中央環境審議会自然環境部会温泉小委員会第4回会議録

1.日時

平成18年11月21日(木)10:01~11:47

2.場所

東海大学校友会館「朝日の間」

3.出席者

(委員長) 熊谷 洋一
(委員) 石川 理夫 板寺 一洋 大野 英市
岡部 昭典 川名 英子 甘露寺泰雄
桑野 和泉 佐藤 友美子 田中  正
津上 俊治 中村  昭 原田 純孝
森戸  哲

(環境省) 冨岡自然環境局長
黒田大臣官房審議官
泉総務課長
中野自然環境整備担当参事官
築島動物愛護管理室長(兼:総務課課長補佐)
中村総務課課長補佐
黒川総務課課長補佐
山口参事官補佐
佐藤参事官補佐

4.議題

  1. 温泉資源の保護対策及び温泉の成分に係る情報提供の在り方等について
  2. その他

5.配付資料

資料1 温泉小委員会委員名簿
資料2-1 温泉資源の保護対策及び温泉の成分に係る情報提供の在り方等について(諮問)
資料2-2 温泉資源の保護対策及び温泉の成分に係る情報提供の在り方等について(付議)
資料3 温泉行政をめぐる最近の動き
資料4 温泉行政の諸課題に関する懇談会報告書
資料5 温泉資源の保護のために~神奈川県の事例より~
資料6 温泉小委員会の検討スケジュール(案)
参考資料1 温泉小委員会の設置について(自然環境部会決定)
参考資料2 温泉小委員会の運営方針について(自然環境部会長決定)
参考資料3 温泉事業者による表示の在り方等について(中央環境審議会答申)
参考資料4 温泉法の概要、温泉法条文

6.議事

【中野参事官】 自然環境整備担当参事官の中野でございます。
 時間がまいりましたので、ただいまから第4回温泉小委員会を開会いたします。
 委員の皆様には、お忙しい中お集まりをいただきましてありがとうございます。
 本日は13名の委員の方々にご出席をいただいております。定足数を充たしておりますので、ご報告申し上げます。
 なお、森戸委員につきましては、ご出席予定でございます。岡島委員、小原委員につきましては、ご都合によりご欠席との連絡をいただいております。
 それでは議事に先立ちまして、冨岡自然環境局長より、ごあいさつを申し上げます。

【冨岡局長】 ご紹介いただきました冨岡でございます。
 この温泉小委員会におかれましては、一昨年から昨年にかけまして、白骨温泉に端を発しました、白濁液を混ぜるといったようなことに対しまして、どう対応するかにつきましてご審議いただきまして、これに基づきまして、省令改正ということで適正化を図ることができました。
 そのいただいた答申の中には、中長期的に温泉資源をどう保全していくべきかということや、成分の表示期間につきましてどうすべきかというふうな課題が示されていたわけでございますが、これに対応するため、ことしの6月に、温泉行政の諸課題に関する懇談会を設置いたしまして、先月この報告書を取りまとめていただきました。
 本日は、こうしたものを踏まえまして、次の通常国会での法律改正も視野に入れまして、どのような方向がいいのかということをご審議いただくという趣旨で諮問させていただいたところでございます。
 申し上げるまでもなく、温泉は、古くから我が国で広く親しまれてきた大変貴重な資源でございますし、ある意味では世界に誇れるものであると思っておりますけれども、これを将来に引き継いでいくことが、また我々の世代に課せられた大きな役割であると思っておりますが、現状につきましてご審議いただきまして、これからの方向をお示しいただければありがたいと思っております。よろしくお願い申し上げます。

【中野参事官】 ここで、本日より新たに温泉小委員会の審議に参画していただくことになりました3名の委員の方をご紹介させていただきます。
 まず、神奈川県温泉地学研究所主任研究員の板寺一洋委員でございます。

【板寺委員】 板寺です。よろしくお願いいたします。

【中野参事官】 次に、静岡県健康福祉部生活衛生室長の岡部昭典委員でございます。

【岡部委員】 岡部でございます。よろしくお願いいたします。

【中野参事官】 続きまして、筑波大学大学院生命環境科学研究所教授の田中正委員でございます。

【田中委員】 田中です。専門は水文科学でございます。よろしくお願いいたします。

【中野参事官】 続きまして、環境省自然環境局の幹部をご紹介いたします。
 私の隣、黒田審議官でございます。

【黒田審議官】 黒田でございます。よろしくお願いいたします。

【中野参事官】 この列、向こうから2人目、泉総務課長でございます。

【泉総務課長】 よろしくお願いいたします。

【中野参事官】 それから私の左隣、築島室長でございます。

【築島室長】 よろしくお願いいたします。

【中野参事官】 以上でございます。
 次に事務局より配付資料の確認をさせていただきます。

【事務局(佐藤)】 参事官補佐の佐藤でございます。よろしくお願いいたします。
 座ったままで恐縮ですが、まず資料の確認をさせていただきます。1枚、議事次第という紙がございます。続きまして、資料1ということで、本小委員会の委員名簿がございます。次に資料2-1と書いてございますが、今回の諮問につきまして紙がございまして、その裏側には資料2-2ということで、この当審議会の自然環境部会への付議についての資料がございます。次に資料3でございますが、ホチキスでとめてありますけれども、温泉行政をめぐる最近の動きというものがございます。次に資料4といたしまして、先ほどもお話に出ました懇談会の報告書という冊子がございます。その次には、A4の横の紙になりますけれども、資料5といたしまして、温泉資源の保護のためにということで、これは本日、板寺委員の方からご説明が後ほどあると思いますが、このA4横のパワーポイントの紙がございます。さらに資料6でございます。温泉小委員会の検討スケジュール(案)というものが1枚紙でございます。
 それから、参考資料でありますが、参考資料1、温泉小委員会の設置について。参考資料2、温泉小委員会の運営方針について。参考資料3、温泉事業者による表示の在り方等について、答申というもの、冊子であります。最後に、参考資料4、温泉法の概要、そのほか温泉法の条文が示されたものが添付されていると思いますが、ご不足等ございませんでしょうか。

(なし)

【事務局(佐藤)】 ありがとうございます。
 続きまして、ここで温泉小委員会の運営方針について、一部改正が行われましたこと、及び本日初めて温泉小委員会にご参画いただいている委員もいらっしゃいますので、改めまして委員会の運営方針について事務局よりご説明させていただきます。
 恐縮ですが、参考の2をごらんいただきたいと思います。よろしいでしょうか。
 温泉小委員会の運営方針についてということで、まず、一、会議の公開についてでありますが、小委員会は原則として公開するものとするとされています。ただし、公開することにより公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがある場合などは、委員長は、小委員会を非公開とすることができるとされております。
 次に飛びまして、二、出席者についてであります。代理出席は認めないこととされております。なお、欠席した委員、臨時委員及び専門委員につきましては、事務局から資料送付等により会議の状況を伝えるものとするとされております。なお、今般、板寺委員が専門委員として本小委員会にご参画いただいておりますので、裏面に示されておりますように、部会長の決定により一部ここの文言が改正されているということをご報告させていただきます。
 続きまして、三、会議録についてであります。会議録は、発言内容を精確に記載するものとする。会議録の調整に当たっては、当該会議に出席した委員等の了承を得るものとするとされております。従いまして、会議ごとにできるだけ早期に会議録の案を事務局が作成し、各委員に送付させていただきますので、ご確認をお願いするという作業がございますので、ご協力方、よろしくお願いいたします。
 また、(2)の方に書いてございますが、公開した会議の会議録は、公開をすることとされておりますので、あらかじめご了解いただきたいと思います。
 以上、温泉小委員会の運営方針についてご説明をさせていただきました。

【中野参事官】 それでは熊谷委員長、これからの進行をよろしくお願いいたします。

【熊谷委員長】 おはようございます。熊谷でございます。私は、中央環境審議会の自然環境部会長を務めております関係から、本温泉小委員会の委員長を仰せつかっております。
 本日は第4回ということでございますが、これまでの委員の先生方に加えまして、新しくご専門の委員の方にもお加わりいただいておりますが、どうぞよろしくご審議のほど、ご協力をお願いいたします。それでは座って進めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず最初に、去る11月8日に環境大臣から中央環境審議会に対し、温泉資源の保護対策及び温泉の成分に係る情報提供の在り方等について諮問がなされましたこと。また、これを受けまして、同日付で中央環境審議会会長から自然環境部会に付議されましたことをご報告いたします。
 それでは、議題1に入りたいと思います。
 ただいま申し上げました諮問の内容及びその背景について、事務局から説明をお願いいたします。

【事務局(佐藤)】 それでは、また座ったままで恐縮ですけれども、まずは資料の3をご覧いただきたいと思います。温泉行政を巡る最近の動きという資料でございます。
 まずは、1ページ目では本小委員会でご審議をいただきまして、その結果をもとに温泉法施行規則を改正いたしました経緯について、振り返らせていただいております。
 平成16年7月以降、一部の温泉地において、表示なく温泉に入浴剤を添加するなど、温泉を巡る問題が発生いたしました。
 同年10月、中央環境審議会自然環境部会に「温泉小委員会」が設置され、11月から翌年2月にかけまして、3回にわたり温泉小委員会における審議が行われました。
 17年2月10日、「温泉事業者による表示の在り方等について」の答申をいただき、同24日、温泉法施行規則を改正いたしました。
 答申のポイントでありますが、温泉への加水、加温、循環ろ過、または入浴剤の添加等につきましては、そうしたことを実施している旨、及びその理由について表示するようにということでありました。
 なお、その答申には中長期的課題といたしまして、温泉資源の保護対策、温泉成分の有効期間の設定、それから、温泉を核としたまちづくりなどについて取り組むことが求められました。
 次に、2ページをごらんいただきたいと思います。
 本小委員会でご審議していただいて以降、温泉をめぐり、どのような出来事があったのかということですとか、環境省ではどのような動きをしていたかということについて、その概要をご紹介させていただきます。
 まずは、平成17年2月から1年間における温泉を巡る出来事についてであります。それぞれ新聞記事が4ページ以降についておりますが、まずは平成17年2月でございますが、東京都北区の温泉掘削現場で噴出しました天然ガスによる火災が発生するという事故がございました。
 次には、同年12月でございますけれども、秋田県の泥湯温泉におきます硫化水素ガスによる死亡事故が発生し、一家4人の方が亡くなるという痛ましい事故がございました。これは旅館内ではございませんが、冬季は閉鎖されております駐車場近くで発生したものであり、積もった雪の中に自然にできた空洞に硫化水素ガスが滞留し、高濃度になったところに雪を踏み抜いて転落した可能性が高いというふうに見られています。
 それから平成18年2月でございます。秋田県の乳頭温泉郷の旅館付近の斜面で雪崩が発生いたしました。入浴中の客15人と屋外配管作業を行っていた作業員2人が雪崩に巻き込まれまして、作業員1名が死亡するという事故もございました。
 環境省では、特に硫化水素ガスによる事故を契機といたしまして、平成18年3月1日、「公共の浴用に供する場合の温泉利用施設の設備構造等に関する基準」というものを告示いたしまして、硫化水素ガスによる事故の防止に関する注意喚起というものを行ってまいりました。
 続いて、3ページをごらんいただきたいと思います。
 その後、環境省では、先ほどご紹介させていただきましたが、中央環境審議会答申に中長期的課題と記されておりました事項について検討を進める必要があるということで、18年6月、温泉行政の諸課題に関する懇談会を設置し、検討を重ねていただきました。
 そうした懇談会の議論の途中においても、温泉を巡る出来事が幾つかございました。これについても新聞記事を後ろにつけさせていただいておりますけれども、まずは平成18年7月、北海道浦河町の温泉利用施設におきまして、源泉に川の水を引いていたとの報道をきっかけに、改めて温泉の成分・泉温を測定した結果、温泉法上の温泉の定義を充たさなくなっていたという、温泉の枯渇化をうかがわせる現象が、特に地元を中心に大きな話題となっておりました。
 また、温泉資源の保護に関することでありますけれども、本年8月31日、温泉掘削許可申請を群馬県が不許可処分としたことを巡る裁判で、東京高等裁判所は、県の調査結果では申請が他の温泉に影響を及ぼすかどうか不確かであり、かつ周囲の既存源泉所有者の同意書が添付されなかったことは温泉法の不許可事由に該当しないとしまして、県の不許可処分の取消を命じました前橋地裁判決を維持したという出来事がございました。
 先ほど申し上げました温泉行政の諸課題に関する懇談会では、こうした検討途中における出来事などについても触れつつ、10月27日、報告書を取りまとめていただき、諸課題の対応の方向性についてご示唆をいただいたところであります。
 それでは資料の4、ただいま申し上げました懇談会報告書についてご説明をさせていただきます。多少駆け足になりますけれども、あらかじめご了承いただきたいと思います。
 まずは、2ページの方をごらんいただけますでしょうか。1とございます。ここでは「温泉をめぐる状況」ということで、幾つかのデータなどが示されております。
 まずは、温泉資源に関する状況ということでございますけれども、源泉総数と総湧出量が増加する中、自噴湧出量が減少傾向にあるということで、2段落目の後ろの方になりますけれども、特に自噴湧出量が平成11年をピークに5年連続で減少し続けて、ここ5年間で約13%減少という点について着目がされております。
 また、近年は深度1,000m以上のいわゆる大深度掘削泉の割合というものが増加しているということにも触れられております。
 さらには後段、後ろの方になりますけれども、先ほどご説明いたしました群馬の裁判結果についても記載されておりまして、温泉掘削の許可申請に対する科学的な審査の在り方が問われているとしています。
 続いて、3ページをごらんください。
 ここでは温泉の利用の状況に関するデータということで、各種統計データをもとにご説明をしておりますが、温泉地の宿泊利用者は減少しているが、日帰り利用者は増加しているという点、及び国民の温泉好きは変わらないが、利用者のニーズの変化がうかがえるということが記載されています。
 ちょっと飛ばして恐縮ですが、下段の方をごらんください。ここでは、温泉の成分に関する情報提供は改善されたが、なお課題が残るといたしまして、問題点を指摘されております。先ほど申し上げましたとおり、平成17年2月でございますが、温泉法施行規則を改正し、温泉の成分等に関する掲示事項について、新たに加水、加温、循環ろ過や入浴剤の添加が行われている場合には、その旨とその理由を掲示することを温泉利用事業者に義務づけたわけでありますけれども、一方で、4ページに移りますが、「このため」とありますが、掲示すべき温泉成分の分析結果につきましては、おおむね10年ごとに見直しをするよう指導が行われてきたわけでありますが、調査の結果によれば、掲示している成分分析の日付が10年以上経過しているものが全体の37.4%を占めていることがわかったといたしまして、何らかの対応が必要との認識が示されております。
 また、温泉地をめぐる状況、観光振興という観点からでございますけれども、外国人旅行者の受入が増加しているという一方で、韓国や台湾などの近隣諸国では、温泉施設の建設が急速に進展しているという点について触れられております。
 次に、こういった状況を踏まえた上で、温泉行政に関する主な課題と対応の在り方ということで、まさに温泉行政をどのように進めていくべきかということについて提言をいただいている部分について、ご説明をいたします。
 まず、2のすぐ下にございますけれども、2行目でありますが、「温泉資源の保護、温泉成分等の情報提供、魅力ある温泉地づくりに一体的に取り組んでいく必要がある」という点が強調されている点であります。
 まず、では(1)温泉資源の保護ということでありますけれども、課題というところでは、先ほどお話しした、自噴湧出量が減少しているということなどを背景にいたしまして、温泉資源の枯渇化が拡大するおそれがあるとしておりまして、また、5ページの上に移りますけれども、群馬の裁判事例などを例にとりまして、科学的根拠に基づく温泉資源保護対策の必要性というものが課題であるとされております。
 具体的には、ここの三つ目の段落にございますところでございますが、各都道府県は、データや科学的知見が限られる中で、要綱等により温泉保護地域を定め既存源泉との距離や揚湯量に制限を設けるなど、近隣源泉への影響に配慮しつつ、地域特性を活かした温泉資源保護対策を推進するとともに、温泉法による掘削等の許可、採取制限命令の運用を行ってきた。このような取組は、温泉資源保護の機能を果たしてきたと考えられるが、温泉利用が多様化し量的にも拡大する中で、掘削許可等の基準の明確化、データや科学的知見の一層の充実など、さらなる進化が求められる状況にあるとされております。
 続いて、[2]対応の在り方というところでございますけれども、温泉資源保護のための仕組みづくりについてということで、その見直しを行う必要があるとされておりまして、その具体的な仕組みについては、なお検討が必要であるが、少なくとも、以下のようなものとする必要があるとされております。温泉資源の枯渇を防止できるものであることですとか、温泉の利用という権利の制限は、科学的な判断を考慮しつつ行うものであること。ただし、完全な科学的根拠を求めることは技術的・資金的な限界があることから、一定の範囲で予防的な対応を可能とするものであることなどが記載されております。
 続いて、6ページをご覧いただけますでしょうか。
 また、ここでは新たな仕組みを運用するための基盤といたしまして、国、地方公共団体、既存源泉所有者、掘削等申請者、及び温泉利用事業者が責任を分担して、温泉の賦存量、水位等の基礎的なデータの収集・解析方法の技術開発ですとか、温泉の掘削等を行うに際しての、他の温泉への影響調査といったことに取り組むべきであるなどの提言が記載されております。
 次に、(2)温泉の成分等の情報提供の充実についてであります。
 課題といたしましては、先ほど申し上げましたとおり、掲示される成分分析結果の有効期間の在り方等が、なお検討課題として残されたところであるとされておりまして、[2]とありますが、そうした課題への対応の在り方についてでございますけれども、2行目の後段以降になりますけれども、温泉成分について、正確な情報の掲示を確保するとともに、信頼できる情報を求める温泉利用者のニーズに対応するため、さらには、温泉成分の変化を把握し温泉資源保護の基礎データとして役立てるためにも、温泉利用事業者に対し、定期的な温泉成分等の再分析及びその分析結果に基づく掲示を義務づけるべきあるとし、さらに再分析を行う期間については、温泉成分の変化は急激にではなく徐々に進行する場合が多いと考えられること、従来より概ね10年ごとの再分析が指導されてきたこととの整合性、温泉利用事業者の費用負担に対する配慮、諸外国における再分析の取扱い等のさまざまな事情を踏まえ、10年ごとに行うことが妥当と考えるとされております。
 次に、7ページをご覧いただけますでしょうか。
 (3)魅力ある温泉地づくりについてでございます。ここでは、4行目以降になりますけれども、多様化するニーズに対応した魅力ある温泉地づくりを進めるには、温泉を直接提供する事業者のより一層の創意工夫とともに、国や地方公共団体、特に地域との連携が重視される市町村の役割が大切であるとしておりまして、さらには、後ろの方になりますけれども、国民の関心が高まっている心身の健康づくりや、自然体験・エコツーリズムなどと組み合わせた温泉地の整備など、国や都道府県等はソフト・ハード両面での温泉地への支援策を検討・実施すべきであるとし、また、関係府省が連携し、温泉行政及び観光行政の推進に取り組むべきであるとされております。
 以上、簡単ではございますけれども、温泉行政の諸課題に関する懇談会の報告書の概要についてご説明いたしましたが、こうした各種提言を背景といたしまして、環境省として具体的にどのような施策を展開していくべきかということで、戻りまして恐縮ですが、資料の2-1でございますけれども、中央環境審議会の諮問という形で行っているところでございます。
 平成18年11月8日でございます。中央環境審議会会長に対しまして、環境大臣より「温泉資源の保護対策及び温泉の成分に係る情報提供の在り方等について」ということで諮問がされております。この下段にあります諮問理由のところを読み上げさせていただきます。「国民の温泉に対するニーズが増加、多様化する中で、温泉資源の保護対策、温泉の成分に係る情報提供及び魅力ある温泉地づくり等の様々な課題が生じている。このような状況を踏まえ、これらの課題への対応について、貴審議会の意見を求めるものである。」とされております。
 以上、諮問の内容、及び諮問に至りました背景につきまして、簡単ではございましたけれども、ご説明をさせていただきました。
 以上でございます。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの事務局からの説明につきまして、ご質問等ございましたら、どうぞご遠慮なくお願いしたいと思いますが。
 いかがでしょうか。特にご質問ございませんでしょうか。
 どうぞ、田中委員、お願いいたします。

【田中委員】 内容ではないのですけれども、諮問に至るまでのスケジュールはどういうスケジュールで進められるのでしょうか。

【中野参事官】 答申までのスケジュールということでございましょうか。それでは、資料6をちょっとご覧いただきたいと思いますが、これから全体で4回ほどを考えております。今日これらに対する自由なご意見をちょうだいした後、12月の第5回委員会で、講ずべき方策の検討、12月27日に、報告書骨子案の検討、それから、パブコメを行って、2月6日の第7回小委員会で、報告書の取りまとめを行っていただきたいというのが、私ども事務局の希望でございます。よろしくお願いします。

【熊谷委員長】 よろしゅうございますでしょうか。
 ほかにございますでしょうか。
 初回でございますので、どうぞご質問なりご意見をいただければと思いますので。

(なし)

【熊谷委員長】 それでは、特に現段階ではございませんようですので、また後ほど改めて議論をさせていただきたいと思いますので、ここで温泉資源保護に関する議論をさらに深めるため、本日は、板寺委員に、神奈川県における温泉資源保護対策に関する資料を作成していただいておりますので、説明をお願いし、その上で再度議論を再開させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【板寺委員】 板寺でございます。座ってちょっと失礼させていただきます。
 お手元の資料5に、神奈川県で温泉資源の保護のためにどのような取り組みをしているかということを簡単にまとめさせていただきました。それでは説明させていただきます。
 1ページ目をごらんいただきたいと思いますが、箱根、湯河原は、神奈川県を代表する温泉地ですけれども、箱根、湯河原を含めた伊豆地方には、かつて富士山の見えるところに温泉はないということわざがあったそうです。それはなぜかといいますと、温泉を蓄えている地層が川に削られて、自然に露出しているところに温泉があると。そこに自然に湧き出したものを基本的に使うという方向で利用されていたと。温泉を開発する立場の人、利用する立場の人というのは、そういうことを経験的に知っていたわけですけれども、その後、2ページ目に移っていただきまして、温泉を主体とした観光が非常に流行したということと、井戸の掘削技術、あるいは、くみ上げ技術が進歩するということが、お互いに相まってといいますか、相乗効果で、温泉の井戸の数であるとか、利用量というのが激増した時期がございました。2ページの右肩の方にお示ししてありますけれども、いわゆる高度経済成長と言われた時期あたりの10年間の数字でありますけれども、井戸の数、それから、温泉の湧出量と書いてありますけれども、温泉のくみ上げ量を見ましても、10年足らずの間に1.5倍以上の増加を見たと。そういうことがありましたので、そのページの下の方にグラフをお示ししましたが、例えば箱根湯本地区の温泉では、温泉井戸の水位が年々低下するという現象があちこちの井戸で観測されました。
 3ページ目を見ていただきます。
 今、お話ししましたような温泉需要の増加ということがありまして、昭和30年代以降、温泉井戸の水位の低下であるとか、温泉枯渇の心配が高まったということで、神奈川県では、昭和42年、温泉の掘削やくみ上げについてのルールを、神奈川県温泉保護対策要綱として定めました。この中身の主なものは、[1]、[2]でお示ししましたが、県内を、温泉を保護するための規制地域と一般地域に区分して、規制地域については、温泉の掘削やくみ上げ量を決めるためにルールを定める、ある制限を設けましょうというものであります。
 4ページ目に、その規制地域、保護のための地域設定ということでお示ししましたが、これは箱根と湯河原の地図であります。その中に、ちょっと文字が小さくて申しわけないのですけれども、温泉保護地域、温泉特別保護地域、温泉準保護地域、それから、地熱徴候というものが区分けされているのがごらんいただけると思います。地熱徴候区域というのは、ちょっと特殊な事例なので、ちょっと今日は説明を省かせていただきますが、温泉を保護するために保護地域、特別保護地域、準保護地域という三つの設定をしているというものです。
 それぞれの地域でどのような制限をしているかということを、次のページ、5ページ、6ページにお示ししましたが、まず、地域区分、その地域の設定の基準は何かといいますと、先ほど水位の低下が見られた事例があったとご説明しましたが、過去数年間に、水位や温度の低下が著しいものとか、著しくはないけれども水位や温度の低下が見られたもの、それから、源泉同士影響し合っているということが、顕著であるかないかといったことを基準として区分をしております。
 それで、特別保護地域、それから保護地域といいますのは、今、地図の方でご覧いただきましたけれども、箱根温泉、湯河原温泉が主体となっております。保護地域の一部に中川温泉の地域が設定されているのと、温泉準保護地域については箱根、湯河原に加えて中川温泉、それから鶴巻温泉というものが設定されております。その三つの保護地域以外のところが一般地域ということで、特に規制のない、いわば温泉を自由に開発していい地域となっております。
 それぞれ、どんな規制というかルールがあるかといいますと、6ページの方にお示ししましたが、温泉特別保護地域と温泉保護地域では、新規の掘削を認めないということになっております。それで、準保護地域につきましては、既存の源泉から水平距離で150m以上離れた場合に限り掘削を許可する。
 それから、くみ上げ量の制限について、特別保護地域と保護地域については新規掘削が許可されておりませんので、揚湯量も自動的に認めないということになっていますけれども、準保護地域については、地域ごとに最高限度量というものを定めまして、それ以内であるということと、掘削に当たっては150mという制限があるのですけれども、揚湯量を決めるときは、さらに少し範囲を拡大しまして、半径200m以内に既存源泉がある場合は、それに影響を与えない量であるということを基準に、くみ上げ量を許可しているという状況です。
 その他、動力装置変更にかかわる措置とか、休止源泉の復活等にかかわる基準についても、その表にお示ししたとおりでございます。
 それで1枚めくっていただきまして、7ページですけれども、特に温泉特別保護地域、それから保護地域、準保護地域では、管轄の保健所がございますので、その保健所によりまして定期的な実態調査というのが行われております。保健所のその担当職員、衛生監視員には立ち入りの権限がございまして、実際に井戸の場所に赴いて、温度であるとか、くみ上げ量とかというものを実測して、定期的に取りまとめているものでございますけれども、7ページの表はその一例でございます。
 これは、一番左に源泉番号というものがございますが、これは温泉の井戸一つ一つに割り振られた番号で、その一つ一つについて掘削の状況がどうであるかとか、そのつけられている動力装置はどんなものであるかということに加えまして、その調査のときの水位であるとか、温度であるとかというデータが取りまとめられています。
 このような実態調査を進めておりますので、それぞれの保護地域の中で、温泉資源がどのような水位をしているかというのも概略把握ができるわけですけれども、その一例を8ページにお示ししました。
 これは、8ページは湯河原温泉における実態調査の結果でありますけれども、右側のお示しした四つのグラフの一番上は、測定を行った源泉の総数でございます。大体120ぐらいの源泉があるわけですけれども、それらのそれぞれについて温度、それから揚湯量を測定しまして、下にお示しした全体の総揚湯量、それから平均揚湯量、それから平均温度といったものの推移を把握することができております。
 最近の傾向といたしましては、保護地域ですので新規の掘削はないということで、源泉数、それから揚湯量も横ばいということで、これは保護対策の効果が数字としてあらわれているものであろうということを考えております。
 ただし、一番下の平均温度を見ますと、その右肩下がりというか、この調査期間、昭和30年代から示してありますけれども、一様に低下しております。これは、一つは揚湯量を抑制したことによって、逆に測定時点の温度が、量が少なくなると簡単に言いますと冷めやすいということがありますので、そういったことのあらわれかという考え方もあるのですけれども、それ以外に、長い間くみ続けていることで、温泉脈自体に、やはり何か長期的な変化があらわれているかもしれないということで、引き続き調査を進めているような状況です。
 次のページ、こちらは箱根地区の実態調査の結果でありますが、同じようなグラフを右の方にお示ししてありますけれども、箱根については、ポンプを入れてあります動力泉と、自然湧泉を利用したものも数としてはかなりあります。それで、ここ数年の傾向としては、動力泉、自然湧泉ともほぼ横ばいであると。これについても先ほどの湯河原と同じで、保護対策が一定の効果を見ているのではないかというふうに考えております。
 それで、その量について横ばいと申し上げましたけれども、これはある意味、ある見方をすれば、量を一定の量で規定していますので、一定になるというのは当たり前といえば当たり前ですので、実は資源がどうかというのを見るときには、例えば、自然湧泉の数であるとか、量であるとかがどうなっているかとか、温泉の井戸については、水位が下がっていないかというのをチェックすることも実は意味があります。
 ということで、私どもの研究所でも、定点を設けましてモニタリングを継続しておりますが、10ページにその一例をお示ししましたけれども、私どもでモニタリングしている点については、一応かつてのような右肩下がりの傾向というのは今のところ把握しておりません。ということで、箱根については今のところ枯渇化の傾向は落ち着いているのではないかというふうに考えております。
 それで見ていっていただきたいと思いますが、その規制をかけている地域については一応そういった効果が出ているのかなという状況なのでありますが、その一般地域、先ほどの報告書のご説明の中にもありましたけれども、1,000m以上を掘削すると温泉が出るということで、特にこの10年ぐらいで数が急増しております。11ページは、その神奈川県内における1,000m以上の井戸数の推移ということで、1990年代前半から急にふえている様子を見ていただけると思います。今、大体、年間5本から10本ぐらいのペースでふえております。
 12ページに分布をお示ししましたが、いわゆる古くからの温泉地であります箱根とか湯河原に加えまして、横浜とか川崎でも大深度の開発を行われている事例がふえております。今、県内に大体50、これは2005年3月末現在ですけれども、50を超えるものとなっておりまして、そのうち箱根、湯河原が大体20ぐらいなのですけれども、その他の地域で、それより多い開発が行われております。
 次のページを見ていただきますと、ちょっと今のページとまとめている時期が違って大変申しわけないのですけれども、温泉の井戸の数、それからくみ上げている量についても、県全体の約1割に当たるということで、かなり大きい量を占めているということになりまして、神奈川県でも、今まで特に何も規制をしていなかった一般地域でも、ある程度のルールを決めなければまずいということになりまして、14ページにお示ししましたような、一応これは、指導基準ということで業者の方にお願いしているものでありますけれども、深さ1,000m以上の掘削をする場合には、既存のものから距離を、1,000m離してくださいであるとか、くみ上げ量の決定に当たっては、水位の低下、くみ上げの量と水位の低下の関係を調査して、それに基づいて判断しますよということでお願いをしている状況です。
 それで、距離の1,000mの根拠につきましては、15ページにちょっと細かくお示ししましたが、ちょっとこの説明はきょうは省かせていただきますけれども、いろいろな仮定を置きまして、水の収支であるとか、熱の収支を計算したところ、1,000mぐらいの数字がどちらも出てきたということで、これを一つの目安としております。
 それから、揚湯量の決定につきましては、これは、温泉を利用するときに適当な量かどうかという判断に用いる試験ではないのですけれども、井戸の効率とか集水の性能を評価するための段階揚湯試験というものがございまして、その試験の結果をもって適正な量を決めましょうということでやっております。
 考え方としましては、揚湯量をさまざまに変えて、その都度どの程度水位が下がるかということを、16ページのグラフにお示ししたような測定を行いまして、それを17ページにお示ししたようなグラフを書きますと、その揚湯量と水位の低下の関係が変わる点が出てきます。この点をその井戸の限界揚湯量と呼んでおるのですけれども、これの8割を許可量として適当な量ということで判断の基準としております。
 ただし、今申しました、その距離1,000m、それから揚湯量については、適正揚湯量ということで許可をしているのですけれども、その18ページ、19ページに適正揚湯量で許可してもということでお示ししましたが、これは、現在の相模原市というところに、実は3カ所、3本の大深度温泉があります。これはそれぞれ距離が2キロぐらいずつ離れていまして、今の指導基準にかなった許可をしているわけですけれども、それぞれ量とか水位とか、それから温度を見ていきますと、徐々に徐々に下がっているというデータが得られています。これが今のところ、全体の温泉の枯渇なのか、その井戸その井戸の問題なのかというのが、ちょっとまだ結論が出ていないのですけれども、こういった事例もありますので、一たび許可が出たからそれでいいというわけではなくて、やはりモニタリングを、今、続いていくことが非常に重要な時期だと考えております。
 20ページになりますけれども、大深度温泉についても、その保護のためのルールをつくっていかなければいけないということなのですが、今、水位であるとか、温度、成分のモニタリング、それから、データを収集している時期だと考えております。それをある程度収集した後に、温泉の成因というのは、もちろん地域ごとに異なるわけですので、そういったものを解明した上でつくったルールというのが、科学的根拠に基づく温泉保護のためのルールということになるのですけれども、現実問題、新しく開発されることで新しくデータが蓄積されるというのも事実でありますので、新しい開発に当たっては、データが確実に、私ども研究所でございますけれども、そういったところに集まってくるような仕組みがあると大変ありがたいという状況です。
 それで、具体的にどんなデータかということで21ページにお示ししましたけれども、温泉を調べるために必要なデータとしましては、そこにお示ししましたが、水位、それから、揚湯量、温度、成分、こういったものは、それぞれ項目ごとに、測定のしやすさとか、どのぐらいの頻度でとったらいいかというのは異なりますけれども、こういったデータがある程度きちんととられて、それがちゃんとまとめられている状況が非常に好ましいと考えられます。
 それで、最後に22ページになりますけれども、温泉を貴重な資源として今後も大切に利用していくためにということで、温泉にかかわる4者があるとすれば、利用するユーザーがあって、研究者があって、行政があって、温泉を利用する事業者があるわけですけれども、それぞれ正しい、正しいというか正確な情報をやりとりできるような仕組みが望ましいのではないかなというふうに考えております。
 以上でございます。

【熊谷委員長】 板寺委員、ありがとうございました。
 それでは議論を再開したいと思います。
 本日は新たな諮問がなされてから初めての会議でもございますので、ただいま板寺委員からご説明のありました温泉資源の保護対策を含めて、諮問全般について、ご自由にご意見をお願いしたいと思いますので、どうぞお願いをしたいと思います。
 どうぞ、佐藤委員、お願いいたします。

【佐藤委員】 まず教えていただきたいのですけれども、1,000mを掘れば何でも温泉になるのか、25℃以上あるいは、何か一つの成分が含まれればいいということなのですけれども、そうなると今まで温泉地と言われた以外のところでも、例えばビジネスホテルの上にも温泉がある、今、駅前の銭湯がみんな温泉となっている状況がありますので、その中で、例えばもし全部それが温泉であるとすれば、魅力的な温泉地づくりというような、その項目というのが、一部にはまず適用できるかもしれませんけれども、全部をそれでくくるのは非常に難しくなってしまうと思います。その辺をどう考えたらいいのか、教えていただきたいと思います。

【熊谷委員長】 いかがでしょうか。では事務局から。

【中野参事官】 温泉法では、ご承知のとおり25℃以上、もしくは成分を一定量含む場合は温泉だという規定をしてございます。そういう意味からしますと、1,000m掘りますと、温度が25℃以上になるというのが現実的なところでございます。
 私ども、温泉地づくりにつきましては、従来型の温泉地というものの在り方ということと、また、新しい大深度温泉で、都会に出現したような温泉地の在り方というのは、おのずと分けて考えなければいけないのではないかなと思っております。また、そこら辺のご意見、先生方にも十分教えていただきたいと思っております。

【熊谷委員長】 よろしゅうございますか。
 ほかに。どうぞ大野委員、お願いいたします。

【大野委員】 今、非常に大深度掘削という形が多いわけですけれども、ただ、そこで問題になるのは、掘っても、経済性の問題からいっても我々ちょっと疑問視するような、例えば10リットルとか、そういうような微量としか思えないようなものでも、実際上は温度とか、それから成分、そういうものでは温泉という形になるわけですけれども、その辺のところを、やはりある程度、温泉法においては、今、そういう出てくる量というものについては何も規制がないのですから、そこのところを、やはり今度の温泉法の改正等のところでも何か盛り込むことができれば、非常に、その規制というか、そういう面においては有効な手段になるのではないかというふうに思うわけですけれども、いかがなものでしょうか。

【熊谷委員長】 いかがでしょうか。

【築島室長】 大深度温泉という、量に着目としてというお話でございますけれども、現在の温泉法について申し上げると、温泉法の目的が、温泉源の保護と、それから利用の適正化といったような観点から形づけられているといったところがございます。今のように、例えば、その量が少ないから、それは掘削なりくみ上げに、とる量がそもそも少ないからだめなのだというようなところの理由づけみたいなところが、ちょっとどうなっているのかなといったところが、また、この審議会の中でもご議論いただければというふうに思いますけれども。

【大野委員】 続けてよろしいですか。

【熊谷委員長】 どうぞ、お願いいたします。

【大野委員】 結局、その問題がある程度解決しておかないと、温泉であるから、言ってみれば極端な話、大きい浴槽に1リットルでも入れればこれは温泉なのだというようなことで、今、前から問題になっておりますような問題というのは、非常にまた出てくるおそれがあるわけです。そういう意味からも、大体いろいろと先生方にお伺いしても、1人入浴者、大体1リットルは最低限必要だろうと、こういうようなことも言われておりますので、その利用する施設において、このくらいの量は最低限必要だというのが必ず出てくると思いますので、それに見合ったようなものでない限りは、やはりちょっと問題があるのではないかというようなことを、やはり規定する必要があるのではないかなというふうに思うわけですが。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。
 この点については、懇談会では特にご意見なりはなかったでしょうか、今の点について。

【中野参事官】 今の件につきましては、懇談会では議論にはなりませんでした。

【熊谷委員長】 どうぞ甘露寺委員。

【甘露寺委員】 今の量の問題なのですが、これは実は温泉法ができて、昭和25年から30年ぐらいの間にいろいろ検討がありまして、私、聞いている範囲では、飲用にする場合は、量が少なくてもいいではないかというのが一つ理屈にあったのです。それからもう一つ、これは増富という有名な放射能泉なのですけれども、山梨県の。ここで何千マッヘという世界最高に近い放射能泉がありまして、それが実は1滴、ポトンポトンポトンと落ちるぐらいの本当の少量、せいぜい30ccぐらいで、そういう文献もありまして、一応最初の段階では、その飲用とかそういうことを考えて、現在みたいな発展していない段階では当然、一応、量ということは考えられなかった。だけれども、私の研究所でいろいろなことをやりまして、さっきちょっと大野委員から話がありました、大体定員1人1リットル、1リットル無理だったら0.5リットルぐらい、そのくらいはやはり必要なのではないかというのが僕らの、個人的というか、そういう意見としては出ておるところでございます。
 以上でございます。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。
 では、この点につきましても、この小委員会の中で、後ほどご議論をいただけたらと思います。
 ほかに。どうぞ、津上委員、お願いいたします。

【津上委員】 きょう委員会があるということで、報告書を送られてきましたので、いろいろ見ていたのですけれども、ちょっと気になる部分が幾つかあるのです。一つは、これは1975年から2004年までのデータが出ているのですけれども、源泉総数が1万7,491から2万7,644になりましたと、それはそれでいいですけれども、一方で、未利用源泉の数というのは、やはり同じデータがあって、75年が4,013あった、それが2004年度では、これは8,719というふうになっていますね。これは、未利用源泉、温泉数、源泉数はふえているのですけれども、未利用源泉は同じように増えていっている。ここら辺は、開発しても使用されないのか、あるいは、今まであったものが何らの理由で使われなくなったのか、これは、実は湧出量との関係もちょっとあるのでしょうか。ここは、どれだけ使われているかデータがないのでちょっとはっきりしないのですけれども、そこら辺はどんな状況なのか、ちょっとお聞かせいただけるとありがたいのですが。

【熊谷委員長】 では事務局、お願いいたします。

【事務局(佐藤)】 まさにご指摘されたところでありますが、未利用源泉の動力、自噴の別につきましては、数というのは都道府県の方からお聞きしているものがあるのでございますけれども、それがどういう形で今残っているか、つまり自噴といいましても、自然に湧出している自然の湧出泉もあると思いますが、掘削泉でありながら自噴し続けて利用されていないものあります。また、動力につきましても、それが廃坑になったまま放置されているものなのか、または、単に一時的に、まだ将来使うかもしれないということで残されているものなのかという、その内訳につきましては、恐縮ですが現在のところわかっていないという状況であります。

【津上委員】 今回が温泉は貴重な資源だよというところから始まっている中で、この使われていないものがこんなにふえてきているのというのは、どういうことなのだろうかとやはり疑問を持つのです。一方では、先ほど大野委員からもお話ありましたけれども、旅館さんの方ではいろいろな面で、旅館さんの方と日帰り温泉もそうなのですけれども、温泉入浴ということでいろいろなことを進めている、そこがどうだこうだと言われている一方で議論があって、これを放っておいていいのでしょうかというのを、ちょっと気になるところなもので、あえて聞きました。

【熊谷委員長】 どうぞ、岡部委員。

【岡部委員】 今の関係なのですけれども、例えば静岡県の例を申し上げますと、未利用泉があるところは、例えば、伊豆長岡であるとか、修善寺、この辺で集中管理というのを始めました。そういうことで、それまであった温泉を、例えば50本を、使う量を少なくしようということで集中管理しまして、40本ぐらいで回しているということ、そういった取り組みの関係で減っているという例もあろうかと思います。
 以上です。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。
 どうぞ。

【中野参事官】 それでは、ただいまの未利用源泉の状況につきましては、どこまで都道府県にお尋ねして把握できるかわかりませんが、次回の委員会までに、ちょっと調べるだけ調べてみたいと思っております。

【熊谷委員長】 どうぞ甘露寺委員、お願いいたします。

【甘露寺委員】 実は、その未利用というのは二つ解釈があって、大学の先生なんかも未利用でいいではないかと、潜在的なポテンシャルだという、そういう考え方もあるのですが、僕らはどうもそうではなくて、源泉を、そこのところで一つの形で獲得すると、それは一応財産になりますので、ここにこういうものがあるよというようなことで、それが例えば、銀行のいろいろな担保になったり、そういったいわゆる社会経済的な隠れた形の意義を持っていると、この辺をはっきり実は追求しないと、本当のこの未利用泉という意味が実は出てこないのです。
 それでもう一つは、温泉法では、実は温泉を湧出する目的でと書いてあるのです。採取するとは書いていないのです。湧出する目的でたくさん源泉を汲み上げていながら実際は使っていないという段階が、温泉法に対して例えば違反なのかどうかという議論も、実は余り行われていないのです。これもいろいろ座談会とか、そういうところでは取り上げるのですけれども、いわゆる使っていない未利用泉を、今いろいろな人の意見を聞いてみると、ある期限を切って、カットしたらどうかという意見も実はあるのです。
 ですから、そんなことも含めていろいろご検討をお願いしたいと思います。
 以上でございます。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。
 今、甘露寺委員のご指摘を踏まえて、また次回以降、ご審議をお願いしたいと思います。
 ほかにございますか。原田委員、お願いいたします。

【原田委員】 今のご発言との関連で、ちょっと確認したいのですが、先ほど神奈川県の保護区域の例の説明がありました。そういう区域では井戸ごととの距離とか、そういうことが問題になりますね。その井戸の中に、今の未利用泉というのはカウントされるのか、されないのか。使われている井戸の数とかそれとの距離が問題となるのであって、未利用泉の数とかその存在というものは除外されているのかどうか、ちょっとここを確認をしておきたいのです。

【熊谷委員長】 よろしければ板寺委員、お願いいたします。

【板寺委員】 資料5の6ページになりますが、「休止源泉の復活」という欄がございます。休止源泉というのが今の未利用泉に当たるかと思うのですけれども、これについては、今、神奈川県では、5年以上未利用の状態が続いたものは保護地域については認めないということでしております。
 ただ、甘露寺委員が先ほどお話ありましたように、その源泉があるということは、その土地にとっての付加価値ということで、この要綱を定めたときに余り想定していなかったのですけれども、土地の所有者が変わるということで、源泉があるということで取得したのに、その源泉が使えないのかということで、実際、今そういう問題もあるように聞いているのですけれども、これについては、では何年使わなかったら認めないのかという、実は基準というのは、科学的にはちょっと根拠は難しいので、県としてもちょっと悩んでいるところであります。

【熊谷委員長】 どうぞ。

【原田委員】 ありがとうございました。もう一点、今、例えば6ページの表の一番下に温泉準保護地域というのがあって、既存源泉からの水平距離が150mという基準が出てまいります。この既存源泉の中に未利用地の源泉も入るのか、入らないのか、これはどうなのでしょうか。

【熊谷委員長】 どうぞ。

【板寺委員】 すみません、ちょっと説明が足りませんでしたけれども、つまり5年以内であれば対象に入れますし、5年経過していれば、一応使っていないということで対象にしていないということです。

【熊谷委員長】 よろしゅうございますか。
 ほかに、どうぞ。田中委員、お願いいたします。

【田中委員】 温泉法の改正ということを視野に入れるとすると、私は4点ぐらい重要な点があるのではないかというふうに思います。
 一つは、温泉というものが国民共有の資源であるという考え方ですね。これを普及させていく。その上で資源の保護という問題が出てくるわけです。
 それからもう一つは、先ほど板寺さんの報告の中で、横浜とか川崎あたり、いわゆる平野部、ここに大深度の温泉が今かなり掘削されている、東京都も同じです。そういうところでは、地盤沈下との関連性ですね。これが非常に大きな問題になっています。東京都では、過去、天然ガスが、やはり同じような深度からくみ上げまして、そのときに、かん水と言われる地下水が一緒に出てくるわけです。それが地盤沈下の原因になったということがはっきりしておりまして、温泉もそれと全く同じものであるという観点が必要です。ですから、そういうところに対する規制なり保護の考え方というのをこれからどうしていくかのを議論していく必要があると思います。
 それからもう一つ、先ほど出てきました温泉の定義です。大深度、1,000mということになりますと、地温の増温率が100mで3℃ですから、それだけで30℃、表層の地下水の温度が15℃だとすると、1,000m掘ると45℃という水が出てくるわけです。果たして今までの温泉法の25℃という定義が、そういう状況になったときに、依然として有効性を持つのかどうか。大深度のものに関しては、別の何か温泉の定義が必要ではないかという問題があるのではないかというふうに思います。
 それからもう一つは、温泉の資源の保護ということを、これから全国的に進めていくためには、モニタリングの在り方、先ほどお話が出ましたように、それぞれの地域で定点の水位の観測を継続的にしていくとか、それから、許可を出すときに科学的なデータをきちんと出すようにさせるとか、何かそういうものを法の中である程度決めていく必要があるのではないかというようなことを検討できればというふうに考えております。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。
 今のはご意見として賜っておけばと思いますので、特に事務局からお答えをいたしませんけれども。
 どうぞ中村委員お願いいたします。

【中村委員】 ただいまの温泉の定義ということに絡みまして、ちょっと。私、医師でありまして、医学的な立場からの考えを持っております。
 先ほどから話が出ていますように、温泉法の定義では、含有成分のほかに、温度が25℃以上であればもう温泉と言うということになっておりまして、これは、温泉を定義するからには、何らかの定義で定めなければいけないので、やむを得ないところだと思うのですけれども。昔から、温泉は身体にいいのだ、健康にいいのだという前提が、日本人の観念の中にあるわけです。だけれども温泉の定義というものは、あくまでもこれは地質的な観点から見ていまして、医学的なことを保証しているということは全くないわけです。25℃以下では温泉ではない。25℃ちょっとでも超えれば温泉だと、こういう、定義からいえばこうなってしまうわけですけれども、では、低い温度のものでも、加温して温度を高めれば有効ではないかと。加温して上げた温度では有効ではないのかというと、これは医学的にはそういうことは全然ないわけで、天然の温度であろうと、加温した温度であろうと、温度が人体に及ぼす作用は変わりはないと思うのです。成分の問題といたしまして。ですから、一般的に温泉といえば、身体にいいのだ、健康にいいのだという、先入観があることによって、大深度掘削、1,000m以上でも何でも掘って、それで温泉という名前をいただければ、それでもういいのだということでありまして、それでこういうことがだんだんと広がってきているわけです。
 そのほか、そういう大深度掘削でなくても、そのほかの温泉でも何でもそうですけれども、温泉であれば必ず健康にいいとも限らない、温泉法そのものが、そういう、身体にいい、健康にいいということは、何も言っていないわけです。それは言えないと、難しいから言えないという意味と、そこまでは保証できないということがあるわけですけれども。その辺が、その境目がごちゃごちゃになって、今、温泉という名前さえつけばいいのだということで、いろいろな業者さんがそれを利用して、いろいろなことをやっているということで問題が起きてきていることがあると思います。
 それから、あと一つ、これはまた別のことなのですけれども、先ほどから神奈川県の温泉地学研究所の方がいろいろご説明なさっているわけですけれども、私聞いたところによると、神奈川県以外にはそういう温泉地学研究所のようなものがほとんどないということなのです。だから、どこの都道府県にもそういうものがあって、その地域の温泉、鉱泉を研究しながら、規制なり何なりしていかなければ、ちゃんと科学的なことができないのではないかと思うのですけれども、それはもう大変お金のかかる問題だと思いますけれども、神奈川県の温泉地学研究所が全国のを規制するわけにもいかないでしょうし、大きな問題だと思うのですけれども、これも、こういうこともご検討を願いたいと私は思います。
 以上です。

【熊谷委員長】 大変貴重なご意見ありがとうございました。
 ほかに、どうぞ。では原田委員お願いいたします。

【原田委員】 きょう説明いただきました資料4の5ページの、例えば真ん中のところを見ていただきますと、これはご説明いただいたところですが、各県ごとでのいろいろな規制の根拠として科学的なデータの蒐集を、手段の限られる中で、いろいろとなされているということがございます。その中で、やはり温泉資源の保護ということが非常に重要なポイントになっているわけですが、他方でその保護を根拠として件が不許可を出したケースで、最近の東京高裁の判決が、科学的根拠が乏しいのではないかという結論を出した群馬地裁の判決を維持したというご報告がありました。
 そのこととの関係で、恐らく今後の議論にもかかわることと思いますので、ご質問させていただきたいのですが、一つはこの神奈川県のように、例えばご説明いただいた資料ですと6ページにありますけれども、特別保護区域、保護区域では新規の掘削を認めないという基準を立てているわけです。こういう基準を立てて、ルールを定めてやってきたところで不許可にしましたという場合でも、東京高裁のような判決になるのか、ならないかということです。東京高裁の判決の事案の場合に、科学的根拠として県は何を出したのか、あるいはそれに基づいた中間的な基準として、どういうルールを県側は持っていたのか、もしわかっていればちょっと教えていただきたいというのが第1点です。
 第2点は、この神奈川県のルールがいつごろから使われてきたのか。また、正確にちょっと聞きそびれましたけれども、そのルールが適用されたことに伴って、不服申し立てその他が出されたケースがあったかどうかですね、これが二つ目です。
 三つ目は、神奈川県のケースからは飛ぶのかもしれませんが、これも関連するので…。説明いただいた資料4の方の5ページ目の真ん中にあります、許可・不許可というのは必ずどこでもやっていると思うのですが、採取制限命令というのを出すケースというのは結構あるのでしょうか。神奈川県の場合にもあったのかどうか、その辺をご参考までにお伺いしたいと。
 この3点でございます。

【熊谷委員長】 今、3点ご質問あったのですが、まず事務局の方からお答えしていただいて、それから、もしおわかりでしたら板寺委員の方からも。

【事務局(佐藤)】 資料を用意していないのですが、まず一つ目、群馬県ではどういうルールだったのかというところでありますけれども、群馬県では、基本的には既存源泉から3km以内の場合は、まずは既存源泉所有者などから同意書を得るようにということで、規制というのでしょうか、ルールづくりをされておられました。そういったところで、まずは同意書を求めたけれども、結果的には、その同意してくれなかった方が多数あったというところがありましたので、そこがまず、初めに論点になったというところであります。その後、裁判の中で県側も、地裁判決の後ですけれども、また詳細な地質等の調査をお金をかけてやったわけでありますけれども、それをもちましても高等裁判所の方では、必ずしも、それが必ず影響するということには、そこまで言えないではないかということで、調査資料につきまして取り上げてはいただいたようなのですけれども、完全にその影響が必ずあるとまでは言い切れない資料であるということで、その部分につきましても却下されたということがございました。
 それから2番目が、不服申し立ての関係ですが、これにつきましては、ちょっと今、数字が出ておりませんので、次回までに準備したいと思います。
 それから、採取制限命令でございます。これにつきましては、今の資料の、懇談会資料ですね、資料4の、後ろの方の参考資料の5ページです、後ろから5枚目ぐらいになりますでしょうか、参考資料の5ページであります。細かい数字がたくさん並んでおりますが、右から6段目に「採取制限命令」という欄がございます。それから、そこで過去どれだけ各都道府県では、この採取制限命令というのをかけてきたかということでございましたが、昭和50年に1件あったということでありまして、そのほかは一切ゼロという状況であります。これにつきましては、いわゆる行政指導というのでしょうか、先ほどの神奈川県さんのお話のように、ルールを各都道府県で決めておられて、その範囲内でその事業者さんもご協力いただいているということで、これだけ少ないのかなという気はいたします。
 以上であります。

【熊谷委員長】 よろしゅうございますか。
 それではほかに、どうぞ。では甘露寺委員お願いいたします。

【甘露寺委員】 今の先生のご質問非常に重要なのでして、各都道府県が、現在、温泉保護条例なり何なりをつくっているわけですね。ところが、それは法律に基づくものではないわけです。そうすると、温泉法第4条の基準という方がはっきり上へ行くわけですね。それで、しかも温泉法第4条というのは掘削ということになりまして、本来は、掘削した場合に影響があったらいけないのだけれども、最高裁も解釈が出まして、掘削してもその影響が軽微であるならばそれは構わないと。要するに、そうは言っていないのですけれども、掘削しても、それは影響があったとき、それを絶対掘削してはいけないという意味ではないというのが最高裁の解釈なのです。それ以来、はっきり言って、ああそうか、少しぐらいの影響ならばそれはいいのだと、許容範囲ならいいのだよといって源泉の掘削というのが行われて、それがはっきり言うと、どんどんどんどん、少しずつ積もり積もって、現在の枯渇現象になっているような、私は法律的な側面から見ると、どうもそういう気がするのです。
 それで、もう一つ重要な問題、掘削なのか採取なのかと、ここがまた非常に重要なので、実は掘削したって影響しないのです。例えば、熱海で今、100mぐらいの既存源泉のところを掘っても影響はしませんよ。なぜかというと、400本も源泉があるのですから。そこを掘ったって掘ることだけでは影響しないのです。そこでどれだけ採取するかという問題が一番重要なのです。ですからその辺が入ってこないと、採取量という考え方が入ってこないと、これは非常に困る。
 それから、もう一つ大きな問題は、源泉というのは、個人の一応財産という形で現在取り扱われているのです。ところが、それが集まって温泉地になると、今度は地域ということになって、温泉地全体の話になっていく。その辺の関係が非常にはっきりしない面があるのです。例えば、適正揚湯量と、さっき板寺委員がおっしゃいましたけれども、一本一本の適正採取量を全部足したものがその地域の適正採取量かどうかは、これははっきりしないのです。僕は、そうならないと見ているのですけれども。ですから、その温泉地の、本来は採取量というところを注目すべきなのだけれども、なかなか、これが法的には使えるかどうかというのは、私は非常に疑問なのです。
 だけれども、一応さっきの質問が非常に重要なのは、これから、例えば法律で、影響があったらこうしなさいというようなこと、第4条をそのままにして、保護地域の設定みたいなものを仮に法律でつくったときに、お互いがバッティングするという問題が出てきます。これは当然、裁判所に持っていってやらなければならないということになって、その辺の問題も実は考えなければいけないというふうに、僕自身は実は考えております。
 以上でございます。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。
 今後の審議の参考にさせていただいて、十分に議論を尽くさせていただきたいと思いますが、ほかにございますでしょうか。
 石川委員、お願いいたします。

【石川委員】 今、論議になっています、特に温泉資源の保護のことなのですけれども、報告書の過程でもあったのですが、二つの側面があります。今、甘露寺委員もおっしゃったように、温泉法として、やはりきちんと温泉資源の保護を大深度掘削時代にどう見ていくのかという大前提があると思うのです。その上で、現実には都道府県がそれに基づいて実際の温泉審査をしているわけですけれども、そこで、今、神奈川県のような温泉保護地域の指定という問題が出てくるわけで、これはもちろん温泉法の上での、温泉資源保護という前提でのやり方だと思います。
 今ちょっと都道府県の状況を、環境省のデータや、山梨県が全国に問い合わせたものをもって調べているのですが、大ざっぱに、こういう温泉保護地域という形で、まず少なくとも掘削や、いろいろな温泉資源保護に歯どめをかけようという地域が北海道をはじめ、17道県あります。明確に温泉保護地域をA地域、B地域、C地域という形で指定をしています。これに長崎県と鹿児島県が準じる形で、温泉地ごとでの審査という形で、一種の保護規制をかけています。それ以外の35の都道府県は、同意書添付という形で基本的には歯どめをかけています。全くないのは佐賀県、1県です。この同意書も、群馬県は、長野県に次いで非常に網のかけ方が大きいというか、1,500mから3,000m以内の既存源泉に対する同意書添付が必要であると。ただ、これが今回の高裁で、いわば科学データに薄いということで門前払いを食ったわけですから、今の温泉法を前提にすれば、各都道府県段階の温泉審議会レベルで歯どめとなる大きな根拠が崩れるという、非常に危機的な状況で、では何をもってすればいいのかということがあります。
 しかも先ほど委員の方からありましたように、神奈川県のように、地学研究所がその地域における温泉資源のデータをフォローしてくださるようなところはほとんどないという、いわば両面から挟み打ちを食らった形で、温泉法の大目的である温泉資源保護に対処しなければいけません。そういう意味で、法律改正とこうした保護地域指定で、どのぐらい拘束力を持って守っていけるのかというのは、魅力的な、魅力ある温泉地づくりも絡むことだというふうに思っています。
 現実にこの保護地域をつくっております、いわば網をかけた形の全国の温泉地の中身を見てみますと、大体皆様が思いつくような歴史ある、すばらしい温泉地というものには網がかかっているわけです。ただ、これは甘露寺委員もおっしゃったように、条例ではなくていわば要綱・申し合わせという形で保護地域が制定されているわけですから、どこまでの拘束力というか、規制力を持つかということも疑問だということで、このことを国としてどうフォローするかという問題も新たに出てくるかと思います。
 あと最後に、もう一点、先ほどのちょっと論議にありました休止源泉のことですが、全国を回っている中で、非常に象徴的な姿なのですが、要するに総源泉は大深度掘削を含めて増えているのですが、例えば、ついこの間行きました秋田県のある地域では、そこにすばらしい公共の大深度による温泉ができました。そうするとそこに人がワッと集まりまして、その手前で新しい温泉を訪ねましたら、そこは源泉は流れ放しなのですが、張り紙がしてありまして、「休業」というふうに書いてある。だから結局は取り合いっこをしているというような状況ですね。一種の自然淘汰といえば淘汰なのですけれども、非常に複雑な思いが、温泉の質ということも考えますと、集中管理による休止ということが一番量的に多いと思いますが、お湯があふれ放しで、外から見えたのですけれども、そういう休止源泉の姿もあるのではないかということを一言添えておきます。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。
 いかがでしょうか。特にまだご意見を述べておられない、森戸委員、お願いいたします。

【森戸委員】 今日のお話を聞いていて、私は温泉に詳しい者ではないので、非常にもっともだということで、うなずいてばかりいたのです。なるほど、大変勉強になりましたけれども、委員の皆さん方のお話の中で感じたのは、温泉法そのものが、今の状況にそぐわなくなっているのだということを皆さん何となく指摘されているようなのです。ですから、今回の諮問の文書と、この温泉法との関係はどういうふうに整理するのかという課題が一つあります。前回はそれに立ち入らないということでやってきたのですが、今回は、また課題として残す形にして、立ち入らないというスタンスを決めるのかどうかというのが、次回以降の進め方に影響すると思ったのです。
 それから、もう一つは、温泉というのは、それこそ都会の駅前にまで進出しているし、一方では、この懇談会の中では魅力ある温泉地づくりということで、観光行政のような話にも踏み込んでいますが、そうすると公衆衛生系の分野とも、あるいは、観光行政というのは国交省になると思うのですけれども、そういうほかの分野との境界が出てくるわけです。どこかで仕切りをつけてもらって、今回のこの諮問はここに焦点を絞るのだというような、次回以降は何かその辺の筋道といいますか、見取り図のようなものを提示してもらった方が、私自身は議論に参加しやすいなと思ったのです。
 以上です。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。
 まさにおっしゃるとおりでございますので、その点についても整理をできるだけさせていただきたいと思いますが。
 ほかにいかがでしょうか。どうぞ、津上委員、お願いいたします。

【津上委員】 これは田中先生にちょっとご質問というか、水の循環が先生ご専門だというお話を伺ったのですけれども、ちょっと個人的な部分も含めてなのですけれども、日本の森とか山とか今は荒れていますねと、そこの水の水量が減っていますねとか等々、いろいろなことがいろいろなところで言われているのですけれども、これはもしかしたら温泉の潜在的な量といいましょうか、そこら辺にも影響が、先生、水循環があるのか、ちょっとお知らせいただけるとありがたいなと思って、すみません。

【熊谷委員長】 田中委員、よろしくお願いいたします。

【田中委員】 温泉は、この懇談会の報告書の4ページに書いてありますように、一番最初に「温泉は天水の供給」ということが書いてございますね。全くこのとおりでして、温泉のもとは要するに降水とか雨、そういうものです。それが要するに深部まで浸透していったものが、地熱的なものだとか、火山だとか、そういうもので温められて出てくるものですから、全く自然の循環の一サイクルの中にあるわけです。その循環の問題は、速さでして、そういうものを目安にするのに滞留時間という考え方があるのですけれども、どのぐらい時間がかかって、その帯水層の中を循環しているかと。関東平野ですと、大体400mぐらいの深度の地下水は約100年の滞留時間です。それから1,000mまで行きますと数万年という時間スケールです。
 ですから、先ほど言いましたように、共有資源という考え方と、もう一つは温泉、地下水という循環の実態、これをやはり皆さん、きちっと把握される必要がある。そういう中から資源の保護とか管理、そういう考え方が必要だということが出てくるわけでして、無限のものではないということです。そういうことからいきますと、今、山地がかなり荒れている。それから、もう一つは、針葉樹が日本の山はかなり多いわけですけれども、むしろこれからは、針葉樹よりも広葉樹の方が水を浸透させやすくなりますし、針葉樹に比べて蒸発散が少ないという利点がありまして、雨水が地下に浸透する量が多いというようなことで、涵養地域のそういう森林政策というようなものも、広く考えますと必要になってくる、保護だけではなくて、むしろ地下水、温泉資源をふやす方向の施策も考えていかなければいけないという問題もありますが、ここではそこまで多分まとめ切れないのではないかと思いますけれども。
 ですから、そういう意味で温泉はまさしく自然の水循環の一部である。その中で我々が見ている川の循環とは大分様子が違っているということを、皆さんが共有して考えていく必要があるということだと思います。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。
 では桑野委員、お願いいたします。

【桑野委員】 私、大分県の湯布院というところに住んでおりまして、多分、全国の温泉地も同じような状況かと思うのですが、非常にバブル期と同じように乱開発といいましょうか、いろいろな今、動きがあると、そういう中で今のお話もありましたけれども、森を本当に荒らしていってリゾートのホテルをつくるとか、そういうような動き。盆地の中も、至るところが日帰りの入浴場ができると。そういうときに、今までとスピードが全然違うという状況の中で、地元行政の中で保護対策というものが非常に薄いのではないかと。全国、今、市町村合併しまして、何とか市の何とか温泉になっているわけですから、それが地元行政の中では、とても保護とは裏腹の、こう、施策とは言いませんが、とられている部分もあるのではないかということの中で、やはり今こそスピードを持って、群馬県の例というのは、どこの県でも起こり得る話ですので、今こそスピードを持った国の形というものが求められているのではないかというのを思っておりますし、本当に、源泉は個人のもので、でも、個人のものであったとしても、これだけのことが温泉地で起こっていいのかと。多分それは、どこでも今から起こり得ることですので、もう本当に私どもとしましては、保護対策ということを、この科学的な根拠というのは難しいにしろ、スピードを持ってとらえていっていただきたいという思いが強くあります。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。
 いかがでしょうか。どうぞ、まだ時間多少ございますので、原田委員お願いいたします。

【原田委員】 私、温泉の細かいことはよく知らないのですが、先ほど田中先生の方からお話があったことの関係で、ちょっと1点確認したいのです。以前に1,000m以上掘ったようなものは、これは化石水であるという話を聞いて、それはどういう意味ですかという質問をしたことがあったと思うのです。今、お伺いしますと、関東平野のあたりだと400mぐらいの深度なら100年単位、つまり我々がまだ目にしている水循環の範囲内で考えることができるし、しかも、天から降ったものがこう循環しているという形で目に見えます。しかし、1万年単位の循環になると、これはもう我々の想像を絶する循環になるわけで、その水をくみ上げて使っている場合と、天水として雨水がおりてきて、そして山に涵養され、あるいは、いろいろな地層を通って、あるところで温泉として出てくるものとでは、やはり相当違うのではないかという議論ができそうかなという印象もあったので、その辺のことをちょっと確認したかったのです。1万年ですか。

【田中委員】 1万年いきます。それはデータが出ていますから。化石水の一部が入っている可能性もありますが。

【原田委員】 今の、両者の違いの点は、さしあたりの私の個人的な印象ですけれども。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。では佐藤委員、お願いいたします。

【佐藤委員】 市民としては温泉は、身体にいいとみんな思っているわけです。例えば25℃以上あっても、1,000m掘削した場合、ほとんど何も有用な成分が入っていない場合もあるし、ある場合もある。そういう別というのは、その温泉に入ってみて、何か表示がある、25℃以上だから温泉だということになって、それだけなのか、その辺はどう理解すればよいのでしょう。もしそれが単に温度だけのことであるならば、消費者としては非常に誤解をしている部分もあって、これまでもあった銭湯に行くのと何も変わりがないわけですよね。今だったら軟水とか、いろいろな逆に新しいタイプの水、身体にいい水というのも出てきているわけですから、その辺も少し考えていって、消費者の方にも正しい情報を提供していって、その保護ということを訴えていかないと、うまく回らないのではないかと。やはりニーズというところが、今、先行していますから、業者としては、当然それに合わすということになってしまいますので、その辺までちょっと幅広にいろいろ考えて、今回議論ができればいいなというふうに思います。

【熊谷委員長】 ありがとうございます。
 いかがでしょうか、今の点について。

【中野参事官】 おっしゃるとおり、温泉といいますのは、25℃ということと成分でございますけれども、どうしてそれが決まったかということでございますが、私も甘露寺先生からよく聞いておるのですけれども、昭和23年の法律でございます。そういうことで、当時ドイツの温泉の基準というものを我が国に準用したということから来ておりまして、身体にいいもの、そうでないものもあわせて含まれているということでございまして、これから、今おっしゃいましたような、消費者が誤解をしないような情報提供といいますか、そういうことは重要だなと、こう思っております。温泉法の定義を、それでもって、身体にいいものだけに限定するとかということは、なかなか難しいのかなとは思いますけれども、これからは、そういう誤解が生じないような何か方策というか、情報提供を一生懸命やっていきたいなと思っております。

【熊谷委員長】 いかがでしょうか、そろそろ議題の割り当てられた時間も迫ってまいりましたので、何か、どうしてもというご意見がおありの委員の方がいらしたらお受けしたいと思いますが。
 では、ちょっとまず川名委員の方からよろしく。津上委員、ちょっとお待ちください。

【川名委員】 一言だけ。全くのユーザーとしての意見なのですけれども、確かに保護もいいですし、情報提供もいいことですし、楽しい魅力ある温泉づくりもいいのですけれども、それによってユーザーに、過度な義務とか制約というのがないかと、私はユーザーですので、それを心配しております。治療のために温泉に行く人もいるでしょうけれども、大半は楽しみでいますので、何か本末転倒したような制約とか、義務が生じないようにお願いしたいと思います。

【熊谷委員長】 ありがとうございます。
 大変、違った意味で貴重なご意見ありがとうございました。
 では津上委員、お願いいたします。

【津上委員】 すみません、たびたびで恐縮ですが、日本は観光立国で動こうというときに、温泉というのは一つのキーワードになっていくのですけれども、1個だけ、どうしても気になる数字で1個ありまして、入湯税ですね。入湯税収入というのが、これはちょっと、2004年でしょうか。全国で241億円超、これは市町村税でしょうか、あるのですけれども。この使い方をきちんと、やはり温泉の保護であったり、今、ちょっとお話あったみたいな、消費者の方々に温泉を楽しんでいただけるような、そういうものもやはり必要ではないかなという気がするのですけれども、一方で、どういうふうに使われているのかがよく見えないところもちょっとあるものですから、そういうものも含めて、入湯税の使い方というのも一つ考えていく必要があるのではないかな、将来に向かって百年の大計をつくるという意味では、そういうこともぜひ議論といいましょうか、若干、話してもらえるといいのかと思います。

【熊谷委員長】 ありがとうございました。
 まだ、いろいろご意見はおありかと思いますが、時間も迫ってまいりましたので、本当にいろいろありがとうございました。
 第4回目ですが、今回の最初の議論ということで、大変有意義な、また幅広い観点から、さらには高い視点からご意見をいただきまして、ありがとうございました。
 特に、この温泉小委員会が自然環境局にあるというのも、改めてその意義を逆に感じさせていただいたところですが、特に今日は、量の問題とか、特に定義の問題とか、具体的な未利用源泉の問題とか、つまり長期的な課題と、それから短期的といいますか、喫緊の課題と、いろいろなご意見をいただきましたので、その点につきましては、事務局の方で次回以降にご審議いただく内容として、きちんと整理をさせていただいて、かつ委員の先生方のご意見をできるだけ多く取り入れた審議ができるようにさせていただきたいと思っております。
 それでは次に、議題、その他でございますが、事務局と相談の上、本委員会における検討スケジュールの案を作成してございます。これは一部については、先ほどご質問にお答えしておりますが、再度、事務局から説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【中野参事官】 全体のスケジュールは、この4回ということで希望を申し上げさせていただきましたので、これでよろしいかお諮りをいただきたいということと、あと次回でございますけれども、きょうは温泉資源の保護につきまして、いろいろと大変、いっぱい意見が出たわけでございますけれども、次回も引き続き、精査をしまして資料を提出したいと思っております。温泉成分の再分析等情報提供の在り方につきましても、次回はぜひご議論をお願いしたいと思っております。特に再分析となりますと、温泉利用事業者のサイドの方々が、どのように受けとめておられるのかということも気にしていかなければならないと思いますので、大野委員とか小原委員に、そういう業界団体にも所属しておられますので、ぜひご意見をいただきながら議論を進めていきたいと、こう思っております。
 さらには、魅力ある温泉地づくりにつきましても、引き続き議論をしていきたいなと思っております。よろしくお願いします。

【熊谷委員長】 ただいま事務局から、今後のスケジュールと、その内容についてご説明をさせていただきましたけれども、何かご質問なり、あるいはご意見ございましたら、どうぞお願いしたいと思いますが。
 よろしゅうございますでしょうか。特に内容についてよろしゅうございますでしょうか。今、説明したような内容で次回以降、ご議論いただきたいというふうに考えております。よろしゅうございますでしょうか。

(なし)

【熊谷委員長】 それでは大変スケジュールが立て込んではおりますが、次回以降、この内容で進めさせていただきたいというふうに考えております。
 それでは、以上で本日の会議は終了させていただきたいと思います。どうも、大変ありがとうございました。