中央環境審議会 自然環境部会 野生生物小委員会 第4回会議録

日時

平成26年9月3日(水) 14:00~15:58

場所

環境省第1会議室(中央合同庁舎5号館22階)

出席者

委員長

石井  実

委員

鷲谷いづみ

臨時委員

  • 石井 信夫
  • 磯崎 博司
  • 尾崎 清明
  • 小泉  透
  • 桜井 泰憲
  • 白山 義久
  • 宮本 旬子
  • 山極 壽一
  • 神部としえ
  • 高橋 佳孝
  • マリ・クリスティーヌ

環境省

  • 塚本自然環境局長
  • 小川大臣官房審議官
  • 江口総務課長
  • 中島野生生物課長
  • 安田希少種保全推進室長
  • 関根外来生物対策室長
  • 堀内鳥獣保護管理企画官

議事録

【事務局】 予定の時刻を過ぎましたので、中央環境審議会自然環境部会野生生物小委員会を開催させていただきます。

 本日は、部会所属の委員・臨時委員、合計13名のうち、10名の先生方にご出席いただいておりますので、中央環境審議会議事運営規則第8条第5項による定足数を満たしております。本委員会は成立しております。

 次に、会議の内容に入る前に、幹部異動のご報告です。今年度、4月に希少種保全推進室が野生生物課内に設置されまして、室長に安田が就いております。また、先々月、7月の異動では、自然環境局長に塚本が就いております。同じく、大臣官房の自然環境担当審議官に小川が就いております。

 それでは、少しお時間をいただきまして、局長よりご挨拶をさせていただきます。

【塚本自然環境局長】 皆さん、こんにちは。お忙しいところをこの審議会にご出席いただきまして、本当にどうもありがとうございます。

 3カ月前まで九州の所長でおりまして、阿蘇の草原の関係では高橋先生に大変お世話になりました。どうもありがとうございました。この場をおかりして、改めてお礼を申し上げます。

 今年の7月8日付で自然環境局長を拝命いたしました。これまでも野生生物課ですとか自然環境計画課でお世話になっておりました。これからも、ますます皆様のお力を借りていきたいと思います。

 本日は、今後の国内希少野生動植物種の新規指定に関する基本的な考え方について、皆様のご意見を承りたいと存じます。ほかに報告案件が幾つかございますが、時間の許す限りご議論をお願いいたします。

【事務局】 続きまして、資料の確認をさせていただきたいと思います。お手元にお配りしております資料でございますが、まず、資料1といたしまして、今回審議していただく「国内希少野生動植物種の新規指定等に関する基本的な考え方について」。その参考資料といたしまして、参考資料1から8まで、8種類ございます。

 続きまして、その他報告事項といたしまして、参考1は、「トキの生息状況について」。参考2は、日本動物園水族館協会との協定に関しての資料でございます。参考3にニホンウナギの関係の資料。参考4-1に、先般、改正させていただきました鳥獣法に関する資料と、参考4-2で、改正法施行までのスケジュール資料を配付させていただいております。

 資料はおそろいでしょうか。もし落丁等がございましたら、事務局までお申し出くださいませ。

 では、この後の議事進行につきましては、委員長の石井先生にお願いいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【石井委員長】 皆さん、こんにちは。委員長を務めております石井でございます。

 それでは、早速ですけれども、議事に入らせていただきたいと思います。本日の会議の議題は、審議事項が1件、その他として報告4件となっております。

 審議事項の最初ですけれども、今後の国内希少野生動植物種の新規指定等に関する基本的な考え方について、まず事務局からご説明をお願いします。よろしくお願いします。

【事務局】 こんにちは。希少種保全推進室補佐をしております徳田と申します。よろしくお願いします。座って説明をさせていただきたいと思います。

 お手元に資料1という横のパワーポイントでつくった資料がございますので、それを見ながら説明をさせていただきたいと思います。

 先般、委員の方々には今年度4月に策定をしました、「絶滅のおそれのある野生生物種の保全戦略」を、郵送でお送りはさせていただきましたが、今日は白表紙の戦略だけの、参考資料がついていないものも資料につけさせていただいておりますので、随時それを見ていただきたいと思います。

 まず、国内希少野生動植物種の新規指定の進め方という、1ページ目ですが、昨年の種の保存法の改正の際に、そこに書いてございますように、2020年までに国内希少野生動植物種300種の追加をしなさいということが求められていると。この根拠としては、その右肩に書いてございますように、レッドリスト掲載の絶滅危惧種3,597種のうち、国内の希少野生動植物種として89種しか指定できていないということは、極めて絶滅危惧種の保全ということに関して不十分であるという指摘を受けた上で、300という数を求められているところでございます。

 それから、下は、今ご説明させていただいたように、この戦略の中でも、2020年までに300種の追加指定を目標として進めるということを書かせていただいているところでございます。

 本年度から指定を進めなければいけないわけですが、300という数字はかなり大きな数字で、今までは年間に、平均すると3種類から5種類程度を指定してきているところでございますが、300種を2020年までに指定をするとなると、年間40から50の種を指定していかなければいけないということでございます。

 指定の考え方は、戦略にも書かせていただいておりますが、この左側に書いてありますように、レッドリストのランク、カテゴリーによって考えるということと、やはり生態学的な重要度とか認知度、生息地の重要性、それから、その下に米印で書かせていただいているように、捕獲・採集圧、あるいは島嶼等の重要生態系での分布、分布範囲、国際的な保全の必要性等々に勘案して考えるということになってくるということです。

 具体的に、各分類群でのこれからの指定の方針としましては、まず、両生類・爬虫類に関しましては、愛好家の方がかなりいるということで、実際にインターネット等々も含めまして取引がかなりされているということで、捕獲・流通規制を実施すべきという種が、現在でもかなりあると認識しているところでございます。

 それから、昆虫類につきましては、生息地がかなり狭かったり、個体もそんなに大きくないので、ちょっとした生息状況、生息環境の影響によって、一気に絶滅の方向に行ってしまうということもありますので、そういうことも勘案して指定をしていく必要があるだろうと。

 それから、維管束植物に関しましては、絶滅危惧種の約半分を占めておりますので、今後、300を指定するに当たっても、かなり多くの種類が指定されることになると思います。

 それから、哺乳類と鳥類について、鳥類はかなり現在でも指定されているものもありまして、さらに鳥獣法で捕獲が禁止されているということもありまして、今後、300の中でも、特に指定の必要性が高いものについてはきっちり検討をするという考え方で取り組んでいきたいと考えています。

 それから、めくっていただきまして、指定をするとなると、規制がかなりかかります。捕獲、採取、殺傷、損傷のほか、譲渡も当然禁止されるということで、指定の際には事前に土地所有、利害関係者、関係行政機関と慎重に調整を進める必要があります。今までも調整は実施してきております。

 いろいろな要因に関して情報収集して進めるということになりますが、その下の米印に書いてありますが、これを指定するという情報が事前に流れてしまいますと、捕獲圧がかなり高まって、指定の前にとられてしまったということを今まで聞いているところでございますので、情報についてはしっかり管理しつつ調整をして進めなければいけない、それを年間40から50の種類についてやっていかなければいけないということです。

 その下は、レッドリストにおいて、評価の対象とした種数に対する絶滅危惧種の割合を目安として掲載をさせていただいております。参考資料7にもう少し細かい表をつけておりますので、また見ておいていただければと思います。

 それでは、3ページに移りまして、今のような指定の方針を踏まえて、どういうふうに検討作業を進めていくか、そこに示させているところでございますが、指定の前年度に情報収集、調査など、それから一般の提案も含めて受け付ける。この一般の提案についてはまた後にご説明をさせていただきます。

 それから、指定をする年に非公開の検討会、これも後で説明をさせていただきますが、候補種を検討させていただくということで、これが5月から7月ごろ。それから、候補種ごとに、必要があれば関係団体・研究者と事前調整。それから法制局審査。これは役所的な手続ですが、関係省庁との協議、12月ごろということで、この中央環境審議会野生生物小委員会で、来年1月、2月ごろ、指定種を確定していただいて、それからパブリックコメントをして、2月、3月ごろ閣議決定と、大まかな流れとしては考えているところでございます。

 種によって、例えば昆虫の卵が目立つ時期、それから植物の花がある時期、そういう時期は種が特定されやすいので、要するに愛好家の方にとられやすいということで、基本的なスケジュールは、その年の指定種によって変化が生じてくるということが考えられます。

 それから、非公開の検討会でございますが、右に書いてございますが、附帯決議等々でも言われまして、いろいろ科学的なことを担保した上で指定種を決めなさいということで、野生生物小委員会の委員の方の中から数名と、それから、毎年指定候補種は違いますので、専門の方を数名加えまして非公開の検討会を毎年1回開催させていただいて、指定の検討を進めさせていただきたいと考えているところでございます。

 それから、本年度の実施内容ですが、今ご説明した進め方を基本として、緊急に保護する必要がある種を30から50程度指定をするというふうに考えているところでございます。

 2020年までに300種指定をするわけで、そのうちの半分か、もうちょっと少なくなるかわかりませんが、それぐらいの種類が植物になるということも考えまして、植物は別途、これは非公開になるんですが、今後の2020年までの指定のロードマップを決める、あるいはある程度の種の絞り込みをするために非公開の検討会を今年4回程度やろうとしているところでございます。そのメンバーにつきましては、従前のレッドリストの分科会の委員を中心として、指定候補種となる分類の専門家に依頼をさせていただいているところでございます。

 めくっていただきまして、4ページになりますが、国民からの提案制度ということで、これについても、今まではアンケートなどは実施していなかったわけですが、国民の提案をきっちり反映した上で種を決めなさいと言われているところでございます。

 それに対応するということで、今年度は、今年の9月からホームページでの提案の受付を考えているところで、提案については9月から11月ぐらいをメドに受け付けて、その翌年に反映させるということを考えているところでございます。

 この提案制度を中に組み込むということは、提案がもし採択されて国内希少種ということになれば、多様な主体との連携もできると思いますし、提案された方に保全に加わっていただくということもできるということで、保全にかかわる人を広げたいというような意向も考えているところでございます。

 ただ、提案といっても、名前だけを書いて、保全をしたいのでこれを指定してくださいということでは、なかなか難しいということもありますし、学術的な根拠等々も不足しますので、提案書の記載内容は、理由、種名、分布・生息状況、減少要因、保全取組の状況、それから希少野生動植物種保存基本方針との合致、その他の資料をつけていただいた上で提出をしていただくと。

 提案があったものについては、さらに情報収集をしたり、非公開の検討会の場を設けて、提案についても検討していくということで、この野生生物小委員会では、提案の概要について報告して、指定種になりそうだということであれば、この場でも報告をさせていただきたいと考えているところです。

 それから、次の5ページになりますが、先ほどちょっとお話をさせていただきましたが、随時提案は受けつけるということで、11月ごろまでに受けつけた提案は、原則として翌年度の指定作業に反映させるというふうに考えているところでございます。

 提案書類の確認後、受付の可否については提案者に連絡します。また、2020年まで指定を進めるわけなので、その年には指定はされないかもしれませんけど、提案後数年で状況が変化するなども考えられるため、その場合は追加で情報を提供いただき、それらも踏まえて継続して提案いただいた種の指定について検討する場合もあると考えています。

 また、指定後の方向性ということで、提案していただいた方に何らかの形でモニタリングとか、そういうものにもかかわっていただきながら進めるということが理想だと思いますので、環境省のサポートとしては、保護増殖事業計画を作成して確認・認定をとっていただいたり、保存推進員を委嘱したり、保全事業への支援をしたり、今、生息地等保護区を少ないながらも設定をしていますので、もし、生息地の土地所有者の方が例えば提案していただいたなどということであれば、そういうものの指定も考えていきたいと考えているところでございます。

 それから、6ページになります。300種の指定を今後、新規の国内希少野生動植物種として指定を進めていくわけですが、その後どのように保全するのかということを想定できる範囲で書かせていただいています。

 先ほど説明しましたように、今は89種しかありません。年間、今まで3~5の種類を指定してきたわけですが、今後は年間40~50というように大幅に指定種が増えるということで、国の直轄だけではなかなか保全の取組は難しいということもありまして、当然、環境省だけではなくてほかの省庁、あるいは都道府県、調査研究機関、民間企業も含めまして、連携して保全を推進する必要があると考えているところでございます。

 現在の保全の取り組みの進捗状況を考えると、対策は不足していると認識しておりますので、今の指定種プラス今後指定していくものについては、この後ご説明します絶滅危惧種保全カルテというものを1種類ずつ作成して、これで、どういうところが不足しているかわかるように取り組んでいきたいと考えているところです。

 それから、保護増殖事業計画についても、計画をつくって保護をしていくことが有効と考えられるものについては、保護増殖事業計画の作成を新規の種についてもしていくというふうに考えているところでございます。

 あと、生息地等保護区についても、先ほど申しましたようにまだかなり少ないですが、今後も指定の有効な種については検討するというふうに考えています。

 それから鳥獣保護区、国立公園についても、区域の指定・更新、あるいは国立公園の特別地域の変更・拡張の検討とか、指定植物の更新も、今、公園課で更新をしようということで検討しているところでございます。

 先ほどから言いましたように、この300種の指定について、環境省だけでやっていてもなかなか裾野も広がりませんし、保全も進みませんので、やはり都道府県との連絡会というものを考えて、今年から300種の指定の進め方、あるいは今後の保全について意見交換をする場を設定することとしております。

 地方事務所の単位でございますが、そこに書いてある7カ所で、本年度から都道府県あるいはほかの省庁に出ていただきまして、意見交換をしながら進めたいと考えているところでございます。

 それから、7ページでございますが、先ほど申しましたように保全カルテというものを作成して、保全の進み方を検討しながら、限られた予算をどこにどういうふうに重点的に優劣をつけて保全をしていったほうがいいかということを検討するためのカルテを、来年度以降作成をしようと考えているところでございます。

 参考資料4に保全カルテ(案)ということで、ちょっと字が小さくて見にくいんですが、これは魚類の種を例として出して、レッドリストのカテゴリーから、どういうところに生息をしているか、行政区分の範囲ではどういうところに生息していて、その生息状況、それから減少要因、それから一番下に保全の取組状況が個々に団体別に書いてございますが、どういうことを改善して保全に役立っているかというようなものとか、対策の効果、あるいは保全の課題も書くようにして、こういうようなものをいろいろ来年度以降、情報収集しまして、カルテとして取りまとめて、今後の保全に役立てたいと考えているところでございます。

 来年度以降、そこに書いてございますように年間50~100種ぐらいを目安に、指定した種、あるいはこれから指定する種について、全てこういうものをつくりますし、さらにこういうものが必要だと思われる種についても、必要に応じて作成をしていきたいと考えているところでございます。

 簡単ではございましたが、今年度から2020年までに300種の新規の指定について、大まかな進め方についてご説明をさせていただきました。

【石井委員長】 どうもご説明ありがとうございました。

 ということで、お手元にもあります、今年4月に策定され絶滅のおそれのある野生生物種の保全戦略に基づいて、国内希少野生動植物種の追加種の指定を行うということですが、これについての作業手順の説明がございました。

 それでは、この資料を三つぐらいのパーツに分けて議論しようと思います。最初はパワーポイント資料の1ページから3ページぐらいのところ、2020年までに300種を追加するというところです。具体的な作業等について書いてあります。それから、2番目は4ページから5ページぐらいまでのところ、これは国民からの提案制度についてというところでございます。そして、最後の部分が指定後の保全ということで、6ページ以降ですね。この部分には絶滅危惧種保全カルテや都道府県等との連絡会の開催の項目があります。では、この三つの部分に分けて、皆さん方からのご意見、ご質問等を受けたいと思います。このような手順でよろしいでしょうか。

 それでは、最初の部分ですけれども、2020年までに300種を追加するということですね。2020年までに年間40種から50種ということですけれども、この部分についてご意見、ご質問があったらお願いいたします。いかがでしょうか。

 尾崎委員、どうぞ。

【尾崎委員】 1ページ目と考えてよろしいですか、今の話。

【石井委員長】 そうですね。1から3ページのところぐらいまでです。

【尾崎委員】 わかりました。

 1ページ目の左下ですけれども、対象となる種の考え方の中で、環境省のレッドリストのカテゴリーとありますが、県のレッドデータブックとの整合性は全く考えないのかどうか。

 また、国際的な保全の必要性というのは非常に重要だと思っています。というのは、国内のレッドデータブックは、基本的に国際的なことは余り考えないというスタンスなので、世界的な目で見ると少し温度差がありますが、国内希少野生動植物に関しては、そういったことも含めて国際的な必要性に少しウエートを置いたほうがいいのかなと私は思っております。

 以上です。

【石井委員長】 それではまとめてご意見、ご質問を先に伺いましょうか。

 では、宮本委員、お願いします。

【宮本委員】 今のご質問とちょっと関連するんですけれども、国内希少野生動植物種として国で指定する種類と、地方自治体等の条例で何らかの保護策として指定されている種との整合性というのは、どのようになるのかということを教えていただきたいと思います。

 例えば、国で指定したけれども、地方自治体では指定していないという場合に、地方自治体は追加指定をすべきなのかどうか、どういうふうにお考えなのか、お伺いできればと思います。

 以上です。

【石井委員長】 この部分、1ページから3ページですけども、他にご意見等はございますか。 石井信夫委員、お願いします。

【石井(信)委員】 これから年に数十種のペースで指定種を決めていくということですけど、種の保存法というのは、2ページに書いてあるように、捕獲、採取、殺傷、損傷が禁止されるということですよね。それから、生息地等保護区というのもありますけれども、非常に小規模なものであると。そうすると、これから指定を考えていく種というのは、この捕獲、採取の禁止が有効な種に偏って指定されることが想定されているのか。それとも、絶滅危惧要因というのは外来種もあるし、最大の問題は生息地とかハビタットの改変がありますけれども、そういうもので絶滅の危機に瀕しているものも、ある程度というか、積極的に、私はそういうふうにしていただきたいと思うんですが、そういうものも満遍なく指定していくということを想定されているのか。そこら辺、もし想定があれば教えていただきたいと思います。

【石井委員長】 ありがとうございます。

 この部分、ほかは、いかがでしょう。では、高橋委員、お願いします。

【高橋委員】 これから相当数の種が指定されてくると思うのですが、それぞれにまた専門の人が必要になってくるし、モニタリングの作業等コストがかかってくるし、それから効果検証というのが求められてくると思うのです。そうすると膨大なコストがかかる。

 今まで、例えば、種の保存法の中で何種か指定されている中で、それがきちんと機能しているかどうかが、検証されてきたのでしょうか。指定種については、ある程度ベースラインとして保全を担保すべき範囲などがあるのか、それとも、ただただ指定していくばかりのことをこの項目について考えればいいということなのでしょうか。あるいは、既存の指定種の状況についてもフィードバックしながら、新規指定については考えていかなくていいものなのでしょうか。

【石井委員長】 ありがとうございます。

 ほかはどうでしょう。

 そうしましたら、このあたりで、事務局からご意見、ご回答があればお願いします。

【安田希少種保全推進室長】 最初に県のRDB、あるいは県の指定との整合性ということですけれども、基本的にこれは国の指定なので、国のレッドデータブックを基本に考えていきます。ただ、県は県の立場で地域という観点から見て、それが必要だということであれば、国と県の双方でかぶって指定していくということもあると思います。そこは切り分けるとか、そういうことではなくて、両方でカバーしていくということを考えています。

 それから、国際的なものの重要性ということですけども、それについても十分考慮していきたいと考えています。

 それから、指定対象について、年に数十種を指定していくということで、どのようなものを指定していくのかということですけれども、基本的には、指定することが効果的なものということで、基本的な考え方のところにも書いてありますけれども、捕獲・流通規制が有効なものが中心になってくると考えています。また、お話に出ていましたように、確かに生息地の状況とか、あるいは最近ではシカの食害で急激に数を減らしているとか、そういったものもあると思いますので、そういったものもしっかり見ていきたいと思っています。

 いずれにしろ、モニタリングなり保護増殖事業なり、コストが非常にかかってきます。そこは、この後の議論にもなると思うんですけれども、企業との連携などということも模索しているところです。国の予算だけではなかなか難しいと思っています。

 それから、今、実際にやっていることに対する検証とか効果についてどういうふうに見ていくのかということですけれども、先ほどお話ししたカルテの中で、今やっている課題などについてもまとめていきたいと思っています。今、種によってはそういった検証をやっているものもありますけれども、不十分なものもあると思いますので、改めてカルテを作成していく中で考えていきたいと思っております。

 以上でございます。

【石井委員長】 ただいま事務局からご回答がありましたけれども、いかがでしょうか。

 この部分は、よろしいでしょうか。

 では、石井(信)委員、どうぞ。

【石井(信)委員】 もし指定されると捕獲・採取は、禁止ですよね。今までできていたことが、これからは犯罪になります。

 我々が何で日本の生き物をこれだけよく知っているかというと、いろんな人が興味を持って捕獲、採取をしてきたことで知識が積み重ねられてきたからです。中には行き過ぎがあるので、法律で規制していくというのも重要なことだと思いますけれども、捕獲、採取の影響が少しでもあるような種はみんな指定していくということになると、逆効果もありはしないかと思います。

 少し手に取ったりということができなくなってしまうのですから、そこら辺のバランスを考える必要があります。また、捕獲、採取も少しは影響があるけど、もっとほかに重要な要因があるんだということが、指定することによってわかりにくくなってしまうというか、捕獲、採取を規制したので、もうこの種は守られるんだというような、間違った安心感につながるというか、的外れなことにならないように、配慮しながら指定していくのが大事かなと思います。

【石井委員長】 今のはコメントとして受け取ったらよろしいでしょうか。ありがとうございました。

 どうぞ、桜井委員。

【桜井委員】 ちょっとお聞きしたかったのが、汽水・淡水魚類は両側回遊魚といって、海と川をまたがっていく。例えば、種類から言うと、イトウみたいなものとか、ウナギはややこしいので置いておきますけど。そういったものの場合、遊魚ではないけれどもルールを持って釣り人が管理しているようなものがあった場合に、これは陸の生物もそうだと思いますが、そういった場合に、今言われたような厳密なもので適用するのか、あるいはもう少し柔軟な考え方の、希少種の扱い方はないのかということです。その辺のところ、全て一律に、全くだめだというふうにするのか。そうじゃなくて、ある地域では保全されていて、それを持続的に利用しながら保全していくというものがあった場合にはどう扱うのか、その辺をお聞きしたかったんですが。

【石井委員長】 種の保存そのものについてのご質問かなと思いますが、事務局からご回答をお願いします。

【事務局】 今ご指摘いただいた件に関しましては、そんな厳密にやってしまうと、一部ではきっちり増やしながらいろいろなことをされている人もいるのに、こっち側ではいないから全部にかけてしまうと、当然さっき出たように、手にとっていろんなことがわかるという例もありますし、いろんなことで弊害が出てきますので、その辺は柔軟に対応をさせていただきたいと思います。それに携わっていらっしゃるNPOなり都道府県なり、例えば漁業組合とか、そういうところにも相談をしながら進めたいと考えております。

【安田希少種保全推進室長】 一度指定されてしまえば、法律上は同じ規制になりますので、例えば資源管理がされているものであれば、それはもちろん、こちらから積極的に指定するということはありませんし、その地域の状況、種の状況を見ながら指定は考えていきたいと思います。

【石井委員長】 種の保存法の運用についてですけれども、指定については柔軟にというということでございます。

 ほかはいかがでしょうか。

 また後で戻るとしまして、先ほど言いました二つ目の部分ですね。国民からの提案制度ということで、4ページと5ページのところです。このあたりについて、ご意見、ご質問等があったらお願いいたします。

【鷲谷委員】 どちらに入るのかよく理解できないで、発言の機会を逃してしまいましたが、商取引、流通、ブラックマーケット、そういうものが存在している分類群も少なくないと思います。そこでは駆け込み採取が極めて大きな脅威となる可能性があると思います。そういった行為に及ぶ人々の情報収集能力というのはすごいので、侮れないものがあるものですから、情報を秘匿するだけでは、その圧力に抗し切れないのではないかということが心配です。

 有効な対策は、やはり生息地における監視体制と、何らかの抑止力が構築されている、もしくは指定が進むにつれて構築されていくということが必要だと思います。構築で一番確実なのは、自治体が条例などをつくって禁止をしていて、そういう行為を警察権力が取り締まれるようになっているとか、地域の住民の方たちが監視自体をとても重要な保全の取り組みと考えて、そういう監視体制をつくっているとか、そういうことではないかと思います。マーケットのあるものに関してですけれども、そういうものを確認してから検討するということも必要かもしれません。

 一般からの提案制度や自治体との連絡会議といった場を活用し、条例などをつくって保全をしている自治体や地域での監視体制などに関する情報も受け入れるといいのではないかと思います。

【石井委員長】 ありがとうございます。

 ほかは、いかがでしょうか。4ページ、5ページですね。

【事務局】 補足をさせていただいてよろしいですか。

【石井委員長】 はい、どうぞ。

【事務局】 先ほど説明のときに言い忘れましたが、この提案制度というのは、先行して、京都府、徳島県で既に実施をされていまして、徳島県では提案が1件だけあったんですけど、まだ採択をされていないということですが、京都府に関しましては府民の提案がもう9件ありまして、そのうち7件採択をされています。京都府はカナダのスチュワードシップ制度というのを参考にして、生息地の管理も提案者と協定を結んでやっていただいているということで、参考資料8に概要等々つけさせていただいておりますので、また見ていただければと思います。

【石井委員長】 よかったら、参考資料8を簡単に説明できますか。

【事務局】 京都府の絶滅のおそれのある野生生物の保全に関する条例ということで、体系的にはそこに書いてあるとおりですが、真ん中の指定希少野生動植物種の指定ということで、種の保存法と同じようにいろいろな規制を府の条例でされているわけですが、右肩のオレンジ色で、条例第10条に府民提案制度を入れ込んでいるわけでございます。

 手続きフローについて、裏を見ていただきますと、府民に提案募集して、提案書の提出、それから形式審査をして、提案者に不採用通知あるいは採用通知をして、決定するという流れです。また、公聴会等々、条例に基づきいろいろ手続を経て指定をするということになっておりまして、先ほど言いましたように、9件のうち7件が採択をされております。

 ほとんどが植物、5種類が植物でございまして、あとはカスミサンショウウオとアユモドキという種類が、現在、府民の提案で、京都府の条例の指定種になっているところでございます。

【石井委員長】 どうもありがとうございました。

 それでは、ほかの部分はいかがでしょう。

 では、神部委員、お願いします。

【神部委員】 この国民からの提案制度ですけれども、これはどのくらいの敷居の高さなのかということなんです。ここに、環境省のホームページにおいて、その詳細を示すというふうにありますけれども、この提案書の記載内容はかなりきっちりと下に出ていますけれども、こういうふうにかなり専門的でなくてはならないとお考えなのか。

 例えば、本当に学生のサークルだとか、それから地域の小学生とか、それからお年寄りたちの感じる昔と今の違いとか、そういう生活している中での環境レベルの感じ方にも広げていくと、もっともっと、学術的ではないけれども、昔とは随分違うというような、いろいろな意見が、本当に国民からのという提案制度という形に広がっていく気がいたしますが、その広さは、どの程度まで皆さんが参加できるものをおつくりになろうとなさっているのかなというのはちょっとお伺いしたいんですけれども。

【石井委員長】 この部分については一件ずつの質疑になってしまいましたので、事務局からお答えがあればどうぞ。

【安田希少種保全推進室長】 この国内希少種に指定されるというのは、かなり重みがあるものだと思っています。一方で、科学的知見に基づくことが大原則だと考えています。ここに書いてあるように、確かに少しハードルは高いかもしれませんけれども、かなり詳細な情報を得るということを考えています。

 ただ、門戸は誰に限るというわけではありませんので、以前と変わってきているという情報をいただいて、なおかつ、そのことを我々で調査することが可能であれば、そういったものも対象にしていきたいと思っています。

 ただ、やはり科学的な知見が基本的なところにはあると考えております。

【石井委員長】 よろしいですか。

 ほかはいかがでしょう。

【高橋委員】 ちょっと関連するのですけれども、国民がこれだけのことを書くって、とても大変そうだなと。科学的知見をある程度付与するためには、提案をする際のサポート専門員のような方が間に必要なのではないでしょうか。それは、例えば博物館の学芸員でもいいと思いますし、行政の部局担当でもいいと思うのです。

 そうなると、その分のかなりのコストがかかるということと、それから科学的検証どうこうということになれば、その監査とまでとは言わないにしても、実地をちゃんと検証しないといけないんだろうと。そうなると、なおさら国民からこれだけの資料をそろえてというのは非常に難しい、ハードルが高くなってくるのではないか。そういう間を取り持つような仕組みというのは考えたほうがいいかなと感じます。

【石井委員長】 事務局、いかがでしょう。

【安田希少種保全推進室長】 そういう意味では、先ほどちょっとご説明しました非公開の検討会というものがございますので、その中でスクリーニング的に検討していくことになるのではないかなと思います。分類群ごとの専門家の方にも入っていただこうと思っていますので、その中で今の種の状況はどうなのか、あるいはその方を通じてその種について詳しい方の情報をいただくとか、そういったところでカバーできるものはカバーしていきたいと考えております。

【神部委員】 すみません、もう一度よろしいですか。

【石井委員長】 神部委員、どうぞ。

【神部委員】 ありがとうございます。今のご意見を伺っていて、例えば幾つか段階を経て皆さんのご意見を聞くというのはどうでしょうか。もう本当に学術的なところの方と、それから小学生でも調べていたんだけどおかしいよねと言えるというような、もっともっと間口の広い、そういう部分もあるような、幾つかのグループというんでしょうか、段階を経た受けとめ方がもしできるのであれば、望ましいと思います。ただ決めるだけなく、これは決めた後に皆さんに浸透していかなくてはいけないことだと思うんですよね。そう思いますと、浸透してから皆さん知ってくださいというより、最初にみんなが興味を持って調べてみようかというところから、小さな子供からもお年寄りからも参加できるような雰囲気づくりをつくっていって、そうか、そういうことがそうだったんだねという結果が出た後というのは、やっぱり受けとめ方が変わると思うんですよね。

 なので、学術的なところは先生方がまとめていただくという方向に持っていけると思うんです。なので、広い世代の方たちからの、今感じている、僕たち私たちの周りの環境というような間口も広げていただくことが可能であれば、その後の皆さんの受けとめ方が変わる気がするので、いかがでございましょうか。

【安田希少種保全推進室長】 募集の仕方については、ご意見もいただきましたので、ちょっと検討したいと思います。

【石井委員長】 ほかはいかがでしょうか。

 では、クリスティーヌ委員。

【マリ・クリスティーヌ委員】 遅くなって失礼しました。

 遅く来ましたので、最初からずっと聞いていなかったのですけれども、今回のこの国内希少種について、コメントをパブリックからいただくということの中で、先ほど、鷲谷先生からお話がありましたブラックマーケットの動物について、没収されたときや、見つかったときには、罰金があったり、刑があるかと思います。

 一般的に、私たちの普段の生活の中で、そういう枠組みは一般の方々もよく知らないので、絶滅危惧種であるということは知っていても、それをとったらば、例えばホトケドジョウをとって、それでお家へ持って帰って、それが見つかった場合に、罰則があるのかということがわからないと思うのです。ですから、一般の市民が何もわかっていないでレッドリストができていて、もちろん興味のある方は皆さんよく知っていらっしゃると思うんです。

 日本はアメリカとは違うのですが、アメリカの場合は、例えば私たちが小学校で勉強するときに、5、6月ぐらいから9月ぐらいまでは、もう好き放題のカエルをとってもいいということになっているんです。あと、スナッピングタートルといって、日本でスッポンになるのかどうか、向こうのはおいしいかどうかわかりませんけども、スナッピングタートルはいつでもとってもいいことになっているわけです。ほかの亀はとっちゃいけないとか、あとカエルをとるにしても、親が子どもとカエル狩りに行った場合は、フィッシングライセンスがないとカエルをとってはいけないことになっているんですね、州によっては。

 ですが、日本の普段の生活の中で、小動物とか絶滅危惧種や保護種とのかかわり方について、一般的に知られていない。生活の中に密着していない中で、いきなりレッドリストと言われて、これをどうやって教育の一環として浸透させていくかというのは、すごく重要だと思うんです。

 釣りの好きな方は、何々が解禁ですと言われたときに、皆さん、釣りに行かれているわけですけれども、普段の生活の中でということと、あともう一つは、保護をするということは、絶滅になる理由があるわけじゃないですか。

 例えば、おととい長野に行っていたのですけれども、そのときにわさび園に、こんなに大きくなったミシシッピアカミミガメを柵に入れてありました。結局、日本亀がいなくなってしまっているのは、この凶暴な外来種が入ってきて日本亀を食べているからです。この外来種をどうやって抑えつけていくか、ある愛知県の先生のところに持っていきますと、凍らせて安楽死させて、地域を保護していらっしゃる。動物を守るべきかどうするかという議論とはまた別なんですけども。

 ただ、保護をしていく上においては、増えてしまったものをどうしていくかとか、あと、ブラックバスが入ってきて日本のいろんな魚を食べて、それをどうやって止めていくか、それがハンドインハンドのセットでないと、ただ守りましょう、保護しましょう、だけでは、むずかしいと思います。

生物多様性というのは、サイクルがあるわけで、強いものが弱いものを食べてしまったり、殺してしまったりするというサイクルの中で、異物がそこに入ったときに、また別なサイクルがそこに出てくるわけですから、そういうことの大きなピクチャーをちゃんと描いていかないと、恐らく幾らレッドリストにして、保護をしようとみんながリストにしたところで、自分の地域もこれを守ります、だけど、何でこれが消えてしまっているのか、何で守るのか、どうやって守ればいいのか、そういう全てくっつけた形でセットにしていかないと、ちゃんと保護し切れないのではないかということが心配なところなのです。

 それについて、環境省で法律をつくって、これをとったら罰金ですよというところがどうやってセットになっていくのかということを、もうちょっと詳しく聞かせていただけると。

【中島野生生物課長】 法律に基づく罰則について、個々の法律の中の詳しい規定についてまで、なかなか一般の国民に周知されていないというのが実態だと思っています。

 我々としては、細かく全部正確に知っていただくというところまで、まだまだ行かないので、まず、どういうことが自然界で問題になっていて、どういうところに一般の方として気をつけていただきたいのか、少し入門的な生き物の取り扱いだとか、そういったことについての普及啓発を進めていきたいと考えております。後でご報告をいたします、日本動物園水族館協会との間の協定の中に、そういった環境教育みたいなことを入れていこうとか、あるいは、今お配りしますけれども、各地に貼るポスターとかパンフレットとか、そういったものも適宜つくって配布をして、普及に取り組んでいこうとしているところでありますが、何せ全ての国民に対して正しい知識が行き渡るというのは相当な努力が必要ですので、これからもいろんなチャンネルなり機会を得て、取り組んでいきたいと考えております。

【石井委員長】 この部分はよろしいでしょうか。

 では、少し先へ行かせていただきたいと思います。次は6ページ、7ページのところですけれども、指定後の保全についてという部分ですね。ここでは参考資料の4番に絶滅危惧種保全カルテの記入例というのがございますが、これについての説明もございました。このあたりも重要なところかなと思うんですけれども、指定後の保全のところ、6ページ、7ページ。それから参考資料4のあたりで、ご意見、ご質問があったらお願いいたします。いかがでしょう。

 では、桜井委員、お願いします。

【桜井委員】 保全カルテのつくり方について、どこまで公開していいかという線引きは非常に難しいと思うんですけども、実際にこれを見てみると、いわゆる定性的なものはあるんですけれども、定量的な部分があまり書かれていません。時系列的に、例えばこの場所でここまで減少したものが、こうなって増えているとか減っているとか、こういう量的な変化を扱えるカルテが本当は必要なんですけども。ただ、それは物によっては、出すことによって非常に大きな弊害が出るので、その辺のバランスが重要となります。定性的なカルテなのか、ある程度定量性を含めて、時空間的な時系列を含めたカルテにするのか、その辺をちょっとお聞きしたいです。

【石井委員長】 続けてご意見を受けたいと思います。

 小泉委員、お願いします。

【小泉委員】 3点あります。一つは6ページ目ですが、指定後の保全について、その体制について、もう少し考えていただきたいと思います。体制ということになりますので、どういった組織が参加するか。そこを見ますと、都道府県との連携を強く意識されているようですけれど、絶滅のおそれのある種の保全においては、市町村との連携も重要と思います。また、その後のことを考えれば、民間団体との連携、協働というのが強く意識されてよいのではないかと思います。

 当然、連携の輪だけができればいいというものではなくて、それぞれの団体の特性を生かしながら、その役割分担というのも明確に定めないと、うまく体制が動かないと思いますので、その点に配慮しつつ体制を組んでいただきたいと思います。

 それから、第2点はページ7、絶滅危惧種保全カルテです。参考資料の4ページ目に例示があるわけですけれども、これは例示で、今後改善すると理解しております。カルテという名前をつけていますので、そのカルテのもともとのイメージから期待されるものがあると思うんですね。それは、どうしてそういう状況になってしまったか。それから、どういうふうにしたら今の状態をよくすることができるか。それがカルテというのをつくることによって、具体的に見えてくるということがないといけないと思います。

 2ページ目に法律のことがいろいろ書いてありますが、カルテの中で、どの項目が一番絶滅のおそれに効いているのか、そういう要因分析ができるカルテになっていく必要があるのではないかと思います。参考資料の4を見せていただいた限り、この点に関しては自由記載になっており、記入者が書きにくいようになっています。書きにくいということは要因を分析しにくいということになると思いますので、その点、配慮をいただきたいと思います。

 それから、三つ目なんですが、これはこの委員会の枠をはみ出すかもしれません。今日の議論の外に出ていくかもしれませんけれども、300種類を絶滅のおそれのある生物種として指定をしていく過程では、保全の成果が上がって、絶滅のおそれのランキングが変わっていく生物種というのがあると思います。そういったものをどう考えていくのか。普通種にして、そのまま野生に置いておけばいいというふうになるのか、それともかつて絶滅のおそれがあったということで特別にモニタリングの対象としていくのか。その辺も、今回の直接の議論では入らないと思いますけれども、今後必要になっていくのではないかと思いました。

 以上です。

【石井委員長】 続けて行きましょう。白山委員、お願いします。

【白山委員】 ありがとうございます。二つ伺いたくて、一つは今のご発言に少し関係するのですけども、300種というのは、附帯決議で決まった数字としては非常にリジッドなのかもしれませんが、それが301になっちゃいけないのかという僕のイメージで、この300という数ありきなのかどうか。保全が必要であり、かつ有効である数が300を超えれば、当然指定してもいいのではないかという気もするので、この数の考え方を少し伺いたいです。

 もう一つは、都道府県のリストが出ていて、これをぱっと拝見すると、例えば四国の都道府県は一つも入っていないとか、それから、多分、希少種が非常にたくさんいるであろう沖縄が入っていないのですけれども、そもそもこの7カ所というのはどういうことで出てきているのかよくわからない。どういうポリシーで、どういうふうに場所を決めていくのか。今後はどんどん変わってくるかもしれませんけど、その辺、少しポリシーをしっかり持ってご選択いただきたいということです。

 以上です。

【石井委員長】 宮本委員、お願いします。

【宮本委員】 2点ございます。最初は、今のお二方と若干関連するんですけれども、指定解除というのはあり得るのかどうか。もしあるとしたら、例えば見直しというのは随時行っていくのか、それとも何年かに一度とか、全体を見直すというような、何か間隔をお考えになっているのかというのを教えていただきたいと思います。

 それから、2点目はカルテに関してなんですけれども、できれば経過がわかるような記録ができるようなカルテをフォーマットとしておつくりいただけたらありがたいと思います。例えば、何年のときはこうだったと、それが何年後にはこうなっていくというような、対策の効果等のところ、あるいは対策をとった結果こういう経過になりましたというようなものがわかるようなフォーマットを希望いたします。

 以上です。

【石井委員長】 ありがとうございます。

 では、高橋委員、お願いします。

【高橋委員】 重複するところもあるんですが、一つは種が相当増える、それぞれに多様な主体のかかわりをその300種全部でどういうふうにイメージできるのかというのが、私にはよくわからないという点が一つです。

 多様な主体がかかわるということで、受け皿をつくるのはとても大変なことですよね、一つ一つ。最近の事業とか政策の中で、簡単に語られることが多いんですけれども、そういうことを考えると、例えば、阿蘇で言えば草原再生協議会のような協議会とか、種の保存法に指定されているような絶滅種が集中しているようなホットスポットを含んでいるのであれば、既存の協議会や事業とうまく連携してやっていくということが現実的なのかなという気が一つします。

 例えば、集中的にそういうのが集まっているところがあれば、自動的に国立公園にしてしまうとか、そういうものもあってもいいのかなという気がしています。

 それから、カルテについては先ほどいろいろお話があったとおりで、効果検証とか保全計画が見えてくる形のものでないと、こうでしたという診断書だけというのはもったいないような気がいたします。

【石井委員長】 ありがとうございます。

 それでは、磯崎委員、お願いします。

【磯崎委員】 これまでの意見とちょっと重なるところがあるんですが、資料の1ページ目から2ページ目、ちょっと戻りますけれども、指定種を増やすということに関連する意見です。現行法のもとでの指定ということなので、現行法の枠はきっと外れないんだろうとは思うんですけれども、概略説明だけだと、これまでと変わって、もっとたくさん指定というようなイメージも感じられました。ただし、1ページ目の左下のほうで優先度や対策の効果ということがあって、それから2ページ目で社会的な条件というので、確かに絞っていますので、現行法レベルなんです。

 ここで、先ほどからの数との関連で気になるのが、従来も、これからも、この方針は変わらないと思うんですけれども、これまで社会的条件ということでなかなか進んでいなかった。そうすると、この2ページ目の社会的条件を少し緩和するというようなイメージが感じられるんですが、そこが具体的にどうなのか。

 というのは、この法律の規制ではない生息地破壊が原因の場合なんですが、この2ページの真ん中のボックスの中に「調整を進める」とあります。種の保存法ではないほかの現行の法律、あるいは他の省庁の所管している事項について、資料の後ろでも、農政局のような農業関係、漁業関係、森林関係というような、ほかの省庁またはほかの産業に関連する部局との調整というのが出てくるんですけれども、この2ページのところの調整というのは、そういう積極的な意味を含めて調整なのか。逆に、従来どおりというか、科学的には必要なんだけど、社会的条件を調整すると指定ができないという意味の調整なのか。積極的なほうだったらいいんですけれども、ただ、積極的な場合は、かなり難しいというか困難を伴うと思います。

 そのことがカルテの話ともかかわってきます。カルテで指定した後どうするのか、これはこの委員会でも2~3年前ぐらいから議論をしています。最終目標はレッドリストから外せる、人間が手を差し伸べてあげなくても動植物として生存できる状態にするのが一番最終のはずですので、そういう意味で、カルテの中にも、これは先ほどから指摘されていますように、何をして安全なところまで連れていくのかという、それがカルテに中に書かれていないといけない。

 ただ、そのときに、先ほどの話なんですが、生息地破壊であったり、ほかの要素のものが入っている。時には、先ほどの積極的な他の部局や他の省庁、またはほかの当事者との間の、積極的調整、協力がないと何もできなくなってしまうということで、結局そこにもかかわってくるかと思います。全体的な話なんですが、気になったところです。

【石井委員長】 ありがとうございます。

 それでは、石井(信)委員、お願いします。どうぞ。

【石井(信)委員】 今の磯崎先生のコメントとも少し関係があって、私が最初に言ったこととも関係があるんですけど、6ページの指定後の保全というところに幾つか基本的な考え方が書いてあります。保全戦略の中に、種の保存法でいろんな規制をかけて保護をするということのほかに、17ページには他法令の保護地域制度の活用という記述があります。ここに鳥獣保護区、生息環境の保全ということになると特別保護地区になると思うんですが、それから、国立公園でもいろんな配慮をしていくということが書いてあり、さらに18ページの(3)に、保護地域外での保全の取り組みと書いてあります。

 保護地域でなくても、いろんな土地利用、資源利用をしているところでも、絶滅危惧種がいる場合には、開発を一切ストップすることが有効な場合もあるんでしょうけれども、利用しながらも守るやり方はいろいろあるので、ここに保全に関するガイドライン等の作成に取り組むということが書いてあります。絶滅危惧要因の最大のものはハビタットの改変なので、そこに配慮した戦略というのも考えていくということだと思います。

 そこで、他省庁とのいろんな調整が必要だとは思うんですが、あれもやるな、これもやるなという話でない場面もたくさんあると思いますので、ぜひ前向きに、今までは知らないでいろいろやっていることでも、そこに絶滅危惧種がいるということで、細かい配慮ができると思いますから、それをお互いに調整して、ハビタット破壊が大きな絶滅危惧要因になるものについても指定をして、いろんな対応をしていくということが読めるような指定後の保全という項目をここに加えていただくといいと思います。

 それから、特に希少種はわからないことがあると思うので、指定した後もきちっと調査をして、正確な情報をとっていく必要があると思います。調査結果の公開は非常に慎重にしなきゃいけませんけれども。

 もう一回簡単にまとめると、ハビタットの保全につながるような保護地域外での取り組みと、それから調査の必要性を加えていただければというこれは提案です。

 以上です。

【石井委員長】 この部分、ほかはよろしいでしょうか。

 それでは、事務局から、ご意見、ご回答があったらお願いします。

【安田希少種保全推進室長】 最初に、カルテが定性的なものか、定量的なものかということなんですけども、なかなか定量的なものは難しいのではないかなと思っています。定量的であるべきだとは思いますので、可能な限り定量的なものにしていきたいと思っていますけれども、全体としては定性的なものにならざるを得ないかなと考えています。

 時系列の話がありましたけれども、これも重要だと思っていまして、カルテについては常に見直しをしていく。例えば加除式みたいな形で、新しい情報については入れていくというようなことで考えていきたいと思っています。

 次に、保全体制の話がございました。もちろん都道府県だけではなくて、市町村、民間団体、それから先ほどもちょっとお話ししましたけども、企業。例えばその地域の希少種に対して地域の企業からドネーションをしていただくとか、そういった希少種と企業とのマッチングみたいなこともやっていきたいと思っています。そういった予算も考えながら、地域で取り組んでいくようなことを、なかなか難しいとは思っていますけれども、その辺をこれから進めていきたいというふうに思っています。

 あと、カルテのイメージですけれども、減少要因がわかるようにということでした。その辺は記述の仕方も少し考えてみたいと思います。減少要因に対して何が行われているのか、課題が何なのか、わかるような形にしていきたいと思っています。

 それから、300種の指定について、生息状況等が変化した場合、ランクが変わったような場合、どうするのかということなんですけれども、仮にレッドリストで、2回の見直しで絶滅のおそれがない、CR、ENあるいはVUから外れたものについては、国内希少種から外していくということを今までもやっています。今現在ではオオタカについてどうしていくかということを検討中ですけれども、そういったことがあれば見直しをしていく。これは何年に1回ということではなくて、レッドリストの見直しは一つの契機になると思いますけれども、それに基づいて随時行っていきたいと考えています。

 300種の根拠といいますか、数ありきかということについて、レッドリストで3,600種ぐらい、最近のものでは挙げられているわけなんですけども、その中でも一番ランクが高い、絶滅のおそれが高いとされているCR、1A類が700種ぐらいになります。

 現在、国内希少種に指定されているのが89種ですけども、それ以外に都道府県の希少種保護条例とか天然記念物、あるいは国立公園とか、ほかの制度でおよそ300種程度の保護が図られているということで、あくまでも計算上の目安ですけれども、残り300種を指定していくと大体CRがカバーできる。実際にはCRだけではなくて、ほかのものも指定していきますので、必ずしもそういうわけではないですけども、理論的には、一番ランクが高い部分を何とかカバーしていくということで、300種ということを考えております。

 それから、レッドリストからもし外れた場合、国内希少種の指定を解除する場合であっても、当面モニタリング等は継続して、また状況が変わったりすれば、再度国内希少種に指定するということはあり得ると考えています。

 それから、主体のかかわりということですけれども、既存の協議会とかがあれば、そこと連携していくべきだというお話がございました。これはもちろんそのとおりだと思います。恐らく、協議会というのが一番あり得る主体のあり方かなと思っていまして、そこにいろんな方々に入っていただく。例えば企業などにも入っていただいて、そこでサポートしていただくという形を考えていきたいと思っています。

 それから、種の指定のときの社会的条件につきましては、ここで言っている調整というのは、例えばほかの省庁の事業とか、あるいはそれぞれが所管しているものの中で希少種がいた場合に、その希少種を指定していくということについて調整を図っていくということでございます。

 今までそのような調整が非常に難しくて、種指定が進んでこなかった要因の一つと考えられますが、近年、大分状況は変わってきていると思っています。社会的な関心も非常に変わってきていますし、あるいは各省庁も環境との共存、あるいは希少生物との共生みたいなことを挙げていますので、調整は既に始めているところなんですけれども、かなり感触は変わってきていると感じています。そのところは積極的な調整ということで考えていただければと思います。

 最後に、今のこととも関連するんですけれども、他法令との関係とか、あるいは保全に関するガイドライン、そういったものについても、生息地がまとまっているところについては他法令とか、生息地として保護していくという取組も必要だと思いますので、ほかにも、この種指定に限らず、この保全戦略の中では、いろんな既存の制度を使って対応していくというふうになっていますので、そこはいろんなやり方を考えていきたいと思っています。

 それから、ちょっと飛ばしましたけれども、説明資料6ページの説明会の開催場所なんですけれども、7カ所になっていますのは、今、環境省の事務所があるところで、例えば、東北であれば仙台以外にもほかの東北の県は全部入っていますし、これで47都道府県全てをカバーするようなことで考えています。

 以上でございます。

【石井委員長】 これで大体回答がありましたでしょうか。石井(信)委員から、6ページの上のところですかね、基本的な考えの中にハビタット保全のところ、それから指定後のモニタリング調査も書き加えてほしいというのがあったと思いますが、よろしくお願いします。

 ほかに。クリスティーヌ委員。

【マリ・クリスティーヌ委員】 今、オオタカの話が出たのでお聞きしたいんですけど、たしか去年、ここの会議のときに、オオタカを外すという方向で言っていたのはまだ決まっていないんですか。あのとき、皆さんに意見が求められて申し上げたと思うんですけれど。

【安田希少種保全推進室長】 基本的に外すという方針で考えています。ただ、丁寧に対応していく必要があるということがありますので、この後、10月にもう一度シンポジウムをやって、そこでいろいろ意見を聞いた上で、さらに最終的に判断をしていきたいと考えています。

【石井委員長】 よろしいですか。

【マリ・クリスティーヌ委員】 国のいろんなやり方は非常に丁寧だと思うんですけれども、ただ、本当に絶滅危惧を心配されている動物にとっては一日も早く、早急に物事を動いてあげなければいけないもので、丁寧な対応もすごく大事だと思うんですけれども、もうちょっと早く物事を進めるということもすごく大事だと思います。

 あと、生物多様性と考えたときに、今回、デング熱もどこから入ってきたかわからないような状況の中で、もしかしたら意図的に連れてこられている可能性もなきにしもあらずですし、今、アフリカでエボラ熱も蚊によってという話の中で、誰かが瓶詰にして日本に持ってきたら、入ってきたらどうするかとか、もっとそういうチェック機能も、もちろん環境省は環境保全をするわけですから、先ほどから出ているハビタットもすごく大事だと思うんですが、そういう入り口も、先ほどから話が出ているような省庁とのかかわり合いの中で、罰則はすごく大事で、こういうことをしてはいけない、いろんなものを持ち込んではいけないとか、日本のものも持ち出してはいけない、そういう機能がちょっと弱いのではないかなと。

 アメリカの法律では、州境の物の移動も非常にうるさいので、日本も県の間での物の移動とか、子供がカブトムシをどこかの地域からとってきて、それを自分の地域に持ち帰って、そこで放してしまったとか、先ほどの亀の話も含めてそうなんですけど、そういう意識をもっとパブリックに高めていかない限りは、一生懸命こういうことをやられても、意識というものは変わっていかないような気がするんですね。

 私たちは話を伺って、これじゃいけない、あれじゃいけないとわかりますけど、一般の方々に対して、どうやってPRしていくかということがすごく大事で、事が起きたときではなく、むしろ常に環境教育の中で、こういうことはしてはいけませんとか、こういうことが心配なんだとか、もっとPRをきちんとしていただけたほうがいいのではないかなと。

 だから、私はもうオオタカはあちこちで、もう外れたんですよ、この間みんなで決めましたからと言って歩いていたのに、まだ決まっていないんだということで、すみませんけど、そういう情報をもう少しいただけたらうれしいなと思いました。

【石井委員長】 では、コメントとして受けとめたいと思います。

 そろそろ時間ですので、たくさんの意見を委員の方々からいただきました。事務局におかれましては、ただいまのご意見を踏まえて、希少種の指定等の作業を進めていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、その他報告等のところですけれども、4件続けて行きたいと思います。トキ関係、それから日本動物園水族館協会との協定の関係。ニホンウナギの関係、それから鳥獣法の関係ということで、事務局からのご報告、よろしくお願いします。

【安田希少種保全推進室長】 最初にトキの生息状況についてです。今年度の野生下のトキの繁殖結果、(1)のところですけれども、真ん中の表を見ていただければと思いますが、2014年、今年はふ化したヒナの数が、おととし8羽、昨年14羽に比べて、36羽ということで、非常に数が増えています。

 放鳥した数が増えてきたということと、あるいは環境になれてきたとか、いろいろ要因はあると思われますが、この1年間だけではわかりませんけれども、今年度の状況としては野外での繁殖状況がよかったということです。

 それから、初めて放鳥してから孫の世代に当たるヒナが生まれたということがございます。

 それから、飼育下でのトキの繁殖状況ですけれども、ヒナの数は61羽ということで、最終的に54羽が巣立ちしています。その下の野生下のトキの生息状況ですけれども、現在、自然界に132羽、放鳥トキは93羽、野生下の繁殖トキは39羽ということで、順調に増えてきていまして、一番最後のところですけれども、2015年ごろに佐渡での定着数、この定着というのは1年以上そこに生息しているという前提なんですけれども、60羽が目標だったんですが、それを1年前倒しで今年度、既に目標を達成しました。今年度から、次の段階として新たな目標とロードマップについて検討していくことにしております。例えば、次の数としては、レッドリストでいけば1ランク落として250羽とか、そんな数が目標になってくるのかなと考えております。

 続きまして、参考2の日動水との協定の締結についてです。今までも各動物園とそれぞれの希少種の保護活動について、一緒に飼育下の繁殖、域外保全について協力をしていただいてきたところです。

 例えば、ツシマヤマネコであれば福岡市動物園とか、個別に取組をしていたんですけれども、それを日動水として協力していただくということで、例えばヤマネコでも複数の園・館の中で、特に相性のいいものを集めて、ある特定の場所で増やすということをやっていただいているところです。その甲斐がありまして、ツシマヤマネコにつきましては、過去4年間、繁殖がうまくいっていなかったのですが、今年度、4頭新しく生まれて、また新たなペアリング等が検討できるという、非常によい体制になってきたところです。

 そのほかに、外来種の防除の専門的な助言とか種の同定、あるいは生物多様性の保全に関する普及啓発、そういったことについて連携の基本協定を結んだところでございます。これに基づいて、先行的にツシマヤマネコをやっていたんですけれども、今後はライチョウの保護、飼育下繁殖について協議を進めているところです。それ以外にも、どんな種が適当かということについて、今、日動水と環境省で協議をしているところでございます。

 以上です。

【事務局】 次に、参考3でございます。野生生物課計画係長の桝と申します。私から、環境省で6月から実施しておりますニホンウナギ保全方策検討調査について、ご説明、ご紹介をさせていただきたいと思います。

 絶滅のおそれが増大する野生生物への対策として、レッドリストを基礎資料として作成し、それぞれ絶滅のおそれを評価して、絶滅のおそれのある野生生物に関する理解を広める取組を進めております。

 先ほど来ご議論いただいきました種の保存法に基づき国内希少野生動植物を指定するといった法律による対応もありますが、もう一方で、保全方針をつくって、各主体の自主的な取組を促すということも実施しております。ウナギに関しては、この手法で保全の方針を検討していくということを実施しております。

 めくっていただきまして、環境省レッドリストにおけるニホンウナギの位置づけですけれども、平成25年2月に、第4次レッドリストの際に絶滅危惧ⅠB類に位置づけております。これは河川の感潮域、淡水が汽水と混じるところに生息した履歴のある固体が、産卵に大きく寄与するということが明らかになっておりますので、そうすると、河川での漁獲量の変化から個体数の変化が推定できるということになりますので、左にありますグラフの減少率を、「3世代の減少率50%」という基準と照らし合わせまして、絶滅危惧ⅠB類と位置づけたところでございます。

 ニホンウナギが、どうしてこのように大きく減少している原因は大きく三つございまして、海洋環境の変化と、漁獲、河川沿岸域の環境の変化です。これに対して、環境省として何ができるのか、レッドリストに位置づけて以降、考えてまいりました。

 次のページに行きまして、環境省の方針のところです。通常ですと、レッドリストにおける評価を通じて、社会に警鐘を鳴らすとか、保護意識を醸成するとか、各主体の取組をそれによって促進することが取組方針となります。各主体とは、今回のニホンウナギの場合は水産庁や都道府県、漁業関係者ですが、それらが国内的又は国際的に行っている漁業の資源の回復の取組を推進することに期待すると表明する、通常ですとここまでです。しかし、ウナギに関してはこれだけの大きな資源量の減少が言われておりますので、環境省としても何かしないといけないと考え、ニホンウナギの生息環境の調査を実施することとし、6月から調査を始めたところです。

 汽水から淡水域における生息環境を明らかにして、その保全や再生の方策を検討して、最終的にガイドラインとしてとりまとめたいと考えています。現時点での想定としては、ウナギを良好な自然環境の指標と捉え、生物多様性の向上を目指すという観点から取組を進めてたいと考えています。

 ちなみに、この調査は6月に開始しましたが、ちょうど時を同じくして、6月12日にIUCNでレッドリストの改定が行われて、IUCNのレッドリストにおいても絶滅危惧種ⅠB類になったところでございます。

 このページの下に行きまして、ニホンウナギ保全方策検討調査の手順でございます。最初に天然ウナギの自然分布を把握したいと考えております。ウナギは養殖場で育って放流された個体が意外と多く、全国のニホンウナギの地理的な分布、さらにそれぞれの水系におけるニホンウナギの天然分布が、実は今、正直わかっていない状況になります。

 そういう基礎情報を集めまして、どういうところにウナギがいるのか、生息環境を類型化しまして、類型化したそれぞれの場所で細かく見ていきまして、マイクロハビタット、ウナギ一匹一匹に着目したときに、周りの環境をどのように利用しているのかをもうちょっと細かく見ていきます。そうすると、ウナギが好む環境条件が明らかになってきますので、それを保全したり再生したりすれば、川におけるウナギの生息が良好な状態になるのではないかという考えでおります。

 次のページに行きまして、平成26年度調査内容と書いてあるところですけれども、調査の体制は、平成26年度ニホンウナギ保全方策検討委託業務を中央大学に委託をし、中央大学がとりまとめになりまして、東京大学、北里大学、九州大学、長崎大学と調査グループを組んでいただく、そういう体制で調査を実施しています。

 調査の具体的な中身をもう少しご説明させてください。全国のニホンウナギの自然分布、地理的な分布につきましては、日本全国の各地からサンプルを入手しまして、ウナギの耳の後ろにある耳石を取り出して分析し、天然個体なのか、放流個体なのかを明らかにします。それによって、特に東北とか日本海側の分布の縁辺部分で、天然加入の個体がいる河川と放流個体のみしかいない河川との境目を見つけることで北限を明らかにしていきたいと思っています。

 次のページに行きまして、水系内のニホンウナギの分布でございます。ニホンウナギの遡上範囲と、それを規定する要因を、河川の基礎情報である河川の形態型、どういう形態の河川なのか、あと、河川構造物の位置と内容を把握して、天然、放流個体の分布状況を把握したいと思います。

 今年は水系内のニホンウナギの分布、天然ウナギの分布がどういう分布をしているかというところに力を入れます。来年度に関しましては、さらにマイクロハビタットの解明のため、ウナギの生息と環境条件の関係をより深く明らかにしていきたいと考えています。

 現地調査は利根川、酒匂川、西郷川、川棚川と四つの河川で実施しております。岡山県でも3河川記載していますが、これは現地の漁業協同組合とサンプルを入手できる体制が組めておりますので、そこからウナギのサンプルを入手して、主に天然ウナギの分布状況を明らかにしたいと思っております。

 最後のページでございます。私が現地で予備調査に参加した際の写真を掲載しております。左二つの写真、これは電気ショッカーというのを背負っているんですけれども、それで電気ショックを与えてウナギを捕獲して、その中の一部について耳石を取り出して、分析を進めていきます。

 今後の予定としては、おおよそ現地調査を今年は10月ごろまで実施します。そして水系内におけるニホンウナギの分布を今年度に明らかにしていきます。来年にはマイクロハビタットの利用に関する調査を本格的に実施し、平成28年度以降、生息環境の保全・再生のためのガイドラインを作成したいという目標で、現在実施しているところでございます。

 以上でございます。

【事務局】 それでは、続けて、参考の4-1と4-2についてご説明させていただきます。鳥獣保護法の改正に関するご説明になります。

 まず、参考4-1について、鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律の一部を改正する法律について、さきの国会で成立し、平成26年5月30日に公布されたところでございます。この法律につきましては、昨年度、自然環境部会のもとに設置された、鳥獣保護管理のあり方検討小委員会で、石井委員長のもとで、鳥獣の保護及び狩猟の適正化につき講ずべき措置についてご検討いただき、1月に答申をいただきまして、それを踏まえて内容を検討したものでございます。この法律につきましては1年以内に施行する予定としておりまして、現在この法の施行に向けた準備を進めているところでございます。

 この法律の概要について簡単にご説明させていただきたいと思います。まず、法律の改正の必要性、背景でございますけれども、ニホンジカやイノシシによる自然生態系への影響及び農林水産業被害が深刻化しているということと、また、狩猟者の減少・高齢化によって鳥獣の捕獲の担い手が減少しているといったことを踏まえまして、鳥獣の捕獲の一層の促進と捕獲の担い手の育成が必要ということがございました。

 これに対応するために、以下の主に6点の改正を行っております。1番目として、題名、目的の改正としまして、数が著しく増加している、又はその生息地の範囲が拡大している鳥獣による生活環境、農林水産業又は生態系に係る被害に対処するための措置を法律に位置付けるために、今回、法律の題名に「管理」を加えて、法の題名を変更しております。さらに、法の目的に鳥獣の管理ということを加えまして、これに伴い、鳥獣の保護と管理の定義を規定しております。

 鳥獣の管理につきましては、生物多様性の確保、生活環境の保全又は農林水産業の健全な発展を図る観点から、生息数を適正な水準に減少させる。又はその生息地を適正な範囲に縮小させるというふうに法律上の定義をしております。

 また、この1番目を踏まえまして、鳥獣保護法の施策体系を整理しております。都道府県知事が策定しなければならないとしている「鳥獣保護事業計画」に管理の要素を加えまして、「鳥獣保護管理事業計画」に改めております。また、従来の特定鳥獣保護管理計画につきましては、二つの計画に分け、保護のための第一種特定鳥獣保護計画と、また、管理のための第二種特定鳥獣管理計画というふうに二つに分けまして、目的を明確化したものにしております。

 次に3番目、捕獲事業を強化するための措置としまして、指定管理鳥獣捕獲等事業を新たに創設しました。これにつきましては、集中的かつ広域的に管理を図る必要があるとして、環境大臣が定めた鳥獣、指定管理鳥獣ですけれども、これについては都道府県や国が捕獲をする事業を新たに実施できるとしております。この事業につきましては、捕獲の許可を不要にする、また、一定の条件下で夜間従業を可能にするなどの規制緩和を行っております。

 次に、4番目、鳥獣の捕獲の担い手の確保につきましては、認定鳥獣捕獲等事業者制度を新たに導入しました。これにつきましては、鳥獣の捕獲等をする事業を実施する者について、鳥獣の捕獲に係る安全の管理体制や、その従事者の技能や知識が一定の基準に適合しているということについて、都道府県知事が認定するという制度でございます。

 そのほか、5番目に書いてありますけれども、今まで住居集合地域における銃猟は禁止になっていたんですけれども、今回、麻酔銃猟につきましては、都道府県知事の許可を受けて実施できることになりました。

 また、6点目ですけれども、網猟とわな猟免許につきましては、取得年齢を18歳に引き下げております。

 次に、2枚目の参考4-2ですけれども、この改正法につきまして、今後のスケジュールについてご説明させていただきたいと思います。この改正法は1年以内に施行ということで、今回、できるだけぎりぎり丸々1年とれるように考えて進めております。

 法律の施行までに、下の半分のところで、都道府県がやらなければならない事業を書いておりますけれども、都道府県の鳥獣保護管理事業計画、それから必要に応じて特定計画をつくっている都道府県についてはその特定計画、また、認定鳥獣捕獲等事業者制度の準備、これらについて都道府県が法律の施行までに準備することにしております。そのため、都道府県の準備の期間をできるだけ長くとるため、環境省で準備しなければならない作業も、今急ぎ進めているところでございます。

 環境省としましては、鳥獣保護管理事業の基本指針と、また、施行令と施行規則、それから各種通知の準備をしております。この基本指針につきましては、6月19日に中央環境審議会に諮問させていただきまして、現在、鳥獣の小委員会で検討いただいておりまして、今、3回開催して案をまとめていただきまして、9月、来週ころからパブリックコメントを実施するための準備を進めているところでございます。

 パブコメが終了後、自然環境部会にお諮りをして、11月、遅くとも年内までには基本指針の公布というスケジュールで進めております。また、政令、省令も、遅くとも年内までにはということで進めているところでございます。

 鳥獣保護法については以上でございます。

【石井委員長】 どうもありがとうございました。コンパクトに、4件続いてご報告いただきました。

 それでは、この4件、どこでも結構ですので、ご意見、ご質問があったらお願いいたします。いかがでしょうか。

 どうぞ、尾崎委員。

【尾崎委員】 ウナギのことはすごく関心があって、興味深く伺いました。ただ環境省以外で、水産庁とかいろいろなところでウナギを調査しておられると思うんですが、正直、こういう基礎的なことがわかっていないということ自体を不思議に思います。恐らく環境省としてはわかっている部分を確認し、減少原因などの検討をするということがこの調査の趣旨かなと思います。そのようなことよりもむしろ、もう少し前向きな、具体的な対策を打ち出すことに力点を置かないと、何か世の中の人の理解が得づらいのかなと考えます。私は、魚のことをよく知らないので勝手なことを言っていますけども、そんな印象を持ちました。

【石井委員長】 ほかはいかがでしょうか。

 では、白山委員。

【白山委員】 参考2の日本動物園水族館協会との協定なのですけども、多様性保全の推進に関する基本協定ということで、気になったのは、いわゆるCITESですね。取引は本当はしちゃいけないのだけど、日本に入ってきちゃった動植物を、一時的にどこかが飼育をしなくちゃいけなくて、多くの場合、動物園がボランタリーにやっていらっしゃると思うんですけど、それは、この中にきちっと位置づけてさしあげてあるかどうかというのを確認させていただきたいと思います。

【石井委員長】 ほかはいかがでしょうか。

 なければ、2件コメントとご質問がありましたので、事務局からお願いします。

【中島野生生物課長】 まず、ウナギについてでございますけれども、今回いろいろ専門家の方とお話をして、基本的なことが案外わかっていないということがわかりまして、私たち自身もちょっと驚いているところであります。水産庁はいろんな調査を今までしてきているんですけども、どちらかというと漁業のために必要な調査研究で、実際の基礎的な生態みたいなことは余り取り組んでこなかったと聞きまして、水産庁もその辺の調査をこれからしていきたいということを伺っていますので、内容については水産庁と環境省の間で調整をしながらやっていきたいと考えております。

 なお、現段階で相当社会的な話題になっていますので、環境省としては、国民に広く訴えかけるようなガイドラインを早くつくりたいと考えておりますけれども、今の知見だけで、そこまですぐに行ける自信がまだないものですから、ここ一、二年はそのあたりの調査をしてから、ガイドラインの検討に入りたいと考えております。

 それから、日動水との協定の件でございますけれども、実はCITESは経済産業省の所管でありまして、経済産業省が一定程度の予算を組んで、日動水にお願いをして、やっているという枠組みが別にございまして、したがって、今回の基本協定の中には入れていないということでございます。ご理解いただければと思います。

【石井委員長】 

 ほかはよろしいでしょうか。

 そうしましたら、今の4件のご報告以外に全体のところで何かコメント等があったらお願いいたします。

 山極委員、お願いいたします。

【山極委員】 絶滅危惧種だとか、あるいは国内希少野生動植物種の保全を図る上で、罰則の強化というのは非常に重要だと思うんですね。途中で配られた「絶滅危惧種を捕ることのインパクトは大きい」というパンフレット、これは非常に有効だと思うんですけども、「むやみに捕ることは、その生きものを本当に絶滅させてしまいかねません」と書いてあるんです。むやみに捕らなきゃいいのかという話ですよね。

 例えば、真ん中にも「法律等で罰則を伴う規制がかかっている種でさえも、密猟されている現状があります」。そうか、これは捕ってもいいんだという話になってしまいかねない。だから、むやみに捕らないことはとても重要です。ちょっと捕るならいいのか、というようにも見えなくもない。これはいちゃもんみたいに聞こえるかもしれないけど、これは罰則がないか、あるいは非常に軽いからですね。

 一律にどの種も同じような罰則をかけるというのは現状に合わないかもしれないんですけれども、動物種の希少性、それから回復力の違いによって相当な危険が生じている場合には、罰則をもっと強化してもいいんじゃないかなという気がするんですけどね。そのあたりの環境省の方針はどうでしょうか。

【石井委員長】 事務局、いかがでしょうか。

【中島野生生物課長】 昨年の種の保存法の改正ポイントの一番大きなものが罰則の強化でございまして、それまで確かに余り大きな罰則じゃなかったものですから、最大で個人の場合はたしか500万円、法人の場合、1億円というところまで罰則を引き上げたところでございます。これについても、まだまだ普及されていないところがございますので、これから罰則が相当大きくなったんだよということについても周知徹底をしていきたいと考えております。

 ただ、今の種の保存法の枠組みでは、国内希少野生動植物は全て同じレベルで、どの種であっても同じ罰則が、同じ行為に対して同じ罰則がかかるということになっておりますので、現状では絶滅のおそれの段階に分けて罰則も分けるというような仕組みにはなってございません。

 種の保存法の改正のときに、附帯決議で施行後3年後に、種の保存法が改正を検討しなさいということになっておりますので、今日いただいたいろんなお話とともに、そのあたりのことも3年後の検討のときには検討の内容に入ってくるのかなと思っております。

 以上です。

【石井委員長】 いいですか。

【山極委員】 もう一つ、このパンフレットは個人の行動に向けてのお願いになっているんですけども、もしそういう人がいたら注意してあげましょうみたいなもののほうが、いいような気がするんです。みんなで注意し合いましょうという、つまり、そういう基準をみんなでつくりましょうよと、みんなで守りましょうよという形のパンフレットにしたほうが普及効果は高いんじゃないかなと思いました。

【石井委員長】 コメントということで、いいですね。

 ほかは。

 クリスティーヌ委員。

【マリ・クリスティーヌ委員】 この法律を去年変えてから、一般の方で捕まった方はいるんですか。

【中島野生生物課長】 国内希少野生動植物の採取、捕獲ではなくて、国際希少野生動植物の違法輸入といいますか、違法取引に関しては検挙された方がいらっしゃいます。

【マリ・クリスティーヌ委員】 ということは、一般の方々は皆さんとても真面目で、こういうことを一切なさらないということですか。普通、ニュースにのるんですけど。

【中島野生生物課長】 そこは、実際に行為が行われていないのか、それともその行為が行われていても我々が把握していないのか、そこははっきり申し上げることができませんけれども、やはり詳しい方に聞くと、我々が知らないところで、そういった違法採取、違法捕獲が行われて、結構いなくなっているということは噂のような形で聞くことがございますので、そのあたり、もう少ししっかり調査を進めていきたいと思います。

【石井委員長】 よろしいですか。

 それでは、そろそろ時間ですので、特になければ閉会にしたいと思いますが、事務局から何かございますか。

【中島野生生物課長】 本日、主にご議論いただきました国内希少野生動植物の新規指定は、これから2020年までに300種をめどに追加指定をするということで、先ほどもご意見をいただきましたけども、これまでできていなかったのに、これからこんなにたくさん本当にできるのかとか、あるいはやった後、大丈夫なのかというご心配の声もよく聞くところであります。

 私どもの考え方としては、先ほど室長から申し上げましたように、世の中の環境保全に対する考え方は相当変わってきていることと、種の保存法の施行体制といいますか、私たちの取り組みがやや足りなかったところも今まであったんじゃないかなと考えております。幸い、4月から専門の室ができまして、スタッフも増強しましたし、予算も増やすことができましたので、これから積極的に新規指定については取り組んでいきたいと考えております。

 今後も、さまざまな面で先生方のお知恵を拝借することがあると思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【石井委員長】 では、以上をもちまして、本日の小委員会を閉会といたします。

 次回は来月15日水曜日、14時からということで、この場所で開催予定とのことでございます。正式なお知らせは、別途、事務局からなされると思います。

 本日はどうもありがとうございました。