中央環境審議会動物愛護部会(第19回) 議事録

日時

   平成18年10月13日(金)午前10時00分~午前11時43分

場所

   環境省第一会議室

出席者

        林  良博 部会長

        青木 人志 委員    今泉 忠明 委員

        大矢 秀臣 委員    奥澤 康司 委員

        藏内 勇夫 委員    清水  弟 委員

        菅谷  博 委員    中川 志郎 委員

        中川 李枝子 委員   信國 卓史 委員

        兵藤 哲夫 委員    丸山  務 委員

        冨岡 自然環境局長   泉  総務 課長

        築島 動物愛護管理室長

議題

  1.   (1)「動物愛護管理基本指針」(答申案)について
  2.   (2)その他

配付資料

資料1
「動物愛護管理基本指針」(答申案)
資料2
「動物愛護管理基本指針(仮称)」(素案)に対するパブリックコメントの実施結果について
参考資料1
動物の愛護及び管理に関する法律の一部を改正する法律(平成17年法律第68号)の施行等の在り方に関する諮問書等
参考資料2
中央環境審議会議事運営規則

議事

【司会】 それでは、定刻となりましたので、中央環境審議会動物愛護部会を始めたいと思います。

 まず、本日の委員の皆様のご出欠についてご報告いたします。本日は、15名中13名の委員のご出席をいただいておりますので、規定により部会は成立しております。なお、前島委員、松下委員はご欠席との連絡をいただいております。

 続いて、お手元にお配りした資料の確認をさせていただきます。

中央環境審議会第19回動物愛護部会の資料です。資料1、資料2、参考資料1、参考資料2、全部で67ページまでで右側にページを振っております。あと、座席表などが机の上にあるかと思います。欠落している場合、また資料がない場合は、事務局へ申しつけてください。よろしいでしょうか。

 それでは、林部会長、よろしくお願いいたします。

【林部会長】 おはようございます。ただいまから動物愛護部会を開催いたします。

議事に先立ちまして、先月着任されました冨岡自然環境局長からごあいさつをいただきたいと思います。

【冨岡自然環境局長】 先月5日の人事異動で自然環境局長を拝命しました、冨岡でございます。よろしくお願いいたします。

 この動物愛護管理の仕事につきましては、皆様方ご案内のように、環境省の発足に伴いまして新たに環境省の仕事として加わった部分でございますが、その後、法律改正といったこともありまして、これまでにないようないろんな進展が見られたのではないかと言われておりますが、これも皆様方、先生方、関係者の大変なご努力、ご協力によるものと厚くお礼申し上げます。

 本日は、そういった中で、動物愛護管理基本指針についてご検討をお願いすることになっております。これにつきましては、これまでの4回のご審議を取りまとめていただきました素案について、7月から8月にかけてパブリックコメントを実施したところでございまして、本日はこれを踏まえてのご審議をお願いするものでございます。

 本日も先生方の忌憚のないご意見をいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

【林部会長】 ありがとうございました。

それでは、事務局から動物愛護部会の委員の異動のご紹介をいただきたいと思います。

【築島動物愛護管理室長】 それでは、前回部会から所属委員の異動がございましたのでご紹介申し上げます。

 前回まで臨時委員としてご就任いただいておりました大槻幸一郎委員におかれましては、10月3日付でご退任されました。このことに伴う新たな委員のご就任はございません。

 なお、私、7月19日付で動物愛護管理室長に着任いたしました、築島でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【林部会長】 ありがとうございました。

 それでは、早速ですが議事に入ります。本日の議題は、先ほど局長からお話がありましたように、動物愛護管理基本指針についてでありますが、ここで十分に検討いただいた素案、これが7月20日から8月21日までの約1カ月間、パブリックコメントが行われ、これを踏まえて事務局の方で案として取りまとめていただいたものであります。本日はこれをご審議いただき、できれは答申案としたいというふうに考えております。どうか、本日も円滑な議事にご協力いただきたいと思います。

 では、議事の1、「動物愛護管理基本指針」(答申案)について、事務局よりご説明いただきます。

【事務局】 それでは、資料のご説明をさせていただきます。議事が1つでございますので、資料1、資料2、あわせてご説明をさせていただければと思います。座らせていただきます。

それでは、パブリックコメントを実施させていただきましたので、そちらの結果からご紹介をさせていただこうと考えております。

29ページをお開きください。こちらの29ページ、資料2でございますが、パブリックコメントの実施結果について、概要をご紹介してございます。まず、期間は7月20日から8月21日まで、告知の方法は環境省のホームページあるいは記者発表でお知らせをさせていただいております。意見の提出方法としましては、電子メール、ファクシミリ、郵送、いずれの方法でもちょうだいをしております。

寄せられた意見の概要といたしましては、いただいた意見数、電子メールでは224通、ファクシミリ27通、すみません郵送12通となってございますが、13通に変更していただければと思います。修正をお願いいたします。郵送13通、合計264通でございます。この1通当たり複数のご意見をちょうだいしてございますので、(2)の意見の概要としまして延べ意見数は1,314件になってございます。

この1,314件の意見でございますけれども、主な意見の例といたしまして4点ほどお挙げしてございます。

まず、1点目が、犬及びねこの引取数、今回施策としまして、犬・ねこの引取数の半減ということを素案としておまとめいただいたんですが、これについては殺処分率の半減を目標とすべきではないかというご意見、また、所有者のいないねこを含め、不妊去勢措置について助成金制度等により、こういったことを徹底すべきではないかというご意見がございました。この引取数につきましては、殺処分率、安楽殺処分される動物を少なくするというのはそもそもなんですけれども、まず、もともとの引取数を減らすということで結果として殺処分される数が減るということを目指しておりますので、この半減の目標は引取数ということのままにさせていただこうと考えてございます。また、所有者のいないねこの助成金制度の創設ということでございますが、助成金制度につきましては、各自治体がそれぞれの状況に応じて創設される制度というふうになってございますので、この基本指針の中では記載というのは今回はしないということで、修正はしてございません。

続いて、あとの2点ですが、修正をさせていただいた内容でございます。多頭飼育による周辺の生活環境が損なわれている事例を課題として取り上げるべきであると。これは、動物愛護管理法、本文の方にも多数の動物を飼うことによる周囲への生活環境の問題については1条起こしてございますけれども、これについて課題として今もあるわけですので取り上げるべきだというご意見をちょうだいいたしまして、そのように修正をしてございます。また、4つ目の3Rの原則の必要性を普及啓発すべきというご意見をちょうだいいたしまして、今回、法改正で確かにこの3Rの原則、明文されたものでございますので、この内容を含めて修正をしてございます。

パブリックコメントをいただいたものの修正部分につきまして、後ほど全文をご説明させていただこうと考えております。

まとめになりますけれども、指針全体としては1,314件のご意見をちょうだいいたしました。第1の基本的考え方のところでは194件、第2の今後の施策展開の方向につきましては1,045件、第3の推進計画の策定に関する事項に関しましては33件、第4の基本指針の点検、見直しに関しては4件、その他の意見としまして38件ちょうだいいたしておりまして、合計1,314件ということになります。

30ページ以降のパブリックコメントのそれぞれいただいた意見に対する考え方につきましては、ちょっと時間の都合上ご説明は省略をさせていただきますが、本文に戻りまして、パブリックコメントによる修正の部分について中心にご説明をさせていただこうと思います。

それでは、16ページをお開けください。こちらの16ページは、前回素案としておまとめいただきましてから、パブリックコメントと、それと私どもの方の法制的な修文、法令としてよりわかりやすい表現をということで技術的な修正をさせていただいております。それと、パブリックコメントでちょうだいした内容での修正を含めて、見え消しの形でお示ししてございます。中心1本線が取り消し線、追加させていただいた部分は下線を引かせていただいております。

16ページ、こちらは目次でございますけれども、ここはちょっと省略をさせていただきまして、17ページから説明をさせていただければと思います。

17ページ、第1、動物の愛護及び管理の基本的考え方でございます。こちらの方で、動物の愛護の部分につきまして、特にパブリックコメントでの修正というのはございません。

動物の管理の部分でございますけれども、こちらの方の部分では、パラグラフの3つ目、下から8行目のところでございます。「動物が人と一緒に生活する存在として」で始まる部分でございますけれども、ここのところの「万人に快く受け入れられるためには、」のところの「快く」を削除させていただきました。これは、動物に対する万人の感情はさまざまというふうな前提をこの中で置かせていただいておりますし、確かにおっしゃるように、愛護する、大事にするという気持ちのほかに、恐怖感や嫌悪感などを感じる方もいらっしゃるわけですから、「快く」という表現は不適当ではないかということでございましたので、ここを削除させていただいて、「万人に受け入れられるためには」という形にしてございます。

続きまして、その5行下でございます。「すべての国民が被害者になり得るものであるという認識の下に、」というところですけれども、この場合、「すべての国民」というよりも、国民に限らずすべての人、外国の方であろうと何であろうと、すべての人が被害者になり得るという認識がございましたものですから、ここのところについては、「国民」という言葉を「人」ということに変えさせていただいております。

それ以外のこのページにつきましては、内容を変えずに法令としてわかりやすい表現、正しい表現ということで、技術的な修正を加えさせていただいております。

次のページをお開けください。合意形成の部分ですが、ここ一部修正がございますが、これは法律番号を入れさせていただいたものでございまして、そのほか特に大きな変更はございません。

続いて19ページをお開けください。第2、今後の施策展開の方向でございます。1、基本的視点、(1)(2)とも、これは法制的な技術的な修正でございます。

(3)をごらんいただければと思います。(3)の下から6行目、7行目でございますが、「このためには、」から始まる文章でございますが、「国・地方公共団体等の行政機関、獣医師会、業界団体、動物愛護団体、調査研究機関等の」ということで、適切な役割分担の下におけるネットワークをお示ししているところでございますが、このネットワークの一翼を担う立場として「動物の所有者等の団体、学術研究団体」を入れるべきというコメントをちょうだいしております。この動物の所有者等の団体の中としましては、盲導犬を扱っていらっしゃる団体ですとか、あるいは盲導犬のユーザーの団体ですとか、あるいは、最近出てきておりますけれども、地域で動物の所有者の方々が集まって、動物の愛護という方向ではないけれども、地域での何らかの役割を果たしていこうと思われる団体が出てきておりますので、そういった方々もこちらの方に明記をさせていただきました。また、学術研究団体としましては、これはいわゆる学会ですとか協会ですとか、そういったものでございますけれども、後ろの方にも出てまいりますけれども、調査研究の中で動物の愛護と管理に関して、そういった部分についてもこれから盛り込んでいくということがございますので、そういったネットワークの一翼を担っていただく例示としまして明記をさせていただくという修正をさせていただきました。

続きまして20ページをお開けください。(4)の修正部分、これは文章の前後を変えさせていただいた、技術的な修正でございます。

続いて、2の施策別の取組の(1)①現状の課題の1行目でございますけれども、「動物の愛護及び管理を推進するためには、広く国民が、」の後に加えさせていただきました、「動物の虐待の防止と、」というところでございます。また、そのあとの「動物の飼養」を「動物の適正な取扱い」というふうに表現を変えさせていただきました。ここの部分につきましては、普及啓発をする、その対象は動物の飼養ですとか、適正な取扱いに限らず、動物の虐待の防止ということで、これは法律の目的として明言されてございますので、それについても付け加えるべきであるというふうなご意見をちょうだいいたしましたので、動物の虐待の防止という観点をここに明示をさせていただいたところでございます。

続きまして、そのさらに数行下になりますけれども、ここでもまた、普及啓発の中で、関係者の連携協力ということで、その関係者を例示している部分がございます。「国及び地方公共団体、獣医師会、業界団体、動物愛護団体、調査研究機関等」に加えまして、「動物の所有者等の団体、学術研究団体、」を先ほどと同じ理由で明示をさせていただいております。

続きまして②、特に修正ございません。

(2)でございますけれども、(2)の20ページの部分については、これは技術的な修正、表現の適正化を図ったものでございまして、特に内容が変わったものではございません。

次の21ページをお開けください。21ページの上から5行目でございますけれども、「年間約42万匹」が、この42万匹のスタートというか、いつの時期なのかというのは、これは加えるべきということがございまして、「平成16年度」と明記をさせていただいております。そのあとでございますが、文章的に正しくというか、わかりやすくするために必要ではないかというコメントをいただきました。「であり、そのうち約94%が殺処分」ということで、「そのうち」という言葉を入れさせていただいております。

続きまして②講ずべき施策のところでは、イの1行目、「動物が命あるものであることを踏まえた適正な飼養方法、」に続けまして、「禁止行為の周知徹底等を」ということで、禁止行為であるということを入れさせていただきました。これはパブリックコメントとしまして、正しい飼い方、正しい飼養方法のほかに、そもそも法律で罰則の対象となる行為であるということをもっと広く普及・周知すべきであるというふうなご意見をちょうだいいたしました。まだ、動物愛護管理法の中で、きちんと遺棄と虐待が罰則の対象になることというのが、日本全国にあまねくまだ十分行き渡っていないんじゃないかというようなお話がございまして、この法律上の罰則の対象になるということ自体も含めて周知をするという意味で加えさせていただいたものでございます。

続いて(3)、動物による危害や迷惑問題の防止、①現状と課題でございます。1行目から2行目のところでございますけれども、これは先ほどご紹介をさせていただきましたが、危害の問題や迷惑問題、その迷惑問題の例示といたしまして、「多数の動物の飼養等に起因し周辺の生活環境が損なわれる事態などの」、これを加えさせていただくというものでございます。これは、先ほどご紹介させていただきましたけれども、動物愛護管理法の条文が既に自治体が勧告もできるというふうな規定はあるんですけれども、それにもかかわらず現在も多くの問題事例があり、多くの方々が苦労されているということがありますので、そういったこととして、多数の動物、多頭飼育の問題というのをここで明示すべきではないかというご意見をちょうだいいたしましたので、このような修正をしてございます。

①の部分、それ以下の部分の修正については、これは文章上の技術的な修正になります。

続きまして、②講ずべき施策のところでございますけれども、アのところに「動物の愛護と管理の両立を目指すことのできるガイドライン」の例示としまして、幾つかお示ししてございましたけれども、3行目のところですが、「在り方」のあとに「等」ということを入れさせていただきました。これは先ほどの「多数の動物の飼養等に起因し」というふうな多頭飼育の問題に関してもある程度ガイドラインをつくる必要があるのではないかということから、ここでは例示をするとかなり長く、長大になってしまいますので、「等」ということで、その意味を含めてまとめさせていただいております。

続いて22ページをお開けください。22ページ、(4)所有明示(個体識別)措置の推進でございます。①は特に修正ございません。

②講ずべき施策のアでございます。「所有明示措置の必要性に関する意識啓発を行う等により、」のそのあとに、「犬又はねこに関する所有明示の実施率の倍増を図ること。」ということで、「犬又はねこに関する」ということで明示をさせていただいております。これはパブリックコメントの中で、①の現状と課題の中で、「平成15年度現在、約25%にとどまっている」という、このことの倍増を図るということであれば、この対象を明示する必要があるのではないかというご意見をちょうだいいたしました。この①の「15年度現在、約25%」ですけれども、数字としましては、犬又はねこの平成15年7月実施の世論調査の結果でございます。今後、この倍増に向けて努力をしていくというものでございます。対象を明示するというものでございます。

イは、特に技術的な修正をさせていただいただけでございます。

続いて、(5)動物取扱業の適正化でございます。①、この修正部分については技術的な修正でございまして、特に大きく内容が変更したものでございます。

②講ずべき施策でございますが、アの1行目でございます。「動物の所有者等に対し、」これは動物取扱業者の基準が変わりまして、標識等の掲示ですとか、あるいは事前説明の実施の義務づけについての周知徹底の部分でございますが、ここのところ、動物の所有者に限らず、問題はもっと広くお知らせすべきではないかというパブリックコメントのご意見でございます。もっと広くお知らせすべきではないかということではあるんですが、国民一般あるいは公衆一般とすると余りにも広くなってしまいまして、この周知徹底を効率的に図るためにはどのような方々に周知をすればいいのかということをこちらの方でも考えさせていただきまして、動物をこれから飼おうとされる方々、こういった方々に対して動物取扱業の基準が変わって義務づけがされたということをこれから周知していくということを明示させていただきまして、ここのところは修正をさせていただきました。

続いて23ページをお開けください。(6)実験動物の適正な取扱いの推進でございます。①、特に修正ございません。

②講ずべき施策のアでございます。「関係省庁、団体等と連携しつつ、」、このあとに、『「3Rの原則」や』ということで、今回、動物愛護管理法の改正によりまして条文に明記されました3Rの原則自体の周知について、この中に入れ込ませていただきました。実験動物の飼養保管等の基準の周知とあわせて3Rの原則があるということの周知を図るというものでございます。これはパブリックコメントでちょうだいした意見で修正をさせていただきました。

続いて、(7)産業動物の適正な取扱いの推進でございます。①②、一部修正ございますが、これは技術的修正でございます。

(8)の災害時対策、①現状と課題の最初の行でございますけれども、ここのところについては「地震等の緊急災害時においては、被災者の」としておりましたけれども、「動物を所有等する被災者等の心の安らぎの」ということで、どのような被災者かということを明示させていただきました。これはパブリックコメントの中で、被災者全体の心の安らぎのために、やはり同じく被災している動物を使うというふうなイメージが出るのはよくないのではないかというふうなコメントをちょうだいしてのものでございます。「動物を所有等する被災者等の心の安らぎ」ということで限定をかけさせていただいております。

続きまして、24ページをお開けください。②講ずべき措置のイについて、これは表現を適正に変えたものでございます。「所有明示等の飼主」とございましたけれども、基本指針全体にわたりまして、「動物の所有者」というふうな表現ぶりをさせていただいておりましたので、ここのところについては「飼主」ではなくて、「所有者の」ということで表現を修正させていただいております。

(9)人材育成でございますが、ここのところも2カ所修正がございますが、これは技術的な修正でございます。②は修正ございません。

(10)調査研究の推進、①でございますが、こちらのところについてもわかりやすい表現、技術的な修正でございますので、特にご説明せずに進めさせていただきます。

次の25ページをお開けください。②講ずべき施策の中に、アでございますけれども、これは調査研究を進めていく中で「連絡協議会を設置すること等」ということで、そういった連携体制の整備をお示ししている部分でございますが、この中に「学術研究団」というものを明記するようにというふうなコメントがございましたので、そのようにさせていただきました。調査研究機関ということになりますと、機関それぞれでございまして、いわゆる学会等の団体を示すものではないのではないかというふうなご意見をちょうだいいたしまして、このようなことをつけ加えさせていただいております。

続いて26ページをお開けください。26ページ、第3、動物愛護管理推進計画の策定に関する事項でございます。1、計画策定の目的、2、計画期間、3、対象地域、4、計画の記載項目、修正ございません。

5、策定及び実行、(1)多様な意見の集約及び合意形成の確保のところでございます。3行目でございますが、こちらも合意形成を図るための検討会などの設置ということで例示をしている部分でございますが、この検討会にご参画をいただく団体の例示としまして、2団体ほど、明示的につけ加えさせていただいたものでございます。「学識経験者、関係行政機関、獣医師会、」、こちらの方を加えさせていただいております。「関係業界団体、動物愛護団体、動物の所有者等の団体」でございます。

続きまして27ページをお開けください。27ページ、(2)関係地方公共団体との協議でございますが、ここの修正については技術的に文章の適正化を図ったものでございます。(3)計画の公表と(4)実施計画の作成は、修正ございません。(5)点検及び見直し、ここのところの修正についても、特段、パブリックコメントではなくて技術的な修正になってございます。

続いて28ページをお開けください。28ページ、第4、動物愛護管理基本指針の点検及び見直し、ここのところについては特段の修正はございません。

以上、パブリックコメントで修正をさせていただいた部分を中心に説明をさせていただきました。

それでは、本日は、答申案としてのおまとめをお願いしたいと思っておりますので、全文を改めて通読をさせていただければと思います。

3ページをお開けください。資料1としまして動物愛護管理基本指針(答申案)としてお示ししてございます。目次につきましては省略をさせていただきます。

4ページをお開けください。

 第1 動物の愛護及び管理の基本的考え方

(動物の愛護)

 動物の愛護の基本は、人においてその命が大切なように、動物の命についてもその尊厳を守るということにある。動物の愛護とは、動物をみだりに殺し、傷つけ又は苦しめることのないよう取り扱うことや、その習性を考慮して適正に取り扱うようにすることのみにとどまるものではない。人と動物とは生命的に連続した存在であるとする科学的な知見や生きとし生けるものを大切にする心を踏まえ、動物の命に対して感謝及び畏敬の念を抱くとともに、この気持ちを命あるものである動物の取扱いに反映させることが欠かせないものである。

 人は、他の生物を利用し、その命を犠牲にしなければ生きていけない存在である。このため、動物の利用又は殺処分を疎んずるのではなく、自然の摂理や社会の条理として直視し、厳粛に受け止めることが現実には必要である。しかし、人を動物に対する圧倒的な優位者としてとらえて、動物の命を軽視したり、動物をみだりに利用したりすることは誤りである。命あるものである動物に対してやさしい眼差しを向けることができるような態度なくして、社会における生命尊重、友愛及び平和の情操の洒養を図ることは困難である。

(動物の管理)

 人と動物とが共生する社会を形成するためには、動物の命を尊重する考え方及び態度を確立することと併せて、動物の鳴き声、糞尿等による迷惑の防止を含め、動物が人の生命、身体又は財産を侵害することのないよう適切に管理される必要がある。

 このような動物による侵害を引き起こさないように適切に管理するためには、動物の係留、屋内での飼育、みだりな繁殖の防止等の措置を講じる等により、動物の行動等に一定程度の制約を課すことが必要となる場合がある。また、所有者がいない動物に対する恣意的な餌やり等の行為のように、その行為がもたらす結果についての管理が適切に行われない場合には、動物による害の増加やみだりな繁殖等、動物の愛護及び管理上好ましくない事態を引き起こす場合があることについても十分に留意する必要がある。

 動物が人と一緒に生活する存在として万人に受け入れられるためには、動物と社会との関わりについても十分に考慮した上で、その飼養及び保管(以下「飼養等」という。)を適切に行うことが求められている。動物の所有者又は占有者(以下「所有者等」という。)は、自分が加害者になり得ることについての認識がややもすると希薄な傾向にあるが、すべての所有者等は加害者になり得るととともに、すべての人が被害者になり得るものであるという認識の下に、所有者等は、動物を所有し、又は占有する者としての社会的責任を十分に自覚して、動物による人の生命、身体又は財産に対する侵害を引き起こさないように努めなければならない。

(合意形成)

 国民が動物に対して抱く意識及び感情は、千差万別である。例えば、家庭動物等の不妊去勢措置、ねこの屋内飼養、動物実験、畜産等における動物の資源利用、様々な動物を食材として利用する食習慣、狩猟等の動物の捕獲行為、動物を利用した祭礼儀式、外来生物の駆除、動物の個体数の調整、安楽殺処分等については、これらの行為が正当な理由をもって適切に行われるものである限り、動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105号。以下「動物愛護管理法」という。)やその精神に抵触するものではないが、現実には、これらの行為に対する賛否両論が国内外において見受けられる。

 このように、個々人における動物の愛護及び管理の考え方は、いつの時代にあっても多様であり続けるものであり、また、多様であって然るべきものであろう。しかし、万人に共通して適用されるべき社会的規範としての動物の愛護及び管理の考え方は、国民全体の総意に基づき形成されるべき普遍性及び客観性の高いものでなければならない。また、動物愛護の精神を広く普及し、我々の身についた習いとして定着させるためには、我が国の風土や社会の実情を踏まえた動物の愛護及び管理の考え方を、国民的な合意の下に形成していくことが必要である。

 第2 今後の施策展開の方向

1 基本的視点

(1)国民的な動物の愛護及び管理に関する活動の盛り上げ

 動物の適切な愛護及び管理は、国民の間における共通した理解の形成がなくては進み難いものである。動物の愛護及び管理に関する活動は、古い歴史を有し、多くの貢献をしてきたが、参加者層が限定的であったきらいがある。今後は、多くの国民の共感を呼び、幅広い層に対して自主的な参加を促すことができる施策を、学校、地域、家庭等において展開する必要がある。

(2)長期的視点からの総合的・体系的アプローチ

 動物の愛護及び管理に関する施策の対象となる動物は、家庭動物のみならず、展示動物、実験動物、産業動物等であり、人の占有に係る動物が幅広く対象とされている。その施策の分野も、普及啓発、飼養保管、感染症予防、流通、調査研究等、広範囲にわたっており、様々な実施主体によって、それぞれに関係法令等に基づく施策が進められている。また、動物の愛護及び管理に関する問題は、国民のライフスタイルや価値観等の在り方に深く関わるものであるという性質を有しており、原因と結果が複雑に絡み合っていることから、施策の効果や結果がすぐには現れないものが多い。このようなことから、動物の愛護及び管理に関する施策を着実に進めていくためには、長期的視点から総合的かつ体系的に各種施策が取り組まれるようにしていく必要がある。

(3)関係者間の協働関係の構築

 動物愛護管理法の施行に関する事務の多くは、都道府県、地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の19第1項の指定都市(以下「指定都市」という。)及び同法第252条の22第1項の中核市(以下「中核市」という。)の所掌するところとなっているが、その事務を円滑かつ効果的に進めるためには、都道府県、指定都市及び中核市にとどまらないすべての地方公共団体の関与の下に、動物の愛護及び管理に関係している者の積極的な協力を幅広く得ながら、その施策の展開を図っていくことが肝要である。このためには、国、地方公共団体等の行政機関、獣医師会、業界団体、動物愛護団体、動物の所有者等の団体、学術研究団体、調査研究機関等の適切な役割分担の下に、動物の愛護及び管理に関する関係者のネットワークが国及び地域のレベルにおいて重層的に作られていくようにする必要がある。また、関係者間相互の共通認識の形成がしやすくなるように、施策の目標及びその目標達成のための手段等については、できる限り定量的かつ客観的な内容を備えたものとすることが重要である。

(4)施策の実行を支える基盤の整備

 動物の愛護及び管理に関する施策の推進を図るためには、これを支える基盤の整備が重要である。このため、国及び地方公共団体においては、地域の実情を踏まえ、動物愛護推進員等の委嘱の推進、動物愛護団体、業界団体等の育成支援及び基幹的な拠点としての動物愛護管理施設等の拡充並びに調査研究の推進等による動物の愛護及び管理についての知見の拡充等を進めることにより、施策の実施体制のより一層の強化を図る必要がある。

2 施策別の取組

 施策別の取組は次のとおりである。関係機関等は、これらの施策について、平成29年度までにその実施が図られるように努めるものとする。

(1)普及啓発
①現状と課題

 動物の愛護及び管理を推進するためには、広く国民が、動物の虐待の防止と、動物の適正な取扱いに関して正しい知識及び理解を持つことが重要である。このため、国、地方公共団体等によって、動物の愛護及び管理の普及啓発事業が行われてきているが、動物の愛護及び管理の意義等に関する国民の理解は十分とはいえない状況にある。また、生命尊重、友愛等の情操の洒養の観点から、特に子どもが心豊かに育つ上で、近年、動物との触れ合いや家庭動物等の適正な飼養の経験が重要であることが指摘されてきている。このような現状において、国及び地方公共団体、獣医師会、業界団体、動物愛護団体、動物の所有者等の団体、学術研究団体、調査研究機関等を始めとした関係者の連携協力の下に、さまざまな機会をとらえて教育活動や広報活動等に取り組むことが求められでいる。

②講ずべき施策

 国及び地方公共団体は、関係団体等と連携しつつ、学校、地域、家庭等において、動物愛護週間行事や適正飼養講習会等の実施、各種普及啓発資料の作成、配布等により、動物の愛護及び管理に関する教育活動や広報活動等を実施すること。

(2)適正飼養の推進による動物の健康と安全の確保
①現状と課題

 国民の約3分の1が動物を飼養しており(平成15年現在)、また、近年の少子高齢化等を背景とし、家庭動物等の飼養に対する志向が高まっている。このような状況において、国、地方公共団体等によって適正飼養を推進するための様々な取組が行われてきているが、依然として遺棄、虐待等の問題の発生が一部において見られている。

 また、都道府県、指定都市及び中核市における犬及びねこの引取り数は、従前に比べて大幅に減少したが、その絶対数は年間約42万匹(平成16年度)であり、そのうち約94%が殺処分されていることから、更なる改善が必要とされている。

②講ずべき施策
  1. ア みだりな繁殖を防止するための不妊去勢措置の推進、安易な飼養の抑制等による終生飼養の徹底等により、都道府県、指定都市及び中核市における犬及びねこの引取り数を半減するとともに、元の所有者等への返還又は飼養を希望する者への譲渡等を進めることによりその殺処分率の減少を図ること。
  2. イ 動物が命あるものであることを踏まえた適正な飼養方法、禁止行為の周知徹底等を行うことにより、遺棄及び虐待の防止を図ること。
(3)動物による危害や迷惑問題の防止
①現状と課題

 動物の不適切な飼養に起因して、危害の問題及び多数の動物の飼養等に起因し周辺の生活環境が損なわれる事態などの迷惑問題が発生しており、地方公共団体等に寄せられる苦情等も依然として多い状況にある。動物による危害及び迷惑問題は、所有者等とその近隣住民等との間で感情的対立を誘発しやすいなどの性格を有していることもあるため、行政主導による合意形成を踏まえたルール作り又はルール作りに対する支援等が期待されている。

 また、平成17年6月に動物愛護管理法の改正が行われ、人の生命、身体又は財産に害を加えるおそれが高い特定動物については、地方公共団体の必要に応じた条例による飼養許可制から法による全国一律の飼養許可制とされたところである。

②講ずべき施策
  1. ア 地域における環境の特性の相違を踏まえながら、集合住宅での家庭動物の飼養、都市部等での犬やねこの管理の方法、所有者のいないねこの適正管理の在り方等を検討し、動物の愛護と管理の両立を目指すことのできるガイドラインを作成すること。
  2. イ 国は、動物による人の生命等への危害の発生防止のより一層の徹底を図るために、有識者等の意見を聴きながら特定動物の選定基準の在り方を検討すること。
(4)所有明示(個体識別)措置の推進
①現状と課題

 犬又はねこに関する所有者の明示(個体識別)(以下「所有明示」という。)の実施率は、平成15年度現在、約25%にとどまっている。動物の所有者が、その所有する動物が自己の所有に係るものであることを明らかにするための措置を講ずることは、動物の盗難及び迷子の発生の防止に資するとともに、迷子になった動物の所有者の発見を容易にし、所有者責任の所在の明確化による所有者の意識の向上等を通じて、動物の遺棄及び逸走の未然の防止に寄与するものである。このような所有明示措置の意義及び役割等についての国民の理解を深めるとともに、各種識別器具の普及環境の整備等を推進すること等により、所有明示の実施率の向上を図る必要がある。

②講ずべき施策
  1. ア 所有明示措置の必要性に関する意識啓発を行う等により、犬又はねこに関する所有明示の実施率の倍増を図ること。
  2. イ 関係省庁及び団体の協力の下に、公的機関によるデータの一元的管理体制の整備、個体識別技術の普及、マイクロチップリーダーの配備等、個体識別手段の普及のための基盤整備を図ること。
(5)動物取扱業の適正化
①現状と課題

 従前の動物取扱業に係る届出制の下では、不適切な動物の取扱い等に対して勧告又は命令等を行っても改善が見られないなどの悪質な事例が存在しており、また、このような事例以外においても、動物取扱業全般について施設や管理の水準の向上が必要な状況にあった。このため、平成17年6月に動物愛護管理法の改正が行われ、動物取扱業については、それまでの届出制から登録制とされたところである。本改正の趣旨を踏まえて、動物取扱業のより一層の適正化を図るため、動物取扱業の登録制度の着実な運用を図る必要がある。

②講ずべき施策
  1. ア 動物を飼養等しようとする者等に対し、動物取扱業者に対し標識等の掲示、販売時における動物の特性及び状態等に関する事前説明の実施等が義務付けられたことについての周知徹底を図ること。
  2. イ 優良な動物取扱業者の育成策を検討し、業界全体の資質の向上を図ること。
  3. ウ 国は、動物の健康及び安全の確保のより一層の推進を図るために、有識者等の意見を聴きながら幼齢な犬及びねこの販売制限の在り方を検討すること。
(6)実験動物の適正な取扱いの推進
①現状と課題

 実験動物の飼養等については、実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準(平成18年4月環境省告示第88号。以下「実験動物の飼養保管等基準」という。)に基づき、自主管理を基本としてその適正化を図る仕組みとなっているが、本基準の遵守指導等を円滑に行うための体制整備が十分にされていない施設が一部にある。動物を科学上の利用に供することは、生命科学の進展、医療技術等の開発等のために必要不可欠なものであるが、その飼養及び科学上の利用に当たっては、動物が命あるものであることにかんがみ、科学上の利用の目的を達することができる範囲において、国際的にも普及し、定着している実験動物の取扱いの基本的考え方である「3Rの原則」(代替法の活用:Replacement、使用数の削減:Reduction、苦痛の軽減:Refinement)を踏まえた適切な措置を講じること等が必要とされている。

②講ずべき施策
  1. ア 関係省庁、団体等と連携しつつ、「3Rの原則」や実験動物の飼養保管等基準の周知が、効果的かつ効率的に行われるようにすること。
  2. イ 国は、実験動物の飼養保管等基準の遵守状況について定期的な実態把握を行うこと。
(7)産業動物の適正な取扱いの推進
①現状と課題

 動物の愛護及び管理の観点からする産業動物の適正な取扱いについては、国際的な動き、関係法令等との整合性、我が国の実情等を踏まえた上で飼養等の在り方を検討し、その普及啓発を進めていく必要がある。

②講ずべき施策
  1. ア 国は、動物の愛護及び管理に配慮した産業動物の飼養等の在り方を検討し、産業動物の飼養及び保管に関する基準に反映すること。
  2. イ 産業動物の性格に応じた動物の愛護及び管理の必要性に関する普及啓発を推進すること。
(8)災害時対策
①現状と課題

 地震等の緊急災害時においては、動物を所有等する被災者等の心の安らぎの確保、被災動物の救護及び動物による人への危害防止等の観点から、被災地に残された動物の収容及び餌の確保、特定動物の逸走防止及び捕獲等の措置が、地域住民、国や地方公共団体、獣医師会、動物愛護団体等によって行われてきている。今後とも引き続きこれらの措置が、関係機関等の連携協力の下に迅速に行われるようにするための体制を平素から確保しておく必要がある。

②講ずべき措置
  1. ア 地域防災計画等における動物の取扱い等に関する位置付けの明確化等を通じて、動物の救護等が適切に行うことができるような体制の整備を図ること。
  2. イ 動物の救護等が円滑に進むように、逸走防止や所有明示等の所有者の責任の徹底に関する措置の実施を推進すること。
(9)人材育成
①現状と課題

 動物の愛護及び管理に関する施策の対象は、広範かつ多岐にわたっており、施策の実施に当たっては相当の知識や技術が必要であることから、地方公共団体は、獣医師等動物の適正な飼養及び保管に関し専門的な知識を有する動物愛護担当職員を置くことができることとされている。

 また、動物の愛護及び管理に関する施策の中には民間の有識者等による対応を求めることによって、行政の限界を超えて地域に根付いた形で動物の愛護及び管理が広がっていくことが期待される課題もある。しかし、例えば都道府県知事、指定都市及び中核市の長により委嘱された動物愛護推進員等の人数は、平成15年度末現在、98地方公共団体中21地方公共団体、約1400人にとどまっているなど、民間の有識者等に対して協力を求めることができるような体制の整備は十分とはいえない状況にある。このため、動物愛護推進員等の人材の育成等を積極的に推進していく必要がある。

②講ずべき措置
  1. ア 動物愛護管理行政の担当者の専門的な知識や技術の習得に対する支援を行うこと。
  2. イ 関係地方公共団体等における協議会の設置及び動物愛護推進員等の委嘱を推進すること。
  3. ウ 国及び関係地方公共団体等における官民の連携事業を推進すること。
(10)調査研究の推進
①現状と課題

 動物の愛護及び管理に関する調査研究は、関係する分野が多岐にわたり、かつ応用的であるといった特徴を有していることから関係学会等は広範にわたっており、その知見等が体系的に整理されているとはいえない状況にある。多くの国民の共感を呼び、自主的な参加を幅広く促すことができる動物の愛護及び管理に関する施策を進めるためには、科学的な知見等に基づいた施策の展開も重要であることから、動物の愛護及び管理に関する調査研究を推進する必要がある。

②講ずべき施策
  1. ア 全国及び地域の各レベルにおいて連絡協議会を設置すること等により、行政機関と関係学会等の学術研究団体及び調査研究機関との連携体制の整備を図ること。
  2. イ 関係機関が協力して、調査研究成果等に係る目録の作成を行うこと。

第3 動物愛護管理推進計画の策定に関する事項

1 計画策定の目的

 動物愛護管理推進計画(以下「計画」という。)は、本基本指針に即して、地域の実情を踏まえ、動物の愛護及び管理に関する行政の基本的方向性及び中長期的な目標を明確化するとともに、当該目標達成のための手段及び実施主体の設定等を行うことにより、計画的かつ統一的に施策を遂行すること等を目的として策定するものとする。

2 計画期間

 本基本指針との体系的な整合性を確保するため、計画期間は、原則として平成20年4月1日から平成30年3月31日までの10年間とする。

3 対象地域

 対象地域は、当該都道府県の区域とする。

4 計画の記載項目

 計画の記載項目については、動物愛護管理法第6条第2項に、動物の愛護及び管理に関し実施すべき施策に関する基本的な方針、動物の適正な飼養及び保管を図るための施策に関する事項、動物の愛護及び管理に関する普及啓発に関する事項、動物の愛護及び管理に関する施策を実施するために必要な体制の整備(国、関係地方公共団体、民間団体等との連携の確保を含む。)に関する事項及びその他動物の愛護及び管理に関する施策を推進するために必要な事項と規定されているところであるが、これらを踏まえ、地域の事情に応じ、記載事項の追加及びそれらの構成の在り方等について、必要に応じて検討するものとする。

5 策定及び実行

(1)多様な意見の集約及び合意形成の確保

 計画の策定に当たっては、多様な意見、情報及び専門的知識を把握するとともに、それらを必要に応じて計画に反映させるために、学識経験者、関係行政機関、獣医師会、関係業界団体、動物愛護団体、動物の所有者等の団体、地域住民、研究機関等からなる検討会を設置する等して、計画の策定及び点検等を行うよう努めるものとする。また、計画の策定過程等の透明性の向上及び計画内容についての合意形成等を図るために、必要に応じてパブリック・コメント等を行うものとする。

(2)関係地方公共団体との協議

 動物愛護管理行政の推進には、都道府県が主要な役割を果たしているが、指定都市においては動物取扱業の登録及び特定動物の飼養許可に関する事務等、中核市においては犬又はねこの引取りの事務等を実施している。また、動物の愛護及び管理の普及啓発、地域住民に対する直接的な指導等では、すべての市区町村においてその役割が期待される場合もある。このため、より計画の実効性を高めるために、計画を策定し又は変更しようとするときは、あらかじめ関係市区町村の意見を聴くものとする。なお、一の都道府県の区域を越えて発生している問題等があり、広域的な視点からの対応が必要と考えられる場合は、必要に応じ、国は技術的助言を行うこと等により、関係都道府県等との連絡調整等を円滑に行うことができるよう努めるものとする。

(3)計画の公表等

 計画が策定された後は、速やかに公報等により公表するとともに、環境大臣に連絡するものとする。

(4)実施計画の作成

 必要に応じて、動物の愛護及び管理に関する施策に係る年間実施計画等を策定し、多様な主体の参加を広く得ながら、計画の推進を図るよう努めるものとする。

(5)点検及び見直し

 動物の愛護及び管理に関する行政の着実な推進を図るため、毎年、計画の達成状況を点検し、施策に反映させるものとする。また、基本指針の改定等に合わせて、必要な見直しを行うものとする。

第4 動物愛護管理基本指針の点検及び見直し

 動物の愛護及び管理に関する行政の着実な推進を図るため、毎年度、基本指針の達成状況を点検し、その結果を施策に反映させることとする。なお、点検結果については、その概要を公表するものとする。

 また、状況の変化に適時的確に対応するため、策定後概ね5年目に当たる平成24年度を目途として、その見直しを行うこととする。

以上でございます。

【林部会長】 ありがとうございました。

 それでは、これからご意見をいただきますが、まず最初に、今ご説明いただいたものは、仮称として「動物愛護管理基本指針」となっておりますけれども、この仮称を外してよろしいかどうかをお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。これから論議いただくのは、仮称がない「動物愛護管理基本指針」ということになりますけれども、それでよろしいでしょうか。

(異議なし)

【林部会長】 それでは、これから「動物愛護管理基本指針」、この案についてのただいまのご説明にご意見あるいはご質問がありましたら、どうぞおっしゃってください。いかがでしょうか。これは随分長い間論議してきたものでありますが、パブリックコメントを生かしていただいたところが何カ所かありましたので

【中川(志)委員】 よろしいでしょうか。この最後のところ、14ページですが、(3)の計画の公表等というところで、「公表するとともに、環境大臣に連絡するものとする。」というふうに表現されているんですけれども、この、「連絡」という意味は、この字義のとおりの連絡なんでしょうか。それとも、この連絡されたものについて何か付随的なものが付加されることが可能なのかどうかということをお聞きしたいと思います。

【林部会長】 お願いいたします。

【築島動物愛護管理室長】 一般には、こういったときに「報告」という言葉を今まで使ってきたのではないかと思うのですけれども、国と地方公共団体との関係というのがまさに対等な立場であって、そういった意味合いを含めて、地方公共団体にある程度主体性がありますよといったことがあって、この連絡といった言葉を使っております。連絡するときに、こういったものをつくりましたので連絡しますというので中身をつけていただくといったようなことを意図しているものでございます。

【林部会長】 よろしいですか。中川(志)委員のご質問は、ひょっとすると、この報告じゃなくて連絡は対等な関係だと。しかし、いただいたらそのままで、こんなものじゃだめだよというようなことは言わないということですね。

【中川(志)委員】 そうですね、今、部会長のおっしゃったとおりなんですけれども、前段からの話で、この法律の実施に当たっての基本的な主体というのは地方公共団体にあると、地方自治体にあるということを繰り返しこの条文の中で言っているんですけれども、その場合に当然のことながら、各地方自治体によってそれぞれ多様な施策が決定されると思うんですね。それを地方自治体同士の連絡協議会というようなものでお互いの検討をするということは当然あり得ると思うんですけれども、しかし、それを全部受けて全国的な視野で見られるのは、やっぱり、国しかないだろうというふうに思うんですね。「連絡」という語感が、何となく連絡すればいいという感じに非常に受け取れるんですけれども、国が全般的に指導するとかということは極めて難しい問題ではありますけれども、もう少し、連絡という意味の中に、先ほどの全国ネットをつくって具体的に検討するというようなことも含まれるのかなと一瞬思ったんですけれども、これは単なる字義どおりの解釈ということでいいんですね。

【築島動物愛護管理室長】 今おっしゃったような意味ですと、やはり字義どおりというふうに考えているところでございます。

【林部会長】 中川(志)委員、その上のところに、計画の公表等の上に、「国は技術的助言を行うこと等により、関係都道府県等との連絡調整等を円滑に行うことができるよう努めるものとする。」と、随分長い文章ですけれども、技術的助言を行うということがここには明記されておりますので、これを通じていろんなことが行われるのではないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。

【中川(志)委員】 結構です。

【林部会長】 ほかにご質問とかご意見ありますか。

【菅谷委員】 犬・ねこの引取りの話ですが、8ページあたりですが、これから半減しましょうというようなことについて、この施策については、このとおりだと思います。具体的にそれを進めるに当たって、大都市を中心にして難しい問題といいますか、努力によってかなり減ってはいるけれども、さあ、これから半減だということになったときに、先ほどらい出ている環境省としての具体的な手段を講ずるという方向というんですか、もう少しそういうものが通知の中なり解説書の中なり、または連絡会議等の中でもう少し砕いた形でやるべき時期じゃないかな。ご案内のとおり、市町村合併という広域化ですか、行政の第一線が非常に広域化していって、人数はふえているかというと、必ずしも人数はふえるどころか減っているような状況で、先端で働いている人たちはかなり大変な思いをしているということで、これほどたくさんな代理の施策をやっていくということですから、もう少しわかりやすい形でお示しできればいいなと、思ったんですが。

【林部会長】 お願いします。

【築島動物愛護管理室長】 今の引取り数の半減という話を含めて、自治体に対して今後どういった方法が望ましいのかといったことにつきましては、いろんな会議等の場を通じて、私どもの考えをお伝えしていきたいと思います。

 今の引取り数の半減につきましては、大きく分けて3つの観点を総合的に推進する話かなというふうに考えておりまして、1つ目が遺棄・逸走の防止ということで、こういった観点からは、遺棄というのは禁止行為であることとの周知、あるいはマイクロチップ等の個体識別措置の普及と、それから、情報化社会が大分進みましてインターネットなどが普及しておりますので、そういった形による、情報提供による逸走動物の返還率の向上といったことが遺棄・逸走の防止といった関連から、まずあるのかなと。

 それから、適正飼養といった観点から、これは長年続けてきている話ではございますが、動物の適正飼養に関する普及啓発、それから、引取時における繁殖制限措置の必要性等の普及啓発、それから、飼主のいないねこの管理等に関するガイドラインの策定や周知といったようなことがあるかと思っています。それから、3つ目の観点として、安易な飼養等の防止ということで、動物取扱業の適正化、これは販売時における重要事項説明といったものが義務づけられておりますので、そういったことの徹底によって安易な飼養の防止ということで図られるのではないかというふうに考えております。

 いずれにしましても、こういった取組みを総合的に推進し、さらに自治体においてさらなる取組みを進めていただければと、その際には、民間の方のお力も借りるといったことも自治体の方には考えていただくところがあるのかなというふうに考えるところでございます。以上でございます。

【林部会長】 よろしいでしょうか。

 どうぞ、兵藤委員。

【兵藤委員】 そのねこの引取りの件につきまして、もう少しお尋ねしたいと思います。

 ねこには、野ねこというのがありまして、それから飼主の不明ねこ、家庭で飼っている家庭ねこ、それに地域ねこと称するのがあるんですけれども、この地域ねこは非常にあいまいなところがございまして、この中でも所有者及び占有者という言葉が使われる、占有者について非常にあいまいに、きちんと答えを出してあげないと、地方団体で施策を実現するのに非常に不可能ではないかと僕は考えているんです。この地域ねこについては、地域でいわゆる面倒を見ている人たちに占有者として扱うものなのか、それとも占有者イコール飼主、責任を問えるものなのか、所有権がここで発生してくるものだろうか、勝手にこのねこを動かしたり何かしたときには罰則が加わるものだろうかと、ここのあたりをきちんと国の方でしっかりしてあげないと、地方団体がねこの問題についてはどうやっていいのかわからないというのがずっと流れている問題だと思っておりますので、ガイドライン等でしっかりそのあたりのはっきりした解釈を出していただいて、地方自治体の方に流していただければ、それに従って動くのではないかと思います。

 それから、国でやるものについては、所有権の明示が飼主責任というのは全くありますけれども、それから災害時のいわゆる所有者明示、ここでは25%というふうに、4匹のうち1匹は所有者をつけておりませんね、現実では。ねこなんていうのは10頭中10頭つけてないでしょう。犬も、25%はとてもつけていないと実は思っています。ここで所有者の責任を問うとか、遺棄を防止するとか、あるいは災害時の行政の手間を省くとかということであれば、飼主のところにすぐ返すのであれば、国の方でしっかりした個体識別のための何か施策をはっきり出していただかないと、地方では無理じゃないかと実は思っています。幾ら今の大きな鑑札をチワワにぶら下げるということはもう大変。それは、外れた時代が、皆、雑種の十五、六キロあったときの鑑札の大きさしかありませんので、このあたりは見直す必要があると、実は思っております。

そんなことを感じて、この答申案については、別に私は問題ありませんけど、ガイドライン等でしっかりしたものを地方に流さないと、幾ら時間がたってもこのまま流れるだけだと、今までの経緯を見ましてもそんなふうに感じていますので、早目に、それから、幼齢動物等も検討会を早速立ち上げるなりして、5年後の見直しについて、はっきりして、もう早く手をつけてほしいなと実は思っていますので、よろしくお願いいたします。

【築島動物愛護管理課長】 今の地域ねこにかかる占有者といったような話につきまして、兵藤委員ご指摘のように、確かにどういった状態が占有と言えるかといったことにつきましては、なかなかきっちりと定義づけができないところがございまして、えさを与えるというような、1つの事象だけをとらえて判断できるものではないといったようなことで解釈をしてきております。ただ、今のようなお話もございますので、できるだけその辺を明らかにしていく取組みも、私どもとしてもしていきたいと考えております。

 それから、幼齢動物の話が今出たかと思いますけれども、これにつきましてはこの審議会でもさまざまな議論がされてきたというふうに伺っております。これにつきましては、幾つかの材料集めを私どもはしたいと思っております。1つは、国外の状況。国外が例えば8週齢といったことで決めている国があるということでございますが、それの根拠となっているようなものが何なのかといった点を調べるといったことですとか、あるいは一方で、日本の販売の実態の中でどうなっているか。これにつきましては、業界の団体の方で、自主的な取組みとして幼齢動物の販売制限を自主的にやっていくといったような動きもございます。そういった動きの効果等も見ながら検討する必要があるのかなというふうに考えております。

 そういったような材料を集めた上で、この検討を進めたいと。いずれにしましても、次回の見直しといったものがございますから、それに間に合うようには当然やらなきゃいけないといったようなことで考えているところでございます。

【林部会長】 よろしいでしょうか。

【兵藤委員】 はい。

【林部会長】 それでは、この動物愛護基本指針そのもの、この文章そのものについてのご意見はございませんか。

(なし)

【林部会長】 もしなければ、これを正式にお認めいただくという手続に移りたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。

(異議なし)

【林部会長】 それでは、ここで正式に(案)がとれたということにさせていただきたいと思います。

 それでは、先ほどからも論議が出ておりますけれども、この機会に、案がとれましたら、今後どうなるのかということは、大変関心がありますので、今後のスケジュールを事務局から、ご説明いただきたいと思います。

【築島動物愛護管理課長】 ありがとうございました。

 このご答申案の今後のスケジュールについてでございますけれども、中央環境審議会の議事運営規則というものがございます。その中で、部会の決議、この動物愛護部会の決議は、中央環境審議会の会長の同意を得て審議会の決議とすることができるというような定めがございます。こうしたことを踏まえまして、今日、この審議会が終わった後に部会長から中央環境審議会の会長にこの答申案をご報告いただきまして、会長の同意を得た後に、中央環境審議会の会長から環境大臣に対して答申をしていただくということで進めていくことになります。

 環境省といたしましては、この答申をいただいた後に、できる限り早く、これ、告示を最終的にはいたしますが、その手続を行いまして10月末を目途に告示を行いたいというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

【林部会長】 ありがとうございました。

 私、部会長の方から、中央環境審議会会長、鈴木会長に答申を報告し、鈴木会長の方から今度は環境大臣に答申していただくと、こういうことになるというご説明でした。よろしいでしょうか。

(了承)

【林部会長】 それでは、もう少し時間がありますので、この機会に、今後の動物愛護管理行政の推進に向けて、委員の皆様から、もう既に先ほどから意見をいただいていますけれども、幼齢動物についてもお話をいただきましたし、あとは引取り数を半減させるにはどう考えておられるのかというようなご意見もいただきましたけれど、ほかに何かありましたら、ぜひ。

 どうぞ、大矢委員から。

【大矢委員】 幼齢動物、犬・ねこの問題が出ておりますけれども、実は今回の法律の中でその他の愛玩動物と犬・ねことが一緒になってしまっているものですから、業界がかなり混乱いたしております。といいますのは、子供さんたちが飼うハムスターだとかモルモットだとか、そういったものの販売説明、一体どこまでするのか、この法律が想定している、例えばゴールデンレトリバーを子供のときに飼ったら、成獣になったらどのくらいになるかとか、体重はどうだとか、どのくらいの費用がかかるとか、そういったようなこと。それで、きちんと飼えますかということが趣旨だと思うんですね。ところが、手乗り文鳥だとかハムスターだとか、そうしたものはそれほどの大きなものがいないわけです。安易に飼える。安易に飼えることが自体が問題かどうかというのは、これは別の問題ですけれども、情操教育の問題とか、それから命を大切にする、そういったものは、大きい、小さいは、はかりにかけられないかもしれないけれども、もう少し業界そのものをきちんと把握していただいて、できれば、犬・ねことその他の愛玩動物を分けたようなものが策定されていけば、もっと愛護に関して進んでいくんではないかなと、最近、肌で感じております。

【林部会長】 はい。これについて。

【築島動物愛護管理課長】 今いただいたご指摘を踏まえまして、そういった実態等をまた業界の方から聞かせていただきまして、対応すべき点がございましたらそれを検討するように進めていきたいと思います。

【林部会長】 本当に飼主の方にとって必要な情報と、比較的どこからでも得られるような情報というのは、確かに全く同じということではないだろうと思います。

 今泉委員、どうぞ。

【今泉委員】 ちょっと違うんですが、普及啓発のところで、やはり一番大事なのは、小学校とかね、ちょっと分野が違うのですが、ぜひともそちらの方も含めて環境省で管理するようになればなと思います。一番、子供たちが大事だと思うんですね。その辺、頑張ってほしいと思います。

【林部会長】 これは要望ですね。

 ほかにご意見ありませんか、あるいはご質問。どうぞ、青木委員。

【青木委員】 私、この基本指針の審議中に機会があったら言おうかと思っていたけれども、なかなか適切な場面がなくて発言できなかったことがありますので、一言、法律学的に指摘されている問題点というのがありますので、私自身が書いたことではありませんが、法律学の分野の代表という側面もあろうかと思いますのでご紹介して、考え方の整理についてもし可能ならば、事務局の方からお答えをいただければと思います。

 この法律、最新改正がなりました後、帯広畜産大学の吉田真澄先生がコメントを、ペット六法第2版というので書かれておりまして、そこで吉田さんが2つ、問題点を指摘されております。

 1つは、この法律の最新改正の中には、動物愛護管理に関する施策の推進に関する事項をいろいろ定めることができると、こういうことが書かれていますが、施策そのものについては、どういう手続でどうやって決めていくかということについては書かれていない、という問題点を実は指摘をされておられまして、吉田先生の言い方を借りるならば、大いに無理があるけれども、緊急避難的に動物愛護管理基本指針については施策の策定及び推進に関する事項を定めることができると、こう読むしかないだろうと。非常に技術的な指摘という側面もありますので、耳で聞かれても何が問題なのか、文字で読まないとちょっとわかりづらいところがあるんですが、施策そのものについてどう決めるかについて法律が余り決めていないというところが問題だという指摘で、これは本来、国会が考えるべきことで、我々審議会がここで議論するべき話題ではないのですが、1つそういう指摘があるということを将来のためにご紹介しておきます。

 もう一つは、先ほどの兵藤先生のご指摘とも関係があるんですけれども、個体識別ということについて、特に危険動物については国が一元的に基準を決めて、マイクロチップを基本として管理する。さらに、それ以外の動物についても、飼い犬・飼いねこ等についても基本的には情報管理を推進していこうと、こういうことだと思うんですね。動物の愛護管理という、そういう視点から見た場合、やはり中心的には管理がちゃんとできていた方が何かと保護管理のためにも便利であるし望ましいと、こういう方向になるわけだけども、そこに飼主であるとか国民が、本当にその制度がいい制度として受け入れられるのかという視点が欠けているということを、吉田先生は同じ文章の中でご指摘になっておられまして、個人情報の保護といったようなことのマイナス面について余り議論がなされていないのではないかと。これまた、動物愛護部会の答申にかかわる実質的審議で我々が議論すべき事柄の範囲を超える大きな指摘だと思いますが、この点についてもやはり将来の行政推進の上では、確かに重要な課題だろうと思いますので、あわせてご紹介をしておきます。

 以上です。

【林部会長】 ありがとうございました。

 丸山委員、どうぞ。

【丸山委員】 11ページの人材育成のところで意見というよりかお伺いしたい。先ほど菅谷委員がご心配なさっていた、これからどうこれを進めていくかという実質的な部分が非常に大事だろうと思っているので、2つほどお伺いしたいんですが、地方自治体でこういう動物愛護推進員の状況というのは、どんどんふえていくような、そういうことが見られているのかということと、具体的に、現在、約1,400人が全国でとありますが、こういう数字は無理なのかもしれませんけれども、飼育頭数に対してこういう推進員というのはどれくらいまでいたら十分と言えるか、そういう目標みたいなものというのは何かあるのでしょうか。その2つを教えていただけると大変ありがたいのですが。

【林部会長】 はい。これは先に答えていただいた方がよろしいですかね。

【築島動物愛護管理課長】 申しわけございません。きちんと、数字として今手元に持ってございません。両方とも、今この場で明確に、例えばふえている傾向にありますと、断言できる状況ではございませんし、また、目標という形でどういった指標のもとにどれだけ必要だといったような分析の仕方、目標の立て方といったものも、私どもの方としては今までそういった形ではしてきていないというのが実態でございます。

【丸山委員】 地方自治体での推進員の増加傾向とか、そういう取組みが積極的になされているというような、そういう情報はお持ちなんですか。

【築島動物愛護管理課長】 やはりここでも、この数字が98のうち21というのがございますように、推進員の取組み、熱心なところと、そうとはちょっと言い切れないようなところとあるということで、これは、どこの団体が何人ぐらいといったものは、それ自体は、毎年、地方自治体にいろいろとお聞きする中で、そういった数字は持って、私どもの方も把握しているところでございます。

【林部会長】 国と地方自治体の関係は上意下達ではありませんが、国が基本指針を定め、これから地方自治体が計画を定めますので、人間は計画を定めるときに余りいいかげんな計画って、定めないものなんですね。そこに恐らく出てくるだろうと。いろんなおくれているところ、98のうち21しかまだ定めていないと。平成15年当時ですけど、これ、本当に地方自治体によってばらつきがあります。このばらつきを、何としてでも高い方向で均一化、均一までいかなくても、ある程度底上げをしようというのが、指針を定め計画を書く各々がみずから立てるという、そういうアクションで担保できないかということですね。

【大矢委員】 私は社団法人日本愛玩動物協会という協会の専務理事を務めさせていただいていますが、私どもの協会で動物愛護推進員という資格制度をやって、今200人ばかりの方が、この愛護推進員になっていらっしゃいます。お話を伺いますけれども、今おっしゃったように各地方自治体で温度差が非常に違いがある。何をしていいのか、各地方自治体の方から愛護推進員に何を求めているのかがはっきりしないという部分が非常に多いというご意見が多い。それから、この活動に関しては完全ボランティアで、全部自前で交通費も出ないでというような形態のご意見も出ています。同じ自治体の中でも、区によって、それぞれ分かれているようでございますけれども、区によってその行政担当の方のご意向でまた違うというようなことで、今後この指針が出て地方自治体にいろいろと出ていくと思うんですけれども、そこの中でかなりきちっとした形を持っていかないと、今、委員がおっしゃったような、ばらばらで名ばかりでというようなことが出てくる可能性が非常に強いなと、現状ではそういうことを感じております。

【林部会長】 どうぞ、奥澤委員。

【奥澤委員】 細かい状況を必ずしもつかんでいないということと、全国的な状況はむしろ環境省さんの方で、実際にはいろいろ把握はされても、この場にはないということでしょうけれども、されているんだろうと思いますし、私自身はちょっと把握していないんですが、いわゆるこの制度そのものは、単に自治体が委嘱するというだけではなくて、それを支えるための関係のいろいろな団体と協議会をつくる。それとセットで、実際に自主的な運営を高めていくという、こういうシステムになっております。それで、実際には、そういう基本的な環境をまず整えながら、同時に委嘱という行為になっていくという法律上の制度の構図になっているということで。今、大矢委員から言われましたように、多分ここにも数字がある21団体ということで、非常に自治体によって差があるのは事実だろうと思います。

 例えば、一例として、東京都の取組みを、ちょっと細かい数字等のことは今手持ちがないんですが、かなり前から東京都はそういう関係団体と協議会の設置をしていただいて取り組んできております。当初は、そういう協議会の構成団体からの推薦というような形で、だんだんに今度は基礎的自治体の市町村からの推薦枠に広げるとかという形で、人数だけではなくて、枠組みといいますか、制度の枠組みやなんかを少しずつ拡大を進めているという状況です。ただ、それで十分なのかどうかということになりますと、それから何をしていただくのかというのは、関係団体、いわゆる協議会の組織との関係であるとか、あるいはそこの地域での動物愛護の状況とかということで、お願いする中身もやはり地域の実情に応じて考えていかなければならないのではないかと思っています。

 お答えになったかどうか、今持っている情報だけでご説明させていただきました。

【林部会長】 ありがとうございました。

 藏内委員。

【藏内委員】 一言だけ言っておきます。

 兵藤委員が、先ほど狂犬病予防法に基づく犬の登録それから注射済票のことについて発言をされました。実はこれは今、厚生労働省の方でパブリックコメントを求められておりまして、各地方自治体の権限で、その形態あるいは素材については決めることができると、こういうように変わる見通しなんですね。ただ、私は、今、首輪をつけている犬そのものも余りいないし、そういった小手先の単なる表示すべきものを変えるだけで、法の趣旨である予防注射の接種率の向上あるいは登録の向上にはつながらないと、こう思っているんですね。

 厚生労働省の方は、この動物愛護管理法の改正、あるいはこの審議会に非常に高い関心を持ってございます。つまり、狂犬病予防法で犬の登録というものの、この解釈をマイクロチップも入れていただければ、私は随分、マイクロチップというのは推進すると思うんですね。ただ、法律では「装着」という表現になっているわけですけれども、マイクロチップはどうも装着じゃなくて埋め込みなんだと。しかし、我々から比べれば、集団的自衛権もあれだけ見直しがあるぐらいですから、これぐらいのところは、僕は法律改正にしなくても、考えていただいてでもいいんではないかと思っています。つまり、登録と個体識別というのは表裏一体なんです。

今日お願いをしておきたいのは、環境省の方からも厚生労働省の方に対して、ぜひここのところの整合性を図っていただけるように、狂犬病予防法を改正しなくても見直すことができるという解釈ができるように働きかけを行っていただければ、我々のここの趣旨はかなり大きく推進すると思いますので、よろしくお願いをしておきたいと思います。

【林部会長】 ありがとうございました。

 では、いかがでしょうか。どうぞ、中川(志)先生。

【中川(志)委員】 今回の指針、全体的なことですけれども、ぜひ部会長にお願いしたいと思います。今回の法律改正そのものもそうなんですけれども、やはり画期的なものだったと思うんです。今度の指針もそれに基づいて、基本的な考え方のところ、例えば動物の愛護とは何かという、これほど中に突っ込んでコンセンサスを得られるような、ある意味では、今まで愛護って何だろうなというような非常に茫漠としていた部分をかなりコンセントレートしたという意味では、やはりすばらしいものだったのではないかと、私は高く評価をしております。

 それから、動物の管理というのも、これも法律の中で「共生」という言葉を初めて使って、その共生というものに配慮するという基本的な考え方が動物の管理というものの中に非常に強くあらわれていると思います。そういう意味では、これも非常に重要なことで、今議論されているすべてのことがここに集約されると思うんです。

 もう一つ、3番目の合意形成というのは、これは一番この法律で難しい部分で、私が先ほどから申し上げたようなこともすべてここの中に入ってくるんですけれども、多様な考え方が当然動物愛護にはあるよと。それを是認しつつもマジョリティーにしていく必要があるということを言っているわけで、そうすると、ここの部分に今度の指針、計画の多くのものが包含されてくるだろうと思うので、この合意形成のところが最もこれから大きな意味を持つ部分だろうと思うんですね。

そういう意味で、今回のこの指針については、ぜひ中央環境審議会の方でもお通しいただけるようにご努力を願いたいという要望を込めてお願いいたします。

【林部会長】 ありがとうございました。

 どうぞ。

【兵藤委員】 もう一つ聞いておきたいことがあるんですけれども、実は、私たちが、動物あるいは福祉団体がよく遭遇することなんですけれども、多頭飼育の件です。これは業とはしていない、いわゆる感情的に負けてしまって収集をしてしまう。周辺住民には迷惑はかからない。だから、山の中でやったり、あるいは室内でも密室の中で飼ってしまうということがありまして、これは登録も何もなされないわけなんです。それから、動物ボランティアさんの中でもNPOを取って、シェルターを持ってやっているところがあります。これもまだ組織的に軟弱なところがありまして、集めてしまうと、もう手に負えなくなってくるような実情もありますけれども、ここのところをぜひ、今後の問題ですが、福祉団体、愛護団体あるいは集めてしまった動物たちにある程度登録をさせるものをぜひ一つ考えていただきたい。絶えずここでは、集めてしまった動物が面倒を見ていた人たちがお手上げをして、各動物愛護福祉団体が行って、ボランティアさんが行ってこれを救出する非常に困難な案件が、全国的にどこともなくいつもある状況ですから、これを何とか解消してほしいなというのが、私たち現場で働いていまして毎年毎年思われることです。このあたりの規制をある程度やっていただきたいなと、今後の問題だと思っております。

【林部会長】 ありがとうございました。

それでは、先ほどからいろいろご意見が出ている中で、これは青木委員からありましたが施策をどう決定するのか。これはこの審議会の論議を超えてはいますが、環境省としてお考えをもしお聞きできるようでしたら、それから、場合によってはマイクロチップのように他省庁とも関係してくるものもありますし、そういう今後のいろんな施策についてのお考えをもしお聞かせいただけるようだったらばありがたいのですが、よろしいですか。

【築島動物愛護管理課長】 それでは、青木先生のご指摘のこの指針の条文そのものについてでございますけれども、改めて申しますと、「施策の推進に関する基本的な事項」としか書いていなくて、「施策の基本的な方向」とは書いてないよというようなご指摘だと思いますけれども、私ども解釈としましては、施策の推進に関する基本的な方向を定めるに当たっては、当然その施策そのものもどういうものを最も推進していくべきかといった検討が必要になりますから、施策の推進に関する基本的な方向というのを定めるに当たって、当然のことながら、施策の内容を、どういう施策を進めていくべきなのかといったことも当然のことながら検討されて、いろんな諸手続、調整の中で、そういった議論がされていくということはある意味内在していると理解をしております。

 これにつきましては、法律は、議員立法ということで、この条文は、具体的な事務は国会の方の法制局審査といったような形の中で進めていることと聞いていますけれども、こういったような書き方の似たような法律を参考にしながらやっていて、それからまた違った形で、吉田先生がおっしゃっているような書き分けをしているようなものもどうもあるというように聞いているところでございます。今、こういった条文の書き方をしているものはほかのものでもあるということを聞いているところでございます。

【林部会長】 ありがとうございました。

 それでは、最後に私の方からお尋ねしたいんですが、昨年12月の「動物取扱業、特定動物等に係る改正動物愛護管理法の施行等の在り方」という、この答申を行ったわけですが、そのときに附帯意見が2つありました。1つは、先ほどから話が出ています幼齢動物の検討ですね、幼齢動物の譲渡の検討。もう一つは、特定動物、この中には、アメリカでは小学校で飼われているような非常に優しいヘビが特定動物の中に入って危険だというふうな認識があるけど、これはかつて中川(志)委員が委員長をやられてお決めになられたわけですけれど、今の時点でもう一度見直しというのは必要ではないかと、こういう附帯意見だったと思いますが、これを今後どうしていかれるのかということについてお聞きしておきたいと思います。

【築島動物愛護管理課長】 今、部会長からのお話で、特定動物の選定基準を含めて、選定種そのものの見直しのために検討体制を環境省の方で検討しろといったような宿題をいただいていると認識しているところでございます。この点につきまして、まだ明確に今の時点でこうしますと言える段階ではございませんけれども、今、私の方で考えていることとしましては、1つは論点整理として、今、部会長の方から、端的に言うとこの種は外してもいいのではというようなご意見があったということですし、一方で社会的にはエキゾチックアニマルがいろんな形で出てきて、そういったものについて、もっと規制の対象になってしかるべきではないかといったような声もあるかと考えております。

 いずれにしましても、論点整理というのをまず私どもなりにして、その上で選定基準の見直しの必要性、選定種のリストの見直しの必要性といったことを専門家の方々に聞くような場を設けたいと思います。その専門家の意見を聞くというのをどういう形でやるかにつきましては、今後また詰めていきたいと考えております。

 いずれにしましても、これにつきましてはできるだけ早く方法を具体化して、検討に入りたいと考えているところでございます。

【林部会長】 ありがとうございました。

 どうぞ。

【大矢委員】 今の特定動物の件なんですけれども、動物の種の選定もさることながら、現在、輸送箱、輸送経路、その他についてすべて報告しなければいけないと、許可を取らなければいけないと。もちろん、ライオンだとかトラだとか、大型の動物を運ぶときにはその輸送時の許可もわかるのですが、外国から入ってくる本当に小さなヘビや何かまで一々輸送許可を取らなければいけないのかという問題。それから、外国から着いたものを、箱がないから、許可されていないから、許可されている箱に成田で移しかえるのかという問題とか、いろんな問題が現実に出てきております。この特定動物に関しては、種の選定だけではなくて、そういう基本的なことも含めて、ぜひご検討いただきたいと思います。

【林部会長】 わかりました。論点整理のところでいろんな論点を整理していただきたいと思います。

 それでは、これで本日の議事をすべて終了させたいと思いますが、よろしいですか。

(了承)

【林部会長】 どうもありがとうございました。

 最後に、事務局からございますでしょうか。

【築島動物愛護管理課長】 特段ございません。

【林部会長】 よろしいですか。

それでは、閉会に当たりまして、先ほどごあいさついただきました冨岡自然環境局長から再びごあいさついただければと思いますが、よろしいでしょうか。

【冨岡自然環境局長】 本日は、「動物愛護管理基本指針」をおまとめいただきまして、どうもありがとうございました。長い間の先生方のご協議に対しまして、厚くお礼申し上げます。

 先ほど来話がございましたように、諸手続を経まして今月末に告示を行う予定でございます。これに則しまして、各都道府県がそれぞれ動物愛護管理推進計画を定めていくことになります。本日、お話ございましたように、各自治体ともよく連絡を保ち、協力をしながら、この分野の仕事を前進させていくよう努力してまいりたいと思います。

 また、本日、様々なご意見、ご進言をいただきましたので、そうした点を踏まえまして、さらに一層勉強してまいりたいと思います。

 本日はありがとうございました。

【林部会長】 ありがとうございました。

 それでは、これで終了いたします。