中央環境審議会動物愛護部会(第18回) 議事録

日時

   平成18年6月29日(木)午前10時00分~午後11時51分

場所

   経済産業省別館第944会議室(9階)

出席者

        林   良博 部会長

        青木 人志 委員    今泉 忠明 委員

        大矢 秀臣 委員    藏内 勇夫 委員

        清水  弟 委員    菅谷  博 委員

        中川 志郎 委員    中川 李枝子 委員

        信國 卓史 委員    兵藤 哲夫 委員

        前島 一淑 委員    松下 倶子 委員

        丸山  務 委員

        

        南川     東海林 動物愛護管理室長

            

議題

  1.   (1)「動物愛護管理基本指針(仮称)」の素案について
  2.   (2)その他

配付資料

 資料
動物愛護管理基本指針(仮称)の素案
 参考資料
検討スケジュール

議事

【事務局】 おはようございます。それでは、定刻となりましたので、中央環境審議会動物愛護部会を始めたいと思います。

 まず、本日の委員の皆様のご出欠についてご報告いたします。

 本日は、委員16名のうち14名の方が出席しておりますので、規定により部会は成立しております。なお、ご欠席は、大槻委員、奥澤委員の2名でございます。

 それでは、林部会長様、よろしくお願いいたします。

【林部会長】 それでは、ただいまから第18回になりますが、動物愛護部会を開催いたします。

 まず、最初に南川自然環境局長よりごあいさつをいただきたいと思います。

【南川自然環境局長】 皆様、おはようございます。環境省自然環境局長の南川でございます。どうもお暑い中、朝からありがとうございます。

 政府全体が今室温28度ということで設定しておりますし、環境省もとより、これは経産省のビルでございますけれども、経産省も当然ながら温暖化対策の一翼を担っていただいておりますので、その趣旨に合わせて同じ気温にしております。したがいまして、上着もぜひお取りいただいて、リラックスして討議いただければと思う次第でございます。

 きょうご議論いただきますのは、動物愛護管理基本指針ということでございます。去年の秋から順次改正されました動物愛護管理法を受けまして、施行の準備をしてまいったわけでございます。当座、改正を受けて審議すると決めていくということにつきましては、この基本方針で一段落ということになろうかと思っております。これは、動物の共生を目指す我が国の動物愛護管理行政の基本的方向を示すものでございまして、極めて重要と考えておる次第でございます。きょうこれをご議論いただきまして、その結果を踏まえまして、今後パブリックコメント等を行いたいと思っておりまして、できれば、次回9月ごろかなと思っておりますけれども、またご答申をご検討いただければと思っておるところでございます。

 今国会は無事終了いたしました。予定どおりといいますか、全く延長なく終わったわけでございます。私どもの局としましては、野生生物の方の鳥獣の保護及び狩猟に関する法律という法律の改正を出しました。これ自身は猪対策、鹿対策とか、野生動物の農作物被害をどうするかとか、あとは野生鳥獣輸入環境をどう管理するかとか、そういったことが主だったわけでございますけれども、その中で、例えば農業被害に関連して、飼い犬を特定地域だけについては訓練をして猿が来ないように放してはどうかとか、そんな議論も大分ございました。これは、まずは野生動物の方の関係の審議会でご議論いただいて、必要があれば、またこの場でもそれをご披露させていただきたいなと思っているところでございます。そのための条例等の調査も今行っているところでございます。

 そのほかにも、実は遺失物法も含めて、随分たくさん家庭の動物についての質疑がございました。やはり全体として動愛センターに持ち込まれた犬猫について、いかに新しい里親が見つかる率を上げるかということについて、大変大きな関心があるということを改めて知った次第でございます。また、いろいろと建設的なご意見を賜れば幸いでございます。

 ぜひとも、きょうこの基本方針中心でございますけれども、忌憚のないご意見を賜れば幸いでございます。どうぞよろしくお願いします。

【林部会長】 ありがとうございました。

 それでは議事に入る前に、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【事務局】 お手元にございます資料の確認をさせていただきたいと思います。

 座席表が1枚ございまして、もう一つホチキスでとめております中央環境審議会第18回動物愛護部会の資料でございます。動物愛護管理基本指針(仮称)の素案について、これと、一番最後のところに、最後の1枚でございますが、参考資料、検討スケジュールというのがあります。

 以上でございますが、資料のない方は事務局まで申しつけてください。

【林部会長】 よろしいでしょうか。

 それでは、議事に入ります。

 まず、議事の1、動物愛護管理基本指針、これは仮称でございますが、この素案について、でございます。今回は、先日ご審議いただきました骨子案に沿って、事務局において素案をまとめていただいたという次第です。この素案には、これまでのご議論と、それからヒアリングで関係団体の方々から出されたご意見等を盛り込んでもらっております。

 それでは、ここで、今後の検討スケジュールについて改めて確認させていただいた後、この素案についてのご審議をいただきますが、この後、国民の皆さんからのご意見を聴取するパブリックコメント手続きに入ります。これは直ちに、きょうご審議いただいた後、入るということですが、その後、10回の部会までに本日のご審議やパブリックコメント等を踏まえて最終案を事務局でとりまとめていただくということになります。

 それでは、事務局からご説明をお願いできますでしょうか。

【事務局】 それでは、資料に基づきましてご説明をさせていただきます。

 まず3ページをおあけください。3ページには、動物愛護管理基本指針(仮称)の素案の目次をお示ししてございます。

 前回骨子案でご議論いただきましたように、大きく3つに分けさせていただいております。第1、動物の愛護及び管理の基本的考え方。第2としまして、今後の施策展開の方向といたしまして、その中でも大きく2つに分けさせていただいております。1として基本的視点、2として施策別の取り組みとしまして、施策別の取り組みの方については、10項目挙げさせていただいております。第3としまして、これは指針をお示しした後、都道府県が策定する動物愛護管理推進計画の策定に関する事項としまして、大きく5つの項目を挙げさせていただき、さらにその中で、策定及び実行としまして5項目挙げさせていただいております。第4、これはこの動物愛護管理基本指針の点検と見直しをどのようにするかという事務的なことをおつけしてございます。

 それでは、この骨子に従いまして、順次、内容をご説明しつつ、読み上げをさせていただければと思います。4ページをおあけください。第1、動物の愛護及び管理の基本的考え方でございます。これにつきましては、命に対する感謝と畏敬の念を動物の取り扱いに反映させるとともに、危害や迷惑をかけないよう、動物の所有者等が社会的責任を十分に自覚することが必要であるという認識をお示ししつつ、広く共感と参加を呼び起こすことのできる国民的総意に基づく理念を形成することが必要であるというふうな内容を縷々お示ししているものでございます。また、前回までのご議論を踏まえまして、表現ぶりを一部整理させていただいております。

 では、読み上げさせていただきます。

 第1 動物の愛護及び管理の基本的考え方。

(動物の愛護)

 動物の愛護の基本は、人においてその命が大切なように、動物の命についてもその尊厳を守るということにある。動物の愛護とは、動物をみだりに殺し、傷つけ又は苦しめることのないよう取り扱うことや、その習性を考慮して適正に取り扱うようにすることのみにとどまるものではない。人と動物とは生命的に連続的な存在であるとする伝統的な意識に根ざした「生きとし生けるものを大切にする心」を踏まえ、動物の命に対して感謝及び畏敬の念を払うとともに、この気持ちを命あるものである動物の取り扱いに反映させることが欠かせないものである。

 人は他の生物を利用し、ときとしてその命を犠牲にしなければ生きていけない存在である。このため、動物の利用や殺処分を疎んずるのではなく、自然の摂理や社会の条理として直視し、厳粛に受け止めることも必要である。しかし、人を動物の圧倒的な優位者として捉えて、動物の命を軽視したり、動物を利用したりすることは誤りである。命あるものである動物に対してやさしい眼差しを向けることができるような態度なくして、社会における生命尊重、友愛及び平和の情操の涵養を図ることは困難であると考えられる。

(動物の管理)

 人と動物とが共生する社会を形成するためには、動物の命を尊重する考え方及び態度を確立することに併せて、動物の鳴き声、糞尿等による迷惑の防止を含め、動物が人の生命、身体又は財産を侵害することのないようにする必要がある。

 動物は、その管理が不適切であった場合には、人の生命、身体又は財産に対する侵害を引き起こすことがある。このような侵害を引き起こさないように適切に管理するためには、動物の係留、屋内での飼育、みだりな繁殖の防止等の措置を講じる等により動物の行動等に一定程度の制約を課すことが必要となる場合がある。また、所有者がいない動物に対する悉意的な餌やり等の行為のように、その行為がもたらす結果についての管理が適切に行われない場合には、動物による害の増加やみだりな繁殖等の動物の愛護及び管理上好ましくない事態を引き起こす場合があることについても十分に留意する必要がある。

 動物が人と一緒に生活する存在として万人に快く受け入れられるためには、動物と社会との関わりについても十分に考慮したうえで、その飼養等を行うことが求められている。動物の所有者又は占有者(以下「所有者等」という。)は、自分が加害者になり得ることについての認識が希薄な傾向にあるが、すべての所有者等は加害者になり得るととともに、すべての国民が被害者になり得るものであるという認識の下に、所有者等は、動物を所有等する者としての社会的責任を十分に自覚して、動物が人の生命、身体若しくは財産に害を加え、又は人に迷惑を及ぼすことのないように努めなければならない。

(合意形成)

 国民が動物に対して抱く意識及び感情は、千差万別である。例えば、家庭動物等の不妊去勢措置、ねこの屋内飼養、動物実験、畜産等における動物の資源利用、様々な動物を食材として利用する食習慣、狩猟や釣り等の動物の捕獲行為、動物を利用した祭礼儀式、外来生物の駆除、動物の個体数の調整、安楽殺処分等については、これらの行為が正当な理由をもって適切に行われるものである限り、動物の愛護及び管理に関する法律(以下「動物愛護管理法」という。)やその精神に抵触するものではないが、現実には、これらの行為に対する賛否両論が国内外において見受けられている。

 このように、個々人における動物の愛護及び管理の考え方は、いつの時代にあっても多様であり続けるものであり、また、多様であって然るべきものであろう。しかし、万人に共通して適用されるべき社会的規範としての動物の愛護及び管理の考え方は、国民全体の総意に基づき形成されるべき普遍性及び客観性の高いものでなければならないと考えられる。また、動物愛護の精神を広く普及し、我々の身についた習性として定着させるためには、我が国の風土や国民性を踏まえた動物の愛護及び管理の考え方を、国民的な合意の下に形成していくことが必要であると考えられる。

 続きまして、次のページをおあけください。

 第2、今後の施策展開の方向でございます。

 1、基本的視点についてご説明を申し上げます。

 基本的視点につきましては、4つの観点からお示ししてございます。

 (1)としまして、国民的な動物の愛護及び管理に関する活動の盛り上げ。

 (2)としまして、長期的視点からの総合的・体系的なアプローチをお示ししてございます。

 また、(3)としまして、関係者間の協働関係の構築、これも重要なことでございますので、これについての視点もお示ししてございます。

 また、(4)としまして、施策の実行を支える基盤の整備としまして、4つの観点からの視点をお示ししてございます。

 では、1、基本的視点につきまして、読み上げさせていただきます。

(1)国民的な動物の愛護及び管理に関する活動の盛り上げ

 動物の愛護及び管理は、国民の間における共通した理解の形成がなくては進み難いものである。動物の愛護及び管理に関する活動は、古い歴史を有し、多くの貢献をしてきたが、参加者層が限定的であったきらいがある。今後は、多くの国民の共感を呼び、自主的な参加を幅広く促すことができる施策を、学校、地域、家庭等において展開する必要がある。

(2)長期的視点からの総合的・体系的アプローチ

 動物の愛護及び管理に関する施策の対象となる動物は、家庭動物のみならず、展示動物、実験動物、産業動物等であり、人の占有に係る動物が幅広く対象とされている。その分野も、普及啓発、飼養保管、感染症予防、流通、調査研究等、広範囲に渡っており、様々な実施主体によって、それぞれに関係法令等に基づく施策が進められている。また、動物の愛護及び管理に関する問題は、国民のライフスタイルや価値観等の在り方に深く関わるものであるといった性質を有しており、原因と結果が複雑に絡み合った系をなしていることから、施策の効果や結果がすぐには現れないものが多い。このようなことから、動物の愛護及び管理に関する施策を着実に進めていくためには、長期的視点から総合的・体系的に各種施策が取り組まれるようにしていく必要がある。

(3)関係者間の協働関係の構築

 動物愛護管理法の施行に関する事務の多くは、都道府県、政令市及び中核市の所掌するところとなっているが、その事務を円滑かつ効果的に進めるためには、都道府県、政令市及び中核市にとどまらないすべての地方公共団体の関与の下に、動物の愛護及び管理に関係している者の積極的な協力を幅広く得ながらその展開を図っていくことが肝要である。このためには、国や地方公共団体等の行政機関、獣医師会、業界団体、愛護団体、調査研究機関等の適切な役割分担の下に、動物の愛護及び管理に関する関係者のネットワークが国及び地方のレベルにおいて重層的に作られていくようにする必要がある。また、関係者間相互の共通認識の形成がしやすくなるように、施策の目標及びその目標達成のための手段等については、できる限り定量的かつ客観的な内容を備えたものとすることが重要である。

(4)施策の実行を支える基盤の整備

 動物の愛護及び管理に関する施策の推進を図るためには、これを支える基盤の整備が重要である。このため、国及び地方公共団体における予算措置及び組織体制の充実を図るとともに、拠点としての動物愛護管理施設等の拡充、動物愛護推進員等の委嘱の推進、動物愛護団体、業界団体等の育成支援、調査研究の推進等による知見の拡充等を進めることにより、施策の実施体制のより一層の強化を図る必要がある。

 続きまして、2、施策別の取組についてご説明をいたします。

 施策別の取組につきましては、先ほどお示ししましたように10項目にわたりまして、その方向性をお示しするものでございます。それぞれの項目につきまして、現状と課題、それと講ずべき施策と分けて記述をさせていただいております。

 今後の政策展開の方向といたしましては、動物、犬や猫等の譲渡等の推進により犬及び猫の引き取り数を半減させること、また、普及啓発・個体識別等の推進により動物の遺棄防止等を徹底すること、ガイドラインの策定等により所有者のいない猫などの適正管理を推進していくこと。動物取扱業の登録制度を着実に運用し、一層の適正化を推進すること、また、動物愛護管理推進員の委嘱を推進していくこと、これらを内容としたもので、10項目としてそれぞれ記述させていただいております。

 それでは、2の施策別の取り組みにつきまして読み上げさせていただきます。

2、施策別の取組。

 施策別の取組は次のとおりである。目標年次は平成29年度とする。

(1)普及啓発

①現状と課題

 動物の愛護及び管理を推進するためには、広く国民が、動物の飼養に関して正しい知識及び理解を持つことが重要である。このため、国、地方公共団体等によって、動物の愛護及び管理の普及啓発事業が行われてきているが、動物の愛護及び管理の意義等に関する国民の理解は十分とはいえない状況にある。また、生命尊重、友愛等の情操の涵養の面で、特に子供が心豊かに育つ上で、近年、動物との触れ合いや動物の適正な飼養の経験が重要であることが指摘されてきており、国及び地方公共団体、獣医師会、業界団体、動物愛護団体、調査研究機関等をはじめとした関係者の連携協力の下に、さまざまな機会をとらえて教育活動や広報活動等に取り組むことが求められている。

②講ずべき施策

 国及び地方公共団体は、関係団体等と連携しつつ、学校、地域、家庭等において、動物愛護週間行事や適正飼養講習会等の実施、各種普及啓発資料の作成、配布等により、動物の愛護及び管理に関する教育活動や広報活動等を実施する。

(2)適正飼養の推進による動物の健康と安全の確保

①現状と課題

 国民の約3分の1が動物を飼養しており、また、近年の少子高齢化等を背景とし、家庭動物等の飼養に対する志向が高まっている。このような状況において、国、地方公共団体等によって適正飼養を推進するための様々な取組が行われてきているが、依然として遺棄、虐待等の問題の発生が一部において見られている。

 また、都道府県、政令市及び中核市における犬及びねこの引取り数は、従前に比べて大幅に減少したが、その絶対数は年間約42万匹で約94%が殺処分されていることから、更なる改善が必要とされている。

②講ずべき施策
  1.  ア みだりな繁殖を防止するための不妊去勢措置の推進。安易な飼養の抑制等による終生飼養の徹底等により、都道府県、政令市及び中核市における犬及びねこの引取り数を半減するとともに、元の所有者等への返還又は飼養を希望する者への譲渡等を進めることによりその殺処分率の減少を図る。
  2.  イ 動物が命あるものであることを踏まえた適正な飼養方法の周知徹底等を行うことにより、遺棄及び虐待の防止を図る。

(3)動物による危害や迷惑問題の防止

①現状と課題

 動物の不適切な飼養に起因して、危害及び迷惑問題が発生しており、地方公共団体等に寄せられている苦情等も依然として多い状況にある。動物による危害及び迷惑問題は、感情的対立を誘発しやすい相隣関係的紛争としての性格を有していることもあるため、行政主導による合意形成を踏まえたルール作り又はルール作りに対する支援等が期待されている。

 また、危害が生じるおそれが高い特定動物については、平成17年6月に動物愛護管理法の改正が行われ、地方公共団体の必要に応じた条例による飼養許可制から法による全国一律の飼養許可規制とされたところである。

②講ずべき施策
  1.  ア 地域における環境特性の相違を踏まえながら、集合住宅での家庭動物の飼養、都市部等での犬やねこの管理の方法、所有者のいないねこの適正管理の在り方を検討し、動物の愛護と管理の両立を目指すことのできるガイドラインを作成する。
  2.  イ 動物による人の生命等への危害の発生防止のより一層の徹底を図るために、有識者等の意見を聴きながら特定動物の選定基準の在り方を検討する。

 このイにつきましては、昨年12月に部会からご意見としてちょうだいしたものでございます。

(4)所有明示(個体識別)措置の推進

①現状と課題

 犬又はねこに関する所有者の明示(個体識別)(以下「所有明示」という。)の措置率は、平成15年度現在、約25%にとどまっている。動物の所有者が、その所有する動物が自己の所有に係るものであることを明らかにするための措置を講ずることは、動物の盗難及び迷子の発生の防止に資するとともに、迷子になった動物の所有者の発見を容易にし、所有者責任の所在の明確化による所有者の意識の向上等を通じて、動物の遺棄及び逸走の未然の防止に寄与するものである。このような所有明示措置の意義及び役割等についての国民の理解を深めるとともに、各種識別器具の普及環境の整備等を推進すること等により、所有明示の実施率の向上を図る必要がある。

②講ずべき施策
  1.  ア 所有明示措置の必要性に関する意識啓発を行う等により、所有明示の実施率の倍増を図る。
  2.  イ 関係省庁及び団体の協力の下に、公的機関によるデータの一元的管理体制の整備・個体識別技術の普及、マイクロチップリーダーの配備等の個体識別手段の普及のための基盤整備を図る。

(5)動物取扱業の適正化

①現状と課題

 従前の動物取扱業に係る届出制においては、勧告又は命令等を行っても改善が見られない悪質事例が存在しており、また、このような極端な事例以外においても、全般に施設や管理の水準の向上が必要な状況にあった。このため、平成17年6月に動物愛護管理法の改正が行われ、動物取扱業については登録制とされたところである。本改正法の趣旨を踏まえて、動物取扱業のより一層の適正化を図るため、動物取扱業の登録制度の着実な運用を図る必要がある。

②講ずべき施策
  1.  ア 動物の所有者等に対し、動物取扱業者における標識等の掲示、販売時における動物の特性及び状態等に関する事前説明の実施等が義務付けられたことについての周知徹底を図る。
  2.  イ 優良な動物取扱業者の育成策を検討し、業界全体の資質の向上を図る。
  3.  ウ 動物の健康と安全の確保のより一層の推進を図るために、有識者等の意見を聴きながら幼齢な犬及びねこの販売制限の在り方を検討する。このウについても、昨年12月にご意見としてちょうだいしたものでございます。

(6)実験動物の適正な取扱いの推進

①現状と課題

 実験動物の飼養等については、実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準(平成18年4月環境省告示第88号。以下「実験動物の飼養保管等基準」という。)に基づき、自主管理を基本としてその適正化を図る仕組みとなっているが、本基準の遵守指導等を円滑に行うための体制整備が十分にされていない施設が一部にある。動物を科学上の利用に供することは、生命科学の進展、医療技術等の開発等のために必要不可欠なものであるが、その飼養及び科学上の利用に当たっては、動物が命あるものであることにかんがみ、科学上の利用の目的を達することができる範囲において、国際的にも普及し、定着している実験動物の取扱いの基本的考え方である「3Rの原則」を踏まえた適切な措置を講じること等が必要とされている。

②講ずべき施策
  1.  ア 関係省庁、団体等と連携しつつ、実験動物の飼養保管等基準の周知が、効果的かつ効率的に行われる体制の整備を図る。
  2.  イ 実験動物の飼養保管等基準の遵守状況について定期的な実態把握を行う。

(7)産業動物の適正な取扱いの推進

①現状と課題

 動物の愛護及び管理の観点からする産業動物の適正な取扱いについては、家庭動物等の取扱いと比較して国民の関心及び理解が全般に低く、いわゆる生産者及び消費者の双方の側において、その必要性に関する国民的意識が低い状況にある。比較的意識が高いと評されている欧米諸国の動きを見つつも、我が国固有の歴史文化、国民性等を踏まえた産業動物の飼養保管の在り方を検討し、その普及啓発を進めていく必要がある。

②講ずべき施策
  1.  ア 動物の愛護及び管理に配慮した産業動物の飼養保管の在り方を検討し、産業動物の飼養及び保管に関する基準に反映する。
  2.  イ 生産者及び消費者の双方に対して、産業動物の性格に応じた動物の愛護及び管理の必要性に関する普及啓発を推進する。

(8)災害時対策

①現状と課題

 地震等の緊急災害時においては、被災者の心の安らぎの確保、被災動物の救護及び動物による人への危害防止等の観点から、被災地に残された動物の収容及び餌の確保、特定動物の逸走防止及び捕獲等の措置が、地域住民、国や地方公共団体、獣医師会、動物愛護団体等によって行われてきている。今後とも引き続き、これらの措置が、関係機関等の連携協力の下に迅速に行われるようにするための体制を平時から確保しておく必要がある。

②講ずべき措置
  1.  ア 地域防災計画等における動物の取扱い等に関する位置付けの明確化等を通じて、動物の救護等が適切に行うことができるような体制の整備を図る。
  2.  イ 動物の救護等が円滑に進むように、逸走防止や所有者明示等の飼主責任の徹底に関する措置の実施を推進する。

(9)人材育成

①現状と課題

 動物の愛護及び管理に関する施策の対象は、広範かつ多岐に渡っており、中には民間の有識者等による対応を求めることによって、行政の限界を超えて地域に根付いた形で動物の愛護及び管理が広がっていくことが期待される課題もある。しかし、例えば都道府県知事、政令市及び中核市の長により委嘱された動物愛護推進員等の人数は、平成15年度末現在、98地方公共団体中21地方公共団体、約1,400人にとどまっているなど、民間の有識者等に対して協力を求めることができるような体制の整備は十分とはいえない状況にある。このため、動物愛護推進員等の人材の育成等を積極的に推進していく必要がある。

②講ずべき措置
  1.  ア 関係地方公共団体等における協議会の設置及び動物愛護推進員等の委嘱を推進する。
  2.  イ 国及び関係地方公共団体等における官民の連携事業を推進する。

(10)調査研究の推進

①現状と課題

 動物の愛護及び管理に関する調査研究は、学際的かつ応用的であるといった特徴を有していることから関係学会等は広範に渡っており、その知見等は体系的に整理されているとはいえない状況にある。多くの国民の共感を呼び、自主的な参加を幅広く促すことができる動物の愛護及び管理に関する施策を進めるためには、科学的な知見等に基づいた施策の展開も重要であることから、動物の愛護及び管理に関する調査研究を推進する必要がある。

②講ずべき施策
  1.  ア 全国及び地域の各レベルにおいて連絡協議会を設置すること等により、行政機関と関係学会等の調査研究機関との連携体制の整備を図る。
  2.  イ 関係機関が協力して、調査研究成果等に係る目録の作成を行う。

 次のページをおあけください。こちらのページからは、都道府県の方で策定することになります動物愛護管理推進計画の策定に関する事項をお示ししてございます。

 この事項につきましては、全体として10カ年計画としまして、平成19年度末までに一斉に策定をしていただくということをお示ししてございます。その策定に当たりましては、地域の実情に応じて計画事項等を創意工夫するとともに、多様な意見の集約と合意形成の確保に努めることを明示してございます。より具体的な内容に踏み込んだものとさせていただいております。

 では、読み上げさせていただきます。

 第3 動物愛護管理推進計画の策定に関する事項。

 1 計画策定の目的

 動物愛護管理推進計画(以下「計画」という。)は、本基本指針に即して、地域における動物の愛護及び管理に関する行政の基本的方向性及び中長期的な目標を明確化するとともに、当該目標達成のための手段及び実施主体の設定等を行うことにより、計画的かつ統一的に施策を遂行すること等を目的として策定するものとする。

2 計画期間

 本基本指針との体系的な整合性を確保するため、計画期間は、原則として平成20年4月1日から平成30年3月31日までの10年間とする。

3 対象地域

 対象地域は、当該都道府県の区域とする。

4 計画の記載項目

 計画の記載項目については、動物愛護管理法第6条第2項に、動物の愛護及び管理に関し実施すべき施策に関する基本的な方針、動物の適正な飼養及び保管を図るための施策に関する事項、動物の愛護及び管理に関する普及啓発に関する事項、動物の愛護及び管理に関する施策を実施するために必要な体制の整備(国、関係地方公共団体、民間団体等との連携の確保を含む。)に関する事項及びその他動物の愛護及び管理に関する施策を推進するために必要な事項と規定されているところであるが、これらを踏まえ、地域の事情に応じ、記載事項の追加及びそれらの構成の在り方等について、必要に応じて検討するものとする。

5 策定及び実行

(1)多様な意見の集約及び合意形成の確保

 計画の策定に当たっては、多様な意見、情報及び専門的知識を把握するとともに、それらを必要に応じて計画に反映させるために、学識経験者、関係行政機関、関係業界団体、動物愛護団体、地域住民等からなる検討会を設置する等して、計画の策定及び点検等を行うものとする。また、計画の策定過程等の透明性の向上及び計画内容についての合意形成等を図るために、必要に応じてパブリック・コメント等を行うものとする。

(2)関係地方公共団体との協議

 動物愛護管理行政の推進には、都道府県が主要な役割を果たしているが、政令市においては動物取扱業の登録及び特定動物の飼養許可に関する事務等、中核市においては犬又はねこの引取りの事務等を実施している。また、動物の愛護及び管理の普及啓発、地域住民に対する直接的な指導等では、全ての市区町村においてその役割が期待されているなど、動物の愛護及び管理に関する施策の実施主体は、都道府県にとどまるものではない。このため、より計画の実効性を高めるために、計画を策定し又は変更しようとするときは、あらかじめ関係市区町村の意見を聴くものとする。なお、都道府県の行政界を越えて発生している問題等があり、広域的な視点からの対応が必要と考えられる場合は、関係都道府県等との連絡調整等を行うものとする。

(3)計画の公表等

 計画が策定された後は、速やかに公報等により公表するとともに、環境大臣に報告するものとする。

(4)実施計画の作成

 必要に応じて、動物の愛護及び管理に関する施策に係る年間実施計画等を策定し、多様な主体の参加を広く得ながら、計画の推進を図るものとする。

(5)点検及び見直し

 動物の愛護及び管理に関する行政の着実な推進を図るため、毎年、計画の達成状況を点検し、施策に反映させるものとする。また、環境大臣の定める基本指針の改定等に合わせて、必要な見直しを行うものとする。

 第4としまして、動物愛護管理基本指針の点検と見直しを規定してございます。読み上げさせていただきます。

 動物の愛護及び管理に関する行政の着実な推進を図るため、毎年度、基本指針の達成状況を点検し、その結果を施策に反映させることとする。なお、点検結果については、その概要を公表するものとする。

 また、状況の変化に適時的確に対応するため、策定後概ね5年目に当たる平成24年度を目途として、その見直しを行うこととする。

 以上でございます。

 なお、最後のページに参考資料としまして、検討スケジュールをおつけしてございます。

 本日、素案をご検討いただきました後、7月から8月にかけましてパブリック・コメントを実施させていただき、9月中旬ごろをめどとしておりますが、最終案をご検討いただき、できればご答申までいただければと考えております。

 以上でございます。

【林部会長】 ありがとうございました。

 それでは、ご意見・ご質問をいただきたいと思います。いかがでしょうか。はい、どうぞ。青木委員。

【青木委員】 これは基幹的な考え方の表現その他について、比較的細かいこともきょう発言してよろしいと考えてよろしいでしょうか。

 それでは、私、前回までの会議で私自身は2つのことを要望申し上げたつもりで、一つが特に前回出てきた基本的考え方の素案の段階では、割と仏教的な思想というような伝統面ということを非常に重視した理由づけが出てきたのに対して、もうちょっと未来に向けて理性的に形成するという側面を出してはどうかというのが1点。それからもう1点は、生命の絶対性という原理が現実の必要に応じて何らかの相対的な原理によって制約をされざるを得ない場面というのがある、そこに苦しい問題が生じているので、そこをもうちょっとストレートに書いたらどうかと、こういう2点を申し上げました。この考え方は今でも変わっておりませんで、その2つの基本的なスタンスからちょっと申し上げたいと思います。

 まず、実質的な内容にかかわるその習性の私の個人的希望としては3点ございます。一つが、基本的考え方の第1パラグラフの動物の愛護というところに、上から4行目あたりですが、人と動物とは生命的に連続的な存在であるとする伝統的な意識に根ざした「生きとし生けるものを大切にする心」を踏まえ、というフレーズがありますが、生命的に人と動物が連続しているという知見は非常に科学主義的で現代的なものでありまして、むしろ、それをそういうのであれば、生きとし生けるものを大切にするという伝統的な考え方に加えて、生態系の中で動物と人間というのは生命的に連続しているのだという、非常に現代的な考え方、理性的な考え方からもこの愛護というものが導き出されるのだと、そういう言い方をした方がより多くの幅の考え方の方に共感を呼ぶし適切ではないかというのが1点です。

 それから第2点ですが、第2点は、やや言葉遣いの問題とかかわるのですが、この動物の愛護という部分の第2パラグラフの中に、「しかし」で始まるフレーズがあります。ここの部分については、前回、信國委員が大変いい指摘をしてくださって、論理的な流れがやや整理されたと思うのですが、しかしで始まる文章、「しかし、人を動物の圧倒的な優位者として捉えて、動物の命を軽視したり、動物を利用したりということは誤りである」と、ここですが、圧倒的な優位者として捉えてというのは、割と主観主義的なその人の心理的な状況のように私には読めます。それで、利用することは誤りであるというふうになると、何か利用者の主観にかかっているような感じがするのですね。さらに言えば、この前の方の動物の命を軽視するというのと利用するというのが、いわば並列になっているわけで、軽視するという表現は最初から否定的なインプリケーションを、含みを持っている言葉であるのに対して、利用するというのは、それ自体は中立的な言葉ということになります。ですから、やっぱりここにはほしいままに利用するとか、あるいはみだりに利用するとか、やっぱりそういう何か否定的な形容詞をつけた方が私は論理的な流れとしてはいいし、実際に利用が全部許されないということではないのだということは、やはり私は文言の上からもやっぱりある程度明確にしておきたいと思いますので、そういうのをちょっと希望します。これが第2点。

 それから、第3点は、やっぱり伝統の問題とも関係あるのですが、合意形成の最後の文章、文ですが、我が国の風土や国民性を踏まえた動物の愛護及び管理の考え方を国民的な合意のもとに形成していくことが必要であると、こういう表現がありますが、国民性というのは非常に固定的な印象のする言葉でありまして、それ自体を言うことはいいのですが、それだけが重要であるかというと私はそうは思わないし、さんざんこの審議会で出てきたように、相輪関係的な問題が多い、そうなると現在の日本社会は何も日本人だけが住んでいるわけではなくて、国民性というその日本人固有の問題にはとらえきれない問題が今後も出てくるし、ふえてくるだろうと思います。そうしますと、例えば、一つの修正提案としては、社会の実情とかそういった言葉の方があんまりインパクトはないかもしれないけれども、よりいいのではないか、これが実質的な内容にかかわる修正希望です。

 それから、引き続いて形式の部分を言っていいでしょうか。よろしいでしょうか。

【林部会長】 はい、どうぞ。

【青木委員】 形式的な問題でありますけれども、言葉遣いでやはりちょっと私、語感が引っかかるものが何カ所かありました。一つ目が、先ほどもちょっと読み上げたところですが、生命的に連続的な存在というのは非常に精巧な表現という印象がいたしまして、生命的に連続したとか何とか的に何とか的なというのは非常に気持ちが悪い感じがします。これが1点です。

 それから、同じパラグラフに、動物の命に対して感謝及び畏敬の念を払うという表現がありますが、敬意や注意は払うけれども、感謝の念や畏敬の念は払うのではないのではないかという、私の語感からしまして、感謝の念や畏敬の念を抱くというような柔らかい表現の方がいいのではないか。

 それから、これは前回も申し上げたことなのですが、前回、私は最後の合意形成の下から3行目の我々の身についた、これ最初、ならわしとなっていたのですね、私、ならわしは変だというだけ申し上げたのですが、習性となっていまして、習性も変だと思います。私の語感では「ならい」が一番すっきりくると私は思います。ただ、これは皆さん意見が違うかもしれません。

 以上が言葉を変えてほしい部分です。

 それから、ついでに言いますと、文末表現がやや自信がない感じのところが多くて、「と考えられる」という表現が実は3カ所ありまして、これはもう言い切っちゃっていいのではないかと私は思います。具体的に言いますと、動物の愛護という部分の一番最後、「困難である」で終わってしまってもいいし、合意形成の最後の2つの文は2つともと考えられる、で終わっているのですが、ならない、必要であると、それが我々の基本的な考え方なんだといった方が、それが批判を浴びようと構わないのではないかと思います。

 ついでに言いますと、合意形成の第1パラグラフの「見受けられている」というのも何か持って回った言い方で、「見受けられる」でいいと思います。これは非常に文章の細かな点ですけども、私が申し上げるまでもなく、分筆の専門家がいらっしゃる審議会ですから、あんまりこれは文章としてなってないというのを出すのはいかがなものかと思いますので申し上げません。長くなりました。すみません。

【林部会長】 ありがとうございました。

 ほかにいかがでしょうか。はい、どうぞ。

【信國委員】 私もワードの方で1点だけ、基本的考え方の中の動物の愛護の下から2行目に、社会における生命尊重の後、友愛及び平和の情操の関与とあるのですけど、何かここで友愛及び平和とかという、非常に論議を呼びそうな言葉をあえて入れる必要があるのかなという気がしまして、前回どうも見過ごしまして、すみません。

 それから、これどこでもよろしいのでしょうか。

【林部会長】 はい。

【信國委員】 今後の施策展開の方向でちょっと後ろの方になるのですが、(7)の産業動物の適正な取り扱いのところで、ちょっと意見を申し上げたいと思います。

 これは、まず、出だしが動物の愛護及び管理の観点からすると書いてあるのですが、これは既存の産業動物の飼養及び保管に関する基準というのは、この観点から整理されているという位置づけにするのかしないかによって、ちょっとここの書き方が変わってくるのかな。端的に申し上げると、先ほど申し上げた基準というのは昭和62年の制定でございますので、単に時間が経っているというだけじゃなくて、見直しのときに来ているということで、端的にそれだけ書いていただければいいのではないかなと。

 特にそういう中であえて言えば、例えば家庭動物等の取り扱いと比較してとか書いてあるのだけれども、そういうものと比較する意味というのはないのではないか、むしろそれを議論し始めますと、講ずべき施策のところで産業動物の生活に応じたというのがありまして、産業動物ですから、全般的に言えば、適正な取り扱いと、いわば生産性というのは、生産性の向上というのは同じベクトルなものですから、特に問題がない限り、あまり関心を呼ぶ事項ではないのではないかということから言うと、あえて家庭動物等の取り扱い等というのは、比較は必要ないのではないかと。

 それから、同じようなことで、いわゆる生産者及び消費者の双方の側においてと、これは講ずべき施策のイのところにも書いてあるのですが、確かに産業ですから、生産者と消費者というのが分けられれば分けられるのですが、じゃあ消費者が産業動物の取り扱いの適正な取り扱いとどういう結びつきをするかというのは、わかっている人にはわかっているだろうと思いますけれども、何段階もあるので、もちろんもう国連も現状と課題の中ではあまり触れられなくて、触れる必要がなくて、むしろ産業動物の飼養保管のあり方を検討する中で、必要ならそういうことを盛り込んだらどうかというのが2点目です。

 それから、比較の問題でいけば、海外との比較がどうしても出てくるところがあると思いますが、海外でもヨーロッパでは大分徐々に個別項目まで踏み込んで実行といいますかね、現実の施策に反映されるようになってきておりますけれども、それにおいてもやはりある程度の長い検討といいますか歴史を経て入ってきているというようなこともあるので、そこのところの動きを見るというのは必要だろうと思いますが、あわせて、国際機関等でももう議論が進む等、要するに、それぞれは、すべては満たしてないかもしれませんけれども、飼養部分についてはいろんなところで議論されているので、その上に、また独自性を主張してあれすると、非常にかえって混乱することがあるので、これは検討のときの課題になるかもしれませんけれども、そういう国際的な基準等ができた場合の、いわば適正にそれを反映していくような考え方があっていいのではないかと。

 それから国内的にも、先ほど消費者云々というのが出てきましたけれども、有機畜産物については、例えばJAS規格ができたとか家畜伝染病予防法の中で飼養衛生基準というようなものが設けられるようになった、これは先ほど申し上げました、もう昭和60年以降の変化の中でございますので、そういうものとの整合性といったものを踏まえつつやるのだと、もし言うとすると、そういうことを触れたらどうか。

 最後に、産業動物の性格に応じたというのが書いてある。これは非常にやっぱりこういうほかのものと違うので、そこの性格をきっちり踏まえるということは重要なのではないかということで、この部分については、ぜひ残していただいたらと思っております。

 以上です。

【林部会長】 ありがとうございました。どうぞ藏内委員。

【藏内委員】 13ページの関係地方公共団体との協議のところですが、一番上の一番最後、中核市においては、犬または猫の引き取りの事務等を実施しているとございます。実際そう行われていると思うのですけれども、実は、今、日本に市区町村は3,300弱あったと思いますが、合併が推進しておりまして、2,200ぐらい、1,000以上少なくなっておりますね。当然中核都市というのは、これから続々とふえてくるわけでございますが、これ、中核都市になりますと、県が所管していました保健所の機能が委譲されるわけでございます。当然、犬の引き取り等はここで中核都市が行うということになろうと思いますが、県には、この犬等の引き取り等についてのいわゆる専門職として獣医師の配置がされておりますが、中核都市にはないのではないかと思います。多くの方から中核都市もぜひこの獣医師専門職を配置してほしいとそういう声が出ているのですが、現況としましては、市町村極めて財政状況が厳しゅうございまして、公務員の削減に向けた動きが進んでおります。そのような中で、新たに獣医師を配備するというのは極めて困難だろうと思いますので、ぜひここは環境省の方からそういった自治体に対して獣医師の配置を促すような何らかの措置といいますかね、それを考えていただきたいと思います。

【林部会長】 兵藤委員どうぞ。

【兵藤委員】 8ページの所有者明示というところが、マイクロチップの導入の仕方なのですけれども、この最後の所有者明示の中で所有者の実施率の向上を図る必要があるというふうに結んでいますけれども、これこのまま置いておきますと、多分10年後でも多分このままの状況でいってしまうのではないかと思います。これを実現するには、早期の法制化が望ましいと、一字、これ入らないものでしょうかね。というのは、先ほど言いました遺失物法の改正に伴いまして、警察が完璧に手を引きます。そうしますと犬や猫はどこに行くかというと、先ほど言いました中核の問題もありますし、私が住んでいる横浜市すら四つ五つの保健所が一つにまとまって生活衛生課がそこに行ってしまって、窓口がそこ、市民の利便性が極めて落ちます。返還率を考えますと、今後これをやられますと、極めて上がりません。

 そうしますと、どうしてもここでやらなければいけないのは、所有者の明示しか実はないのです。やっぱりここでやるには、国民性と先ほど議論がありましたけれども、日本は、努力規定はあまり守りません。通達も守りません。結局は法制化しか実は手がないのですね。どうしてもここでは早期の法制化が飼い主の責任をはっきりさせるとともに、返還率とか譲渡とかそういうことにすべてがかかわってくるものですから、ここでは法制化を早く望みます。それには、ここの委員会の意見が一致すれば、いつになるかわかりませんけれども、とにかく法制化を望むのだという強い意志を働かせてくださる文章が入ることを望みます。

 以上です。

【林部会長】 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

【中川(季)委員】 青木先生のおっしゃるように文章を、情緒的なところはもう割り切って、なるべく簡潔明快にしていただきたいのですね。読んでいて最後の最後まで行くまでちょっと意味をつかめなくて、やっぱり小学校の6年生にわかるぐらいの簡潔さで仕上げていただくと、私みたいな者でも非常に助かる。

 それから、9ページの3Rの原則というのを私は伺ったことがあると思うのですけど、今思い出せないので、ちょっと教えていただきたいのですけれども、もう皆さんご存じのことなのですか。すみません。

【東海林動物愛護室長】 注釈をつけるようにしたいと思いますけれども、3Rの原則というのは、まずは、リプレイスメント、代替法の活用、動物実験以外の方法で何かないだろうかというところ。それからリダクション、数をできるだけ削減するということ。それからリファインメント、苦痛を軽減するということ。このRの頭文字を取って3Rと言っております。

【中川(季)委員】 それをわかりやすくして、一般市民にもわかるように3Rの原則というのをしっかり教えていただきたい。

【林部会長】 どうぞ、中川志郎委員。

【中川(志)委員】 全般的に拝見しますと、非常によくまとめられているという第一印象です。それから、基本的にこの第1の動物愛護及び管理の基本的な考え方というところはやはり非常に難しい率直な感じがします。これは、この動物愛護管理法という法律そのものの持つ一つの内在する性格だろうというふうに思うのです。特に、この目的のところというのは、レベル的に見ると三層構造みたいになっているわけですよね。最初この法律はというところにその動物の適正管理とかそういう具体的なことがあって、それがもちろん基本にあって、その上に動物の愛護というそれを重ねていく、その動物の愛護は何のためにあるかというと、生命尊重・平和・友愛というそういう三層構造になっているのですね。しかも、その基本的な部分では、そういうものでありながら内容は極めて具体的なのですよね。これを整合していくというのはかなり文章上では難しいなという感じがするのです。しかし、僕は基本的な考え方として、それがこの法律の特徴なのだというふうに思うんです。あまり海外に例を見ない、この目的のところでここまでうたいこんで、これがこの法律の目的なのだと言い切ってしまう、これはやっぱり僕はすごいことじゃないかというふうに思っているのです。そのことがこの法律の実はファンダメンタルなんじゃないかというふうに思うのです。したがって、この基本的な考え方のところの文章表現というのはやはりかなり難しいし大切だなという気がするのです。

 先ほど、科学的な部分というふうな言葉を青木先生もおっしゃったのですけれども、やはり法律というものであったとしても、それをサイエンティフィックな部分と、それから、行政的にどうするかという部分と、もう一つは国民心理というか情操面というか、そういうものをやっぱりコンバインしたものがやはりあるのじゃないかという気がするのですね。

 そういうふうに考えますと、例えば、その青木先生がご指摘になった4行目の人、動物は生命的に連続的な存在であるというのは、実は最近の分子生物学で極めてサイエンティフィックに明らかになってきた部分でもあるわけですね。それに伝統的なというふうにくっつけてしまうと、その分子生物学で最近極めて具体的に明らかになってきたものが伝統的になってしまうというところに、文章上のレトリックとしては極めて難しいところがあるのですよね。むしろ、先ほどの青木先生のご指摘のように、伝統的なことはどちらかというと生きとし生けるものにつながるのであって、この前の方の連続的な存在である生命の連続性、生命の同様性というのはむしろ最近の分子生物学の成果なのだという、やはりそういう整理上の文章構成が望まれるのではないかなという感じがここではしたのですね。

 それから、もう一つ、非常に大きな問題で、これこの中で解決するのは、ひょっとしたら難しいかなというふうに思うのですけれども、国民性という問題ですよね。その国民性というものは、当然万国普遍のものではなくて、変わるであろうという考え方は当然あるのですよね。僕は前からそう思っているのですけれども、その動物愛護あるいは生き物に対する人々の感情のありようというのは、疑いようもなくやはり国民によって違うと思うのですよ。それは、例えば10年間今の現代に生きたからそれが急速に根本的に変わってしまうということはあまりあり得ないのではないか。要するに基本的にこの国に生まれてこの国に育っていき、この国の風土の中で育っていくという、和辻哲郎的に言うならば、風土的な考え方というのはやはりその国民がそこで地産地消して育っていくという環境の中で培われていくその部分はやっぱり否定できない。それは昔と違うかもしれない。

 この前大槻先生が、今の青年たちは僕のように古い人間が味わってきたそういう風土的な特徴を浴びていない、そういう学習がされていないのじゃないかという指摘をされた。僕はそれが非常に心に響いて、うちに帰ってから随分考えさせられたのですよね。僕が言っている国民性あるいは日本の風土的な感情的にはそうではないのかもしれないなということ。しかし、そう一たん思ったのですけども、やはり考えていくと、これはやはりそこの気候・風土的なものというのは国民性に及ぼす影響というのは否定できないというふうにやっぱり思うのです。それを国民性という言葉で言っていいかどうかというのは非常に問題なのですけれども、しかし、日本的な動物愛護というのは歴史を逆上ってみても当然あるし、ずっとさかのぼればさかのぼってみるほど日本における生き物、生きとし生けるものに対する感情というのは、この風土から生まれてきたとしか考えにくいのですよね。そういうふうに考えてくると、この国民性というものをどういうふうに考えるのかというのは、いろんな人によってとり方が違うので、後ろから二、三行目のこういう表現でいいのかどうかというのは自信がないのですけども、しかし、何かやはりそういうものの中に、日本の動物愛護管理法というそういう一つの輸入規制というかそういうのがあっていいのではないかなと、そんなふうに思います。

【林部会長】 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。はい清水委員。

【清水委員】 さっき青木委員さんも指摘されましたけれども、基本的考え方のこれは文章として考えたら、僕はもう最初から全部筆を入れたくなるぐらいのあれで、ただ法律というのはこういう文章でしかないのかなというのがある。法律の体裁として必要なのかなというのがありますから、あきらめざるを得ないのかなと思いながら、要らない要らないと思うところを、実は読まされていると何かありがたくなってくるというか、法律らしくなってくるかというか、そんな感じも必要なのかなと思って、むしろ例えば考えられるとか見られるというのは全く不必要だけれども、その言葉をつけておくことによって、じゃあ弱まるのかといったら別に弱まってないのだと思うのですね。別にそれは付録にくっついている尾ひれみたいな部分だろうということで、全部目をつむることにしておりました。ただ、やっぱり本当は、本当にこれは大事なところで、基本的考え方は中学生が読んでもわかるぐらいのものができれば、それはすばらしいと思うんですね。それをつくるには、ちょっとこのメンバーじゃ無理かもしれないと思っているのですね。それから、そんな簡単に2時間ぐらいで審議ができるはずがなくて、合宿して3日ぐらいかけてみんなでもってやるかというのならわかるかもしれませんけれども、ここでちょっと指摘してワードを、これをかえてくれというぐらいで直るような、そんなものじゃないと思うのですね。

 読んでいて気持ちは非常によくわかるのですけれども、確かにこなれていない部分が随分あると思いますし、ああ、これは林先生が考えた文句かなとか、ちらちらとその個性が見えるのがまたなかなか味なところでありまして、最終的にどういう形になるのかといったら僕もちょっとあれなのですが、私は非常に細かいところ、私自身で気になったところを言えば、例えばその最初の動物愛護の2番目のパラグラフの、人はほかの生物を利用し、ときとしてその命を犠牲にしなければならない、生きていけない存在だというのがあるのですが、「ときとして」というのは要らないなと思うのですね。弱めたつもりでしょうけど、人間は絶対的に動物の命、ほかの生物の命を犠牲にして生きているのだという覚悟というかそのあれがあるべきであって、もちろん目の前にいる動物をいつも殺しているという意味ではないですけれども、これはなくてもいいなとか。それから、さっき出てきた、今、中川先生が言った国民性の問題もそうですけども、確かに国民性といって、それは確かに日本の国民性という言い方でもって別な要素がたくさん入ってきて、ここに国民性と書くよりはその社会的実情がいいと青木先生はおっしゃったし、社会習慣とかそういう話なのかもしれませんけれども、僕は昔、ヨーロッパに暮らした感じでは、全くそれは全然違うという、僕は何たって肉食民族と農耕民族の違いじゃないかと思ったのですけども、草食というかですね。ヨーロッパの人が動物に対して持っている考えというのは、それは逆立ちしても追いつかないなという。

前にちょっとどこかでお話ししたことがあるのですけど、夏休みに犬を連れてバカンスに出ると、泊まれるホテルが少ないからと犬を連れていかないと。それでどうするかというと、その犬を森に捨てるわけですね。捨てて、そうすれば犬はいないわけですから、ゆっくりとどこでもホテルでもレストランでも入れるという意味で捨てていくという。その犬が年間で、フランスで30万頭ぐらいいたわけですね、もう20年ぐらい前の話ですけど。そのときに驚いたのは、心優しい飼い主は、放置しないでそこで殺していくというのですね。殺すということは犬に苦痛を与えないことであって、その犬にとってもいいのだというのを読んだときに、僕は、これはもうそれはとんでもないというか、私にはとても理解できないと。私は犬を飼っているわけではないですけど、そういう心のありようというのは国民性というのか社会的な習慣というのか何かわかりませんけれども、いつか林先生にそういう文化とか習慣も変わりますよと言われましたけれども、私はちょっとやっぱり簡単に変わらない、すごく大きな溝があるような感じがしていまして、ただ、日本独特のものとか何かというものを出すべきだということをそんなに意識する気はなくて、我々が精一杯考えてつくれば、自然にそれは日本の風土・文化にも合っているわけでして、そんなに日本という言葉を入れたり国民という言葉を入れなくても、それはユニークなものになるに決まっているわけですよね。我々が生きている人間の日本人の考え方そのものが、ユニークがあれば、みんなでまとめてつくったものがユニークだから当たり前であって、ここにわざわざそういうのを入れる必要はないと、あんまり工夫はして用語とかなんとかというと、もちろん考えるべきでしょうけど、そういうふうにとらわれずに、今、最善なものをつくるのだということでやれればいいのだと思っています。

【林部会長】 はい、ありがとうございました。いろいろ意見が出てまいりましたけれども、ちょっとこの第1の基本的考え方のところで、確かにこれはほかと比べると少し情緒な文章表現が多いことは事実です。これは基本的考え方ですから、考え方だから最後に考えられるという文章にはならなくてもいいのかもしれない。というのは基本的に考えられると書かなくても、結局考え方なのですから、だからそういうのは全部削除しても強まりも弱まりもしないし、もっと優しくなるという、読みやすくなるということはあるような気がいたします。

 はい、どうぞ前島委員。

【前島委員】 もう林さんが言われちゃったので言うことないのですけども、私は事務局と会長に非常に同情するのですよね。前のときに言うからこういうことになっちゃったので、前のときはその前の会議を受けてやると、皆さんの意見をどんどん継ぎ足していくと、だんだん情緒になって、一体何を言っているのかということになると思うのです。

 それで、私は結論として、清水委員が言われたように、この本当に皆さんのこれだけのみんなが合意する文章をつくった、私は3日じゃ足りないとか一月ぐらい山の中へこもってやらないと、それで考え方はみんな違うわけですから、そういう意味で、私は特にこれについて、これ以上議論しなくてもいいのじゃないかと、ただし、私の好みからしても考えられないというのはやめて、こうであるというふうにやって、それで、何しろこれ平成29年ですか、30年までということになるけれども、私はその間にももし状況が変わればさらに変えていくという弾力的なことでいいと思います。

 それから、一つ余分なことを言いますが、中川先生が科学的ということで、分子生物学で最近連続性がわかったということを言いますが、私はそうじゃないと思うのですよ。少なくともダーウィンだとかメンデスとかクローズベルナール、あのときにはもうなっていた。もっと言えばアリストテレスのときから。ただ、後から考えると、あのときは厳密性が足りなかった、それで今、分子生物学的に見るとダーウィンの言うことも厳密的には足りなかったというだけで、恐らくあと10年もたてば、今の分子生物学が一体何を寝ぼけたことを言っているのかと、私はこれから出てくる若い研究者はそう言うだろうと思いますので、あんまり科学的とかそういうことについて気にしなくていいように思います。どうも余分なことを言いまして、中川先生すみません。

【林部会長】 いや、ありがとうございました。

 ここの人と動物とは生命的に連続的な存在だというのは、これは確かに特にダーウィン・ライド、進化論で明らかにして、最近は分子生物学的にあっちの方法を使っていますけれども、こういう科学的な側面と、もう一つは、日本はもう古くから直感的にそう思っていた、これは輪廻の思想がそうですから、だからこれは科学だけではないというところ、ただ、余りこれ全体的には、先ほどからよくおっしゃられるように、日本的なものをちょっと強調しすぎに言おうとしたことの不自然さが出ているかなというところがあります。

 どうぞ、ほかに。菅谷委員どうぞ。

【菅谷委員】 もうこの辺でいいだろうという意見があったわけですが、大体、青木委員の考え方に僕は賛成なのですが、特にこの文章表現についてはあまりここでやらないから、次、出てくるのと同じような文章が、例えば、動物の管理の3行目4ページ、動物・人・生命・身体・財産というものに広がる、その次も同じような文章のことをこうやって、何か文章をもう少し練らないと、ここでもう練る必要はないと思うのですが、ここであえて指摘をしないから、そのまんまのことがこう次々出てきて文章表現がおかしいと、あっちこっちに行政語の略したのが出てきて、先ほど中川女性委員の方から言いましたように、小学校6年生でも中学生でも読めるような文章にというのは、そこまでは無理としましても、非常に中には「優しい眼差しで」なんてすばらしい言葉を使っているところがあれば、片一方はなかなか難しい言葉、ですから、もう少し文章をわかりやすくというよりも整合性があるといっては失礼な言い方ですけども、ちょっと変えていかないと、非常に読みにくいので、繰り返し繰り返し同じようなことは、これはしようがないのです。一つの宿命的なことなのですが、同じ用語とか何回も何回も出てきて、説明がここまで必要なのかなと、もう少し簡略化した方がいいのではないかなという部分が、先生方が見てもそう思うでしょうし、もう少し簡略して書いた方がわかりやすいと思うのですね。一度読んだら二度と読みたくないという文章になったのじゃあいけないので、ぜひその辺よろしくお願いしたいと思います。

【林部会長】 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。それじゃあ、どうぞ室長。

【東海林動物愛護管理室長】 文章の簡略化あるいは表現の適正化を含めて、きょうのご議論を踏まえまして、事務局の方で林部会長と相談して、できたら、もう少し練りたいというふうに思っております。ただ、いろいろ助けていただく発言がありましたように、行政機関で出すものとなるとやはり限界がありまして、限界が越えられない部分があるのですけれども、それにつきましては、この基本指針は基本指針としてまとめる以外に、例えば、もっとわかりやすいパンフレット、それも図表入りの、そういったものをつくるですとか解説書をつくるですとかという形で、並行して普及啓発を進めていくというところで考えていきたいなというように思っております。と同時に、都道府県でつくられる計画についてもまた同じことが言えると思いますので、都道府県の計画をどういうふうにつくっていくかというような技術的なマニュアルを環境省でまとめて各自治体に示すと同時に、そういった、また、わかりやすい副読本的なものも合わせてつくるようにというところも都道府県の方にお願いをしてまいりたいというふうに思っております。

【林部会長】 ありがとうございました。どうぞ大矢委員。

【大矢委員】 今、室長の方から副読本的なものをいろいろとつくるとなると、実際に私は現場で全国あちらこちらのお役所を回らせていただいて、新しい動愛法の取り組み方やなんかについて、各行政ばらばらでいまだにわからなくて困っているところがたくさんあるという現状なのですね。ですから、環境省、国から地方におろすときに、もう少し具体的にわかりやすい方法で、そしてせっかく全国統一レベルと言いながらも実態はばらばらになってしまっているという現実があるというところもよく見て、この基本指針を出していかなければいけないのではないかと、そのように痛感しております。

【林部会長】 はい。ほかにいかがでしょうか。丸山委員どうぞ。丸山委員から菅谷委員に。はい。どうぞ。

【丸山委員】 12ページの都道府県が行う計画の策定というところなのですが、これは具体的には、各県単位でもってこういうものをつくるということでございますね。場合によっては、その市町村あるいは先ほど藏内委員の方からご指摘があったような、中核都市とかというものが担わなければ独自につくらなければいけないというものもその行政の仕分けとして出てくるという理解でよろしいのでしょうか。

【東海林動物愛護管理室長】 法律上は、都道府県知事が必ず義務として策定するという規定になっておりまして、ただし、都道府県知事が策定したものを踏まえながら、政令市ですとか中核市とかが法定上の計画ではなく、あくまでも任意の自発的に取り組まれる計画としてつくられるものを拒むものではないというような定義になっております。

【丸山委員】 この法律ができて、実際にこれを実施する上での各都道府県のこの推進計画の策定というのは、私は極めて重要だろうというふうに思うわけです。これは前にも発言したと思うのですが、ここで本当にどこが中心になって、どういうふうにしなければいけないのかというのが、この第3のところでは、何か私はあまり明確でないような、それは自治体がそれぞれ独自にやらなきゃいけない地方分権的なものとして踏み込めない面もあるかもしれませんけれども、踏み込まないと、何か上っ面をパッとなぞるような推進計画しか出てこないような心配というのが、私にはどうしてもぬぐえないのですね。こういう地方公共団体との協議とかというのは、実際やるときには、当然こんなことは自分たちが困るわけですからやるので、こういうことを書くよりか、もっと何か具体的にここまでやってほしいとか、ここが中心的な役割を果たすとか、先ほど藏内先生がおっしゃったような何かそれを担う人がこういうふうにあってほしいとか、この法律ではそこまでは書けないものなのでしょうか、そのあたりで。このままだと、何かその具体性が欠けているような感じがしてしようがないという心配です。

【東海林動物愛護管理室長】 どういう内容のものを各都道府県の計画に盛り込むかということでございますけれども、基本的には、この基本指針に則して基づいて計画を各都道府県はつくるということになっておりますので、ご議論をいただいている動物愛護の基本的考え方はもちろんなのですが、施策展開の方向を揚げました10項目、いわゆるこれを踏まえてさらにブレイクダウンする形でつくっていただくという内容になってございます。そういった意味では、ここに掲げた考え方、あるいは政策展開の10項目というのが、定めていただく基本的な内容というようにご理解いただければいいのではないかなと思います。さはさりながら、地域の事情に応じて、地方の独自性というものを慮りながら計画をつくっていただくということも大事だと思いますので、こちら12ページ、第3の方では基本的に手順を中心にまとめさせていただいております。ただ、この手順の中でも、非常に多様な意見の集約、あるいは合意形成というものが私どもとしては大事と思っておりまして、つくり上げられた計画そのものも大事なのですが、計画をつくり上げていく課程でいろんな方々と連絡調整をしていただくという、そういう課程もまた非常に重要だと思っております。こういった課程、手続課程を示すことで、丸山先生からご指摘のあったような内容についても各地域の事情を踏まえながら、関係団体から愛護団体・協会団体も含めて、いろんなすばらしい意見ですとかアイデアとかが出てきて盛り込まれていくという内容になるのではないかなというふうに考えております。

【林部会長】 よろしいですか。これは基本指針という性格の中でどこまで実効性・具体性を持たせるかというのは、これは相当な、大変困難な面もあるのですが、例えば9ページの真ん中ほどに「講ずべき施策」というのがありまして、そこのウには、有識者等の意見を聞きながら幼弱な犬及びねこの販売制限のあり方を検討すると、こういう書き方をしてあれば、次は何が起こるかというと、例えば私の知っています限り、非常に先進的な、都道府県としては東京都がありますが、東京都なんかはペット販売業に対して繁殖業、繁殖家から仕入れた犬及び猫の生年月日だけじゃなくて、いつ向こうから母親と離したのかというその日にちを明記させるということによって歯止めがかかってくると見ているわけですね。そういうのがどんどんどんどん、それを出させることを義務づけていくことによってデータが出てきますから、どうなっているか実態がはっきりして、それに対する国民的な意識が高ければあまりにも幼弱すぎるのではないかと、ここでも論議で8週というのはうたわなかった経緯がありますけれども、実質的に幼弱な個体の販売というのを制限していく方向へ向かっての施策というのはとりやすいようにする、つまり計画を立てるときにこういう表現が入っていればそうなります。それから、専門家の必要性というのはいろいろなところで書ける形になれば、専門家としてどういう人が必要なのかということは、各都道府県あるいは市町村でお考えいただけるのではないかという気がいたします。

【林部会長】 どうぞ。もうしばらく時間がありますので、ご意見。菅谷委員どうぞ。【菅谷委員】 今、林先生の話で大分答え、同じような質問だと思います。

 1点確認なのですが、4ページには、その動物の所有者、占有者は、一番下から3行、自分が加害者になることについて認識が希薄な傾向にあるとずばり言っているのですが、これはアンケート調査の結果の根拠でしたか。

【東海林動物愛護管理室長】 はい。サンプリング調査なのですけれども。

【菅谷委員】 随分きついなと。さっき清水先生が、ときとしてを削れと、この辺をややもするとか何か入れないと、非常に私としては会議としてはちょっと不満があるので、このときこそ大いに活用をしなきゃいけないと思います。

 以上です。

【林部会長】 ありがとうございました。どうぞ今泉委員。

【今泉委員】 今の会長のお話の中から一つ。親から子を離す時期が、これだと都道府県によって変わるという可能性があるということですか。

【林部会長】 都道府県は皆さん幼弱な、つまり健全な子猫・子犬の発達を阻害するようなところで、そういう発達まで至らないところで母親と離すということについては、この法律の中でちゃんと書かれておりますので、そうしないようにと。これが具体的な数字は入っていないということですが、その数字の扱い方というのは各都道府県によって、これは都道府県も数字的には言わないわけですけども、そういう実態がはっきりする都道府県とはっきりしない都道府県が出てくるかもしれないということはありますね、これは。そういうことをある程度、これじゃだめとか禁止をしてもではないですが、そういうことを明記させるというようなことを進めていく都道府県とそうでない都道府県が出てくるということになりますね。

【東海林動物愛護管理室長】 林先生のおっしゃられているようなこともあるかと思いますし、また、去年12月に改正法の施行基準、施行に係るいろいろな登録基準についてご答申をいただいたときに、特定動物の危険動物の選定基準のあり方、2つ宿題をいただいております。特定動物の選定基準のあり方を見直すということ、それから、幼齢動物の販売制限自体は今既に課しているのですが、具体的な8週齢ですとか6週齢ですとかあるいは12週齢ですとか、そういう基準が明記していなかったわけですけれども、この数値基準を明記する可能性について、今後引き続き検討することという宿題をいただいております。

 この基本指針の策定作業が終わりましたら、今いろいろな知見と言いますかデータを集めているところなのですけれども、また時期を見て、その2つの宿題についてはこの審議会からいただいている宿題なものですから、この審議会あるいはこの審議会のもとで専門委員会的なものを組織させていただいて検討させていただきたいと思っております。

 そこで、ある程度ミニマム基準的な全国統一的な物の考え方は環境省で示せれば示すということになりますけれども、林先生がおっしゃられたように、それに加えて、また地域の事情に応じて上乗せ規制を各地域地域で考えられるということも、また場合によってあり得るかと思います。

【林部会長】 はい。どうぞ。

【大矢委員】 すみません。今の問題なのですけれども、流通形態というのが日本全国に今、流れるという状況になっておりますので、一つの県でこの基準、隣の県へ行ったらこの基準というふうに基準がまちまちだと流通形態が非常に難しくなる、そういうことも十分に勘案していただいてご議論をいただきたいと思います。

【林部会長】 これは私の理解では基準じゃなくて、各都道府県で定められる情報の出し方であって、まだ基準としてはその都道府県でまちまちになるということはないのではないかというふうに思いますけれど。

【大矢委員】 すみません。それぞれ実態はもうばらばらになってしまうということなのですね。今ちょっと言っていました特定動物なんかに関しても、今、非常に各都道府県政令都市ばらばらなんですね。例えば、私、横浜なのですが、神奈川県の場合、横浜市、川崎市、横須賀市それぞれが独自でやる、なおかつ神奈川県もやっている、同じ一つのグループの神奈川県鳥獣ショップ・ペット組合の中でばらばらになってしまっているという現状が、ですから、特に犬・猫の幼齢動物の問題については、非常に関心の高いところですから、十分その実態を踏まえて議論をしていっていただかないと、と思います。

【林部会長】 どうぞ。

【松下委員】 これは基本指針で法律ですからどうなのかなというふうに思いながら、ここには4ページのところに、動物の愛護ということを非常に理念的に麗しく強調していると思います。ただ、先ほど来、皆様がおっしゃったように、わかりやすい文章にするという場合に、何とか的、何とか的いうのが非常にわかりにくいので、それらを少し修正してわかりやすい表現にしていただければいいかなと思って、これは希望でございますが。

 そのほかに、5ページの最後から2番目のところに、身についた習性としてこういう動物愛護の精神を広く普及して、身についた精神として定着させるというようなことをうたっていますよね。それから、7ページのところでは、子供が心豊かに育っていくのに教育活動をというようなことをうたっていると思うのです。そういうようなことを指針として出したら、それじゃあ具体的にそのことをどういう努力するのかというのが、もし可能ならば人材育成というところに、ここでは動物愛護推進員の委嘱が少ないから、もう少し人材育成をというふうなことを書いてありますが、これは大人になった人に講習をしたりなんかして、具体的な方策をとるということだと思うのですけれども、そこに教育活動において動物愛護の心を養うようなプログラムによって動物愛護推進員になるような予備軍というか、人材プールみたいなものを育成するなんていうような要素は入れ込めるものかどうかわかりませんけれど、そういうことが長期的にただ今、保護員が少ないから講習等をいっぱいして委嘱できる人を多くするというだけじゃなく、もう少し基本的な長期見通しみたいなのが盛り込めたらどうだろうかというようなことを感じたのですが、可能かどうかご検討をいただければ。

【林部会長】 ありがとうございました。中川志郎委員。

【中川(志)委員】 今の松下先生の意見の延長線上にあるのですけれども、僕はとてもこのことは大事だというふうに思っているんですね。動物を飼うということの、あるいはその生き物を自分の手で育てていくというそういうことの心情形成に及ぼす影響というのは、今ほど求められている時代はかつてなかったのではないかと思うんですよね。そういう意味で、先ほど指摘された5ページの問題も、それから7ページのこのかなり突っ込んだ書きぶりというのも、今までかつてなかったことなので、これはやっぱりすてきなことなのではないかと思うのですね。ただ、具体的にじゃあこれをどうするかというのは、確かに松下先生がご指摘のように、まだコンクリートされた概念というのがないために、これは戸惑うかもしれないという感じがあるのですよね。今度の法律改正の中で、そのターゲットは3つだよということで明らかになったと。これは、もう何歩前進でもあるわけですけども、そして、この指針の中で、この7ページの普及啓発というところで、6行にわたってそのことについて書き及んでいるということと、その中心的になるのは一つのことではなくて、こういう団体がコラボレーションしないとこれはできないよというふうに言っているのですよね。そういう意味で、僕は最近の少年犯罪とかそういうのをずっとここ見ていると、やはり前回の改正のときに、杉浦正健先生がなぜこの動物愛護管理法を改正しなければならなかったかというときに、先生が神戸の酒鬼薔薇事件があって、それがきっかけになってこの法律に本当に取り組むようになりましたというふうに先生はおっしゃっていたのですよね。これが一つ、動物愛護の問題だけではなくて、人の心の形成という非常に大事な要素を含んでいるのではないかと思うんですよ。したがって、今度先ほど東海林室長が言われましたように、7ページの普及啓発も含めて一つ具体的にこれを各都道府県がやってくださるときに、それに参考になるようなマニュアルをつくるという、これは非常に大事で、このマニュアルの中でそういうものは今ももやもやとしているのですけども、「ああそう、こういうことだったのか」というような一つの指針の中の指針というかアクションプログラムというか、そういうものが出てくるといいのではないか。それは、今度の法律改正の一つの大きな実は目玉なんじゃないかという気がしますので、ぜひアクションプログラムの中でその面に取り組んでいただきたいなと思います。

 以上です。

【林部会長】 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。大体ご意見はいただいたよう……。どうぞ、はい。

【信國委員】 今の中川先生の話をお伺いしていてはっと思ったのですが、例えば酒鬼薔薇事件で動物をいじめた者、これは動物愛護の上からはゆゆしき問題ですけれども、社会的な位置づけから言うと、どうもあの種の非常に猟奇的な事件を起こしたとか、子供がいろいろおかしくなっていく前兆段階で動物をいじめるとかというようなことがよく見られるのではないか、これは統計的にどうだとかという議論じゃなくて、印象としてそういうのがある。そうすると、社会的な仕組みの中で、動物愛護ということよりもその動物をよくウォッチする、それから動物がいじめられているということになると、むしろ、いじめている者に実はケアが必要になってきているのではないかとかいった、むしろ社会側がそういうものをどう受けとめるかというような話があれば、よりこの動物愛護方が社会的に認知されてくるようになるのではないか。子供のいじめなどの問題なんかにしても、実はいじめている側がいろいろ周辺でいろんな人間関係その他あって実はいじめに出ているのであって、いじめはそういう意味では結果だとかというような、私の体験的には何かそんな気がするのですけれども、動物愛護も似たような位置づけにするともうちょっと立体的ないろんな展開ができるんじゃないだろうか、そこをどこでどう触れるかは難しいのですけれども、今、中川先生のお話でふと啓発されましたので、意見といいますか感想で恐縮でございますけれども、発言させていただきました。

【林部会長】 恐らく、私の知る限りは、子供の犯罪とそれから子供が動物虐待をするというのとのこの相関性というのは、アメリカにしっかりした非常に高い相関があるというデータがあるのですけども、この相関というのは非常にくせもので、私は原因と結果がどっちかわからないのですよね。動物をいじめるから犯罪に走るのだというのが先、動物に対するいじめの方が先なのか、その逆かもしれないですね。そうなると、結果と原因が逆だったらばちょっと対応が違うのですよ、これ。そういう疫学的調査からは、よほど蓋然性を詳細に検討しない限り結果と原因を間違えて言うことはいっぱいありますから、少なくともそういう調査をどんどんもっと日本でも行われるようになること、それが例えば今回でも、そこまでやるかどうかはあれですけど、調査・研究の推進というのが11ページあたりに入っているので、こういうことも今後非常に重要な問題かなという感じはしております。

【林部会長】 どうぞ、兵藤委員。

【兵藤委員】 先ほどの所有者明示のマイクロチップのことで質問させていただいて、法制化が望ましいなんて言ってしまったのですが、これはここの基本指針の中では似つかわしい言葉ではないというふうに受けとめてよろしいのですか。もし、それがここではとてもそんなことは入らないよと、これとは全く意見が違うのだと、それでしたら、その有識者の意見を聞きながらマイクロチップの実現化を促進するとかというそういうものでも入れていただいて、総論は国民的には動物愛護を、非常に皆さん一生懸命かわいがっておりますので、むしろ管理をすることによってこの実効性を上げるということであれば、個体識別、先ほど言いました地方の弱体化が非常に目立ちます。このまま行きますと、どんどん畜犬行政、いわゆる犬・猫、いわゆる動物の行政を地方に期待するのは、僕は無理だと実は思っているのです。それでしたら、国でもってしっかりしたものをつくってあげた方が、実効性が上がるというふうに僕は思うんですけれど、その点ちょっとお答え願いたいと思います。

【東海林動物愛護管理室長】 現状を申しますと、一部地域では地域の事情に応じて法制的に犬・猫についても個体識別措置を義務づけているという自治体がございます。例えば、沖縄のヤンバル地域の山村ですとか小笠原村ですとか、これは飼養動物の特に猫の管理を適正化していただいて、自然環境の生態系被害を守るというところを目的にしたものですけれども、一部地域では義務化が講じられているという事情がございます。

 では、全国的に見てどうかというところなのですけれども、今回の改正法では、基本的にすべての動物について所有者明示を進めるべきという考え方で改正法がまとめられたというふうに私ども理解しております。ただ、具体的にそれをどう進めていくかという段になりますと、危険な動物つまり公益性を侵害する程度の大きいものについては義務化をしようと、その他の犬・猫といった普通の愛玩動物については、まだ公益性の侵害の程度とバランスを考えた場合に、義務化まではいかがなものかという議論が国会関係者の間でもあったかのように思われております。事前の策として、何もやらない、このまま放っていてはやはり進まないという事情がございますので、環境大臣が所有者明示を進めるためのガイドラインを大臣がつくるという措置が新たに盛り込まれて、これがこの審議会でもご議論いただきましたけれども、この6月1日からガイドラインが施行されているということになっております。ちょっと事務的なお答えになってしまうかもしれないのですが、環境省としましては、まずこの自発的取り組みを推進するガイドライン、こういったものの普及啓発を着実に進めていく中で、愛玩動物、犬・猫といった普通の動物については、自発的取り組みを推進していきたいと、ただし、一方で特定動物については、法律上、明確に識別措置が義務づけられますので、これについてはしっかりとやってもらいたいというふうに思っているところでございます。

 それから、信國委員から産業動物のお話がございましたけれども、実はこの審議会から、動物愛護部会からいただいている宿題がどんどんどんどん重なってきているのですけれども、先ほど言いました特定動物の基準のあり方と幼齢動物の販売制限の数値基準、これ以外にももう一つ宿題がございまして、産業動物の飼養保管基準の改定がございます。環境省に動物愛護管理法が移ってきたときに、最初の審議会でご議論をいただいたのですけども、飼養保管基準4つあるのですが、古い順に改定していこうというところで改定を進めてまいりまして、家庭動物の基準、展示動物の基準、実験動物の基準と順番に来まして、最後に残るのが産業動物の基準というところになってございます。これをいつから改定作業を始めるのかというところでございますけれども、特に畜産動物に係る基準ということで、ご存じのとおり、自給率が低い状況で、産業動物のことを考えるにはグローバルな問題として考えなければいけないという事情もございます。それから、こちらの方に書きましたように、なかなか産業動物の福祉といっても、生産者・消費者双方でなかなかその意識が低いといいますか、理解がまだ進んでいない状況にあるというふうに私ども環境省では認識しておりますけれども、ですから、ニワトリが先か卵が先かという議論もあるのですけれども、もう少しグローバルな動きを見ながら、そちらの方向性が固まってからの方がタイミングとして望ましいのではないかなというふうに考えている次第でございまして、その間、普及啓発というものをまずは進めていくというところに重きを置いて、しばらく状況を見ながら、時期を見て改定のあり方といいますかタイミングを見計らったらどうかな、というふうに考えている次第です。その辺ちょっと意を尽くせなかったところがあるのですが、そういった趣旨を10ページ目の(7)では表現をさせていただいたつもりなのですけれども、信國委員のご指摘を踏まえまして、文章表現の修正というものをもう少しきちんとやってまいりたいと思っております。

【林部会長】 どうぞ。

【信國委員】 別に反論じゃないのですけれど、まさにニワトリが先か卵が先かで、要するに普及啓蒙といっても、そのもとになる基準自体がどの程度今現在そのものを直接普及していくというものとしてふさわしいかどうかという問題があるだろうと。それと、いやそういうものがないまま普及啓発を図るというのは、じゃあ何だということになれば、ここで言えば、例えば必要性についての理解を深めると、そういうことにならざるを得ないのかなという気がしておりまして、そこはおっしゃいますように、今、ご説明ありましたように、遮二無二何かしなきゃいかんということじゃなく、まさに状況変化に対応したものとして、そういうものを視野に入れとかなきゃいけないのではないかという趣旨でございますので。

【林部会長】 そうですね。今、その産業動物については、BSEから始まって鳥インフルエンザ、大変厳しい状況があるものですから、それと同時に、この分野における動物の愛護及び管理については、日本はまだ始まったばかりというところでなんですけど、一方で、私の理解ではいろんなことが、今問題が起きていますけども、その大もとになっているのは、BSEにしろ鳥インフルエンザにしろ、圧倒的な社会的な肉食率の高まりで、例えばニワトリは過去50年間に42億羽から今179億羽まで来ているのですよ。この過去50年間で4倍以上になっているのですね。食べる動物というのは着実にふえてきていて、もう一番問題が起きているのはここの分野じゃないかと。それが、しかも、その多くは昔のような飼い方じゃなくて、工場的畜産というかそういう状況になっているものですから、問題が起きたときに爆発するわけですよね。BSEだって、あれは肉骨粉を使ったのは工場的畜産で使った、従来のモンゴル的な自然放牧で起こるはずがないわけで、それから鳥の変化も爆発するのはああいう密閉された状況の中で入ったときですね。これはある意味では、その環境問題の方が大きいのですけれども、やはり動物の愛護の面から、これはひょっとすると一番根本のところから考えるところが重要になってきているのかなというのがあるのですが、日本の場合、これは鬼頭さんに言わせれば、生身と切り身は完全に切り離されていて何がどうなっているか、ここで、つまり生産者と消費者と言っているのはそういう意味なのだと思うのですね。だから、そういうところの一番最初をそもそもどう考えるのかというところの整理からいくのかなという感じは段階的には私自身はしております。

 ということで、大体ご意見はもうよろしいでしょうか。

 それでは、何しろいろんなご意見をいただいて、これは恐らく、先ほど清水委員もおっしゃいましたし、前島委員もおっしゃいましたけど、これ3日間かけてもなかなか大変かもしれませんが、少なくともきょうの1時間、きょうの論議で随分やはりよくなるのじゃないかという気がいたします。それはまた、ご足労をおかけいたしますけど、事務局の方で少し時間はおくれても、つまりパブリックコメントの時間は数日間おくれるかもしれませんけど、きょういただいたご意見を反映して、それをこういうパブリックコメントに書けるそういう案をつくってまいりたいというふうに思います。それを素案としたいということでございます。

 そういうことでご了解いただけますでしょうか。

(「異議なし」)

【林部会長】 どうもありがとうございました。

 それでは、どうぞ事務局の方よろしくお願いいたします。この後、議題は2がありますが、これは何もないですね。委員の方々からは何かございますか。よろしいでしょうか。

 それでは、きょうの議事はこれで終了したいと思います。

 最後に次回の日程等について、事務局から連絡をいただきます。

【事務局】 きょうはご審議を賜りまして、まことにありがとうございました。

 林部会長と相談しながら、きょうのご議論を踏まえまして、修正を加えてパブリックコメントに入りたいというように考えております。

 次回は、できれば、ご答申案をご審議いただきたいというように考えております。

 日程につきましては、パブリックコメントに1カ月ちょっと、そのまとめにも約1カ月弱かかりますので、9月初旬から場合によっては10月にずれ込んでしまうかもしれないのですが、できれば9月中に次回の審議会を開催させていただきたいというように思っております。

 お手元に日程表をお配りしてございますけれども、事務局の方にお返しいただければというように考えております。

 本日は、どうもありがとうございました。