中央環境審議会自然環境部会自然公園小委員会議事要旨(第18回)

開催日時

平成21年12月7日(月)15:00~17:25

開催場所

中央合同庁舎5号館 22階 第1会議室

議事

国立公園事業の決定、廃止及び変更について

議事経過

諮問事項について審議がなされ、案のとおり適当であるとの結論に至った。
なお、主要な発言は以下のとおりである。

委員:
足摺岬公園線道路(車道)に関連して、道路法面を緑化する際に、緑化材料(タネ)が中国から来ることが多く、ハギといっても突然大きなハギが生えていたりすることがある。同じハギであっても移入種の影響が心配であり、国立公園内の緑化くらいは日本のタネを探すくらいのことを徹底させる配慮があってもいいのではないか。
事務局:
ご指摘のとおり。緑化のためのタネが輸入によるもので、種名は日本のものと同じであるが、実際育ててみると、全く大きさが違うものになったりというケースが確認されている。公共事業の緑化については、国交省や林野庁を含め、国立公園内で使用できる種やその供給体制について5年くらい前から検討してきている。ただ法面は、雨等で地盤が緩んだりする恐れがあるため、早期種で安定させ、その後在来種に植え換えるような方法も必要。
委員:
[1]既存施設の把握とは何か。[2]小笠原の自然再生施設とは、そういった施設をつくるのか。漂着ごみ対策やモニタリングも施設に含むのか。
事務局:
[1]について、既存施設の把握とは、既に存在する施設を自然公園法に基づく国立公園事業に位置づけるものである。事業執行した時点では、当然、現状に何ら変更は生じないが、例えば施設の更新時に、単なる建物の新築許可ではなく、公園事業認可の変更という手続きをとることとなるため、基準に照らして、より利用施設として相応しいものとなることが期待される。また環境省は事業者に対し、報告聴取や立入検査等の監督権限を有することとなるため、公園利用の促進という観点からも重要。
[2]自然再生施設の定義では「自然再生の対象地を含む」、植生復元施設の定義では「植生を復元するための施設及び植生の復元地」としている。湿原を再生した場合はその湿原自体が、また、鳥の繁殖地を再生した場合はその繁殖地自体が施設の概念に入るという意味。繁殖地自体が場として整備されるということ。
委員:
繁殖地が自然再生施設なのでごみを取り除かなければならないということか。
事務局:
西之島自然再生施設については、漂着ごみによって海鳥が繁殖しにくくなることが指摘されてために、繁殖場の整備としてごみを取り除くことが自然再生施設の整備に該当する。
委員:
聟島列島でアホウドリの新繁殖地形成計画とはどのようなものか。
事務局:
野生生物課の事業であるが、種の保存法に基づく保護増殖事業として、山階鳥類研究所及び米国政府と協力して実施しているもの。伊豆鳥島から聟島にアホウドリのヒナを空輸し、生まれたてから飛び立ちまで育てるという事業。聟島を繁殖場所として記憶させ、ヒナが数年後に戻ってきて、聟島で繁殖することを期待するもの。
委員:
聟島で繁殖するクロアシアホウドリやコアホウドリとの競合や影響等はないか。
事務局:
聟島は、過去にアホウドリの繁殖していた記録があるため、事業地として選定した。過去においても3種は共存関係にあったと考えられているため、3種は共存できるものと推測している。
委員:
係留施設が増えることにより、船が増えてそこから出されるし尿ごみや、えさやり等による海の汚染等悪影響は出ないのか。また、小笠原が世界自然遺産になることにより利用者が増えると予想されるが、利用者の増加による影響はないか。
事務局:
7月の公園計画の見直しにより、小笠原の海中公園地区面積を2倍にしており、それに伴って係留施設も増やしたもの。係留ブイはこれまで漁協等が独自に設置してきた経緯があるが、係留施設が増えたからといって、船が増加するということは考えにくい。
小笠原に訪れる利用者は年間17,000~18,000人程度で、近年微減の状況にある。アクセスが元々大変悪いため、世界自然遺産になることで、観光客が大きく増加するということは考えにくい。ただ、将来的に空港が整備されると変わるかもしれない。利用者受入の収容力は、まだまだあると考えている。
委員:
藻琴山登山線道路について執行者が二者となっているが、事業内容の統一は図られるのか。
事務局:
土地の所有者が二者あり、それぞれ所有の区間で事業執行が予定されているもの。現状でもササ刈り等の維持管理は、二者それぞれで行われており、今回公園事業に位置づけるという意味合いであるため、執行者が二者に分かれることで、意思統一のない管理が行われるという可能性はないと考える。
委員:
洞川園地について、広場整備地のすぐそばに川があるが、増水したときの安全性は担保されるか。
事務局:
親水広場を作る予定となっている。この広場には、既存駐車場からアクセス歩道をつける計画となっており、この駐車場には、常時人が駐在しているため、例えば最近のゲリラ豪雨などによる増水時も安全の確保が可能であると考えている。
委員:
洞川園地は、自然景観としても、歴史的にも、大変優れた場所である。親水公園を整備する予定のようであるが、コンクリート等で景観に配慮のないものができてしまうのは大変残念。設計の内容を環境省が指導することができるのか。
事務局:
実際に園地を整備する場合は、施工者(天川村)から公園事業執行の協議が行われるため、基準に沿った審査を行うこととなる。
委員:
安全面ばかり気にしすぎて景観を主体に考えない施工者もいる。歴史的な景観等に配慮するよう指導してほしい。
委員:
雲仙温泉園地の事業について、写真にある老朽化した施設も改修するという理解でよいか。
事務局:
そのとおり。
委員:
阿寒湖温泉は釧路市、雲仙温泉は雲仙市というように観光地単位での利用者数の統計が取られているが、国立公園関連施設と行政関連施設での利用者把握の連携体制は取られているのか。
事務局:
国立公園の利用者数については関連する市町村単位で統計を取っていて、個別の温泉街等の利用者数については、地元の観光協会等が集計しているような例がある。市町村合併で国立公園利用者数の集計の単位が変わってしまうという問題もあり、過去と整合のとれるデータの把握に努めたいと考えている。
委員:
観光庁に対しても、観光地ごとのデータ収集の重要性を伝えており、観光庁とも連携して欲しい。

報告

国立・国定公園の総点検の取組みについて
なお、主要な発言は以下のとおりである。

(質疑応答)

委員:
今回の総点検は生物多様性が中心だが、指定に関する提言のポイントでは、管理面についても触れられており、管理面に関する総点検はしないのか。今回の点検も非常に重要であるが、管理面に関しての基準や10年計画や20年計画がない状態なので、公園内の施設のデザインの基準、工事の安全性、オーバーユースの問題などに関する点検もすべきではないか。管理面についても大胆な発想で政策展開をしていただきたい。
委員:
国立・国定公園を決める時に、その地域の人たちが参加して意見を言う機会が与えられるのか。
委員:
新しい自然の価値が科学の発展によりどんどん理解が進んでいるのに、国立公園はその解説をほとんどしていない。最近の世界遺産のテレビの報道などでも詳しく解説しているように、国民はそのような環境教育やエコツアーなどを求めているので、対応したほうが良い。
委員:
戦後の大都市圏の利用のために選定された公園について、近年は利用が集中している。大都市圏と近郊の国立公園のあり方を考える必要があるのではないか。
事務局:
ご指摘いただいた内容については、今後検討するにあたって重要なポイントとして進めたい。来年はCOP10が開催されるということで、今回の総点検は、生物多様性の観点を中心に置いているのは確かであるが、管理面について全く無視しているわけではないので、自然体験型エコツアー等を含めて、どういう公園指定の方法があるか考えていきたい。その際、都道府県市町村をはじめとした地域の人の話を聞きながら進めていくことになると思う。ただ、COP10で公表する内容については詳細な内容にはならないと思うので、まずは大きな絵を示すということを目指したい。その後、個別な公園区域の設定や見直しを実施していくなかで、地域の声を聞く機会を設けながら進めていきたい。
事務局:
公園区域の指定や公園計画を見直す際は、通常は市町村を通じて地元関係者へ話がいくが、直接個別に調整することもある。手続き上では個別全部の同意を取る必要はないが、できるだけいろいろな機会を設け、幅広い意見が吸い上げられるようにしたい。
委員:
国立公園の利用者満足度を計測する手法はあるか。
事務局:
現状で体系的には実施できていないが、ビジターセンター等でアンケート調査をしている例はあり、ある利用拠点を中心に利用者の意識等を把握する努力を一部では実施されている。また、「協働型の国立公園の管理運営体制づくり事業」について予算要求しており、利用者のニーズを把握したうえで、地域の公園事業者と一緒になって、公園の運営体制をうまくつくっていくにはどうしたらよいかを検討していきたい。
委員:
総点検事業は、2、3年の間に、公園区域を増やすという視点で取り組むということか。
事務局:
2、3年ですぐにとはいかないかもしれないが、生物多様性の保全の観点でみたときに屋台骨になっている国立・国定公園でまだカバーできていないところについてはある程度カバーできるようなことを目標に置きたいと考えている。現実に様々な調整があるので、単純にいつまでということは難しいかもしれないが、10年後のカバー率など道筋をできるだけ示せるようにしたい。
委員:
戦略的に農林水産省や総務省のように、里地里山の問題についてはそういうところと組んで、現実に予算がつくような仕掛けも考慮しないと、生態系の話だけで環境省単独で作業を進めるというのは厳しい。

問い合わせ先

環境省自然環境局国立公園課(代表03-3581-3351)

課長上杉 哲郎 (内線6440)
課長補佐中山 隆治 (内線6443)
係長佐々木 真二郎(内線6438)<国立・国定公園の総点検関係>
係長中島 治美 (内線6447)<公園事業関係>