中央環境審議会 自然環境部会 自然公園等小委員会(第31回)議事要旨

1.開催日時

平成27年12月22日(火)14:00~17:00


2.開催場所

経済産業省 別館 1111号会議室(11階)

3.議題

(1)国立公園及び国定公園の公園区域及び公園計画の変更について【諮問】

・釧路湿原国立公園   ・十和田八幡平国立公園(八幡平地域)  ・天竜奥三河国定公園(静岡県地域)

(2)生態系維持回復事業計画の策定について【諮問】

・釧路湿原国立公園  ・南アルプス国立公園   ・霧島錦江湾国立公園   ・屋久島国立公園

(3)国立公園事業の決定、廃止及び変更について【諮問】

・阿寒国立公園     ・支笏洞爺国立公園    ・十和田八幡平国立公園  ・三陸復興国立公園   ・磐梯朝日国立公園   ・上信越高原国立公園   ・秩父多摩甲斐国立公園  ・富士箱根伊豆国立公園  ・吉野熊野国立公園   ・山陰海岸国立公園    ・瀬戸内海国立公園    ・大山隠岐国立公園
・阿蘇くじゅう国立公園

4.議事経過

 諮問事項すべてについて審議がなされ、それぞれ適当であるとの結論に至った。なお、主要な発言は以下のとおりである。

(1)国立公園及び国定公園の公園区域及び公園計画の変更について

<釧路湿原国立公園>

○委員:資料によるとシカ道の延長が6年間で2倍以上になっているとのことだが、それよりも増えているような印象を受ける。生息数の調査は行っているのか。

○事務局:資料では、わかりやすいように最もシカ道が増えている場所を例示しているが、例示している場所以外にも調査地点を設けており、それらを平均して2倍以上増加したということで説明している。生息数についてはまだ調査が不十分であるため、今後調査していく予定である。

<十和田八幡平国立公園(八幡平地域)>

○委員:第3種特別地域を第2種特別地域に変更することで規制の内容は具体的にどのように変わるのか。

○事務局:第3種特別地域では基本的に森林の皆伐が可能であるが、第2種特別地域では択伐であったり、皆伐であれば2ha以下というように基準が変わってくる。また、一般的な建築物についても建ぺい率や容積率の基準が変わってくる。

○委員:焼走り溶岩流を観察するための探勝歩道を設置する計画になっているが、どのようなものを整備するのか。

○事務局:実際にどのようなものを整備するかについては、利用者の声を踏まえ、また、自然環境とのバランスを図りながら今後検討を進めていく。

(2)生態系維持回復事業計画の策定について

○委員 生態系維持回復事業計画は第2種特定鳥獣管理計画と連携をとることになっているが、指定管理鳥獣捕獲等事業との関連を強く意識して進めていくのかどうかについて教えていただきたい。

 また、シカのインパクトは多少生息数が減ったからといって軽減できるものではなく、植生に関しても、回復してくる植生が我々の思うような原生植生にならないということもあるので、気を付けて進めていただきたい。

○事務局:鳥獣法に基づく第2種特定計画では、鳥獣の捕獲、特にシカなどの指定管理鳥獣については管理を抜本的に強化するということで、都道府県の計画を変えて、そうした方向に進めていくという流れである。

 国立公園においても、県の役割や国の役割、そうしたものをより明確に話し合いながら今後進めていかなければならないと思っている。その中で、今後捕獲を進めて行くということが大きな課題になっているので、第2種特定計画に基づく指定管理鳥獣捕獲等事業と公園内での対策等は強く連携していきたいと考えている。

○委員:新たに創設された「指定管理鳥獣捕獲等事業」及び「認定鳥獣捕獲等事業者」の二つの制度は、捕るぞという場所を決め、そこに捕れる人を投入するという体制を制度としてつくったものである。是非これを生かし、国立公園での対策が他の地域の見本となるよう進めていただきたい。

○事務局:シカの捕獲にあたっては、認定事業者のように非常に特殊な技術を持った方でないと難しい場所もあるので、新たに創設された制度を上手く活用し、いただいたご指摘を実践できるように努めていきたい。

○委員:3つの計画が農林水産省との共同策定になっているが、農林水産省との役割分担の内容や連携して進めることの課題や利点などについて教えていただきたい。

 また、モニタリング手法や調査方法について、国レベルで基本的な考え方や方針はあるのか。

○事務局:えびの高原を例に挙げると、えびの高原では林野庁が国有林保護のため植生保護の柵を設置しているが、環境省としても保護柵の設置は同時に進めているため、どの場所にどちらが柵を設置するかなど、個別に一つ一つ調整をしながらやっていくというイメージで考えている。

 モニタリング手法等に関する国レベルでの考え方や基本方針について、全国的な個体数の推定などは既に実施しているが、都道府県がそれぞれ実施している推定手法と多少違う結果が出てしまうなど、地域によってはその手法が必ずしもベストだということにはならないため、なるべく手法は統一しつつ、それを目安として使っていきながら、各地ではもう少し詳細な調査を補足的に行っていくのが良いと考えている。

○委員:広域連携による対策について、どのように考えているのか教えていただきたい。

○事務局:えびの高原を例に挙げると、生態系維持回復事業計画の共同策定者である農林水産省のほか、県や市町村などの関係機関と連携を密にして、一つ一つの事業を一緒に進めていきたいと考えている。

○委員:釧路湿原の計画(案)には農林水産省が参画していないため、ここでは農業や林業が行われていないと思うのだが、計画(案)に「農業用跡地」に関する記載がある。これはここでもう一度農林業を復活させることを考えての配慮なのかどうか教えていただきたい。

○事務局:釧路湿原については、国有林など、農林水産省が主体的に取り組むような場所が今のところないため、環境省単独での策定となっている。

 また、「農業用跡地」をこちらの計画に記載したのは、シカが増えやすい環境の例示として挙げたものであり、農林業の復活などを意図した記載ではない。

○委員:サルがライチョウを食べている写真が報道されたが、高山帯におけるサル対策についても考えていただきたい。

 また、屋久島の花之江河では植物の被害だけでなく、浸食の被害も進んでいる。花之江河の部分だけでもシカが進入しないよう柵で囲うなど、脆弱な場所は特に注意していただきたい。

○事務局:サルについては鳥獣の担当部署で取り組みを進めていると聞いているが、国立公園においても状況を見ながら、必要に応じて現地で議論していきたい。

 屋久島の土壌の浸食については、現地でも話題になり、御指摘いただいたとおり柵を設置したと聞いている。こちらについても状況を見ながらしっかりと対応していきたい。

○委員:どこで増殖して、どこでどのように影響が出ているのかなどの調査を踏まえ、シナリオをしっかりと描いて計画し、国立公園としての議論と地域としての議論の中で、環境省、農林水産省、地域等が役割分担して進めていく必要がある。

(3)国立公園事業の決定、廃止及び変更について

<十和田八幡平国立公園>

○委員:乳頭温泉や玉川温泉の利用者数が激減している理由は何か。

○事務局:東日本大震災の影響により減少している。利用活性化のため、現在、国立公園の中で協働型管理ということを進めており、八幡平においても地域ビジョンなどを検討して地元と連携しながら進めていきたいと考えているが、まだ具体的なことは決まっておらず、今後の課題と考えている。

○委員:震災後に持ち直してきている地域もあるので、地元と手を携えて利用者の回復に取り組んでいただきたい。

○委員:田沢湖高原スキー場の廃止の件について、大規模な草地造成が求められるような場所における廃止は、これからも増えてくると思うが、ここは森林への回復途上ということで、特に問題が起きてくることはないという理解でよいか。また、このような場所で何か対策が必要な状況はあるのか教えていただきたい。

○事務局:当初は必要であるということで開発したものが実際には使われずに廃止されたもので、現在は野に帰っている状況である。現状として汚染は確認されていないが、状況の推移は長い目で見ていかなければならないと考えている。

<吉野熊野国立公園>

○委員:公園区域とジオパークがほとんど重複していると思うが、例えば解説板など、国立公園とジオパークはどのように住み分けしているのか。

 また、海岸へ下りる際には危険な道も結構あり、こうした道は今まで人があまり通らなかったと思うが、ジオパークになったりするとこうした危険な道も徐々に人が通るようになってくると思う。整備などについてどのように考えているのか。

○事務局:国立公園事業として国が直轄で整備できるところは環境省が整備を進め、それができないところは市町村や県と連携・分担し、進めていきたい。  

 また、国立公園とジオパークの連携事業という取り組みもあるので、ソフト的な部分も含めて連携を進めている。

 いわゆる釣り道と言われるような獣道、歩きづらそうな道について、環境省では地域整備計画というものを策定しており、どのような整備がよいか地元と議論しながら考えているところである。これについては本年度から始めており、来年度には形になる予定である。

○小委員長:拡張エリアの歩車道や園地は事業決定されたのだが、これらが上手く連携できるような歩道の整備などは計画されているのか。

○事務局:地点地点間の連携というのは考えており、国道42号線が動線となり、これがそれぞれの事業を繋いでいる。千畳敷園地と三段壁園地は20~30分で両方見ることができるほか、権現崎園地や番所山園地というのも半日~1日をかければ行ける状況である。

 また、南の江住、黒島については、熊野古道の大辺路というルートがあるほか、近畿自然歩道も設定されているので、こうしたものと連携することを現地で考えている。

<上信越高原国立公園>

○委員:菅平園地を運動場に変更するとのことだが、現在はどのような状況か。運動場にして問題ないのか。

○事務局:実態としてグラウンドになっており、園地事業ではなく運動場事業のほうが適切であろうということで振り替えたものである。既開発の場所であり、特に問題ないと考えている。

<三陸復興国立公園>

○委員:今回事業決定する園地と防潮堤の関係が見えない。明戸浜の拡張区域についても自然海浜として自然再生させていくのかどうかについて教えていただきたい。

○事務局:現状としては、強く被災して何も残っていないような場所に新たに整備していくということで、グリーン復興プロジェクトに位置付けられて実施していくものなので、環境上の問題はないものと考えている。

○委員:三陸復興国立公園の理念には、森・里・海のつながりや地域の文化、恵みと災害というものがあると思う。しかし、現実のハードの整備を見ると、つながりの部分をどう再生して生かしていくかというところが計画にあまり反映されていないように感じる。

 今のような位置付けでは、ここでこれをやる意義というものが一面的に感じられるが、この辺について説明をお願いしたい。

○事務局:震災から5年近くが経ち、一つ一つのプロジェクトの中で、個別の事業が形になってきたという段階である。三陸復興国立公園が再編され、地域と議論をしながら管理や運営の計画を作っている最中であるが、その中で、先行的にこの施設が整備されて、地域のモデル的な位置付けになっていくのではないかと考えている。

(4)その他

○委員:長野県の中央アルプスがまだ県立自然公園であり、また、御嶽も県立自然公園であるので、これを国定公園にして欲しいという要望がある。中央アルプスと御嶽を国定公園にするとか、あるいは御嶽などは北アルプスと一緒にして国立公園にするということはあり得ると思う。

 また、最近の知見で山口県北部には50くらいの単性火山群があるのだが、今まであまり評価されていない。私は国立公園にしてもよいと思うぐらいの場所である。数年前に総点検事業を行っていると思うが、新しい知見はどんどん出てきているので、こうした新しい知見を取り入れて見直しを行ってほしい。

5.問い合わせ先

環境省自然環境局国立公園課(03-5521-8279)

課長   岡本 光之(内線6440)

課長補佐 河野 通治(内線6650)

専門官  松尾 浩司(内線6693)

計画係長 小林  誠(内線6691)

事業係長 新田 一仁(内線6692)