中央環境審議会 自然環境部会 自然公園等小委員会(第34回)議事要旨

1.開催日時

平成29年8月23日(水)10:00~12:00

2.開催場所

中央合同庁舎5号館(環境省) 22階 第一会議室

3.議題

(1)富士箱根伊豆国立公園における公園計画の一部変更及び生態系維持回復事業計画の策定について【諮問】

(2)耶馬日田英彦山国定公園における公園計画の一部変更について【諮問】

(3)国立公園事業の決定、廃止及び変更について【諮問】

・阿寒摩周国立公園    ・支笏洞爺国立公園   ・日光国立公園

・富士箱根伊豆国立公園  ・南アルプス国立公園  ・上信越高原国立公園

・瀬戸内海国立公園    ・大山隠岐国立公園   ・霧島錦江湾国立公園

・奄美群島国立公園    ・やんばる国立公園  (計11国立公園、20件)

(4)その他

4.議事経過

諮問事項について審議がなされ、適当であるとの結論に至った。なお、主要な発言は以下のとおりである。

(1)富士箱根伊豆国立公園における公園計画の一部変更及び生態系維持回復事業計画の策定について【諮問】

○委員:下層植生の衰退度と、シカの密度推定が並列して書かれているが、この二つの関係性を説明していただきたい。

⇒事務局:今まで生物多様性などについての視点が薄かった面があるので、下層植生の衰退度の評価といったわかりやすい手法を検討していきたい。

 一方で、シカについても数を調べていかないと、守るためには、どれだけシカを減らさなければいけないのかといったことがわからないので、2段構えにしている。この2点のリンクについて、国立公園におけるシカ対策の方針検討ということで、目標を達成するために必要なことをきちんと整理をしていきたい。

○委員:超高密度になっているシカに対する対策と箱根のように低密度を維持するということが主要な目的になっている場合とでは、計画の内容が大きく異なるということにご留意いただきたい。

 低密度個体群を管理する上では、解像度の高い、細やかなモニタリングが必要だと考えているので、ご留意いただきたい。

⇒事務局:下層植生の衰退度評価を実際やっている例もあるが、かなり広範囲にやっているので、解像度としては荒いものだと思われる。そこはどれだけのコストをかけて何を見たいのかというのを整理した上で、手法が適用できるようであれば、適用したい。

 一方で、これまでの対策の中でも、かなり細かいモニタリングは、やってきており、それも継続しながら、必要に応じて強化することを検討の中で進めていきたい。

○委員:公園利用者及び観光事業者への普及啓発と、そういう理解というものを進めるような類のことを書いていただいているのはよいが、具体的に何か考えていらっしゃるのか。

○委員:普及啓発事業について、一方通行のメニューが並んでいるだけで、社会的な面では非常にバランスが悪いと考えておりますので、ご検討をお願いします。

⇒事務局:シンポジウムを去年度実施し、観光事業者なども参加していたと聞いている。

 仙石原は、地域の関心が非常に高いところなので、地域連携という意味で、観光業者との連携は、これからますます大事なので、シンポジウムだけではなく、広報の仕方なども一緒に地元と考えようと思っている。

⇒○委員:普及啓発という言葉からくるイメージは、一方通行なので、連携参加というふうに、双方向であるという事業に誘導していただきたい。最終的にはステークホルダーマネジメントを進めていただきたい。

○委員:箱根の個体群が、富士山、丹沢及び伊豆半島地域由来であるということだが、この取組で、箱根地域の外、事業計画区域外との取組の連携についてお伺いしたい。

⇒事務局:伊豆半島地域や箱根の北部、富士山、丹沢地域で多いということがわかっており、そこでは、既に神奈川県や静岡県が鳥獣の捕獲の特定計画を定めて、対策を実施しているので、その計画との連携を図りながらやっていきたい。

○委員:外来植物に関して、現在、どの程度侵入、拡大が広がっているのかという現状について、何か情報があれば教えていただきたい。

○委員:外来植物についての除去、あるいは種子除去マットの設置と書かれているが、箱根地域全体を対象としているのか。それとも、シカ対策と同様に、仙石原湿原を特に優先的に行うのか。

 植物については周辺地域での密度の低減というのが非常に重要だと聞いたことがあるが、仙石原湿原を特に優先的に行うならば、周辺についても何らかの措置を計画されているのかについても、あわせてお伺いしたい。

⇒事務局:箱根の外来植物で、特に注目されているのは、オオハンゴンソウかと思う。湿生植物群落に入り込んでいるものであり、地元の方と連携をして、アクティブレンジャーなども現場で引き抜きの作業を進めている。

 マットの話だが、基本的に守りたい場所を湿生植物群落だとすると、湿原に一般の方は湿生花園という町の施設からしか入れないので、マットを置くとしたら、限られている入り口に設置すると思っている。

 箱根全体での外来植物は、大きなダメージは今のところ見られないので、基本的には仙石原を現場では想定している。

○委員:移動経路を押さえるということが非常に重要かと思うが、検討や対策についてどう考えられているのか。

⇒事務局:移動経路を把握するためのGPS首輪を装着した移動経路の把握調査などを箱根地域においても実施していく予定です。

 ほかの国立公園では、移動の遮断柵を使った対策、移動を遮断して追い込んで捕獲するといったこともありますので、知見も共有しながら進めていきたい。

○委員:さまざまな多様性の保全や、生態系サービスの低下防止の観点とうまくつながった形での目標設定が各国立公園において定められるべきかと思いました。

 シカ密度と植生の部分で、さまざまな知見はある程度積み上がっているので、ゼロから始めるのではなくて、今までの知見を生かした形でやっていただきたい。

(2)耶馬日田英彦山国定公園における公園計画の一部変更について【諮問】

○委員:九州の中でも、相当に密度の高いところで対策を講じていくという認識を環境省と県で共有される必要がある。特に県境にあるので、大分県側も含めて、非常に高密度なエリアで管理を始めるのだということを全体で理解を共有していただきたい。

 何頭とったかという実績ではなくて、どのくらい減ったのかということが事業の達成度の指標になるということで、県と、これも理解を共有していただきながら進めていただきたい。

⇒事務局:国としてもここの国定公園域の生態系については、高密度なエリアで、捕獲数だけでなく、きちんとモニタリングをして検討していくことが重要であるといった理解で進めさせていただきたい。

○委員:大分県側の現状や課題について、そして、福岡県と大分県の連携や共同について現状を教えていただきたい。

⇒事務局:今回、福岡県側で生態系計画の追加ということで、大分県とも調整を行っております。福岡県側に自然林の分布が高いエリアがあり、希少な植生がかなり残っているので、今回、重要性の高い福岡県地域から計画を策定したいと考えている。

 今後も大分県と調整を行いながら、必要性があると確認できましたら、大分県側でも計画をきちんと追加して、連携して事業を行っていくよう調整を行っている。

○委員:ニホンジカの防除と、事業効果検証のためのモニタリングについて目標値として、何の効果を見るのか。

⇒事務局:捕獲の目標について、英彦山の地域には2,000頭前後シカがいると考えており、将来的には300頭程度まで減らすことが必要と考えておりまして、10年後に300頭前後を目指すという計画で捕獲の目標、計画を立てるところでございます。

⇒○委員:周辺からの移入というのが非常に大きな課題かと思うので、大分県側のデータも出すような形で見たほうがいいし、大分県との連携も必要だという話が出てくる。今のお答えも、メッシュの中で収支がとれているのではなくて、実は周辺のメッシュとの移動というブラックスがどれだけあるのかの把握が必要かと思います。

⇒○事務局:今のご意見を踏まえて、今後、事業計画を立てるところで、きちんと大分県と両県調整しながら、全体での移動経路などの把握をしながら、対策を練っていければと考えております。

(3)国立公園事業の決定、廃止及び変更について【諮問】

○委員:一つは奄美の既存施設、園地の整備について、どのような需要の予測があって、こういった再整備の計画を立てるのか。

○委員:資料の中に、年間の利用者数ということで人数を掌握しているが、駐車場等の整備に関して重要なのは、現地の車事情かと思うので、外来の車両についての情報というのも、今後ある程度調査されたほうがいいのではないか。

⇒事務局:奄美に関しては、こちらで把握している利用の状況というのが奄美の島全体の利用者数であり、平成28年で43万1,000人となっており、5年前に比べて1.2倍となっており、現状でも増えてきています。

 今後、世界遺産を目指していく中で、公園として利用の計画を考えていく際に、地元とも一緒に話していく場で利用者数を把握して、どういった公園にしたいのかといったときには、レンタカーがどう増えていくのかなどの視点も参考にさせていただいて、情報を活用しながら、検討していくようにしていきたい。

○委員:南アルプスの登山道について、今回どんな形でまとめられて、伊那市が十分に行えるようになったのか。

⇒事務局:今、南アルプスのほうでエコパークの取組が盛り上がっており、そういった自然環境に対する認識が高まっているところと、市長が登山道等の管理にとても興味をお持ちというところで、今回登山道の保全をしていこうとなった。

○委員:支笏洞爺国立公園の冒頭の事業ですが、事業の内容を教えていただきたい。

⇒事務局:モーターボート・プレジャーボート事業の概要ということですが、もともと既存の施設で、これまでモーターボート事業を行ってきた場所となっております。

 また、洞爺湖に関してはモーターボート、プレジャーボートの使用に関して、対策協議会を立ち上げており、そこの中でルールを定めており、それに沿って事業を行うというものです。また、その協議会には環境省の保護官も参加しておりますので、適正な公園利用が図られるように、確認しながら利用者の方に楽しんでいただけるように進めております。

○委員:箱根の小涌谷宿舎の件について、多様なニーズに応える利用者層に応じた施設が必要ということで、この施設がつくられていると思うのですが、施設の説明を見る限り、ごく普通の施設に見えて、これだと300人ぐらいの宿泊者数がふえて終わりというように私には理解できるのですが、一体どんな施設であるのかを教えてください。

 富士箱根は、450万人の宿泊と説明をいただきましたが、1日当たりにすると1万何千人になると思うが、これだけ利用圧がかかっているのにまだ増やすという点についてコメントをいただきたい。

⇒事務局:小涌谷における多様なニーズについて、箱根の地域は自然探勝の他に、美術館めぐり、湯治など多様なニーズがあります。

 利用過剰ではないかというご指摘ではあるが、もともと箱根は、一時期減少した宿泊者数が回復基調にあります。今回の場合は、特に利用過剰とは考えにくいと思っています。

○委員:多様なニーズに応えられる施設だけではなくて、それを支える人材の養成にぜひ目を向けていただいて、講演や何かしらの支援をご検討いただきたい。

 もう一つは、近年はAIやITなどを組み入れることで、大分コストがかからない方法で人々に活躍していただくというようなことも、ほかの分野ではたくさん事例が出ていますので、そういった視点も入れていただけるとありがたい。

⇒事務局:多様なニーズに応えられるような人材を育てる必要があるというご指摘は、そのとおりかと思いますので、箱根全体でそういう人材、特に外国人の方の対応を検討するような枠組みは考えてまいりたいと思っております。

○委員:1点目奄美の大棚湯湾線道路について、道路の狭小部等々の改良を行うことによってもたらされるメリットをもう少し具体的に書き込んだほうがいいのではないか思います。

 第2点目が、やんばる国立公園の既存施設の把握の件ですが、かなり昔に民間の方が整備された施設というのは国立公園内にもあり、行ってがっかりすることもよくある。今後に向けて、今の設備や施設が、本当に国立公園の価値を高めるものになっているのかというのを見直していけるといいなと思っています。より国立公園の魅力を高めて、それを分かりやすく価値を伝えるような施設やサインなどをぜひ推し進めていってほしい。

(4)その他