然、ご家庭も実は3,100万トンとか、運輸についても1,200万トンとか、たくさん削らなければいけないものがあるわけでありますけれども、今、ご指摘の産業界は、もういいんじゃないのかということでいいますと、広い意味での自主行動計画外のところで、こういったような問題が生じてきているというふうに、私ども、認識をしてございます。
 それから、使途の話で、永里委員からは、森林は、吸収源としてのみファイナンスをするのか、こういうご質問もございました。これも細かい積み上げ、林野庁と一緒になってやっております。端的にいいますと、現在の森林の整備というのは、年々640万ヘクタールぐらい手入れをしておりますが、吸収源ということになりますと、もっと整備をしなければいかん。それが520万ヘクタールぐらいある。あわせて1,160万ヘクタールぐらい整備をすると、吸収量としてはかなり稼げる。ところが、今の治山治水、あるいはいろいろな森林がもたらす公益を考えてペイできている、払えている、ファイナンスできているその整備予定が640万ヘクタールなのだと、それを継ぎ足していかなければいけない。こういうような、先ほど申し上げました、個別の不足分というものを考えて要求をしているわけでございます。
 久保田委員から、しかし、それでも森林をどうこれから考えていくかについて大きな議論が必要じゃないかということのご指摘がありました。これはご意見として受けとめさせていただきたいと思います。
 あと2点だけ残されておりますが、歳入中立という問題がございました。これも“釈迦に説法”になりますが、税率が低いと、どうしても、それに伴う価格効果による削減量というのは小さくなります。先ほど来申し上げましたように0.5%程度の削減率であります。そうしますと、6%目標ははまりませんので、どうしても対策というのをしていかなければいけない。それが余れば、もちろん福祉とかいろいろなことがあるんでしょうが、二重の配当等々あると思うんですけれども、今回の収入3,700億円程度でありますと、これを温暖化対策に入れていかないと、十分な削減が確保できない、そういった関係にあろうかと思います。
 ただ、その場合に、これはいろいろな委員からご指摘がありましたが、役所が古い情報に基づいて、例えば政府の失敗といいますか、使途を正確に、効率的に配らなかった場合といったような心配もございます。まだ自動的に入ってくるお金があると、いわば今の特会の批判のような、いろいろな硬直化ということであるかもしれない。こういうことだと思います。そういう意味で、私ども、極力歳入中立に近づける、自動的な政府の税収として立たないような仕組みで、少しでも対策を支援できないかということで、14ページだと思いますけれども、例えばご家庭あるいはビル、これは削らなければいけない部分でございますけれども、こういったところについての環境対策の支援につきましては、例えば省エネ投資についての、省エネ回収についての、あるいは省エネ住宅の新築費用についての税額控除といったようなことで、これが支援できないか。つまり、そこは政府の収入に入ってこないという形で、少しでも歳入中立、政府がその収入が入ってきたところに配ろうかというふうにするのではなくて、透明に、機械的に配っていくことができないかというふうに考えているわけでございます。
 そういうことも含めて、配り方については効率的にやらなければいけないということが、圧倒的に天野委員、大塚委員、そして平松委員からもございました。私ども、ついつい税制の設計としては入るところばかり考えてしまいますが、大変貴重なご指摘だというふうに思っております。予算の配分にかかわることでございますが、現在でも環境保全経費の見積もり、調整方針について環境省が権限があるとか、かなり何とか特枠とかいうのが内閣であったこともございます。そういったようなやり方も参考にして、今回の税収のみならず一般会計、そしてほかの特会のことも含めて、全体として合理的な配分ができるような仕組みというのが必要だというふうに、全く同感に思っております。そういったことも、この税制を離れて、ぜひ検討していきたい、貴重な意見をありがたくちょうだいいたしたいと思っております。
 以上です。

○森嶌委員長 どうもありがとうございました。
 大分、時間が過ぎています。私のところに鳥井委員の方からご質問がありましたので、非常に簡単にお答えさせていただきます。
 一般的に審議会は専門的な知見に基づいて行うわけですけれども、環境税というのは専門的なことだけでは片づかない。この場合には、他の税という一般的な問題もありますし、経済の問題もありますし、ほかの環境政策の問題もあり、極めて多岐にわたるだけでなくて、先ほどからいろいろな方がおっしゃいますように、政策判断がかかわってきますので、ここでもそうでしたけれども、専門委員の結論を、そのまま、では我々が議論して、ではいきましょうとか、やめましょうとかいっても成り立たない。その点で一般の審議会とは違う性格を持っています。
 そこで、私は皆さんにお諮りをした上で、なるべくいろいろな各層から出てくる環境税にかかわる問題点を整理をしながら、いろいろな意見を聞き、できるだけ地方のヒアリングなどで問題をくみ上げて、それを事務局でデータをそろえられるものはそろえながら議論をしていって、一種のポリシーダイアローグを、ここで、限界はありますけれども、できるだけやっていく。その意味では通常の審議会とはかなり違っております。できれば、政府税調などでそういうことをやってほしい。あるいは自民党の税調などでもそういうことをやってほしいんですけれども、私の知る限り、今、どこもそれをやっておりません。
 そこで、本来、中央環境審議会という枠から見ますと、少し行き過ぎかどうかわかりませんけれども、少し幅が広過ぎるかとも思われますけれども、他の税との関係も含めて、そして、また他の環境政策との関係も含めて、中長期的なことも含めて、ここで議論をしていただけるだけのことをやっていきたいということで、少し皆さんには無理な日程をお願いしながらやっているわけです。
 他方、環境省の方は、政府の機関として、毎年予算を要求をしなければなりません。環境税というのは予算そのものではありませんけれども、予算要求の際に、今年は環境省ではなくて政府として、環境税というものを出して、その中で予算の歳入を図って、それをこういうふうに支出をして、という予算項目の1つとして、税を政府全体として審議をしてくれということで、毎年、環境省としては出すわけですけれども、これも環境省は単独でできるわけではありません。しかし、環境省として出しているわけですが、昨年もいたしました。昨年は、結局、実ってはおりません。今年も出すわけですが、今年、もちろん環境省としては実ることを祈っているでしょうけれども、そのまま行くかどうかわかりませんが、私どもの議論は、その中で、先ほど田村局長も言われましたけれども、我々がやっていることを環境省としては最大限取り入れて、我々の議論はまだ結論が出ておりませんけれども、そこで提起された問題を、できるだけ環境省としては消化していますけれども、環境省はあくまでも、その年の予算要求の限りでやっていますけれども、我々は環境税という税金ですから、それを長期的に考えながら議論をしておりますので、そこはなかなか難しいかもしれませんが、できるだけ皆さんにそういう中長期的な視点と、広い立場でご議論いただきたいと思っております。

○鳥井委員 おっしゃることを、ここにいらっしゃる方はわかっていますが、国民に対して、そこのところをちゃんと説明していく必要があるということであります。

○森嶌委員長 それはご指摘もありましたので、そこまで考えておりませんでしたけれども、ヒアリングでは、そういう話はしておりますけれども、環境省の予算の話はしませんでしたけれども、どういうふうにしてわかっていただけるか、これは考えていきたいと思っておりますが、そういう運営方針でやっております。
 なお、大分時間が押しておりますけれども、ギョレスさんから、5分だけブレークをとってほしいというご要求がありました。それなら、その前に、あなた、言ったらどうだと言ったら、いや、それはインポライトだからと、極めてヨーロッパ的におっしゃいましたので、5分だけ休憩をとりますので、35分に始めますので、5分だけ休みます。

 (午前11時29分 休憩)
 (午前11時33分 再開)

○森嶌委員長 それでは、再開させていただきます。
 ギョレスさんについてご紹介をすることになっていましたけれども、この紙があると思いますが、この裏にCBがありますので、ご紹介をやめて、早速、ギョレスさんのドイツの環境税改革についてご説明を願います。
 なお、15分か20分ぐらいは延長させていただきますので、ご了解いただきたいと思います。

○ギョレス 15年くらいにわたりまして、まさにこの環境税、環境ということをやってきた私のような立場の者にとりまして、まさに本日の中環審の部会のお話を聞かせていただきますことは、本当にわくわくするような、本当に重要な経験であります。
 まず最初に言いたいのは、ドイツでの議論と日本の議論は全く同じであるということです。賛成、反対、それぞれの意見が、まさに同じ内容が日独双方で行われている。どうコミュニケーションしていくのかという、とても重要なポイントに関しても、ドイツで言われました。それから、完璧な環境税、理想的なものというのは、みんなに気に入られるものというのは、まだつくられていない。これもそうだと思います。
 ヨーロッパのお話をさせていただきますと、デンマーク、ドイツ、イギリス、それぞれ異なったモデルが使われています。日本の環境省のがいいとか、英国のものがいいとか、あるいはドイツのものが理想というような主張するのは、これは全くばかげたことでありまして、それぞれの経験に基づいて、自国の実情に合わせたものを導入するというのが一番いいわけです。ただ、重要なのは時を待たずに、とにかく導入して、それからやっていくということだと思います。
 さて、早速、お話を始めたいと思います。私はNGOの代表です。ドイツのNGOというのはご承知のとおり、ドイツにおける環境税導入において極めて重要な役割を果たしてまいりました。その中で私の組織というのは、この3つ、すなわち環境税改革、排出権取引、それから環境財政改革、これに焦点を絞ってやってまいりました。NGOの世界と、それから企業、大学、そして政府の間の対話、これを推進するというのが、私たちがやっているところです。
 生年月日は小池大臣と同じ年です。実は彼女の方が7週間、年上であるということがわかりました。大学ではエンジニアをやりまして、経営学もやりました。以前はマッキンゼーにおりました。ですから、経済の面も、ビジネスの面も、ある程度理解をしている。私自身、会社を経営しておりますので、NGOの世界の理想ばかりを語る人間だと思われては困ります。そうではなくて、70%は金儲け、資本市場の中で活動をしている、そういう人間です。そういう委員の方もいらっしゃるということが、先ほどよくわかりました。
 さて、私たちのことを知ってくださっている方々もいらっしゃると思いますけれども、ぜひニュースレターの購読者になっていただきたいというふうに思います。ドイツで7,000人、そして、これはスイスも入っているんですけれども、全体で1万人ぐらい。ぜひ、皆様も購読者になっていただきたいと思います。簡単に参加することができます。やり方としては、webサイトに行っていただければ、英語版もありますし、ドイツ語のホームページもあります。それからEメールアドレスも書いておきました。
 何とかして化石燃料の終焉、これを考えなければいけないということです。我々、数年来、活動をGBGとして、してきたんですけれども、旅行代理店のような活動も非常にしているということがわかりました。なぜかというと、ドイツ以外のところでドイツの環境に関する政治というのがよく知られている。しかし、国内においては余り知られていないということで、世界中で講演をするし、世界中で話をするということが多いので、旅行代理店みたいなというふうに考えているわけです。世界中、いろいろなところに出かけていくと、国内よりも耳を傾けてもらえたりするということです。
 日本に来ることも何回かありましたけれども、今回もお招きいただきありがとうございます。 トリッティン首相がエコノミークラスではありましたけれども、お金を出して下さったので、もちろんドイツ環境省も節約が必要ですから、そうなったのだと思いますけれども、また小池大臣にもお礼を申し上げたいと思います。先週、月曜日にお目にかかりまして、そしてその後、来てくれないかということであったわけで、2週間しかありませんでしたけれども、日本のこの対話に参加することができたということです。
 日独という2カ国は共通点が非常に多い2つの国だと思います。過去の歴史における悪いことも共通点がありますが、いいことに関しても共通点があると思います。例えば、世界で最も優秀な自動車をつくれる国、日本とドイツがまさにその2つの国だと思いますが、トヨタでは不可能なことはないというふうに言っています。そして、テクノロジーによる前進というのがアウディのポリシーです。フォルクスワーゲン、アウディにしても、トヨタにしましても、工場に行くと、無駄が全くありません。とにかく、およそありとあらゆる無駄ということに関して、これを戦ってなくしているからです。無駄を許すことができないのです。
 しかしながら、世界を見るとどうでしょうか。資源というのはどんどん無駄に浪費されているわけです。ですから、税制も両国の自動車工場と同じぐらい賢く効率的なものにできないかということです。税制というのが、両国とも自動車工場と比べると、ずっと陳腐化しておりますし、古く、非効率です。そのような最新の税制の中には、必ず環境税というのが入っているべきだというのが、私どもの主張です。
 小泉首相も、この無駄ということを非常に気にかけていらっしゃるようで、“もったいない”という概念について報道関係者の前でお話をしていらっしゃいます。GBGにもしかしたら加入をされたいのかもしれません。皆さんもぜひ加入していただきたいと思う次第です。まず最初に、簡単なイントロダクションをお話しいたしました。
 次に、現在、共通して私たちが直面している課題は何なのかということをお話しし、それからドイツで何をやっているのかということをお話しし、そしてちょっと飛ばしまして、最後のグローバル・パースペクティブというところに行きたいと思います。
 さて、なぜ日本で、ドイツで、ヨーロッパで――残念ながらアメリカではまだなんですが――なぜこういう議論をしているのか、いずれアメリカもしなければならなくなると思いますけれども、それを考えてみたいと思います。このグラフ、曲線を見ていただきたいと思います。同じような曲線が繰り返し、繰り返し示されていると思うんですが、全部指数関数的に上に上がっていっている。これは持続可能でないことは、みんなが知っています。経済学モデルにおいては、これを“通常の現行どおりの”というふうに読むわけですけれども、ピークに達してしまったら、本当に石油が枯渇してしまったら、本当に現行どおりというのは可能なんでしょうか。全部が下がっていかざるを得ないからです。私たち、すべて共通した利益といたしまして、できるだけ早く、この道筋を変える。つまり、ソフトランディング、ソフトトランジションをやらなければいけない。しかし、そうするかどうかを決断するのは私たちです。そして、それぞれの国が、みずからの国について決断しなければなりません。これは状況が続けば、東京というのは熱帯地域になるということ。夏はクールビズになったそうなんですけれども、もっと暑くなれば、みんな裸で過ごさなければならなくなるかもしれません。それはだれも望まないことです。
 ブッシュ大統領を見ておりますと、タイタニック号の船長を思い出します。ブリッジのところに立って、「氷山は見えないなあ。専門家に確認をしなさい」と言っているような人のような気がするわけです。本当に気候上の脅威があるのかどうか、科学者の90%はそういうものがあるというふうに言っています。温度は既に上がってきているわけです。でも、この気候の脅威があるなしにかかわらず、1つはっきりしていることは、石油は枯渇するということです。ですから、早く左に曲がらなければいけないわけですけれども、少し早目に方向転換すれば、早く氷山を迂回することが、より容易にできるということです。
 6週間ほど前のことですけれども、これはドイツの新聞に掲載されたチャートなんですが、これが出ていました。これは、油価、石油価格の動向を示したものなんですが、2005年に、ようやく1870年の石油価格に戻ったということです。つまり、石油時代が始まって、ロックフェラーというような人たちが、石油、灯油というのを輸入し始めたころは、そのぐらいの値段だったんです。皆さんの中で、技師、エンジニアの方が何人いらっしゃるかわかりませんけれども、こういうような曲線はよく知られていまして、バスタブ曲線と呼ばれているわけです。例えば学生の時は中古車に乗っているかもしれません。10年、12年ぐらい乗ってきますと、いきなり修理が非常に必要になって、コストがかかってくると、エンジニアはみんな知っているんですけれども、バスタブの反対側といいますか、一番最初、新しい技術が入ったときはコストが非常に高い。それがグーッと下がって、その需要が尽きるころに、またコストが上がってくるんです。上がり始めたら次のに乗りかえなければいけない。最後の一滴に至るまで石油を燃やしていいということではありません。もちろん、それは環境省の問題だから、それだけではなく、一部の石油というのを残しておくというのが、例えば将来的にも、日独、独日間の飛行機に乗りたいかもしれない。これは、代替燃料が一番見つけにくいところなので、ジェット燃料用にとっておく必要があるかもしれないからです。
 しかし、なかなかグリーンになれないのが人間、中には悲観主義の人もいます。悲観主義になったり、シニカルになったりする必要はないと思うんです。なぜかというと、希望があるからです。化石燃料の時代は、もしかしたら終わりに近づいているかもしれません。しかし、全く美しい、新しいピカピカのバスタブが次に待っているからです。それはソーラーエネルギーのバスタブです。そこでも通常の曲線になっています。最初のところではコストが高いわけです。ソーラーエネルギーというのは、ソーラーパネルであろうが、風力であろうが、まだ今は高いです。しかし、同じようにほかのテクノロジー、すべてがそうだったように、ほかの産業すべてがそうだったように、コストというのは下がってくるわけです。そうした中で、自動車製造にしましても、コンピュータ製造にしましても、コンシューマーエレクトロニクスにしましても、日本人というのはコスト削減に非常に長けている人たちですから、コストをどんどん下げることができるでしょう。
 ここでの問題は、古いバスタブからどうすれば新しいバスタブに移行することができるのか。そういったところで、まさに経済的な手段が必要です。経済的な税制改革も必要です。それから、排出権取引も必要です。それから、ソーラーカー補助制度というのもそうです。そのことによって、移行がもっと時間がかかるところを促進できるからです。ソーラーエネルギーだけではなくて、効率化も必要です。効率化というのは、強い経済的なインセンティブがあって初めて可能なわけで、したがって、エネルギー価格を上げなければなりません。
 そこで、ドイツの経験から学べる最初の教訓があります。1998年の選挙戦の折りに、緑の党はほとんど負けてしまいました。なぜかというと、彼らは何を言ったかというと、石油価格を1リットル5マルクにするべきだ。これは3ドルぐらいなんです。それを聞いた人たちは、みんな、それは大反対になりました。これは政治的な間違いだけではなくて、つまり緑の党にとって、そうではなくて、自分たちがやらなければならないことの完全な誤解だったわけです。
 昔、そういう石油値段がありました。でも、その値段にもう一度しなくても、代替燃料というのはコストを下げることができるんです。グリーンエネルギーというのは、永遠により高いエネルギーコストを意味するのだ、というような印象を与えてしまったというのが、これが緑の党の犯した政治的、また生態学的な誤りでした。そこには切りかえの幅があるわけです。どんなエネルギーに関しても、代替エネルギー、これはソーラーエネルギーが競争力を持つような、そういう範囲というのがあって、それが持続可能な水準です。そうすれば、それ以降はエネルギー価格は上がらないわけです。そこで切りかえてしまわなければなりません。
 トンネルの向こうには太陽の光が見える。トンネルの向こうにはソーラー光が見えると、我々は、だから言っているのであります。ということで、ドイツの経験、日本との比較で次にお話ししたいと思います。
 日独を比較いたしますと、この2国というのは、日本のものは何もかも、我々の5割増と考えていいという感じです。人口も、GDPも5割増。しかし、税金はそうではないんです。税金は20%ぐらい、我々の方が対GDPで多いですし、それから社会保障、GDPの1.7%というのがエコタックス、ドイツの場合には4%近くですから、2倍以上の比率で我々の方が環境税を徴収しています。
 この2つの国を京都議定書、京都の約束という観点から見ると、ドイツというのはひとつラッキーでした。つまり、東西統一ということがありまして、東ドイツの、かなりよくなかった、汚い産業、これを減らすことができたからです。ですから、我々の場合には21のうち19やった残りは2です。
 日本の場合には、今回、繰り返し出てきましたけれども、6%削減が約束、しかし、逆でした。7.4%ふやしてしまった。その結果、13.4%、まだ達成までに開きがあるという状況になっているわけです。その開きをごらんになって、そして、環境税の3.5%ということですから、それを入れても、まだまだやらなければならない。果たして日本は京都議定書の約束を達成できるのか、私は非常に懐疑的です。
 しかも京都は日本の都市ではありませんでしたか。それをぜひ思っていただきたいと思います。日本という国が世界に対する義務条項というのを、京都ですばらしい形で議長国として議論をし、そして、京都議定書の約束を達成できなかったとしたら、これはトラジティだというふうに思います。
 さて、このエコタックスに関して、我が国は何をやったか、それから日本のお考え、これを比較します。ドイツの場合には日本の環境税案と同じように、ほとんどすべてのエネルギーを入れました。石炭は入っていない。しかしながら、輸送燃料というのは入っている。日本の場合には1回だけ増税、その後ではそうかもしれませんけれども、我々の場合には5年間で5回だんだんと上げていきました。そして両方の国においても減免措置があります。ドイツの場合には、その措置というのを既存の価格というところに向けました。ですから、ショックやジャンプを避けたということです。単位当たりの、つまりCO1トン当たりの額というのは、重油の場合には2ユーロ、それからガソリンの場合には66ユーロということでした。環境省の場合には、計算させていただきますと、二酸化炭素単位で19ユーロぐらいだと思います。我々の場合には190億ユーロ、そして日本の場合には50億ユーロになります。日本のモデルでは、0.15%対GDP相当ということになります。ですから、1/6%、それに対してドイツの場合には1%近いです。0.85%になっています。
 それから、リサイクル。つまり税収の90%、これを使用者、それから被雇用者、両方にとっての労働コストを下げるということになりました。日本の場合には50%が森林、そして50%が再生可能エネルギーというふうになっています。50%、これだけのお金をかけるということになると、かなりの面積に植林ということになるのな、などと私は思ったりいたしました。
 我々の場合には、190億ユーロ、22、24ミリオントンでそうなんですが、環境省の場合には4,300万トン、もっと減らすために、もっとずっと少ないんです。全部補助金ということにすれば、非常に大きな効果を得るのかなという気もしますけれども、ちょっと疑問があるところです。これを図で示したいと思います。
 我々の場合には340億ユーロということで、5段階に分けて、このように税金を入れていきまして、合計で200億ユーロ近く追加をいたしまして、その結果として530。それから、2003年に検討し、今年導入いたしました道路の通行税ですけれども、これを入れました。エネルギー関連税というのも入って、論文を読んでいただければ、どのように、だんだん段階的に金額がふえていたのかというのがわかると思いますけれども、輸送用の燃料というのが全体の3分の2を占めているという状況です。それから、たばこ、土地利用税ということもありますし、それも非常に広義の意味でグリーン税だというふうに言えば、合計900億ユーロということになります。これを何に使ったか。
 ドイツにおいては、日本環境省の計画とは全然違いまして、わずか3%のみがグリーンプロジェクト用ということになりました。あるいは再生可能エネルギーであるとか、あるいはCO削減建物になりました。全部が財務省に行きまして、88%が年金のところに行きました。このあたり、ちょっとややこしいので、図で示しているんですけれども、経済から政府に一般財源に入って、社会保障制度に入った。それが雇用者と被雇用者に還元された。みんながメリットを享受したということです。
 それから、コミュニケーションがうまくいかなかったので、これは完全に成功とはいえなかったかもしれませんが、考え方としては正しいと思います。このとおり、これをコピーした方がいいということを言うつもりは全くございませんけれども、グリーン税を見るだけではなく、環境対策、それからそれ以外の財政面についても見るべきだと思います。いわゆるグリーン補助金と、悪い、バッド補助金というのがあるということです。900億ユーロぐらいの環境税があるわけですけれども、例えば政府だけではなくて、公共事業、公益事業の方からお金を出します。マイナスになっているところが経済から環境に行った効果ということなんですが、将来、今後、ドイツで何をやるかというと、そういうマイナスのサブスリー、つまり石炭産業であるとか、原子力であるとか、あるいは自動車通勤をする人たちに補助金を出したりしているんですけれども、それをやめていき、グリーン補助金に回すということです。これをどんどんやっていく。いずれも環境配慮型の方に補助金を出すようにしていく。そういった有害な補助金と、それからグリーン補助金という議論というのは全世界的にやるべきだと思います。1兆5,000億ドルが誤った方向の補助金ということで使われているからです。ちょっとこれは説明を飛ばさせていただきたいと思うんです。
 環境税を5年やって、どうなるか、どうなったか。簡単に言いますと、減るべきものは全部減ったということです。例えば輸送用燃料の消費が10%以上下がりました。それからCOの排出が2から2.5%減りました。全体の税負担も下がりました。それから産業のコストが全体として下がりました。つまり、環境税導入によって、ドイツ産業は打撃を受けなかったんです。例えば自動車メーカーにとって、これがダメージになるようなものをドイツ政府として政治的に導入できたと思いますか。できるわけがありません。つまりダメージが起きなかったので、反対意見が出なかったんです。だからこそ導入できました。
 それから、輸入原油ですけれども、これが14%減りました。それから、上がるべきものは全部上がりました。カーシェアリングがふえた。それから省エネテクノロジーがどんどんできてきました。それから天然ガスあるいはバイオマス自動車というのがふえました。それから雇用の創出ということでは25万件ふえました。それから再生可能エネルギーが使われるようになった。労働ではなくて、自然に対していいか悪いかで、税金がかかるようになりましたので、税金のシフトということが起きました。これは、もちろん国際的な原油価格の動向によって非常に影響を受けました。42%と書いてありますが、その一番左がドイツなんですが、79セントが111セント、最近はもっと変わってきましたので、説明内容を変えなければなりません。
 でも、鉱物税の増加というのは、わずかでしたし、税引き前のベースコストに関してはほとんど変わりませんでした。ロッテルダム石油市場において80%変わっていたわけです。ヨーロッパの国で、1リットル当たりの税金が一番高いのは英国です。ドイツの場合には、隣りと余り格差をつけますと、ドイツ人はベルギーであるとか、チェコであるとか、デンマークであるとか、みんな隣りに行って、そこでガソリンを買ってしまう。そういう意味でイギリスはメリットがあるわけです。島国ですから、ほかへ行って安いものを買うことができない。私の記憶に間違いがなければ、日本も島国だったと思います。ですから、日本の自動車のマイカーの運転手が、例えば韓国へ行って安いガソリンを買ってきてしまうということを心配することはないと思います。この中で、一番低いのは、もちろんアメリカです。
 全体像ですけれども、2カ国、英国とドイツ、こちらでは最もガソリン税が高い。そしてまた最も優れたCO排出量低下の進展があるということになります。現時点において、残念ながらこういう状況です。これは恐らくは2カ国で世界全体の中で、このような京都議定書にある約束水準を実現できるのは、この2国だけであろうというふうに思っております。
 そこで、総体的に見たのがこちらです。こちらで恐らく状況がちょっと違うかもしれませんので、日本とドイツの状況は違うのかなという気もしております。こちらでは余りにも労働者に対して、例えばドイツの場合には、かなり労働組合の方からさんざん言っていることなんですが、余りこれは正しいことではないといわれている。余りにも労働者の租税負担が高いということです。それを何とか変えていきたい。そして、それを環境に優しい形に変えていきたいと思います。こちらが8%から10%になっています。これは十分ではない。将来的には私たちはさらにシフトを進めなければいけないと思っています。つまり労働に対しての所得税等に関する税金というのを、こちらに自然に移していく。さらに10から15%ぐらい進めていかなくてはいけないと思っています。
 では、石油の輸入はどうでしょうか。米国というのは世界全体で最も石油輸入が大きな国です。テキサス、アラスカなどがあります。それにもかかわらず石油の輸入が大きい。ところが、ドイツの場合にはアラスカもテキサスもないのに輸入が減っています。アメリカの場合には98年から2004年に21%石油輸入がふえているにもかかわらず、ドイツは14%減っています。ということで、恐らく、このように原油を求めて戦争をするよりも、省エネの方が安くあがると申し上げたいと思います。
 もう既に、かなりの進展を遂げてまいりました。そこで、これをさまざまなリベート、いろいろな議論があったんですが、何を学ぶことができるのでしょうか。まず、NGOとして私たちは環境税を支えるものである、支援するものであったということで、1980年代の後半くらいから、こういった問題について声高に主張してまいりました。そして、このような概念ですけれども、1924年に英国のピグーという経済学者が提唱した考え方でありました。しかし、それはすぐに忘れ去られてしまった。そして、今度は1978年にスイスの経済学者がこれを提唱する。それからNGOなどがこういうものを出してきました。それから今度は、1990年代初めに二重の配当に対する議論がありました。そして、その中で、私たちはメモランダムを出しております。その段階においてドイツにおける保守派は、このアイディアを持ち出してきて、そして、その中で当時のヘルムトコールが、この際において話をしたいということを言ったわけなんですが、それは科学産業に圧力を受けて、それを実現することはできませんでした。
 もう一つ、非常にうれしいことなんですが、日本の場合には、保守派の政党であるにもかかわらず、このようなものを提案している。これはすばらしいことだと思います。これが左派であるとか右派であるとか、そういうことを考えずに、環境全体として、地球全体として考えるべきであると考えるからです。
 そして、1978年にいろいろな問題がありましたけれども、緑の政党が、新しいビベートを始めました。1998年のことです。そして、その中で、グリーンの政党プラス赤の政党と一緒に仕事をすることができるようになってきたということで、その結果、先ほどお話ししたような還流を行っていく。つまり社会保障の費用に対して還流を行っていくということによって、労働者の負担を減らしていこうという形につながっていったわけです。ということで、いよいよ1999年には、20年の議論を経て、ETRがついて施行されるに至ったわけです。このVATに対して随分長いこと話をしてきました。アメリカでは全くそういうものは導入されていません。私たちはセールスタックス、いわゆる50年から60年代ぐらいに、それを転換していこうと考えたわけです。そして、20年間もかかって、やっとこのような環境税ができたということで、これが実は非常に長いと言いながらも最短記録であった、ということは驚きに値することであると思っております。
 さて、業界の方といろいろ話をするんですが、そのときによく思うのが、ガリレオがいないということです。小泉首相もガリレオ的な人だというところがあると思いますけれども、例えば2つの省を見ていただきたいと思います。こちらがドイツでいうところの経済省、日本でいうところの経済産業省だと思います。ビジネスの方が重要ですよ、自然よりも重要だといっています。それは本当のことではありません。正しいことではありません。私たちは、もちろんビジネスは重要だと言えるですけれども、もちろんそしてまた、職を持つ、あるいは雇用を確保するということは重要です。しかしながら、それは地球という大きなシステムの中のサブシステムだというふうに考えなければいけません。そしてまた、その一番元にあるのが太陽系である。太陽系のもとにあるのは、さらに銀河系であるということで、銀河系の中の、太陽系の中の、地球の中の、その中の小さなシステムであるというところのビジネス、そのあたりをもって謙虚に受け入れるべきだと思っています。私たちは、この惑星の一部なんです。これがなったならば、これを無視して進んだならば、ビジネスの繁栄などというものはあり得ないということです。
 ヨーロッパの中では、さまざまなETRをめぐる議論がありました。税制をどうやって持っていったらいいのかということについての議論です。そして、全体的な欧州全域の広範なコンセンサスが醸成されつつあるという状況があったといえると思います。そしてまた、最も重要な優先順位は何なのだろうかということについては、いろいろと混乱がありました。バッテリーが重要だとか、高速の数が必要だとか、いろいろなことをいった人がいました。場合によって近い捨て容器が重要だという人がいました。でも、私たちは1つに絞ってきました。すなわちエネルギー、あるいはCO、ここに集中していったわけです。そうすればショックはないということ、それからさまざまな広報ではなくて、徐々に、この2つのものに対して租税を強化していく、激変は緩和していきます。そして将来的には安くなってくるわけです。特に化石燃料をやめて、新しいものを進めていくということは重要であるということ。そしてまた、具体的な青写真を出すということ、これは環境省でも同じことですけれども、必ず青写真を出すということが重要です。
 それから、もう一つ、税収中立、これは非常に重要です。日本ではそれほど重要ではないかもしれませんが、ヨーロッパの場合は税収中立が必要です。例えば日本の場合には、もともとの税負担が少ないということになりますので、その意味では税収中立が必要でないかもしれません。しかし、ドイツの場合でいいますと、プレタックスという形になります。つまり納税者に対してはしっかりと税収中立で行きます。税収で入ってきたものにつきましては、必ず市国民に還流します、ということをいわなくてはいけなかったということが背景としてあります。日本では違うかもしれません。
 それから、輸出産業の保護ということもあります。業界が非常に懸念を持つということはよくわかります。そして、国際的な競争にさらされている業界であれば、それはさらに重要なことになると思います。こちらでパリにおけるタクシードライバーと、日本におけるタクシードライバー、全く状況は違うと思います。しかし、日本の場合には鉄鋼業界ひとつ見ても、中国との間で、非常に厳しい、しのぎを削るという状況であるということもよくわかります。しかしながら、環境税を進めるに当たっては、喜んで輸出産業に対しては減免措置を講ずるんだということを行っていきたいと思っています。減免措置、これが非常に重要であるわけです。しかしながら減免措置があったとしても、それがある程度は条件をつけていかなくてはいけない。大きい少ないにかかわず条件が必要になるということになります。
 それからまたヨーロッパの状況というのは、皆さん、状況をよくおわかりにならないかもしれませんけれども、例えば京都議定書に対して支援をしないアメリカなどという国もあります。それから、韓国、中国その他の国々もある。そうしてまた、ヨーロッパの場合でいいますと、多くの国々がこの方向に進んでいこうとする、ということで、そういったヨーロッパの状況とは違う日本をめぐる状況、中国やアメリカに囲まれる日本の中で、こういった提案を出されたということは非常に勇気があることだと思います。
 さて、ドイツにおいても、ということを話したいんですが、2000年夏には欧州全域で、反ETRのデモが起こりました。シラク首相は、これはもうだめだということで負けてしまいました。それから、シュレーダー首相ですけれども、こちらは負けませんでした。ほかのEU諸国の政府と違って、赤緑連合政権は圧力に屈したりはしませんでした。
 ここで非常に興味深いことですが、ETRが出現してから5年たったところで、ETRに対する反論のほとんどは間違っていたということを証明することができました。まずドイツの産業界は、このような環境税を入れることによって、競争力を損なわれるであろうという議論がありました。そんなことはありません。産業界は、年間10億ユーロの負担減という状況を実現しています。そして、また自動車産業も全く元気を失っていません。全く負担を受けていないわけです。そしてまた、日本も同様ですけれども、輸出は今でも世界トップクラスです。
 2つ目、恐らく国家として孤立してしまうであろうという懸念が表明されていました。ところがそうではありません。仲間に恵まれています。ベネルクスですとか、スカンジナビアとか、それから英国などの国も本気です。ということで、ドイツは全く孤立するということはありませんでした。
 それから、3番目に、増税になってしまうのではないかという話もありました。それはそうではありません。この議論もありましたけれども、例えば税の割合で例というものを考えてみますと、98年よりもはるかに低いレベルになるということになります。ドイツの場合でいいますと、これは2つの議論から出てくるわけです。つまり、もともと税収については還流するということを行っています。ということで、その結果、このようにコントラディションの部分が減ってくるということになるわけです。
 それから、もう一つ、政府の支出ということについては環境補助金を削減することができるということであります。そしてまた、私たちはそれに合わせた形で、全体的な税制の調整を行ってまいりました。
 それからもう一つ、4つ目と5つ目なんですけれども、これはお互いに自己矛盾を起こしていますので、どちらか片方ということになると思いますけれども、まず4番目に書いたのが市場が弾力性を失うということ。それから、5番目が自滅的な策であるということです。この4番目の弾力性ということですけれども、価格というのは非常にうまく機能するものであります。原油価格に後押しされる形で需要弾力性もはっきりしています。それからもう一つ、余りにも弾力性が高いがゆえに自滅的になってしまうという議論を展開する人もいました。この4番と5番が相互に矛盾しているというのは、その理由なんですけれども、政府は最終的にはお金がなくなってしまうのではないかといってしまうという議論もあったわけです。それは正しい議論ではありませんでした。非常にシンプルな事実としまして、実際にはETRによって財政貢献額約200億ドルという数字が出ております。そして、これが実際には税収として財務大臣が手にすることができた金額ということになります。
 それからもう一つ、逆進課税ではないかという議論もありました。いきなり低所得者に対して親切になってしまった。ああ、かわいそうに、貧しい人たち、かわいそう、消費者、かわいそう、環境税なんて入れられたら、とってもかわいそう、などという議論がわき起こってまいりました。
 それからもう一つ、こちらは日本の場合にはかなりあるんじゃないかと思うんですが、グリーン税収というのは、全部グリーンプロジェクトに使うべきではないかということを言っている。タクシードライバーはたいていタクシーに乗ると、こう言います。グリーン税収ということで環境税をとったならば、全部グリーンプロジェクトに使ったらいいではないか、と必ず言うんです。でも、それは実際にそれをどうやって使ったらいいのかということは、実は問題ではありません。つまり、外部不経済を内部化していくということは必要なのであって、そのためのピグー税です。ということで、このエコタックスというのは、そういった形で税収をとっていって、それを内部化していくということができるわけです。ということで、必ずしもそれをグリーン税とグリーンプロジェクトをつなげるということは必要ないということであります。
 このような話については、よくこういうふうに答えているんです。例えばビール税の税収はビール愛好家のために全部使わなければいけないんですかと。地租は全部土地所有者に還元しなければいけないんですか。あるいは自動車税の税収というのは道路関連のためにだけ使わなければいけないんですか。そうなってくると、環境税の税制は本当に環境プロジェクトだけに使わなければいけないんですかと。やはり、経済的な議論というものを進めなくてはいけないというふうに思っています。
 やはり、この中で最終的な、日本の場合でいいますと、特別会計を減らしていかなければいけないというのは、非常に健全なものだと思っております。そしてまた、民主主義にもかなったものだと思っています。大体、アメリカの場合で見ますと、州の税のうちの75%は目的税です。ということは、つまり、もともと選挙で選ばれた人たちは、その残りの25%しか使途を決めることはできないということ、これはおかしいと思います。
 それから、今度ほかの税金との違いということですが、環境税はお役所仕事とよく言われるんですが、実は運営コストは最低レベルです。ETRを入れることによって、さらに役所仕事が増えるではありませんか、というふうにさんざん批判されているんですが、そんなことはありません。運営コストで何が必要かということですが、基本的には最低必要な部分ということで、輸出を保護するために、その部分でのこういうことが必要になってきますけれども、実際のところ、ほかのさまざまな法人税、自動車税金等に比べまして、非常に低い運営コストであることがわかります。一番管理コストの低い税が一番たたかれているという状況、古い税金ならよい税金、というのは正しいことなんでしょうか。これはトヨタなどについても同様かもしれませんけれども、毎年毎年、それこそ10年ぐらいを考えてみたならば、新しい税というものは必ず考えていくということが言えると思います。
 最後にまとめということになりますが、非常におもしろいポイントです。経済的なバランスシート、それから環境的なバランスシートを考えていくということです。ドイツのエコタックスのバランスというのは、よほどプラスの方がマイナスよりも多かったということです。マイナスになってしまったものはありません。そしてまた、もともと約束したものは全部果たすことができたということです。そしてまた、私たちは確かに原油価格が上がったということで、それによって追い風効果というものがありましたけれども、それでもなお、全体的には非常によかった。
 ところが政治的には余りよくなかったわけです。政治的にはこの環境税議論というのはかなり重荷になってしまったということになります。つまり、日本の状況としてはこれは非常によい追い風の状況であると思います。時間をしっかりとって、議論を尽くしてください。かなり京都議定書に関しては時間が迫っていると言えますけれども、でも、社会との間でしっかりとした議論を尽くしていただきたいと思います。ドイツの場合には、この赤緑連合ということで、反政府的なプログラムもあったということで、その意味でかなりの時間的制約があったという問題もありました。ということで完全にうまく議論を尽くすことができたかというと、そうではなかったという問題があります。
 それから、2つ目、皆さんは政治的な世界において、しっかりうまく説得を進めていく必要があります。つまり、広告、宣伝のキャンペーンをしっかり進めていただきたいということです。それからまた、ただ単に、これは非常に難しいんだとか、経済がどうだとか、これは困ったことになるということは言わない。そうじゃなくて、こんなことをすると、こんないいことが起こりますよ、カリフォルニアではこういうことがあった、ところがこの場合はこうなるんだというような話をしていただきたい。例えば、風力エネルギー、あるいは太陽エネルギーを使ったらこうなるとか、雇用の創出があるというようなことを言っていただきたいと思います。テクノロジーは重要です。
 しかしながら、テクノロジーがないからといって、政府の行動をすることはできないというふうには言ってはいけないと思います。よく日本ではステップ・バイ・ステップとか、ボトムアップとか、そんなことを言いまくっている人がいますが、それは正しいとは思いません。それであったからといって、それで初めて導入できるものではないと思っているからです。
 そしてまた、古いエネルギーの場合でいいますと、大体、非常に少ない職しか実現することができないけれども、再生可能エネルギーを実現したならば、もっともっと多くの雇用を実現すことができるのだ。15万もの職を実現することができるのだということを言っています。
 それからもう一つ、早く電気が消えるということになりますと、目が悪くなって、暗いところでローソクで本を読むと目が悪くなりますが、早く電気を消せば、もっといいことができる。モアセックスと書いてあります。そういったことができるようになるということです。そういったこともできるのだということで、環境省の役人ですら、おもしろいプロモーションの案を思いつくことができます。
 それから今度、ひとつ選挙についてお話をしたいと思います。ETRを推進したいという人間として、保守派が残ったとしても、それでもなお環境保護ということに対して反対する人たちが、指導的地位をとるのでなかったらよかったと思っております。ということで、実際には必ずしも多くの政党、あるいはすべての政党が、完全にこのような環境税を後押しでいくかというと、そうはいかないということはよくわかっています。しかしながら、いわゆる大連立というのが行われようとしていますけれども、その中で、何らかの形で行動が起こってくるということもあるんじゃなかろうかと思っています。恐らくインセンティブを提供していくことができるのではないでしょうか。例えば、害のあるような補助金についてはやめた方がいいとか、古い形のETRから一部を推進していくということもできるであろうと思っています。そのような補助金については、もうどんどん減らしていって、例えば減免措置についても、それを整理縮小していくということも重要ではなかろうかと思います。
 それからまた、最終的なインターフェイス、つまりETS、排出権取引との間での境界というのもしっかりしていかなくてはいけないと思っています。例えば車を運転してミュンヘンからハンブルグに行こうと思ったならば、かなり環境税を払わなくてはいけないんですけれども、ところが飛行機で飛ぶということになると、ミュンヘンから日本へ飛ぶということになりますと、全く航空税というのを払わなくてもいいわけです。英国の場合にはかなり島国であるということをうまく使って、その中で、チケットタックスをとっています。例えばブリュッセルに行くにしても、シカゴに行くにしても必ず空を飛んでいかなくてはいけない。そうなってくると、その中で航空券に対して租税をかけるということによって、そのほかのメリットを上げてくことができるということになります。その中で、現時点においてEUの欧州委員会の中でもこういった議論が進められています。
 そこで、もし、小池環境大臣の方から「どんなことをしたらいいと思いますか」と言ってくださったならば、私はどんな提案をするのかということをお話ししたいと思います。まず前進することが重要ですよ、ということです。そして、大体いい方向に進んでいると申し上げたいと思います。ただ、幾つかヒントを差し上げるとするのならば、こんなことを言いたいと思います。まず、日本は島国なんですから、ぜひ運輸セクターも入れた方がいいと思います。その方が税収がふえます。そしてまた、結果についてもアロケーションインフェクトといいますけれども、分配効果が出てくる。というのは、かなり自動車セクターというのは京都のターゲットの中で最も大きな違反をしている部門ということになりますから、この自動車部門をうまく処理していくことができるということになります。
 それから、もう一つ、業界全体に対して、輸出産業に対してどんなプレッシャーがかかっているのかということを、まず理解するということ。それから2つ目、日本とドイツの状況というのは全く状況が違うと思います。特に社会保障に関しては状況が違うと思います。私たちの場合にはGDPに関して財政赤字75%の赤字がありますが、日本の場合には170%の財政赤字があるということで、私たちの3倍ぐらい財政赤字が膨らんでいます。ということで、その税金の一部を赤字の穴埋めに使ってはどうでしょうか。例えば全部を還流したりとか、グリーンプロジェクトに使うのではなく、3分の1ずつを分け合って、赤字の穴埋めと、還流とグリーンというふうに分けていったらどうかと思います。少なくとも一部の分につきましては、国民に対して還流していく。ドイツの場合には90%、返していますけれども、そうではない、日本の場合には3分の1くらいを社会保障なり、社会への還流に使ったらいいと思います。
 それからもう一つ、日本の状況、日本の産業界というのは、日本の農林業に対して、かなりの補助金を出しています。日本の農林業については、かなり競争力が少ないというふうに思っています。
 もう一つ、この助成ですけれども、小池環境大臣の魅力と知性で、こわもての経産省の皆さんを説得していただきたいと思います。
 あと、4ページ、よろしいですか。もうそろそろ終わりますから。
 ちょっと、周りを見渡してみます。日本、ヨーロッパ、世界全体を見渡してみます。私たちは、それぞれの国に対しまして、しっかりとした環境の政策を持っていただく必要があると思います。環境のポリシーがないということであったら、もうどうしようもない。それに加えまして、政治的な勇気が必要です。小池大臣にはこれが必要になりますけれども。それからまた、経済的な措置についての能力を持たなくてはいけないということで、環境の問題を認識して、勇気を持って、知恵を持たなくてはいけないということです。
 それに対して全体はどうかということですが、特に世界の中で、ヨーロッパはかなり高い。アメリカはかなり低い。でも、日本の場合はちょっと下に置いていたんですが、ここで外交手腕を発揮して、ちょっと上に持っていくことにしましょう。
 ヨーロッパがアメリカに対してよいというのは何かといいますと、こんなところがあるからです。こちらで最も長い歴史を持っている、最も民主主義の歴史が長いところ、そしてまた、最も大きな経済規模を持っている国であります。ところが、社会正義ということになりますと、そうではない。アメリカで貧乏というのはとってもつらいことです。それからまた平和についても同様です。ヨーロッパの方がずっとよい方向を向いていると思います。それから、特に環境に関してはヨーロッパのインパクトの方がよっぽどよい。つまり、現時点においてはヨーロッパの方で出している環境影響に対して、ヨーロッパの方がかなり成績がよいと言えると思います。
 そこで、やはり国際的な協力が必要であるということです。そしてグローバルなガバナンスを持って、グローバルに持続可能な状況を実現していく必要があります。そのためには、新しいルールが必要です。新しいツールも必要です。そして新しい非常に大きなチャレンジに対して立ち向かっていく必要があります。
 歴史を振り返ってみると、こういうことになります。人類は激変からしか学べないようです。何かとんでもないことが起こって初めて、人間は重い腰を上げるのです。1859年にフランス軍とオーストリア軍の激戦地ソルフェリーノでひどい戦いが起こりました。そしてそのときには、全く医療サービスを提供するようなサービスもなく、そしてまた医師もいなかったということで、その結果、アン・デュナンが本を書いてジュネーブで赤十字が設立されました。そして、第1次世界大戦、その後、国際連盟が生まれました。そして、それに対して、32年には日本とドイツが、この国際連盟を抜けるということになり、その結果、何が起こったか。第2次世界大戦です。そしてその結果、国際連合が生まれました。そして、広島、長崎に原爆が投下された。その後、25年もたってから核不拡散条約が生まれました。そして1986年にチェルノブイリが起って、原子力発電から撤退する国も出てきました。
 さて、ハリケーン・カトリーナはニューオリオンズの堤防をやすやすと破壊しました。そして、私たちは無知と無関心の壁が崩れ去るまで、人類は何回ハリケーン・カトリーナを経験すればいいというのでしょうか。
 さあ、こちらでは東照宮で有名な3匹の「見猿・聞か猿・言わ猿」をごらんいただきますが、こんな猿みたいにふるまうのはもうやめましょう。
 以上で、同時通訳のサービスを終了いたします。ありがとうございました。

○森嶌委員長 どうぞ、質問がありましたら……。
 ほかにございましょうか。
 どうもありがとうございました。
 それでは、議事録の中で翻訳をしていただいた形のものは、すぐには出ないでしょうけれども、後で出していただいて、委員だけではなくて外部にも出していただいて、ドイツの現状を知っていただくようにしたいと思います。
 それでは、どうもありがとうございました。
 次の審議日程は、別途ご連絡を差し上げます。
 それでは、ギョレスさんに拍手をもう一遍……。(拍手)

午後12時28分 閉会