中央環境審議会 自然環境部会第1回外来生物対策のあり方検討小委員会 議事要旨

日時

平成25年9月26日(木)9:30~12:00

場所

航空会館501+502会議室

出席者

(小委員長) 石井 信夫
(委員・臨時委員) 石井  実    尾崎 清明
五箇 公一
(専門委員) 磯部  力    太田 英利
大矢 秀臣    岡  敏弘
川嶋 博之    北田 修一
関  智子    中井 克樹
西田 智子    細谷 和海
(環境省) 星野自然環境局長
奥主審議官
江口総務課長
中島野生生物課長
関根外来生物対策室長
東岡外来生物対策室長補佐
水﨑移入生物対策係長
谷垣外来生物対策係長
(農林水産省) 作田地球環境対策室長

議事

(1)特定外来生物被害防止基本方針の変更について

◇事務局から[資料1][資料2]について説明。

◇委員意見

○現行の外来生物法では放出等が例外なく禁止ということだが、既に野外にいるものをその場で放つこと、発信機を取り付けることはできるのではないか?
→いわゆるキャッチアンドリリースは可能。しかし、捕獲したものを研究室に一度持ち帰ってから発信機をつけて、再度放つということはできない。(事務局)
→具体的に気にしているのは鳥類の標識調査。標識をつけることはよいと理解でよいのか。数百メートル持ち運ぶということはどうなのか。
→標識をつけることに外来生物法の制限はない。具体的にどの範囲ということはケースバイケースの判断になるが、一連の土地の範囲内であれば持ち運んでも問題ない。たとえば、ブラックバスでも釣り大会で釣った魚をその岸で計量するといったことは認めている。(事務局)

○輸入品等の検査で、「主務大臣は」「その職員に」とあるが、誰が行うことになるのか。農林水産業に被害を及ぼすものについては、農林水産省ということになるのか。
→輸入品への付着・混入の時点ではどういった外来生物なのか不明であるため、一義的には環境省の職員が行うということをイメージしている。(事務局)

◇事務局から[資料3]について説明。

◇委員意見

―第1について

○p1、33行目。海外から導入されるものを「外来生物」としている。環境省では「外来種」と「外来生物」を使い分けしており、「外来種」を「外来生物」より広い概念として上位に位置付けることで奇妙な整理になっている。また、p2で「在来生物」を「我が国にその本来の生息地又は生育地を有する生物」としている。国内由来の外来種についても取組みが必要という認識であるならば、この定義では国内の移動が問題になるという認識が持たれないのではないか。国内であっても、その本来の生息地の内側にあるものしか在来とは言えない。
→外来種被害防止行動計画(仮称)の中では「外来種」の言葉を整理しているが、この基本方針では法律のことばで整理していきたい。(事務局)
→「外来生物」については、p1の24行目~で一般的な「外来生物」が使われている。その後で法律上の、狭義の「外来生物」が出てくることで混乱する。混乱がないように工夫が必要。
→「在来生物」については、本来のところに「生育・生息する」くらいにしてはどうか。

―第2について

○p3、33~35行目の表現が分かりづらい。「(交雑することにより生じた生物を除く。)」というのはマネジメントユニット(MU)のことを指しているのではないかと思うが、この理解でよいか。指定は「アカゲザル×ニホンザル」とするということがよいのではないか。
→「外来生物」の定義を「交雑することにより生じた生物を含む」としており、ここでは交雑を生じさせる組み合わせのことを指しているので、「除く」としている。(事務局)
→参考資料3の例をとると、「ストライプトバス×ホワイトバス」と指定し、「サンシャインバス」という名前は出てこないという理解。

○p3、34行目では「交雑して当該生物を生じさせる外来生物…の組み合わせ」とあるが、アカゲザルとニホンザルの交雑の場合は、「外来生物」だけでは読めないのではないか。外来生物と在来生物、などと書く必要がある。
→そのとおり修正する。(事務局)

○p3、33~35行目では「除く」としておきながら、p4、6行目からでは「後代も含めて選定の対象」としているのはなぜか。分かりづらい。
→p4、6行目からの記述は特定外来生物として指定すればその後代も含まれるという意味である。(事務局)
→在来種と戻し交雑をするということもあるが、その後代も含まれるという理解でよいか。とすると、際限なく規制の対象となるが。
→在来種と戻し交雑をした場合も同様に含まれる。見た目で判別できるものを対象とするという趣旨でp4、3行目~のイの項目を設けている。ただし、運用上は遺伝子検査を行って調べるということはあり得る。(事務局)
→クワガタで交雑の問題があるが、クワガタは見た目で判断することは難しい。
→カメは在来と外来の交雑が複雑に起こっている。交雑のカメで、見た目では大して外来の影響を受けていないのに、あとになって外来の特徴が色濃く出るということがある。交雑種、後代まで規制の対象に含めるということであれば、かなり詳細な分析をする必要がある。

○p3、33行目の「(交雑することにより生じた生物を除く。)」は、法律的に定義の混乱がないように、ということだと思うが、一般の人が読むことを考えると、なくてもよいのではないか。

○後代にどう対応するかだが、調べて分かる範囲でやらざるを得ず、われわれ研究者が調べることが必要。そのうえで、問題になっているエリアで対策をとっていけばよい。後代を対象とするということは、基本方針に書いておかないと、1代目だけでよいと理解されるので書いておく必要はある。「(交雑することにより生じた生物を除く。)」は削除してよいなら、削除し、難しければ事例をいれられないか、あるいは、図をつけるなど、工夫をしなければわかりづらい。

○特定外来生物のスパルティナ・アングリカは交雑したものの倍数体。それは既に特定外来生物に指定されているが、どういう整理になるのか。わかりやすさを優先するべき。
→スパルティナ・アングリカはそういった種として存在していたということもあり、ご了承頂きたい。p3、33行目の「( )」書きは削除し、在来生物との交雑も読めるように修正する。(事務局)
→見た目で判別できるものに限るという「イ」の規定は、一般の人が飼っているものを規制する中で、その人が分かるようなものでなければ「分からなかったから飼っていた」と逃れられることから、従来より設けているもの。野外で野生化したものを防除する場合には、個々を判別するということではなく、交雑が起きて問題となっているエリアで対処していくということを考えている。(事務局)

○交雑は、個体の間で起こるものだが、p3、33~35行目「属・科等の」とはどういうことか。何と何が交雑したか判断できない場合があるということを念頭に置いているのか。
→例えば、ニホンジカとシカ属が全て交雑するということが分かっていれば、ニホンジカと個別の種の組み合わせではなく、属全体を対象とするということ。(事務局)

―第3について

○p7、3~4行目。愛がん目的は、指定の際に現に飼養等している個体に限るということであるが、運用面では、知らずに飼い始めてしまい許可が申請されるというケースに後付けで許可していることはないか。その点の手当をここでしておく必要はないか。
→特定外来生物に指定される際に飼っているものについては、6ヶ月以内に申請することとなっている。指定の際に普及啓発を行って、申請をしてもらう。(事務局)
→普及啓発を行っても知らずに、というケースがあるのではないか。後からでも認めるとういことはここでは書けないのか。
→法律上の扱いとして後から認めるということは書けない。(事務局)

○放出等の許可の目的は、学術研究に限るとしているが、学術研究が進み、事業として放出等を行うのが次のステップではないか。そのための許可はどうするのか。
→事業として放出等をするということは、防除として行うことしか想定されない。その考え方は第4に記載しているところであり、防除の告示のなかに放出等を位置付ける。それに従って確認・認定を受けて行うもの。(事務局)

―第4について

○p10、16行目。「都道府県」の意見を聴くとなっているが、都道府県のみなのか。できれば市町村も含めるべき。
→法第11条の規定による表現。実際の防除においては市町村も含めて連携、意見交換をしていきたい。(事務局)

○p12、9行目。原因者負担について、「原因となった行為をした者が存在するときは」とあるが、ほとんどの場合存在する。ここは「特定される際には」などと修正するべきではないか。
→法第16条に「原因となった行為をした者があるときは」とあり、「ある」をわかり易く「存在する」と言い換えたもの。(事務局)
→「特定される際には」と修正することは、後退になるのではないか。酌量されるべきではない。
→ご指摘の箇所については「原因となった行為をした者が存在するときは…原則とする」としているので、「特定される」場合に限ってはどうかという委員のご指摘の趣旨は入っていると考える。現実的には、原因者が不特定多数であるなど、負担を求めるというのは難しい場合が多いという現状である。(事務局)

―第5について

○輸入通関時に検査するとあるが、誰が検査するのか。空港に環境省職員は常駐していない。p15、22行目で「植物防疫所や税関等の輸入通関時の検査において」とあるが、税関は書類のチェックが主体のため植物防疫所を主に想定しているということでよいか。また、27行目で「船舶、航空機に立入り」とあるが、問題がかなり大きくなるのではないか。現実的にできることを踏まえて記述するべき。
→植物防疫所で特定外来生物が見つかったときなど、環境省職員が行って指導をしているというのが実態。税関でも種類名証明書など書類のチェックは行っており、そこで種類名証明書に記載のないものが見つかれば対処することはある。実態としては、植物防疫所の検査で見つかったものに対応するということが基本となるが、高い頻度で付着・混入が確認されているものや、たれ込みがあった場合も検査ができるようになるということである。(事務局)

○検査で特定外来生物の付着・混入が見つかった場合、職員が来るまでどういう処置をしておくのか。かなり具体的なところまで踏み込んで対処法を考えたうえで、この文書を公開しないと混乱を生む。
→成田空港には自然保護官が常駐しているが、ご指摘のようなところを考える必要があると認識。施行までの間に体制を整えたい。(事務局)

○水産物の輸入については想定していないのか。
→カワヒバリガイがシジミに混入している、といった事例はあるので、これが水際で見つかれば検査等を行うという可能性はあるが、こうしたことはこれまでに現実的にそうした対処が必要になったことはない。(事務局)

○法律上「消毒・廃棄」となっているが、消毒とはどういうことを想定しているのか。
→植物防疫法ではくん蒸なども含めて消毒としており、これにならっている。薬剤を使った処理を想定している。(事務局)

―第6について

○p20、9行目で「導入経路の管理の強化」とあるが、具体的どういうものを想定しているか。
→たとえば、よく特定外来生物が付着しているということがわかっているものについては、事前に処理をしてから輸入をすることをお願いするなど。(事務局)
→お願いということではなく、もっと強く求めることはできないか。植物防疫では外国に対してくん蒸をするということを指示できる。
→植物防疫は国際的な条約がある。外来生物についてはないため、これ以上の記述には踏み込めないのではないか。もっと具体的に「監視」等を記載することはできるかと思う。

○p19。国民の理解の増進について。基本方針のこれまでの記述では、国境を越えて導入されるものが主体となっている。それでは、国民の理解としても生物の国内移動の問題が強く持たれないのではないか。例えば、琉球諸島にネズミ駆除の目的で持ち込まれたネズミが在来の大型脊椎動物などに影響を及ぼしているが、本州から持ち込まれもののため、地元の人は「外来」という認識がない。せめて教育のところなどで、国内由来のものについても書くことができないか。
→法律に基づく基本方針なので、海外から導入されるもののみに絞っている。ただ国内由来の外来種も大事な問題であり、行動計画の中で記載をしていきたいと考えている。リストでも国内由来の外来種を含めてリストアップし、注意喚起していきたい。(事務局)

○p18、7~8行目に「判定に支障がない範囲で」とあるが、拙速な判断をしないようにという趣旨か。似たような表現がp5、19行目にあり、そちらの方がきになっている。予防原則もあるため「支障ない範囲で」というのは不要ではないか。
→WTO-SPS協定もあり、科学的知見に基づいてしっかり判断することが必要という趣旨である。表現については検討する。(事務局)

―その他、全体をとおして

○行動計画とリストは作業しているところ。その取組との関係を基本方針に書くべきではないか。特にリストと特定外来生物の選定は不快関係にあるのではないか。
→p19、28行目~の部分で記載している。

○今後の課題として2つ認識して欲しい。1つ目は、希少な在来種と外来種の交雑の問題。例えば、ニッポンバラタナゴとタイリクバラタナゴは野外で交雑が進み、2~8世代でゲノムが入れ替わる。一方で地方ではゲノムが保存されている地域もある。今後ゲノムを対象にした判断ができないかということ。2つ目は、国内外を問わず、移植の問題。西湖のクニマスをどう評価するのかということ。
→ゲノムを対象とするということについて。遺伝子をみることによって、その都度判定することは必要だろう。移植については、トキの問題などがこれまでも話題になっているが、外来生物法とは別に整理せざるを得ない。遺伝的多様性保全のための雑種化が事業として行われているケースもある。そもそも交雑することをだめとするかどうかという問題がある。専門家が判定をし、その都度議論し、制度にどうフィードバックをしていくのか考える必要があるだろう。
→今回の改正によって特定外来生物の交雑種全てが特定外来生物となるわけではない。保全の取組が必要なものについては特定外来生物に指定をせずに対応していくものと考える。また、再導入のガイドラインなども昨年度の小委員会で紹介をしている。希少種の保全の枠組の中で考えていきたい。(事務局)

○今後、特定外来生物の指定にあたって、同じ生物でも地域によって影響が異なるということを考慮してもらいたい。(例えばクジャク)法律なので、全国を対象にしているということは分かるが、環境の違いを考慮するべき。
→リストの中でも地域的に影響を与えるものについてもリストアップする予定。法的な位置付けは将来的なことになると思うが、対策を進めて行きたい。(事務局)

―とりまとめについて

○修正案について再度委員のみなさまに確認したうえでパブリックコメントとする。