中央環境審議会動物愛護部会(第15回) 議事録

日時

   平成18年3月23日(木)午前10時00分~午後0時02分

場所

   環境省第一会議室(中央合同庁舎5号館22階)

出席者

        林   良博 部会長

        青木 人志 委員    今泉 忠明 委員

        大槻 幸一郎 委員   大矢 秀臣 委員

        奥澤 康司 委員    清水  弟 委員

        菅谷  博 委員    中川 志郎 委員

        中川 李枝子 委員   信國 卓史 委員

        兵藤 哲夫 委員    前島 一淑 委員

        丸山  務 委員

        

        南川 自然環境局長  

        東海林 動物愛護管理室長   黒川 審議官

議題

  1.   (1)「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」(答申案)について
  2.   (2)「動物愛護管理基本指針(仮称)」の基本的考え方(案)について
  3.   (3)その他

配付資料

  •   資料1 実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準(答申案)
  •   資料2 「動物愛護管理基本指針(仮称)」の基本的考え方(案)

  •   参考資料1 「動物愛護管理基本指針(仮称)」の検討スケジュール
  •   参考資料2 平成18年度動物愛護管理関連予算(案)の概要等

議事

【事務局】 それでは定刻となりましたので、中央環境審議会動物愛護部会を始めたいと思います。

 まず、本日の委員の皆様のご出欠についてご報告いたします。

 本日は、委員16名中、ただいま13名の委員のご出席をいただいております。規定により部会は成立しております。なお、藏内委員と松下委員はご欠席と伺っております。大槻委員につきましては、遅れて出席との連絡が入っております。

 続きまして、お手元にお配りした資料の確認をさせていただきます。

 中央環境審議会第15回動物愛護部会本資料、それと、動物の愛護管理のあり方検討会配付資料、この冊子、それと座席表と日程の調整表になっております。

 また、動物の愛護管理のあり方検討会の配付資料につきましては、さまざまなデータが収録されておりますので、参考にお配りしております。また、この冊子につきましては、大分重たい冊子になっておりますので、別途郵送いたしますので、本日は置いていっていただければと考えているところです。資料に不備がございましたら、事務局までお申しつけ願います。よろしいでしょうか。

 それでは林部会長、よろしくお願いいたします。

【林部会長】 はい。承知しました。それでは、ただいまから動物愛護部会を開催いたします。

 本日の議題は、お手元の資料にございますように2つございます。1つは、「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」(答申案)についてであります。

 先般、実験動物小委員会において、パブリックコメント等を踏まえて答申案が取りまとめられました。これは本部会に報告していただく予定であります。この後、これを答申案として中央環境審議会会長に報告したいというふうに思います。これが1つ目です。

 2つ目は、「動物愛護管理基本指針」の基本的考え方についてでございます。前回ご審議いただいた、今後の検討スケジュールに基づき基本的な考え方について、これを本日ご審議いただきます。

 それでは、本日も円滑な審議をしていただきますようお願い申し上げます。

 それでは議事の1、「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」(答申案)について、事務局にご説明いただきます。

【事務局】 それでは、ご説明をさせていただきます。

 まず、実験動物の飼養及び保管等に関する基準の改定ということでパブリックコメントを行いましたので、そちらのご紹介からさせていただければと思います。14ページの次のページ、14ページ(補)として載せさせていただいているページがございます。そちらをご覧下さい。

 前回の部会でご了承いただきました素案に対しまして、今年の1月4日から2月3日までの1カ月間パブリックコメントを行いました。告知の方法は環境省のホームページ、記者発表でお知らせをしております。ご意見の募集方法は、電子メール、ファックス及び郵送で合計297通のご意見をちょうだいいたしました。

 2の(2)意見の概要でございますけれども、1通の中にそれぞれご意見をちょうだいしておりましたので、延べの意見数としましては2,976件のご意見をちょうだいいたしました。

 基準の各項目にわたりまして、ご意見をちょうだいしておりまして、本基準について実験動物の飼養保管方法、苦痛の軽減方法、安楽殺処分の実施方法に関して定めたガイドラインでございますけれども、立入調査や委員会の設置義務化など、強制力のある規制の導入を求める意見が多い傾向にございました。

 また、実験動物管理者の資格ですとか教育訓練の内容、施設の構造、輸送方法、苦痛の軽減の方法など、殺処分の方法等について、より具体的な規定を求めるご意見をちょうだいしております。

 各項目に寄せられた意見数の内訳につきましては、基準全体にいただいたご意見としましては120件。第1一般原則には999件。第2、定義には143件。第3共通基準には735件。第4個別基準では837件。第5の準用に137件。その他のご意見として5件ちょうだいいたしまして、合計2,976件のご意見ということになっております。

 それでは、9ページをおあけください。

 前回の部会で、素案前文を読み上げさせていただいておりまして、そこでご意見をちょうだいいたしましたので、本日はパブリックコメントをちょうだいしたご意見と、前回の部会から変更された点についてご説明をさせていただきます。答申案の読み上げは割愛させていただきます。

 まず、9ページから、これは前回の部会の資料からの変更点につきまして、追加した部分について下線を、削除した部分を取り消し線でお示しをさせていただいております。この修正部分につきましては、文章の適正化を図った部分についての説明というのは、時間の都合上、割愛させていただきたいと思います。

 それでは、第1の一般原則の方からパブリックコメントの紹介等ご説明をさせていただこうと思います。

 第1の一般原則のところでございますけれども、全体を通してもございましたけれども、実験動物の飼養・保管に関しての免許、許可制の導入ですとか委員会の設置、実験計画の承認や査察、情報公開等の義務づけを求めるご意見を多くちょうだいいたしましたが、これにつきましては、この基準自体が努力規定でありまして、強制力のある規制を課すことはできないという仕組みになってございますので、こういったご意見については、修正に盛り込ませていただいてございません。

 また、全体を通してですけれども、管理組織のあり方を明確に示すべきである、あるいは実験動物の飼養における獣医学的観念の考え方を明確にすべきであるというご意見もちょうだいいたしましたけれども、この考え方自体につきましては、基準に一定程度盛り込まれているものと考えておりまして、内容によりましては、基準の解説書等において必要に応じて、その考え方をできる限り明確にしていこうと考えてございます。よって、この基準の中には修正を加えてございません。

 修正点としまして、3の周知のところでございますが、3の周知、4行目にある管理者の努力規定といたしまして、この基準の適正な周知に努めるという、どこで周知に努めるのかというふうな努力規定の範囲を明確にすべきであると。前回の部会でご意見をちょうだいいたしましたので、ここの中に施設内における本基準の適正な周知に努めることとしまして、範囲を明確にする修正を加えさせていただいております。

 また、パブリックコメントのご意見でちょうだいした中には、この3の周知の中で、1番目のところに客観性及び必要に応じた透明性の確保という一文がございますけれども、これについては、「必要に応じて」を削除して透明性の確保を明示するべきであるというご意見と、もう一方、透明性及び必要に応じた客観性の確保すべて削除し、透明性、客観性については言及しないとすべきであるという意見、双方の意見をちょうだいしておりますけれども、ここの基準の中では、客観性と一定程度の透明性の確保は必要であると考えておりますので、修正をせずに原文のままとさせていただいております。

 続きまして、第2の定義でございますが、(2)の施設でございますけれども、パブリックコメントの意見の中には、施設の定義の中に繁殖施設、販売施設を含むことを明記すべきであるというご意見をちょうだいいたしましたけれども、この飼養保管基準の中では、あくまでも実験動物の飼養もしくは保管または実験等を行う施設を明記してございますので、自動的に繁殖・販売であることをもって入るものではございませんので、修正はしてございません。

 同じく、定義の(5)、次のページをおあけいただきまして、実験動物管理者でございますが、この実験動物管理者の資格を明記すべきであるというご意見をちょうだいいたしましたけれども、この実験動物管理者が必要とされる知識・能力につきましては、第3の1の(3)教育訓練等の方に明記してございますので、こちらの方では原文のままとさせていただきました。

 続きまして、第3の共通基準でございます。1の動物の健康及び安全の保持でございますが、(2)の施設の構造とこちらの方で小委員会の方で、先だっての17日、実験動物小委員会を開催されてございますけれども、こちらの方で施設の構造等の中で実験開始前の動物も飼養している場合があるため、運動の機会の確保に留意すべきであって、それについては解説書等で明記すべきであるというご意見をちょうだいしてございます。

 ただ、ここの部分につきましては、実験動物すべてについて運動の機会を確保、あるいは運動の場所を確保するということは必ずしも必要ではないことから、本文中の修正はいたしてございません。

 続きまして(3)、次のページに移らせていただきますが、(3)の教育訓練等でございますが、こちらの教育訓練等の中で実験動物を飼養する前に、必ず教育や訓練を義務づけるべきであるというパブリックコメントもちょうだいしておりますし、また小委員会の中でも実験動物を飼養する前の教育訓練については、きちんと解説書等で明記して、実際に行えるようにすべきであるというご意見をちょうだいいたしました。

 ただ、パブリックコメントでいただいた一定の資格の義務づけですとか、定期的に行うことを義務づけるというご意見につきましては、繰り返しになりますけれども、この基準自体が努力規定でございますので、義務づけのような表現あるいは義務づけというのはできませんので、修正はしてございません。

 また、パブリックコメントの意見といたしまして、前後いたしますけれども、10ページの(1)の飼養及び保管の方法のイ、ここのところは非常にわかりにくい文章でしたので、文章の適正化を図ってございますけれども、ここの部分に獣医師による治療を義務づけるべきであるというご意見をちょうだいしておりますけれども、必要な治療を行うということを規定しておりますものですから、獣医師に限定するものではございませんので、修正はしてございません。

 また、パブリックコメントの意見としまして、(2)の施設の構造等の中で広さ、空間について、より広さを確保すべきである、あるいは関係学会、関連学会等の数値を準拠するように明記すべきであるというご意見をちょうだいしておりますけれども、ご指摘の趣旨につきましては、一定程度この基準の中に盛り込まれているものと考えておりまして、基準の解説書等において必要に応じてこの考え方をできる限り明確にしていこうということを考えてございます。

 続きまして、11ページをおあけください。

 11ページ、3危害等の防止の(1)施設の構造並びに飼養及び保管の方法でございますが、(1)のイの部分でご意見をちょうだいしています。この管理者が必要な健康管理を行うその対象としまして、実験動物管理者と飼養者というものを明示してございますが、パブリックコメントでちょうだいした意見としまして、実験実施者も含めるべきであるというご意見を賜っておりますので、こちらにつきましては、管理者が必要な健康管理を行う対象としまして実験動物管理者、実験実施者及び飼養者と三者について明記するようにして修正を加えてございます。

 次が、パブリックコメントの意見をご紹介になりますけれども、次のページをおあけください。

 (4)緊急時の対応としまして、関係行政機関との連携のもと、地域防災計画等との整合を図りつつと明記してございますけれども、こちらについて、行政機関への情報提出が義務づけられるのではないかとか、その根拠は何かというパブリックコメントでご意見をちょうだいしておりますけれども、ここにつきましては行政機関への情報提供を義務づけるものではございません。必要があれば連絡をとる等の努力規定を示してございます。また、ここにつきましては、その連携の方策等について、解説書等でその考え方を明らかにしているということにしてございます。

 続きまして、4の人と動物の共通感染症に係る知識の習得等でございますが、これにつきましては、実験動物小委員会の方でこの人と動物の共通感染症、非常に多ございますけれども、できる限り解説書等でどのように考えるのか、あるいはどのように対応するのか盛り込むべきというふうなご意見をちょうだいしております。

 続きまして、6の輸送時の取扱いでございますけれども、パブリックコメントの方でこの輸送を行う際の留意点として、実験措置の後でその障害から回復していない動物、回復しきっていない動物、あるいは幼齢な動物、妊娠中の動物、疾病にかかっている、あるいは傷害を負っている動物等については、輸送しないことを明記すべきであるというご意見をちょうだいしてございますけれども、この考え方につきましては、一定程度基準に盛り込まれているものと考えておりまして、その具体的な内容、どのような動物に配慮すべきかというようなところにつきましては、基準の解説書等において必要に応じてその考え方をできる限り明確にしていくこととしておりますので、修正はしてございません。

 続きまして13ページ、次のページをおあけください。

 施設廃止時の取扱いでございますが、こちらの施設廃止の取扱いの中で、パブリックコメントの中で非常に多かったご意見としまして、施設廃止時、他の施設へ譲り渡すよう努めるという表現を2行目から3行目にさせていただいてございますけれども、ここの部分について一般家庭への譲渡、譲り渡しというものを明記すべきではないかというご意見をちょうだいしてございますが、一般家庭への譲渡というのは必ずしも必要でない場合があるというふうに考えておりまして、修正は加えてございません。

 続きまして、第4個別基準の部分でございますが、この個別基準の実験を行う施設、1実験等を行う施設の(2)の事後措置におきましても、実験を行った後、特に傷害等を負っていない動物については、一般譲渡、一般家庭への譲渡を明記すべきではないかというふうなご意見をちょうだいしてございますが、こちらにつきましても、必ずしも必要でない場合がありますので、それについては修正を加えてございません。

 続いて、2の実験動物を生産する施設でございますけれども、こちらの方ではパブリックコメントの意見としまして、生産地の情報をその他の情報とあわせて、譲り受け者に提供すべきではないかというご意見をちょうだいしておりますが、それについてはケース・バイ・ケースで判断されるべきものと考えてございますので、修正は加えてございません。

 また、取り引き情報の記録保管を、その譲り渡した者に義務づけるべきではないかというご意見もちょうだいしてございますが、それについては努力規定でありますので、強制力のある規制を課すことはできないので、これにつきましては修正を加えてございません。

 以上、簡単ではございますが、前回の部会からの修正点とパブリックコメントの意見と、その対応についてご説明をさせていただきました。以上でございます。

【林部会長】 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの報告についてご質問、ご意見ございますか。はい、青木委員どうぞ。

【青木委員】 私、実験動物小委員会の委員ではございませんので、小委員会の中でどのような議論がなされたかということは、ちょっと承知をしておりません。

 それから、前回の素案の検討のところで、むしろ発言すべき問題だったかもしれないと思うんですが、恐らく大変重要な、恐らく未来に向かって重要な問題になると思われるのが、第5の適用除外の問題だと私は思っております。そこで、畜産関係の実験動物の問題はこの基準から除外されるという原則になっておりますが、先ほど説明の中にあったように、この基準自体は努力目標ということで、これから例えば畜産関係の畜産試験場のような、先端実験的な研究をしているところに適用されたとしても、即座に非常に困った大きな問題が起こるというふうには私には思えない。そして、むしろ原理的には畜産という、品種改良という目的があっても、その他の製剤・薬品等の開発のための動物実験などと現実的にもそんなに違う問題ではないと思うので、なぜ適用除外するのかということについて、やはりちょっとここで確認をさせていただきたいと思います。以上です。

【東海林動物愛護管理室長】 こちらの適用除外でございますけれども、従前よりこういう形で整理されているものを、今回も引き続き踏襲させていただいているというものでございます。

 ここにご案内のとおり、動物の飼養保管基準、これを動愛法に基づき環境大臣が定めることとされていまして、ただ、動物によっても種類によっても利用目的によってもいろいろとその対応が、飼養保管の仕方の対応が違うということで、便宜的なのですが、4つに区分して飼養保管基準をつくっております。その4つと申しますのは、1つは家庭動物、それから展示動物、それから実験動物、それから産業動物、畜産動物が入りますけれども、というところで区分して、この4つの基準をつくっております。

 畜産のその育種改良の実験というのはどちらかというと、こちらの実験動物の実験の方がラボラトリーといいますか、研究室内での実験の方をかなり強く意識して実験動物としてくくっているのに対して、育種改良等の畜産の研究というのは、決してそういうものばかりではないというところで、内容的なその親和性を考えた場合には、実験動物の基準としてくくるよりは、産業動物の飼養保管基準、こちらの方と内容的に親和性あるいは類似性が高いので、そちらの方で整理した方がよかろうということで、従前からそういう形で整理されているものだろうというふうに思っております。

 それで実は、順番に各基準については見直し、改定をやっておりまして、産業動物の基準だけが最後1つ残っているということになるのですが、この実験動物の基準あるいは家庭動物、展示動物の基準の見直しが行われてきたわけですけれども、こういった見直しの考え方を踏まえて、近いうちにまたこちらの審議会でご審議いただくことになるんですが、産業動物の基準についても、その改定の仕方についてご検討いただければというふうに思っております。

 あくまでも便宜規定、便宜的な区分ですので、内容的な親和性を考えた場合には、この畜産については、産業動物の方に従前から入れさせていただいていると、その整理はとりあえず変えなくていいのではないだろうかと事務局で判断させていただいたと。それで、こういった新しい実験動物の基準のその改定に当たっての考え方、家庭動物の基準改定に当たっての考え方については、いずれ産業動物の基準についてこの審議会でご議論いただくときに反映していただく、ということで予定しているというふうにご理解いただければと思います。

【青木委員】 従来からの経緯と改定するという作業の中で、それに集約されるということは私も理解できます。ただ、私が発言しました趣旨は、この基準は、要するに法律を受けて、その枠内でやるというか、いわば委任を受けてやっているというふうに理解を私はしておりますので、法律そのものの41条の規定というのが、少なくとも文言上は畜産関係の実験を排除する根拠が言葉の上で書かれていないというふうに私は思います。そして、原理の問題で考えたときも、現実の制約が非常に強いという問題があって、これが同じ論者と、非常に困った現実的な対応ができなくなるというならば、この基準等あるいは立法の中でもそういう現状を考えて、そこまで及ぼさないという判断ができると思うんです。恐らく非常にプロフェッショナルな科学者の集団が、一部は私はよく畜産試験場の実態を存じ上げませんが、ラボラトリー的な研究をなさっている場面があると思うので。そして、そういう場面については、伝統的な動物も福祉とか愛護といった古典的な理念からの規律が求められるだけではなくて、先端、生命科学の規律という意味でも、そのルール化というのは要請、かえって強い部分も場合によってはあると思いますので、将来的にはそういった問題についての同様の考慮というのは必要になってくるというふうに思います。以上、意見です。

【林部会長】はい。どうぞ、前島委員。

【前島委員】 青木先生の言われるとおりで、これを外すというのは不可能、法律の専門の方から見ればおかしな話だと私は思います。それで、また話して申しわけないのですが、55年にこの実験動物基準が出たとき、やはり最後のこの適用除外というのはかなり問題になったんです。当時の畜産学の人たちの意見としては、余りその実験室あるいはケージの中に閉じ込めて、例えば手術をしたりするようなことで実験をしていないんだと。普通畜産の研究というのは、言葉は悪いですが、広い牧場に牛を放し飼いにして、こういう餌を食べさせたら体重がふえたとか、あるいはこういうことをやったら非常に乳の出る量が増えたと。そういうような具体、別に動物に直接的な、ほかの畜産動物、何もしない畜産動物、牛や馬あるいは豚よりも比べて特に強い操作を加えるものでないのが、大部分の畜産の研究であるという当時の畜産関係者の説明がありまして、そうしますと、これで畜産関係の実験動物を全部この中に実験動物の基準に入れると、かえって言葉は悪いのですが、拡大解釈のようなことになって、現実に合わないのではないかという理論があって適用除外例ができた。それで、それと同時に、人のせいにしてはいけないのですが、そのとき、やはり私たちはそのうちに産業動物の基準ができて、そこでこういう問題はきちっと整理されるだろうと、実を言うと責任転嫁ではないけど、本当に委員はみんなそう考えたんですね。ところが、でき上がった基準を見ると、あんまりそのところのディスカッションがないままでき上がったように私は思います。ですから、青木先生言われたように、この問題を将来検討した方がいいかもしれません。特に実験でも昔と違いまして、もう少し古くなりますが、クローン羊のような研究の最先端の動物実験を実際には畜産動物、家畜でするのが現実になっておりますので、やはりこのいわゆる昔風の牧歌的な家畜の研究と、それから非常に実験室で閉じ込めてしまって何かする実験というのは、やはり定義のところで分けることがよかったかもしれないと私は個人的には思います。

【林部会長】 はい、ほかに。どうぞ信國委員。

【信國委員】 今の前島先生のお話にちょっと補足させていただきますと、実験室と一般の飼養ということの、いわば語義が非常にあいまいになってきているということ。それだけじゃなくて、むしろ産業的にはフィールド、もう農家に飼っている家畜そのものを使いながらいろいろやるという、これは経費の問題等もございまして、むしろそういうものをいかに使うかという分野も広がっているということから言って、やはり産業動物の方からのアプローチということで、ご議論いただいた方がいいんじゃないかなと私も思います。

【林部会長】 ほかにご意見ありますか。

 これを適用除外規定がつくられたときと現在で、私の知る限りは例えば畜産試験場、それから家畜衛生試験場と昔言ってた、今は名前違っていますけども、そういうところがあまりマウスなんか使っていなかった時期があるかもしれません。今、僕はたくさん使っていると思いますよ。だから、そこのマウスだけがどうなるのという、ここの適用除外、その不思議さがあるんですよ。だけど、もちろんこうなって、ヤギとかそういう大型の家畜について言えば、これではなくて、恐らく先ほど東海林室長が言われたように、畜産動物のところで決めておった方が整合性がとれるという、そういう非常に悩ましいところがここにはあると思うんですね。ですから、実態的に言えば、私は畜産に関する研究のところでマウスラットがどのぐらいか調べてみればわかるんですけども、相当いるだろうと。それだけがこの指針の、これの適用除外になるのは何か変じゃないかと。同じマウスラットでありながらという感はぬぐえませんので、これはなるべく早急に畜産動物の方の見直しをやって、そこで整合性がとれないときには、もう一回またここにさかのぼってこの適用除外は考え直した方がいいような気はいたします。

 ただ、この短い時間でここを、全部適用除外を全部とれるかどうかということになると、少し審議する時間が今は短かったのかなという気がしますが。

 いかがでしょうか。そういう扱いで、今回のここではこの適用除外、第5ですね。準用及び適用除外というのを、この形で置いておくという扱いにしていただければと思うんですが。

 どうぞ。はい。

【青木委員】 私自身は、最初に申し上げたように、将来の問題として現実的に大変重要な問題だということを一番指摘したくて、そしてそれをこうこうこうやって発言することによって議論が情報として残るということで、あえて残すために発言をしているわけですが、技術的にはこの場でそれじゃこの答申案をどう書きかえたらいいだろうかというのは、恐らくとても難しいことだと思います。そして、むしろ答申案としては、このままこの従来規定について、私、問題を指摘した本人ではありますが、仕方ないというか、私自身もあえて強い反対を述べないつもりです。

 ただ、これは恐らくプロフェッショナルな実験者の方にしてみると、これを守れと言われてもとても守れないということはあり得ないと思うんですね。ですから、その弱い努力目標的なものであるという、まさにそのことゆえに、ちゃんと守ってもらいましょうということは適用除外になっているということでもあっても、やっぱりこれと同じような配慮をしてくださいということは何らかの手段で別途連絡、どう言ったらいいかわかりませんが、お互いに了解し合うという手続が基準という、いわば言葉を決める作業以外の部分でお願いをしたいと思います。

 以上です。

【林部会長】 はい。どうぞ兵藤委員。

【兵藤委員】 実験動物が、なるべく少なくなるということは、入ってますよね。大丈夫ですか。それにこしたことはないし、一応私たちもなるべくというよりも、むしろ理想的から言えばなくなる、3Rがきっちり決まりまして、それをずっと進めることによって、最終的にはなくなるところまで持っていくんだという理想像みたいなものがどこかで表現されてきてもいいのかなというのと。見えないところで実験が進むものですから、立ち入りとか強制というところはどこの法律で、これからどういうふうなことでこれが進むことができるのか。今はいい施設でいい実験者であるならば、これはもうもちろん要らないんでしょうけども、もちろんそういうこともあり得ないだろう。

 そこで、見えないところで透明力を増すための立ち入りは、今回は努力規定ですから、ここでは入らないというような説明があったんですけど、じゃあどこで、こういうのはどういうような表現の仕方で今後入っていくんだろうか。

 それから、実験をするところが登録、あるいはこれに動物を供給しているブリーダーさんたちの登録はないですね、もちろん。もちろん、それには入っていないと思いますけれども。ここのところがやっぱり、動物取扱業ということでペット屋さん等はかなりきちっと登録をしないといけない。届け出制度から登録に変わったということで、このあたりも動物を扱っている、供給しているブリーダーさんのところもきちっと登録を出していただく。あるいは教育のところも、ここの施設だけに任せておけば何もやらない施設が出てくるのではないかということで、一般的な、私たちの動物取扱業者をくくっているところでは、行政がこれを教育をするということになっておりますから、このあたりが今後どういうふうに進んでいったらいいのかなと。

もちろんこういうことも進めて、これからますます法改正がまた積み重なっていくのではないかと思うんですけど、このあたりの考え方をちょっと示していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

【東海林動物愛護管理室長】 まず、動物取扱業の規制の関係ですが、委員からご指摘がございましたように、畜産動物と実験動物については、この取扱業規制から除かれています。

 実は、この取扱業規制の趣旨というのが、社会的影響力の大きさ、それが公開されている公開されていないということをかなり考えた上での規制というふうに伺っておりますけれども、その関係で畜産動物、実験動物については、動物取扱業の規制から除かれているということですので、ちょっと動物を取り扱っているから、即、実験動物・畜産動物も規制の対象というのは、この平成17年に設けられたペットショップ等の動物取扱業規制の趣旨からはちょっと違う話になるのではないかと思っております。

 それから、透明性ですとか教育訓練の件ですけれども、実はこの動物愛護管理法の改正に伴いまして、この実験動物の飼養保管基準のみならず、いろいろな動きが出てきております。この実験動物の基準は、主に実験動物のケアですとか飼養保管、それから安楽殺処分、この内容について決めるというものになっておりますけれども、科学研究としての動物実験そのもののガイドラインについては動愛法の対象ではございませんので、それぞれその行政を所管しております動物実験行政、科学研究行政を所管しております文部科学省、それから厚生労働省、製薬業関係になりますけれども、それから農水省というところで、いろいろと対応を考えていると伺っております。

 具体的には、文部科学省と厚生労働省の方では、審議会ベースで動物実験そのものをガイドライン、これをかなりハイレベルなもので、ガイドラインとして決めようということで今、作業をしていると伺っております。

 もう一方で、科学研究者の集団である日本学術会議、こちらの方でもこの厚生労働省、文科省で動きを踏まえて、全国統一のモデル的な動物実験、あるいは実験動物のガイドラインというものを今つくっていると、検討していると聞いております。

 そういった意味で、透明性ですとか教育訓練というのは、実験動物のケアといいますか、飼養保管、安楽殺処分の方にもかかわってくる話ではあるのですが、どちらかといえば、比重は実験そのものに大きいかと思われるわけですけれども、厚生労働省、文科省のガイドライン、あるいは日本学術会議が検討されているガイドラインの中で、教育訓練と透明性の確保についてはいろいろどうしたらいいかということで検討をされていると伺っておりますので、この中で適切な措置が図られると見られると考えております。

【林部会長】 よろしいでしょうか。ほかにご意見ありますでしょうか。

 この基準は、ここでお認めいただければ大臣に、その前に中央環境審議会の鈴木会長に上げるものですけれども、文章が練られているなと思うところは、全体が努力規定ではありますけれども、何々するようにその努めることという、そういう表現もあれば、何々すること、損なうことのないようにすることということで終わっている箇所があったり、同じ努力規定でも、全体として努力規定ですけれども、かなり文章にめり張りがついているなということがございます。

 それから前回の、ここが非常に大きなポイントですけども、実験動物小委員会で出た論議の中に、この基本的な考え方の2行目にございます、1行目から続きますが、医療技術等の開発等のために必要不可欠なものであるが、というこの文章が、例えばこれはやむを得ないものであるがというような内容とか、いろんなことで変えられないのかという、大変1つの考え方としてあり得る考え方を出されたわけですが、私どもは、今この時点でこういう動物愛護、動物に対する考え方、配慮の仕方というのは時代とともに変わりますし、また国によっても違うわけですが、今この瞬間、この2006年のこの日本においてこれは必要不可欠という表現が、やはり最も国民の総意をあらわしたものだろうと。ですが、未来永劫にこうであるかどうかということは保証するものではありませんが、今の時点でこうだという、そういう論議をいたしたところであります。

 ということで、こういう内容で答申させていただいてよろしいでしょうか。

 はい。それでは、ただいまのご審議を踏まえて、中央環境審議会会長に報告したいと思います。

 細かい表現の修正を行う可能性はありますが、それはこの全体を損なうものではありませんので、どうか私と事務局にご一任いただきたいというふうに思います。よろしいでしょうか。

 はい。それでは、この後の手続の流れですね。それを事務局からご説明いただきたいと思います。

【東海林動物愛護管理室長】 今後のスケジュールですが、部会長から中環審の会長に答申案をご報告いただきまして、環境大臣に答申という形で答申をいただくことになります。環境省としましては、この答申をいただいた後に、4月中を目途に告示を行いたいというように考えております。

【林部会長】 はい。それでは、そういうことで進めてまいりたいと思います。

 続きまして第2番目、議事の2、動物愛護管理基本指針、これは仮称でありますけども、これについてご審議いただきたいと思います。

 そのご審議をいただく前に、今後の検討スケジュールについてあらかじめ確認したいと思いますので、お手元の資料の29ページ、参考資料1です。ここに載っておりますように、これは前回の会議でご了解いただいたものをここに再び掲載しているわけですけども、今回は基本的考え方そのものについてご審議いただいて、4月から5月に関係団体にヒアリングを行いたいと思います。その後、今日の論議、またヒアリングの結果を踏まえて骨子案を作成し、5月ごろをめどに、開催予定の部会で再度ご審議いただく、そういう予定で進めていきたいと思います。これは前回確認いただいた内容ですけれども、もう一度確認させていただきたいと思いますが、こういう流れでよろしいですか。

 はい。それでは、そういうふうに進めてまいりたいと思います。

 それでは資料について、事務局よりご説明いただきます。

【東海林動物愛護管理室長】 それでは、15ページからになりますけれども、15分間ぐらいお時間をいただきまして、基本指針の考え方についてご説明させていただきたいと思います。

 まず、申し訳ございませんが、21ページをお開きいただきたいと思います。

 基本指針と都道府県知事が作成するという推進計画、これの根拠規定といいますか、根拠条文を掲げてございます。21ページになりますけれども、基本指針が改正法の第五条になっておりまして、これの第2項になりますけども、定める事項としては3つ、三号掲げてございます。施策の推進に関する基本的な方向。それから、知事が策定する推進計画に関する基本的な事項。それから、その他施策の推進に関する重要事項というところになってございます。これに基づきまして、都道府県知事は推進計画をつくることとされております。

 改正法の第六条になりますけれども、普及啓発、施策に関する事項、それから必要な体制の整備、それから国、関係地方公共団体、民間団体との連携の確保を含む必要な体制の整備といったことについて盛り込んだ計画をつくるということになってございます。

 それで、資料の方15ページの方に戻っていただきたいのですが、きょうご用意しました資料は、基本指針の基本的考え方ということでございますので、何カ年計画の計画にするのかといった基本的な枠組み、それをご議論いただきたいということで15ページ、基本的な枠組みの案を示してございます。

 それから、この基本指針には、動物愛護管理の基本的な考え方、あるいは具体的に行われる施策の面にこういったものを盛り込まれることになろうかと思われますけれども、16ページ、17ページ、18ページは動物愛護管理、これの考え方、その定義ですとか目的、特徴といったものの考え方の案をここで示してございます。

 いま一度、ここで動物の愛護、あるいは動物の管理とは何たるものというものを、その理念なり哲学的なものを含めてご整理いただきたいというふうに考えている次第でございます。

 それから、19ページが主な構ずべき施策のメニューになってございますけれども、所有者明示措置の推進ですとか、先ほどもご指摘がありました動物取扱業の適正化、鳴き声や臭いなどの迷惑の防止、こういった動物の愛護及び管理を進める上で、具体的な施策のメニューがございますけれども、何について言及したメニューとして掲げた基本指針の追加という、盛り込むべき施策のメニューについて、ご検討いただければと思っております。

 それから、20ページになりますけれども、基本指針には推進計画の基本的枠組みについても盛り込むことされておりますので、知事がつくる推進計画、これの基本的な枠組み(スキーム)についてもご検討いただきたいということで、その考え方の案を示してございます。

 それでは、15ページに戻りまして、ポイントにつきまして、かいつまんでご説明したいと思います。

 この基本指針、行政計画の一種になるわけですけれども、施策の目標ですとか方向性の明確化、あるいはその目標達成のための手段ですとか、役割分担が中心になろうかと思いますけれども、実施主体等の設定及び体系化、これが中心になろうかと思います。これによりまして、施策の実施のよりどころあるいは国民的な愛護運動の展開ですとか理念形成の基礎あるいは合意形成ですとか普及啓発、こういったものの意義や役割を発揮することになるのではないかなと考えています。

 計画期間につきましては、いろいろな考え方があるのですが、通常環境省でとられています行政計画に準じて10カ年計画、5年ごとにローリングをする見直しをする10カ年計画ではどうかと考えてございます。

 それから、内容として盛り込むべきその事項、構成でございますけれども、基本指針、基本的方向性を示すもの、あるいは知事が策定する推進計画のよりどころでございますので、動物愛護管理の基本的考え方、それから構ずべき施策、基本的にはこの2つを要素にしてはいかがかなと考えてございます。

 策定方法、フォローアップ、普及につきましては、できるだけたくさんの方を巻き込みながら計画が、基本指針ができた暁には、その普及啓発にまたいろいろな形で努めていくということで考えていくべきものではなかろうかというように思っております。

 9月には、動物愛護週間行事もございますので、パンフレットを作成したり、いろんな表紙絵の募集ですとか普及啓発を考えられるのではないかと思っております。

 それから16ページになりますけれども、盛り込むべき事項のまず理念のところでございますけども、動物の愛護と動物の管理で分けて説明資料をつくってございます。まず、動物の愛護の定義及び目的でございますけれども、動物の愛護とは動物の取扱いにその生命に対する感謝と畏敬の念を反映させること。「自然資源のWISEUSE(賢明・良識的な利用)」の一概念ということでございます。

 動物愛護といいますと、どうしてもちょっといろいろな運動がございますものですから、ある意味、極端な運動・活動イメージが国民の間に流布しているような傾向がございます。動物の愛護とは、必ずしも人の命と動物の命と全く対等に扱おうとするものではなく、犠牲にすることを当然のこととして動物の生命、命ある動物の命や生命を軽視してはならないという考え方ではなかろうかなというように思われます。

 それから、対象動物はいろいろございまして、家庭動物、展示動物、実験動物、畜産動物がございますけれども、基本的に終生飼養するというジャンルの動物と非終生飼養を基本とするジャンルの動物がございます。こういった動物の利用目的、種類によっても愛護の基本的な理念、ベースは同じでも具体的な理念系は違ってくるというふうにも考えられるのではないかなと思います。

 例えば家庭動物については、エンリッチメントといったプラス要因の付与が基本になろうかと思われますけれども、非終生飼養、殺処分利用というものが基本になる畜産動物については、苦痛軽減ですとか無駄にしないといったような有効利用といったマイナス要因の排除が、どちらかといえば基本になるのではないかなという考え方ができるかと思います。

 基本的にこの愛護は、結果として国民の間に動物愛護をする気風を招来し、生命尊重、友愛及び平和の醸成の涵養に資することを目的としているわけですが、動物を飼うということは命の貴さを学ぶよい機会でもあり、また反面教師として死を学ぶよい機会でもあるという考え方もできようかと思います。

 この動物の愛護の理念、考え方の特徴なのですが、基本的には国民全体の総意により形成されているものではなかろうかと思います。動物愛護の考え方は、人ですとか地域ですとか時代によって変わる、もう多様性に富んだものかと思われますけれども、我が国の動物愛護、近世の動物愛護というのは欧米の動物愛護の理念、これの導入によって始まったというふうに表されておりますけれども、日本人の国民性を踏まえた、我が国ならではの理念の構築が必要とされているのではないかと思います。

 それから、もう一つ大事なこととしまして、なかなか動物愛護の行政というのは歴史が浅うございますので、個人的な趣味や趣向としての動物愛護と、いわゆる国民全員に万人に共通して適用されるべき社会的規範としての動物愛護、これの峻別がうまくいってないようなところがあるのではないかなと。その結果として、どうしても動物愛護というのは一部の方が行う運動にしか過ぎない、活動にしか過ぎないということで、国民全体に浸透していっていないというような嫌いがあるのではないかなというふうに思われます。こういった流動的、多様性に富んだ愛護については、定期的な点検ですとか見直しが必要かと思われますけれども、イヨマンテ(熊送り)ですとか、いろんな魚の生きづくりですとか狩猟ですとか釣りですとか、基本的にこういったものが動物愛護行政というもののスタンスから見た場合には、愛護に反するものではないと考えられるものであると思いますけれども、その実施方法ですとか制約条件については、時代の変化に応じて変質するものであろうというふうに思われます。

 この愛護については、基本的に多くの動物が対象になりますけれども、虐待等の禁止規制、法的なその罰則が及ぶ範囲については国民意識等を踏まえて、現在のところ哺乳類、鳥類、爬虫類まで等、限定されているということになってございます。

 基本的にこの動物愛護の理念については、飼養動物に限らず、理念の一部については野生動物に対しても適用し得る場合もあるものということもあります。今現在でも鳥獣の、鳥の愛護週間とかいう言葉も残っておりますように、愛護というものを幅広くとらえると、場合によっては、野生鳥獣の一部にも適用し得る概念になり得るものであるというふうに思われます。

 ただ、この愛護というのは、基本的なやはり物の考え方でございまして、必ずしもすべての国民が必ず動物と具体的なかかわりを持たなければいけないと強要するものではないということに留意する必要があろうかと思われます。

 それから、18ページが動物の管理になってございます。これが愛護に対しまして、ある意味、普遍的・客観的に対応可能な事象ということになってございます。動物の取り扱いにおいて、動物の飼い主が社会の一員としてその責任を自覚して責任ある行動をとることということであろうかと思われます。ただし、この管理について非常に難しいところが2)になりますけれども、ご近所、相隣関係のトラブル等と裏腹な関係にありまして、その相隣関係問題が動物の管理問題という機会をとらえて表出するということで、管理問題として単純化できないことが少なくないといった問題点もございます。また、野良ねこへの餌やりのように愛護と管理の利害が一致せずに、なかなか判断に迷うという事象もございますし、逆に適切な管理は結果として適切な飼養保管、動物の愛護につながるといった場合もあろうかと思われます。

 対象動物はすべての動物ということになっておりますけれども、規制という形で措置が講じられますのは特定動物、危険な動物が中心になってございます。対象者も国民のすべてということでございますけれども、なかなか意識として希薄なのが、すべての飼い主が加害者になり得る可能性があると。同時に、すべての国民が被害者になり得るものであるというところの意識がなかなか希薄なところがあるというところが、今後の行政上の課題ではなかろうかというふうに思っております。

 19ページになりますけれども、こういった愛護と管理の考え方に基づきまして、では具体的にどういった留意事項、どういったことに留意しながら施策を進めるかというところでございますけれども、できるだけその動物の愛護管理というのは国民の間における共通利害がなくては進みがたいものであるなと思いますので、多くの国民の共感を呼び、自主的な参加を幅広く促すことができる、幅広い愛護、冷静で客観的な愛護といいますか、そういった運動を展開する必要があるのではないかと思われます。

 あと、いろいろと幼児期からの動物愛護管理の教育が大事ということもございますし、それから、いろいろな受益者負担という考え方も場合によっては取り入れていく必要もあるのではないかと思われます。

 平成15年の世論調査によりますと、3分の1ずつ国民の間は分かれておりまして、動物を飼うことが嫌いな人が3分の1、動物が好きだけども飼っていない人が3分の1、動物が好きで飼っている人が3分の1というような状況になってございます。

 ですから、動物愛護の形というのが、飼っている人だけを対象にした場合には3分の1の国民を対象にした、かなり限定的な施策になるというふうに考えられると思います。

 メニューとしましては、読み上げさせていただきますが、国民の動物愛護運動の盛り上げ。動物の所有者明示措置の推進。ペットショップ等の動物取扱業の適正化。鳴き声や臭いなど動物による迷惑の防止。動物による咬傷事故等の防止と責任の徹底。犬及びねこの引き取りや殺処分数の減少。動物愛護推進員の委嘱の推進。実験動物の取扱いの適正化。NPO等との連携・支援動物愛護センターの利活用。災害時の動物救護対策の推進。動物愛護管理センサスの定期的実施。各種調査研究の推進といったものが行うべき施策の面として考えられようかと思います。

 それから、20ページになりますが、基本指針に基づいて知事が策定します推進計画の基本的枠組みでもございます。これについては、同様に基本指針ができた翌年度を始点として、5カ年ごとにローリングをする10カ年計画ではいかがかなと考えてございます。

 計画の作成と手続に当たりましては、透明性の確保あるいはできるだけ多様な自治体の参画を促すということがキーポイントになろうかと思われますけれども、検討会を設置したり関係地方公共団体の協議機関を設けたり、あるいは市民等の意見の聴取をしたりというような仕組みも必要かと思われます。あるいは推進計画ができました後にはアクション計画、必要に応じた実施計画の作成、あるいは計画をつくったらつくったでおしまいではございませんので、進捗状況の点検あるいは実行体制の整備といったものも必要になってこようかなと思っております。

 推進計画の場合には、まさに各都道府県の方々が現場に即したものといいますか、より現場に密接なものをつくることになろうかと思われますので、繰り返しになりますが、いろいろなNPO関係団体、関係業界団体を含めたいろいろな方を巻き込むということ、それから、毎年度の施策にその推進計画の考え方を的確に反映させていくというところがキーポイントになるのではないかなと考えてございます。

 あとは資料としまして、22ページに総理府時代に、昭和54年にまとめられた答申ですが、動物の保護管理のあり方に関する答申をご参考までにおつけしてございます。

 それから、一部の自治体では、任意計画として行政計画、長期計画を立ててございますので、その例を25ページから27ページに載せさせていただいております。

 以上でございます。

【林部会長】 はい。ありがとうございました。

 それでは、1時間弱時間がございますので、どうぞ活発なご意見、ご質問も含めていただきたいと思います。いかがでしょうか。はい、中川委員。

【中川(志)委員】 これ非常に難しいテーマですけれども、定義及び目的の丸が2つあって、その1つ目の丸の方のその生命に対する感謝と畏敬の念を反映させることという、これは当然のことだし、そのとおりだと思うんですね。その後の、それはWISEUSEの一概念なんだと言い切ってしまうという、そのことの乖離のすごさにね。あるいはこの文章上のすごさにたじろいでしまうんですね。この間にはものすごい深い溝があるはずなのに、たった2行でね。これを言い切ってしまうという、これはちょっと考えられないんですよね。

 ですから、本当にWISE USEの一概念に過ぎないのかという、これは基本的な問題として今日結論は出ないかもしれないけども、少なくともこれを中心にして後のことを考えていくんだということになると、全然討議の内容が違っちゃうんですね。WISE USEの概念なんだと。とにかく資源として使うと、その一概念なんだから、こういうことを頭に置くんだけど。だけどWISEUSEとして、言うならば、そのサステイナブルディベロプメントの考え方と同じなんですよね。ただ、今、そのサステイナブルディベロプメントというのは問題があるということになって、今、サステイナブルフューチャーになってきているわけですよね。そういう基本的な考え方も1つあって、これを即1つの丸の中で閉じ込めた論議を、後の細かいところを含めてやっていくという、そのことの間にね。非常に僕は大きな矛盾があるんじゃないかと。

 このことは、やはりこの方が後の論議が進みやすいということはもちろんそのとおりなんですけど、ただ、今までこの理念がちゃんとしてなかったがゆえに、やっぱり日本の動物愛護というのは非常に言葉の上で言うと、非常にぼやっとした、ちゃんとした区切りのあるものになっていかないということはあるけれども、しかし、それは日本のそういうものを醸成してきた過去の歴史があって、その中で今の日本の動物愛護という概念ができてきたんですよね。それをこの下のWISEUSEの一概念だというふうに言ってしまうのは、その日本の動物愛護の歴史みたいなものを根底からなくしてしまうという、そういうおそれが非常に強いと僕は思うんですけどね。ここのところをどういうふうに考えているんでしょうかね。

【林部会長】 じゃあ、まずいろいろご意見いただきたいと思います。ほかの委員の方いかがでしょう。中川志郎委員から今そういうお話がありましたけど。他の委員の方。はい、青木委員。

【青木委員】 中川委員から大変心に響くご指摘があったと思うんですが、恐らくこのWISEUSEという概念がどう出てくる、出してきたいという、なぜこういうものを持ち出したくなるのかということが、恐らく議論の本体になるべきことだと思います。

 そして、その1つは、私自身は既にこの審議会でも発言をしておりますが、愛護という人間の情緒的な感情で言葉が表現をされているということに伴う、日常的な語彙としてそれを受け取ったときの感覚と、法律あるいは行政というものが行うべき施策として人の外形的な行動、客観的な従うべきルールを決めるということの間のずれをどうして埋められるかと、こういうことではないかと思います。

 ですから、今の中川委員のご発言を踏まえて、WISEUSEというのに非常に深い溝があるというご発言がありましたので、そこをどう埋めるべきかということになろうかと思います。

 利用しなければならない側面があるというのは、現時点の我々の生きている世界の文明段階では仕方ないという、そういう結論は僕自身は個人的に持っているので、それをどう表現するかと。WISEUSEという概念は私あんまり詳しくないですが、これの概念がもし、いわば環境思想等の世界では、非常に概念としてはっきりとした定義がなされ得るものであるならば、それとの定義との整合性が問題になるでしょうし、もし、これ自体がそんなに定義がはっきりしない言葉であるならば、先ほど来の説明の趣旨からいって、日本的なものをむしろ考えなさいということであれば、あえて外来の概念を使うことはないと、このように考えます。

 以上です。

【林部会長】 はい。2人の委員から大変深いお話をいただきましたけど、ほかの委員いかがでしょう。はい、菅谷委員。

【菅谷委員】 それにちょっと関連して、この特徴のところに日本の風土や国民性を踏まえた云々という文章ございますよね。この辺との乖離というんですかね。どういうふうにとらえてくっつけているのか。ですから、大変あいまいといいますか、中川先生が言ったあいまいではないですけど、ぼやっとしたところの日本独特のその愛護精神の歴史、過程、現在ですね。それをこういう言葉でこう書いているんですけれども、その辺との整合性ということはちょっとあれでしょうけど、どんなもんなのかなという感じがしますね。

【林部会長】 はい、大槻委員どうぞ。

【大槻委員】 WISE USEの、私どちらかというと森林の方の専門家なもので、そちらの方の視点からよくそういう言葉を使うんですけども、この①の愛護概念と②の管理概念を分けて、ここで事務局整理しようとしたわけですよね。

 自然体で考えますと、先ほど中川委員からお話がありましたこのWISEUSE概念、どちらかというと、後者の管理概念の方に入れればすっと行くのに、あえてこの愛護の方に入れたのには何かやはり相当事務局としての思いがあると思うんでございますが、ちょっとその辺はお聞きした方が私自身としても頭の整理できると思うので。

【林部会長】 ほかの委員いかがでしょう。恐らくですね、これ後から東海林室長からお話があると思うんですが、私がこれを読んだときにどう思ったかということなんですけど、実はこのWISEUSEという言葉は、これは特に環境保全・環境倫理といったような新しい分野でかなり使われている言葉でありますので。これ自身は、確かに中川志郎委員がおっしゃったように日本の伝統的な、しかも情緒的な愛護という言葉とこの間には確かに大きな溝がありますが、それじゃ愛護という言葉を科学的にどういうふうに処理していったらいいのだろうかというのが、今非常に問われている。実際に動物との共生であるとか、自然との共生と言っているのですが、これ具体的にどのような共生のあり方があるのかといった場合に、私たちはやはり科学的な人間中心主義の立場を崩すことが国民の合意になるのかどうかということなんですね。科学的、人間中心主義に基づいて、本当にWISEをとことん追求してみようじゃないかというのが、現時点で私たちが取り得る1つの非常に具体的な方策ではないんだろうかと。

 例えばこの愛護というのは、ほかの国の法律は大体動物虐待防止であるのに、日本はわざわざ愛護管理と、こういう日本の昔からの言葉を使っている理由の1つに、今度うまく整理されるかもしれないと思うのは、この16ページの家庭動物とか展示動物に特にそうなんですが、エンリッチメントというプラス要因、ある一般的なスタンダードの上にさらにプラス要因を加えていくというのが、これは極めて愛護的な、愛護を科学的に説明するのには適した概念整理ではないかなというふうに私はこう思いました。

 それで、しかもこの論議のスタートにWISEUSEという、実際にやっぱり人間中心主義で考えるならば、動物権を認めるならまた話は別ですが、その人間中心のためならやっぱりWISE USEという、これまでかなりいろんなところで使われてたものは、果たして本当に動物の愛護というところに適用可能かどうかということも含めて、ここからやっぱり論議を進めていった方が、そういう論議の進め方の作業としては正しいのではないかなという気持ちでこれを受けとめたわけですけど。これについては、かなり今回どういう内容のものをつくっていくか、この基本的な考え方のところでここが中心になると思いますので、いろんな方々のご意見をいただきたいと思います。

 どうぞ、もう一度。中川志郎委員。

【中川(志)委員】 ちょっとつけ加えたいと思うんですけれども、確かに先ほど大槻さんがおっしゃったように、1の概念の中にこれがどーんと入ってきたということで、えらいショックを受けたのですけども、それをどうやってここに書いたのかなというのが、本当、今座長が言われたように、むしろ2番に入っているなら、まだわかるんですね。

 それで、動愛法の基本的な考え方というのは、やはり命あるものにかんがみということが1つあって、もう一つは共生に配慮しという、この2つがキーワードなんですよね。共生に配慮するというのは、基本的な立場から言うと、どちらかと言うと、これは管理せざるを得ないわけですから、WISEUSEの概念も当然入ってくるものですよね。そうでなければ、共生できないから。一方的に、これは人間と同じように尊いものだから何もしてはいけないといったら、人間の共生、動物の共生はあるいは動物なら動物の共生も成立しないわけですから、当然共生の中にはそういうコントロールの仕組みが入ってくると、これは当然だと思うんですよね。

 だけど、命あるものでかんがみるというのは、実に日本的な表現であって、そんなものはほかの法律で余りないですよね。それは青木さんに聞いた方がいいと思うんですけども、それはやはり日本独特のものだから、命あるものであることにかんがみというのが、あの法律の特徴としてボンと出ているんだと思うんですね。あれは日本の法律の僕は特徴じゃないかなというふうにずっと思っていたんだけど、どうもこれで行くと違うなという感じが今してきたんですよね。

 それで、外国のサイエンティフィックな動物愛護というのは確かにあると。それは中世紀のとにかく信じられないような動物虐待があって、それをとめなきゃいけないという1つの反省があって、それで実際に虐待防止法ができ、適正な管理が生まれ、それに基づいた動物愛護法が生まれてくると、動物法が生まれてくると、そういう歴史をたどっていると思うんですよね。

 佐藤衆介さんによれば、これは東京大学の出版会から出たものですけれども、それが反映されて、今の動物愛護になったと。要するに、動物の取扱いになったという、僕はその考え方は非常に納得できるなと思ってあの本を読んでいました。

 それで、ただ、日本はそれとは違うと。ああいう圧倒的な動物虐待の歴史を持っていないと僕は思うんですよ。その中で、やはり動物と接してくる、それはサイエンティフィックでないという部分も当然あるんですけども、何をそれを卑下する必要はないんじゃないか。やはり動物と人間とは等しく命をいただいて、この地球上で生きているという、その概念は当然あっていいと。

 したがって、我々が目標とするのがそこにあってもいっこうにおかしくない。ただ、それがサイエンティフィックでなければ、当然のことながら法律として成立しないわけですから、それは当然共生の中でやっていくと。しかし、目標はそこにあって僕はいいんじゃないかという考え方で、その目標と手段を一緒にしなければ文にならないというそういう考え方が、どうも僕は日本人の今までのこの日本の歴史みたいなものを根底から覆すというか、何かそういうものが無視されたような感じが、すごくこの2行にしてですね、ちょっと悲しいなという、ちょっとイモーシャルな発言だけども、そういう感じがすごくしましたけどね。

【林部会長】 はい、兵藤委員どうぞ。

【兵藤委員】 以前の法律では、動物保護及び管理に関する法律の中から動物愛護という言葉に使ったんですけども、私このときもやっぱり動物福祉を使うべきだというような発言が、多分議事録に残っているとは思うんですけど、福祉の方が、もう欧米先進国についてはすっきりした定義もはっきりしていますし、ここであえて日本的な注釈をする必要ももうなくなるのではないかと。動物の関連のところで教育するには、福祉の概念の説明の方がしやすいというところが実はありまして、ちょうどいいところに来たなということで、動物愛護という言葉が適切なのか、動物福祉に持っていくのだろうかと、この10年の間に方向性を示していただければ、このあたりはすっきりしてくるのではないかと思います。

 もう一つ気がついていたのに、施策のメニューの中に一番末端で一番苦労しているのは、ねこの餌やりということですね。法律的にも、この管理者という言葉が非常にあいまいに使われていまして、動物に餌を一定のところで定期的に餌をあげる、あるいはそれを捕まえて不妊手術をした場合には、これは管理者であるのか管理者でないのか。管理者とすれば管理者責任が当然出てくるのであって、ここで外で餌をあげることは正しいんだという考え方があって、動物を助けるには当然だろうと、おなかがすいて来るねこをあなたは動物愛護法で無視するつもりなのかという、巷の一番下のところでいつも議論が非常にあるところでありまして、行政の中でも一番ここのところが困っている。苦情の中で一番多いのは、外ねこの苦情が圧倒的に多いので、このあたりはしっかりした議論のもとに答えを出してあげないと、ずっと混乱がこれからも続いていくんじゃないかということで、ある程度の考え方をこのところで10年かかってもいいですけれども、なるべく早い時期にこの考え方をきっちりさせてあげるということが私たちの役目ではないかとも思っています。

 以上です。

【林部会長】 はい。ほかの委員いかがでしょうか。はい、前島委員どうぞ。

【前島委員】 動物愛護ということについて私は個人的には非常に重要なことで、日本的かどうか知りませんけど、情念として非常に大事だと思うんです。ここで、もう皆さんが青木先生初め大槻先生、皆さん指摘されているように、これを読むとやはり行政にとってやりやすい何か整理の仕方のように、私自身としても動物側に立つ人と話をするときにこういう概念、WISEUSEだよというようなことを国も言ってるんじゃいといってですね、非常にやりやすいと思います。

 それで、もっとこれは非常に細かいことまで言いますが、この最初の16ページの四角の下の方に、家庭動物と展示動物はエンリッチメント等といったプラス要因で、実験動物や産業動物は苦痛軽減、有効利用というか、マイナス要因の排除というようなことを書いてありますけれども、私はこれは非常にある意味では単純、私のような単純な頭では非常にわかりやすいんですけれども。だけど、いわゆる世界の動物愛護、実験動物の愛護だけを取り入れればそんなことはないので、もう実験動物もエンリッチメント、要するによりよい環境というんでしょうか、そういうふうに実験動物を持っていくんだ、積極的な面もかなりエンリッチメントということを含めて考え方がなっていますので、私はこういう分け方をするのがやはり行政としてはやりやすいけれども、やはり現実とはちょっと違うんじゃないかというように思います。

【林部会長】 はい。ちょっとこの件は青木先生にもお聞きしたいのですが、この愛護という言葉は私、法律的には本当はなじまないなと今でも思っているんですけども。ただ、日本の伝統を踏まえますと、この愛護という言葉は非常にしっくりするところがあるんですが。愛護、つまり愛情をもって動物に接するということは、これは法律で定めることなのかどうかということなんですね。虐待は、僕はこの禁止条項として絶対に何人たりともやってはいけないということは、これは国民全体の合意になり得ると思うんですが、動物に対して無関心でいるということはいけないのかと。常に愛してなきゃいけないのかということを考えた場合、僕はやっぱりいろんな対応があって、少なくとも最低限のこの禁止条項に当たる虐待あるいは苦痛を与えるという、これは法律的には非常になじむような気がするんですが。国の基本的な考え方を整理してますから、そこが1つと。

 それからもう一つ、日本は確かに動物は命あるものという言い方をしたんですが、これは特にヨーロッパで動物は物でないという民法で規定した国がありましたけれども、オーストリアから始まったんだったんですかね。これで言えば、第3番目の存在、人あるいは物、それ以外の動物は物ではないと言いましたから、もう一つの存在をあたかも仮定しているようですけども、日本の法律の動物愛護管理法は命あるものといった場合にこれはやっぱり物なんだと、物の中に命あるものという言い方してあるわけで、第3の存在を規定したわけではないというふうに考えていいのかどうかというところを、ちょっと青木委員にお聞きしたいんですけども。

【青木委員】 どうお答えしていいかちょっと迷うところもあるので、先ほど中川委員の非常に根源的な問題提起を受けて、先ほどの発言を補足する形にさせていただきたいのですが、幾つか多分この今意見の対立の中には論点があるように思います。

 その1つは、もう冒頭から指摘をいただいたように、自然資源のWISEUSEという言葉の持つ、非常にある意味割り切り過ぎたといいましょうか、資源を利用するという言葉の持つ強さといいましょうか、だから利用という言葉と資源という言葉が、恐らく二重に中川委員は悲しみを覚えられたということなんだろうと思います。その問題が1つです。

 それからもう一つは、これまた行政がやりやすいことだというようなご発言、ご趣旨としてはやや批判的な見地からのご発言だろうと私は伺いましたが、基本的な考え方というものが一体どのくらいの理念のレベルを規定すべきものなのか。それから、どのぐらいのタームでその理念を設定すべきものなのかということについての初めてつくるものなので、恐らく合意がないという問題がもう一つあって。現実の動物愛護管理法というものをどう浸透させるかという、もうとにかく動物愛護管理法で書かれていることを今の段階で一般的に整理するのか。それとも10年後、こういう理念を持ってやりましょうということを言っているのか、あるいは究極の理想をうたうのかと、こういうことの問題があると思います。

 それから最後にもう一つ、林部会長がおっしゃったことで、あと中川委員が最初にご指摘になったことですが、命あるものという非常に日本的な、中川委員はそれは大変誇らしい伝統というふうにとらえてご発言になったのだと思うので、ここをどう生かせるのかということを考えるべきだというご発言かと思いますので、今私自身、中川先生の最初のご発言を受けて、非常に自分自身どう考えるべきかということを正直なところ、今非常に動揺しております。私自身がこう考えるべきだということを今、具体的に申し上げることはできないんですけども、この3つの見地が必要だと思います。

 林先生の最後の質問についてだけ申し上げますと、確かに動物を命あるものというような形で、あえて法文の中に書いている例というのは私自身が気づいているものではありません。例えばフランスなんかですと、感覚のある存在というような非常に科学主義的な書き方をしておりますし、あるいはドイツですと人間と同じ非動物であるというような、いわば世界観そのものを書いているようなものがあって、そのどちらともちょっと違う、命と命の関係性というような、恐らく日本的なとらえ方でこの動物の問題をとらえているということが、それをこの政策の指針というレベルの問題にどこまで取り込むことができるのか、あるいは取り込むべきなのかという議論をすべきなんじゃないかと思います。

 以上です。

【林部会長】 ありがとうございました。恐らくその資源という言葉と利用という言葉、そのとおりなんですが、これは非常に今までのずっと流れの中でなじみがないということと、もう一つは、このWISEという言葉も余り恐らくいい意味では受け取られなかったんじゃないかという気がしますね。そのぐらいこの問題は微妙なので、私はこれを基本的に考えというのをぎりぎり進めていくと、徹底的にディベートやってもいいのですが、これが本当にいいのかどうかという感じもするんですね。その日本的なことからすれば、あいまいなまま残しておいた方がいいのかなという感じは、やはり命あるものというのは私の理解では、これは確かに特殊な言い方をしていますけども、物ではないとは言っていませんので、やっぱり物なんだろうと思うんですね。そういうふうに論理的にいけば、そういう整理の仕方になるんだろうと思うんですが、しかし、そういうことを言ってみても命あるものといったことの貴さが失われてしまいますので、そこがやっぱりどういう論議の仕方をしていくか、気をつけた方がいいというふうには思いますけどね。

 はい、どうぞ。

【兵藤委員】 もう社会の中では、資源応用学科とかということで、学部でも何十年も前から教育がなされて、その教育を受けた若者がどんどん社会に輩出されているので、ここでそのなじむとかなじまないとかでなくて、そのあたりはもう若者の中では資源だ、資源応用するんだと。僕は森林とかの場合には資源ということでも受けとめられて素直に入ったんですけど、動物も資源かよという非常にやっぱり疑問があったのですが、もうちまたではもう教育はそれで出されていると。大きな看板で学生の募集もやっているし卒業証書にも十分書かれているし、そのあたりで今ごろどうなのかなというふうに実は思っているところなんです。

 僕なんかも若者とお話しするときに、命あるものの中で、いわゆる塀を壊したとか自動車をぶつけたとかじゃなくて、感情のある動物なんだからそこのところは分けないと。おなかがすいているとかおびえているとかいうことについては、全く物とは違うものなんだというような、そういうような教え方をよくするんですけども、このあたりがしっかり皆さんの口から出てくれば、あるいは資源応用学科の中でもこのあたりがきちっと教育なされればどうなのかなというような感想は持っております。

【林部会長】 大体ご意見をいただいたのですが、まだ論議いただく時間はありますので、途中でもし、東海林さんの方から何かありますか。

【東海林動物愛護管理室長】 いいえ。

【林部会長】 よろしいですか。ほかの方のご意見。ちなみに私の今おります研究室は、国際動物資源科学研究室という名前の研究室ですので。よろしいですか。はい、どうぞ信國委員。

【信國委員】 なかなか皆さんほど基礎の学殖がないまま言うのも恥ずかしいんですけれど、動物や何かについて資源ということは、これは確かにここ2、30年の流れの中で、例えばむしろその伝統的なあれからいけば畜産であるとか、そういう言葉を使った方がすっきりしたものが、どういうわけか、それでは学科の維持であるとかそういうものができなくなったということなんだろうと思うんですね。ですから、そこに国民、ここにも書いてありますけど、国民の総意として本当にそうなったのか、よくわからない部分があるだろうとまず思います。

 それから、先ほどからあれして、本来的にやはりこの16ページの特徴のところにも書いてあるように、1つ目の丸は国民全体の総意によりとこう言いつつ、2つ目の丸ではそれは固定的なものじゃない、絶対的なものじゃない、人・地域・時代によって異なる。まさにその総意という、どちらかというと固定的といいましょうかね。少なくともある時点、あるところでは固定的なものと、それ自体が流動的なものというの、このどういう場合にその整合性を整えるかというので非常に議論しにくいのですが、先ほど部会長なんかのお話からいきますと、単純化して言えば、西欧流の虐待防止というものを基本として押さえた上で、日本的な命あるものとかという部分をどういう具合に、まさに国民の総意のものとして持っていくかという、その指針を示すというのでしょうか、それが重要なんじゃないかなと。

 私は、これ見させていただいて、まさにその日本的なとらえ方があるんだと。それを前提としてやるというのは、ぜひその視点は失わないで進めていくべきなのではないだろうか。私も家畜を扱ったあれで、これは極めて日本的だと思うんですけれども、年に1回必ず扱った動物、死んだあるいは殺さざるを得なかったということについて日本的な慰霊祭みたいなことはやる。それはやっぱり携わる者について、そういう命あるものを自分の手でやったということについても1つの贖罪意識はあるだろうと思うので、やっぱりそういうものは大事にして、そういうものをベースとした愛護のあり方といいましょうか。

 ですから、必須条件としての虐待の防止プラスアルファどういうものを、国民のそういう協調の面も含めた財産として持っているかというようなことであれば、比較的議論はしやすいのではないだろうかと、先ほど来お聞きしながら思った次第です。

【林部会長】 はい。ほかの委員の方いかがでしょうか。はい、どうぞ奥澤委員。

【奥澤委員】 結局、愛護と管理という問題ですね。実際にその管理というところのさまざまな動物の特性、属性によって管理の要求度というのは違ってきて、その背景にはやはり愛護という概念が当然背景として出てくるということで、どこでどう切り口にするかは別として、切っても切れない概念だと思うんですね。

 そういう意味で、この資料を読ませていただいたときに、やっぱり感じたのは非常にその愛護というものが主観的にとられて、人によってさまざまなイメージを持っているということが行政ということだけではなくて、住民間のいろんなトラブルの背景にもなっているという、そういったことから、できるだけ客観的・冷静に科学的にとらえようという、そういう意味では従来あいまいなところにこう切り込んでいったということで、勇気ある非常に問題提起だと思って、そういう意味ではすごく評価するところです。

 ただ、問題は今ここでいろいろ議論されているように、この表現ぶりを見ていくと、ただ、もう従前その動物の愛護としてイメージしていたものが一挙に産業動物レベルの、いわゆるもう当然食べるという前提で、そのレベルまで全部最低限に統一したというような印象は否めないと思うんですね。

 ですから、やっぱりこの中でどこまで具体的に客観的に定義できるかというのが、私も今ちょっと申し上げられないのですが、やはりここで言いたいことというのは、非常に今、愛護という言葉が極めて主観的で、それで国民の間でさまざまにばらつきがあるんだということの実態と、それから特に特徴の中で言われています国民全体の総意という、ここの部分が一番大事で。極論を言うと、要するに国民が総体として理解できるものというのがある程度行政的、あるいは一般のトラブルのときのルールの尺度として要求されるべきもので、もちろんそれは時代とともにこれは述べられていない。動的ではあるけれども、その時点その時点である程度その中間的なといいますか、その体制を背景としたああいうものの概念というものが、その時代時代でいろいろな策を進めていく上で、あるいはみんなが議論する上で共通の尺度になるべきであるという問題提起は、とても大事なことだと思います。

 特に今度は、先ほど来も意見が出ていますように、管理ということ、特に許可とか規制だとかあるいは国民にある義務を課すとか、そういうところでは、また、さらにある意味それよりもう少し切り込んだ冷静・客観的な概念というものをまた使い分けるということも必要なのかなというふうにちょっと感じております。

【林部会長】 ありがとうございました。ほかの委員の方いかがでしょうか。はい、清水委員どうぞ。

【清水委員】 中川先生が言った、その最初のあれでボケッとして聞いていたものですから、すごくショックを受けているというのに逆に驚きましてですね。それはやっぱり大変なことだなと、中川さんに悲しいと言われるとどっきりしたのですけども。そんなに大変なことかなと思いながら、やっぱりもともとこの動物愛護というのは非常に悩ましい問題であるんだろうと思うんですね。

 それで、ここに出てくるような誤った理解やイメージが流布しているというのは、実際に困った例は随分あるわけですし、そのねこの餌やりの問題もそうでしょうし、多頭飼育というのですか、近所に迷惑をかけている人なんかを見ても本人は全然悪いと思っていないというような例がたくさんあるわけですね。そういう基本的なところにやっぱり動物愛護、命あるものに対してどう考えているかということにかかわってくるのでしょうし、どうやったってそれは私たちが考えているのは日本人らしいというか、日本人のところから逃れられなくてですね、それに確かに切り込もうとするとこういう、えいやっというのでやったのかもしれませんけども、むしろこういうことを議論することはとても大事だと思うんですね。

 それで、ある一定の方向はどこかへ出さなきゃいかんと思うんです。その場でいかに議論を深めるかというか、さっきどなたかもおっしゃったように、動物実験の施設にも全部慰霊碑があって慰霊しているとか、それから畜産の試験場とか試験場だけじゃなくて、要するに屠殺をするような施設にも慰霊碑があるとか、それは全く日本だけだと思うんですね。それは恥じる必要も全然なくて、そういうふうに立ったやっぱり動物愛護の方向で考えるべきであって、愛護という言葉が非常に情緒的で本当に悩ましい言葉であるし、それは林先生がおっしゃればいいんですが、あいまいなままにしておく方がいいのかもしれないけど、結果としてそうなるまでにどれだけ議論するかというのが、実は非常に意味があると思うんですね。

 ですから、いろんな意見をぶつけて言うべきであるし、さっき前島先生が言った実験動物エンリッチメントでも雑誌を読んでびっくりしたんですけど、その実験用に使うマウスのエンリッチメントをするための歯車みたいなのがあったり、遊ぶ道具があったりしてそれが売っているんですけど。実験に使う途中に、その歯車で遊ぶマウスというのは幸せなんだろうかなと考えると、また頭が混乱するんですが、そんなのも含めてやっぱり動物愛護のあり方というのは確かに全員が考えるべき問題であるから、議論しなきゃいかんということだということを実感いたしました。

【林部会長】 はい、どうぞ丸山委員

【丸山委員】 私もその人の命と動物の命、どういうふうに考えるかというのは自分自身で全然その整理がつきません。

 ただ、ここの中川先生のご発言からいろいろ論議が出てきたことを考えると、やはりその基本はやっぱり命あることの大切さということが一番最初に出てこなければいけないのであって。やはりそうは言いながら、命というものはいろんなふうに考えられると。中には、こういうがWISEUSEの考え方も取り入れていかなければいけないというふうになればいいのだけれど、いきなりこういうふうに来ているのを私自身も何か非常に挑戦的な表現というふうに受け取るんですよね。

ですから、命の大切さと、それからWISE USEの考え方というのは、私は何も全然対立するものでもなくて、むしろそういう2つの概念が日本では非常にうまくというかな、昔は融合していたというのがむしろ日本的だと。その例に挙げてあるイヨマンテとか何とかというのだって命を大事にするからこういうことをやってきたということはありますし、何も動物、日本人としては動物だけでなしに植物だって食べ物を大事にすると、無駄なく使いましょうという点では、ほかの国から比べると私は非常にいい心情的な、あるいはそういう考え方で今まで来ていたというふうに思うので、私は何もこの命とこのWISEUSEの考え方がどこまでも対立するとは思っておりません。

【林部会長】 はい、兵藤委員。

【兵藤委員】 日本的な情緒は、もうかなり日本人が肉を食べなかった時代のことのお話で、今はすっかり変わってしまって、3分の1は飼っていない、3分の1はほとんどどうにもしない、3分の1が飼っているのじゃなくて。お肉を考えればほとんどの方が食べているのであって、むしろ情緒的なことですと動物を殺すやつが悪いんだという、むしろその弊害の方がもうこの世の中の方が出ていまして、ペットの保護、いわゆる管理をするところで処分している獣医さんの誇りに持てない仕事の内容を見ていても、非常に連れてくる人たちが悪いのであって、そこで処分している人たちが悪いのではないということをはっきり表に出してあげませんと、肉を食べている、そして屠場で働いている人がさげすまれている時代はもう終わったので、みんなでもって肉を食べていたら、むしろ動物愛護週間という名前をやめて、動物に感謝をする日と、国民的に動物に感謝をしようよという言葉に変えていって、国民全体が動物に感謝をする気風を育てた方がいいのではないかと。もうむしろそういう時代が、若者が育ってきてしまって、時代が背景になってきた以上は、はっきりここで物をしっかり決めていくという、あいまいさでは通用し切れない時代に突入してしまって、ここのところではいい定義をしてくださっていると僕は思います。

【林部会長】 大矢委員。

【大矢委員】 まず2点あるんですけど。第1点としては、その括弧の下のところ、動物の愛護についてここまではっきり踏み込まれたことについては大変評価されるものではないかなと。今まで非常にあいまいであって、個人その人その人の感情論の中で愛護というのがあったと思うんですね。それが1つの指針が出されたということは大変評価できると。

 それから、その括弧の中の自然のWISEUSEという問題なんですけども、私はほかの先生方のように知識がありませんからわかりませんけれども、いきなりここの動物の愛護とはという中に同列に入れてきてしまったところに問題があるのではないかなと。もし、この自然資源のWISEUSEの一概念ということをうたいたいのであれば、1つ行を変えてみてはいかがかなというふうな物の考え方です。

 先ほど大槻委員がおっしゃいましたように、愛護の方じゃなくて介護の方に持ってくれば非常になじむというご発言もございましたけれども、その部分で別枠に持ってくれば、もう少し議論的に柔らかくなってくるのではないかなと、そんなふうに感じさせていただいています。

【林部会長】 貴重なご意見をいただきました。ありがとうございました。ほかに、いかがでしょう。はい、どうぞ。

【前島委員】 日本的な概念ということで、その日本と対立しているのが西洋という意味だったら、ちょっと私の発言は取り消しますけれども、日本以外の例えば東洋の国も含めて日本だけの概念だということです。

 ちょっと一言ありますが、動物慰霊碑の問題です。私もつい1年ぐらい前までは日本固有の概念だろうと思っていたのです。ところが、私は関係の深い中国の瀋陽、昔の大連です。瀋陽の国立の薬品安全性試験の研究所の中に動物慰霊碑が立っているのです。それで、なぜこういうことが立っているのだと聞きましたら、やはり動物を実際に飼育している人あるいは動物実験をしている人が、自分の使った動物が実験で研究で殺されると非常に心に痛みを感ずると。だから、そのために何か碑のようなものが欲しいというのが実際に飼育担当者や研究者から出てきて、それで動物慰霊碑、大体日本の動物慰霊碑と同じようなものがそのところに立っているのです。

 それで、自分の動物が実験が終わって殺され、まあ殺されたという言葉を使いますが、殺された後、そういう担当の人たちはそこの前に花を飾るという習慣が実際に行われているといいます。

 それで、この研究所は特異的なものかと言ったら、いや、そうじゃない、中国でも幾つかの大学や研究所でやはりこういうものが立っているんだという説明を受けました。私、具体的なデータは今手元にありませんけれども、少なくとも中国で10カ所以上の施設には動物慰霊碑があります。少なくとも瀋陽のその国立の研究所の慰霊碑では、日本の瀋陽の総領事が頭を下げている証拠写真も残っておりますので、私がやっぱりそれで言いたいのは、余りにも日本固有の、兵藤先生も言われましたけど、日本固有なんていうことでこの議論をしない方が今後いいのじゃないかという感想を持ちました。

【林部会長】 これについては、私の知る限りではアニミズムがかなり広く残っているところでは、何らかの形で動物に感謝する、あるいは生き物に感謝するというのはやっていますので、その1つの形態として日本であるという、ついでに言っておきますと、アニミズムというのは随分長い間自然と共生するといいますか、自然を守る意味で環境的で非常に役に立った傾向ではあったのですが、これは近代化が始まりますともろくも崩れさっていく。ほとんどの国で、それが環境保全の歯どめにならなかったという僕は、歴史もいろんな成書に載っていますので、それは知っておくべきだと思うんですね。

 そういう立場から考えると、例えば日本でもどんなに明治以降に動物を本格的に使い始めたときにひどいことをしたかというのは、これは外国人の目から見てもあったわけで、それは現在まで至っている面もありますので、必ずしも日本はそれほど世界で冠たる動物の愛護の国とは私は思っていない面があるんですけども、ただ、日本的な伝統は非常に重視しなければならない。

 今、ここで、やはり私は科学者だから言うわけじゃないですけど、最終的に科学的な動物の愛護の仕方、管理の仕方というのはここを一回追求してみたらどうかというふうに、なので事務局の方でこう用意されたとすればそれは評価されますし、それから少なくともこれだけ大きな論議を呼んだということだけでも、ここに書かれたことは成功したのではないかという気はするんですけどね。

今日は、もう少しで終わりたいと思うんですけどが。青木委員どうぞ。

【青木委員】 たびたびすみません。先ほどの前島委員のご発言に補足で、私も先ほど日本的という言葉を使ったので、私は法律学の見地から参加することを求められていて、よきにつけ悪しきにつけ、法律的な発想ってつまらないといいましょうか、枠にはまった考え方をしてしまいますが、日本法的な考え方という意味で私は日本的と言っています。それが果たして、日本の伝統・歴史的なものとつながっていたかどうかは、とりあえず私は問うていません。日本法の中で命あるものということを、現在の国民が国会議員を通じて総意をもって決定したという事実が一番重要だという趣旨です。

 以上です。

【林部会長】 ほかの委員の方は。今泉委員どうぞ。

【今泉委員】 いろいろ難しいみたいですけど、このままで虐待防止という言葉を愛護という言葉でくるんで法律はつくっていくわけですね。それでいいんじゃないかなという気がします。

 それと、あと国民の総意というところで一番問題なのは、動物を大嫌いな人もいるということですね。ねこなんか絶滅しちゃえと言っている人もいるんです。たくさんいる。ですから両極端、もう子どものようにかわいがっている人から、もう絶滅させろという人までいるわけですから、国民の総意というのは大変難しいところだと思います。それだけです。

【林部会長】 はい。よろしいでしょうか。それでは、大体時間が近づいてまいりましたので、そうですね、審議を終えたいと思います。

 本日の論議とそれから次回関係者の説明……。奥澤委員。

【奥澤委員】 各論的なところでちょっと質問を2点ほどよろしいですか。

 今の議論から比べるとはるかに、非常に小さい話題なんですが、動物の管理の方の資料の中で2カ所ほどちょっとご説明をいただければと思います。

 まず、1点目の定義のところで最初の丸のところで、動物の飼養者が社会の一員としてと、こういう表現があるんですが、動物への関与の仕方というのはいろんな形があろうかと思いますが、管理者・占有者、いろんな概念があると思うんですが、多分広い意味でとらえられていると思うんですが、この飼養者の範囲というのはどういうふうにお考えなのかということが1点。

 それから、3)の対象動物のところの下の解説のところの2つ目、飼養許可規制のところでございますが、この後の危害には、場合によって迷惑も入り得るという、この場合によってというのをどんなことを想定されているのか。いわゆる動物の飼養許可は26条の関係だと思うんですが、迷惑というと7条の一般的な所有者の概念につながるような行為かと思ったのですが、その辺ちょっとご説明いただけるとありがたいです。

【東海林動物愛護管理室長】 まず、飼養者の範囲でございますけれども、この用語遣いが適切かどうかを含めて、また、きょうのご意見を踏まえて事務局の方で検討させていただきたいと思いますけれども、先ほどいろいろご指摘がございましたように、例えば野良ねこへの餌やり、どれぐらいの行為になったら管理者あるいは飼養者というレベルに達するのかというところ含めて、私もなかなか具体的に考えていきますといろいろな問題がございますので、もう少しお時間をいただいて検討させていただければと思います。

 それから、危害に迷惑も入り得るというのは、実はこの議員立法で制定された動物愛護管理法を読んでいきますと、危害の中に迷惑という概念を入れておるような、ちょっと組み立てになっているところもございまして、ただ、それはあくまでも解釈上の話として考えられるようなところもございますので、ちょっと場合によってというあいまいな表現をさせていただきましたけれども。ここで申し上げたかったのは、動物愛護管理法の危害の防止の中には、決して人の生命・身体・財産といったようなものに害を与えるという、かなり物理的なものだけではなくて、迷惑という概念も含み得るものとして整理されている可能性が高いということで考えて、こういう表現にさせていただいたところでございます。

【林部会長】 よろしいですか。

【奥澤委員】 また少し勉強させてください。条文構成からいくと限定されていたと思うので、その中に読み込む概念としてとらえるのかどうかというのを、ちょっとよくわからなかったので、すみません。

【林部会長】 よろしいでしょうか。それでは、きょうの論議、それから次回関係者へのヒアリングを行うわけですけど、これらを踏まえて、事務局におきましては骨子案を慎重に作成いただきたいなと、きょうは大変いいご意見たくさんいただきましたので、そういうふうにお願いしておきます。

 また、次回予定されていますヒアリングの対象者については、私に一任させていただきますでしょうか。よろしいでしょうか。はい、どうもありがとうございました。

 それでは次に議事の3、その他が残っていますが、特にはありませんね。どうぞ。はい。

【青木委員】 これは事務局の方へ確認なんですが、私しっかり確認してこなかったのですが、最近遺失物法の改正作業が進んでいるというニュースがありましたので、引き取り要領のところ措置の改定のところで、遺失物法12条に規定する逸走の家畜に当たる場合は、警察署長に差し出すよう表示しろという一文がありますので、そこをいじる必要がないかどうかということをご検討いただければと思います。

 以上です。

【東海林動物愛護管理室長】 結果として申し上げれば、特に現時点で変更する必要性はないかと思われます。

 せっかくの機会でございますので、遺失物法の改正をちょっと紹介させていただきますと、遺失物としての逸走の家畜も含みますけれども、犬・ねこ等、動愛法で自治体が引き取る対象としての犬・ねこというのが、両方の法律で重複して記載されておりました。

 ただし、遺失物法が従前からありまして、昭和48年に動物愛護管理法ができたという形で、この48年に動愛法ができたときに、遺失物法にその部分を動愛法で引き受ける部分を除くというような規定をすればよかったのですが、議員立法という形でしたので、それは実行上やるということで、特に遺失物法の改正がされませんでした。それが、今この遺失物法の改正の機会をとらえて、動愛法と遺失物法の役割分担の整理が、法制度上の役割分担の整理が条文上されたというようにご理解をいただければよろしいかと思います。

【林部会長】 よろしいでしょうか。

 それでは、本日の議事はこれで終了したいと思いますが、閉会に当たりまして、黒川審議官よりごあいさつをいただきます。

【黒川審議官】 審議官の黒川でございます。本日は、初めに実験動物の飼養保管等の基準と、これの答申をおまとめいただき、また後段は非常に基本指針の基本的考え方ということで、非常に熱のこもったご議論、ご審議をいただきまして、まことにありがとうございます。

 前段の答申をいただきました、その飼養保管等の基準につきましては、先ほど部会長からもお話がありましたが、この後、審議会の会長から小池大臣の方にご答申という手順を踏んでいただきまして、私どもの方ではできるだけ早く手続を終えたいというふうに思っておりまして、4月中、ゴールデンウィーク前には官報に告示というふうに運びたいと、こういうふうに考えております。

 3Rの原則を盛り込みました改正動愛法、本年の6月1日から施行ということで、各県でもいろいろ準備を進めているところでございます。

 それに間に合う形で、今回何とかその基準を、今までのものを一新する形で新しいものができるということで私どもも大変喜んでおりますし、きちんとこれが遵守されるように必要な対応をしていきたいと。

 これも議論の中で少し触れましたけれども、実験動物の適正化という方も関係省庁の間でいろいろ進んでいると。環境省も各省庁との必要な連携をとっていきたいというふうに考えておりまして、改正法の趣旨を踏まえてそれこそ関係省庁・関係団体、そして関係する学会の先生方ともいろいろ連携をする形で、適正な飼養保管が進むように努力をしていきたいというふうに思っております。

 それから、本当に熱のこもったご議論をいただきました、後段の動物愛護管理の基本指針につきましては、私どもとしてはやっぱり人と動物というのは共生する社会はどういうものか、どういうふうにつくっていかなきゃいけないか、そういうものをわかりやすく示し、行政的には動物愛護管理行政の基本指針として一番のベースになって、各都道府県がまたそれに従って具体的な計画をつくっていくと。そういうようなものに何とかならないか、そういうものにしていきたいと、非常にこう強く思っておるところでございます。

 中身はきょうもご指摘がありましたけど、非常に難しいといいますか、深遠な論点というものが幾つも入っているものでございます。

 しかしながら、法律との関係でいきますと、基本的方針というものを早く出さないといけないということもございまして、先ほどスケジュールでご説明しましたが、9月ぐらいにはまとめていきたいし、そのパブリックコメントなんかを考えますと夏前、6月ぐらいには素案が何とかできないかという、そういう期待感で非常にタイトなスケジュールということで、また委員の先生方にはスケジュールも含め、それから中身も非常に重く深いと、こういうことでございまして、いろいろご尽力といいますか、ご協力、ご指導をお願いすることになろうかと思います。

 事務局の方でも、例えば、きょうのスタートに非常に重い意見をいただきましたので、そういうご意見もできるだけ折り込むような形で、また新しい実際の基本方針の案というものを練っていきたいと思いますので、いろいろな方向からのご意見というものを賜りますよう、切にお願いを申し上げます。

 本日は、どうもありがとうございました。

【林部会長】 ありがとうございました。きょうの論議は非常に深いものでありましたものですから、審議官からのあいさつも、大変熱のこもったあいさつをいただきました。ありがとうございました。

 最後に、次回の日程等について事務局から連絡をいただきたいと思います。

【東海林動物愛護管理室長】 机の上にスケジュール表の確認表を配付させていただいております。4月下旬から5月にかけてヒアリング等、それから基本指針の検討の会、これを設けさせていただきたいと思いますので、ご記入の上、事務局までご返送いただければというふうに考えております。

【林部会長】 それでは、ほかにございませんね。

 以上をもちまして、本日の部会を終了いたします。ありがとうございました。