中央環境審議会 自然環境部会 野生生物小委員会 第9回会議録

日時

 平成27年12月17日(木) 10:30~11:55

場所

 環境省第1会議室(中央合同庁舎5号館22階)

出席者

(委員長) 石井  実
(委員) 新美 育文 山極 壽一
(臨時委員) 尾崎 清明 小菅 正夫
白山 義久 宮本 旬子 磯崎 博司
(専門委員) 石井 信夫 桜井 泰憲
(環境省) 奥主自然環境局長
亀澤大臣官房審議官
川上総務課長
奥田野生生物課長
田希少種保全推進室長
曽宮外来生物対策室長
東岡鳥獣保護管理企画官

議事

【事務局】 おはようございます。予定の時刻になりましたので、中央環境審議会自然環境部会野生生物小委員会を開催させていただきます。

 定足数の確認でございますが、本日は所属の委員・臨時委員9名のうち、今現在6名のご出席をいただいておりますので、中央環境審議会議事運営規則による定足数を満たしており、本委員会は成立しております。

 ちなみに、白山委員は、少し遅れると連絡を受けております。

 また、マリ・クリスティーヌ委員は、ご出席の予定でしたが、体調不良により本日は欠席されるというご連絡をいただいております。

 では、次に、配付資料の確認をさせていただきます。

 お手元にお配りしております資料ですが、議事次第の裏の配付資料一覧をご覧ください。上から申し上げますと、議事1の関係では資料1-1から1-6、資料1-7-1から1-7-3、資料1-8、1-9とございまして、参考資料1-1から参考1-8までございます。議事2の関係では、資料2ということで1種類でございます。資料に不備等ございましたら事務局にご連絡いただければと思います。

 次に、当審議会所属の臨時委員の交代がございましたので、ご報告させていただきます。

 12月1日付で、髙橋徹臨時委員が辞職されまして、同日付で佐々木洋平臨時委員が任命されております。所属は、本委員会と鳥獣の保護及び管理のあり方検討小委員会になります。

 それでは、局長の奥主よりご挨拶申し上げます。

【奥主自然環境局長】 審議会の開会に当たりまして一言ご挨拶させていただきます。

 委員の皆様方には、年末のお忙しい中、ご出席いただきありがとうございます。

 本日の議題でございますけれども、審議案件が1件、報告案件が1件の計2件となっております。

 まず、審議案件ですが、えりも地域ゼニガタアザラシ特定希少鳥獣管理計画についてご審議いただきたく存じます。これは、改正鳥獣法により、新たに環境大臣が策定できることとなった希少鳥獣の管理計画でございます。

 ゼニガタアザラシにつきましては、最近の調査によって個体数の増加が認められ、専門家による検討の結果、今年9月には絶滅危惧種には当たらないと判断されたところです。しかしながら、環境省では、保護・管理の手法が確立していない種につきましては、その手法が確立するまでは、希少鳥獣として国が責任を持って保護・管理する必要があると考えております。特に、えりも地域につきましては、漁業被害が深刻化しているため、ゼニガタアザラシの個体群と地域社会との共存を目指すことが重要でございます。

 こうしたことから、改正されました鳥獣保護管理法に基づきまして、えりも地域ゼニガタアザラシ特定希少鳥獣管理計画を今年度末までに策定し、適切な個体群の管理を進めていきたいと考えております。

 今回は、地元での科学委員会や保護管理協議会等の検討を踏まえて策定いたしました本計画案についてご審議いただきたく存じます。

 次に、報告案件でございますが、前回ご審議いただいたニホンイシガメに係るパブリックコメントの結果について報告させていただきます。結果概要については後ほど会議の中で説明いたしますが、今後も、前回お示しした方針案で引き続き進めたいと考えております。

 本日お願いする案件は以上でございます。ご審議のほどよろしくお願い申し上げます。

【事務局】 では、この後の議事進行につきましては、石井委員長にお願いいたします。

【石井委員長】 皆さん、おはようございます。では、早速ですけれども議事に入らせていただきたいと思います。

 本日の議題ですけれども、局長からもご紹介ありましたように、かなり重要な議題でございまして、1件目がえりも地域ゼニガタアザラシ特定希少鳥獣管理計画についてです。

 それから、もう1件は、パブリックコメントにかけましたニホンイシガメの輸出に係る助言に関するものということで、その結果についてご報告いただきたいと思います。

 早速ですけれども、1番目のえりも地域ゼニガタアザラシ特定希少鳥獣管理計画について、まずは事務局からご説明をお願いいたします。

【事務局】 鳥獣保護管理室の根上と申します。座って失礼させていただきます。

 それでは、えりも地域ゼニガタアザラシ特定希少鳥獣管理計画についての審議案件について、ご説明させていただきます。

 まず、資料の1-1をご覧ください。本計画案は、鳥獣法に基づきまして、環境大臣から中央環境審議会に諮問いたしまして、次に、資料1-2をご覧ください。中央環境審議会から自然環境部会に付議されております。

 資料1-3をご覧ください。そして、野生生物小委員会の設置要綱の4に基づきまして、本野生生物小委員会において審議いただくものとなっております。

 資料1-4は、本小委員会の運営方針になります。

 それでは、計画策定の背景について、まずご説明させていただきます。資料1-5をご覧ください。

 ゼニガタアザラシは、北海道の東部沿岸から襟裳岬にかけて分布しまして、同じ岩礁を周年利用する定着性のあるアザラシです。

 かつては乱獲や環境の悪化に伴いまして減少し、絶滅危惧種となっておりましたが、これまでの保護の努力によりまして数が増え、再評価の結果、絶滅危惧種には当たらないことが判明しました。

 一方で、数が増えてきたことによりまして、定置網のサケを中心に漁業被害が深刻化していますが、その防除手法ですとか、管理手法などが確立していない状況です。

 資料の1-7-3の2ページ目をちょっとご覧いただきたいんですけれども、こちらのほうにゼニガタアザラシの基本資料を載せております。

 特に、襟裳岬は本種の最大の上陸場でありまして、漁業被害が深刻な状況です。一方、襟裳岬は他の上陸場からも距離があることから、えりも地域の個体群は遺伝的にも独立傾向にあるとされています。

 また、資料の1-5に戻っていただきまして、これらのことから、今後、えりも地域におけるゼニガタアザラシ個体群と沿岸漁業を含めた地域社会との将来にわたる共存を目指すために、適切な防除手法や個体群管理等の手法を確立しまして、計画的な管理を行っていく必要があります。

 次に、参考資料の1-1をちょっとご覧いただきたいんですけれども、平成27年の5月に施行された改正鳥獣法上、こちらの右下に記載しております、環境大臣が希少鳥獣保護計画及び特定希少鳥獣管理計画を新たに策定できることとなりました。

 ちょっと資料が飛びまして申し訳ないんですけども、次に参考資料の1-2をご覧ください。こちらは法律及び基本指針の関連部分の抜粋になります。

 2ページ目の下線部分に記載しておりますが、絶滅危惧種から外れたものの、保護又は管理の手法が確立しておらず、当面の間、計画的な保護又は管理の手法を検討しながら進めることが必要な種については希少鳥獣としまして、特に、特定の地域において生息数が著しく増加又は生息地の範囲が拡大している希少鳥獣については、特定希少鳥獣管理計画を環境大臣が策定できることとなりました。

 また、資料1-5に戻っていただきまして、そのため、改正鳥獣法に基づきまして、ゼニガタアザラシの管理手法が確立するまでの間、同法上の希少鳥獣として定めたままとしまして、襟裳岬周辺の繁殖個体群を対象としまして、えりも地域ゼニガタアザラシ特定希少鳥獣管理計画を策定することとしました。

 次に、計画策定に至った経緯につきまして、過去の取組を含めてざっとご説明させていただきます。

 まず、参考資料の1-4をご覧ください。1枚紙になります。

 平成24年以前から、えりも漁協等からゼニガタアザラシの被害対策を求める要望が出されておりまして、4月にこの問題について専門家ワークショップを開催しました。これらを受けまして、この時点では環境省で法定計画が策定できなかったことから、都道府県が策定する特定鳥獣保護管理計画に準ずる計画の策定に向け検討を進めるために、有識者や地元漁業関係者等を含むゼニガタアザラシ保護管理検討会を設置いたしました。

 平成25年度は、この検討会を札幌で、また、それとは別に、地元説明会をえりも町で実施しております。

 このときに調査捕獲を予定していたんですけれども、絶滅危惧種であることから慎重に検討すべきとして、捕獲については一旦見合わせることとなりまして、まずは被害防除と調査に力を入れることとなりました。

 環境省での対策事業とともに、平成25年から27年度までの3年間で環境研究総合推進費を、桜井先生を代表に取っていただきまして、漁網の改良などの研究に関する部分を行っていただき、研究者と連携しながら情報や技術の知識を集積してまいりました。

 また、えりもは北海道地方環境事務所から車で片道4時間ということで、地元との細やかな調整がなかなか困難であったことから、平成26年の4月1日に、えりも自然保護官事務所を設置しまして、自然保護官を配置しました。

 また、5月9日に特定鳥獣保護管理計画に準ずる計画としまして、環境省えりも地域ゼニガタアザラシ保護管理計画を策定しました。この現行計画は参考資料の1-8としてつけさせていただいております。

 現行計画は、今年度末までの計画期間としまして、被害防除対策とゼニガタアザラシの存続可能性への評価に力を入れていくこととしました。

 また、本計画に基づきまして、ゼニガタアザラシ科学委員会と保護管理協議会を設置することとなりました。

 参考資料の1-4を見ていただきまして、平成27年度には、5月に改正鳥獣法が施行されまして、法定計画が策定できるようになり、さらに、これまでの調査と解析の結果から、9月に絶滅危惧種でないことが明らかになったことから、特定希少鳥獣管理計画の策定を開始いたしました。

 平成26年度からは、地元に自然保護官が配置されたことや、研究費も活用しまして、地元漁業者、研究者と連携しながら、また地元説明会や調整を小まめに行うことにより、具体的な話が進み始めました。

 資料の1-6をご覧いただきたいんですけれども、管理計画の策定スケジュールですけれども、平成26年、27年度に現行計画に基づいて行ってきました調査や対策の結果を踏まえまして、今年度9月から、地元でのゼニガタアザラシ科学委員会と保護管理協議会によりまして、管理計画案を策定してまいりました。

 科学委員会と保護管理委員会の構成については、参考資料の1-3をご覧いただきたいんですけれども、科学委員会は、ゼニガタアザラシの調査を行っている研究者、地元調査関係者、評価・分析の専門家等で構成しております。

 保護管理協議会は、環境省、北海道、えりも町、漁業団体、漁業者、地域住民、関連団体、大学・研究機関等の全ての関係者で構成しております。

 また、資料1-6に戻っていただきまして、その計画案を法定計画にのっとりまして、利害関係人の意見聴取と関係地方公共団体との協議を行いまして、本日、中環審の野生生物小委員会でご審議いただく流れとなりました。

 この後の予定ですけれども、パブリックコメントを経まして、2月に審議会に答申、3月に官報告示の手続を経て、今年度中に本計画を策定したいと考えております。

 また、後でご説明します、この管理計画に基づき定める事業実施計画に関しましても、並行で、詳細の内容を地元や専門家と詰めながら作成していきたいと考えております。

 それでは、計画案についてご説明させていただきます。資料1-7をご覧ください。

 資料1-7は、1から3に分かれております。資料1-7-1としまして、本計画案の概要版をつけさせていただきましたが、計画案本体は10ページ程度ですので、資料1-7-2の計画(案)本体を基に、ご説明させていただきたいと思います。

 また、資料1-7-3は、本計画案の参考資料となっております。これは、これまでの事業や研究のデータから、関係する部分をまとめたものになっております。

 また、こちらの計画の記載内容に関しましては、参考資料の1-2の基本指針の抜粋の4ページ目の計画の記載項目に基づいて作成しております。

 それでは、資料1-7-2をご覧ください。

 まず、3ページ目の1の計画の背景ですけれども、この部分は先ほど資料1-5で簡単にご説明させていただきましたので説明は省略させていただきまして、次に、4ページ目の2の計画の目的の箇所ですけれども、この部分は、科学委員会において、二度と絶滅危惧種に逆戻りさせないという明確な決意が必要とのご意見、また地元などから、漁業の存続も視野にというご意見等から、ゼニガタアザラシ個体群と沿岸漁業を含めた地域社会との将来にわたる共存を図ることを目的に明記しました。

 さらに、本計画は各種の管理手法を確立することが目的でありますので、それを明記しました。

 次に、4の計画の期間についてですけれども、基本指針では原則3~5年程度とすることとなっております。科学委員会等の意見を踏まえまして、将来の計画の見直しも視野に3年間で設定いたしました。

 次に、5の管理が行われるべき区域ですけれども、襟裳岬周辺で繁殖する個体群が生息する区域としております。これは前段でご説明しましたように、特に襟裳岬が本種の最大の上陸場となっておりまして、漁業被害が一番深刻な状況であること、また、えりも地域の個体群は遺伝的にも独立傾向にあることなどから、まずはえりもの個体群について計画を策定し、管理手法を確立していきたいと考えております。

 次に、6の管理の目標の箇所ですけれども、(1)では生息数に関する部分、捕獲数に関しまして、また(2)では被害防除対策についてを記載しております。

 まず、(1)ですけれども、ゼニガタアザラシの存続可能な個体群レベルの維持と、漁業被害の軽減に向けた管理を行うとしまして、これまでの定置網の改良によって、サケの被害防除については一定の効果を得ているところですけれども、個体数の増加や分布域の拡大によりまして、タコ漁被害など、他の漁業被害が深刻な状況となっていることがわかってきましたので、漁業被害を軽減するための捕獲を実施することとしています。

 ただし、個体群の存続可能性を保証すべく、絶滅危惧種の一つの基準であります100年以内に絶滅する確率が10%未満となるよう留意することとしております。ここが最低ラインとなります。

 また、毎年のモニタリングデータを見ながら、順応的な管理を行っていくことを記載しております。

 また最後に、適正な個体群管理に向けて上記を行いつつ、計画の見直しに必要な情報を収集することとしておりますが、現時点では、環境収容力などを考慮した個体群管理を行うことは、情報が不足しており、できないため、当面は上記条件によりまして、絶滅危惧種の基準に抵触しない範囲で捕獲上限を設定しまして、その中で被害防除対策とあわせて実施していくことを考えております。

 管理を行いながら情報・知見を集めまして、より適正な個体群管理に近づけていくように、計画の見直しを行っていきたいと考えております。

 また、ここでは具体的な数値を記載していないんですけれども、本管理計画については、大きな方針のみを記載させていただきまして、この方針に基づき策定する事業実施計画の中で、捕獲上限数等を含めまして、毎年度実施する具体的な取組について記載する予定です。

 それを、モニタリングデータなどを参考にしながら毎年見直し、順応的な管理を行っていきたいと考えております。

 (2)の被害防除手法の改良により漁業被害の軽減を図る部分ですけれども、これは、これまで実施してきました各種の防除手法の結果を検証しまして、手法の改良や新たな手法を確立することとしまして、また、実施していく上では、漁業者や研究者等と協力して取組みを実施することとしております。

 この被害防除対策については以前より行ってきましたので、後ほど、地元での取組をご紹介させていただきたいと思います。

 次に、7の管理のための方策に関する事項ですけれども、まず1ポツ目ですが、ゼニガタアザラシのサケ定置網の被害というのは、最終的には、サケがたまるところにアザラシが入り込み、サケの一部を食べるという被害が主なものとなっています。

 ただ、このサケ定置網というのは、混獲個体というのは幼獣個体が多くなっております。これらの幼獣個体は、今までの調査からサケを食べている痕跡があまりありません。一方で、実際にサケを食べている痕跡のある成獣個体は、うまく網から抜け出せる技術を習得しています。そのため、これらの常習個体を選択的に捕獲する手法を確立することによりまして、むやみに捕獲するのではなく、被害を軽減できる効果が高いと考えております。

 その具体的な手法としまして、7の2ポツ目で、定置網自体や定置網の周辺に設置するアザラシ捕獲用わなによりまして、常習個体を選択的に捕獲していく方法を検討したいと考えております。

 また、捕獲した個体については、適切な管理のためのデータの収集や、動物園・水族館への譲渡も含めまして、可能な限り有効に活用する方法を検討する。なお、捕獲個体を致死させる場合には、できる限り苦痛を与えない方法で行うと記載しております。

 次に、8の被害防除対策に関する事項ですが、被害防除対策の方法をここでは記載しております。

 (1)の漁網の改良、(2)の音波忌避装置等の改良については、実際の取組を後ほどご紹介させていただきます。

 また、(3)の常習個体の選択的捕獲手法の確立は、先ほど申し上げたとおりです。

 また、サケ定置網以外の情報が不十分であるということから、そのほかの被害情報についても収集しまして、漁業被害の実態を調査することとし、特に、タコ漁への被害が甚大となっていることから、これらに対する被害防除の手法について検討を行っていく必要があると記載しております。

 次に、9のその他必要な事項の箇所ですけれども、(1)の生息地の保護及び地域社会に関する事項では、ゼニガタアザラシの生息地や食物資源について記載しておりますが、沿岸海洋生態系におけるゼニガタアザラシの位置づけですとか、生息環境の相互作用はまだ分かっておりません。

 さらに、共存のためには、漁業以外にも観光や教育への活用、また地域社会との関わりの観点も重要であることから、生息地や食物資源についてさらに情報を収集することとしまして、えりも地域での生息環境と海洋資源、地域社会との関わりの観点から、ゼニガタアザラシがこの地域で存続する環境について調査することとしております。

 次に、8ページ目の(2)のモニタリングに関する事項を定めておりまして、本管理計画に基づく管理を適正に行うために、継続的にモニタリングを実施することとしまして、個体群の状況、管理の効果を検証しまして、計画にフィードバックするために、ここに記載の項目について定期的に点検することとしております。

 また、順応的管理を行う上で必要な場合については調査項目を追加することとしております。

 さらに、9ページ目の(3)の毎年度の事業実施については、実施計画を定めまして順応的管理を行うことを記載しております。

 参考資料の1-7をご覧いただきたいんですけれども、1枚紙になりまして、こちらは平成28年度の事業実施計画の項目案となります。

 この事業実施計画のここに具体的な内容を記載して、それを毎年見直していくことを考えております。

 この実施計画案は、今後、専門家や地元と調整しながら、被害防除対策ですとか、個体数管理、モニタリング等の部分の平成28年度に実施する具体的内容について、今後詰めていきたいと考えております。

 資料の1-7-2に戻りまして、最後に、9ページの10の計画の実施体制に関する事項の箇所です。

 ここでは、主に関係機関との連携や情報交換について記載しております。また、管理計画や実施計画を評価・見直しする体制としまして、今年度既に設置しておりますが、ゼニガタアザラシ科学委員会と保護管理協議会を設置することとしております。

 科学委員会の役割としましては、モニタリングや調査の結果の分析・評価を行いまして、これらの手法の提案を行い、保護管理協議会に科学的な助言を行うこととしております。

 一方、保護管理協議会の役割としましては、関係者の全てが入る形としまして、ゼニガタアザラシと地域社会との共存のためには、多様な主体により取組を推進することが重要ですので、計画の評価や見直しだけでなく、各主体の取組の促進ですとか情報共有を行うものとしまして、観光や教育等のゼニガタアザラシの活用ですとか、地域におけるゼニガタアザラシとの関わりを検討するプラットフォームとすることとしております。

 次に、資料の1-8をご覧ください。A4・1枚紙になりますけれども、こちらは法定手続上の利害関係人の意見聴取と、関係地方公共団体との協議の結果を取りまとめたものになります。

 意見聴取及び協議の期間は記載のとおりでありまして、利害関係人としましては、えりも漁業協同組合長、北海道漁業協同組合連合会長、えりもシールクラブ会長、このえりもシールクラブというのは、ゼニガタアザラシと漁業の共存共栄を考える地元市民の団体となっております。あと、えりも町商工会長。

 関係地方公共団体としまして、北海道知事、えりも町長を対象としまして、意見聴取及び協議を行ったところ、管理計画策定については、賛成6名、反対0名となっております。

 要望事項としまして、こちらに挙げました要望が挙げられております。これらの要望事項に関しては、具体的な修正ではなく、主には地元と今後も十分議論して、配慮して対応を行ってもらいたいというご意見が主なものでありますので、今後、十分配慮して行っていきたいと考えております。

 また、えりも以外の地域の対応については、今回の計画では、まだ管理手法が確立しておらず、情報が少ない部分もありますので、まずは、えりも地域で管理計画を確立したいと考えており、それを進めながら、他の地域についても情報を得ていきたいと考えております。

 長くなりまして申し訳ありませんが、背景及び計画案についてのご説明は以上になりますけれども、引き続きまして、これまで地元で行ってきました取組について、えりも自然保護官事務所の蔵本自然保護官より報告させていただきたいと思います。

【事務局】 えりも自然保護官事務所の蔵本と申します。

 資料1-9にスライドを印刷しております。また、参考資料1-6にも関連する資料がついておりますので、一緒にご覧ください。

 私のほうからは、現地で漁業者の方々を初めとする地域の方々と一緒に取り組ませていただいております、主にゼニガタアザラシに関する調査と、被害を軽減するための試験についてご説明させていただきます。

 えりも自然保護官事務所は昨年の4月に開設された新しい事務所であります。こういった状況で地元の方々と一緒に、こういった取組みをするに当たっては、まずは第一に現状調査ということで、被害の実態を調査しております。一緒に船に乗せていただいたり、港に出向くなどをして被害を調査しております。

 こちらに写真がありますのが、ゼニガタアザラシによって被害を受けたサケの写真であります。このように漁獲したサケのほとんどが被害に遭っているというような厳しい状況にあることも頻繁に見られます。このように被害に遭ってしまったサケにつきましては、商品価値がなくなってしまうため、非常に経営に与える影響も大きいという状況です。

 こういった厳しい状況でありますけれども、地元では何とか被害を減らすことができないかということで、漁業者の方々と一緒になって、この2年間いろいろな取組みを行ってきました。

 それでは、具体的なご説明をいたします。

 まずは、ゼニガタアザラシに関する調査です。アザラシに関する調査は、まず何といってもアザラシを確保しなくてはなりませんけれども、漁業者の方々から意図せず混獲された個体を持ってきていただいたりとか、それから、地元の関係者の方々によって、長年取り組まれている捕獲調査と連携させていただいたり、また、環境省でわなを設置するなどしてゼニガタアザラシを捕獲しています。

 こうして捕獲されたアザラシに対して、このように標識であったり発信機を装着して、放獣しております。このことにより、あわせて陸上からのカウントや、空中からのヘリセンサスを行うことによって、上陸頻度、標識をつけたもの、発信機をつけたもののうち、どれだけの個体が上陸していたのかという上陸頻度の算出や、それを基に個体群の動態のモニタリングに活かしたり、また、このように発信機から行動調査を行うことによって、被害防除策の考案等へこのような調査を活用しております。

 続きましては、被害防除の取組みに関してです。この2年間、漁業者の方々と一緒に特に力を入れてきましたのは、被害を減らすような定置網の改良でございます。こちらにつきましては、本日いらっしゃっております北大の桜井先生を代表とする環境研究総合推進費の研究グループと連携して取り組んでいるものです。

 まずは、定置網の構造についてご説明いたします。こちらが上から見た図で、こちらが側面から見た図ですけれども、上から見た図でご説明しますと、陸から沖に対して1本長い網が張られています。サケはこの網にぶつかると沖のほうに泳いでいきますけれども、沖に行くと徐々に狭められていくような構造の網が設置されていて、最後はこの四角い金庫網というところでサケが漁獲されます。

 これまでは、この金庫網の中にサケがたまっている状況のところに、アザラシが入ってしまって被害が生じているという状況でした。この昨年度と今年度に関しては、この金庫網に対して2種類の工夫を施すことによって、被害の軽減を試みています。

 一つが、この金庫網の入り口が狭められているんですけれども、狭められた入り口に格子状の網を張って、そこから先にアザラシが入らないようにすること。もう一つは、その入り口には何もしてないんですけれども、入った金庫網の中で仕切り網を設けてサケとアザラシを分離するという、2種類の試験を行っています。これらにつきまして漁業期間前、それから、春と秋の漁業期間中に漁業者の方々の協力を得て試験しております。

 具体的な作業の状況であります。先ほどの金庫網ですけれども、これが陸上に広げてオレンジ色の仕切り網を設置して、装着しているところです。非常に金庫網だけでも大型のものでして、縦で30mほど、つり上げて横12m、深さ12mと非常に大規模なものです。この金庫網が海の中に入っていまして、毎朝そこに船を横づけして手繰り寄せることによって、中に入っていたサケを漁獲するというのが一連の作業です。

 こちらは改良した部分の具体的な構造です。こちらの写真にありますのが格子網です。この金庫網の入り口に、今年度につきましては幅20cm×40cmと、20cm×20cmの2種類の格子網を試験しています。また、仕切り網につきましては、網目のサイズが36cmのものを試験しております。

 特に、この格子網、しかも、この20cm×20cmというものにつきましては、これを装着することによって、被害の軽減の効果が明らかに見られるという結果が今年度は得られています。

 また、この格子網の装着方法につきましても、漁業者の方々からアイデアをいただきまして、取り外しが簡単にできるようにファスナーをつけるという工夫をしています。これはどういうことかといいますと、ここの格子網がつく部分は金庫網の一番狭くなっているところでして、ここに障害物があると、そもそも魚の入りに影響があるだろうということで、何かが詰まったときにすぐに外せるようにであったりとか、アザラシの行動の特性上、夜間に被害が多く見られることがありますので、夜については格子網をつけておいて、被害が少ない日中については格子網を外しておくというような対応ができるように、船の上で取り外しができるような工夫をしています。

 ここで映像がありますのでご紹介いたします。

 この金庫網の試験中に水中で網の中を撮影したものです。北海道大学の藤森先生よりご提供いただいた映像です。

 まずは、格子網をつけた状況のアザラシの行動です。ここが金庫網の入り口2m四方になっています。今は20cm×20cmの格子網がついていまして、カメラは金庫網の中から入り口を映しています。アザラシが入り口から入ってきて、何とかこの中に入っているサケを食べようとして中に入ろうと試みるわけですけれども、この格子網があることによって中に入れないという状況です。このように何度も執着するように入ろうと試みる様子が撮影されています。

 次に、格子網がない状況の映像です。今は金庫網の入り口がこの辺りに四角くあるんですけれども、格子網を先ほどのように外して、まくり上げている状況ですが、このように格子網がなければ、アザラシは自由に金庫網に出入りできる状況と。非常に複数の多くの個体が見られます。常にこういう状況というわけではなく、この映像はたくさんの個体が来ているところを切り取ったものですけれども、格子網がなければ自由に出入りができる状況になっています。

 次に、こういったものがあると、やはりサケの入網にも影響があると考えられるんですけれども、サケの網に入る様子も撮影されております。このように、サケが入るときにはまとまって入るという様子が映像で確認されておりますけれども、一方で、やはり戻ってしまうという様子も撮影されています。せっかく、このようにまとまって来たサケが、やはりこのような障害物があることで戻ってしまう映像も確認されています。

 ただし、この戻ったサケが完全に網の外に出てしまうかというと、そうでもないようでして、手前でぐるぐる回っているうちに入るということも確認されているんですけれども、やはり何もないよりはサケに対する影響はあるだろうということで、アザラシが入りにくくなるということは、サケも一定程度入りにくくなるということで、そのバランスが非常に重要だというふうに考えられます。

 スライドに戻ります。以上が防除網のお話ですけれども、ここからは、また別の取組みです。

 アザラシの捕獲用わなの試験です。定置網に来遊する、この写真のこの辺りに定置網が設置されているんですけれども、定置網に来遊するアザラシを捕獲することによって被害を減らせないかということを、今年度、新たに試しております。定置網のすぐ横に設置をして、その中に、タコなんですけれども、餌を入れることによって、アザラシの生体捕獲に成功しております。今年度につきましては、設置期間も設置基数も少なかったこともありまして、捕獲されたのは1頭でありますけれども、このような扉が内側には開くけれども外側には開かない構造のわなによってアザラシが捕獲できることが確認できております。

 次に、ゼニガタアザラシが嫌がる音波を出す装置によって、定置網から遠ざけようという取組みです。こちらにつきましては、東京農大であったり、北海道立工業技術センター等と連携して取り組ませていただいております。

 これまでも既存の忌避装置、海外で使われているようなものを試したりはしていたんですけれども、なかなか効果が持続しないということで、実際にここの地域のアザラシに効果がある装置を開発しようという取組みをしています。

 先に、ここでご紹介する取組みの前に、水族館で水族館のアザラシに対して音波を聞かせて、これであれば効くだろうというものを、現地のしかも野生のアザラシを使って、かつ水族館より開放的な空間で実際効くのかということを調べたものです。こちらにつきましても映像がありますのでご紹介します。

 まず、北海道立工業技術センターにご提供いただきました水族館での実験の様子です。忌避装置がこの辺りに設置されていまして、今、この方がスイッチを入れるところです。スイッチを入れる前は、ゼニガタアザラシは自由に泳いでいたんですけれども、今、入れた瞬間にびくっとしたような様子も見られまして、装置から離れるというような忌避する行動が確認されています。

 また、この音波であれば効くだろうということで、実際に現場で試験したのが今年度の10月です。

 生け簀の設置状況です。これがえりも岬漁港でして、漁港の沖側、海側に1基生け簀を設置しています。その中には3頭のゼニガタアザラシ、定置網に混獲されたアザラシが入っています。試験に当たっては、人の影響をなるべく排除するために人が近づかないようにして、上空から映像を撮影することによって、その効果を評価しました。

 まず、音波がオフの状況です。音波を出す装置はこの辺りに装着されているんですけれども、音波がオフの状況では、ゼニガタアザラシ3頭ともこの辺りにいることが多く見られました。

 生け簀は11m四方で深さが2m、グリット線を設けて、どこに頭を出したかといったことで、音波の装置の効果を定量的に評価しようということで設計されています。

 音波オフのときは、この辺りからアザラシを入れたことや、餌を入れていることがどうやら関連しているのではないかと思われるんですが、画面で言う下のほうで、非常に、頭を出したり、何とか出ようというような様子が見られています。

 次に、音波がオンになった状況です。先ほど、まだこの辺にいましたけれども、1頭ここにいて、もう1頭がこの辺りにいたのが今は潜ったところですが、やはり装置から離れたところに行きます。音波がオンの状況では、やはりこの辺りではほとんど観察されなくなりまして、遠く離れた位置で頭を出したりだとか、また、潜水、潜っている時間が非常に長くなるといった行動の変化が見られました。こういったことから、この装置は明らかに、この野生下、かつ反響の少ない、より開放的な空間においても、アザラシの行動に対して大きく影響するだろうということで、まずは効果があったというふうに認められました。

 今後はこのような音波を出す装置について、より効果的な装置に改良することは当然ですけれども、こういった装置を定置網のどこにつけるのかといったようなことや、深さであったりとか、設置方法の検討についても行うこととしております。

 以上が取組みのご説明ですけれども、こういった取組みを進めるに当たっては、漁業者の方々との協力体制を構築することが不可欠です。漁業者の方々に一緒にご協力いただきながら取組みを進めるために、調査期間中に頻繁に研究者の方々にもご協力いただいて、情報のフィードバックをしています。昨日撮影された映像はこういうものでしたとか、こういった結果が得られましたというものを頻繁にフィードバックしていますし、また調査が終わった後に、ある程度まとまった情報もフィードバックします。

 また、次の試験、次の調査に向けては、研究者の方々にも現地に来ていただいて、漁業者の方々と意見交換をして、次にどういった試験をしていこうかということを考えています。

 また、年度末には、その1年間取り組んだ成果をまとめて、皆様にご報告する会を設けています。

 また、漁業者の方だけでなく、地域の中でご理解をいただきながら進めるために、地域の関係の代表者の方々にお集まりいただいて協議会を開催しておりますし、また機会があれば、地域内外の一般の方に対しても取組みの説明をしております。

 また、地域の中で、高校に出向いて講演をしたり、小学校において授業をしたり、小学生と一緒にゼニガタアザラシを観察するなどして、地域の中で一緒にご理解いただきながら、取り組む体制の構築を進めております。

 こういった取組みに関しましては、北海道では特に関心が高く持たれております。新聞、テレビを初め、さまざまな報道機関によって報道されているところです。一例をお示ししております。

 このように、これまでも漁業者の方々は、また、この地域の方々は、ゼニガタアザラシがいる状況で一緒に共存してきましたけれども、これからも、これからご審議いただく管理計画に基づく取組みを地域で一緒にやっていくという体制の構築を進めているところです。

 以上が私からのご説明です。

【石井委員長】 では、ご説明ありがとうございました。

 ただいま、根上専門官のほうから 、この件に関する背景と経緯、それから、今日ご審議いただきたい計画案についてご説明いただきました。

 それから、現地に開設した自然保護官事務所ですけれども、蔵本自然保護官から、現地の取組みの状況ということでご説明をいただいたところです。

 本当に資料も多いのですが、整理できたでしょうか。それでは、ご意見・ご質問賜ればと思いますが、いつものように名札を立てる形でご質問等を受けたいと思います。よろしくお願いいたします。

 では、山極委員、お願いいたします。

【山極委員】 ありがとうございます。今後100年に絶滅確率10%未満にということが最低条件だということで、そのモニタリングの今後の方針についてちょっとお聞きしたいんですけれども、絶滅確率を算定する基準としては、やっぱり、例えば出産率だとか、出産間隔だとか、それから、性成熟年齢ですとか、そういったことを考慮に入れなくちゃいけないわけですよね。

 ちょっと、これを見てみますと、4歳、6歳までの幼齢個体のデータがあまりないということですけれど、そういったそのデータは今はどのぐらいとれているのか。3年という期間が、そういったことをきちんと確立するまでに十分な期間なのかという点について、少しお聞きしたいんですけれども。

【石井委員長】 まとめていきましょうか。同じような質問もあるかもしれませんので。

 では、隣から行きましょう。新美委員、お願いします。

【新美委員】2点質問したいと思います。

 まず第1点は、これは対象区域はどこなのかという質問です。計画書の7ページの図でいくと、一番左下のところの波線で囲んだ地域と理解してよろしいかということ。それから、仮にそうだとすると、他の2地域ありますけれども、そちらでも同様の計画の要望ないしは必要性、いわゆる漁業被害というのが出ているのか、出ていないのか、それが第1点でございます。

 それから第2点。先ほど、サケ漁への被害に対する対策というのは随分進んでいるように伺いましたが、タコ漁の被害もあるということですが、それについては何か被害防止の策をとられているのかどうか。以上の2点でございます。

【石井委員長】 ありがとうございます。

 では、このまま横に行きましょうか。宮本委員、お願いします。

【宮本委員】 資料の1-7-2の5ページの下から2行目なんですけれども、その他の手法(銃器等)についても検討するというふうになっておりますが、私、1981年か2年に現地でとっかり猟師さんから海獣の猟というのは、陸上と違って特殊な技術が必要だというお話を聞いたのですが、現在でもそういう猟の経験のある方というのは現地にいらっしゃるのかどうか、こういう銃器の使用ということがもし始まった場合に、人を確保できるのかどうかという点について教えていただきたいと思います。

【石井委員長】 ありがとうございます。

 では、石井信夫委員、お願いします。

【石井(信)委員】 私は質問でなくて、少し説明を補足したいと思います。というのは、レッドリストの検討委員をやっておりますので、このゼニガタアザラシの評価の変遷についてちょっと説明をつけ加えておきたいと思います。

 2012年にレッドリストの最新の評価結果が報告されたんですが、その前はゼニガタアザラシはⅠBと評価されていて、Ⅱ類に変更したんですけれども、その時点では個体数だけで評価をしていました。

 それで、個体数の評価基準というのは、1,000頭を超えている場合には絶滅のおそれはないということなんですけれども、ここに書いてあるように2008年、1,089という数字が出ていますが、これが公表されたのは2014年で、2012年の時点では1,000頭を超えているかはどうかはっきりしていなかったんですね。それで、その可能性もあるけれども、慎重にということでⅡ類で置いておいたわけです。

 それで、このゼニガタアザラシについて、いろいろな漁業被害の問題とかがあるので、再評価をする必要があるということで、今年再評価をしたわけですが、そのときには、さっき説明していただいたいろいろな調査の結果、絶滅確率が算定できるということで、実際にその結果を見て、哺乳類では初めてというか、多分、日本の野生生物では初めてだと思うんですが、絶滅確率を使うE基準で評価をして、絶滅のおそれはないというか、10%以下ということが明らかでしょうということで、かなり慎重な評価をしております。

 とりあえず、そこまでにしておきます。

【石井委員長】 ありがとうございます。

 尾崎委員、お願いします。

【尾崎委員】 どこかに書いてあるのかもしれませんが、混獲の数が具体的にどのぐらいのオーダーなのかを知りたいと思います。

 それから、それが増えているのか、減っているのか、どのぐらいで推移しているのかということも、ちょっとわかりましたら教えてください。

【石井委員長】 はい。ほかはよろしいでしょうか。

 山極委員からは、今後のモニタリングの方針ということですね。

 それから、新美委員のほうからは、これの計画の対象地域はどこなのかという点と、タコ被害に対する対策はどうなっているのでしょうと。

 それから、宮本委員のほうからは、銃器使用という記載があるけれども、実際にこのような経験者がいるのでしょうかということ。

 石井信夫委員のほうは、レッドリストのランクとして今回はE基準を使ったわけですが、その経緯についてご説明いただきました。

 それから、尾崎委員からは、混獲の程度についてご質問がありました。

 それでは、事務局からご説明いただきたいと思います。

【事務局】 ありがとうございます。説明が至らなくて申し訳ないですけれども、山極委員からのご質問に対してですけれども、モニタリングの方針ですけれども、まずは資料の1-7-3の5をご覧いただきたいんですけれども、11ページからになりまして、こちらのほうに、先ほど石井委員からコメントをいただきましたレッドリストの評価に使わせていただいた資料を載せております。

 ここのところで、先ほどご説明しました絶滅確率の、100年間における絶滅確率が何%かというものを、既にここで計算しております。ここで使ったデータとしましては、このゼニガタアザラシの調査というのが、30年以上、個体数の調査のデータがありまして、その長年の上陸個体数のデータを基に、増加率などをそこから出しまして、こちらのデータとさせていただいて分析しております。

 ここで二つの資源動態モデルを使っておりまして、プロダクションモデルというのと、密度依存型の齢構成モデルというのを使っているんですけれども、ちょっと私専門家でないので詳しくご説明できないんですけれども、この齢構成モデルのほうは、やはり各年齢段階においての発見率とか自然死亡率などを仮定した形で算出しているんですけれども、こういうものをもう少しデータをとっていければ、具体的な数値を、推定値ではなくて、数値を入れていって計算できるということを考えております。

 今までは混獲されて、死亡してしまった個体を、データとして使うというものを主にしていたんですけれども、それですと当歳ですとか幼獣個体が多くなってしまいますので、データの偏りがありましたので、今後は被害を及ぼすような成獣個体、亜成獣以上の個体も捕獲していくということで、それをデータとしまして使っていきたいと考えております。

 3年間が十分な期間なのかというご質問もいただいたところなんですけれども、まだ何も捕獲手法も確立していない段階なので、3年後に絶対できるという保証はないんですけれども、毎年データを得ながら見直していきながら、よりいいものに近づけていきたいと思っておりますので、こちらに記載のモニタリング項目をとりながら検討していきたいと考えております。

 2番目の新美委員からのご質問、対象区域に関してなんですけれども、こちらの説明が不十分で申し訳なかったんですけれども、資料の1-7-2のこの7ページ目に載せてある図なんですけれども、こちらのほうは北海道のゼニガタアザラシの上陸場について記載しておりまして、本計画の対象区域は、こちらに載せてあるもののうち、襟裳岬のところが対象区域となります。

 ほかの厚岸ですとか、浜中、根室などの地域は今回対象としておりません。ただ、やはり被害がないというわけではなくて、被害がありますので、先ほどちょっとお話しさせていただいたんですけれども、まずはこちらの襟裳岬で手法を確立していきながら、ほかの地域の情報も不十分な点がありますので、情報を得ながら、検討していきたいと考えております。

 新美委員からの二つ目のご質問で、サケの対策は進んでいるけれども、タコはどうなのかというご質問ですけれども、残念ながら、タコに関しましてはまだ情報不足の面もありまして、これからそういう手法等について、できれば研究費も取りながら、研究者と一緒に、また地元と一緒に、対策について今後検討していきたいと考えております。

 3番目の宮本委員のご質問なんですけれども、こちらのほうは狩猟ができなくなってから大分たっておりまして、経験者の方が少なくなっているんですけれども、全くいらっしゃらないというわけではありませんで…。

【事務局】 トド撃ちをやられていた方も、まだえりもにいらっしゃいまして、現時点では、その銃を使うというのは基本ではありません、網を使うというのが基本ですけれども、場合によっては銃という話もあったときに、自分でできるぞというような方もいらっしゃいます。

【事務局】 また、4番目の尾崎委員のご質問なんですけれども、混獲数…。

【事務局】 すみません、混獲数自体のデータがとられているのが、この数年なんですけれども、また、回収に関しましても、やはり漁業の中での回収になりますので、なかなか、お願いベースということになってしまうんですが、ここの数年お願いをさせていただいていまして、かつ、かなり回収率もどんどんよくなっている状況です。

 この数年で見ますと、大体、混獲は数十から100に至るオーダーで推移しています。

 それ以前のことは、わからないというのが正直なところです。

【石井委員長】 山極委員が時間的にそろそろ厳しくなっているようですが、その前に科学委員会の委員長をされている桜井委員から、少しコメントをいただけたらありがたいのですけれど。

【桜井委員】 科学委員会の委員長ではなくて、協議会の委員長なんですけれども。

 まず、生物特性については、過去30年間のゼニガタアザラシについてのデータを全部とっておりまして、道東地方も全部あります。ですから、犬歯を使って年齢査定もしていますし、それから、生殖性も全部調べていまして、成熟年齢等も全部把握しております。

 それから、タコの問題については、これ非常に大きな問題で、あそこは延縄で、空縄といって縄を流しておいて、針がついたものにタコがひっかかるんですね。ですから、アザラシにとっては非常に食べやすい状況になっていまして、頭だけ食べちゃうという被害が起きています。

 これについては漁業者ともいろいろ相談しまして、どこでどういう被害があったかということを今後調べていくという意味では、各船にGPSをつけて、どの船がどこに行ったら被害があったかというデータを蓄積しながら、漁場を変えるということなども検討するということで今は考えております。

 あとはよろしいですかね。また後で補足します。

【石井委員長】 山極委員、何か補足質問はありますか。

【山極委員】 一つだけ追加で。遺伝的独立性が高いということなんですけれど、今後、この個体群が移動したり、あるいは、ほかの個体群からボンと入ってきたりというようなことはあまり想定されていないと。

【事務局】 はい。こちらのほうも25年から27年の3年間の研究費で遺伝的研究をしていただいておりまして、やはり、距離が離れていて、アザラシのその行動圏を考慮しても、遺伝的な分析をしても、流入、あるいは外に出ていくということの可能性は低いのではないかと言われているんですけれども、ただ、そのえりもの地域の個体数が増加していて範囲が広がっておりますので、もしかしたら、その途中途中でほかの場所との交流が今後はあるかもしれないんですけど、現時点では、そういう流入・流出は低いだろうということを聞いております。

【桜井委員】 補足させてください。ゼニガタ自体が非常に行動圏が岩礁域に設定されていて数十キロの範囲しか動かないんですね。ですから、えりもと厚岸のほうからかなり離れていますので、現段階ではないです。

 ですけど、移入ということはあるかもしれない。一時的に親潮に乗って流されてきたり、流氷に乗ったりしてきて、居つくということはありますけれども、移出のほうは非常に少ないと。

 そういう意味では、遺伝的に独立しているように見えるけれども、入ってくる遺伝的な交流はあると思います。以上です。

【石井委員長】 よろしいですか。

【山極委員】 はい。

【石井委員長】 山極委員はご退席されましたが、議決は委員長に一任されました。

 ほかに追加で質問等があったらお願いします。

 はい、磯崎委員、お願いします。

【磯崎委員】 観光利用としての活用というのが書かれているんですけれども、これの具体的な進み具合。今まで希少種として指定されていた間にも、そういう要望とか、それに対して何かあったのかどうか。今後どうかということ。

 先ほど、道東地域の状況も図に出ていたんですが、えりも地域よりも道東のほうが観光地としては既に使われていますので、えりも地域だけではなくて、道東地域における観光利用と、これもどんな状況なのか、わかりましたらお願いします。

【石井委員長】 ほかにないですか。それでは、事務局からお答えいただければと思います。

【事務局】 まず、えりもでの観光の利用ですけれども、陸上から観察できるところに上陸しておりますので、フィールドスコープを使うなどの観察ができる施設が建てられています。襟裳岬に建てられていますので、そこで来ていただいた方に見てもらうというような形態の利用がされていますし、また、えりも町のシンボルのような形で、いろいろな看板だとか、いろいろなところにアザラシが使われているんですけれども、なかなかアザラシをかなり押し出しているかというと、今現時点ではそういう状況ではありません。

 ただ、エコツアーであったりだとか、それから、岩場にシーカヤックで行ってアザラシを観察するといったようなツアーは現時点でも企画されておりまして、今後こういう共存の取組みが進む中で、エコツアーというのも、一つ地域の中での共存のあり方として探っていく流れが今少しずつ出てきているというような状況です。

 道東につきましては、私はあまり…。

【桜井委員】 私のほうから。道東は大黒島とか厚岸なんですが、これは人が入れないところなんですね。ですから、唯一、丘から見えるとすれば襟裳岬だけですので、むしろえりものほうが観光資源としての利用価値は高いということになります。

【石井委員長】 よろしいでしょうか。

 そうしましたら、ちょっとお待ちください。では、小菅委員と、それから石井信夫委員、順番に行きましょうか。お願いします。

【小菅委員】 先ほど、将来捕獲した個体の利用の一つとして、動物園・水族館と挙げられていたんですけれども、ご存じのように、動物園・水族館というのは収容スペースはもう限られていますのでね。

 実は、以前にも傷病で連れてこられるアザラシが結構おりまして、それも本当にたくさん来られて、治癒した状況で、これはもう放してもいいという個体を放そうとすると、やっぱりそれは漁業者の方からは放してくれるなという話になって。一方で、保護してくれた人は、どうして動物園でずっと飼っているんだ、早く離せという板挟みにあって、実は広尾の水族館があったときには、あそこの館長は本当に困っていたんですよね。そういうこともちょっと考慮してほしいのです。

 ヒグマでもそうなんですけど、要するに、人間社会側の理由で駆除しなきゃならないと言っていながら、子どもだけは助けてほしいということで、マスコミがたくさんついてきて、動物園に押しかけるわけですよね。動物園は、これを受け取らないということを、「有害駆除した個体を助けることは、法律的にだめでしょう」という話もするんですけれども、一般市民の方からしたら、そんなの関係のない話なので、「かわいそうだから引き取ってほしい」という話になって、結局動物園は引き受けざるを得なくなり、そうすると、もう動物園としては30年ぐらいは飼育しなきゃならない状態になってくるのです。そうすると、それが動物園での繁殖を止めてしまうという結果となってしまって、繁殖研究ができなくなってしまうという、そういう弊害もあるんですよね。

 ですから、この捕獲してしまった個体の行き先に、動物園・水族館というのは、動物園・水族館側から、こういう繁殖計画があります、こういう飼育計画があるから、その一部をこちらへという申し入れがあれば、それでいいんですけれども、とにかく捕ったものを一部、動物園・水族園へ持っていきますという、この計画レベルの中でこれが入ってしまうと、動物園・水族館の世界は、また板挟みになって困ってしまうと思うので、ちょっとその辺の配慮をしていただければと思います。

【石井委員長】 ありがとうございます。

 では、石井信夫委員、お願いします。

【石井(信)委員】 短くします。この計画なんですけれども、私は、ぜひ策定して進めていただきたいと思います。

 これまでは、先ほど尾崎委員のご質問にもあったんですけれども、幼獣の混獲ということがずっと続いていて、漁業被害が一方であるということで、この種の保全上も非常に問題が大きかったんですね。

 それで、絶滅危惧種なので捕獲もままならないというようなことでしたけれども、この計画ができることによって、そこら辺は、科学的な判断に基づいて適切な保全をしていくということになりますし、漁業者の協力も得られやすくなってくると思います。ということで、この計画は進めていただきたい。

 それから、すみません、ちょっと長くなりますが、ここの地域というのは、捕獲を伴いながら共存を図っていくという事例として、すごく貴重なケースになると思うんですね。普及啓発という面でも、単に絶滅危惧種だから保護するとか、数が多いから減らしてしまうというようなこととは違った、非常にレベルの高い普及教育の材料にもなると思いますので、ぜひ、そういう観点を含めて計画を進めていただきたいというふうに思います。

【石井委員長】 ありがとうございます。

 小菅委員のほうからは具体的な修正のご意見でして、資料の1-7-2の計画案そのものでございますけれども、6ページのところの一番上、小菅委員、それでいいですね。

【小菅委員】 はい。

【石井委員長】 この部分に、「捕獲した個体については、適切な管理のためのデータの収集や動物園・水族館への譲渡も含め」というのがあって、「可能な限り有効に活用する方法を検討する」となっております。ここのところを少し考え直してほしいというご意見だったと思います。事務局からご意見あったらお願いします。

【事務局】 こちらに関しましては、先ほどのご心配のような、無理やり動物園・水族館に引き渡すというようなことは考えておりませんで、ちょっと聞いたところによると、欲しいというところも幾つかありますので、そういうところには譲渡させていただくということを考えておりますが、これをメインにしようということは全然考えておりませんで、なので、これは「希望する水族館への譲渡も含め」などに修正するというのはいかがでしょうか。

【小菅委員】 そうしていただけると非常にありがたいです。というのは、これが出ていくと、とにかく、そうなったときに必ずマスコミがついてきて、動物園・水族館でなぜ受け入れられないんだという話に必ずなってしまいますので、「希望する」という一言を入れていただければ、これはもう、そういうことの誤解が解けますので、よろしくお願いします。

【石井委員長】 では、今の件ですが、そのような方向で修正するという具体的なご意見なんですが、いかがしましょう。事務局側はそれでよろしいですか。

【奥田野生生物課長】 ありがとうございます。言葉についてはちょっと精査をさせていただきたいと思いますけども、先ほどのご指摘にあったように、動物園・水族館というのは、今後、絶滅危惧種、もしくは、その他の種も含めた種の保存という観点での繁殖計画みたいなものを、きちっとした形で我々としても共同してやっていきたいというふうに考えております。そういった計画に基づいて、「基づいた譲渡」といった、そんなような表現を一つ考えながら、また言葉については精査をして、何らかの言葉を加えさせていただきたいと思います。

【石井委員長】 よろしいでしょうか。

 石井信夫委員のほうは、特に修正ということではございませんね。積極的に進めてほしいというご意見だったと思います。

 それでは、時間もかなり押してまいりました。特にご意見がなければ、この議題についてお諮りいたします。

 本計画案ですけれども、一部6ページの一番上の行のところ。具体的な文言のところについては委員長のほうにお任せいただきたいというふうに思いますけれども、例えば「希望する」というような言葉を入れるということで、修正したらどうかというご意見を受け入れたいと思います。

 このような修正を含めましてですが、この本計画案、適当と認めてよろしいでしょうか。

 (異議なし)

【石井委員長】 どうもありがとうございます。それでは、微小な修正については委員長にお任せいただければというふうに思います。

 この計画案ですが、先ほど資料の1-6でございましたように、パブリックコメントにかかります。ここでもまたご意見が出ると思いますけれども、事務修正的なものであれば委員長一任でお願いしたいと思いますが、根本的な修正が必要になりましたら、もう一度この小委員会を開かせていただきたいというふうに考えております。場合によっては通信でやらせていただくかもしれません。そういうことで、この辺はよろしいでしょうか。そのような扱いにさせていただきたいと思います。

 この計画案は、最終的には自然環境部会に答申案として諮るということにさせていただきたいと思います。

 それでは、時間も大分過ぎましたので、2番目の議題に移りたいと思います。

 ニホンイシガメの輸出に係る助言に関するパブリックコメントの結果についてということでございます。それでは、事務局のほうからご説明をお願いいたします。

【事務局】 野生生物課野生生物専門官の寺田と申します。よろしくお願いいたします。

 こちらは、前回10月28日の野生小委員会でご審議いただきましたニホンイシガメの輸出に係る助言の実施方針につきまして、その後、行いましたパブリックコメントの結果報告と、それを踏まえての今後の方針のご報告となります。

 簡単に、前回ご説明しました方針検討の背景ですけれども、このニホンイシガメというものは日本の固有種でありまして、ワシントン条約の附属書Ⅱの掲載種となっております。このため、輸出入の際には、条約で規定する規制の対象となりまして、我が国から輸出する際には、科学当局である環境省が、「当該個体の輸出がこの種の存続を脅かすものでない」という旨を、条約の管理当局であります経済産業省に助言することによって、またそのほかの要件を満たすことによって初めて経済産業省から輸出許可書が発給されるというものになります。

 したがって、この科学当局からの輸出助言の方針を決めるということは、実質的な輸出規制につながるということになります。

 平成25年にこのニホンイシガメが附属書Ⅱに掲載されまして、それ以降、輸出申請の数から輸出個体数が把握できるようになったのですが、平成25年8月から平成27年9月に約2万8,000個体が輸出されており、特に近年増加していること、一部の地域における捕獲個体の輸出が多いことから、地域個体群、あるいは局所個体群絶滅のおそれが懸念されることを踏まえて、輸出助言の実施方針を検討致しました。

 このニホンイシガメの生活史の特性としまして、数年で繁殖可能となり、その後、長寿命で繁殖し続けるという点が挙げられます。これらを踏まえて様々な検討をした結果、(輸出助言)実施の方針案としまして、サイズが小さい未成熟個体と飼育繁殖個体についてのみ助言を行うという方針について先般ご審議いただき、パブリックコメントにかけました。

 早速、パブリックコメントの結果ですけれども、お配りした資料をご覧ください。

 合計、意見提出者45人の個人または団体からご意見をいただきまして、延べ有効意見数は77件となっております。

 主な意見と意見数ですけれども、まず、表の1枚目の2番ですが、本案にほぼ賛成しますというものが4件ございます。その後は、意見の多い順に記載しておりますが、「全ての輸出に助言すべきでない」、「飼育繁殖個体であっても、野外捕獲個体と同じように一定サイズ以上は助言すべきではない」といったご意見をいただいております。

 資料を1枚めくっていただきまして、主なご意見につきまして、意見要旨と意見に対する考え方について、簡単にご報告いたします。

 本案に賛成するというご意見についてはそのままですが、2番、全ての輸出に助言すべきではない、または、3番、4番、同じように、野外捕獲個体は全て助言すべきではないといったご意見につきましては、現在のニホンイシガメの生息状況及び取引状況から考えまして、全ての輸出あるいは野外捕獲個体の全ての輸出を止めなければ種の存続が脅かされる状況にはないと判断されることから、今回提案した助言方針で実施して参りたいと考えております。

 また、飼育繁殖個体についてもサイズ規制をすべきというご意見の背景には、その理由としまして、「飼育繁殖個体であることを見抜くことができるのか」 、「サイズによる規制を飼育繁殖個体と野外捕獲個体とで分けてしまうと、虚偽申請のおそれがあるのではないか」というご意見がセットで述べられることが多かったのですが、これにつきましては、飼育繁殖個体については、しっかりと、飼育繁殖施設での繁殖記録の台帳、飼育繁殖施設の写真・図面ですとか、必要に応じて、任意となりますが、我々が実際に施設を見に行かせていただくといった形で、かなり慎重に確認を行い、問題がないと考えられる場合のみ、輸出を認めるという方針です。そこの部分は、しっかり確認して参りたいという回答となっております。

 その他、重要なご意見として認識しておりますのが、「今回、この方針でやったとしても、あくまで種の存続の状態に応じて適切な助言をしていく必要がある」という点で、表の8番、「今後もモニタリングを実施し、そのデータを用いて再評価を行うべきである」ですとか、「もし実際にシミュレーション以上の個体数が、たとえ小さいサイズのみであっても輸出されていたら意味がないではないか」と、非常にごもっともなご意見をいただいております。また、表の12番のご意見ですが、今回の予測モデルやシミュレーションでは、前回の審議会でもご指摘がありましたが、非常に単純な、現在想定可能なパラメータでできる範囲でのシンプルなものとなっておりますので、実際の生息環境としましては、生息地の改変ですとか、輸出以外の国内利用のための捕獲圧、外来種との競合といった、シミュレーションには含まれていない負の影響というのも当然ございます。今の時点で数値で出せるものではございませんが、そういった負の影響の存在は認識しておりますので、それらの影響も踏まえ、引き続き生息状況及び取引状況というのをモニタリングした上で、適切な助言の方針を検討し続けていく必要性があると認識しております。

 また、今回の制度を行ったことによる影響というところで、密輸出を企てる者が出るのではないかというご意見もございまして、こちらにつきましては、関係当局を通じて全国の税関等に、今回設定した(助言方針の)ルール、密輸のおそれ、引き続き水際規制にお努めいただきたい旨について、周知を図る予定で調整を続けております。

 以上、簡単になりますが、このような多くのご意見を賜って、これらをしっかり踏まえて制度を運用していくという前提のもと、今後の方針としましては、当初案のとおり、今後当分の間、ニホンイシガメの輸出申請に対しましては、野外捕獲個体の場合は、背甲長8cm以上の個体については輸出助言は不可、背甲長8cm未満の個体については助言可としまして、飼育繁殖させた個体については、体サイズを問わず助言可と考えております。

 また繰り返しになりますが、違法輸出の取締強化に向けた関係者への周知、継続的なモニタリング及びその結果に応じた対応等を、引き続き検討してまいりたいと考えております。

 以上、報告となります。

【石井委員長】 ご説明ありがとうございました。

 ということで、パブリックコメントの結果と、それを踏まえて、このような条件でというご説明がございました。

 それでは、ただいまのご説明、意見ございましたらお願いします。

 では、尾崎委員、お願いします。

【尾崎委員】 前回ご説明あったと思います。たしか、これは食用に供するものですね。そうしますと、当然大きいほうがいいわけですよね。

 それで、サイズの問題、いろいろ検討されているようですが、16番の意見で加工品がどうのこうのと書いてありますが、食用であれば加工品になっちゃう可能性がかなりあると思うんですね。そうすると、サイズは検討できませんよね。その問題が今後生じる可能性がないと考えておられるのか、あった場合に何か検討できるというふうに考えておられるのか、ちょっとそこのところを確認したいんですけれども。

【石井委員長】 では、ほかにありますかね。先に聞いておきたいですけれども。

 なければ、では、事務局からご説明お願いします。

【事務局】 ご意見ありがとうございます。

 加工品についてですけれども、おっしゃるとおり、今回の規制は、個体を前提としたものになっております。(輸出申請の)手続きにつきましては、環境省の文書ではなく、経済産業省の輸出の貿易管理令に関する通知を変更していただく必要がございますので、経済産業省において、まず個体についてはこのような書類を出してもらうとか、このようなルールとしますというのを通知に記載してもらうよう調整しております。加工品につきましても、今後、(通知を)変える必要があれば、そこに盛り込んでいくことになるのですが、現時点では(ニホンイシガメの)加工品の輸出の申請というのは承知しておらず、今回の制度につきましては、あくまでも生死を問わず「個体」に限ったものとすることを考えております。

 今後、ニホンイシガメの加工品を輸出しようという動きが見られましたら、その際には改めて検討する必要があるものと考えております。

【石井委員長】 尾崎委員、そういうことでよろしいでしょうか。

 ほかはご意見等ございますでしょうか。これは報告事項ですので、ご説明のとおりということでご理解いただければと思います。

 今日の議題は以上2件です。次はその他ですけれども、この機会に何か委員の先生方ございますでしょうか。

 事務局のほうは、何かございますでしょうかね。特にないでしょうか。

 そうしましたら、最後ですけれども、奥田課長、お願いします。

【奥田野生生物課長】 野生生物課長の奥田でございます。

 本日は、極めて熱心なご議論をいただきまして、ありがとうございました。

 私自身も、このえりものほうは10月に現場のほうを見させていただいて、漁業者の方々の参加する協議会、桜井先生が委員長を務めていただく協議会にも参加させていただきました。

 ご承知のとおり、改正鳥獣法に基づく希少種の管理計画ということでは、初めてのケースというふうになります。そういう意味では、これは新しい取組みで、まさに我々がこれからやろうとしている、いわゆる、英語で言うと、アダプティブマネジメント、試行錯誤しながら科学的データに基づいて、また、その社会学的な地域の経済への影響みたいなものを見ながらマネジメントをしていくということで、ある意味、これは本当に新しいチャレンジの部分だと思います。

 今日ご指摘いただいた問題、一つ一つ重要な問題だと思いますので、そういったことを踏まえて、まずは管理計画をつくって、具体的にマネジメントをスタートさせるというところが大切かと思いますので、また引き続き、この後、個別の案件、さまざまな形でまたご意見をいただく機会があろうかと思いますけれども、その際にもいろいろ貴重なご意見をいただけたらありがたいと思います。そういう意味で、また今日のご議論を踏まえて、進捗状況について、いろいろ関心を持って見ていただけたらありがたいと思っております。

 また、イシガメのほうも、輸出入の問題、さまざまな来年のワシントン条約の締約国会議に向けて、さまざまな問題が出てくるかと思いますけども、その点も我々として最大限の努力をしていきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。

 本日はどうもありがとうございました。

【石井委員長】 ありがとうございました。

 それでは、以上をもちまして、本日の委員会は閉会といたします。

 どうも皆さん、お疲れさまでございました。

議事

【事務局】 予定の時刻となりましたので、中央環境審議会自然環境部会野生生物小委員会・鳥獣の保護及び管理のあり方小委員会合同会議を開催いたします。

 本日は、所属の委員、臨時委員10名のうち8名のご出席をいただいておりますので、中央環境審議会議事運営規則による定足数を満たしており、本委員会は成立しております。

 続きまして、お手元にお配りしております資料の確認をさせていただきます。

 資料が、議事1関係で資料1-1から1-3、参考資料1-1、1-2、議事2関係で資料2-1から2-3、参考資料が2-1から2-3となっております。議事3関係、こちら資料3-1から3-4と参考資料3。続きまして議事4関係ですが、資料4、資料5-1から5-4、資料6、資料7となっております。不備がございましたら、事務局までお申し出ください。

 次に、先月、環境省の人事異動がございましたので、簡単にご紹介させていただきます。

 まず、自然局担当の大臣官房審議官に米谷が就任しております。続きまして、自然局総務課長に永島が就任しております。続きまして、野生生物課長に堀上が就任しております。最後に、鳥獣保護管理室長に西山が就任しております。

 それでは、局長の亀澤よりご挨拶を申し上げます。

【亀澤自然環境局長】 本日はお忙しい中、合同の小委員会にご出席をいただきまして大変ありがとうございます。

 本日、議題として、諮問案件が3件と幾つかの報告事項を用意しております。1つ目の諮問案件は、種の保存法に基づく国内希少種の追加及び削除についてであります。これはタカの仲間のチュウヒ、渡り鳥のヘラシギとシマアオジという鳥類3種を新たに指定すること、並びにオオタカを解除することについてお諮りするものでございます。オオタカの解除につきましては、前回5月の小委員会の後、パブコメを実施しておりますので、その結果とともにご説明をしたいと思います。

 諮問案件2つ目は、鳥獣法に基づく基本指針の改正についてであります。これはオオタカにつきまして、種の保存法に基づく国内希少種を解除した後、鳥獣法のほうで捕獲や販売等を規制することを考えておりますので、その具体的な取り扱い方針についてお諮りをしたいと考えております。このため一つ目の国内希少種の解除と一体の案件として説明をしたいと思います。

 それから諮問案件の3つ目は、対馬に生息するシジミチョウの仲間であるツシマウラボシシジミの保護増殖事業計画の策定であります。これは、今年1月に国内希少種に指定をしたツシマウラボシシジミについて、農林水産省とともに種の保存法に基づく保護増殖の計画を新たに策定するものであります。

 ツシマウラボシシジミは、シカの食害で食草が減少していること等によって生息状況が著しく悪化していることから、地元を中心に保護増殖の取組が進められておりますが、改めて国として計画を策定することで保全を強化していきたいと考えております。

 諮問案件は以上でございますが、そのほかの報告事項として、さきの国会で改正されました種の保存法の施行に向けたスケジュールについて、それからヒアリへの対応、さらに対馬のカワウソの件、そして慶良間諸島のトカゲモドキの仲間を緊急指定種とすることについて、それぞれ簡単にご説明する予定でございます。

 限られた時間ではありますけども、忌憚のないご意見をいただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【事務局】 それでは、この後の議事進行につきましては、野生生物小委員会の石井委員長にお願いしたいと思います。

【石井(実)委員長】 皆さん、こんにちは。野生生物小委員長の石井でございます。進行役を務めさせていただきます。

 本日は、議事次第にございますように、先ほど局長からご説明があったように諮問案件3件でございます。3件とも中身が濃いものなので、議事進行にご協力よろしくお願いしたいと思います。

 まず、1つ目と2つ目ですが、これはいずれもオオタカの種指定解除に関するものでございまして、続けて説明を受けた後に、質疑応答をさせていただきたいと思います。

 では、最初の諮問案件、国内希少野生動植物種の追加及び削除について、内容の説明を事務局からお願いいたします。

【説明者】 それでは、審議案件1つ目、国内希少野生動植物種の追加及び削除についてご説明いたします。

 種の保存法の政令改正が必要な案件ですので、国内希少種の追加、そして削除について、あわせて一旦ご説明いたします。その後、鳥獣保護管理法上の対策をお話しするという流れになっております。よろしくお願いいたします。

 それでは、簡単に背景をご説明いたします。我々が通称種の保存法と呼んでいる法律に基づきまして、国内希少野生動植物種を定め、その捕獲、譲渡、陳列等を禁止することより、種の保存を図っております。

 我々環境省が実施している実態調査や、毎年行っております国民に広く意見を問う提案制度等によって、我々で実情を把握した上で国内希少種の候補種を選んでいるという流れです。

 平成26年に取りまとめました保全戦略におきましても、2020年までに国内希少種の300種追加指定を目指すことを明記しておりますので、年間40から50種程度新たに指定をしているところです。今回は一部鳥類について先に検討をしたものでありまして、鳥類につきましては、既に鳥獣保護管理法により捕獲等が禁止されておりますので、種の保存法上で指定をする際は、フラグシップ種など、特に指定の必要性が高いものを検討してまいりました。

 今般、一部の鳥類についての生息状況等が得られましたので、次のページから始まります、ヘラシギ、チュウヒ、シマアオジの3種について、種の保存法に基づいて国内希少種に指定するとともに、同様に指定をする必要性が比較的低くなってきたものとして、オオタカの解除を進めていきたいと思っております。

 経緯と予定ですけれども、今回、種の保存法の、国内種追加と削除、両方につきまして、検討会を平成29年4月に行っております。それらの意見も踏まえまして、7月から8月最初にかけて、パブリックコメントを1カ月間行いました。今後、まだ予定ですけれども、施行されるとなれば9月後半を予定しているところです。

 それでは次のページをご覧いただきまして、今回追加をする3種について、簡単にご説明したいと思います。

 1番目のヘラシギと、3番目のシマアオジにつきましては渡り鳥となっております。とりわけヘラシギについては、日本で繁殖をするわけではなくて、春と秋の渡りの時期に利用をする形になっておりますけれども、IUCNのレッドリストでも、2005年から2013年までの越冬地における現地調査結果に基づいた推定で越冬数が200から300という推定がありますとおり、世界的にも絶滅のおそれがあると認識されております。

 一方でシマアオジにつきましては、北海道の一部でしか繁殖が確認されておりませんが、環境省で行っておりました自然環境保全基礎調査結果に基づきますと、確認されている地点数が70%低くなっているという結果が得られており、1990年代にかけて急減したと考えられております。そして環境省のレッドリストでもCRと一番高いランクに評価されておりますので、北海道全域で減少していたことがわかります。この両種につきましては、日本だけでなくて、渡りの途中の各国と連携を進めながら保全対策を実行していくことで、今後の日本、もしくは世界中の個体数の回復が見込まれるだろうということで、日本の種の保存法の国内希少種に指定をして、アピールをしていくという意義も込めて、今回指定に至っているものです。

 そして2番目のチュウヒになりますが、こちらはまた先ほどの渡りの鳥とは違って、ヨシ原やササ原が広がる主な繁殖地において、開発による消失、乾燥や地盤沈下によって衰退の影響を受けている鳥になっております。

 先ほども申したとおり、鳥獣保護法で既に捕獲等が規制されておりますことから、今回この種につきましては、湿原環境のアンブレラ種として位置づけられると考えておりまして、現在減少傾向にいる他の草原性の鳥類全般を同時に保全できるという、極めて種の指定の必要性が高い種であると判断し、指定をすることを考えております。

 最後になりますが、資料が飛びまして、参考資料1-1をご覧いただきますと、今回指定に関してのパブリックコメントの意見が掲載されております。基本的には今回の指定に賛成をするとともに、ただ指定するだけでなくて、今後各国との連携を進めていくようにという強い意向がございました。我々としましても、そのために指定をしたというのもございますので、いただいたご意見を参考にしながら、現地調査の実施を含め、追加指定する種の保護対策を検討してまいりたいと思っております。指定につきましては以上です。

【石井(実)委員長】 ありがとうございました。では、続けてお願いします。

【説明者】 続きまして、今度はその国内希少種の解除につきまして説明させていただきたいと思います。説明はパワーポイントの資料と印刷したものを、お手元に資料1-3としてお配りしております。あと、参考資料の1-2はパブリックコメントの結果をつけておりまして、そちらを使って説明させていただきたいと思います。

 まず、これまでの経緯についてご確認させていただきます。オオタカにつきましては、平成24年に第4次レッドリストでNTと評価されて、平成25年の野生生物小委員会から本格的な検討を開始したところでございます。なので、もう5年ほど検討を始めてから経っていることになります。その後パブコメを実施して、平成25年の7月、パブコメの結果について野生生物小委員会で報告をさせていただきまして、その後、平成25年から平成26年にかけて3つのシンポジウムを経て、いろいろご意見をいただいてきたところです。

 平成26年10月の野生生物小委員会において、指定解除するという方向性については既に合意をいただいたところですが、指定解除後の保全策については、もう少々広く、きちんと説明する必要があるといったご指摘を受けたところです。それを踏まえまして、平成28年の1月から3月にかけて指定解除に係る意見交換会を開催し、その後ホームページ上でも意見募集を行いました。その意見を踏まえた各種の対策を検討してきまして、平成29年5月22日、前回の野生生物小委員会において、検討結果や指定解除後の対策等を示した上で、解除についての政令施行案について、一同ご了承をいただいたところになります。

 その後、7月4日から8月3日かけてパブリックコメントを実施し、その結果を踏まえまして、今回解除についてご審議いただくこととしております。

 続きまして、パブリックコメントの実施結果についてですけれども、こちらは、国内希少種の追加及び指定解除にあわせまして、鳥獣法の施行規則の一部改正と基本指針の一部改正、その2つのパブリックコメントを同じタイミングで実施しております。パブリックコメントの実施に当たっては、前回の5月22日の野生生物小委員会で示した資料を添付しておりまして、そこには指定解除後の環境省の方針や解除後の対応、これまでいただいた意見に対しての環境省の考え方などを記載しており、それに関して意見をいただいております。

 募集期間は、7月4日から8月3日の約1カ月間。提出方法は電子メール、ファクス、郵送になっています。この提出数は指定解除に係るもののみを抜粋した数字になっていますけれども、国内希少種の指定解除につきましては、45通のメール、FAX等でいただいており、その中に複数意見が含まれていることから、合計で97件、意見をいただいております。

 鳥獣法の基本指針に関しましては、21通で38件。これらをあわせますと、全部で66通、135件の意見をいただいております。その意見の結果についてまとめたものが次のスライドになります。

 これまで何度も意見をいただく場を設けてきておりまして、概ね同じような意見を今回もいただいた形になっていますけれども、まず国内希少種の方でいただいた意見についてまとめさせていただいたものを紹介させていただきます。まずは、その解除に関しての意見ですが、指定解除の根拠で、例えば個体数や調査に対する疑問等については18件の意見をいただいています。その他地域差、ここの地域では増えているけど、この地域では減っていると、そういったものを評価すべきだといった意見が13件。あとは解除への意見は、解除することは当然だと、もしくは、その解除は反対だという、解除そのものへの意見が4件来ております。

 続きまして、解除する際の対応に関する意見ですけども、鳥獣法に関しては、今回同時に鳥獣法のほうのパブコメも実施しているというのもあって、それについては3件のみ来ております。里地里山につきましては、保全の必要性等についての意見が16件。開発に関しては、開発が進行するのが心配だといった意見を8件いただいております。次は、「猛禽類保護の進め方」について、法的な担保をとるべき、や周知徹底をすべき、といった意見を4件いただいています。次に、モニタリングにつきましては、その箇所数が少ないといったような意見が10件。次に、再評価・解除の手順を明確化するべきとか、再指定するということに効果があるのかといった点について4件、意見をいただいています。

 次に、都道府県にきちんと指定解除後の運用について周知をすべきだといったような意見を3件いただいております。その他、オオタカの識別マニュアルや小委員会のことに関しての意見など、全部で14件いただいております。

 次に、お手持ちの参考資料1-2を見ながら、いただいた意見の代表的なものを踏まえて、環境省の考え方をご説明させていただければと思っております。お手持ちの参考資料1-2になります。最初にいただいた意見は、環境省がこれまでやってきた調査に関しての結果が不十分じゃないかと。これで評価というのは、本当に正しいのかという疑問の声をいろいろといただいております。

 そこにつきましては、環境省としては、これまで実施してきた調査の結果であったり、アンケート、文献調査等を踏まえまして、今の時点で全国の生息個体数は2,000羽以上いるだろうとは推定されておりまして、その後も各県に話を聞いたりして、全国的に大きな減少は見られないと考えておりますことから、環境省としては基本指針に示す国内希少種の指定基準には該当しないと判断しています。

 その指定解除の根拠となるものについて、最初は、昭和59年の日本野鳥の会の推定個体数をもとに平成3年の最初のレッドリストをつくった際に、オオタカはV、今でいう絶滅危惧Ⅱ類(VU)と評価をされております。平成8年の調査結果も、まだ1,000羽以上と、ぎりぎりぐらいだという数が出ましたが、そこでも10年の第2次レッドリストでは変わらずVUと評価されています。その後、平成17年の調査で1,824から2,240羽という環境省の調査結果が出ておりまして、そこを踏まえて平成18年、翌年の第3次レッドリストでは準絶滅危惧(NT)に下がっています。平成20年の調査においても、その論文等の推計値を足し合わせたり、実測値をかけたデータを含めると、少なくとも平成17年の数値以上は確認されているということで、平成24年の第4次レッドリストでもNTが続いているということになっております。

 また、そういった状況を踏まえまして、環境省で示している、基本方針のア、イ、ウ、エで書いてある四つの基準にオオタカは該当しないと環境省としては考えておりまして、今回指定解除を図りたいと考えているところです。

 次に、解除した後の対応についてのご意見も多数いただいております。これが、これまで審議会であったり、意見交換会で示していた環境省の対応を少しまとめたものになりますけれども。そのうち、1、2、3につきましては、鳥獣法の規制に係る部分で、これまで対応として示させていただいていた部分で、これはこの後、鳥獣法に関わる部分として別途説明させていただく予定にしています。

 ④、⑤につきましては、参考資料1-2で書いてあるものを抜粋してまとめたものになっております。説明は資料でさせていただきたいと思います。

 まず、質問のナンバーの39番から里地里山に関する意見を集約しております。ここに多く意見をいただいているのは、オオタカを希少種から外すのであれば、例えば42番のように、オオタカがこれまで担ってきた役割を代替する新たな法制度を整備するべきであるというような場の保全ということに関しての意見を多くいただいております。

 これにつきましては、現行制度の中で場の保全についてすぐに対応できるかというところはありますが、今後の業務の参考とさせていただくとともに、本年6月に成立した種の保存法の改正法で、里地里山など二次的自然に生息する種を想定しまして、販売・頒布等の目的での捕獲等及び譲渡のみを規制する、特定第二種国内希少野生動植物種という制度を今回新たに創設しております。

 これは特に里地里山に生息するような種を対象としておりまして、既存の国内希少種に加えて、この特定第二種というものの指定を申請することによって、二次的自然に生息するような野生動植物種の保全を図っていきたいと考えているところでございます。

 続きまして次のページの、ナンバー55からの開発に関する意見でいただいているところになります。これは56番のように、開発の歯止めになってきたオオタカの希少種指定解除によって、開発がまた進むことになるといったような懸念に関する意見を複数いただいております。こちらにつきましては、指定解除されたとしてもオオタカはその生態系の上位種であります。また、そのオオタカの保全措置については、猛禽類保護の進め方の方でまとめて示していることから、この猛禽類保護の進め方を引き続き活用してもらうよう、関係省庁や都道府県等に周知を図っていきたいと考えているところでございます。

 次のページの63番からの、猛禽類保護の進め方に関する意見も同様に、その周知を図っていくということで努めてまいりたいと考えております。

 続きまして、67番からのモニタリングに関する意見につきましてです。こちらは68番に書いてあるように、定期的なモニタリング調査を、もう少し広く正確に行う必要があると思うといったような、今実施しているモニタリング地点が少ないのではないか、また、十分ではないのではないかといったような意見をいただいております。こちらにつきましては、これまで環境省で示してきた地点というのは、有識者の意見も踏まえまして、環境省の過去に調査を実施してきている場所で、指定解除後の生息状況も定量的に把握できる可能性の高い箇所ということで、これまで示させていただいてきたところです。

 ただ、より効率的、効果的に長期間の生息状況を把握するための調査手法、モニタリング箇所につきましては、引き続きまして有識者の意見を踏まえながら決めていきたいと考えております。また、都道府県による調査に関しては、鳥獣保護管理計画の作成に際しまして、基本指針において調査方針を示しているところでございます。

 続きまして、次のページの、都道府県に関する意見ということで81番からのところになります。こちらは82番に書いているとおり、国が指定解除をすることに連動して、都道府県レベルでしっかり対応してもらうようにしてほしいというような意見も寄せられております。こちらにつきましては、地域によって生息状況が違っている場合には、都道府県でもある程度、生息状況の把握等を対応していくことになると考えておりますが、例えばレッドリストの改定や猛禽類保護の進め方の活用といったことに当たっては、引き続き周知を図っていきたいと考えているところでございます。

 種の保存法に関する部分については、現在いただいた意見に対する対応は以上です。

 続きまして、鳥獣法に関する対応に入らせていただきたいと思います。

【説明者】 鳥獣保護管理室の野川といいます。私からは、種の保存法の国内指定野生動植物種を外れるオオタカについて、鳥獣保護管理法での対応として、どのように進めていくかということについて、また、これに伴って施行規則の一部改正、基本指針の改定も行うことについてご説明をさしあげながら審議に入りたいと思っているところです。参考資料2-3をお手元に寄せながらお聞きください。

 まず先程もお話ししましたけれども、パブリックコメントにおいて、鳥獣保護管理法の施行規則の改正と基本指針の改定について21通、38件の意見をいただいております。意見の中では、種の保存法のパブリックコメントへの意見とほぼ同質のものもいただいております。これにあるように、希少鳥獣解除に関する意見ということで賛成1件、反対29件とありまして、多くの理由については、先ほど種の保存法の方で説明したものと同一のものがほとんどですが、鳥獣法に係るものとしては鳥獣保護基本指針に定める要件から希少鳥獣と認められる、要するに希少鳥獣と認められるから削除するのはおかしいという意見を2件いただいております。

 そのほか、鳥獣法としていただいている意見としては、その他施行規則改正案の修正提案意見として、今、輸入規制鳥獣を亜種指定していますけれども、輸入規制鳥獣を種指定すべきとするという意見をいただいているところです。

 それから基本指針の変更案についての修正提案として、都道府県によるオオタカ調査を追加するという意見をいただいているところです。

 参考資料2-2別紙に、パブリックコメントの意見に対して、その意見と回答をお示ししていますけれども、紹介した意見の中では、24、25番が計画的な保護、管理がまだ必要である種であることから、希少鳥獣指定解除に反対するという意見になっております。

 それから31番が輸入規制鳥獣について亜種指定ではなく種指定が妥当とする意見になっております。それから33番が都道府県によるオオタカの調査について基本指針に記載すべきという意見になっております。それぞれについて説明しながら言及していきたいと思います。

 スライド3ページ目、4ページ目に移っていきますけれども、捕獲の規制、それから流通規制、それから輸出入の規制について種の保存法にあるものを、鳥獣法で対処できるものについて対処していきますということにしております。

 まず3ページ目ですけれども、鳥獣法において、種の保存法が解除されても引き続き捕獲は規制されます。ただ今回、省令を改正しまして希少鳥獣の指定を解除することによって許可権限が都道府県に移るとなっております。都道府県に移りますと、都道府県がそれをどう許可するかという基準を設けますが、その方針を今回議論いただく基本指針の中で改定することにしております。

 それから、愛玩飼養目的の捕獲を許可されないとありますが、飼う場合については足環装着があり、また捕獲後飼う場合へのルール・考え方についても、今回基本指針で示すことにしております。詳しくは後でご説明いたします。

 流通規制について言いますと、今回種の保存法から外れますが、新たに鳥獣法での販売禁止鳥獣というのを指定しまして、運用していく予定です。販売禁止鳥獣の場合は、販売目的を限定しまして、その中で許可制にして販売するというような形になります。これも後ほどご説明さしあげます。

 それから輸出入の関係ですけれども、こちらについてはオオタカがワシントン条約種であるということで、そもそも外為法による規制がかかっておりまして、輸入・輸出については手続が必要な種となっております。今回鳥獣法では、輸入された日本亜種について足環をつけるということを義務づけられるようにしております。これについても後ほど説明したいと思います。このような形で、捕獲、流通、輸出入について、種の保存法からおりてきたものについても鳥獣法で対処とするというような形になります。

 次に、スライドの6ページ目をご覧ください。施行規則を一部改正して、今回種の保存法の指定種から外れるオオタカについて、希少鳥獣も外すという形にしております。これについては、希少鳥獣とはまず何かといいますと、平成11年の鳥獣法改正で定義されたものでして、地方分権の中で国と都道府県の行政事務、役割分担というのがありますけれども、希少鳥獣は捕獲に係る申請手続の関係等を国が行うものになっております。希少鳥獣から一般鳥獣に変わることによって、規制関係の手続を都道府県が行うことに変わります。

 パブリックコメントでも、希少鳥獣の要件にまだ合うのではないかという意見が出ておりますけれども、それに対しましてはここに書いてあるとおり、希少鳥獣の定義については絶滅危惧種であることということと、絶滅危惧種を外れたものの中でも保護管理の手法が確立されていないものに関しては希少鳥獣にあるということが書いてあります。オオタカは保護管理の手法が確立されてないかどうかということですけれども、これについては猛禽類保護の進め方というところで、これまでも各種開発行為に対してどう保全策をとるかということについて、考え方については取りまとめられてきたところではあります。また、そういうことについて、保護のための手法というのを示しているところがあります。

 また、今回基本指針で、捕獲に関しては管理目的の捕獲に関する許可の考え方を示したり、省令改正のほうで販売禁止鳥獣に指定したり、特定輸入鳥獣に指定したりというようなことで、流通規制を行うということで一定の保護担保措置はとられていると考えますと、オオタカは希少鳥獣に該当しないと考えておりまして、今回外すものです。

 希少鳥獣から外れたものについては守られないのかというと、そうでもありません。次のスライド7番です。一般鳥獣となっても捕獲関係は都道府県で規制されて、許可をとらなければいけないというのもありますし、考え方の中でここに書いてあるのは、鳥獣保護管理法の基本指針に示しているものですけれども、全国的な観点から希少鳥獣に指定されない一般鳥獣においても、各都道府県でレッドリストに掲載されている種については、捕獲許可の基準の設定や、鳥獣保護区の指定の際に、きめ細かい配慮を行う必要があります。必要に応じて特定計画に基づく保護管理を図る必要があることを、既に基本指針に示しているところです。

 こうした配慮については、都道府県において鳥獣保護管理事業計画の中でその方針を示しますけれども、その際にも都道府県は鳥獣の生息分布調査などで分布や繁殖状況の調査を行うということも基本指針にあわせて示していますので、都道府県におけるオオタカの数に応じて対処できると考えているところです。

 続きまして特定輸入鳥獣の指定についてですが、特定輸入鳥獣については、輸入後速やかに環境大臣から足環の交付を受けて装着しなければいけない鳥獣となります。これは国内に入ってきたオオタカが対象です。この足環は適法で海外から入ってきたことを示すものです。これは何かというと、海外から輸入したと言い張って、国内の違法個体というのを持っている場合があり、これをなくすために、海外から入ってきたものについて足環をつけるということを行います。

 これについては、パブコメでは日本産亜種じゃなくてオオタカ、海外産の亜種も含めた種オオタカとして規制を組むべきではないかという意見が出ておりました。これも説明しましたとおり、国内での違法捕獲を助長させないように実施するものですので、日本産亜種の流通を規制する内容であるから、日本産亜種につけることをしています。仮に海外産のものについては、識別マニュアルがありますので、外部形態から識別して、これは日本産のもの、これは外国産のもの、と確認できるということです。万一、外国産と言い張っても、外部形態から日本産のものとわかれば、ちゃんと合法的に入手していないということが言えるというような形になります。

 なお、輸出規制というのは今回加えないことにしております。文字が2行目で「種出国」となっておりますが、「輸出国」の間違いですので訂正ください。ワシントン条約の場合は、ワシントン条約種の場合は輸出規制、輸入規制に関しては鳥獣法よりも厳しい規制がかかっておりまして、鳥獣法では対処をしない個体の部位についても規制があります。その関係があり、今回輸出規制については鳥獣法をかけないという形で進めております。

 次に、基本指針に話を移したいと思います。

 まず基本指針は何かと言いますと、今回希少鳥獣から外れるオオタカについては、その捕獲許可の手続が都道府県で行われることになります。都道府県で、捕獲など許可基準を定めているのが、鳥獣保護管理事業計画と呼ばれる、都道府県でつくる計画になります。基本指針は、それを策定するための方針を示すもので、都道府県は今回議論する基本指針に即してオオタカの捕獲許可基準を加えていく、鳥獣保護管理事業計画を改定することとなります。

 その基本指針に何を示すかということで、10ページ目です。まずオオタカの保護管理に関する共通的な取り扱い方針を示していきます。オオタカについては、今、亜種ではなくて海外亜種ですけれども、その輸入が大体100羽ぐらい入ってきております。インターネット等を見ていますと、1羽当たり40万円等という高額で取引されています。これが、日本産のものが普通に一般流通されるとなると、かなり高額な形で取引されることが予想されますので、今回それを抑えていこうということを示すのがこの部分になります。

 現在、鳥獣の特性に応じた保護管理の考え方というところで、保護について特に配慮が必要な鳥獣と記載しているところがありますけれども、ここにオオタカについて特記します。前段、赤い字で書いてある6行がそれに当たりますけれども、前段は種の保存法で守られてきた経緯、経過ですとか、それから外れるということについて書いてあります。中盤からは、外れることになる、解除されることになったが、海外産のオオタカも流通動向から高い市場価値が認められる種であることが考えられるため、オオタカの違法捕獲等の助長を防止する措置を講ずることにより、継続的な保護管理に努めましょうと書いているという形です。ここは全体共通する取扱方針です。

 次に、捕獲の際の許可基準の考え方について示しております。都道府県が参考とする内容として、ここに特記しておりますけれども、まず種の保存法の国内希少野生動植物から指定解除されるオオタカについて、鳥獣の管理目的での捕獲を原則認めないと。それから一般的な流通をなくしていくということで、捕獲個体を飼養する場合には、公的機関による飼養を前提とする場合に限り認めると、こういうような方針を書き込みます。

 ここでいう管理目的の捕獲ですけれども、鳥獣法の中では被害防止目的の捕獲というのと、数の調整目的の捕獲というものが、これに該当します。今回該当してくるのは被害防止目的の捕獲ということで、オオタカによって害を得ているという者が、オオタカをどうにかしてくれと、これを捕獲したいという場合に捕獲申請がされる。その申請に対応する内容になります。書き込む内容については、赤字の部分になります。書き込む場所は、許可基準を書き込む中でも保護の必要性の高い種、または地域個体群に係る捕獲許可の考え方というところに、この赤字の7行を書き込むことにしております。

 まず、先ほどもお伝えしましたが、管理目的の捕獲を原則として認めないとします。ただ、原則認めないという中でも、全く認めないとすると、いろいろ課題が生じ、どうしてもやっぱり捕獲せざるを得ない場合というのが出てきます。それに対しては、何でも許可をするのではなくて、被害防除対策を講じても被害が顕著である、それから被害を与える個体が特定されている場合には捕獲を認めるとしております。

 オオタカからの被害としては、よくハトの被害というのがあります。飼っているハトが、オオタカがハト小屋に入ってきて食べられてしまうこと等がありますが、そういうのに対しても、都道府県に申請をするときに、まずハト小屋に入られないように対策を講じてくださいとか、あとは、なかなか外で飛んでいるときに守るのは難しいところですが、オオタカは朝に餌をとるので、時間をずらしてそれに対処してくださいとか、ということも対処をお願いします。そうしたとしても、まだ被害が与えられているという場合には、それがもうこの個体ですと特定されている場合に限り捕獲を認めますと、そういう内容を書き込んでいるところです。

 また、一般流通を避けるというときに、捕獲した個体、そもそも愛玩飼養、ペット目的の捕獲というのは認めませんと言っていますが、場合によっては被害防止目的でとったオオタカを飼いたいという人が出てくる可能性があるということです。そういう場合にも一般の人の手元に置かない、そのための措置が、この3パラグラフの記載です。捕獲後その個体を飼養する場合は、一般流通による密猟の助長を防止する観点から、当面の間、公的機関による飼養を前提とする場合に限り捕獲を認めるものとするということで、飼いたいという人がいた場合でも、一般には飼えませんよと。ここで言うような公的博物館ですとか動物園とかを想定し、そういうところであれば飼うことはできますよとすることを示しているところです。

 捕獲許可の取り扱いは以上で、最後に販売禁止鳥獣に関して説明します。販売許可のときの条件を、こちらの基本指針に示すこととしております。販売禁止鳥獣、基本的にはオオタカは販売することはできないとしております。ただし下の参考に書いてありますが、学術研究目的ですとか、博物館とか動物園の展示目的の場合であれば、許可をとって販売することが可能です。許可をとって販売するときに条件をつけます。

 販売条件として、まずは、販売できる数については、販売する鳥獣の数量は現に保有する数量に限定することという条件をつけます。また販売する鳥獣について足環を装着させることを条件にします。これは販売されたものが、どこからどこに販売されたかというのを把握するものです。一般に鳥獣保護管理法は、野外から捕獲してきた第一世代に対しては飼養登録のときに足環をつけるというのがありますけれども、第二世代については、対象外です。一方、販売禁止鳥獣というのに関しては、野生のものを捕獲する以外に繁殖させた個体にも適用されますので、繁殖個体も含めて販売する際には足環を装着させるというような形のものを運用していくことを考えております。

 以上のような規制や基準の考え方を示し、これを運用することによって、オオタカについて保全していくことを考えているところです。

 私からの説明は以上です。

【石井(実)委員長】 ありがとうございました。資料1と資料2、諮問の案件の1番目と2番目について、続けてやらせていただきました。それではご意見、ご質問等あったらお受けしたいと思います。いつものように名札を立てていただければと思いますので、よろしくお願いします。

 追加の種として、最初の資料にありましたように、ヘラシギ、チュウヒ、それからシマアオジです。それから今回削除候補種としてオオタカが挙がっていまして、2番目の諮問案件でオオタカの解除後の保全の対策、対応についてということになっております。いかがでしょうか。では、尾崎委員お願いします。

【尾崎委員】 今ご説明をいただきました参考資料2-3のところで、特定輸入鳥獣の足環の装着のことがあったかと。現実問題どういう足環を、どなたがどこで装着すると考えておられるかということを確認したいと思います。

 それから最後のページで、やはり販売する鳥獣への足環の装着、これは恐らく現在の飼育野鳥の足環だと思いますが、それには意見があります。飼育する個体を識別するための足環は一度つけたら外れない、あるいは外すと壊れるという、物理的な工夫をしてつけられているものですが、当初つくるときに、「多分難しいだろう」ということをお話しした記憶があります。

 小さな鳥の場合は、一度つけたのを外すと壊れるような仕組みは、ある程度可能です。しかし、オオタカクラスの鳥の足環になると、丁寧に外せば、一度外してもう一回つけることができる。つまり再利用ということが起こり得ると思います。この足環装着は、確実に個体識別をして、その後の追跡をするということが目的ですが、そういう意味では現在使われている飼育野鳥につける足環では、再利用を妨げることは難しいと思います。

 例えば、個体識別に使われるマイクロチップを入れる、足環とマイクロチップを併用するなどもう少し厳重な管理をしないと、せっかくの規制がむしろ隠れ蓑に使われるリスクを懸念しています。

【石井(実)委員長】 ありがとうございます。では、三浦委員、お願いします。

【三浦委員】 質問とコメント、3点ばかりあります。一つ確認したいのは、今回、国内希少野生動植物種からオオタカを削除するということですよね。それは同時にレッドデータブックでいうところのNTのランクダウンを意味するわけですか。

【石井(実)委員長】 それは逆です。

【三浦委員】 ランクダウンというのは、普通種としてカテゴリーの中に入れないという措置ですか。

【石井(実)委員長】 レッドデータリストの方が先で、NTのランクというのが2回の改定にわたって行われて、それから最近の2回でもそうであったと。したがって種指定から外すと。逆です、先生のお考えと。

【三浦委員】 そういうプロセスをたどるべきだなというコメントをしたいと思ったのですけども、そういうことですね。

【石井(実)委員長】 そうです。

【三浦委員】 それから、その点でいうと二つばかり意見がありますが、この国内の種の保存法による措置の中で、これまで環境省がやってきた施策が、国内希少野生動植物種等を普通種に回復させる手だてとして、どういうプロセスを踏んできたのかというところが、今の出てくるものを聞くと、いつの間にか増えているということで、解除するという決定のあり方は果たして適切かどうかという問題です、それが1点。

 それからもう一点は、先ほどの委員長ご指摘のところで、この数です。NTから落としているわけですね、普通種になっているわけです。

【石井(実)委員長】 いや、VUからNTに下がりました。

【三浦委員】 VUからNTですね。僕が言っているのは、NTというのはNear Threatenedですから、なおThreatenedですね。そのNTのレベルというのは、ここでいっているところで言えば、2,000羽プラスマイナスで、こういうレベルでこれはNTであるという、そのエバリュエーションが適切かどうかという問題も、もう一つご意見いただきたいなと思います。

【石井(実)委員長】 はい、ありがとうございます。それでは、クリスティーヌ委員。

【マリ委員】 パブリックコメントは非常によく行うと思います。いつも疑問に思うのですが、なぜこんなに答えが少ないのでしょうか。出しているレインジがすごく狭いような感じがします。専門家だけにしか聞いてないということなのか、それとも生活されている方々にお聞きになっているのか、地域の学校とかもっと大勢の方々からヒアリングができるようなやり方ってもっとあるのではないかと思うので、たくさん出していて、聞いていても答えたくないという人たちがいるのか、よくわからないので、この点をクリアにしていただけたらと思います。

 あともう一つは、赤字で先ほどのオオタカについて、このように指定されている中で、例えばハトの被害があった場合とか、そういうものを絶滅危惧からNear Threatenedに移す場合に、結局食べていけないから困ってしまって、それでオオタカがだんだんいなくなってしまっているところ、または環境が悪化されるという。それが今、とても健康になって、だんだん増えてきたものですから、危惧されないようになってきたからランクを変えましょうというお話になっていますけれども、私の経験からしか話せませんが、例えば開発しようとするところにオオタカがいて、それで開発がとめられて困る業者からしてみると、地元の住民の方々が守ってあげたいと思っているところに、そういう業者がいいように利用できるのではないかというような文言ではないかと思います。ですから、例えば何羽になったらまた傘をかけようという話になるのか、それとも、もうそのまま放っておくのかということが、一番瀬戸際のところではないか、そこもクリアにしていただけるといいのではないかと思います。被害からすると、本来ならばオオタカはハトを食べたり、また別の小動物を食べて生活をしているわけですから、人間が飼っているものに被害があるから、それだからオオタカを捕まえて、食べるのをとめましょうと言って、そういうことは捕獲してもいいということになってしまうと、自然の動きが今問題になっているところを、また人工的にとめてしまうということになると思うので、そこのところの何か物事の言葉の組み立て方って、もう少し考えていただけるといいかなという感じがしました。

【石井(実)委員長】 はい、ありがとうございます。では、石井信夫委員お願いします。

【石井(信)委員】 ありがとうございます。私は、種の保存法の趣旨とか仕組みから考えると、オオタカを現在の推定個体数から見て種指定を解除するというのは筋が通っていると思います。種の保存法で指定されている種というのは、一羽一羽の個体を守っていくことによって種を何とか維持していくというレベルのものに適用されるものだと思いますので、オオタカはそのレベルからは外れているということで、種指定を解除するというのはいいと思います。

 それで、パブリックコメントの意見を見ていると、もちろん推定個体数自体に対する疑問というのもあるのですけれども、一番の心配というのはやはりオオタカが指定されていることによって里山環境が守れなくなるという心配です。この会議、もう何年も前になりますけれど、オオタカが指定されているということによって、本当に現場で里山環境が守られたという事例が実際にどのぐらいあるのだろうか資料を集めてほしいとお願いしたのですけれど、それは出てこなくて、そういう一覧みたいなものが、あるのかないのかというのが気にはなりますが。もしあるのであれば、今からでも情報を整理して、そこを少し確認するという必要があるなと思っています。

 それで多分、種の保存法の問題というよりは、アセス制度の問題に日本の現在の制度は欠点があって、環境省のパブリックコメントの回答にも幾つか里山イニシアティブというものも使ってとか、それから特定第二種国内希少種ですか、こういうものの運用で価値のある里地里山の環境を守っていくということが書いてありますけれども、これで本当にこれから守っていけるだろうかという心配があります。

 言い忘れましたけれども、そもそもオオタカがいるということで守られてきた環境が、本当に優先的に保全すべき環境だったかというのも、きっとオオタカのいるところを見てみると、ずれがあるのではないかと思います。基本的に私はオオタカを種指定解除することに賛成ですけれども、これまでオオタカが担ってきた実際の役割、それについての情報を何かどこかにある、集約されているような気もしますけれども、それを探し出すとか集約するということ。

 それから今回、種指定を解除するということによって、全国でいろいろな新しい動きが出てくると思います。実験というと語弊がありますけれども、現状を少し変えてみる、少しではないかもしれませんが、変えてみるということによって何が起きるかというのを見るほうが、きっと貴重な自然とか保全しなければいけないものを守っていくときに学ぶべきことというのが、いろいろあるのではないかと、そういう気持ちもあって、今回解除するということは意義があるのではないかと思っています。

 もし、本当にこれから指定解除されると、皆この問題に注目しているから、解除されたらやはりこういうことが起きたという事例がいっぱい出てくるし、出てこないかもしれない。それを丁寧に整理していって、今後問題が起きた場合はもう一回指定し直すということもできますし、オオタカ自体が減ってきたら、色々メリハリをつけた動きをするというのが、今回の指定解除の目的の一つです、そう考えたらどうかと思っています。以上です。

【石井(実)委員長】 はい、ありがとうございます。では、小菅委員お願いします。

【小菅委員】 2,000羽に達したからということで指定を解除すると言うと納得できないと思います。スタートするときに、このモニタリングをきちんと行い、そして全国的にこのぐらいのレベルになっていれば、例えばスタートするときに2,000羽程度のレベルになっていれば解除しますということが明確になっていれば、解除するときに当たって2,000羽でいいのか悪いのかという議論にはならないと思います。

 そのため指定解除されることは決して悪いことではなくて、これは要するに方策がうまくいってある程度増えてきたと確認されているわけです。もちろんこれから、この先それがどうなっていくかというのは、しっかりと見ていかなければならないことですけども、やはりそのところで、ここでゴールだというのをその種である程度きちんと決めて、そして当初からそういう議論をしていけば、特段このようなことにはならないという気がして聞いていました。2,000羽という数字が十分なのかどうなのかというのは、多分誰にもわからないことだと思います。

 しかし、どこかで線を引かなければならない、一旦指定した種をすべてずっと抱え続けるということは多分これからもできない。どんどん新しい希少種というのが、残念なことですが生まれてくる気もしますので、それに対して力をしっかり入れるためにも、ある程度いったものについては解除するということをきちんと行う必要はあるかと思います。

【石井(実)委員長】 はい、ありがとうございます。では、福田委員お願いします。

【福田委員】 絶滅危惧種を始めたものの、保護または管理の手法が確立されておらず、当面の間というふうにありますけれども、この当面の間というのは、大体どう見たら当面の間というのが外れるというか、どういう風に見たらいいのかわからないのですが。

【石井(実)委員長】 わかりました。では続けて、磯崎委員お願いします。

【磯崎委員】 オオタカではなくて追加の方の質問です。フラグシップ種的な位置づけでという新しいタイプの指定で、規制制度上は現行の鳥獣保護法での規制があるので、特にやることがないような形ですけれども、生息地に対する問題が生じているものが、この中に多いようです。パブコメの下から二つ目のところで、保護区指定をするものではないと言い切ってしまっているのですけれども、もちろん現時点では種指定ですが、種指定された後には生息地等の保護区指定というやり方もあるはずで、これが何か最初から外れてしまっているような感じがします。

 それと、その上の二つで、今後保護を検討していくとしか書かれていませんが、何かもう少しこういう形での、例えばフラグシップ種的な指定をする場合は、こういう形での保護管理をするというのが、もう少しはっきり出されてもいいと思うのですが。そこについて、もし何か具体的な保護方策や、あるいはさっき触れた生息地等の保護区制度は使わずに保護をしていくという方針なのか、それについて説明をしていただければと思います。

【石井(実)委員長】 ありがとうございました。それでは、新美委員お願いします。

【新美委員】 話題をオオタカに戻しますけれども、オオタカの問題はやはり基本指針との絡みでどうするかという議論をしっかりやっておかないといけないと思います。この基本指針、ア、イ、ウ、エとありますけど、いずれも最後のところにあるのは種の存続に支障を来す事情があるかどうかというのが一番の問題です。

 一つは、今回提案されたのは平成17年以来、数は維持されている、ないしは増加傾向にあると。このことをもって存続に支障が来していると言えるかどうかというのが一つ、評価のポイントだと思います。

 それ以外には、要するにこれが判断の対象であって、数が少ないとか多いとか、あるいは生息地がどう悪化しているのかというのは、そのための一つの目印になるということだと思います。今回数だけ出ているようですけれども、生息地に悪化の状況が認められるかどうかというのは当然調査しているはずだと思いますので、それを見た上で平成17以来減少が認められない、むしろ若干増加傾向があるということをどう評価するかということからすると、私個人的には、そのほかの手だてがあるということを前提にしますと、この基本指針からいったら解除するというのが方向としては適切ではないのかと思います。

【石井(実)委員長】 どうもありがとうございました。ほかはよろしいですか。

 それでは、たくさんご意見がありましたが、特に明確に反対というのではないかと思います。事務局で答えられる範囲で答えていただけますか。最初に追加種をお願いします。

【説明者】 ご指摘ありがとうございます。先ほど質問、そしてご意見としていただきました追加候補種に関するパブリックコメントの書きぶりについてですけれども、こちらの意見に対して我々は保全活動を既にされている中で、それを阻害してしまうのではないかということを反対の理由として挙げられていましたので、今回の種を指定するということに限っては、その保護区を指定するものでも、何かしら立入を禁止するものでもございませんということを明確に示させていただいただけですので、今言っていただいたとおり、最初から保護区をするつもりが何もないというわけではなくて、今回の種の指定に関しては、まずは保護増殖事業だったり、生息地等保護区を指定するための土俵に上げるという種指定の段階だったりということをしっかり書かせていただいたところです。

 もう一つご指摘があったとおり、今後の保護方策を検討してまいりますというところですけれども、とりわけ渡り鳥に関しては国際的な流れもございますので、さまざまな方々と意見交換をしながら、今後検討していかなければならないと思っております。一方でチュウヒに関しては、今後の生息地の保全というのが一番重要になってきます。我々としては、それを守るための重要種を指定したということを考えておりますので、その種を保護増殖事業だとか、そういうことを具体的に今の段階で確定的なことは発言できませんが、今後必要に応じて進めていきたいという意思をここに記載させていただきました。

【石井(実)委員長】 あとはオオタカの部分でございますけれども、これは佐藤係長と野川補佐で分担して質問に答えてください。

【説明者】 そうしましたら、まず尾崎委員からいただきました足環の関係です。足環につきましては、この特定輸入鳥獣については、輸入したものについて手続をとって、環境大臣のほうで交付する、それを発行するものですので、環境大臣を交付したその足環を、環境省のスタッフの立ち会いのもと業者がかしめていくのを確認するというものです。

 足環自体は金属製のものでして、おっしゃるとおり金属ですので、うまくやると外していける可能性はあるものですけれども、基本的には無理すれば金属疲労して折れるというものを想定しているところがあるのでというところになります。

 それから、販売禁止鳥獣のほうで足環をつけましょうという話をしている足環については、今想定していますのは、国で一括して足環を購入しまして、それを都道府県に配りまして、それで対応してもらおうと思っています。というのは、販売者がめいめいで足環をつくりますと、その足環の材質ですとか、その番号の関係ですとかというのがまちまちになって、それは確かに不正の温床になるみたいなところもありますので、今想定しているのは一括で購入して、都道府県に何番のものを何々県という形で渡しまして、対処しようかと思っております。

 やはり再度それを外してつけることができるのではないかというのは、非常に技術的な問題です。これについては、今あるもので対処しながら、技術的に解決できるのであれば対処していくのかなと考えているところです。

【説明者】 複数の委員からいただいていたかと思いますけれども、2,000羽になったから解除するという線切りの話であったりとか、再指定のための順番、やり方、あと、今までやってきた解除にして再指定するときにどのような基準を設定するかであったりとか、そういった手順、やり方の話について、まとめて回答させていただきたいと思います。

 今回の資料には入れていないですけれども、前回にもお示しさせていただいたとおり、もともとは基本指針に書いてある、この四つの基準に該当するかしないかというところは国内種指定、あと解除においての重要なポイントであるということは変わりないですけれども、平成26年4月につくった絶滅のおそれのある野生生物種の保全戦略というところの中に、解除に当たっての基準というものを明文化しているものがあります。

 一つは、基準はレッドリストにおいてベースにして考えるということで、レッドリストにおいて絶滅危惧種から一気に外れたもの、ランク外になったものについては国内希少種からも解除するという方針となっています。

 二つ目としては、NTにダウンリストして、次の改定においても引き続きNTであると、絶滅危惧種にならない種については、指定解除した後のいろいろな社会的な影響も考慮しながら解除について検討すると規定しております。オオタカにつきましては、2,000羽を切ったからすぐに解除するというわけではなく、NTになる・ならないというところで、まず一つ、検討のためのステップを踏みまして、そこでオオタカの場合は2回続けてNTになっているので、今回その解除について検討をしてきたというところです。

 ただ、やはりこれまで検討を開始してから5年たっているというのは、オオタカはほかの種に比べて解除後の影響が非常に大きいということもあって、指定解除した後の方策、あと指定解除するための正しさということについて環境省でも調査し、アンケート等によって生息状況の変化等についても把握を行ってきました。オオタカは分布が広いので、ほかの国内希少種みたいに特定の地域の生息環境とか個体数を細かく把握できるかと、そういうのはどうしても限界が出てきてしまうのですけれども、その中でもいろいろな手段を使いながら、そういった個体数だけではない、生息状況や、実際その現場で管理している、調査をされている方の所感も含めながら、環境省としてはやはり今回絶滅危惧種には該当しない、この基本指針には該当しないという判断をして、今回解除の諮問をかけさせていただいたところです。

 解除の検討に当たっての数字の根拠については、これまでも繰り返し説明させていただいているところですが、そういったことで今回改めて諮らせていただいているということになります。

 あとは、クリスティーヌ委員からパブコメのやり方についてご意見いただきましたが、パブリックコメントは法律的な手続、行政手続法の手続にのっとって、決められた記者発表をして、ウェブで意見をいただくというやり方で実施しており、特定の人に、相手に情報を狭めて、この人から意見を聞くという形で行っているわけではなく、広く意見をいただいています。同時期に色々なパブリックコメントをやっているので、それによってその関心の度合い等はもちろん差が出てくると思いますが、こちらで考え得る中では広く実施しているつもりではございます。

 あとは指定解除後のモニタリングの一環だと思いますが、石井信夫委員から、解除後に起こった色々な動きや、今回解除が初めてであったので、そういう実例的なものを集めたほうがいいといったご意見につきましては、これも環境省としても指定解除後のモニタリング、生息状況だけをモニタリングするというわけではなくて、もう少しそういった色々な変化についても、可能な限り情報を集めていきたいなと思っております。

 解除することによって取り巻く状況が変わってくるということは考えられるので、そういった部分を色々な手段で可能な限り集め、今回は最初のNTが2回続いて、色々な対策を踏まえて解除するということは最初の実例になりますので、そういった部分は、今後のほかの種にも適用できるようにしっかりと努めていきたいと考えております。

【説明者】福田委員から当面の間という、その期間についてということで聞かれましたけれども、この基本指針については5年ごとに更新していく形であります。主なものについて、これまで基本指針で示して、それで運用して、その結果を踏まえて、どういうふうに対処するかということで順応的に対応していくということで、概ね5年で基本指針を見直すごとにという、そういうようなタイミングを想定しているところです。

 まとめて回答させていただきましたが、もし漏れや答えていないということがあれば、ご指摘いただければと思います。よろしくお願いします。

【石井(実)委員長】 大体カバーできている感じですけれど、委員の先生方いかがでしょう。追加でご質問とかございますか。じゃあ、クリスティーヌ委員お願いします。

【マリ委員】 個体数が2,000ということの中で、愛知万博の話をしますけれども、オオタカが出たことによって、海上の森が結局開発されないで、今は540ヘクタールの森になって里山をつくっているわけです。例えば2,000というこの個体は、日本全国の2,000というのと、オオタカは海上の森にこの三、四年もういないです。どこか近くの、もっとちゃんと食べられるところに出かけていっているみたいですけれども。ということは、例えば地域の中で特に東京、大都会から離れたところで開発しようとしたりするときに、地元の方々が、やはりここには絶滅危惧種のものがあるからこそ守りたいといったときに、そこに例えば毒でもまかれたり、ネズミにそういう薬をまいて、それでそれを食べていなくなってしまったりという、そういうことができるとなると、結局オオタカの2,000羽というのは、一つの場所に集中してしまえば、本当の意味での里山の環境をきちっとバランスよくつくれなくなってしまうと思います。

 ですからオオタカの生息地が、例えば日本のどこから北は彼らが生息する場所であるから、ここから上の地域は各地域にこれぐらいが見られれば、バランスのとれた開発ではないかということが見られると思いますけれども。結局、ツルのように一カ所に全部集まっているわけではなく、本当はあちこちに飛んでいっていたところが結局生活できなくなり、それが本当の意味でのバランスがとれた環境になるかどうかは、何かカーボンエミッションのトレードオフのような感じで、こちらの地域にたくさんいるからもういいではないかと。そうではなく、やはり日本という国の里山の文化や環境というものを、本当にバランスよく保つためには、どの地域は何羽ぐらいがいることによって、総体的に2,000羽というならば何となく理解できますが、2,000羽が全部、例えば一つの県に集まったらこれで保全していることになるのかと思うので、そこを考えていただけるといいと思います。

【石井(実)委員長】 では課長、どうぞ。

【堀上野生生物課長】 種の保存法の指定以降、オオタカに関してさまざま問題があったところだと思います。三浦委員からもお話がありましたように、指定をしてから何もせずにどんどん増えてきたということではないのはありまして。猛禽類保護の進め方を出して、オオタカの営巣地をまず守る、そこに影響がある開発行為に関しては配慮してください、あるいは、餌場についてはこのように保全しましょうというのを出した上で、オオタカの営巣地について守られてきた経緯もあると思います。

 一方で、そういうことが守られていなかったところもあるかもしれません。ただ、全体的にはそういう保護の進め方をした結果、オオタカの生息数は、全国的には増えてきているだろうと。それで種の保存法においては、オオタカの種の存続に支障を来すおそれはないという判断で、今回解除をしようというところでございます。ただ、生物多様性保全上、日本の生物多様性の保全をどう考えるかというときに、オオタカが果たしてきた役割というのも恐らくかなり大きいということも認識はしております。種の保存法上は、そういうふうに整理をして、オオタカの個体数のことを念頭に、生息地の保全についても含めて今回は解除をするということでございますけれども、今後、里山環境をどうしていくのかというのは、やはりそれはそれで考えていかなければいけないことだろうと思います。そういう意味では、オオタカについても今後、仮に減っていくということであれば、それはまた指定ということもあり得ます。それと別に里山の環境をどうしていくのかというのも考えなければいけないということで、我々としては種の保存法ではこのように解除していきますけれども、日本の生物多様性保全をどうするかというのは、またそれはそれで考えなければいけないと思っています。

【石井(実)委員長】 ありがとうございました。それでは、特になければ、反対という明確なご意見をいただいていませんので、この議題についてお諮りしたいと思います。

 種の保存法の国内希少種を解除しますけれども、鳥獣保護法等でそれはフォローしていくということでございます。事務局の提案どおりとさせていただいてよろしいでしょうか。

 (異議なし)

【石井(実)委員長】 はい。では、異議なしといただいたと思いますので、適当と認めるということにさせていただきたいと思います。はい、どうぞ小菅委員。

【小菅委員】 このオオタカの解除云々というところの話ではありません。オオタカの販売許可証を交付する云々という、このスライドのところです。オオタカは繁殖個体のことを指していると思いますが、個人の方が繁殖したやつを足環か何かつけて販売してもいいといって、その販売先を指定していますが、そこに動物園と書いてあります。動物園が日本産の動物について展示、繁殖、研究していく場合、誰かから購入してやるということは全く頭にないです。そういうのをやるのであれば、目的を明確にして捕獲許可をとって、そして展示及び繁殖及び研究ということをやっていこうと、もう随分前からやってきているつもりなので。ここに動物園が範囲の中だと施行規則第23条に書いてあるのでしょうが。やはり我々としては、やっぱり動物園の役割として、地元の動物は少なくとも自分たちの責任で守っていこう、しかし、その入手については正規の手続でやっていこうという意思がかなり高くなってきていますので、このように書いてあると、やはり動物園は動物を買っていると思われるのではないかと。そう思われることが嫌なので、何とかしてほしいかということもないです。そういうときには、許可の方もちゃんと出してくれるような形で、お互いにやっていけばいいと思います。

 特に今問題になっている、オオタカがどういう役割を果たしてきたのかというのは、動物園みたいなところで、全国でオオタカを飼っているところは何園あるかわかりませんが、私はずっと猛禽類をやってきたので、幾つかの園でオオタカを飼っているわけです。そこで、やはり今回希少種から外したということについて、どういうことで外れたのかということと、もう一つは、そのことによってどういう懸念があるのか、といったことを、動物園みたいなところを通じて多くの人々にきちんと伝えていくことが必要だと思います。オオタカを飼育しているところには、私からもそれで取り組めということは連絡しますけども、ぜひ環境省も、そういうツールとして動物園を考えていただければいいかと思います。

【石井(実)委員長】 ありがとうございました。では、次の議題にいきたいと思います。3番目の諮問案件、ツシマウラボシシジミ保護増殖事業計画の策定についてです。まず事務局からご説明をお願いいたします。

【説明者】 続きましてツシマウラボシシジミの保護増殖事業計画の策定について、ご説明させていただきます。資料は3-2と、あと参考資料を幾つか配付させていただいております。説明はスライドと、あと3-2で説明したいと思います。

 まず背景としましては、ツシマウラボシシジミというのは、小型のシジミチョウですけれども、日本では長崎県の対馬のみに生息しておりまして、国外では台湾、中国、ベトナムなどに分布している、いわゆる絶滅危惧種になります。1990年代までは対馬の上島で普通に見られていたようですけれども、2000年代にシカなどの影響によって食草が減少したことで、個体数が激減したと。平成25年度の調査では、野外で唯一生息が確認された生息地で個体が確認されなかったという、かなり危機的な状況になっている種になります。

 そこで環境省では、平成26年度から3カ年で、生息域外保全の推進モデル事業という事業を実施してきたのですが、あまり状況がよくならないということもあり、今年の1月に国内希少野生動植物種に指定したところでございます。

 ツシマウラボシシジミの概要ですけれども、右下の写真は見にくいですけれども、かなり小さい、1センチいくかいかないかぐらいの小さいチョウチョでして、今年の1月に国内希少種に指定しております。平成17年には対馬市の天然記念物にも指定されております。レッドリストのカテゴリーは、現在はⅠA類(CR)になっていますけれども、もともとVUだったものをレッドリスト2017のときに、CRにアップリストしたというものです。

 開長が22から30と書いておりますが、とまっているときは閉じていることが多いので、かなり小さい個体です。分布は長崎県の対馬市。生息環境は、割と湿気の多い沢沿いのスギ植林地や広葉樹林の林床などにいます。食草はマメ科のヌスビトハギやケヤブハギなど、ハギ類となっています。繁殖は年四、五回で、成虫は5月から10月ぐらいに発生しています。寿命としては、非越冬世代は1.5から2カ月で、越冬世代は七、八カ月となっています。

 影響要因としては、シカによる食草の食害や、あと樹木の生長に伴う林冠の閉鎖などによる生息の環境の悪化ということが考えられます。シカは、ここにはツシマジカというシカがいて、かなり食草を食べています。ここに例示で挙げている写真は、もうかなり食べ荒らされて、ほとんど食草がないような状況になっています。右側は、林冠の閉鎖ですけれども、ここはスギの人工林がかなり多い地域になっていまして、もともとは管理されていた部分が高齢化等で全国同じような問題で、なかなか手入れがされてないところも増えてきて、かなり細い木が増えているといったところも見受けられてきている状況です。

 環境省としては、平成26年から、生息域外保全のモデル事業を実施してきました。これは単純な生息域外保全、飼育繁殖だけではなく、野生復帰を見越して生息地の改善を一部実施したり、普及啓発のための事業というのも実施したりしておりました。

 また、そのほかの現場では、対馬市がかなり積極的に地域の保全に取り組まれてきておりまして、研究者の方も個別に意見を伺いながらやってきたところではありますけれども、なかなか数年やってきても、生殖地の状況や定着具合が回復しないということで、まずはその関係者一同がしっかり集まって、その保護増殖事業計画と、国の計画のもとで今後進めていく必要があるのではないかということで、今回計画をつくりたいと考えております。

 ここから法律の説明になりますけれども、種の保存法に基づく国内希少種、先ほど追加と削除の話が出ましたが、その前段階の時点でいうと、今208種指定されています。指定されると、個体の取り扱いの規制であったりとか、あと種によっては生息地等保護区の指定、そのほか積極的に、その事業を展開する種については、保護増殖事業をつくるということが法律上規定されております。

 保護増殖事業計画の策定につきましては、中央環境審議会の意見を聞いて定めるものということで、本日審議していただいているところです。保護増殖事業計画は、対象とすべき種ごとに目標、区域、内容、その他必要な事項について定めると規定されております。

 基本的な事項につきましては、ここに書いてあるとおりで、国内希少野生動植物種のうち個体数の維持・回復を図るために、必要な種について実施するということを基本方針にも記載しております。

 現在、保護増殖事業を策定してあるのは63種になります。大体の種は、その国内希少種の個体の繁殖の促進や、生息地または生育地の整備、また、その種そのものの保存のための取組を実施しているところでございます。現在、トキや淡水魚のミヤコタナゴ、ツシマヤマネコといったような幅広い種について、計画を策定して事業を実施しております。

 真ん中のところに赤字で記載していますけれども、環境省だけではなくて、関係省庁も共同策定ができるというのと、あと国以外でも、その計画にのっとって、それぞれ事業をしたい場合は、認定、確認を受ければ事業を実施できるということになっております。

 それで、これが今回のツシマウラボシシジミのつくろうとしている保護増殖事業計画の案になります。今回、共同作成省庁として、環境省のほか農林水産省も入っておりまして、この2省庁での計画となっております。

 事業の目標としましては、自然状態で安定的に存続できる状態とすること。これもほとんど全ての保護増殖事業計画で書いてある決まり文句みたいな言葉です。

 事業の区域としましては、長崎県対馬における各種の生息地。ここは、かつて生息した地域も含むというところにしています。並びに飼育、人工繁殖等を行っている区域が対象となります。

 事業の内容としては、ここに掲げる6つになります。大きな項目自体は、ほとんど全ての保護増殖事業計画で同じようなことが書いてありますけれども、1番目としましては生息状況等の把握。これは、生息状況の調査や影響要因の把握等を行うことにしております。

 2番目につきましては、生息地における生息環境の維持及び改善です。こちら森林環境の維持及び回復や、食草の植栽といったことを掲げております。

 3番目は、飼育下繁殖及び野生復帰の実施。こちらは飼育下繁殖と野生復帰、基本的には補強の実施や、その飼育下繁殖技術の向上等を掲げております。

 4、5、6番目は、これはもうほかの保護増殖事業でほとんど同じような書きぶりで、4番目は違法な捕獲の防止。これは監視や、法規制に関する普及啓発を行うものです。

 5番目は、もっと広く色々な方への普及啓発を推進することにしていまして、6番目は連携の確保ということで、さまざまな関係者が関わりますので、連携して進めていきましょうということを書いております。

 その中から、1、2、3について、少し細かく説明させていただきます。1番目の生息状況等の把握につきましては、大きく分けると、(1)(2)(3)に分けられています。

 (1)は生息状況の調査及びモニタリング。これは生息域や生息密度等の生息状況の把握。または生物学的特性の把握ということを掲げております。

 (2)としましては、生息環境の調査及びモニタリングです。これは、個体そのものではなく、植生や地形、気象等のモニタリング、またヌスビトハギ、ケヤブハギ等の食草の生育、開花状況の把握。あとそのほか、ツシマジカの分布状況等についても把握をするといったことで書いております。

 (3)の要因の把握及び影響のモニタリングは、ここに掲げてあるようなもののほかにも、各種の個体群の維持に影響を及ぼすおそれのある要因については必要に応じて把握して、場合によっては調査をするといったようなことを掲げております。

 生息状況調査の様子ですけれども、今これは、右上に書いてあるのは柵が張ってあるところの中で実際に食草を植えたり、そこに個体を放して、その後、例えば、5月に離して翌月、6月にどのぐらい残っているかといったようなものを調査したりしております。個体が飛んでいるときもありますが、年に5回ぐらい繁殖するので、ものによっては、左下は食草のケヤブハギですけれども、その葉っぱの裏にすごく小さい、1ミリぐらいの白い卵がついているかどうかというのを確認したりというのを、そんなに広い範囲ではないですけれども、その中で結構細かく調査をしているところでございます。

 生息環境調査は、食草をいろいろ植えているので、そういったものもどのくらい残っているかといったものも調査をしています。

 次が、生息地における生息環境の維持及び改善です。これは大きく分けて(1)と(2)に分けておりまして、(1)は森林環境の維持及び回復。ここは、ほとんどがスギの人工林ですけれども、その人工林の適正な森林整備の推進をするというのを一つ目に挙げております。

 (2)は、食草の保護及び植栽です。食草の保護のためツシマジカに侵入防止対策をするのを1つ目に挙げており、2つ目は、食草そのものを植栽することを掲げております。

 これが、上のほうが防鹿柵のものですけども、左が環境省で設置した防鹿柵、これは実はウラボシシジミのものではなくて、近隣のツシマヤマネコのための鳥獣保護区で設置している防鹿柵になっておりまして、生息している場所が近いもので、やっぱりその二つの事業は効率的に連携して実施しようということで、そこにウラボシシジミに使っているものとしても活用したいと考えております。

 右側は対馬市のほうで設置している柵ですけれども、それぞれ大体高さが2メートルぐらいで、ツシマジカは聞くところによると1.5メートルぐらいの柵だと飛び越えてしまいます。2メートルぐらいあれば大体大丈夫だということで、この高さにしていますけれども、斜面の状況であったり、柵の手前で穴を掘ると飛べなくなるとか、そういったものがあるみたいなので、今後そういう柵の張り方についても検討しようと考えているところです。

 左下が立木の伐採、落葉の除去と書いていますが、基本的にはこの柵の中でしか、今、生息の確認ができていないような状況なので、その囲われた柵の中で落ちている落葉であったり、密閉しているところは立木を切って、林間をあけて、なるべく中に日が入るような処理をしています。ただ、あまり木を切り過ぎると、明るくなり過ぎ、ほかの下草が生えてきてしまって、ヌスビトハギのほうが、その食草に負けてしまって生えてこないということもあるようなので、ちょうどいい照度、光を入れるような間伐をするということで、少し手間がかかるような状況だと聞いております。

 右下は食草、ヌスビトハギですけれども、ヌスビトハギだけではなく各種の食草を鉢に入れたり、実際に中に植えたりということで、その柵をした中に定着させていくという取組をしております。

 次が、飼育下繁殖及び野生復帰の実施ですが、これは野生個体群の回復を図るための野生復帰の実施と、飼育下における科学的知見の収集、技術の向上を挙げております。現在、きちんと飼育下繁殖を実施している場所は、東京の足立区にある足立区生物園の、この温室の中と、長崎バイオパーク、あとは対馬市の現場においても飼育をしております。対馬市の方に書いてある写真の上の方は、越冬するためのバケツみたいなものに実際入っているのと、あと下のビニールハウスの中には食草を育てておりまして、その現場に植えるための食草というのが、対馬市で今、育てていただいています。

 こういった形で、左の方が飼育繁殖と書いてあって、実際の温室に放したツシマウラボシシジミのオスとメスが今乗っていますけれども、メスを乗せてオスに近づけると寄ってきて、お互い見合って交尾をしてと、そういう状況になったら人工的に網で捕まえて籠に入れて繁殖体勢に入るという、結構地道な取組を5回ぐらい、1週間ぐらいずっとやっていくという取組をしていて、その3年間でやってきたモデル事業の中で、この繁殖率の向上を詰めておりまして、昨年度、大分繁殖率が一気に上がってきて、ようやく個体の確保ができつつあるという状況になっています。

 下の方は、実際のさなぎ等を小さいガラスの容器に移しかえて越冬する準備をしたり、ボランティアの方に大分手伝ってもらいながら細かい作業をして、ようやく数が増えてきているという状況にあります。

 その右側は、対馬市でやっている野生復帰、この割りばしみたいなところの中に1個1個さなぎみたいなものがついていて、そこでふ化してチョウチョが出てくると。それを現場に持っていって放すということもやっていただいているのですけれども、ようやく飼育している数が増えてきたところで、それでも現場に放すのが10個体とか20個体ぐらいだと、なかなかやはり定着はしないと。やっぱり多く個体を放さないと定着しないのではないかということは言われていますけれども、これまでなかなか専門家の方も含めて、域内保全、域外保全の連携した取組というのができていなくて、ばらばらにやっていたところを、今回の保護増殖事業をまずはつくって、一つ、今後の道筋をきちんとつくっていくということが、一番大事なのかなと考えております。特に、対馬市が現場でこれまでやられてきたところを、きちんとそういう柵を張るのはどういうところに張ればいいのかとか、そこにどのぐらい放して、どのぐらい定着すればいいかといったような、そういうプランというのを、今後検討していければなというふうに考えております。本日は、その第一弾として、まずは保護増殖事業計画をつくりたいということで、ご議論いただければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

【石井(実)委員長】 ご説明ありがとうございました。一時は野生絶滅状態までいってしまったと思いますけれども、奇跡的に救われて、今域外保全とともに野生復帰に取り組んでいますが、これを保護増殖事業計画として策定するということでございます。では、これについて、ご意見等あったら伺いたいと思います。では、小泉委員お願いいたします。

【小泉委員】 ありがとうございます。資料の15ページ、16ページの飼育下繁殖及び野生復帰の実施というところで意見を述べさせていただきます。説明の中でも十分意識されているとは思いますけれども、最終的には域内保全が目的ですので、域外保全から域内保全に、どういう風にスムーズに技術を受け渡していくかを強く意識していただきたいと思います。そういう意味で、15ページの、足立区、長崎バイオパークでつくった技術を対馬市に移植するというようなイメージで、事業の計画を考えていただきたいと思います。その中で、対馬市の役割というのは大変大きくなると思います。放飼した後のモニタリング、どの程度定着するかというところも含めて対馬市の役割、対馬市ではどういう体制でかかろうとしているか、何かありましたら教えていただきたいと思います。以上です。

【石井(実)委員長】 ありがとうございます。ほかはいかがでしょうか。はい、ではクリスティーヌ委員、お願いします。

【マリ委員】 オオタカと同じ話だと思いますが、どうやってこういう生物をちゃんとしたバランスとれた環境の中で生かすかということが、とても大きな課題だと思います。それで、シカが結局、生息地の植物を食べてしまうから生きていけないのであれば、どうしてシカをもっとクローズアップして、そういうことにならないようにするかという、持続可能な環境を与えながらやっていかないと、増やすだけではないと思うので、やはり地域や、また環境省、農林水産省もやっていらっしゃる中で、バランスをどう地域に取り戻すかということを、ハンドインハンドでやっていっていただけると、もっときちっとした形で保全ができるという感じがいたします。

【石井(実)委員長】 ありがとうございます。では尾崎委員、お願いします。

【尾崎委員】 分類のところでお伺いしたいです。石井先生にお伺いすればいいと思いますが、確かリュウキュウウラボシシジミというのがいたと思いますが、このツシマウラボシを見ると、これ亜種ですよね、ツシマヌスという。これは亜種を指定しようということですか。そこがよく私はわかっていないのですけれども。

【石井(実)委員長】 リュウキュウウラボシとは別種です。世界にもいるということで、ツシマの亜種というふうになっているわけですかね。新美委員、よろしいでしょうか。

【新美委員】 私の意見はクリスティーヌ委員と似ていますけども、この増殖事業計画の目標が自然状態で安定的に存続できるというわけですが、何をもって自然状態というのかと。これシカを排除する形が自然状態なのか。シカが出入りすることも含めて自然状態なのか。ある意味で目標が非常に曖昧だろうと思います。ですから、何を自然状態というのかというのをはっきりさせないと、増殖してもまたシカに食べられるということだったら、もとのもくあみだと思うので、その辺をもう少し明確にする必要があるかと思います。

【石井(実)委員長】 ありがとうございます。ほかはいかがでしょう。

【尾崎委員】 よくわからなかったのですが、ウラボシシジミというのはいないのですね。ツシマウラボシシジミというのがいる。

【石井(実)委員長】 もう一つ、リュウキュウウラボシシジミというのが南西諸島にいますが、それとは別の種類。

【尾崎委員】 これは、この対馬にいる特定の亜種ということですか。

【石井(実)委員長】 日本では、もう対馬しかいない。

【尾崎委員】 ここに書いてある、国外の台湾、中国、ベトナムにも、この同じ亜種がいるのですか。

【石井(実)委員長】 別亜種でいいですね。

【尾崎委員】 この指定の意味。

【石井(実)委員長】 では、それも含めて事務局から説明してください。

【説明者】 ご意見ありがとうございます。順番に回答させていただきたいと思います。

 小泉委員からいただいた、域内のほうが大事だという意見は、こちらももちろんそういうふうに考えております。そもそもの保護をした発端が、域内でかなり危機的な状況になっているというところ、緊急避難的に個体を確保して域外で増やしてきて、何とか戻そうというところからスタートしておりまして、かなりばたばたと慌てて保全を進めてきたという実情があります。そこで、現場の管理というのをしっかりやっていきながら、そこに個体を戻し定着を促進し、何とか手をかけずに定着できるようになればいいなというふうには思ってはいます。そこで、クリスティーヌ委員と、あと新美委員からいただいた、何をもってバランスをとっていくのか、あと自然環境で、安定的に存続する状態というのがどういうのかというところとは、非常にこちらは難しい状況だと思っておりま。今時点でも防鹿柵の中でないとなかなか食草が残らずに、幾ら個体を放しても定着できない状況となっています。現在は柵の外でウラボシシジミが確認されている場所はなく、近くにたまたまちょっとはみ出ているぐらいのところはありますけれども、原則的には柵を張った数カ所の中でしか確認ができていません。そういうところを、今後どう増やしていくのかというのは、やっぱりシカの対策というのと非常に関係深いなと思っていますけども、ツシマヤマネコのほうの対策の中でもシカの対策というのは非常に重要な部分として位置づけられています。環境省がやっている施策そのものと、あと対馬市や長崎県、ほかの人たちがやっている方たちの取組、そこの目指すべき未来というのは、ツシマヤマネコの場合は、ヤマネコの生息できる環境というのをきちんと整備していきましょうと。個体数を増やすだけじゃなくて、バランスのとれたような社会を対馬全体でつくっていきましょうというのが目標の一つとして掲げられております。ウラボシシジミについては全く同じ目標になるかどうかというのは、これから考えていかなければならない部分はあると思いますけれども、その保護増殖事業計画ではざっくりと書いたところについて、今、関係機関で会議をして集まって、ウラボシシジミの中での目指すべき未来というところ、今検討を進めている状況になります。その種ごとにちゃんと目標を設定して、保護増殖事業全体として、やみくもにただずっと何も効果を見ないままやり続けるということは、今後どんどん種指定も増えていって、保護増殖事業も増えていくという中では、関係者としても難しいなと。効果的にきちんと優先順位をもって、その事業を進めていくためには、そういった部分を意識しながら計画を進めていく必要があると考えているところです。そういう意味では少し、ウラボシシジミについてはこれからやっていく部分があるので、まだ明確にはお示しできない部分があるかもしれないですけれども、いただいたご意見を踏まえながら、今後検討していきたいと思っております。

 あと対馬市の体制ですけれども、対馬市は自然環境を担当する部署の方で、特に3名ぐらいの方が現場の管理をしていただいて、実はかなりボランティアにやっていただいている部分が多い状況になります。今年度から環境省の事業として、落葉の管理とか間伐などを協力できるようになりましたが、基本的には対馬市が確保した予算の中で材料を買って、ボランティアで人を集めて柵を張ったりということで、今までやってきていただいたというところです。今年度から環境省で、現場での連絡会議ということで、実際、対馬市等の行政機関も集まって、あとその研究者の方も含めて、まずは1回情報交換をして、どのように進めていくかという場を、ようやく今年度、持ち始めたところで、そこに占める対馬市の役割というのは、飼育繁殖に関しても現場の管理としても非常に重要だという認識をしておりますので、今後その協力体制を検討していきたいと思っております。

【石井(実)委員長】 それでよろしいですか。

【尾崎委員】 まだよくわからないです style="font-weight:bold;"。

【石井(実)委員長】 分類の話をもう少し、突っ込んでいっていただけますかね。このツシマウラボシシジミというのは、どういう位置づけなのか。

【説明者】 位置付けですか。それは、その亜種で指定しているということ以外に、大陸にいるのがどういう位置づけかということですか。

【石井(実)委員長】 要するに、ツシマウラボシシジミと和名がついていますが、このグループが東アジアに分布域を持っていて、そのうちのツシマ亜種というのが対馬だけに今住んでいる、それがこれ。

【尾崎委員】 では、亜種名がツシマウラボシシジミ。

【石井(実)委員長】 日本にいるものについて和名がついているという、ツシマウラボシシジミ。ですから例えば、ほかの台湾にいるものについてはツシマウラボシシジミ台湾亜種等と呼ぶことになるのかなとは思いますけど、そういうイメージです。チョウの場合、亜種に和名をつけていないのです。

 何か伝統的に種名をつけて、それの何々亜種と地域名をつけて表現する。これの場合、対馬しか日本にはいませんので、ツシマウラボシシジミという名前になっているわけですね。

【新美委員】 関連して一言。事業計画という観点からいきますと、やっぱりバウンダリーがどこまでやるのか。それから、タイムスケジュールをどうやるのか、だんだん広がっていくなり充実していくことになると思いますので、計画という場合には、少し時間的なスケジュールの管理の仕方とか、空間的な広がりみたいなものを書いておかないと計画としてはうまくいかないのではないかという気がします。別の観点で、行政事業レビューをやっていますが、そういうことが書いていないと、真っ先にやめろということになりそうですので、その辺を少し注意して、書いておいたほうがいいんのではないかと思います。

【石井(実)委員長】 それでは、大分時間が押してしまいましたが、改めてお諮りしたいと思います。ツシマウラボシシジミのご説明のあった保護増殖事業計画ですけれども、このように策定してよろしいでしょうか。

 (異議なし)

【石井(実)委員長】 では、異議なしと認めていただいたということにさせていただきたいと思います。

 1、2、3の三つの案件をやってまいりましたけれども、今後事務局において部会長にご説明いただいて、中央環境審議会会長に報告するということにしたいと思います。

 実は、30分ぐらい遅れ込んでしまいましたが、あと4件報告がありまして、1件1件だと大変なので、コンパクトに事務局から4件続けてやっていただきたいと思います。

 資料4がヒアリの発見の経緯と対策の状況。資料5が種の保存法改正法の施行に向けた今後のスケジュール。それから、資料6が対馬におけるカワウソの確認について。資料7がケラマトカゲモドキの緊急指定種への指定についてということで、順番に、コンパクトにお願いいたします。

【曽宮外来生物対策室長】 外来室長の曽宮でございます。私からは資料4に基づきまして、ヒアリへの対応を簡単にご報告させていただきます。

 先刻、ご承知のように、6月9日に国内で初確認をされておりますヒアリでございます。これは、外来法に基づきまして特定外来生物に当初から指定されている種でございますけれども、13事例が報告されてございます。

 これにつきまして、資料の下の方にヒアリ確認の経緯ということで13事例、それぞれ書いてございますけれども、1件1件ご説明はできませんけれども、基本的にはコンテナの中、それからコンテナヤード、それからコンテナが運び込まれた先の倉庫の中といったところで確認されているという状況にあります。これにつきましては、港湾で確認した個体については全て駆除しているところでございまして、あとは港湾エリア外でヒアリの繁殖や定着を示す証拠は確認されていないと思ってございますが、港湾エリア内における早期発見、防除というものが大切だということで、それに取り組んでいる状況でございます。

 2枚目が、ヒアリタスクのポイントということでまとめてございますけれども、ここも大くくりとしては水際防除対策。それから、2.ヒアリの根絶、拡散防止と書いているところについては、これは見つかったところでどう対処していくかといったことでございます。

 それから、3点目としては、国民や関係団体への呼びかけということで、正しい情報をきちんと出していくということで、書いてあることを今行っているところでございます。

 主な取組を2、3だけ申し上げますと、1の②のところで中国、台湾からの定期航路を有する68港湾、これについて調査を今やっているところでございますし、あと2.の②といったところで、ヒアリが確認された周辺についても調査を実施しているところでございます。

 それから3枚目は、どういう情報を発信しているかを例示的に挙げております。

 私からのご説明としては以上になります。

【石井(実)委員長】 では続いて、資料5をお願いいたします。

【説明者】 野生生物課の佐藤と申します。私からは資料5-1を中心に用いまして、今般成立しました種の保存法の改正法の今後の施行に向けたスケジュールをご説明させていただきます。

 まず、今年初めにかけて審議会から答申もいただきまして、5月にも、審議会でもご報告をさせていただいたのですけれども、6月2日に次の内容を主とする種の保存法改正法を公布しております。

 1ポツ目の黒ポツのところですけれども、現行の種指定がされますと、譲渡しですとか捕獲が規制されますけれども、これに関して販売・頒布等の目的での捕獲、譲渡し等のみを規制する特定第二種国内希少野生動植物種という制度を創設しております。これは主に、例えば昆虫類や両生類等であって多産の種のうち、少し取っても種の保存の観点から問題ないような種を念頭、そうした種を特定第二種国内希少野生動植物種として指定できる制度を設けております。

 黒ポツの2つ目として、希少種保全動植物園等の認定制度の創設ということで、現行、動植物園の皆様には、希少種の繁殖や飼育という点で公的機能を果たしていただいておりますので、そうした一定の基準を満たす動物園を認定して、取組を後押しできるような制度をつくってございます。

 黒ポツの3つ目としまして、国際種の登録制度の強化ということで、登録票を付した個体については合法的に譲渡しができるように現行制度はなっていますけれども、登録票を不正にほかの個体に流用する事例というのがございますので、個体識別措置でしたりとか、あるいは登録の更新制を導入することによって、そうした不正を行えないようにすると、こういった規制強化を行ってございます。

 あと象牙事業につきましても、カットピースを取り扱う事業者につきましては、現行は届出制という緩い規制でありましたが、これを登録制としまして、登録に当たっての事前審査や罰則の強化というものを導入してございます。その他、国内希少野生動植物種の指定にかかる提案募集制度の創設でしたりとか、また、現行の種指定に当たっては中環審のほうにお諮りをしていますけれども、これを科学委員会にお諮りするという形で法定化するなどの改正を行ってございます。

 白ポツの2つ目でございますけれども、こうした内容の法改正が行われまして、これに対して附帯決議が国会により付されてございます。主な内容としましては、下に4つ書いてございますけれども、科学委員会について自由闊達な議論を保障すること、あるいは、2ポツ目としまして、2030年度までに総計700種の国内希少野生動植物種を指定することを目指すということ、3ポツ目としまして、種の保全戦略を法定の基本方針に確実に反映させること、そして最後に、象牙の管理のさらなる強化に取り組むこと。こうした内容を主とした附帯決議が付されてございます。

 それから、白ポツの3つ目でございますけれども、今後のスケジュールとしましては、法律上、来年の6月1日までの政令で定める日に施行するということになってございますので、具体的な施行日については今後定める予定でございます。この後、施行規則の改正を今年度末にかけて行う予定でして、それとあわせて基本方針についても、今回種の保存法の大幅な改正になりますので、中央環境審議会のほうに諮問させていただくことを、秋から冬にかけて予定しているところでございます。

 資料5-1については以上です。資料5-2は、種の保存法の改正法の概要となっておりまして、また、資料5-3は、1枚目が衆議院の附帯決議、2枚目が参議院の附帯決議の内容となっております。これらは先ほどの説明とほとんど類似する内容となっておりますので、説明は割愛させていただきます。

 最後に資料5-4ですけれども、象牙の管理強化方針案となっており、附帯決議の中でも管理強化をすべきというご指摘をいただいていましたので、ご説明させていただきます。

 2段になっていまして、上の全形牙の規制強化方針案ですけれども、個人所有の象牙について、在庫把握キャンペーンというものを、この夏から始める予定でございます。ポスターをお配りして、現行その1本牙をお持ちしているけれども登録を受けていない方、合法的に、例えば、規制適用前に輸入をしたにもかかわらず、その登録は受けられていない方といった方などを対象に、国内にどれだけ在庫があるかということを把握するためにキャンペーンをする予定でございます。平成31年、再来年の夏からは「登録審査の厳格化」と記載しておりまして、どういうふうに厳格化するかということを現在、検討している最中ですけれども、その検討の結果を踏まえ厳格化をしていきたいと考えております。

 下の段に移っていただきまして、カットピースと製品についても、現行、事業者の届出制ということで緩い規制を設けていますけれども、今回の改正に伴いまして、来年の夏から事業者の登録制というのを導入しております。具体的には、例えば、登録の取り消し規定を新設したりですとか、罰則の強化でしたりとか、そういった内容を施行していくことを考えております。私からは、以上でございます。

【石井(実)委員長】 ありがとうございます。資料の6をお願いいたします。

【説明者】 では、資料6について説明させていただきます。

 報道等でもかなりご存じだと思いますけれども、対馬でカワウソが確認されたというニュースが出ております。概要としましては、今年の2月に琉球大学が設置したセンサーカメラにカワウソと思われる生き物が撮影されて、先週の木曜日、8月17日に琉球大学の伊澤雅子先生のグループが記者会見を行いました。

 環境省は、センサーカメラに映ったという話を聞いて、今年の7月11から18に対馬島内で痕跡調査、これは筑紫女学園大学の佐々木先生に依頼して実施しておりまして、採取した糞のうち、2つからユーラシアカワウソのDNAが検出されております。現時点では、亜種レベルの分類については不明で、環境省レッドリストにおいて絶滅と評価されたニホンカワウソとの関係性というのも、今の時点ではわかっていないという状況です。

 また、韓国等の外国から渡来したものなのか、もともと対馬に生息していたものなのか、人為的に持ち込まれたことなのかと、考えられる由来は色々ありますが、そういったものも現時点ではわからないという状況です。これはその琉球大学で撮影した映像の中の切り取った写真になっています。右側は、その環境省レッドリストに記載してあるカワウソの記述を抜粋してまとめたものです。

 2の、今後の対馬における調査の予定についてですけれども、8月下旬から9月下旬にかけて対馬の調査と解析といったものを実施しようと考えております。その調査は、7月の調査と同様に痕跡調査を行って、解析をすることを考えております。

 最後、お願いといいますか、問い合わせされた方にもお願いしているのですけれども、そのカワウソのほか、ここはツシマヤマネコなど、それこそ先ほどのツシマウラボシシジミなど希少種が生息している場所ですので、そういった生き物の生息に影響を与えるおそれがあるので、例えば、生息地を探すなど、むやみに立ち入らないと、写真撮影等でも考えられますけれども、そのほか、そのためにも餌付けをするといったこともしないよう、周知・啓発していただけるようにマスコミの方にもお願いしているところです。以上です。

【石井(実)委員長】 ありがとうございます。では最後、資料7でケラマトカゲモドキの緊急指定種指定をお願いします。

【説明者】 資料7をご覧ください。写真を4枚張っておりますけれども、上段に載せておりますが、今回緊急指定するケラマトカゲモドキで、下段が、既に平成27年にクロイワモドキの1亜種として国内希少種に指定をされておりますマダラトカゲモドキです。もともと2017年6月に論文を発表するまでは、この亜種については同亜種というふうに判断されておりましたので、我々としては、沖縄諸島の4島に生息するのですけれども、その4島に生息する全ての個体について、種の保存法に基づく規制をかけていたところでありました。ただし、今回9月最初に学会等での標準和名も決定するということも踏まえまして、海外のオークションでの販売形跡もこれまでありますことから、一時的に規制が外れるということを防ぐために、今回緊急指定種への指定をすることと考えております。今のところ、順調に作業等は進めておりますが、9月最初のほうに官報告示、そして規制がかかるというような流れで、随時作業を進めているところです。以上です。

【石井(実)委員長】 ありがとうございます、大分コンパクトにやっていただきまして。どうしてもというご意見等があったらお願いします。では、尾崎委員お願いします。

【尾崎委員】 カワウソには非常に興味を持っており、環境省から正式に発表された動画は確認がとれていないのでここで確認したいのですが、報道の一つでは何か、オスメス2個体というふうな報道が一部であって、根拠を知りたいのですが、どこにも出てこないので、本当にオスメスがいたのか。要するに、複数個体いたという証拠があるのかどうか、確認したいです。

【番匠希少種保全推進室長】 こちらに書いてあるとおり、糞2つからDNAが検出されているということですけども、糞が非常に古かったということで、DNAの状態は非常に悪いという状況です。結果としては、オスの可能性がある、メスの可能性があるというのが、糞2つの解析結果ですけれども、なかなか状態が悪過ぎて、確定と判断するに至っていないという状況です。

【石井(実)委員長】 よろしいですか。小泉委員、お願いします。

【小泉委員】 資料5-4、象牙ですけれども、個人所有の1本物といいますか、象牙はどのぐらいあるとお考えでしょうか。もし相当数に上るというふうにお考えであれば、このキャンペーンで所有者に担当社の意図が届くのでしょうか。その2点が気になりました。

【説明者】 中島と申します。統計的な資料が手元にないので正確なところは難しいですけれども、1980年から1989年の間に約2,000トンの象牙がタスク(牙)という名目で輸入されております。また、その後に約90トン、ワンオフトレードということで2回になりますけども、特別に認められて国内に輸入されています。あわせて約2,090トン、少なくともそれぐらいの量の全形の象牙があったと考えています。そのうち、過去に登録されたのが約350トン、400トン弱です。あと、それ以外に登録されずに、使われて製品にされたであろうというものが数百トン。象牙の業界の方に聞いたところ、確か500、600ぐらいではないかという話ですので、約1,000トンはまだ登録されていない全形の象牙があってもおかしくないと理解しております。おっしゃるように、キャンペーンで全て把握というのはなかなか難しいです。我々の理解としましては、お持ちの方がご高齢の方が多いということと、あと比較的地方にいらっしゃる方が多くお持ちだと考えており、これまで制度があるということをご存じない方が結構いらっしゃったであろうと考えています。今回そういった方々にできるだけ情報が届くようにというキャンペーンの仕方を考えております。

 また、そのキャンペーン後には、まだなかなか方法等については明確に言いかねるところもありますけども、証明のあり方だとかを若干厳しくするというようなことも考えておりますので、そういったことで早目にしないと、合法的なものであっても登録が難しくなるということは伝えていく形でのキャンペーンを考えていきたいと思っているところです。

【石井(実)委員長】 ありがとうございます。クリスティーヌ委員、お願いします。

【マリ委員】 このタスクに関して、登録されていない方に登録させたい理由は何ですか。

【説明者】 国際的にも象牙の管理を厳しくしていくべきだというような議論が、大変強くされているところです。日本につきましては、所有そのものについては規制がされていなくて、譲渡しをする、移動するときにのみ規制が適用されるという状況になっております。過去に大量に入った象牙でも、これまで登録されていないという状況が続いています。象牙につきましては、今所有する方がお亡くなりになって、相続されて売られるという場合が最近では多いように感じています。そういった際に販売するときに新たに登録するということが多くなっておりまして、登録量が全体に増加傾向になっております。それが国際的に見ると、密猟された象牙が日本に入ってきているのではないかという疑いを招きかねないので、まず少なくとも日本の国内にはどれぐらいの象牙があるかを、できるだけ正確に把握したいということで、今回キャンペーンをしたいと考えているところです。

【マリ委員】 例えば、登録すれば相続税をかけない等の利点がないと恐らく出してこないと思います。キャンペーンは幾ら言ってもあまり効果はないような気がするので、何か一工夫加えて、うまく外務省と環境省で行われれば、登録される方がもっと多くなるような気がします。

【説明者】 参考にさせていただきます。ありがとうございます。

【石井(実)委員長】 よろしいですか。では、以上で議題が全て終了ということでございます。最後に米谷審議官からご挨拶いただければと思います。

【米谷審議官】 本日は本当に、ご熱心なご審議をいただき、大変ありがとうございました。大所高所から、またときに細部にわたってお心遣いをいただいたご意見を賜りました。本当にありがとうございました。今日、諮問事項としてご審議いただきました3件につきましては、事務局案のとおり、おまとめをいただきましたので、今後、事務局において答申案として、然るべき手続をとらせていただきたいと思います。

 本日は、本当にありがとうございました。

【石井(実)委員長】 ありがとうございました。それでは、以上をもちまして本日の委員会は閉会といたします。皆さん、お疲れさまでした。